説明

耐熱性ポリエステル延伸成形容器

【課題】透明性及び延伸バランスに優れた耐熱性延伸成形容器を熱固定工程を経ることなく提供することである。
【解決手段】エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から成る層を有する延伸成形容器において、前記層が、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該鎖延長剤(B)がPET樹脂(A)に対して10〜1000ppmの量で含有されていると共に、少なくとも容器胴部の動的粘弾性測定におけるtanδ極大値の値が0.3以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び透明性に優れたポリエステル延伸成形容器に関するものであり、より詳細には、熱固定に賦することなく成形可能な経済性及び生産性に優れた製造方法及びこの製造方法により成形される耐熱性ポリエステル延伸成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂の延伸成形容器は、優れた透明性、表面光沢を有すると共に、ボトル、カップ等の容器に必要な耐衝撃性、剛性、ガスバリア性をも有しており、各種飲料、食品の容器として利用されている。
しかしながら、ポリエステル樹脂から成る延伸成形容器は耐熱性に劣るという欠点があり、内容物を熱間充填する際の熱変形や容積の収縮変形を生じるため、二軸延伸ブロー容器を成形後に高温に設定された金型で熱固定(ヒートセット)する操作が一般的に行われている。
【0003】
また、前記延伸成形容器を一段ブロー成形法において成形する場合、プリフォームを高温に加熱して延伸することにより、成形された延伸成形容器の残留歪が小さく、優れた耐熱性を有する延伸成形容器を成形することができる。
例えば、一段ブロー成形法において、プリフォーム温度を可及的に高温とし、さらに高速で延伸する際の内部摩擦による発熱或いは結晶化による発熱を利用し、延伸成形と熱固定を同時に進行させて、耐熱性の高いポリエステル樹脂から成る延伸ブローボトルを得る方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
高温で延伸する場合には、歪硬化現象が生じにくいため、延伸速度を極めて高速にしないと、成形物全体に延伸が伝搬せず均一な肉厚を有する延伸成形容器を得ることができない。このため、従来は機械的な延伸速度に限界を生じた場合、延伸温度を低下させて、高温延伸のメリットである耐熱性を犠牲にして延伸バランスを得ていたことから、発明者等は、高温条件での延伸ブロー成形においても、延伸速度にかかわらず、歪硬化による良好な延伸バランスを備えたポリエステル樹脂から成る延伸成形容器を提供すべく、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂からなる連続相と、無機物から成る分散体とから成る分散構造を有すると共に、少なくとも容器胴部の動的粘弾性測定値におけるtanδ極大値及びtanδ極大温度が所定の関係を満たす延伸成形容器を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第1767894号
【特許文献2】特開2008−217921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
延伸成形容器に耐熱性を付与するために行われる熱固定は、一般にポリエステル中に含まれるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)やビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)等のモノマーの融点以上の温度であるため、熱固定によりこれらのモノマーが析出し、このモノマーが粘着剤となってオリゴマーが金型等に付着することから、金型の頻繁な清掃の必要性が生じて生産性が低下したり、或いは容器の透明性が低下するという問題を生じた。
また上記のように高温条件下での歪硬化による延伸バランスを十分とるために、無機物を配合してなる延伸成形容器においては、高温条件での延伸ブロー成形においても、延伸速度にかかわらず、歪硬化による良好な延伸バランスを備えると共に優れた耐熱性を具備するものであるが、無機物をバランスよくポリエステル中に微分散させることには限界があり、またポリエステルとは屈折率の異なる無機物の存在により透明性が損なわれるという問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、透明性及び延伸バランスに優れた耐熱性延伸成形容器を提供することである。
本発明の他の目的は、透明性に優れた耐熱性延伸成形容器を熱固定に賦することなく成形することが可能な、生産性及び経済性に優れた延伸成形容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から成る層を有する延伸成形容器において、前記層が、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該鎖延長剤(B)がPET樹脂(A)に対して10〜1000ppmの量で含有されていると共に、少なくとも容器胴部の動的粘弾性測定におけるtanδ極大値の値が0.3以下であることを特徴とする延伸成形容器が提供される。
本発明の延伸成形容器においては、
1.鎖延長剤(B)が、重量平均エポキシ官能基数が4以上であるエポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーであること、
2.少なくとも容器胴部のHazeが、15%以下であること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該混合物中の鎖延長剤(B)の含有量が10〜1000ppmであるプリフォームを、110乃至120℃の条件で一段ブロー成形することを特徴とする延伸成形容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の延伸成形容器においては、熱固定に賦されていなくても優れた耐熱性を有している。
また、本発明の延伸成形容器は、延伸バランスに優れており、肉厚分布が安定化しているため、座屈強度などの機械的強度に優れていると共に、うねりやヒケなどの外観異常も十分抑制されている。
更に、鎖延長剤を配合することにより形成される長鎖分岐構造を有する高分子は、主原料であるPET樹脂の原料と同じなので、屈折率が近似しており、ヘイズが15%以下と透明性に優れている。
本発明の延伸成形容器の製造方法においては、熱固定を行わなくても、優れた耐熱性を有する延伸成形容器を成形できるため、熱固定に起因する金型汚れの発生が防止されており、金型の頻繁な清掃や金型汚れに起因する透明性の低下と言う問題を生じることがなく、また熱固定に要するエネルギーを低減することもできる。
また耐熱用のポリエステル樹脂に比して低廉な汎用ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて、優れた耐熱性を有する容器を提供することができ、生産性、経済性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例で作成した二軸延伸ブローボトルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の延伸成形容器は、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(以下、単に「PET樹脂」ということがある)から成る層を有する延伸成形容器において、前記PET樹脂含有層が、PET樹脂(A)とPET樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該鎖延長剤(B)がPET樹脂(A)に対して10〜1000ppmの量で含有されていることが第一の特徴であり、また少なくとも容器胴部の動的粘弾性測定におけるtanδ極大値の値が0.3以下であることが第二の特徴である。
本発明の延伸成形容器におけるベース樹脂であるPET樹脂は、一般に重量平均分子量が50000〜100000の範囲に直鎖状の高分子であるが、かかるPET樹脂中に鎖延長剤を配合することにより、ベース樹脂中にPET樹脂を枝成分とした長鎖分岐構造を有する高分子が生成される。
かかる長鎖分岐構造を有する高分子成分は、直鎖状の高分子に比して歪の緩和時間が長いことから、ベース樹脂であるPET樹脂よりも高粘度であり、PET樹脂に比して延伸により変形しにくいことから、この長鎖分岐構造を有する高分子成分の周囲のPET樹脂のみが局所的に過延伸され、かかる局所的な過延伸がネッキング伝播に有効に寄与して、高温条件下で高速延伸を行った場合と同様の延伸バランス(肉厚分布の均一性)を発現することが可能になるのである。
更にかかる長鎖分岐構造を有する高分子成分は、PET樹脂を主原料とするものであるため、PET樹脂とほぼ同じ屈折率を有しており、延伸成形容器の透明性を損なうこともない。
【0013】
また本発明においては、鎖延長剤をPET樹脂中に10〜1000ppm、特に100〜1000ppmと極少量配合することも重要な特徴である。すなわち、本発明においては、延伸成形における伸張粘度が長時間緩和に極めて敏感であることから、鎖延長剤を極少量配合することにより生成する少量の、長鎖分岐構造を有する高分子成分の存在で大きな効果を得ることが可能になるのである。
【0014】
更に本発明の延伸成形容器においては、動的粘弾性測定におけるtanδ極大値が0.3以下と小さいことから明らかなように、結晶化度が高く、残留歪が存在する非晶部分が少ないことから、容器加熱処理時の歪緩和に伴う収縮変形を有効に抑制することが可能になるのである。
本発明の延伸成形容器においては、動的粘弾性測定におけるtanδ極大温度が115℃以下であることが好適であり、これにより本発明の延伸形成容器の非晶部分は残留歪に起因するポリマー鎖の緊張、拘束が少なく、上記tanδ極大値が0.3以下であることと相俟って、優れた耐熱性を発現することが可能になる。
【0015】
上述した本発明の延伸成形容器は、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該混合物中の鎖延長剤(B)の含有量が10〜1000ppmであるプリフォームを、110乃至120℃の高温条件下で一段ブロー成形することにより、成形することができる。
すなわち、前述したように、高温で延伸する場合には、一般に歪硬化現象が生じにくいため、延伸速度を極めて高速にしなければ成形物全体に延伸が伝搬せず均一な肉厚を有する延伸成形容器を成形することが困難であるが、本発明においては、原料PET樹脂に鎖延長剤を10〜1000ppm配合することにより、PET樹脂中に長鎖分岐構造を有する高分子成分が含有され、この長鎖分岐構造を有する高分子成分のネッキング伝播に有効に寄与することから、延伸速度にかかわらず、110乃至120℃の高温条件下で、歪硬化による良好な延伸バランスを備えたポリエステル延伸成形容器を成形することが可能になるのである。
【0016】
本発明の上述した作用効果は、後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、鎖延長剤を配合しないPET樹脂を高温(115℃)で延伸した場合、tanδ極大値は0.3以下であるが、延伸バランスが悪く、均一な肉厚の容器を成形することができず(比較例1)、一方、延長剤を配合したPET樹脂を通常の延伸温度(100℃)で延伸した場合には、延伸バランスは良好であるが、tanδ極大値が0.3より大きく、耐熱性に劣っている(比較例2)。また鎖延長剤を10ppm未満の量で配合した場合には、配合量が少ないため、比較例1及び2に近似する結果しか得られず(比較例3)、また鎖延長剤が1000ppmよりも多い量で配合した場合には粘度が高くなりすぎ、押出性、延伸性に劣るようになり、成形性が損なわれ、満足する容器が得られない(比較例4)。またマイカを1重量%の量で配合したPET樹脂を高温延伸した延伸成形容器は、ヘイズが70%と透明性に劣っている(比較例5)。
これに対して、本願発明の延伸成形容器は、延伸ブロー成形後高温で熱固定を行う従来の成形法で成形された延伸成形容器(参考例1)とほぼ同等の優れた耐熱性を有すると共に、延伸ブロー成形後熱固定を行う従来の成形法で連続成形した10000本目の熱固定延伸成形容器(参考例1)に比して、透明性にも優れている(実施例1〜8)。
【0017】
(エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂)
本発明の延伸成形容器に用いるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分が、ジカルボン酸成分の50%以上、特に80%以上がテレフタル酸であり、且つジオール成分として、ジオール成分の50%以上、特に80%以上がエチレングリコールであるポリエステル樹脂を用いる。かかるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の中でも機械的性質や熱的性質及び成形加工性をバランス良く満たしている。
【0018】
テレフタル酸以外のカルボン酸成分を含有することも勿論でき、テレフタル酸以外のカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。
ジオール成分としては、ジオール成分の50%以上、特に80%以上がエチレングリコールであることが、機械的性質や熱的性質から好ましく、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0019】
また上記ジカルボン酸成分及びジオール成分には、三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールを含んでいてもよく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸,1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールを挙げることができる。
【0020】
(鎖延長剤)
本発明の延伸成形容器に用いる鎖延長剤としては、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)であれば、従来公知のものを使用することができる。
鎖延長剤の、ポリエステル樹脂の末端官能基と鎖延長を伴う反応性を有する官能基としては、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基等を挙げることができる。
鎖延長剤として使用できるエポキシ基含有化合物としては、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物、グリシジルメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジアクリレート等のグリシジルエステル等を挙げることができる。
【0021】
またカルボジイミド含有化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N′−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−シクロへキシルカルボジイミド、N,N′ベンジルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o―イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6―ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2―エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2―イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6―トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2―イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド等を挙げることができる。
【0022】
イソシアネート基含有化合物としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。イソシアネート基含有化合物の具体例としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジントリイソシアネート等を挙げることができる。
また上記の鎖延長剤以外にも、オキサゾリン化合物、フェニルカーボネート系またはフェニルエステル系化合物、ラクタム化合物、芳香族テトラカルボン酸無水物等を挙げることができる。
【0023】
本発明においては、衛生性に優れた鎖延長剤を使用することが特に望ましいことから、上記鎖延長剤の中でも特に、少なくとも1種のエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、少なくとも1種の非官能性(メタ)アクリルモノマー及び/又はスチレンモノマーとから生成したエポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマー、或いはカルボジイミド化合物を好適に用いることができる。
上記エポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーに使用する、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーの例としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方が挙げることができ、これらのモノマーの具体例には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の1,2−エポキシ基を含有するモノマーが含まれる。
また非官能性(メタ)アクリル酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げることができる。
非官能性スチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、ビニルピリジン、及びこれらの化学種の混合物を挙げることができる。
【0024】
本発明においては、上記エポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーとして、重量平均エポキシ官能基数(Mw/エポキシ当量)が4以上、特に4〜15の範囲にあるものを好適に使用できる。また重量平均分子量が4000乃至15000の範囲にあり、エポキシ当量が200乃至450g/molの範囲にあることが望ましい。
このような鎖延長剤としては、これに限定されないが、Joncryl ADR4370S,4368F/S,4368C/CS,4300(BASF社製)等を挙げることができる。
また好適なカルボジイミド化合物としては、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドが好ましく、具体的には、カルボジライト(日清紡社製)等を挙げることができる。
【0025】
本発明においては、かかる鎖延長剤をPET樹脂(A)に対して10〜1000ppm、特に100〜1000ppmの量で配合し、押出機で180〜320℃の温度で、0.1乃至120分間混練することにより、前述した長鎖分岐構造を有する高分子成分を適量、PET樹脂中に形成することができるが、極少量の鎖延長剤をPET樹脂中に均一に配合するために、鎖延長剤含有マスターバッチを予め作成し、これをPET樹脂に配合することが望ましい。
鎖延長剤含有マスターバッチの作成に際して、鎖延長剤の含有量が1〜15重量%の範囲にある場合は、ゲル化が生じやすく、ハンドリング性に劣るため、この範囲を避けて形成することが好ましく、0.5〜1重量%、或いは15〜30重量%の含有量であることが好適である。
【0026】
(層構成)
本発明の延伸成形容器は、前述したPET樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成る層を少なくとも一層有すればよく、該混合物の単層構造の容器とすることもできるし、或いは該混合物から成る層に他の熱可塑性樹脂層を組み合わせた多層構造の容器とすることもできる。
多層構造の容器の場合には、前述したPET樹脂が内外層を構成することが特に好ましい。該混合物から成る層及び必要により設けられる層の厚みは、層構成などによって一概に規定することはできないが、従来公知のポリエステル製延伸成形容器と同様に設定することができる。
【0027】
上記ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、延伸ブロー成形可能な樹脂であれば任意のものを使用でき、これに限定されないが、エチレン−ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン重合体などのオレフィン系樹脂や、キシリレン基含有ポリアミドなどのポリアミド樹脂等を挙げることができる。また、キシリレン基含有ポリアミドにジエン系化合物、遷移金属系触媒を配合した酸素吸収性ガスバリア樹脂組成物や、リサイクルポリエステル(PCR(使用済みボトルを再生した樹脂)、SCR(生産工場内で発生した樹脂)又はそれらの混合物)等も用いることができる。これらのリサイクルポリエステル樹脂は、前述した方法で測定した固有粘度(IV)が0.65乃至0.75dL/gの範囲にあることが好ましい。
【0028】
また内層又は外層と中間層を接着させるために、接着性樹脂を介在させることもできる。接着性樹脂としては、マレイン酸などをグラフト重合した酸変性オレフィン系樹脂やポリエステル樹脂、あるいは非晶性のポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂等を使用することができる。
また、本発明に用いる上記ポリエステル樹脂又は上記ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂には、最終成形品である二軸延伸容器の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、及びガスバリア性上昇のための無機層状化合物などを配合することができる。
【0029】
(製造方法)
本発明の延伸成形容器は、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂に鎖延長剤を10〜1000ppm配合して成る鎖延長剤含有PET樹脂から成り、該エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂中に、長鎖分岐構造を有する高分子成分が形成されている層を有するプリフォームを、延伸温度が110乃至120℃の条件で延伸ブロー成形することにより製造することができ、これにより、上述した特性を有する延伸成形容器を延伸速度にかかわらず、好適に製造することが可能となる。
【0030】
前述したように、延伸成形物の優れた耐熱性を付与し得る高温延伸条件下では、高速延伸を行わないと延伸バランスが悪化してしまうが、延伸速度を高めることには限界があるため、従来は低残留歪みという高温延伸のメリットを犠牲にして、低温(95乃至105℃)で延伸成形を行っていた。これに対して本発明の延伸成形容器の製造方法においては、PET樹脂に鎖延長剤を10〜1000ppm配合することにより、110乃至120℃という高温条件下で延伸する場合にも、延伸速度を可及的に高くすることなく、従来の延伸成形装置を用いて、延伸バランスに優れた延伸形成容器を得ることが可能となるのである。
【0031】
本発明の延伸成形容器の成形に用いるプリフォームは、PET樹脂に上述した鎖延長剤を10〜1000ppm、特に100〜1000ppm配合した混合物を用いて、射出成形或いは圧縮成形等従来公知の方法によってプリフォームを形成する。
本発明においては、成形されたプリフォームを延伸ブロー成形に際して、110乃至120℃、好適には115乃至120℃の延伸温度に加熱して延伸成形することが重要であり、延伸温度が上記範囲のような高温域にあることにより、残留歪みを低減することが可能になる。ここで、プリフォームの加熱温度、即ち延伸温度は、延伸ブロー成形される直前のプリフォームの外表面温度であり、放射温度計、熱画像測定器等によって測定することができる。
プリフォームを上記温度に均一且つ高速で加熱するためには、延伸ブローに先立って、プリフォームの内外から熱風、赤外線ヒーター、高周波誘導加熱された鉄芯の内部挿入等の手段で加熱することが好ましい。
【0032】
このプリフォームをそれ自体公知の延伸ブロー成形機中に供給し、60〜120℃の温度に調整された金型内にセットして、延伸棒の押し込みにより軸方向に延伸すると共に、ブローエアの吹き込みにより周方向へ延伸成形する。本発明方法における高温での延伸成形を効率的に行うためには、ブローエアとして100乃至150℃のホットエアの吹込みを行うことが好ましい。
尚、本発明においては、延伸速度にかかわらず、設定速度よりも高速で延伸した場合と同様の延伸バランスを得ることが可能である。
また、本発明で得られる低残留歪みと延伸バランスの両立という作用効果は、熱固定によらず得ることができるものであり、本発明の延伸成形容器の製造方法においては、熱固定を行わなくても、耐熱(熱間充填)用途や、耐熱圧用途容器のような60〜100℃の範囲の温度に対する耐熱性を発現できる。これにより、金型の頻繁な清掃が必要になったり、或いは成形回数が多くなったときの透明性の低下という、熱固定を行うことにより生じる問題が有効に解消されると共に、熱固定に要するエネルギーを低減することができるが、ボイル殺菌や、レトルト殺菌等に対応可能な100℃を超える高温に対する耐熱性を求めるような場合にまで、熱固定を行うことを排除するものではない。
【0033】
本発明においては、通常よりも高温で延伸ブロー成形することから高温延伸に起因するオリゴマー析出のおそれがあるため、これを防止すべく、金型は表面処理されたものを用いることが好ましい。また、離型性の上昇、成形後の変形抑制を図るために、離型時にクーリングエアとして、室温もしくは冷却エアをブローボトル内に循環させ成形物の冷却を確実に行うことが好ましい。
二軸延伸容器における延伸倍率は、面積倍率で1.5乃至25倍が適当であり、この中でも軸方向延伸倍率を1.2乃至6倍とし,周方向延伸倍率を1.2乃至4.5倍とするのが好ましい。
【0034】
前述した通り、ボイル殺菌、レトルト殺菌のように100℃を超える処理に対応可能な高い耐熱性を得るためには、延伸成形後150乃至230℃、好適には150乃至180℃の温度で熱固定することが好ましい。熱固定はそれ自体公知の手段で行うことができ、ブロー成形金型中で行うワンモールド法で行うこともできるし、ブロー成形金型とは別個の熱固定用の金型中で行うツーモールド法で行うこともできる。
熱固定後金型からの取り出しに際して冷風で冷却することがハンドリング性の点から望ましい。
また、本発明は延伸ブロー容器において延伸加工がなされている部位における耐熱性向上手法に関するものであり、容器口部など成形法上延伸加工がなされない部分においては、肉厚を厚めに設定することや、ブロー成形前に加熱結晶化することなどにより耐熱性を向上させることができる。
【実施例】
【0035】
1.材料
次に実施例にて使用した材料を示す。
(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂
PET1:RF553CT(日本ユニペット(株)製)、HomoPET(IV=0.83)
PET2:BK6180(日本ユニペット(株)製)、イソフタル酸共重合比率=1.5mol
%共重合PET(IV=0.83)
PET3:RT543CTHP(日本ユニペット(株)製)、HomoPET(IV=0.75)
【0036】
(2)改質材
鎖延長剤1:ADR-4368C(BASF社製)、エポキシ基含有スチレン−アクリル系共重合体。エポキシ当量=286g/mol、重量平均分子量(Mw)=6700、重量平均エポキシ官能基数(1分子中のエポキシ基数)=9〜10個
鎖延長剤2:ADR-4300(BASF社製)、エポキシ基含有スチレン−アクリル系共重合体。エポキシ当量=445g/mol、重量平均分子量(Mw)=5500、重量平均エポキシ官能基数(1分子中のエポキシ基数)=4〜5個
マイカ:LS-800(Merck社製)、レーザーマーキング用マイカ15μm以下分級品
【0037】
2.マスターバッチ樹脂ペレットの作成
(1)鎖延長剤マスターバッチ樹脂ペレットの作成
バレル設定温度を280℃とした造粒設備付帯二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用い、ポリエチレンテレフタレート樹脂と鎖延長剤成分の重量比がポリエチレンテレフタレート:鎖延長剤=99.5:0.5の割合で構成される非晶マスターバッチ樹脂ペレットを作成した。その後、非晶ペレットを150℃4時間真空下にて加熱し、結晶化及び乾燥処理を行った。
(2)マイカマスターバッチ樹脂ペレットの作成
鎖延長剤と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート樹脂とマイカの重量比がポリエチレンテレフタレート:鎖延長剤=90:10の割合で構成される非晶マスターバッチ樹脂ペレットを作成した。その後、非晶ペレットを150℃、4時間真空下にて加熱し、結晶化及び乾燥処理を行った。
【0038】
3.延伸ブローボトルの成形
上記マスターバッチ樹脂ペレットを同一基材の乾燥処理済みのポリエチレンテレフタレートと所定の混合比にてドライブレンドしたものを射出成形機(NN75JS: (株)新潟鐵工所)のホッパーへ供給し、バレル設定温度を280℃、サイクルタイム30秒にて射出成形して、重量28g、口径28mmのボトル用プリフォームを成形した。その後、口部を予め加熱により結晶白化させたプリフォームの胴部を、外側より赤外線ヒーターにて、内部から加熱鉄芯によって、所定の表面温度に加熱した後、二軸延伸ブローして、おおよその延伸倍率が縦3倍、横3倍、面積9倍となる容量500mlの図1に示す延伸ブローボトルを成形した。金型温度は実質高温金型ヒートセット条件ではない60〜120℃の範囲で設定した。また、ブローエアには、室温(20℃)及び140℃の圧縮空気を使用し、離型時には容器内に室温(20℃)のクーリングエアーを導入した。
【0039】
4.測定
(1)動的粘弾性測定におけるtanδ
ボトル胴部より10mm×30mm大の試験片を長辺方向がボトル高さ方向となるように切り出し、粘弾性スペクトロメータ(EXSTAR6000DMS:セイコーインスツルメンツ(株))を用いて測定を行った。測定条件を以下に示す。得られたtanδ曲線から、tanδ極大値及びtanδ極大温度を導出した。
測定モード : 引っ張り正弦波モード
試験片標点間距離:20mm
振動数:1Hz
最小張力:100mN
昇温プロファイル:25℃から210℃まで3℃/分にて昇温
【0040】
(2)延伸バランスの判定
予め、プリフォームの胴部にネックリングより底部に向かって、油性ペンにより10mm間隔の打点をしておき二軸延伸ブローした。このブローボトルにおいて、胴部における打点間隔が30mm程度に収まり均等であるものを延伸バランス良好と判定した。
【0041】
(3)胴部耐熱性の測定(TMA測定)
ボトル胴部より10mm×30mm大の試験片を長辺方向がボトル高さ方向となるように切り出し、粘弾性スペクトロメータ(EXSTAR6000DMS:セイコーインスツルメンツ(株))を用いて測定を行った。測定条件を以下に示す。
測定モード : F制御モード
試験片初期標点間距離:20mm
応力プロファイル:無加重
昇温プロファイル:25℃から210℃まで3℃/分にて昇温
得られた収縮量曲線より、以下式を用いて収縮率曲線を算出した。
S(収縮率:%)=X/L×100
X:各温度における収縮量(mm) L:初期標点間距離(mm)=20mm
測定開始時の収縮量を0とし、算出した収縮率曲線から、収縮率が0.5%に到達した際の温度(0.5%収縮率到達温度)を導出した。
【0042】
(4)胴部Haze
成形した延伸ブローボトルの胴部パネル部を切り出し、カラーコンピュータ(SM-4:スガ試験器(株))を用いて測定した。測定値は、任意の3点の平均値をとった。
【0043】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET1)と鎖延長剤成分(鎖延長剤1)からなる組成物において鎖延長剤の重量比率が100ppmとなるように、ポリエチレンテレフタレート樹脂とマスターバッチ樹脂ペレットをドライブレンドして射出成形機ホッパーに供給し、ボトル用プリフォームを射出成形した後、延伸ブローボトルを成形した。尚、この時のプリフォームの加熱温度、即ち延伸温度を115℃、ブロー金型のヒートセット温度を60℃、ブローエア温度を室温(20℃)に設定した。
このボトルの各部位を切り出し、上記の各測定を行った。
【0044】
(実施例2)
鎖延長剤の重量比率が200ppm、金型ヒートセット温度を100℃に設定すること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0045】
(実施例3)
金型ヒートセット温度を120℃に設定すること以外、実施例2と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0046】
(実施例4)
ブローエア温度を140℃に設定すること以外、実施例3と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0047】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート樹脂としてPET2を用い、鎖延長剤の重量比率を500ppmとすること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0048】
(実施例6)
鎖延長剤の重量比率を1000ppmとすること以外、実施例5と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0049】
(実施例7)
鎖延長剤成分として鎖延長剤2を用い、鎖延長剤の重量比率を200ppmとすること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0050】
(実施例8)
鎖延長剤の重量比率を20ppmとすること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。
【0051】
(比較例1)
鎖延長剤を含有させないこと以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成したところ、得られたボトルは延伸バランスが不良となり胴部が薄肉化し、実用上必要な肉厚分布を得ることができなかった。このためボトルの各測定は行わなかった。
【0052】
(比較例2)
鎖延長剤の重量比率を250ppmとすること、プリフォームの加熱温度、即ち延伸温度を100℃とすること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。その結果、TMA測定における0.5%収縮率到達温度が66.9℃と低い値となり耐熱性に劣る結果となった。
【0053】
(比較例3)
鎖延長剤の重量比率を9ppmとすること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成したところ、得られたボトルは延伸バランスが不良となり胴部が薄肉化し、実用上必要な肉厚分布を得ることができなかった。このためボトルの各測定は行わなかった。
【0054】
(比較例4)
鎖延長剤の重量比率を3000ppmとすること以外、実施例5と同様に延伸ブローボトルの作成を試みたが、ブロー成形時に底部バーストが発生しボトル形状に賦形できなかった。このためボトルの各測定は行わなかった。
【0055】
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレート樹脂としてPET3を用い、改質材としてマイカを用い、その重量比率を10,000ppm(1%)とすること以外、実施例1と同様に延伸ブローボトルを作成し、上記の各測定を行った。その結果、胴部延伸バランスや耐熱性は良好であったが、胴部Hazeが70%と不透明な外観であった。
【0056】
(参考例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET3)を射出成形機ホッパーに供給し、ボトル用プリフォームを射出成形した。このプリフォームを使用して、10,000本連続で延伸ブローボトルを成形した。この時のプリフォームの加熱温度、即ち延伸温度を100℃、ブロー金型のヒートセット温度を155℃、ブローエア温度を室温(20℃)に設定した。この際、ブロー金型の洗浄は一切行わなかった。10,000本連続で成形した後に得られたボトルの各部位を切り出し、上記の各測定を行った。その結果、胴部延伸バランスや耐熱性は良好であったが、金型表面に付着したオリゴマー成分の形状転写によって胴部Hazeが22.5%と不透明な外観であった。
表1に各ボトルの作成条件と測定値の値を示す。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の延伸成形容器においては、耐熱性、透明性に優れていると共に、延伸バランスに優れて、肉厚分布が安定化しているため、座屈強度などの機械的強度に優れていると共に、うねりやヒケなどの外観異常も十分抑制されていることから、熱間充填が必要な飲料や、ホットベンダーに適用される飲料等の容器に好適に利用することができる。
また本発明の延伸成形容器の製造方法においては、汎用PET樹脂に少量の鎖延長剤を配合することにより、熱固定を行わなくても、優れた耐熱性を有する延伸成形容器を成形できるため、金型の頻繁な清掃や金型汚れに起因する透明性の低下と言う問題を生じることがなく、また熱固定に伴うエネルギーを低減できるため、生産性、経済性にも優れており、大量生産される汎用容器に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から成る層を有する延伸成形容器において、
前記層が、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該鎖延長剤(B)がエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)に対して10〜1000ppmの量で含有されていると共に、少なくとも容器胴部の動的粘弾性測定におけるtanδ極大値の値が0.3以下であることを特徴とする延伸成形容器。
【請求項2】
前記鎖延長剤(B)が、重量平均エポキシ官能基数が4以上であるエポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーである請求項1記載の延伸成形容器。
【請求項3】
少なくとも容器胴部のHazeが、15%以下である請求項1又は2記載の延伸成形容器。
【請求項4】
エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)の混合物から成り、該混合物中の鎖延長剤(B)の含有量が10〜1000ppmであるプリフォームを、110乃至120℃の条件で一段ブロー成形することを特徴とする延伸成形容器の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195188(P2011−195188A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66181(P2010−66181)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】