説明

耐衝撃性共重合体のための防汚剤及び方法

異相共重合体を製造するための方法が提供される。本方法には、防汚剤を、第1重合反応器と直列に作動する第2重合反応器に導入することが含まれる。防汚剤は、多成分防汚剤であってもよいし、かつ/又はコーティング剤であってもよい。いずれかの防汚剤を供給することにより、重合中の反応器の汚れが抑制されることによって、Fc値が約10%〜約50%の異相共重合体の製造が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2008年12月26日出願の米国特許仮出願第61/140,909号に対する優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、異相共重合体(heterophasic copolymers)を製造するための方法に関し、該方法は、反応器の汚れが減少したか又はないことを示し、該異相共重合体はその反応器から製造される。
【背景技術】
【0003】
例えば耐衝撃性共重合体などの異相ポリマーは、連続したポリマー相と、連続したポリマー相全体にわたって分散した不連続のポリマー相を特徴とする。従来の耐衝撃性共重合体の製造方法は、二段階プロセスで実施される。第1のポリマー(連続相)は、1つ又はそれ以上の反応器で製造される。この第一段階の生成物を、次に第1反応器から第2反応器に移し、そこで第2のポリマー(不連続相)を生成し、耐衝撃性共重合体を形成する連続相のマトリックスの中に組み込む。
【0004】
第2のポリマーは、一般に本来弾性又はゴム状である。このことにより、第二段階の間の多くの加工上の問題が引き起こされる。第2のポリマーの粘着性及び他着性により、形成された耐衝撃性共重合体の粒子の凝集並びに/或いは、第2重合反応器の壁、及びその他の内部表面、及び第2反応器に動作するように連通している構造への付着がもたらされる。かかる反応器の汚れは、生産効率に支障を来す反応器の停止を引き起こすために、特に問題である。
【0005】
望ましいのは、異相ポリマーを製造する間の汚れの抑制及び又は排除であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、異相共重合体を製造するための方法及びこれらの方法から製造される異相共重合体に関する。本明細書に開示される方法は、異相共重合体の形成の間の反応器の汚れを抑制して、ゴム含有量の高い異相共重合体の製造を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、共重合体を製造するための方法が提供される。この方法には、活性ポリマーを第1重合反応器から第2重合反応器に導入することが含まれる。第2重合反応器中で、活性ポリマーを重合条件下で少なくとも1種のオレフィンと接触させる。これにより、約10%〜約50%のFc値を有する異相共重合体が形成される。この方法には、多成分防汚剤が異相共重合体中に約1ppm〜約200ppmの濃度で存在するような速度で、多成分防汚剤を第2重合反応器に添加することがさらに含まれる。
【0008】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態では、活性ポリマーを第1重合反応器から第2重合反応器に導入すること、及び活性ポリマーを重合条件下で少なくとも1種のオレフィンと接触させることを含む、共重合体を製造するための方法が提供される。これにより、第2反応器中で耐衝撃性共重合体の粒子が形成される。この方法はまた、コーティング剤を第2重合反応器に添加すること、及び粒子をコーティング剤で被覆することも含む。
【0009】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体が提供される。耐衝撃性共重合体には、連続相と、連続相の中に分散した不連続相で構成される粒子が含まれる。耐衝撃性共重合体の粒子には、被膜も含まれる。被膜は、粒子の外部表面上にある。
【0010】
一実施形態では、被膜には、次の成分:高分子量ポリグリコール、デンドリマー、電子供与基をもつ高分子量ポリマー、アルコキシシラン、活性制限剤、及びそれらの任意の組合せの1つ又はそれ以上が含まれる。
【0011】
一実施形態では、被膜は、少なくとも1つの粒子の外側表面全体、又は実質的に外側表面全体を取り囲んでいる。
【0012】
一実施形態では、被膜の厚さは約0.01μm〜約200μmである。
【0013】
連続相は、プロピレンホモポリマー、プロピレン/オレフィン共重合体、又はプロピレン/エチレン共重合体であってよい。不連続相は、エチレンホモポリマー、エチレン/オレフィン共重合体又はプロピレン/エチレン共重合体であってよい。
【0014】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子には、プロピレンホモポリマー中に分散したプロピレン/エチレン共重合体が含まれる。
【0015】
一実施形態では、粒子は、その内部にコーティング剤を含まない。
【0016】
本開示の利点は、異相共重合体を製造するための改良された方法である。
【0017】
本開示の利点は、粒子の付着及び/又は粒子の凝集がほとんど又は全くない、高いゴム含有量の耐衝撃性共重合体を製造する重合方法である。
【0018】
本開示の利点は、完全に又は部分的に反応器の汚れを抑制する異相共重合体を製造するための方法である。
【0019】
本開示の利点は、反応器の汚れの抑制によって製造休止時間を減少させる、異相共重合体製造方法である。
【0020】
本開示の利点は、大きい重量パーセントのゴム相を含有する無臭の耐衝撃性共重合体である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本開示の実施形態に従うポリマー粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0022】
【図2】ポリマー粒子のSEMである。
【0023】
【図3】本開示の実施形態に従う非凝集ポリマー粒子のSEMである。
【0024】
【図4】本開示の実施形態に従うポリマー微粒子で被覆されたポリマー粒子の断面図に沿ったSEM−後方散乱電子像(BEI)である。
【0025】
【図5】凝集ポリマー粒子の断面図に沿ったSEM−BEI画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、異相共重合体を製造するための方法、及びこれらの方法から製造されるポリマーに関する。
【0027】
一実施形態では、共重合体を製造するための方法が提供される。この方法には、活性ポリマーを第1重合反応器から第2重合反応器に導入すること、及び第2重合反応器中で活性ポリマーを少なくとも1種のオレフィンと重合条件下で接触させることが含まれる。これにより、約10%〜約50%のFc値を有する異相共重合体が形成される。この方法は、多成分防汚剤が異相共重合体中に約1ppm〜約200ppmの濃度で存在するような速度で、多成分防汚剤を第2重合反応器に添加することをさらに含む。
【0028】
本明細書において、「活性ポリマー」とは、重合条件下でオレフィンに曝露されるとさらに重合する能力のある、(一般にその中に組み込まれた)一定量の活性触媒を含有するポリマーである。活性ポリマーは、第1反応器で行われた前の重合方法の生成物である。活性触媒は、チーグラー・ナッタ触媒、拘束幾何触媒、メタロセン触媒、金属中心のヘテロアリールリガンド触媒、及びそれらの組合せであってよい。一実施形態では、活性触媒は、チーグラー・ナッタ触媒である。活性ポリマーは、SCA又はALA/SCA混合物の存在下で製造されても、そうでなくてもよい。もう一つの実施形態では、第1重合反応器及び第2重合反応器は連続して動作し、それにより第1重合反応器の流出物が第2重合反応器に装入され、1つ又はそれ以上の追加の(又は異なる)オレフィンモノマーが第2重合反応器に添加されて重合を継続する。
【0029】
活性ポリマーは、プロピレン系ポリマーであってもエチレン系ポリマーであってもよい。一実施形態では、活性ポリマーは、プロピレン系ポリマー、例えばプロピレン−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体、又はプロピレンホモポリマーなどである。もう一つの実施形態では、活性ポリマーは、プロピレンホモポリマーである。
【0030】
一実施形態では、活性ポリマーには、約2重量%〜約30重量%、又は少なくとも6重量%のポリマー微粒子が含まれる。重量パーセントは、活性ポリマーの粒子の総重量に基づく。本明細書において、「微粒子」又は「ポリマー微粒子」は、サイズが約10nm〜約200μmのポリマー粒子である。ポリマー微粒子は、活性ポリマーであってもなくてもよい。
【0031】
本明細書において、「重合条件」は、触媒とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに適した重合反応容器内の温度パラメータ及び圧力パラメータである。次に、反応後処理のために反応器の出力を戻す。重合方法は、気相重合(すなわち、流動床重合、気−固、気−液−固、及び/又は液−固相重合)、スラリー重合(攪拌反応器、スラリー反応器)、又は、1個、もしくは1個より多くの反応器で動作するバルク重合方法であってよい。一実施形態では、重合は、連続して動作する2つの重合反応器によって起こる。
【0032】
本方法には、第2重合反応器中で活性ポリマーを少なくとも1種のオレフィンと接触させることが含まれる。1つ又はそれ以上のオレフィンモノマーを、第2重合反応器で、活性ポリマーと反応して異相共重合体を形成するために導入してよい。適したオレフィンモノマーの限定されない例としては、エチレン、プロピレン、C4−20α−オレフィン類、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及び同類のものなど;C4−20ジオレフィン類、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)及びジシクロペンタジエンなど;スチレン、o−、m−、及びp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン(vinylnapthalene)を含む、C8−40ビニル芳香族化合物;並びにハロゲン−置換C8−40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンなどが挙げられる。
【0033】
活性ポリマーは、第2重合反応器中で少なくとも1種のオレフィンと接触して、異相共重合体を製造するか或いは形成する。本明細書の使用において、「異相共重合体」は、連続したポリマー相(マトリックス相とも呼ばれる)及び連続したポリマー相の内部に分散した不連続ポリマー相(弾性相又はゴム相、又はゴムとも呼ばれる)を有する多相ポリマーである。異相共重合体は、2より多くのポリマー相を含んでよい。異相共重合体の1つの種類が耐衝撃性共重合体である。異相共重合体は、約10%〜約50%のFc値を有する。一実施形態では、異相共重合体は、約15%よりも大きい、又は約20%よりも大きい、又は約30%よりも大きい、又は約40%よりも大きいFc値を有する。さらなる実施形態では、異相共重合体は、約15%よりも大きく約50%まで、又は15%よりも大きく約40%までのFc値を有する。本明細書の使用において、「部分共重合体(fraction copolymer)」(「Fc」)は、異相共重合体に存在する不連続相の重量百分率である。Fc値は、異相共重合体の総重量に基づく。本明細書において、「高ゴム(high-rubber)」共重合体は、Fc値が約30%よりも大きい、又は約30%よりも大きく約50%までの異相共重合体である。一実施形態では、高ゴム共重合体には、プロピレンホモポリマー連続相及びプロピレン/エチレン共重合体不連続相が含まれる。高ゴム共重合体のEc値は、約50%未満、又は約10%〜約50%未満、又は約40%〜約45%であり得る。
【0034】
一実施形態では、異相共重合体は、プロピレン系ポリマーである連続相、及びプロピレン/エチレン共重合体である不連続相を含むプロピレン耐衝撃性共重合体である。プロピレン耐衝撃性共重合体は、15%よりも大きい、又は約15%よりも大きく約50%までのFc値を有する。15%よりも大きいFcをもつ耐衝撃性共重合体は、本来ゴム状であり、かかる耐衝撃性共重合体を反応器の汚れ及び/又は凝集を起こしやすくする付着に向かう傾向を有する。「汚れ」又は「ポリマーの汚れ」又は「反応器の汚れ」は、本明細書の使用において、ポリマー粒子の相互の付着(凝集)及び/又は重合反応器の内部表面へのポリマー粒子の付着及び/又は重合反応器と作動するように連通している構造へのポリマー粒子の付着である。反応器構成材/構造の限定されない例としては、反応器の内側の側壁、パイプ、熱交換器、分散板、及びコンプレッサーが挙げられる。
【0035】
一実施形態では、異相共重合体は、粘着性のポリマーである。用語「粘着性のポリマー」は、本明細書の使用において、粘着温度又は軟化温度よりも低い温度では微粒子であるが、粘着温度又は軟化温度よりも高い温度で凝集するポリマーである。用語「粘着温度」は、流動床において粒子の過剰な凝集により流動化又は攪拌が停止する温度として定義される。凝集は、自発的であるか、又は短期間の沈殿で起こる可能性がある。
【0036】
ポリマーは、その化学的性質又は機械的性質に起因して本質的に粘着性であってもよいし、製造サイクル中に粘着性の局面を通過してもよい。粘着性ポリマーは、それらが圧密化されて元の粒子よりもはるかに大きなサイズの凝集塊となる傾向のために、非自由流動ポリマーとも呼ばれる。この種類のポリマーは、気相流動床反応器において許容できる流動性を示す;しかし、一旦動きが停止すると、分散板を通過する流動化ガスによりもたらされる付加的な機械力は、生じる凝集塊を崩壊させるには不十分であり、床は再流動化しない。その上、攪拌床反応器では、粒子の凝集は、反応器における機械的混合作用を著しく妨害し得る。これらのポリマーは、貯蔵時間0での自由流動のための最小のビン開口部が2フィートであり、5分より長い貯蔵時間での自由流動のための最小のビン開口部が4〜8フィート又はそれ以上であるものに分類される。
【0037】
本方法には、多成分防汚剤を第2反応器に添加することが含まれる。本明細書の使用において、「多成分防汚剤」は、反応器の汚れ、つまり、(i)異相共重合体の凝集及び/又は(ii)異相共重合体の第2重合反応器の内部表面への付着を抑制、防止、又は減少させる能力のある2つ又はそれ以上の成分を含有する組成物である。内部表面として、重合反応器構成材、例えば、反応チャンバ、熱交換器、コンプレッサー、パイプ、サイクルパイプ、反応器プレート、及び/又はボトムヘッドの表面などが含まれる。多成分防汚剤の防汚有効性、すなわち、凝集/粒子付着の抑制、防止、又は減少の程度は、全体的(すなわち汚れの完全な防止)でもよいし、反応器処理パラメータと併せて使用される多成分防汚剤の量により決定付けられる、単一成分の防汚剤及び/又は防汚剤無しの場合の汚れと比較した場合に、部分的(すなわち、汚れの減少)であってもよい。
【0038】
一実施形態では、多成分防汚剤は、(i)活性制限剤(ALA)及び(ii)選択性制御剤(SCA)で構成される。一実施形態では、多成分防汚剤は、ALA及びSCAの混合物(すなわちプレミックス)であってよく、この混合物は第2重合反応器に添加されてよい。もう一つの実施形態では、多成分防汚剤は、第2重合反応器へのALAの分離添加及びSCAの分離添加により、第2重合反応器中で現場で形成されてよい。
【0039】
一実施形態では、ALAは、カルボン酸エステル、ジエーテル、ジオールエステル、及びそれらの組合せであってよい。カルボン酸エステルは、脂肪族もしくは芳香族、モノ−もしくはポリ−カルボン酸エステルであり得る。適したモノカルボン酸エステルの限定されない例としては、エチル及びメチルベンゾエート、p−メトキシエチルベンゾエート、p−エトキシエチルベンゾエート、p−エトキシエチルベンゾエート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアセテート、p−クロロエチルベンゾエート、p−アミノヘキシルベンゾエート、イソプロピルナフテナート、n−アミルトルアート、エチルシクロヘキサノエート及びプロピルピバラートが挙げられる。
【0040】
適したポリカルボン酸エステルの限定されない例としては、ジメチルフタラート、ジエチルフタラート、ジ−n−プロピルフタラート、ジイソプロピルフタラート、ジ−n−ブチルフタラート、ジイソブチルフタラート、ジ−tert−ブチルフタラート、ジイソアミルフタラート、ジ−tert−アミルフタラート、ジネオペンチルフタラート、ジ−2−エチルヘキシルフタラート、及びジ−2−エチルデシルフタラートが挙げられる。
【0041】
脂肪族カルボン酸エステルは、C4−30脂肪酸エステルであってよく、モノ−又はポリ−(2つ又はそれ以上の)エステルであってよく、直鎖状又は分枝状であってよく、飽和又は不飽和であってよく、かつ、それらのあらゆる組合せであってよい。C4−30脂肪酸エステルはまた、1つ又はそれ以上の第14、15又は16族ヘテロ原子含有置換基で置換されてもよい。適したC4−30脂肪酸エステルの限定されない例としては、脂肪族C4−30モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C8−20 モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C4−20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1−4アリルモノ−及びジエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1−4アルキルエステル、並びに、C2−100(ポリ)グリコール又はC2−100(ポリ)グリコールエーテルのC4−20モノ−もしくはポリカルボン酸誘導体が挙げられる。さらなる実施形態では、C4−30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリステート、ジ−n−ブチルセバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジ−ミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジ−ラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−もしくはジ−オレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2−40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ−エステル、及びそれらの混合物であってよい。さらなる実施形態では、C4−30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステート又はジ−n−ブチルセバケートである。
【0042】
一実施形態では、活性制限剤にはジエーテルが含まれる。該ジエーテルは、次の構造(I):
【化1】

(式中、R〜Rは、相互に独立に、20個までの炭素原子を有するアルキル、アリール又はアルキル基であり、それらは場合により第14、15、16、又は17族ヘテロ原子を含有してよく、かつ、R及びRは、水素原子であり得る)
によって表されるジアルキルエーテルであってよい。該ジアルキルエーテルは、線状又は分枝状であってよく、かつ、次の群:1〜18個の炭素原子、及び水素を有する、アルキル基、脂環式基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基の1個又はそれ以上を含んでよい。
【0043】
一実施形態では、活性制限剤には、次の構造(II):
【化2】

(式中、R及びR’は、同じであっても異なっていてもよく、R及び/又はR’は、以下の群:場合により下テロ原子を含有する、線状又は分枝状アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアルキルアリール基の1つ又はそれ以上を含む)を有するスクシネート組成物が含まれる。1つ又はそれ以上の環構造が、2位及び3位の炭素原子のうちの1個又は両方を介して形成され得る。
【0044】
一実施形態では、活性制限剤には、次の構造(III):
【化3】

(式中、nは、1から5までの整数である。R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、各々は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アリル、フェニル、又はハロフェニル基から選択されてよい。R、R、R、R、R、及びRは、同じであっても異なっていてもよく、各々は、水素、ハロゲン、1〜20個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビルから選択されてよい。R〜R基は、場合により、炭素、水素又はその両方を置換する1個又はそれ以上のヘテロ原子を含んでよく、該ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、リン及びハロゲンから選択される。R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、かつ、いずれかのフェニル環の2位、3位、4位、5位、及び6位の炭素原子に結合されてよい)によって表されるジオールエステルが含まれる。
【0045】
多成分防汚剤には、SCAが含まれる。一実施形態では、SCAは、1つ又はそれ以上のアルコキシシランである。多成分防汚剤には、一般式:SiR(OR’)4−mを有する1つ又はそれ以上のアルコキシシランが含まれてよく、式中、Rは、出現ごとに独立に、水素、或いは、場合により1つ又はそれ以上の第14、15、16、又は17族ヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の置換基で置換されているヒドロカルビル又はアミノ基であり、Rは、水素及びハロゲンを計算に入れずに20個までの原子を含有し、R’は、C1−20アルキル基であり、かつ、mは、0、1、2又は3である。一実施形態では、Rは、C6−12アリール、アルキルもしくはアラルキル、C3−12シクロアリル(cycloallyl)、C3−12分枝アルキル、又はC3−12環状アミノ基であり、R’は、C1−4アリル(allyl)、かつ、mは、1又は2である。適したシランの限定されない例としては、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ(perhydroisoquinolino))ジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、テトラメチルオルトシリケート、テトラメトキシエトキシオルトシリケート、及び前述の任意の組合せが挙げられる。一実施形態では、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、又はn−プロピルトリメトキシシラン、及びそれらの任意の組合せである。さらなる実施形態では、シランは、ジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0046】
一実施形態では、ALA及び/又はSCAは、反応器の中に別々に添加され得る。もう一つの実施形態では、ALA及びSCAは、事前に一緒に混合され、その後混合物として反応器に添加され得る。混合物中には、1よりも多くのALA又は1よりも多くのSCAが使用され得る。一実施形態では、混合物は、次の:ジシクロペンチルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート及びポリグリコール、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、n−プロピルトリメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、ジメチルジメトキシシラン及びメチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びn−プロピルトリエトキシシラン及びイソプロピルミリステート、並びにジシクロペンチルジメトキシシラン及びテトラエトキシシラン及びイソプロピルミリステート、並びに前述の任意の組合せの1つ又はそれ以上であってよい。
【0047】
一実施形態では、ALA及びSCAは、無臭の異相共重合体を形成するよう選択される。一実施形態では、多成分防汚剤には、脂肪族C8−20モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステートなど)及びアルコキシシランが含まれ、本方法は無臭の異相共重合体を形成する。
【0048】
本方法には、多成分防汚剤を第2重合反応器に添加し、約10%〜約50%、又は15%より大きく約50%までののFc値を有する異相共重合体を形成することが含まれる。
【0049】
本方法には、多成分防汚剤が、約1ppm〜約200ppm、又は約5ppm〜約100ppm、又は約10ppm〜約50ppm、又は約25ppmの濃度でフォルマント(formant)異相共重合体中に存在するような速度で多成分防汚剤を第2重合反応器に添加することが含まれる。多成分防汚剤の濃度は、異相共重合体の総重量に基づく。多成分防汚剤は、第2重合反応器に間欠的に又は連続的に添加されてよい。一実施形態では、多成分防汚剤は、連続的に添加される。さらなる実施形態では、多成分防汚剤の第2重合反応器への連続添加は、約20ppm〜約30ppm、又は約25ppmのフォルマント異相共重合体中の多成分防汚剤濃度を確保し始める。
【0050】
一実施形態では、本方法には、多成分防汚剤が約10ppm〜約50ppmの濃度で異相共重合体中に存在するような速度で多成分防汚剤を添加すること、及び、15%より大きく約40%までのFc値をもつ異相共重合体を形成することが含まれる。
【0051】
一実施形態では、本方法には、多成分防汚剤によって第2重合反応器内の汚れを抑制することが含まれる。本出願人らは、驚くことに、かつ、思いがけなく、第2重合反応器への多成分防汚剤の添加が、第2重合反応器中で汚れ(シーティング、粒子付着、及び/又は粒子凝集を含む)を抑制することにより反応器の操作性を改善することを見出した。第2重合反応器への多成分防汚剤の直接添加は、Fc値の高い(すなわちゴム含有量の高い)異相共重合体の製造を可能にする。本多成分防汚剤を直接に第2反応器の中に添加することにより、ALA/SCA混合物を用いて生成され、その後に第2反応器に導入される活性ポリマーと比較してより大きい防汚能が得られることを本出願人らはさらに見出した。活性ポリマー中に存在する残留ALA/SCA混合物は、10%よりも大きい、又は15%よりも大きいFc値をもつ異相共重合体に関して、第2反応器中で汚れを抑制することには効果がない傾向がある。
【0052】
一実施形態では、多成分防汚剤の供給によって、反応器の汚れ及び/又は粒子凝集のない、約15%よりも大きい、又は約20%よりも大きい、又は約30%よりも大きい、又は15%〜約50%よりも大きいFc値をもつ異相共重合体の製造が可能になる。驚くことに、多成分防汚剤はフォルマント異相共重合体の特性にマイナスの影響を与えないことが見出された。
【0053】
さらに、本多成分防汚剤を利用することにより、相乗的に防汚能が得られ、その上同時に第2反応器での改良された反応器方法制御が得られる。もう一つの実施形態では、本方法には、第2反応器において汚れを抑制すること、及び同時に多成分防汚剤によって異相共重合体に存在する不連続相の量を制御することが含まれる。
【0054】
多成分防汚剤の多様な性質により、方法制御能の増強がもたらされる。一実施形態では、多成分防汚剤の第2重合反応器への添加速度又は供給量の調節を、第2反応器中で生成されるゴム相の量を制御するために利用することができる。
【0055】
一実施形態では、第2反応器への多成分防汚剤の添加を調節して、フォルマント異相共重合体のFc値を相応じて調節することができる。一実施形態では、本方法には、第2重合反応器に添加される多成分防汚剤の添加を増加させるか、或いはその量を増加させること、及び、異相共重合体のFc値を低下させることが含まれる。一実施形態では、本方法には、多成分防汚剤が25ppmよりも大きい濃度か又は約25ppm〜約200ppmの濃度で異相共重合体中に存在するように多成分防汚剤を第2重合反応器に供給するか、或いは添加すること、並びに、約40%未満、又は約30%未満、又は20%未満、又は約15%未満、又は約10%未満、又は約5%未満のFc値をもつ異相共重合体を形成することが含まれる。
【0056】
一実施形態では、本方法には、第2重合反応器に添加される多成分防汚剤の添加を減少させるか、或いはその量を減少させること、及び、異相共重合体のFc値を増加させることが含まれる。一実施形態では、本方法には、多成分防汚剤が25ppm未満、又は25ppm未満から約0.1ppmまで、又は20ppm未満から約5ppmまでの濃度で異相共重合体中に存在するように多成分防汚剤を第2重合反応器に供給するか、或いは添加すること、並びに、約20%よりも大きい、又は20%よりも大きく約50%までのFc値をもつ異相共重合体を形成することが含まれる。
【0057】
ALA対SCAの比は変動し得る。多成分防汚剤は、約0.1モル%〜約99.9モル% ALA及び約99.9モル%〜約0.1モル% SCA(或いはそれらの間の任意の値又は下位範囲)を含むことができる。一実施形態では、ALA及びSCAを、個別に反応器に入れて、約0.1モル%〜約99.9モル%のALAと、約99.9モル%〜約0.1モル%のSCAを有する多成分防汚剤を現場で得ることができる。
【0058】
一実施形態では、本方法には、ALA:SCA比を調節すること、及び、異相共重合体に存在する不連続相の量を制御することが含まれる。ALAの量を増加させること(及びSCAの量を低下させること)は、形成されるゴム相の量を低下させる。SCAの量を増加させること(ALAの量を低下させること)は、形成されるゴム相の量を増加させる。例えば、ALAの量を増加させること(それによりSCAの量を低下させること)は、生成される不連続相ポリマーの量を低下させる。
【0059】
一実施形態では、活性ポリマーは、プロピレン系ポリマー、例えば、プロピレンホモポリマーなどである。この方法には、第2重合反応器中で活性プロピレンホモポリマーをエチレンと(単独で、又はプロピレンと組み合わせて)接触させて、プロピレン耐衝撃性共重合体を形成することが含まれる。この方法にはまた、多成分防汚剤が、約1ppm〜約200ppm、又は約5ppm〜約100ppm、又は約10ppm〜約50ppmの濃度でプロピレン耐衝撃性共重合体に存在するような速度で多成分防汚剤を第2重合反応器に添加することが含まれる。該濃度は、プロピレン耐衝撃性共重合体の総重量に基づく。
【0060】
一実施形態では、プロピレン耐衝撃性共重合体には、プロピレン/エチレン共重合体が分散したプロピレンホモポリマー連続相(不連続相)が含まれる。
【0061】
一実施形態では、プロピレン耐衝撃性共重合体のFc値は、約1%〜約50%、又は約10%よりも大きい、又は約15%よりも大きい、又は約20%よりも大きい、又は約30%よりも大きい、又は約40%よりも大きい。
【0062】
一実施形態では、プロピレン耐衝撃性共重合体は、約0.1%〜約90%、又は約1%〜約80、又は約10%〜約60%のEc値を有する。本明細書の使用において、「エチレン含量」(「Ec」)は、異相ポリマーの不連続相に存在するエチレンの重量パーセントである。Ec値は、不連続(又はゴム)相の総重量に基づく。さらなる実施形態では、本方法には、15%よりも大きいFc値及び約1%〜約80%のEc値を有するポリプロピレン耐衝撃性共重合体の第2反応器中において、多成分防汚剤によって、汚れを抑制することが含まれる。
【0063】
一実施形態では、本方法には、異相共重合体の粒子を形成すること、及び、該粒子を多成分防汚剤で被覆することが含まれる。粒子は、約0.001インチ〜約0.5インチ又は約0.015インチ〜約0.05インチのD50値を有し得る。もう一つの実施形態では、形成されたポリプロピレン耐衝撃性共重合体の粒子は、約0.025インチのD50値を有する。本明細書の使用において、「D50」は、サンプル粒子体積の50%が、提示される粒度範囲を超えているような粒子分布である。
【0064】
多成分防汚剤の供給は、第2反応器を汚さず、第2反応器の内部表面に付着せず(すなわち、熱交換器、循環ガスコンプレッサー、反応器プレート、及び/又は気相重合反応器ボトムヘッドに付着しない)、かつ、凝集しない異相共重合体を生成する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、多成分防汚剤は、第2重合反応器の内部表面を被覆し、かつ/又はフォルマント異相共重合体粒子を被覆すると考えられる。このように、多成分防汚剤は、汚れ、例えば、粒子凝集及び/又は粒子表面付着などを抑制する。
【0065】
一実施形態では、多成分防汚剤が第2重合反応器に存在することは、単一成分を有する防汚剤と比較した場合に、(i)流動床温度、(ii)反応器内部の静的活性、及び(iii)床温マイナス露温度の制御(約1℃〜約6℃の床温−露温度を維持する)の方法制御の強化を有利にもたらす。
【0066】
本開示は、共重合体を製造するためのもう一つの方法を提供する。一実施形態では、共重合体を製造するための方法が提供される。この方法には、活性ポリマーを第1重合反応器から第2重合反応器に導入することが含まれる。活性ポリマーは、第1重合反応器で生成され、既に開示されるように第2重合反応器に導入される。第2反応器では、活性ポリマーを重合条件下で少なくとも1種のオレフィンと接触させて、第2反応器中で耐衝撃性共重合体の粒子を形成する。この方法は、コーティング剤を第2重合反応器に添加すること、及び粒子をコーティング剤で被覆することをさらに含む。
【0067】
各々の粒子は、粒子の内部を規定するか、或いは境界となる外側表面を有する。本明細書の使用において、「コーティング剤」は、重合条件下でフォルマント異相共重合体粒子の外側表面に付着するか、或いは結合する物質である。コーティング剤は、液体、固体微粒子、又は微粉化された半固体材料であってよい。コーティング剤は、純粋形態で、溶液形態で、又は懸濁液形態で添加されてよい。
【0068】
コーティング剤は、第2反応器中で生成された共重合体粒子の外側表面に接触し付着する。本コーティング剤は、(i)フォルマントポリマー粒子を被覆すると同時に(ii)フォルマント共重合体粒子に不都合な特性を与えないことにより、反応器の汚れを抑制する。従って、粒子に被膜を提供することにより、反応器の運転停止が減り、生産効率が増加する。
【0069】
一実施形態では、コーティング剤は、次の:高分子量ポリグリコール、デンドリマー、及び電子供与基をもつ高分子量ポリマー、SCA、ALA、及び前述のものの任意の組合せの1つ又はそれ以上から選択される。一実施形態では、コーティング剤は、単独で、又は1つ又はそれ以上の追加の成分と組み合わせた、高分子量(「HMW」)ポリグリコールである。本明細書の使用において、「高分子量ポリグリコール」は、約500〜約200,000の分子量を有するポリグリコールである。適したHMWポリグリコールの限定されない例としては、グリセロール、混合グリセリド、ポリ(アルキレン)グリコール(すなわち、エチレングリコール)ポリ(アルコキシ)(アルキレン)グリコール(すなわちメトキシポリエチレングリコール)、及び/又は約500〜約200,000の分子量を有するポリグリコールエーテル(C2−100ポリグリコールエーテルなど)が挙げられる。
【0070】
もう一つの実施形態では、コーティング剤は、高度に分枝した分子、例えば、デンドリマーなどである。「デンドリマー」(又は「高密度星型ポリマー」)は、本明細書の使用において、共通のコア核から放射状に伸びる少なくとも3つの別個の分枝を有するポリマーである。個々の分枝は、末端官能基を有しても有さなくてもよい。一実施形態では、分枝には、末端官能基が含まれる。デンドリマーに適した官能基の限定されない例としては、次の群:アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、アルケニル、アリル、ビニル、アミド、ハロ、尿素、オキシラニル、アジリジニル、オキサゾリニル、イミダゾリニル、スルホナト、ホスホナト、イソシアナト及びイソチオシアナトが挙げられる。適したデンドリマーのさらに限定されない例としては、次の:ポリアミドアミンデンドリマー、リンデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、及びポリプロピレンイミンデンドリマーの1つ又はそれ以上が挙げられる。
【0071】
一実施形態では、コーティング剤は、少なくとも1つの電子供与基を含み、少なくとも約300、又は約300〜約200,000の分子量を有する高分子量(「HMW」)ポリマーであってよい。電子供与基をもつ、適したHMWポリマーの限定されない例としては、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、2,2’−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−(2−メチルプロピリデン)ビス[4,6−キシレノール]、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、ポリ(ジシクロペンタジエン−コ−p−クレゾール)、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、トリエチレングリコールビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、3,3’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−n,n’−ヘキサメチレンジプロピオンアミド、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジイルビスホスホニット、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオナート、ジドデシル3,3’−チオジプロピオナート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(tert−ブチル)−6−(sec−ブチル)フェノール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸、2−(5−クロロ−2−ベンゾトリアゾリル)−6−tert−ブチル−p−クレゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、ポリ−{[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}、ポリ(n−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジルスクシネート)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、及び前述のものの任意の組合せが挙げられる。
【0072】
一実施形態では、コーティング剤は、粒子の内部に存在しない。言い換えれば、粒子内部は、コーティング剤がない。特定の理論に縛られることを望むものではないが、前述のコーティング剤の嵩高性(bulkiness)が、コーティング剤が耐衝撃性共重合体粒子の細孔/微小孔へ移動することを妨げていると考えられる。驚くことに、かつ予期せぬことに、本コーティング剤が、粒子表面の外部のコーティング剤を保持し、かつ同時にコーティング剤の粒子の内部への移動及び/又は移行を防ぐ嵩高性(分子の嵩高性及び/又はコーティング剤の物理的形態(すなわち粉末)中の嵩高性)を有することが見出された。
【0073】
一実施形態では、コーティング剤は、次の:高分子量ポリグリコール、デンドリマー、及び電子供与基をもつ高分子量ポリマーの2つ又はそれ以上の混合物であってよい。各々の成分は(存在する場合)、コーティング剤の総重量に基づいて、約0.1重量%〜約99.9重量%の量で存在し得る。
【0074】
さらなる実施形態では、コーティング剤には、シランが、次の:高分子量ポリグリコール、デンドリマー、及び電子供与基をもつ高分子量ポリマーの1つ又はそれ以上と組み合わせて含まれ得る。各々の成分は(存在する場合)、コーティング剤の総重量に基づいて、約0.1重量%〜約99.9重量%の量で存在し得る。
【0075】
コーティング剤は、第2反応器にプレミックスとして、又は上に開示されるように現場で添加されてよい。一実施形態では、本方法には、高分子量ポリグリコール、デンドリマー、電子供与基をもつ高分子量ポリマー、及びシランから選択される2つ又はそれ以上の構成物質を混合すること、及びコーティング剤を形成することが含まれる。さらなる実施形態では、コーティング剤成分の混合は、コーティング剤が第2反応器に導入される前に生じる。
【0076】
コーティング剤は、各々の粒子に対して外側表面の部分を被覆することができる。もう一つの実施形態では、コーティング剤は、1つ又はそれ以上の共重合体粒子の外側表面全体、又は実質的に全体を被覆することができる。一実施形態では、本方法には、コーティング剤を、少なくとも1つの粒子の外側表面全体に適用することが含まれる。これにより、少なくとも1つの粒子は、被膜で完全に取り囲まれるか、又は実質的に取り囲まれる。この意味で、被膜は少なくとも1つの粒子の外側表面全体を包む、又は外側表面全体を実質的に包む。さらなる実施形態では、コーティング剤は、異相共重合体の各々のフォルマント粒子の外側表面全体、又は実質的に表面全体を被覆するために十分な量及び方法で重合反応器に添加される。
【0077】
一実施形態では、コーティング剤は、専ら1つ又はそれ以上の高分子量ポリグリコール(類)で構成される。もう一つの実施形態では、被覆された耐衝撃性共重合体粒子は、無臭である。
【0078】
コーティング剤は、間欠的に又は連続的に第2重合反応器に添加されてよい。一実施形態では、本方法には、コーティング剤を第2重合反応器に連続的に供給することが含まれる。
【0079】
一実施形態では、本方法には、コーティング剤が、異相共重合体の表面に約1ppm〜約200ppm、又は約5ppm〜約100ppm、又は約10ppm〜約50ppmの濃度で存在するような速度でコーティング剤を第2重合反応器に添加することが含まれる。
【0080】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子のD50値は、約0.001インチ〜約0.5インチ、又は約0.015インチ〜約0.05インチ、又は約0.025インチである。
【0081】
一実施形態では、本方法には、コーティング剤を第2重合反応器に添加して、約0.01μm〜約200μm、又は約0.1μm〜約100μm、又は約1μm〜約10μmの厚さの被膜を形成することが含まれる。
【0082】
一実施形態では、連続相は、プロピレン系ポリマー、例えば、プロピレンホモポリマー又はプロピレン/オレフィン共重合体などであり得る。一実施形態では、プロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマーである。
【0083】
一実施形態では、不連続相は、エチレン系ポリマー又はプロピレン系ポリマーであり得る。適したエチレン系ポリマーの限定されない例としては、エチレンホモポリマー、エチレン/オレフィン共重合体及びエチレン/プロピレン共重合体が挙げられる。適したプロピレン系ポリマーの限定されない例としては、プロピレン/オレフィン共重合体及びプロピレン/エチレン共重合体が挙げられる。
【0084】
一実施形態では、粒子には、プロピレンホモポリマーである連続相と、プロピレン及びエチレン共重合体である不連続相が含まれる。不連続相のエチレン含量が、不連続相がプロピレン/エチレン共重合体(過半数重量パーセントがプロピレン由来単位)であるか又はエチレン/プロピレン共重合体(過半数重量パーセントがエチレン由来単位)であるかを決定することになることは当然理解される。不連続相は、約0.1重量%〜約80重量%のEc値を有する。
【0085】
一実施形態では、本方法には、プロピレンホモポリマー中に分散したプロピレン/エチレン共重合体で構成される耐衝撃性共重合体の粒子を形成することが含まれる。耐衝撃性共重合体は、約1%〜約50%のFc値を有する。もう一つの実施形態では、耐衝撃性共重合体粒子は、約10%よりも大きい、又は約15%よりも大きい、又は約20%よりも大きい、又は約30%よりも大きい、又は約40%よりも大きいFc値を有する。さらなる実施形態では、耐衝撃性共重合体粒子は、約15%〜約40%よりも大きいFc値を有する。
【0086】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体のプロピレン及びエチレン共重合体は、約0.1%〜約80%、又は約1%〜約60%、又は約2%〜約50%、又は約3%〜約30%のEc値を有する。
【0087】
コーティング剤の開示は、第2重合反応器への添加に関するものであるが、一段階重合方法(単一反応器)及び/又は多段階重合方法(複数反応器)で使用される第1重合反応器にコーティング剤を添加してよいことは当然理解される。
【0088】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態では、少なくとも6重量%のポリマー微粒子を含む活性ポリマーを重合反応器に導入することを含む重合方法が提供される。この方法には、重合条件下で活性ポリマーを少なくとも1種のオレフィンと接触させること、及び少なくとも30重量%のFc値を有する異相共重合体を形成することが含まれる。形成された異相共重合体は、約0.65よりも大きい、又は約0.70よりも大きい流動性指数を有する。
【0089】
一実施形態では、ポリマー微粒子は、プロピレンホモポリマーである。
【0090】
異相共重合体は、高ゴムポリマー及び/又は粘着性ポリマーを含む、本明細書の使用に開示されるどんな異相共重合体であってもよい。一実施形態では、異相共重合体は、プロピレン系ポリマー連続相及びプロピレン/エチレン共重合体不連続相を含む耐衝撃性共重合体であり、前記耐衝撃性共重合体は、少なくとも30%、又は少なくとも30%〜約50%のFc値、及び約10%〜約50%、又は約30%〜約40%のEc値を有する。
【0091】
一実施形態では、本方法には、ポリマー微粒子によって、重合反応器中の異相共重合体の凝集を抑制することが含まれる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、粒子の他着性は、ゴム組成、厚さ、及び/又は粒子外側表面上の被覆率によって影響されると考えられる。一旦臨界状態に達したら、粘着性粒子は、その他の粘着性粒子又は非粘着性粒子に粘着し、凝集を形成することになる。粒子の凝集のレベルは、粘着性粒子及び非粘着性粒子の量及びサイズによって決まる。ポリマー微粒子は、粘着性粒子の外側表面に付着し、絶縁層の役割を果たす。このポリマー微粒子の絶縁層が粒子凝集を防ぐ。
【0092】
一実施形態では、本方法には、複数のポリマー微粒子を異相共重合体の少なくとも1つの粒子に付着させることが含まれる。これらのポリマー微粒子は、サイズが約200μm未満、又はサイズが約125μm未満である。これらのポリマー微粒子は、異相共重合体のゴム部分に付着する。ポリマー微粒子は、耐衝撃性共重合体のゴム部分を該粒子の外側表面で覆う。ポリマー微粒子は、フォルマント異相共重合体粒子の外側表面に付着するか、或いは接着する。一実施形態では、ポリマー微粒子は、全ての、又は実質的に全ての、異相共重合体粒子のゴムに富む部分に付着し、それを覆う。付着したポリマー微粒子は絶縁層として働いて、異相共重合体の粒子の凝集を抑制するか、又は完全に防ぐ。驚くことに、かつ、思いがけなく、ポリマー微粒子は、粘着性のゴム相から切り離されないことが見出された。特定の理論に縛られるものではないが、ポリマー微粒子は、それらが軽量であること及びポリマー微粒子に亀裂がないことに起因して、粘着性粒子から剥がれないと考えられる。
【0093】
一実施形態では、ポリマー微粒子の大部分は、ゴムを含まない、又は実質的にゴムを含まない。ポリマー微粒子は、例えば、第1反応器中で形成されるようなプロピレン系ポリマーであってよい。さらなる実施形態では、ポリマー微粒子は、プロピレンホモポリマーである。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ポリマー微粒子のゴムを含まない性質は、ポリマー微粒子は第1反応器中にバルク粒子よりも長くとどまり、そのためにポリマー微粒子が第2反応器に到達する時には活性がより低いという理由のためであろうと考えられる。一実施形態では、バルク粒子は、約150μm〜約3500μmのサイズである。
【0094】
驚くことに、かつ、思いがけなく、少なくとも6重量%の量のポリマー微粒子が、異相共重合体に許容される流動性をもたらすことが見出された。この異相共重合体の粒子は、0.65よりも大きい、又は0.70以上、又は約0.70〜約1.0の流動性指数を示す。本方法は、有利には、流動性添加剤の必要なく、すなわち不活性微粒子材料を添加する必要なく、ゴムに富む、かつ/又は粘着性の粒子に流動性をもたらす。言い換えれば、流動性は、外部からの流動助剤を添加する必要なく、ゴムに富む、かつ/又は粘着性の粒子について獲得される。さらに、本方法は、ゴムに富む粒子の流動性を獲得するための追加の製造工程又は方法論を必要としない。従って、本方法は、追加の装置を必要としない。
【0095】
共重合体を生成するための各々の方法は、本明細書に開示される1つ又はそれ以上の実施形態を含むことができる。
【0096】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子が提供される。耐衝撃性共重合体の粒子には、連続相及び連続相の中に分散した不連続相が含まれる。被膜が粒子の外側表面に存在する。粒子は、本明細書に開示されるあらゆる前述の重合及びコーティング方法により形成することができる。本開示は粒子に関するが、本明細書に開示されるあらゆる重合方法により形成される1つ、複数、又は全ての粒子に適用されることは当然理解される。
【0097】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子には、コーティング剤を利用する前述の方法により生成される異相共重合体のフォルマント被覆粒子の1つ又はそれ以上の実施形態が含まれてよい。
【0098】
一実施形態では、被膜は、本明細書に開示されるようなコーティング剤から形成される。
【0099】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子上の被膜は、高分子量ポリグリコール、デンドリマー、電子供与基をもつ高分子量ポリマー、アルコキシシラン、及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0100】
一実施形態では、被膜は、耐衝撃性共重合体の粒子の実質的に外側表面全体を取り囲む。
【0101】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子上の被膜の厚さは、約0.01μm〜約200μmである。
【0102】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の連続相は、プロピレンホモポリマー、プロピレン/オレフィン共重合体、及びプロピレン/エチレン共重合体から選択される。
【0103】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の不連続相は、エチレンホモポリマー、エチレン/オレフィン共重合体及びプロピレン/エチレン共重合体から選択される。
【0104】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の不連続相には、エチレンが含まれる。不連続相は、約1重量%〜約80重量%のEc値を有する。
【0105】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体のFc値は、約1%〜約50%、又は15%よりも大きく約50%までである。
【0106】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子は、上に開示されるように、粒子外部表面(又は粒子外側表面)により規定される内部を有する。粒子の内部は、被膜及び/又はコーティング剤がない。
【0107】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子の直径は、約0.015インチ〜約0.05インチ。
【0108】
異相共重合体の被覆された粒子及び/又は耐衝撃性共重合体の被覆された粒子は、本明細書に開示される1つ又はそれ以上の実施形態を含み得る。
【0109】
一実施形態では、耐衝撃性共重合体の粒子が提供される。粒子には、連続相の中に分散した不連続相が含まれる。連続相は、プロピレン系ポリマーで構成される。耐衝撃性共重合体は、30%よりも大きいFc値を有する。少なくとも1つのポリマー微粒子は、耐衝撃性共重合体粒子の外側表面に付着する。一実施形態では、ポリマー微粒子は、粒子のゴムに富む部分に付着する。
【0110】
一実施形態では、複数の耐衝撃性共重合体粒子が提供される。複数の耐衝撃性共重合体粒子は、約0.65よりも大きい、又は0.70よりも大きい、又は約0.7〜約1.0の流動性指数を有する。
【0111】
一実施形態では、不連続相は、プロピレン/エチレン共重合体を含む。不連続相は、約10%〜約50%のEc値を有する。
【0112】
一実施形態では、粒子(類)は、粘着性のポリマー及び/又はゴムに富むポリマーである。
【0113】
一実施形態では、ポリマー微粒子は、不連続相が粒子の外側表面から露出している全ての又は実質的に全ての表面領域を覆う。言い換えれば、ポリマー微粒子は、全ての、又は実質的に全ての、粒子のゴムに富む領域又は粘着性の領域を覆う。
【0114】
耐衝撃性共重合体粒子(類)は、本明細書に開示される1つ又はそれ以上の実施形態を含み得る。
【0115】
前述の防汚剤組成物のいずれかは、微粒子含有ポリマーとともに第1及び/又は第2重合反応器に添加されてよい。
【0116】
定義
【0117】
本明細書中の元素の周期律表への全ての参照は、2003年にCRC Press社が出版し著作権を有する元素周期律表をさすものとする。また、1又は複数の族へのあらゆる参照は、族の番号付けにIUPACシステムを使用するこの元素の周期表において反映される1又は複数の族に対するものとする。それとは反対の記述のない限り、文脈から暗示されない限り、又は当分野で慣用されていない限り、全ての部及び百分率は重量に基づく。米国特許実務の目的上、本明細書において参照されるあらゆる特許、特許出願、又は広報の内容は、特に、合成技法、定義(本明細書に提供される定義と矛盾しない程度まで)及び当分野の一般知識の開示に関して、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる(又はその同等の米国特許が同様に参照により組み込まれる)。
【0118】
本明細書に列挙されるあらゆる数値範囲には、任意の下方値とそれより高い任意の値との間に少なくとも2単位の分離があるという条件で、下方値及び上方値からの全ての値が1単位の増分で含まれる。一例として、組成特性、物理的特性又はその他の特性、例えば、分子量、メルトインデックスなどが100〜1,000であると述べられている場合、全ての個々の値、例えば100、101、102など、及び下位範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などが、本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満の値か又は1より大きな端数を含む値(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲に関して、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。10未満の1桁の数字を含む範囲(例えば、1〜5)に関して、1単位は、一般に0.1と見なされる。これらは具体的に意図されるもののほんの例であり、列挙される最低値と最高値との間の数値のあらゆる可能性のある組合せが、本願において明示的に述べられていると見なされる。言い換えれば、本明細書に列挙されるあらゆる数値範囲には、述べられた範囲内の任意の値又は下位範囲が含まれる。数値範囲は、本明細書において考察されるように、密度、重量パーセントの成分、分子量及びその他の特性に関して列挙されている。
【0119】
用語「含む」及びその派生語は、その同じものが本明細書に開示されていようといまいと、任意の追加の成分、工程又は手順の存在を排除することを意図するものではない。疑いを避けるため、用語「含む」の使用によって本明細書において特許請求される全ての組成物には、それとは反対の記述のない限り、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物(ポリマーであってもなくても)が含まれてよい。その一方、用語「から本質的になる」は、実現可能性に絶対必要ではないものを除いて、あらゆるその他の成分、工程又は手順を後続の列挙の範囲から除外する。用語「からなる」は、具体的に説明又は列挙されないあらゆる成分、工程又は手順を除外する。用語「又は」は、特に明記されない限り、列挙された構成物質を個別に参照し、その上に任意の組合せでも参照する。
【0120】
用語「ブレンド」又は「ポリマーブレンド」は、本明細書の使用において、2つ又はそれ以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和性(分子レベルで相分離していない)であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当分野で公知の任意のその他の方法から決定される1つ以上のドメイン配置を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0121】
用語「組成物」には、本明細書の使用において、組成物を構成する材料の混合物、並びに該組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物が含まれる。
【0122】
用語「ポリマー」は、同じ又は異なる種類のモノマーを重合することにより調製される高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、共重合体、ターポリマー、インターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマー又はコモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。それには、限定されるものではないが、共重合体(2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーをさす)、ターポリマー(3種類の異なるモノマーから調製されるポリマーをさす)、テトラポリマー(4種類の異なるモノマーから調製されるポリマーをさす)、及び同類のものが含まれる。
【0123】
用語「インターポリマー」は、本明細書の使用において、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合により調製されるポリマーをさす。従って、一般名のインターポリマーには、2つの異なるモノマーから調製されるポリマー及び2より多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーをさすために通常用いられる、共重合体が含まれる。
【0124】
用語「エチレン系ポリマー」は、本明細書の使用において、過半数重量パーセントの重合エチレンモノマー(重合可能なモノマーの総重量に基づく)を含むポリマーをさし、場合により少なくとも1つの重合コモノマーを含み得る。
【0125】
用語「プロピレン系ポリマー」は、本明細書の使用において、過半数重量パーセントの重合プロピレンモノマー(重合可能なモノマーの総量に基づく)を含むポリマーをさし、場合により少なくとも1つの(又はそれ以上の)重合コモノマー(類)を含み得る。
【0126】
用語「プロピレン/エチレン共重合体」は、本明細書の使用において、過半数重量パーセントの重合プロピレンモノマー(重合可能なモノマーの総量に基づく)、重合エチレンモノマー(2番目に優勢なモノマー)、及び、場合により、少なくとも1つのその他のα−オレフィンモノマーを含むポリマーをさす。
【0127】
用語「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子をさす。好ましいヘテロ原子としては:F、Cl、Br、N、O、P、B、S、Si、Sb、Al、Sn、As、Se及びGeが挙げられる。
【0128】
用語「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」とは、分枝状又は非分枝状、飽和又は不飽和の、環状、多環式又は非環状の種を含む、水素及び炭素原子だけを含有する置換基をさす。例としては、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シクロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、及びアルキニル基が挙げられる。「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」とは、1個又はそれ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基をさす。用語「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」、「ヘテロヒドロカルビル」及び同様の用語は、水素又は炭素以外の少なくとも1つの原子が、1個又はそれ以上の炭素原子及び1個又はそれ以上の水素原子とともに存在する基をさす。
【0129】
本明細書の使用において用語「芳香族」とは、(4δ+2)π電子(この際、δは、1つ以上の整数である)を含有する、多原子、環状、共役環構造をさす。用語「融合した」とは、本明細書の使用において、2つ又はそれ以上の多原子環式環を含有する環構造に関して、少なくともその2つの環に関して、少なくとも1対の隣接原子が両方の環に含まれていることを意味する。用語「アリール」とは、単一の芳香環であってもよいし、一緒に縮合している、共有結合している、或いは、共通の基、例えばメチレン又はエチレン部分などに結合していてよい複数の芳香環であってもよい、一価の芳香族置換基をさす。芳香環(類)の例としては、数ある中でも、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びビフェニルが挙げられる。
【0130】
「置換アリール」とは、任意の炭素に結合した1個又はそれ以上の水素原子が、1個又はそれ以上の官能基、例えば、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アルキルハロ(例えば、CF)、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロなど、並びに、芳香環と縮合している、共有結合している、或いは、共通の基、例えばメチレン又はエチレン部分などに結合している飽和及び不飽和両方の環状炭化水素で置換されているアリール基をさす。共通の連結基は、ベンゾフェノン中のようにカルボニル、又はジフェニルエーテル中のように酸素、又はジフェニルアミン中のように窒素であり得る。
【0131】
試験方法
【0132】
流動性指数:ポリマー粉末の流動性は、(FT−300流動性試験機によって)Sotax Indexで測定される。流動性試験機は、異なる振動レベル下、重力によって固定された開口部を通過する固体流速を測定する。振動は、粒子放出の前及び最中に加えられる。次に、流速結果を平均し、標準的な易流動性粉末(例えばオタワ砂(Ottowa Sand)など)の結果と比較して、0と1との間の正規化された流動性指数を得る。1の指数値は、完全な流動性を示し、一方0の指数値は流動性無しを示す。Sotax Indexが高いほど、粉末の流動性は良好である。〜以上のSotax Indexは、一般に許容される商業方法に必要とされる。
【0133】
粒度:粒度及び粒度分布は、標準的な篩い分け試験設備により測定する。帯電防止剤を、篩い分け試験の前にサンプルに添加する。篩設備には、US6メッシュ、US10メッシュ、US18メッシュ、US60メッシュ、US120メッシュ、US200メッシュ及びパンの標準的な篩が含まれる。US120メッシュを通過する粒子(すなわち、0.0049インチより小さい粒子)をポリマー微粒子と見なす。一般的に使用される重量平均粒度(APS)を含む、様々な平均粒度がこの篩い分け試験により得られる。
【0134】
例であって限定でないものとして、本開示の実施例をこれから示す。
【0135】
実施例1:
【0136】
2つのポリプロピレン流動床反応器を直列に接続してプロピレン耐衝撃性共重合体を製造する。プロピレン耐衝撃性共重合体には、第1反応器(反応器1)で生成されるプロピレンホモポリマー及び第2反応器(反応器2)で生成されるプロピレン/エチレン共重合体が含まれる。触媒系は、チーグラー・ナッタ担持触媒とアルミニウムアルキル活性剤及び外部供与体混合物である(選択性制御剤)。水素を両方の反応器に供給して溶融流れを制御する。反応器1に供給される選択性制御剤(SCA)には、60モル% イソプロピルミリステート及び40モル% ジシクロペンチルジメチルシランの混合物が含まれる。95モル% イソプロピルミリステート及び5モル% ジシクロペンチルジメチルシランを含む多成分防汚剤を反応器2に供給して汚れを抑制し、ゴム含有量(Fc)を制御する。表1は、5つの試験(A〜E)に対する反応器条件を示す。試験A〜Eは、漸増量の多成分防汚剤(MAF−1)が反応器2に供給されることを示す。反応器2に供給されるMAF−1は、27.8ppm(製造されるプロピレン耐衝撃性共重合体の総重量の100万分の1のMAF−1)から101.4ppmまで増加し、ゴム含有量(Fc)は33.5重量%から13.1重量%まで減少する(プロピレン耐衝撃性共重合体の総重量に基づくFc重量%)。MAF−1が存在することにより、試験A〜Eについて反応器2の汚れが防止される。
【表1】

【0137】
実施例2:
【0138】
2つのポリプロピレン流動床反応器を直列に接続してプロピレン耐衝撃性共重合体を製造する。プロピレン耐衝撃性共重合体には、第1反応器(反応器1)で生成されるプロピレンホモポリマー及び第2反応器(反応器2)で生成されるプロピレン/エチレン共重合体が含まれる。触媒系は、チーグラー・ナッタ担持触媒とアルミニウムアルキル活性剤及び外部供与体混合物である(選択性制御剤)。水素を両方の反応器に供給して溶融流れを制御する。反応器1に供給される選択性制御剤(SCA)には、60モル% イソプロピルミリステート及び40モル% ジシクロペンチルジメチルシランの混合物が含まれる。95モル% イソプロピルミリステート及び5モル% n−プロピルトリメチルシランを含む多成分防汚剤を反応器2に供給して汚れを抑制し、ゴム含有量(Fc)を制御する。表2は、3つの試験(F〜H)に対する反応器条件を示す。試験F〜Hに関して、漸増量の多成分防汚剤(MAF−2)が反応器2に供給される。反応器2に供給されるMAF−2は、87.6ppm(製造されるプロピレン耐衝撃性共重合体の総重量の100万分の1のMAF−2)から140.1ppmまで増加し、ゴム含有量(Fc)は20.8重量%から15.1重量%まで減少する(プロピレン耐衝撃性共重合体の総重量に基づくFc重量%)。MAF−2が存在することにより、試験F〜Hについて反応器2の汚れが防止される。
【表2】

【0139】
実施例3
微粒子
【0140】
SEM−BEI−反応器の粉末断面図を、高濃度の粉末粒子をEpofixエポキシ樹脂に添加することにより調製する。樹脂及び粉末混合物を、真空ガラス鐘内でガス抜きして過剰な空気を除去し、ポリマー粒子に樹脂を浸み込ませる。樹脂−粉末混合物を平らな包埋型に入れ、38℃にて16時間硬化させる。硬化後、サンプルを型から取り出し、超薄切片法に適切なサイズにトリムする(約3mm×2mm)。トリムしたブロックを、−60℃にてブロックから切片を除去することにより、染色の前に冷間研磨してエラストマー粒子の汚れを防ぐ。冷間研磨したブロックを、周囲温度にて3時間、四酸化ルテニウム水溶液の気相で染色した。染色溶液は、0.2gのルテニウム(III)クロライド水和物(RuCl3×H2O)を、ねじ蓋を備えたガラス瓶の中に秤量し、10mlの5.25% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液をジャーに添加することにより調製する。サンプルを、両面テープを有するスライドガラスを用いてガラスジャーに入れる。スライドをビンの中に設置して、ブロックを染色溶液の約1インチ上に浮遊させ、RuO蒸気に3時間曝す。染色したブロックを、Leica UC6ミクロトームで周囲温度にてダイヤモンド組織診断用ナイフを用いて厚さ約1μmの切片を除去することにより、透明なエポキシだけが染色されたポリマー粒子とともに残るまで面取りする。研磨したブロックをアルミニウム製サンプルマウントに取り付け、カーボン塗料で練磨し、金−パラジウムプラズマで30秒間スパッタリングして、ブロックをSEM分析のために導電性にする。
【0141】
技法
【0142】
SEM−BEI− 日立S−4100を、後方散乱電子画像形成(BEI)の下で、20kV加速電圧で使用して、NIHデジタル画像形成ソフトウェアを用いてデジタル画像を捕獲する。画像は、Adobe Photoshop 7.0を用いて後処理される。
【0143】
OM− Wild Ml0立体顕微鏡を、ペトリ皿中に分散しているポリマー粒子の低倍率表示のために反射モードで使用する。画像は、Nikon DXM−1200デジタルカメラを用いて蛍光照明下で捕獲し、Adobe Photoshop 7.0を用いて後処理する。
【0144】
図1〜3は、耐衝撃性共重合体のSEM顕微鏡写真である。ゴムの添加量(Fc>30)が増加するにつれて、凝集が増加する。同様に、類似したゴム添加量で(Fc>30)、低微粒子(LF)の耐衝撃性共重合体(図2)は、微粒子を含む耐衝撃性共重合体(図1)よりも多くの凝集を有する。図2中の矢印は、凝集を示す。
【0145】
図4は、図1の耐衝撃性共重合体のSEM−BEI画像である。図5は、図2の耐衝撃性共重合体のSEM−BEI画像である。図4は、耐衝撃性共重合体粒子表面に付着し、それにより凝集を低下させている微粒子を示す。低微粒子耐衝撃性共重合体(図5)は、微粒子が少なく凝集が起こることを許容している。
【0146】
本開示は、本明細書に収載される実施形態及び説明に限定されるものではなく、実施形態の部分及び以下の特許請求の範囲内にある異なる実施形態の要素の組合せをはじめとする、実施形態の変更形態を含むことが特に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性ポリマーを第1重合反応器から第2重合反応器に導入する工程と、
第2重合反応器中で活性ポリマーを少なくとも1種のオレフィンと重合条件下で接触させて、約10%〜約50%のFc値を有する異相共重合体を形成する工程と、
多成分防汚剤が前記異相共重合体中に約1ppm〜約200ppmの濃度で存在するような速度で前記多成分防汚剤を第2重合反応器に添加する工程とを含む、共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記多成分防汚剤が前記異相共重合体中に約10ppm〜約100ppmの濃度で存在するように、多成分防汚剤を添加する工程、及び、15%〜約40%のFc値を有する異相共重合体を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多成分防汚剤によって、前記第2重合反応器内の汚れを抑制する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
活性ポリマーを第1重合反応器から第2重合反応器に導入する工程と、
前記第2重合反応器中で活性ポリマーを少なくとも1種のオレフィンと重合条件下で接触させて耐衝撃性共重合体の粒子を形成する工程と、
コーティング剤を前記第2重合反応器に添加する工程と、
前記粒子を前記コーティング剤で被覆する工程と
を含む、共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記コーティング剤によって、前記第2重合反応器内の汚れを抑制する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
高分子量ポリグリコール、デンドリマー、電子供与基をもつ高分子量ポリマー、及びシラン、活性制限剤、選択性制御剤からなる群より選択される2つ以上の構成物質を混合する工程と、前記コーティング剤を形成する工程とを含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
連続相と、
前記連続相の中に分散した不連続相と、
前記粒子の外面上の被膜と
を含む、耐衝撃性共重合体の粒子。
【請求項8】
前記被膜が、高分子量ポリグリコール、デンドリマー、電子供与基をもつ高分子量ポリマー、アルコキシシラン、活性制限剤、及びそれらの組合せからなる群より選択される構成物質を含む、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
前記被膜が、前記粒子の前記外側表面全体を実質的に取り囲んでいる、請求項7または8に記載の粒子。
【請求項10】
被膜の厚さが約0.01μm〜約200μmである、請求項7から9のいずれか一項に記載の粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514082(P2012−514082A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543631(P2011−543631)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/069140
【国際公開番号】WO2010/075349
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】