耐酸化性フェライト系ステンレス鋼
耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼製品の製造法は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を提供することを含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。前記フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させるように変性する。この変性表面は、表面を電解研磨することなどによって、表面を電気化学的に変性することによって提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製造法に関する。本発明はまた、少なくとも一つの耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼、さらにそのようなフェライト系ステンレス鋼で製造したまたはこれらを含む製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、気体燃料と酸化性ガスとをイオン導電性電解質を介して電気化学的に化合させることによって電気と熱とを発生させるエネルギー変換装置である。燃料電池の主な特徴は、燃焼の非存在下で化学エネルギーを電気エネルギーに直接転換する能力であり、これによりピストンエンジン、ガスタービン、及びエネルギーを生み出す他の慣用の熱機械的方法よりもかなり高い転換効率を提供する。同じ出力電力に関しては、燃料電池は化石燃料をベースとする技術よりも実質的に二酸化炭素放出が少ない。燃料電池も極少量のSOx及びNOxを生産するが、これは酸性雨及び光化学スモッグの主成分である。
【0003】
現在、数種の燃料電池の開発が進められている。これらの燃料電池の間の主な違いは、電解質として使用する材料であり、これは操作温度に影響する。NASAは、アポロ及び他の宇宙船に動力供給するために1960年代に液体電解質を含むアルカリ燃料電池を開発し、現在、NASAはスペースシャトルでは高度改良版を使用している。対照的に、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、電解質として高速酸素イオン-導電性セラミック(fast oxygen ion-conducting ceramic)(通常、イットリア安定化ジルコニア、即ちYSZ)を使用する、完全に固体状態の物質によって構築され、約500℃(932゜F)〜1000℃(1832゜F)の温度範囲で操作して固体状態遷移を容易にしている。他のタイプの燃料電池と比べてSOFCの好都合な点としては、高エネルギー効率と、電解質の取り扱いにあまり問題がないということがある(液体電解質は、通常、腐食性であり、取り扱いが難しいだろう)。SOFCは高度な廃熱も生産するが、これは熱電気複合利用装置で使用することができ、(水素とメタンを生産するために)炭化水素燃料の内部改質(internal reforming)も可能である。
【0004】
アメリカ合衆国においてSOFCの開発を推進させる組織は、Solid State Energy Conversion Alliance(SECA)である。SECAは、SECAメンバーの会社によって開発された方法を使用して統合的なSOFCの構築を目的とするインダストリー・グループ(Industry Group:同業種グループ)と、全体として同業種グループの需要によって推進される基礎研究を実施するコア・テクノロジー・グループ(Core Technology Group)とからなる。化石燃料のエネルギー庁のアメリカ合衆国部門(the United States Department of Energy's Office of Fossil Energy)によって組織化され監督されるこのSECAプログラムでは、開発中のSOFCの一定のコストと性能目標を設定した。
【0005】
一つのSOFC「電池」またはサブユニットは、電解質によって隔てられたアノードとカソードを含む。現代のSOFCは約1000℃(約1832゜F)以下の温度で操作するので、電極は、通常、環境劣化を避けるためにセラミック材料から構築される。アノード層とカソード層はいずれも通気孔のネットワークを確立することによって意図的に気体浸透性としてあり、優れた導電体である(例えばこれらは本質的に非イオン伝導性を示す)。現代のSOFCでは、アノードは通常、導電性ニッケル/YSZ複合体(セラミック/金属複合体、即ちサーメット:cermet)から形成される。このニッケルは連続的な導電性パスを提供するのに対し、YSZは複合体全体の熱膨張係数を下げ、孔が焼結によって閉塞しないようにする。ニッケル粒子は、アノードに存在する富水素気体によって酸化から保護され、これは純粋なニッケルに還元される。たとえばカソードは、通常、その導電性を改善するためにストロンチウムでドープしたマンガン酸ランタン(LaMnO3)をベースとすることができる(ランタンの幾らかを置き換えてLa1-xSrxMnO3を製造する)。この電解質は、通常、(アノード及びカソードと比べて)全体的に密なYSZの薄層である。
【0006】
SOFC電池の操作の間、酸化剤(たとえばO2または空気)をカソード側の燃料電池に供給し、そこでは、酸化剤が、以下の半電池反応:
【0007】
【化1】
【0008】
に従って外部回路から電子を受け取ることにより酸素イオンを電解質に供給する。
この酸素原子は、固体状態の拡散によってYSZ電解質内を電解質/アノード界面へ通過する。SOFCは基本的燃料として水素(H2)及び/または一酸化炭素(CO)を使用することができる。操作上、供給されたままの純粋な水素を使用することができるが、メタン、ケロセン、またはガソリンなどの炭化水素燃料は部分的に燃焼、または改質(reform)して水素と一酸化炭素にしなければならない。これは通常、高い操作温度及び蒸気注入を使用して助成した、燃料電池内で内部的に実施される。この燃料気体混合物はアノードを浸透してアノード/電解質界面に到達し、ここで以下の二つの半電池反応:
【0009】
【化2】
【0010】
でイオン導電性電解質からの酸素イオンと反応する。
これによって電子が放出され、外部回路に再入する。カソードからアノードへ電解質内の酸素イオン輸送に起因する電荷の流れは、外部回路中の電子伝導による電荷の流れによって正確にバランスを保つ。全体の電荷バランスを維持するには、駆動力が必要である。外部回路の電子の流れによって、約1ボルト電位の有用な電力を供給する。
【0011】
適度な電圧を発生させるために、燃料電池は単一装置ではなく、すぐ隣の電池のアノードとカソードの間の電流を「内部連絡」連結及び誘導した一つ一つの電池を数個連続配置して構成される「スタック」として操作される。一般的なスタックデザインは、平板または「平面的(planar)」SOFC(PSOFC)であり、これは図1に概略形が示されている。図1のPSOFC10では、単一のエネルギー転換セル12は電解質40によって隔てられたアノード20とカソード30とを含む。内部連絡50は、スタック内で(完全に示されていないが)直ぐ隣のエネルギー転換セル14のカソード60からアノード30を隔てる。PSOFC10は、それぞれ隣接する装置との間に配置された内部連絡によって、セル12と同一のセルの繰り返し配置を含む。
【0012】
SOFC内部連絡のデザインは重要である。というのも、この内部連絡は、反応体ガスを分離及び含有し、電流用の低抵抗パスを提供してセルを直列で電気的接続することを含む、幾つかの機能を提供するからである。通常、この内部連絡の材料は、セル内の過酷な高温環境条件に耐えなければならず;(その材料上に形成する全ての酸化物または他の表面フィルム若しくはスケール腐蝕を含んで)好適に導電性でなければならず;及び燃料電池スタックの不可欠な構造的完全性及び気密性を確保するために、セルの内部でセラミック電極のCTEと充分に類似する熱膨張係数(coefficient of thermal expansion:CTE)をもたねばならない。
【0013】
初期のPSOFCデザインでは、内部連絡材料としてドープ化クロム酸ランタン(LaCrO3)セラミック材料を使用した。LaCrO3セラミックは、SOFC操作高温で劣化せず、燃料電池の他のセラミック成分と実質的に適合する熱膨張係数をもつ。しかしながら、LaCrO3セラミックは、もろく、成形が困難で、非常に高価である。これらの欠点に対処するために、PSOFCで使用する金属製の内部連絡が提案されてきた。これらには、AL 600(商標)合金などのニッケルベースの合金と、タイプ304合金のプロトタイプである300シリーズ群などの特定のオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。ALFA-II(商標)合金、E-BRITE(登録商標)合金及びAL 453(商標)合金などのフェライト系ステンレス鋼もPSOFC内部連絡で使用するのに提案されてきた。表1は、その全てがAllegheny Ludlum Corporation(ピッツバーグ、ペンシルバニア州)より市販されている上記ニッケルベース合金及びステンレススチール合金の公称組成を提供する。
【0014】
【表1】
【0015】
フェライト系ステンレス鋼は、低コスト、優れた加工性及びセラミックと適合可能なCTEを含む、PSOFC内部連絡用途に魅力的にする特性をもつ。しかしながら、通常、金属製内部連絡は、PSOFC操作に典型的な高温では導電性の低い表面酸化物層を形成する傾向がある。この層は、長い間に厚く成長し、全体としてPSOFCスタック及び内部連絡の抵抗率を上昇させる。高温で酸素に暴露すると、合金によっては非常に遅い速度で厚くなる表面酸化物(たとえばALFA-II(登録商標)合金のAl2O3スケール)かまたは、高い導電性である表面酸化物(たとえば純粋または分散液-強化ニッケルのNiOスケール)を形成する。しかしながら、これらの二つの一見ばらばらな因子(抵抗率及び酸化物形成速度)を制御する根本的なメカニズムは本質的に同じ(酸化物の電子欠陥構造)なので、結果としてゆっくりと成長し、且つ導電性でもあるほんの二三種の酸化物となる。
【0016】
フェライト系ステンレス鋼は一つには内部連絡材料として注目されてきた。というのも、その従来の形状では、これらは本質的に酸化クロム(Cr2O3)からなるスケールを成長させ、高温で比較的ゆっくりと成長し、且つ高温で導電性だからである。クロムの酸化に依存する耐熱性合金は、比較的遅い酸化物スケールの成長と高温でのかなりの導電性との間に妥協点を提供することができる。そうはいっても、市販のクロミア形成性フェライト系ステンレス鋼の酸化劣化速度では、長い間に燃料電池スタックの性能が低下するだろう。内部連絡を構築し得る別の非金属材料、特にペロブスカイト・セラミック(perovskite ceramic)(たとえばLaCrO3)は同じようなレベルの劣化は示さないものの、PSOFCスタックのコストを非経済的レベルに押し上げる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、長期にわたってPSOFC操作条件に暴露したときに、経済的であり、且つ好適なレベルの耐酸化性を示す、新規燃料電池内部連絡材料に対する需要がある。一般に、高温で酸化性環境に暴露したときに、優れた耐酸化性をもつフェライト系ステンレス鋼に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記需要に対処するために、本発明の開示では、耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼製品の製造法を提供する。本方法は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える、前記フェライト系ステンレス鋼を提供することを含む。前記フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、変性した表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ、導電性の、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールを成長させるように変性する。本方法の特定の態様では、富アルミニウム耐酸化性酸化物スケール(aluminum-rich、oxidation resistant oxide scale)の格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3の格子パラメーターとは異なる。また、本方法の特定の側面では、このフェライト系ステンレス鋼の変性表面は、たとえばこの表面を電解研磨することによって、電気化学的に変性する。
【0019】
本発明の開示は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属と16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える前記フェライト系ステンレス鋼にも関する。このフェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面は、変性表面が750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)の温度で、100時間以上酸化性雰囲気中で加熱したときに、富アルミニウム酸化物スケールを成長させるように変性され、このとき、前記酸化物スケールは、鉄とクロムとを含み、且つ約4.95〜5.04Åのa0及び約13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造を有する。
【0020】
本発明の開示はさらに、耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼製品の製造法に関し、ここで前記スチールは、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属と16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムとを含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。このフェライト系ステンレス鋼の耐酸化性表面は、たとえば前記表面を電解研磨することによって、表面を電気化学的に変性することによって提供される。本方法の一態様において、電気化学的変性表面は、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)の温度で、酸化性雰囲気中、100時間以上加熱したときに、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。また、本方法のある態様では、本製品は、平板、シート、ストリップ、ホイル、バー、燃料電池内部連絡、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置、及び熱交換部品の一つである。フェライト系ステンレス鋼の表面を電解研磨する一つの例としては、電解研磨溶液とカソードとを含む浴中に製品の表面を設置し、材料が表面から除去されるようにスチールとカソードとの間に電流を通して、表面粗度を小さくすることを含む。電解研磨表面は、たとえば固体酸化物燃料電池内の操作条件に特徴的な温度及び雰囲気に暴露したときに、酸化に対して優れた耐性を示すことが知見された。
【0021】
本発明の開示のもう一つの側面は、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムと少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超えるフェライト系ステンレス鋼製品の高温耐酸化性を改良する方法に関する。本方法は、例えば前記表面を電気化学的に変性することによって、製品の表面を変性することを含む。電気化学的に変性する一つの例は、電解研磨表面である。この変性表面は、燃料電池の操作の間、固体酸化物燃料電池内部連絡が暴露される雰囲気及び温度条件に暴露したときに、ヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物層を成長させる。
【0022】
本発明の追加の側面は、SOFCの製造法に関する。本方法は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む少なくとも一つのSOFC内部接続を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。この内部接続は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つヘマタイト構造をもつ導電性の、富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる、少なくとも一つの変性表面を含む。この変性表面は、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ、導電性の、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールを成長させる。本方法の特定の態様では、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のものとは異なる。内部接続と、少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソード、及び少なくとも一つの電解質を含む追加の要素とを組み立ててSOFCを提供する。
【0023】
本発明の開示のもう一つの側面は、固体酸化物燃料電池の製造法に関し、ここで、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属と16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む少なくとも一つの内部接続を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。この内部接続は、少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む。この表面は、たとえば表面を電解研磨することによって電気化学的に変性することができる。内部接続と、少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソード、及び少なくとも一つの電解質を含む追加の要素を組み合わせて燃料電池を提供する。本方法の一つの態様では、電解研磨表面は、750℃(1382゜F)〜850゜F(1562゜F)の範囲の温度に、酸化性雰囲気中で、100時間以上加熱したときに、鉄とクロムを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0をもつヘマタイト構造をもつ、富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。
【0024】
本発明の開示は、アルミニウムと、少なくとも一種の希土類金属と、16重量パーセント以上で30重量パーセントのクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える、前記フェライト系ステンレス鋼にも関する。このフェライト系ステンレス鋼は、さらに高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ、導電性の、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールを成長させる、少なくとも一つの変性表面を含む。特定の態様では、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のものとは異なる。また特定の態様では、この酸化物スケールは、4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0を特徴とする。また、特定の態様では、フェライト系ステンレス鋼の変性表面は、たとえば電解研磨表面などの、電気化学的変性表面である。
【0025】
本発明のもう一つの側面は、固体酸化物燃料電池の製造法であって、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記フェライト系ステンレス鋼は少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、フェライト系ステンレス鋼に関する。特定の態様では、少なくとも一つの電気化学的変性表面は、電解研磨表面であり、ここで少なくとも一つの電解研磨表面は、酸化性雰囲気中で、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)の温度に100時間以上加熱したときに、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0をもつヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。さらに本明細書中で記載されたように、フェライト系ステンレス鋼の特定の態様では、少なくとも一つの電気化学的変性表面は、固体酸化物燃料電池中で操作条件の特徴的な雰囲気及び温度条件に暴露したときに、優れた耐酸化性を示す少なくとも一つの電気化学的変性表面である。
【0026】
本発明の開示の追加の側面は、16重量パーセント以上で30重量パーセントのクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、及び少なくとも一種の希土類金属を含むフェライト系ステンレス鋼を提供し、前記希土類金属の総重量は0.02から1.0重量パーセント以下である。このフェライト系ステンレス鋼はさらに、750℃〜850℃の温度で、空気中で加熱したときに、富アルミニウム酸化物層を成長させる少なくとも一つの耐酸化性変性表面を含む。特定の態様において、この変性表面は、たとえば電解研磨表面などの電気化学的変性表面である。
【0027】
また本開示は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む製品を開示し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。このフェライト系ステンレス鋼はさらに、電気化学的変性表面であってもよい、少なくとも一つの変性表面を有する。高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、この変性表面は、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる。特定の態様において、この変性表面は電解研磨表面である。
【0028】
本発明の開示は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む製品を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。このフェライト系ステンレス鋼は、電気化学的変性表面などの少なくとも一つの変性表面を含む。少なくとも一つの電気化学的変性表面は、たとえば少なくとも一つの電解研磨表面であってもよい。特定の態様において、この製品は、燃料電池、固体酸化物燃料電池、平坦な酸化物燃料電池、燃料電池内部接続、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置及び熱交換部品から選択される。
【0029】
本発明の開示の追加の側面は、アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質中間体と内部接続を含む燃料電池について記載する。この内部接続は、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムと、少なくとも一種の希土類金属を含むフェライト系ステンレス鋼を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02から10重量パーセント以下である。このフェライト系ステンレス鋼は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性の富アルミニウム耐酸化性酸化物スケールを成長させる少なくとも一つの変性表面を含む。燃料電池の特定の態様では、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のものとは異なる。燃料電池の特定の態様では、フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの変性表面は、電解研磨表面などの電気化学的変性表面である。
【0030】
本発明の開示のさらなる側面では、アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質中間体と、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む内部接続を含む燃料電池を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。フェライト系ステンレス鋼は、電解研磨表面などの少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む。一つの態様において、このフェライト系ステンレス鋼の電解研磨表面は、酸化性雰囲気中で、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)で100時間以上加熱したときに、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0をもつヘマタイト構造をもつ、富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。特定の態様において、この燃料電池は、固体酸化物燃料電池及び平坦な固体酸化物燃料電池から選択することができる。また特定の態様において、燃料電池は複数のセルを含む燃料電池スタックの一部であり、それぞれのセルはアノード、カソード、電解質及び内部接続を含み、ここで前記内部接続は複数の電池を電気的に直列に接続する。
【0031】
本発明の開示で記載のこの新規方法、材料及び製品は、たとえばPSOFCの内部操作条件に特徴的な高温条件に長時間暴露したときに、従来の代替材料と比較して経済的であり、且つ好適なレベルの耐酸化性を示すフェライト系ステンレス鋼に関するか、またはこれを含む。従って、本発明の開示に記載の新規方法、材料及び製品は、PSOFC及び他の燃料電池の製造での適用に特に適しているものと考えられる。通常、本発明の開示に記載の新規方法、材料及び製品は、高温で酸化性環境中に暴露したときに、優れた耐酸化性を示すフェライト系ステンレス鋼並びに、そのようなステンレス鋼を含む製品を提供する。
【0032】
これら及び他の好都合な点は、特定の態様に関する以下の記載を参照して明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
上記の如く、フェライト系ステンレス鋼は、SOFC内部連絡用の可能な費用効率的置換材料として考えられてきた。しかしながら、内部接続の両側を流れる気体反応体は、鉄-クロムフェライト系ステンレス鋼に対して腐食性である。酸化された内部接続は、あまり効率的でない電流導体であるので、全体としての燃料電池スタックの効率は、燃料電池内の内部接続上の酸化物層の厚さが増加するに連れてやがて低下する。現行の金属内部接続の固有の限界から、内部接続表面上の過剰な酸化を防ぐために、比較的非効率的な低温操作(約700℃(1292゜F))に利用可能なPSOFCデザインを限定していた。
【0034】
SOFC内部接続材料として使用することがこれまで検討されていた一つのフェライト系ステンレス鋼はAL 453合金であり、これは希土類金属(REM)を含み、上記表1に示された公称組成をもつフェライト系ステンレス鋼である。ミッシュメタル(mischmetal)の形態のREMは、AL 453合金の製造の間に添加する。ミッシュメタルは、混合REMの市販形であり、公知濃度のREM、セリウム、ランタン及びプラセオジミウムを含む種々の組成で入手できる。たとえば、製鋼で使用される一般的なミッシュメタル形は、公称50Ce-30La-20Pr(重量)である。AL 453(商標)合金の一般的な成分は、重量パーセントで公称22Cr-0.6Al-0.06(Ce+La)で、これと共に約0.3重量%でそれぞれシリコン、ニッケル及びマンガンを含み、残余は鉄と付随的不純物(たとえば約250ppmw(100万分の1重量分率の炭素と300ppmwの窒素)である。
【0035】
当業界で公知の如く、AL 453(商標)合金などのクロム含有合金にREMを添加すると、高温で付着性の、ゆっくりと成長する酸化クロムスケールが形成するはずである。しかしながら、従来のAL 453(商標)合金の高温耐酸化性は、通常、高-クロムの市販のフェライト系ステンレス鋼の高温耐酸化性よりも悪いと判断されていた。
【0036】
非変性の市販のフェライト系ステンレス鋼は、SOFCで内部接続として使用するのに好適な環境抵抗(environmental resistance)を持たないと考えられている。しかしながら、本発明の開示で記載されているように、意外にも、同様の組成をもつフェライト系ステンレス鋼とAL 453(商標)合金の一つ以上の表面の全てまたは一部を変性すると、変性面の耐酸化性を顕著に高められることが知見された。たとえば、以下の開示は、AL 453(商標)合金の表面を電気化学的に変性すると、SOFCの内部操作条件に典型的な空気及び温度に暴露したときに、従来の2BA表面(平滑ロールで冷間圧延し、次いで還元性乾燥水素雰囲気中で焼きなますことによって提供した標準的な商業ベースの仕上げ)で準備した同一合金と比較して数オーダー、表面の酸化速度が低下した。
【0037】
本明細書中で使用するように、合金または製品の表面または表面領域の「電気化学的変性」とは、その表面に化学物質の存在下で表面に電流を適用することである。
以下の実施例において、この電気化学的変性は、電解研磨の適用によって実施する。当業界で公知の如く、電解研磨とは、高度イオン性溶液中で電位及び電流の作用によって金属または金属合金の一部を電解除去する電気化学的プロセスである。電解研磨は、部品または要素などの金属製品の表面から材料の薄層を除去し、その製品の表面粗度を低下させて、表面の仕上げを改善するのに慣用的に使用される。典型的な慣用の電解研磨装置は、通常、加工品(workpiece)を加工するために設置する電解研磨溶液(通常、リン酸と硫酸との混合物)の入った浴を含む。この溶液は電解質として作用し、アノードからカソードへ金属イオンを運ぶ。加工品はアノードとして機能し、カソードは、通常、加工品(アノード)の表面に均等な電流密度を提供するように成形された好適な組成の一種以上の金属構造体の形状である。この加工品及びカソードはそれぞれ、整流器の正と負の端子に接続することができる。電流を浴中の加工品とカソードに適用するとき、加工品の表面上で電解研磨溶液のフィルムの特徴が変えられて、フィルムは粘稠となって、絶縁体または抵抗器の特徴を呈するものと従来より考えられている。この粘稠フィルムの厚さが厚ければ厚いほど、フィルムの抵抗または絶縁特性は大きくなる。従って、加工品の特定の表面について考えてみると、比較的薄い電気的に絶縁性フィルムが、加工品から大きく突出する部分を覆い、比較的厚い絶縁性フィルムは、加工品から突出する部分をそれほど覆わない。加工品の一部はさらに粘稠な絶縁性フィルムに突出し、絶縁性フィルムが薄いほど、カソードからその部分によって受け取られる電荷は増加する。このようにして、大きく突出する表面のでこぼこは、カソードから比例して多くの電流を受け、あまり突出していないでこぼこ表面よりもずっと迅速に溶解する。これは、表面のでこぼこを軽減し、優れた表面仕上げをつくるという効果がある。
【0038】
当業界で公知のように、この電解研磨プロセスは、多くの方法で実施することができる。たとえば、圧延の設定では、電解研磨はストリップ材料のコイルまたは仕上げ片上で実施できる。小さな実験スケールでは、鉄-クロムステンレス鋼で使用した一つの電解研磨法は、浅いガラス皿内に入った電解質に合金サンプルを浸漬することを含む。小スケールプロセスで使用する典型的な電解質の例は、約170゜Fの温度に保持される、25%硫酸−47%リン酸−28%グリコール酸(全て容積)の溶液である。電解質に浸漬されたサンプルを導電性の鉛を介して定電位電解装置(potentiostat)に接続し、約1amp/インチ2の電流を適用する。一つの特別なプロセスでは、合金サンプルを約20分間、このようにして電解研磨し、5分毎に反転させる。この合金サンプルは、サンドペーパーを使用して平滑面となるまで研磨し、次いで清浄/脱気することによって予備処理することもできる。
【0039】
特定の電解研磨技術に関し、本明細書においては、本発明の開示も付記請求の範囲も制限するものではない。本発明の開示を考慮すれば、当業者は、公知の電解研磨法を適合させて、本明細書に開示の組成をもつフェライト系ステンレス鋼の表面を電気化学的に変性して、本発明者によって発見された優れた耐酸化特性をもつ変性表面を提供する。
【0040】
特定のオーステナイト系ステンレス鋼の表面を電気化学的に変性することは公知である。たとえば、医学及び薬理用途で使用する特定のオーステナイト系ステンレス鋼を電解研磨して、亀裂のない清浄な表面を提供することは公知である。しかしながら、フェライト系ステンレス鋼の表面を電解研磨または電気化学的に変性することは一般的には公知ではなく、従来、高温耐酸化特性を改善するためにフェライト系ステンレス鋼を電解研磨することは有用であるとは考えられていなかった。
【0041】
電解研磨によって特定のフェライト系ステンレス鋼の耐酸化性を顕著に改善するという予想外の知見を示す結果を、以下の実施例に示す。以下の結果をもとにして、電気化学的変性によって提供される耐酸化性を改善させるには、少なくとも多少のアルミニウムとREMをステンレス鋼に配合しなければならないと考えられる。というのも、鋼中のこれらの合金化添加物の含有量を低下させると酸化が強まったことが知見されたからである。ステンレス鋼に必要であると考えられるクロムの濃度は、非常に広範であることが割り出された。フェライト系ステンレス鋼合金は、好適に耐熱性であるためには少なくとも16重量パーセントのクロムを含まなければならないが、26重量パーセントを超えるクロムを含む市販の鍛造フェライト系ステンレス鋼は、現在はない。
【実施例】
【0042】
実施例1
AL 453(商標)合金のコイルを、合金からスラブまたはインゴットに鋳造し、熱間圧延して帯材とし、冷間圧延して最終寸法とし、中間の応力除去焼きなましを行い、水素中で最終焼きなましすることにより、準備した。数枚の1"(インチ)×2"(インチ)試験片(test coupon)をコイルから調製し、三つの異なる表面処理によって加工した。それぞれの試験片は初期厚さ0.075"(インチ)であり、標準2BA仕上げで、脱脂し、端を仕上げた。この表面仕上げは、通常「圧延(mill)」表面と本明細書中で称し、この表面をもつサンプルは、本明細書中「圧延」サンプルという。幾つかの圧延サンプルをさらに、120グリットSiCペーパーを使用して研磨して、一方の側ごとに公称0.005"(インチ)分を除去した。このようにして製造したサンプルを本明細書中、「研磨:ground」サンプルという。この研磨サンプルの幾つかを約170゜F(約77℃)で1amp/インチ2で、20分間(サンプルは5分毎に反転させた)、容積比で25%硫酸−47%リン酸−28%グリコール酸を含む電解研磨溶液中で電解研磨して、幾つかの「電解研磨」サンプルを製造した。
【0043】
この三つの表面タイプを、高温酸化試験の前にオージェ電子顕微鏡を使用して特徴づけした。研磨し電解研磨したサンプルはいずれも、非常に薄い自然の酸化物(約30オングストローム厚さ)を示したが、圧延表面の酸化物は約4倍の厚さだった(約130オングストローム厚さ)。サンプルの間には表面の酸化物成分に著しい違いがあった。この圧延表面酸化物は、かなりのレベルのアルミニウムを含む酸化物だけであった。アルミニウムは酸素に対して親和性が高いので、水素焼きなまし炉中の残存酸素の痕跡量と反応して薄いアルミナスケールを形成する。研磨表面の酸化物は本質的にベース金属組成物を象徴し、自然の酸化物の形成により、これは空気中のすべてのクロム含有ステンレス鋼に関して生じる。この電解研磨サンプル上に形成した酸化物は、ベース金属に対して約60〜70%、たとえば約30重量パーセントの絶対レベルまでクロムの濃度が高い。研磨及び電解研磨表面の両方の上に、室温で形成したこの酸化物スケール中のアルミニウム含有量は、オージェ分析を使用して検出するには低すぎた。
【0044】
圧延、研磨及び電解研磨条件におけるそれぞれの表面をもつAL 453(商標)試験片を酸化アルミニウムるつぼに入れ、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)で5〜500時間、静かな大気(still air)に暴露した。このサンプルをオーブンから定期的に取り出し、秤量して酸化物スケール形成に対する耐性を評価し、約50時間の平均熱サイクル時間となった。
【0045】
図2及び3は、750℃(1382゜F)で500時間(図2)及び850℃(1562゜F)で500時間(図3)暴露した後の三つの表面処理を施した試験片を示す。圧延サンプルと研磨サンプルはいずれも、ステンレス鋼で通常観察される特徴的な消炭色の付着性酸化物スケールを形成した。しかしながら、電解研磨サンプルは、元の金属表面が目に見える透明な金色の酸化物フィルムを形成した。このことは、電解研磨サンプル上の酸化物は長期暴露時間にもかかわらず非常に薄く、圧延表面及び研磨表面に形成した酸化物スケールより実質的に薄かったことを示す。
【0046】
電解研磨サンプルの個々の重量測定から誘導した酸化データを図4に示す。これは750℃(1382゜F)及び850℃(1562゜F)における比重量変化(specific weight change)(mg/cm2)対時間をプロットし、測定は、データポイント#1として識別する。図5は、圧延サンプル、研磨サンプル及び電解研磨サンプルに関する温度での500時間後の比重量変化(mg/cm2)をグラフで示す。このデータは、圧延表面と研磨表面は実質的に同じ速度で酸化されるが、電解研磨サンプルは、暴露期間の間、他のサンプルよりもあまり重量が増加しなかったことを示す。サンプルの酸化性能の間の違いの優位性は、データを放物線速度定数(parabolic rate constant)として表すとより顕著である。この放物線速度定数は、全酸化重量変化を抽出して単一数、kpにする。放物線速度定数対温度の逆数(inverse temperature)の対数のアレニウスプロットで表すと、log kpの単位差(unit difference)は酸化速度の有意な減少として解釈される(たとえば、kpの2点減少は経時での比重量変化の約10倍減少に相当する)。以下の表2に示されているlog kp値をベースとして、電解研磨したサンプルの酸化速度は、機械的に仕上げた圧延表面と研磨表面よりも数オーダー低く、最終比重量変化が約1オーダー対応して減少した。図6に示されているように、利用可能な速度定数データに対してプロットすると、電解研磨したAL 453(商標)合金の速度曲線はアルミナよりも大きいが、通常のクロミアフォーマー(chromia former)や圧延仕上げのAL 453(商標)よりもかなり低いことが知見された。曲線のスロープによって表されるように、活性化エネルギーもかなり異なるので、従ってそれらはREM-ドープ化クロミアもアルミナも象徴していない。
【0047】
【表2】
【0048】
電解研磨サンプルの第二のセットを製造して、上記の知見を確認した。異なる試験炉を使用し、電解研磨サンプルは、炉内に異なるパターンで配置した。750℃(1382゜F)及び850℃(1562゜F)に加熱したこれらの電解研磨サンプルの周期的重量測定結果をデータ点#2として図4に表すが、データ点#1から誘導した結果と実質的に同じである。
【0049】
750℃(1382゜F)及び850℃(1562゜F)の両方で加熱した電解研磨サンプルにおける暴露後フィルム(post-exposure film)の走査オージェ顕微鏡(scanning Auger microscope:SAM)分析から、この酸化物スケールが単一相であり、オージェ中スタンダードレス準定量的分析(standardless semi-quantitative analysis)によって決定されるように、有意濃度のアルミニウム、鉄及びクロムを含んでいることが判明した。この電解研磨は富アルミニウム酸化物スケールの形成を促進するように見えたので、その根本的なメカニズムはSAM試験からは決定できなかった。圧延(光輝焼なましたもの)及び研磨表面の組成は、酸化試験の前に大きく異なるが、これらは、本質的に高温における同一酸化反応速度論を示し、電解研磨サンプルの反応速度論と実質的に異なる。表面研磨が耐酸化性を改善しないという知見に基づき、電気化学的変性表面をもつサンプルの優れた酸化性能は、表面の欠陥の除去だけの結果ではなかったと判断された。
【0050】
実施例2
AL 453(商標)合金の二つの異なるヒート(heat)のそれぞれから二つのコイルにおいて追加の試験を実施して、高温耐腐食性を有意に高めるための手段としての電解研磨の再現性を評価した。この出発物質は、標準AL 453(商標)材料として加工し、これは、熱間圧延した帯材から慣用の方法で0.075”に一段階で圧延して、光輝焼なましした。表3は、調製した試験サンプルの量を列記する。表4は、試験前の種々のサンプルタイプを処理するのに使用したプロセスについて記載する。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
表4に示されているように、「艶出し:polished」及び「再艶出し:re-polished」とされる二種類の追加の表面仕上げをしたサンプルで試験を実施した。「艶出し」とは、電解研磨表面の物理的平滑度に似せるために慣用のメタログラフ法を使用して機械的に艶出しして鏡面仕上げしたサンプルを指す。「再艶出し」とは、サンプルの電解研磨表面に近接した物質を除去するため及び鏡面仕上げを維持するために機械的に艶出しした電解研磨表面を指す。全部で24個のサンプルを、全部で4回の試験で、三種類の異なる炉を使用して、6個ずつのサンプル群により空気中、800℃(1472゜F)で250時間暴露させた。
【0054】
この試験結果は、電解研磨によって上記実施例1で達成された耐酸化性の改良点が完全に再現可能であることを示した。AL 453(商標)サンプルの表面を機械的に研磨または艶出しすると、標準的な圧延(光輝焼なまし)表面よりも耐酸化性が適度に改良された。しかしながら、電解研磨表面サンプルは、酸化重量変化で1オーダーの減少を示した。この結果は図7に(時間の関数としてサンプルタイプにおける平均比重量変化)、および図8の放物線プロット(時間の平方根の関数としてサンプルタイプにおける平均比重量変化)グラフにより示されている。
【0055】
800℃(1472゜F)において電解研磨したAL 453(商標)合金の耐酸化性も、数種の一般的な耐熱性ステンレス鋼とニッケルベースの合金の耐酸化性と比較した。これらは全て、高温酸化耐性に関して酸化クロムの形成に基本的に依存する。800℃(1472゜F)における実際のデータはこれらの合金の殆どに関して利用できなかったので、704℃(1300゜F)、760℃(1400゜F)、816℃(1500゜F)、及び871℃(1500゜F)で得られたデータを挿入して、所望の温度における予想サンプルの比重量変化曲線を出した。電解研磨AL 453(商標)合金に関する結果を、図9にこれらの曲線とともにプロットする。最高の酸化クロムフォーマー(E-BRITE(登録商標)合金、タイプ309S合金及びAL 600(登録商標)合金)は、800℃(1472゜F)で250時間後に電解研磨AL 453(商標)合金の約10倍も重量増加する。
【0056】
上記試験結果は、AL 453(商標)合金または同様の組成の合金の一種以上の表面を電解研磨または電気化学的に変性することにより、変性表面の高温耐酸化性を実質的に改善すること、及びこの現象は再現可能であって、商業的に適用し得ることを示している。酸化速度の低下は、電解研磨など、電気化学的変性によってできた構造をもつ表面に特徴的なようであり;機械的に艶出しして鏡面仕上げしても同様の結果は出ず、電解研磨表面を軽く艶出しすることによって、変性表面層を除去すると、耐酸化性の改良点を損なう。
【0057】
電解研磨材料によって示された高温耐酸化性によって、この材料は、SOFC用の内部接続などの高温用途で使用するのに好適になる。表面積比抵抗(Area Specific Resistance:ASR)は、燃料電池の内部接続の性能と、それが表面の酸化物スケールが厚くなるに連れて経時で劣化するか、及び電流に大きく抵抗するかを表す。近年の研究から、慣用のAL 453(商標)合金及びE-BRITE(登録商標)合金は、特定の他の富クロムフェライト系ステンレス鋼と共に、長期SOFC操作で許容できないほど高いASR値に到達することが示されている。というのも、これらの材料に形成した酸化物スケールは、成長が早すぎて、燃料電池スタックの個々の電池の間の電流を妨げるからである。もっと耐酸化性のアルミニウム含有フェライト系ステンレス鋼はより薄いアルミナ表面スケールを形成するが、酸化アルミニウムの本質的な電気抵抗は、長い間に許容できないほど高いASR値になる。以下の実施例3で議論する、高温で電解研磨AL 453(商標)合金に形成した薄い富アルミニウム酸化物の構造的特徴から、この酸化物がアルミニウムと共にかなりのレベルの鉄とクロムを含んでいることを確認し、このことは電解研磨AL 453(商標)合金に形成したこの酸化物は酸化アルミニウムよりも絶対的な意味でより導電性であることを示唆している。このことは、酸化速度が遅いため厚さが減少することと相まって、ASR上昇の遅い速度によって明らかになるように、優れた性能になるはずである。アルミニウムと鉄とが存在することによって、純粋な酸化クロムが空気及び水蒸気の存在下、高温で蒸発する傾向も低下するはずである。揮発性のクロミアは電池の他の場所に付着し、セラミックカソードなどの要素が損傷することによって性能が低下するため、これはPSOFCにおける高温攻撃(high temperature attack)の主な原因である。
【0058】
実施例3
静電半球型X線回折法(Glancing incidence X-ray diffraction technique)を使用して、本発明の開示の電気化学的変性フェライト系ステンレス鋼の態様で形成した酸化物フィルムの性質を特徴づけした。慣用の光輝焼なましAL 453(商標)合金の酸化は、約16重量%以上のクロムを含む耐熱性ステンレス鋼に典型的な方法で起きる。Al2O3は熱力学的に安定であり、合金の表面と直接接触して形成するはずである。しかしながら、アルミナの連続層の成長を維持するために金属/酸化物界面に対して充分に早く拡散させるには、最小約3重量パーセントのアルミニウムが必要である。従って、慣用の光輝焼なましAL 453(商標)合金では、酸化クロム(Cr2O3)層が、かなりの量の鉄とスピネル型酸化物と共に、合金表面と直接接触して形成する。酸化アルミニウム粒子は、スケール/合金界面に隣接した合金中に形成する。そのような挙動は、1950年代にCarl Wagnerによって最初に提案された合金酸化の確立した理論と一致する。C.Wagner,Z,Electrochem.,63巻、772頁(1959年)を参照されたい。
【0059】
Philips製X'Pert回折計を使用して、800℃(1472゜F)で250時間暴露しておいた、電解研磨AL 453(商標)合金(ヒート#898042、コイル#03232C123A)のサンプルを走査した。この回折計は静電半球型モードで操作し、ここで入射ビームは、サンプル表面の近くにパターンを得るために、角度オメガ(Ω)で表面に対して斜めである。単色Cu Ka並行X-線供給源は、入射ビームとして供給した。回折パターンは、1度及び3度のΩ値で得られ、これは表面フィルム反射と共に、フェライト系ステンレス鋼由来のピークが両方のパターンに含まれ、他の反射の位置及び強度に関して参照点として使用した(基材ピークの強度は、Ωが増加するに連れて表面フィルムピークに対して増加する)。走査は約0.02度/秒の走査速度で、10゜〜90゜2θで実施した。最大絶対強度は1゜Ωパターンで約1,000カウントであり、3゜Ωパターンでは約4,000カウントであった。Philips製X’PertソフトウエアのSearch-Matchルーチンを使用して、相識別用の予想整合パターンのリストを提供した。
【0060】
回折計の結果をベースとして、電解研磨AL 453(商標)サンプル上の酸化物フィルムは、ヘマタイト構造(M2O3)をもつ単一相であった。実験的に決定した回折パターンは、単一相を象徴する。測定した格子パラメーターは、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0であった。回折計の結果は、酸化物フィルムに関する公称格子パラメーターがa0=4.98Å、c0=13.57Åであると示唆する。電解研磨AL 453(商標)サンプル上に形成した酸化物フィルムの公称格子パラメーターは、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3の代表的な格子パラメーターと共に表5に列記する。電解研磨したサンプル上の酸化物フィルムの実測格子パラメーターは、Fe2O3(ヘマタイト、大きな格子パラメーター)、アルファCr2O3(エスコライト、小さな格子パラメーター)及び鉄と置換したクロムを含むヘマタイトの種々の相の間に挟まれている。アルファAl2O3の参照パターン(コランダム、ヘマタイト等構造群の構成員)は、アルファAl2O3がかなり小さな格子パラメーターを示すので、電解研磨AL 453(商標)合金用に関し実験的に決定された回折パターンと一致しない。
【0061】
従って、格子面間隔の測定値は、富アルミニウム酸化物フィルムを構成する相がCr2O3とFe2O3の中間の格子パラメーターをもち、Al2O3により示されたものよりもかなり小さいことを示す。従って、電気化学的変性サンプル上に形成した酸化物フィルムはアルミニウムの濃度が高いが、これはアルファ-アルミニウムには典型的ではない。かくして、電解研磨サンプル上に形成した富アルミニウム酸化物層は、高度に電気的に抵抗性のアルファAl2O3の単独からなるとは知見されなかった。
【0062】
【表5】
【0063】
実施例4
ミッシュメタルとして添加した、アルミニウム、クロム及びREM、特にセリウム及びランタンの種々のレベルの高温酸化性能に対する効果を評価した。5個の50lbのVIMヒートを表6に示されている成分で溶解し、酸化試験用に0.075”(インチ)厚さに加工した。各ヒートからのサンプルを、120グリット仕上げに研磨した表面をもつサンプルと、電解研磨によって電気化学的に鏡面仕上げした変性表面と共に、ベースラインとして酸洗い条件(pickled condition)で試験した。全てのサンプルは、表面処理毎に二つのサンプルを使用して、800℃(1472゜F)で250時間、暴露した。酸洗いサンプルと研磨サンプルのそれぞれは、典型的な2BA AL 453(商標)材料と匹敵し得るか、それよりやや優れた耐酸化性を示した。
【0064】
【表6】
【0065】
AL 453(商標)合金中の公称含有量に対してクロム含有量を変動させると、電解研磨サンプルの重量増には小さな影響しかなかった。図10に示されているように、低クロムヒートRV1908(17.8%)の電解研磨サンプルは、高クロムヒートRV1909(23.3%)の電解研磨サンプルよりもよく機能したが、高クロムヒートは、低レベルのREMを含んでいた。ヒートRV1908及びRV1909の両方からの電解研磨サンプルは、電解研磨した標準AL 453(商標)合金と匹敵し得る酸化性能を示した。低クロム含有量を含むフェライト系ステンレス鋼は通常安価であり、容易に製造でき、シグマまた他の脆性相をあまり成長させそうもないという点でより安定である。また、本明細書の結果は、低クロム合金に適用したときに、電解研磨が耐酸化性を促進するのに僅かに効果的であることを示す。他方、高クロムレベルはCTEを下げ、これは、SOFCで内部接続材料としての合金の性能を改善することができる。これらの観察結果を考慮すると、コスト及び冶金学的配慮に照らして、クロムは本発明の開示のフェライト系ステンレス鋼中、約16から約30重量%未満で配合するのが好ましく、16から19重量%以下の範囲がより好ましい。
【0066】
アルミニウム含有量を変動させると、電解研磨によって電気化学的変性表面をもつサンプルの酸化的重量増に大きな影響があることが知見された。図11に示されているように、低アルミニウムヒートRV1917(0.32%)の電解研磨サンプルは、電解研磨標準AL 453(商標)合金と高アルミニウムヒートRV1929(0.95%)の電解研磨サンプルの両方に対して悪い結果となったが、また標準的圧延仕上げのAL 453(商標)合金サンプルに対しては二倍の重量利得低減を示していた。他方、高レベルのアルミニウムを添加するとアルミナが形成する危険性があり、これは、SOFC内部接続用途に適用しようとすると、材料の電気抵抗に負の影響を与えるかもしれない。これらの結果をベースとして、アルミニウムは、少なくとも0.2重量パーセント、より好ましくは約0.2重量パーセントから約1.0重量パーセント以下の量で本発明の開示のフェライト系ステンレス鋼に配合するのが好ましい。
【0067】
図12に示されているように、REMを除去すると、耐酸化性に非常に大きな影響があった。REMを含まないヒートRV 1912(0.02%のセリウム+ランタンの残存レベル)の酸化性能は、電解研磨によって製造した電気化学的平面変性の有益な効果が、AL 453(商標)合金のREMを含まないバージョンでは実質的に完全に除去されたことを示した。他方、高レベルのREMを添加すると、合金をオーバードープし、富REM粒子の酸化によって過剰の重量増となる。従って、本発明の開示のフェライト系ステンレス鋼の全REM含有量は、好ましくは0.2重量%を超え、約1.0重量%以下である。かなりのレベルのセリウムとランタンとを含むミッシュメタルを本明細書中の実施例で使用したが、REMを単独で使用することができ、他のREMをセリウム及び/またはランタンの代わりに、またはこれに添加して使用することもできると考えられる。たとえば、イットリウムは、通常、最も有効なREMであると考えられているが、かなり高価である。ハフニウムも通常有効REMと考えられているが、ミッシュメタルより利用可能性が低い。他のREMは、商業的な量を入手するのが非常に難しい。
【0068】
図13は、酸化試験の結果をまとめたものである。REM、特にセリウムとランタンとを添加すると、電解研磨材料で酸化による重量増が減少したということが観察されなければならないようにみえる。電解研磨効果は、アルミニウム含有量に対して感受性であるようにも見え、減退効果は、アルミニウムレベル0.32%であった。アルミニウム含有量が、たとえば1.0%以下またはそれ以上に増加すると、重量変化でさらに減少が起きると考えられる。実施した実験の範囲内で、電解研磨によって製造した電気化学的表面変性は、種々のクロム含有量に特に感受性であるようには見えない。これらの結果を考慮すると、電解研磨によって製造したような電気化学的表面変性が有用な好ましいフェライト系ステンレス鋼組成は、重量%で、約18%〜約22%のクロム、約0.4%〜約0.8%のアルミニウム及び約0.02%〜約0.2%のREMを含む。電気化学的表面変性が有用なもう一つの好ましいフェライト系ステンレス鋼は、重量%で、約18%のクロム、約0.8%のアルミニウム及び約0.3%のREMを含み、SOFC内部接続に特に適した材料を提供することができる。クロム、アルミニウム及びREMに加えて、本発明の開示に記載の方法によって好都合に加工し得るフェライト系ステンレス鋼は、当業界で公知の他の合金添加物を含むことができる。たとえば、そして本発明の開示の範囲を限定するものではないが、フェライト系ステンレス鋼の特定の態様としては、3重量%以下のニッケル、3重量%以下のマンガン、0.7重量%以下の珪素、0.07重量%以下の窒素、0.07重量%以下の炭素及び0.5重量%以下のチタンを含むことができる。
【0069】
本発明の開示に従って加工したフェライト系ステンレス鋼の高温耐酸化性の観点から、そのようなステンレス鋼は、SOFC及びPSOFCなどの燃料電池の内部接続として好都合に適用できる。さらに、本明細書に記載のフェライト系ステンレス鋼を含めるために好都合に構築し得る追加の製品の例としては、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置及び熱交換部品などの高温で比較的酸化性雰囲気に暴露される装置が挙げられる。さらに、製品に組み込むことを意図した、プレート、シート、ストリップ、ホイル及びバーなどのフェライト系ステンレス鋼製品を、本明細書中に記載の方法を使用して加工することもできる。上記製品は本明細書に記載のフェライト系ステンレス鋼を含み得る製品の単なる例であり、且つそのような他の製品は、本発明の開示を検討した後では当業者には明らかであると考えられよう。また、本発明の開示は、電解研磨を使用してフェライト系ステンレス鋼の表面を電気化学的に変性する実施例を含むが、本発明の開示は、これに限定されるものではなく、高温耐酸化性で同様の改良点を示す表面を処理フェライト系ステンレス鋼に提供する、金属表面を電気化学的に変性する他の手段も包含することが理解されよう。
【0070】
本発明の開示は、本発明を明確に理解することに関して本発明のこれらの側面を説明するものと理解されよう。当業者に明らかであって、本発明を理解しにくい発明の特定の側面は、本発明の記載を単純化するために示されていない。本発明の態様について記載してきたが、当業者は、上記記載を考慮して、本発明の多くの変形及び変化を利用し得ることを理解するだろう。本発明のそのような全ての変形及び変化は、上記記載及び付記請求の範囲によって網羅されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】PSOFCスタックの一部の部材の概略図である。
【図2】空気中、750℃(1382゜F)で500時間暴露した後の圧延(mill)、研磨または電解研磨表面をもつ、AL 453(商標)ステンレス鋼の試験片の写真である。
【図3】空気中、850℃(1562゜F)で500時間暴露した後の圧延、研磨または電解研磨表面をもつ、AL 453ステンレス鋼の試験片の写真である。
【図4】空気中、750℃(1382゜F)と850℃(1562゜F)で暴露した電解研磨表面をもつAL 453ステンレス鋼のサンプルの、経時での比重量変化(mg/cm2)のプロットである。
【図5】空気中、750℃(1382゜F)と850℃(1562゜F)で500時間暴露した後の電解研磨表面をもつAL 453ステンレス鋼のサンプルの、経時での比重量変化(mg/cm2)のグラフである。
【図6】耐酸化性に関して酸化クロムと酸化アルミニウムの形成に依存する一般的な耐熱性合金と標準AL 453(商標)ステンレス鋼と比較した電解研磨AL 453(商標)ステンレス鋼の酸化性能のアレニウスプロットである。
【図7】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した幾つかの表面を異なるようにして製造したAL 453ステンレス鋼のサンプルの経時での比重量変化のプロットである。
【図8】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した幾つかの表面を異なるようにして製造したAL 453ステンレス鋼のサンプルの時間の平方根での比重量変化の放物線プロットである。
【図9】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した電解研磨AL 453ステンレス鋼及び他の数種の耐熱性ステンレス鋼及びニッケルベースの合金のサンプルの、経時での比重量変化のプロットである。
【図10】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した種々のレベルのクロムを含む数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの経時での比重量変化のプロットである。
【図11】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した種々のレベルのアルミニウムを含む、数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの経時での比重量変化のプロットである。
【図12】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した種々のレベルの希土類金属を含む数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの比重量変化のプロットである。
【図13】空気中、800℃(1472゜F)に250時間暴露した後の種々のレベルの合金化添加物を含む数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの比重量変化結果の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製造法に関する。本発明はまた、少なくとも一つの耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼、さらにそのようなフェライト系ステンレス鋼で製造したまたはこれらを含む製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、気体燃料と酸化性ガスとをイオン導電性電解質を介して電気化学的に化合させることによって電気と熱とを発生させるエネルギー変換装置である。燃料電池の主な特徴は、燃焼の非存在下で化学エネルギーを電気エネルギーに直接転換する能力であり、これによりピストンエンジン、ガスタービン、及びエネルギーを生み出す他の慣用の熱機械的方法よりもかなり高い転換効率を提供する。同じ出力電力に関しては、燃料電池は化石燃料をベースとする技術よりも実質的に二酸化炭素放出が少ない。燃料電池も極少量のSOx及びNOxを生産するが、これは酸性雨及び光化学スモッグの主成分である。
【0003】
現在、数種の燃料電池の開発が進められている。これらの燃料電池の間の主な違いは、電解質として使用する材料であり、これは操作温度に影響する。NASAは、アポロ及び他の宇宙船に動力供給するために1960年代に液体電解質を含むアルカリ燃料電池を開発し、現在、NASAはスペースシャトルでは高度改良版を使用している。対照的に、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、電解質として高速酸素イオン-導電性セラミック(fast oxygen ion-conducting ceramic)(通常、イットリア安定化ジルコニア、即ちYSZ)を使用する、完全に固体状態の物質によって構築され、約500℃(932゜F)〜1000℃(1832゜F)の温度範囲で操作して固体状態遷移を容易にしている。他のタイプの燃料電池と比べてSOFCの好都合な点としては、高エネルギー効率と、電解質の取り扱いにあまり問題がないということがある(液体電解質は、通常、腐食性であり、取り扱いが難しいだろう)。SOFCは高度な廃熱も生産するが、これは熱電気複合利用装置で使用することができ、(水素とメタンを生産するために)炭化水素燃料の内部改質(internal reforming)も可能である。
【0004】
アメリカ合衆国においてSOFCの開発を推進させる組織は、Solid State Energy Conversion Alliance(SECA)である。SECAは、SECAメンバーの会社によって開発された方法を使用して統合的なSOFCの構築を目的とするインダストリー・グループ(Industry Group:同業種グループ)と、全体として同業種グループの需要によって推進される基礎研究を実施するコア・テクノロジー・グループ(Core Technology Group)とからなる。化石燃料のエネルギー庁のアメリカ合衆国部門(the United States Department of Energy's Office of Fossil Energy)によって組織化され監督されるこのSECAプログラムでは、開発中のSOFCの一定のコストと性能目標を設定した。
【0005】
一つのSOFC「電池」またはサブユニットは、電解質によって隔てられたアノードとカソードを含む。現代のSOFCは約1000℃(約1832゜F)以下の温度で操作するので、電極は、通常、環境劣化を避けるためにセラミック材料から構築される。アノード層とカソード層はいずれも通気孔のネットワークを確立することによって意図的に気体浸透性としてあり、優れた導電体である(例えばこれらは本質的に非イオン伝導性を示す)。現代のSOFCでは、アノードは通常、導電性ニッケル/YSZ複合体(セラミック/金属複合体、即ちサーメット:cermet)から形成される。このニッケルは連続的な導電性パスを提供するのに対し、YSZは複合体全体の熱膨張係数を下げ、孔が焼結によって閉塞しないようにする。ニッケル粒子は、アノードに存在する富水素気体によって酸化から保護され、これは純粋なニッケルに還元される。たとえばカソードは、通常、その導電性を改善するためにストロンチウムでドープしたマンガン酸ランタン(LaMnO3)をベースとすることができる(ランタンの幾らかを置き換えてLa1-xSrxMnO3を製造する)。この電解質は、通常、(アノード及びカソードと比べて)全体的に密なYSZの薄層である。
【0006】
SOFC電池の操作の間、酸化剤(たとえばO2または空気)をカソード側の燃料電池に供給し、そこでは、酸化剤が、以下の半電池反応:
【0007】
【化1】
【0008】
に従って外部回路から電子を受け取ることにより酸素イオンを電解質に供給する。
この酸素原子は、固体状態の拡散によってYSZ電解質内を電解質/アノード界面へ通過する。SOFCは基本的燃料として水素(H2)及び/または一酸化炭素(CO)を使用することができる。操作上、供給されたままの純粋な水素を使用することができるが、メタン、ケロセン、またはガソリンなどの炭化水素燃料は部分的に燃焼、または改質(reform)して水素と一酸化炭素にしなければならない。これは通常、高い操作温度及び蒸気注入を使用して助成した、燃料電池内で内部的に実施される。この燃料気体混合物はアノードを浸透してアノード/電解質界面に到達し、ここで以下の二つの半電池反応:
【0009】
【化2】
【0010】
でイオン導電性電解質からの酸素イオンと反応する。
これによって電子が放出され、外部回路に再入する。カソードからアノードへ電解質内の酸素イオン輸送に起因する電荷の流れは、外部回路中の電子伝導による電荷の流れによって正確にバランスを保つ。全体の電荷バランスを維持するには、駆動力が必要である。外部回路の電子の流れによって、約1ボルト電位の有用な電力を供給する。
【0011】
適度な電圧を発生させるために、燃料電池は単一装置ではなく、すぐ隣の電池のアノードとカソードの間の電流を「内部連絡」連結及び誘導した一つ一つの電池を数個連続配置して構成される「スタック」として操作される。一般的なスタックデザインは、平板または「平面的(planar)」SOFC(PSOFC)であり、これは図1に概略形が示されている。図1のPSOFC10では、単一のエネルギー転換セル12は電解質40によって隔てられたアノード20とカソード30とを含む。内部連絡50は、スタック内で(完全に示されていないが)直ぐ隣のエネルギー転換セル14のカソード60からアノード30を隔てる。PSOFC10は、それぞれ隣接する装置との間に配置された内部連絡によって、セル12と同一のセルの繰り返し配置を含む。
【0012】
SOFC内部連絡のデザインは重要である。というのも、この内部連絡は、反応体ガスを分離及び含有し、電流用の低抵抗パスを提供してセルを直列で電気的接続することを含む、幾つかの機能を提供するからである。通常、この内部連絡の材料は、セル内の過酷な高温環境条件に耐えなければならず;(その材料上に形成する全ての酸化物または他の表面フィルム若しくはスケール腐蝕を含んで)好適に導電性でなければならず;及び燃料電池スタックの不可欠な構造的完全性及び気密性を確保するために、セルの内部でセラミック電極のCTEと充分に類似する熱膨張係数(coefficient of thermal expansion:CTE)をもたねばならない。
【0013】
初期のPSOFCデザインでは、内部連絡材料としてドープ化クロム酸ランタン(LaCrO3)セラミック材料を使用した。LaCrO3セラミックは、SOFC操作高温で劣化せず、燃料電池の他のセラミック成分と実質的に適合する熱膨張係数をもつ。しかしながら、LaCrO3セラミックは、もろく、成形が困難で、非常に高価である。これらの欠点に対処するために、PSOFCで使用する金属製の内部連絡が提案されてきた。これらには、AL 600(商標)合金などのニッケルベースの合金と、タイプ304合金のプロトタイプである300シリーズ群などの特定のオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。ALFA-II(商標)合金、E-BRITE(登録商標)合金及びAL 453(商標)合金などのフェライト系ステンレス鋼もPSOFC内部連絡で使用するのに提案されてきた。表1は、その全てがAllegheny Ludlum Corporation(ピッツバーグ、ペンシルバニア州)より市販されている上記ニッケルベース合金及びステンレススチール合金の公称組成を提供する。
【0014】
【表1】
【0015】
フェライト系ステンレス鋼は、低コスト、優れた加工性及びセラミックと適合可能なCTEを含む、PSOFC内部連絡用途に魅力的にする特性をもつ。しかしながら、通常、金属製内部連絡は、PSOFC操作に典型的な高温では導電性の低い表面酸化物層を形成する傾向がある。この層は、長い間に厚く成長し、全体としてPSOFCスタック及び内部連絡の抵抗率を上昇させる。高温で酸素に暴露すると、合金によっては非常に遅い速度で厚くなる表面酸化物(たとえばALFA-II(登録商標)合金のAl2O3スケール)かまたは、高い導電性である表面酸化物(たとえば純粋または分散液-強化ニッケルのNiOスケール)を形成する。しかしながら、これらの二つの一見ばらばらな因子(抵抗率及び酸化物形成速度)を制御する根本的なメカニズムは本質的に同じ(酸化物の電子欠陥構造)なので、結果としてゆっくりと成長し、且つ導電性でもあるほんの二三種の酸化物となる。
【0016】
フェライト系ステンレス鋼は一つには内部連絡材料として注目されてきた。というのも、その従来の形状では、これらは本質的に酸化クロム(Cr2O3)からなるスケールを成長させ、高温で比較的ゆっくりと成長し、且つ高温で導電性だからである。クロムの酸化に依存する耐熱性合金は、比較的遅い酸化物スケールの成長と高温でのかなりの導電性との間に妥協点を提供することができる。そうはいっても、市販のクロミア形成性フェライト系ステンレス鋼の酸化劣化速度では、長い間に燃料電池スタックの性能が低下するだろう。内部連絡を構築し得る別の非金属材料、特にペロブスカイト・セラミック(perovskite ceramic)(たとえばLaCrO3)は同じようなレベルの劣化は示さないものの、PSOFCスタックのコストを非経済的レベルに押し上げる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、長期にわたってPSOFC操作条件に暴露したときに、経済的であり、且つ好適なレベルの耐酸化性を示す、新規燃料電池内部連絡材料に対する需要がある。一般に、高温で酸化性環境に暴露したときに、優れた耐酸化性をもつフェライト系ステンレス鋼に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記需要に対処するために、本発明の開示では、耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼製品の製造法を提供する。本方法は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える、前記フェライト系ステンレス鋼を提供することを含む。前記フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、変性した表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ、導電性の、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールを成長させるように変性する。本方法の特定の態様では、富アルミニウム耐酸化性酸化物スケール(aluminum-rich、oxidation resistant oxide scale)の格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3の格子パラメーターとは異なる。また、本方法の特定の側面では、このフェライト系ステンレス鋼の変性表面は、たとえばこの表面を電解研磨することによって、電気化学的に変性する。
【0019】
本発明の開示は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属と16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える前記フェライト系ステンレス鋼にも関する。このフェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面は、変性表面が750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)の温度で、100時間以上酸化性雰囲気中で加熱したときに、富アルミニウム酸化物スケールを成長させるように変性され、このとき、前記酸化物スケールは、鉄とクロムとを含み、且つ約4.95〜5.04Åのa0及び約13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造を有する。
【0020】
本発明の開示はさらに、耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼製品の製造法に関し、ここで前記スチールは、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属と16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムとを含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。このフェライト系ステンレス鋼の耐酸化性表面は、たとえば前記表面を電解研磨することによって、表面を電気化学的に変性することによって提供される。本方法の一態様において、電気化学的変性表面は、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)の温度で、酸化性雰囲気中、100時間以上加熱したときに、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。また、本方法のある態様では、本製品は、平板、シート、ストリップ、ホイル、バー、燃料電池内部連絡、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置、及び熱交換部品の一つである。フェライト系ステンレス鋼の表面を電解研磨する一つの例としては、電解研磨溶液とカソードとを含む浴中に製品の表面を設置し、材料が表面から除去されるようにスチールとカソードとの間に電流を通して、表面粗度を小さくすることを含む。電解研磨表面は、たとえば固体酸化物燃料電池内の操作条件に特徴的な温度及び雰囲気に暴露したときに、酸化に対して優れた耐性を示すことが知見された。
【0021】
本発明の開示のもう一つの側面は、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムと少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超えるフェライト系ステンレス鋼製品の高温耐酸化性を改良する方法に関する。本方法は、例えば前記表面を電気化学的に変性することによって、製品の表面を変性することを含む。電気化学的に変性する一つの例は、電解研磨表面である。この変性表面は、燃料電池の操作の間、固体酸化物燃料電池内部連絡が暴露される雰囲気及び温度条件に暴露したときに、ヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物層を成長させる。
【0022】
本発明の追加の側面は、SOFCの製造法に関する。本方法は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む少なくとも一つのSOFC内部接続を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。この内部接続は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つヘマタイト構造をもつ導電性の、富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる、少なくとも一つの変性表面を含む。この変性表面は、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ、導電性の、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールを成長させる。本方法の特定の態様では、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のものとは異なる。内部接続と、少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソード、及び少なくとも一つの電解質を含む追加の要素とを組み立ててSOFCを提供する。
【0023】
本発明の開示のもう一つの側面は、固体酸化物燃料電池の製造法に関し、ここで、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属と16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む少なくとも一つの内部接続を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。この内部接続は、少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む。この表面は、たとえば表面を電解研磨することによって電気化学的に変性することができる。内部接続と、少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソード、及び少なくとも一つの電解質を含む追加の要素を組み合わせて燃料電池を提供する。本方法の一つの態様では、電解研磨表面は、750℃(1382゜F)〜850゜F(1562゜F)の範囲の温度に、酸化性雰囲気中で、100時間以上加熱したときに、鉄とクロムを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0をもつヘマタイト構造をもつ、富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。
【0024】
本発明の開示は、アルミニウムと、少なくとも一種の希土類金属と、16重量パーセント以上で30重量パーセントのクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える、前記フェライト系ステンレス鋼にも関する。このフェライト系ステンレス鋼は、さらに高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ、導電性の、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールを成長させる、少なくとも一つの変性表面を含む。特定の態様では、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のものとは異なる。また特定の態様では、この酸化物スケールは、4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0を特徴とする。また、特定の態様では、フェライト系ステンレス鋼の変性表面は、たとえば電解研磨表面などの、電気化学的変性表面である。
【0025】
本発明のもう一つの側面は、固体酸化物燃料電池の製造法であって、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記フェライト系ステンレス鋼は少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、フェライト系ステンレス鋼に関する。特定の態様では、少なくとも一つの電気化学的変性表面は、電解研磨表面であり、ここで少なくとも一つの電解研磨表面は、酸化性雰囲気中で、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)の温度に100時間以上加熱したときに、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0をもつヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。さらに本明細書中で記載されたように、フェライト系ステンレス鋼の特定の態様では、少なくとも一つの電気化学的変性表面は、固体酸化物燃料電池中で操作条件の特徴的な雰囲気及び温度条件に暴露したときに、優れた耐酸化性を示す少なくとも一つの電気化学的変性表面である。
【0026】
本発明の開示の追加の側面は、16重量パーセント以上で30重量パーセントのクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、及び少なくとも一種の希土類金属を含むフェライト系ステンレス鋼を提供し、前記希土類金属の総重量は0.02から1.0重量パーセント以下である。このフェライト系ステンレス鋼はさらに、750℃〜850℃の温度で、空気中で加熱したときに、富アルミニウム酸化物層を成長させる少なくとも一つの耐酸化性変性表面を含む。特定の態様において、この変性表面は、たとえば電解研磨表面などの電気化学的変性表面である。
【0027】
また本開示は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む製品を開示し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。このフェライト系ステンレス鋼はさらに、電気化学的変性表面であってもよい、少なくとも一つの変性表面を有する。高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、この変性表面は、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる。特定の態様において、この変性表面は電解研磨表面である。
【0028】
本発明の開示は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む製品を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。このフェライト系ステンレス鋼は、電気化学的変性表面などの少なくとも一つの変性表面を含む。少なくとも一つの電気化学的変性表面は、たとえば少なくとも一つの電解研磨表面であってもよい。特定の態様において、この製品は、燃料電池、固体酸化物燃料電池、平坦な酸化物燃料電池、燃料電池内部接続、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置及び熱交換部品から選択される。
【0029】
本発明の開示の追加の側面は、アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質中間体と内部接続を含む燃料電池について記載する。この内部接続は、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムと、少なくとも一種の希土類金属を含むフェライト系ステンレス鋼を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02から10重量パーセント以下である。このフェライト系ステンレス鋼は、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のヘマタイト構造とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性の富アルミニウム耐酸化性酸化物スケールを成長させる少なくとも一つの変性表面を含む。燃料電池の特定の態様では、富アルミニウム、耐酸化性酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0は、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のものとは異なる。燃料電池の特定の態様では、フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの変性表面は、電解研磨表面などの電気化学的変性表面である。
【0030】
本発明の開示のさらなる側面では、アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質中間体と、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む内部接続を含む燃料電池を提供し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える。フェライト系ステンレス鋼は、電解研磨表面などの少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む。一つの態様において、このフェライト系ステンレス鋼の電解研磨表面は、酸化性雰囲気中で、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)で100時間以上加熱したときに、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0をもつヘマタイト構造をもつ、富アルミニウム酸化物スケールを成長させる。特定の態様において、この燃料電池は、固体酸化物燃料電池及び平坦な固体酸化物燃料電池から選択することができる。また特定の態様において、燃料電池は複数のセルを含む燃料電池スタックの一部であり、それぞれのセルはアノード、カソード、電解質及び内部接続を含み、ここで前記内部接続は複数の電池を電気的に直列に接続する。
【0031】
本発明の開示で記載のこの新規方法、材料及び製品は、たとえばPSOFCの内部操作条件に特徴的な高温条件に長時間暴露したときに、従来の代替材料と比較して経済的であり、且つ好適なレベルの耐酸化性を示すフェライト系ステンレス鋼に関するか、またはこれを含む。従って、本発明の開示に記載の新規方法、材料及び製品は、PSOFC及び他の燃料電池の製造での適用に特に適しているものと考えられる。通常、本発明の開示に記載の新規方法、材料及び製品は、高温で酸化性環境中に暴露したときに、優れた耐酸化性を示すフェライト系ステンレス鋼並びに、そのようなステンレス鋼を含む製品を提供する。
【0032】
これら及び他の好都合な点は、特定の態様に関する以下の記載を参照して明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
上記の如く、フェライト系ステンレス鋼は、SOFC内部連絡用の可能な費用効率的置換材料として考えられてきた。しかしながら、内部接続の両側を流れる気体反応体は、鉄-クロムフェライト系ステンレス鋼に対して腐食性である。酸化された内部接続は、あまり効率的でない電流導体であるので、全体としての燃料電池スタックの効率は、燃料電池内の内部接続上の酸化物層の厚さが増加するに連れてやがて低下する。現行の金属内部接続の固有の限界から、内部接続表面上の過剰な酸化を防ぐために、比較的非効率的な低温操作(約700℃(1292゜F))に利用可能なPSOFCデザインを限定していた。
【0034】
SOFC内部接続材料として使用することがこれまで検討されていた一つのフェライト系ステンレス鋼はAL 453合金であり、これは希土類金属(REM)を含み、上記表1に示された公称組成をもつフェライト系ステンレス鋼である。ミッシュメタル(mischmetal)の形態のREMは、AL 453合金の製造の間に添加する。ミッシュメタルは、混合REMの市販形であり、公知濃度のREM、セリウム、ランタン及びプラセオジミウムを含む種々の組成で入手できる。たとえば、製鋼で使用される一般的なミッシュメタル形は、公称50Ce-30La-20Pr(重量)である。AL 453(商標)合金の一般的な成分は、重量パーセントで公称22Cr-0.6Al-0.06(Ce+La)で、これと共に約0.3重量%でそれぞれシリコン、ニッケル及びマンガンを含み、残余は鉄と付随的不純物(たとえば約250ppmw(100万分の1重量分率の炭素と300ppmwの窒素)である。
【0035】
当業界で公知の如く、AL 453(商標)合金などのクロム含有合金にREMを添加すると、高温で付着性の、ゆっくりと成長する酸化クロムスケールが形成するはずである。しかしながら、従来のAL 453(商標)合金の高温耐酸化性は、通常、高-クロムの市販のフェライト系ステンレス鋼の高温耐酸化性よりも悪いと判断されていた。
【0036】
非変性の市販のフェライト系ステンレス鋼は、SOFCで内部接続として使用するのに好適な環境抵抗(environmental resistance)を持たないと考えられている。しかしながら、本発明の開示で記載されているように、意外にも、同様の組成をもつフェライト系ステンレス鋼とAL 453(商標)合金の一つ以上の表面の全てまたは一部を変性すると、変性面の耐酸化性を顕著に高められることが知見された。たとえば、以下の開示は、AL 453(商標)合金の表面を電気化学的に変性すると、SOFCの内部操作条件に典型的な空気及び温度に暴露したときに、従来の2BA表面(平滑ロールで冷間圧延し、次いで還元性乾燥水素雰囲気中で焼きなますことによって提供した標準的な商業ベースの仕上げ)で準備した同一合金と比較して数オーダー、表面の酸化速度が低下した。
【0037】
本明細書中で使用するように、合金または製品の表面または表面領域の「電気化学的変性」とは、その表面に化学物質の存在下で表面に電流を適用することである。
以下の実施例において、この電気化学的変性は、電解研磨の適用によって実施する。当業界で公知の如く、電解研磨とは、高度イオン性溶液中で電位及び電流の作用によって金属または金属合金の一部を電解除去する電気化学的プロセスである。電解研磨は、部品または要素などの金属製品の表面から材料の薄層を除去し、その製品の表面粗度を低下させて、表面の仕上げを改善するのに慣用的に使用される。典型的な慣用の電解研磨装置は、通常、加工品(workpiece)を加工するために設置する電解研磨溶液(通常、リン酸と硫酸との混合物)の入った浴を含む。この溶液は電解質として作用し、アノードからカソードへ金属イオンを運ぶ。加工品はアノードとして機能し、カソードは、通常、加工品(アノード)の表面に均等な電流密度を提供するように成形された好適な組成の一種以上の金属構造体の形状である。この加工品及びカソードはそれぞれ、整流器の正と負の端子に接続することができる。電流を浴中の加工品とカソードに適用するとき、加工品の表面上で電解研磨溶液のフィルムの特徴が変えられて、フィルムは粘稠となって、絶縁体または抵抗器の特徴を呈するものと従来より考えられている。この粘稠フィルムの厚さが厚ければ厚いほど、フィルムの抵抗または絶縁特性は大きくなる。従って、加工品の特定の表面について考えてみると、比較的薄い電気的に絶縁性フィルムが、加工品から大きく突出する部分を覆い、比較的厚い絶縁性フィルムは、加工品から突出する部分をそれほど覆わない。加工品の一部はさらに粘稠な絶縁性フィルムに突出し、絶縁性フィルムが薄いほど、カソードからその部分によって受け取られる電荷は増加する。このようにして、大きく突出する表面のでこぼこは、カソードから比例して多くの電流を受け、あまり突出していないでこぼこ表面よりもずっと迅速に溶解する。これは、表面のでこぼこを軽減し、優れた表面仕上げをつくるという効果がある。
【0038】
当業界で公知のように、この電解研磨プロセスは、多くの方法で実施することができる。たとえば、圧延の設定では、電解研磨はストリップ材料のコイルまたは仕上げ片上で実施できる。小さな実験スケールでは、鉄-クロムステンレス鋼で使用した一つの電解研磨法は、浅いガラス皿内に入った電解質に合金サンプルを浸漬することを含む。小スケールプロセスで使用する典型的な電解質の例は、約170゜Fの温度に保持される、25%硫酸−47%リン酸−28%グリコール酸(全て容積)の溶液である。電解質に浸漬されたサンプルを導電性の鉛を介して定電位電解装置(potentiostat)に接続し、約1amp/インチ2の電流を適用する。一つの特別なプロセスでは、合金サンプルを約20分間、このようにして電解研磨し、5分毎に反転させる。この合金サンプルは、サンドペーパーを使用して平滑面となるまで研磨し、次いで清浄/脱気することによって予備処理することもできる。
【0039】
特定の電解研磨技術に関し、本明細書においては、本発明の開示も付記請求の範囲も制限するものではない。本発明の開示を考慮すれば、当業者は、公知の電解研磨法を適合させて、本明細書に開示の組成をもつフェライト系ステンレス鋼の表面を電気化学的に変性して、本発明者によって発見された優れた耐酸化特性をもつ変性表面を提供する。
【0040】
特定のオーステナイト系ステンレス鋼の表面を電気化学的に変性することは公知である。たとえば、医学及び薬理用途で使用する特定のオーステナイト系ステンレス鋼を電解研磨して、亀裂のない清浄な表面を提供することは公知である。しかしながら、フェライト系ステンレス鋼の表面を電解研磨または電気化学的に変性することは一般的には公知ではなく、従来、高温耐酸化特性を改善するためにフェライト系ステンレス鋼を電解研磨することは有用であるとは考えられていなかった。
【0041】
電解研磨によって特定のフェライト系ステンレス鋼の耐酸化性を顕著に改善するという予想外の知見を示す結果を、以下の実施例に示す。以下の結果をもとにして、電気化学的変性によって提供される耐酸化性を改善させるには、少なくとも多少のアルミニウムとREMをステンレス鋼に配合しなければならないと考えられる。というのも、鋼中のこれらの合金化添加物の含有量を低下させると酸化が強まったことが知見されたからである。ステンレス鋼に必要であると考えられるクロムの濃度は、非常に広範であることが割り出された。フェライト系ステンレス鋼合金は、好適に耐熱性であるためには少なくとも16重量パーセントのクロムを含まなければならないが、26重量パーセントを超えるクロムを含む市販の鍛造フェライト系ステンレス鋼は、現在はない。
【実施例】
【0042】
実施例1
AL 453(商標)合金のコイルを、合金からスラブまたはインゴットに鋳造し、熱間圧延して帯材とし、冷間圧延して最終寸法とし、中間の応力除去焼きなましを行い、水素中で最終焼きなましすることにより、準備した。数枚の1"(インチ)×2"(インチ)試験片(test coupon)をコイルから調製し、三つの異なる表面処理によって加工した。それぞれの試験片は初期厚さ0.075"(インチ)であり、標準2BA仕上げで、脱脂し、端を仕上げた。この表面仕上げは、通常「圧延(mill)」表面と本明細書中で称し、この表面をもつサンプルは、本明細書中「圧延」サンプルという。幾つかの圧延サンプルをさらに、120グリットSiCペーパーを使用して研磨して、一方の側ごとに公称0.005"(インチ)分を除去した。このようにして製造したサンプルを本明細書中、「研磨:ground」サンプルという。この研磨サンプルの幾つかを約170゜F(約77℃)で1amp/インチ2で、20分間(サンプルは5分毎に反転させた)、容積比で25%硫酸−47%リン酸−28%グリコール酸を含む電解研磨溶液中で電解研磨して、幾つかの「電解研磨」サンプルを製造した。
【0043】
この三つの表面タイプを、高温酸化試験の前にオージェ電子顕微鏡を使用して特徴づけした。研磨し電解研磨したサンプルはいずれも、非常に薄い自然の酸化物(約30オングストローム厚さ)を示したが、圧延表面の酸化物は約4倍の厚さだった(約130オングストローム厚さ)。サンプルの間には表面の酸化物成分に著しい違いがあった。この圧延表面酸化物は、かなりのレベルのアルミニウムを含む酸化物だけであった。アルミニウムは酸素に対して親和性が高いので、水素焼きなまし炉中の残存酸素の痕跡量と反応して薄いアルミナスケールを形成する。研磨表面の酸化物は本質的にベース金属組成物を象徴し、自然の酸化物の形成により、これは空気中のすべてのクロム含有ステンレス鋼に関して生じる。この電解研磨サンプル上に形成した酸化物は、ベース金属に対して約60〜70%、たとえば約30重量パーセントの絶対レベルまでクロムの濃度が高い。研磨及び電解研磨表面の両方の上に、室温で形成したこの酸化物スケール中のアルミニウム含有量は、オージェ分析を使用して検出するには低すぎた。
【0044】
圧延、研磨及び電解研磨条件におけるそれぞれの表面をもつAL 453(商標)試験片を酸化アルミニウムるつぼに入れ、750℃(1382゜F)〜850℃(1562゜F)で5〜500時間、静かな大気(still air)に暴露した。このサンプルをオーブンから定期的に取り出し、秤量して酸化物スケール形成に対する耐性を評価し、約50時間の平均熱サイクル時間となった。
【0045】
図2及び3は、750℃(1382゜F)で500時間(図2)及び850℃(1562゜F)で500時間(図3)暴露した後の三つの表面処理を施した試験片を示す。圧延サンプルと研磨サンプルはいずれも、ステンレス鋼で通常観察される特徴的な消炭色の付着性酸化物スケールを形成した。しかしながら、電解研磨サンプルは、元の金属表面が目に見える透明な金色の酸化物フィルムを形成した。このことは、電解研磨サンプル上の酸化物は長期暴露時間にもかかわらず非常に薄く、圧延表面及び研磨表面に形成した酸化物スケールより実質的に薄かったことを示す。
【0046】
電解研磨サンプルの個々の重量測定から誘導した酸化データを図4に示す。これは750℃(1382゜F)及び850℃(1562゜F)における比重量変化(specific weight change)(mg/cm2)対時間をプロットし、測定は、データポイント#1として識別する。図5は、圧延サンプル、研磨サンプル及び電解研磨サンプルに関する温度での500時間後の比重量変化(mg/cm2)をグラフで示す。このデータは、圧延表面と研磨表面は実質的に同じ速度で酸化されるが、電解研磨サンプルは、暴露期間の間、他のサンプルよりもあまり重量が増加しなかったことを示す。サンプルの酸化性能の間の違いの優位性は、データを放物線速度定数(parabolic rate constant)として表すとより顕著である。この放物線速度定数は、全酸化重量変化を抽出して単一数、kpにする。放物線速度定数対温度の逆数(inverse temperature)の対数のアレニウスプロットで表すと、log kpの単位差(unit difference)は酸化速度の有意な減少として解釈される(たとえば、kpの2点減少は経時での比重量変化の約10倍減少に相当する)。以下の表2に示されているlog kp値をベースとして、電解研磨したサンプルの酸化速度は、機械的に仕上げた圧延表面と研磨表面よりも数オーダー低く、最終比重量変化が約1オーダー対応して減少した。図6に示されているように、利用可能な速度定数データに対してプロットすると、電解研磨したAL 453(商標)合金の速度曲線はアルミナよりも大きいが、通常のクロミアフォーマー(chromia former)や圧延仕上げのAL 453(商標)よりもかなり低いことが知見された。曲線のスロープによって表されるように、活性化エネルギーもかなり異なるので、従ってそれらはREM-ドープ化クロミアもアルミナも象徴していない。
【0047】
【表2】
【0048】
電解研磨サンプルの第二のセットを製造して、上記の知見を確認した。異なる試験炉を使用し、電解研磨サンプルは、炉内に異なるパターンで配置した。750℃(1382゜F)及び850℃(1562゜F)に加熱したこれらの電解研磨サンプルの周期的重量測定結果をデータ点#2として図4に表すが、データ点#1から誘導した結果と実質的に同じである。
【0049】
750℃(1382゜F)及び850℃(1562゜F)の両方で加熱した電解研磨サンプルにおける暴露後フィルム(post-exposure film)の走査オージェ顕微鏡(scanning Auger microscope:SAM)分析から、この酸化物スケールが単一相であり、オージェ中スタンダードレス準定量的分析(standardless semi-quantitative analysis)によって決定されるように、有意濃度のアルミニウム、鉄及びクロムを含んでいることが判明した。この電解研磨は富アルミニウム酸化物スケールの形成を促進するように見えたので、その根本的なメカニズムはSAM試験からは決定できなかった。圧延(光輝焼なましたもの)及び研磨表面の組成は、酸化試験の前に大きく異なるが、これらは、本質的に高温における同一酸化反応速度論を示し、電解研磨サンプルの反応速度論と実質的に異なる。表面研磨が耐酸化性を改善しないという知見に基づき、電気化学的変性表面をもつサンプルの優れた酸化性能は、表面の欠陥の除去だけの結果ではなかったと判断された。
【0050】
実施例2
AL 453(商標)合金の二つの異なるヒート(heat)のそれぞれから二つのコイルにおいて追加の試験を実施して、高温耐腐食性を有意に高めるための手段としての電解研磨の再現性を評価した。この出発物質は、標準AL 453(商標)材料として加工し、これは、熱間圧延した帯材から慣用の方法で0.075”に一段階で圧延して、光輝焼なましした。表3は、調製した試験サンプルの量を列記する。表4は、試験前の種々のサンプルタイプを処理するのに使用したプロセスについて記載する。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
表4に示されているように、「艶出し:polished」及び「再艶出し:re-polished」とされる二種類の追加の表面仕上げをしたサンプルで試験を実施した。「艶出し」とは、電解研磨表面の物理的平滑度に似せるために慣用のメタログラフ法を使用して機械的に艶出しして鏡面仕上げしたサンプルを指す。「再艶出し」とは、サンプルの電解研磨表面に近接した物質を除去するため及び鏡面仕上げを維持するために機械的に艶出しした電解研磨表面を指す。全部で24個のサンプルを、全部で4回の試験で、三種類の異なる炉を使用して、6個ずつのサンプル群により空気中、800℃(1472゜F)で250時間暴露させた。
【0054】
この試験結果は、電解研磨によって上記実施例1で達成された耐酸化性の改良点が完全に再現可能であることを示した。AL 453(商標)サンプルの表面を機械的に研磨または艶出しすると、標準的な圧延(光輝焼なまし)表面よりも耐酸化性が適度に改良された。しかしながら、電解研磨表面サンプルは、酸化重量変化で1オーダーの減少を示した。この結果は図7に(時間の関数としてサンプルタイプにおける平均比重量変化)、および図8の放物線プロット(時間の平方根の関数としてサンプルタイプにおける平均比重量変化)グラフにより示されている。
【0055】
800℃(1472゜F)において電解研磨したAL 453(商標)合金の耐酸化性も、数種の一般的な耐熱性ステンレス鋼とニッケルベースの合金の耐酸化性と比較した。これらは全て、高温酸化耐性に関して酸化クロムの形成に基本的に依存する。800℃(1472゜F)における実際のデータはこれらの合金の殆どに関して利用できなかったので、704℃(1300゜F)、760℃(1400゜F)、816℃(1500゜F)、及び871℃(1500゜F)で得られたデータを挿入して、所望の温度における予想サンプルの比重量変化曲線を出した。電解研磨AL 453(商標)合金に関する結果を、図9にこれらの曲線とともにプロットする。最高の酸化クロムフォーマー(E-BRITE(登録商標)合金、タイプ309S合金及びAL 600(登録商標)合金)は、800℃(1472゜F)で250時間後に電解研磨AL 453(商標)合金の約10倍も重量増加する。
【0056】
上記試験結果は、AL 453(商標)合金または同様の組成の合金の一種以上の表面を電解研磨または電気化学的に変性することにより、変性表面の高温耐酸化性を実質的に改善すること、及びこの現象は再現可能であって、商業的に適用し得ることを示している。酸化速度の低下は、電解研磨など、電気化学的変性によってできた構造をもつ表面に特徴的なようであり;機械的に艶出しして鏡面仕上げしても同様の結果は出ず、電解研磨表面を軽く艶出しすることによって、変性表面層を除去すると、耐酸化性の改良点を損なう。
【0057】
電解研磨材料によって示された高温耐酸化性によって、この材料は、SOFC用の内部接続などの高温用途で使用するのに好適になる。表面積比抵抗(Area Specific Resistance:ASR)は、燃料電池の内部接続の性能と、それが表面の酸化物スケールが厚くなるに連れて経時で劣化するか、及び電流に大きく抵抗するかを表す。近年の研究から、慣用のAL 453(商標)合金及びE-BRITE(登録商標)合金は、特定の他の富クロムフェライト系ステンレス鋼と共に、長期SOFC操作で許容できないほど高いASR値に到達することが示されている。というのも、これらの材料に形成した酸化物スケールは、成長が早すぎて、燃料電池スタックの個々の電池の間の電流を妨げるからである。もっと耐酸化性のアルミニウム含有フェライト系ステンレス鋼はより薄いアルミナ表面スケールを形成するが、酸化アルミニウムの本質的な電気抵抗は、長い間に許容できないほど高いASR値になる。以下の実施例3で議論する、高温で電解研磨AL 453(商標)合金に形成した薄い富アルミニウム酸化物の構造的特徴から、この酸化物がアルミニウムと共にかなりのレベルの鉄とクロムを含んでいることを確認し、このことは電解研磨AL 453(商標)合金に形成したこの酸化物は酸化アルミニウムよりも絶対的な意味でより導電性であることを示唆している。このことは、酸化速度が遅いため厚さが減少することと相まって、ASR上昇の遅い速度によって明らかになるように、優れた性能になるはずである。アルミニウムと鉄とが存在することによって、純粋な酸化クロムが空気及び水蒸気の存在下、高温で蒸発する傾向も低下するはずである。揮発性のクロミアは電池の他の場所に付着し、セラミックカソードなどの要素が損傷することによって性能が低下するため、これはPSOFCにおける高温攻撃(high temperature attack)の主な原因である。
【0058】
実施例3
静電半球型X線回折法(Glancing incidence X-ray diffraction technique)を使用して、本発明の開示の電気化学的変性フェライト系ステンレス鋼の態様で形成した酸化物フィルムの性質を特徴づけした。慣用の光輝焼なましAL 453(商標)合金の酸化は、約16重量%以上のクロムを含む耐熱性ステンレス鋼に典型的な方法で起きる。Al2O3は熱力学的に安定であり、合金の表面と直接接触して形成するはずである。しかしながら、アルミナの連続層の成長を維持するために金属/酸化物界面に対して充分に早く拡散させるには、最小約3重量パーセントのアルミニウムが必要である。従って、慣用の光輝焼なましAL 453(商標)合金では、酸化クロム(Cr2O3)層が、かなりの量の鉄とスピネル型酸化物と共に、合金表面と直接接触して形成する。酸化アルミニウム粒子は、スケール/合金界面に隣接した合金中に形成する。そのような挙動は、1950年代にCarl Wagnerによって最初に提案された合金酸化の確立した理論と一致する。C.Wagner,Z,Electrochem.,63巻、772頁(1959年)を参照されたい。
【0059】
Philips製X'Pert回折計を使用して、800℃(1472゜F)で250時間暴露しておいた、電解研磨AL 453(商標)合金(ヒート#898042、コイル#03232C123A)のサンプルを走査した。この回折計は静電半球型モードで操作し、ここで入射ビームは、サンプル表面の近くにパターンを得るために、角度オメガ(Ω)で表面に対して斜めである。単色Cu Ka並行X-線供給源は、入射ビームとして供給した。回折パターンは、1度及び3度のΩ値で得られ、これは表面フィルム反射と共に、フェライト系ステンレス鋼由来のピークが両方のパターンに含まれ、他の反射の位置及び強度に関して参照点として使用した(基材ピークの強度は、Ωが増加するに連れて表面フィルムピークに対して増加する)。走査は約0.02度/秒の走査速度で、10゜〜90゜2θで実施した。最大絶対強度は1゜Ωパターンで約1,000カウントであり、3゜Ωパターンでは約4,000カウントであった。Philips製X’PertソフトウエアのSearch-Matchルーチンを使用して、相識別用の予想整合パターンのリストを提供した。
【0060】
回折計の結果をベースとして、電解研磨AL 453(商標)サンプル上の酸化物フィルムは、ヘマタイト構造(M2O3)をもつ単一相であった。実験的に決定した回折パターンは、単一相を象徴する。測定した格子パラメーターは、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0であった。回折計の結果は、酸化物フィルムに関する公称格子パラメーターがa0=4.98Å、c0=13.57Åであると示唆する。電解研磨AL 453(商標)サンプル上に形成した酸化物フィルムの公称格子パラメーターは、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3の代表的な格子パラメーターと共に表5に列記する。電解研磨したサンプル上の酸化物フィルムの実測格子パラメーターは、Fe2O3(ヘマタイト、大きな格子パラメーター)、アルファCr2O3(エスコライト、小さな格子パラメーター)及び鉄と置換したクロムを含むヘマタイトの種々の相の間に挟まれている。アルファAl2O3の参照パターン(コランダム、ヘマタイト等構造群の構成員)は、アルファAl2O3がかなり小さな格子パラメーターを示すので、電解研磨AL 453(商標)合金用に関し実験的に決定された回折パターンと一致しない。
【0061】
従って、格子面間隔の測定値は、富アルミニウム酸化物フィルムを構成する相がCr2O3とFe2O3の中間の格子パラメーターをもち、Al2O3により示されたものよりもかなり小さいことを示す。従って、電気化学的変性サンプル上に形成した酸化物フィルムはアルミニウムの濃度が高いが、これはアルファ-アルミニウムには典型的ではない。かくして、電解研磨サンプル上に形成した富アルミニウム酸化物層は、高度に電気的に抵抗性のアルファAl2O3の単独からなるとは知見されなかった。
【0062】
【表5】
【0063】
実施例4
ミッシュメタルとして添加した、アルミニウム、クロム及びREM、特にセリウム及びランタンの種々のレベルの高温酸化性能に対する効果を評価した。5個の50lbのVIMヒートを表6に示されている成分で溶解し、酸化試験用に0.075”(インチ)厚さに加工した。各ヒートからのサンプルを、120グリット仕上げに研磨した表面をもつサンプルと、電解研磨によって電気化学的に鏡面仕上げした変性表面と共に、ベースラインとして酸洗い条件(pickled condition)で試験した。全てのサンプルは、表面処理毎に二つのサンプルを使用して、800℃(1472゜F)で250時間、暴露した。酸洗いサンプルと研磨サンプルのそれぞれは、典型的な2BA AL 453(商標)材料と匹敵し得るか、それよりやや優れた耐酸化性を示した。
【0064】
【表6】
【0065】
AL 453(商標)合金中の公称含有量に対してクロム含有量を変動させると、電解研磨サンプルの重量増には小さな影響しかなかった。図10に示されているように、低クロムヒートRV1908(17.8%)の電解研磨サンプルは、高クロムヒートRV1909(23.3%)の電解研磨サンプルよりもよく機能したが、高クロムヒートは、低レベルのREMを含んでいた。ヒートRV1908及びRV1909の両方からの電解研磨サンプルは、電解研磨した標準AL 453(商標)合金と匹敵し得る酸化性能を示した。低クロム含有量を含むフェライト系ステンレス鋼は通常安価であり、容易に製造でき、シグマまた他の脆性相をあまり成長させそうもないという点でより安定である。また、本明細書の結果は、低クロム合金に適用したときに、電解研磨が耐酸化性を促進するのに僅かに効果的であることを示す。他方、高クロムレベルはCTEを下げ、これは、SOFCで内部接続材料としての合金の性能を改善することができる。これらの観察結果を考慮すると、コスト及び冶金学的配慮に照らして、クロムは本発明の開示のフェライト系ステンレス鋼中、約16から約30重量%未満で配合するのが好ましく、16から19重量%以下の範囲がより好ましい。
【0066】
アルミニウム含有量を変動させると、電解研磨によって電気化学的変性表面をもつサンプルの酸化的重量増に大きな影響があることが知見された。図11に示されているように、低アルミニウムヒートRV1917(0.32%)の電解研磨サンプルは、電解研磨標準AL 453(商標)合金と高アルミニウムヒートRV1929(0.95%)の電解研磨サンプルの両方に対して悪い結果となったが、また標準的圧延仕上げのAL 453(商標)合金サンプルに対しては二倍の重量利得低減を示していた。他方、高レベルのアルミニウムを添加するとアルミナが形成する危険性があり、これは、SOFC内部接続用途に適用しようとすると、材料の電気抵抗に負の影響を与えるかもしれない。これらの結果をベースとして、アルミニウムは、少なくとも0.2重量パーセント、より好ましくは約0.2重量パーセントから約1.0重量パーセント以下の量で本発明の開示のフェライト系ステンレス鋼に配合するのが好ましい。
【0067】
図12に示されているように、REMを除去すると、耐酸化性に非常に大きな影響があった。REMを含まないヒートRV 1912(0.02%のセリウム+ランタンの残存レベル)の酸化性能は、電解研磨によって製造した電気化学的平面変性の有益な効果が、AL 453(商標)合金のREMを含まないバージョンでは実質的に完全に除去されたことを示した。他方、高レベルのREMを添加すると、合金をオーバードープし、富REM粒子の酸化によって過剰の重量増となる。従って、本発明の開示のフェライト系ステンレス鋼の全REM含有量は、好ましくは0.2重量%を超え、約1.0重量%以下である。かなりのレベルのセリウムとランタンとを含むミッシュメタルを本明細書中の実施例で使用したが、REMを単独で使用することができ、他のREMをセリウム及び/またはランタンの代わりに、またはこれに添加して使用することもできると考えられる。たとえば、イットリウムは、通常、最も有効なREMであると考えられているが、かなり高価である。ハフニウムも通常有効REMと考えられているが、ミッシュメタルより利用可能性が低い。他のREMは、商業的な量を入手するのが非常に難しい。
【0068】
図13は、酸化試験の結果をまとめたものである。REM、特にセリウムとランタンとを添加すると、電解研磨材料で酸化による重量増が減少したということが観察されなければならないようにみえる。電解研磨効果は、アルミニウム含有量に対して感受性であるようにも見え、減退効果は、アルミニウムレベル0.32%であった。アルミニウム含有量が、たとえば1.0%以下またはそれ以上に増加すると、重量変化でさらに減少が起きると考えられる。実施した実験の範囲内で、電解研磨によって製造した電気化学的表面変性は、種々のクロム含有量に特に感受性であるようには見えない。これらの結果を考慮すると、電解研磨によって製造したような電気化学的表面変性が有用な好ましいフェライト系ステンレス鋼組成は、重量%で、約18%〜約22%のクロム、約0.4%〜約0.8%のアルミニウム及び約0.02%〜約0.2%のREMを含む。電気化学的表面変性が有用なもう一つの好ましいフェライト系ステンレス鋼は、重量%で、約18%のクロム、約0.8%のアルミニウム及び約0.3%のREMを含み、SOFC内部接続に特に適した材料を提供することができる。クロム、アルミニウム及びREMに加えて、本発明の開示に記載の方法によって好都合に加工し得るフェライト系ステンレス鋼は、当業界で公知の他の合金添加物を含むことができる。たとえば、そして本発明の開示の範囲を限定するものではないが、フェライト系ステンレス鋼の特定の態様としては、3重量%以下のニッケル、3重量%以下のマンガン、0.7重量%以下の珪素、0.07重量%以下の窒素、0.07重量%以下の炭素及び0.5重量%以下のチタンを含むことができる。
【0069】
本発明の開示に従って加工したフェライト系ステンレス鋼の高温耐酸化性の観点から、そのようなステンレス鋼は、SOFC及びPSOFCなどの燃料電池の内部接続として好都合に適用できる。さらに、本明細書に記載のフェライト系ステンレス鋼を含めるために好都合に構築し得る追加の製品の例としては、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置及び熱交換部品などの高温で比較的酸化性雰囲気に暴露される装置が挙げられる。さらに、製品に組み込むことを意図した、プレート、シート、ストリップ、ホイル及びバーなどのフェライト系ステンレス鋼製品を、本明細書中に記載の方法を使用して加工することもできる。上記製品は本明細書に記載のフェライト系ステンレス鋼を含み得る製品の単なる例であり、且つそのような他の製品は、本発明の開示を検討した後では当業者には明らかであると考えられよう。また、本発明の開示は、電解研磨を使用してフェライト系ステンレス鋼の表面を電気化学的に変性する実施例を含むが、本発明の開示は、これに限定されるものではなく、高温耐酸化性で同様の改良点を示す表面を処理フェライト系ステンレス鋼に提供する、金属表面を電気化学的に変性する他の手段も包含することが理解されよう。
【0070】
本発明の開示は、本発明を明確に理解することに関して本発明のこれらの側面を説明するものと理解されよう。当業者に明らかであって、本発明を理解しにくい発明の特定の側面は、本発明の記載を単純化するために示されていない。本発明の態様について記載してきたが、当業者は、上記記載を考慮して、本発明の多くの変形及び変化を利用し得ることを理解するだろう。本発明のそのような全ての変形及び変化は、上記記載及び付記請求の範囲によって網羅されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】PSOFCスタックの一部の部材の概略図である。
【図2】空気中、750℃(1382゜F)で500時間暴露した後の圧延(mill)、研磨または電解研磨表面をもつ、AL 453(商標)ステンレス鋼の試験片の写真である。
【図3】空気中、850℃(1562゜F)で500時間暴露した後の圧延、研磨または電解研磨表面をもつ、AL 453ステンレス鋼の試験片の写真である。
【図4】空気中、750℃(1382゜F)と850℃(1562゜F)で暴露した電解研磨表面をもつAL 453ステンレス鋼のサンプルの、経時での比重量変化(mg/cm2)のプロットである。
【図5】空気中、750℃(1382゜F)と850℃(1562゜F)で500時間暴露した後の電解研磨表面をもつAL 453ステンレス鋼のサンプルの、経時での比重量変化(mg/cm2)のグラフである。
【図6】耐酸化性に関して酸化クロムと酸化アルミニウムの形成に依存する一般的な耐熱性合金と標準AL 453(商標)ステンレス鋼と比較した電解研磨AL 453(商標)ステンレス鋼の酸化性能のアレニウスプロットである。
【図7】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した幾つかの表面を異なるようにして製造したAL 453ステンレス鋼のサンプルの経時での比重量変化のプロットである。
【図8】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した幾つかの表面を異なるようにして製造したAL 453ステンレス鋼のサンプルの時間の平方根での比重量変化の放物線プロットである。
【図9】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した電解研磨AL 453ステンレス鋼及び他の数種の耐熱性ステンレス鋼及びニッケルベースの合金のサンプルの、経時での比重量変化のプロットである。
【図10】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した種々のレベルのクロムを含む数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの経時での比重量変化のプロットである。
【図11】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した種々のレベルのアルミニウムを含む、数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの経時での比重量変化のプロットである。
【図12】空気中、800℃(1472゜F)に暴露した種々のレベルの希土類金属を含む数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの比重量変化のプロットである。
【図13】空気中、800℃(1472゜F)に250時間暴露した後の種々のレベルの合金化添加物を含む数種の電解研磨フェライト系ステンレス鋼サンプルの比重量変化結果の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製品の製造方法であって、
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を用意し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、そして
高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造を有する、導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させるように、フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面を変性する、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項2】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0とc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
750℃〜850℃の温度で酸化雰囲気中で加熱した時に、少なくとも一つの変性表面が酸化物スケールを成長させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、少なくとも一つの変性表面が酸化物スケールを成長させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化物スケールが、4.95〜5.04Åの範囲のa0と、13.58〜13.75Åの範囲のc0の格子パラメーターを有することで特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化物スケールが、a0=4.98Åとc0=13.57Åの公称格子パラメーターを有することで特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの表面を変性することが、少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することが、少なくとも一つの表面を電解研磨することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、前記変性表面が酸化物スケールを成長させ、前記酸化物スケールは、4.95〜5.04Åの範囲のa0と、13.58〜13.75Åの範囲のc0とを有することで特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製品の製造法であって、
アルミニウム、少なくとも一つの希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムとを含むフェライト系ステンレス鋼を用意し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、そして
750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、変性表面が富アルミニウムの酸化物スケールを成長させるように、フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面を変性し、ここで前記酸化物スケールは、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項11】
耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製品の製造法であって、
アルミニウム、少なくとも一つの希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムとを含むフェライト系ステンレス鋼を用意し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、そして
前記フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面を電気化学的に変性する、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することが少なくとも一つの表面を電解研磨することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの電解研磨表面が、鉄とクロムとを含み、且つ750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ、富アルミニウムの酸化物スケールを成長させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フェライト系ステンレス鋼が少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記フェライト系ステンレス鋼が、0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記フェライト系ステンレス鋼が、セリウム、ランタン、イットリウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の希土類金属を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウムと、0.02〜0.2重量パーセントのREMとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記フェライト系ステンレス鋼が、さらに3重量パーセント以下のニッケル、3重量パーセント以下のマンガン、0.7重量パーセント以下のケイ素、0.07重量パーセント以下の窒素、0.07重量パーセント以下の炭素、及び0.5重量パーセント以下のチタンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記フェライト系ステンレス鋼が、さらに約22重量パーセントのクロム、約0.6重量パーセントのアルミニウム、セリウム及びランタンを含み、ここでセリウムとランタンとの重量の合計は約0.10重量パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記製品が、板、シート、ストリップ、ホイル、バー、燃料電池内部連絡、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置、熱交換部品からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記製品が燃料電池内部連絡であり、前記フェライト系ステンレス鋼が16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、および少なくとも一種の希土類金属を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記製品の少なくとも一つの表面を電界研磨することが、電界研磨溶液とカソードとを含む浴中に前記製品の少なくとも一つの表面を設置し、そして前記製品とカソードとの間に電流を通して、少なくとも一つの表面から材料を除去して、前記表面の表面粗度を減少させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも一つの表面の電界研磨によって、固体酸化物の燃料電池内で操作条件に特徴的な温度と雰囲気とに暴露したときに、酸化に対して少なくとも一つの表面の耐性を改善する、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも一つの電解研磨表面が、−9.1g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、750℃において空気中での耐酸化性をもつ、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも一つの電解研磨表面が、−8.5g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、850℃において空気中での耐酸化性をもつ、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、及び少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下であるフェライト系ステンレス鋼の製品の高温耐酸化性を改善する方法であって、前記製品の少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することを含み、少なくとも一つの電気化学的変性表面は、燃料電池の操作の間に固体酸化物燃料電池内部連絡が暴露される条件に特徴的な雰囲気及び温度に暴露されたときに、ヘマタイト構造を有する富アルミニウム酸化物層を成長させる、前記方法。
【請求項30】
前記製品の少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することが、少なくとも一つの表面を電解研磨することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記フェライト系ステンレス鋼が、0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記フェライト系ステンレス鋼が、セリウム、ランタン、イットリウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の希土類金属を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウム、及び0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
固体酸化物燃料電池の製造法であって、
少なくとも一つの内部接続を用意し、ここで前記内部接続は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、ここで前記内部接続はさらに、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性の富アルミニウム耐酸化性酸化物スケールを成長させる、少なくとも一つの変性表面を含み、そして
少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソード、および少なくとも一つの電解質を含む追加の要素と前記少なくとも一つの内部接続から固体酸化物燃料電池を組み立てる、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項36】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記変性表面が、750℃〜850℃の温度で酸化雰囲気中で加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記変性表面が、酸化雰囲気中、750℃〜850℃の温度で少なくとも100時間加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記酸化物スケールが、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0とを有することで特徴づけられる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Åとc0=13.57Åとを有することで特徴づけられる、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
固体酸化物燃料電池の製造法であって、
少なくとも一つの内部連絡を用意し、前記内部連絡は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記内部連絡は少なくとも一つの電気化学的変性表面を含み、そして
少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソードと少なくとも一つの電解質とを含む追加の要素と少なくとも一つの内部連絡とから固体酸化物燃料電池を組み立てる、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項42】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が少なくとも一つの電解研磨表面である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも一つの電界研磨表面が、鉄とクロムとを含み、且つ酸化雰囲気中、750〜850℃の温度に少なくとも100時間加熱したときに4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Åとc0=13.57Åとを有することで特徴づけられる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記フェライト系ステンレス鋼が16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記フェライト系ステンレス鋼が0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウムおよび0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記固体酸化物燃料電池が平坦な固体酸化物燃料電池である、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超えるフェライト系ステンレス鋼であって、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの変性表面を含み、ここで高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、前記少なくとも一つの変性表面は、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性の富アルミニウム耐酸化性酸化物スケールを成長させる、前記フェライト系ステンレス鋼。
【請求項50】
酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項51】
少なくとも一つの変性表面が、酸化性雰囲気中、750℃〜850℃の温度で加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項52】
前記少なくとも一つの変性表面が、酸化性雰囲気中、750℃〜850℃の温度に少なくとも100時間加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項53】
前記酸化物スケールが、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0を有することで特徴づけられる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項54】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項55】
少なくとも一つの変性表面が、少なくとも一つの電気化学的変性表面である、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項56】
少なくとも一つの電気化学的変性表面は、少なくとも一つの電解研磨表面である、請求項51に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項57】
少なくとも一つの電解研磨表面が、750℃〜850℃の温度で、酸化性雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに酸化物スケールを成長させ、ここで前記酸化物スケールは、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0を有することで特徴づけられる、請求項56に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項58】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項57に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項59】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、前記フェライト系ステンレス鋼。
【請求項60】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が、少なくとも一つの電界研磨表面である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項61】
少なくとも一つの電界研磨表面が、酸化性雰囲気中、750℃〜850℃で少なくとも100時間加熱したときに、鉄とクロムを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項60に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項62】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åとを有することで特徴づけられる、請求項60に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項63】
16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項64】
少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項65】
0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項66】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項67】
前記フェライト系ステンレス鋼が、セリウム、ランタン、イットリウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の希土類金属を含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項68】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項69】
18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウムおよび0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項70】
さらに3重量パーセント以下のニッケル、3重量パーセント以下のマンガン、0.7重量パーセント以下のケイ素、0.07重量パーセント以下の窒素、0.07重量パーセント以下の炭素および0.5重量パーセント以下のチタンを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項71】
約22重量パーセントのクロム及び約0.6重量パーセントのアルミニウム、セリウム及びランタンを含み、セリウムとランタンとの重量の合計は約0.10重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項72】
16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、および少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02を超え1.0重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項73】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が、固体酸化物燃料電池における操作条件に特徴的な雰囲気及び温度条件に暴露したときに優れた耐酸化性を示す、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項74】
少なくとも一つの電解研磨表面が、−9.1g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、空気中750℃での耐酸化性をもつ、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項75】
少なくとも一つの電解研磨表面が、−8.5g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、空気中850℃での耐酸化性をもつ、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項76】
16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、及び少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下のフェライト系ステンレス鋼であって、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに、空気中、750℃〜850℃の温度に加熱したときに、富アルミニウム酸化物層を成長させる少なくとも一つの耐酸化性電解研磨表面を含む、前記フェライト系ステンレス鋼。
【請求項77】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える製品であって、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの変性表面を含み、ここで高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、前記変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる、前記製品。
【請求項78】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項77に記載の製品。
【請求項79】
前記酸化物スケールが、4.98〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0を有することで特徴づけられる、請求項77に記載の製品。
【請求項80】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項77に記載の製品。
【請求項81】
前記変性表面が電界研磨表面である、請求項77に記載の製品。
【請求項82】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、さらに少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、フェライト系ステンレス鋼を含む製品。
【請求項83】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が少なくとも一つの電界研磨表面である、請求項82に記載の製品。
【請求項84】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、および少なくとも一種の希土類金属を含み、ここで希土類金属の総重量が0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項82に記載の製品。
【請求項85】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウム及び0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項82に記載の製品。
【請求項86】
前記少なくとも一つの電気化学的変性表面が、鉄とクロムとを含み、且つ酸化雰囲気中、750℃〜850℃の温度に少なくとも100時間加熱したときに、4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項82に記載の製品。
【請求項87】
前記製品が燃料電池、固体酸化物燃料電池、平坦な酸化物燃料電池、燃料電池内部接続、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置及び熱交換部品から選択される、請求項77〜82のいずれかに記載の製品。
【請求項88】
アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、少なくとも一種の希土類金属を含むフェライト系ステンレス鋼を含む内部接続を含む燃料電池であって、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下であり、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの変性表面を含み、ここで高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、前記変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる、前記燃料電池。
【請求項89】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項88に記載の燃料電池。
【請求項90】
少なくとも一つの変性表面が電気化学的変性表面である、請求項88に記載の燃料電池。
【請求項91】
アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質と、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む内部接続とを含む燃料電池であって、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、前記燃料電池。
【請求項92】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が少なくとも一つの電界研磨表面である、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項93】
前記フェライト系ステンレス鋼が、鉄とクロムを含み、且つ酸化雰囲気中、750℃〜850℃で少なくとも100時間加熱したときに、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項94】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項93に記載の燃料電池。
【請求項95】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム及び少なくとも一種の希土類金属を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項96】
前記フェライト系ステンレス鋼が18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウム及び0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項97】
前記燃料電池が、固体酸化物燃料電池及び平坦な固体酸化物燃料電池から選択される、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項98】
前記燃料電池が、複数の電池を含む燃料電池スタックであり、それぞれの電池は、アノード、カソード、電解質および内部連絡を含み、前記内部連絡は複数の電池を電気的に直列に接続する、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項1】
耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製品の製造方法であって、
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を用意し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、そして
高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造を有する、導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させるように、フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面を変性する、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項2】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0とc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
750℃〜850℃の温度で酸化雰囲気中で加熱した時に、少なくとも一つの変性表面が酸化物スケールを成長させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、少なくとも一つの変性表面が酸化物スケールを成長させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化物スケールが、4.95〜5.04Åの範囲のa0と、13.58〜13.75Åの範囲のc0の格子パラメーターを有することで特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化物スケールが、a0=4.98Åとc0=13.57Åの公称格子パラメーターを有することで特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの表面を変性することが、少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することが、少なくとも一つの表面を電解研磨することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、前記変性表面が酸化物スケールを成長させ、前記酸化物スケールは、4.95〜5.04Åの範囲のa0と、13.58〜13.75Åの範囲のc0とを有することで特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製品の製造法であって、
アルミニウム、少なくとも一つの希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムとを含むフェライト系ステンレス鋼を用意し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、そして
750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、変性表面が富アルミニウムの酸化物スケールを成長させるように、フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面を変性し、ここで前記酸化物スケールは、鉄とクロムとを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項11】
耐酸化性表面をもつフェライト系ステンレス鋼の製品の製造法であって、
アルミニウム、少なくとも一つの希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムとを含むフェライト系ステンレス鋼を用意し、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、そして
前記フェライト系ステンレス鋼の少なくとも一つの表面を電気化学的に変性する、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することが少なくとも一つの表面を電解研磨することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの電解研磨表面が、鉄とクロムとを含み、且つ750℃〜850℃の温度で、酸化雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに、4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ、富アルミニウムの酸化物スケールを成長させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フェライト系ステンレス鋼が少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記フェライト系ステンレス鋼が、0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記フェライト系ステンレス鋼が、セリウム、ランタン、イットリウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の希土類金属を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウムと、0.02〜0.2重量パーセントのREMとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記フェライト系ステンレス鋼が、さらに3重量パーセント以下のニッケル、3重量パーセント以下のマンガン、0.7重量パーセント以下のケイ素、0.07重量パーセント以下の窒素、0.07重量パーセント以下の炭素、及び0.5重量パーセント以下のチタンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記フェライト系ステンレス鋼が、さらに約22重量パーセントのクロム、約0.6重量パーセントのアルミニウム、セリウム及びランタンを含み、ここでセリウムとランタンとの重量の合計は約0.10重量パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記製品が、板、シート、ストリップ、ホイル、バー、燃料電池内部連絡、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置、熱交換部品からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記製品が燃料電池内部連絡であり、前記フェライト系ステンレス鋼が16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、および少なくとも一種の希土類金属を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記製品の少なくとも一つの表面を電界研磨することが、電界研磨溶液とカソードとを含む浴中に前記製品の少なくとも一つの表面を設置し、そして前記製品とカソードとの間に電流を通して、少なくとも一つの表面から材料を除去して、前記表面の表面粗度を減少させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも一つの表面の電界研磨によって、固体酸化物の燃料電池内で操作条件に特徴的な温度と雰囲気とに暴露したときに、酸化に対して少なくとも一つの表面の耐性を改善する、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも一つの電解研磨表面が、−9.1g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、750℃において空気中での耐酸化性をもつ、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも一つの電解研磨表面が、−8.5g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、850℃において空気中での耐酸化性をもつ、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、及び少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下であるフェライト系ステンレス鋼の製品の高温耐酸化性を改善する方法であって、前記製品の少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することを含み、少なくとも一つの電気化学的変性表面は、燃料電池の操作の間に固体酸化物燃料電池内部連絡が暴露される条件に特徴的な雰囲気及び温度に暴露されたときに、ヘマタイト構造を有する富アルミニウム酸化物層を成長させる、前記方法。
【請求項30】
前記製品の少なくとも一つの表面を電気化学的に変性することが、少なくとも一つの表面を電解研磨することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記フェライト系ステンレス鋼が、0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記フェライト系ステンレス鋼が、セリウム、ランタン、イットリウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の希土類金属を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウム、及び0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
固体酸化物燃料電池の製造法であって、
少なくとも一つの内部接続を用意し、ここで前記内部接続は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、ここで前記内部接続はさらに、高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性の富アルミニウム耐酸化性酸化物スケールを成長させる、少なくとも一つの変性表面を含み、そして
少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソード、および少なくとも一つの電解質を含む追加の要素と前記少なくとも一つの内部接続から固体酸化物燃料電池を組み立てる、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項36】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記変性表面が、750℃〜850℃の温度で酸化雰囲気中で加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記変性表面が、酸化雰囲気中、750℃〜850℃の温度で少なくとも100時間加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記酸化物スケールが、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0とを有することで特徴づけられる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Åとc0=13.57Åとを有することで特徴づけられる、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
固体酸化物燃料電池の製造法であって、
少なくとも一つの内部連絡を用意し、前記内部連絡は、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記内部連絡は少なくとも一つの電気化学的変性表面を含み、そして
少なくとも一つのアノード、少なくとも一つのカソードと少なくとも一つの電解質とを含む追加の要素と少なくとも一つの内部連絡とから固体酸化物燃料電池を組み立てる、
以上の工程を含む前記方法。
【請求項42】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が少なくとも一つの電解研磨表面である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも一つの電界研磨表面が、鉄とクロムとを含み、且つ酸化雰囲気中、750〜850℃の温度に少なくとも100時間加熱したときに4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Åとc0=13.57Åとを有することで特徴づけられる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記フェライト系ステンレス鋼が16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記フェライト系ステンレス鋼が0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウムおよび0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記固体酸化物燃料電池が平坦な固体酸化物燃料電池である、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超えるフェライト系ステンレス鋼であって、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの変性表面を含み、ここで高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、前記少なくとも一つの変性表面は、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性の富アルミニウム耐酸化性酸化物スケールを成長させる、前記フェライト系ステンレス鋼。
【請求項50】
酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項51】
少なくとも一つの変性表面が、酸化性雰囲気中、750℃〜850℃の温度で加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項52】
前記少なくとも一つの変性表面が、酸化性雰囲気中、750℃〜850℃の温度に少なくとも100時間加熱したときに酸化物スケールを成長させる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項53】
前記酸化物スケールが、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0を有することで特徴づけられる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項54】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項55】
少なくとも一つの変性表面が、少なくとも一つの電気化学的変性表面である、請求項49に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項56】
少なくとも一つの電気化学的変性表面は、少なくとも一つの電解研磨表面である、請求項51に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項57】
少なくとも一つの電解研磨表面が、750℃〜850℃の温度で、酸化性雰囲気中、少なくとも100時間加熱したときに酸化物スケールを成長させ、ここで前記酸化物スケールは、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0を有することで特徴づけられる、請求項56に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項58】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項57に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項59】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼であって、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、前記フェライト系ステンレス鋼。
【請求項60】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が、少なくとも一つの電界研磨表面である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項61】
少なくとも一つの電界研磨表面が、酸化性雰囲気中、750℃〜850℃で少なくとも100時間加熱したときに、鉄とクロムを含み、且つ4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項60に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項62】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åとを有することで特徴づけられる、請求項60に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項63】
16〜19重量パーセントのクロムを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項64】
少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項65】
0.2〜1.0重量パーセントのアルミニウムを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項66】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項67】
前記フェライト系ステンレス鋼が、セリウム、ランタン、イットリウム及びハフニウムから選択される少なくとも一種の希土類金属を含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項68】
前記フェライト系ステンレス鋼中の希土類金属の総重量が、0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項69】
18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウムおよび0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項70】
さらに3重量パーセント以下のニッケル、3重量パーセント以下のマンガン、0.7重量パーセント以下のケイ素、0.07重量パーセント以下の窒素、0.07重量パーセント以下の炭素および0.5重量パーセント以下のチタンを含む、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項71】
約22重量パーセントのクロム及び約0.6重量パーセントのアルミニウム、セリウム及びランタンを含み、セリウムとランタンとの重量の合計は約0.10重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項72】
16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、および少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02を超え1.0重量パーセント以下である、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項73】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が、固体酸化物燃料電池における操作条件に特徴的な雰囲気及び温度条件に暴露したときに優れた耐酸化性を示す、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項74】
少なくとも一つの電解研磨表面が、−9.1g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、空気中750℃での耐酸化性をもつ、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項75】
少なくとも一つの電解研磨表面が、−8.5g2/cm4h未満のlog kpを有することで特徴づけられる、空気中850℃での耐酸化性をもつ、請求項59に記載のフェライト系ステンレス鋼。
【請求項76】
16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、及び少なくとも一種の希土類金属を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下のフェライト系ステンレス鋼であって、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに、空気中、750℃〜850℃の温度に加熱したときに、富アルミニウム酸化物層を成長させる少なくとも一つの耐酸化性電解研磨表面を含む、前記フェライト系ステンレス鋼。
【請求項77】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超える製品であって、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの変性表面を含み、ここで高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、前記変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる、前記製品。
【請求項78】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項77に記載の製品。
【請求項79】
前記酸化物スケールが、4.98〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0を有することで特徴づけられる、請求項77に記載の製品。
【請求項80】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項77に記載の製品。
【請求項81】
前記変性表面が電界研磨表面である、請求項77に記載の製品。
【請求項82】
アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含み、希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、さらに少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、フェライト系ステンレス鋼を含む製品。
【請求項83】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が少なくとも一つの電界研磨表面である、請求項82に記載の製品。
【請求項84】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、および少なくとも一種の希土類金属を含み、ここで希土類金属の総重量が0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項82に記載の製品。
【請求項85】
前記フェライト系ステンレス鋼が、18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウム及び0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項82に記載の製品。
【請求項86】
前記少なくとも一つの電気化学的変性表面が、鉄とクロムとを含み、且つ酸化雰囲気中、750℃〜850℃の温度に少なくとも100時間加熱したときに、4.95〜5.04Åのa0と13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項82に記載の製品。
【請求項87】
前記製品が燃料電池、固体酸化物燃料電池、平坦な酸化物燃料電池、燃料電池内部接続、高温製造装置、高温取り扱い装置、カ焼装置、ガラス製造装置、ガラス取り扱い装置及び熱交換部品から選択される、請求項77〜82のいずれかに記載の製品。
【請求項88】
アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質、及び16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム、少なくとも一種の希土類金属を含むフェライト系ステンレス鋼を含む内部接続を含む燃料電池であって、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下であり、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの変性表面を含み、ここで高温で酸化性雰囲気に暴露したときに、前記変性表面が、クロムと鉄とを含み、且つFe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3とは異なるヘマタイト構造をもつ導電性で富アルミニウムの耐酸化性酸化物スケールを成長させる、前記燃料電池。
【請求項89】
前記酸化物スケールの格子パラメーターa0及びc0が、Fe2O3、アルファCr2O3及びアルファAl2O3のa0及びc0と異なる、請求項88に記載の燃料電池。
【請求項90】
少なくとも一つの変性表面が電気化学的変性表面である、請求項88に記載の燃料電池。
【請求項91】
アノード、カソード、前記アノードとカソードとの間の固体電解質と、アルミニウム、少なくとも一種の希土類金属および16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼を含む内部接続とを含む燃料電池であって、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え、前記フェライト系ステンレス鋼はさらに少なくとも一つの電気化学的変性表面を含む、前記燃料電池。
【請求項92】
少なくとも一つの電気化学的変性表面が少なくとも一つの電界研磨表面である、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項93】
前記フェライト系ステンレス鋼が、鉄とクロムを含み、且つ酸化雰囲気中、750℃〜850℃で少なくとも100時間加熱したときに、4.95〜5.04Åのa0及び13.58〜13.75Åのc0のヘマタイト構造をもつ富アルミニウム酸化物スケールを成長させる、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項94】
前記酸化物スケールが、公称格子パラメーターa0=4.98Å及びc0=13.57Åを有することで特徴づけられる、請求項93に記載の燃料電池。
【請求項95】
前記フェライト系ステンレス鋼が、16重量パーセント以上で30重量パーセント未満のクロム、少なくとも0.2重量パーセントのアルミニウム及び少なくとも一種の希土類金属を含み、ここで希土類金属の総重量は0.02重量パーセントを超え1.0重量パーセント以下である、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項96】
前記フェライト系ステンレス鋼が18〜22重量パーセントのクロム、0.4〜0.8重量パーセントのアルミニウム及び0.02〜0.2重量パーセントの希土類金属を含む、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項97】
前記燃料電池が、固体酸化物燃料電池及び平坦な固体酸化物燃料電池から選択される、請求項91に記載の燃料電池。
【請求項98】
前記燃料電池が、複数の電池を含む燃料電池スタックであり、それぞれの電池は、アノード、カソード、電解質および内部連絡を含み、前記内部連絡は複数の電池を電気的に直列に接続する、請求項91に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−504363(P2007−504363A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525386(P2006−525386)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/028243
【国際公開番号】WO2005/024098
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/028243
【国際公開番号】WO2005/024098
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501187033)エイティーアイ・プロパティーズ・インコーポレーテッド (39)
【Fターム(参考)】
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