説明

耐食性、耐摩耗性および高強度を有するモータ式燃料ポンプの軸受

【課題】耐食性および耐摩耗性を有するモータ式燃料ポンプの軸受を提供する。
【解決手段】Ni:21〜35%、Sn:5〜12%、C:3〜7%、P:0.1〜0.8%を含有し、残部:Cuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCu−Ni系焼結合金からなる軸受であって、前記Cu−Ni系焼結合金からなる軸受は、素地に気孔率:8〜18%の割合で気孔が分散して形成されており、粒界部にP成分が最も多く含まれており、さらに前記気孔内に遊離黒鉛が分布している組織を有しており、このCu−Ni系焼結合金からなる軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面、該開気孔の少なくとも開口部周辺および該軸受内部に内在する内在気孔の内面にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されている組織を有することを特徴とする耐食性および耐摩耗性を有するモータ式燃料ポンプの軸受。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、すぐれた耐食性および耐摩耗性を有し、さらに高強度を有するCu−Ni系焼結合金で構成されたモータ式燃料ポンプの軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に燃料としてガソリンや軽油などの液体燃料を用いるエンジンにはモータ式燃料ポンプが備えられており、例えばガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプとして図2に概略横断面図で示される構造のものが知られている。
すなわち、図示される通り上記モータ式燃料ポンプは、ケーシング内において、モータの両端部に固設した回転軸が軸受に支持され、前記回転軸の一方端部にはインペラが挿入され、かつ前記インペラ、モータ(アーマチュア)の外周面、および軸受と回転軸との間の図示しない隙間にそって狭い間隙のガソリン流通路が形成された構造を有し、前記モータの回転でインペラが回転し、このインペラの回転でガソリンがケーシング内に取り込まれ、取り込まれたガソリンはインペラ、モータの外周面、および軸受と回転軸との間の図示しない隙間にそって形成された前記ガソリン流通路を通って送り出され、別設のガソリンエンジンに送り込まれるように作動するものである。なお、図2では両軸受の外周部を微量の燃料が通過し、インペラで昇圧されたガソリンは図示しないケーシングの燃料通路を通してアーマチュア外周面のところまで到達する。
また、上記のモータ式燃料ポンプの構造部材である上記軸受として各種の高強度Cu系焼結合金が用いられている(例えば特許文献1、2、および3参照)。
【特許文献1】特開昭54−26206号公報
【特許文献2】特開昭55−119144号公報
【特許文献3】特公昭57−16175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、ガソリンや軽油などの液体燃料を用いるモータ式燃料ポンプを備えたエンジンは世界各地で広く使用されており、一方、使用されるガソリンや軽油などの液体燃料の品質は世界の各地域で異なっており、粗悪ガソリンが用いられている地域も多い。粗悪ガソリンと言われるガソリンの1種として、有機酸を含む粗悪ガソリンが知られているが、かかる有機酸を含む粗悪ガソリンが用いられている地域では粗悪ガソリンに含まれる有機酸によりCu系焼結合金からなるモータ式燃料ポンプの軸受が腐食し、この軸受の腐食は、軸受の表面に開放されて形成されている気孔(以下、開気孔という)の開口部周辺および該開気孔の内面、さらには軸受の内部に内在しておりかつ表面から内部に連通している気孔(以下、内在連通気孔という)の内面などに進行して軸受の強度を低下させ、そのために軸受としての寿命が短くなる。
さらに、近年、自動車などのエンジンの小型化および軽量化はめざましく、これに伴って、これに用いられる燃料ポンプにも小型化および軽量化が強く求められ、さらにこれに付随してこれの構造部材である軸受にも小寸化および薄肉化が求められることになる。しかし上記の構造のモータ式燃料ポンプの場合、吐出性能を確保しつつこれを小型化するには、高駆動すなわち回転数を高くすることが必要であり、そうすると、燃料ポンプ内に取り込まれたガソリンなどの液体燃料は一段と狭くなった間隙の流通路を高圧で、かつ速い流速で通り抜けることになり、このような条件下では特にモータ式燃料ポンプの構造部材である軸受には、小寸化および薄肉化と相俟って一段の高強度と耐摩耗性が要求されることになるが、上記の構造のモータ式燃料ポンプに用いられている従来のCu系焼結合金製軸受においては、いずれも高強度を有するものの、十分な耐摩耗性を具備するものでないため、摩耗進行が速くなり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らは、優れた強度および耐摩耗性を維持しつつ、有機酸を含むガソリンに対する耐食性に優れたモータ式燃料ポンプ用軸受を開発すべく研究を行った。その結果、モータ式燃料ポンプの軸受を、質量%(以下、%は質量%を示す)で、
(イ)原料粉末として、Cu−Ni合金粉末、Cu−P合金粉末、Sn粉末および黒鉛粉末をNi:21〜35%、Sn:5〜12%、C:3〜7%、P:0.1〜0.8%を含有し、残部:Cuおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を圧縮成形して得られた圧粉体を温度:800〜950℃で燒結した後、得られた焼結体をただちに冷却速度:15℃/分以上で急冷すると、図1の断面組織の模式図に示されるように、素地に気孔率:8〜18%の割合で気孔が分散分布し、粒界部にP成分が最も多く含まれており、さらに前記気孔内に遊離黒鉛が分布している組織を有しており、このCu−Ni系焼結合金からなる軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面、該開気孔の少なくとも開口部周辺、さらに軸受内部に内在している連通気孔を含む気孔(以下、内在気孔という)の内面にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成される、
(ロ)かかるSn高濃度合金層が形成されている軸受は、Cu−Ni合金粒相互間の接合強度が、焼結時にCu−Ni合金相互間にあってこれら相互間の焼結性を向上させるP成分の作用で著しく高いものとなることから軸受自体が高強度をもつようになり、さらにこのCu−Ni系焼結合金からなる軸受の開気孔の内面および開気孔の少なくとも開口部周辺、さらに内在する内在気孔内部にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されているので、液体燃料に含まれる有機酸などの不純物により最も腐食され易い開気孔の内面および開気孔の開口部周辺部の腐食が阻止され、さらに軸受の表面から連通して軸受の内部に内在している内在連通気孔の腐食も防止され、かかるSn高濃度合金層が形成されたCu−Ni系焼結合金からなる軸受は、有機酸を多く含む液体燃料に対して優れた耐食性を示す、
(ハ)前記Sn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層は、その最表面層がSn濃度が最も高く、軸受基体に近づくほどSn含有量が少なくなるが、前記Sn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層の平均の成分組成はCu:5〜27%、Ni:5〜22%、P:0.1〜0.6%を含有し、残部:Snおよび不可避不純物からなる成分組成を有するSn:50質量%以上のSn−Cu−Ni系Sn基合金からなる、などの研究結果を得たのである。
【0005】
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)Ni:21〜35%、Sn:5〜12%、C:3〜7%、P:0.1〜0.8%を含有し、残部:Cuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCu−Ni系焼結合金からなる軸受であって、前記Cu−Ni系焼結合金からなる軸受は、素地に気孔率:8〜18%の割合で気孔が分散して形成されており、粒界部にP成分が最も多く含まれており、さらに前記気孔内に遊離黒鉛が分布している組織を有しており、このCu−Ni系焼結合金からなる軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面、該開気孔の少なくとも開口部周辺および該軸受内部に内在する内在気孔の内面にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されている組織を有する耐食性および耐摩耗性を有するモータ式燃料ポンプの軸受、
(2)前記Sn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層は、Cu:5〜27%、Ni:5〜22%、P:0.1〜0.6%を含有し、残部:Snおよび不可避不純物からなる成分組成を有するSn基合金からなる前記(1)記載の耐食性および耐摩耗性を有するモータ式燃料ポンプの軸受、に特徴を有するものである。
【0006】
この発明の軸受の光学顕微鏡により観察した組織を図1に基づいて説明する。図1は、この発明の軸受の中心軸を通る面で切断した面の軸受表面部分における断面組織の模式図である。Cu−Ni合金粒の素地に気孔率:8〜18%の割合で気孔(内在気孔、開気孔を含む)が分散分布し、かつ前記Cu−Ni合金粒の相互粒界部にP成分、前記気孔内に遊離黒鉛がそれぞれ分布した組織を有している。かかるCu−Ni系焼結合金で構成すると、素地を構成するCu−Ni合金粒によって優れた耐摩耗性が確保され、さらにこの軸受の素地に分散分布した気孔内に分布する潤滑性の高い遊離黒鉛の作用および液体燃料の高圧高速流を生起せしめるモータの高速回転により軸受が受ける摩擦抵抗が、軸受内に存在する気孔を介して軸受外周面から軸受内周面に供給される液体燃料によって形成される流体潤滑膜の作用で、耐摩耗性の一段の向上が図られるようになり、しかも前記Cu−Ni合金粒相互間の接合強度が、焼結時にCu−Ni合金相互間にあってこれら相互間の焼結性を向上させるP成分の作用で著しく高いものとなることから、軸受自体が高強度をもつようになり、したがって、この結果のCu−Ni系焼結合金で構成された軸受は、これの小寸化および薄肉化を可能とし、かつ液体燃料の高圧高速流に曝された環境下ですぐれた耐摩耗性を発揮する。
【0007】
さらに、前記内在気孔の内面、該軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面および該開気孔の少なくとも開口部周辺にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されており、Sn高濃度合金層は軸受表面の大部分を被覆しているが、図1に示されるように、開気孔の生成間隔が広い部分ではSn高濃度合金層が被覆されずに軸受け基体が露出している露出部分が生成することがある。しかし、少量の露出部分が形成されても開気孔部分の露出部分ではないので、有機酸に対する腐食の影響は極めて少ない。
【0008】
つぎに、この発明のモータ式燃料ポンプの軸受において、これを構成するCu−Ni系焼結合金の配合組成および気孔率を上記の通りに限定した理由を説明する。
(1)成分組成
(a)Ni
Niは、上記の通りすぐれた強度、耐摩耗性および耐食性を付与し、焼結後Cu−Ni合金粒からなる素地を形成して、軸受自体にすぐれた強度、耐摩耗性および耐食性を具備せしめる作用があるが、Cuとの合量に占めるNiの含有割合が21%未満では軸受にすぐれた強度、耐摩耗性および耐食性を確保することができず、一方がその含有割合が同じく35%を越えると焼結性が急激に低下し、強度低下が避けられなくなることから、その含有割合をNi:21〜35%と定めた。
【0009】
(b)P
P成分には、焼結時にCu−Ni合金相互間にあってこれら相互間の焼結性を向上させ、もってCu−Ni合金粒で構成される素地の強度、すなわち軸受の強度を向上させる作用があるが、Pの含有割合が0.1%未満では十分な焼結性を発揮させることができず、一方その含有割合が0.8%を越えるとCu−Ni合金粒境界部の強度が急激に低下するようになることから、その含有割合を0.1〜0.8%と定めた。
【0010】
(c)黒鉛
黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、軸受にすぐれた潤滑性を付与し、もって軸受の耐摩耗性向上に寄与する作用があるが、その含有割合が3%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有割合が7%を越えると強度が急激に低下するようになることから、その含有割合を3〜7%と定めた。
【0011】
(d)Sn
Snは、Cu−Ni系焼結合金軸受の気孔の内面、該軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面および該開気孔の少なくとも開口部周辺に、Sn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層を形成させて軸受の耐食性を向上させるために添加するが、その含有量が5%未満では十分な厚さのSn高濃度合金層が形成されないので好ましくなく、一方、Snを12%を越えて含有すると、Cu−Ni合金粒の粒界にもSn高濃度合金層が生成するようになり、強度が著しく低下するので好ましくない。したがって、Sn含有量を5〜12%に定めた。
【0012】
(2)気孔率
Cu−Ni合金粒の素地に分散分布する気孔には、上記の通り液体燃料の高圧高速流通下で軸受が受ける強い摩擦および高い面圧を緩和し、もって軸受の摩耗を著しく抑制する作用があるが、その気孔率が8%未満では、素地中に分布する気孔の割合が少なくなり過ぎて前記作用を十分満足に発揮することができず、一方その気孔率が18%を越えると、軸受の強度が急激に低下するようになることから、その気孔率を8〜18%と定めた。
【0013】
(3)Sn高濃度合金層の成分組成
Cu−Ni系焼結合金からなる軸受に内在する内在気孔、開気孔の内面および開気孔の少なくとも開口部周辺に形成されるSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層は、焼結して得られた焼結体軸受を直ちに冷却速度:15℃/分以上で急冷することにより得られ、その最表面層はSn濃度が最も高く、軸受基体に近づくほどSn含有量が少なくなるが、前記Sn高濃度合金層の平均の成分組成はCu:5〜27%、Ni:5〜22%、P:0.1〜0.6%を含有し、残部:Snおよび不可避不純物からなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の軸受は、通常の液体燃料を用いるエンジンのモータ式燃料ポンプ用としては勿論のこと、特に使用する液体燃料が有機酸などを含有する粗悪なガソリンなどの液体燃料である場合でも、すぐれた耐食性、耐摩耗性および高強度を発揮するものであるから、粗悪な液体燃料を用いても十分に高性能を長期間維持できるエンジンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明のモータ式燃料ポンプの軸受を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも30〜100μmの範囲内の所定の平均粒径を有するCu−Ni合金(Ni含有割合は表1に表示)粉末、Cu−P合金(同じくP含有割合は表1に表示)粉末、黒鉛粉末、Sn粉末およびCu粉末を用意し、これら原料粉末を表1,2に示される成分組成になるように配合し、ステアリン酸を1%加えてV型混合機で20分間混合した後、200〜700MPaの範囲内の所定の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気中、表1に示される温度で焼結し、さらに最終的に200〜700MPaの範囲内の所定の圧力でサイジング処理することにより、それぞれ表2に示される気孔率を有するCu−Ni系焼結合金またはCu系焼結合金でそれぞれ構成され、かついずれも外形:9mm×内径:5mm×高さ:6mmの寸法をもった本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1をそれぞれ製造した。
この結果得られた本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1について、その任意断面を光学顕微鏡(200倍)を用いて観察したところ、本発明軸受1〜12は、いずれもCu−Ni合金粒の素地に表1に示される気孔率の割合で気孔が分散分布し、かつ前記Cu−Ni合金粒の相互粒界部にP成分、前記気孔内に遊離黒鉛がそれぞれ分布し、さらにこの軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面、該開気孔の少なくとも開口部周辺および該軸受内部に内在する内在気孔の内面にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されている組織を有していた。一方、比較軸受1はCu−Ni合金粒の素地に表1に示される気孔率の割合で気孔が分散分布し、かつ前記Cu−Ni合金粒の相互粒界部にP成分、前記気孔内に遊離黒鉛がそれぞれ分布した組織を有していたがSn高濃度合金層は形成されていなかった。また従来軸受1は、Cu系合金の素地に表1に示される気孔率の割合で気孔が分散分布し、さらに遊離黒鉛がそれぞれ分散分布した組織を有していた。
【0016】
次に、上記の本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1を用いて下記の試験を行った。
上記の本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1を外形寸法が長さ:110mm×直径:40mmの燃料ポンプに組み込み、この燃料ポンプをガソリンタンク内に設置し、
インペラの回転数:5000(最小回転数)〜15000(最大回転数)r.p.m.、
ガソリンの流量:50リットル/時(最小流量)〜250リットル/時(最大流量)、
軸受が高速回転軸より受ける圧力:最大500KPa、
試験時間:500時間、
の条件、すなわちガソリンが狭い間隙を高速で流通し、これを生起せしめるモータの高速回転軸によって軸受が高圧を受け、かつ速い流速のガソリンに曝される条件で実機試験を行い、試験後の軸受面における最大摩耗深さを測定した。この測定結果を同じく表2に示した。
さらに、前記本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1の強度を評価する目的で、それぞれの軸受について圧壊試験を行い、圧壊強度を測定し、その結果を表2に示した。
さらに、前記本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1の耐食性を評価するために、ガソリンにRCOOH(Rは水素原子または炭化水素基)で表されるカルボン酸を添加して擬似粗悪ガソリンを想定した有機酸試験液を作製し、この有機酸試験液を60℃に加熱した後、前記本発明軸受1〜12、比較軸受1および従来軸受1を加熱した有機酸試験液に100時間浸漬し、有機酸試験液に浸漬する前の質量と浸漬後の質量の変化量を測定し、その結果を表2に示した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表1,2に示される結果から、Cu−Ni系焼結合金で構成された本発明軸受1〜12はいずれも耐摩耗性を有し、前記Cu−Ni合金粒の相互粒界部に分布するP成分の焼結性向上効果による高強度を有し、かつ有機酸試験液に対する耐食性に優れているが、これに対してCu系焼結合金からなる従来軸受1は、同等の高強度を有するものの、摩耗の進行が相対的に速く、有機酸試験液に対する耐食性が劣ることが分かる。また、Sn高濃度合金層が形成されていない組織を有する比較軸受1は有機酸試験液に対する耐食性が劣ることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明軸受の表面に近い断面を光学顕微鏡により観察した組織の模式図である。
【図2】ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの概略横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni:21〜35%、Sn:5〜12%、C:3〜7%、P:0.1〜0.8%を含有し、残部:Cuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCu−Ni系焼結合金からなる軸受であって、前記Cu−Ni系焼結合金からなる軸受は、素地に気孔率:8〜18%の割合で気孔が分散して形成されており、粒界部にP成分が最も多く含まれており、さらに前記気孔内に遊離黒鉛が分布している組織を有しており、このCu−Ni系焼結合金からなる軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面、該開気孔の少なくとも開口部周辺および該軸受内部に内在する内在気孔の内面にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されている組織を有することを特徴とする耐食性および耐摩耗性を有するモータ式燃料ポンプの軸受。
【請求項2】
前記Sn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層は、Cu:5〜27%、Ni:5〜22%、P:0.1〜0.6%を含有し、残部:Snおよび不可避不純物からなる成分組成を有するSn基合金からなることを特徴とする請求項1記載の耐食性および耐摩耗性を有するモータ式燃料ポンプの軸受。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−199977(P2006−199977A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9989(P2005−9989)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(306000315)三菱マテリアルPMG株式会社 (130)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】