説明

耳部処理装置及び溶液成膜方法

【課題】耳部が破断して搬送用のローラに巻きつく現象を低減し、耳部をより確実に風送し回収可能にした耳部処理装置及び溶液成膜方法を提供する。
【解決手段】耳部処理装置において、耳部を挟持するフィードローラ対をウェブから切り離された耳部が垂れ下がる出口の真下に、耳部を短冊状に切断するロータリカッタをフィードローラ対の下側に、配置させた。また、さらに耳部を周面で支持しながら耳部の導入経路を屈曲させる可動ローラ及び固定ローラを配置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブから切り離された耳部処理装置及び溶液成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄い透明プラスチックフィルムは近年、液晶ディスプレイの偏光板の保護膜、位相差板等の光学補償フィルム、プラスチック基板、写真用支持体、あるいは動画用セルや光学フィルタ、さらにはOHPフィルムなどの光学材料として需要が増大している。
【0003】
特に最近、液晶ディスプレイは、その品質が向上したこと、および軽量で携帯性に優れていることから、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ、携帯用端末、テレビジョン、さらにはデジタルスチルカメラやムービーカメラなどに広く使用されているが、この液晶ディスプレイには画像表示のために偏光板が必須となっている。そして、液晶ディスプレイの品質の向上に合わせて、偏光板の品質向上が要求され、それと共に偏光板の保護膜である透明プラスチックフィルムも、より高品質であることが要望されている。
【0004】
偏光板の保護膜などの光学用途フィルムについては、解像力やコントラストの表示品位から高透明性、低光学異方性、平面性、易表面処理性、高耐久性(寸度安定性、耐湿熱性、耐水性)、フィルム内および表面に異物がないこと、表面に傷がなく、かつ傷が付きにくいこと(耐傷性)、適度のフィルム剛性を有すること(取扱い性)、そして適度の透水性など種々の特性を備えていることが必要であるとされている。
【0005】
これらの特性を有するフィルムの原料は、セルロースエステル、ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、生産性や材料価格等の点からセルロースエステルが主に使用されている。特にセルローストリアセテート(TAC)のフィルムは、極めて高い透明性を有しかつ、光学異方性が小さく、かつレターデーションが低いことから光学用途に特に有利に用いられている。
【0006】
これらのフィルムを製膜する方法としては、溶液製膜法、溶融製膜法および圧延法など各種の製膜技術が利用可能であるが、良好な平面性および低光学異方性を得るためには、溶液製膜法が特に適している。溶液製膜法においては、まず、原料フレークを溶剤に溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた高分子溶液(以下、ドープと称する)とする。次に、このドープを水平式のエンドレスの金属ベルト(以下、流延バンドと称する)または回転するドラムなどの支持体の上に、ドープ供給手段(以下、流延ダイと称する)により流延した後、支持体上である程度まで乾燥し、これにより剛性が付与された自己支持性フィルムを支持体から剥離する。次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することで、ウェブ状のフィルムが製膜される。製膜されたフィルムは溶剤を乾燥させてから巻取りリールに巻き取られる。
【0007】
このようなフィルムの製造において、フィルムの耳部(フィルムの幅方向端部)は乾燥時の乾燥むら、或いは流延時のネックインにより厚みが大きく変動しやすいために、フィルムの耳部にカールや弛みが発生する。この結果、搬送時にフィルムの耳部からシワが発生して安定したフィルムの製造ができなくなる。この対策として、フィルムの製膜から巻き取りまでの途中に、フィルムの耳部をフィルムの搬送方向に切断して除去する耳切装置が設けられる。これにより、製品としてのフィルムの幅が正確に管理・維持される。
【0008】
この耳切装置は、上丸刃と下丸刃とを備えたカッタを備えている。フィルムの製品幅に対応してカッタの位置をセットし、以後連続して搬送されるウェブの耳部を切断する。切断された耳部を風送装置の配管に詰めることなく風送するために、耳部はその後の工程で幅方向に沿った方向で切断され短冊状とされる。図8に示すような特許文献1に記載の耳部処理の装置では、耳切装置82においてウェブから耳部が切断される点から、耳部99Cを巻き込みながらガイドローラ93,94及びガイド板95にラップさせ、さらに第一及び第二フィードローラ89A,89Bからなるフィードローラ89に挟持させ、ロータリカッタ91付近で耳部99Cを安定させることで、耳部99Cを短冊状に切断している。この短冊状耳部が風送装置85によって風送され、更に細かく砕かれ、サイロに回収される。回収された耳部は原料として再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−291091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1で知られるような従来の耳部処理の装置では、運転中において、製膜ライン81によって製造された帯状のフィルム99から耳切装置82によって切断された耳部99Cが、ガイドローラ93,94及びガイド板95又は第一及び第二フィードローラ89A,89Bからなるフィードローラ89に引っ張られて、吸引ダクト87の吸引口88の手前で破断してしまうという問題が発生する。
【0011】
なぜならば、ガイドローラ94からフィードローラ89に至る領域において、吸引ダクトからの送風を受けて帯状の耳部99Cが暴れ、当該領域において耳部99Cが受ける張力が運転中において大きく変動するからである。このため、耳部99Cがその張力の劇的な変化に耐えることができなくなり、耳部99Cは破断してしまう。
【0012】
このように耳部99Cが当該領域において破断してしまった場合、破断した耳部99Cのうち、下流側の耳部99Cは吸引口88に到達できるため、吸引ダクト87に導入され、ロータリカッタ91により耳部99Cが短冊状に切断され、短冊状耳部99Dが、ブロワ84が接続された風送装置85にて風送される。一方、上流側の耳部99Cはガイドローラ93,94などに巻付いてしまったり、ガイドローラ94と吸引口88の間にて本来の搬送経路から外れてしまったりするため、吸引口88に到達できず、風送装置85にて風送されない。結果、破断点より上流の耳部99Cが搬送できなくなり、耳切装置82において耳切り不能となってしまうという現象が起こってしまう。耳切り不能になれば、最悪の場合には流延の停止につながることにもなり、生産性を著しく損なってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、耳部処理の装置の運転中に耳部が破断してしまう現象を低減し、耳部をより確実に風送し回収可能にした耳部処理装置及び溶液成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の耳部処理装置は、ウェブから切り離された耳部が垂れ下がる出口の真下に配置され耳部を挟持するフィードローラ対と、フィードローラ対の下側に配置され耳部を短冊状に切断するロータリカッタと、を有することを特徴とする。
【0015】
出口とフィードローラ対との間に配置され、耳部を周面で支持しながら出口からフィードローラ対に至る耳部の導入経路を屈曲させる屈曲位置及び屈曲位置から退避して導入経路の屈曲を解除する屈曲解除位置の間で移動自在な可動ローラを有することが望ましい。
【0016】
フィードローラ対は、耳部の表面を支持する第一フィードローラと、耳部の裏面を支持する第二フィードローラと、を備え、第一又は第二フィードローラが、耳部を挟持する挟持位置及び挟持位置から退避して耳部の挟持を解除する挟持解除位置の間で移動自在であることが望ましい。また、送り出された耳部の搬送路を形成するダクトと、ロータリカッタへ風送しロータリカッタよりも下流側に設けられたダクト内のエアを吸引するブロワと、を有することが望ましい。
【0017】
出口とフィードローラ対との間に固定して配置され、可動ローラと協同して耳部を周面で支持しながら耳部の導入経路を屈曲させる固定ローラを有してもかまわない。
【0018】
可動ローラ及び固定ローラのうち最も出口に近い位置に配置された可動ローラ又は固定ローラが、耳部の導入経路を介して、出口の真上に切り離された耳部を支持する耳部支持部の反対側に配置されることが望ましい。また、可動ローラ及び固定ローラが複数設けられ、耳部の導入経路の両側に設けられることが望ましい。
【0019】
1つ又は2つ以上の可動ローラ又は固定ローラは、出口とフィードローラ対との間における耳部の張力が増大した時に耳部の導入経路の屈曲を小さくする方向に移動し、張力が減少した時に耳部の導入経路の屈曲を大きくする方向に移動することで、張力を調節することが望ましい。
【0020】
耳部の先端がフィードローラ対よりも下方にある下方状態では第一及び第二フィードローラが挟持位置に配置された状態とし、耳部の先端がフィードローラ対よりも上方にある上方状態では第一及び第二フィードローラが挟持解除位置に配置された状態とするフィードローラ制御機構を有することが望ましい。また、下方状態では可動ローラが屈曲位置に配置された状態とし、上方状態では可動ローラが屈曲解除位置に配置された状態とする可動ローラ制御機構を有することが望ましい。
【0021】
フィードローラ対のうち、耳部が曲がる側に配置された第一又は第二フィードローラが、挟持位置及び挟持解除位置の間で移動自在であることが望ましい。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の溶液成膜方法は、ポリマー及び溶剤を含むドープを支持体へ流出し、ドープからなる流延膜を形成する膜形成工程と、流延膜から溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、支持体から流延膜を剥離してウェブとする剥離工程と、ウェブの耳部を切り離す切り離し工程と、本発明に係る耳部処理装置を用いて、ウェブから切り離された耳部を処理する耳部処理工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の耳部処理装置は、耳部を挟持するフィードローラ対をウェブから切り離された耳部が垂れ下がる出口の真下に、耳部を短冊状に切断するロータリカッタをフィードローラ対の下側に、配置させたため、ロータリカッタ付近で耳部を安定して挟持すると同時に耳部が破断して搬送用のローラに巻きつく現象を低減し、耳部をより確実に風送し、回収できる。
【0024】
また、本発明の耳部処理装置は、さらに耳部を周面で支持しながら耳部の導入経路を屈曲させる可動ローラ及び固定ローラを配置させたため、ロータリカッタ付近で耳部をより安定して挟持すると同時に耳部が破断して搬送用のローラに巻きつく現象を更に低減し、耳部を更に確実に風送し、回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の溶液成膜方法の概略を示す平面図である。
【図2】本発明の耳部処理装置とその付近の工程を示す概略図である。
【図3】本発明の耳部処理装置と、耳部回収装置の概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る耳部処理装置の概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る耳部処理装置の概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る耳部処理装置の概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る耳部処理装置の概略図である。
【図8】従来の耳部処理工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(溶液製膜設備)
図1に示すように、溶液製膜設備は、ドープ12から湿潤フィルム13をつくる流延装置15と、湿潤フィルム13の乾燥によりフィルム16を得るクリップテンタ17と、湿潤フィルム13の乾燥を行う乾燥装置18と、を有する製膜ライン10と、フィルム16を巻き芯に巻き取る巻取装置19と、を有する。
【0027】
図1に示すように、流延装置15は、ドープ12を流出する流延ダイ21と、略水平に並べられた水平ロール22と、水平ロール22に巻きかけられた環状の流延バンド23と、剥取ローラ24と、と有する。流延バンド23の循環方向に対し、上流部付近に流延ダイ21が設置され、下流部付近に剥取ローラ24が設置される。流延ダイ21のドープ流出口は流延バンド23に向けられている。また、水平ロール22のうち少なくとも一方は、図示しないロール駆動用モータにより軸を中心に回転し、これに伴って流延バンド23が循環される。
【0028】
流延ダイ21から流延バンド23にドープ12が流出され、流延バンド上でドープが半乾燥され、湿潤フィルム13が流延バンド23上に形成される。剥取ローラ24によりこの湿潤フィルム13を流延バンド23から剥ぎ取られる。なお、流延ダイ21の設置位置を、図示するように、水平ロール22の上方としたが、本発明はこれに限らない。
【0029】
図1に示すように、流延装置15とクリップテンタ17との間の渡り部27には、湿潤フィルム13を支持する搬送ローラ28が複数並べられている。搬送ローラ28は、図示しないモータにより、軸を中心に回転する。搬送ローラ28は、流延装置15から送り出された湿潤フィルム13を支持して、クリップテンタ17へ案内する。なお、図1では、渡り部27に2つの搬送ローラ28を並べた場合を示しているが、本発明はこれに限られず、渡り部27に1つ、または3つ以上の搬送ローラ28を並べてもよい。また、搬送ローラ28は、フリーローラでもよい。
【0030】
クリップテンタ17は、湿潤フィルム13の幅方向両側縁部を把持する多数のクリップを有し、このクリップが延伸軌道上を移動する。クリップにより把持された湿潤フィルム13に対し乾燥風が送られ、湿潤フィルム13には、幅方向への延伸処理とともに乾燥処理が施される。
【0031】
クリップテンタ17と乾燥装置18との間には耳切ユニット30が設けられている。この耳切ユニット30は、図4に示すように、フィルム16の幅方向両端を切断する上丸刃39Aと下丸刃39Bからなるカッタ39と、フィルム16と耳部16Cの導入経路を分離するケース30Aと耳部16Cが垂れ下がる出口30Bと、を有している。耳切ユニット30に送り出されたフィルム16の幅方向の両端は、クリップによって形成された把持跡が形成されている。耳切ユニット30は、この把持跡を有する両端部分を切り離す。この切り離された耳部16Cは、耳部処理回収システム32Aへ送られる。耳部処理回収システム32Aが耳部16Cを処理し回収する機構は、後述する耳部処理回収システム32Bが耳部16Cを処理し回収する機構とほぼ同等であるので、その詳細は耳部処理回収システム32Bのところで合わせて後述する。
【0032】
乾燥装置18は、フィルム16の導入経路を備えるケーシングと、フィルム16の導入経路を形成する複数のローラ18aと、ケーシング内の雰囲気の温度や湿度を調節する空調機(図示しない)とからなる。ケーシング内に導入されたフィルム16は、複数のローラ18aに巻き掛けられながら搬送される。この雰囲気の温度や湿度の調節により、ケーシング内を搬送されるフィルム16から残留した溶剤が蒸発する。更に、乾燥装置18に、フィルム16から蒸発した溶剤を吸着により回収する吸着回収装置が接続される。
【0033】
乾燥装置18及び巻取装置19の間には、上流側から順に、冷却室36、除電バー(図示しない)、ナーリング装置37、及び耳切ユニット30が設けられる。この耳切ユニットも前述と同様に、フィルム16の幅方向両端16Aを切断する耳切装置としての機能以外に、フィルム16と耳部16Cの導入経路を分離する機能を有する。冷却室36は、フィルム16の温度が略室温となるまで、フィルム16を冷却する。除電バーは、冷却室36から送り出され、帯電したフィルム16から電気を除く除電処理を行う。
【0034】
図2に示すように、製膜ライン10により製造された帯状のフィルム16がナーリング装置に搬送される。ナーリング装置37内にはナーリング付与ローラ37Aが設置される。ナーリング付与ローラ37Aは、フィルム16の幅方向両端に巻き取り用のナーリング16Bを付与する。ナーリング付与ローラ37Aとカッタ39とは、切断後のフィルム16の幅方向両端にナーリング16Bが残るように、配置されている。
【0035】
耳部の出口30Bの真下に、ダクト口42が配置されるように、耳部処理回収システム32Bが設置されている。耳部処理回収システム32Bは耳部処理装置33と耳部回収装置34とからなり、また、前述の耳部処理回収システム32Aも同様の構成を有する。耳部16Cは、自由落下により、ダクト口42から耳部処理装置33のダクト43内へ搬送される。
【0036】
図1に示すように、巻取装置19は、プレスローラ19aと巻き芯19bを有する。巻取装置19に送られたフィルム16は、プレスローラ19aによって押し付けられながら巻き芯19bに巻き取られ、ロール状となる。
【0037】
(耳部処理回収システム)
耳部処理回収システム32について詳細を説明する。図3に示すように、耳切ユニット30の耳部の出口30Bより送り出された耳部16Cは、耳部処理装置33により切断処理され、耳部回収装置34により風送及び回収される。耳部16Cの二つの処理経路は、フィルム16の両端に対してそれぞれ同じ処理経路が設けられているからである。耳部処理装置33では二つの処理経路に分かれているが、耳部回収装置34のところで一つの回収経路に収束されている。それぞれにおいて、耳部16Cが、自身の重力の影響を受けて、出口30Bから真下にあるダクト口42へ向かって垂れ下がり、そのままダクト43内へ導入される。その耳部16Cの先端部が耳部処理装置33のダクト43内に設けられたロータリカッタ44により切断され、短冊状耳部16Dとなる。
【0038】
耳部回収装置34には、最終的に耳部を回収するサイロ46、二つのサイレンサ47、風送手段を有したブロワ48、短冊状耳部16Dと空気とを分離するセパレータ49、短冊状耳部16Dを細かくするクラッシャ50、が設けられており、それらが配管51によりダクト状に接続されている。配管51には、短冊状耳部16Dの各種検査・評価のために使用されるサンプリング配管51Aと、配管51内の気流を制御するシャッタ53,53Aと、フィルタ54と、が設けられている。なお、ブロワ48の代わりに、風送手段に加えて短冊状耳部16Dを切断して小片にする手段を有しているカットブロワを用いるのが好ましい。
【0039】
(耳部処理装置)
図4及び図5を用いて、本発明の第1の実施形態に係る耳部処理装置について説明する。図4に示すように、耳部処理装置33は、耳切ユニット30の出口30Bの真下に配置され耳部16Cを挟持するフィードローラ対56と、フィードローラ対の下側に配置され耳部を短冊状に切断するロータリカッタ44と、を有する。なお、図示するように、ロータリカッタ44及びフィードローラ対56が風送設備を有するブロワ48に接続されたダクト43の内部に設けられていることとしたが、本発明はこれに限らず、別の方法で搬送し回収するよう設計してもかまわない。
【0040】
フィードローラ対56は耳部16Cの表面を支持する第一フィードローラ56Aと耳部16Cの裏面を支持する第二フィードローラ56Bとからなり、第二フィードローラ56Bには耳部16Cを挟持する挟持位置及び挟持位置から退避して耳部の挟持を解除する挟持解除位置の間で移動させるシフト部57が電気的に接続されている。ロータリカッタ44は回転刃59と固定刃60を備え、フィードローラ対56に挟持された耳部16Cの先端部を切断する。なお、第二フィードローラ56Bの代わりに第一フィードローラ56Aがシフト部57と電気的に接続されていても構わないし、第一,第二フィードローラの両方がシフト部57と電気的に接続されていても構わない。
【0041】
出口30Bとフィードローラ対56との間には、耳部16Cを周面で支持しながら耳部の導入経路を屈曲させる固定ローラ75と可動ローラ76が備えられている。固定ローラ75が可動ローラ76よりも上側に設けられ、固定ローラ75は耳部16Cの導入経路を介して下丸刃39Bの反対側に設けられている。可動ローラ76は、耳部の導入経路を屈曲させる屈曲位置及び屈曲位置から退避して導入経路の屈曲を解除する屈曲解除位置の間で移動させる制御部77が電気的に接続されている。固定ローラ75は、可動ローラが屈曲位置に配置された状態において耳部を周囲で支持しながら耳部の導入経路を屈曲させる機能を有する。また、フィードローラ対56とロータリカッタ44との間には、耳部の先端16CEを検知するセンサ74が設けられている。センサ74は制御部77に電気的に接続されている。
【0042】
次に、本発明の作用を説明する。図4,図5に示すように、耳切ユニット30においてカッタ39により帯状のフィルム16から切断された耳部16Cが、下丸刃39Bの溝部により支持される。この耳部16Cが自身の重力の影響を受けて、出口30Bから真下にあるダクト口42へ向かって垂れ下がり、そのままダクト43内へ導入される。そして、耳部の先端16CEは、第一及び第二フィードローラ56A,56Bの間を通過する。
【0043】
図5(A)に示すように、耳部の先端16CEがフィードローラ対56よりも上方にある場合は、上方状態にある。耳部の先端16CEが第一及び第二フィードローラ56A,56Bの間を通過した時に、上方状態から、耳部の先端16CEがフィードローラ対56よりも下方にある下方状態に移行する。下方状態に移行してから耳部の先端16CEがロータリカッタ44に到達するまでの間において、ダクト43内のフィードローラ対56とロータリカッタ44との間に設置されたセンサ74により耳部の先端16CEが検知される。
【0044】
センサ74の検知に従って制御部77より、シフト部57及び可動ローラ76に信号が発せられる。信号を受けたシフト部57が第二フィードローラ56Bを挟持解除位置から挟持位置に移動させ、可動ローラ76を屈曲解除位置から屈曲位置に移動させる。この結果、図5(B)に示すように下方状態に対応したローラの配置に移行される。
【0045】
ロータリカッタ44では、フィードローラ対56により挟持された耳部16Cの先端部を、100mmの短冊状に切断する。短冊状耳部16Dは、耳部回収装置34にてサイレンサ47に導入され、風送手段を有したブロワ48に送られる。さらにセパレータ49に送られ、短冊状耳部16Dが空気と分離され、空気と分離された短冊状耳部16Dがクラッシャ50に送られて細かく切断される。細かく切断された耳部は、サイロ46に回収され、ドープ等の原料として再利用される。
【0046】
そのため、耳部16Cの先端部をロータリカッタ44で切断している際には常に耳部16Cを安定してフィードローラ対56で挟持している状態にすることができる。また、耳部を安定させるためにラップさせるガイドローラを使用せず、重力による自由落下を利用して、固定ローラ75及び可動ローラ76のみで耳部16Cの導入経路を形成しているため、耳部が破断する現象を低減できる。ゆえに、耳部回収装置34で短冊状耳部16Dをより確実に風送し、回収できる。ここでは耳部処理回収システム32Bに係る耳部処理装置33について説明したが、耳部処理回収システム32Aに係る耳部処理装置33についても同様であるので説明を省略する。
【0047】
固定ローラ75と可動ローラ76とを利用して、出口30Bからフィードローラ対56までの導入経路を屈曲させ、運転中においてロータリカッタ44やブロワ48が作動している状態であっても、耳部16Cが暴れないようにしたため、耳部16Cが受ける張力が大きく変動することがなくなる。このため、耳部16Cの破断が防止される。
【0048】
出口30Bの真上に、耳部16Cを支持する下丸刃39Bを有し、固定ローラ75及び可動ローラ76のうち最も出口に近い位置に配置された固定ローラ75が、耳部の導入経路を介して下丸刃39Bの反対側に配置されているため、耳部16Cがより暴れないように、耳部16Cの導入経路がより安定するように、屈曲させることができる。また、可動ローラ76は、耳部の導入経路を介して固定ローラ75の反対側に配置されているため、耳部16Cがより暴れないように、耳部16Cの導入経路がより安定するように、屈曲させることができる。
【0049】
また、例えば耳部16Cが裏面を内側にして曲がる傾向にある場合、第一フィードローラ56Aよりも第二フィードローラ56Bがシフト部57と電気的に接続されていることが望ましい。上方状態において第二フィードローラ56Bを退避させることで、より確実に耳部の先端16CEを第一及び第二フィードローラ56A,56Bの間を通過させることができる。
【0050】
また、固定ローラ75又は可動ローラ76について、出口とフィードローラ対との間における耳部の張力が増大した時に耳部の導入経路の屈曲を小さくする方向に移動し、張力が減少した時に耳部の導入経路の屈曲を大きくする方向に移動することで、当該張力を調節するようなローラを用いることが望ましい。例えば、ダンサローラなどを用いることが可能である。
【0051】
図6を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図6に示すように、本実施形態は、第1の実施形態と比較して、固定ローラ75のあった位置に可動ローラ75Aを配置し、可動ローラ76のあった位置に可動ローラ76Aを配置し、可動ローラ75A,76Aの双方とも制御部77と電気的に接続する、という変更を行ったもので、第1の実施形態と同様の部分については同じ符号を付し説明を省略する。
【0052】
図6(A)に示す上方状態において、耳部の先端16CEがセンサ74により検知されると、下方状態への移行が行われる。制御部77よりシフト部57及び可動ローラ75A,76Aに信号が送られ、第二フィードローラ56Bが挟持解除位置から挟持位置に移動し、可動ローラ75A,76Aが屈曲解除位置P2から屈曲位置P1に移動し、図6(B)に示す下方状態に移行する。以降は第1の実施形態と同じように短冊状耳部16Dが風送され回収される。
【0053】
図7を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態は、第1の実施形態と比較して、固定ローラ75のあった位置に可動ローラ75Bを配置し、可動ローラ76を除去し、可動ローラ75Bを制御部77と電気的に接続する、という変更を行ったもので、第1の実施形態と同様の部分については同じ符号を付し説明を省略する。
【0054】
図7(A)に示す上方状態において、耳部の先端16CEがセンサ74により検知されると、下方状態への移行が行われる。制御部77よりシフト部57及び可動ローラ75Bに信号が送られ、第二フィードローラ56Bが挟持解除位置から挟持位置に移動し、可動ローラ75Bが屈曲解除位置から屈曲位置に移動し、図7(B)に示す下方状態に移行する。以降は第1の実施形態と同じように短冊状耳部16Dが風送され回収される。
【0055】
第1〜第3の実施形態では、可動ローラや固定ローラを設けたが、可動ローラや固定ローラを設けなくてもかまわない。もちろん、可動ローラや固定ローラを設ける方が望ましい。可動ローラや固定ローラを設ける方が、ロータリカッタ44付近で耳部16Cをより安定して挟持すると同時に耳部16Cに急に大きな張力がかかって破断する現象を更に低減できるため、耳部16Cを更に確実に風送し、回収できる。また、第1〜第3の実施形態では、可動ローラや固定ローラは、合わせて最大二つしか設けなかったが、いくつ設けてもかまわない。
【0056】
上方状態から下方状態に移行したとき、可動ローラや固定ローラ及びフィードローラ対56の配置を、センサ74及び制御部77により自動で移行させることとしたが、手動であってもかまわない。もちろん、自動で移行するよう制御する方が望ましい。なお、本発明はこれに限ることなく、同様の技術的思想の耳部処理装置及び溶液成膜方法であれば適宜設計変更を行っても構わない。
【実施例】
【0057】
次に、本発明の実施例を説明する。本実施例は、図4において固定ローラ75及び可動ローラ76を用いない耳部処理装置(以下、装置Aと称する)と図7に基づく実施形態と同様の可動ローラ75Bを一つ用いた耳部処理装置(以下、装置Bと称する)との2通りを用いて行った。装置A及び装置Bにおいては、フィードローラ対56(56A,56B)及び可動ローラ75Bのサイズを50mmφとした。また、それぞれの耳部処理装置33に接続された耳部回収装置34の配管は直径がおよそ165.2mmの配管(呼び径で150Aに該当)を用いた。
また、比較例は、図8と同様の従来の耳部処理の装置(以下、装置Cと称する)を用いて行った。フィードローラ対89(89A,89B)及びガイドローラ93,94などの各ローラのサイズを50mmφとした。また、風送装置における配管は直径がおよそ165.2mmの配管(呼び径で150Aに該当)を用いた。
また、装置A,B,Cは全て同じ製膜ライン10を用いて試験を行った。また、製膜ライン10における条件は、連続搬送するウェブの幅を2mとし、溶液製膜設備における搬送中のウェブの張力を10N/mとした。
【0058】
本実施例及び比較例においては、耳部16Cの幅は20mm,200mm,500mmの3水準に変量し、ウェブの厚さは40μm,80μm,100μmの3水準に変量し、ウェブの搬送速度は10m/min,20m/min,30m/minの3水準に変量し、その中の8つの組み合わせについて行った。耳部切断を開始してから耳部が破断するまでの耳部の処理長で以って、以下の基準に従って耳部の処理性を評価した。
1.耳部の処理性評価
◎:耳部の処理長が3000km以上
○:耳部の処理長が1000km以上3000km未満
△:耳部の処理長が500km以上1000km未満
×:耳部の処理長が500km未満
その結果を表1に示す。なお、表1において、装置Aによる実施例には垂直落下の欄には○を付し可動ローラの欄には×を付し、装置Bによる実施例には垂直落下の欄にも可動ローラの欄にも○を付し、装置Cによる実施例には垂直落下の欄にも可動ローラの欄にも×を付して試験条件を表した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、本実施例における条件の範囲内においては、ウェブ厚さ、ウェブの搬送速度、耳部の幅にほぼ依存なく、装置Aを用いた実施例1〜8については良い結果が、装置Bを用いた実施例9〜16については非常に良い結果が、装置Cを用いた比較例1〜8については好ましくない結果が得られた。
【0061】
表1に示すように、耳部を挟持するフィードローラ対56をウェブから切り離された耳部16Cが垂れ下がる出口30Bの真下に、耳部を短冊状に切断するロータリカッタ44をフィードローラ対56の下側に、配置させた本発明の耳部処理装置では、ロータリカッタ44付近で耳部16Cが安定して挟持されると同時に耳部16Cが破断することがない。したがって搬送用のローラに巻きつく現象を低減し、耳部をより確実に風送し、回収できることがわかった。
また、さらに耳部16Cを周面で支持しながら耳部の導入経路を屈曲させる可動ローラ及び固定ローラを配置させた本発明の耳部処理装置では、ロータリカッタ44付近で耳部16Cがより安定して挟持されると同時に耳部16Cが破断することがない。したがって搬送用のローラに巻きつく現象を更に低減し、耳部を更に確実に風送し、回収できることがわかった。
【符号の説明】
【0062】
16 フィルム
16A (フィルムの)幅方向両端
16B (フィルム上の)ナーリング
16C 耳部
16CE 耳部の先端
16D 短冊状耳部
30 耳切ユニット
30A ケース
30B 出口
32A,32B 耳部処理回収システム
33 耳部処理装置
34 耳部回収装置
39 カッタ
39A 上丸刃
39B 下丸刃
42 ダクト口
43 ダクト
44 ロータリカッタ
56 フィードローラ対
57 シフト部
74 センサ
75 固定ローラ
76 可動ローラ
75A,75B,76A 可動ローラ
77 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブから切り離された耳部が垂れ下がる出口の真下に配置され前記耳部を挟持するフィードローラ対と、
前記フィードローラ対の下側に配置され前記耳部を短冊状に切断するロータリカッタと、
を有することを特徴とする、耳部処理装置。
【請求項2】
前記出口と前記フィードローラ対との間に配置され、前記耳部を周面で支持しながら前記出口から前記フィードローラ対に至る前記耳部の導入経路を屈曲させる屈曲位置及び前記屈曲位置から退避して前記導入経路の屈曲を解除する屈曲解除位置の間で移動自在な可動ローラを有することを特徴とする、請求項1に記載の耳部処理装置。
【請求項3】
前記フィードローラ対は、前記耳部の表面を支持する第一フィードローラと、前記耳部の裏面を支持する第二フィードローラと、を備え、
前記第一又は第二フィードローラが、前記耳部を挟持する挟持位置及び前記挟持位置から退避して前記耳部の挟持を解除する挟持解除位置の間で移動自在であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耳部処理装置。
【請求項4】
前記送り出された耳部の搬送路を形成するダクトと、
前記ロータリカッタへ風送し、ロータリカッタよりも下流側に設けられた前記ダクト内のエアを吸引するブロワと、
を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項5】
前記出口と前記フィードローラ対との間に固定して配置され、前記可動ローラと協同して前記耳部を周面で支持しながら前記耳部の導入経路を屈曲させる固定ローラを有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項6】
前記可動ローラ及び前記固定ローラのうち最も前記出口に近い位置に配置された前記可動ローラ又は前記固定ローラが、前記耳部の導入経路を介して、前記出口の真上に前記切り離された耳部を支持する耳部支持部の反対側に配置されることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項7】
前記可動ローラ及び前記固定ローラが複数設けられ、前記耳部の導入経路の両側に設けられることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項8】
1つ又は2つ以上の前記可動ローラ又は前記固定ローラは、前記出口と前記フィードローラ対との間における前記耳部の張力が増大した時に前記耳部の導入経路の屈曲を小さくする方向に移動し、前記張力が減少した時に前記耳部の導入経路の屈曲を大きくする方向に移動することで、前記張力を調節することを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項9】
前記耳部の先端が前記フィードローラ対よりも下方にある下方状態では前記第一及び第二フィードローラが前記挟持位置に配置された状態とし、前記耳部の先端が前記フィードローラ対よりも上方にある上方状態では前記第一及び第二フィードローラが前記挟持解除位置に配置された状態とするフィードローラ制御機構を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項10】
前記下方状態では前記可動ローラが前記屈曲位置に配置された状態とし、前記上方状態では前記可動ローラが前記屈曲解除位置に配置された状態とする可動ローラ制御機構を有することを特徴とする、請求項2〜9のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項11】
前記フィードローラ対のうち、耳部が曲がる側に配置された第一又は第二フィードローラが、前記挟持位置及び前記挟持解除位置の間で移動自在であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の耳部処理装置。
【請求項12】
ポリマー及び溶剤を含むドープを支持体へ流出し、前記ドープからなる流延膜を形成する膜形成工程と、
前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記支持体から前記流延膜を剥離してウェブとする剥離工程と、
ウェブの耳部を切り離す切り離し工程と、
請求項1〜11のいずれか1つに記載の耳部処理装置を用いて、前記ウェブから切り離された耳部を処理する耳部処理工程と、
を有することを特徴とする、溶液成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−94985(P2013−94985A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237189(P2011−237189)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】