説明

聴覚補助機能付電話機

【課題】聴覚補助機能付電話機において、当該機能の作動中に外部からかかってきた電話に健常者が出た場合であっても、健常者に違和感を与える可能性を低くすることができる聴覚補助機能付電話機を提供すること。
【解決手段】聴覚補助機能付電話機1に着信があってから所定時間経過後に受話器10を取ると、受話部12の音孔Hから聴こえる受話音量が通常よりも増加されるとともに、骨伝導装置13により通信相手の音声が伝達され、聴覚補助機能が作動した状態となる。また、このとき画像表示装置5には、聴覚補助機能が作動中であることおよび聴覚補助機能を停止させる操作手順が表示される。一方、着信があってから所定時間経過前に受話器10を取ると、受話音量が通常の音量となり、骨伝導装置13による通信相手の音声の伝達はなされない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚補助機能を有する電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話機に補聴器の機能を持たせたものとしては、例えば、特許文献1および特許文献2のようなものがある。特許文献1に開示されている携帯電話機は、通常モードと補聴器モードを有しており、補聴器モードが選択されている場合において、通話していない状態のときは、送話用のマイクによって周囲の音を集音して、その音を増幅してからイヤホンまたは受話用のスピーカへ出力することで補聴器として機能する。また、着呼信号を受信した場合、通常モードが選択されているときは、アラームホンから着信音を発生させ、これに応じて使用者が電話に出ると、受話用のスピーカから通話相手の音声を出力する。これに対して、補聴器モードが選択されているときは、着呼信号を受信すると、イヤホンから着信音を発生させ、これに応じて使用者が電話に出ると、通話相手の音声もイヤホンから出力する。
【0003】
また、特許文献2に開示されている携帯電話機は、送話用マイクロホンとは別に集音用マイクロホンを設け、当該マイクロホンにより周囲の音などを集音して、骨伝導受話装置や音声出力用スピーカに出力するとともに、着信した音声を骨伝導受話装置により振動に変換して使用者の頭部の骨などを通して伝達している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−126466
【特許文献2】実登3050147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、各家庭内に固定設置され、複数人が共同で使用する家庭用の一般的な電話機(以下、固定電話機という)のように、難聴者と健常者の双方が共同して使用する可能性のある電話機に、上述した特許文献1および特許文献2に開示されている補聴器機能を適用した場合、健常者にとっては相手の話す声が異常に大きく聴こえることになるため、かえって会話しづらい状態になってしまう。したがって、デフォルトで補聴器機能が作動する設定がされていた場合、健常者は電話に出るたびに補聴器機能の作動を停止させる操作が必要となるため、その手間が非常に面倒になるという問題がある。また、補聴器機能として、骨伝導装置のみが作動していたときに、健常者が補聴器機能の作動中であることを知らずに通常の態様で(すなわち、受話器においてスピーカが設置されている部分を耳に当てて)電話に出た場合、相手の声を聴き取ることができず、電話機が故障しているとの誤解を与えてしまう可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、聴覚を補助する機能を備えた聴覚補助機能付電話機において、当該機能の作動中に、外部からかかってきた電話に健常者が出た場合であっても、健常者に違和感を与える可能性を低くすることができる聴覚補助機能付電話機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、受信した音声を出力する音声出力手段および送信する音声を入力する音声入力手段を備えた受話器と、着信したことを音により知らせるための呼出音を発生する呼出音発生手段とを有し、前記音声出力手段から出力される受話音量を増大させる増幅装置および受信した音声を骨伝導により使用者へ伝達する骨伝導装置またはそのいずれか一方を聴覚補助手段として備えた聴覚補助機能付電話機であって、着信があった時点で前記呼出音発生手段により呼出音を外部に出力してから所定期間が経過したか否かを判断する判断手段と、前記着信に応答したときに、前記判断手段により前記所定期間が経過したと判断された場合、前記聴覚補助手段を作動させる聴覚補助機能作動手段とを具備することを特徴としている。
【0008】
ここで、「音声出力手段」とは、たとえばスピーカのことであり、「音声入力手段」とは、たとえばマイクのことである。また、「聴覚補助手段を作動」とは、増幅装置により受話音量を増幅させること、もしくは、骨伝導装置により受信した音声を伝達させること、または、その両方を行わせることをいう。「着信に応答」とは、電話機から受話器を取ること、すなわち、オフフックが検出されたことをいう。
【0009】
上述した聴覚補助機能付電話機によれば、外部から電話がかかってきた時点(すなわち着信があった時点)から所定期間が経過する前に使用者が電話に出る(すなわち、受話器を取る)と、スピーカからは、健常者には適しているが難聴者には聴き取りにくい受話音量で、相手方の音声が発生し、骨伝導装置が設けられていた場合は当該骨伝導装置が作動しない。一方、所定期間が過ぎた後に使用者が電話に出ると、増幅装置が作動して、スピーカから発生する受話音量が、所定期間を経過する前に電話に出た場合よりも増大し、骨伝導装置が設けられていた場合は、骨伝導装置が作動する。ここで、骨伝導装置のみを設けて、上記所定期間の経過前後にかかわらず、受話音量を一定とし、上記所定期間が経過後に電話を出た場合のみ、骨伝導装置を作動させるようにしてもよい。このため、上記所定時間が経過する前に電話に出た場合は、上記の聴覚補助手段が設けられていない一般の電話機と同様に、相手方と会話をすることができ、健常者に、通信相手との会話のしづらさ、または、電話機が故障したとの誤解を与えることを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明は、上記聴覚補助機能付電話機において、前記所定期間が経過しても前記着信に対する応答がなかった場合、前記呼出音発生手段により発生される呼出音の音量を増加させる呼出音量調節手段を具備することを特徴としている。
【0011】
上記の聴覚補助機能付電話機によれば、前述した所定期間が経過した後は、着信に応答するまで呼出音の音量が増加するので、難聴者が、着信していることに気付く可能性が高くなり、かつ、聴覚補助手段が作動している状態で通信相手と会話することができる。また、呼出音の音量が増加する前に電話に出た場合は、聴覚補助手段を具備しない一般的な電話機と同様の状態で通信相手と会話することができる。
【0012】
また、本発明は、上述した各聴覚補助機能付電話機において、着信したことを光により知らせるための呼出光を発生する呼出光発生手段と、前記所定期間が経過しても前記着信に対する応答がなかった場合、前記呼出光発生手段により呼出光を発生させる呼出光駆動手段とを具備することを特徴としている。
【0013】
ここで、呼出光発生手段は、たとえば、フラッシュランプまたはストロボランプなどにより、閃光を繰り返し発生させるものであり、この場合、繰り返し発生する閃光が呼出光となる。上記の聴覚補助機能付電話機によれば、前述した所定期間経過後は、呼出光が発生するので、仮に、前述した呼出音量調節手段を具備しない聴覚補助機能付電話機であっても、難聴者が、着信していることに気付く可能性が高くなり、具備している場合は、着信していることに気付く可能性をより高くすることができる。
【0014】
また、本発明は、上述した各聴覚補助機能付電話機において、画像を表示する画像表示装置と、外部からの操作に応じて、前記聴覚補助手段の作動停止を指示する停止指示手段と、前記着信に応答したときに、前記判断手段により前記所定期間が経過したと判断された場合、前記聴覚補助手段が作動している旨、および、前記停止指示手段の操作手順を示すメッセージを前記画像表示装置に表示させる表示制御手段と、前記停止指示手段からの指示により、前記聴覚補助手段の作動を停止させる前記聴覚補助機能停止手段とを具備することを特徴としている。
【0015】
上記の聴覚補助機能付電話機によれば、前述した所定期間の経過後に着信に応答すると、画像表示装置に、聴覚補助手段が作動していることを示すメッセージとともに、聴覚補助手段の作動を停止させるための操作手順を示すメッセージか表示される。このため、たとえば健常者が前述した所定期間経過後に、聴覚補助手段が作動する状態で電話に出たとしても、電話機が故障したとの誤解を与えることを回避することができるとともに、聴覚補助手段の作動により会話が困難な状態を解消する方法を知らしめることができる。
【0016】
また、本発明は、上述した聴覚補助機能付電話機において、外部からの操作に応じて、前記聴覚補助手段の作動を指示する作動指示手段を有してなり、前記表示制御手段は、前記着信に応答したときに、前記判断手段により前記所定期間が経過していないと判断された場合、前記聴覚補助手段が作動していない旨、および、前記作動指示手段の操作手順を示すメッセージを前記画像表示装置に表示させ、前記聴覚補助機能作動手段は、前記作動指示手段からの指示により、前記聴覚補助手段を作動させることを特徴としている。
【0017】
上記の聴覚補助機能付電話機によれば、前述した所定期間の経過前に着信に応答すると、画像表示装置に、聴覚補助手段が作動していないことを示すメッセージとともに、聴覚補助手段を作動させる操作手順を示すメッセージが表示される。このため、たとえば難聴者が偶然、聴覚補助手段が作動する状態となる前に電話に出たとしても、相手方の音声が聴き取りにくいためにあわてることがなくなるとともに、聴覚補助手段を作動させる方法を知らしめることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の聴覚補助機能付電話機によれば、聴覚を補助する機能を備えた聴覚補助機能付電話機において、当該機能の作動中に、外部からかかってきた電話に健常者が出た場合であっても、健常者に受話音量が異常に大きい、または、電話機の故障ではないかと思わせるような、違和感を与える可能性を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本形態における聴覚補助機能付電話機(以下、単に電話機と略す)の外観を示す斜視図である。図1において、電話機1の上面、右下側には、電話をかける相手の電話番号を入力するためのダイヤルボタン2が設けられている。このダイヤルボタン2は、「0」〜「9」までの数字が付された10個の数字ボタンと、「*」および「#」の記号が付された2個の記号ボタンとから構成されている。ダイヤルボタン2の上方には、第1ファンクションキー(以下、F1キーという)3および第2ファンクションキー(以下、F2キーという)4が設けられている。これらファンクションキーは、後述する聴覚補助機能をON/OFFするためのキーである。F1キー3およびF2キー4の上方には、現在の年月日および時刻、電話がかかってきたときの相手の電話番号、および、各種メッセージを表示するための画像表示装置(以下、ディスプレイという)5が設けられている。また、電話機1の上面、右上の位置には、着信時に閃光を周期的に放つフラッシュランプ6が棒状部材の先端に設けられている。このフラッシュランプ6は、着信したことを光により知らせる呼出光発生手段に相当する。
【0020】
電話機1の上面左側には、受話器を載置するための載置部7が形成されている。この載置部7には、電話機1から電話をかける際の発呼、外部からかかってきた電話に対する応答、通話を終了するときの終話などを検出するためのフック8が設けられている。また、載置部7には、外部から着信があったときに、そのことを音によって報知するための着信スピーカから発せられる着信音を出力するためのスピーカ孔9も設けられている。
【0021】
載置部7に載置される受話器10には、通信相手に送信する音声を入力するためのマイクが内蔵されている送話部11と、通信相手の音声を出力するためのスピーカが内蔵されている受話部12とが形成されている。また、送話部11および受話部12の上面には、それぞれ入出力する音声を通過させるための音孔Hが多数穿設されている。受話部12において音孔Hが設けられている面の中心位置には、受信した通信相手の音声を骨伝導により伝達する骨伝導装置13が設けられている。この骨伝導装置13を頭骨または頬骨などに当てると、通信相手の音声に応じた振動が直接、内耳に伝わり難聴者であっても通信相手の音声を聴き取ることができる。受話器10は、コード14により電話機1と接続されており、電気信号によって電話機1の使用者および通信相手の音声を授受する。
【0022】
次に図2を参照して、電話機1の内部構成について説明する。図2において、図1に示した各部と同じ部位については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図2において、CPU20は、ROM22に記憶されているプログラムに従って、バス21を介して接続された各部からの信号に応じて電話通信、ディスプレイ5への表示、フラッシュランプ6の駆動、聴覚補助機能に関する制御を行う。ROM22には、上述したプログラムのほか、ディスプレイ5へ表示される文字、数字、記号などのデータも記憶されている。RAM23には、CPU20が各種制御を行う過程で発生するデータなどが一時的に記憶される。駆動回路24は、CPU20からの指示に従って、フラッシュランプ6を駆動するための駆動信号を発生する。インタフェース回路25は、電話回線と接続しており、外部から送信されてきた音声信号および電話機1から送信する音声信号の授受を行う。ダイヤル信号発生部26は、ダイヤルボタン2から入力された電話番号に対応する周波数の信号を生成し、インタフェース回路25へ出力する。
【0023】
着信検出部27は、インタフェース回路25を介して図示せぬ交換機から電話回線を介して送信されてきた呼出信号を検出し、着信したことを示す信号(以下、着信信号という)をバス21へ出力する。CPU20は、バス21を介して上述した着信信号を受け取ると、呼出音発生部28に対して呼出音を発生する旨の指示を出力する。これに応じて呼出音発生部28は、呼出音に相当する電気信号(以下、呼出音信号)を呼出音量調節部29へ出力する。この呼出音発生部28は、呼出音発生手段に相当する。呼出音量調節部29は、CPU20から出力される制御信号に従って、呼出音発生部28から出力された呼出音信号のレベルを調節し、電話機1のスピーカ孔9の裏面に設けられた呼出音スピーカ30から発生する呼出音の音量を、通常呼出音量と、拡大呼出音量の二段階に調節する。ここで、呼出音はベルの音とし、通常呼出音量は、音圧レベルにしてたとえば60デシベル、拡大呼出音量は100デシベルに設定されているものとする。
【0024】
音声処理部31は、受話器10の送話部11に内蔵されているマイク32から入力された音声を、インタフェース回路25を介して電話回線へ出力する。また、インタフェース回路25を介して電話回線から受信した通信相手の音声信号を増幅し、CPU20から出力される制御信号に従って、受話器10の受話部12に内蔵されている受話スピーカ33および骨伝導装置13、または、受話スピーカ33のみに対して出力する。受話音量調節部34は、CPU20から出力される制御信号に従って、音声処理部31から出力された通信相手の音声信号を増幅せずにそのままスピーカ33へ出力するか、もしくは、増幅して出力する。ここで、マイク32は音声入力手段に、受話スピーカ33は音声出力手段に、受話音量調節部34は増幅装置に相当する。
【0025】
次に上述した電話機1において、外部からの着信があったときに行われる着信処理の内容について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、初期状態において、音声処理部31は、外部から音声信号を受信した場合、受話スピーカ33に対してのみ出力し、受信した呼出音量調節部29は、呼出音を通常呼出音量で発生し、受話音量調節部34は、音声処理部31から出力された音声信号を増幅せずにそのまま出力するように設定されている。これにより、初期状態で外部からかかってきた電話を取った場合、通信相手の音声は、受話スピーカ33からのみ、音声処理部31により増幅された音量(以下、通常受話音量という)で聴き取ることになる。
【0026】
まず、CPU20は、受話器10が載置部7に置かれている、すなわち、フック検出部24がオンフックを検出しているときは、定期的に着信検出部27の出力をチェックしており(ステップS1)、着信検出部27から着信信号が出力されていなければ、判断結果がNOとなり、再度ステップS1の処理を行う。この状態において、着信検出部27から着信信号が出力されると、ステップS1の判断結果がYESとなり、CPU20は、呼出音発生部28に対して呼出音を発生するよう指示を出す(ステップS2)。
【0027】
これにより、呼出音発生部28は、呼出音信号を断続的に繰り返し出力する。たとえば、呼出音信号を3秒間出力した後、1秒間停止させることを1単位(以下、コールという)とし、これを繰り返し行う。そして、呼出音発生部28から出力された呼出音信号は、呼出音量調節部29を経て、呼出音スピーカ33から通常呼出音量で出力される。
【0028】
次にCPU20は図示せぬタイマーにより計時を開始し(ステップS3)、フック検出部24によりオフフックが検出されたか否かを判断する(ステップS4)。もし、オフフックが検出されなかった場合は、判断結果がNOとなり、ステップS3で計時を開始してから所定時間(たとえば1分間)が経過したか否かを判断する(ステップS5)。所定時間が経過していなければ、判断結果がNOとなって、ステップS4へ戻り、再度オフフックが検出されたか否かを判断する。そして、オフフックが検出されないまま所定時間が経過すると、ステップS5の判断結果がYESとなり、呼出音量調節部29に対して呼出音を拡大呼出音量で発生する旨の制御信号を出力し(ステップS6)、駆動回路25に対してフラッシュランプ6を駆動させる旨の制御信号を出力する(ステップS7)。よって、CPU20によるステップS4,S5,S6の処理および呼出音量調節部29は、所定期間が経過しても着信に対する応答がなかった場合、呼出音の音量を増加させる呼出音量調節手段に相当する。また、CPU20によるステップS4,S5,S7の処理および駆動回路25は、所定期間が経過しても着信に対する応答がなかった場合、呼出光を発生させる呼出光駆動手段に相当する。上記の処理により、着信時から所定時間経過してもオフフックが検出されない場合は、呼出音が通常呼出音量から拡大呼出音量に変化するとともに、フラッシュランプ6が一定周期で発光するため、難聴者が着信に気付く可能性を高くすることができる。
【0029】
一方、ステップS4でオフフックが検出されると、判断結果はYESとなり、呼出音発生部28に対して呼出音信号の発生を停止させる旨の制御信号を出力する(ステップS8)。これにより呼出音スピーカ30から発生していた呼出音が停止する。次に、着信時からオフフックが検出されるまで、所定時間(たとえば1分間)が経過していたか否かを判断し(ステップS9)、所定時間が経過していた場合は、判断結果がYESとなり、駆動回路25に対してフラッシュランプ6の駆動を停止させる旨の制御信号を出力し(ステップS10)、さらに、呼び出し音量調節部29に対して、次回、着信があったときのために、呼出音を通常呼出音量で発生させる旨の制御信号を出力する(ステップS11)。そして、受話音量調節部34に対して受話音量を増幅する旨の制御信号を出力するとともに、音声処理部31に対してインタフェース回路25を介して受信した音声信号を、骨伝導装置13に対しても出力する旨の制御信号を出力する(ステップS12)。よって、ステップS4,S9,S12の処理は、聴覚補助機能作動手段に相当する。
【0030】
さらに、ディスプレイ5に対して、聴覚補助機能が作動中であることを示すメッセージ、および、聴覚補助機能の作動を停止させるための操作手順を示すメッセージを出力して着信処理を終了する(ステップS13)。すなわち、ステップS4,S9,S13の処理は、着信に応答したときに、所定期間が経過していたときに、聴覚補助手段が作動している旨、および、停止指示手段の操作手順を示すメッセージを画像表示装置に表示させる表示制御手段に相当する。ここで、聴覚補助機能とは、受話音量調節部34によって受話音量をさらに増幅させること(以下、受話音量調節部34によって通常受話音量をさらに増大した受話音量のことを拡大受話音量という)、および、骨伝導装置によって受信した音声を伝達することを指す。
【0031】
ステップS13の処理によりディスプレイ5に表示されるメッセージの一例を図4(a)に示す。この図に示す例では、「聴覚補助機能が作動中です」という文字列と、「聴覚補助機能を停止させる場合はF2キーを押して下さい」という文字列がディスプレイ5に表示されており、「作動中」および「F2キーを押して下さい」という文字列は、他の文字列に比べて大きく表示されるとともに、点滅表示されている。ここで、「F2キーを押して下さい」という文字列は、聴覚補助機能の作動を停止させるための操作手順を示すメッセージに相当する。また、F2キー4は、停止指示手段に相当する。
【0032】
一方、ステップS9において、着信時からオフフックが検出されるまで、所定時間が経過していなかったと判断した場合は、判断結果がNOとなり、ディスプレイ5に対して、聴覚補助機能が停止中であることを示すメッセージ、および、聴覚補助機能を作動させるための操作手順を示すメッセージを出力して着信処理を終了する(ステップS14)。ステップS4,S9,S14の処理は、着信に応答したときに、所定期間が経過していなかったときは、聴覚補助手段が作動していない旨、および、作動指示手段の操作手順を示すメッセージを画像表示装置に表示させる表示制御手段に相当する。ここで、ステップS14の処理によりディスプレイ5に表示されるメッセージの一例を図4(b)に示す。この図に示す例では、「聴覚補助機能が停止中です」という文字列と、「聴覚補助機能を作動させる場合はF1キーを押して下さい」という文字列がディスプレイ5に表示されており、「停止中」および「F1キーを押して下さい」という文字列は、他の文字列に比べて大きく表示されるとともに、点滅表示されている。ここで、「F1キーを押して下さい」という文字列は、聴覚補助機能を作動させるための操作手順を示すメッセージに相当する。また、F1キー3は、作動指示手段に相当する。
【0033】
以上説明した着信処理により、電話機1に着信があると、呼出音スピーカ30から呼出音が通常呼出音量で発生し(ステップS2)、所定時間が経過する前に受話器10を載置部7から取り上げると、フック検出部24によりオフフックが検出されて(ステップS4,YES)、呼出音が停止し(ステップS8)、ディスプレイ5に図4(a)に示す内容のメッセージが表示される。また、このときの通話は、初期状態のまま、すなわち通信相手の音声を受話スピーカ33から通常受話音量で聴き取ることになる。一方、着信時から所定時間が経過した後に受話器10を載置部7から取り上げると、ステップS9の判断結果がNOとなり、ステップS12の処理が行われることにより、通信相手の音声を受話スピーカ33から拡大受話音量で、かつ、骨伝導装置13により聴き取ることになる。
【0034】
次に電話機1において通話中に行われる聴覚補助機能の作動または停止を制御する機能制御処理の内容について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。まず、図3に示した着信処理が実行され、電話機1において通信が開始されると、CPU20は、通話が継続して行われているか否かを判断する(ステップS20)。そして、電話回線を通じて外部の交換機から切断信号を受信した場合、または、受話器10が載置部7に置かれて、フック検出部24によりオンフックが検出された場合は、通話が終了したものとみなして、判断結果がNOとなり、機能制御処理を終了する。
【0035】
一方、外部の交換機から切断信号を受信していない場合、または、フック検出部24によりオンフックが検出されなかった場合は、通話が継続しているものとみなして判断結果がYESとなり、F1キー3が押されたか否かを判断する(ステップS21)。ここで、F1キー3が押されていなければ、判断結果がNOとなり、F2キー4が押されたか否かを判断する(ステップS22)。そして、F2キー4も押されていなかった場合は、ステップS20へ戻り、通話が終了するか(ステップS20,NO)、F1キー3またはF2キー4のいずれかが押される(ステップS21またはS22がYES)まで、ステップS20→S21→S22の処理が繰り返し行われる。
【0036】
このとき、たとえば、F1キー3が押されたとすると、CPU20は、ステップS21の判断結果がYESとなり、聴覚補助機能が停止中であるか否かを判断する(ステップS23)。すなわち、音声処理部31から受話スピーカ33に対してのみ音声信号が出力され、かつ、受話音量調節部34による受話音量の増幅がされていないかを判断する。もし、聴覚補助機能が作動中であった場合、すなわち、音声処理部31から骨伝導装置13に対しても音声信号が出力されており、かつ、受話音量調節部34により受話音量が増幅されていた場合は、ステップS23の判断結果がNOとなり、ステップS20へ戻る。一方、聴覚補助機能が停止中であった場合は、判断結果がYESとなり、CPU20は、受話音量調節部34に対し、音声処理部31から出力された音声信号を増幅するよう指示する制御信号を出力するとともに、音声処理部31に対し、インタフェース回路25を介して受信した音声信号を、骨伝導装置13に対しても出力するよう指示する制御信号を出力し、聴覚補助機能を作動させる(ステップS24)。次いで、CPU20は、図5(a)に示した、聴覚補助機能が作動中であることを示すメッセージ、および、聴覚補助機能を停止させるための操作手順を示すメッセージを、ディスプレイ5に表示し(ステップS25)、ステップS20の処理へ戻る。
【0037】
また、ステップS20→S21→S22の処理が繰り返し行われているときに、F2キー4が押されると、ステップS22の判断結果がYESとなり、CPU20は、聴覚補助機能が作動中であるか否かを判断する(ステップS26)。もし、聴覚補助機能が停止中であった場合は、ステップS26の判断結果がNOとなり、ステップS20へ戻る。一方、聴覚補助機能が作動中であった場合は、判断結果がYESとなり、CPU20は、受話音量調節部34に対し、音声処理部31から出力された音声信号を増幅せずにそのまま出力するよう指示する制御信号を出力するとともに、音声処理部31に対し、骨伝導装置13へ出力していた音声信号を停止するよう指示する制御信号を出力し、聴覚補助機能を停止させる(ステップS27)。次いで、CPU20は、図5(b)に示した、聴覚補助機能が停止中であることを示すメッセージ、および、聴覚補助機能を作動させるための操作手順を示すメッセージを、ディスプレイ5に表示し(ステップS28)、ステップS20の処理へ戻る。
【0038】
以上説明した機能制御処理により、たとえば、図3に示した着信処理により、着信時から所定時間経過後に健常者が電話に出た場合、図3、ステップS13の処理により、ディスプレイ5には、聴覚補助機能が作動中であること、および、聴覚補助機能を停止させるための操作手順が表示されており、当該操作手順に従って、F2キー4が押されると、図5、ステップS27の処理により、聴覚補助機能が停止する。このため、電話機1が故障したとの誤解を与えることなく、受話音量が大きすぎて会話しづらい状態を直ちに解除することができる。
【0039】
一方、着信時から所定時間が経過する前に、難聴者が電話に出た場合は、図3、ステップS14の処理により、ディスプレイ5には、聴覚補助機能が停止中であること、および、聴覚補助機能を作動させるための操作手順が表示されており、当該操作手順に従って、F1キー3が押されると、図5、ステップS24の処理により、聴覚補助機能が作動する。このため、電話機1の聴覚補助機能が故障したとの誤解を与えることなく、直ちに聴覚補助機能を作動させることができる。
【0040】
なお、電話機1では、聴覚補助機能として、受話音量の増大および骨伝導装置により通信相手の音声の伝達を行っていたが、いずれか一方の機能または装置を搭載するようにしてもよい。また、聴覚補助機能を作動させるための手段と、停止させるための手段を、F1キー3とF2キー4とに分けていたが、1つのキーだけを設けて、聴覚補助機能が作動中に当該キーが押された場合は、聴覚補助機能を停止させ、聴覚補助機能が停止中に当該キーが押された場合は、聴覚補助機能を作動させるようにしてもよい。また、フラッシュランプ6の発光周期は一定にしなくてもよく、たとえば、発光を開始してから時間の経過とともに発光周期を徐々に短くしていってもよい。本実施の形態においては、固定電話機を例に挙げたが、本実施形態と同様の聴覚補助機能は、携帯電話機またはテレビ電話機に対しても適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における聴覚補助機能付電話機の外観を示す斜視図である。
【図2】同聴覚補助機能付電話機の内部構成を示すブロック図である。
【図3】同聴覚補助機能付電話機において実行される着信処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】同着信処理において、本発明の実施の形態における聴覚補助機能付電話機に設けられた画像表示装置に表示されるメッセージの一例を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施の形態における聴覚補助機能付電話機において実行される機能制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 聴覚補助機能付電話機
3 第1ファンクションキー
4 第2ファンクションキー
5 画像表示装置
6 フラッシュランプ
11 送話部
12 受話部
13 骨伝導装置
20 CPU
24 フック検出部
25 駆動回路
27 着信検出部
28 呼出音発生部
29 呼出音量調節部
30 呼出音スピーカ
32 マイク
33 受話スピーカ
34 受話音量調節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した音声を出力する音声出力手段および送信する音声を入力する音声入力手段を備えた受話器と、着信したことを音により知らせるための呼出音を発生する呼出音発生手段とを有し、前記音声出力手段から出力される受話音量を増大させる増幅装置および受信した音声を骨伝導により使用者へ伝達する骨伝導装置またはそのいずれか一方を聴覚補助手段として備えた聴覚補助機能付電話機であって、
着信があった時点で前記呼出音発生手段により呼出音を外部に出力してから所定期間が経過したか否かを判断する判断手段と、
前記着信に応答したときに、前記判断手段により前記所定期間が経過したと判断された場合、前記聴覚補助手段を作動させる聴覚補助機能作動手段と
を具備する聴覚補助機能付電話機。
【請求項2】
前記所定期間が経過しても前記着信に対する応答がなかった場合、前記呼出音発生手段により発生される呼出音の音量を増加させる呼出音量調節手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の聴覚補助機能付電話機。
【請求項3】
着信したことを光により知らせるための呼出光を発生する呼出光発生手段と、
前記所定期間が経過しても前記着信に対する応答がなかった場合、前記呼出光発生手段により呼出光を発生させる呼出光駆動手段と
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の聴覚補助機能付電話機。
【請求項4】
画像を表示する画像表示装置と、
外部からの操作に応じて、前記聴覚補助手段の作動停止を指示する停止指示手段と、
前記着信に応答したときに、前記判断手段により前記所定期間が経過したと判断された場合、前記聴覚補助手段が作動している旨、および、前記停止指示手段の操作手順を示すメッセージを前記画像表示装置に表示させる表示制御手段と、
前記停止指示手段からの指示により、前記聴覚補助手段の作動を停止させる前記聴覚補助機能停止手段と
を具備することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の聴覚補助機能付電話機。
【請求項5】
外部からの操作に応じて、前記聴覚補助手段の作動を指示する作動指示手段を有してなり、
前記表示制御手段は、前記着信に応答したときに、前記判断手段により前記所定期間が経過していないと判断された場合、前記聴覚補助手段が作動していない旨、および、前記作動指示手段の操作手順を示すメッセージを前記画像表示装置に表示させ、
前記聴覚補助機能作動手段は、前記作動指示手段からの指示により、前記聴覚補助手段を作動させる
ことを特徴とする請求項4に記載の聴覚補助機能付電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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