肝炎ウイルスの負荷を変えるための方法および化合物
本発明は、感染した宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための方法に関する。この方法は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質K(hnRNP K)と肝炎ウイルスの制御領域であるエンハンサーII領域との複合体形成を調節することを含む。さらに、複合体形成を調節する化合物を同定する方法、および肝炎感染の診断における当該化合物の使用がある。本発明は、hnRNP KのエンハンサーII領域への結合親和性を低下させる、ウイルス配列のエンハンサーII領域の1752位における突然変異にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝炎ウイルスに感染した宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための方法に関する。この方法は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節からなる。さらに本発明は、前記複合体形成を調節することが可能である化合物を同定するための方法に関する。本発明は、このような調節を行うことが可能である化合物、例えば核酸分子、免疫グロブリン、細胞表面受容体のアンタゴニストおよびアゴニスト、hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを調節する化合物、およびhnRNP Kタンパク質の細胞内の量を調節する化合物などにも関する。最後に本発明は、肝炎感染を診断するためのこのような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスは、共にウイルス性肝炎の原因の大部分を占める、7つの既知ウイルス(A、B、C、D、E、G、およびTT型肝炎ウイルス)の中の2つである。B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる感染によって引き起こされる肝炎は、主たる世界的な健康問題であり、今日世界中で最も一般的な感染の1つである。世界中で4億人を超える人々がB型肝炎ウイルス(HBV)に慢性的に感染しており、1億7千万人を超える人々がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している(それぞれの総説に関しては、非特許文献1および2を参照のこと)。比較として、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している人々の数は、6千万人であると推測されている。慢性肝炎は、肝不全;肝硬変に進行する慢性肝炎;静脈瘤出血、腹水、および肝細胞癌の危険がある活動性肝炎を伴う肝硬変;肝炎ウイルス伝播の危険がある高ウイルス血症を伴う慢性肝炎、肝臓外の合併症を伴う慢性肝炎など重大な合併症と関係がある。C型肝炎は欧州および米国における肝臓移植の主な原因である。A型肝炎は慢性疾患を引き起こすことはないが、慢性肝臓疾患を併発した急性A型肝炎は、より重度の疾患および高い死亡率をもたらす可能性があることを示唆する証拠がある(非特許文献3)。D型肝炎ウイルスは、HBV感染を前提条件とする不完全ウイルスである。D型肝炎ウイルスによる重複感染は、急性肝炎から肝硬変への進行を引き起こすことが多い(非特許文献4)。E型肝炎ウイルスは急性肝炎、自己限定性肝炎、黄疸性肝炎を引き起こす可能性があり(非特許文献5)、G型肝炎ウイルス感染はいかなる既知の疾患状態との関係も見出されていないが(非特許文献6)、該ウイルス感染はヒトにおいて一般的であり持続することが多い。肝臓疾患に対するTTウイルスの影響は、現時点では明らかでない(非特許文献7)。
【0003】
HBVまたはHCVに関する治療が利用可能であるが、これまで慢性感染した患者においてウイルスの完全な根絶をもたらしたものは無い。したがって、今日のHBVまたはHCVの治療の共通の望ましい目標は、免疫グロブリンすなわち抗体、または小分子の開発と、肝臓内壊死および炎症の消失ならびに線維症進行の低下を伴うレベルまでウイルス複製を安定に抑制することとに限られる。
【0004】
HBVおよびHCVの治療用に現在利用可能な薬剤の中では、インターフェロンαがいずれのウイルスの治療にも適していることが知られている。インターフェロンαは、免疫系の細胞によって生成される分子であり、ウイルスおよび他の侵入物質に応答して分泌される。インターフェロンαは、血中レベルの大幅な変動をもたらす次善の薬物動態を有しているので(非特許文献8および9)、大型、分岐状、40kDのポリマーなどのポリエチレングリコール分子を結合させることによって作製される「PEG化インターフェロン」の施用につながっている。
【0005】
2つの他の薬剤、ラミブジンおよびアデフォビルがHBVの治療に現在利用可能であり、その両方がヌクレオシド類似体である。このように、これらの薬剤は、ウイルスの酵素であるヌクレオシド逆転写酵素を阻害することによってウイルス増幅を遮断する。副作用としてこれらの薬剤は、肝臓に対する重大な障害および乳酸アシドーシスを引き起こす可能性があり(一般的概要に関しては、非特許文献10を参照のこと)、腎毒性の副作用も報告されている。重大な欠点は、ヌクレオシド逆転写酵素の突然変異を含むHBVの耐性バリアントが出現することである。いずれの薬剤も、一般にインターフェロンと組み合わせて使用される(非特許文献11)。類似の作用機構に基づく他の化合物が第2相試験を経ている。
【0006】
HCVの治療用には、インターフェロンα以外に、これもヌクレオシド類似体である、リバビリンと呼ばれる1種の薬剤が唯一現在利用可能である。リバビリンも一般にインターフェロンと組み合わせて使用される。その治療作用の正確な機構は、依然として完全には理解されていない。リバビリンは一般に、ある種の酵素を阻害することにより細胞内のグアノシン三リン酸(GTP)のレベルを低下させて、間接的にウイルスのRNA合成を阻害すると考えられている。しかしながら、HCVの複製に対するその効果は小さい(非特許文献12)。さらに、貧血、好中球減少、および血小板減少などの血液の異常が一般的な副作用である(非特許文献13)。
【0007】
既存の薬剤の組合せを使用する療法は、HCV感染の治療においてより有効であるようだが(非特許文献2および12)、HBV感染に関しては、このような付加的な利点は、これまで確認すらされていない(非特許文献1)。さらに、前述の療法のいずれにおいても、大部分の患者は長期の応答を得ていない(非特許文献11および14)。1例として、幾つかの試験から、インターフェロン治療に対する持続的応答が、わずか10〜20%のHCV感染患者にしか見られなかったことが示されている(非特許文献12)。したがって、肝炎感染を治療する代替標的および代替方法を検索する必要性が存在する。
【0008】
このような検索は、対応するウイルスの蓄積および機能についての詳細な理解に基づくことが好ましい。HBVに関しては、その複製の制御の根底にある要素に関するある程度の詳細な情報が入手可能であるが、例えばHCVに関してはこれまでほとんど知られていない。HBVは、RNA中間体を介して複製するヘパドナウイルス・ファミリーのDNAウイルスである。B型肝炎ウイルスのゲノムは、4つの重なりあう遺伝子と、3つのプロモーターと、2つのエンハンサー領域とを含む、3.2キロベースの環状で部分的に二本鎖のDNAである。2つの別個に制御されるエンハンサーのいずれも、3つ全てのプロモーターの活性を増大させることが可能である(非特許文献15)。
【0009】
HCVは、フラビウイルス・ファミリーのRNAウイルスである。その一本鎖の10キロベースのゲノムは、1つの遺伝子を含んでいる。1つの単離体由来のHCVは、1つの配列によってではなく、互いに密接に関係がある一群の変異配列によって定義可能であるという事実によって、このゲノムのさらなる調査が妨げられてきた。この多様性は、遺伝的に異なるグループまたは遺伝子型に対応する(非特許文献16)。3’非翻訳領域が、複製および制御領域に必要不可欠な2つのシグナルを含むということが示唆されている(非特許文献17)。
【0010】
D型肝炎ウイルスは不完全ウイルスであり(非特許文献4)、E型肝炎ウイルス(HEV)は、7.2キロベースのゲノムを有する、未分類の、小さな、一本鎖のエンベロープを持たないRNAウイルスである(非特許文献5)。G型肝炎ウイルスは、フラビウイルス科に属しエンベロープを有するRNAウイルスである(非特許文献18)。TTウイルスは、ヘテロ性のようであり、一本鎖の環状DNAゲノムから構成されているが、充分には特徴解析されていない(非特許文献7)。
【0011】
B型肝炎ウイルスDNAのエンハンサーIに結合する核酸分子を使用して、B型肝炎ウイルスの複製を調節する試みがなされている(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、宿主のどの細胞タンパク質が肝炎ウイルスのRNA合成を制御することが可能であるかは、これまでほとんど不明である。モルヒネはC型肝炎ウイルスの複製に影響を与えうることが示唆されているが(非特許文献19)、その正確な作用機構は知られていない。幾つかの転写因子、LRH−1/hB1F、HNF1、HNF3b、HNF4およびC/EBPは、in vitroでHBVのエンハンサーII領域の活性を増大させることが可能であることが認められてきているが、しかしながら、それらの正確な役割は、たとえ認められているとしても、依然確認を必要とする状態である(非特許文献20)。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0148985A1号明細書
【非特許文献1】チング エルエルら(Ching LL et al.)、Lancet 362(9401)、2003、p.2089〜2094
【非特許文献2】ポイナルド、ティーら(Poynard、T et al.)、Lancet 362(9401)、2003、p.2095〜2100
【非特許文献3】クックスレイ ジー(Cooksley G)、J Gastroenterol Hepatol. 19(Suppl1)、2004、S17〜20
【非特許文献4】ビーン ピー(Bean P)、Am Clin Lab.21(5)、2002、25〜27
【非特許文献5】ワン エル、ツワン エイチ(Wang L、Zhuang H)、World J Gastroenterol. 10(15)、2004、2157〜2162
【非特許文献6】スタプレトン ジェーティー(Stapleton JT)、Semin Liver Dis. 23(2)、2003、137〜148
【非特許文献7】ヒノ エス(Hino S)、Rev Med Virol. 12(3)、2002、151〜158
【非特許文献8】レディ ケーアールら(Reddy KR et al.)、Advanced Drug Delivery Reviews 54(4)、2002、571〜586
【非特許文献9】フェレンチ ピー(Ferenci P)、Int J Clin Pract. 57(7)、2003、610〜615
【非特許文献10】ロシュ ビー、サムエル ディー(Roche B、Samuel D)、Liver Transpl. 10Suppl、2004、S74
【非特許文献11】マルセリン ピーら(Marcellin P et al.)、N Engl J Med 351(12)、2004、1206〜1217
【非特許文献12】レイチャード オーら(Reichard O et al.)、Lancet 351(9096)、1998、83〜87
【非特許文献13】オング ジェーピー、ヨウノシ ゼットエム(Ong JP、Younossi ZM)、Cleve Clin J Med. 71、Suppl3、2004、S17〜21
【非特許文献14】パパテオドリディス ジーブイ(Papatheodoridis GV)、ハッジヤンニス エスジェイ(Hadziyannis SJ)、Aliment Pharmacol Ther. 19(1)、2004、25〜37
【非特許文献15】スー エイチ、イー ジェーケー(Su H、Yee JK)、Proc Natl Acad Sci USA 89(7)、1992、2708〜2712
【非特許文献16】マーテルら(Martell et al.)、Nucleic Acids Research 32(11)、2004、−90
【非特許文献17】イー エム、レモン エスエム(Yi M、Lemon SM)、J Virol. 77(6)、2003、3557〜3568
【非特許文献18】ハラツ アールら(Halasz R et al.)、Scand J Infect Dis. 33(8)、2001、572〜580
【非特許文献19】リー ワイら(Li Y et al.)、Am J Pathol 163(3)、2003、1167〜75
【非特許文献20】カイ ワイエヌら(Cai YN et al.)、Cell Res. 13(6)、2003、451〜8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、ヌクレオシド類似体またはインターフェロンの使用とは異なる作用に基づいて、宿主生物中の肝炎ウイルスの負荷を変化させる代替法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、そのような複合体の形成を調節することによって、特に独立請求項に記載した方法によって解決される。
したがって本発明は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片が、ウイルスゲノム上の制御領域と複合体を形成することが可能であるという発見に基づく。
【0014】
この発見は特に驚くべきものである、何故ならhnRNP Kは、多くの他の細胞成分と同様にC型肝炎ウイルスのヌクレオキャプシドの成分と結合することが、これまでに発見されているからである(ヒジー ティーワイら(Hsieh TY et al.)、J Biol Chem. 273(28)、1998、17651〜17659;ライ
エムエム、ウエア シーエフ(Lai MM、Ware CF)、Curr Top Microbiol Immunol 242、2000、117〜134)。この結合の結果は、人体の細胞中のhnRNP Kの既知の細胞機能に影響を与え、したがって肝炎感染によって引き起こされる幾つかの状態の原因であると推測されている(ライ エムエム、ウエア シーエフら(Lai MM、Ware CF et al.)、上記)。
【0015】
hnRNP Kは、可変スプライシングによって生じる種々のバリアント(変異体)の形で存在することが知られており(デジガルド ケーら(Dejgaard K et al.)、J.Mol.Biol. 236(1)、1994、33〜48)、多様な機能群を有する。hnRNP Kはシャトルタンパク質として働き、さまざまな細胞因子と結合し、転写因子として働く(ボムスツティック ケー、デニセンコ オー、オストロビスキー ジェー(Bomsztyk K、Denisenko O、Ostrowski
J)、Bioessays 26(6)、2004、629〜638;シャウン エーら(Shawn A et al.)、Cell Res、13(6)、2003、451〜458)。hnRNP Kは、同タンパク質をDNAおよびRNAのいずれとも相互作用可能とするKホモロジー(KH)ドメインおよびRGGボックスなどの、多数の調節ドメインを有する。一本鎖DNAとの結合を特に担う領域は、KHドメイン3を含むものとして同定されている(ブラッドドック ディーティーら(Braddock DT et al.)、EMBO J 21(13)、2002、3476〜3485;バッケ ピーエイチら(Backe PH et al.)、Acta Crystallogr
D Biol Crystallogr 60(Pt4)、2004、784〜787)。
【0016】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片とウイルスゲノム上の制御領域との複合体の形成を調節する方法は、任意の肝炎ウイルスによって引き起こされる感染について使用することが可能である。このようなウイルスの例は、マウス肝炎ウイルス、ウッドチャ
ック肝炎ウイルス、ジリス肝炎ウイルス、北極ジリスB型肝炎ウイルス、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)、アヒルB型肝炎ウイルス、サギB型肝炎ウイルス、ツクシガモB型肝炎ウイルス、ハクガンB型肝炎ウイルス、ヒメハクガンB型肝炎ウイルス、コウノトリB型肝炎ウイルス、ウーリー・モンキーB型肝炎ウイルス、オランウータン・ヘパドナウイルス、GBウイルスB、またはヒトC型肝炎ウイルス(HCV)である。本発明の好ましい実施形態は、ヘパドナウイルス、特にヒトB型肝炎ウイルスの使用からなる。
【0017】
該当する肝炎ウイルスは、野生型または既知の肝炎ウイルスのバリアントであってもよい。この点において用語「バリアント」は、対応する既知の配列と比較するとそのヌクレオチド配列が異なっている任意の形の核酸を指す。その違いは例えば、天然配列に導入された多型、1ヌクレオチドの突然変異、置換、(一続きの長さの)欠失または挿入、N末端および/またはC末端への付加によるものでありうる。
【0018】
同様にhnRNP Kタンパク質は、野生型または既知のhnRNP Kタンパク質のバリアントであってよい。この点において用語「バリアント」は、対応する既知の配列と比較するとそのアミノ酸配列が異なっている任意の形のタンパク質を指す。その違いは例えば、対応するコード核酸配列の天然配列に導入された多型、1ヌクレオチドの変化または修飾、置換、(一続きの長さの)欠失または挿入、N末端および/またはC末端への付加、対応するペプチドの可変スプライシング、翻訳後修飾、および有機分子との結合によるものでありうる。
【0019】
この点において、当然ながら用語「肝炎ウイルス」または「hnRNP Kタンパク質」は、このようなバリアントを含むことを意味する。
用語「制御領域」は、肝炎ウイルスの発現または増幅を刺激するかあるいは低下させることが可能である、肝炎ゲノムの任意の部分を指す。このような領域の例は、サイレンサー、エンハンサーまたはプロモーターである。本発明の現在好ましい一実施形態では、制御領域はヘパドナウイルス、特にヒトB型肝炎ウイルスのエンハンサーII領域である。
【0020】
前述のように本発明の方法は、hnRNP Kタンパク質の機能断片の使用も含み得る。このような断片は、3つの基準によって定義され得るポリペプチドである。第1に、該断片は、肝炎ウイルスの制御領域と結合して該肝炎ウイルスの複製に影響を与えるほど充分に安定した複合体を形成することが可能である。機能断片はKホモロジードメイン、特にKHドメイン3を含むことが好ましい。第2に、このような機能断片は、肝炎ウイルスのバリアントとの複合体形成が影響を受けるような方法で化合物によって調節され得る。第3に、このような断片は、天然に存在するhnRNP Kバリアントの対応するアミノ酸配列と、少なくとも60%の配列同一性を有しているとよい。好ましい実施形態では、それぞれの断片は、既知のhnRNP Kバリアントの対応するアミノ酸配列と、少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。用語「配列同一性」は、既知のhnRNP Kバリアントのアミノ酸配列と問題のアミノ酸配列との相同性の整合(アラインメント)後に得られる、対様式の同一な残基の割合(%)を指し、その割合の数字は、2つの配列のうち長いほうの配列中の残基数に対するものである。
【0021】
本発明の方法をin vitroの方法として使用する場合、該方法は肝炎ウイルスの機能断片の使用も含むことが可能である。この用語は、それぞれの肝炎ウイルスの一部分を形成する核酸分子を指すものとする。hnRNP Kタンパク質の機能断片に関するのと同様の3つの基準で、このような核酸分子断片を定義するものとする。第1に、該断片は、hnRNP Kタンパク質と結合し、少なくとも1つの適切な方法によって検出可能であるほど充分に安定した複合体を形成することが可能である。ヘパドナウイルスの場合、機能断片はエンハンサーII領域を含むことが好ましい。第2に、このような機能断片は、hnRNP Kタンパク質バリアントとの複合体形成が影響を受けるような方法で化
合物によって調節され得る。第3に、このような断片は、天然に存在するそれぞれの肝炎ウイルスバリアントの対応するアミノ酸配列と、少なくとも60%の配列同一性を有しているとよい。好ましい実施形態では、このような断片は、既知のそれぞれの肝炎ウイルスバリアントの対応する核酸配列と、少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。用語「配列同一性」は、既知のそれぞれの肝炎ウイルスバリアントの核酸配列と問題の核酸配列との相同性の整合後に得られる、対様式の同一な残基の割合(%)を指し、その割合の数字は、2つの配列のうち長いほうの配列中の残基数に対するものである。
【0022】
対応する宿主生物は、肝炎ウイルスが感染する可能性のある任意の生物種であってよい。本発明の方法を、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスとの間の複合体形成を調節することが可能である化合物の同定または選択の目的でスクリーニング法として使用する場合、宿主生物が感染する可能性を、免疫抑制物質またはトランスジェニック技法などの追加の手段の助けによって引き出してもよい。宿主生物は、例えば哺乳動物または無脊椎動物の種由来であってよい。感染する可能性がある哺乳動物の例は、ラット、マウス、リス、ハムスター、ウッドチャック、オランウータン、ウーリー・モンキー、チンパンジー、タマリン(saguinus oedipus)、マーモセットまたはヒトである。
【0023】
前述の複合体の形成を調節することによって、感染した宿主生物中の肝炎ウイルスの負荷を変化させる方法は、さまざまな方法で行うことが可能である。一般にこの調節は、それぞれのhnRNP Kタンパク質の活性化状態を変えることによって、転写のレベルまたは機能レベルで行うことが可能である。転写のレベルでの調節は、宿主生物の細胞中に存在していて肝炎ウイルスとの複合体形成に利用可能なhnRNP Kの量を変えることである。この場合留意すべきことは、一般にそれぞれのhnRNP Kタンパク質は、肝炎ウイルスのそれぞれの負荷量に応じて、肝炎ウイルスの複製を最大に刺激する最適レベルで存在することである。この最適レベルより高量および少量のいずれに外れても、通常はウイルス複製の促進が低下することになる。この傾向の1例は、図12中に見ることが可能である。これらの観察結果は、発現および機能レベルでの両方の調節を組み合わせると特に関連性がありうる。機能レベルでの前記複合体形成の調節は、複合体の構成成分の改変、または複合体形成への直接的干渉を含み得る。前記複合体形成に対して結果的に影響をもたらすこのような調節および他の調節を行うための好ましい実施形態は、化合物を投与することからなる。
【0024】
前記複合体形成を調節するために使用される化合物は、任意の性質のものであってよい。化合物は、例えば生物供給源または非生物供給源から単離されてもよいし、あるいは化学的または生物工学的に生成されてもよい。このような化合物の例は、限定するものではないが、小さな有機分子または生物活性ポリマー、例えばポリペプチド、例えば免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様機能を有する結合タンパク質、あるいはオリゴヌクレオチドである。このような化合物の1実施形態は核酸分子、特にRNA分子またはDNA分子、特にアプタマー、Spiegelmer(登録商標)(国際公開広報第01/92655号パンフレット中に記載)、マイクロRNA(miRNA)分子または小さな干渉RNA(siRNA)分子である。
【0025】
小さな干渉RNAの使用は、特定の遺伝子を「ノックダウン」するためのツールとなってきている。該ツールは、翻訳後レベルで行われてmRNA分解を伴うRNA干渉(RNAi)による、遺伝子サイレンシングまたは遺伝子抑制を利用する。RNA干渉は、ゲノムを保護する細胞機構に相当する。siRNA分子は、該siRNAと多酵素複合体とが結合していわゆるRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)を形成することによって、siRNAに相補的なRNAの分解を仲介する。siRNAはRISCの一部分となり、相補的RNA分子を標的としてこれを切断する。このことにより、それぞれの遺伝子
の発現の消失がもたらされる(概要に関しては、シオウド エム(Sioud M)、Methods Mol Biol. 252、2004、1〜8を参照のこと)。本発明において好適なこのようなsiRNAの実施形態は、10〜35ヌクレオチド、より好ましくは15〜25ヌクレオチドのin vitro合成された分子を含む。このようなsiRNA分子は、遺伝子の抑制を引き起こすには充分な長さであるが、配列非特異的なインターフェロン応答を引き起してmRNA翻訳の全体的な阻害をもたらすと思われるほど長くはない。この技術は、HIV−1 DNAの発現の阻害など、ウイルスに関する治療用途に施用されてきている(リー エヌエスら(Lee NS et al.)、Nature Biotechnology 20(5)2002、500〜505)。本発明の1実施形態では、siRNA分子を使用してhnRNP Kタンパク質をコードするmRNA分子の分解を誘導する。siRNAの使用は、hnRNP Kの発現を調節するための現時点で好ましい実施形態でもある。
【0026】
前記複合体形成を調節するために使用する化合物の他の例は、細胞成分、特にタンパク質のリン酸化状態を変えることができる分子である。タンパク質のリン酸化状態に影響を与えることが知られている化合物の例は、広範囲のキナーゼ阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、チロシンリン酸化刺激物質またはチロシンホスファターゼ阻害剤である。
【0027】
細胞成分のリン酸化状態を変えることが可能な化合物の1つの好ましい選択は、細胞タンパク質のチロシンリン酸化レベルを調節する調節物質である。この選択は、細胞内のチロシン残基のリン酸化状態の変化が、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスの制御領域との複合体形成の効率に対して影響を与えるという本発明の発見に基づく。この影響はhnRNP Kタンパク質のチロシン残基のリン酸化状態の変化、およびhnRNP Kタンパク質の細胞内の量の変化のいずれをも原因としうる。したがって、細胞内のチロシン残基のリン酸化状態を変える化合物の使用も、細胞内のhnRNP Kバリアントの合計量を調節することによってhnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との間の複合体形成を変化させる方法の1実施形態である。
【0028】
前述の化合物群の中で、本発明において同定かつ使用されうる適切な化合物は、その大多数が市販されているチロシンキナーゼ阻害剤、例えばチロホスチン、キナゾリン、キノキサリン、キノリン、2−フェニルアミノピリミジン、フラボノイド、ベンゾキノイド、アミノサリチル酸またはスチルベンなどから選択することが可能である(これらは例えば国際公開第9618738号パンフレット、国際公開第03035621号パンフレットおよびその中に引用されている参照文献中に記載されており、例えば、実験による同定の例は米国特許第6,740,665号明細書を参照されたい)。チロホスチンの例は、AG213、AG490、AG879、AG1295、AG1478、AG1517、AGL2043、チロホスチン46およびメチル2,5−ジヒドロキシ桂皮酸である。キナゾリンは例えばPD153035、PD156273、ゲフィチニブまたはラパチニブであり;キノキサリンは例えばPD153035またはZD1839である。キノリンの1例は5−メチル−5H−インドロ[2,3−β]キノリンであり、2−フェニルアミノピリミジンの1例はイマチニブであり、フラボノイドの例はゲニスタインまたはケルセチンであり、ベンゾキノイドの1例はヘルビマイシンAであり、アミノサリチル酸の1例はラベンダスチンAであり、スチルベンの1例はピセアタノール(piceatannol)である。他の適切な化合物は、チロホスチン エルブスタチンなどの受容体チロシンキナーゼ阻害剤、WHI−P97またはチロホスチンAG592などのEGFR特異的受容体チロシンキナーゼ阻害剤、アウリントリカルボン酸などのチロシンリン酸化刺激物質、または過バナジン酸ナトリウムまたはイソキサゾールカルボン酸などのチロシンホスファターゼ阻害剤を含むことが可能である。
【0029】
hnRNP Kタンパク質のチロシンリン酸化を調節する、このような化合物の他の例は、チロシンキナーゼまたはチロシンホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面分子のアゴニストまたはアンタゴニストである。このような細胞表面分子の例は、受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、ならびにチロシンキナーゼおよびチロシンホスファターゼを制御する経路と連動するシグナル伝達を担うGタンパク質共役受容体である(例えば、パイン エヌジェーら(Pyne NJ et al.)、Biochem Soc Trans. 31(6)、2003、1220〜1225を参照)。特に受容体チロシンキナーゼに関しては、hnRNP Kと核酸分子との結合およびhnRNP Kの発現のいずれにも影響を与える可能性があることが示唆されている(オストロビスキー ジェーら(Ostrowski J et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98(16)、2001、9044〜9049;マンダル エムら(Mandal M et al.)、J Biol Chem. 276(13)、2001、9699〜9704)。hnRNP Kはさらに、in
vivoでリン酸化されることが知られている(デジガルド ケーら(Dejgaard K et al.)、J.Mol.Biol. 236(1)、1994、33〜48)。受容体チロシンキナーゼの例は、血小板由来増殖因子の受容体、エリスロポイエチンの受容体、腫瘍壊死因子の受容体、白血病抑制因子の受容体、インターフェロンの受容体、インスリンの受容体、インスリン様増殖因子の受容体、インターロイキンの受容体、繊維芽細胞増殖因子の受容体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の受容体、形質転換増殖因子の受容体、または表皮増殖因子(EGF)の受容体である。このような受容体は、さまざまなタンパク質のチロシン残基をリン酸化する能力を有し、かつ受容体自体が同様の効果を有する細胞内の他の因子を制御しうることが知られている(例えば、パジン
エムジェー、ウイリアムス エルティー(Pazin MJ、Williams LT)、Trends in Biochemical Sciences 17(10)、1992、374〜378を参照、EGF受容体に関しては、例えばジャンマット エムエル、ジアコーン ジー(Janmaat ML、Giaccone G)、Oncologist 8(6)、2003、576〜586を参照)。したがって本文脈中の用語「アゴニスト」および「アンタゴニスト」は、このような効果を生み出す細胞表面分子の能力および該能力の調節を指す。
【0030】
このようなアゴニストまたはアンタゴニストの好ましい実施形態は、チロシンキナーゼまたはチロシンホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面上の分子と結合するタンパク質分子である。このようなタンパク質性結合分子の例は、免疫グロブリンまたはその断片、あるいはリポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテインである(国際公開第03029462号パンフレット、ベステら(Beste et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、1999、1898〜1903)。ビリン結合タンパク質、ヒト好中球ゼラチナーゼ結合リポカリン、ヒトアポリポタンパク質Dまたはグリコデリン(glycodelin)などのリポカリンは、ハプテンとして知られる選択された小さなタンパク質領域と結合するように修飾されうる天然のリガンド結合部位を有する。他のタンパク質性結合分子の例は、いわゆるグルボディ(glubody)(国際公開第96/23879号パンフレットを参照のこと)、アンキリン骨格に基づくタンパク質(ヒリニービッチ−ヤコブスカ エーら(Hryniewicz−Jankowska A et al.)、Folia Histochem.Cytobiol. 40、2002、239〜249)、またはクリスタリン骨格に基づくタンパク質(国際公開第01/04144号パンフレット、独国特許出願公開第19932688号明細書)、およびスケッラ(Skerra)、J.Mol.Recognit. 13、2000、167〜187に記載されたタンパク質である。
【0031】
免疫グロブリンまたはその断片は例えば、潜在的に有効な受容体アンタゴニストまたはアゴニストであることが知られており(2つの例に関しては、ゴエツル イージェーら(
Goetzl EJ et al.)、Immunol Lett. 93(1)、2004、63〜69、およびデベッツ アールら(Debets R et al.)、J
Immunol. 165(9)、2000、4950〜4956を参照のこと)、治療においてもアンタゴニストまたはアゴニストとして使用されてきている(例えば、コーエン エスエーら(Cohen SA et al.)、Pathol Oncol Res. 6(3)、2000、163〜174を参照のこと)。これはEGF受容体を対象とする免疫グロブリンにも当てはまる(ゴエツル イージェーら(Goetzl EJ
et al.)、上記)。(組換え)免疫グロブリン断片の例はFab断片、FV断片、単鎖FV断片(scFV)、二重特異性抗体またはドメイン抗体であり(ホルト エルジェーら(Holt LJ et al.)、Trends Biotechnol. 21(11)、2003、484〜490)、これらは全て当業者にはよく知られている。この点において留意すべきことは、アンタゴニストまたはアゴニストとして働く免疫グロブリンを得ることは、充分に当業者の能力の範囲内にあることである。この目的のために、ケラーおよびミルシュタイン(Koehler and Milstein)(Nature 256、1975、495〜497)に従った古典的な免疫処置プロトコル、および免疫グロブリン断片を用いるファージ・ディスプレーなどの進化的方法(ブレッケ
オーエイチ、ロゼット ジーエー(Brekke OH、Loset GA)、Curr Opin Pharmacol. 3(5)、2003、544〜550)を使用することが可能である。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態については、化合物をライブラリーの形で使用することが可能である。このようなライブラリーの例は、モデル化合物として化学合成されたさまざまな有機小分子、または多数の配列バリアントを含む核酸分子の集合体である。
【0033】
前記複合体形成を調節する化合物は、任意の適切な手段によって投与することが可能である。宿主生物が哺乳動物である場合、化合物は非経口的あるいは経口的に(経腸)投与することが可能である。哺乳動物への投与に関する好ましい実施形態では、施用、例えば化合物の調製物の経口投与、静脈内投与、あるいは吸入によって、血液および肝臓への送達を確実にする。経口施用するための調製物の例は、錠剤、ピルまたは飲用溶液であり、静脈内投与するための調製物の例は注射用溶液または輸液であり、吸入により投与するための調製物の例はエアロゾル混合物またはスプレーである。宿主生物が組換え微生物である場合、投与の例は微生物環境への化合物の注入または添加である。微生物が単細胞である場合、後者の投与形態を、微生物を改変する技法と組み合わせて行うことがおそらく可能である。このような技法は、細胞膜のエレクトロポレーションまたは浸透処理を含み得る。
【0034】
宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための本発明の方法は、さまざまな目的に使用することが可能である。このような目的の例は、治療、診断または試験目的である。試験目的の場合、幾つかの方法は、hnRNP Kタンパク質とHBVゲノム上のエンハンサーII制御領域との複合体形成を調節することが可能であることが既に同定されている化合物の施用を含み得るが、一方他の方法は、このような化合物の同定を対象とすることもできる。本発明の後者の実施形態では、該方法が、一定期間中の宿主生物中の肝炎ウイルス粒子の数を測定する工程を含むことが好ましい。
【0035】
一定期間中の宿主生物中の肝炎ウイルス粒子の数の測定は、幾つかの手段によって行うことが可能である。このような測定は、肝炎ウイルスに感染した後に1回行ってもよいし、幾つかの時点において行ってもよい。検出法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または例えば免疫グロブリンと結合した形態のビオチン−ストレプトアビジン系の使用などの、肝炎ウイルスに起因するシグナルの増幅を含むことが可能である。測定は直接的検出を利用してもよいし、間接的な検出を利用してもよい。間接的な検出の1例は、細胞生存率
または細胞複製の測定などの細胞の作用の測定である。直接的な検出の1例は免疫グロブリンの使用であり、免疫グロブリンは標識と結合していてもよい。宿主生物が微生物である場合、細胞内免疫グロブリンを使用することが可能である(ビジンチン エムら(Visintin M et al.)、J Immunol Methods 290(1〜2)、2004、135〜153)。しかしながら、留意すべきことは、微生物中で形成されるウイルス粒子の量の測定は、当該微生物の周辺環境へと放出されたウイルスの量を測定することにより実施可能であるということである。
【0036】
市販のキットを用いることもできる直接的な検出方法は、ヌクレオタンパク質複合体を完全に解離させる工程と、続く核酸抽出およびPCR、またはこの技法の変形(ネスティドPCR、もしくは核酸がRNAである場合はRT−PCRなど)の工程とを含むことが可能である。その後の工程は電気泳動、HPLC、フローサイトメトリー(ムルロニー ピーエム、ミカラック ティーアイ(Mulrooney PM、Michalak TI)、J Virol 77(2)、2003、970〜979)、蛍光相関分光法(バイナー オーエイチら(Weiner OH et al.)、Digestion 61(2)、2000、84〜89)、またはこれらの技法の変形を含むことが可能である。例えば標識した内部プローブとのハイブリダイゼーションおよびフィルムへの曝露、あるいは染色および既知濃度の標準サンプルとの比較による視覚化および定量化、あるいは圧電型核酸バイオセンサーの使用(ツォー エックスら(Zhou X et al.)、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 27(1)、2002、341〜345)などの、最終工程が必要とされるかもしれない。これらの工程の幾つかあるいは全ては、自動分離/検出システムの一部であってもよい。このような工程の例は、自動リアル−タイムPCRプラットホーム、自動ウイルス核酸単離プラットホーム(例えばキアゲン(QIAGEN)社のBioRobot(登録商標))、PCR産物分析装置(例えばロシュ(Roche)社のCOBAS(登録商標)TaqMan(登録商標))およびリアルタイム検出システム(例えばABI社のPrism(登録商標)7700またはRotor−Gene(商標)配列検出装置、ロシュ(Roche)社のAmplicor(登録商標)モニター)である。現在市販されているシグナルの増幅および検出アッセイには、AMPLICOR(登録商標)HBVモニター試験またはCOBAS(登録商標)AMPLICOR(登録商標)HCVモニター試験(いずれもロシュ・モレキュラー・ダイアグノスティック社(Roche Molecular Diagnostics)、VERSANT(登録商標)HBV3.0アッセイ(ベイヤー・ヘルスケア・ダイアグノスティック社(Bayer HealthCare−Diagnostics)またはダイジーン(Digene)Hybrid Capture(登録商標)II HBV DNA試験(ダイジーン社(Digene))がある。
【0037】
宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための本発明の方法を、hnRNP
KとHBVとの間の複合体形成を調節することが可能な化合物を同定する目的でin vivoにおいて使用する場合、この方法の有利な実施形態は、得られた結果と1つまたは複数の対照測定の結果とを比較することをさらに含む。
【0038】
このような対照測定は、主要な測定本体と異なる任意の条件を含み得る。このような対照測定は、測定方法について、例えばウイルスの増幅が起こらない条件、あるいは任意または特定のhnRNP Kタンパク質と任意または特定の肝炎ウイルスとの間の複合体形成が起こる可能性がないか調節され得ない条件を含むことが好ましい。特に、このような対照測定は、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片とB型肝炎ウイルスゲノム上のエンハンサーII制御領域との複合体形成を調節しない化合物の使用を含み得る。
【0039】
特に好ましい実施形態において、対照測定は、ウイルス配列の1752位にアデニン(
A)を含まないHBVバリアントの使用を含むであろう。この実施形態は、感染した宿主における高レベルの血清中HBV DNAと、ウイルス配列1752位のAヌクレオチドの存在との間に、相関関係が存在するという驚くべき発見に基づく。血清中HBV DNAが低レベルであるキャリアは、この位置には主にグアニン(G)ヌクレオチドを有する。同様に、1752位にアデニンを含むHBV断片は、グアニンを有する断片よりhnRNP Kタンパク質に関して有意に高い結合親和性を示し、一方でチミンまたはシトシンを含むこのような断片に関しては、複合体形成を検出することはできなかった。これらの発見を示す例は、図5および図18中に見ることが可能である。
【0040】
本発明の他の実施形態では、宿主生物は微生物である。このような微生物は、単細胞からなることが好ましい。適切な微生物の1例は、組換え肝炎ウイルスおよび組換えhnRNP K、またはそれらの機能断片を発現する。このような微生物の好ましい実施形態は、確立された標準的方法を使用して、HBVおよびhnRNP Kバリアントをコードする核酸分子を含むクローニングベクターを用いて形質転換された、宿主細胞である。このような形質転換法は、1つまたは複数の細胞改変技法、例えばDNA注入、エレクトロポレーションまたはマグネトフェクション(プランク シーら(Plank C et al.)、Biol Chem. 384(5)、2003、737〜747)などを含むことが可能である。
【0041】
このような微生物の好ましい実施形態は、肝臓組織、例えば限定するものではないが肝細胞株または肝芽腫細胞株に由来する細胞である。このような細胞の例は、HepG2、Hep3B、HCCM、PLC/PRF/5、Sk−Hep−1、Snul82、HuH−6またはHuH−7であるが、これらだけには限られない。適切な細胞株に関して、留意すべきことは、肝炎ウイルス、および特にヒトC型肝炎ウイルスの核酸分子は、当業者が通常予想するよりも少ない細胞株にしか見出されず種選択的であることである(ツー キューら(Zhu Q et al.)、J Virol. 77(17)、2003、9204〜9210;バーテンシュラガー アール(Bartenschlager R)、Hepatology 39(3)、2004、835〜838で認められ確認された)。これらのウイルスは、特定の宿主細胞環境、すなわちウイルス・レプリカーゼの高い誤差率による多数の配列変異の存在によって助長されたと予想される影響に対して適応し得ることが観察されている(ツー、ら(Zhu et al.)、上記)。
【0042】
hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との間の複合体形成を変化させることが可能な化合物を同定するための方法の他の実施形態は、in vitroでこの複合体の構成成分を互いに曝露することからなる。構成成分、すなわちhnRNP
Kタンパク質またはその機能断片、および例えばヘパドナウイルスの核酸成分またはその機能断片は、任意の適切な形で使用することが可能である。その例は、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片、および/またはHBVまたはその機能断片を含む、1つまたは複数の細胞溶解物または抽出物の使用である。他の例は、適切な水溶液中の、濃縮、精製または単離されたhnRNP Kタンパク質またはその機能断片と、濃縮、精製または単離されたHBV、その機能断片、あるいはそれらに由来する核酸分子とを使用することである。用語「濃縮された」は、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片が、その細胞中または溶液中に存在する全タンパク質に占める割合について、該タンパク質または断片を採取した細胞または溶液中におけるよりも有意に高いことを意味する。濃縮は例えば、細胞抽出物からの核分画の単離を含んでもよい。これは遠心分離などの標準的技法によって行うことが可能である。濃縮の他の手段の例は濾過または透析であり、これらは例えば一定分子量未満の分子の除去、有機溶媒または硫酸アンモニウムを使用する沈殿を対象とし得る。精製は例えばクロマトグラフィー技法、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティ精製、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは疎水性電荷誘導クロマトグラフィーを含むことが可能である。精製に関する他の例は、分取用キ
ャピラリー電気泳動などの電気泳動技法である。単離は同様の方法の組合せを含むことが可能である。
【0043】
hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスまたはその機能断片とを曝露することからなる、本発明のこの実施形態は、生成する肝炎ウイルスの量を利用することもあるが、必ずというわけではない。好ましい実施形態では、方法は、生体分子の結合自体を測定することからなる。このような測定は例えば、分光法、光化学法、光度測定法、蛍光測定法、放射線法、酵素法または熱力学法による手段、あるいは細胞の作用を利用することが可能である。分光検出法に関する1例は蛍光相関分光法である(トンプソン エヌエルら(Thompson NL et al)、Curr Opin Struct Biol. 12(5)、2002、634〜641)。光化学法は例えば光化学架橋反応である(スティーン エイチ、ジェンセン オーエヌ(Steen H、Jensen ON)、Mass Spectrom Rev. 21(3)、2002、163〜182)。光活性標識、蛍光標識、放射活性標識または酵素標識の使用(概要に関しては、リッペ アールエー、ら(Rippe RA et al.)、Methods Mol Biol.
160、2001、459〜479を参照のこと)はそれぞれ、光度測定法、蛍光測定法、放射線法および酵素法による検出に関する例である。熱力学法による検出に関する1例は、等温滴定熱量測定(ITC、概要に関しては、ベラツクエツ−カンポイ エーら(Velazquez−Campoy A et al.)、Methods Mol Biol. 261、2004、35〜54を参照のこと)である。細胞への影響を使用する方法の1例は、細胞の酵素検出または細胞複製などを含めた細胞生存率の測定である。これらの方法の幾つかは、さらに電気泳動またはHPLCなどの分離技法を含んでもよい。詳細には、標識の使用に関する例には、プローブとしての化合物や、触媒される反応が検出可能なシグナルをもたらす酵素の結合した免疫グロブリンが含まれる。放射活性標識および電気泳動による分離を使用する方法の1例は、電気泳動移動度シフトアッセイである。
【0044】
HBV配列の1752位におけるアデニン成分の存在が高レベルの血清中HBV DNAと相関関係を有するという発見に基づき、本発明は、肝炎感染の診断または評価を目的とする、前記複合体の形成を調節するための方法にも言及する。
【0045】
本発明を、以下の図面および非制限的実施例によってさらに例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(実施例)
【実施例1】
【0047】
ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kバリアントの発現多様性
別途記載のない限り、確立された細胞培養法および遺伝学的組換え法を使用した。
HepG2細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(サイトシステムズ(Cytosystems))を補った中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。
【0048】
全てのPCR産物は、Expand High Fidelity PCRシステム(商標)(ロシュ社(Roche))を使用して作製した。PCR産物は、Qiaquick(登録商標)PCR精製キット(キアゲン社(Qiagen))を使用して精製した。T4DNAリガーゼ(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用してライゲーションを行った。製造者の教示書に従いプロトコルを実施した。
【0049】
全RNAは、製造者の教示書に従いRNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Q
iagen))を用いてHepG2から単離した。hnRNP Kの「バリアント2」および「バリアント3」クローンは、得られたそれぞれのhnRNP Kタンパク質をコードする1.4kbのRT−PCR断片をクローニングすることによって構築した。得られたクローンの配列は、バリアント2および3についてそれぞれGenebank受託番号NM_031262およびNM_031263に対応した。ただしクローニングした配列は、ヌクレオチド501位にシトシンの代わりにチミンを含んでいた。EcoRIおよびXhoIで消化したPCR断片を、EcoRIおよびXhoIで消化したpcDNA3.1にそれぞれクローニングした。「バリアント2」のクローニングプライマーは、5’−TAAAAGGAATTCAATATGCAAACTGAACAG−3’(配列番号16)および5’−CTAGTCCTCGAGTTAGAAAAACTTTCCAGA−3’(配列番号17)であり、「バリアント3」のクローニングプライマーは、5’−TAAAAGGAATTCAATATGCAAACTGAACAG−3’(配列番号18)および5’−CTTGCACTCGAGTTAGAATCCTTCAACATC−3’(配列番号19)であった。
【0050】
HBV1752Aの完全長複製型クローンは、鋳型としてHBVゲノムを含むpBR325プラスミド(ATCC、USA)を使用して構築した。プライマーを設計して、2つの断片:1〜1900および1600〜3215を増幅させた。領域1600〜1900は、コアプロモーターおよび重なり合う転写停止領域を含んでいた(バイス エルら(Weiss L et al.)、Virology 216、1996、214〜218)。内部のEcoRI部位(1/3215)を使用する2つの断片のイン−フレームライゲーションによって、連続したウイルスのオープン・リーディング・フレームをpcDNA3.1中のNruI部位に確実にクローニングし、複製型の構築物を得た。ウイルスの転写は、NruI部位がCMV IEプロモーター(チェン ダブリューエヌら(Chen WN et al.)、Am.J.Gastroenterol. 95、2000、1098)の外側にあるので、ウイルス自体のプロモーターの下で行われた。1752ΔG、1752ΔTおよび1752ΔCの完全長複製型クローンは、1752Aに関して記載したようにして構築した。第1の断片、1600〜3215をHBV−pBR325プラスミドから最初に増幅させ、pcDNA3.1にクローニングした。1752G、1752Tおよび1752C突然変異体は、Quick−Change(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene))によって第1の断片においてそれぞれ別々に作製した。構築物を確認するために塩基配列決定を行った。次いで第2の断片3215(1位でもある)〜1900をHBV−pBR325から得て、pcDNA3.1中の第1の断片の下流にクローニングした。
【0051】
HepG2細胞は、35mmの組織培養皿中にウェル当たり1×106個の平均細胞密度で平板培養し、製造者の教示書に従いLipofectamine2000(商標)(インビトロゲン社(Invitrogen))を用いてトランスフェクションした。簡潔に述べると、2mgのプラスミドDNAをそれぞれのトランスフェクション混合物に使用し、細胞に一滴ずつ加えた。37℃で48時間のインキュベーションの後、続いて細胞をハーベストし、次にDNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。対照実験用に、空の発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションした。実験は2連で行った。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞をハーベストし、次にDNeasyキット(登録商標)(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler(登録商標)装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で製造者の教示書に従いRealArt(商標)HBV LC PCRキット(アトラス社(Artus GmbH))を使用してリアルタイムPCRによって測定した。
【0052】
図4中に示すように、空の発現ベクターpcDNA3.1は、HBVと同時感染させてもHBVウイルス力価に対していかなる影響もなく、hnRNP Kと同時感染させた場合にもHBVの検出はもたらさなかった。HBVのDNAウイルス負荷は、3μgのプラスミドでトランスフェクトした細胞(+)よりも、6μgのプラスミドでトランスフェクトした細胞(++)において有意に高かった。
【実施例2】
【0053】
ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントの発現レベルの定量
肝芽腫細胞株HepG2、PLC/PRF/5、SKHep1およびHCCMの細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(サイトシステムズ社(Cytosystems))を添加した中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。
【0054】
サルウイルス40のエンハンサーおよびプロモーターを備えたルシフェラーゼ・ プラ
スミドであるpGL3−Controlプラスミド、およびルシフェラーゼ遺伝子から上流のサルウイルス40プロモーターを備えたエンハンサーを含まないルシフェラーゼ・
プラスミドであるpGL3−Promoterプラスミドを、プロメガ社(Promega)から入手した。pGL3−Promo/Aプラスミドは、プライマーLucF(配列番号20、5’−GCACGCGTCAACGACCGACCTTGAGG−3’)、およびLucR(配列番号21、5’−GCAGATCTACCAATTTATGCCTACAGCCTC−3’)を使用するPCRによって、HBVヌクレオチド1686位〜1801位(図6参照)を含むエンハンサーIIの基本機能単位を増幅させることにより構築した。この131bpのPCR断片をMluI/BglIIで消化し、MluI/BglIIで消化したpGL3−Promoterと連結させた。他の突然変異構築物は、Gene Editor(商標)部位特異的in vitro突然変異誘発システム(プロメガ社(Promega))を使用して構築し、(図7中に示したように)ヌクレオチド1752位にHBVエンハンサーII突然変異を導入した。第1の突然変異はヌクレオチドをAからGに変異させ(pGL3Promo/G)、第2の突然変異はヌクレオチドをAからTに変異させ(pGL3Promo/T)、最後にヌクレオチドをAからCに突然変異させた(pGL3Promo/C)。この3つの突然変異オリゴヌクレオチドの配列は、それぞれ5’−GGGGGAGGAGGTTAGGTTAAA−3’(配列番号22)、5’−GGGGGAGGAGTTTAGGTTAAA−3’(配列番号23)、および5’−GGGGGAGGAGCTTAGGTTAAA−3’(配列番号24)であった。構築物を確認のために塩基配列決定した。hnRNP Kクローンは、HepG2細胞から抽出した全RNA由来のhnRNP Kをコードする1.4kbのRT−PCR断片をクローニングすることによって構築した。EcoRI−およびXhoIで消化したPCR断片を、EcoRI−およびXhoIで消化したpcDNA3.1にクローニングした。クローニングプライマーは、5’−TAAAAGGAATTCAATATGCAAACTGAACAG−3’(配列番号25)、および5’−CTAGTCCTCGAGTTAGAAAAACTTTCCAGA−3’(配列番号26)であった。1752G、1752Tおよび1752Cの完全長複製型クローンは、1752Aに関して記載したようにして構築した。第1の断片、1600〜3215をHBV−pBR325プラスミドから最初に得て、pcDNA3.1にクローニングした。1752G、1752Tおよび1752C突然変異体は、Quick−Change(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene))によって第1の断片において別々にそれぞれ作製した。構築物を確認するために塩基配列決定を行った。次いで第2の断片3215(1位でもある)〜1900をHBV−pBR325から増幅させて、pcDNA3.1中の第1の断片の下流にクローニングした。
【0055】
トランスフェクション用に、24ウェルプレート中にウェル当たり5×104個の平均細胞密度で細胞を平板培養し、製造者の教示書に従いGenePorter(商標)(ジーンセラピー社(Gene Therapy))を用いてトランスフェクションした。簡潔に述べると、3μgのプラスミドDNAを無血清培地で1:1に希釈し、やはり無血清培地で1:1に希釈しておいたGenePorter試薬と混合した。室温で45分のインキュベーションの後、このトランスフェクション混合物を、60〜90%コンフルエントの細胞に一適ずつ加えた。トランスフェクション後3時間で、新たな増殖培地を加えた。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞をハーベストし、リン酸緩衝生理食塩水(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、4.3mMのNa2HPO4、および1.4mMのKH2PO4)ですすいだ。DNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した後、HBVウイルス力価の負荷を、製造者の教示書に従いHybrid Capture(商標)II HBV DNAアッセイ(ダイジーン社(Digene))を使用して測定した。
【0056】
ルシフェラーゼ・アッセイ用に、3μgのプラスミドDNAおよび1μgのcontrol/promoterルシフェラーゼ・プラスミドDNAをそれぞれのトランスフェクション混合物に使用し、37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞を細胞培養物溶解試薬(プロメガ社(Promega)、25mMのトリスリン酸pH7.8、2mMのDTT、2mMの1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸、10%のグリセロール、1%のTritonX−100)とともにハーベストした。20μlの細胞溶解物を発光測定装置用チューブに分注し、次いで該チューブをTurner20/20型発光測定装置(プロメガ社(Promega))内に配置する。100μlのルシフェラーゼ・アッセイ試薬(プロメガ社(Promega))をチューブに注入することによって、読み取りを開始した。ルシフェラーゼ活性は、相対光量値(RLU)として測定した。相対的ルシフェラーゼ活性を、エンハンサー要素を含まないベクターに対する倍数として表した。トランスフェクション効率の変動を調節するために、実験は3連で行い、少なくとも3回繰り返した。比較のため、図8の結果を、ヌクレオチド1752位にアデニンを有するHBVバリアントを発現するHepG2細胞のレベルに標準化した(左上の第3列「A」を100%に設定)。1752位に他のヌクレオチドを有するHBVバリアント(図8の「G」、「T」、および「C」)は、低レベルのルシフェラーゼ活性に反映されるように、SV40プロモーターの増大ははるかに低かった。これらのデータは、本発明者によりエンハンサーII領域中に発見された点突然変異(図5)が、エンハンサーIIの転写効率に対して重大な影響を有することも示している。
【実施例3】
【0057】
ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントの対照測定のための使用
HepG2細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(Cytosystems)を添加した中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。HepG2細胞は、35mmの組織培養皿中にウェル当たり1×106個の平均細胞密度で平板培養した。完全長の1752A複製型HBVクローン(実施例1参照)、各1752Gクローン、各1752Tクローン、または各1752Cクローン(実施例2参照)と、「バリアント2」または「バリアント3」用の2つのhnRNP K発現構築物のうちいずれか(実施例1参照)とを用いたコトランスフェクションは、実施例1に記載したものと同様に行った。対照実験用に、空の発現ベクターpcDNA3.1をhnRNP K発現構築物の代わりに使用した。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞をハーベストし、次にDNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler(登録商標)装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で、製造者の教示書に従いR
ealArt(商標)HBV LC PCRキット(Artus GmbH)を使用してリアルタイムPCRによって測定した。予想通りHBVウイルス力価はhnRNP K濃度と共に用量依存的に増大し、バリアント2と3の間に有意な機能上の違いはなかった(図12)。対照として使用した空の発現ベクターpcDNA3.1は、HBVウイルス力価に対していかなる影響も有していなかった。ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントは、1752A構築物と比較すると68〜80%減少したHBV DNAを有しており、HBV複製のレベルがより低いことが示されたが(図12)、高用量のhnRNP Kは、3つの構築物の複製効率を増大させることができた。図12においてさらに見ることが可能であるように、hnRNPKおよびHBVの複合体形成に対するhnRNPKおよびHBVの用量依存性は上限を有するようであり、それを超えると複製効率のさらなる増大を得ることはできない。これらのデータは、本発明者が、HBV複製を誘導するのに必要とされるウイルスの構成成分ならびにそのパートナーである宿主の構成成分を正確にマッピングした明確な証拠も与えている。
【実施例4】
【0058】
hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルの調節
部位特異的突然変異誘発によって作製した、Y72、Y449およびY458において異なるhnRNP Kバリアント2および3の5つの突然変異体。それぞれのチロシン残基はフェニルアラニンと交換して、hnRNP Kタンパク質のリン酸化を阻害する化合物の効果を模倣した。チロシンの代わりにフェニルアラニンを含む突然変異体は、鋳型として野生型のhnRNP K「バリアント2」クローンおよび「バリアント3」クローンを使用し、Quick−Change部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene))を使用して作製した。構築物を確認するために塩基配列決定を行った。使用した突然変異プライマーは、以下すなわち、1.YMutF1(配列番号27):Y72F用の正方向プライマー、5’−CTCCGTACAGACTTTAATGCCAGTGTT−3’;2.YMutF2(配列番号28):Y72F用の逆方向プライマー、5’−GACTGAAACACTGGCATTAAAGTCTGT−3’;3.YMutF3(配列番号29):Y449F用の正方向プライマー、5’−CAGAATGCACAGTTTTTGCTGCAGAAC−3’;4.YMutF4(配列番号30):Y449F用の逆方向プライマー、5’−CACACTGTTCTGCAGCAAAAACTGTGC−3’;5.YMutF5(配列番号31):Y458F用(バリアント2(v2)用)の正方向プライマー、5’−AGTGTGAAGCAGTTTTCTGGAAAGTTT−3;6.YMutF6(配列番号32):Y458F用(v2用)の逆方向プライマー、5’−TTAGAAAAACTTTCCAGAAAACTGCTT−3’;7.YMutF7(配列番号33):Y458F用(バリアント3(v3)用)の正方向プライマー、5’−AGTGTGAAGCAGTTTGCAGATGTTGAA−3’;8.YMutF8(配列番号34):Y458F用(v3用)の逆方向プライマー、5’−GAATCCTTCAACATCTGCAAACTGCTT−3’であった。
【0059】
HepG2細胞を、HBV複製型クローン1752Aおよびそれぞれの突然変異体と共にコトランスフェクションした。対照は、HBV複製型クローン1752Aを空の発現ベクターpcDNA3.1とともにコトランスフェクションした。
【0060】
HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で、製造者の教示書に従いRealArt HBV LC PCRキット(Artus GmbH)を使用してリアルタイムPCRによって測定した。キットは、HBVゲノムの120bp領域の増幅用、および特異的な増幅産物の並行検出用の試薬および酵素を含み、さらにキットは、PCR阻害の可能性について確認するための異なる内部対照を含んでいる。HBVウイルス負荷は、hnRNP Kの野生型バリアント2または3と共にコトランスフェクトすると、
それぞれ約2.5倍および2倍増大した(図14参照)。しかしながら、幾つかのhnRNP Kバリアント2の突然変異体に関しては、HBV負荷の増大は低かった。これらのデータは、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成が、hnRNP Kのリン酸化によって、特に残基Y449およびY458が位置するKH3ドメイン中のリン酸化によって影響を受けることを示している(図14参照)。したがってこれらの結果は、KH3ドメイン中の残基Y449およびY458が、hnRNP Kの制御において重要であり、ひいてはhnRNP KがHBVウイルス負荷の上方制御を変化させる可能性があることも示唆している。
【実施例5】
【0061】
抗EGFR免疫グロブリンによるhnRNP Kの調節
ヒト肝腫瘍細胞株HepG2およびHuh7の細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(Cytosystems)を添加した中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。
【0062】
実施例1に記載したのと同様にHBV 1752A複製型構築物を用いて、細胞をトランスフェクションした。4μgのプラスミドDNAを、Lipofectamine2000を使用してトランスフェクションした。37℃で6時間のインキュベーションの後、一群の異なる抗EGFR免疫グロブリン(図15参照)を加えた。Ab1(アナスペック社(AnaSpec)、米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)所在、カタログ番号29615)は、ヒトEGFRの1016位のチロシンリン酸化部位(この配列はマウスおよびラット起源のものでは同一である)に対応する合成ペプチドに対して産生された、ウサギ抗EGFR(リン酸特異的)ポリクローナル免疫グロブリンである。この免疫グロブリンは、0.02%のProclin(登録商標)300を含む200μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に100μgの、エピトープ親和性を用いて精製済みのウサギIgGとして供給される。0.22μg/μlを、図15中に示すようにそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。Ab2(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、米国ニュージャージー州フランダース(Flanders)所在、カタログ番号RDI−EGFRabS)は、組換えヒトEGFR(エクソン15〜18に該当する領域を含むEGFRの細胞質ドメインの一部分)に対して産生された、ヒツジ抗EGFR免疫グロブリンである。この免疫グロブリンは、0.05%のアジ化ナトリウムを含む200μlのTris−HCl(pH7.4)中に200μgのIgGとして供給される。0.43μg/μlをそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。Ab3(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRCabrX)は、ヒト、マウスおよびラットEGFRにおいて同一であるカルボキシ末端近くの領域にマッピングされるアミノ酸1168〜1181位由来の合成ペプチド(NH2−C−S−L−D−N−P−D−Y−Q−Q−D−F−F−P−K−E−COOH)に対して産生された、ウサギ免疫グロブリンである。アミノ末端のシステインを合成して、担体との結合を容易にした。EGFRの認識は、チロシン1173のリン酸化状態とは無関係である。erbB−2、erbB−3またはerbB−4に対しては反応が観察されなかった。この免疫グロブリンは、タンパク質濃度約85mg/mlの250μlの滅菌濾過済み非希釈血清として供給される。46μg/μlをそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。Ab4(シグマ社(Sigma)、米国ミズーリー州セントルイス(St.Louis)所在、カタログ番号A204)は、免疫原としてヒトEGFRの20アミノ酸の融合タンパク質に対して産生されたヒツジ免疫グロブリンである。この配列は、リン酸化領域に隣接している(N末端配列近辺)。この免疫グロブリンは受容体分子の内側ドメインを認識し、リン酸化を阻害するが、EGFの結合は阻害しないと思われる。この免疫グロブリンは、0.15Mのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)中の1.3mg/mlの滅菌濾過済み溶液として供給される。0.1μg/μlをそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。免疫グロブリンの未使用の等分試料を
トランスフェクション後24時間で加えて、阻害効果を増大させた。細胞をさらにインキュベートし、トランスフェクション後48時間で細胞をハーベストし、次にDNeasyキット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で、製造者の教示書に従いRealArt HBV LC PCRキット(Artus GmbH)を使用してリアルタイムPCRによって測定した。
【0063】
hnRNP KとHBVとの間の複合体形成を阻害することが可能な抗EGFR免疫グロブリンを1つ同定した(図15参照、2つの細胞株の第3番目の棒グラフ)。Ab2(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRabS)は、2つの細胞株いずれにおいても3倍を超えてHBVウイルス力価を低下させた。これらのデータは、この免疫グロブリンがhnRNP Kタンパク質のリン酸化をもたらすEGF受容体のシグナル伝達を阻害することが可能であることを示している。
【実施例6】
【0064】
siRNAによるhnRNP Kの調節
hnRNP Kに対するsiRNA二重鎖は、ダーマコン社(Dharmacon)(SmartPool(登録商標))、キアゲン社(Qiagen)およびプロリゴ社(Proligo)から購入した。選択した標的部位を図16中に示すが、該標的部位は配列AAGCAGTATTCTGGAAAGTTT(配列番号3、ヌクレオチド1366〜1386位、図16の「標的2」)および供給元B(キアゲン社(Qiagen))についてはTACGATGAAACCTATGATTAT(配列番号5、ヌクレオチド688〜708位、図16の「標的1」)に対応する。それぞれのsiRNA配列は、GCAGUAUUCUGGAAAGUUU(配列番号2)およびCGAUGAAACCUAUGAUUAU(配列番号4)であった。供給元C(プロリゴ社(Proligo))について使用した第1の標的配列は、AACTTGGGACTCTGCAATAGA(配列番号7)であり、それぞれのsiRNA配列は、CUUGGGACUCUGCAAUAGATT(配列番号6)であった。この標的配列は、ヌクレオチド1029〜1049位に対応する(図16の「標的3」)。供給元Cについて使用した第2の標的配列は、ヌクレオチド187位におけるAAGAATATTAAGGCTCTCTCCGT(配列番号9)であった(図16の「標的1」)。それぞれのsiRNA配列は、GAAUAUUAAGGCUCUCCGUTT(配列番号8)であった。第3の供給元Cの配列AGGACGUGCACAGCCUUAUTT(配列番号10)は、ヌクレオチド655〜675位の標的配列AAAGGACGTGCACAGCCTTAT(図16の「標的2」、配列番号11)から作製した。HepG2細胞を、24ウェル組織培養プレート中で、1mgのプラスミドDNA(1752A完全長複製型クローン、実施例1参照)およびそれぞれのsiRNA二重鎖(2mg)を用いて、6mlのLipofectamine2000(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用してコトランスフェクションした。48時間後、細胞を回収し、RNAおよびDNAを抽出した(Qiagen RNeasy(登録商標)キットおよびDNeasy(登録商標)キット)。対照として、蛍光標識した非標的siRNAでも細胞をトランスフェクションして、トランスフェクション効率を調べた。トランスフェクションは2連で行った。hnRNP KのmRNAレベルは、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定した。反応は、プライマー5’−AGACCGTTACGACGGCATGGT−3’(配列番号35)および5’−GATCGAAGCTCCCGACTCATG−3’(配列番号36)を用いて、RNA Master Sybr(登録商標)Green System(ロシュ社(Roche))を使用し、LightCycler(ロシュ社(Roche))で2mlのRNAを使用して行った。ラミンA/C検出用に、リアルタイム逆転写(RT−PCR
)反応を、同じキットを使用して、レリオットら(Lelliott et al.)、2002(Journal of Clinical Endocrinology、87、728〜734)に記載の改良型プライマー(5’−CCCTTGCTGACTTACCGGTTC−3’(配列番号37)および5’−TGCCTTCCACACCAGGTCGGT−3’(配列番号38))を用いて行った。T7 RiboMax(商標)Express in vitro転写システム(プロメガ社(Promega))によりin vitroで転写させたRNAを用いて作製した標準曲線を使用することによって、RNAの絶対量の定量を実施した。精製した転写RNAの濃度は、RiboGreen(登録商標)RNA定量試薬(インビトロゲン社(Invitrogen))によって測定した。in vitroで転写させたRNAの段階希釈物を2連で調製した。得られたデータは図17に示す。hnRNP KのmRNAレベルは、トランスフェクトションしていない細胞対照、非標的siRNA対照およびラミンA/CのsiRNA対照に対して30%低下した。キアゲン社(Qiagen)およびプロリゴ社(Proligo)のsiRNA(図17のB、C)はHBVウイルス負荷を50%低下させ、ダーマコン社(Dharmacon)のsiRNA(A)はHBVレベルを15%低下させた。
【0065】
この3つの供給元の間のsiRNAのHBV複製に対する有効性の違いは、おそらく選択した標的領域の違いによるものである(図16参照)。しかしながら、3種類のsiRNAはいずれもhnRNP KとHBVとの間の複合体形成、したがってHBV複製に影響を与えるようである。ラミンsiRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞において、リアルタイムRT−PCRによって測定されたラミンA/CのmRNAレベルは、トランスフェクトションしていない細胞に対して45%の低下を示し、一方で非標的siRNAおよびhnRNP KのsiRNAは、ラミンA/CのmRNAレベルに対して影響がなかった。したがってラミンの発現は、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成の調節用に選択したsiRNAによって影響されないようである。これらのデータによって、hnRNP KがHBV複製の過程で重要な役割を果たすことも再度確認される。
【実施例7】
【0066】
in vitroでのhnRNP KとHBVの相互作用の検出
この実施例では、以下のように核タンパク質抽出物を調製することによって、hnRNP Kタンパク質の濃縮を行った。
【0067】
HepG2細胞(実施例1参照)をトリプシン処理し、氷冷1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回すすぎ、5×元の充填細胞体積(PCV)の緩衝液A[10mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.9)、1.5mMのMgCl2、10mMのKClおよび1mMのジチオスレイトール(DTT)]と共に10分間氷上でインキュベートした。4℃における3分間の1,000rpmでの遠心分離後、細胞を2×元のPCVの緩衝液A中に再懸濁させ、加圧型(Dounce型)ホモジナイザーでSペッスルを用いて10ストロークでホモジナイズした。核分画を2,500rpmで10分間の遠心分離によって沈殿させ、1.5×緩衝液B[20mMのHEPES(pH7.9)、0.2mMのEDTA、1.5mMのMgCl2、420mMのNaCl、0.5mMのDTT、25%のグリセロール]中に再懸濁させ、Dounce型ホモジナイザーでさらに10ストローク処理した。次いで細胞懸濁物を微量遠心分離用チューブに移し、軽く攪拌しながら4℃で30分間インキュベートした。核の残骸は、4℃における40分間の13,000rpmでの遠心分離によって除去した。上清を、200mlの緩衝液C[20mMのHEPES pH7.9、0.2mMのEDTA、20mMのMgCl2、20mMのKCl、420mMのNaCl、25%のグリセロール、0.5mMのDTT、0.5mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)](緩衝液は2回交換した)に対して4℃で4時間透析した。透析後、核抽出物を20分間の13,000rpmでの遠心分離によって浄化した。次いで核抽出物
を等分試料に分け、−70℃で保存した。タンパク質濃度は、標準としてアセチル化ウシ血清アルブミンを使用して、タンパク質アッセイキット(バイオ−ラッド・ラボラトリーズ社(Bio−Rad Laboratories))を用いて定量した。
【0068】
HBVとhnRNP Kの相互作用は、「電気泳動移動度シフトアッセイ」または「EMSA」として当業者に周知の方法によって分析した。結合反応手順は、10μgのHepG2核抽出物、0.1〜0.2μgの非特異的競合DNAポリ(dI−dC)(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社(Amersham Pharmacia Biotech、米国)および32P−dATP末端標識プローブ(1×104〜1×105cpm)を含む、20μlの反応混合物(10mMのTris−HCl pH7.5、50mMのNaCl、1mMのEDTAおよび1mMのDTT)中において、20分間37℃において行った。遊離DNAとDNA−タンパク質複合体とを、6%の非変性ポリアクリルアミドゲルで展開した。ゲルを1時間80℃において真空下で乾燥させてから、X線フィルム(Biomax(登録商標)、コダック社(Kodak)に−80℃で曝露した。オリゴヌクレオチド・プローブの配列(ヌクレオチド変化を示す)は以下のもの、すなわちプローブ1:AGACTGTGTGTTTAATGAGTGGGAGGAG(配列番号12);プローブ2:AGTTGGGGGAGGAGATTAGGTTAAAGGT(配列番号13);プローブ3:AGACTGTGTGTTTAATGCGTGGGAGGAG(配列番号14);プローブ4:AGTTGGGGGAGGAGGTTAGGTTAAAGGT(配列番号15)とした。得られた画像は図18に示す。1752Aプローブ(プローブ2、レーン5〜8)によって、バンドの形でhnRNP Kが検出された。対応するhnRNPのより弱いバンドは、1752Gプローブ(プローブ4、図18のレーン13〜16)によって検出された。その後のバンドの濃度分析から、1752Aプローブはプローブ4より約300%強いシグナルを検出したことが示された。これは、この2つのプローブがhnRNP Kに関して対して異なる結合親和性を有することを示している。
【実施例8】
【0069】
HBVと複合体を形成するものとしてのhnRNP Kの同定
ヒト肝細胞癌細胞株HepG2から、細胞をハーベストし氷冷緩衝液A(0.15MのNaCl、10mMのHEPES、pH7.4)で細胞を2回すすぐことによって核タンパク質抽出物を得て、5×元の充填細胞体積の緩衝液B(0.33Mのスクロース、10mMのHEPES、1mMのMgCl2、0.1%のTriton X−100、pH7.4)と共に15分間氷上でインキュベートした。4℃における5分間の3,000rpmでの遠心分離後、ペレットを緩衝液Bで1回洗浄し、200mlの緩衝液C[0.45MのNaCl、10mMのHEPES、pH7.4、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(SigmaP8340)]を用いて氷上で軽く再懸濁させた。細胞混合物を軽く攪拌しながら15分間インキュベートし、次に5分間13,000rpmで遠心分離した。上清をDNA結合タンパク質アッセイ用に保存した。二本鎖オリゴヌクレオチド・プローブのアニーリングは、それぞれ3’端および5’端をビオチンで標識した各1nmoleのアンチセンス・プローブおよびセンス・プローブを含む、100mlのMilli Q脱イオン水を使用して行った。オリゴヌクレオチド混合物の溶液を、5分間で95℃に加熱して、ゆっくりと室温に冷却した。DNAと相互作用するタンパク質を、(ガダレタ ディーら(Gadaleta D et al.)、J.Biol.Chem. 271、1996、p.13537)に以前に記載されたようにして捕捉した。簡潔に述べると、配列番号14および配列番号15(図19に示す)を有するオリゴヌクレオチド混合物を、5mgのDynabeads(登録商標)M−280ストレプトアビジン(ダイナル・バイオテク社(Dynal Biotech)と共に、結合および洗浄用緩衝液(5mMのTris−HCl、0.5mMのEDTA、1.0MのNaCl、pH7.5)中において15分間室温でインキュベートした。次いで磁気ビーズを結合および洗浄用緩衝液で洗浄し、TGED緩衝液(20mMのTris−HCl、10%のグリセロール、1mMの
DTT、0.01%のTriton X−100、50mMのNaCl、pH8.0)を用いて平衡化した。抽出した核タンパク質40μgを、非特異的競合DNAポリ(dI−dC)(アマシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences)と2:1(w/w)で混合し、TGED緩衝液を用いて500μlに調整した。核タンパク質−ポリ(dI−dC)溶液を、30分間室温で平衡化した磁気ビーズ−オリゴヌクレオチド・プローブに加えた。非結合タンパク質は、TGED緩衝液を用いて洗浄除去した。結合したタンパク質は、1MのNaClを含んだTGED緩衝液を用いて溶出させた。同じ捕捉および溶出手順を、核タンパク質−ポリ(dI−dC)混合物の新しい等分試料を用いてさらに4回繰り返した。溶出画分を集め、アセトン沈殿を施した。2−Dゲル電気泳動を、若干改変を加えてアマシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences)のプロトコルに従って行った。簡潔に述べると、アセトン沈殿タンパク質を含むそれぞれのサンプルを、再水和用緩衝液(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%のCHAPS、0.5%のIPG緩衝液pH3〜10、1.0mgのDTT)を用いて350μlの体積にした。短時間渦流混合することによって混合物を混合し、13,000rpmで10分間遠心分離した。上清を18cm、pH3〜10(非線形)Immobiline(商標)DryStrip(商標)に載せ、一定電圧(50V)で一晩積極的に再水和を行った。等電点電気泳動(IEF)は、IPGphor(商標)(アマシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences))を使用して20℃において段階式に行った。簡潔に述べると、ストリップに500Vで1時間、2000Vで1時間、5000Vで1時間、および8000Vで12時間、合計90KVhを累積させて泳動した。IEFの後、IPGストリップを15mlのSDS平衡緩衝液(50mMのTris−HCl、6Mの尿素、30%のグリセロール、2%のSDS、66mMのDTT、微量のブロモフェノールブルー、pH8.8)中で30分間インキュベートし、次いでDTTの代わりにヨードアセトアミド(375mg/15ml)を含んだ同じ緩衝液を用いて30分間、第2回目のインキュベーションを行った。二次元目の垂直SDS−PAGE(Protein II XL、バイオ−ラッド・ラボラトリーズ社(Bio−Rad Laboratories))を、10%ゲルを使用して150Vの一定電圧で15℃にて6〜8時間行った。ゲルの銀染色(SilverQuest(商標)銀染色キット、インビトロゲン社(Invitrogen))により、非特異的結合の対照オリゴヌクレオチド・プローブと比較して、特異的なDNA結合タンパク質の明確な濃縮が実証された(図19参照)。また、特異的なタンパク質スポットが分子量約56kDaとして現れることも明らかとなった。
【0070】
特異的タンパク質スポットを切り出して製造者の教示書に従って脱染色した後、このゲルプラグを乾燥させ、重炭酸アンモニウム溶液中に浸し、DTTを用いて還元した。アルキル化はヨードアセトアミドを使用して行った。サンプルをProGest(商標)ワークステーションで一晩37℃においてトリプシン消化した。ギ酸を加えて反応を停止させた。ペプチドをC18 Zip−Tip(商標)で精製し、60%アセトニトリル、0.2%TFA中に調製したα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸のマトリクスを用いて溶出させた。15マイクロリットルの溶出物を、流速20nl/分で75mmのC18カラムで処理した。トリプシン消化物の質量マップは、Micromass(登録商標)Q−TOF2型質量分析計を使用して、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI.)によって得た。ペプチド断片の配列クエリは、LC/MS/MS分析を使用することによりプロテオミック・リサーチ・サービス社(Proteomic Research Services、Inc)において行った(http://www.proteomicresearchservices.com/ )。得られたデータは、MASCOT検索エンジン(www.matrixscience.com )を使用して検索した。21個の入手し塩基配列決定したペプチドの結果を、図20に示す。56kDaタンパク質の配列アラインメントから、hnRNP Kタンパク質に対する相同性のスコアが高いことが明らかとなった。さらに、分析したタンパク質の分子質量は、hnRNP Kタンパク質の分子質量と一致した。
【実施例9】
【0071】
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域との間の複合体形成のin vitroでの分析および定量
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域、例えばHBVのエンハンサーIIとの間の相互作用を分析する方法は、「GSTプルダウンアッセイ」として当業者に知られている。
【0072】
この方法は以下の工程を含む。すなわち、35S標識したエンハンサーIIを、製造者の教示書に従いin vitroで翻訳し(TnT(登録商標)ウサギ網状赤血球溶解物システム、プロメガ社(Promega))、過剰のグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)または融合タンパク質GST−hnRNP Kと共に0.2MのNaCl中でインキュベートする。GST−hnRNP Kは、標準的技法を使用して、完全長1.4kbのhnRNP KをGSTベクターにクローニングすることによって構築することが可能である。第1の工程では、GSTおよびGST−hnRNP KベクターでDH5αを形質転換し、595nmにおいて0.5の光学密度まで増殖させ、0.2mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを用いて2時間誘導した。次いで組換えタンパク質を、製造者の教示書に従い、予めGSTrap(商標)HPカラム中に充填されたGlutathione Sepharose High Performance(商品名)(アマシャム社(Amersham)、注文番号17−5281−01)を使用する、確立したクロマトグラフィー技法を使用して精製する。溶出物を、10mMのリン酸(pH7.5)、50mMのNaCl、0.05%のTween、および20%グリセロールを含む水性緩衝液に対して一晩透析する。10μlのin vitro翻訳混合物を、1.8×10−10molの組換え融合タンパク質と共に110μlの最終体積でインキュベートする。氷上で3時間の後、結合した複合体を、Glutathione Sepharose(商標)ビーズ(アマシャム社(Amersham)、注文番号17−5279−01)の50%(容積比)のスラリー25μlをインキュベーション緩衝液中に加えることによって精製し、4℃で15分間混合する。1mlのインキュベーション緩衝液で徹底的に洗浄した後、ビーズを電気泳動分析用にLaemmli法のゲルに載せる。陽性の結果は、35S−エンハンサーIIのGST−hnRNP Kとの結合がGST単独との結合より少なくとも5倍を超える結果を示すと思われる。この相互作用のさらなる確認は、in vitro翻訳されたhnRNP KをGST−エンハンサーIIと結合させる相互交換実験によって繰り返すことも可能である。
【実施例10】
【0073】
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域との間の複合体形成のin vitroでの分析および定量
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域、例えばHBVのエンハンサーIIとの間の相互作用を分析する他の方法は、「クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ」または「ChIPアッセイ」として当業者に知られている。
【0074】
実施例1に記載したのと同様に、1752A完全長複製型クローンを用いてHepG2細胞をトランスフェクションし、トランスフェクション後48時間で細胞をハーベストする。次いで細胞を溶解緩衝液(20mMのTris−HCl pH8、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、1%のSDS、150mMのNaClおよび1mMのPMSF)中に溶解し、20%Dutyで30秒間の超音波処理を5〜8回実施する。遠心分離を最大速度で10分間行って、細胞の残骸を除去する。50μlの超音波処理サンプルを使用し、50μlの10mMのTris−Cl、pH8を加える。次いでプロナーゼ(ロシュ社(Roche)、20mg/ml)をサンプルに加えて、最終濃度1.5μg/μlとする。42℃で2時間、次いで65℃で一晩のインキュベーションの後、L
iClを0.8Mの最終濃度まで加える。免疫沈降用希釈緩衝液(20mMのTris−Cl pH8、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、150mMのNaCl、プロテアーゼ阻害剤)を加えて、抽出物を希釈する。1mlの抽出物を40μlのプロテインAセファロース・ビーズ(プロテインAセファロースCL−4B、アマシャム社(Amersham))と混合し、15分間インキュベートする。次いでビーズを卓上遠心分離機での遠心分離などの標準技法によって沈殿させ、その後上清を新しいチューブに移す。抗hnRNP K免疫グロブリンを加え、その後溶液を軽く攪拌しながら一晩4℃でインキュベートする。予め平衡状態にしたプロテインAビーズを加え、次いで3時間インキュベートする。ビーズを洗浄し、結合した免疫グロブリン複合体は溶出用緩衝液(25mMのTris−Cl pH7.5、10mMのEDTA、0.5%のSDS)を用いて溶出させる。実施例1に記載したのと同様にDNeasyキット(キアゲン社(Qiagen))を使用して、DNAを抽出する。実施例1および4に記載したようにリアルタイムPCRを使用して、エンハンサーII領域に対して設計したプライマーを使用することによりDNA量を定量化する。この技法は、実施例1および4に示されている。陽性のバンドを、標準的技法を使用してアガロースゲル中に検出する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】コアプロモーターのすぐ上流にある、B型肝炎ウイルスのエンハンサーII(Enh II)領域の位置を概略的に示す図。この領域(図6も参照)はウイルスの複製に関与することが示されている。
【図2】完全長複製型HBV構築物のクローニングを示す図。pBR325に含まれた市販のATCCクローン(上側)は、両端にEcoRI部位を含む。プライマーを設計して、2つの断片:1〜1900および1600〜3215を増幅させた。続いて内部のEcoRI部位(1/3215)を使用したライゲーションによって、連続的なウイルスのオープン・リーディング・フレームを確保した。したがって複製型クローンは、その5’端にプロモーター(1600〜1900)を、およびその3’端に終結領域(1600〜1900)を含むものであった。この構築物をpcDNA3.1のNruI部位にクローニングした。NruIはpCMVプロモーターの外側にあるので、ウイルスの転写はウイルス自身のプロモーターの下で行われる。
【図3】微生物中でのhnRNP KとHBVの同時発現を概略的に示す図。バリアント2またはバリアント3の完全長hnRNP K遺伝子をコードする1.4kbのRT−PCR断片を、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1(インビトロゲン社(Invitrogen))にクローニングした。hnRNP Kバリアント2および3のクローンは、HepG2細胞から抽出した全RNAから得たものである。クローニングした配列は、ヌクレオチド501位にシトシンの代わりにチミンを含むこと以外は、バリアント2および3についてそれぞれGenebank受託番号NM_031262、およびNM_031263に対応した。hnRNP K発現構築物を、HBVの完全長複製型クローンと共にHepG2細胞にコトランスフェクションして、HBV構築物の複製効率に対するhnRNP Kの影響を決定した。
【図4】組換え微生物(図3)におけるHBVの増幅に対するhnRNP Kの促進効果を示す図。HepG2細胞を、感染性の完全長複製型HBV、hnRNP KおよびpcDNA3.1でトランスフェクションした。細胞を48時点でハーベストした後にゲノムDNAを抽出して、HBV DNAウイルス負荷を測定した。「+」および「++」は、それぞれ3μgおよび6μgのプラスミドDNAをトランスフェクションに用いたことを示す。
【図5A】高ウイルス性(Hi)のHBVと低ウイルス性(Lo)のHBVとの間の明確な分離は、ヌクレオチド1752位における変化と相関関係があることを示す図。患者のHBV DNA力価レベルに対応する、ヌクレオチド1720〜1769のDNA配列のデータを示す。合計60の患者について照合し、DNAを血清から単離し、2回のPCRで増幅させた。PCR産物を精製し直接塩基配列決定して、産物の同一性を確認した。配列の結果をアラインメントして比較した。
【図5B】高ウイルス性(Hi)のHBVと低ウイルス性(Lo)のHBVとの間の明確な分離は、ヌクレオチド1752位における変化と相関関係があることを示す図。患者のHBV DNA力価レベルに対応する、ヌクレオチド1720〜1769のDNA配列のデータを示す。合計60の患者について照合し、DNAを血清から単離し、2回のPCRで増幅させた。PCR産物を精製し直接塩基配列決定して、産物の同一性を確認した。配列の結果をアラインメントして比較した。
【図6】HBVのエンハンサーII領域の配列を示す図。感染したドナーにおける血清中HBV DNAのレベルの変化と関係があるとして同定された点突然変異の位置に印をつけてある。エンハンサー活性に関する最小配列はすでに、NCBI受託番号NC_003977で公開されたように、HBVゲノムのヌクレオチド1687〜1805位に定義されている(イー ジェーケー(Yee JK)、Science 246、1989、658〜661;ワン ワイら(Wang Y et al.)、J Virol. 64(8)、1990、3977〜3981;ユー シーエイチ、ティング エルピー(Yuh CH、Ting LP)、J Virol. 64(9)、1990、4281〜4287)。このエンハンサーのバリアントは、in vivoでのHBVの低複製率と以前から関係づけられている(ウチダ ティーら(Uchida T et al.)、Microbiol Immunol 38、1994、281〜285)。初期の刊行物の幾つかは、前記NCBI受託番号の配列を参照していないので、ヌクレオチドの計数え方が幾分ずれている。
【図7】1752位にアデニンの代わりにグアノシン、チミジンおよびシチジンを有する3つのHBV構築物の作製について概略的に示す図。部位特異的突然変異誘発をエンハンサーII領域のヌクレオチド1752について行い(1752A、1752G、1752Tおよび1752C)、増幅させた断片を、エンハンサーを含まないルシフェラーゼ・ レポーター・ ベクター中のSV40プロモーターの上流に挿入した。
【図8】対照測定に使用した、ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントまたはその断片を発現する細胞中の発現活性のレベルを示す図。発現レベルは、エンハンサーII(NCBI受託番号NC_003977のヌクレオチド1686〜1801位)、サルウイルス40(SV40)プロモーター、およびルシフェラーゼ遺伝子を含むベクターを発現する細胞のルシフェラーゼ活性によって表される(実施例2参照)。対応する値を第3列に示し(「A」)、1752位にグアニン、チミンまたはシトシン(「G」、「T」および「C」)を有するエンハンサーIIを含むベクターを発現する細胞の値と比較している。1752位にアデニンを含まない構築物は、SV40プロモーターにcis結合させると該プロモーターを最小限〜弱く促進し、その結果1752Aを含むエンハンサーと比較して低いレベルのルシフェラーゼ発現をもたらす。第1列は、SV40プロモーター配列およびエンハンサー配列を含むベクターを使用し、最適なルシフェラーゼ発現がもたらされた内標準陽性対照のルシフェラーゼ活性を表す(第1列、「+」)。第2列(「−」)は内標準陰性対照のルシフェラーゼ活性を示し、該対照は、SV40プロモーター−ルシフェラーゼ遺伝子のみを含むがエンハンサー要素は含まないベクター自体のクローニングを行ったものである。いずれもヒト肝細胞癌に由来する4つの異なる細胞株、HepG2、PLC/PRF/5(この図では「PP5」と略記)、SKHep1およびHCCMを使用した。HCCMおよびPLC/PRF/5にはHBVゲノムのコピーが組込まれており、HepG2およびSK−Hep1−は、HBV感染の病歴およびHBVゲノムの組込みのない患者から得た。それぞれのエンハンサーIIクローン(1752A、1752G、1752Tおよび1752C)を用いて細胞を一過的にトランスフェクションした。それぞれのトランスフェクションでは、3μgのDNAを1μgの対照/プロモーター−ルシフェラーゼDNAと共にトランスフェクションし、48時間の時点で採取し、次にルシフェラーゼ活性の分析値を、発光測定装置を用いて決定した相対光量値(RLU)として測定した。ルシフェラーゼ・アッセイの結果は、内標準陽性対照のレベル(適宜100%に設定)に対して標準化した。
【図9A】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図9B】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図9C】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図9D】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図10】hnRNP K遺伝子の1ヌクレオチド多型(SNP)の形で天然に存在するバリアントを示す図。18人の正常なボランティアから、hnRNP K完全長cDNAをクローニングおよび塩基配列決定した。表に全ての確認された変化が列挙されている。被験体5,6,7および14〜18由来のDNAサンプルは、公開されているhnRNP Kの配列(いずれもバリアント3、図9と比較されたい)と比べていかなる変化も含んでおらず、したがって表中には挙がっていない。nt252において、C→Tの変化を含む新規のSNP(被験体9および10)が同定されたが、同義コドンではない。2つの異なるサンプル(被験体11および12)において欠失が観察され、KH3ドメインのすぐ上流に15塩基の欠失が見られた(nt1108〜nt1122、nt:ATGATTATTCCTATG、配列番号1)。
【図11】これまでに同定されたhnRNP K遺伝子の1ヌクレオチド多型(SNP)を要約する図。図10に示す得られた結果以外に、hnRNP K遺伝子のSNPを、Ensemblデータベース(www.ensembl.org )およびCeleraデータベースから抽出した。dbSNPからはわずか2つのSNPしか報告されておらず、該SNPはいずれも確認されていない。さらに、非翻訳領域(UTR)およびイントロン領域における幾つかのSNPが、公開データベース中に報告されているが、いずれも確認されていない(結果は示さない)。
【図12】hnRNP KおよびHBVのバリアント間の複合体形成に関する、2つの構成成分の用量依存性の例を示す図。トランスフェクションに一定量のHBV DNAを使用した場合、HBVウイルス力価は、hnRNP K濃度と共に一定地点まで用量依存的に増大し、バリアント2と3の間に有意な機能上の違いはない。対照として、空の発現ベクターpcDNA3.1は、HBVウイルス力価に対していかなる影響も有していない。ヌクレオチド1752位にアデニンとは異なる塩基を含むHBVバリアントは、1752Aバリアント(左側)と比較するとHBV DNAが68〜80%減少しており、HBV複製レベルの低下が示されている。それにもかかわらず、hnRNP Kの用量を増大させると、他の3つのバリアントの複製効率を増大させることが可能である。HepG2細胞を、図に示すように、完全長複製型HBVクローンである1752A、1752ΔG、1752ΔTおよび1752ΔCと、用量を増大させた(50、250および1250ng/ml)hnRNP Kバリアント2(v2)またはバリアント3(v3)とでコトランスフェクションした。トランスフェクション後48時間で細胞をハーベストした後、ゲノムDNAを抽出し、HBV DNAウイルス負荷をリアルタイムPCRによって測定した。トランスフェクションは2連で行い、標準偏差を示す。
【図13】(A)hnRNP K中の全17個のチロシン(Y)残基を示す図。hnRNP Kはin vivoでリン酸化されている(デジガルド ケーら(Dejgaard K et al.)、J.Mol.Biol. 236(1)、1994、33〜48)。hnRNP Kと幾つかのRNA分子およびDNA分子との結合は、チロシン残基のリン酸化によって刺激され得る(オストロビスキー ジェーら(Ostrowski J et al.)、Proc Natl Acad Sci USA、98(16)、2001、9044〜9049)。3個のチロシン残基(印の付いているY72、Y449およびY458)は、Kホモロジー(KH)ドメイン内に位置するので、特にHBVとの複合体形成と関係がある可能性が高い。これらの領域は、hnRNP Kタンパク質と核酸との相互作用に関与しているとして確認されている。 (B)チロシン残基の部位特異的突然変異誘発(Y→F)を示す図。KH1ドメインおよびKH3ドメイン中のチロシン残基が、リン酸化できないフェニルアラニン(F)に置換されている。矢印は該当するアミノ酸の位置を示し、これらのアミノ酸はそれぞれの突然変異体M1〜M4において(YからFに)交換されている。
【図14】hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを変化させる化合物によって達成可能な調節効果を示す図。化合物によってリン酸化レベルを変える代わりに、チロシン残基をフェニルアラニンに突然変異させることによって特定のチロシン残基のリン酸化を抑制した(図13B参照)。このことは、該当部位、すなわちKHドメインKH1およびKH3の残基Y72、Y449およびY458におけるリン酸化を選択的に阻害する化合物を使用することに相当すると考えられる。HepG2細胞を、HBV複製型クローン1752Aおよびそれぞれの突然変異体と共にコトランスフェクションした。「−」は、HBV複製型クローン1752Aと、対照の役割を果たす空の発現ベクターpcDNA3.1とのコトランスフェクションを示す。HBVウイルス力価は、hnRNP Kのバリアント2と共にコトランスフェクションすると約2.5倍増大し、バリアント3と共にコトランスフェクションすると約2倍増大する。ある特定の部位のチロシンの代わりにフェニルアラニンを含む(図17AおよびB参照)幾つかのhnRNP Kバリアント2突然変異体は、HBVウイルス力価の低下を示した。これらのデータは、KH3ドメイン中の残基Y449およびY458が、hnRNP Kすなわち一本鎖DNAとの結合を担うとして以前に同定された領域(ブラッドック ディーティーら(Braddock DT et al.)、EMBO J 21(13)、2002、3476〜3485;バッケ ピーエイチら(Backe PH et al.)、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60(Pt4)、2004、784〜787)の制御において、重要である可能性があることを示している。したがって、これらの突然変異体によるHBVウイルス負荷の調節は、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成がhnRNP Kのリン酸化により影響を受けることを示している。これらのデータは、hnRNP Kのバリアント2および3とHBVとの間の複合体形成における幾つかの違いも反映している可能性がある。
【図15】hnRNP KとHBVとの間の複合体形成を調節する抗EGFR免疫グロブリンの同定に関する1例を示す図。一群の異なる抗EGFR免疫グロブリン(シグマ社(Sigma)、アナスペック社(AnaSpec)、リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics))を並べて、HBV1752A複製型構築物を用いてトランスフェクションした2つの異なる肝細胞株、HepG2およびHuh7に関して試験した(図2参照)。Lipofectamine2000を使用して、4μgのプラスミドDNAをトランスフェクションした。トランスフェクション6時間後に、抗EGFR免疫グロブリン群を、製造者の推奨に従い以下の濃度で、すなわちAb1(アナスペック社(AnaSpec)、カタログ番号29615)を11μg、Ab2(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRabS)を21.5μg、Ab3(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRCabrX)を2.3mg、およびAb4(シグマ社(Sigma)、カタログ番号A204)を5μg加えた。免疫グロブリンの新たな等分試料をトランスフェクション24時間後に加え、阻害効果を増大させた。トランスフェクション48時間後に細胞をハーベストし、ゲノムDNAを抽出し、HBVウイルス負荷を測定した。免疫グロブリンの1つ(Ab2)は、いずれの細胞株においても3倍を超えてHBVウイルス力価を低下させることができた。このことは、この免疫グロブリンが、hnRNP Kタンパク質のリン酸化をもたらすEGF受容体のシグナル伝達を阻害することが可能であることを示している。
【図16】図17に示すhnRNP KとHBVとの間の複合体形成の調節のための、小さな干渉RNA(siRNA)の選択を示す図。hnRNP Kに対するsiRNA二重鎖は、3つの異なる製造業者、ダーマコン社(Dharmacon)(SmartPool(登録商標)、「供給元A」)、キアゲン社(Qiagen)(「供給元B」)およびプロリゴ社(Proligo)(「供給元C」)から購入した。供給元B(キアゲン社(Qiagen))のsiRNA分子の第1の配列は、GCAGUAUUCUGGAAAGUUU(配列番号2)であった。この配列は、ヌクレオチド1366〜1386位(図16では「標的2」で表す)における標的配列AAGCAGTATTCTGGAAAGTTT(配列番号3)から作製した。供給元Bの第2の配列は、ヌクレオチド688〜708位(図16では「標的1」で表す)における標的配列TACGATGAAACCTATGATTAT(配列番号5)から作製した、CGAUGAAACCUAUGAUUAU(配列番号4)であった。供給元C(プロリゴ社(Proligo))のsiRNA分子の第1の配列は、標的配列AACTTGGGACTCTGCAATAGA(配列番号7)から作製した、CUUGGGACUCUGCAAUAGATT(配列番号6)であった。この標的配列は、ヌクレオチド1029〜1049位(図16中では「標的3」)に対応する。供給元Cの第2の配列、GAAUAUUAAGGCUCUCCGUTT(配列番号8)は、ヌクレオチド187位(図20では「標的1」)の標的配列AAGAATATTAAGGCTCTCTCCGT(配列番号9)から作製した。最後に、供給元Cの配列AGGACGUGCACAGCCUUAUTT(配列番号10)は、ヌクレオチド655〜675位(図16では「標的2」)における標的配列AAAGGACGTGCACAGCCTTAT(配列番号11)から作製した。
【図17】小さな干渉RNA(siRNA)による、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成の調節の1例を示す図。 (I、上段)HepG2細胞を、hnRNP KのsiRNA(2μg、図16参照)とともに、またはsiRNAを含めずに1752A完全長複製型HBVクローンでコトランスフェクションした。標的化していない(「非標的」)およびラミンA/C(「ラミン」)のsiRNAを、対照として使用した。hnRNP Kの発現を、siRNAトランスフェクション後48時間で測定した。最初の2列は、トランスフェクションしていない細胞および非標的siRNAでトランスフェクションした細胞を表す。白色の列は、HBVおよびラミンA/CのsiRNAでコトランスフェクションした細胞を表す。右側の列は、HBVおよびhnRNP KのsiRNA(A:ダーマコン社(Dharmacon)、B:キアゲン社(Qiagen)、C:プロリゴ社(Proligo))でコトランスフェクションした細胞を表す。 (II、中段)HBVウイルス負荷を、上記(I)と同様にトランスフェクションした細胞においてリアルタイムPCRで定量化した。 (III、下段)ラミンA/Cの発現を、リアルタイムPT−PCRで測定した。トランスフェクションしていない細胞を100%として比率を標準化した。結果は2つの独立のサンプルを表すものであり;平均値の標準誤差を示してある。定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定したhnRNP KのmRNAレベルは、トランスフェクションしていない細胞、非標的siRNAおよびラミンA/C siRNAの対照に対して、30%の低下を示している。これに対してHBVウイルス負荷は、製造業者BおよびCからのsiRNAを使用すると50%低下したが、製造業者AからのsiRNAでは15%低下した。
【図18】電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)における、HBVのDNA断片とhnRNP Kタンパク質との間の複合体形成のin vitro測定を示す図。28量体オリゴヌクレオチド・プローブを1752Aまたは1752Gヌクレオチドを含むように設計し、対照プローブは隣接する上流配列から選択した。4つのそれぞれのプローブを用いて、HepG2核抽出物を使用してEMSAを行った。プローブ1(配列番号12):レーン1〜4;プローブ2(配列番号13、A1752):レーン5〜8;プローブ3(配列番号14):レーン9〜12;プローブ4(配列番号15、G1752):レーン13〜16。それぞれの組のプローブは、漸増濃度(0.0μg、0.05μg、0.10μgおよび0.15μg)の、非特異的な競合DNA[ポリ−(dI)−ポリ−(dC)]をそれぞれ含む。この競合DNAは、非特異的タンパク質の標識プローブへの結合を最小限にするために含める。DNA−タンパク質複合体は、遊離DNA分子とは異なる速度で移動する。したがってhnRNP Kの結合は、HBV DNAプローブとは異なる移動度のシグナルによって示される。その後、複合体中の第2の構成成分としてのhnRNP Kの存在を、図19中に示すのと同様の分析によって確認することが可能である。hnRNP Kを1752Aプローブを使用して検出し(プローブ2、レーン5〜8)、これより弱い同様のサイズのバンドを1752Gプローブを使用して検出した(プローブ4、レーン13〜16)。バンドの濃度分析から、プローブ2によって検出されたタンパク質が、プローブ4によって検出されたタンパク質より約300%高い濃度であることが示され、1752AプローブはhnRNP Kに関してより高い結合親和性を有することが示唆された。
【図19】HBVと細胞タンパク質との間の複合体形成の確認を示す図。HepG2細胞から得た40μgの核タンパク質抽出物を、2:1(w/w)の割合の非特異的な競合DNAであるポリ(dI−dC)の存在下で、5mgのDynabeads(登録商標)M−280ストレプトアビジン−ビオチン−オリゴヌクレオチドに結合させた。非結合タンパク質を洗浄除去し、結合タンパク質は溶出させて18cmでpH3〜10の非線形のImmobiline(商標)Drystrip(商標)に載せた。再水和を一定電圧(50V)で一晩行った。1次元目の等電点電気泳動の後、2次元目のSDS−PAGE(10%)における垂直方向の分離を実施した。銀染色によって検出された特異的タンパク質スポットの推定分子量を示す(矢印)。銀染色は、約56kDaの分子量で特異的タンパク質スポットが現れたことも明らかにした。
【図20】細胞タンパク質の同定を示す図。特異的タンパク質スポットを切り出し、製造者の教示書に従って脱染色した後、ゲルプラグをヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンで消化した。トリプシン分解質量マップを、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI)によって得た。ペプチド断片の配列クエリを、LC/MS/MS分析を使用することによりプロテオミック・リサーチ・サービス社(Proteomic Research Services、Inc)において行った(http://www.proteomicresearchservices.com/ )。得られた21個の塩基配列決定したペプチドの結果を示す。56kDaタンパク質の配列アラインメントから、hnRNP Kタンパク質に対する相同性スコアが高いことが明らかとなった。さらに、分析したタンパク質の分子質量は、hnRNP Kタンパク質の分子質量と一致した。
【図21】既知のhnRNP Kバリアントのアミノ酸配列(図9も参照されたい)およびMALDIペプチド質量マッピングによって割り当てられたトリプシン分解ペプチドによって調査した各領域(囲み部分)を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝炎ウイルスに感染した宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための方法に関する。この方法は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節からなる。さらに本発明は、前記複合体形成を調節することが可能である化合物を同定するための方法に関する。本発明は、このような調節を行うことが可能である化合物、例えば核酸分子、免疫グロブリン、細胞表面受容体のアンタゴニストおよびアゴニスト、hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを調節する化合物、およびhnRNP Kタンパク質の細胞内の量を調節する化合物などにも関する。最後に本発明は、肝炎感染を診断するためのこのような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスは、共にウイルス性肝炎の原因の大部分を占める、7つの既知ウイルス(A、B、C、D、E、G、およびTT型肝炎ウイルス)の中の2つである。B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる感染によって引き起こされる肝炎は、主たる世界的な健康問題であり、今日世界中で最も一般的な感染の1つである。世界中で4億人を超える人々がB型肝炎ウイルス(HBV)に慢性的に感染しており、1億7千万人を超える人々がC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している(それぞれの総説に関しては、非特許文献1および2を参照のこと)。比較として、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している人々の数は、6千万人であると推測されている。慢性肝炎は、肝不全;肝硬変に進行する慢性肝炎;静脈瘤出血、腹水、および肝細胞癌の危険がある活動性肝炎を伴う肝硬変;肝炎ウイルス伝播の危険がある高ウイルス血症を伴う慢性肝炎、肝臓外の合併症を伴う慢性肝炎など重大な合併症と関係がある。C型肝炎は欧州および米国における肝臓移植の主な原因である。A型肝炎は慢性疾患を引き起こすことはないが、慢性肝臓疾患を併発した急性A型肝炎は、より重度の疾患および高い死亡率をもたらす可能性があることを示唆する証拠がある(非特許文献3)。D型肝炎ウイルスは、HBV感染を前提条件とする不完全ウイルスである。D型肝炎ウイルスによる重複感染は、急性肝炎から肝硬変への進行を引き起こすことが多い(非特許文献4)。E型肝炎ウイルスは急性肝炎、自己限定性肝炎、黄疸性肝炎を引き起こす可能性があり(非特許文献5)、G型肝炎ウイルス感染はいかなる既知の疾患状態との関係も見出されていないが(非特許文献6)、該ウイルス感染はヒトにおいて一般的であり持続することが多い。肝臓疾患に対するTTウイルスの影響は、現時点では明らかでない(非特許文献7)。
【0003】
HBVまたはHCVに関する治療が利用可能であるが、これまで慢性感染した患者においてウイルスの完全な根絶をもたらしたものは無い。したがって、今日のHBVまたはHCVの治療の共通の望ましい目標は、免疫グロブリンすなわち抗体、または小分子の開発と、肝臓内壊死および炎症の消失ならびに線維症進行の低下を伴うレベルまでウイルス複製を安定に抑制することとに限られる。
【0004】
HBVおよびHCVの治療用に現在利用可能な薬剤の中では、インターフェロンαがいずれのウイルスの治療にも適していることが知られている。インターフェロンαは、免疫系の細胞によって生成される分子であり、ウイルスおよび他の侵入物質に応答して分泌される。インターフェロンαは、血中レベルの大幅な変動をもたらす次善の薬物動態を有しているので(非特許文献8および9)、大型、分岐状、40kDのポリマーなどのポリエチレングリコール分子を結合させることによって作製される「PEG化インターフェロン」の施用につながっている。
【0005】
2つの他の薬剤、ラミブジンおよびアデフォビルがHBVの治療に現在利用可能であり、その両方がヌクレオシド類似体である。このように、これらの薬剤は、ウイルスの酵素であるヌクレオシド逆転写酵素を阻害することによってウイルス増幅を遮断する。副作用としてこれらの薬剤は、肝臓に対する重大な障害および乳酸アシドーシスを引き起こす可能性があり(一般的概要に関しては、非特許文献10を参照のこと)、腎毒性の副作用も報告されている。重大な欠点は、ヌクレオシド逆転写酵素の突然変異を含むHBVの耐性バリアントが出現することである。いずれの薬剤も、一般にインターフェロンと組み合わせて使用される(非特許文献11)。類似の作用機構に基づく他の化合物が第2相試験を経ている。
【0006】
HCVの治療用には、インターフェロンα以外に、これもヌクレオシド類似体である、リバビリンと呼ばれる1種の薬剤が唯一現在利用可能である。リバビリンも一般にインターフェロンと組み合わせて使用される。その治療作用の正確な機構は、依然として完全には理解されていない。リバビリンは一般に、ある種の酵素を阻害することにより細胞内のグアノシン三リン酸(GTP)のレベルを低下させて、間接的にウイルスのRNA合成を阻害すると考えられている。しかしながら、HCVの複製に対するその効果は小さい(非特許文献12)。さらに、貧血、好中球減少、および血小板減少などの血液の異常が一般的な副作用である(非特許文献13)。
【0007】
既存の薬剤の組合せを使用する療法は、HCV感染の治療においてより有効であるようだが(非特許文献2および12)、HBV感染に関しては、このような付加的な利点は、これまで確認すらされていない(非特許文献1)。さらに、前述の療法のいずれにおいても、大部分の患者は長期の応答を得ていない(非特許文献11および14)。1例として、幾つかの試験から、インターフェロン治療に対する持続的応答が、わずか10〜20%のHCV感染患者にしか見られなかったことが示されている(非特許文献12)。したがって、肝炎感染を治療する代替標的および代替方法を検索する必要性が存在する。
【0008】
このような検索は、対応するウイルスの蓄積および機能についての詳細な理解に基づくことが好ましい。HBVに関しては、その複製の制御の根底にある要素に関するある程度の詳細な情報が入手可能であるが、例えばHCVに関してはこれまでほとんど知られていない。HBVは、RNA中間体を介して複製するヘパドナウイルス・ファミリーのDNAウイルスである。B型肝炎ウイルスのゲノムは、4つの重なりあう遺伝子と、3つのプロモーターと、2つのエンハンサー領域とを含む、3.2キロベースの環状で部分的に二本鎖のDNAである。2つの別個に制御されるエンハンサーのいずれも、3つ全てのプロモーターの活性を増大させることが可能である(非特許文献15)。
【0009】
HCVは、フラビウイルス・ファミリーのRNAウイルスである。その一本鎖の10キロベースのゲノムは、1つの遺伝子を含んでいる。1つの単離体由来のHCVは、1つの配列によってではなく、互いに密接に関係がある一群の変異配列によって定義可能であるという事実によって、このゲノムのさらなる調査が妨げられてきた。この多様性は、遺伝的に異なるグループまたは遺伝子型に対応する(非特許文献16)。3’非翻訳領域が、複製および制御領域に必要不可欠な2つのシグナルを含むということが示唆されている(非特許文献17)。
【0010】
D型肝炎ウイルスは不完全ウイルスであり(非特許文献4)、E型肝炎ウイルス(HEV)は、7.2キロベースのゲノムを有する、未分類の、小さな、一本鎖のエンベロープを持たないRNAウイルスである(非特許文献5)。G型肝炎ウイルスは、フラビウイルス科に属しエンベロープを有するRNAウイルスである(非特許文献18)。TTウイルスは、ヘテロ性のようであり、一本鎖の環状DNAゲノムから構成されているが、充分には特徴解析されていない(非特許文献7)。
【0011】
B型肝炎ウイルスDNAのエンハンサーIに結合する核酸分子を使用して、B型肝炎ウイルスの複製を調節する試みがなされている(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、宿主のどの細胞タンパク質が肝炎ウイルスのRNA合成を制御することが可能であるかは、これまでほとんど不明である。モルヒネはC型肝炎ウイルスの複製に影響を与えうることが示唆されているが(非特許文献19)、その正確な作用機構は知られていない。幾つかの転写因子、LRH−1/hB1F、HNF1、HNF3b、HNF4およびC/EBPは、in vitroでHBVのエンハンサーII領域の活性を増大させることが可能であることが認められてきているが、しかしながら、それらの正確な役割は、たとえ認められているとしても、依然確認を必要とする状態である(非特許文献20)。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0148985A1号明細書
【非特許文献1】チング エルエルら(Ching LL et al.)、Lancet 362(9401)、2003、p.2089〜2094
【非特許文献2】ポイナルド、ティーら(Poynard、T et al.)、Lancet 362(9401)、2003、p.2095〜2100
【非特許文献3】クックスレイ ジー(Cooksley G)、J Gastroenterol Hepatol. 19(Suppl1)、2004、S17〜20
【非特許文献4】ビーン ピー(Bean P)、Am Clin Lab.21(5)、2002、25〜27
【非特許文献5】ワン エル、ツワン エイチ(Wang L、Zhuang H)、World J Gastroenterol. 10(15)、2004、2157〜2162
【非特許文献6】スタプレトン ジェーティー(Stapleton JT)、Semin Liver Dis. 23(2)、2003、137〜148
【非特許文献7】ヒノ エス(Hino S)、Rev Med Virol. 12(3)、2002、151〜158
【非特許文献8】レディ ケーアールら(Reddy KR et al.)、Advanced Drug Delivery Reviews 54(4)、2002、571〜586
【非特許文献9】フェレンチ ピー(Ferenci P)、Int J Clin Pract. 57(7)、2003、610〜615
【非特許文献10】ロシュ ビー、サムエル ディー(Roche B、Samuel D)、Liver Transpl. 10Suppl、2004、S74
【非特許文献11】マルセリン ピーら(Marcellin P et al.)、N Engl J Med 351(12)、2004、1206〜1217
【非特許文献12】レイチャード オーら(Reichard O et al.)、Lancet 351(9096)、1998、83〜87
【非特許文献13】オング ジェーピー、ヨウノシ ゼットエム(Ong JP、Younossi ZM)、Cleve Clin J Med. 71、Suppl3、2004、S17〜21
【非特許文献14】パパテオドリディス ジーブイ(Papatheodoridis GV)、ハッジヤンニス エスジェイ(Hadziyannis SJ)、Aliment Pharmacol Ther. 19(1)、2004、25〜37
【非特許文献15】スー エイチ、イー ジェーケー(Su H、Yee JK)、Proc Natl Acad Sci USA 89(7)、1992、2708〜2712
【非特許文献16】マーテルら(Martell et al.)、Nucleic Acids Research 32(11)、2004、−90
【非特許文献17】イー エム、レモン エスエム(Yi M、Lemon SM)、J Virol. 77(6)、2003、3557〜3568
【非特許文献18】ハラツ アールら(Halasz R et al.)、Scand J Infect Dis. 33(8)、2001、572〜580
【非特許文献19】リー ワイら(Li Y et al.)、Am J Pathol 163(3)、2003、1167〜75
【非特許文献20】カイ ワイエヌら(Cai YN et al.)、Cell Res. 13(6)、2003、451〜8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、ヌクレオシド類似体またはインターフェロンの使用とは異なる作用に基づいて、宿主生物中の肝炎ウイルスの負荷を変化させる代替法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、そのような複合体の形成を調節することによって、特に独立請求項に記載した方法によって解決される。
したがって本発明は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片が、ウイルスゲノム上の制御領域と複合体を形成することが可能であるという発見に基づく。
【0014】
この発見は特に驚くべきものである、何故ならhnRNP Kは、多くの他の細胞成分と同様にC型肝炎ウイルスのヌクレオキャプシドの成分と結合することが、これまでに発見されているからである(ヒジー ティーワイら(Hsieh TY et al.)、J Biol Chem. 273(28)、1998、17651〜17659;ライ
エムエム、ウエア シーエフ(Lai MM、Ware CF)、Curr Top Microbiol Immunol 242、2000、117〜134)。この結合の結果は、人体の細胞中のhnRNP Kの既知の細胞機能に影響を与え、したがって肝炎感染によって引き起こされる幾つかの状態の原因であると推測されている(ライ エムエム、ウエア シーエフら(Lai MM、Ware CF et al.)、上記)。
【0015】
hnRNP Kは、可変スプライシングによって生じる種々のバリアント(変異体)の形で存在することが知られており(デジガルド ケーら(Dejgaard K et al.)、J.Mol.Biol. 236(1)、1994、33〜48)、多様な機能群を有する。hnRNP Kはシャトルタンパク質として働き、さまざまな細胞因子と結合し、転写因子として働く(ボムスツティック ケー、デニセンコ オー、オストロビスキー ジェー(Bomsztyk K、Denisenko O、Ostrowski
J)、Bioessays 26(6)、2004、629〜638;シャウン エーら(Shawn A et al.)、Cell Res、13(6)、2003、451〜458)。hnRNP Kは、同タンパク質をDNAおよびRNAのいずれとも相互作用可能とするKホモロジー(KH)ドメインおよびRGGボックスなどの、多数の調節ドメインを有する。一本鎖DNAとの結合を特に担う領域は、KHドメイン3を含むものとして同定されている(ブラッドドック ディーティーら(Braddock DT et al.)、EMBO J 21(13)、2002、3476〜3485;バッケ ピーエイチら(Backe PH et al.)、Acta Crystallogr
D Biol Crystallogr 60(Pt4)、2004、784〜787)。
【0016】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片とウイルスゲノム上の制御領域との複合体の形成を調節する方法は、任意の肝炎ウイルスによって引き起こされる感染について使用することが可能である。このようなウイルスの例は、マウス肝炎ウイルス、ウッドチャ
ック肝炎ウイルス、ジリス肝炎ウイルス、北極ジリスB型肝炎ウイルス、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)、アヒルB型肝炎ウイルス、サギB型肝炎ウイルス、ツクシガモB型肝炎ウイルス、ハクガンB型肝炎ウイルス、ヒメハクガンB型肝炎ウイルス、コウノトリB型肝炎ウイルス、ウーリー・モンキーB型肝炎ウイルス、オランウータン・ヘパドナウイルス、GBウイルスB、またはヒトC型肝炎ウイルス(HCV)である。本発明の好ましい実施形態は、ヘパドナウイルス、特にヒトB型肝炎ウイルスの使用からなる。
【0017】
該当する肝炎ウイルスは、野生型または既知の肝炎ウイルスのバリアントであってもよい。この点において用語「バリアント」は、対応する既知の配列と比較するとそのヌクレオチド配列が異なっている任意の形の核酸を指す。その違いは例えば、天然配列に導入された多型、1ヌクレオチドの突然変異、置換、(一続きの長さの)欠失または挿入、N末端および/またはC末端への付加によるものでありうる。
【0018】
同様にhnRNP Kタンパク質は、野生型または既知のhnRNP Kタンパク質のバリアントであってよい。この点において用語「バリアント」は、対応する既知の配列と比較するとそのアミノ酸配列が異なっている任意の形のタンパク質を指す。その違いは例えば、対応するコード核酸配列の天然配列に導入された多型、1ヌクレオチドの変化または修飾、置換、(一続きの長さの)欠失または挿入、N末端および/またはC末端への付加、対応するペプチドの可変スプライシング、翻訳後修飾、および有機分子との結合によるものでありうる。
【0019】
この点において、当然ながら用語「肝炎ウイルス」または「hnRNP Kタンパク質」は、このようなバリアントを含むことを意味する。
用語「制御領域」は、肝炎ウイルスの発現または増幅を刺激するかあるいは低下させることが可能である、肝炎ゲノムの任意の部分を指す。このような領域の例は、サイレンサー、エンハンサーまたはプロモーターである。本発明の現在好ましい一実施形態では、制御領域はヘパドナウイルス、特にヒトB型肝炎ウイルスのエンハンサーII領域である。
【0020】
前述のように本発明の方法は、hnRNP Kタンパク質の機能断片の使用も含み得る。このような断片は、3つの基準によって定義され得るポリペプチドである。第1に、該断片は、肝炎ウイルスの制御領域と結合して該肝炎ウイルスの複製に影響を与えるほど充分に安定した複合体を形成することが可能である。機能断片はKホモロジードメイン、特にKHドメイン3を含むことが好ましい。第2に、このような機能断片は、肝炎ウイルスのバリアントとの複合体形成が影響を受けるような方法で化合物によって調節され得る。第3に、このような断片は、天然に存在するhnRNP Kバリアントの対応するアミノ酸配列と、少なくとも60%の配列同一性を有しているとよい。好ましい実施形態では、それぞれの断片は、既知のhnRNP Kバリアントの対応するアミノ酸配列と、少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。用語「配列同一性」は、既知のhnRNP Kバリアントのアミノ酸配列と問題のアミノ酸配列との相同性の整合(アラインメント)後に得られる、対様式の同一な残基の割合(%)を指し、その割合の数字は、2つの配列のうち長いほうの配列中の残基数に対するものである。
【0021】
本発明の方法をin vitroの方法として使用する場合、該方法は肝炎ウイルスの機能断片の使用も含むことが可能である。この用語は、それぞれの肝炎ウイルスの一部分を形成する核酸分子を指すものとする。hnRNP Kタンパク質の機能断片に関するのと同様の3つの基準で、このような核酸分子断片を定義するものとする。第1に、該断片は、hnRNP Kタンパク質と結合し、少なくとも1つの適切な方法によって検出可能であるほど充分に安定した複合体を形成することが可能である。ヘパドナウイルスの場合、機能断片はエンハンサーII領域を含むことが好ましい。第2に、このような機能断片は、hnRNP Kタンパク質バリアントとの複合体形成が影響を受けるような方法で化
合物によって調節され得る。第3に、このような断片は、天然に存在するそれぞれの肝炎ウイルスバリアントの対応するアミノ酸配列と、少なくとも60%の配列同一性を有しているとよい。好ましい実施形態では、このような断片は、既知のそれぞれの肝炎ウイルスバリアントの対応する核酸配列と、少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。用語「配列同一性」は、既知のそれぞれの肝炎ウイルスバリアントの核酸配列と問題の核酸配列との相同性の整合後に得られる、対様式の同一な残基の割合(%)を指し、その割合の数字は、2つの配列のうち長いほうの配列中の残基数に対するものである。
【0022】
対応する宿主生物は、肝炎ウイルスが感染する可能性のある任意の生物種であってよい。本発明の方法を、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスとの間の複合体形成を調節することが可能である化合物の同定または選択の目的でスクリーニング法として使用する場合、宿主生物が感染する可能性を、免疫抑制物質またはトランスジェニック技法などの追加の手段の助けによって引き出してもよい。宿主生物は、例えば哺乳動物または無脊椎動物の種由来であってよい。感染する可能性がある哺乳動物の例は、ラット、マウス、リス、ハムスター、ウッドチャック、オランウータン、ウーリー・モンキー、チンパンジー、タマリン(saguinus oedipus)、マーモセットまたはヒトである。
【0023】
前述の複合体の形成を調節することによって、感染した宿主生物中の肝炎ウイルスの負荷を変化させる方法は、さまざまな方法で行うことが可能である。一般にこの調節は、それぞれのhnRNP Kタンパク質の活性化状態を変えることによって、転写のレベルまたは機能レベルで行うことが可能である。転写のレベルでの調節は、宿主生物の細胞中に存在していて肝炎ウイルスとの複合体形成に利用可能なhnRNP Kの量を変えることである。この場合留意すべきことは、一般にそれぞれのhnRNP Kタンパク質は、肝炎ウイルスのそれぞれの負荷量に応じて、肝炎ウイルスの複製を最大に刺激する最適レベルで存在することである。この最適レベルより高量および少量のいずれに外れても、通常はウイルス複製の促進が低下することになる。この傾向の1例は、図12中に見ることが可能である。これらの観察結果は、発現および機能レベルでの両方の調節を組み合わせると特に関連性がありうる。機能レベルでの前記複合体形成の調節は、複合体の構成成分の改変、または複合体形成への直接的干渉を含み得る。前記複合体形成に対して結果的に影響をもたらすこのような調節および他の調節を行うための好ましい実施形態は、化合物を投与することからなる。
【0024】
前記複合体形成を調節するために使用される化合物は、任意の性質のものであってよい。化合物は、例えば生物供給源または非生物供給源から単離されてもよいし、あるいは化学的または生物工学的に生成されてもよい。このような化合物の例は、限定するものではないが、小さな有機分子または生物活性ポリマー、例えばポリペプチド、例えば免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様機能を有する結合タンパク質、あるいはオリゴヌクレオチドである。このような化合物の1実施形態は核酸分子、特にRNA分子またはDNA分子、特にアプタマー、Spiegelmer(登録商標)(国際公開広報第01/92655号パンフレット中に記載)、マイクロRNA(miRNA)分子または小さな干渉RNA(siRNA)分子である。
【0025】
小さな干渉RNAの使用は、特定の遺伝子を「ノックダウン」するためのツールとなってきている。該ツールは、翻訳後レベルで行われてmRNA分解を伴うRNA干渉(RNAi)による、遺伝子サイレンシングまたは遺伝子抑制を利用する。RNA干渉は、ゲノムを保護する細胞機構に相当する。siRNA分子は、該siRNAと多酵素複合体とが結合していわゆるRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)を形成することによって、siRNAに相補的なRNAの分解を仲介する。siRNAはRISCの一部分となり、相補的RNA分子を標的としてこれを切断する。このことにより、それぞれの遺伝子
の発現の消失がもたらされる(概要に関しては、シオウド エム(Sioud M)、Methods Mol Biol. 252、2004、1〜8を参照のこと)。本発明において好適なこのようなsiRNAの実施形態は、10〜35ヌクレオチド、より好ましくは15〜25ヌクレオチドのin vitro合成された分子を含む。このようなsiRNA分子は、遺伝子の抑制を引き起こすには充分な長さであるが、配列非特異的なインターフェロン応答を引き起してmRNA翻訳の全体的な阻害をもたらすと思われるほど長くはない。この技術は、HIV−1 DNAの発現の阻害など、ウイルスに関する治療用途に施用されてきている(リー エヌエスら(Lee NS et al.)、Nature Biotechnology 20(5)2002、500〜505)。本発明の1実施形態では、siRNA分子を使用してhnRNP Kタンパク質をコードするmRNA分子の分解を誘導する。siRNAの使用は、hnRNP Kの発現を調節するための現時点で好ましい実施形態でもある。
【0026】
前記複合体形成を調節するために使用する化合物の他の例は、細胞成分、特にタンパク質のリン酸化状態を変えることができる分子である。タンパク質のリン酸化状態に影響を与えることが知られている化合物の例は、広範囲のキナーゼ阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、チロシンリン酸化刺激物質またはチロシンホスファターゼ阻害剤である。
【0027】
細胞成分のリン酸化状態を変えることが可能な化合物の1つの好ましい選択は、細胞タンパク質のチロシンリン酸化レベルを調節する調節物質である。この選択は、細胞内のチロシン残基のリン酸化状態の変化が、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスの制御領域との複合体形成の効率に対して影響を与えるという本発明の発見に基づく。この影響はhnRNP Kタンパク質のチロシン残基のリン酸化状態の変化、およびhnRNP Kタンパク質の細胞内の量の変化のいずれをも原因としうる。したがって、細胞内のチロシン残基のリン酸化状態を変える化合物の使用も、細胞内のhnRNP Kバリアントの合計量を調節することによってhnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との間の複合体形成を変化させる方法の1実施形態である。
【0028】
前述の化合物群の中で、本発明において同定かつ使用されうる適切な化合物は、その大多数が市販されているチロシンキナーゼ阻害剤、例えばチロホスチン、キナゾリン、キノキサリン、キノリン、2−フェニルアミノピリミジン、フラボノイド、ベンゾキノイド、アミノサリチル酸またはスチルベンなどから選択することが可能である(これらは例えば国際公開第9618738号パンフレット、国際公開第03035621号パンフレットおよびその中に引用されている参照文献中に記載されており、例えば、実験による同定の例は米国特許第6,740,665号明細書を参照されたい)。チロホスチンの例は、AG213、AG490、AG879、AG1295、AG1478、AG1517、AGL2043、チロホスチン46およびメチル2,5−ジヒドロキシ桂皮酸である。キナゾリンは例えばPD153035、PD156273、ゲフィチニブまたはラパチニブであり;キノキサリンは例えばPD153035またはZD1839である。キノリンの1例は5−メチル−5H−インドロ[2,3−β]キノリンであり、2−フェニルアミノピリミジンの1例はイマチニブであり、フラボノイドの例はゲニスタインまたはケルセチンであり、ベンゾキノイドの1例はヘルビマイシンAであり、アミノサリチル酸の1例はラベンダスチンAであり、スチルベンの1例はピセアタノール(piceatannol)である。他の適切な化合物は、チロホスチン エルブスタチンなどの受容体チロシンキナーゼ阻害剤、WHI−P97またはチロホスチンAG592などのEGFR特異的受容体チロシンキナーゼ阻害剤、アウリントリカルボン酸などのチロシンリン酸化刺激物質、または過バナジン酸ナトリウムまたはイソキサゾールカルボン酸などのチロシンホスファターゼ阻害剤を含むことが可能である。
【0029】
hnRNP Kタンパク質のチロシンリン酸化を調節する、このような化合物の他の例は、チロシンキナーゼまたはチロシンホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面分子のアゴニストまたはアンタゴニストである。このような細胞表面分子の例は、受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、ならびにチロシンキナーゼおよびチロシンホスファターゼを制御する経路と連動するシグナル伝達を担うGタンパク質共役受容体である(例えば、パイン エヌジェーら(Pyne NJ et al.)、Biochem Soc Trans. 31(6)、2003、1220〜1225を参照)。特に受容体チロシンキナーゼに関しては、hnRNP Kと核酸分子との結合およびhnRNP Kの発現のいずれにも影響を与える可能性があることが示唆されている(オストロビスキー ジェーら(Ostrowski J et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98(16)、2001、9044〜9049;マンダル エムら(Mandal M et al.)、J Biol Chem. 276(13)、2001、9699〜9704)。hnRNP Kはさらに、in
vivoでリン酸化されることが知られている(デジガルド ケーら(Dejgaard K et al.)、J.Mol.Biol. 236(1)、1994、33〜48)。受容体チロシンキナーゼの例は、血小板由来増殖因子の受容体、エリスロポイエチンの受容体、腫瘍壊死因子の受容体、白血病抑制因子の受容体、インターフェロンの受容体、インスリンの受容体、インスリン様増殖因子の受容体、インターロイキンの受容体、繊維芽細胞増殖因子の受容体、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の受容体、形質転換増殖因子の受容体、または表皮増殖因子(EGF)の受容体である。このような受容体は、さまざまなタンパク質のチロシン残基をリン酸化する能力を有し、かつ受容体自体が同様の効果を有する細胞内の他の因子を制御しうることが知られている(例えば、パジン
エムジェー、ウイリアムス エルティー(Pazin MJ、Williams LT)、Trends in Biochemical Sciences 17(10)、1992、374〜378を参照、EGF受容体に関しては、例えばジャンマット エムエル、ジアコーン ジー(Janmaat ML、Giaccone G)、Oncologist 8(6)、2003、576〜586を参照)。したがって本文脈中の用語「アゴニスト」および「アンタゴニスト」は、このような効果を生み出す細胞表面分子の能力および該能力の調節を指す。
【0030】
このようなアゴニストまたはアンタゴニストの好ましい実施形態は、チロシンキナーゼまたはチロシンホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面上の分子と結合するタンパク質分子である。このようなタンパク質性結合分子の例は、免疫グロブリンまたはその断片、あるいはリポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテインである(国際公開第03029462号パンフレット、ベステら(Beste et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96、1999、1898〜1903)。ビリン結合タンパク質、ヒト好中球ゼラチナーゼ結合リポカリン、ヒトアポリポタンパク質Dまたはグリコデリン(glycodelin)などのリポカリンは、ハプテンとして知られる選択された小さなタンパク質領域と結合するように修飾されうる天然のリガンド結合部位を有する。他のタンパク質性結合分子の例は、いわゆるグルボディ(glubody)(国際公開第96/23879号パンフレットを参照のこと)、アンキリン骨格に基づくタンパク質(ヒリニービッチ−ヤコブスカ エーら(Hryniewicz−Jankowska A et al.)、Folia Histochem.Cytobiol. 40、2002、239〜249)、またはクリスタリン骨格に基づくタンパク質(国際公開第01/04144号パンフレット、独国特許出願公開第19932688号明細書)、およびスケッラ(Skerra)、J.Mol.Recognit. 13、2000、167〜187に記載されたタンパク質である。
【0031】
免疫グロブリンまたはその断片は例えば、潜在的に有効な受容体アンタゴニストまたはアゴニストであることが知られており(2つの例に関しては、ゴエツル イージェーら(
Goetzl EJ et al.)、Immunol Lett. 93(1)、2004、63〜69、およびデベッツ アールら(Debets R et al.)、J
Immunol. 165(9)、2000、4950〜4956を参照のこと)、治療においてもアンタゴニストまたはアゴニストとして使用されてきている(例えば、コーエン エスエーら(Cohen SA et al.)、Pathol Oncol Res. 6(3)、2000、163〜174を参照のこと)。これはEGF受容体を対象とする免疫グロブリンにも当てはまる(ゴエツル イージェーら(Goetzl EJ
et al.)、上記)。(組換え)免疫グロブリン断片の例はFab断片、FV断片、単鎖FV断片(scFV)、二重特異性抗体またはドメイン抗体であり(ホルト エルジェーら(Holt LJ et al.)、Trends Biotechnol. 21(11)、2003、484〜490)、これらは全て当業者にはよく知られている。この点において留意すべきことは、アンタゴニストまたはアゴニストとして働く免疫グロブリンを得ることは、充分に当業者の能力の範囲内にあることである。この目的のために、ケラーおよびミルシュタイン(Koehler and Milstein)(Nature 256、1975、495〜497)に従った古典的な免疫処置プロトコル、および免疫グロブリン断片を用いるファージ・ディスプレーなどの進化的方法(ブレッケ
オーエイチ、ロゼット ジーエー(Brekke OH、Loset GA)、Curr Opin Pharmacol. 3(5)、2003、544〜550)を使用することが可能である。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態については、化合物をライブラリーの形で使用することが可能である。このようなライブラリーの例は、モデル化合物として化学合成されたさまざまな有機小分子、または多数の配列バリアントを含む核酸分子の集合体である。
【0033】
前記複合体形成を調節する化合物は、任意の適切な手段によって投与することが可能である。宿主生物が哺乳動物である場合、化合物は非経口的あるいは経口的に(経腸)投与することが可能である。哺乳動物への投与に関する好ましい実施形態では、施用、例えば化合物の調製物の経口投与、静脈内投与、あるいは吸入によって、血液および肝臓への送達を確実にする。経口施用するための調製物の例は、錠剤、ピルまたは飲用溶液であり、静脈内投与するための調製物の例は注射用溶液または輸液であり、吸入により投与するための調製物の例はエアロゾル混合物またはスプレーである。宿主生物が組換え微生物である場合、投与の例は微生物環境への化合物の注入または添加である。微生物が単細胞である場合、後者の投与形態を、微生物を改変する技法と組み合わせて行うことがおそらく可能である。このような技法は、細胞膜のエレクトロポレーションまたは浸透処理を含み得る。
【0034】
宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための本発明の方法は、さまざまな目的に使用することが可能である。このような目的の例は、治療、診断または試験目的である。試験目的の場合、幾つかの方法は、hnRNP Kタンパク質とHBVゲノム上のエンハンサーII制御領域との複合体形成を調節することが可能であることが既に同定されている化合物の施用を含み得るが、一方他の方法は、このような化合物の同定を対象とすることもできる。本発明の後者の実施形態では、該方法が、一定期間中の宿主生物中の肝炎ウイルス粒子の数を測定する工程を含むことが好ましい。
【0035】
一定期間中の宿主生物中の肝炎ウイルス粒子の数の測定は、幾つかの手段によって行うことが可能である。このような測定は、肝炎ウイルスに感染した後に1回行ってもよいし、幾つかの時点において行ってもよい。検出法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または例えば免疫グロブリンと結合した形態のビオチン−ストレプトアビジン系の使用などの、肝炎ウイルスに起因するシグナルの増幅を含むことが可能である。測定は直接的検出を利用してもよいし、間接的な検出を利用してもよい。間接的な検出の1例は、細胞生存率
または細胞複製の測定などの細胞の作用の測定である。直接的な検出の1例は免疫グロブリンの使用であり、免疫グロブリンは標識と結合していてもよい。宿主生物が微生物である場合、細胞内免疫グロブリンを使用することが可能である(ビジンチン エムら(Visintin M et al.)、J Immunol Methods 290(1〜2)、2004、135〜153)。しかしながら、留意すべきことは、微生物中で形成されるウイルス粒子の量の測定は、当該微生物の周辺環境へと放出されたウイルスの量を測定することにより実施可能であるということである。
【0036】
市販のキットを用いることもできる直接的な検出方法は、ヌクレオタンパク質複合体を完全に解離させる工程と、続く核酸抽出およびPCR、またはこの技法の変形(ネスティドPCR、もしくは核酸がRNAである場合はRT−PCRなど)の工程とを含むことが可能である。その後の工程は電気泳動、HPLC、フローサイトメトリー(ムルロニー ピーエム、ミカラック ティーアイ(Mulrooney PM、Michalak TI)、J Virol 77(2)、2003、970〜979)、蛍光相関分光法(バイナー オーエイチら(Weiner OH et al.)、Digestion 61(2)、2000、84〜89)、またはこれらの技法の変形を含むことが可能である。例えば標識した内部プローブとのハイブリダイゼーションおよびフィルムへの曝露、あるいは染色および既知濃度の標準サンプルとの比較による視覚化および定量化、あるいは圧電型核酸バイオセンサーの使用(ツォー エックスら(Zhou X et al.)、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 27(1)、2002、341〜345)などの、最終工程が必要とされるかもしれない。これらの工程の幾つかあるいは全ては、自動分離/検出システムの一部であってもよい。このような工程の例は、自動リアル−タイムPCRプラットホーム、自動ウイルス核酸単離プラットホーム(例えばキアゲン(QIAGEN)社のBioRobot(登録商標))、PCR産物分析装置(例えばロシュ(Roche)社のCOBAS(登録商標)TaqMan(登録商標))およびリアルタイム検出システム(例えばABI社のPrism(登録商標)7700またはRotor−Gene(商標)配列検出装置、ロシュ(Roche)社のAmplicor(登録商標)モニター)である。現在市販されているシグナルの増幅および検出アッセイには、AMPLICOR(登録商標)HBVモニター試験またはCOBAS(登録商標)AMPLICOR(登録商標)HCVモニター試験(いずれもロシュ・モレキュラー・ダイアグノスティック社(Roche Molecular Diagnostics)、VERSANT(登録商標)HBV3.0アッセイ(ベイヤー・ヘルスケア・ダイアグノスティック社(Bayer HealthCare−Diagnostics)またはダイジーン(Digene)Hybrid Capture(登録商標)II HBV DNA試験(ダイジーン社(Digene))がある。
【0037】
宿主生物中に存在する肝炎ウイルスの負荷を変えるための本発明の方法を、hnRNP
KとHBVとの間の複合体形成を調節することが可能な化合物を同定する目的でin vivoにおいて使用する場合、この方法の有利な実施形態は、得られた結果と1つまたは複数の対照測定の結果とを比較することをさらに含む。
【0038】
このような対照測定は、主要な測定本体と異なる任意の条件を含み得る。このような対照測定は、測定方法について、例えばウイルスの増幅が起こらない条件、あるいは任意または特定のhnRNP Kタンパク質と任意または特定の肝炎ウイルスとの間の複合体形成が起こる可能性がないか調節され得ない条件を含むことが好ましい。特に、このような対照測定は、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片とB型肝炎ウイルスゲノム上のエンハンサーII制御領域との複合体形成を調節しない化合物の使用を含み得る。
【0039】
特に好ましい実施形態において、対照測定は、ウイルス配列の1752位にアデニン(
A)を含まないHBVバリアントの使用を含むであろう。この実施形態は、感染した宿主における高レベルの血清中HBV DNAと、ウイルス配列1752位のAヌクレオチドの存在との間に、相関関係が存在するという驚くべき発見に基づく。血清中HBV DNAが低レベルであるキャリアは、この位置には主にグアニン(G)ヌクレオチドを有する。同様に、1752位にアデニンを含むHBV断片は、グアニンを有する断片よりhnRNP Kタンパク質に関して有意に高い結合親和性を示し、一方でチミンまたはシトシンを含むこのような断片に関しては、複合体形成を検出することはできなかった。これらの発見を示す例は、図5および図18中に見ることが可能である。
【0040】
本発明の他の実施形態では、宿主生物は微生物である。このような微生物は、単細胞からなることが好ましい。適切な微生物の1例は、組換え肝炎ウイルスおよび組換えhnRNP K、またはそれらの機能断片を発現する。このような微生物の好ましい実施形態は、確立された標準的方法を使用して、HBVおよびhnRNP Kバリアントをコードする核酸分子を含むクローニングベクターを用いて形質転換された、宿主細胞である。このような形質転換法は、1つまたは複数の細胞改変技法、例えばDNA注入、エレクトロポレーションまたはマグネトフェクション(プランク シーら(Plank C et al.)、Biol Chem. 384(5)、2003、737〜747)などを含むことが可能である。
【0041】
このような微生物の好ましい実施形態は、肝臓組織、例えば限定するものではないが肝細胞株または肝芽腫細胞株に由来する細胞である。このような細胞の例は、HepG2、Hep3B、HCCM、PLC/PRF/5、Sk−Hep−1、Snul82、HuH−6またはHuH−7であるが、これらだけには限られない。適切な細胞株に関して、留意すべきことは、肝炎ウイルス、および特にヒトC型肝炎ウイルスの核酸分子は、当業者が通常予想するよりも少ない細胞株にしか見出されず種選択的であることである(ツー キューら(Zhu Q et al.)、J Virol. 77(17)、2003、9204〜9210;バーテンシュラガー アール(Bartenschlager R)、Hepatology 39(3)、2004、835〜838で認められ確認された)。これらのウイルスは、特定の宿主細胞環境、すなわちウイルス・レプリカーゼの高い誤差率による多数の配列変異の存在によって助長されたと予想される影響に対して適応し得ることが観察されている(ツー、ら(Zhu et al.)、上記)。
【0042】
hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との間の複合体形成を変化させることが可能な化合物を同定するための方法の他の実施形態は、in vitroでこの複合体の構成成分を互いに曝露することからなる。構成成分、すなわちhnRNP
Kタンパク質またはその機能断片、および例えばヘパドナウイルスの核酸成分またはその機能断片は、任意の適切な形で使用することが可能である。その例は、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片、および/またはHBVまたはその機能断片を含む、1つまたは複数の細胞溶解物または抽出物の使用である。他の例は、適切な水溶液中の、濃縮、精製または単離されたhnRNP Kタンパク質またはその機能断片と、濃縮、精製または単離されたHBV、その機能断片、あるいはそれらに由来する核酸分子とを使用することである。用語「濃縮された」は、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片が、その細胞中または溶液中に存在する全タンパク質に占める割合について、該タンパク質または断片を採取した細胞または溶液中におけるよりも有意に高いことを意味する。濃縮は例えば、細胞抽出物からの核分画の単離を含んでもよい。これは遠心分離などの標準的技法によって行うことが可能である。濃縮の他の手段の例は濾過または透析であり、これらは例えば一定分子量未満の分子の除去、有機溶媒または硫酸アンモニウムを使用する沈殿を対象とし得る。精製は例えばクロマトグラフィー技法、例えばゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティ精製、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは疎水性電荷誘導クロマトグラフィーを含むことが可能である。精製に関する他の例は、分取用キ
ャピラリー電気泳動などの電気泳動技法である。単離は同様の方法の組合せを含むことが可能である。
【0043】
hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスまたはその機能断片とを曝露することからなる、本発明のこの実施形態は、生成する肝炎ウイルスの量を利用することもあるが、必ずというわけではない。好ましい実施形態では、方法は、生体分子の結合自体を測定することからなる。このような測定は例えば、分光法、光化学法、光度測定法、蛍光測定法、放射線法、酵素法または熱力学法による手段、あるいは細胞の作用を利用することが可能である。分光検出法に関する1例は蛍光相関分光法である(トンプソン エヌエルら(Thompson NL et al)、Curr Opin Struct Biol. 12(5)、2002、634〜641)。光化学法は例えば光化学架橋反応である(スティーン エイチ、ジェンセン オーエヌ(Steen H、Jensen ON)、Mass Spectrom Rev. 21(3)、2002、163〜182)。光活性標識、蛍光標識、放射活性標識または酵素標識の使用(概要に関しては、リッペ アールエー、ら(Rippe RA et al.)、Methods Mol Biol.
160、2001、459〜479を参照のこと)はそれぞれ、光度測定法、蛍光測定法、放射線法および酵素法による検出に関する例である。熱力学法による検出に関する1例は、等温滴定熱量測定(ITC、概要に関しては、ベラツクエツ−カンポイ エーら(Velazquez−Campoy A et al.)、Methods Mol Biol. 261、2004、35〜54を参照のこと)である。細胞への影響を使用する方法の1例は、細胞の酵素検出または細胞複製などを含めた細胞生存率の測定である。これらの方法の幾つかは、さらに電気泳動またはHPLCなどの分離技法を含んでもよい。詳細には、標識の使用に関する例には、プローブとしての化合物や、触媒される反応が検出可能なシグナルをもたらす酵素の結合した免疫グロブリンが含まれる。放射活性標識および電気泳動による分離を使用する方法の1例は、電気泳動移動度シフトアッセイである。
【0044】
HBV配列の1752位におけるアデニン成分の存在が高レベルの血清中HBV DNAと相関関係を有するという発見に基づき、本発明は、肝炎感染の診断または評価を目的とする、前記複合体の形成を調節するための方法にも言及する。
【0045】
本発明を、以下の図面および非制限的実施例によってさらに例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(実施例)
【実施例1】
【0047】
ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kバリアントの発現多様性
別途記載のない限り、確立された細胞培養法および遺伝学的組換え法を使用した。
HepG2細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(サイトシステムズ(Cytosystems))を補った中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。
【0048】
全てのPCR産物は、Expand High Fidelity PCRシステム(商標)(ロシュ社(Roche))を使用して作製した。PCR産物は、Qiaquick(登録商標)PCR精製キット(キアゲン社(Qiagen))を使用して精製した。T4DNAリガーゼ(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用してライゲーションを行った。製造者の教示書に従いプロトコルを実施した。
【0049】
全RNAは、製造者の教示書に従いRNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Q
iagen))を用いてHepG2から単離した。hnRNP Kの「バリアント2」および「バリアント3」クローンは、得られたそれぞれのhnRNP Kタンパク質をコードする1.4kbのRT−PCR断片をクローニングすることによって構築した。得られたクローンの配列は、バリアント2および3についてそれぞれGenebank受託番号NM_031262およびNM_031263に対応した。ただしクローニングした配列は、ヌクレオチド501位にシトシンの代わりにチミンを含んでいた。EcoRIおよびXhoIで消化したPCR断片を、EcoRIおよびXhoIで消化したpcDNA3.1にそれぞれクローニングした。「バリアント2」のクローニングプライマーは、5’−TAAAAGGAATTCAATATGCAAACTGAACAG−3’(配列番号16)および5’−CTAGTCCTCGAGTTAGAAAAACTTTCCAGA−3’(配列番号17)であり、「バリアント3」のクローニングプライマーは、5’−TAAAAGGAATTCAATATGCAAACTGAACAG−3’(配列番号18)および5’−CTTGCACTCGAGTTAGAATCCTTCAACATC−3’(配列番号19)であった。
【0050】
HBV1752Aの完全長複製型クローンは、鋳型としてHBVゲノムを含むpBR325プラスミド(ATCC、USA)を使用して構築した。プライマーを設計して、2つの断片:1〜1900および1600〜3215を増幅させた。領域1600〜1900は、コアプロモーターおよび重なり合う転写停止領域を含んでいた(バイス エルら(Weiss L et al.)、Virology 216、1996、214〜218)。内部のEcoRI部位(1/3215)を使用する2つの断片のイン−フレームライゲーションによって、連続したウイルスのオープン・リーディング・フレームをpcDNA3.1中のNruI部位に確実にクローニングし、複製型の構築物を得た。ウイルスの転写は、NruI部位がCMV IEプロモーター(チェン ダブリューエヌら(Chen WN et al.)、Am.J.Gastroenterol. 95、2000、1098)の外側にあるので、ウイルス自体のプロモーターの下で行われた。1752ΔG、1752ΔTおよび1752ΔCの完全長複製型クローンは、1752Aに関して記載したようにして構築した。第1の断片、1600〜3215をHBV−pBR325プラスミドから最初に増幅させ、pcDNA3.1にクローニングした。1752G、1752Tおよび1752C突然変異体は、Quick−Change(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene))によって第1の断片においてそれぞれ別々に作製した。構築物を確認するために塩基配列決定を行った。次いで第2の断片3215(1位でもある)〜1900をHBV−pBR325から得て、pcDNA3.1中の第1の断片の下流にクローニングした。
【0051】
HepG2細胞は、35mmの組織培養皿中にウェル当たり1×106個の平均細胞密度で平板培養し、製造者の教示書に従いLipofectamine2000(商標)(インビトロゲン社(Invitrogen))を用いてトランスフェクションした。簡潔に述べると、2mgのプラスミドDNAをそれぞれのトランスフェクション混合物に使用し、細胞に一滴ずつ加えた。37℃で48時間のインキュベーションの後、続いて細胞をハーベストし、次にDNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。対照実験用に、空の発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションした。実験は2連で行った。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞をハーベストし、次にDNeasyキット(登録商標)(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler(登録商標)装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で製造者の教示書に従いRealArt(商標)HBV LC PCRキット(アトラス社(Artus GmbH))を使用してリアルタイムPCRによって測定した。
【0052】
図4中に示すように、空の発現ベクターpcDNA3.1は、HBVと同時感染させてもHBVウイルス力価に対していかなる影響もなく、hnRNP Kと同時感染させた場合にもHBVの検出はもたらさなかった。HBVのDNAウイルス負荷は、3μgのプラスミドでトランスフェクトした細胞(+)よりも、6μgのプラスミドでトランスフェクトした細胞(++)において有意に高かった。
【実施例2】
【0053】
ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントの発現レベルの定量
肝芽腫細胞株HepG2、PLC/PRF/5、SKHep1およびHCCMの細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(サイトシステムズ社(Cytosystems))を添加した中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。
【0054】
サルウイルス40のエンハンサーおよびプロモーターを備えたルシフェラーゼ・ プラ
スミドであるpGL3−Controlプラスミド、およびルシフェラーゼ遺伝子から上流のサルウイルス40プロモーターを備えたエンハンサーを含まないルシフェラーゼ・
プラスミドであるpGL3−Promoterプラスミドを、プロメガ社(Promega)から入手した。pGL3−Promo/Aプラスミドは、プライマーLucF(配列番号20、5’−GCACGCGTCAACGACCGACCTTGAGG−3’)、およびLucR(配列番号21、5’−GCAGATCTACCAATTTATGCCTACAGCCTC−3’)を使用するPCRによって、HBVヌクレオチド1686位〜1801位(図6参照)を含むエンハンサーIIの基本機能単位を増幅させることにより構築した。この131bpのPCR断片をMluI/BglIIで消化し、MluI/BglIIで消化したpGL3−Promoterと連結させた。他の突然変異構築物は、Gene Editor(商標)部位特異的in vitro突然変異誘発システム(プロメガ社(Promega))を使用して構築し、(図7中に示したように)ヌクレオチド1752位にHBVエンハンサーII突然変異を導入した。第1の突然変異はヌクレオチドをAからGに変異させ(pGL3Promo/G)、第2の突然変異はヌクレオチドをAからTに変異させ(pGL3Promo/T)、最後にヌクレオチドをAからCに突然変異させた(pGL3Promo/C)。この3つの突然変異オリゴヌクレオチドの配列は、それぞれ5’−GGGGGAGGAGGTTAGGTTAAA−3’(配列番号22)、5’−GGGGGAGGAGTTTAGGTTAAA−3’(配列番号23)、および5’−GGGGGAGGAGCTTAGGTTAAA−3’(配列番号24)であった。構築物を確認のために塩基配列決定した。hnRNP Kクローンは、HepG2細胞から抽出した全RNA由来のhnRNP Kをコードする1.4kbのRT−PCR断片をクローニングすることによって構築した。EcoRI−およびXhoIで消化したPCR断片を、EcoRI−およびXhoIで消化したpcDNA3.1にクローニングした。クローニングプライマーは、5’−TAAAAGGAATTCAATATGCAAACTGAACAG−3’(配列番号25)、および5’−CTAGTCCTCGAGTTAGAAAAACTTTCCAGA−3’(配列番号26)であった。1752G、1752Tおよび1752Cの完全長複製型クローンは、1752Aに関して記載したようにして構築した。第1の断片、1600〜3215をHBV−pBR325プラスミドから最初に得て、pcDNA3.1にクローニングした。1752G、1752Tおよび1752C突然変異体は、Quick−Change(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene))によって第1の断片において別々にそれぞれ作製した。構築物を確認するために塩基配列決定を行った。次いで第2の断片3215(1位でもある)〜1900をHBV−pBR325から増幅させて、pcDNA3.1中の第1の断片の下流にクローニングした。
【0055】
トランスフェクション用に、24ウェルプレート中にウェル当たり5×104個の平均細胞密度で細胞を平板培養し、製造者の教示書に従いGenePorter(商標)(ジーンセラピー社(Gene Therapy))を用いてトランスフェクションした。簡潔に述べると、3μgのプラスミドDNAを無血清培地で1:1に希釈し、やはり無血清培地で1:1に希釈しておいたGenePorter試薬と混合した。室温で45分のインキュベーションの後、このトランスフェクション混合物を、60〜90%コンフルエントの細胞に一適ずつ加えた。トランスフェクション後3時間で、新たな増殖培地を加えた。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞をハーベストし、リン酸緩衝生理食塩水(137mMのNaCl、2.7mMのKCl、4.3mMのNa2HPO4、および1.4mMのKH2PO4)ですすいだ。DNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した後、HBVウイルス力価の負荷を、製造者の教示書に従いHybrid Capture(商標)II HBV DNAアッセイ(ダイジーン社(Digene))を使用して測定した。
【0056】
ルシフェラーゼ・アッセイ用に、3μgのプラスミドDNAおよび1μgのcontrol/promoterルシフェラーゼ・プラスミドDNAをそれぞれのトランスフェクション混合物に使用し、37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞を細胞培養物溶解試薬(プロメガ社(Promega)、25mMのトリスリン酸pH7.8、2mMのDTT、2mMの1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸、10%のグリセロール、1%のTritonX−100)とともにハーベストした。20μlの細胞溶解物を発光測定装置用チューブに分注し、次いで該チューブをTurner20/20型発光測定装置(プロメガ社(Promega))内に配置する。100μlのルシフェラーゼ・アッセイ試薬(プロメガ社(Promega))をチューブに注入することによって、読み取りを開始した。ルシフェラーゼ活性は、相対光量値(RLU)として測定した。相対的ルシフェラーゼ活性を、エンハンサー要素を含まないベクターに対する倍数として表した。トランスフェクション効率の変動を調節するために、実験は3連で行い、少なくとも3回繰り返した。比較のため、図8の結果を、ヌクレオチド1752位にアデニンを有するHBVバリアントを発現するHepG2細胞のレベルに標準化した(左上の第3列「A」を100%に設定)。1752位に他のヌクレオチドを有するHBVバリアント(図8の「G」、「T」、および「C」)は、低レベルのルシフェラーゼ活性に反映されるように、SV40プロモーターの増大ははるかに低かった。これらのデータは、本発明者によりエンハンサーII領域中に発見された点突然変異(図5)が、エンハンサーIIの転写効率に対して重大な影響を有することも示している。
【実施例3】
【0057】
ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントの対照測定のための使用
HepG2細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(Cytosystems)を添加した中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。HepG2細胞は、35mmの組織培養皿中にウェル当たり1×106個の平均細胞密度で平板培養した。完全長の1752A複製型HBVクローン(実施例1参照)、各1752Gクローン、各1752Tクローン、または各1752Cクローン(実施例2参照)と、「バリアント2」または「バリアント3」用の2つのhnRNP K発現構築物のうちいずれか(実施例1参照)とを用いたコトランスフェクションは、実施例1に記載したものと同様に行った。対照実験用に、空の発現ベクターpcDNA3.1をhnRNP K発現構築物の代わりに使用した。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞をハーベストし、次にDNeasy(登録商標)キット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler(登録商標)装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で、製造者の教示書に従いR
ealArt(商標)HBV LC PCRキット(Artus GmbH)を使用してリアルタイムPCRによって測定した。予想通りHBVウイルス力価はhnRNP K濃度と共に用量依存的に増大し、バリアント2と3の間に有意な機能上の違いはなかった(図12)。対照として使用した空の発現ベクターpcDNA3.1は、HBVウイルス力価に対していかなる影響も有していなかった。ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントは、1752A構築物と比較すると68〜80%減少したHBV DNAを有しており、HBV複製のレベルがより低いことが示されたが(図12)、高用量のhnRNP Kは、3つの構築物の複製効率を増大させることができた。図12においてさらに見ることが可能であるように、hnRNPKおよびHBVの複合体形成に対するhnRNPKおよびHBVの用量依存性は上限を有するようであり、それを超えると複製効率のさらなる増大を得ることはできない。これらのデータは、本発明者が、HBV複製を誘導するのに必要とされるウイルスの構成成分ならびにそのパートナーである宿主の構成成分を正確にマッピングした明確な証拠も与えている。
【実施例4】
【0058】
hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルの調節
部位特異的突然変異誘発によって作製した、Y72、Y449およびY458において異なるhnRNP Kバリアント2および3の5つの突然変異体。それぞれのチロシン残基はフェニルアラニンと交換して、hnRNP Kタンパク質のリン酸化を阻害する化合物の効果を模倣した。チロシンの代わりにフェニルアラニンを含む突然変異体は、鋳型として野生型のhnRNP K「バリアント2」クローンおよび「バリアント3」クローンを使用し、Quick−Change部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene))を使用して作製した。構築物を確認するために塩基配列決定を行った。使用した突然変異プライマーは、以下すなわち、1.YMutF1(配列番号27):Y72F用の正方向プライマー、5’−CTCCGTACAGACTTTAATGCCAGTGTT−3’;2.YMutF2(配列番号28):Y72F用の逆方向プライマー、5’−GACTGAAACACTGGCATTAAAGTCTGT−3’;3.YMutF3(配列番号29):Y449F用の正方向プライマー、5’−CAGAATGCACAGTTTTTGCTGCAGAAC−3’;4.YMutF4(配列番号30):Y449F用の逆方向プライマー、5’−CACACTGTTCTGCAGCAAAAACTGTGC−3’;5.YMutF5(配列番号31):Y458F用(バリアント2(v2)用)の正方向プライマー、5’−AGTGTGAAGCAGTTTTCTGGAAAGTTT−3;6.YMutF6(配列番号32):Y458F用(v2用)の逆方向プライマー、5’−TTAGAAAAACTTTCCAGAAAACTGCTT−3’;7.YMutF7(配列番号33):Y458F用(バリアント3(v3)用)の正方向プライマー、5’−AGTGTGAAGCAGTTTGCAGATGTTGAA−3’;8.YMutF8(配列番号34):Y458F用(v3用)の逆方向プライマー、5’−GAATCCTTCAACATCTGCAAACTGCTT−3’であった。
【0059】
HepG2細胞を、HBV複製型クローン1752Aおよびそれぞれの突然変異体と共にコトランスフェクションした。対照は、HBV複製型クローン1752Aを空の発現ベクターpcDNA3.1とともにコトランスフェクションした。
【0060】
HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で、製造者の教示書に従いRealArt HBV LC PCRキット(Artus GmbH)を使用してリアルタイムPCRによって測定した。キットは、HBVゲノムの120bp領域の増幅用、および特異的な増幅産物の並行検出用の試薬および酵素を含み、さらにキットは、PCR阻害の可能性について確認するための異なる内部対照を含んでいる。HBVウイルス負荷は、hnRNP Kの野生型バリアント2または3と共にコトランスフェクトすると、
それぞれ約2.5倍および2倍増大した(図14参照)。しかしながら、幾つかのhnRNP Kバリアント2の突然変異体に関しては、HBV負荷の増大は低かった。これらのデータは、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成が、hnRNP Kのリン酸化によって、特に残基Y449およびY458が位置するKH3ドメイン中のリン酸化によって影響を受けることを示している(図14参照)。したがってこれらの結果は、KH3ドメイン中の残基Y449およびY458が、hnRNP Kの制御において重要であり、ひいてはhnRNP KがHBVウイルス負荷の上方制御を変化させる可能性があることも示唆している。
【実施例5】
【0061】
抗EGFR免疫グロブリンによるhnRNP Kの調節
ヒト肝腫瘍細胞株HepG2およびHuh7の細胞を、ダルベッコ改変イーグル完全培地(インビトロゲン社(Invitrogen))に10%ウシ胎児血清(Cytosystems)を添加した中で、加湿5%CO2中で37℃において培養した。
【0062】
実施例1に記載したのと同様にHBV 1752A複製型構築物を用いて、細胞をトランスフェクションした。4μgのプラスミドDNAを、Lipofectamine2000を使用してトランスフェクションした。37℃で6時間のインキュベーションの後、一群の異なる抗EGFR免疫グロブリン(図15参照)を加えた。Ab1(アナスペック社(AnaSpec)、米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)所在、カタログ番号29615)は、ヒトEGFRの1016位のチロシンリン酸化部位(この配列はマウスおよびラット起源のものでは同一である)に対応する合成ペプチドに対して産生された、ウサギ抗EGFR(リン酸特異的)ポリクローナル免疫グロブリンである。この免疫グロブリンは、0.02%のProclin(登録商標)300を含む200μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に100μgの、エピトープ親和性を用いて精製済みのウサギIgGとして供給される。0.22μg/μlを、図15中に示すようにそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。Ab2(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、米国ニュージャージー州フランダース(Flanders)所在、カタログ番号RDI−EGFRabS)は、組換えヒトEGFR(エクソン15〜18に該当する領域を含むEGFRの細胞質ドメインの一部分)に対して産生された、ヒツジ抗EGFR免疫グロブリンである。この免疫グロブリンは、0.05%のアジ化ナトリウムを含む200μlのTris−HCl(pH7.4)中に200μgのIgGとして供給される。0.43μg/μlをそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。Ab3(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRCabrX)は、ヒト、マウスおよびラットEGFRにおいて同一であるカルボキシ末端近くの領域にマッピングされるアミノ酸1168〜1181位由来の合成ペプチド(NH2−C−S−L−D−N−P−D−Y−Q−Q−D−F−F−P−K−E−COOH)に対して産生された、ウサギ免疫グロブリンである。アミノ末端のシステインを合成して、担体との結合を容易にした。EGFRの認識は、チロシン1173のリン酸化状態とは無関係である。erbB−2、erbB−3またはerbB−4に対しては反応が観察されなかった。この免疫グロブリンは、タンパク質濃度約85mg/mlの250μlの滅菌濾過済み非希釈血清として供給される。46μg/μlをそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。Ab4(シグマ社(Sigma)、米国ミズーリー州セントルイス(St.Louis)所在、カタログ番号A204)は、免疫原としてヒトEGFRの20アミノ酸の融合タンパク質に対して産生されたヒツジ免疫グロブリンである。この配列は、リン酸化領域に隣接している(N末端配列近辺)。この免疫グロブリンは受容体分子の内側ドメインを認識し、リン酸化を阻害するが、EGFの結合は阻害しないと思われる。この免疫グロブリンは、0.15Mのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)中の1.3mg/mlの滅菌濾過済み溶液として供給される。0.1μg/μlをそれぞれの細胞アッセイ用に使用した。免疫グロブリンの未使用の等分試料を
トランスフェクション後24時間で加えて、阻害効果を増大させた。細胞をさらにインキュベートし、トランスフェクション後48時間で細胞をハーベストし、次にDNeasyキット(キアゲン社(Qiagen))を用いてゲノムDNAを抽出した。HBVウイルス力価の負荷は、LightCycler装置(ロシュ・ダイアグノスティック社(Roche Diagnostics GmbH))で、製造者の教示書に従いRealArt HBV LC PCRキット(Artus GmbH)を使用してリアルタイムPCRによって測定した。
【0063】
hnRNP KとHBVとの間の複合体形成を阻害することが可能な抗EGFR免疫グロブリンを1つ同定した(図15参照、2つの細胞株の第3番目の棒グラフ)。Ab2(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRabS)は、2つの細胞株いずれにおいても3倍を超えてHBVウイルス力価を低下させた。これらのデータは、この免疫グロブリンがhnRNP Kタンパク質のリン酸化をもたらすEGF受容体のシグナル伝達を阻害することが可能であることを示している。
【実施例6】
【0064】
siRNAによるhnRNP Kの調節
hnRNP Kに対するsiRNA二重鎖は、ダーマコン社(Dharmacon)(SmartPool(登録商標))、キアゲン社(Qiagen)およびプロリゴ社(Proligo)から購入した。選択した標的部位を図16中に示すが、該標的部位は配列AAGCAGTATTCTGGAAAGTTT(配列番号3、ヌクレオチド1366〜1386位、図16の「標的2」)および供給元B(キアゲン社(Qiagen))についてはTACGATGAAACCTATGATTAT(配列番号5、ヌクレオチド688〜708位、図16の「標的1」)に対応する。それぞれのsiRNA配列は、GCAGUAUUCUGGAAAGUUU(配列番号2)およびCGAUGAAACCUAUGAUUAU(配列番号4)であった。供給元C(プロリゴ社(Proligo))について使用した第1の標的配列は、AACTTGGGACTCTGCAATAGA(配列番号7)であり、それぞれのsiRNA配列は、CUUGGGACUCUGCAAUAGATT(配列番号6)であった。この標的配列は、ヌクレオチド1029〜1049位に対応する(図16の「標的3」)。供給元Cについて使用した第2の標的配列は、ヌクレオチド187位におけるAAGAATATTAAGGCTCTCTCCGT(配列番号9)であった(図16の「標的1」)。それぞれのsiRNA配列は、GAAUAUUAAGGCUCUCCGUTT(配列番号8)であった。第3の供給元Cの配列AGGACGUGCACAGCCUUAUTT(配列番号10)は、ヌクレオチド655〜675位の標的配列AAAGGACGTGCACAGCCTTAT(図16の「標的2」、配列番号11)から作製した。HepG2細胞を、24ウェル組織培養プレート中で、1mgのプラスミドDNA(1752A完全長複製型クローン、実施例1参照)およびそれぞれのsiRNA二重鎖(2mg)を用いて、6mlのLipofectamine2000(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用してコトランスフェクションした。48時間後、細胞を回収し、RNAおよびDNAを抽出した(Qiagen RNeasy(登録商標)キットおよびDNeasy(登録商標)キット)。対照として、蛍光標識した非標的siRNAでも細胞をトランスフェクションして、トランスフェクション効率を調べた。トランスフェクションは2連で行った。hnRNP KのmRNAレベルは、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定した。反応は、プライマー5’−AGACCGTTACGACGGCATGGT−3’(配列番号35)および5’−GATCGAAGCTCCCGACTCATG−3’(配列番号36)を用いて、RNA Master Sybr(登録商標)Green System(ロシュ社(Roche))を使用し、LightCycler(ロシュ社(Roche))で2mlのRNAを使用して行った。ラミンA/C検出用に、リアルタイム逆転写(RT−PCR
)反応を、同じキットを使用して、レリオットら(Lelliott et al.)、2002(Journal of Clinical Endocrinology、87、728〜734)に記載の改良型プライマー(5’−CCCTTGCTGACTTACCGGTTC−3’(配列番号37)および5’−TGCCTTCCACACCAGGTCGGT−3’(配列番号38))を用いて行った。T7 RiboMax(商標)Express in vitro転写システム(プロメガ社(Promega))によりin vitroで転写させたRNAを用いて作製した標準曲線を使用することによって、RNAの絶対量の定量を実施した。精製した転写RNAの濃度は、RiboGreen(登録商標)RNA定量試薬(インビトロゲン社(Invitrogen))によって測定した。in vitroで転写させたRNAの段階希釈物を2連で調製した。得られたデータは図17に示す。hnRNP KのmRNAレベルは、トランスフェクトションしていない細胞対照、非標的siRNA対照およびラミンA/CのsiRNA対照に対して30%低下した。キアゲン社(Qiagen)およびプロリゴ社(Proligo)のsiRNA(図17のB、C)はHBVウイルス負荷を50%低下させ、ダーマコン社(Dharmacon)のsiRNA(A)はHBVレベルを15%低下させた。
【0065】
この3つの供給元の間のsiRNAのHBV複製に対する有効性の違いは、おそらく選択した標的領域の違いによるものである(図16参照)。しかしながら、3種類のsiRNAはいずれもhnRNP KとHBVとの間の複合体形成、したがってHBV複製に影響を与えるようである。ラミンsiRNAでトランスフェクションしたHepG2細胞において、リアルタイムRT−PCRによって測定されたラミンA/CのmRNAレベルは、トランスフェクトションしていない細胞に対して45%の低下を示し、一方で非標的siRNAおよびhnRNP KのsiRNAは、ラミンA/CのmRNAレベルに対して影響がなかった。したがってラミンの発現は、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成の調節用に選択したsiRNAによって影響されないようである。これらのデータによって、hnRNP KがHBV複製の過程で重要な役割を果たすことも再度確認される。
【実施例7】
【0066】
in vitroでのhnRNP KとHBVの相互作用の検出
この実施例では、以下のように核タンパク質抽出物を調製することによって、hnRNP Kタンパク質の濃縮を行った。
【0067】
HepG2細胞(実施例1参照)をトリプシン処理し、氷冷1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回すすぎ、5×元の充填細胞体積(PCV)の緩衝液A[10mMのN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.9)、1.5mMのMgCl2、10mMのKClおよび1mMのジチオスレイトール(DTT)]と共に10分間氷上でインキュベートした。4℃における3分間の1,000rpmでの遠心分離後、細胞を2×元のPCVの緩衝液A中に再懸濁させ、加圧型(Dounce型)ホモジナイザーでSペッスルを用いて10ストロークでホモジナイズした。核分画を2,500rpmで10分間の遠心分離によって沈殿させ、1.5×緩衝液B[20mMのHEPES(pH7.9)、0.2mMのEDTA、1.5mMのMgCl2、420mMのNaCl、0.5mMのDTT、25%のグリセロール]中に再懸濁させ、Dounce型ホモジナイザーでさらに10ストローク処理した。次いで細胞懸濁物を微量遠心分離用チューブに移し、軽く攪拌しながら4℃で30分間インキュベートした。核の残骸は、4℃における40分間の13,000rpmでの遠心分離によって除去した。上清を、200mlの緩衝液C[20mMのHEPES pH7.9、0.2mMのEDTA、20mMのMgCl2、20mMのKCl、420mMのNaCl、25%のグリセロール、0.5mMのDTT、0.5mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)](緩衝液は2回交換した)に対して4℃で4時間透析した。透析後、核抽出物を20分間の13,000rpmでの遠心分離によって浄化した。次いで核抽出物
を等分試料に分け、−70℃で保存した。タンパク質濃度は、標準としてアセチル化ウシ血清アルブミンを使用して、タンパク質アッセイキット(バイオ−ラッド・ラボラトリーズ社(Bio−Rad Laboratories))を用いて定量した。
【0068】
HBVとhnRNP Kの相互作用は、「電気泳動移動度シフトアッセイ」または「EMSA」として当業者に周知の方法によって分析した。結合反応手順は、10μgのHepG2核抽出物、0.1〜0.2μgの非特異的競合DNAポリ(dI−dC)(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社(Amersham Pharmacia Biotech、米国)および32P−dATP末端標識プローブ(1×104〜1×105cpm)を含む、20μlの反応混合物(10mMのTris−HCl pH7.5、50mMのNaCl、1mMのEDTAおよび1mMのDTT)中において、20分間37℃において行った。遊離DNAとDNA−タンパク質複合体とを、6%の非変性ポリアクリルアミドゲルで展開した。ゲルを1時間80℃において真空下で乾燥させてから、X線フィルム(Biomax(登録商標)、コダック社(Kodak)に−80℃で曝露した。オリゴヌクレオチド・プローブの配列(ヌクレオチド変化を示す)は以下のもの、すなわちプローブ1:AGACTGTGTGTTTAATGAGTGGGAGGAG(配列番号12);プローブ2:AGTTGGGGGAGGAGATTAGGTTAAAGGT(配列番号13);プローブ3:AGACTGTGTGTTTAATGCGTGGGAGGAG(配列番号14);プローブ4:AGTTGGGGGAGGAGGTTAGGTTAAAGGT(配列番号15)とした。得られた画像は図18に示す。1752Aプローブ(プローブ2、レーン5〜8)によって、バンドの形でhnRNP Kが検出された。対応するhnRNPのより弱いバンドは、1752Gプローブ(プローブ4、図18のレーン13〜16)によって検出された。その後のバンドの濃度分析から、1752Aプローブはプローブ4より約300%強いシグナルを検出したことが示された。これは、この2つのプローブがhnRNP Kに関して対して異なる結合親和性を有することを示している。
【実施例8】
【0069】
HBVと複合体を形成するものとしてのhnRNP Kの同定
ヒト肝細胞癌細胞株HepG2から、細胞をハーベストし氷冷緩衝液A(0.15MのNaCl、10mMのHEPES、pH7.4)で細胞を2回すすぐことによって核タンパク質抽出物を得て、5×元の充填細胞体積の緩衝液B(0.33Mのスクロース、10mMのHEPES、1mMのMgCl2、0.1%のTriton X−100、pH7.4)と共に15分間氷上でインキュベートした。4℃における5分間の3,000rpmでの遠心分離後、ペレットを緩衝液Bで1回洗浄し、200mlの緩衝液C[0.45MのNaCl、10mMのHEPES、pH7.4、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(SigmaP8340)]を用いて氷上で軽く再懸濁させた。細胞混合物を軽く攪拌しながら15分間インキュベートし、次に5分間13,000rpmで遠心分離した。上清をDNA結合タンパク質アッセイ用に保存した。二本鎖オリゴヌクレオチド・プローブのアニーリングは、それぞれ3’端および5’端をビオチンで標識した各1nmoleのアンチセンス・プローブおよびセンス・プローブを含む、100mlのMilli Q脱イオン水を使用して行った。オリゴヌクレオチド混合物の溶液を、5分間で95℃に加熱して、ゆっくりと室温に冷却した。DNAと相互作用するタンパク質を、(ガダレタ ディーら(Gadaleta D et al.)、J.Biol.Chem. 271、1996、p.13537)に以前に記載されたようにして捕捉した。簡潔に述べると、配列番号14および配列番号15(図19に示す)を有するオリゴヌクレオチド混合物を、5mgのDynabeads(登録商標)M−280ストレプトアビジン(ダイナル・バイオテク社(Dynal Biotech)と共に、結合および洗浄用緩衝液(5mMのTris−HCl、0.5mMのEDTA、1.0MのNaCl、pH7.5)中において15分間室温でインキュベートした。次いで磁気ビーズを結合および洗浄用緩衝液で洗浄し、TGED緩衝液(20mMのTris−HCl、10%のグリセロール、1mMの
DTT、0.01%のTriton X−100、50mMのNaCl、pH8.0)を用いて平衡化した。抽出した核タンパク質40μgを、非特異的競合DNAポリ(dI−dC)(アマシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences)と2:1(w/w)で混合し、TGED緩衝液を用いて500μlに調整した。核タンパク質−ポリ(dI−dC)溶液を、30分間室温で平衡化した磁気ビーズ−オリゴヌクレオチド・プローブに加えた。非結合タンパク質は、TGED緩衝液を用いて洗浄除去した。結合したタンパク質は、1MのNaClを含んだTGED緩衝液を用いて溶出させた。同じ捕捉および溶出手順を、核タンパク質−ポリ(dI−dC)混合物の新しい等分試料を用いてさらに4回繰り返した。溶出画分を集め、アセトン沈殿を施した。2−Dゲル電気泳動を、若干改変を加えてアマシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences)のプロトコルに従って行った。簡潔に述べると、アセトン沈殿タンパク質を含むそれぞれのサンプルを、再水和用緩衝液(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%のCHAPS、0.5%のIPG緩衝液pH3〜10、1.0mgのDTT)を用いて350μlの体積にした。短時間渦流混合することによって混合物を混合し、13,000rpmで10分間遠心分離した。上清を18cm、pH3〜10(非線形)Immobiline(商標)DryStrip(商標)に載せ、一定電圧(50V)で一晩積極的に再水和を行った。等電点電気泳動(IEF)は、IPGphor(商標)(アマシャム・バイオサイエンス社(Amersham Biosciences))を使用して20℃において段階式に行った。簡潔に述べると、ストリップに500Vで1時間、2000Vで1時間、5000Vで1時間、および8000Vで12時間、合計90KVhを累積させて泳動した。IEFの後、IPGストリップを15mlのSDS平衡緩衝液(50mMのTris−HCl、6Mの尿素、30%のグリセロール、2%のSDS、66mMのDTT、微量のブロモフェノールブルー、pH8.8)中で30分間インキュベートし、次いでDTTの代わりにヨードアセトアミド(375mg/15ml)を含んだ同じ緩衝液を用いて30分間、第2回目のインキュベーションを行った。二次元目の垂直SDS−PAGE(Protein II XL、バイオ−ラッド・ラボラトリーズ社(Bio−Rad Laboratories))を、10%ゲルを使用して150Vの一定電圧で15℃にて6〜8時間行った。ゲルの銀染色(SilverQuest(商標)銀染色キット、インビトロゲン社(Invitrogen))により、非特異的結合の対照オリゴヌクレオチド・プローブと比較して、特異的なDNA結合タンパク質の明確な濃縮が実証された(図19参照)。また、特異的なタンパク質スポットが分子量約56kDaとして現れることも明らかとなった。
【0070】
特異的タンパク質スポットを切り出して製造者の教示書に従って脱染色した後、このゲルプラグを乾燥させ、重炭酸アンモニウム溶液中に浸し、DTTを用いて還元した。アルキル化はヨードアセトアミドを使用して行った。サンプルをProGest(商標)ワークステーションで一晩37℃においてトリプシン消化した。ギ酸を加えて反応を停止させた。ペプチドをC18 Zip−Tip(商標)で精製し、60%アセトニトリル、0.2%TFA中に調製したα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸のマトリクスを用いて溶出させた。15マイクロリットルの溶出物を、流速20nl/分で75mmのC18カラムで処理した。トリプシン消化物の質量マップは、Micromass(登録商標)Q−TOF2型質量分析計を使用して、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI.)によって得た。ペプチド断片の配列クエリは、LC/MS/MS分析を使用することによりプロテオミック・リサーチ・サービス社(Proteomic Research Services、Inc)において行った(http://www.proteomicresearchservices.com/ )。得られたデータは、MASCOT検索エンジン(www.matrixscience.com )を使用して検索した。21個の入手し塩基配列決定したペプチドの結果を、図20に示す。56kDaタンパク質の配列アラインメントから、hnRNP Kタンパク質に対する相同性のスコアが高いことが明らかとなった。さらに、分析したタンパク質の分子質量は、hnRNP Kタンパク質の分子質量と一致した。
【実施例9】
【0071】
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域との間の複合体形成のin vitroでの分析および定量
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域、例えばHBVのエンハンサーIIとの間の相互作用を分析する方法は、「GSTプルダウンアッセイ」として当業者に知られている。
【0072】
この方法は以下の工程を含む。すなわち、35S標識したエンハンサーIIを、製造者の教示書に従いin vitroで翻訳し(TnT(登録商標)ウサギ網状赤血球溶解物システム、プロメガ社(Promega))、過剰のグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)または融合タンパク質GST−hnRNP Kと共に0.2MのNaCl中でインキュベートする。GST−hnRNP Kは、標準的技法を使用して、完全長1.4kbのhnRNP KをGSTベクターにクローニングすることによって構築することが可能である。第1の工程では、GSTおよびGST−hnRNP KベクターでDH5αを形質転換し、595nmにおいて0.5の光学密度まで増殖させ、0.2mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを用いて2時間誘導した。次いで組換えタンパク質を、製造者の教示書に従い、予めGSTrap(商標)HPカラム中に充填されたGlutathione Sepharose High Performance(商品名)(アマシャム社(Amersham)、注文番号17−5281−01)を使用する、確立したクロマトグラフィー技法を使用して精製する。溶出物を、10mMのリン酸(pH7.5)、50mMのNaCl、0.05%のTween、および20%グリセロールを含む水性緩衝液に対して一晩透析する。10μlのin vitro翻訳混合物を、1.8×10−10molの組換え融合タンパク質と共に110μlの最終体積でインキュベートする。氷上で3時間の後、結合した複合体を、Glutathione Sepharose(商標)ビーズ(アマシャム社(Amersham)、注文番号17−5279−01)の50%(容積比)のスラリー25μlをインキュベーション緩衝液中に加えることによって精製し、4℃で15分間混合する。1mlのインキュベーション緩衝液で徹底的に洗浄した後、ビーズを電気泳動分析用にLaemmli法のゲルに載せる。陽性の結果は、35S−エンハンサーIIのGST−hnRNP Kとの結合がGST単独との結合より少なくとも5倍を超える結果を示すと思われる。この相互作用のさらなる確認は、in vitro翻訳されたhnRNP KをGST−エンハンサーIIと結合させる相互交換実験によって繰り返すことも可能である。
【実施例10】
【0073】
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域との間の複合体形成のin vitroでの分析および定量
hnRNP Kと肝炎ウイルスの制御領域、例えばHBVのエンハンサーIIとの間の相互作用を分析する他の方法は、「クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ」または「ChIPアッセイ」として当業者に知られている。
【0074】
実施例1に記載したのと同様に、1752A完全長複製型クローンを用いてHepG2細胞をトランスフェクションし、トランスフェクション後48時間で細胞をハーベストする。次いで細胞を溶解緩衝液(20mMのTris−HCl pH8、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、1%のSDS、150mMのNaClおよび1mMのPMSF)中に溶解し、20%Dutyで30秒間の超音波処理を5〜8回実施する。遠心分離を最大速度で10分間行って、細胞の残骸を除去する。50μlの超音波処理サンプルを使用し、50μlの10mMのTris−Cl、pH8を加える。次いでプロナーゼ(ロシュ社(Roche)、20mg/ml)をサンプルに加えて、最終濃度1.5μg/μlとする。42℃で2時間、次いで65℃で一晩のインキュベーションの後、L
iClを0.8Mの最終濃度まで加える。免疫沈降用希釈緩衝液(20mMのTris−Cl pH8、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、150mMのNaCl、プロテアーゼ阻害剤)を加えて、抽出物を希釈する。1mlの抽出物を40μlのプロテインAセファロース・ビーズ(プロテインAセファロースCL−4B、アマシャム社(Amersham))と混合し、15分間インキュベートする。次いでビーズを卓上遠心分離機での遠心分離などの標準技法によって沈殿させ、その後上清を新しいチューブに移す。抗hnRNP K免疫グロブリンを加え、その後溶液を軽く攪拌しながら一晩4℃でインキュベートする。予め平衡状態にしたプロテインAビーズを加え、次いで3時間インキュベートする。ビーズを洗浄し、結合した免疫グロブリン複合体は溶出用緩衝液(25mMのTris−Cl pH7.5、10mMのEDTA、0.5%のSDS)を用いて溶出させる。実施例1に記載したのと同様にDNeasyキット(キアゲン社(Qiagen))を使用して、DNAを抽出する。実施例1および4に記載したようにリアルタイムPCRを使用して、エンハンサーII領域に対して設計したプライマーを使用することによりDNA量を定量化する。この技法は、実施例1および4に示されている。陽性のバンドを、標準的技法を使用してアガロースゲル中に検出する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】コアプロモーターのすぐ上流にある、B型肝炎ウイルスのエンハンサーII(Enh II)領域の位置を概略的に示す図。この領域(図6も参照)はウイルスの複製に関与することが示されている。
【図2】完全長複製型HBV構築物のクローニングを示す図。pBR325に含まれた市販のATCCクローン(上側)は、両端にEcoRI部位を含む。プライマーを設計して、2つの断片:1〜1900および1600〜3215を増幅させた。続いて内部のEcoRI部位(1/3215)を使用したライゲーションによって、連続的なウイルスのオープン・リーディング・フレームを確保した。したがって複製型クローンは、その5’端にプロモーター(1600〜1900)を、およびその3’端に終結領域(1600〜1900)を含むものであった。この構築物をpcDNA3.1のNruI部位にクローニングした。NruIはpCMVプロモーターの外側にあるので、ウイルスの転写はウイルス自身のプロモーターの下で行われる。
【図3】微生物中でのhnRNP KとHBVの同時発現を概略的に示す図。バリアント2またはバリアント3の完全長hnRNP K遺伝子をコードする1.4kbのRT−PCR断片を、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1(インビトロゲン社(Invitrogen))にクローニングした。hnRNP Kバリアント2および3のクローンは、HepG2細胞から抽出した全RNAから得たものである。クローニングした配列は、ヌクレオチド501位にシトシンの代わりにチミンを含むこと以外は、バリアント2および3についてそれぞれGenebank受託番号NM_031262、およびNM_031263に対応した。hnRNP K発現構築物を、HBVの完全長複製型クローンと共にHepG2細胞にコトランスフェクションして、HBV構築物の複製効率に対するhnRNP Kの影響を決定した。
【図4】組換え微生物(図3)におけるHBVの増幅に対するhnRNP Kの促進効果を示す図。HepG2細胞を、感染性の完全長複製型HBV、hnRNP KおよびpcDNA3.1でトランスフェクションした。細胞を48時点でハーベストした後にゲノムDNAを抽出して、HBV DNAウイルス負荷を測定した。「+」および「++」は、それぞれ3μgおよび6μgのプラスミドDNAをトランスフェクションに用いたことを示す。
【図5A】高ウイルス性(Hi)のHBVと低ウイルス性(Lo)のHBVとの間の明確な分離は、ヌクレオチド1752位における変化と相関関係があることを示す図。患者のHBV DNA力価レベルに対応する、ヌクレオチド1720〜1769のDNA配列のデータを示す。合計60の患者について照合し、DNAを血清から単離し、2回のPCRで増幅させた。PCR産物を精製し直接塩基配列決定して、産物の同一性を確認した。配列の結果をアラインメントして比較した。
【図5B】高ウイルス性(Hi)のHBVと低ウイルス性(Lo)のHBVとの間の明確な分離は、ヌクレオチド1752位における変化と相関関係があることを示す図。患者のHBV DNA力価レベルに対応する、ヌクレオチド1720〜1769のDNA配列のデータを示す。合計60の患者について照合し、DNAを血清から単離し、2回のPCRで増幅させた。PCR産物を精製し直接塩基配列決定して、産物の同一性を確認した。配列の結果をアラインメントして比較した。
【図6】HBVのエンハンサーII領域の配列を示す図。感染したドナーにおける血清中HBV DNAのレベルの変化と関係があるとして同定された点突然変異の位置に印をつけてある。エンハンサー活性に関する最小配列はすでに、NCBI受託番号NC_003977で公開されたように、HBVゲノムのヌクレオチド1687〜1805位に定義されている(イー ジェーケー(Yee JK)、Science 246、1989、658〜661;ワン ワイら(Wang Y et al.)、J Virol. 64(8)、1990、3977〜3981;ユー シーエイチ、ティング エルピー(Yuh CH、Ting LP)、J Virol. 64(9)、1990、4281〜4287)。このエンハンサーのバリアントは、in vivoでのHBVの低複製率と以前から関係づけられている(ウチダ ティーら(Uchida T et al.)、Microbiol Immunol 38、1994、281〜285)。初期の刊行物の幾つかは、前記NCBI受託番号の配列を参照していないので、ヌクレオチドの計数え方が幾分ずれている。
【図7】1752位にアデニンの代わりにグアノシン、チミジンおよびシチジンを有する3つのHBV構築物の作製について概略的に示す図。部位特異的突然変異誘発をエンハンサーII領域のヌクレオチド1752について行い(1752A、1752G、1752Tおよび1752C)、増幅させた断片を、エンハンサーを含まないルシフェラーゼ・ レポーター・ ベクター中のSV40プロモーターの上流に挿入した。
【図8】対照測定に使用した、ヌクレオチド1752位にアデニンと異なる塩基を含むHBVバリアントまたはその断片を発現する細胞中の発現活性のレベルを示す図。発現レベルは、エンハンサーII(NCBI受託番号NC_003977のヌクレオチド1686〜1801位)、サルウイルス40(SV40)プロモーター、およびルシフェラーゼ遺伝子を含むベクターを発現する細胞のルシフェラーゼ活性によって表される(実施例2参照)。対応する値を第3列に示し(「A」)、1752位にグアニン、チミンまたはシトシン(「G」、「T」および「C」)を有するエンハンサーIIを含むベクターを発現する細胞の値と比較している。1752位にアデニンを含まない構築物は、SV40プロモーターにcis結合させると該プロモーターを最小限〜弱く促進し、その結果1752Aを含むエンハンサーと比較して低いレベルのルシフェラーゼ発現をもたらす。第1列は、SV40プロモーター配列およびエンハンサー配列を含むベクターを使用し、最適なルシフェラーゼ発現がもたらされた内標準陽性対照のルシフェラーゼ活性を表す(第1列、「+」)。第2列(「−」)は内標準陰性対照のルシフェラーゼ活性を示し、該対照は、SV40プロモーター−ルシフェラーゼ遺伝子のみを含むがエンハンサー要素は含まないベクター自体のクローニングを行ったものである。いずれもヒト肝細胞癌に由来する4つの異なる細胞株、HepG2、PLC/PRF/5(この図では「PP5」と略記)、SKHep1およびHCCMを使用した。HCCMおよびPLC/PRF/5にはHBVゲノムのコピーが組込まれており、HepG2およびSK−Hep1−は、HBV感染の病歴およびHBVゲノムの組込みのない患者から得た。それぞれのエンハンサーIIクローン(1752A、1752G、1752Tおよび1752C)を用いて細胞を一過的にトランスフェクションした。それぞれのトランスフェクションでは、3μgのDNAを1μgの対照/プロモーター−ルシフェラーゼDNAと共にトランスフェクションし、48時間の時点で採取し、次にルシフェラーゼ活性の分析値を、発光測定装置を用いて決定した相対光量値(RLU)として測定した。ルシフェラーゼ・アッセイの結果は、内標準陽性対照のレベル(適宜100%に設定)に対して標準化した。
【図9A】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図9B】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図9C】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図9D】hnRNP Kの既知のバリアントのアミノ酸配列および対応するコードcDNA配列を示す図(バリアント1、2および3のGenebank受託番号は、それぞれNM_002140、NM_031262、およびNM_031263である)。バリアント3とバリアント1は、コード領域ではなく5’非翻訳領域(UTR)が異なっているので、一方のみを示す。バリアント2は、他の2つの既知バリアントと比較してコード領域の端部に60塩基の欠失を有し、その結果フレーム・シフトがもたらされている。したがって、そのC末端は他の2つのバリアントとは異なっている。この2つのバリアントの間の機能的差異に関する比較検討はこれまで報告されていない。
【図10】hnRNP K遺伝子の1ヌクレオチド多型(SNP)の形で天然に存在するバリアントを示す図。18人の正常なボランティアから、hnRNP K完全長cDNAをクローニングおよび塩基配列決定した。表に全ての確認された変化が列挙されている。被験体5,6,7および14〜18由来のDNAサンプルは、公開されているhnRNP Kの配列(いずれもバリアント3、図9と比較されたい)と比べていかなる変化も含んでおらず、したがって表中には挙がっていない。nt252において、C→Tの変化を含む新規のSNP(被験体9および10)が同定されたが、同義コドンではない。2つの異なるサンプル(被験体11および12)において欠失が観察され、KH3ドメインのすぐ上流に15塩基の欠失が見られた(nt1108〜nt1122、nt:ATGATTATTCCTATG、配列番号1)。
【図11】これまでに同定されたhnRNP K遺伝子の1ヌクレオチド多型(SNP)を要約する図。図10に示す得られた結果以外に、hnRNP K遺伝子のSNPを、Ensemblデータベース(www.ensembl.org )およびCeleraデータベースから抽出した。dbSNPからはわずか2つのSNPしか報告されておらず、該SNPはいずれも確認されていない。さらに、非翻訳領域(UTR)およびイントロン領域における幾つかのSNPが、公開データベース中に報告されているが、いずれも確認されていない(結果は示さない)。
【図12】hnRNP KおよびHBVのバリアント間の複合体形成に関する、2つの構成成分の用量依存性の例を示す図。トランスフェクションに一定量のHBV DNAを使用した場合、HBVウイルス力価は、hnRNP K濃度と共に一定地点まで用量依存的に増大し、バリアント2と3の間に有意な機能上の違いはない。対照として、空の発現ベクターpcDNA3.1は、HBVウイルス力価に対していかなる影響も有していない。ヌクレオチド1752位にアデニンとは異なる塩基を含むHBVバリアントは、1752Aバリアント(左側)と比較するとHBV DNAが68〜80%減少しており、HBV複製レベルの低下が示されている。それにもかかわらず、hnRNP Kの用量を増大させると、他の3つのバリアントの複製効率を増大させることが可能である。HepG2細胞を、図に示すように、完全長複製型HBVクローンである1752A、1752ΔG、1752ΔTおよび1752ΔCと、用量を増大させた(50、250および1250ng/ml)hnRNP Kバリアント2(v2)またはバリアント3(v3)とでコトランスフェクションした。トランスフェクション後48時間で細胞をハーベストした後、ゲノムDNAを抽出し、HBV DNAウイルス負荷をリアルタイムPCRによって測定した。トランスフェクションは2連で行い、標準偏差を示す。
【図13】(A)hnRNP K中の全17個のチロシン(Y)残基を示す図。hnRNP Kはin vivoでリン酸化されている(デジガルド ケーら(Dejgaard K et al.)、J.Mol.Biol. 236(1)、1994、33〜48)。hnRNP Kと幾つかのRNA分子およびDNA分子との結合は、チロシン残基のリン酸化によって刺激され得る(オストロビスキー ジェーら(Ostrowski J et al.)、Proc Natl Acad Sci USA、98(16)、2001、9044〜9049)。3個のチロシン残基(印の付いているY72、Y449およびY458)は、Kホモロジー(KH)ドメイン内に位置するので、特にHBVとの複合体形成と関係がある可能性が高い。これらの領域は、hnRNP Kタンパク質と核酸との相互作用に関与しているとして確認されている。 (B)チロシン残基の部位特異的突然変異誘発(Y→F)を示す図。KH1ドメインおよびKH3ドメイン中のチロシン残基が、リン酸化できないフェニルアラニン(F)に置換されている。矢印は該当するアミノ酸の位置を示し、これらのアミノ酸はそれぞれの突然変異体M1〜M4において(YからFに)交換されている。
【図14】hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを変化させる化合物によって達成可能な調節効果を示す図。化合物によってリン酸化レベルを変える代わりに、チロシン残基をフェニルアラニンに突然変異させることによって特定のチロシン残基のリン酸化を抑制した(図13B参照)。このことは、該当部位、すなわちKHドメインKH1およびKH3の残基Y72、Y449およびY458におけるリン酸化を選択的に阻害する化合物を使用することに相当すると考えられる。HepG2細胞を、HBV複製型クローン1752Aおよびそれぞれの突然変異体と共にコトランスフェクションした。「−」は、HBV複製型クローン1752Aと、対照の役割を果たす空の発現ベクターpcDNA3.1とのコトランスフェクションを示す。HBVウイルス力価は、hnRNP Kのバリアント2と共にコトランスフェクションすると約2.5倍増大し、バリアント3と共にコトランスフェクションすると約2倍増大する。ある特定の部位のチロシンの代わりにフェニルアラニンを含む(図17AおよびB参照)幾つかのhnRNP Kバリアント2突然変異体は、HBVウイルス力価の低下を示した。これらのデータは、KH3ドメイン中の残基Y449およびY458が、hnRNP Kすなわち一本鎖DNAとの結合を担うとして以前に同定された領域(ブラッドック ディーティーら(Braddock DT et al.)、EMBO J 21(13)、2002、3476〜3485;バッケ ピーエイチら(Backe PH et al.)、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60(Pt4)、2004、784〜787)の制御において、重要である可能性があることを示している。したがって、これらの突然変異体によるHBVウイルス負荷の調節は、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成がhnRNP Kのリン酸化により影響を受けることを示している。これらのデータは、hnRNP Kのバリアント2および3とHBVとの間の複合体形成における幾つかの違いも反映している可能性がある。
【図15】hnRNP KとHBVとの間の複合体形成を調節する抗EGFR免疫グロブリンの同定に関する1例を示す図。一群の異なる抗EGFR免疫グロブリン(シグマ社(Sigma)、アナスペック社(AnaSpec)、リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics))を並べて、HBV1752A複製型構築物を用いてトランスフェクションした2つの異なる肝細胞株、HepG2およびHuh7に関して試験した(図2参照)。Lipofectamine2000を使用して、4μgのプラスミドDNAをトランスフェクションした。トランスフェクション6時間後に、抗EGFR免疫グロブリン群を、製造者の推奨に従い以下の濃度で、すなわちAb1(アナスペック社(AnaSpec)、カタログ番号29615)を11μg、Ab2(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRabS)を21.5μg、Ab3(リサーチ・ダイアグノスティック社(Research Diagnostics)、カタログ番号RDI−EGFRCabrX)を2.3mg、およびAb4(シグマ社(Sigma)、カタログ番号A204)を5μg加えた。免疫グロブリンの新たな等分試料をトランスフェクション24時間後に加え、阻害効果を増大させた。トランスフェクション48時間後に細胞をハーベストし、ゲノムDNAを抽出し、HBVウイルス負荷を測定した。免疫グロブリンの1つ(Ab2)は、いずれの細胞株においても3倍を超えてHBVウイルス力価を低下させることができた。このことは、この免疫グロブリンが、hnRNP Kタンパク質のリン酸化をもたらすEGF受容体のシグナル伝達を阻害することが可能であることを示している。
【図16】図17に示すhnRNP KとHBVとの間の複合体形成の調節のための、小さな干渉RNA(siRNA)の選択を示す図。hnRNP Kに対するsiRNA二重鎖は、3つの異なる製造業者、ダーマコン社(Dharmacon)(SmartPool(登録商標)、「供給元A」)、キアゲン社(Qiagen)(「供給元B」)およびプロリゴ社(Proligo)(「供給元C」)から購入した。供給元B(キアゲン社(Qiagen))のsiRNA分子の第1の配列は、GCAGUAUUCUGGAAAGUUU(配列番号2)であった。この配列は、ヌクレオチド1366〜1386位(図16では「標的2」で表す)における標的配列AAGCAGTATTCTGGAAAGTTT(配列番号3)から作製した。供給元Bの第2の配列は、ヌクレオチド688〜708位(図16では「標的1」で表す)における標的配列TACGATGAAACCTATGATTAT(配列番号5)から作製した、CGAUGAAACCUAUGAUUAU(配列番号4)であった。供給元C(プロリゴ社(Proligo))のsiRNA分子の第1の配列は、標的配列AACTTGGGACTCTGCAATAGA(配列番号7)から作製した、CUUGGGACUCUGCAAUAGATT(配列番号6)であった。この標的配列は、ヌクレオチド1029〜1049位(図16中では「標的3」)に対応する。供給元Cの第2の配列、GAAUAUUAAGGCUCUCCGUTT(配列番号8)は、ヌクレオチド187位(図20では「標的1」)の標的配列AAGAATATTAAGGCTCTCTCCGT(配列番号9)から作製した。最後に、供給元Cの配列AGGACGUGCACAGCCUUAUTT(配列番号10)は、ヌクレオチド655〜675位(図16では「標的2」)における標的配列AAAGGACGTGCACAGCCTTAT(配列番号11)から作製した。
【図17】小さな干渉RNA(siRNA)による、hnRNP KとHBVとの間の複合体形成の調節の1例を示す図。 (I、上段)HepG2細胞を、hnRNP KのsiRNA(2μg、図16参照)とともに、またはsiRNAを含めずに1752A完全長複製型HBVクローンでコトランスフェクションした。標的化していない(「非標的」)およびラミンA/C(「ラミン」)のsiRNAを、対照として使用した。hnRNP Kの発現を、siRNAトランスフェクション後48時間で測定した。最初の2列は、トランスフェクションしていない細胞および非標的siRNAでトランスフェクションした細胞を表す。白色の列は、HBVおよびラミンA/CのsiRNAでコトランスフェクションした細胞を表す。右側の列は、HBVおよびhnRNP KのsiRNA(A:ダーマコン社(Dharmacon)、B:キアゲン社(Qiagen)、C:プロリゴ社(Proligo))でコトランスフェクションした細胞を表す。 (II、中段)HBVウイルス負荷を、上記(I)と同様にトランスフェクションした細胞においてリアルタイムPCRで定量化した。 (III、下段)ラミンA/Cの発現を、リアルタイムPT−PCRで測定した。トランスフェクションしていない細胞を100%として比率を標準化した。結果は2つの独立のサンプルを表すものであり;平均値の標準誤差を示してある。定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって測定したhnRNP KのmRNAレベルは、トランスフェクションしていない細胞、非標的siRNAおよびラミンA/C siRNAの対照に対して、30%の低下を示している。これに対してHBVウイルス負荷は、製造業者BおよびCからのsiRNAを使用すると50%低下したが、製造業者AからのsiRNAでは15%低下した。
【図18】電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)における、HBVのDNA断片とhnRNP Kタンパク質との間の複合体形成のin vitro測定を示す図。28量体オリゴヌクレオチド・プローブを1752Aまたは1752Gヌクレオチドを含むように設計し、対照プローブは隣接する上流配列から選択した。4つのそれぞれのプローブを用いて、HepG2核抽出物を使用してEMSAを行った。プローブ1(配列番号12):レーン1〜4;プローブ2(配列番号13、A1752):レーン5〜8;プローブ3(配列番号14):レーン9〜12;プローブ4(配列番号15、G1752):レーン13〜16。それぞれの組のプローブは、漸増濃度(0.0μg、0.05μg、0.10μgおよび0.15μg)の、非特異的な競合DNA[ポリ−(dI)−ポリ−(dC)]をそれぞれ含む。この競合DNAは、非特異的タンパク質の標識プローブへの結合を最小限にするために含める。DNA−タンパク質複合体は、遊離DNA分子とは異なる速度で移動する。したがってhnRNP Kの結合は、HBV DNAプローブとは異なる移動度のシグナルによって示される。その後、複合体中の第2の構成成分としてのhnRNP Kの存在を、図19中に示すのと同様の分析によって確認することが可能である。hnRNP Kを1752Aプローブを使用して検出し(プローブ2、レーン5〜8)、これより弱い同様のサイズのバンドを1752Gプローブを使用して検出した(プローブ4、レーン13〜16)。バンドの濃度分析から、プローブ2によって検出されたタンパク質が、プローブ4によって検出されたタンパク質より約300%高い濃度であることが示され、1752AプローブはhnRNP Kに関してより高い結合親和性を有することが示唆された。
【図19】HBVと細胞タンパク質との間の複合体形成の確認を示す図。HepG2細胞から得た40μgの核タンパク質抽出物を、2:1(w/w)の割合の非特異的な競合DNAであるポリ(dI−dC)の存在下で、5mgのDynabeads(登録商標)M−280ストレプトアビジン−ビオチン−オリゴヌクレオチドに結合させた。非結合タンパク質を洗浄除去し、結合タンパク質は溶出させて18cmでpH3〜10の非線形のImmobiline(商標)Drystrip(商標)に載せた。再水和を一定電圧(50V)で一晩行った。1次元目の等電点電気泳動の後、2次元目のSDS−PAGE(10%)における垂直方向の分離を実施した。銀染色によって検出された特異的タンパク質スポットの推定分子量を示す(矢印)。銀染色は、約56kDaの分子量で特異的タンパク質スポットが現れたことも明らかにした。
【図20】細胞タンパク質の同定を示す図。特異的タンパク質スポットを切り出し、製造者の教示書に従って脱染色した後、ゲルプラグをヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシンで消化した。トリプシン分解質量マップを、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI)によって得た。ペプチド断片の配列クエリを、LC/MS/MS分析を使用することによりプロテオミック・リサーチ・サービス社(Proteomic Research Services、Inc)において行った(http://www.proteomicresearchservices.com/ )。得られた21個の塩基配列決定したペプチドの結果を示す。56kDaタンパク質の配列アラインメントから、hnRNP Kタンパク質に対する相同性スコアが高いことが明らかとなった。さらに、分析したタンパク質の分子質量は、hnRNP Kタンパク質の分子質量と一致した。
【図21】既知のhnRNP Kバリアントのアミノ酸配列(図9も参照されたい)およびMALDIペプチド質量マッピングによって割り当てられたトリプシン分解ペプチドによって調査した各領域(囲み部分)を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節からなる、肝炎ウイルスに感染した宿主生物中の肝炎ウイルスの負荷を変化させるための方法。
【請求項2】
前記ウイルスが、マウス肝炎ウイルス、ウッドチャック肝炎ウイルス、ジリス肝炎ウイルス、北極ジリスB型肝炎ウイルス、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)、アヒルB型肝炎ウイルス、サギB型肝炎ウイルス、ツクシガモB型肝炎ウイルス、ハクガンB型肝炎ウイルス、ヒメハクガンB型肝炎ウイルス、コウノトリB型肝炎ウイルス、ウーリー・モンキーB型肝炎ウイルス、オランウータン・ヘパドナウイルス、GBウイルスB、およびヒトC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
宿主生物が微生物または哺乳動物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物がラット、マウス、リス、ハムスター、ウッドチャック、オランウータン、ウーリー・モンキー、チンパンジー、タマリン(saguinus oedipus)、マーモセットおよびヒトからなる群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複合体形成の調節を細胞内のヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片のバリアントの総量を変えることによって行う、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成を調節する化合物を投与することからなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
制御領域がヘパドナウイルスのエンハンサーIIである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
エンハンサーII領域がB型肝炎ウイルスゲノムの1554〜1645位を含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスがヒトB型肝炎ウイルスである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複合体形成を調節する適切な化合物を同定するためのin vivoの方法である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成を調節する適切な化合物を投与することからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
宿主生物中の肝炎ウイルス粒子の数を経時的に測定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
得られた結果と対照の測定結果とを比較することをさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対照の測定が、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上
の制御領域との複合体形成を調節しない化合物の使用からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
肝炎ウイルスがヒトB型肝炎ウイルスであり、制御領域がエンハンサーIIであり、対照の測定がウイルス配列の1752位にアデニンを含まないHBVバリアントを使用することからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
宿主生物がhnRNP Kタンパク質またはその機能断片を発現する組換え微生物である、請求項1乃至3および5乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
微生物が肝臓組織由来の細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
細胞が肝細胞株または肝芽腫細胞株であるか、あるいは肝細胞株または肝芽腫細胞株に由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞株がHepG2、Hep3B、HCCM、PLC/PRF/5、Sk−Hep−1、Snu182、HuH−6またはHuH−7からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
hn RNPKタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスの前記制御領域との複合体形成を核酸分子によって低下させる、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
核酸分子がRNAまたはDNAである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
核酸分子がアプタマー、マイクロRNA(miRNA)分子または小さな干渉RNA(siRNA)分子である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
核酸分子が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8または配列番号10の配列からなるsiRNA分子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスの制御領域との相互作用を、細胞成分のリン酸化状態を調節する化合物によって調節する、請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
化合物がhnRNP Kタンパク質またはその機能断片のリン酸化レベルを変化させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
化合物がhnRNP Kタンパク質またはその機能断片の細胞内の量を変化させる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
化合物が細胞表面の分子のアゴニストまたはアンタゴニストである、請求項24乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
細胞表面の分子が受容体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
受容体が受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、またはGタンパク質共役受容体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
受容体が血小板由来増殖因子の受容体、エリスロポイエチンの受容体、腫瘍壊死因子の受容体、白血病抑制因子の受容体、インターフェロンの受容体、インスリンの受容体、イ
ンスリン様増殖因子の受容体、インターロイキンの受容体、繊維芽細胞増殖因子の受容体、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子の受容体、形質転換増殖因子の受容体、または表皮増殖因子の受容体である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アゴニストまたはアンタゴニストがタンパク質である、請求項27乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
タンパク質がリポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、免疫グロブリン、または受容体チロシンキナーゼに対して結合性のアンキリン骨格またはクリスタリン骨格に基づくタンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と、エンハンサーII領域を含む肝炎ウイルスまたはその機能断片との間の複合体の形成を変化させることが可能な化合物を同定するin vitroの方法であって、前記複合体を形成する構成成分を互いに接触させることからなる方法。
【請求項34】
(a)前記hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上のエンハンサーII制御領域との複合体形成を調節する化合物を試験管に加えること、および
(b)前記複合体形成を検出すること
からなる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
検出が適切な分光法、光化学法、光度測定法、蛍光測定法、放射線法、酵素法または熱力学法によって行われるか、あるいは細胞の作用に基づく、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
光化学法が架橋反応からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
分光法が蛍光相関分光法の使用からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
光度測定検出法が、光学的に検出可能な標識の使用からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
放射線検出法が放射活性標識の使用からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
電気泳動移動度シフトアッセイの使用からなる、請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
B型肝炎ウイルスのDNA配列のエンハンサーII領域からなる少なくとも2つの核酸分子であって、その1つが前記配列の1752位にアデニンを含まない核酸分子を使用することからなる、請求項33乃至40のいずれかに記載の使用。
【請求項42】
1752位にアデニンを含まない核酸分子を対照の測定用に使用する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスとの複合体形成を阻害することから肝炎感染の治療に有用な可能性のある化合物をin vitroでスクリーニングするための請求項33乃至42のいずれか1項に記載の方法であって、自動ワークステーションを使用するマルチウェル・マイクロプレート上での化合物ライブラリーの同時スクリーニングからなる方法。
【請求項44】
肝炎感染がHBVによって引き起こされる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
肝炎感染を治療するための医薬品を製造するための化合物の使用であって、化合物が、アプタマー、マイクロRNA分子、小さな干渉RNA分子、細胞中のhnRNP Kタンパク質の絶対量を調節する化合物、hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを調節する化合物、および細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択され、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節によってウイルスの負荷が変化することを特徴とする使用。
【請求項46】
細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストが、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、免疫グロブリン、または受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、もしくはGタンパク質共役受容体に対して結合性のアンキリン骨格もしくはクリスタリン骨格に基づくタンパク質である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
肝炎感染を治療するための医薬品を製造するための、請求項8乃至44のいずれか1項に記載の方法によって同定される化合物の使用であって、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節によってウイルスの負荷が変化することを特徴とする使用。
【請求項48】
肝炎感染がHBVによって引き起こされる、請求項45乃至47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
アプタマー、マイクロRNA分子、小さな干渉RNA分子、細胞中のhnRNP Kタンパク質の絶対量を調節する化合物、hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを調節する化合物、および細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択される化合物の、肝炎感染を診断するための組成物を製造するための使用。
【請求項50】
細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストが、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、免疫グロブリン、または受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、もしくはGタンパク質共役受容体に対して結合性のアンキリン骨格もしくはクリスタリン骨格に基づくタンパク質である、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
肝炎感染を診断するための組成物を製造するための、請求項8乃至44のいずれか1項に記載の方法によって同定される化合物の使用。
【請求項52】
肝炎感染を評価する際に使用するためのキットまたは組成物を製造するための核酸分子の使用であって、核酸分子が、B型肝炎ウイルスのDNA配列のエンハンサーII領域からなる少なくとも2つの核酸分子であって、その1つが前記配列の1752位にアデニンを含まないことを特徴とする使用。
【請求項1】
ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節からなる、肝炎ウイルスに感染した宿主生物中の肝炎ウイルスの負荷を変化させるための方法。
【請求項2】
前記ウイルスが、マウス肝炎ウイルス、ウッドチャック肝炎ウイルス、ジリス肝炎ウイルス、北極ジリスB型肝炎ウイルス、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)、アヒルB型肝炎ウイルス、サギB型肝炎ウイルス、ツクシガモB型肝炎ウイルス、ハクガンB型肝炎ウイルス、ヒメハクガンB型肝炎ウイルス、コウノトリB型肝炎ウイルス、ウーリー・モンキーB型肝炎ウイルス、オランウータン・ヘパドナウイルス、GBウイルスB、およびヒトC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
宿主生物が微生物または哺乳動物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
哺乳動物がラット、マウス、リス、ハムスター、ウッドチャック、オランウータン、ウーリー・モンキー、チンパンジー、タマリン(saguinus oedipus)、マーモセットおよびヒトからなる群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複合体形成の調節を細胞内のヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)Kまたはその機能断片のバリアントの総量を変えることによって行う、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成を調節する化合物を投与することからなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
制御領域がヘパドナウイルスのエンハンサーIIである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
エンハンサーII領域がB型肝炎ウイルスゲノムの1554〜1645位を含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスがヒトB型肝炎ウイルスである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複合体形成を調節する適切な化合物を同定するためのin vivoの方法である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成を調節する適切な化合物を投与することからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
宿主生物中の肝炎ウイルス粒子の数を経時的に測定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
得られた結果と対照の測定結果とを比較することをさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対照の測定が、hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上
の制御領域との複合体形成を調節しない化合物の使用からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
肝炎ウイルスがヒトB型肝炎ウイルスであり、制御領域がエンハンサーIIであり、対照の測定がウイルス配列の1752位にアデニンを含まないHBVバリアントを使用することからなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
宿主生物がhnRNP Kタンパク質またはその機能断片を発現する組換え微生物である、請求項1乃至3および5乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
微生物が肝臓組織由来の細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
細胞が肝細胞株または肝芽腫細胞株であるか、あるいは肝細胞株または肝芽腫細胞株に由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞株がHepG2、Hep3B、HCCM、PLC/PRF/5、Sk−Hep−1、Snu182、HuH−6またはHuH−7からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
hn RNPKタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスの前記制御領域との複合体形成を核酸分子によって低下させる、請求項1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
核酸分子がRNAまたはDNAである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
核酸分子がアプタマー、マイクロRNA(miRNA)分子または小さな干渉RNA(siRNA)分子である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
核酸分子が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8または配列番号10の配列からなるsiRNA分子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスの制御領域との相互作用を、細胞成分のリン酸化状態を調節する化合物によって調節する、請求項1乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
化合物がhnRNP Kタンパク質またはその機能断片のリン酸化レベルを変化させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
化合物がhnRNP Kタンパク質またはその機能断片の細胞内の量を変化させる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
化合物が細胞表面の分子のアゴニストまたはアンタゴニストである、請求項24乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
細胞表面の分子が受容体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
受容体が受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、またはGタンパク質共役受容体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
受容体が血小板由来増殖因子の受容体、エリスロポイエチンの受容体、腫瘍壊死因子の受容体、白血病抑制因子の受容体、インターフェロンの受容体、インスリンの受容体、イ
ンスリン様増殖因子の受容体、インターロイキンの受容体、繊維芽細胞増殖因子の受容体、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子の受容体、形質転換増殖因子の受容体、または表皮増殖因子の受容体である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アゴニストまたはアンタゴニストがタンパク質である、請求項27乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
タンパク質がリポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、免疫グロブリン、または受容体チロシンキナーゼに対して結合性のアンキリン骨格またはクリスタリン骨格に基づくタンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と、エンハンサーII領域を含む肝炎ウイルスまたはその機能断片との間の複合体の形成を変化させることが可能な化合物を同定するin vitroの方法であって、前記複合体を形成する構成成分を互いに接触させることからなる方法。
【請求項34】
(a)前記hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスゲノム上のエンハンサーII制御領域との複合体形成を調節する化合物を試験管に加えること、および
(b)前記複合体形成を検出すること
からなる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
検出が適切な分光法、光化学法、光度測定法、蛍光測定法、放射線法、酵素法または熱力学法によって行われるか、あるいは細胞の作用に基づく、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
光化学法が架橋反応からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
分光法が蛍光相関分光法の使用からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
光度測定検出法が、光学的に検出可能な標識の使用からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
放射線検出法が放射活性標識の使用からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
電気泳動移動度シフトアッセイの使用からなる、請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
B型肝炎ウイルスのDNA配列のエンハンサーII領域からなる少なくとも2つの核酸分子であって、その1つが前記配列の1752位にアデニンを含まない核酸分子を使用することからなる、請求項33乃至40のいずれかに記載の使用。
【請求項42】
1752位にアデニンを含まない核酸分子を対照の測定用に使用する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
hnRNP Kタンパク質またはその機能断片と肝炎ウイルスとの複合体形成を阻害することから肝炎感染の治療に有用な可能性のある化合物をin vitroでスクリーニングするための請求項33乃至42のいずれか1項に記載の方法であって、自動ワークステーションを使用するマルチウェル・マイクロプレート上での化合物ライブラリーの同時スクリーニングからなる方法。
【請求項44】
肝炎感染がHBVによって引き起こされる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
肝炎感染を治療するための医薬品を製造するための化合物の使用であって、化合物が、アプタマー、マイクロRNA分子、小さな干渉RNA分子、細胞中のhnRNP Kタンパク質の絶対量を調節する化合物、hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを調節する化合物、および細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択され、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節によってウイルスの負荷が変化することを特徴とする使用。
【請求項46】
細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストが、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、免疫グロブリン、または受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、もしくはGタンパク質共役受容体に対して結合性のアンキリン骨格もしくはクリスタリン骨格に基づくタンパク質である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
肝炎感染を治療するための医薬品を製造するための、請求項8乃至44のいずれか1項に記載の方法によって同定される化合物の使用であって、hnRNP Kタンパク質と肝炎ウイルスゲノム上の制御領域との複合体形成の調節によってウイルスの負荷が変化することを特徴とする使用。
【請求項48】
肝炎感染がHBVによって引き起こされる、請求項45乃至47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
アプタマー、マイクロRNA分子、小さな干渉RNA分子、細胞中のhnRNP Kタンパク質の絶対量を調節する化合物、hnRNP Kタンパク質のリン酸化レベルを調節する化合物、および細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストからなる群から選択される化合物の、肝炎感染を診断するための組成物を製造するための使用。
【請求項50】
細胞のキナーゼまたはホスファターゼの制御を誘導することが可能な細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストが、リポカリンファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ、免疫グロブリン、または受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ活性を有する膜受容体、もしくはGタンパク質共役受容体に対して結合性のアンキリン骨格もしくはクリスタリン骨格に基づくタンパク質である、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
肝炎感染を診断するための組成物を製造するための、請求項8乃至44のいずれか1項に記載の方法によって同定される化合物の使用。
【請求項52】
肝炎感染を評価する際に使用するためのキットまたは組成物を製造するための核酸分子の使用であって、核酸分子が、B型肝炎ウイルスのDNA配列のエンハンサーII領域からなる少なくとも2つの核酸分子であって、その1つが前記配列の1752位にアデニンを含まないことを特徴とする使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図21】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−520461(P2007−520461A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545300(P2006−545300)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000368
【国際公開番号】WO2005/059138
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506205103)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (26)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000368
【国際公開番号】WO2005/059138
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506205103)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (26)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】
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