説明

肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法

【課題】 本発明は、これまで廃棄されていた蒸留粕を有効利用し、木材チップ又はバガス又はホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモの発酵を促進させるために必要な水分調整を蒸留粕で行うことで、環境に対して負荷を与えることを回避しつつ効率的且つ安価に処理し、栄養価の高い肥料又は飼料又は赤土流出防止剤を提供することを課題とする。また、ドラム式乾燥機を使用し温度と圧力を調整する事で短期間で製造を行う事で安価に処理し、栄養価の高い肥料又は飼料又は赤土流出防止剤を製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 少なくとも蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕を1〜80%と木材チップ20〜99%で混合し、ドラム式乾燥機で、40℃〜120℃内に加熱し、5分〜12時間加熱攪拌し、発酵させることを特徴とする肥料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕を原料として、木材チップ、バガスなど用いた肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留酒の製造に伴って副生する蒸留残渣(以下、蒸留粕と称する〉は、従来、海洋投棄,農地還元,飼料としての再利用等の手段によって処理されてきた。これらの処理法のうち、海洋投棄は環境保護の観点から問題視されており、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」の改正等によって、その規制が強化されつつある。蒸留酒製造業者は、各種の処理設備又は処理装置を導入して海洋投棄を回避する努力を続けているものの、蒸留酒の需要増加に伴って蒸留粕の量も増加しており、処理効率の向上や新しい処理方法の確立が望まれている。
【0003】
蒸留粕は水分率が高く粘度の高い懸濁液状物であって、取扱い辛く、大量に処理することが難しい。そこで、一般的な焼酎粕の処理方法においては、最初の工程で圧搾,濾過等の固液分離手段によって、固体分と液体分とに分離される。固体分は水分含有量が低下していて、取扱い易いから、肥料又は飼料として容易に再利用される。一方、液体分は、多量の浮遊物質を含有する酸性懸濁液であって再利用も廃棄も困難であるから、液体分の新しい処理方法の確立は急務である。その一つ方向性として、液体分を加工し、肥料又は飼料として利用することを志向する発明が開示されている。
【0004】
例えば、蒸留酒製造の蒸留工程で発生した蒸留残渣を脱水塊および濾液に固液分離し、該濾液を濃縮して濃縮液および凝縮液に分離抽出し、得られた濃縮液、濃縮液および凝縮液、濃縮液および水または濃縮液、水および酢酸と、チッソ質肥料、リン酸質肥料およびカリ質肥料から選ばれる少なくとも2種とを混合してなることを特徴とする液体肥料、並びに該液体肥料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照〉。
【0005】
醸造粕から得られる液を、セルラーゼを主成分とし、キシラナーゼを含有する酵素により処理した後、濃縮することを特徴とする、醸造粕濃縮物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照〉。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開2004−338974号公報
【特許文献2】特開2004−298023号公報
【特許文献3】特開2009−51709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に記載の肥料又は飼料の製造方法は、何れも濃縮のための加熱が必要であり、多量の燃料又はエネルギーを必要とする。貴重な資源である燃料又はエネルギーを消費し、大気汚染や温室効果等の原因となり得るガスを排出する方法であるから、焼酎粕を資源として有効活用する目的を掲げながら却って環境への負荷を増す矛盾を生じている。また、燃料又はエネルギーを多量に消費するから、多額の処理費用が必要である。
【0007】
特許文献2に記載の醸造粕濃縮物の製造方法は、セルラーゼ及びキシラナーゼを併用することによって、不溶性固体を減少させ濃縮を容易に行うことはできるものの、単離された高価な酵素を用いる必要があり、前記酵素を調達するために甚大な費用を要する。
【0008】
これらの問題点に鑑み、本発明は、これまで廃棄されていた蒸留粕を有効利用し、木材チップ又はバガス又はホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモの発酵を促進させるために必要な水分調整を蒸留粕で行うことで、環境に対して負荷を与えることを回避しつつ効率的且つ安価に処理し、栄養価の高い肥料を提供することを課題とする。また、ドラム式乾燥機を使用し温度と圧力を調整する事で短期間で肥料の製造を行う事で安価に処理し、栄養価の高い肥料を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために本発明の請求項1では、
少なくとも蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕に、木材チップを混合して、発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤である。
【0010】
蒸留粕とは、蒸留酒の製造過程で副生される粕の事で、例えば、泡盛のもろみ、焼酎粕などのでも良い。
【0011】
木材チップとは、木材を破砕したチップの事で、例えば、破砕機で1〜200mm、好ましくは1〜25mmに破砕したもでも良い。
【0012】
また、本発明の請求項2では、
少なくとも蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕に、バガスを混合して、発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤である。
【0013】
バガスとは、サトウキビ搾汁後の残渣の事で、例えば、製糖工場から廃棄されるバガスを使用出来ます。
【0014】
また、本発明の請求項3では、
少なくとも蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕に、ホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモを混合して、発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤である。
【0015】
ホテイアオイとは、単子葉植物ミズアオイ科に属する水草の事であり、ボタンウキクサとは、単子葉植物サトイモ科に属する水面に浮かぶ熱帯性の水草であり、フサモ属とは、アリノトウグサ科の多年生水生植物であり、オオカナダモとは、被子植物門の沈水植物のひとつでトチカガミ科に分類される。
【0016】
また本発明の請求項4では、
糖蜜、油粕類又はその加工食品、穀物類又はその加工食品、豆類又はその加工食品、魚類又はその加工食品、米ぬか、牛糞、鶏糞、豚糞、肉骨粉類、食品廃棄物、乳酸菌、酵母、光合成細菌、糸状菌、放線菌のうち少なくとも1以上を混合して発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤である。穀物類又はその加工食品とはオートミールなどでもよい。豆類又はその加工食品とはオカラなどでもよい。魚類又はその加工食品とはフィッシュミールなどでもよい。食品廃棄物とは飲食店から廃棄される残飯などでもよい。
【0017】
また本発明の請求項5では、
下水汚泥、し尿汚泥、工業汚泥、混合汚泥、焼成汚泥のうち少なくとも1以上を混合して発酵させたことを特徴とする肥料又は赤土流出防止剤である。下水汚泥とは下水道の終末処理場から発生する汚泥のとこである。し尿汚泥とはし尿処理場から発生する汚泥のことである。工業汚泥工場または事業場の排水処理施設から出る汚泥のことである。混合汚泥とは下水汚泥肥料、し尿汚泥肥料または工業汚泥肥料のいずれか二つ以上を混合した汚泥のことである。焼成汚泥とは下水汚泥肥料、し尿汚泥肥料、工業汚泥肥料、混合汚泥肥料を焼いた汚泥のことである。
【0018】
また本発明の請求項6では、
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕と木材チップとを、1〜95%:99〜5%の割合で混合して40℃〜120℃の熱で加熱発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法である。
【0019】
前記の原料の配合において、好ましくは蒸留粕を10〜50%、木材チップ50〜90%が良く、さらに好ましくは蒸留粕を20〜40%、木材チップ60〜80%が良く、加熱温度においては、好ましくは50〜80℃が良い。
【0020】
前記の加熱攪拌時間において、好ましくは1〜8時間が良く、さらに好ましくは1〜5時間がよい。
【0021】
また本発明の請求項7では、
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕とバガスとを、1〜95%:99〜5%の割合で混合して40℃〜120℃の熱で加熱発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法である。
【0022】
前記の原料の配合において、好ましくは蒸留粕を10〜50%、バガス50〜90%が良く、さらに好ましくは蒸留粕を20〜40%、バガス60〜80%が良く、加熱温度においては、好ましくは50〜80℃が良い。
【0023】
前記の加熱攪拌時間において、好ましくは1〜8時間が良く、さらに好ましくは1〜5時間がよい。
【0024】
また本発明の請求項8では、
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕と、ホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモを1〜95%:99〜5%の割合で混合して40℃〜120℃の熱で加熱発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法。
【0025】
前記の原料の配合において、好ましくは蒸留粕を10〜50%、ホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモ50〜90%が良く、さらに好ましくは蒸留粕を20〜40%、ホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモ60〜80%が良く、加熱温度においては、好ましくは50〜80℃が良い。前処理として自然乾燥させたホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモでも良い。
【0026】
前記の加熱攪拌時間において、好ましくは1〜8時間が良く、さらに好ましくは1〜5時間がよい。
【0027】
また本発明の請求項9では、
前記の加熱醗酵は、55.3〜760mmHgに減圧して行うことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法である。
【0028】
前記の圧力において、好ましくは100〜500mmHgが良い。さらに好ましくは200〜300mmHgが良い。
【0029】
また本発明の請求項10では、
前記の加熱醗酵は、回転して攪拌するドラム式乾燥機を用い、前記乾燥機に設けられた蒸気ボイラーから発生する蒸気を利用することを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法である。
【0030】
前記の加熱温度において、好ましくは40℃〜120℃が良い。さらに好ましくは60〜80℃が良い。
【0031】
また本発明の請求項11では、
前記請求項6から請求項10までの何れかの製造方法によって製造されたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤である。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、以下の効果を奏する。
1)水分率の低い木材チップの発酵が早くなり、短期間で肥料又は飼料又は赤土流出防止剤化が行える。
【0033】
2)廃棄されていた蒸留粕のリサイクルが出来る。
【0034】
3)木材チップやバガスやホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモのリサイクルが出来る。
【0035】
4)木材チップやバガスやホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモなどに含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの不溶性食物繊維を含んだ植物を発酵させることで腐植を多く含んだ肥料又は飼料又は赤土流出防止剤を製造する事が出来る。
【0036】
5)これまでセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの不溶性食物繊維の発酵に長期間要した時間をドラム式乾燥機などの装置を用いる事でより数時間で処理することが出来るため発酵期間が大幅に短縮出来る。
【0037】
6)蒸留粕は、腐敗しやすいため再利用が難しいとされてきたが、本発明により短期間で発酵出来るため腐敗による悪臭の心配が要らなくなり環境を守る事が出来る。
【0038】
7)アミノ酸などを含んだもろみの栄養分を肥料又は飼料又は赤土流出防止剤として利用出来る。
【0039】
8)アミノ酸などを含んだもろみには、多くのアミノ酸を含んでいるため、土壌灌水、養液混合、葉面散布などによって、植物の生育のみならず、果実等の生育や旨味の向上等、植物全体の生育にとって良い効果を提供する事が可能である。
【0040】
9)アミノ酸などを含んだもろみには、植物の生育に必要な成分である窒素、リン酸、加里、他微量成分も含んでいるため、植物の生育に一定の効果を提供する事も可能である。
【0041】
10)アミノ酸などを含んだもろみには、これらに含まれる塩分、調理用油、動植物油が植物の生育を阻害するなどの課題を有していたが、透析処理、及び堆肥化、微生物発酵時の作用によって含有量が低減し、なおかつ植物の生育を阻害する事がないため、肥料又は飼料又は赤土流出防止剤又は活力剤などとして十分に利用する事が可能である。
【0042】
11)蒸留粕には麹菌など発酵菌を使用しているため、発酵促進用に新たに菌を購入・追加を行う必要が無く安価に肥料又は飼料又は赤土流出防止剤を製造する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による肥料の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0045】
図1は、本発明による肥料の製造方法を示すフロー図である。
【0046】
1)泡盛もろみと木材チップを混合
泡盛もろみ(30リットル)と木材チップ(100リットル)をドラム式乾燥機に入れて攪拌混合する。泡盛もろみは、崎山酒造廠の泡盛もろみを使用し、木材チップは、有限会社沖縄クリーン工業石川リサイクル工場で製造された木材チップを使用した。
【0047】
2)ドラム式乾燥機の発酵処理
ドラム式乾燥機の加熱温度を70℃に設定し、約4時間加熱攪拌し発酵させドラム式乾燥機から取り出して肥料は完成する。
【0048】
以上のように、泡盛もろみと木材チップを発酵攪拌処理することにより、良質の肥料を製造することができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕に、木材チップを混合して、発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤。
【請求項2】
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕に、バガスを混合して、発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤。
【請求項3】
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕に、ホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモを混合して、発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤。
【請求項4】
糖蜜、油粕類又はその加工食品、穀物類又はその加工食品、豆類又はその加工食品、魚類又はその加工食品、米ぬか、牛糞、鶏糞、豚糞、肉骨粉類、食品廃棄物、乳酸菌、酵母、光合成細菌、糸状菌、放線菌のうち少なくとも1以上を混合して発酵させたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の肥料又は飼料又は赤土流出防止剤。
【請求項5】
下水汚泥、し尿汚泥、工業汚泥、混合汚泥、焼成汚泥のうち少なくとも1以上を混合して発酵させたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の肥料又は赤土流出防止剤。
【請求項6】
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕と木材チップとを、1〜95%:99〜5%の割合で混合して40℃〜120℃の熱で加熱発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法。
【請求項7】
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕とバガスとを、1〜95%:99〜5%の割合で混合して40℃〜120℃の熱で加熱発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法。
【請求項8】
蒸留酒の製造過程で副生される蒸留粕と、ホテイアオイ又はボタンウキクサ又はフサモ属又はオオカナダモを、1〜95%:99〜5%の割合で混合して40℃〜120℃の熱で加熱発酵させたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法。
【請求項9】
前記の加熱醗酵は、55.3〜760mmHgに減圧して行うことを特徴とする請求項6または請求項8に記載の肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法。
【請求項10】
前記の加熱醗酵は、回転して攪拌するドラム式乾燥機を用い、前記乾燥機に設けられた蒸気ボイラーから発生する蒸気を利用することを特徴とする請求項6から請求項9までのいずれかに記載の肥料又は飼料又は赤土流出防止剤の製造方法。
【請求項11】
前記請求項6から請求項10までの何れかの製造方法によって製造されたことを特徴とする肥料又は飼料又は赤土流出防止剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12278(P2012−12278A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162243(P2010−162243)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(305059000)有限会社シンソー (3)
【Fターム(参考)】