胃腸疾患の治療のための標的指向化ジアゾプロドラッグ
患者においてNFkB DNA結合活性を減少させるための化合物、組成物および方法が本願明細書で提示される。当該方法は、炎症性腸疾患(IBD)などの種々の胃腸疾患を低下、緩和または治療するために、治療上有効量の本願の化合物または組成物を投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年6月29日出願の、発明の名称「胃腸疾患の治療のための標的指向化プロドラッグ(Targeting Prodrugs for the Treatment of Gastrointestinal Diseases)」の米国仮出願第60/947,104号の利益を主張する。この米国仮出願の開示は、その全体を本願明細書に援用する。
【0002】
本願は、炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患(これに限定されない)を含めた胃腸疾患の治療のために使用することができる化合物および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物の標的指向化は、特定の臓器、組織または細胞集団への薬物の送達と定義されてもよい(Schreier、2001)。まだその初期段階にあるが、この分野は、全身性の影響または副作用を低下させつつ薬物治療の有効性を増強するという可能性を与える。このアプローチの有望さおよび進行中の努力にもかかわらず、これまで成功例はほとんどない。これは、一部は、薬物輸送および可能性のある標的化ベクターの発現の基礎となる基本的要因の理解が限られていることが原因である。化学薬物の標的指向化は、化学薬物を標的組織で蓄積させる(通常は、生物可逆的な)薬物構造の緻密な改変を含み、プロドラッグからの部位特異的放出は、体内の別のところには存在しない化学的条件または酵素による条件によって誘発される。
【0004】
結腸は、薬物標的指向化アプローチの有効性にとっては重要な課題である。なぜなら、結腸内の条件は、胃腸管(GI)系の別のところで一般的な条件にほぼ類似しており、胃腸管にわたる管腔のpH勾配は、厳密に化学的な有効な局所的な薬物放出にとってはあまりに緩やかである(Bauer、2001)からである。他方、結腸は、結腸自体の病態(炎症性腸疾患(IBD)および結腸癌など)の治療のため、およびオピオイド薬物治療を伴う慢性の便秘の軽減のために重要な薬物標的である。この結腸は、胃腸管の他の領域から吸収されないかまたは十二指腸プロテアーゼの存在下ではあまりに不安定でありそこでは放出されないペプチドおよびタンパク質薬物にとっての入口となり得る部位としても重要である(Saffran、1986;Bai、1995年)。
【0005】
結腸と、部位特異的薬物放出のためのベクターとして利用され得る小腸との1つの重要な差異は、前者のふさふさしたミクロフローラである。ヒトの胃腸管系は、合計生体個体数が1014生物にもなる400〜500種の細菌にとっての生息地である。これは、ヒトの身体を構成する1013個の真核生物細胞と比べると、驚くべきことである。胃腸管は、胃から小腸を通って下りていくにつれて着実に増加する細菌濃度勾配を有し、続いて結腸で大きく増加する。小腸での細菌濃度は、典型的には103〜104CFU ml−1であるが、他方、結腸における濃度は1011〜1012CFU ml−1であり、便の乾燥重量の1/3は細菌からなる(MooreおよびHoldeman、1974および1975;SimonおよびGorbach、1984)。これらの生物は、小腸から入ってくる未消化の物質(特に多糖)を発酵することによってそのエネルギー必要量を満たし、この目的のために、巧妙な多種の酵素(アゾレダクターゼ、グルコシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−キシロシダーゼ、ニトロレダクターゼ、ガラクトシダーゼおよびデアミナーゼなど)を進化させた(Scheline、1973)。
【0006】
細菌性酵素発現のこの突然の増加は、薬物、特にIBDの治療用薬物を結腸に標的指向化する手段として研究されてきた。これらの努力の1つの成功した成果は、5−アミノサリチル酸(5−ASA)1というアゾ系プロドラッグの開発であった(スキーム1)。このプロドラッグは、その親水性および極性のために胃腸管系を無傷で通過し、その後、結腸ミクロフローラと関連したアゾレダクターゼによるアゾリンカーの還元の際に、その5−アミノサリチル酸「ペイロード」を放出する。イプサリジド(ipsalizide)、バルサラジド2(Chanら、1983)、スルファサラジン(原型)およびオルサラジン(olsalazide)3(Willoughbyら、1982)などのこの着想に基づくいくつかの薬物は、IBDの治療のために臨床で使用されている(Green、1998)。
【化1】
【0007】
抗炎症性ステロイドなどの他の薬物の種類の、結腸への標的指向化は、あまり成功していない(SinhaおよびKumria、2001)。逆説的ではあるが、これらの場合に適切な系の必要性はより差し迫っている。何故なら、ステロイドが胃および小腸から容易に吸収されることに起因して経口投与される場合には、ステロイドは多種の全身への副作用を有するからである。慢性炎症性腸疾患は、2つの主要な障害、つまり潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む。これらの状態はともに、下痢、体重減少および重篤になる可能性がありかつ生命を危うくする合併症の形態での重大な病的状態を生じる。欧州での発病率は最高80万人/年と見積もられるが(Logan、1998)、米国での絶対的発病率は約100万人と考えられており、年間15〜30,000の新しい症例が報告されている(DiPirioおよびBowden、1997)。それゆえ、IBDの根元的な病因を解明して新しい療法を開発するため、および既存の薬物療法を改善するためにも、多大な努力がなされてきたことは驚くことではない。これらの努力は、5−ASA誘導体およびステロイドに限られていた。
【0008】
[0001]ステロイドを結腸へと標的指向化するための努力は、特に多い。研究されてきた技術としては、生分解性ポリマー(Basit、2000)、徐放系、pH感受性材料を用いたコーティング、胃腸での圧力制御放出(Huら、1998)および化学薬物標的指向化が挙げられる。
【化2】
【0009】
後者の種類に属するアプローチは、細菌性多糖類プロセッシング酵素のための基質として作用し得る親水性担体をステロイドに結合することを中心に展開してきた(スキーム2)。研究された担体の例としては、グリコシド(例えば4、特許文献1〜7);グルクロニド(Haeberlin、1993;Cui、1994);ポリ−(L−アスパラギン酸)誘導体(Leopold、1995);α、βおよびγ−シクロデキストリン接合体(Yano、2002);ポリマー接合体(例えば5、McLeodら、1994)が挙げられる。これらの設計のいくつかは有望であるが、それらは、これまで限られた成功しか経験していない。これは、一部には、胃腸管の中でのグリコシダーゼの広範な分布に起因し(部位非特異的放出を生じる;SinhaおよびKumria、2001)、および一部の例では、結腸の中での緩慢な放出特性による(いくつかの多糖については最高12時間;Yang、2002)。アゾレダクターゼアプローチの使用の成功は、これまでは、一級芳香族アミンを有する薬物(5−ASAなど)に制限されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Friend D.R.およびChang G.W.、「Drug glycosides:potential prodrugs for colon specific drug delivery」、J.Med.Chem.、1985年、第28巻、51〜57頁
【非特許文献2】Fedorak R.N.、Cui N.、Friend D.R.、Madsen K.L.、Empey L.R.、「A novel colon−specific steroid prodrug enhances sodium chloride absorption in rat colitis」、Am.J.Physiol.、1995年、第269巻(2 Pt l):G210−8頁、PMID:7653560
【非特許文献3】Fedorak R.N.、Haeberlin B.、Empey L.R.、Cui N.、Nolen H. 3rd、Jewell L.D.、Friend DR.、「Colonic delivery of dexamethasone from a prodrug accelerates healing of colitis in rats without adrenal suppression」、Gastroenterology、1995年、第108巻、第6号、1688−99頁、PMID:7768373
【非特許文献4】Friend D.R.、Chow J.J.、Chang G.W.、「Effect of antibiotic pretreatment on glycoside/glycosidase−based colonic drug delivery」、Drug Des Deliv.1990年、第6巻、第4号、311−8頁、PMID:2083030
【非特許文献5】McLeod AD、Fedorak RN、Friend DR、Tozer TN、Cui N.、「A glucocorticoid prodrug facilitates normal mucosal function in rat colitis without adrenal suppression」、Gastroenterology、1994年、第106巻、第2号、405−13頁、PMID: 7507873
【非特許文献6】Nolen H. 3rd、Fedorak R.N.、Friend D.R.、「Budesonide−beta−D−glucuronide: a potential prodrug for treatment of ulcerative colitis」、J Pharm Sci. 1995年、第84巻、第6号、677−81頁PMID: 7562403
【非特許文献7】Tozer T.N.、Rigod J.、McLeod A.D.、Gungon R.、Hoag M.K.、Friend D.R.、「Colon−specific delivery of dexamethasone from a glucoside prodrug in the guinea pig」、Pharm Res.、1991年、第8巻、第4号、445−54頁、PMID:1871038
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
ヒドロキシルを有する化合物を結腸へと薬物標的指向化するための新規な戦略が本願明細書で提示される。ヒドロキシルを有する薬物を結腸へと標的指向化するための本発明の戦略は、グリコシダーゼ標的指向化アプローチの設計上の欠陥を克服するために設計された。ヒドロキシルを有する薬物の部位特異的送達を成し遂げるための1つの方法は、スキーム3に図式的に提示されている。1つの態様では、この薬物は、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤(特に結腸疾患の撮像で使用されるもの);ワクチン、抗原,、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質を含む群から選択される。
【0012】
本願の1つの態様では、当該方法は、IBDのマウスモデルにおける候補化合物の抗炎症性効果の評価を提供する。別の態様では、当該方法は、アゾ化合物の胃腸管透過性およびそれらが胃腸管を通る能力への洞察を提供する。
【0013】
本願では、本発明者らは、本願明細書に開示されるプロドラッグなどの化合物、および患者においてNFκB DNA結合活性を減少させるための選択的薬剤として有効である組成物に対する必要性を見出した。1つの態様では、炎症性腸疾患(IBD)を含めた種々の胃腸疾患を低下、緩和または治療するために有効な化合物または組成物の治療上有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0014】
1つの態様では、この薬物はエステル基を介して担体基に連結され、この担体基はアゾ結合によって第2の担体基へと接続される。この担体基は、アゾ基に直接取り付けられていてもよく、または間接的にアゾ基に取り付けられていてもよい。本願明細書で提示されるように、この担体基は、胃および腸上部からの吸収を最大限抑制するように設計される。この方法は、結腸でのアゾリンカーの選択的還元を利用する。この選択的還元により、薬物ペイロード(ステロイドなど)を遊離させる環化(ラクタム化など)を後に受ける化学的に不安定な、潜在性プロドラッグが放出される。特定の化合物では、この環化反応は実質的に自発的である。この設計の全体的効果は、上記薬物を担体基に繋ぐ生物学的に安定または堅牢なエステル基を、結腸の中でのみ見出される条件下で化学的に不安定なものにすることである。
【0015】
一般的に、本願のプロドラッグは「担体−薬物」と呼ばれる。この「担体」は、5−ASAまたはパラ−アミノ安息香酸(PABA)などの化合物を含むことができる。この担体が治療効果を有する場合(5−ASAなど)、このプロドラッグは、一般的に「ミューチュアルプロドラッグ(mutual prodrug)」と呼ばれる。かかるミューチュアルプロドラッグは、本願明細書では5−ASA−薬物と呼ぶことができ、この薬物は、本願明細書に開示される治療薬を含めた任意の適切な治療薬であることができる。かかるミューチュアルプロドラッグとしては、5−ASA−シプロフロキサシン、5−ASA−ベバシズマブ、5−ASA−プレドニゾロン、5−ASA−5−ASAなどを挙げることができるが、これらに限定されない。この担体が治療効果を有しない場合(PABAなど)、上記化合物は、単に「プロドラッグ」と呼ぶことができる。かかるプロドラッグは、本願明細書でPABA−薬物(例えばPABA−シプロフロキサシン、PABA−ベバシズマブ、PABA−プレドニゾロン、PABA−5−ASAなど)と呼ばれ得る。
【化3】
【0016】
当該プロドラッグの物理化学的特徴は、置換基S1およびS2を含めた当該化合物の性質を変えることによって、結腸に至る胃腸の透過のために最適化することができ、その際、本願明細書に開示されるようにアリール環上の置換基S1およびS2の1以上が用いられてもよいことが見出された。
【0017】
アゾ結合の還元は、容易に進行する。なぜなら、この還元は、イプサラジド(担体基がp−アミノ馬尿酸である)、バルサラジド(balsalzide)(p−アミノベンゾイル−β−アラニン担体)、スルファサラジン(スルファピリジン担体)、立体的にかさ高いPAF拮抗薬(Carcellerら、2001)、9−アミノカンプトテシン(aminocamphothecin)(Sakumaら、2001)および5−ASA−N−メタクリルアミド、アクリロイルオキシエチルおよびアクリロイルアミドコポリマー(例えばVan den Mooterら、1994)のように多様な基質を効率よく還元するそれらの能力によって証明されるように、基質に対する、結腸に存在するアゾレダクターゼのごちゃ混ぜ状態に基づくからである。腸に膨大なミクロフローラが存在することから、遠位小腸における−67±90から右結腸における−415±72まで酸化還元電位の変化が引き起こされる(Wildingら 1994)。アゾ薬物の放出における酵素による還元および化学還元の相対的寄与は十分には理解されていない。
【0018】
環化または閉環は、アミン基(アニリンアミノ基など)の、エステルへの求核的攻撃に依存する。かかるエステルの一例はステロイド系エステルである。アニリンは(脂肪族アミンと比べて)低い求核性を有するが、分子内配置の高い有効モル濃度は十分に速い閉環を促すであろう。ほぼ同等の条件における、アニリンによるエステルの分子内アミノリシスに関する報告が記載されている。Kirbyら(1979)は、メチル 3−(2−アミノフェニル)プロピオネートの自発的環化を研究し、中性(ほぼ結腸のpH)および39℃で、この反応は2×10−4sec−1の見かけの一次速度定数(これは、57分の一次半減期に対応する)で進行することを見出した。FifeおよびDuddy(1983)は、メチル (2−アミノフェニル)アセテートおよびトリフルオロエチル (2−アミノフェニル)アセテートの閉環(インドロンを与える)が、わずかに塩基性の条件下(pH 7〜8)で同様の反応速度論に従うことを報告した。これらの半減期は、滞留時間はかなり延びる傾向にある結腸での薬物放出のために理想的である。
【0019】
本願の化合物のエステル結合は、胃腸管中で見出される条件下で非常に安定である。胃腸管の管腔におけるエステラーゼ活性は、限られた数の基質、一般的には芳香族アミノ酸のエステルに対する残留エステラーゼ活性を呈する膵臓セリンプロテアーゼに限定される。例えば、ステロイドの21−エステル(番号付与については上記のスキーム2を参照)は、模擬腸液モデルの中で堅牢であることが示されている。例えばFleisherら(1986)は、ラット腸内灌流液中でのヒドロコルチゾン−21−コハク酸エステルの加水分解について0.003min−1の一次速度定数を報告した。この数字は12時間という半減期に対応し、これは予想される結腸への通過時間よりも著しく長い。Jhunjhunwala(1981)は、pH 7(45℃)で24時間後にヒドロコルチゾン−21−コハク酸エステルの5%未満が消失することを報告している。
【0020】
胃腸での吸収は分子量、親油性および極性によって変化し、一般に極性の親水性分子はあまり良好には吸収されない。S1によって表される置換基を含む担体基における変形の可能性の中には、例えば、担体(5−ASAが挙げられるが、これに限定されない)およびステロイドを連結するアゾ結合があり、これにより薬物(ステロイドなど)のミューチュアルプロドラッグが生成される。かかるミューチュアルプロドラッグは、質量、極性および親水性に起因して、腸を通過するための理想的なまたは好ましい物理化学的特徴をもたらし得る。
【0021】
本願で開示される立体的にかさ高いステロイド系エステルは、ヒドロコルチゾン−21−コハク酸エステルよりもはるかに、加水分解に対して不安定ではない(Jhunjhunwala、1981を参照)。さらに、このエステルは、ステロイド核上のいくつかの異なるヒドロキシル基のうちの1つで結合されていてもよい。例えば、本願明細書で提案されるいかなる理論によっても拘束されないが、非常にかさ高い11βアキシャルヒドロキシル基に位置するこれらのエステルは(スキーム2)、21−エステルよりも安定である。
【0022】
本願は、結腸を標的とする薬物(抗炎症性ステロイドなど)を放出するための2工程プロセスに関与することができる新規な系および化合物を開示する。本願は、ステロイド系化合物(例えばヒドロコルチゾン、デキサメサゾンまたはブデソニドのエステル類)、ニトロイミダゾール(例えばメトロニダゾール)、抗生物質、(例えばナリジクス酸などのキノリン、シプロフロキサシンまたはレボフロキサシンなどのフルオロキノロン、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシンなどのアミノグリコシド)、化学療法薬(例えばロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート)、および抗体、(例えばベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、インフリキシマブ)を含めた様々な化合物およびそれらの誘導体の合成を開示する。本願はさらに、閉環反応速度論の測定、酵素および腸内潅流液を使用する腸内安定性についてのインビトロスクリーニング、結腸細菌の存在下でのインビトロ薬物放出、および適切な動物モデルにおける治療有効性、例えば、抗炎症性有効性を開示する。1つの態様では、抗炎症性ステロイドであるヒドロコルチゾン、デキサメサゾンおよびブデソニドの21位、11位および17位での一連のエステルがプロドラッグとして調製される。別の態様では、本願は、当該アミノエステルの種々のアゾ誘導体の合成を開示する。
【0023】
以下のスキームは、抗腫瘍薬(アントラマイシン、サンサルバミド誘導体、カペシタビン)、COX−2阻害剤(レスベラトロール、クルクミン、メロキシカム、テノキシカム、ピロキシカム)、抗生物質製剤(メトロニダゾール)、免疫抑制剤(シクロスポリン)、および本願で調製され用いられてもよい化学保護作用薬(URSO)を含めた、代表的な生物活性のある薬剤および薬物を提示する。
【化4−1】
【化4−2】
【0024】
別の態様では、アミノ中間体化合物の閉環速度の測定または評価のための分析方法が提供される。閉環速度を評価するため、および担体基(アニリン誘導体など)における置換に起因する共鳴効果に対する閉環速度の依存性を測定するための方法もまた、本願明細書で提示される。本願のさらに別の態様では、水系条件下での(pH 1〜8での)、膵臓セリンプロテアーゼ(インビトロ)および腸に存在する他の酵素の存在下での、ならびにラット腸液の存在下での化合物の安定性を測定するための方法が提供される。
【0025】
別の態様では、インビトロでのミクロフローラの存在下でのこれらの化合物の還元速度を評価するための方法が提供される。さらに別の態様では、結腸炎症のマウスモデルを使用して上記化合物のインビボ有効性を評価するための方法が提供される。別の態様では、ラット灌流モデルを使用して本願明細書で提示される化合物の透過性を測定するための方法が提供される。この方法により、胃腸管を通る透過の評価が可能になる。結腸標的指向化の可能性のために、無視できるほどの透過性を有する化合物が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】pH 8(37℃)における、プロドラッグAの濃度 対 時間のグラフである。
【図2】pH 8(37℃)における、プロドラッグA濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図3】pH 7.4(37℃)における、プロドラッグAの濃度 対 時間のグラフである。
【図4】pH 7.4(37℃)における、プロドラッグA濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図5】プロドラッグの消失ならびにコルチゾンおよびキノロンの出現を示す、pH 9(37℃)におけるアミノプロドラッグBのラクタム化のプロファイルである。
【図6】pH 9(37℃)における、アミノプロドラッグB濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図7】pH 8(37℃)における、アミノプロドラッグBのラクタム化のプロファイルである。
【図8】pH 8における、アミノプロドラッグBの濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図9】プロドラッグの消失ならびにヒドロコルチゾンおよびキノロンの出現を示す、pH 9(37℃)のPBSにおけるアミノプロドラッグBのラクタム化のプロファイルである。
【図10】pH 7.4(37℃)における、アミノプロドラッグBの濃度の自然対数のグラフである。
【図11】健康なマウス(未処置)および5mg/Kgの投薬量で処置したデキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された大腸炎(DSS誘導大腸炎)マウスの体重減少の割合(%)のプロファイルである。
【図12】5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸部分から得た疾患活動性指数(DAI)スコアのプロファイルである。
【図13】5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸長さのプロファイルである。
【図14】健康なマウス(未処置)および5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの胸腺重量体重比(T/BW)のプロファイルである。
【図15】図11に提示されたデータの再プロットおよび再解析を示す。図11は、スチューデントのt−検定を使用してデータセットを比較した。この図では、データセットは、一元配置ANOVA、続いてテューキーのポスト検定(Tukey post test)を使用して比較されている。それはまた、3つの吹き出しのグラフに示されるように、このデータを4〜6日目に統計的に比較する。DSSを投与されたすべてのマウスは、健康な対照と比較して、有意に体重を減少させた。しかしながら、マウスがプレドニゾロンまたはミューチュアルプロドラッグ2のいずれかで処置された場合、この体重減少は、溶媒のみの対照と比べて減少した。プレドニゾロンを投与された群とミューチュアルプロドラッグ2を投与された群との間には統計学的差異はなかった。
【図16】上記の統計的方法を使用する、図12に提示されたデータの再プロットおよび再解析を示す。DSSを投与されたすべてのマウスは、未処置のマウスと比べて、大腸炎の臨床徴候を示した。この疾患の重症度は、溶媒だけを投与されたマウスと比べて、プレドニゾロンを投与されたマウスまたはミューチュアルプロドラッグ2を投与されたマウスでは有意に低下した。ミューチュアルプロドラッグ2を投与された群とプレドニゾロンを投与された群との間には統計学的差異はなかった。
【図17】上記の統計的方法を使用する、図13に提示されたデータの再プロットおよび再解析である。結腸短縮は、大腸炎の重症度についての臨床的読み出し情報である。DSSを投与されたすべてのマウスは結腸の短縮を示した。ミューチュアルプロドラッグ2またはプレドニゾロンのいずれかで処置されたマウスは、溶媒だけで処置されたマウスよりも、有意に少ない短縮を示した。ミューチュアルプロドラッグ2で処置した群とプレドニゾロンで処置した群との間には統計学的差異はなかった。
【図18】胸腺重量:最終体重を示すさらなるデータとともに、上記の統計的方法を使用する、図14の再プロットおよび再解析を示す。対照実験では、未処置 対 溶媒処置マウスにおいては、胸腺重量 対 最初の体重または 対 最終体重には有意差は認められなかった。予想されるように、プレドニゾロン処置群は、溶媒処置マウスと比べて、T/BW比の有意な低下を示した。対照的に、ミューチュアルプロドラッグ2処置群におけるT/BW比は、溶媒処置群のT/BW比とは統計的に異なっていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(方法)
以下の方法は、アミノエステルのアゾ誘導体を含む、21位、11位および17位での抗炎症性ステロイドであるヒドロコルチゾン、デキサメサゾンおよびブデソニドの一連のエステルの調製を説明する。
【0028】
(閉環反応速度論化合物)
1つの具体的な例では、合成アプローチは、デキサメサゾンについて以下に概略が示される(スキーム4)。2−ニトロケイ皮酸は、接触還元によってアミノフェニルプロピオネートに還元され、そして直ちにBOC無水物で処理される。21位の最も露出されているステロイド系ヒドロキシル基は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド/ジメチルアミノピリジンを使用して選択的にアシル化される(Johnsonら、1985)。このBOC保護は、無水HClをジクロロメタン(DCM)溶液に吹き込むことによって除去することができ、アニリン6がHCl塩として回収される。この塩は、必要とされる時まで−80℃で保存される。メチル 3−(2−アミノフェニル)プロピオネートは、−20℃で保存していてさえも自発的に閉環する(Kirbyら、1979)。
【化5】
スキーム4:(i)Zn末、次いでPtO2、MeOH;(ii)BOC2O、(iii)ステロイド、DCC、DMAP、DCM;(iv)HClガス/DCM。
【0029】
ステロイド系アミノフェニルアセテートエステルは、(o−ニトロフェニル酢酸)を使用するエステル化、続くメタノール中でZn末を使用してニトロ基を還元することにより得てもよく、上記のとおり、塩酸塩が生成する。閉環に対する共鳴効果/立体効果を評価するのに適した化合物は、同様にして得られる。従って、例えば、異性体のステロイド系21−メトキシ−アミノフェニルアセテート7および8は、3−メトキシフェニル酢酸の2−ニトロ化、続くエステル化および還元を経由して得てもよい(スキーム5)。ケイ皮酸シリーズは、同様にして(メトキシケイ皮酸のニトロ化、還元、BOC保護、エステル化および脱保護)得てもよい。アミノ基に対してオルトおよびパラのメトキシ基は、ラクタム化に対する立体的影響と電子的影響とを判別するために使用してもよい。
【化6】
スキーム5:(i)HNO3、AC2O(ii)ステロイド、DCC、DMAP、DCM;(iii)Zn末、MeOH。
【0030】
[0002]より込み合った11−ヒドロキシル基は、17α−OHおよび21−OH基の保護(Sloanら、1978)、その後のより過酷な条件下でのアシル化(または、フェニル酢酸塩化物を使用することによる(Sprattら、1985))、続く還元および脱保護によって扱われて、11−フェニルアセテートを与えてもよい。
【化7】
スキーム6:(i)アセトン、TsOH、熱(ii)2−ニトロフェニル酢酸、DCC、DMAP、DCM;(iii)H3O+;(iv)Zn、MeOH。
【0031】
本願のアゾプロドラッグは、アゾ結合単位との、ステロイドのエステル化によって得てもよい。例えば、5−ASA−ステロイドミューチュアルプロドラッグ9、5−ASA−デキサメサゾン(スキーム4)は、化合物10とのデキサメサゾンのエステル化、続くサリチル酸エステルの脱保護によって得てもよい。腸内透過性を実証するために、同様に,多くのアゾ担体接合体を生成してもよい。
【化8】
スキーム7:(i)NaNO2、HCl、次いでtert−ブチルサリチル酸。
【0032】
(環化反応速度論)
環化の反応速度論は、適宜UV、HPLCまたはNMRを使用してモニターしてよい。ステロイド系プロピオネートエステルの自発的環化のキノロン生成物は340nmにλmaxを有し、このため、それらの測定がエステル出発物質およびステロイド系生成物の存在下で可能になる。コルチコステロイドは、一般に240〜250nmの領域にλmax値を有する。あるいは、この反応は緩衝化D2O中で1H NMRによってモニターされてもよい。リアルタイム分析が好ましいが、この反応は環化を抑制するために冷却された迅速なショートカラムHPLC(RT<1分)によってモニターされてもよい。特定の態様では、この反応は、アセテートシリーズおよびプロピオネートシリーズの両方について、11位および21位の両方において5〜8のpH範囲でモニターされてもよい。これらの化合物およびその誘導体の最適な治療活性を決定するために、アニリノ環上の置換の効果も、この方法を使用して決定されてもよい。
【0033】
(腸内安定性)
候補アゾ化合物の相対的安定性は、ある範囲の精製された膵臓エンドペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼなど)の存在下で、インビトロで評価することができる(Gilmerら、2002)。最大の安定性を呈する化合物は、ラット腸内灌流液モデルでの評価のために選択されてもよい(Friendら、1985;Yanoら、2002)。バイオリソーシーズ社(Bioresources,TCD)(アイルランド)から入手したラットの胃腸管の一部は、軽く洗浄され、適切なpHで緩衝化されてもよい。上記化合物がインキュベーションされて、ある間隔でアリコートが抜き取られてもよい。これらのマトリクスが複雑な性質を有するため、残留する薬物は逆相HPLCによって測定されてもよい。半減期は、ミカエリス−メンテン反応速度論を使用して測定してよい。選択された化合物の腸内安定性特性は、腸内ホモジネートおよびヒトCACO−2細胞ホモジネートを使用して、さらに探索されてもよい。
【0034】
(インビトロでの結腸細菌によるアゾ還元)
候補化合物のアゾ結合の、還元を受ける感受性は、市販のラクトバチルス(Lactobacillus)培養液(Azad Khanら、1983)(この生物は、結腸細菌に対して類似のアゾレダクターゼを発現する)を接種した培地を用いる単純なインビトロでの細菌による分解モデルを使用して評価されてもよい。この培地には、補酵素NADPHおよびFADが添加されてもよい。還元はさらに、CO2を飽和させたラットまたはモルモットの結腸灌流液を使用して、検討されてもよい(例えばYano、2002を参照)。
【0035】
(抗炎症性活性)
インビボでの当該プロドラッグの有効性は、動物モデルで評価されてもよい。急性のマウスのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導された大腸炎において、NFκB DNA結合活性は増大し、観察される炎症症状はヒト炎症性腸疾患/大腸炎で認められる炎症症状と似ている(Okayasuら、1990)。
【0036】
balb/cマウスは、この実験のために使用するのに適した株である。なぜなら、balb/cマウスは、経口DSSに感受性があり、大腸炎を生じることが公知であるからである(Eggerら、2000)。動物が成熟しており、体重が同程度であることを確実にするために、6〜8週齢の雌のマウスが使用されてもよい。E(誤差の自由度(error degrees of freedom))=N(実験単位の数)−T(処置数)の資源方程式法、および全部で21群を用いることに基づき、1群あたり3動物が適切なサンプルサイズと考えられる(E=42)(Festingら、2002)。12群のマウスは、7日間のあいだ蒸留水中の2.5% DSSを自由に投与されてもよい。以前の実験では、この濃度のDSSが、軽度の体重減少または等級IIIの病変(これは、広範な粘膜破壊を表す)を伴う軽度の大腸炎を誘導するのに十分であると示されている(Eggerら、2000)。残りの9つの対照群は蒸留水だけを投与されてもよい。その後、マウスは、経口投与によって、プロドラッグを用いて処置されてよい。DSSを投与された群のうちの8つは、2つの異なる量のプロドラッグを連続1〜4日間、1日2回投与されることになる。マウスは、最後の用量が投与されてから1時間後に頚椎脱臼によって屠殺されてもよい。誘導された大腸炎から自然に回復するマウスについての対照として、DSS処置群は、4日間の各々の日に、プロドラッグ処置マウスが屠殺されるとの同時に、屠殺されてもよい。水だけを投与されることになる対照マウスは、DSS処置動物と同用量のプロドラッグを投与されてもよい。1つの対照群は、未処置のまま置かれてもよい。
【0037】
腸は、組織学的検討およびRNA抽出のために取り出されてもよく、それゆえ、切開,組織学的検査およびRNA抽出手法を実行するために、さらに3匹の未処置のマウスが必要とされる。結腸の切片は、10%亜鉛−ホルマリン中で固定され、パラフィン中に包埋されてもよい。横断面は、通常どおりヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色されてもよい。粘膜損傷の重症度は0−IIIの尺度で等級付けされる:等級0:正常;等級I:歪みおよび/または腺の下方1/3の破壊;等級II:びらん/腺の下方2/3の破壊または表面の上皮が残ったすべての腺の喪失;等級III、すべての腺の喪失(Eggerら、2000;Festingら、2002;Eggerら、1997)。DSS誘導大腸炎においては上方制御されるNFκB依存性炎症促進性のサイトカインIL−IおよびTNF−αのレベルを測定するために、抽出されたRNAに対して逆転写PCRが行われてもよい(Eggerら、2000)。これらの研究から得られる結果によって、必要に応じて、異なる濃度のプロドラッグおよび異なる用量数を用いてこの実験が繰り返されてもよい。
【0038】
(胃腸管透過性評価)
上記プロドラッグは、吸収プロセスから排除され、従って結腸へと通過することができるように設計された。さらなる評価のための化合物は、それらの透過性特性が低いことに基づいて選択されてもよい。当該化合物の胃腸管挙動は、まずめくれ上がった腸の嚢を使用して評価されてもよく(WilsonおよびWiseman、1954)、このめくれ上がった腸の嚢は、インビトロのバリア(in vitro barrier)および下記の腸灌流モデルを通る薬物移動の直接の評価および比較を可能にする。
【0039】
(インビボモデル:単回通過灌流(Single Pass Perfusion):腸内灌流)
これは、基本的に、当該管腔からの薬物の欠乏がモニターされる単離された腸ループモデルである(Komiyaら、1980)。この腸は麻酔された動物の中の原位置に留まっているため、正常機能が乱される程度は可能な限り小さい。内臓の血流量は自然に変わるものであり、麻酔下では減少するという点で、このモデルには限界がある。この動物の正中切開によって、腸の回腸の中央部分20〜40cmが優しく露出される。カニューレ挿入を容易にするための接近しやすさおよび適切な脈管構造のために、この部分が選択される。隣接部分への腸間膜のアーチ形構造が結紮される。腸が切断され、灌流のためにTygonチューブがカニューレ挿入される。腸間膜静脈が、適切なサイズのサイラスティックチューブまたはポリエチレンチューブでカニューレ挿入され、静脈血が、ヘパリン処置された(またはこれと同等)、較正された遠心管の中に採取される。等張性リン酸緩衝液を用いて37℃で腸管腔を優しく洗浄した後、薬物溶液がそのセグメントの近位部分へ灌流され、0.2ml/分でそのセグメントを流され、そしてその管腔セグメントの遠位端で集められる。歯科用ゴムのダム(dental rubber dam)に覆われているその腸を覆っているガーゼに暖かい(37℃)生理食塩水を頻繁に施用することによって、単離された腸は温かくかつ湿った状態に保たれる。調製物を37℃に維持するために、小さいランプも使用される。当該薬物は、定期的な間隔で灌流液を集めながら、120分間まで腸に通して灌流される。灌流液は分析され、灌流液からの薬物消失が実験の時間的経過にわたってモニターされる。
【0040】
(本願の実施形態および態様)
上記の1つの特定の態様では、上記実験は、IBDで使用される2つの主な療法の新規なミューチュアルプロドラッグを含めた抗炎症性ステロイドで結腸を標的指向化する手段としての当該方法の評価を提供する。
【0041】
本願の別の態様では、いくつかの新しい群のアニリンおよびアゾ担体を有する新規なステロイド系エステルの合成方法を提供する。この方法は、模擬的な生理的条件下でのアミノフェニルアセテートおよびプロピオネートエステルの環化反応速度論の包括的な研究、および閉環反応速度論に対する電子的および立体的な環置換効果に関する洞察を提供する。加えて、この方法は、21および11−コルチコステロイドエステルの水中での安定性、酵素に対する安定性、および腸内での安定性の判定を提供する。さらに別の態様では、この方法は、ステロイドアザ接合体の還元速度の測定、およびステロイドおよび環置換効果への依存性の判定を可能にする。
【0042】
1つの実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体式の混合物の形態にある、Iaの化合物:
【化9】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、Zは、−C(O)−、−S(O)−、−OC(O)−、−OC(O)NR13−、−S−C(O)−、−SC(O)NR13−、−C(O)NR13−、−NR13C(O)NR13−、−OS(O)−、−OS(O)2−、−S(O)2NH−および−OPO(OH)−からなる群から選択され、各R1、R2、R5およびR6は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、各R3およびR4は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R11は、水素、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、および−C(O)OR10からなる群から選択され、各R9およびR12は独立に、水素、(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、−SO3R13、−PO3R13、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは置換もしくは非置換であるか、またはR11およびR12は、フェニル環において隣接して置換している場合は、一緒になって任意に置換された複素環式環を形成し、R10は、水素または(C1〜3)アルキルであり、各R13は独立に水素または(C1〜3)アルキルであり、各a、bおよびcは独立に0、1または2である)、またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R11およびR12は一緒になって任意に置換された複素環式環を形成する。別の変形例では、R11およびR12は一緒になってアセトニジル−4−オンを形成する。さらに別の変形例では、R11はC(O)O−R10であり、R12およびR10の各々は水素である。
【0043】
別の実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iの化合物:
【化10】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、各R1、R2、R5およびR6は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、R8は水素であるかまたは(C1〜3)アルキルであり、R9は、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各a、bおよびcは独立に0、1または2である)またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R7およびR8は水素であり、cは1または2である。別の変形例では、およびbはともに0であり、cは1または2である。さらに別の変形例では、R9は水素であり、別の変形例では、R7およびR8は水素であり、R9は水素であり、aおよびbはともに0である。
【0044】
別の実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIの化合物:
【化11】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、各R1、R2、R5およびR6は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、R8は水素であるかまたは(C1〜3)アルキルであり、各a、bおよびcは独立に0、1または2である)またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R7およびR8は水素であり、cは1または2であり、別の実施形態では、aおよびbはともに0であり、cは1または2である。さらに別の変形例では、R7およびR8は水素であり、aおよびbはともに0である。
【0045】
さらに別の実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIIの化合物:
【化12】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、R5およびR6は独立に水素であるかまたは独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R7は水素でるかまたは(C1〜3)アルキルであり、R8は水素であるかまたは(C1〜3)アルキルである)またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R5およびR6は水素であり、別の実施形態では、R5、R6、R7およびR8は各々水素である。別の変形例では、R7およびR8は各々(C1〜3)アルキルである。
【0046】
上記の実施形態、変形例および態様の各々についての本願の1つの態様では、開示される化合物のいずれものAまたはヒドロキシルを有する薬物は、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される。1つの変形例では、このヒドロキシルを有する薬物は抗炎症薬である。別の変形例では、この抗炎症薬はステロイドである。さらに別の変形例では、このステロイドは、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、ならびにプレドニゾロンからなる群から選択される。
【0047】
上記の実施形態の各々、その態様および変形例の1つの変形例では、R11およびアゾ基(すなわち、−N=N−)を含むリンカーは、当該フェニル環上で1,4−二置換されている(すなわち、パラ)。別の変形例では、R12はHである。上記のもののさらに別の変形例では、aは0であるか、またはaおよびbはともに0である。上記のものの別の変形例では、R9はHである。
【0048】
本願の別の態様では、開示される化合物のいずれものAまたはヒドロキシルを有する薬物は、ニトロイミダゾール、キノリン(ナリジクス酸など)、フルオロキノロン(シプロフロキサシンまたはレボフロキサシンなど)、アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシンなど)、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される。上記のものの特定の変形例では、この薬物は、アミンを有する薬物(すなわち、アミン基をする薬物)(セレコキシブなど)、またはチオールを有する薬物である。
【0049】
1つの態様では、本願の化合物は、
【化13−1】
【化13−2】
からなる群から選択される。
【0050】
1つの態様では、本願明細書で提示される開示される化合物のいずれかの治療上有効量と、薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0051】
1つの実施形態では、患者においてNFκB DNA結合活性を減少させる方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量を当該患者に投与することを含む方法が提供される。1つの変形例では、この治療上有効量は、炎症性腸疾患(IBD)を低下、緩和または治療するために有効である。別の変形例では、この治療上有効量は、潰瘍性大腸炎またはクローン病を低下、緩和または治療するために有効である。
【0052】
1つの態様では、炎症性腸疾患(IBD)を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。別の態様では、クローン病または潰瘍性大腸炎を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。上記のものの1つの変形例では、投与される化合物または組成物の量は寛解を維持するために十分な量である。上記の方法の別の変形例では、5ASA−5ASAが投与される。
【0053】
別の態様では、急性潰瘍性大腸炎を低下、緩和または治療する方法であって、治療上有効量の5ASA−ステロイドを投与することを含み、ステロイドは、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、またはプレドニゾロンである方法が提供される。1つの変形例では、このステロイドはプレドニゾロンである。
【0054】
別の実施形態では、コラーゲン形成大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎(Ischaemic colitis)、便流変更性大腸炎(Diversion colitis)、ベーチェット症候群、感染性大腸炎(Infective colitis)、または非定型大腸炎(Indeterminate colitis)を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。別の態様では、アメーバ症、クロストリジウム・ディフィシル感染症、偽膜性大腸炎、憩室炎、胃腸炎、胃腸癌、または過敏性大腸症候群(IBS)を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0055】
別の実施形態では、哺乳動物における炎症状態を治療または緩和する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を結腸に送達することを含み、このCOX2阻害剤は本願明細書で提示される化合物または組成物のいずれかのヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法が提供される。別の実施形態では、哺乳動物における胃腸癌を治療する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を結腸に送達することを含み、このCOX2阻害剤は本願明細書で提示される化合物または組成物のいずれかのヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法が提供される。
【0056】
上記の実施形態、態様および変形例には、アミノ酸の塩(アルギン酸塩など)、グルコン酸塩、およびガラクツロン酸塩も包含される。本願の化合物のいくつかは分子内塩または双性イオンを形成してもよい。本願の化合物のいくつかは溶媒和されていない形態および溶媒和されている形態(水和されている形態を含む)で存在することができ、これらは本願の範囲内にあることが意図されている。薬学的に許容できる賦形剤と、本願の少なくとも1つの化合物の治療上有効量とを含む医薬組成物も提供される。
【0057】
本願の化合物、またはその誘導体の医薬組成物は、非経口投与用の溶液または凍結乾燥された粉末として配合されてもよい。粉末は、使用に先立って適切な希釈剤または他の薬学的に許容できる担体の添加によって再構成されてもよい。液体配合物は、一般に緩衝化された、等張性の水溶液である。適切な希釈剤の例は、通常の等張性食塩水溶液、水中の5% デキストロースまたは緩衝化された酢酸ナトリウムまたは酢酸アンモニウム溶液である。かかる配合物は、非経口投与に特に適しているが、経口投与用に使用されてもよい。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、またはクエン酸ナトリウムなどの賦形剤も加えられてよい。あるいは、これらの化合物は、経口投与用に、封入されていてもよいし、錠剤化されていてもよいし、またはエマルションまたはシロップの中で調製されてもよい。薬学的に許容できる固体または液体の担体は、当該組成物を増強もしくは安定化するために、または組成物の調製を容易にするために加えられてよい。液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコールまたは水が挙げられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアゴム、寒天またはゼラチンが挙げられる。この担体は、単独のまたはワックスを伴うグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートなどの徐放性物質をも含んでいてよい。固体担体の量は様々であるが、好ましくは、投薬単位あたり約20mg〜約1gであってよい。医薬調剤は、錠剤形態については製粉、混合、造粒、および必要な場合には圧縮を、または硬ゼラチンカプセル剤形態については製粉、混合、および充填を伴う、薬学の従来の手法に従って製造される。液体担体が使用される場合、その調剤は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または水系もしくは非水系の懸濁剤の形態であってもよい。かかる液体配合物は、経口により直接投与されてもよいし、または軟ゼラチンカプセル剤の中へと充填されてもよい。これらの投与方法の各々に適した配合物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro編、第20版、Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、Paに見出され得る。
【0058】
1つの変形例では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体式の混合物の形態にある、上記化合物、またはその薬学的に許容できる塩が提供される。
【0059】
(定義)
本願明細書において明確に特段の注記がない限り、使用される用語の定義は、有機合成および薬科学の技術分野で使用される標準的な定義である。
【0060】
「アルキル」基は、任意に鎖中の炭素原子の間に酸素、窒素または硫黄原子が挿入されているかまたは示されたとおりの炭素原子の鎖を有する直鎖、分枝鎖、飽和または不飽和の脂肪族基である。例えば、(C1〜C10)アルキルは、1〜10個の炭素原子の鎖を有するアルキル基含み、これには、例えば、基メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1,3−ブタジエニル、ペンタ−1,3−ジエニルなどが含まれる。アルキル基は、例えば、−(CR1R2)a−基(式中、R1およびR2は、独立に水素であるか、または独立に、本願明細書で提示されるように置換され、例えば、aは0、1または2である)として表されてもよい。
【0061】
例えば「アリールアルキル」として表される、アリール基などの別の基とともに言及されるアルキルは、アルキル基(例えば、(C1〜C10)アルキルにおけるように)および/もしくはアリール基に示された原子数を有する直鎖、分枝鎖、飽和または不飽和の二価の脂肪族基であることが意図されている。または、原子が示されていない場合は、このアルキルは、このアリールとアルキル基との間の結合を意味する。かかる基の非排他的な例としては、ベンジル、フェニルエチルなどが挙げられる。
【0062】
「アルキレン」基は、アルキル基の中に示された原子数を有する直鎖、分枝鎖、飽和または不飽和の二価の脂肪族基;例えば、−(C1−C3)アルキレン−または−(C1−C3)アルキレニル−である。
【0063】
「アリール」基は、環の中に5〜8個の原子を有する単環式または二環式の芳香族炭化水素基、例えばフェニルである。この単環式アリール基は、典型的には5〜7員環であり、二環式アリール基は典型的には7〜8員環である。
【0064】
用語「ヘテロアリール」は、本願明細書で使用する場合、例えば、約3〜約30個の原子、好ましくは約6〜約18個の原子、より好ましくは約6〜約14個の原子、最も好ましくは約6〜約10個の原子および1〜3個のヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含むアリール基を意味する。かかる基の例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チオフラニル、チアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、キノリニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリルおよびベンゾトリアゾリルが挙げられる。
【0065】
モノシクリル基またはポリシクリル基などの「シクリル」には、単環式のシクロアルキル、または直鎖状に縮合した、角度をつけて縮合したもしくは架橋したポリシクロアルキル、またはこれらの組合せが含まれる。かかるシクリル基は、ヘテロシクリル類似体を含むことが意図されている。シクリル基は、飽和、部分飽和または芳香族であってもよい。
【0066】
「ハロゲン」または「ハロ」はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0067】
「ヘテロシクリル」または「複素環」は、その環を形成する原子のうちの1以上がN、OまたはSであるヘテロ原子である、シクロアルキル基である。シクロアルキルは、飽和、部分飽和または芳香族であってもよい。ヘテロシクリルの非排他的な例としては、ピペリジル、4−モルホリル、4−ピペラジニル、ピロリジニル、1,4−ジアザペルヒドロエピニル(diazaperhydroepinyl)、アセトニジル−4−オン、1,3−ジオキサニル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラニルなどが挙げられる。
【0068】
用語「アルコキシ」には、二価の酸素に結合した直鎖または分枝状のアルキル基が含まれる。このアルキル基は、これまでに定義されたとおりである。かかる置換基の例としては、メトキシ、エトキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。用語「アルコキシアルキル」は、1以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を指す。用語「ヘテロアリールオキシ」は、1以上のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基を指す。用語「アリールオキシ」は、酸素に結合したアリール基、例えばフェニル−O−などを指す。
【0069】
本願明細書で使用する場合、二価の基が本願明細書に記載されるように基−Z−として、または例えば下記に示すように一般的に−A−B−によって表される場合、下記の2つの構造で記述されるような可能な順列の両方で結合されていてもよい基を表すことも意図されている。
【化14】
【0070】
例えば、例として基「−NR13C(O)−」などの二価の基が提示された場合、その基は、二価の基−NR13C(O)−および同様に二価の基−C(O)NR13−の両方を含むことも意図されている。
【0071】
「ヒドロキシルを有する薬物」は、ヒドロキシル(すなわち、−OH)基で官能化されているか、または置換されている薬物または生物活性化合物を意味する。従って、ヒドロキシルを有する薬物の残基は、ヒドロキシル基を除いた当該薬物または生物活性化合物の構成要素である。本願で用いられる薬物には、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤(特に、結腸の疾患の撮像で使用されるもの);ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子、およびタンパク質を含めてもよい。かかる薬物としては、ステロイド系化合物(例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメサゾンまたはブデソニドのエステル類)、ニトロイミダゾール(例えばメトロニダゾール)、抗生物質、(例えば、ナリジクス酸などのキノリン、シプロフロキサシンおよびレボフロキサシンなどのフルオロキノロン)、化学療法薬(例えばロイコボリン、トポテカン)、および抗体、(例えばベバシズマブ、セツキシマブおよびパニツムマブ)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0072】
「薬学的に許容できる塩」は、一般に所望の薬理学的活性を有すると考えられ、安全、無毒であると考えられ、かつ獣医学およびヒトでの薬理学的用途に対して許容できる塩組成物を意味する。かかる塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸と形成される酸付加塩;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸など有機酸と形成される酸付加塩が挙げられる。
【0073】
本願明細書で使用する場合の「プロドラッグ」は、体内で、特に結腸において変換または分解して本発明の生物活性化合物(例えば、上記中間体アニリンまたは上記ラクタムおよび上記活性薬物)を生成することができる生体前駆体(bioprecursor)または薬学的に許容できる化合物を意味する。特に、本願の化合物は、ミクロフローラのアゾレダクターゼなどのインビボアゾレダクターゼによって還元されてもよい。
【0074】
「治療上有効量」は、本願明細書に列挙される生物学的効果のいずれかをもたらす薬物量を意味する。治療上有効量はまた、化合物/薬剤もしくはプロドラッグの1以上の生物活性特性のレベルの目に見える変化を支えるのに有用なまたは支えることができる、本願明細書に開示される化合物/薬剤もしくはプロドラッグを含む組成物の量、あるいは有益な効果を与えるのに十分な投薬量をも意味する。かかる有益な効果は、レシピエントまたは患者についての症状の改善を含み得る。特定の態様では、この治療上有効量は、疾患の治癒または治療(curing)に関連していてもよい。当該技術分野で公知のとおり、治療上有効量を決定するために多くの考慮事項が考慮されてもよい。かかる考慮事項の例は、例えばGilman、A.G.ら、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、McGraw−Hill(1990)、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1990)に見出すことができる。
【0075】
「置換もしくは非置換の」または「任意に置換された」は、例えばアルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C1−C8)シクロアルキル、ヘテロシクリル(C1−C8)アルキル、アリール(C1−C8)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1−C8)アルキルなどの基が、明確に特段の注記がない限り、非置換であってもよいし、またはハロ、ニトロ、トリフルオロメチル(−CF3)、トリフルオロメトキシ、メトキシ、カルボキシ、−NH2、−OH、−SH、−SCH3、−NHCH3、−N(CH3)2、−SMe、シアノなどの基から選択される1つ、2つまたは3つの置換基によって置換されていてもよいことを意味する。
【実施例】
【0076】
本願の例示となる化合物の調製のために以下の手順を用いることができる。これらの化合物を調製する際に使用される出発物質および試薬は、シグマアルドリッチケミカル社(Sigma Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、バッケム(Bachem)(カリフォルニア州、トランス)などの商業的供給業者から入手可能であるか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、第1〜17巻、John Wiley and Sons、New York、N.Y.、1991;Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、第1〜5巻および補遺、Elsevier Science Publishers、1989;Organic Reactions、第1〜40巻、John Wiley and Sons、New York、N.Y.,1991;March J.:Advanced Organic Chemistry、第4版、John Wiley and Sons、New York、N.Y.;およびLarock:Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、New York、1989などの参考文献に記載される手順に従って、当該技術分野の当業者に周知の方法によって調製されるかのいずれかである。
【0077】
ある場合には、保護基が導入されて最終的に除去されてもよい。アミノ、ヒドロキシ、およびカルボキシ基に対する適切な保護基は、Greeneら、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons、New York、1991に記載されている。標準的な有機化学反応は、例えばLarock:Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、New York、1989に記載されるような多くの異なる試薬を使用して、成し遂げることができる。
【0078】
1つの変形例では、本願の化合物は、下記のスキーム8〜11に概略を示した工程によって合成することができる。これらのスキームは、当該プロドラッグの異なる同族体の調製を示す。
【0079】
(一般的な実験手順)
未補正の融点はStuart(登録商標) melting point SMP11融点装置を使用して得た。赤外(IR)スペクトルは、パーキンエルマー(Perking Elmer)205 FT Infrared Paragon 1000分光計を使用して得た。バンド位置はcm−1単位で提示した。固体試料は、KBrディスクによって得た。油状物はNaClプレート上での無溶媒膜として分析した。UV分光法はCary 3E UV−VIS分光光度計で行った。1Hおよび13Cスペクトルは、27℃で、CDCl3中またはCD3OD中(テトラメチルシランを内部標準とする)のいずれかで、ブルカー(Bruker)DPX 400MHz FT NMR分光計(400.13MHz 1H、100.16MHz 13C)で記録した。CDCl3については、1H NMRスペクトルは、0.00 δのTMSピークに対して帰属し、13C NMRスペクトルは77.00ppmのCDCl3三重線の中央に対して帰属した。CD3ODについては、1Hおよび13C スペクトルは、それぞれ3.30 δおよび49.00ppmのCD3ODの多重線の中央のピークに対して帰属した。結合定数はヘルツ(Hz)単位で記録した。1H NMRの帰属について、化学シフトは、シフト値(プロトン数,吸収の説明(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線),当てはまる場合には結合定数(1つまたは複数個)、プロトン源の帰属)で報告する。LRMSは、トリニティー・カレッジ(Trinity College)の化学科(Department of Chemistry)のマイクロマス(micromass)質量分析計(EIモード)で行った。フラッシュクロマトグラフィはメルク(Merck) Kieselgel 60 粒径0.040〜0.063mm上で行い、Rf値を引用する薄層クロマトグラフィ(TLC)はシリカゲル メルク(Merck) F−254プレート上で行った。化合物は、254nmでの吸光度および/またはバニリン染色によって視覚的に検出した。
【化15】
i)Pd/C 10%、H2、酢酸エチル、ii)オキソン、iii)DCC、DMAP、Tert−ブタノール、iv)Pd/C 10%、H2、V)AcOH
【化16】
vi)DIAD、Ph3P、THF、vii)TFA
【0080】
2−ニトロソフェニル酢酸
酢酸エチル100mL中の2−ニトロフェニル酢酸(5g、0.0276mol)の溶液に、パラジウム−チャコ−ル(10%)を触媒量(5%、0.25g)だけ加えた。この反応混合物を、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌し、その後、TLC分析から反応の完結が判明した(酢酸エチル−ジクロロメタン 40:60)。反応混合物を濾過助剤上で濾過してパラジウム−チャコ−ル(10%)を除去し、溶媒を減圧下で除去した。粗製2−アミノフェニルプロピオン酸(propionic)を蒸留水50mLおよびジクロロメタン50mLに溶解した。オキソン(登録商標)2当量(33.9g、0.0552mol)を蒸留水50mLに溶解し、この反応混合物に加えた。この時点でこの反応液はpH=4であったため、2−ニトロソフェニル酢酸は、生成するや否や、有機層へと移された。2時間後、反応混合物を分液漏斗に移した。有機層を集め、水相を2×25mLのジクロロメタンで洗浄した。有機相を集め、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、4.21gの生成物を暗色油状物として得た。この粗製混合物を、ジクロロメタン:酢酸エチル(70:30)を使用してフラッシュカラムにかけ、3.48gの生成物を褐色の結晶(70%)として得た:IRvmax(KBr):1691.86(C=O)cm−1。1H NMR δ(CDCl3):9.00(1H,s,COOH),7.24(2H,t,J 8.54および7.53Hz),7.04(1H,t,J 7.53および7.53Hz),6.92(1H,d,J 7.53Hz),3.57(2H,s)。13C NMR δ(CDCl3):178.02(C,C−8,C=O),141.86(C,C−1),127.50(CH,C−4),124.77(C,C−2),124.15(CH,C−3),122.05(CH,C−5),109.50(CH,C−6),35.84(CH2,C−7)。
【0081】
5−(2−カルボキシメチル−フェニルアゾ)−2−ヒドロキシ安息香酸 tert−ブチルエステル
氷酢酸(20mL)中の2−ニトロソフェニル酢酸(1.0g、0.0061mol)の溶液に、氷酢酸(20mL)中の5−アミノサリチル酸 tert−ブチルエステル(1.26g、0.0061mol)の別の溶液を15分間にわたって滴下した。TLC、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)による完結まで、反応液を48時間撹拌したままにした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を黒色油状物として得た。ジクロロメタンを移動相として使用して、これをフラッシュカラムにかけ、1.49gの生成物を橙色の結晶(69%)として得た:融点:108〜110℃。IRvmax(KBr):3434.51cm−1、1714.14cm−1、1670.39cm−1、1587.05cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.49(1H,s),8.37(1H,d,J 2.48Hz),7.95(1H,dd,J 9および2.48Hz),7.76(1H,d,J 8.04Hz),7.40(3H,m),6.97(1H,d,J 9.04Hz),4.10(2H,s),1.64(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):177.05(C,C−8,C=O),169.14(C,C−15,C=O),163.83(C,C−12),149.40(C,C−2),144.84(C,C−9),133.26(CH,C−1),131.01(CH,C−5),130.49(CH,C−6),127.82(CH,C−10),127.62(CH,C−4),127.26(CH,C−14),117.99(CH,C−13),115.53(CH,C−3),113.32(C,C−11),83.24(C,C−16),37.40(CH2,C−7),27.69(3×CH3,C−17)。
【0082】
tert−ブチルエステルで保護されたミューチュアルプロドラッグ1
反応温度が40℃に到達した後、乾燥THF(50mL)中の5−(2−カルボキシメチル−フェニルアゾ)−2−ヒドロキシ安息香酸 tert−ブチルエステル(0.40g、0.0011mol)、プレドニゾロン(1.1当量、1.18g、0.0013mol)およびトリフェニルホスフィン(3当量、0.88g、0.0033mol)の溶液に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)を、12分間にわたって滴下した(3当量、0.66mL、0.0033mol)。反応液を40℃で1時間撹拌し、反応液を窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。TLC分析(ジクロロメタン)は完結を示した。溶媒を減圧下で除去し、生成物を橙色の油状物として得た。これをジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、このカラム後、トリフェニルホスフィンオキシドは除去されたが、生成物0.33gを橙色の結晶(43%)として得るために第2のフラッシュカラムが必要であった(ヘキサン(200mL)、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)):融点:124〜126℃。IRvmax(KBr):3436.29cm−1、1726.17cm−1、1659.61cm−1、1616.09cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.49(1H,s),8.44(1H,s),8.05(1H,d,J 9Hz),7.75(1H,d,J 7.52Hz),7.40(3H,m),7.24(1H,d,J 10.04),7.06(1H,d,J 9Hz),6.25(1H,s),5.98(1H,s),4.27(2H,s),2.68〜0.84(プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.67(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):204.40(C,C−20,C=O),186.26(C,C−3,C=O),171.36(C,C−22,C=O),170.10(C,C−5),169.09(C,C−13,C=O),163.85(C,C−10’),156.25(CH,C−1),149.53(C,C−2’),145.07(C,C−7’),133.25(C,C−1’),130.98(CH,C−5’),130.53(CH,C−6’),129.89(CH,C−8’),127.85(CH,C−2),127.17(CH,C−4’),125.52(CH,C−12’),121.79(CH,C−4),118.14(CH,C−11’),115.14(CH,C−3’),113.26(C,C−9’),89.17(C,C−17),83.30(C,C−14’),69.51(CH,C−11),67.98(CH2,C−21),54.86(CH,C−9),50.86(CH,C−14),47.26(C,C−13),43.68(C,C−10),38.85(CH2,C−12),36.44(CH2,C−23),33.92(CH2,C−6),33.58(CH2,C−7),31.56(CH2,C−16),30.71(CH,C−8),27.78(3×CH3,C−15’),23.36(CH2,C−15),20.56(CH3,C−19),16.37(CH3,C−18)。
【0083】
ミューチュアルプロドラッグ1(5−{2−2[2(11,17−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−10,13−ジメチル−3−オキソ−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)−2−オキソ−エトキシカルボニルメチル]フェニルアゾ}−2−ヒドロキシ−安息香酸)
ジクロロメタン(1mL)中のtert−ブチルエステルで保護されたミューチュアルプロドラッグ1(0.1g、0.000155mol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を加え、反応液を室温で4時間放置した。TLC分析、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)は完結を示し、窒素を使用して溶媒およびトリフルオロ酢酸を吹き飛ばし(blow off)、生成物を橙色の油状物として得た。この粗生成物をジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、0.078gの生成物を橙色の結晶(78%)として得た。融点:154〜156℃。MS:665.2503 算出した質量665.2475。IRvmax(KBr):3436.40cm−1、1654.62cm−1、1H NMR δ(CDCl3):8.48(1H,s),8.10(1H,d,J 9.04Hz),7.75(1H,d,J 7.52Hz),7.46(4H,m),7.08(1H,d,J 9Hz),6.24(1H,d,J 10Hz),6.00(1H,s),5.03(2H,d,J 17.56Hz),4.35(1H,s),4.31(2H,d,J 8.52Hz),2.68−0.8(プレドニゾロンエンベロープ,19H)。13C NMR δ(MeOD):205.18(C,C−20,C=O),187.15(C,C−3,C=O),172.99(C,C−22,C=O),171.82(C,C−5),164.11(C,C−13,C=O),158.38(C,C−10),156.35(CH,C−1),149.62(C,C−2),144.93(C,C−7),133.49(C,C−1),133.36(CH,C−5),130.90(CH,C−6),129.97(CH,C−8),127.39(CH,C−2),127.07(CH,C−4),126.20(CH,C−12),125.88(CH,C−4),120.57(CH,C−11),117.01(CH,C−3),114.64(C,C−9),88.75(C,C−17),68.91(CH,C−11),67.95(CH2,C−21),55.40(CH,C−9),50.91(CH,C−14),MeODの残留ピークがCのピークを覆い隠していた,C−13,44.19(C,C−10),38.19(CH2,C−12),36.09(CH2,C−23),33.70(CH2,C−6),32.75(CH2,C−7),31.31(CH2,C−16),27.66(CH,C−8),22.95(CH2,C−15),19.72(CH3,C−19),15.36(CH3,C−18)。
【化17】
i)Pd/C 10%、H2、2%NaOH、ii)オキソン、iii)DCC、DMAP、Tert−ブタノール、iv)Pd/C 10%、H2、v)AcOH
【化18】
【0084】
2−ニトロソフェニルプロピオン酸
水100mLおよび2当量の2% NaOH(103mL)中の2−ニトロケイ皮酸(5g、0.0259mol)の溶液に、パラジウム−チャコ−ル(10%)を触媒量(5%、0.25g)加えた。この反応混合物を水素雰囲気下、室温で48時間撹拌し、その後、TLC分析から反応の完結が判明した(酢酸エチル)。反応混合物を濾過助剤上で濾過してパラジウム−チャコ−ル(10%)を除去し、溶媒を減圧下で除去した。この粗製2−アミノフェニルプロピオン酸(propionic)を蒸留水50mLおよびジクロロメタン50mLに溶解した。オキソン(登録商標)2当量(31.8g、0.0518mol)を蒸留水50mLに溶解し、この反応混合物に加えた。この時点で、反応液はpH=4であったため、2−ニトロソフェニルプロピオン酸は、生成するや否や、有機層へと移された。2時間後、反応混合物を分液漏斗に移し、有機層を集め、水相を2×25mLのジクロロメタンで洗浄した。有機相を集め、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、4.12gの生成物を暗色油状物として得た。この粗製混合物をジクロロメタン:酢酸エチル(70:30)を使用してフラッシュカラムにかけ、3.48gの生成物を褐色の結晶(67%)として得た:融点:112〜114℃、IRvmax(KBr):1699.29(C=O)cm−1。1H NMR δ(CDCl3):7.99(1H,d,J 8Hz),7.65(1H,t,J 7.52Hz),7.57(1H,t,J 8.04Hz),7.43(1H,m),3.24(2H,t,J 7.52Hz),2.81(2H,t,J 7.52Hz)。13C NMR δ(CDCl3):177.96(C,C−9,C=O),170.91(C,C−2),132.88(CH,C−5),131.70(CH,C−6),131.63(C,C−1),127.30(CH,C−4),124.56(CH,C−3),34.09(CH2,C−8),27.61(CH2,C−7)。
【0085】
5−ニトロサリチル酸 tert−ブチルエステル
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(6.2g、0.030mol)を乾燥THF(50mL)に溶解し、これを、乾燥tert−ブタノール(125mL)中の5−ニトロサリチル酸(5g、0.0273mol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(3.3g、0.0273mol)の撹拌溶液に30分間にわたって滴下した。この混合物を一晩撹拌し、濾過して、生成したジシクロヘキシル尿素(DCU)を除去し、溶媒を減圧下で除去し、生成物を黄色油状物として得た。これを、ジクロロメタン:酢酸エチル(90:10)を使用してフラッシュカラムにかけ、5.29gの生成物を淡黄色の結晶(81%)として得た:融点:58〜60℃、IRvmax(KBr):3417.06cm−1、2118.35cm−1、1715.88cm−1、1673.77cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.73(1H,s),8.63(1H,d,J 2.52Hz),8.26(1H,dd,J 9および2.48Hz),7.01(1H,d,J 9.04Hz),1.61(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):168.01(C,C−2),166.09(C,C−7,C=O),139.24(C,C−5),129.54(CH,C−4),126.19(CH,C−6),117.98(CH,C−3),112.95(C,C−1),84.45(C,C−8),27.57(3×CH3,C−9)。
【0086】
5−アミノサリチル酸 tert−ブチルエステル
酢酸エチル(100mL)中の5−ニトロサリチル酸 tert−ブチルエステル(4.21g、0.0176mol)の溶液に、パラジウム−チャコ−ル(10%)を触媒量(0.41g、10%)加えた。この反応液を、水素雰囲気下で3時間撹拌した。この時点で、TLC分析(ジクロロメタン:酢酸エチル 60:40)は反応の完結を示した。この反応混合物を濾過助剤上で濾過してパラジウム−チャコ−ル(10%)を除去し、溶媒を減圧下で除去し、3.2gの生成物を淡緑色結晶(86%)として得た:融点:48〜50℃、IRvmax(KBr):3372.92cm−1、1668.16cm−1、1490.72cm−1。1H NMR δ(CDCl3):10.49(1H,s),7.12(1H,d,J 2.52Hz),6.8(2H,m),3.5(2H,NH2),1.61(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):169.13(C,C−7),154.44(C,C−2),137.63(C,C−5),123.30(CH,C−4),117.57(CH,C−3),114.71(CH,C−6),113.24(C,C−2),82.12(C,C−8),27.74(3×CH3,C−9)。
【0087】
5−[2−(2−カルボキシ−エチル)フェニルアゾ]−2−ヒドロキシ−安息香酸 tert−ブチルエステル(t−Bu−アゾ−2)
氷酢酸(20mL)中の2−ニトロソケイ皮酸(1.27g、0.0063mol)の溶液に、氷酢酸(20mL)中の5−アミノサリチル酸 tert−ブチルエステル(1.32g、0.0063mol)の別の溶液を15分間にわたって滴下した。TLC、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)による完結まで、反応液を48時間撹拌したままにした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を黒色油状物として得た。これを、ジクロロメタンを移動相として使用してフラッシュカラムにかけ、1.68gの標記の化合物を橙色の結晶(72%)として得た:融点:86〜88℃、IRvmax(KBr):1700.66cm−1、1665.87cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.52(1H,s),8.46(1H,s),8.08(1H,s),7.72(1H,s),7.42(3H,m),7.13(1H,s),3.48(2H,s),2.82(2H,s),1.70(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):179.00(C,C−9,C=O),169.18(C,C−16,C=O),163.79(C,C−13),149.57(C,C−2),145.09(C,C−10),139.21(C,C−1),130.54(CH,C−5),130.08(CH,C−6),127.65(CH,C−11),127.08(CH,C−4),126.97(CH,C−15),118.10(CH,C−14),115.07(CH,C−3),113.40(C,C−12),83.21(C,C−17),35.68(CH2,C−8),27.74(CH3,C−18),26.54(CH2,C−7)。
【0088】
tert−ブチルで保護されたミューチュアルプロドラッグ2
反応温度が40℃に到達した後、乾燥THF(50mL)中のアゾ化合物2(1.21g、0.0033mol)、プレドニゾロン(1.1当量、1.18g、0.0033mol)およびトリフェニルホスフィン(3当量、2.59g、0.0099mol)の溶液に、DIADを12分間にわたって滴下した(3当量、1.9mL、0.0099mol)。反応液を40℃で1時間撹拌し、反応液を窒素雰囲気下、室温で一晩放置すると、TLC分析(ジクロロメタン)は完結を示した。溶媒を減圧下で除去し、生成物を橙色の油状物として得た。これを、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、このカラム後、トリフェニルホスフィンオキシドは除去され、生成物1.60gを橙色の結晶(40%)として得るためには、第2のフラッシュカラム、ヘキサン(200mL)、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)が必要であった:融点:116〜118℃、IRvmax(KBr):3435.94cm−1、1724.53cm−1、1658.49cm−1、1615.49cm−1。1H NMR δ(CDCl3):8.40(1H,d,J 2Hz),8.10(1H,dd,J 8.52および2Hz),7.68(1H,d,J 8.04Hz),7.44(3H,m),7.33(1H,t,J 6.52Hz),7.09(1H,d,J 8.52Hz),6.27(1H,d,J 10.04Hz),6.01(1H,s),5.00(1H,d,J 17.56Hz),4.88(1H,d,J 17.56Hz),4.39(1H,s),3.49(2H,t,J 9.52),2.82(2H,t,J 8.04Hz),2.66−0.9(プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.69(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):204.83(C,C−20,C=O),186.46(C,C−3,C=O),172.51(C,C−22,C=O),170.73(C,C−5),169.08(C,C−13,C=O),163.73(C,C−10),156.77(CH,C−1),149.48(C,C−2),145.09(C,C−7),139.31(C,C−1),130.55(CH,C−5),130.00(CH,C−6),129.26(CH,C−8),127.04(CH,C−2),126.91(CH,C−4),125.72(CH,C−12),121.65(CH,C−4),118.18(CH,C−11),114.99(CH,C−3),113.29(C,C−9),89.20(C,C−17),83.27(C,C−14),69.56(CH,C−11),67.74(CH2,C−21),54.90(CH,C−9),50.87(CH,C−14),47.22(C,C−13),43.84(C,C−10),38.96(CH2,C−12),35.45(CH2,C−23),33.83(CH2,C−6),33.59(CH2,C−7),31.61(CH2,C−16),30.73(CH,C−8),27.75(3×CH3,C−15),26.66(CH2,C−24),23.41(CH2,C−15),20.54(CH3,C−19),16.42(CH3,C−18)。
【0089】
ミューチュアルプロドラッグ2(5−(2−{2[2−(11,17−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−10,13−ジメチル−3−オキソ−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)−2−オキソ−エトキシカルボニル]エチル}−フェニルアゾ}−2−ヒドロキシ−安息香酸)
ジクロロメタン(3mL)中のtert−ブチルアゾ2(0.9g、0.00126mol)の溶液に、トリフルオロ酢酸3(mL)を加え、反応液を室温で4時間放置した。TLC分析、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)は完結を示し、窒素を使用して溶媒およびトリフルオロ酢酸を吹き飛ばし、生成物を橙色の油状物として得た。この粗生成物を、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、0.7gの生成物を橙色の結晶(84%)として得た。融点:176〜178℃、IRvmax(KBr):3437.19cm−1、1718.06cm−1、1654.23cm−1、1587.93cm−1。MS 1H NMR δ(CDCl3):8.55(1H,s),8.00(1H,dd,J 6.04および1.48Hz),7.65(1H,d,J 5.28Hz),7.50(1H,6.76Hz),7.45(1H,4.52Hz),7.41(1H,m),7.34(1H,t,J 4.76Hz),6.28(1H,dd,J 6.76および1Hz),6.02(1H,s),4.90(2H,d,J 29.84Hz),4.41(1H,s),3.50(2H,t,J 5.04Hz),2.85(2H,t,J 5Hz),2.67−0−93(プレドニゾロンエンベロープ,19H)。13C NMR δ(MeOD):205.37(C,C−20,C=O),187.17(C,C−3,C=O),173.05(C,C−22,C=O),172.05(C,C−5),164.03(C,C−13,C=O),161.33(C,C−10),158.41(CH,C−1),149.62(C,C−2),144.93(C,C−7),139.12(C,C−1),129.85(CH,C−6),128.63(CH,C−8),126.47(CH,C−2),125.93(CH,C−4),124.54(CH,C−12),120.61(CH,C−4),117.65(CH,C−11),116.80(CH,C−3),114.51(C,C−9),88.71(C,C−17),68.93(CH,C−11),67.48(CH2,C−21),55.45(CH,C−9),50.94(CH,C−14),MeODの残留ピークがCのピークを覆い隠していた,C−13,44.23(C,C−10),38.37(CH2,C−12),35.19(CH2,C−23),33.72(CH2,C−6),32.79(CH2,C−7),31.33(CH2,C−16),30.78(CH,C−8),26.26(CH2,C−24),22.97(CH2,C−15),19.73(CH3,C−19),15.45(CH3,C−18)。
【化19】
i)Pd/C、H2、NaOH 2N中;ii)DCM/H2O中、オキソン;iii)TFA、TFAA中のアセトン、還流、8時間;iv)Pd/C、H2 EA中、室温;v:AcOH。
【化20】
vi:Ph3P、THF中のDIAD。
【0090】
5−ニトロサリチル酸 ダイオキシン−4−オン
マグネチックスターラーおよび還流冷却器を備えた500mlの丸底フラスコに5−ニトロサリチル酸(20g、109.2mmol)を入れ、200mlのトリフルオロ酢酸を加え、次いで無水トリフルオロ酢酸(45.54ml、327.7mmol)および乾燥アセトン(16.04ml、218.4mmol)を加えた。この反応混合物を、2時間還流させたままにした。反応が8時間以内で完結するまで、さらに8.02mlの乾燥アセトンを、毎時間(1時間あたり1当量)、沸騰している溶液に滴下した。次いで、減圧下、約55℃のバス温度でこの反応液を濃縮し、トルエンを加え、3回除去してあらゆるトリフルオロ酢酸の痕跡を除去し、最終的に固体残渣を真空下、45℃で1時間乾燥した。この粗製の褐色がかった固体をアセトン−石油エーテル(1:4)の混合物から2回再結晶し、20.5gのオフホワイトの(white off)結晶(84.1%)を得た(あるいは、小スケールで使用する場合には、アセトン−石油エーテル(1:4)またはジクロロメタンを移動相として使用するフラッシュクロマトグラフィを使用して生成物を精製することができる):融点92〜94℃、IRvmax(KBr):1738.92(C=O)、1616.23および745.94(NO2)cm−1。1H NMR δ(CDCl3):8.88(1H,d,J 2.51Hz),8.46(1H,dd,J 6.52および3.01Hz),7.16(1H,d,J 9.53Hz),1.80(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):159.82(C,C−7,C=O),158.50(C,C−4),142.33(C,C−1),130.79(CH,C−6),125.57(CH,C−2),118.09(CH,C−5),112.93(C,C−3),107.36(C,C−8),25.45(CH3,C−9およびC−10)。
【0091】
アセトニドで保護された5−アミノサリチル酸
室温の酢酸エチル(30ml)中の5−ニトロサリチル酸 ダイオキシン−4−オン(2g、8.96mmol)の溶液に、パラジウム−活性炭(10%)(0.5g)を加えた。反応がジクロロメタンを移動相とするTLCにより完結するまで、この混合物を水素雰囲気下で撹拌した。このパラジウムを濾過助剤に通して濾過し、溶媒を減圧下で除去し、1.44gの生成物を黄色結晶(83.2%)として得た:融点122〜124℃、IRvmax(KBr):1710.37(C=O)、3469.02および1324.22(NH2)cm−1。MS:216.0616(M++23)、194.0814(M++1)。1H NMR δ(CDCl3):7.24(1H,d,J 3.01Hz),6.91(1H,dd,J 5.52および3.01Hz),6.79(1H,d,J 9.04Hz),3.61(2H,s,NH2),1.69(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):161.16(C,C−7,C=O),148.15(C,C−4),141.36(C,C−1),123.38(CH,C−6),117.41(CH,C−2),113.54(CH,C−5),113.51(C,C−3),105.75(C,C−8),25.20(CH3,C−9およびC−10)。
【0092】
2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,3]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−酢酸(アセトニドで保護された担体)
氷酢酸(25ml)中の2−ニトロソフェニル酢酸(0.5g、2.58mmol)の溶液に、氷酢酸(25ml)中の5−アミノサリチル酸 ダイオキシン−4−オン(0.42g、2.58mmol)の別の溶液を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で48時間激しく撹拌し、ジクロロメタン−酢酸エチル(50:50)を移動相として使用してTLCにより反応の完結をチェックした。溶媒を減圧下で除去し、トルエンを2回加え、あらゆる酢酸の痕跡を除去し、橙色の粗生成物を得た。これを、ジクロロメタン−酢酸エチル(70:30)を移動相として使用するフラッシュクロマトグラフィによって精製し、0.78gの生成物を橙色の結晶(89%)として得た:融点124〜126℃、IRVmax(KBr):1734.84および1698.18(C=O)cm−1。MS:363.0950(M++23)。1H NMR δ(CDCl3):8.52(1H,d,J 2.51Hz),8.05(1H,dd,J 8.54および2.51Hz),7.77(1H,d,J 7.53Hz),7.47(1H,t,J 6.57Hz),7.43(2H,m),7.05(1H,d,J 9.03Hz),4.16(s,2H),1.80(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):177.67(C,C−8,C=O),160.42(C,C−15,C=O),157.85(C,C−12),149.66(C,C−1),147.86(C,C−9),133.78(C,C−2),131.55(CH,C−4),131.45(CH,C−3),128.93(CH,C−5),128.39(CH,C−14),126.64(CH,C−10),118.14(CH,C−6),116.07(CH,C−13),113.61(C,C−11),106.90(C,C−16),37.28(CH2,C−7),25.86(CH3,C−17およびC−18)。
【0093】
アセトニドで保護されたミューチュアルプロドラッグ1
乾燥テトラヒドロフラン(30ml)中の2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,3]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−酢酸(1g、5.16mmol)の溶液に、室温でプレドニゾロン(2.23g、6.19mmol)を加え、次いでトリフェニルホスフィン(4.11g、15.5mmol)を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、温度を40℃まで上昇させた。この時点で、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)(3.2ml、15.5mmol)を12分間にわたって滴下した。この混合物を2時間にわたって撹拌し、揮発物を減圧下で除去し、生成物を粗製黒色油状物として得た。2.21gの純粋な生成物を橙色の結晶(63%)として得るためには、2つのフラッシュクロマトグラフィカラム(ジクロロメタン−酢酸エチル 1:1およびヘキサン−酢酸エチル80:20)が必要であった。融点136〜138℃、IRVmax(KBr):1655.56(C=O)、1724.45(C=O)、3462.94(O−H)cm−1。MS 705.2784(M++23)。1H NMR δ(CDCl3):8.43(1H,d,J 2.01Hz),8.18(1H,dd,J 9.03および2.51Hz),7.73(1H,d,J 8.03Hz),7.43(2H,m),7.38(1H,m),7.25(1H,d,J 10.04Hz),7.11(1H,d,J 8.53Hz),6.21(1H,d,J 10.04Hz),5.95(1H,s),5.01(1H,d,J 17.56Hz),4.92(1H,d,J 17.57Hz),4.31(1H,s),4.22(2H,s),2.64−0.84プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.75(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):204.67(C,C−20,C=O),186.36(C,C−3,C=O),171.35(C,C−22,C=O),170.53(C,C−13,C=O),160.46(C,C−5),157.30(C,C−10’),156.67(CH,C−1),149.24(C,C−2’),147.64(C,C−7’),134.04(C,C−1’),131.66(CH,C−6’),131.28(CH,C−12’),131.22(CH,C−4’),127.88(CH,C−2),127.00(CH,C−5’),123.35(CH,C−8’),121.65(CH,C−4),117.67(CH,C−11’),115.24(CH,C−3’),113.17(C,C−9’),106.59(C,C−14’),89.18(C,C−17),69.44(CH,C−11),68.19(CH2,C−21),54.88(CH,C−9),50.84(CH,C−14),47.15(C,C−13),43.80(C,C−10),38.65(CH2,C−12),37.02(CH2,C−23),33.70(CH2,C−6),33.61(CH2,C−7),31.57(CH2,C−16),30.76(CH,C−8),25.41(CH3,C−15’およびC−16’),23.39(CH2,C−15),16.24(CH3,C−19),14.81(CH3,C−18)。
【0094】
2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,2]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−プロピオン酸
氷酢酸(40ml)中の2−ニトロソフェニルプロピオン酸(1g、4.97mmol)の溶液に、氷酢酸(40ml)中の5−アミノサリチル酸 ダイオキシン−4−オン(0.9g、4.97mmol)の別の溶液を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で48時間激しく撹拌し、反応の完結をジクロロメタン−酢酸エチル(50:50)と移動相として使用するTLCによりチェックした。溶媒を減圧下で除去し、トルエンを2回加えてあらゆる酢酸の痕跡を除去し、橙色の粗生成物を得た。これを、ジクロロメタン−酢酸エチル(70:30)と移動相として使用するフラッシュクロマトグラフィによって精製し、1.17gの生成物を橙色の結晶(68%)として得た:融点108〜110℃、IRVmax(KBr):1703.48および1740.04(C=O)cm−1。MS 377.1102(M++23)。1H NMR δ(CDCl3):8.57(1H,d,J 2Hz),8.17(1H,dd,J 6.52および2.51Hz),7.72(1H,d,J 7.53Hz),7.43(2H,m),7.15(1H,d,J 9.03Hz),3.50(2H,t,J 8.03および7.53Hz),2.79(2H,t,J 8.03および7.53Hz),1.81(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):176.97(C,C−9,C=O),160.11(C,C−16,C=O),157.37(C,C−13),149.39(C,C−1),147.64(C,C−10),139.80(C,C−2),131.16(CH,C−4),130.15(CH,C−3),129.01(CH,C−5),126.99(CH,C−15),125.60(CH,C−11),117.75(CH,C−6),115.20(CH,C−14),113.32(C,C−12),106.51(C,C−17),35.46(CH2,C−8),26.43(CH2,C−7),25.48(CH3,C−17およびC−18)。
【0095】
アセトニドで保護されたミューチュアルプロドラッグ2
乾燥テトラヒドロフラン(10ml)中の2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,2]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−プロピオン酸(0.2g、0.56mmol)の溶液に、室温でプレドニゾロン(0.2g、0.85mmol)を加え、次いでトリフェニルホスフィン(0.44g、1.68mmol)を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、温度を40℃まで上昇させた。この時点でジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)(0.35ml、1.68mmol)を12分間にわたって滴下した。この混合物を2時間にわたって撹拌し、揮発分を減圧下で除去し、生成物を粗製黒色油状物として得た。0.26gの純粋な生成物を橙色の結晶(68%)として得るためには、2つのフラッシュクロマトグラフィカラム(ジクロロメタン−酢酸エチル 1:1およびヘキサン−酢酸エチル80:20)が必要であった。融点130〜132℃、IRvmax(KBr):3437.13、1743.91、1656.48、1615.31cm−1。1H NMR δ(CDCl3):8.47(1H,d,J 2.01Hz),8.16(1H,dd,J 8.53および2.01Hz),7.67(1H,d,J 8.03Hz),7.38(2H,m),7.28(2H,m),7.10(1H,d,J 8.54Hz),6.23(1H,d,J 10.03Hz),5.97(1H,s),5.08(1H,d,J 17.57Hz),4.94(1H,d,J 17.56Hz),4.42(1H,s),3.45(2H,t,J 6.52),2.79(2H,t,J 8.03Hz),2.68−0.91(プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.75(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):204.92(C,C−20,C=O),186.44(C,C−3,C=O),172.37(C,C−22,C=O),170.68(C,C−13,C=O),160.45(C,C−5),157.25(C,C−10’),156.79(CH,C−1),149.14(C,C−2’),147.61(C,C−7’),139.99(C,C−1’),131.23(CH,C−6’),131.00(CH,C−12’),130.05(CH,C−4’),127.02(CH,C−2),126.93(CH,C−5’),123.74(CH,C−8’),121.64(CH,C−4),117.77(CH,C−11’),115.16(CH,C−3’),113.18(C,C−9’),106.57(C,C−14’),89.18(C,C−17),69.54(CH,C−11),67.77(CH2,C−21),54.92(CH,C−9),50.88(CH,C−14),47.14(C,C−13),43.86(C,C−10),38.85(CH2,C−12),35.89(CH2,C−23),33.75(CH2,C−6),33.61(CH2,C−7),31.62(CH2,C−16),30.78(CH,C−8),26.93(CH3,C−15’およびC−16’),25.42(CH2,C−24),23.45(CH2,C−15),16.35(CH3,C−19),14.81(CH3,C−18)。
【化21】
i)DCC、DMAP、MeOH、DCM中、3時間、室温;ii)Pd/C、H2、酢酸エチル中 2時間、室温;iii)HCl、NaNO2、30分、−5℃;iv)AcONa、NH4OH、室温、1時間;v);NaOH 2N、EtOH、24時間、室温;vi)DIAD、Ph3P、乾燥THF中、24時間。
【0096】
2−ニトロフェニル酢酸 メチルエステル
DCM(50mL)中の2−ニトロフェニル酢酸(5g、0.0276mol)の溶液に、DMAP(1当量、3.37g)を加え、次いでDCC(1当量、5.63g)を加え、最後にメタノール(5当量、5.58mL)を加えた。この反応混合物を2〜3時間撹拌し、TLCによって反応がいつ完結したかが示された。このあと、この反応液を濾過して生成したDCUを除去し、濾液を0.1N HCl(2×25mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×25mL)および水(2×25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。この粗製エステルをフラッシュクロマトグラフィ(DCM:EA 60:40)によって精製し、生成物を黄色油状物4.8g(90%)として得た:1H−NMR(400MHz,CDC13),δ:7.94(1H,d,J 8Hz),7.4(1H,t,J 7.2Hz),7.3(1H,t,J 7.6Hz),7.25(1H,d,J 7.6Hz),3.89(2H,s),3.59(3H,s)。13C−NMR(400MHz,CDCl3)δ:170.3(C=O,C−8),148.2(C−1),133.0(C−4),132.8(C−3),129.2(C−2),128.0(C−5),124.5(C−6),51.4(C−9),38.8(C−7)。
【0097】
2−アミノフェニル酢酸 メチルエステル
2−ニトロフェニル酸メチルエステル(1g、5.13mmol)を20mLのEAに溶解し、0.3gのPd/C 10%をこの溶液に懸濁させ、この反応混合物を室温で水素雰囲気下に置いた。2時間後、この反応はTLC分析(DCM:EA 60;40)によれば完結しており、Pd/C 10%を濾過によって除去し、溶媒を減圧によって除去し、無色の油状物0.67g(67%)を得た。
【0098】
2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−フェニル−酢酸 メチルエステル
濃HCl(9mL)を含む水(40mL)に2−アミノフェニル酸メチルエステル(3g、0.018mol)を溶解し、この溶液を氷/アセトン浴中で−5℃まで冷却し、そのあと1mLの水中の亜硝酸ナトリウム(1.32g、0.019mol)を滴下した。その時点で、ジアゾニウム塩が生成し、この溶液は淡黄色を帯びた。一匙の尿素を加えて過剰の亜硝酸ナトリウム(酸化剤)を中和し、5分後にこのジアゾニウム塩溶液を、−5℃の水(40mL)中のフェノール(1.68g、0.018mol)、酢酸ナトリウム(2.88g、0.036mol)およびアンモニア溶液(5mL)の溶液へと滴下した。添加終了後、氷酢酸(当量、5mL)を加え、この反応混合物を濾過した。濾過ケーキをEAに溶解し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィ(DCM 100mL、DCM:EA 80:20)によって精製し、2.7g(56%)を得た:融点158〜160℃、IRvmax(KBr):3221.84(OH)、1695.48(C=O)cm−1。1H−NMR(400MHz,アセトン)δ:9.14(1H,s),7.86(2H,d,J 8.50Hz),7.72(1H,d,J 8Hz),7.45(3H,m,J 7.52Hz),7.03(2H,d,J 8.50Hz),4.16(2H,s),3.62(3H,s)。13C−NMR(400MHz,アセトン)δ:204.91(C=O,アセトン),171.22(C=O,C−8),160.29(C,C−4’),149.64(c,C−2),146.20(C,C−1’),134.13(CH,C−6),131.13(CH,C−5),129.97(C,C−1),127.42(CH,C−4),124.65(CH,C−3,C−6’,C−2’),115.38(CH,C−5’),114.73(CH,C−3’),50.65(CH3,C−9),36.41(CH2,C−7),28.52(アセトン,CH3)。
【0099】
2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−フェニル−酢酸
上記エステル(0.266g、1mmol)を窒素雰囲気下で10mLのエタノールに溶解し、2N NaOH(2mL)をこの混合物に加え、光を遮断して一晩撹拌した。この反応混合物を1N HCl溶液に注ぎ込み、EAで抽出した。この有機相を水およびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、生成物をEA:n−ヘキサンを用いて再結晶し、生成物を橙色の結晶、0.2g(70%)として得た:融点138〜140℃、IRvmax(KBr):3280.04(OH)、1721.07(C=O)、1655.90(C=O)cm1。1H−NMR(400MHz,アセトン)δ:10.71(1H,s),9.13(1H,s),7.88(2H,d,J 8.52Hz),7.71(1H,d,J 7.52Hz),7.45(3H,m,J 8.04Hz),7.01(2H,d,J 8.52Hz),4.16(2H,s)。13C−NMR(400MHz,アセトン)δ:204.92(C=O,アセトン),171.65(C=O,C−8),160.20(C,C−4’),149.73(C,C−2),134.49(C,C−1’),131.18(CH,C−5),129.91(CH,C−6,C−1),127.28(CH,C−4),124.69(CH,C−3,C−6’,C−2’),115.32,(CH,C−5’)114.63(CH,C−3’),36.23(CH2,C−7),28.51(アセトン,CH3)。
【0100】
[2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−フェニル]酢酸 2−(11,17−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−3 オキソ−2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)−2−オキソ−エチルエステル フェノールアゾプロドラッグ
上記アゾ担体(0.5g、0.0019mol,)を、乾燥THF中のヒドロコルチゾン(0.34g、0.0009mol,)およびトリフェニルホスフィン(0.74g、0.0028mol)の溶液に加え、窒素雰囲気下で温度を40℃まで上昇させ、激しく撹拌しながらジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)(0.57g、0.0028mol)を12分間にわたって滴下した。この混合物を40℃で1時間にわたって撹拌し、反応液を窒素雰囲気下、室温で一晩放置した。揮発物を減圧下で除去し、生成物を橙色の油状物として得た。これを、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、このカラム後、トリフェニルホスフィンオキシドは除去され、このアゾプロドラッグ0.23gを橙色の結晶(42%)として得るためには、第2のフラッシュカラム、ヘキサン(200mL)、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)が必要であった:融点122〜124℃、IRvmax(KBv):3437.13(OH)、1721.07(C=O)、1655.90(C=O)cm−1。1H−NMR(400MHz,アセトン)δ:7.76(2H,d,J 8.53Hz),7.65(1H,d,J 7.03),7.33(3H,m),6.85(2H,d,J 8.53Hz),5.59(1H,s),4.90(1H,d,J 17.57Hz),4.74(1H,d,J 17.06Hz),4.18(2H,s),2.60−0.77(ヒドロコルチゾンエンベロープ,24H)。
【0101】
(分子内ラクタム化反応速度研究)
インビボでの当該プロドラッグからのステロイドの放出は、アゾレダクターゼ活性アミノステロイド生成物の環化で決まる。コルチゾンAおよびBのアミノ誘導体の環化速度を、残留する化合物を、コルチゾンの生成とともにHPLCによって測定することにより種々のpH値および37℃の水溶液中でモニターした。
【化22】
【0102】
消失についての一次速度定数は、残留するエステルの自然対数 対 時間のプロットから得ることができる。半減期は算出することができる(T1/2=0.693/kobs)。プロドラッグAの算出した半減期は2.2時間であり、プロドラッグBの算出した半減期は1.4時間であった。
【0103】
(生物学的研究)
(材料および方法)
プレドニゾロンおよびDSSは、シグマ−アルドリッチラボラトリーズ(Sigma−Aldrich laboratories)から購入した。
【0104】
BALB/c株マウスを、生物資源部門(Bioresources Unit)(トリニティ・カレッジ・ダブリン(Trinity College Dublin))から入手した。マウスを、陽圧下の個別換気およびフィルター付きケージ(テクニプラスト(Tecniplast)、英国、Nothants)で飼育した。食物および水は自由に取らせた。すべての動物実験は、アイルランド保健児童省(Irish Department of Health and Children)の規則を遵守して行い、トリニティー・カレッジ生物資源部門(Trinity College Bioresources)倫理審査委員会によって承認された。
【0105】
(統計解析)
すべてのインビボでの実験は、1群あたり6匹のマウスを用いて行った。群間の差異は、スチューデントのt−検定(Student’s t−test)によって解析した。大腸炎スコアは、マン−ホイットニー検定によって解析した。0.05未満のP値(P値<0.05)を有意であると見なした。DIA、C/BおよびT/B MPOについての結果は、平均±標準誤差として表した。
【0106】
(炎症性腸疾患モデルマウスの調製)
DSS(35〜50,000kDa;エムピー・バイオメディカルズ(MP Biomedicals)、オハイオ州)をマウスの飲用水に溶解した。新しいDSS溶液を1日おきに与えた。BALB/cマウスを、5% DSSに6日間曝露した。このマウスを、病的状態について毎日チェックし、重量を記録した。大腸炎の誘導は、体重減少、便中の血液および、剖検の際には、結腸の長さによって判定した。便中の血液は、Hemdetect潜血検出キット(ディプロ(Dipro)、オーストリア共和国)を使用して検出した。
【0107】
大腸炎の誘導を数量化するために、DSS誘導大腸炎の以前の研究(Cooper 1993)に基づいて、疾患活動性指数(disease activity index、DAI)を決定した。DAIは、体重減少、潜血および便の粘稠度/下痢に基づき、各マウスについて毎日算出した。各パラメータに対して1〜4のスコアを与えた。最大DAIスコアは12である。スコア0、体重減少なし、正常便、血液なし;スコア1、1〜3% 体重減少;スコア2、3〜6% 体重減少、軟便、便中に血液が見える;スコア3、6〜9% 体重減少;スコア4、<9% 体重減少、下痢、おびただしい出血(breeding)。軟便は、取り扱うと容易にペースト状になる便の形成として定義した。下痢は、便の形成がないこととして定義した。おびただしい出血は、便中のかなりの血液を伴う、肛門の周りの毛の上の新鮮血として定義した。
【0108】
(結腸の組織学的検査)
剖検では、結腸の長さを測定し、結腸の1cmの部分を10%ホルムアルデヒド−生理食塩水中で固定した。HおよびEで染色した部分を、以前の研究(Siegmund 2001)から変更したスコア化システムに基づいて等級付けした。組織学的検査のスコア化は、盲検方式で行った。炎症細胞の浸潤および組織の損傷の複合スコアは、以下のようにして決定した:細胞浸潤:スコア0、LPに時おり炎症細胞がある;1、主に陰窩基底部においてLP中での浸潤の増大;2、粘膜の中へと広がる炎症性浸潤の集密;3、浸潤の貫壁性拡大。組織の損傷:スコア0、粘膜損傷なし;1、大きな領域における部分的な(50%までの)陰窩の喪失;2、大きな領域における部分的〜全体(50〜100%)陰窩の喪失、上皮は無傷;3、大きな領域における陰窩の全喪失および上皮の喪失。
【0109】
(薬物有効性)
重量が約18〜20グラムのDSS誘導大腸炎マウスに、5% DSS水を自由に取らせ、1%溶液のクレモホア(cremophor)および水懸濁液中のエタノール中の、100μLのプレドニゾロンおよびプロドラッグ2(マウスの体重1Kgあたり5mgのプレドニゾロンと等価である)を1日に2回(12時間ごと)大腸炎マウスに経口投与した。プレドニゾロンおよびプロドラッグ処置の6日後、このマウスを頸椎脱臼によって屠殺した。遠位結腸部分および胸腺を取り出し、洗浄して結腸の内容物を取り除いた。
【0110】
1cmの遠位結腸部分および胸腺の新鮮重を測定し、体重に対する遠位結腸重量および胸腺重量の比(それぞれC/BおよびT/B)を得た。結腸検体の損傷を、材料および方法で記載したようにしてスコア化した。ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)について分析するまで、この遠位セグメントを液体窒素によって凍結し−80℃で保存した。
【0111】
(結果)
抗炎症性効果を、健康なマウスと、未処置のマウスと、プレドニゾロン処置マウスと、プロドラッグ処置マウスとの間での遠位結腸長さの比較によって検討した。IBDは、結腸の短縮を引き起こす。従って、抗炎症性効果、より少ない損傷が結腸組織上で観察され、より少ない還元遠位結腸長さについての原因であった。
【0112】
血流中のステロイドの濃度の上昇が胸腺の活性の抑制、およびその結果としてのその重量の減少を誘発するという事実に起因して、全身性の副作用を、健康なマウスと、未処置のマウスと、プレドニゾロン処置マウスと、プロドラッグ処置マウスとの間での胸腺重量および体重比の比較(Hideki Yano 2002)によって検討した。
【0113】
5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸部分からのDAIスコアのプロファイルである図13に示すように、出血の客観的評価および体重減少スコアは、溶媒対照群では閾値に向かって増加したが、処置群ではそうではなかった。
【0114】
5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸長さのプロファイルである図14に示すように、プロドラッグ2群は、PRED(P<0.0243)群よりも有意に長い結腸を有していた(P値は、結腸長さの差 対 溶媒群に対するスチューデントのt−検定である)。
【0115】
健康なマウス(未処置)および5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの胸腺重量体重比(T:BW)のプロファイルである図15に示すように、PRED群は、未処置のマウスに対して有意な胸腺:BW比の減少を有していた(P<0.05)。プロドラッグ処置群における平均の胸腺重量は、未処置のマウスと統計的な差異はなかった。
【0116】
(参考文献)
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【0132】
本願全体にわたって引用されたすべての文献の開示全体は、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0133】
本願明細書に記載される幅広い本発明の着想から逸脱することなく、変更が上記の実施形態に対してなされ得るということを、当業者は理解するであろう。それゆえ、本発明は開示された特定の実施形態および態様に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の趣旨および範囲の内に入るすべての変更態様に及ぶことが意図されているということは理解される。そのすべての可能な変形例における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本願明細書でそうではないと示されていない限り、またはあきらかに文脈と矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年6月29日出願の、発明の名称「胃腸疾患の治療のための標的指向化プロドラッグ(Targeting Prodrugs for the Treatment of Gastrointestinal Diseases)」の米国仮出願第60/947,104号の利益を主張する。この米国仮出願の開示は、その全体を本願明細書に援用する。
【0002】
本願は、炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患(これに限定されない)を含めた胃腸疾患の治療のために使用することができる化合物および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物の標的指向化は、特定の臓器、組織または細胞集団への薬物の送達と定義されてもよい(Schreier、2001)。まだその初期段階にあるが、この分野は、全身性の影響または副作用を低下させつつ薬物治療の有効性を増強するという可能性を与える。このアプローチの有望さおよび進行中の努力にもかかわらず、これまで成功例はほとんどない。これは、一部は、薬物輸送および可能性のある標的化ベクターの発現の基礎となる基本的要因の理解が限られていることが原因である。化学薬物の標的指向化は、化学薬物を標的組織で蓄積させる(通常は、生物可逆的な)薬物構造の緻密な改変を含み、プロドラッグからの部位特異的放出は、体内の別のところには存在しない化学的条件または酵素による条件によって誘発される。
【0004】
結腸は、薬物標的指向化アプローチの有効性にとっては重要な課題である。なぜなら、結腸内の条件は、胃腸管(GI)系の別のところで一般的な条件にほぼ類似しており、胃腸管にわたる管腔のpH勾配は、厳密に化学的な有効な局所的な薬物放出にとってはあまりに緩やかである(Bauer、2001)からである。他方、結腸は、結腸自体の病態(炎症性腸疾患(IBD)および結腸癌など)の治療のため、およびオピオイド薬物治療を伴う慢性の便秘の軽減のために重要な薬物標的である。この結腸は、胃腸管の他の領域から吸収されないかまたは十二指腸プロテアーゼの存在下ではあまりに不安定でありそこでは放出されないペプチドおよびタンパク質薬物にとっての入口となり得る部位としても重要である(Saffran、1986;Bai、1995年)。
【0005】
結腸と、部位特異的薬物放出のためのベクターとして利用され得る小腸との1つの重要な差異は、前者のふさふさしたミクロフローラである。ヒトの胃腸管系は、合計生体個体数が1014生物にもなる400〜500種の細菌にとっての生息地である。これは、ヒトの身体を構成する1013個の真核生物細胞と比べると、驚くべきことである。胃腸管は、胃から小腸を通って下りていくにつれて着実に増加する細菌濃度勾配を有し、続いて結腸で大きく増加する。小腸での細菌濃度は、典型的には103〜104CFU ml−1であるが、他方、結腸における濃度は1011〜1012CFU ml−1であり、便の乾燥重量の1/3は細菌からなる(MooreおよびHoldeman、1974および1975;SimonおよびGorbach、1984)。これらの生物は、小腸から入ってくる未消化の物質(特に多糖)を発酵することによってそのエネルギー必要量を満たし、この目的のために、巧妙な多種の酵素(アゾレダクターゼ、グルコシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−キシロシダーゼ、ニトロレダクターゼ、ガラクトシダーゼおよびデアミナーゼなど)を進化させた(Scheline、1973)。
【0006】
細菌性酵素発現のこの突然の増加は、薬物、特にIBDの治療用薬物を結腸に標的指向化する手段として研究されてきた。これらの努力の1つの成功した成果は、5−アミノサリチル酸(5−ASA)1というアゾ系プロドラッグの開発であった(スキーム1)。このプロドラッグは、その親水性および極性のために胃腸管系を無傷で通過し、その後、結腸ミクロフローラと関連したアゾレダクターゼによるアゾリンカーの還元の際に、その5−アミノサリチル酸「ペイロード」を放出する。イプサリジド(ipsalizide)、バルサラジド2(Chanら、1983)、スルファサラジン(原型)およびオルサラジン(olsalazide)3(Willoughbyら、1982)などのこの着想に基づくいくつかの薬物は、IBDの治療のために臨床で使用されている(Green、1998)。
【化1】
【0007】
抗炎症性ステロイドなどの他の薬物の種類の、結腸への標的指向化は、あまり成功していない(SinhaおよびKumria、2001)。逆説的ではあるが、これらの場合に適切な系の必要性はより差し迫っている。何故なら、ステロイドが胃および小腸から容易に吸収されることに起因して経口投与される場合には、ステロイドは多種の全身への副作用を有するからである。慢性炎症性腸疾患は、2つの主要な障害、つまり潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む。これらの状態はともに、下痢、体重減少および重篤になる可能性がありかつ生命を危うくする合併症の形態での重大な病的状態を生じる。欧州での発病率は最高80万人/年と見積もられるが(Logan、1998)、米国での絶対的発病率は約100万人と考えられており、年間15〜30,000の新しい症例が報告されている(DiPirioおよびBowden、1997)。それゆえ、IBDの根元的な病因を解明して新しい療法を開発するため、および既存の薬物療法を改善するためにも、多大な努力がなされてきたことは驚くことではない。これらの努力は、5−ASA誘導体およびステロイドに限られていた。
【0008】
[0001]ステロイドを結腸へと標的指向化するための努力は、特に多い。研究されてきた技術としては、生分解性ポリマー(Basit、2000)、徐放系、pH感受性材料を用いたコーティング、胃腸での圧力制御放出(Huら、1998)および化学薬物標的指向化が挙げられる。
【化2】
【0009】
後者の種類に属するアプローチは、細菌性多糖類プロセッシング酵素のための基質として作用し得る親水性担体をステロイドに結合することを中心に展開してきた(スキーム2)。研究された担体の例としては、グリコシド(例えば4、特許文献1〜7);グルクロニド(Haeberlin、1993;Cui、1994);ポリ−(L−アスパラギン酸)誘導体(Leopold、1995);α、βおよびγ−シクロデキストリン接合体(Yano、2002);ポリマー接合体(例えば5、McLeodら、1994)が挙げられる。これらの設計のいくつかは有望であるが、それらは、これまで限られた成功しか経験していない。これは、一部には、胃腸管の中でのグリコシダーゼの広範な分布に起因し(部位非特異的放出を生じる;SinhaおよびKumria、2001)、および一部の例では、結腸の中での緩慢な放出特性による(いくつかの多糖については最高12時間;Yang、2002)。アゾレダクターゼアプローチの使用の成功は、これまでは、一級芳香族アミンを有する薬物(5−ASAなど)に制限されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Friend D.R.およびChang G.W.、「Drug glycosides:potential prodrugs for colon specific drug delivery」、J.Med.Chem.、1985年、第28巻、51〜57頁
【非特許文献2】Fedorak R.N.、Cui N.、Friend D.R.、Madsen K.L.、Empey L.R.、「A novel colon−specific steroid prodrug enhances sodium chloride absorption in rat colitis」、Am.J.Physiol.、1995年、第269巻(2 Pt l):G210−8頁、PMID:7653560
【非特許文献3】Fedorak R.N.、Haeberlin B.、Empey L.R.、Cui N.、Nolen H. 3rd、Jewell L.D.、Friend DR.、「Colonic delivery of dexamethasone from a prodrug accelerates healing of colitis in rats without adrenal suppression」、Gastroenterology、1995年、第108巻、第6号、1688−99頁、PMID:7768373
【非特許文献4】Friend D.R.、Chow J.J.、Chang G.W.、「Effect of antibiotic pretreatment on glycoside/glycosidase−based colonic drug delivery」、Drug Des Deliv.1990年、第6巻、第4号、311−8頁、PMID:2083030
【非特許文献5】McLeod AD、Fedorak RN、Friend DR、Tozer TN、Cui N.、「A glucocorticoid prodrug facilitates normal mucosal function in rat colitis without adrenal suppression」、Gastroenterology、1994年、第106巻、第2号、405−13頁、PMID: 7507873
【非特許文献6】Nolen H. 3rd、Fedorak R.N.、Friend D.R.、「Budesonide−beta−D−glucuronide: a potential prodrug for treatment of ulcerative colitis」、J Pharm Sci. 1995年、第84巻、第6号、677−81頁PMID: 7562403
【非特許文献7】Tozer T.N.、Rigod J.、McLeod A.D.、Gungon R.、Hoag M.K.、Friend D.R.、「Colon−specific delivery of dexamethasone from a glucoside prodrug in the guinea pig」、Pharm Res.、1991年、第8巻、第4号、445−54頁、PMID:1871038
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
ヒドロキシルを有する化合物を結腸へと薬物標的指向化するための新規な戦略が本願明細書で提示される。ヒドロキシルを有する薬物を結腸へと標的指向化するための本発明の戦略は、グリコシダーゼ標的指向化アプローチの設計上の欠陥を克服するために設計された。ヒドロキシルを有する薬物の部位特異的送達を成し遂げるための1つの方法は、スキーム3に図式的に提示されている。1つの態様では、この薬物は、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤(特に結腸疾患の撮像で使用されるもの);ワクチン、抗原,、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質を含む群から選択される。
【0012】
本願の1つの態様では、当該方法は、IBDのマウスモデルにおける候補化合物の抗炎症性効果の評価を提供する。別の態様では、当該方法は、アゾ化合物の胃腸管透過性およびそれらが胃腸管を通る能力への洞察を提供する。
【0013】
本願では、本発明者らは、本願明細書に開示されるプロドラッグなどの化合物、および患者においてNFκB DNA結合活性を減少させるための選択的薬剤として有効である組成物に対する必要性を見出した。1つの態様では、炎症性腸疾患(IBD)を含めた種々の胃腸疾患を低下、緩和または治療するために有効な化合物または組成物の治療上有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0014】
1つの態様では、この薬物はエステル基を介して担体基に連結され、この担体基はアゾ結合によって第2の担体基へと接続される。この担体基は、アゾ基に直接取り付けられていてもよく、または間接的にアゾ基に取り付けられていてもよい。本願明細書で提示されるように、この担体基は、胃および腸上部からの吸収を最大限抑制するように設計される。この方法は、結腸でのアゾリンカーの選択的還元を利用する。この選択的還元により、薬物ペイロード(ステロイドなど)を遊離させる環化(ラクタム化など)を後に受ける化学的に不安定な、潜在性プロドラッグが放出される。特定の化合物では、この環化反応は実質的に自発的である。この設計の全体的効果は、上記薬物を担体基に繋ぐ生物学的に安定または堅牢なエステル基を、結腸の中でのみ見出される条件下で化学的に不安定なものにすることである。
【0015】
一般的に、本願のプロドラッグは「担体−薬物」と呼ばれる。この「担体」は、5−ASAまたはパラ−アミノ安息香酸(PABA)などの化合物を含むことができる。この担体が治療効果を有する場合(5−ASAなど)、このプロドラッグは、一般的に「ミューチュアルプロドラッグ(mutual prodrug)」と呼ばれる。かかるミューチュアルプロドラッグは、本願明細書では5−ASA−薬物と呼ぶことができ、この薬物は、本願明細書に開示される治療薬を含めた任意の適切な治療薬であることができる。かかるミューチュアルプロドラッグとしては、5−ASA−シプロフロキサシン、5−ASA−ベバシズマブ、5−ASA−プレドニゾロン、5−ASA−5−ASAなどを挙げることができるが、これらに限定されない。この担体が治療効果を有しない場合(PABAなど)、上記化合物は、単に「プロドラッグ」と呼ぶことができる。かかるプロドラッグは、本願明細書でPABA−薬物(例えばPABA−シプロフロキサシン、PABA−ベバシズマブ、PABA−プレドニゾロン、PABA−5−ASAなど)と呼ばれ得る。
【化3】
【0016】
当該プロドラッグの物理化学的特徴は、置換基S1およびS2を含めた当該化合物の性質を変えることによって、結腸に至る胃腸の透過のために最適化することができ、その際、本願明細書に開示されるようにアリール環上の置換基S1およびS2の1以上が用いられてもよいことが見出された。
【0017】
アゾ結合の還元は、容易に進行する。なぜなら、この還元は、イプサラジド(担体基がp−アミノ馬尿酸である)、バルサラジド(balsalzide)(p−アミノベンゾイル−β−アラニン担体)、スルファサラジン(スルファピリジン担体)、立体的にかさ高いPAF拮抗薬(Carcellerら、2001)、9−アミノカンプトテシン(aminocamphothecin)(Sakumaら、2001)および5−ASA−N−メタクリルアミド、アクリロイルオキシエチルおよびアクリロイルアミドコポリマー(例えばVan den Mooterら、1994)のように多様な基質を効率よく還元するそれらの能力によって証明されるように、基質に対する、結腸に存在するアゾレダクターゼのごちゃ混ぜ状態に基づくからである。腸に膨大なミクロフローラが存在することから、遠位小腸における−67±90から右結腸における−415±72まで酸化還元電位の変化が引き起こされる(Wildingら 1994)。アゾ薬物の放出における酵素による還元および化学還元の相対的寄与は十分には理解されていない。
【0018】
環化または閉環は、アミン基(アニリンアミノ基など)の、エステルへの求核的攻撃に依存する。かかるエステルの一例はステロイド系エステルである。アニリンは(脂肪族アミンと比べて)低い求核性を有するが、分子内配置の高い有効モル濃度は十分に速い閉環を促すであろう。ほぼ同等の条件における、アニリンによるエステルの分子内アミノリシスに関する報告が記載されている。Kirbyら(1979)は、メチル 3−(2−アミノフェニル)プロピオネートの自発的環化を研究し、中性(ほぼ結腸のpH)および39℃で、この反応は2×10−4sec−1の見かけの一次速度定数(これは、57分の一次半減期に対応する)で進行することを見出した。FifeおよびDuddy(1983)は、メチル (2−アミノフェニル)アセテートおよびトリフルオロエチル (2−アミノフェニル)アセテートの閉環(インドロンを与える)が、わずかに塩基性の条件下(pH 7〜8)で同様の反応速度論に従うことを報告した。これらの半減期は、滞留時間はかなり延びる傾向にある結腸での薬物放出のために理想的である。
【0019】
本願の化合物のエステル結合は、胃腸管中で見出される条件下で非常に安定である。胃腸管の管腔におけるエステラーゼ活性は、限られた数の基質、一般的には芳香族アミノ酸のエステルに対する残留エステラーゼ活性を呈する膵臓セリンプロテアーゼに限定される。例えば、ステロイドの21−エステル(番号付与については上記のスキーム2を参照)は、模擬腸液モデルの中で堅牢であることが示されている。例えばFleisherら(1986)は、ラット腸内灌流液中でのヒドロコルチゾン−21−コハク酸エステルの加水分解について0.003min−1の一次速度定数を報告した。この数字は12時間という半減期に対応し、これは予想される結腸への通過時間よりも著しく長い。Jhunjhunwala(1981)は、pH 7(45℃)で24時間後にヒドロコルチゾン−21−コハク酸エステルの5%未満が消失することを報告している。
【0020】
胃腸での吸収は分子量、親油性および極性によって変化し、一般に極性の親水性分子はあまり良好には吸収されない。S1によって表される置換基を含む担体基における変形の可能性の中には、例えば、担体(5−ASAが挙げられるが、これに限定されない)およびステロイドを連結するアゾ結合があり、これにより薬物(ステロイドなど)のミューチュアルプロドラッグが生成される。かかるミューチュアルプロドラッグは、質量、極性および親水性に起因して、腸を通過するための理想的なまたは好ましい物理化学的特徴をもたらし得る。
【0021】
本願で開示される立体的にかさ高いステロイド系エステルは、ヒドロコルチゾン−21−コハク酸エステルよりもはるかに、加水分解に対して不安定ではない(Jhunjhunwala、1981を参照)。さらに、このエステルは、ステロイド核上のいくつかの異なるヒドロキシル基のうちの1つで結合されていてもよい。例えば、本願明細書で提案されるいかなる理論によっても拘束されないが、非常にかさ高い11βアキシャルヒドロキシル基に位置するこれらのエステルは(スキーム2)、21−エステルよりも安定である。
【0022】
本願は、結腸を標的とする薬物(抗炎症性ステロイドなど)を放出するための2工程プロセスに関与することができる新規な系および化合物を開示する。本願は、ステロイド系化合物(例えばヒドロコルチゾン、デキサメサゾンまたはブデソニドのエステル類)、ニトロイミダゾール(例えばメトロニダゾール)、抗生物質、(例えばナリジクス酸などのキノリン、シプロフロキサシンまたはレボフロキサシンなどのフルオロキノロン、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシンなどのアミノグリコシド)、化学療法薬(例えばロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート)、および抗体、(例えばベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、インフリキシマブ)を含めた様々な化合物およびそれらの誘導体の合成を開示する。本願はさらに、閉環反応速度論の測定、酵素および腸内潅流液を使用する腸内安定性についてのインビトロスクリーニング、結腸細菌の存在下でのインビトロ薬物放出、および適切な動物モデルにおける治療有効性、例えば、抗炎症性有効性を開示する。1つの態様では、抗炎症性ステロイドであるヒドロコルチゾン、デキサメサゾンおよびブデソニドの21位、11位および17位での一連のエステルがプロドラッグとして調製される。別の態様では、本願は、当該アミノエステルの種々のアゾ誘導体の合成を開示する。
【0023】
以下のスキームは、抗腫瘍薬(アントラマイシン、サンサルバミド誘導体、カペシタビン)、COX−2阻害剤(レスベラトロール、クルクミン、メロキシカム、テノキシカム、ピロキシカム)、抗生物質製剤(メトロニダゾール)、免疫抑制剤(シクロスポリン)、および本願で調製され用いられてもよい化学保護作用薬(URSO)を含めた、代表的な生物活性のある薬剤および薬物を提示する。
【化4−1】
【化4−2】
【0024】
別の態様では、アミノ中間体化合物の閉環速度の測定または評価のための分析方法が提供される。閉環速度を評価するため、および担体基(アニリン誘導体など)における置換に起因する共鳴効果に対する閉環速度の依存性を測定するための方法もまた、本願明細書で提示される。本願のさらに別の態様では、水系条件下での(pH 1〜8での)、膵臓セリンプロテアーゼ(インビトロ)および腸に存在する他の酵素の存在下での、ならびにラット腸液の存在下での化合物の安定性を測定するための方法が提供される。
【0025】
別の態様では、インビトロでのミクロフローラの存在下でのこれらの化合物の還元速度を評価するための方法が提供される。さらに別の態様では、結腸炎症のマウスモデルを使用して上記化合物のインビボ有効性を評価するための方法が提供される。別の態様では、ラット灌流モデルを使用して本願明細書で提示される化合物の透過性を測定するための方法が提供される。この方法により、胃腸管を通る透過の評価が可能になる。結腸標的指向化の可能性のために、無視できるほどの透過性を有する化合物が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】pH 8(37℃)における、プロドラッグAの濃度 対 時間のグラフである。
【図2】pH 8(37℃)における、プロドラッグA濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図3】pH 7.4(37℃)における、プロドラッグAの濃度 対 時間のグラフである。
【図4】pH 7.4(37℃)における、プロドラッグA濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図5】プロドラッグの消失ならびにコルチゾンおよびキノロンの出現を示す、pH 9(37℃)におけるアミノプロドラッグBのラクタム化のプロファイルである。
【図6】pH 9(37℃)における、アミノプロドラッグB濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図7】pH 8(37℃)における、アミノプロドラッグBのラクタム化のプロファイルである。
【図8】pH 8における、アミノプロドラッグBの濃度の自然対数 対 時間のグラフである。
【図9】プロドラッグの消失ならびにヒドロコルチゾンおよびキノロンの出現を示す、pH 9(37℃)のPBSにおけるアミノプロドラッグBのラクタム化のプロファイルである。
【図10】pH 7.4(37℃)における、アミノプロドラッグBの濃度の自然対数のグラフである。
【図11】健康なマウス(未処置)および5mg/Kgの投薬量で処置したデキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された大腸炎(DSS誘導大腸炎)マウスの体重減少の割合(%)のプロファイルである。
【図12】5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸部分から得た疾患活動性指数(DAI)スコアのプロファイルである。
【図13】5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸長さのプロファイルである。
【図14】健康なマウス(未処置)および5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの胸腺重量体重比(T/BW)のプロファイルである。
【図15】図11に提示されたデータの再プロットおよび再解析を示す。図11は、スチューデントのt−検定を使用してデータセットを比較した。この図では、データセットは、一元配置ANOVA、続いてテューキーのポスト検定(Tukey post test)を使用して比較されている。それはまた、3つの吹き出しのグラフに示されるように、このデータを4〜6日目に統計的に比較する。DSSを投与されたすべてのマウスは、健康な対照と比較して、有意に体重を減少させた。しかしながら、マウスがプレドニゾロンまたはミューチュアルプロドラッグ2のいずれかで処置された場合、この体重減少は、溶媒のみの対照と比べて減少した。プレドニゾロンを投与された群とミューチュアルプロドラッグ2を投与された群との間には統計学的差異はなかった。
【図16】上記の統計的方法を使用する、図12に提示されたデータの再プロットおよび再解析を示す。DSSを投与されたすべてのマウスは、未処置のマウスと比べて、大腸炎の臨床徴候を示した。この疾患の重症度は、溶媒だけを投与されたマウスと比べて、プレドニゾロンを投与されたマウスまたはミューチュアルプロドラッグ2を投与されたマウスでは有意に低下した。ミューチュアルプロドラッグ2を投与された群とプレドニゾロンを投与された群との間には統計学的差異はなかった。
【図17】上記の統計的方法を使用する、図13に提示されたデータの再プロットおよび再解析である。結腸短縮は、大腸炎の重症度についての臨床的読み出し情報である。DSSを投与されたすべてのマウスは結腸の短縮を示した。ミューチュアルプロドラッグ2またはプレドニゾロンのいずれかで処置されたマウスは、溶媒だけで処置されたマウスよりも、有意に少ない短縮を示した。ミューチュアルプロドラッグ2で処置した群とプレドニゾロンで処置した群との間には統計学的差異はなかった。
【図18】胸腺重量:最終体重を示すさらなるデータとともに、上記の統計的方法を使用する、図14の再プロットおよび再解析を示す。対照実験では、未処置 対 溶媒処置マウスにおいては、胸腺重量 対 最初の体重または 対 最終体重には有意差は認められなかった。予想されるように、プレドニゾロン処置群は、溶媒処置マウスと比べて、T/BW比の有意な低下を示した。対照的に、ミューチュアルプロドラッグ2処置群におけるT/BW比は、溶媒処置群のT/BW比とは統計的に異なっていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(方法)
以下の方法は、アミノエステルのアゾ誘導体を含む、21位、11位および17位での抗炎症性ステロイドであるヒドロコルチゾン、デキサメサゾンおよびブデソニドの一連のエステルの調製を説明する。
【0028】
(閉環反応速度論化合物)
1つの具体的な例では、合成アプローチは、デキサメサゾンについて以下に概略が示される(スキーム4)。2−ニトロケイ皮酸は、接触還元によってアミノフェニルプロピオネートに還元され、そして直ちにBOC無水物で処理される。21位の最も露出されているステロイド系ヒドロキシル基は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド/ジメチルアミノピリジンを使用して選択的にアシル化される(Johnsonら、1985)。このBOC保護は、無水HClをジクロロメタン(DCM)溶液に吹き込むことによって除去することができ、アニリン6がHCl塩として回収される。この塩は、必要とされる時まで−80℃で保存される。メチル 3−(2−アミノフェニル)プロピオネートは、−20℃で保存していてさえも自発的に閉環する(Kirbyら、1979)。
【化5】
スキーム4:(i)Zn末、次いでPtO2、MeOH;(ii)BOC2O、(iii)ステロイド、DCC、DMAP、DCM;(iv)HClガス/DCM。
【0029】
ステロイド系アミノフェニルアセテートエステルは、(o−ニトロフェニル酢酸)を使用するエステル化、続くメタノール中でZn末を使用してニトロ基を還元することにより得てもよく、上記のとおり、塩酸塩が生成する。閉環に対する共鳴効果/立体効果を評価するのに適した化合物は、同様にして得られる。従って、例えば、異性体のステロイド系21−メトキシ−アミノフェニルアセテート7および8は、3−メトキシフェニル酢酸の2−ニトロ化、続くエステル化および還元を経由して得てもよい(スキーム5)。ケイ皮酸シリーズは、同様にして(メトキシケイ皮酸のニトロ化、還元、BOC保護、エステル化および脱保護)得てもよい。アミノ基に対してオルトおよびパラのメトキシ基は、ラクタム化に対する立体的影響と電子的影響とを判別するために使用してもよい。
【化6】
スキーム5:(i)HNO3、AC2O(ii)ステロイド、DCC、DMAP、DCM;(iii)Zn末、MeOH。
【0030】
[0002]より込み合った11−ヒドロキシル基は、17α−OHおよび21−OH基の保護(Sloanら、1978)、その後のより過酷な条件下でのアシル化(または、フェニル酢酸塩化物を使用することによる(Sprattら、1985))、続く還元および脱保護によって扱われて、11−フェニルアセテートを与えてもよい。
【化7】
スキーム6:(i)アセトン、TsOH、熱(ii)2−ニトロフェニル酢酸、DCC、DMAP、DCM;(iii)H3O+;(iv)Zn、MeOH。
【0031】
本願のアゾプロドラッグは、アゾ結合単位との、ステロイドのエステル化によって得てもよい。例えば、5−ASA−ステロイドミューチュアルプロドラッグ9、5−ASA−デキサメサゾン(スキーム4)は、化合物10とのデキサメサゾンのエステル化、続くサリチル酸エステルの脱保護によって得てもよい。腸内透過性を実証するために、同様に,多くのアゾ担体接合体を生成してもよい。
【化8】
スキーム7:(i)NaNO2、HCl、次いでtert−ブチルサリチル酸。
【0032】
(環化反応速度論)
環化の反応速度論は、適宜UV、HPLCまたはNMRを使用してモニターしてよい。ステロイド系プロピオネートエステルの自発的環化のキノロン生成物は340nmにλmaxを有し、このため、それらの測定がエステル出発物質およびステロイド系生成物の存在下で可能になる。コルチコステロイドは、一般に240〜250nmの領域にλmax値を有する。あるいは、この反応は緩衝化D2O中で1H NMRによってモニターされてもよい。リアルタイム分析が好ましいが、この反応は環化を抑制するために冷却された迅速なショートカラムHPLC(RT<1分)によってモニターされてもよい。特定の態様では、この反応は、アセテートシリーズおよびプロピオネートシリーズの両方について、11位および21位の両方において5〜8のpH範囲でモニターされてもよい。これらの化合物およびその誘導体の最適な治療活性を決定するために、アニリノ環上の置換の効果も、この方法を使用して決定されてもよい。
【0033】
(腸内安定性)
候補アゾ化合物の相対的安定性は、ある範囲の精製された膵臓エンドペプチダーゼ(カルボキシペプチダーゼなど)の存在下で、インビトロで評価することができる(Gilmerら、2002)。最大の安定性を呈する化合物は、ラット腸内灌流液モデルでの評価のために選択されてもよい(Friendら、1985;Yanoら、2002)。バイオリソーシーズ社(Bioresources,TCD)(アイルランド)から入手したラットの胃腸管の一部は、軽く洗浄され、適切なpHで緩衝化されてもよい。上記化合物がインキュベーションされて、ある間隔でアリコートが抜き取られてもよい。これらのマトリクスが複雑な性質を有するため、残留する薬物は逆相HPLCによって測定されてもよい。半減期は、ミカエリス−メンテン反応速度論を使用して測定してよい。選択された化合物の腸内安定性特性は、腸内ホモジネートおよびヒトCACO−2細胞ホモジネートを使用して、さらに探索されてもよい。
【0034】
(インビトロでの結腸細菌によるアゾ還元)
候補化合物のアゾ結合の、還元を受ける感受性は、市販のラクトバチルス(Lactobacillus)培養液(Azad Khanら、1983)(この生物は、結腸細菌に対して類似のアゾレダクターゼを発現する)を接種した培地を用いる単純なインビトロでの細菌による分解モデルを使用して評価されてもよい。この培地には、補酵素NADPHおよびFADが添加されてもよい。還元はさらに、CO2を飽和させたラットまたはモルモットの結腸灌流液を使用して、検討されてもよい(例えばYano、2002を参照)。
【0035】
(抗炎症性活性)
インビボでの当該プロドラッグの有効性は、動物モデルで評価されてもよい。急性のマウスのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘導された大腸炎において、NFκB DNA結合活性は増大し、観察される炎症症状はヒト炎症性腸疾患/大腸炎で認められる炎症症状と似ている(Okayasuら、1990)。
【0036】
balb/cマウスは、この実験のために使用するのに適した株である。なぜなら、balb/cマウスは、経口DSSに感受性があり、大腸炎を生じることが公知であるからである(Eggerら、2000)。動物が成熟しており、体重が同程度であることを確実にするために、6〜8週齢の雌のマウスが使用されてもよい。E(誤差の自由度(error degrees of freedom))=N(実験単位の数)−T(処置数)の資源方程式法、および全部で21群を用いることに基づき、1群あたり3動物が適切なサンプルサイズと考えられる(E=42)(Festingら、2002)。12群のマウスは、7日間のあいだ蒸留水中の2.5% DSSを自由に投与されてもよい。以前の実験では、この濃度のDSSが、軽度の体重減少または等級IIIの病変(これは、広範な粘膜破壊を表す)を伴う軽度の大腸炎を誘導するのに十分であると示されている(Eggerら、2000)。残りの9つの対照群は蒸留水だけを投与されてもよい。その後、マウスは、経口投与によって、プロドラッグを用いて処置されてよい。DSSを投与された群のうちの8つは、2つの異なる量のプロドラッグを連続1〜4日間、1日2回投与されることになる。マウスは、最後の用量が投与されてから1時間後に頚椎脱臼によって屠殺されてもよい。誘導された大腸炎から自然に回復するマウスについての対照として、DSS処置群は、4日間の各々の日に、プロドラッグ処置マウスが屠殺されるとの同時に、屠殺されてもよい。水だけを投与されることになる対照マウスは、DSS処置動物と同用量のプロドラッグを投与されてもよい。1つの対照群は、未処置のまま置かれてもよい。
【0037】
腸は、組織学的検討およびRNA抽出のために取り出されてもよく、それゆえ、切開,組織学的検査およびRNA抽出手法を実行するために、さらに3匹の未処置のマウスが必要とされる。結腸の切片は、10%亜鉛−ホルマリン中で固定され、パラフィン中に包埋されてもよい。横断面は、通常どおりヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色されてもよい。粘膜損傷の重症度は0−IIIの尺度で等級付けされる:等級0:正常;等級I:歪みおよび/または腺の下方1/3の破壊;等級II:びらん/腺の下方2/3の破壊または表面の上皮が残ったすべての腺の喪失;等級III、すべての腺の喪失(Eggerら、2000;Festingら、2002;Eggerら、1997)。DSS誘導大腸炎においては上方制御されるNFκB依存性炎症促進性のサイトカインIL−IおよびTNF−αのレベルを測定するために、抽出されたRNAに対して逆転写PCRが行われてもよい(Eggerら、2000)。これらの研究から得られる結果によって、必要に応じて、異なる濃度のプロドラッグおよび異なる用量数を用いてこの実験が繰り返されてもよい。
【0038】
(胃腸管透過性評価)
上記プロドラッグは、吸収プロセスから排除され、従って結腸へと通過することができるように設計された。さらなる評価のための化合物は、それらの透過性特性が低いことに基づいて選択されてもよい。当該化合物の胃腸管挙動は、まずめくれ上がった腸の嚢を使用して評価されてもよく(WilsonおよびWiseman、1954)、このめくれ上がった腸の嚢は、インビトロのバリア(in vitro barrier)および下記の腸灌流モデルを通る薬物移動の直接の評価および比較を可能にする。
【0039】
(インビボモデル:単回通過灌流(Single Pass Perfusion):腸内灌流)
これは、基本的に、当該管腔からの薬物の欠乏がモニターされる単離された腸ループモデルである(Komiyaら、1980)。この腸は麻酔された動物の中の原位置に留まっているため、正常機能が乱される程度は可能な限り小さい。内臓の血流量は自然に変わるものであり、麻酔下では減少するという点で、このモデルには限界がある。この動物の正中切開によって、腸の回腸の中央部分20〜40cmが優しく露出される。カニューレ挿入を容易にするための接近しやすさおよび適切な脈管構造のために、この部分が選択される。隣接部分への腸間膜のアーチ形構造が結紮される。腸が切断され、灌流のためにTygonチューブがカニューレ挿入される。腸間膜静脈が、適切なサイズのサイラスティックチューブまたはポリエチレンチューブでカニューレ挿入され、静脈血が、ヘパリン処置された(またはこれと同等)、較正された遠心管の中に採取される。等張性リン酸緩衝液を用いて37℃で腸管腔を優しく洗浄した後、薬物溶液がそのセグメントの近位部分へ灌流され、0.2ml/分でそのセグメントを流され、そしてその管腔セグメントの遠位端で集められる。歯科用ゴムのダム(dental rubber dam)に覆われているその腸を覆っているガーゼに暖かい(37℃)生理食塩水を頻繁に施用することによって、単離された腸は温かくかつ湿った状態に保たれる。調製物を37℃に維持するために、小さいランプも使用される。当該薬物は、定期的な間隔で灌流液を集めながら、120分間まで腸に通して灌流される。灌流液は分析され、灌流液からの薬物消失が実験の時間的経過にわたってモニターされる。
【0040】
(本願の実施形態および態様)
上記の1つの特定の態様では、上記実験は、IBDで使用される2つの主な療法の新規なミューチュアルプロドラッグを含めた抗炎症性ステロイドで結腸を標的指向化する手段としての当該方法の評価を提供する。
【0041】
本願の別の態様では、いくつかの新しい群のアニリンおよびアゾ担体を有する新規なステロイド系エステルの合成方法を提供する。この方法は、模擬的な生理的条件下でのアミノフェニルアセテートおよびプロピオネートエステルの環化反応速度論の包括的な研究、および閉環反応速度論に対する電子的および立体的な環置換効果に関する洞察を提供する。加えて、この方法は、21および11−コルチコステロイドエステルの水中での安定性、酵素に対する安定性、および腸内での安定性の判定を提供する。さらに別の態様では、この方法は、ステロイドアザ接合体の還元速度の測定、およびステロイドおよび環置換効果への依存性の判定を可能にする。
【0042】
1つの実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体式の混合物の形態にある、Iaの化合物:
【化9】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、Zは、−C(O)−、−S(O)−、−OC(O)−、−OC(O)NR13−、−S−C(O)−、−SC(O)NR13−、−C(O)NR13−、−NR13C(O)NR13−、−OS(O)−、−OS(O)2−、−S(O)2NH−および−OPO(OH)−からなる群から選択され、各R1、R2、R5およびR6は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、各R3およびR4は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R11は、水素、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、および−C(O)OR10からなる群から選択され、各R9およびR12は独立に、水素、(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、−SO3R13、−PO3R13、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは置換もしくは非置換であるか、またはR11およびR12は、フェニル環において隣接して置換している場合は、一緒になって任意に置換された複素環式環を形成し、R10は、水素または(C1〜3)アルキルであり、各R13は独立に水素または(C1〜3)アルキルであり、各a、bおよびcは独立に0、1または2である)、またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R11およびR12は一緒になって任意に置換された複素環式環を形成する。別の変形例では、R11およびR12は一緒になってアセトニジル−4−オンを形成する。さらに別の変形例では、R11はC(O)O−R10であり、R12およびR10の各々は水素である。
【0043】
別の実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iの化合物:
【化10】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、各R1、R2、R5およびR6は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、R8は水素であるかまたは(C1〜3)アルキルであり、R9は、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各a、bおよびcは独立に0、1または2である)またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R7およびR8は水素であり、cは1または2である。別の変形例では、およびbはともに0であり、cは1または2である。さらに別の変形例では、R9は水素であり、別の変形例では、R7およびR8は水素であり、R9は水素であり、aおよびbはともに0である。
【0044】
別の実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIの化合物:
【化11】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、各R1、R2、R5およびR6は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、R8は水素であるかまたは(C1〜3)アルキルであり、各a、bおよびcは独立に0、1または2である)またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R7およびR8は水素であり、cは1または2であり、別の実施形態では、aおよびbはともに0であり、cは1または2である。さらに別の変形例では、R7およびR8は水素であり、aおよびbはともに0である。
【0045】
さらに別の実施形態では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIIの化合物:
【化12】
(式中、Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、R5およびR6は独立に水素であるかまたは独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、R7は水素でるかまたは(C1〜3)アルキルであり、R8は水素であるかまたは(C1〜3)アルキルである)またはその薬学的に許容できる塩が提供される。1つの変形例では、R5およびR6は水素であり、別の実施形態では、R5、R6、R7およびR8は各々水素である。別の変形例では、R7およびR8は各々(C1〜3)アルキルである。
【0046】
上記の実施形態、変形例および態様の各々についての本願の1つの態様では、開示される化合物のいずれものAまたはヒドロキシルを有する薬物は、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される。1つの変形例では、このヒドロキシルを有する薬物は抗炎症薬である。別の変形例では、この抗炎症薬はステロイドである。さらに別の変形例では、このステロイドは、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、ならびにプレドニゾロンからなる群から選択される。
【0047】
上記の実施形態の各々、その態様および変形例の1つの変形例では、R11およびアゾ基(すなわち、−N=N−)を含むリンカーは、当該フェニル環上で1,4−二置換されている(すなわち、パラ)。別の変形例では、R12はHである。上記のもののさらに別の変形例では、aは0であるか、またはaおよびbはともに0である。上記のものの別の変形例では、R9はHである。
【0048】
本願の別の態様では、開示される化合物のいずれものAまたはヒドロキシルを有する薬物は、ニトロイミダゾール、キノリン(ナリジクス酸など)、フルオロキノロン(シプロフロキサシンまたはレボフロキサシンなど)、アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシンなど)、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される。上記のものの特定の変形例では、この薬物は、アミンを有する薬物(すなわち、アミン基をする薬物)(セレコキシブなど)、またはチオールを有する薬物である。
【0049】
1つの態様では、本願の化合物は、
【化13−1】
【化13−2】
からなる群から選択される。
【0050】
1つの態様では、本願明細書で提示される開示される化合物のいずれかの治療上有効量と、薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0051】
1つの実施形態では、患者においてNFκB DNA結合活性を減少させる方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量を当該患者に投与することを含む方法が提供される。1つの変形例では、この治療上有効量は、炎症性腸疾患(IBD)を低下、緩和または治療するために有効である。別の変形例では、この治療上有効量は、潰瘍性大腸炎またはクローン病を低下、緩和または治療するために有効である。
【0052】
1つの態様では、炎症性腸疾患(IBD)を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。別の態様では、クローン病または潰瘍性大腸炎を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。上記のものの1つの変形例では、投与される化合物または組成物の量は寛解を維持するために十分な量である。上記の方法の別の変形例では、5ASA−5ASAが投与される。
【0053】
別の態様では、急性潰瘍性大腸炎を低下、緩和または治療する方法であって、治療上有効量の5ASA−ステロイドを投与することを含み、ステロイドは、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、またはプレドニゾロンである方法が提供される。1つの変形例では、このステロイドはプレドニゾロンである。
【0054】
別の実施形態では、コラーゲン形成大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎(Ischaemic colitis)、便流変更性大腸炎(Diversion colitis)、ベーチェット症候群、感染性大腸炎(Infective colitis)、または非定型大腸炎(Indeterminate colitis)を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。別の態様では、アメーバ症、クロストリジウム・ディフィシル感染症、偽膜性大腸炎、憩室炎、胃腸炎、胃腸癌、または過敏性大腸症候群(IBS)を治療する方法であって、本願のいずれかの化合物または組成物の治療上有効量をかかる治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む方法が提供される。
【0055】
別の実施形態では、哺乳動物における炎症状態を治療または緩和する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を結腸に送達することを含み、このCOX2阻害剤は本願明細書で提示される化合物または組成物のいずれかのヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法が提供される。別の実施形態では、哺乳動物における胃腸癌を治療する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を結腸に送達することを含み、このCOX2阻害剤は本願明細書で提示される化合物または組成物のいずれかのヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法が提供される。
【0056】
上記の実施形態、態様および変形例には、アミノ酸の塩(アルギン酸塩など)、グルコン酸塩、およびガラクツロン酸塩も包含される。本願の化合物のいくつかは分子内塩または双性イオンを形成してもよい。本願の化合物のいくつかは溶媒和されていない形態および溶媒和されている形態(水和されている形態を含む)で存在することができ、これらは本願の範囲内にあることが意図されている。薬学的に許容できる賦形剤と、本願の少なくとも1つの化合物の治療上有効量とを含む医薬組成物も提供される。
【0057】
本願の化合物、またはその誘導体の医薬組成物は、非経口投与用の溶液または凍結乾燥された粉末として配合されてもよい。粉末は、使用に先立って適切な希釈剤または他の薬学的に許容できる担体の添加によって再構成されてもよい。液体配合物は、一般に緩衝化された、等張性の水溶液である。適切な希釈剤の例は、通常の等張性食塩水溶液、水中の5% デキストロースまたは緩衝化された酢酸ナトリウムまたは酢酸アンモニウム溶液である。かかる配合物は、非経口投与に特に適しているが、経口投与用に使用されてもよい。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、またはクエン酸ナトリウムなどの賦形剤も加えられてよい。あるいは、これらの化合物は、経口投与用に、封入されていてもよいし、錠剤化されていてもよいし、またはエマルションまたはシロップの中で調製されてもよい。薬学的に許容できる固体または液体の担体は、当該組成物を増強もしくは安定化するために、または組成物の調製を容易にするために加えられてよい。液体担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコールまたは水が挙げられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸、タルク、ペクチン、アラビアゴム、寒天またはゼラチンが挙げられる。この担体は、単独のまたはワックスを伴うグリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートなどの徐放性物質をも含んでいてよい。固体担体の量は様々であるが、好ましくは、投薬単位あたり約20mg〜約1gであってよい。医薬調剤は、錠剤形態については製粉、混合、造粒、および必要な場合には圧縮を、または硬ゼラチンカプセル剤形態については製粉、混合、および充填を伴う、薬学の従来の手法に従って製造される。液体担体が使用される場合、その調剤は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または水系もしくは非水系の懸濁剤の形態であってもよい。かかる液体配合物は、経口により直接投与されてもよいし、または軟ゼラチンカプセル剤の中へと充填されてもよい。これらの投与方法の各々に適した配合物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro編、第20版、Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、Paに見出され得る。
【0058】
1つの変形例では、任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体式の混合物の形態にある、上記化合物、またはその薬学的に許容できる塩が提供される。
【0059】
(定義)
本願明細書において明確に特段の注記がない限り、使用される用語の定義は、有機合成および薬科学の技術分野で使用される標準的な定義である。
【0060】
「アルキル」基は、任意に鎖中の炭素原子の間に酸素、窒素または硫黄原子が挿入されているかまたは示されたとおりの炭素原子の鎖を有する直鎖、分枝鎖、飽和または不飽和の脂肪族基である。例えば、(C1〜C10)アルキルは、1〜10個の炭素原子の鎖を有するアルキル基含み、これには、例えば、基メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1,3−ブタジエニル、ペンタ−1,3−ジエニルなどが含まれる。アルキル基は、例えば、−(CR1R2)a−基(式中、R1およびR2は、独立に水素であるか、または独立に、本願明細書で提示されるように置換され、例えば、aは0、1または2である)として表されてもよい。
【0061】
例えば「アリールアルキル」として表される、アリール基などの別の基とともに言及されるアルキルは、アルキル基(例えば、(C1〜C10)アルキルにおけるように)および/もしくはアリール基に示された原子数を有する直鎖、分枝鎖、飽和または不飽和の二価の脂肪族基であることが意図されている。または、原子が示されていない場合は、このアルキルは、このアリールとアルキル基との間の結合を意味する。かかる基の非排他的な例としては、ベンジル、フェニルエチルなどが挙げられる。
【0062】
「アルキレン」基は、アルキル基の中に示された原子数を有する直鎖、分枝鎖、飽和または不飽和の二価の脂肪族基;例えば、−(C1−C3)アルキレン−または−(C1−C3)アルキレニル−である。
【0063】
「アリール」基は、環の中に5〜8個の原子を有する単環式または二環式の芳香族炭化水素基、例えばフェニルである。この単環式アリール基は、典型的には5〜7員環であり、二環式アリール基は典型的には7〜8員環である。
【0064】
用語「ヘテロアリール」は、本願明細書で使用する場合、例えば、約3〜約30個の原子、好ましくは約6〜約18個の原子、より好ましくは約6〜約14個の原子、最も好ましくは約6〜約10個の原子および1〜3個のヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含むアリール基を意味する。かかる基の例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チオフラニル、チアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、キノリニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリルおよびベンゾトリアゾリルが挙げられる。
【0065】
モノシクリル基またはポリシクリル基などの「シクリル」には、単環式のシクロアルキル、または直鎖状に縮合した、角度をつけて縮合したもしくは架橋したポリシクロアルキル、またはこれらの組合せが含まれる。かかるシクリル基は、ヘテロシクリル類似体を含むことが意図されている。シクリル基は、飽和、部分飽和または芳香族であってもよい。
【0066】
「ハロゲン」または「ハロ」はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0067】
「ヘテロシクリル」または「複素環」は、その環を形成する原子のうちの1以上がN、OまたはSであるヘテロ原子である、シクロアルキル基である。シクロアルキルは、飽和、部分飽和または芳香族であってもよい。ヘテロシクリルの非排他的な例としては、ピペリジル、4−モルホリル、4−ピペラジニル、ピロリジニル、1,4−ジアザペルヒドロエピニル(diazaperhydroepinyl)、アセトニジル−4−オン、1,3−ジオキサニル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラニルなどが挙げられる。
【0068】
用語「アルコキシ」には、二価の酸素に結合した直鎖または分枝状のアルキル基が含まれる。このアルキル基は、これまでに定義されたとおりである。かかる置換基の例としては、メトキシ、エトキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。用語「アルコキシアルキル」は、1以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を指す。用語「ヘテロアリールオキシ」は、1以上のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基を指す。用語「アリールオキシ」は、酸素に結合したアリール基、例えばフェニル−O−などを指す。
【0069】
本願明細書で使用する場合、二価の基が本願明細書に記載されるように基−Z−として、または例えば下記に示すように一般的に−A−B−によって表される場合、下記の2つの構造で記述されるような可能な順列の両方で結合されていてもよい基を表すことも意図されている。
【化14】
【0070】
例えば、例として基「−NR13C(O)−」などの二価の基が提示された場合、その基は、二価の基−NR13C(O)−および同様に二価の基−C(O)NR13−の両方を含むことも意図されている。
【0071】
「ヒドロキシルを有する薬物」は、ヒドロキシル(すなわち、−OH)基で官能化されているか、または置換されている薬物または生物活性化合物を意味する。従って、ヒドロキシルを有する薬物の残基は、ヒドロキシル基を除いた当該薬物または生物活性化合物の構成要素である。本願で用いられる薬物には、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤(特に、結腸の疾患の撮像で使用されるもの);ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子、およびタンパク質を含めてもよい。かかる薬物としては、ステロイド系化合物(例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメサゾンまたはブデソニドのエステル類)、ニトロイミダゾール(例えばメトロニダゾール)、抗生物質、(例えば、ナリジクス酸などのキノリン、シプロフロキサシンおよびレボフロキサシンなどのフルオロキノロン)、化学療法薬(例えばロイコボリン、トポテカン)、および抗体、(例えばベバシズマブ、セツキシマブおよびパニツムマブ)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0072】
「薬学的に許容できる塩」は、一般に所望の薬理学的活性を有すると考えられ、安全、無毒であると考えられ、かつ獣医学およびヒトでの薬理学的用途に対して許容できる塩組成物を意味する。かかる塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸と形成される酸付加塩;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、サリチル酸など有機酸と形成される酸付加塩が挙げられる。
【0073】
本願明細書で使用する場合の「プロドラッグ」は、体内で、特に結腸において変換または分解して本発明の生物活性化合物(例えば、上記中間体アニリンまたは上記ラクタムおよび上記活性薬物)を生成することができる生体前駆体(bioprecursor)または薬学的に許容できる化合物を意味する。特に、本願の化合物は、ミクロフローラのアゾレダクターゼなどのインビボアゾレダクターゼによって還元されてもよい。
【0074】
「治療上有効量」は、本願明細書に列挙される生物学的効果のいずれかをもたらす薬物量を意味する。治療上有効量はまた、化合物/薬剤もしくはプロドラッグの1以上の生物活性特性のレベルの目に見える変化を支えるのに有用なまたは支えることができる、本願明細書に開示される化合物/薬剤もしくはプロドラッグを含む組成物の量、あるいは有益な効果を与えるのに十分な投薬量をも意味する。かかる有益な効果は、レシピエントまたは患者についての症状の改善を含み得る。特定の態様では、この治療上有効量は、疾患の治癒または治療(curing)に関連していてもよい。当該技術分野で公知のとおり、治療上有効量を決定するために多くの考慮事項が考慮されてもよい。かかる考慮事項の例は、例えばGilman、A.G.ら、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、McGraw−Hill(1990)、およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1990)に見出すことができる。
【0075】
「置換もしくは非置換の」または「任意に置換された」は、例えばアルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C1−C8)シクロアルキル、ヘテロシクリル(C1−C8)アルキル、アリール(C1−C8)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1−C8)アルキルなどの基が、明確に特段の注記がない限り、非置換であってもよいし、またはハロ、ニトロ、トリフルオロメチル(−CF3)、トリフルオロメトキシ、メトキシ、カルボキシ、−NH2、−OH、−SH、−SCH3、−NHCH3、−N(CH3)2、−SMe、シアノなどの基から選択される1つ、2つまたは3つの置換基によって置換されていてもよいことを意味する。
【実施例】
【0076】
本願の例示となる化合物の調製のために以下の手順を用いることができる。これらの化合物を調製する際に使用される出発物質および試薬は、シグマアルドリッチケミカル社(Sigma Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、バッケム(Bachem)(カリフォルニア州、トランス)などの商業的供給業者から入手可能であるか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、第1〜17巻、John Wiley and Sons、New York、N.Y.、1991;Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、第1〜5巻および補遺、Elsevier Science Publishers、1989;Organic Reactions、第1〜40巻、John Wiley and Sons、New York、N.Y.,1991;March J.:Advanced Organic Chemistry、第4版、John Wiley and Sons、New York、N.Y.;およびLarock:Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、New York、1989などの参考文献に記載される手順に従って、当該技術分野の当業者に周知の方法によって調製されるかのいずれかである。
【0077】
ある場合には、保護基が導入されて最終的に除去されてもよい。アミノ、ヒドロキシ、およびカルボキシ基に対する適切な保護基は、Greeneら、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons、New York、1991に記載されている。標準的な有機化学反応は、例えばLarock:Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、New York、1989に記載されるような多くの異なる試薬を使用して、成し遂げることができる。
【0078】
1つの変形例では、本願の化合物は、下記のスキーム8〜11に概略を示した工程によって合成することができる。これらのスキームは、当該プロドラッグの異なる同族体の調製を示す。
【0079】
(一般的な実験手順)
未補正の融点はStuart(登録商標) melting point SMP11融点装置を使用して得た。赤外(IR)スペクトルは、パーキンエルマー(Perking Elmer)205 FT Infrared Paragon 1000分光計を使用して得た。バンド位置はcm−1単位で提示した。固体試料は、KBrディスクによって得た。油状物はNaClプレート上での無溶媒膜として分析した。UV分光法はCary 3E UV−VIS分光光度計で行った。1Hおよび13Cスペクトルは、27℃で、CDCl3中またはCD3OD中(テトラメチルシランを内部標準とする)のいずれかで、ブルカー(Bruker)DPX 400MHz FT NMR分光計(400.13MHz 1H、100.16MHz 13C)で記録した。CDCl3については、1H NMRスペクトルは、0.00 δのTMSピークに対して帰属し、13C NMRスペクトルは77.00ppmのCDCl3三重線の中央に対して帰属した。CD3ODについては、1Hおよび13C スペクトルは、それぞれ3.30 δおよび49.00ppmのCD3ODの多重線の中央のピークに対して帰属した。結合定数はヘルツ(Hz)単位で記録した。1H NMRの帰属について、化学シフトは、シフト値(プロトン数,吸収の説明(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線),当てはまる場合には結合定数(1つまたは複数個)、プロトン源の帰属)で報告する。LRMSは、トリニティー・カレッジ(Trinity College)の化学科(Department of Chemistry)のマイクロマス(micromass)質量分析計(EIモード)で行った。フラッシュクロマトグラフィはメルク(Merck) Kieselgel 60 粒径0.040〜0.063mm上で行い、Rf値を引用する薄層クロマトグラフィ(TLC)はシリカゲル メルク(Merck) F−254プレート上で行った。化合物は、254nmでの吸光度および/またはバニリン染色によって視覚的に検出した。
【化15】
i)Pd/C 10%、H2、酢酸エチル、ii)オキソン、iii)DCC、DMAP、Tert−ブタノール、iv)Pd/C 10%、H2、V)AcOH
【化16】
vi)DIAD、Ph3P、THF、vii)TFA
【0080】
2−ニトロソフェニル酢酸
酢酸エチル100mL中の2−ニトロフェニル酢酸(5g、0.0276mol)の溶液に、パラジウム−チャコ−ル(10%)を触媒量(5%、0.25g)だけ加えた。この反応混合物を、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌し、その後、TLC分析から反応の完結が判明した(酢酸エチル−ジクロロメタン 40:60)。反応混合物を濾過助剤上で濾過してパラジウム−チャコ−ル(10%)を除去し、溶媒を減圧下で除去した。粗製2−アミノフェニルプロピオン酸(propionic)を蒸留水50mLおよびジクロロメタン50mLに溶解した。オキソン(登録商標)2当量(33.9g、0.0552mol)を蒸留水50mLに溶解し、この反応混合物に加えた。この時点でこの反応液はpH=4であったため、2−ニトロソフェニル酢酸は、生成するや否や、有機層へと移された。2時間後、反応混合物を分液漏斗に移した。有機層を集め、水相を2×25mLのジクロロメタンで洗浄した。有機相を集め、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、4.21gの生成物を暗色油状物として得た。この粗製混合物を、ジクロロメタン:酢酸エチル(70:30)を使用してフラッシュカラムにかけ、3.48gの生成物を褐色の結晶(70%)として得た:IRvmax(KBr):1691.86(C=O)cm−1。1H NMR δ(CDCl3):9.00(1H,s,COOH),7.24(2H,t,J 8.54および7.53Hz),7.04(1H,t,J 7.53および7.53Hz),6.92(1H,d,J 7.53Hz),3.57(2H,s)。13C NMR δ(CDCl3):178.02(C,C−8,C=O),141.86(C,C−1),127.50(CH,C−4),124.77(C,C−2),124.15(CH,C−3),122.05(CH,C−5),109.50(CH,C−6),35.84(CH2,C−7)。
【0081】
5−(2−カルボキシメチル−フェニルアゾ)−2−ヒドロキシ安息香酸 tert−ブチルエステル
氷酢酸(20mL)中の2−ニトロソフェニル酢酸(1.0g、0.0061mol)の溶液に、氷酢酸(20mL)中の5−アミノサリチル酸 tert−ブチルエステル(1.26g、0.0061mol)の別の溶液を15分間にわたって滴下した。TLC、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)による完結まで、反応液を48時間撹拌したままにした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を黒色油状物として得た。ジクロロメタンを移動相として使用して、これをフラッシュカラムにかけ、1.49gの生成物を橙色の結晶(69%)として得た:融点:108〜110℃。IRvmax(KBr):3434.51cm−1、1714.14cm−1、1670.39cm−1、1587.05cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.49(1H,s),8.37(1H,d,J 2.48Hz),7.95(1H,dd,J 9および2.48Hz),7.76(1H,d,J 8.04Hz),7.40(3H,m),6.97(1H,d,J 9.04Hz),4.10(2H,s),1.64(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):177.05(C,C−8,C=O),169.14(C,C−15,C=O),163.83(C,C−12),149.40(C,C−2),144.84(C,C−9),133.26(CH,C−1),131.01(CH,C−5),130.49(CH,C−6),127.82(CH,C−10),127.62(CH,C−4),127.26(CH,C−14),117.99(CH,C−13),115.53(CH,C−3),113.32(C,C−11),83.24(C,C−16),37.40(CH2,C−7),27.69(3×CH3,C−17)。
【0082】
tert−ブチルエステルで保護されたミューチュアルプロドラッグ1
反応温度が40℃に到達した後、乾燥THF(50mL)中の5−(2−カルボキシメチル−フェニルアゾ)−2−ヒドロキシ安息香酸 tert−ブチルエステル(0.40g、0.0011mol)、プレドニゾロン(1.1当量、1.18g、0.0013mol)およびトリフェニルホスフィン(3当量、0.88g、0.0033mol)の溶液に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)を、12分間にわたって滴下した(3当量、0.66mL、0.0033mol)。反応液を40℃で1時間撹拌し、反応液を窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌した。TLC分析(ジクロロメタン)は完結を示した。溶媒を減圧下で除去し、生成物を橙色の油状物として得た。これをジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、このカラム後、トリフェニルホスフィンオキシドは除去されたが、生成物0.33gを橙色の結晶(43%)として得るために第2のフラッシュカラムが必要であった(ヘキサン(200mL)、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)):融点:124〜126℃。IRvmax(KBr):3436.29cm−1、1726.17cm−1、1659.61cm−1、1616.09cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.49(1H,s),8.44(1H,s),8.05(1H,d,J 9Hz),7.75(1H,d,J 7.52Hz),7.40(3H,m),7.24(1H,d,J 10.04),7.06(1H,d,J 9Hz),6.25(1H,s),5.98(1H,s),4.27(2H,s),2.68〜0.84(プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.67(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):204.40(C,C−20,C=O),186.26(C,C−3,C=O),171.36(C,C−22,C=O),170.10(C,C−5),169.09(C,C−13,C=O),163.85(C,C−10’),156.25(CH,C−1),149.53(C,C−2’),145.07(C,C−7’),133.25(C,C−1’),130.98(CH,C−5’),130.53(CH,C−6’),129.89(CH,C−8’),127.85(CH,C−2),127.17(CH,C−4’),125.52(CH,C−12’),121.79(CH,C−4),118.14(CH,C−11’),115.14(CH,C−3’),113.26(C,C−9’),89.17(C,C−17),83.30(C,C−14’),69.51(CH,C−11),67.98(CH2,C−21),54.86(CH,C−9),50.86(CH,C−14),47.26(C,C−13),43.68(C,C−10),38.85(CH2,C−12),36.44(CH2,C−23),33.92(CH2,C−6),33.58(CH2,C−7),31.56(CH2,C−16),30.71(CH,C−8),27.78(3×CH3,C−15’),23.36(CH2,C−15),20.56(CH3,C−19),16.37(CH3,C−18)。
【0083】
ミューチュアルプロドラッグ1(5−{2−2[2(11,17−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−10,13−ジメチル−3−オキソ−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)−2−オキソ−エトキシカルボニルメチル]フェニルアゾ}−2−ヒドロキシ−安息香酸)
ジクロロメタン(1mL)中のtert−ブチルエステルで保護されたミューチュアルプロドラッグ1(0.1g、0.000155mol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1mL)を加え、反応液を室温で4時間放置した。TLC分析、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)は完結を示し、窒素を使用して溶媒およびトリフルオロ酢酸を吹き飛ばし(blow off)、生成物を橙色の油状物として得た。この粗生成物をジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、0.078gの生成物を橙色の結晶(78%)として得た。融点:154〜156℃。MS:665.2503 算出した質量665.2475。IRvmax(KBr):3436.40cm−1、1654.62cm−1、1H NMR δ(CDCl3):8.48(1H,s),8.10(1H,d,J 9.04Hz),7.75(1H,d,J 7.52Hz),7.46(4H,m),7.08(1H,d,J 9Hz),6.24(1H,d,J 10Hz),6.00(1H,s),5.03(2H,d,J 17.56Hz),4.35(1H,s),4.31(2H,d,J 8.52Hz),2.68−0.8(プレドニゾロンエンベロープ,19H)。13C NMR δ(MeOD):205.18(C,C−20,C=O),187.15(C,C−3,C=O),172.99(C,C−22,C=O),171.82(C,C−5),164.11(C,C−13,C=O),158.38(C,C−10),156.35(CH,C−1),149.62(C,C−2),144.93(C,C−7),133.49(C,C−1),133.36(CH,C−5),130.90(CH,C−6),129.97(CH,C−8),127.39(CH,C−2),127.07(CH,C−4),126.20(CH,C−12),125.88(CH,C−4),120.57(CH,C−11),117.01(CH,C−3),114.64(C,C−9),88.75(C,C−17),68.91(CH,C−11),67.95(CH2,C−21),55.40(CH,C−9),50.91(CH,C−14),MeODの残留ピークがCのピークを覆い隠していた,C−13,44.19(C,C−10),38.19(CH2,C−12),36.09(CH2,C−23),33.70(CH2,C−6),32.75(CH2,C−7),31.31(CH2,C−16),27.66(CH,C−8),22.95(CH2,C−15),19.72(CH3,C−19),15.36(CH3,C−18)。
【化17】
i)Pd/C 10%、H2、2%NaOH、ii)オキソン、iii)DCC、DMAP、Tert−ブタノール、iv)Pd/C 10%、H2、v)AcOH
【化18】
【0084】
2−ニトロソフェニルプロピオン酸
水100mLおよび2当量の2% NaOH(103mL)中の2−ニトロケイ皮酸(5g、0.0259mol)の溶液に、パラジウム−チャコ−ル(10%)を触媒量(5%、0.25g)加えた。この反応混合物を水素雰囲気下、室温で48時間撹拌し、その後、TLC分析から反応の完結が判明した(酢酸エチル)。反応混合物を濾過助剤上で濾過してパラジウム−チャコ−ル(10%)を除去し、溶媒を減圧下で除去した。この粗製2−アミノフェニルプロピオン酸(propionic)を蒸留水50mLおよびジクロロメタン50mLに溶解した。オキソン(登録商標)2当量(31.8g、0.0518mol)を蒸留水50mLに溶解し、この反応混合物に加えた。この時点で、反応液はpH=4であったため、2−ニトロソフェニルプロピオン酸は、生成するや否や、有機層へと移された。2時間後、反応混合物を分液漏斗に移し、有機層を集め、水相を2×25mLのジクロロメタンで洗浄した。有機相を集め、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、4.12gの生成物を暗色油状物として得た。この粗製混合物をジクロロメタン:酢酸エチル(70:30)を使用してフラッシュカラムにかけ、3.48gの生成物を褐色の結晶(67%)として得た:融点:112〜114℃、IRvmax(KBr):1699.29(C=O)cm−1。1H NMR δ(CDCl3):7.99(1H,d,J 8Hz),7.65(1H,t,J 7.52Hz),7.57(1H,t,J 8.04Hz),7.43(1H,m),3.24(2H,t,J 7.52Hz),2.81(2H,t,J 7.52Hz)。13C NMR δ(CDCl3):177.96(C,C−9,C=O),170.91(C,C−2),132.88(CH,C−5),131.70(CH,C−6),131.63(C,C−1),127.30(CH,C−4),124.56(CH,C−3),34.09(CH2,C−8),27.61(CH2,C−7)。
【0085】
5−ニトロサリチル酸 tert−ブチルエステル
ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(6.2g、0.030mol)を乾燥THF(50mL)に溶解し、これを、乾燥tert−ブタノール(125mL)中の5−ニトロサリチル酸(5g、0.0273mol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(3.3g、0.0273mol)の撹拌溶液に30分間にわたって滴下した。この混合物を一晩撹拌し、濾過して、生成したジシクロヘキシル尿素(DCU)を除去し、溶媒を減圧下で除去し、生成物を黄色油状物として得た。これを、ジクロロメタン:酢酸エチル(90:10)を使用してフラッシュカラムにかけ、5.29gの生成物を淡黄色の結晶(81%)として得た:融点:58〜60℃、IRvmax(KBr):3417.06cm−1、2118.35cm−1、1715.88cm−1、1673.77cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.73(1H,s),8.63(1H,d,J 2.52Hz),8.26(1H,dd,J 9および2.48Hz),7.01(1H,d,J 9.04Hz),1.61(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):168.01(C,C−2),166.09(C,C−7,C=O),139.24(C,C−5),129.54(CH,C−4),126.19(CH,C−6),117.98(CH,C−3),112.95(C,C−1),84.45(C,C−8),27.57(3×CH3,C−9)。
【0086】
5−アミノサリチル酸 tert−ブチルエステル
酢酸エチル(100mL)中の5−ニトロサリチル酸 tert−ブチルエステル(4.21g、0.0176mol)の溶液に、パラジウム−チャコ−ル(10%)を触媒量(0.41g、10%)加えた。この反応液を、水素雰囲気下で3時間撹拌した。この時点で、TLC分析(ジクロロメタン:酢酸エチル 60:40)は反応の完結を示した。この反応混合物を濾過助剤上で濾過してパラジウム−チャコ−ル(10%)を除去し、溶媒を減圧下で除去し、3.2gの生成物を淡緑色結晶(86%)として得た:融点:48〜50℃、IRvmax(KBr):3372.92cm−1、1668.16cm−1、1490.72cm−1。1H NMR δ(CDCl3):10.49(1H,s),7.12(1H,d,J 2.52Hz),6.8(2H,m),3.5(2H,NH2),1.61(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):169.13(C,C−7),154.44(C,C−2),137.63(C,C−5),123.30(CH,C−4),117.57(CH,C−3),114.71(CH,C−6),113.24(C,C−2),82.12(C,C−8),27.74(3×CH3,C−9)。
【0087】
5−[2−(2−カルボキシ−エチル)フェニルアゾ]−2−ヒドロキシ−安息香酸 tert−ブチルエステル(t−Bu−アゾ−2)
氷酢酸(20mL)中の2−ニトロソケイ皮酸(1.27g、0.0063mol)の溶液に、氷酢酸(20mL)中の5−アミノサリチル酸 tert−ブチルエステル(1.32g、0.0063mol)の別の溶液を15分間にわたって滴下した。TLC、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)による完結まで、反応液を48時間撹拌したままにした。溶媒を減圧下で除去し、生成物を黒色油状物として得た。これを、ジクロロメタンを移動相として使用してフラッシュカラムにかけ、1.68gの標記の化合物を橙色の結晶(72%)として得た:融点:86〜88℃、IRvmax(KBr):1700.66cm−1、1665.87cm−1。1H NMR δ(CDCl3):11.52(1H,s),8.46(1H,s),8.08(1H,s),7.72(1H,s),7.42(3H,m),7.13(1H,s),3.48(2H,s),2.82(2H,s),1.70(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):179.00(C,C−9,C=O),169.18(C,C−16,C=O),163.79(C,C−13),149.57(C,C−2),145.09(C,C−10),139.21(C,C−1),130.54(CH,C−5),130.08(CH,C−6),127.65(CH,C−11),127.08(CH,C−4),126.97(CH,C−15),118.10(CH,C−14),115.07(CH,C−3),113.40(C,C−12),83.21(C,C−17),35.68(CH2,C−8),27.74(CH3,C−18),26.54(CH2,C−7)。
【0088】
tert−ブチルで保護されたミューチュアルプロドラッグ2
反応温度が40℃に到達した後、乾燥THF(50mL)中のアゾ化合物2(1.21g、0.0033mol)、プレドニゾロン(1.1当量、1.18g、0.0033mol)およびトリフェニルホスフィン(3当量、2.59g、0.0099mol)の溶液に、DIADを12分間にわたって滴下した(3当量、1.9mL、0.0099mol)。反応液を40℃で1時間撹拌し、反応液を窒素雰囲気下、室温で一晩放置すると、TLC分析(ジクロロメタン)は完結を示した。溶媒を減圧下で除去し、生成物を橙色の油状物として得た。これを、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、このカラム後、トリフェニルホスフィンオキシドは除去され、生成物1.60gを橙色の結晶(40%)として得るためには、第2のフラッシュカラム、ヘキサン(200mL)、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)が必要であった:融点:116〜118℃、IRvmax(KBr):3435.94cm−1、1724.53cm−1、1658.49cm−1、1615.49cm−1。1H NMR δ(CDCl3):8.40(1H,d,J 2Hz),8.10(1H,dd,J 8.52および2Hz),7.68(1H,d,J 8.04Hz),7.44(3H,m),7.33(1H,t,J 6.52Hz),7.09(1H,d,J 8.52Hz),6.27(1H,d,J 10.04Hz),6.01(1H,s),5.00(1H,d,J 17.56Hz),4.88(1H,d,J 17.56Hz),4.39(1H,s),3.49(2H,t,J 9.52),2.82(2H,t,J 8.04Hz),2.66−0.9(プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.69(9H,s)。13C NMR δ(CDCl3):204.83(C,C−20,C=O),186.46(C,C−3,C=O),172.51(C,C−22,C=O),170.73(C,C−5),169.08(C,C−13,C=O),163.73(C,C−10),156.77(CH,C−1),149.48(C,C−2),145.09(C,C−7),139.31(C,C−1),130.55(CH,C−5),130.00(CH,C−6),129.26(CH,C−8),127.04(CH,C−2),126.91(CH,C−4),125.72(CH,C−12),121.65(CH,C−4),118.18(CH,C−11),114.99(CH,C−3),113.29(C,C−9),89.20(C,C−17),83.27(C,C−14),69.56(CH,C−11),67.74(CH2,C−21),54.90(CH,C−9),50.87(CH,C−14),47.22(C,C−13),43.84(C,C−10),38.96(CH2,C−12),35.45(CH2,C−23),33.83(CH2,C−6),33.59(CH2,C−7),31.61(CH2,C−16),30.73(CH,C−8),27.75(3×CH3,C−15),26.66(CH2,C−24),23.41(CH2,C−15),20.54(CH3,C−19),16.42(CH3,C−18)。
【0089】
ミューチュアルプロドラッグ2(5−(2−{2[2−(11,17−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−10,13−ジメチル−3−オキソ−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)−2−オキソ−エトキシカルボニル]エチル}−フェニルアゾ}−2−ヒドロキシ−安息香酸)
ジクロロメタン(3mL)中のtert−ブチルアゾ2(0.9g、0.00126mol)の溶液に、トリフルオロ酢酸3(mL)を加え、反応液を室温で4時間放置した。TLC分析、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)は完結を示し、窒素を使用して溶媒およびトリフルオロ酢酸を吹き飛ばし、生成物を橙色の油状物として得た。この粗生成物を、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、0.7gの生成物を橙色の結晶(84%)として得た。融点:176〜178℃、IRvmax(KBr):3437.19cm−1、1718.06cm−1、1654.23cm−1、1587.93cm−1。MS 1H NMR δ(CDCl3):8.55(1H,s),8.00(1H,dd,J 6.04および1.48Hz),7.65(1H,d,J 5.28Hz),7.50(1H,6.76Hz),7.45(1H,4.52Hz),7.41(1H,m),7.34(1H,t,J 4.76Hz),6.28(1H,dd,J 6.76および1Hz),6.02(1H,s),4.90(2H,d,J 29.84Hz),4.41(1H,s),3.50(2H,t,J 5.04Hz),2.85(2H,t,J 5Hz),2.67−0−93(プレドニゾロンエンベロープ,19H)。13C NMR δ(MeOD):205.37(C,C−20,C=O),187.17(C,C−3,C=O),173.05(C,C−22,C=O),172.05(C,C−5),164.03(C,C−13,C=O),161.33(C,C−10),158.41(CH,C−1),149.62(C,C−2),144.93(C,C−7),139.12(C,C−1),129.85(CH,C−6),128.63(CH,C−8),126.47(CH,C−2),125.93(CH,C−4),124.54(CH,C−12),120.61(CH,C−4),117.65(CH,C−11),116.80(CH,C−3),114.51(C,C−9),88.71(C,C−17),68.93(CH,C−11),67.48(CH2,C−21),55.45(CH,C−9),50.94(CH,C−14),MeODの残留ピークがCのピークを覆い隠していた,C−13,44.23(C,C−10),38.37(CH2,C−12),35.19(CH2,C−23),33.72(CH2,C−6),32.79(CH2,C−7),31.33(CH2,C−16),30.78(CH,C−8),26.26(CH2,C−24),22.97(CH2,C−15),19.73(CH3,C−19),15.45(CH3,C−18)。
【化19】
i)Pd/C、H2、NaOH 2N中;ii)DCM/H2O中、オキソン;iii)TFA、TFAA中のアセトン、還流、8時間;iv)Pd/C、H2 EA中、室温;v:AcOH。
【化20】
vi:Ph3P、THF中のDIAD。
【0090】
5−ニトロサリチル酸 ダイオキシン−4−オン
マグネチックスターラーおよび還流冷却器を備えた500mlの丸底フラスコに5−ニトロサリチル酸(20g、109.2mmol)を入れ、200mlのトリフルオロ酢酸を加え、次いで無水トリフルオロ酢酸(45.54ml、327.7mmol)および乾燥アセトン(16.04ml、218.4mmol)を加えた。この反応混合物を、2時間還流させたままにした。反応が8時間以内で完結するまで、さらに8.02mlの乾燥アセトンを、毎時間(1時間あたり1当量)、沸騰している溶液に滴下した。次いで、減圧下、約55℃のバス温度でこの反応液を濃縮し、トルエンを加え、3回除去してあらゆるトリフルオロ酢酸の痕跡を除去し、最終的に固体残渣を真空下、45℃で1時間乾燥した。この粗製の褐色がかった固体をアセトン−石油エーテル(1:4)の混合物から2回再結晶し、20.5gのオフホワイトの(white off)結晶(84.1%)を得た(あるいは、小スケールで使用する場合には、アセトン−石油エーテル(1:4)またはジクロロメタンを移動相として使用するフラッシュクロマトグラフィを使用して生成物を精製することができる):融点92〜94℃、IRvmax(KBr):1738.92(C=O)、1616.23および745.94(NO2)cm−1。1H NMR δ(CDCl3):8.88(1H,d,J 2.51Hz),8.46(1H,dd,J 6.52および3.01Hz),7.16(1H,d,J 9.53Hz),1.80(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):159.82(C,C−7,C=O),158.50(C,C−4),142.33(C,C−1),130.79(CH,C−6),125.57(CH,C−2),118.09(CH,C−5),112.93(C,C−3),107.36(C,C−8),25.45(CH3,C−9およびC−10)。
【0091】
アセトニドで保護された5−アミノサリチル酸
室温の酢酸エチル(30ml)中の5−ニトロサリチル酸 ダイオキシン−4−オン(2g、8.96mmol)の溶液に、パラジウム−活性炭(10%)(0.5g)を加えた。反応がジクロロメタンを移動相とするTLCにより完結するまで、この混合物を水素雰囲気下で撹拌した。このパラジウムを濾過助剤に通して濾過し、溶媒を減圧下で除去し、1.44gの生成物を黄色結晶(83.2%)として得た:融点122〜124℃、IRvmax(KBr):1710.37(C=O)、3469.02および1324.22(NH2)cm−1。MS:216.0616(M++23)、194.0814(M++1)。1H NMR δ(CDCl3):7.24(1H,d,J 3.01Hz),6.91(1H,dd,J 5.52および3.01Hz),6.79(1H,d,J 9.04Hz),3.61(2H,s,NH2),1.69(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):161.16(C,C−7,C=O),148.15(C,C−4),141.36(C,C−1),123.38(CH,C−6),117.41(CH,C−2),113.54(CH,C−5),113.51(C,C−3),105.75(C,C−8),25.20(CH3,C−9およびC−10)。
【0092】
2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,3]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−酢酸(アセトニドで保護された担体)
氷酢酸(25ml)中の2−ニトロソフェニル酢酸(0.5g、2.58mmol)の溶液に、氷酢酸(25ml)中の5−アミノサリチル酸 ダイオキシン−4−オン(0.42g、2.58mmol)の別の溶液を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で48時間激しく撹拌し、ジクロロメタン−酢酸エチル(50:50)を移動相として使用してTLCにより反応の完結をチェックした。溶媒を減圧下で除去し、トルエンを2回加え、あらゆる酢酸の痕跡を除去し、橙色の粗生成物を得た。これを、ジクロロメタン−酢酸エチル(70:30)を移動相として使用するフラッシュクロマトグラフィによって精製し、0.78gの生成物を橙色の結晶(89%)として得た:融点124〜126℃、IRVmax(KBr):1734.84および1698.18(C=O)cm−1。MS:363.0950(M++23)。1H NMR δ(CDCl3):8.52(1H,d,J 2.51Hz),8.05(1H,dd,J 8.54および2.51Hz),7.77(1H,d,J 7.53Hz),7.47(1H,t,J 6.57Hz),7.43(2H,m),7.05(1H,d,J 9.03Hz),4.16(s,2H),1.80(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):177.67(C,C−8,C=O),160.42(C,C−15,C=O),157.85(C,C−12),149.66(C,C−1),147.86(C,C−9),133.78(C,C−2),131.55(CH,C−4),131.45(CH,C−3),128.93(CH,C−5),128.39(CH,C−14),126.64(CH,C−10),118.14(CH,C−6),116.07(CH,C−13),113.61(C,C−11),106.90(C,C−16),37.28(CH2,C−7),25.86(CH3,C−17およびC−18)。
【0093】
アセトニドで保護されたミューチュアルプロドラッグ1
乾燥テトラヒドロフラン(30ml)中の2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,3]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−酢酸(1g、5.16mmol)の溶液に、室温でプレドニゾロン(2.23g、6.19mmol)を加え、次いでトリフェニルホスフィン(4.11g、15.5mmol)を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、温度を40℃まで上昇させた。この時点で、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)(3.2ml、15.5mmol)を12分間にわたって滴下した。この混合物を2時間にわたって撹拌し、揮発物を減圧下で除去し、生成物を粗製黒色油状物として得た。2.21gの純粋な生成物を橙色の結晶(63%)として得るためには、2つのフラッシュクロマトグラフィカラム(ジクロロメタン−酢酸エチル 1:1およびヘキサン−酢酸エチル80:20)が必要であった。融点136〜138℃、IRVmax(KBr):1655.56(C=O)、1724.45(C=O)、3462.94(O−H)cm−1。MS 705.2784(M++23)。1H NMR δ(CDCl3):8.43(1H,d,J 2.01Hz),8.18(1H,dd,J 9.03および2.51Hz),7.73(1H,d,J 8.03Hz),7.43(2H,m),7.38(1H,m),7.25(1H,d,J 10.04Hz),7.11(1H,d,J 8.53Hz),6.21(1H,d,J 10.04Hz),5.95(1H,s),5.01(1H,d,J 17.56Hz),4.92(1H,d,J 17.57Hz),4.31(1H,s),4.22(2H,s),2.64−0.84プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.75(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):204.67(C,C−20,C=O),186.36(C,C−3,C=O),171.35(C,C−22,C=O),170.53(C,C−13,C=O),160.46(C,C−5),157.30(C,C−10’),156.67(CH,C−1),149.24(C,C−2’),147.64(C,C−7’),134.04(C,C−1’),131.66(CH,C−6’),131.28(CH,C−12’),131.22(CH,C−4’),127.88(CH,C−2),127.00(CH,C−5’),123.35(CH,C−8’),121.65(CH,C−4),117.67(CH,C−11’),115.24(CH,C−3’),113.17(C,C−9’),106.59(C,C−14’),89.18(C,C−17),69.44(CH,C−11),68.19(CH2,C−21),54.88(CH,C−9),50.84(CH,C−14),47.15(C,C−13),43.80(C,C−10),38.65(CH2,C−12),37.02(CH2,C−23),33.70(CH2,C−6),33.61(CH2,C−7),31.57(CH2,C−16),30.76(CH,C−8),25.41(CH3,C−15’およびC−16’),23.39(CH2,C−15),16.24(CH3,C−19),14.81(CH3,C−18)。
【0094】
2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,2]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−プロピオン酸
氷酢酸(40ml)中の2−ニトロソフェニルプロピオン酸(1g、4.97mmol)の溶液に、氷酢酸(40ml)中の5−アミノサリチル酸 ダイオキシン−4−オン(0.9g、4.97mmol)の別の溶液を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で48時間激しく撹拌し、反応の完結をジクロロメタン−酢酸エチル(50:50)と移動相として使用するTLCによりチェックした。溶媒を減圧下で除去し、トルエンを2回加えてあらゆる酢酸の痕跡を除去し、橙色の粗生成物を得た。これを、ジクロロメタン−酢酸エチル(70:30)と移動相として使用するフラッシュクロマトグラフィによって精製し、1.17gの生成物を橙色の結晶(68%)として得た:融点108〜110℃、IRVmax(KBr):1703.48および1740.04(C=O)cm−1。MS 377.1102(M++23)。1H NMR δ(CDCl3):8.57(1H,d,J 2Hz),8.17(1H,dd,J 6.52および2.51Hz),7.72(1H,d,J 7.53Hz),7.43(2H,m),7.15(1H,d,J 9.03Hz),3.50(2H,t,J 8.03および7.53Hz),2.79(2H,t,J 8.03および7.53Hz),1.81(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):176.97(C,C−9,C=O),160.11(C,C−16,C=O),157.37(C,C−13),149.39(C,C−1),147.64(C,C−10),139.80(C,C−2),131.16(CH,C−4),130.15(CH,C−3),129.01(CH,C−5),126.99(CH,C−15),125.60(CH,C−11),117.75(CH,C−6),115.20(CH,C−14),113.32(C,C−12),106.51(C,C−17),35.46(CH2,C−8),26.43(CH2,C−7),25.48(CH3,C−17およびC−18)。
【0095】
アセトニドで保護されたミューチュアルプロドラッグ2
乾燥テトラヒドロフラン(10ml)中の2−(2,2−ジメチル−4−オキソ−4H−ベンゾ[1,2]ダイオキシン−6−イルアゾ)−フェニル]−プロピオン酸(0.2g、0.56mmol)の溶液に、室温でプレドニゾロン(0.2g、0.85mmol)を加え、次いでトリフェニルホスフィン(0.44g、1.68mmol)を加えた。この反応混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、温度を40℃まで上昇させた。この時点でジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)(0.35ml、1.68mmol)を12分間にわたって滴下した。この混合物を2時間にわたって撹拌し、揮発分を減圧下で除去し、生成物を粗製黒色油状物として得た。0.26gの純粋な生成物を橙色の結晶(68%)として得るためには、2つのフラッシュクロマトグラフィカラム(ジクロロメタン−酢酸エチル 1:1およびヘキサン−酢酸エチル80:20)が必要であった。融点130〜132℃、IRvmax(KBr):3437.13、1743.91、1656.48、1615.31cm−1。1H NMR δ(CDCl3):8.47(1H,d,J 2.01Hz),8.16(1H,dd,J 8.53および2.01Hz),7.67(1H,d,J 8.03Hz),7.38(2H,m),7.28(2H,m),7.10(1H,d,J 8.54Hz),6.23(1H,d,J 10.03Hz),5.97(1H,s),5.08(1H,d,J 17.57Hz),4.94(1H,d,J 17.56Hz),4.42(1H,s),3.45(2H,t,J 6.52),2.79(2H,t,J 8.03Hz),2.68−0.91(プレドニゾロンエンベロープ,19H),1.75(6H,s,2×CH3)。13C NMR δ(CDCl3):204.92(C,C−20,C=O),186.44(C,C−3,C=O),172.37(C,C−22,C=O),170.68(C,C−13,C=O),160.45(C,C−5),157.25(C,C−10’),156.79(CH,C−1),149.14(C,C−2’),147.61(C,C−7’),139.99(C,C−1’),131.23(CH,C−6’),131.00(CH,C−12’),130.05(CH,C−4’),127.02(CH,C−2),126.93(CH,C−5’),123.74(CH,C−8’),121.64(CH,C−4),117.77(CH,C−11’),115.16(CH,C−3’),113.18(C,C−9’),106.57(C,C−14’),89.18(C,C−17),69.54(CH,C−11),67.77(CH2,C−21),54.92(CH,C−9),50.88(CH,C−14),47.14(C,C−13),43.86(C,C−10),38.85(CH2,C−12),35.89(CH2,C−23),33.75(CH2,C−6),33.61(CH2,C−7),31.62(CH2,C−16),30.78(CH,C−8),26.93(CH3,C−15’およびC−16’),25.42(CH2,C−24),23.45(CH2,C−15),16.35(CH3,C−19),14.81(CH3,C−18)。
【化21】
i)DCC、DMAP、MeOH、DCM中、3時間、室温;ii)Pd/C、H2、酢酸エチル中 2時間、室温;iii)HCl、NaNO2、30分、−5℃;iv)AcONa、NH4OH、室温、1時間;v);NaOH 2N、EtOH、24時間、室温;vi)DIAD、Ph3P、乾燥THF中、24時間。
【0096】
2−ニトロフェニル酢酸 メチルエステル
DCM(50mL)中の2−ニトロフェニル酢酸(5g、0.0276mol)の溶液に、DMAP(1当量、3.37g)を加え、次いでDCC(1当量、5.63g)を加え、最後にメタノール(5当量、5.58mL)を加えた。この反応混合物を2〜3時間撹拌し、TLCによって反応がいつ完結したかが示された。このあと、この反応液を濾過して生成したDCUを除去し、濾液を0.1N HCl(2×25mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×25mL)および水(2×25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。この粗製エステルをフラッシュクロマトグラフィ(DCM:EA 60:40)によって精製し、生成物を黄色油状物4.8g(90%)として得た:1H−NMR(400MHz,CDC13),δ:7.94(1H,d,J 8Hz),7.4(1H,t,J 7.2Hz),7.3(1H,t,J 7.6Hz),7.25(1H,d,J 7.6Hz),3.89(2H,s),3.59(3H,s)。13C−NMR(400MHz,CDCl3)δ:170.3(C=O,C−8),148.2(C−1),133.0(C−4),132.8(C−3),129.2(C−2),128.0(C−5),124.5(C−6),51.4(C−9),38.8(C−7)。
【0097】
2−アミノフェニル酢酸 メチルエステル
2−ニトロフェニル酸メチルエステル(1g、5.13mmol)を20mLのEAに溶解し、0.3gのPd/C 10%をこの溶液に懸濁させ、この反応混合物を室温で水素雰囲気下に置いた。2時間後、この反応はTLC分析(DCM:EA 60;40)によれば完結しており、Pd/C 10%を濾過によって除去し、溶媒を減圧によって除去し、無色の油状物0.67g(67%)を得た。
【0098】
2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−フェニル−酢酸 メチルエステル
濃HCl(9mL)を含む水(40mL)に2−アミノフェニル酸メチルエステル(3g、0.018mol)を溶解し、この溶液を氷/アセトン浴中で−5℃まで冷却し、そのあと1mLの水中の亜硝酸ナトリウム(1.32g、0.019mol)を滴下した。その時点で、ジアゾニウム塩が生成し、この溶液は淡黄色を帯びた。一匙の尿素を加えて過剰の亜硝酸ナトリウム(酸化剤)を中和し、5分後にこのジアゾニウム塩溶液を、−5℃の水(40mL)中のフェノール(1.68g、0.018mol)、酢酸ナトリウム(2.88g、0.036mol)およびアンモニア溶液(5mL)の溶液へと滴下した。添加終了後、氷酢酸(当量、5mL)を加え、この反応混合物を濾過した。濾過ケーキをEAに溶解し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィ(DCM 100mL、DCM:EA 80:20)によって精製し、2.7g(56%)を得た:融点158〜160℃、IRvmax(KBr):3221.84(OH)、1695.48(C=O)cm−1。1H−NMR(400MHz,アセトン)δ:9.14(1H,s),7.86(2H,d,J 8.50Hz),7.72(1H,d,J 8Hz),7.45(3H,m,J 7.52Hz),7.03(2H,d,J 8.50Hz),4.16(2H,s),3.62(3H,s)。13C−NMR(400MHz,アセトン)δ:204.91(C=O,アセトン),171.22(C=O,C−8),160.29(C,C−4’),149.64(c,C−2),146.20(C,C−1’),134.13(CH,C−6),131.13(CH,C−5),129.97(C,C−1),127.42(CH,C−4),124.65(CH,C−3,C−6’,C−2’),115.38(CH,C−5’),114.73(CH,C−3’),50.65(CH3,C−9),36.41(CH2,C−7),28.52(アセトン,CH3)。
【0099】
2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−フェニル−酢酸
上記エステル(0.266g、1mmol)を窒素雰囲気下で10mLのエタノールに溶解し、2N NaOH(2mL)をこの混合物に加え、光を遮断して一晩撹拌した。この反応混合物を1N HCl溶液に注ぎ込み、EAで抽出した。この有機相を水およびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、生成物をEA:n−ヘキサンを用いて再結晶し、生成物を橙色の結晶、0.2g(70%)として得た:融点138〜140℃、IRvmax(KBr):3280.04(OH)、1721.07(C=O)、1655.90(C=O)cm1。1H−NMR(400MHz,アセトン)δ:10.71(1H,s),9.13(1H,s),7.88(2H,d,J 8.52Hz),7.71(1H,d,J 7.52Hz),7.45(3H,m,J 8.04Hz),7.01(2H,d,J 8.52Hz),4.16(2H,s)。13C−NMR(400MHz,アセトン)δ:204.92(C=O,アセトン),171.65(C=O,C−8),160.20(C,C−4’),149.73(C,C−2),134.49(C,C−1’),131.18(CH,C−5),129.91(CH,C−6,C−1),127.28(CH,C−4),124.69(CH,C−3,C−6’,C−2’),115.32,(CH,C−5’)114.63(CH,C−3’),36.23(CH2,C−7),28.51(アセトン,CH3)。
【0100】
[2−(4−ヒドロキシ−フェニルアゾ)−フェニル]酢酸 2−(11,17−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−3 オキソ−2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)−2−オキソ−エチルエステル フェノールアゾプロドラッグ
上記アゾ担体(0.5g、0.0019mol,)を、乾燥THF中のヒドロコルチゾン(0.34g、0.0009mol,)およびトリフェニルホスフィン(0.74g、0.0028mol)の溶液に加え、窒素雰囲気下で温度を40℃まで上昇させ、激しく撹拌しながらジイソプロピルアゾジカルボキシレート 95%(DIAD)(0.57g、0.0028mol)を12分間にわたって滴下した。この混合物を40℃で1時間にわたって撹拌し、反応液を窒素雰囲気下、室温で一晩放置した。揮発物を減圧下で除去し、生成物を橙色の油状物として得た。これを、ジクロロメタン:酢酸エチル(50:50)を使用してフラッシュカラムにかけ、このカラム後、トリフェニルホスフィンオキシドは除去され、このアゾプロドラッグ0.23gを橙色の結晶(42%)として得るためには、第2のフラッシュカラム、ヘキサン(200mL)、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)が必要であった:融点122〜124℃、IRvmax(KBv):3437.13(OH)、1721.07(C=O)、1655.90(C=O)cm−1。1H−NMR(400MHz,アセトン)δ:7.76(2H,d,J 8.53Hz),7.65(1H,d,J 7.03),7.33(3H,m),6.85(2H,d,J 8.53Hz),5.59(1H,s),4.90(1H,d,J 17.57Hz),4.74(1H,d,J 17.06Hz),4.18(2H,s),2.60−0.77(ヒドロコルチゾンエンベロープ,24H)。
【0101】
(分子内ラクタム化反応速度研究)
インビボでの当該プロドラッグからのステロイドの放出は、アゾレダクターゼ活性アミノステロイド生成物の環化で決まる。コルチゾンAおよびBのアミノ誘導体の環化速度を、残留する化合物を、コルチゾンの生成とともにHPLCによって測定することにより種々のpH値および37℃の水溶液中でモニターした。
【化22】
【0102】
消失についての一次速度定数は、残留するエステルの自然対数 対 時間のプロットから得ることができる。半減期は算出することができる(T1/2=0.693/kobs)。プロドラッグAの算出した半減期は2.2時間であり、プロドラッグBの算出した半減期は1.4時間であった。
【0103】
(生物学的研究)
(材料および方法)
プレドニゾロンおよびDSSは、シグマ−アルドリッチラボラトリーズ(Sigma−Aldrich laboratories)から購入した。
【0104】
BALB/c株マウスを、生物資源部門(Bioresources Unit)(トリニティ・カレッジ・ダブリン(Trinity College Dublin))から入手した。マウスを、陽圧下の個別換気およびフィルター付きケージ(テクニプラスト(Tecniplast)、英国、Nothants)で飼育した。食物および水は自由に取らせた。すべての動物実験は、アイルランド保健児童省(Irish Department of Health and Children)の規則を遵守して行い、トリニティー・カレッジ生物資源部門(Trinity College Bioresources)倫理審査委員会によって承認された。
【0105】
(統計解析)
すべてのインビボでの実験は、1群あたり6匹のマウスを用いて行った。群間の差異は、スチューデントのt−検定(Student’s t−test)によって解析した。大腸炎スコアは、マン−ホイットニー検定によって解析した。0.05未満のP値(P値<0.05)を有意であると見なした。DIA、C/BおよびT/B MPOについての結果は、平均±標準誤差として表した。
【0106】
(炎症性腸疾患モデルマウスの調製)
DSS(35〜50,000kDa;エムピー・バイオメディカルズ(MP Biomedicals)、オハイオ州)をマウスの飲用水に溶解した。新しいDSS溶液を1日おきに与えた。BALB/cマウスを、5% DSSに6日間曝露した。このマウスを、病的状態について毎日チェックし、重量を記録した。大腸炎の誘導は、体重減少、便中の血液および、剖検の際には、結腸の長さによって判定した。便中の血液は、Hemdetect潜血検出キット(ディプロ(Dipro)、オーストリア共和国)を使用して検出した。
【0107】
大腸炎の誘導を数量化するために、DSS誘導大腸炎の以前の研究(Cooper 1993)に基づいて、疾患活動性指数(disease activity index、DAI)を決定した。DAIは、体重減少、潜血および便の粘稠度/下痢に基づき、各マウスについて毎日算出した。各パラメータに対して1〜4のスコアを与えた。最大DAIスコアは12である。スコア0、体重減少なし、正常便、血液なし;スコア1、1〜3% 体重減少;スコア2、3〜6% 体重減少、軟便、便中に血液が見える;スコア3、6〜9% 体重減少;スコア4、<9% 体重減少、下痢、おびただしい出血(breeding)。軟便は、取り扱うと容易にペースト状になる便の形成として定義した。下痢は、便の形成がないこととして定義した。おびただしい出血は、便中のかなりの血液を伴う、肛門の周りの毛の上の新鮮血として定義した。
【0108】
(結腸の組織学的検査)
剖検では、結腸の長さを測定し、結腸の1cmの部分を10%ホルムアルデヒド−生理食塩水中で固定した。HおよびEで染色した部分を、以前の研究(Siegmund 2001)から変更したスコア化システムに基づいて等級付けした。組織学的検査のスコア化は、盲検方式で行った。炎症細胞の浸潤および組織の損傷の複合スコアは、以下のようにして決定した:細胞浸潤:スコア0、LPに時おり炎症細胞がある;1、主に陰窩基底部においてLP中での浸潤の増大;2、粘膜の中へと広がる炎症性浸潤の集密;3、浸潤の貫壁性拡大。組織の損傷:スコア0、粘膜損傷なし;1、大きな領域における部分的な(50%までの)陰窩の喪失;2、大きな領域における部分的〜全体(50〜100%)陰窩の喪失、上皮は無傷;3、大きな領域における陰窩の全喪失および上皮の喪失。
【0109】
(薬物有効性)
重量が約18〜20グラムのDSS誘導大腸炎マウスに、5% DSS水を自由に取らせ、1%溶液のクレモホア(cremophor)および水懸濁液中のエタノール中の、100μLのプレドニゾロンおよびプロドラッグ2(マウスの体重1Kgあたり5mgのプレドニゾロンと等価である)を1日に2回(12時間ごと)大腸炎マウスに経口投与した。プレドニゾロンおよびプロドラッグ処置の6日後、このマウスを頸椎脱臼によって屠殺した。遠位結腸部分および胸腺を取り出し、洗浄して結腸の内容物を取り除いた。
【0110】
1cmの遠位結腸部分および胸腺の新鮮重を測定し、体重に対する遠位結腸重量および胸腺重量の比(それぞれC/BおよびT/B)を得た。結腸検体の損傷を、材料および方法で記載したようにしてスコア化した。ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)について分析するまで、この遠位セグメントを液体窒素によって凍結し−80℃で保存した。
【0111】
(結果)
抗炎症性効果を、健康なマウスと、未処置のマウスと、プレドニゾロン処置マウスと、プロドラッグ処置マウスとの間での遠位結腸長さの比較によって検討した。IBDは、結腸の短縮を引き起こす。従って、抗炎症性効果、より少ない損傷が結腸組織上で観察され、より少ない還元遠位結腸長さについての原因であった。
【0112】
血流中のステロイドの濃度の上昇が胸腺の活性の抑制、およびその結果としてのその重量の減少を誘発するという事実に起因して、全身性の副作用を、健康なマウスと、未処置のマウスと、プレドニゾロン処置マウスと、プロドラッグ処置マウスとの間での胸腺重量および体重比の比較(Hideki Yano 2002)によって検討した。
【0113】
5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸部分からのDAIスコアのプロファイルである図13に示すように、出血の客観的評価および体重減少スコアは、溶媒対照群では閾値に向かって増加したが、処置群ではそうではなかった。
【0114】
5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの結腸長さのプロファイルである図14に示すように、プロドラッグ2群は、PRED(P<0.0243)群よりも有意に長い結腸を有していた(P値は、結腸長さの差 対 溶媒群に対するスチューデントのt−検定である)。
【0115】
健康なマウス(未処置)および5mg/Kgの投薬量で処置したDSS誘導大腸炎マウスの胸腺重量体重比(T:BW)のプロファイルである図15に示すように、PRED群は、未処置のマウスに対して有意な胸腺:BW比の減少を有していた(P<0.05)。プロドラッグ処置群における平均の胸腺重量は、未処置のマウスと統計的な差異はなかった。
【0116】
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【0132】
本願全体にわたって引用されたすべての文献の開示全体は、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0133】
本願明細書に記載される幅広い本発明の着想から逸脱することなく、変更が上記の実施形態に対してなされ得るということを、当業者は理解するであろう。それゆえ、本発明は開示された特定の実施形態および態様に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の趣旨および範囲の内に入るすべての変更態様に及ぶことが意図されているということは理解される。そのすべての可能な変形例における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本願明細書でそうではないと示されていない限り、またはあきらかに文脈と矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iaの化合物:
【化1】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
Zは、−C(O)−、−S(O)−、−OC(O)−、−OC(O)NR13−、−S−C(O)−、−SC(O)NR13−、−C(O)NR13−、−NR13C(O)NR13−、−OS(O)−、−OS(O)2−、−S(O)2NH−および−OPO(OH)−からなる群から選択され、
各R1、R2、R5およびR6は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R11は、水素、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、および−C(O)OR10からなる群から選択され、
各R9およびR12は独立に、水素、(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、−SO3R13、−PO3R13、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは置換もしくは非置換であるか、または
前記フェニル環において隣接して置換される場合のR11およびR12は、一緒になって任意に置換された複素環式環を形成し、
R10は水素または(C1〜3)アルキルであり、
各R13は独立に水素または(C1〜3)アルキルであり、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
R11およびR12が一緒になって、任意に置換された複素環式環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R11およびR12が一緒になって、アセトニジル−4−オンを形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R11が−C(O)O−R10であり、R12およびR10の各々が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iの化合物:
【化2】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
各R1、R2、R5およびR6は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R8は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R9は、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
R7およびR8が水素であり、cが1または2である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
aおよびbがともに0であり、cが1または2である、請求項5または請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R9が水素である、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R7およびR8が水素であり、R9が水素であり、aおよびbがともに0である、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記ヒドロキシルを有する薬物が抗炎症薬である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記抗炎症薬がステロイドである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記ステロイドが、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、ならびにプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、ニトロイミダゾール、キノリン(例えばナリジクス酸)、フルオロキノロン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシン、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIの化合物:
【化3】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
各R1、R2、R5およびR6は、独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R8は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項16】
R7およびR8が水素であり、cが1または2である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
aおよびbがともに0であり、cが1または2である、請求項15または請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R7およびR8が水素であり、aおよびbがともに0である、請求項15から請求項17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される、請求項15から請求項18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記ヒドロキシルを有する薬物が抗炎症薬である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記抗炎症薬がステロイドである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記ステロイドが、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、およびプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、ニトロイミダゾール、キノリン、フルオロキノロン、アミノグリコシド、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アプラマイシン、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項24】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIIの化合物:
【化4】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
R5およびR6は独立に水素であるか、または独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R8は水素であるか、または(C1〜3)アルキルである)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項25】
R5およびR6が水素である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
R5、R6、R7およびR8が各々水素である、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される、請求項24から請求項26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
前記ヒドロキシルを有する薬物が抗炎症薬である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
前記抗炎症薬がステロイドである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記ステロイドが、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、ならびにプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
Aが、ニトロイミダゾール、キノリン、フルオロキノロン、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシン、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される、請求項27に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が、
【化5】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
前記化合物が、
【化6】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容できる賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項35】
患者においてNFκB DNA結合活性を減少させる方法であって、前記患者に治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記治療上有効量が炎症性腸疾患(IBD)を低下、緩和または治療するために有効である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療上有効量が潰瘍性大腸炎またはクローン病を低下、緩和または治療するために有効である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
炎症性腸疾患(IBD)の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項39】
クローン病または潰瘍性大腸炎の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項40】
投与される化合物または組成物の量が寛解を維持するために有効である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
5ASA−5ASAが投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
急性潰瘍性大腸炎を低下、緩和または治療する方法であって、治療上有効量の5ASA−ステロイドを投与することを含み、前記ステロイドは、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、またはプレドニゾロンである、方法。
【請求項43】
前記ステロイドがプレドニゾロンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
コラーゲン形成大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎、または非定型大腸炎を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項45】
アメーバ症、クロストリジウム・ディフィシル感染症、偽膜性大腸炎、憩室炎、胃腸炎、胃腸癌、または過敏性大腸症候群(IBS)を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項46】
哺乳動物における炎症状態を治療または緩和する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を結腸に送達することを含み、前記COX2阻害剤は、請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物のヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法。
【請求項47】
哺乳動物における胃腸癌を治療する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を前記結腸に送達することを含み、前記COX2阻害剤は、請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物のヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法。
【請求項48】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iaの化合物:
【化7】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
Zは、−OC(O)−、−OC(O)NR13−、−S−C(O)−、−SC(O)NR13−、−C(O)NR13−、−NR13C(O)NR13−、−OS(O)−、−OS(O)2−、−S(O)2NH−および−OPO(OH)−からなる群から選択され、
各R1、R2、R5およびR6は、独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は、独立に水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R11は、水素、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、および−C(O)OR10からなる群から選択され、
各R9およびR12は、独立に水素、(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、−SO3R13、−PO3R13、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは置換もしくは非置換であるか、または
前記フェニル環において隣接して置換される場合のR11およびR12は、一緒になって任意に置換された複素環式環を形成し、
R10は水素または(C1〜3)アルキルであり、
各R13は独立に水素または(C1〜3)アルキルであり、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項1】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iaの化合物:
【化1】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
Zは、−C(O)−、−S(O)−、−OC(O)−、−OC(O)NR13−、−S−C(O)−、−SC(O)NR13−、−C(O)NR13−、−NR13C(O)NR13−、−OS(O)−、−OS(O)2−、−S(O)2NH−および−OPO(OH)−からなる群から選択され、
各R1、R2、R5およびR6は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R11は、水素、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、および−C(O)OR10からなる群から選択され、
各R9およびR12は独立に、水素、(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、−SO3R13、−PO3R13、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは置換もしくは非置換であるか、または
前記フェニル環において隣接して置換される場合のR11およびR12は、一緒になって任意に置換された複素環式環を形成し、
R10は水素または(C1〜3)アルキルであり、
各R13は独立に水素または(C1〜3)アルキルであり、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
R11およびR12が一緒になって、任意に置換された複素環式環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R11およびR12が一緒になって、アセトニジル−4−オンを形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R11が−C(O)O−R10であり、R12およびR10の各々が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iの化合物:
【化2】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
各R1、R2、R5およびR6は独立に、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R8は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R9は、水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
R7およびR8が水素であり、cが1または2である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
aおよびbがともに0であり、cが1または2である、請求項5または請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R9が水素である、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R7およびR8が水素であり、R9が水素であり、aおよびbがともに0である、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
前記ヒドロキシルを有する薬物が抗炎症薬である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記抗炎症薬がステロイドである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記ステロイドが、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、ならびにプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、ニトロイミダゾール、キノリン(例えばナリジクス酸)、フルオロキノロン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシン、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIの化合物:
【化3】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
各R1、R2、R5およびR6は、独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R8は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項16】
R7およびR8が水素であり、cが1または2である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
aおよびbがともに0であり、cが1または2である、請求項15または請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R7およびR8が水素であり、aおよびbがともに0である、請求項15から請求項17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される、請求項15から請求項18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記ヒドロキシルを有する薬物が抗炎症薬である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記抗炎症薬がステロイドである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記ステロイドが、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、およびプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、ニトロイミダゾール、キノリン、フルオロキノロン、アミノグリコシド、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アプラマイシン、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項24】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式IIIの化合物:
【化4】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
R5およびR6は独立に水素であるか、または独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R7は水素であるか、または(C1〜3)アルキルであり、
R8は水素であるか、または(C1〜3)アルキルである)
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項25】
R5およびR6が水素である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
R5、R6、R7およびR8が各々水素である、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
前記ヒドロキシルを有する薬物が、抗炎症薬、抗癌剤、造影剤、ワクチン、抗原、抗感染症薬、ペプチド、アンチセンス分子およびタンパク質からなる群から選択される、請求項24から請求項26のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
前記ヒドロキシルを有する薬物が抗炎症薬である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
前記抗炎症薬がステロイドである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記ステロイドが、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、ならびにプレドニゾロンからなる群から選択される、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
Aが、ニトロイミダゾール、キノリン、フルオロキノロン、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンおよびアプラマイシン、ロイコボリン、トポテカン、イリノテカン、メトトレキセート、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブおよびインフリキシマブからなる群から選択される、請求項27に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が、
【化5】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
前記化合物が、
【化6】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容できる賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項35】
患者においてNFκB DNA結合活性を減少させる方法であって、前記患者に治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記治療上有効量が炎症性腸疾患(IBD)を低下、緩和または治療するために有効である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療上有効量が潰瘍性大腸炎またはクローン病を低下、緩和または治療するために有効である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
炎症性腸疾患(IBD)の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項39】
クローン病または潰瘍性大腸炎の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項40】
投与される化合物または組成物の量が寛解を維持するために有効である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
5ASA−5ASAが投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
急性潰瘍性大腸炎を低下、緩和または治療する方法であって、治療上有効量の5ASA−ステロイドを投与することを含み、前記ステロイドは、それぞれ21位、11位および17位でエステル化されたヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、ブデソニド、またはプレドニゾロンである、方法。
【請求項43】
前記ステロイドがプレドニゾロンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
コラーゲン形成大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎、または非定型大腸炎を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項45】
アメーバ症、クロストリジウム・ディフィシル感染症、偽膜性大腸炎、憩室炎、胃腸炎、胃腸癌、または過敏性大腸症候群(IBS)を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、治療上有効量の請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物を投与することを含む、方法。
【請求項46】
哺乳動物における炎症状態を治療または緩和する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を結腸に送達することを含み、前記COX2阻害剤は、請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物のヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法。
【請求項47】
哺乳動物における胃腸癌を治療する方法であって、有効量のCOX2阻害剤を前記結腸に送達することを含み、前記COX2阻害剤は、請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の化合物または組成物のヒドロキシルを有する薬物の残基である、方法。
【請求項48】
任意に単一の立体異性体の形態、または立体異性体の混合物の形態にある、式Iaの化合物:
【化7】
(式中、
Aは水素であるか、またはヒドロキシルを有する薬物の残基であり、
Zは、−OC(O)−、−OC(O)NR13−、−S−C(O)−、−SC(O)NR13−、−C(O)NR13−、−NR13C(O)NR13−、−OS(O)−、−OS(O)2−、−S(O)2NH−および−OPO(OH)−からなる群から選択され、
各R1、R2、R5およびR6は、独立に水素であるか、または各々独立に、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
各R3およびR4は、独立に水素、各々置換もしくは非置換の(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、アリールオキシおよびヘテロアリールオキシからなる群から選択され、
R11は、水素、ヒドロキシ、(C1〜3)アルコキシ、および−C(O)OR10からなる群から選択され、
各R9およびR12は、独立に水素、(C1〜3)アルキル、(C3〜10)シクロアルキル、(C3〜10)シクロアルキル(C1〜3)アルキル、アリール、アリール(C1〜3)アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1〜3)アルキル、アミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、−SO3R13、−PO3R13、(C1〜3)アルコキシからなる群から選択され、各アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは置換もしくは非置換であるか、または
前記フェニル環において隣接して置換される場合のR11およびR12は、一緒になって任意に置換された複素環式環を形成し、
R10は水素または(C1〜3)アルキルであり、
各R13は独立に水素または(C1〜3)アルキルであり、
各a、bおよびcは独立に0、1または2である)
またはその薬学的に許容できる塩。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−531845(P2010−531845A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513951(P2010−513951)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058338
【国際公開番号】WO2009/003970
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058338
【国際公開番号】WO2009/003970
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】
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