説明

脂肪族ポリエステル系の複合フィルム。

【課題】
本発明のラミネートフィルムは、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れ、かつガスバリア性に優れており、包装用フィルムに好適である。
【解決手段】
融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)からなる脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムと延伸フィルムからなり、いずれか一方の表面に無機薄膜層を有する複合フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性、ガスバリア性に優れた包装用に適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル系の複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。 ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂の剛性を改良する方法として、脂肪族ポリエステルとして、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分を共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献1参照)、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分若しくはラクトンを共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献2参照)が提案されている。
一方、かかる脂肪族ポリエステル共重合体の物性を改良する目的で、ポリ乳酸を添加する方法が提案されている(たとえば、特許文献3、特許文献4参照)。
しかしながら、これら脂肪族ポリエステル共重合体によっては柔軟性が未だ不十分で、耐衝撃性も劣る虞がある。
【0003】
【特許文献1】特開平8−239461号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平8−311181号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平9−272789号公報(請求項1)
【特許文献4】WO 02/44249 A1号公報(95頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れ、かつガスバリア性に優れた包装用に適した生分解性を有する脂肪族ポリエステル系の複合フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなる脂肪族ポリエステル組成物〔(A)+(B)=100重量%とする〕からなるフィルム(i)と延伸フィルム(ii)を有するのラミネートフィルムであって、無延伸フィルムまたは延伸フィルムのいずれか一方の表面に無機薄膜層(iii)を有するラミネートフィルムに関する。
また、本発明は、上記のラミネートフィルムの脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム層の非ラミネート面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)95〜10重量%及び融点(Tm)が45〜80℃の生分解性重合体(C)5〜90重量%との生分解性重合体組成物〔(A)+(C)=100重量%とする〕からなる熱融着層(iv)が積層されてなる積層ラミネートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のラミネートフィルムは、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に優れ、かつガスバリア性に優れており、包装用フィルムに好適である。また本発明の脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムの片面に生分解性樹脂組成物層を積層してなる複合ラミネートフィルムは、透明性、耐衝撃性、耐突刺し性に加え、低温ヒートシール性に優れたラミネートフィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られる脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムの融点が低過ぎ、包装用フィルムとして用いた場合、ヒートシールする際に、ヒートシールバーにフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣る。
一方、融点(Tm)が120℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体は、結果として2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が少なく、得られるフィルムの柔軟性が損なわれる虞がある。
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低過ぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写されたり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。
(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムは耐衝撃性、耐突刺し性に劣る虞がある。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明において脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルムには、脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が併用され、熱融着層の生分解性樹脂組成物には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)と生分解性樹脂(C)が併用される。
脂肪族ポリエステル組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)は90〜120℃であり、生分解性樹脂組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)は80〜95℃である。
そして、
生分解性重合体(C)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜95℃の範囲であり、且つ、フィルム(i)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)より低いものを使用することにより、脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム基材の融点と生分解性樹脂組成物からなる熱融着層の融点の差を大きくすることができ、低温ヒートシール性に優れ、ピロー包装適性に優れた積層ラミネートフィルムが得られる。
本発明で用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0008】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0009】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0010】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0011】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造、販売されている。
【0012】
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなるポリエステルである。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0013】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0014】
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
かかる芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の耐熱性を保ちながら、柔軟なポリエステルが得られる。
【0015】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
【0016】
本発明に用いられる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0017】
生分解性重合体(C)
本発明に用いられる生分解性重合体(C)は、融点(Tm)が45〜80℃、好ましくは55〜75℃の範囲の重合体であり、具体的には、ε―カプロラクトン、δ―バレロラクトン、β−メチル−δ―バレロラクトン等のラクトン類の1種類若しくは2種以上を重合して得られるポリラクトンあるいはかかるラクトン類とグリコール酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体等のラクトン共重合体あるいはポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンオキザレート等が挙げられる。
これら生分解性重合体の中でも、ポリε―カプロラクトン、ポリδ―バレロラクトン等のポリラクトンが特に好ましい。
かかるポリラクトンのメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0018】
脂肪族ポリエステル組成物
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル組成物は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35重量%、好ましくは95〜40重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65重量%、好ましくは5〜60重量%からなる。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が2重量%未満の組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65重量%を越える組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺し破壊エネルギー等が低下する虞がある。
これら脂肪族ポリエステル組成物の中でも、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜65重量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜35重量%からなる組成物が、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺し破壊エネルギーが共に優れるので好ましい。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル組成物には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0019】
生分解性重合体組成物
本発明に用いられる生分解性重合体組成物は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が95〜10重量%、好ましくは90〜70重量%及び前記生分解性重合体(C)が5〜90重量%、好ましくは10〜30重量%からなる。
本発明の生分解性重合体組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)として、融点(Tm)が80〜95℃の共重合体、より好ましくは80〜90℃の範囲の共重合体を用いると、前記本発明の脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルムと積層して低温ヒートシール性に優れた複合ラミネートフィルムとすることができるので好ましい。
生分解性重合体(C)の量が5重量%未満の組成物は、得られる積層フィルムの低温ヒートシール性が改良されない虞があり、一方、90重量%を越える組成物は、融点が低くなり過ぎ、フィルム成形性に劣り、得られる積層フィルムがブロッキングする虞がある。
本発明に用いられる生分解性重合体組成物には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び生分解性重合体(C)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0020】
フィルム(i)
脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルム(i)は、例えば二軸延伸フィルムのような延伸フィルムでもよいが、無延伸フィルムであることが望ましい。
無延伸フィルム
本発明の脂肪族ポリエステル組成物から得られるフィルム(i)が無延伸フィルムの場合、脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35重量%、好ましくは95〜40重量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65重量%、好ましくは5〜60重量%との組成物とすることが望ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の含有量が2重量%未満の場合は、ラミネートフィルムの耐衝撃性等が十分でない虞があり、一方、65重量%を越える場合は、ラミネートフィルムの耐衝撃性、突刺し破壊エネルギー等が低下する虞がある。
脂肪族ポリエステル組成物の構成成分である脂肪族ポリエステル共重合体(A)は前記したように、融点(Tm)が80〜120℃、好ましくは80〜115℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃、好ましくは37〜73℃及び(Tm)−(Tc)が30〜55℃、好ましくは35〜50℃の範囲にあること、即ち、(冷却時の)結晶化温度が低い(結晶化が遅い)共重合体であることが必要であり、例えば、融点(Tm)が上記範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体であっても、結晶化温度(Tc)が76〜80℃と高い温度(結晶化が速い)、即ち、(Tm)−(Tc)が35℃未満の共重合体を用いた場合は、得られるフィルムは突刺し破壊エネルギーに劣る虞がある。
無延伸フィルムの厚さは、用途に応じて種々決め得るが、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
本発明において、無延伸フィルムは、印刷性あるいは延伸フィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
このような無延伸フィルムは後記する延伸フィルム(ii)に貼り合せて複合フィルムとして用いられる。
【0021】
無延伸フィルムなどのフィルム(i)は、種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を所定の量で配合した後、直接フィルム成形機に投入してT−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムにする方法がある。
また、予め脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)とを所定の量で混合して押出機等で溶融混練して脂肪族ポリエステル組成物を得た後、T−ダイ、環状ダイ等を用いてフィルムに成形する方法が例示される。
【0022】
複合フィルム
本発明の複合フィルムはフィルム(i)と種々の延伸フィルム(ii)を貼り合わせて調製される。なお、少なくともフィルム層(i)または延伸フィルム層(ii)のいずれか一方の表面には無機薄膜層(iii)を有する。複合フィルムは、前記脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム(i)の少なくとも片面に、無機薄膜層(iii)を形成することが望ましい。
また、複合フィルムには熱融着層(iv)が積層されていることが望ましい。
本発明の複合フィルムを構成するフィルム(i)は、前記したように、脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム(i)に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)を90〜110℃とし、熱融着層(iv)の生分解性樹脂組成物の脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜95℃の共重合体を用いるものである。
本発明では、生分解性樹脂組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点を、脂肪族ポリエステル組成物に用いる脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)より低くすることにより、低温ヒートシール性に優れるラミネートフィルムが得られる。
複合フィルムの厚さは、用途に応じて種々決めることができる。通常は、脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム(i)の厚さを10〜200μm、好ましくは20〜100μmとし、熱融着層(iv)の厚さを2〜100μm、好ましくは5〜50μmとされる。
本発明の複合フィルムはいずれも、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0023】
本発明の複合フィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム(i)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、並びに熱融着層(iv)の生分解性樹脂組成物の脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び生分解性重合体(C)を夫々所定の量で配合し、直接二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形によりフィルム層(i)と熱融着層(iv)を形成する方法がある。
また、予め脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、並びに脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び生分解性重合体(C)を、夫々所定の量で配合した後、溶融混練して脂肪族ポリエステル組成物及び生分解性樹脂組成物を得た後、二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形によりフィルム層(i)と熱融着層(iv)からなるフィルムとする方法がある。
さらに、夫々別個に脂肪族ポリエステル組成物及び生分解性樹脂組成物からなるフィルムを成形した後貼り合せてもよい。
【0024】
また、延伸フィルム(ii)には、種々の熱可塑性樹脂フィルムが用いられる。すなわち、延伸フィルム(ii)は、包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、等、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、からなる二軸延伸フィルムであっても良い。また、これら基材層は1層でも2層以上としてもよい。
【0025】
本発明において、延伸フィルム(ii)は生分解性の延伸フィルムが好適である。
これら延伸フィルムには、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、スルホネート基含有芳香族ポリエステル等の生分解性ポリエステルからなる延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムが好ましく、その中でも特にポリ乳酸(D)または芳香族系ポリエステル共重合体(E)からなる延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムが生分解性を備え且つ剛性、透明性、耐熱性に優れているので好ましい。
【0026】
ポリ乳酸(D)
本発明で延伸フィルム(ii)の原料となるポリ乳酸(D)は、D−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%未満、好ましくは3重量%未満で、融点が150〜170℃、好ましくは160〜170℃の範囲のものである。 D−乳酸の含有量が5重量%以上のものは延伸成形性が劣る虞がある。
なお、ポリ乳酸におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
かかるポリ乳酸としては、D−乳酸若しくはL−乳酸以外に、乳酸と共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクトン、グリコール酸などを共重合したものであってもよい。ポリ乳酸の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。
このようなポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
【0027】
芳香族ポリエステル(E)
本発明で延伸フィルム(ii)の原料となる芳香族系ポリエステル(E)が、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を含む芳香族系ポリエステルであり、より具体的には、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることが望ましい。ポリエステル樹脂の好ましい組成は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族または脂肪族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%(ここで、全単位の合計が100モル%になる)である。
【0028】
本発明に使用されるスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルは、基本的には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとの重縮合によって形成される芳香族ポリエステル樹脂であって、生分解性を付与するためにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を共重合成分の1種として含むポリエステル樹脂である。またそのフィルムに可撓性、生分解性等の性能を付与し、また向上させるために、さらに脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として加えた多成分系のポリエステル樹脂であってもよい。そのような樹脂は、特表平5−507109号公報、特表平6−505040号公報、特表平6−505513号公報等に記載されている。
好適な当該共重合体は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族グリコールを主成分にし、それにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を副成分として加え、それらの成分間で重縮合反応を進行させて得られたポリエステルである。
【0029】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などを例示することができ、またそれらのジアルキルエステルのようにエステル形成能を有する誘導体を使用することもできる。それらの内ではテレフタル酸またはジメチルテレフタレートの使用が好ましい。また、前記したジカルボン酸を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコール類を例示することができ、またそれらのオリゴマー、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに高分子量のポリアルキレングリコール等のポリアルキレングリコール類も使用することができる。また、前記したグリコール類を2種類以上組み合わせて使用してもよい。ジエチレングリコール等のオリゴマーは、ポリエステル樹脂の機械的物性、加水分解性あるいは生分解性を適度に調整する効果を有していることから、アルキレングリコール類とポリアルキレングリコール類とを併用して用いることが好ましい。それらの中で、エチレングリコールとジエチレングリコールとの併用が望ましい。
スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸のベンゼン環にスルホン酸金属塩基(−SO3M)が置換基として結合した化合物である。金属(M)としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、あるいはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属である。好ましい例として、5−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−フタル酸の金属塩を挙げることができる。この成分は、芳香族系ポリエステル共重合体に加水分解性や生分解性を付与する目的で加えられるが、特に5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム塩はその効果が高いので好ましい。なお、前記の芳香族ジカルボン酸は、アルキルエステルになっていてもよく、例えばジメチル-5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の形で使用することができる。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸等を例示することができ、また脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、カプロラクトン等を例示することができる。この脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、芳香族系ポリエステル共重合体のガラス転移点温度を下げ、好適には70℃以下に下げ、あるいは樹脂の加水分解性や生分解性を向上させる目的で共重合成分の1種として加えられるものである。
前記した成分間の重縮合反応は、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム等の触媒の存在下に200℃以上の高温かつ減圧下で行うことにより、分子鎖に沿ってランダムにそれらの成分に由来する単位が分布した線状ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0031】
重縮合したポリエステル樹脂中の各成分に由来する単位の含有量は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9、好ましくは37〜48.7モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50、好ましくは40〜49モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5、好ましくは0.3〜3モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
好適な芳香族系ポリエステル共重合体では、テレフタル酸成分に由来する単位が30〜49.9、好ましくは37〜48.7モル%、エチレングリコール成分に由来する単位が15〜48、好ましくは20〜45モル%、ジエチレングリコール成分に由来する単位が1〜29、好ましくは4〜20モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5、好ましくは0.3〜3モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
【0032】
本発明で用いる芳香族系ポリエステル共重合体は、その重量平均分子量が、10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、そのメルトフローレートは、ASTM D−1238に準拠し、220℃、2160g荷重下で測定した値が、0.1〜100(g/10分)であることが好ましい。分子量およびメルトフローレートが前記の範囲内にあると、押出成形に適した溶融粘度を示し、また積層フィルム基材層としての十分な機械的強度を有する。
ポリ乳酸延伸ラミフィルム
本発明の複合フィルムのうち、フィルム層(i)とポリ乳酸延フィルムとをラミネートして得られるポリ乳酸延伸ラミフィルムからなる複合フィルムは、透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ多層フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく低温ヒートシール性、ヒートシール強度が付与されている。
【0033】
このようなポリ乳酸延伸ラミフィルムの全体の厚さは15〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。
ポリ乳酸延伸フィルムを含む複合フィルムの厚さが15μm未満では包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばり、製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、またコストが高くなる虞がある。
ポリ乳酸延伸ラミフィルムを製造する方法としては、ポリ乳酸を用いて延伸フィルムを製造し、また脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を用いてフィルム層(i)をキャスト成形で製造し接着剤を用いて、これらを貼り合せる方法がある。
または脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)と生分解性重合体(C)を用いてフィルム層(i)、熱融着層(iv)をキャスト成形で製造し、これらを接着剤を用いて貼り合せる方法(ラミネート法)、またポリ乳酸延伸ラミフィルムの片面にさらに熱融着層(iv)を被覆する方法(押出しラミ法)がある。
これらの方法のうち、ラミネート法によれば多層フィルム側に印刷または蒸着やスパッタ処理を行うことが可能であるため好ましい。
【0034】
芳香族ポリエステル延伸ラミフィルム
複合フィルムとして、フィルム層(i)と芳香族ポリエステル延フィルムをラミネートして得られる芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムからなる複合フィルムは、透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ多層フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく低温ヒートシール性、ヒートシール強度が付与されている。
本発明の芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムは、その全体の厚さを15〜200μm、好ましくは30〜100μmとすることが通常である。
芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムの厚さが15μm未満では包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばり、製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、またコストが高くなる虞がある。
上記フィルム層(i)と上記芳香族ポリエステル延伸フィルムをラミネートして得られる芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムは、透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ多層フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく低温ヒートシール性、ヒートシール強度が付与されている。
【0035】
本発明の芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムは、その全体の厚さは15〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。
芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムの厚さが15μm未満では包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばり、製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、またコストが高くなる虞がある。
芳香族ポリエステル延伸ラミフィルムを製造する方法としては、予め芳香族ポリエステルを用いて延伸フィルム(ii)を製造し、これと並行して脂肪族ポリエステル共重合体(A)と脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を用いてフィルムをキャスト成形で製造し接着剤を用いて貼り合せる、または脂肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)と生分解性重合体(C)を用いて多層フィルムをキャスト成形で製造し接着剤を用いて貼り合せる方法(ラミネート法)または芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムの片面に脂肪族ポリエステル共重合体(A)および脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、または肪族ポリエステル共重合体(A)、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)および生分解性重合体(C)の2または3層を押出し被覆する方法(押出しラミ法)をとり得るが、ラミネート法であれば多層フィルム側に印刷または蒸着、スパッタ処理を行うことが可能であるため好ましい。
【0036】
無期薄膜層(iii)
本発明の複合フィルムには、少なくともフィルム層(i)または延伸フィルム層(ii)に、それらの少なくとも片面に無機薄膜層(iii)が形成されている。
無機薄膜層(iii)は、フィルム(i)または無延フィルム層(ii)の少なくとも1方のフィルムの少なくとも片面に設けられる。
すなわち、無機薄膜の種類は特に制限されない。中でも酸化アルミニウム(アルミナ)、アルミニウム、珪酸、およびITOから選ばれる1種以上の無機薄膜が、透明性を維持したままガスバリア性を改良することができ好適である。またコストが安いことから酸化アルミ、珪酸の無機薄膜が好ましい。
薄膜の形成方法は特に限定されず、蒸着、スパッタ、CVD、Cat−CVDなどが必要に応じて利用される。
なお、無機薄膜層(iii)を蒸着やスパッタ等により形成させる場合は、処理したフィルム層(i)と延伸フィルム(ii)とをラミネートする場合、無機薄膜層(iii)を保護するために、無機薄膜層(iii)をラミネート面として包装袋の外面にならないことが好ましい
このように無機薄膜層(iii)を設けることにより、煎餅、乾燥食品、スナック菓子、等を包装する際のガスバリア性、特に水蒸気バリア性が改良される。
また本発明の無延伸フィルムまたは無延伸多層フィルムには上記処理を行わずに、蒸着またはスパッタ処理を行ったポ軸延フィルムとラミすることでバリア性能を付与しても良い。
また蒸着またはスパッタ処理した無延伸フィルムまたは無延伸多層フィルムと延伸フィルムをラミする場合には、当然ではあるが、蒸着膜またはスパッタ膜を保護するために、蒸着膜またはスパッタ面がラミ面とし包装袋の外面にならないことが好ましい。
これらの無機薄膜層(iii)の厚さは、通常10オングストロームから500オングストローム程度である。
【0037】
ピロー包装用フィルム
本発明の複合フィルムは、ピロー包装用に好適である。
すなわち、ピロー包装用には、フィルム層(i)を、ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムからなる延伸フィルム(ii)にラミネートして得られる複合フィルムが好意である。
これらの複合フィルムは、ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムが外面となるので、得られるピロー包装袋は透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れている。
また、複合フィルムの片面に、フィルム層(i)、さらには熱融着層(iv)を有しているので、片面が低温ヒートシール性、ヒートシール強度を有するので、ピロー包装適性に優れている。
【0038】
溶断シール包装用フィルム
本発明の複合フィルムは、溶断シール包装用に好適である。
すなわち、フィルム(i)を、ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムからなる延伸フィルム(ii)に、ラミネートした複合フィルムを溶断シール包装袋として用いた場合、透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れ、且つ片面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)および脂肪族・芳香族ポリエステル(B)からなるフィルム層(i)、熱融着層(iv)があるので、溶断ヒートシール強度を有しており、溶断シール包装適性に優れている。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示す。本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例等で使用したポリエステル等は次の通りである。
(A)脂肪族ポリエステル共重合体(A)
コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T、MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cm3。
(B)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:100モル%、BASF社製、商品名 ECOFLEX、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm3。
【0040】
(E)スルホネート基含有芳香族ポリエステル(E):
テレフタル酸45モル%、エチレングリコール37モル%、ジエチレングリコール9モル%、5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム1モル%、ヒドロキシ酢酸8モル%、密度:1.35g/cm3、融点(Tm):200℃、MFR(220℃、2160g荷重):15g/10分。
【0041】
添加剤
(i)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(粒径4μm)
(ii)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMER SA1753
(iii)ポリエチレングリコール
第一工業製薬製、商品面PEG4000
【0042】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)ヘイズ(HZ)及び平行光線透過率(PLT)
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)及び平行光線透過率(PT:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(3)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(4)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0043】
(5)ヒートシール強度
ラミネートフィルムの無延伸フィルム面を重ね合わせて、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm2、時間:1秒の条件下で熱融着した。尚、加熱は上側のみとした。
熱融着したラミネートフィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を熱融着強度とした。
【0044】
実施例1〜6、比較例1、2
<脂肪族ポリエステル組成物の製造>
無延伸フィルムに用いる脂肪族ポリエステルとして、表1のように第1層、第2層の原料、添加剤を配合し、2軸押出機を用いて180℃で溶融混練した。

<無延伸フィルムの製造>
先端にマルチマニホールド式のT−ダイを備えた共押出シート成形機を用い、表1記載のように層比50:50となるように吐出量を調整して、200℃に加熱したT−ダイから、共押出(または単層)シートを押出した後、30℃のキャスティングロールで急冷することにより、厚さ30μmの二層無延伸フィルムを用意した。また片面(第2層)にコロナ処理を行った。

<ポリ乳酸二軸延伸フィルムの製造>
ポリ乳酸二軸延伸フィルム(東セロ社製:パルグリーンLC#25)(厚み:25μmm、両面コロナ処理)を用いた。
【0045】
<芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムの製造>
オーブン中で予備乾燥したスルホネート基含有芳香族ポリエステル(E)を、連続二軸延伸フィルム成形機(ブルックナー社製、逐次二軸延伸フィルム成形機)の60mmφ押出機を用いて230℃の押出温度で230℃のTダイより押し出し、30℃のキャスティングロールで急冷し、温度55〜80℃で縦方向および横方向に連続的に逐次二軸延伸し、200℃で約5秒ヒートセットを行い、次いで両面にコロナ処理を行い、厚さ25μm延伸フィルムを成形した。

<蒸着処理>
電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
アルミニウム蒸着の場合は蒸着源としてアルミニウムを使用した。
またアルミナ蒸着の場合は、蒸着源としてアルミニウムを用い、更に酸素導入しアルミニウムをアルミナに酸化することでアルミナ蒸着膜を形成した。但し、実施例−6はアルミナ自体を蒸着源として実験を行った。
【0046】

<無延伸フィルムと二軸延伸フィルムのラミネートフィルム>
ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムのコロナ面(蒸着を行っている場合は蒸着面)に上記記載の無延伸フィルムのコロナ面((蒸着を行っている場合は蒸着面)をウレタン系接着剤(武田薬品工業製:タケラックA310(60%)+タケラックA3(5%)+酢酸エチル(35%))を約7g/m2塗布した後にドライラミネートして厚さ50〜55μmのラミネートフィルムを得た。ラミネートフィルムの物性を前記方法で測定した。
測定結果を表1から表3に示す。
【0047】
【表1】

【表2】


【表3】

【0048】
表3に蒸着をおこなった複合フィルムと蒸着をおこなっていない複合フィルムの透明性、酸素透過度、水蒸気透過度の比較を示す。
表3から明らかなように蒸着処理を行った実施例−1〜6は蒸着をしていない比較例−1、2に比べて酸素透過度、水蒸気透過度が大幅に改善し、食品包装等バリア性能が必要な用途にも問題ないレベルにまでなっていることが分かる。
特に芳香族ポリエステル延伸フィルムを用いた実施例−3、4は芳香族ポリエステル延伸フィルム本来のガスバリア性が優れているため、更にガスバリア性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のラミネートフィルムは生分解性を有し、且つ、ガスバリア性、ヒートシール性に優れた包装用フィルムに好適なフィルムが得られるので、かかる特性を活かし、柔軟でラッピング包装等の自動充填包装用フィルムとして使用できる。
例えば合掌貼りタイプのピロー、2方シール、3方シール包装機用のフィルムとして、あるいはオーバーラップ包装機用のフィルムとして好適に使用できる。
特に本発明のラミネートフィルムは無機金属を蒸着またはスパッタしているのでガスバリア性能が向上し、食品包装で用いる場合の品質保持期間が長くなり、広い用途に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35重量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65重量%からなる脂肪族ポリエステル組成物〔(A)+(B)=100重量%とする〕からなるフィルム層(i)と熱可塑性樹脂からなる延伸フィルム層(ii)を有する複合フィルムであって、少なくともフィルム層(i)または延伸フィルム層(ii)のいずれか一方の表面に無機薄膜層(iii)を有する複合フィルム。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある請求項1記載の脂肪族ポリエステル組成物であることを特徴とする請求項1記載の複合フィルム。
【請求項3】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸であることを特徴とする請求項1若しくは2記載の複合フィルム。
【請求項4】
請求項1記載の無機薄膜(iii)が酸化アルミニウム、アルミニウム、珪酸、ITOのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の複合トフィルム。
【請求項5】
請求項1記載の脂肪族ポリエステル組成物からなるフィルム層の非ラミネート面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)95〜10重量%及び融点(Tm)が45〜80℃の生分解性重合体(C)5〜90重量%との生分解性重合体組成物〔(A)+(C)=100重量%とする〕からなる熱融着層(iv)が積層されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項6】
生分解性重合体(C)が、ポリラクトンである請求項5記載の複合フィルム。
【請求項7】
生分解性重合体(C)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜95℃の範囲であり、且つフィルム層(i)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)より低い脂肪族ポリエステル共重合体である請求項5または6に記載の複合フィルム。
【請求項8】
請求項1に記載の延伸フィルム層(ii)が、ポリ乳酸(D)または芳香族系ポリエステル共重合体(E)からなる二軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のラミネートフィルムまたは複合フィルム。
【請求項9】
芳香族系ポリエステル共重合体(E)がスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることを特徴とする請求項8に記載のラミネートフィルムまたは複合フィルム。

【公開番号】特開2007−276316(P2007−276316A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106942(P2006−106942)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】