説明

脂質合成阻害剤

【課題】 摂取しやすく、しかも、長期間連用しても安全な、脂質合成阻害剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 プロポリス抽出地物を有効成分とする脂質合成阻害剤を提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロポリス抽出物を有効成分として含有する脂質合成阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、過剰な食物の摂取、運動不足、ストレスなどが原因で生じる様々な疾患は、糖尿病や動脈硬化症、ひいては、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスクまでも高めることから、現代社会において大きな問題となっている。近年、この動脈硬化症や虚血性心疾患のリスクファクターとして、血液中のトリグリセリド量やコレステロール量が増加する病態を示す脂質異常症(高脂血症)が注目されている。
【0003】
この高脂血症を予防・改善するために様々な方法が従来から実践されている。例えば、食事制限や運動による方法、食物繊維の摂取などが挙げられる。しかしながら、食事療法用の低カロリー食は風味が単調であるために長期間経つと、人によっては毎日の摂取を嫌がるようになる場合がある。また、これらの予防・改善のために使用される、健康補助食品にあっても、その味質や食感などに問題があり、これらを長期間継続することはできない場合などには、血中トリグリセリドや血中コレステロールを増加させる結果となったり、健康に障害がでる場合すらある。また、トリグリセリドやコレステロールは、生体内では主として肝臓において、糖などを原料に生成されたアセチルCoenzyme(CoA)を出発物質として、アセチルCoAカルボキシラーゼ(Acetyl CoA carboxylase:ACAC)、脂肪酸合成酵素群、脂肪酸アシルCoA合成酵素などの関与により生合成され、リポ蛋白として肝臓から血中に分泌される。高脂血症の予防・改善をするために、トリグリセリドの生合成を抑制する方法として、ココアを有効成分とする脂肪酸合成系遺伝子群の発現抑制作用に基づく脂肪蓄積抑制剤や、オーレシンを有効成分とするアセチルCoAカルボキシラーゼ及び脂肪酸合成酵素群の阻害剤などが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、高脂血症の予防・改善は、長期間継続する必要があるので、単一の成分だけの使用では、人によっては長期間の摂取の継続を拒絶する場合や、十分な効果が得られない場合があり、長期間摂取しても、安全で、且つ、十分な効果が得られる新規の脂質合成阻害剤の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−359622号公報
【特許文献2】特開平9−194366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脂質合成阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために、長年研究してきたプロポリスに着目して鋭意研究した結果、意外にも、プロポリス抽出物が効果的に、脂質合成に関与する遺伝子の発現を抑制し、その結果、トリグリセリドやコレステロールを合成する酵素の活性が低下して、これらの脂質合成が阻害されることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は、プロポリス抽出物を有効成分とする脂質合成阻害剤を主な構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脂質合成阻害剤は、経口摂取乃至塗布により、トリグリセリドやコレステロールなどの脂質の生合成を阻害するので、その結果、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスクを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でいう脂質とは、トリグリセリド及びコレステロールをいい、脂肪酸を含む。また、本発明でいう脂質合成阻害とは、アセチルCoAを出発物質としてトリグリセリドやコレステロールが合成されるまでの、酵素による一連の合成反応の一部或いは全部を阻害することをいい、脂質合成に関与する酵素の活性の阻害、該酵素の発現の阻害或いは該酵素遺伝子の発現の阻害を含む。
【0009】
本発明の脂質合成阻害剤に使用するプロポリス抽出物としては、プロポリスを公知の各種溶媒で抽出して使用すればよい。抽出に使用する溶媒は、所期の目的が達成できるのであれば、特に制限はないが、経口摂取を前提とするのであれば、エタノール、又は、水とエタノールとの混合溶媒、或いは、液体炭酸ガスなどが望ましい。また、脂質合成阻害作用の強さの点からは、水とエタノールの混合溶媒が望ましく、エタノールを20乃至80質量%含有するものがより望ましく、30乃至70質量%含有するものがさらに望ましく、40乃至60質量%含有するものが特に望ましい。このプロポリス抽出物は、本発明の効果を妨げない限り、必ずしも精製されたものを用いる必要はなく、そのままで使用することも、又は、分画して、さらには、精製して脂質合成阻害作用をもつ成分を含む画分を採取して使用することも随意である。また、例えば、プロポリス抽出物と、マルトース、トレハロース、環状糖質やデキストリンなどとを混合して、これらを、常法により乾燥して、粉末を調製することも随意である。
【0010】
本発明のプロポリス抽出物を有効成分とする脂質合成阻害剤は、デキストリン、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、糖転移ビタミンP類、糖転移ビタミンCなどの特定の糖質及びコタラヒム抽出物から選ばれる1種又は2種以上と組み合わせて経口摂取することにより、その脂質合成阻害作用を、さらに増強することができる。
【0011】
本発明のプロポリス抽出物を有効成分とする脂質合成阻害剤の作用効果増強のために使用するデキストリン、プルラン、環状四糖などのα−グルカン類、ラクトスクロース、糖転移ビタミンP類及び糖転移ビタミンCなどの糖質は、所期の効果が得られるものであればその由来や製法に制限はなく、市販のものを利用することも随意である。また、これらの糖質は、本発明の効果を損ねない範囲で、通常、シラップ、含蜜結晶、含水結晶、無水結晶、非晶質固体などの形態から適宜選択することができ、その塩の形態のものであってもよい。また、これらの糖質は、本発明の所期の効果が得られるものであれば、必ずしも、高度に精製されている必要はなく、これらの糖質を調製する工程で共存する他の糖質との混合物であってもよいし、部分精製したものであってもよい。
【0012】
本発明で使用するデキストリンとしては、例えば、加酸焙焼法により製造されるデキストリンやこれをα−アミラーゼやグルコアミラーゼ処理して、これらの酵素の分解を受けにくい成分含量を高めたものや、これらを水素添加してその還元末端を還元したものなどがある。また、澱粉やデキストリンを糖転移活性のある酵素などで処理して、α−アミラーゼやグルコアミラーゼの分解を受けにくくした糖質であってもよい。具体的には、国際公開WO2008/136331号パンフレットの実施例5や実験20−2に開示された分岐α−グルカンを挙げることができる。また、市販品としては、松谷化学工業株式会社販売(商品名「パインファイバー」、「ファイバーソル2」)や三和澱粉工業株式会社販売(商品名「サンデック」)などの製品を挙げることができる。これらのデキストリンのなかでも、α−アミラーゼやグルコアミラーゼの分解を受けにくい難消化性デキストリンが望ましく、水溶性食物繊維成分を、全糖質に対して、無水物換算で、30質量%以上、望ましくは40質量%以上含有する糖質を、プロポリス抽出物と併用したとき、特に優れた脂質合成阻害効果を得ることができる。なお、本発明でいう水溶性食物繊維成分とは、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日付け衛新第13号厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知)により示されたプロスキー法や酵素−高速液体クロマトグラフィー法により定量される成分をいう。
【0013】
本発明で使用するプルランは、平均分子量が10,000乃至1,000,000程度のものがあり、50,000乃至500,000程度のものがより望ましい。市販品としては、平均分子量が約200,000の食品添加物級のプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルラン」)がある。
【0014】
本発明で使用する環状四糖としては、国際公開WO02/10361号パンフレットなどに記載のシクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(以下、「シクロニゲロシルニゲロース」という場合がある。)、或いは、特開2005−95148号公報などに記載のシクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(以下、「シクロマルトシルマルトース」という場合がある。)を挙げることができ、これらの糖質誘導体を含む。これらの糖質は前記公報に記載された方法により、澱粉を原料として調製することができ、本発明では、その調製液を、そのままで使用することも、又は、部分精製して、或いは、高度に精製して使用することもできる。
【0015】
本発明で使用するラクトスクロース(β−D−ガラクトシル−(1,4)−α−D−グルコシル−(1,2)−β−D−フラクトシド)は、所定量のラクトスクロースが含まれている糖質でさえあればよく、例えば、ショ糖とラクトースの混合溶液にβ−フラクトフラノシダーゼを作用させて調製したラクトスクロース含有糖質を、そのままで使用することも、又は、部分精製して、或いは高度に精製して使用することもできる。また、市販品を利用することができ、例えば、株式会社林原商事(商品名「乳果オリゴ550」、「乳果オリゴ700」など)や塩水港精糖株式会社(商品名「乳果オリゴLS−90P」、「乳果オリゴLS−55」など)により販売されているラクトスクロース含有糖質を利用してもよい。
【0016】
本発明で使用する糖転移ビタミンP類及び糖転移ビタミンCは、その種類、製法や由来に特に制限はなく、また、市販品を使用することも随意である。経済性をいうのであれば、ビタミンP類又はビタミンC(L−アスコルビン酸)と澱粉やこれの部分分解物にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどの糖転移活性を有する酵素を作用させて調製する方法が好適である。この方法によると、廉価な材料である澱粉やその部分分解物から、糖転移ビタミンP類や糖転移ビタミンCが高収率で得られる。ちなみに、斯かる方法により調製された市販品としては、糖転移ルチン(株式会社林原商事販売、商品名「αGルチン」)、糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名「林原ヘスペリジンS」)、糖転移ビタミンC(株式会社林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」)などがある。
【0017】
本発明の脂質合成阻害剤は、そのままで使用することもできるし、或いは、上記プロポリス抽出物の作用効果を増強する成分や、それ以外の賦形剤、他の食品分野、化粧品分野、医薬品分野、医薬部外品分野で使用される成分の1種又は2種以上を配合した組成物の形態で使用してもよい。
【0018】
本発明の脂質合成阻害剤は、有効成分であるプロポリス抽出物を、経口摂取用又は皮膚外用の組成物に配合することにより、所期の効果を発揮することができる。経口摂取用又は皮膚外用組成物に配合するプロポリス抽出物やその作用効果を増強する成分は、対象とする経口摂取用又は皮膚外用組成物の組成やその使用目的を勘案して、原料の段階から製品が完成するまでの工程で配合すればよい。その方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、逆ミセル化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、浸漬、固化、担持などの公知の1種又は2種以上の方法が適宜に選ばれる。また、製品完成後や飲食の際に振りかけるなどの方法であってもよい。また、このようにして調製された本発明の脂質合成阻害剤は、その形状を問わず、例えば、シラップ、マスキット、ペースト、粉末、固状、顆粒、錠剤などの何れの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤、カプセル剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
【0019】
本発明の脂質合成阻害剤の、一日当たりの経口摂取量は、所期の作用・効果が得られる量であれば特に制限はなく、通常、プロポリス抽出物を無水物換算で、0.1mg/kg・体重/日以上が望ましく、1乃至500mg/kg・体重/日がより望ましく、1乃至100mg/kg・体重/日が特に望ましい。100mg/kg・体重/日以上摂取しても、その配合量に見合うほどの効果の増強は認められない場合がある。また、その摂取方法は、本発明の所期の効果が達成できるのであれば特に制限はない。
【0020】
本発明の脂質合成阻害剤は、必要に応じて、上記以外にも、脂質合成阻害作用を有する成分、抗高脂血症剤、脂質代謝改善剤、脂肪分解促進剤、血圧降下剤、抗糖尿病剤、糖尿病の合併症や他の生活習慣病やメタボリックシンドロームなどの予防・治療効果を有する天然成分や化学合成品を配合することができる。また、その特性を妨げない範囲で、栄養物、嗜好物、生理活性物質、食品・医薬品用添加物などを配合することができる。また、これら以外にも、例えば、ショ糖、グルコース、マルトース、α,α−トレハロースやその糖質誘導体などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールなどの糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、糖転移ステビア、スクラロース、アセスルファムKなどの高甘味度甘味料、澱粉、カラギーナン、コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸などのムコ多糖体やその塩類をはじめとする多糖類、天然ガム類、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤、乳化剤、香料、香辛料、色素、例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ルチン・ヘスペリジン・ナリンジンなどのビタミンP類などのビタミン類やこれらビタミン類の誘導体(糖転移ビタミンP類及び糖転移ビタミンCを除く)、α−リポ酸、L−カルニチン、L−シトルリン、タウリンを含むアミノ酸類、CoQ10(コエンザイムQ10)、カテキンをはじめとするポリフェノール類、ヒドロキシデセン酸、アピシン、アデノシンやそのモノフォスフェイト、ジフォスフェイト或いはトリフォスフェイトなどの塩基類、グルタチオン、グリセロホスホコリン、ビスヒドロキシメチルブチレートモノハイドレート(HMB)、ハーブエキス、南天エキス、藍草エキス、プラセンタエキス、ローヤルゼリーエキス、酵母エキス、パフィアエキス、ガラナエキス、コリアンダーエキス、鹿角霊芝エキスなどの動植物エキス、これらエキスの粉末、生理活性物質などから選ばれる何れか1種又は2種以上を配合することも有利に実施でき、さらには、上記以外の澱粉質、糖質、コラーゲンをはじめとする蛋白質、ペプチドやこれらの部分分解物、繊維質、脂質、脂肪酸、有機酸、ミネラル、甘味料、酸味料、調味料、防腐剤、抗菌剤、薬効成分、抗酸化剤、乳化剤、pH調整剤などから選ばれる何れか1種又は2種以上を配合することも随意である。
【0021】
本発明の脂質合成阻害剤を、経口摂取用組成物に配合して使用する場合、具体的には、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディーなどの各種洋菓子、うどん、ラーメンなどの麺類、すし、五目飯など米飯類、人造肉などの穀類加工品類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、スプレッドなどのペースト類、イチゴジャム、ブルベリージャム、オレンジマーマレードをはじめとするジャム類、梅干し、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬、味噌漬などの漬物類、たくあん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素類、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、天ぷらなどの魚肉製品、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、昆布巻などの惣菜類、煮魚、筑前煮、おひら、なべ物などの煮物類、バター、プロセスチーズなどの乳製品、ふりかけ類、魚肉、畜肉、果実、野菜のビン詰、缶詰類、トマトジュース、スポーツ飲料、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席麺、即席しるこ、即席スープなど即席飲食物などの各種飲食物やその原料に配合して使用すればよい。
【0022】
このようにして製造される本発明の脂質合成阻害剤やこれを配合した経口摂取用組成物は、長期間連用しても、重篤な副作用もなく安全であり、トリグリセリドやコレステロールの合成を効果的に阻害できるので、脂肪肝の抑制や軽減、肝機能の改善、血管の損傷の予防・改善、糖尿病者やその予備軍における血糖値、インスリン値などの上昇や、糖尿病性腎障害、膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制することもできるし、インスリン抵抗性を改善することもできるので、その結果、肝機能障害、糖尿病、腎臓疾患、高血圧、動脈硬化症や心血管疾患など循環器系疾患、神経疾患などの予防乃至治療を促進し、生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防・改善し、さらには、美容、健康の維持・増進にも大きく貢献することができる。なお、本発明でいう糖尿病とは、I型及びII型の両方をいう。
【0023】
本発明の脂質合成阻害剤やこれを配合した経口摂取用組成物は、上記の各種疾患の予防剤・治療剤として使用することができる。また、本発明の脂質合成阻害剤やこれを含む経口摂取用の組成物は、トリグリセリド合成を阻害できることやコレステロールの合成を阻害できることを標榜して販売することも有利に実施できる。また、本発明の脂質合成阻害剤は、脂肪肝の抑制や軽減、肝機能の改善、糖尿病性腎障害や膵臓のランゲルハンス島の変性、及び/又は、血糖値の上昇を抑制することができるので、これらのことを標榜して販売することも随意である。
【0024】
本発明の脂質合成阻害剤を経口摂取物に配合して利用する場合は、粉末、固状、顆粒、錠剤などの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル剤など各種剤型で使用することもできる。
【0025】
また、本発明の脂質合成阻害剤を、皮膚外用剤に配合して使用する場合の剤型にも特に制限はない。例えば、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、固形スティック系、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、種々の剤型で本発明を適用することが可能である。また、その具体的な形態にも、特に制限はなく、化粧品、医薬品、医薬部外品などの薬事法上の区別に拘束されるものでもない。当該皮膚外用剤は、化粧品、医薬品、医薬部外品として、皮膚,口唇や頭皮などの外皮及び口内に適用されるものをいい、具体的には、軟膏、クリーム、乳液、ローション、エッセンス、ゼリー、ジェル、パック、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、マスク、マスカラ、アイライナー、育毛剤、リップスティック(口紅)、リップグロス、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、パウダー、マニキュア、石鹸、ボディーソープ、浴用剤、歯磨、口中清涼剤、口中清涼フィルム、マウスウオッシュ、うがい薬などに配合して使用することができる。
【0026】
本発明の脂質合成阻害剤を皮膚外用剤に配合して使用する場合には、その具体的な形態に応じて、公知成分を含む製剤学的に許容される成分を配合することが可能である。すなわち、通常、皮膚外用剤に用いられ得る成分の1種又は2種以上を、本発明の所期の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、油成分、界面活性剤、防腐剤(抗菌剤)、香料、美白剤、保湿剤、増粘剤、抗酸化剤、キレート剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、血行促進剤、海藻抽出物(海草抽出物を含む)、収斂剤、抗シワ剤、細胞賦活剤、抗老化防止剤、育毛・発毛剤、経皮吸収促進剤、水、アルコール類、水溶性高分子、pH調整剤、発泡剤、粉体、医薬品・医薬部外品・化粧品・食品用の添加剤、医薬用・医薬部外品用の有効成分など例示することができ、これらの成分の1種又は2種以上を適宜組み合わせて配合し、目的とする剤型に応じて、常法により製造すればよい。
【0027】
本発明の脂質合成阻害剤を皮膚外用に配合して使用する場合の配合量は、所期の効果が得られる量であれば特に制限はなく、通常、プロポリス抽出物を無水物換算(プロポリス由来の固形成分として)で、皮膚外用剤の総質量に対して0.1質量%以上配合したものが望ましく、0.5乃至50質量%配合したものがより望ましく、0.5乃至10質量%配合したものが特に望ましい。10質量%以上配合しても、その配合量に見合うほどの効果の増強は認められない場合がある。以下、実験例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
<実験1>
<プロポリス抽出物の調製>
後述の実施例1の方法に準じて調製した液状のプロポリス抽出物を使用した。当該プロポリス抽出物は、エタノール濃度44.3質量%、無水物換算で、固形分を108mg/ml含有し、フラボノイドを73mg/g、アルテピリンCを80mg/g含んでいた。
<プロポリス抽出物摂取の生体内脂質に及ぼす影響1>
プロポリス抽出物の摂取の生体内脂質に及ぼす影響を調べる試験を、高脂肪食負荷肥満モデルマウスを使用して以下のように行った。すなわち、57匹の6週齢雄性C57BL/6Nマウス(日本チャールスリバー株式会社販売)を単独飼育で、AIN−96G組成の標準食(『The Journal of Nutrition』、第123巻、第1939−1951頁(1993年)参照)を与えて馴化させ、1週間後に体重が均等になるように7群に分けた。6群各8匹には、表1に示す配合のAIN−96G組成を基本とした高脂肪食(脂質由来エネルギーが全体の約50%)を与えると同時に、上記液状のプロポリス抽出物を脱イオン水で希釈し、無水物換算で、プロポリス抽出物由来の固形成分として表2に示す何れかの摂取量を、2回/日、10日間強制的に経口摂取させた。残りの1群9匹には、対照群として、2質量%エタノール水溶液を0.2ml/匹/回で、プロポリス抽出物摂取群と同じスケジュールで強制的に経口摂取させた。飼育期間中、摂餌量を測定して、一日当たりの摂餌量を表2に示す。また、試験開始時(プロポリス抽出物摂取開始時)及び試験終了時に体重を測定し、各試験群について、試験終了時の体重から試験開始時の体重を減じて、験期間中の体重の増加量を求め、試験開始時の体重と併せて表2に示す。さらに、飼育期間終了後、1晩絶食して、腹部大静脈より採血した後、解剖して、肝臓、腎臓周囲脂肪、精巣周囲脂肪、腸間膜周囲脂肪を摘出して、その各々の質量を測定した結果と、腎臓周囲脂肪、精巣周囲脂肪及び腸間膜周囲脂肪の合計の質量を計算して内臓脂肪質量として表2に併せて示す。また、採血した血液から常法により血清を分離し、血清トリグリセリド(TG)、血清総コレステロール(CHO)、遊離脂肪酸(NEFA)、血清グルコース、血清GOT・GPTの量を、各々市販の測定キット(何れも和光純薬株式会社販売、商品名「TG E−テストワコー」、「CHO E−テストワコー」、「NEFA C−テストワコー」、「グルコースCII−テストワコー」及び「トランスアミラーゼCII−テストワコー」)で測定した結果を表2に併せて示す。さらに、各マウスから摘出した肝臓は、質量を測定した。対照群及びプロポリス抽出物を、無水物換算で0.1又は1mg/0.2ml/回/匹摂取群の肝臓は、その一部を後述の実験2に使用するために切除後、それぞれ質量を再度測定した。これらの肝臓に等質量の蒸留水を加えて、常法により肝臓ホモジネイトを調製した。このホモジネイトにクロロホルム/メタノール(質量比:2/1)を肝臓質量の2倍量加えて攪拌後、遠心してクロロホルム層を回収し、濃縮乾固して脂質を抽出した。血清トリグリセリドと同じ方法で抽出したクロロホルム画分に含まれるトリグリセリド量を測定し、ホモジネイトの調製に使用した肝臓の質量で除して、肝臓組織1g当たりに含まれるトリグリセリド量を計算した結果を表2に併せて示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表2から明らかなように、摂取期間が10日間であるにも関わらず、プロポリス抽出物を無水物換算で0.001mg以上/回摂取群では、対照群に比して、体重の増加が、摂取量に依存して抑制され、1又は5mg/回摂取群では、有意な増加の抑制が認められた。摂餌量に群間差は認められないことから、この体重の増加抑制は、摂取エネルギー量の差によるのではなく、プロポリス抽出物に起因すると判断した。また、腸間膜周囲脂肪質量は、0.001mg以上/回摂取群で有意な低下が認められた。腎臓及び精巣周囲脂肪質量も低下傾向が認められ、内臓脂肪質量でみると1又は5mg/回摂取群で有意な低下が認められた。肝臓質量も対照に比して増加が抑制された。肝臓組織中のトリグリセリド、血清トリグリセリド及び血清遊離脂肪酸は、対照群に比して、その増加が抑制され、血清遊離脂肪酸及び血清トリグリセリドは0.001mg以上/回の摂取で、又、肝臓組織中のトリグリセリドは0.01mg以上/回の摂取群で、それぞれ有意な上昇の抑制が認められた。血清コレステロールは、0.01mg以上/回摂取群で有意な上昇の抑制が認められた。また、GPTは1mg/回摂取群で有意な上昇が認められたものの、その上昇量はわずかであり、5mg/回摂取群では上昇傾向にはあるものの対照群と有意差がないことから、正常範囲内での変化と判断した。この結果は、プロポリス抽出物が、皮下脂肪、内臓脂肪、肝臓をはじめとする臓器の組織中の脂肪など体脂肪、血中脂質(トリグリセリド、コレステロール)及び/又は血清遊離脂肪酸を低減乃至増加を抑制する作用をもっていることを物語っている。また、プロポリス抽出物摂取により、摂餌量、血清GOT、血清グルコースに、対照と有意な差はなく、GPTの上昇もわずかなことから、本発明で使用したプロポリス抽出物は摂取しても安全であると判断した。
【0032】
<実験2>
<プロポリス抽出物摂取の脂質代謝関連遺伝子の発現に及ぼす影響>
実験1において、プロポリス抽出物摂取によるマウスの体重及び内臓脂肪質量の増加抑制、並びに、肝臓組織中のトリグリセリド及び血清脂質の増加抑制の要因を調べる目的で、脂質代謝や糖代謝に関連する遺伝子について、リアルタイムPCR解析法を用いた遺伝子発現量の変化を調べる試験を以下のように行った。すなわち、解析対象遺伝子として、脂質代謝或いは糖代謝に関与することが知られている24個の遺伝子を選択し、PCR反応の際の内部標準としてサイクロフィリンA(Cyclophilin A:CypA)の遺伝子を使用した(表3参照)。実験1の対照群、及び、プロポリス抽出物摂取により体重や体内の脂質に変化の認められた、プロポリス抽出物を無水物換算で0.1又は1mg/0.2ml/回/匹摂取群の、合計3群25匹のマウスの各個体につき、摘出した肝臓の一部を使用してそのホモジネイトを作成して、全RNAを抽出した。この全RNAの抽出には、市販のRNA抽出キット(キアゲン社販売、商品名「RNeasy Mini kit」)を使用し、操作は、その説明書に従った。途中、DNase(キアゲン社販売)処理を加えた。次に、市販の逆転写酵素(インビトロジェン社販売、商品名「SuperScript III Reverse Transcriptase」)を使用して、添付の説明書に準じて以下のように、cDNAテンプレートを合成した。全RNAにオリゴdT12−18プライマー(インビトロジェン社販売)及びdNTPs(GEヘルスケア社販売)を混合して65℃で5分間処理後、氷上にて1分間以上放置した。これに、逆転写酵素及びジチオスレイトール(インビトロジェン社販売)を添加して50℃で30分間、55℃で30分間、続いて70℃で15分間インキュベートした。内部標準及び解析対象遺伝子のPCR解析に必要なプライマーの塩基配列(Forward及びReverse プライマー)は、GENBANKのmRNA配列から「primer3ソフトウェア」(フリーウエア)を用いて設計するか、或いは、既知の塩基配列を使用し、プライマーは、合成の受託会社(シグマアルドリッチ株式会社)に依頼して調製した。本実験の対象とした解析対象遺伝子及び内部標準として使用した遺伝子とその略記、及び、PCR反応のプライマーとして使用した塩基配列を表3に併せて示す。このプライマーを使用して市販のPCR定量解析システム(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社販売、商品名「Light Cycler480」)により各解析対象遺伝子の発現量を定量した。各cDNAテンプレートのPCR反応は、市販のPCRキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社販売、商品名「SYBR Green I Master kit」)を使用し、その添付の説明書に基づき、最初に反応液を95℃で5分間熱変性を行った後、PCR反応(95℃で10秒、60℃で10秒、72℃で8乃至14秒を1サイクルとし、これを40乃至45サイクル繰り返した)を行った。PCR反応の際に内部標準として使用したサイクロフィリンAをコードするDNAは、自社(株式会社林原生物化学研究所)で調製したものを使用して、各解析対象遺伝子の相対的な発現量を算出した。対照群における各解析対象遺伝子の発現量の平均値を1.000として、プロポリス抽出物を無水物換算で0.1mg/回又は1mg/回摂取群における各々の解析対象遺伝子の発現量の相対値を求めて表4に示す。なお、解析対象遺伝子は、脂肪酸合成関連遺伝子としてSREBF1、ACLY、ACAC、MCAT、FAS、脂肪酸燃焼(β酸化関連)関連遺伝子としてPPARα、CPT1、CPT2、MCAD、LCAD、AOX、コレステロール合成関連遺伝子としてSREBF2、HMGCS1、HMGCSR、SQLE、コレステロール排泄関連遺伝子としてCYP7A1、TCA回路関連遺伝子としてMDH2、IDH1/2、解糖関連遺伝子としてPKLR、糖新生関連遺伝子としてPEPCK、G6pc、グリコーゲン合成関連遺伝子としてGYS2、UGDHを選択した(表3参照)。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
表4から明らかなように、プロポリス抽出物を、無水物換算で0.1又は1mg/匹/回、2回/日で、10日間摂取させたマウスでは、何れの場合も、脂肪酸合成に関与する遺伝子の脂肪酸合成転写因子1(Sterol regulatory element binding protein 1:SREBF1)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(Acetyl CoA carboxylase:ACAC)、脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase:FAS)、並びに、コレステロール合成に関与する転写遺伝子の脂肪酸合成転写因子2(Sterol regulatory element binding protein 2:SREBF2)の有意な発現の低下が認められた。また、プロポリス抽出物の0.1又は1mg/匹/回、2回/日(0.2及び/又は2mg/匹/日)の摂取によりβ酸化系遺伝子(CPT2、AOX)の有意な発現低下も認められた。この結果は、高脂肪食摂取時の生体内脂質増加の抑制が、プロポリス抽出物の、脂質合成阻害によることを物語っており、当該プロポリス抽出物が、脂肪合成に関与する酵素遺伝子やコレステロール合成に関与する遺伝子の発現阻害剤、或いは、脂肪合成に関与する酵素の阻害剤やコレステロール合成に関与する酵素の阻害剤、さらには、生体内脂質合成阻害剤として利用できることを物語っている。また、PEPCKの上昇の理由は不明ながら、発現量に変化のない遺伝子やPEPCKのように発現量の増える遺伝子の存在は、プロポリス抽出物による脂肪合成に関与する遺伝子及びコレステロール合成に関与する遺伝子の発現抑制作用が、マウスの代謝系全体を抑制した結果ではなく、これらの遺伝子に特異的な抑制作用であることを物語っている。
【0036】
<実験3>
<プロポリス抽出物摂取の生体内脂質に及ぼす影響2>
実験2において、マウスに、高脂肪食と共にプロポリス抽出物を摂取させたところ、生体内脂質の蓄積が抑制されたので、既に蓄積された生体内脂質に対するプロポリス抽出物摂取の及ぼす影響を調べた。すなわち、24匹の7週齢の雌C57BL/6Nマウスを、1ケージあたり4匹の集団飼育で、表5に示す組成の高脂肪食(クレア社販売、商品名「High Fat Diet 32」)を8週間与えて飼育した。各群のマウスの体重の平均がほぼ同一となるように、3群各8匹に群分けを行い、表6に示すように、対照群、プロポリス抽出物0.1mg/匹/回摂取群(以下、「0.1mg摂取群」という。)、プロポリス抽出物1.0mg/匹/回摂取群(以下、「1mg摂取群」という。)の3群とした。プロポリス抽出物は、実験1で使用したものと同じ標品を使用した。2群各8匹のマウスには、高脂肪食(クレア社販売、商品名「High Fat Diet 32」)を与えると同時に、プロポリス抽出物を脱イオン水で希釈し、無水物換算で、プロポリス抽出物由来の固形成分として、1回当たり摂取量が、0.1mg/匹(0.1mg摂取群)、又は、1.0mg/匹(1mg摂取群)となるように、2回/日、5日/週、4週間、強制的に経口摂取させた。残りの1群8匹には、対照群として、高脂肪食を与えると同時に、2質量%エタノール水溶液を0.2ml/匹/回で、プロポリス抽出物摂取群と同じ投与スケジュールで強制的に経口摂取させた。飼育期間中は体重および摂餌量を測定した結果を表6に示す。さらに、飼育期間終了後、実験1と同様に、一晩絶食して、腹部大静脈より採血後、解剖して肝臓、腎臓周囲脂肪、子宮周囲脂肪及び腸間膜周囲脂肪を摘出し、各々の質量を測定した結果と、腎臓周囲脂肪、子宮周囲脂肪及び腸間膜周囲脂肪の合計の質量を計算して内臓脂肪質量として計算した結果とを表6に併せて示す。採血した血液は、常法により血清を分離し、血清中のトリグリセリド、総コレステロール、遊離脂肪酸、グルコース、GOP及びGPTを、各々実験1と同じ方法で測定した結果を表6に併せて示す。また、血清中のインスリンは高感度マウスインスリン測定キット(株式会社森永生科学研究所)で測定した結果を表6に併せて示す。肝臓の一部を、実験1と同じ方法で、ホモジネイト後、脂質を抽出して、トリグリセリドを測定した結果を表6に併せて示す。
【0037】
さらに、実験2においてプロポリス抽出物が、脂質代謝関連遺伝子の発現を抑制する作用を有することが確認されたので、当該遺伝子の産物である酵素自体の活性が抑制されていることを確認するための試験を、脂質代謝関連遺伝子の中でも体脂肪の蓄積に中心的な役割を果たしているFAS(脂肪酸合成酵素)を指標にして以下のように行った。すなわち、実験3で摘出した各マウスの肝臓0.3gに、2mlのホモジナイズ用緩衝液(0.25Mショ糖液と1mM EDTAとを含む3mMトリス塩酸、pH7.2)を加えてホモジナイズし、500×gで10分間、4℃で遠心して得た上清を、さらに9000×gで10分間、4℃で遠心し、上清を回収して酵素源とした。
<FAS活性測定の方法>
吸光度測定用のマイクロセル(日本石英硝子株式会社販売、商品名「石英硝子セル」)に0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)0.5ml、2mMの塩酸に溶解した2.5mMアセチル−CoA(Sigma社販売、製品番号「A2056」)0.02ml、蒸留水に溶解した10mMのNADPH(Sigma社販売、製品番号「N1630」)0.03ml、酵素源0.05ml、及び、蒸留水0.38mlを加えて撹拌混合し、30℃に保温した恒温セルホルダー(株式会社島津製作所販売、商品名「UV2400PC」)に装着した。340nmの吸光度が安定するまで数分間待ち、2mM塩酸に溶解した10mMマロニル−CoA(Sigma社販売、商品番号「M4263」)0.02mlを添加、混合して酵素反応を開始した。タイムコースで吸光度の減少を3分間スキャンし、1分間当たりの吸光度の減少(ΔOD/分)を計算した。NADPHの分子吸光係数6220M−1cm−1に基づき、下記式(数1)により酵素活性(nmol/分/mg・蛋白質)を計算した結果を表6に併せて示す。なお、酵素源の蛋白量(mg/ml)はブラッドフォード法を用いて測定した。
【0038】
【数1】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
表6から明らかなように、高脂肪食を12週間摂取させた対照群のマウスでは、内臓脂肪の蓄積が認められた。また、実験1の対照マウスに比して、肝臓組織中のトリグリセリド量が10倍以上に増加し、血清GOT及びGPTが上昇して、脂肪肝の進行と肝機能の低下が観察された。これに対して、高脂肪摂取9週目からプロポリス抽出物を、1回当たり、無水物換算で、0.1mg/匹(0.1mg摂取群)、又は、1.0mg/匹(1mg摂取群)となるように、1日2回/日、5日/週、4週間摂取させた群では、何れも、対照群に比して、体重の増加が抑制され、腸間膜周囲脂肪、腎臓周囲脂肪及び子宮周囲脂肪の蓄積が減少し、1mg投与群では、対照群に比して、体重の有意な増加抑制と、腎臓周囲脂肪の有意な減少が認められた。さらに、対照に比してプロポリス抽出物摂取群では、血清中のトリグリセリド、遊離脂肪酸、グルコース、インスリン、GOT、GPT及び肝臓組織中のトリグリセリドが低減し、血清中のトリグリセリド、遊離脂肪酸、及び、肝臓組織中のトリグリセリドについては、0.1mg摂取群及び1mg摂取群の両群で対照群に比して有意な低減が認められ、血清中のグルコースについても、1mg摂取群で対照群に比して有意な低減が認められた。さらに、FASについても0.1mg摂取群及び1mg摂取群の両群で対照群に比して有意な活性の低下が認められた。実験1乃至3の結果は、プロポリス抽出物が、経口摂取により、脂質代謝に関与する遺伝子の発現を抑制し、脂質の合成を抑制して、体重の増加の抑制、血清中や肝臓組織中のトリグリセリドの低減、内臓脂肪の蓄積の抑制、蓄積した内臓脂肪の低減などの作用を発揮するので、体重増加抑制剤、内臓脂肪蓄積抑制剤又は内臓脂肪低減剤として利用できることを物語っている。さらに、プロポリス抽出物は、血清中又は肝臓の脂質低減剤、血清グルコース低減剤、或いは、FAS活性抑制剤としても利用できることを物語っている。また、摂餌量、肝臓質量については、対照群とプロポリス抽出物摂取群とで差はほとんど認められず、血清中のGOT及びGPTは対照群よりもプロポリス抽出物摂取群の方が低かったので、実験1及び3の結果から、プロポリス抽出物摂取による副作用はなく、逆に、プロポリスの摂取により脂質の過剰摂取により引き起こされた脂肪肝が軽減し、肝機能も改善されたと判断した。
【0042】
<実験4>
<プロポリス抽出物と各種糖質との併用が生体内肪質に及ぼす影響>
実験1で、プロポリス抽出物の摂取により生体内肪質量の増加が抑制されることが見出されたので、プロポリス抽出物以外で、脂質代謝や体重の増加などに影響を及ぼすことが知られている糖質との併用による生体内脂質量に及ぼす影響を調べる試験を以下のように行った。また、脂質代謝に影響を及ぼすことが知られているコタラヒム抽出物についても同様の試験を行った。すなわち、糖質として表7に示す12種類の糖質を使用した。実験1と同じ方法で、140匹の6週齢の雄C57BL/6Nマウス(日本チャールスリバー株式会社販売)を単独飼育で、AIN−96G組成の標準食を与えて馴化させ、1週間後に体重を基に10匹ずつ14群に分けた。12群各10匹には、表1に示す配合のAIN−96G組成を基本とした高脂肪食(脂質由来エネルギーが全体の約50%)を与えると同時に、表7に示す糖質の何れか又はコタラヒム抽出物から選ばれる1種を無水物換算で10mg/0.2ml/回/匹と、プロポリス抽出物を無水物換算で1mg/0.2ml/回/匹とを、各々2回/日で同時に、10日間強制的に経口摂取させた。また、残りの2群各10匹のうちの1群10匹には、プロポリス抽出物のみを、無水物換算で1mg/0.2ml/回/匹で、2回/日、10日間強制的に経口摂取させて10日間飼育し、他の1群10匹は、対照群として高脂肪食のみを与えて10日間飼育した。実験1と同様に、飼育期間中、摂餌量、体重を測定して、一日当たりの摂餌量、試験開始時の体重及び体重の増加量を求めて併せて表7に示す。さらに、飼育期間終了後、1晩絶食して後、解剖して、肝臓、腎臓周囲脂肪、精巣周囲脂肪、腸間膜周囲脂肪を摘出して、肝臓質量及び内臓脂肪質量(腎臓周囲脂肪、精巣周囲脂肪及び腸間膜周囲脂肪の合計の質量)を測定して表7に併せて示す。また、実験1と同じ方法で肝臓組織中のトリグリセリド量を測定して、肝臓組織1g当たりのトリグリセリド量を計算した結果を表7に併せて示す。なお、試験に使用した、プルラン(株式会社林原商事販売)、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)、デキストリン(三和澱粉株式会社販売、商品名「サンデック#250」)、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社販売、商品名「ファイバーソル2」)、及び、サイクロデキストリン(塩水港精糖株式会社販売、商品名「イソエリートP」)、糖転移ビタミンC(L−アスコルビン酸2−グルコシド、株式会社林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」)は市販品を使用した。また、これら以外の、ラクトスクロース、環状四糖(シクロニゲロシルニゲロース、シクロマルトシルマルトース)及び糖転移ビタミンP類(糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン)は、何れも株式会社林原生物化学研究所で純度が98%以上の標品を調製して使用した。また、コタラヒム抽出物として、市販のコタラヒム抽出物含有粉末(コタラヒムジャパン株式会社販売、無水物換算で、コタラヒム抽出物を50質量%、賦形剤のシクロデキストリンを50質量%含有)を使用した。
【0043】
【表7】

【0044】
表7から明らかなように、プロポリス抽出物と同時に、難消化性デキストリン、ラクトスクロース、シクロニゲロシルニゲロース又は糖転移ヘスペリジンを摂取させた場合には、プロポリス抽出物のみを摂取させたプロポリス摂取群に比して、有意な体重増加の抑制、内臓脂肪質量増加の抑制及び肝臓組織中のトリグリセリドの増加抑制の増強が認められた。また、プロポリス抽出物と、プルラン又は糖転移ビタミンCを摂取させた場合には、プロポリス摂取群に比して、有意な内臓脂肪質量増加の抑制及び肝臓組織中のトリグリセリドの増加抑制の増強が認められた。さらに、プロポリス抽出物と同時に、デキストリン、シクロマルトシルマルトース、糖転移ルチン又はコタラヒム抽出物を摂取させた場合には、有意な内臓脂肪質量増加の抑制の増強が認められた。プロポリス抽出物と、サイクロデキストリン、α,α−トレハロース又はマルトテトラオースとを摂取させた群では、対照群と差は認められなかった。この結果は、プロポリス抽出物と同時に、デキストリン、難消化性デキストリン、プルラン、ラクトスクロース、シクロニゲロシルニゲロース、シクロマルトシルマルトース、糖転移ビタミンP類、糖転移ビタミンC及び/又はコタラヒム抽出物を摂取することにより、プロポリス抽出物のもつ体重増加抑制作用、内臓脂肪質量増加抑制作用、又は肝臓組織中のトリグリセリド増加抑制作用を、効果的に増強できることを物語っている。また、その増強効果の強さの点では、難消化性デキストリン、プルラン、ラクトスクロース、シクロニゲロシルニゲロース、糖転移ヘスペリジン又は糖転移ビタミンCとの併用が望ましく、難消化性デキストリン、ラクトスクロース、シクロニゲロシルニゲロース及び/又は糖転移ヘスペリジンの併用が特に望ましいことを物語っている。
【0045】
<実験5>
<プロポリス抽出物と併用する糖質の摂取量の体重及び内臓脂肪質量に及ぼす影響>
実験4で、プロポリス抽出物と特定の糖質を同時に摂取させることで、プロポリス抽出物を単独で摂取させた場合に比して、マウスの体重や内臓脂肪質量の増加が抑制されることが見出されたので、プロポリスと同時に摂取する糖質の摂取量が、マウスの体重及び内臓脂肪質量に及ぼす影響を調べる試験を行った。試験は、実験4で、プロポリス抽出物と同時に摂取することにより、プロポリス抽出物を単独で摂取した場合よりも、マウスの体重及び内臓脂肪質量の増加を強く抑制した、4種類の糖質(難消化性デキストリン、ラクトスクロース、シクロマルトニゲロシルニゲロース及び糖転移ヘスペリジン)を使用して行った。すなわち、実験1と同じ方法で、208匹の6週齢の雄C57BL/6Nマウス(日本チャールスリバー株式会社販売)を単独飼育で、AIN−96G組成の標準食を与えて馴化させ、1週間後に体重をもとに8匹ずつ26群に分けた。24群各8匹には、表1に示す配合のAIN−96G組成を基本とした高脂肪食(脂質由来エネルギーが全体の約50%)を与えて飼育し、同時に、プロポリス抽出物を無水物換算で1mg/0.2ml/回/匹と、4種類の糖質の何れかを、無水物換算で表8に示す量の何れかで、2回/日、毎日強制的に経口摂取させて10日間飼育した。また、残りの2群各8匹のうちの1群8匹には、プロポリス摂取群としてプロポリス抽出物のみを、無水物換算で1.0mg/0.2ml/回/匹で、2回/日、毎日強制的に経口摂取させて10日間飼育し、他の1群8匹は、対照群として高脂肪食のみを与えて10日間飼育した。実験1と同様に、飼育期間中、摂餌量、体重を測定して、一日当たりの摂餌量、試験開始時の体重、及び、体重の増量を求めて併せて表8に示す。さらに、飼育期間終了後、1晩絶食して、解剖し、肝臓、腎臓周囲脂肪、精巣周囲脂肪、腸間膜周囲脂肪を摘出して、肝臓質量、及び内臓脂肪質量(腎臓周囲脂肪、精巣周囲脂肪及び腸間膜周囲脂肪の合計の質量)を測定して表8に併せて示す。また、実験1と同じ方法で肝臓組織中のトリグリセリド量を測定して、肝臓組織1g当たりの脂質量を計算した結果を表8に併せて示す。なお、試験に使用した4種類の糖質は、実験4で使用した糖質と同じものを使用した。
【0046】
【表8】

【0047】
表8から明らかなように、プロポリス抽出物と、難消化性デキストリン又はラクトスクロースとを同時に摂取させた場合には、これらの糖質を、無水物換算で1mg/匹/回以上の摂取で、プロポリス抽出物による体重増加量の抑制、肝臓質量、内臓脂肪質量増加の抑制或いは肝臓組織中のトリグリセリドの増加抑制効果に対する有意な増強が認められた。シクロニゲロシルニゲロースを同時に摂取させた場合には、0.2mg/匹/回以上の摂取で、プロポリス抽出物による体重増加量の抑制、肝臓質量、内臓脂肪質量増加の抑制或いは肝臓組織中のトリグリセリドの増加抑制効果に対する有意の増強が認められた。また、糖転移ヘスペリジンを同時に摂取させた場合には、5mg/匹/回以上の摂取で、プロポリス抽出物のもつ体重増加量の抑制、肝臓質量、内臓脂肪質量増加の抑制或いは肝臓組織中のトリグリセリドの増加抑制効果に対する有意の増強が認められた。何れの糖質をプロポリス抽出物と同時に摂取した場合も、25mg/匹/回以上では、摂取量に見合うだけのプロポリス抽出物の作用に対する増強効果は認められなかった。この結果は、プロポリス抽出物と同時に、難消化性デキストリン、ラクトスクロース、シクロニゲロシルニゲロース及び/又は糖転移ヘスペリジンを、無水物換算で、0.2mg/匹/回以上、望ましくは、1mg/匹/回以上、さらに望ましくは5mg/匹/回以上摂取することにより、プロポリス抽出物のもつ体重増加抑制作用や内臓脂肪質量増加抑制作用を、効果的に増強できることを物語っている。また、増強効果の強さの点では、シクロニゲロシルニゲロース、難消化性デキストリン又はラクトスクロースとの併用がより望ましく、シクロニゲロシルニゲロース又は難消化性デキストリンとの併用が特に望ましいことを物語っている。
【0048】
以下、本発明の脂質合成阻害剤及びこれを配合した組成物について、実施例により説明するが、本発明がこれら実施例に、何ら限定されることはない。
【実施例1】
【0049】
<脂質合成阻害>
<プロポリス抽出物の調製>
塊状のブラジル産プロポリスを粗砕して、95容積%エタノール水溶液で、常法にしたがって抽出し、次いで残渣を少量の水で洗浄し、洗液を合わせて得られたプロポリス粗抽出物含有80容積%エタノール(無水物換算で、固形分約20質量%含有)水溶液に、水を加えてエタノール濃度を50容積%に低減して、50℃に1時間保ち、プロポリス中の有効成分を含有する上層と粘着性沈殿物の下層を形成させ、室温で一夜放置し、この上層を分離し採取して、無水物換算で、固形分を125mg/ml(エタノール濃度43.5質量%)含有し、フラボノイドを92mg/g、アルテピリンCを86mg/g含有し、吸光度比(OD310nm/OD660nm)が11,015である色調、香味の優れた液状の精製プロポリス抽出物を得た。本品は、このままで、或いは、他の成分を配合した組成物の形態で、脂質合成阻害剤として利用することができる。
<脂質合成阻害剤の調製>
上記液状のプロポリス抽出物1質量部に対して、サイクロデキストリン2質量部と無水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所製造)7質量部を、万能混合機で混合し、そのままで一晩放置したのち、粉砕して、粉末状の脂質合成阻害剤を調製した。本品は、無水物換算で1g当たり約12.5mgのプロポリス抽出物を含有する粉末である。本品を継続して経口的に摂取することにより、アセチルCoAカルボキシラーゼ、脂肪酸合成酵素群の遺伝子やコレステロール合成関連遺伝子の発現を抑制するので、結果として、トリグリセリドやコレステロールの合成を阻害し、これら生体内の脂質を低減することができる。
【0050】
この粉末を、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。本品を、継続して経口的に摂取することにより、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスクを低減することができる。
【実施例2】
【0051】
<脂質合成阻害剤>
<プロポリス抽出物の調製>
塊状のブラジル産プロポリス1kgを粉砕し、30容積%水性エタノールを5kg加え、60℃で加温しながら2時間浸漬し、室温まで冷却した後、濾紙及び珪藻土を用いて濾過した。固相部を採取し、65容積%水性エタノール5kgに浸漬し、60℃で加温しながら2時間抽出し、室温まで冷却し、4℃で一晩静置した後、上記と同様にして濾過し、液相部を採取した。引続き、分離した固相部を採取し、65容積%水性エタノールに浸漬し、上記と同様にして再度抽出した後、液相部を採取し、最初の液相部と合一した。合一した液相部における、原料のプロポリス質量に対する固形分収率は約33質量%であった。次いで、合一した液相部に、予め65容積%水性エタノールに対して平衡化しておいた弱塩基性陰イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンWA−30』(OH型)、三菱化学工業株式会社製造)を湿質量で10質量%になるように加え、緩やかに攪拌しながら室温下で1時間処理した。濾過によりイオン交換樹脂を除去し、濾液を採取し、濃縮して、無水物換算で、固形分を118mg/ml含有し、フラボノイド103mg/g、アルテピリンCを88mg/g含有する液状の精製プロポリス抽出物をえた。本品は、このままで、或いは、他の成分を配合した組成物の形態で、脂質合成阻害として利用することができる。
<脂質合成阻害剤の調製>
上記液状のプロポリス抽出物1質量部に対して、サイクロデキストリン2質量部と無水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所製造)7質量部を、万能混合機で混合し、そのままで一晩放置したのち、粉砕して、粉末状の脂質合成阻害剤を調製した。本品は、無水物換算で1g当たり約11.8mgのプロポリス抽出物を含有する粉末である。本品を継続して経口的に摂取することにより、生体内脂質の合成を阻害することができる。
【0052】
この粉末を、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。本品を、継続して経口的に摂取することにより、生体内脂質の合成を阻害することができるので、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスクを低減することができる。
【実施例3】
【0053】
<脂質合成阻害剤>
難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社販売、商品名「ファイバーソル2」、食物繊維成分を全糖質に対して、無水物換算で85乃至95質量%含有)8kgを流動層造粒機(不二パウダル株式会社販売、型番「20F(G)」)に入れ、実施例1の方法で調製した液状の脂質合成阻害剤5kgを噴霧して粉末8.5kgを調製した。さらにこれを万能混合機(ダルトン社販売、型番「60MD−rrs」)で粉砕して、粉末状の脂質合成阻害剤を調製した。本品は、このままで、或いは、他の成分を配合した組成物の形態で、脂質合成阻害剤として利用することができる。
【0054】
この粉末を、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。本品を、継続して経口的に摂取することにより、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスクを低減することができる。
【実施例4】
【0055】
<脂質合成阻害剤>
実施例1乃至3の方法で調製した粉末状の脂質合成阻害剤の何れか1質量部に対して、糖転移ヘスペリジン(林原商事販売、商品名「林原ヘスペリジンS」)0.5質量部、ラクトスクロース1質量部を均質に混合して粉末状の脂質合成阻害剤を調製した。本品は、このままで、或いは、他の成分を配合した組成物の形態で、脂質合成阻害剤として利用することができる。
【0056】
この脂質合成阻害剤に適量のショ糖脂肪酸エステルを加えて、打錠機を用いて1錠あたり約300mgの錠剤に成形した。本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例5】
【0057】
<脂質合成阻害剤の調製>
実施例1乃至3の何れかの方法で調製した粉末状の
脂質合成阻害剤の何れか1種 73質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事
販売、商品名「トレハ」) 5質量部
滑沢剤 3質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社
林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」) 5質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、
商品名「林原ヘスペリジンS」) 5質量部
L−カルニチン 2.5質量部
L−シトルリン 1質量部
α―リポ酸 1.5質量部
上記配合処方に基づき、これらの成分を均質になるまで攪拌混合し、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。
【0058】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例6】
【0059】
<脂質合成阻害剤>
実施例1乃至3の方法で調製した粉末状の
脂質合成阻害剤の何れか1種 25質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事
販売、商品名「トレハ」) 54質量部
滑沢剤 3質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社
林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」) 10質量部
グルコサミン 2.5質量部
コンドロイチン硫酸ナトリウム 1.5質量部
ヒアルロン酸 4質量部
上記配合処方に基づき、これらの成分を均質になるまで攪拌混合し、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。
【0060】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロールの合成阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例7】
【0061】
<脂質合成阻害剤>
実施例1乃至3の方法で調製した粉末状の
脂質合成阻害剤の何れか1種 71質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事
販売、商品名「トレハ」) 5質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社
林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」) 5質量部
ラクトスクロース含有糖質(株式会社林原商事販売、
商品名「乳果オリゴ LS700」) 5質量部
シクロニゲロシルニゲロース(株式会社林原生物化学
研究所製造) 2質量部
L−カルニチン 2.5質量部
L−シトルリン 1質量部
α―リポ酸 1.5質量部
滑沢剤 2質量部
上記配合処方に基づき、これらの成分を均質になるまで攪拌混合し、常法により、0.5gずつ打錠して、錠剤を調製した。
【0062】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例8】
【0063】
<脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物>
生クリーム(油脂含量約46質量%)18質量部、脱脂粉乳7質量部、全乳51質量部、砂糖10質量部、ラクトスクロース含有粉末(商品名「乳果オリゴ」)4質量部、プルラン2質量部、及びアラビアガム2質量部の混合物を溶解し、70℃で30分間保持して殺菌した後、ホモゲナイザーで乳化分散させ、次いで、3乃至4℃にまで急冷し、これに、実施例1又は2の方法で得た液状の脂質合成阻害剤の何れか4質量部を加えてさらに混合し、一夜熟成した後、フリーザーで凍結させてアイスクリームの形態の脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物を調製した。
【0064】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例9】
【0065】
<脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物>
無水結晶マルトース(林原商事販売、商品名「ファイントース」)500質量部、実施例1の方法で得た粉末状の脂質合成阻害剤100質量部、粉末卵黄190質量部、脱脂粉乳200質量部、L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」)2質量部、塩化ナトリウム4.4質量部、塩化カリウム1.85質量部、硫酸マグネシウム4質量部、藍抽出物(株式会社林原生物化学研究所製造)1質量部、ローヤルゼリー抽出物(株式会社林原生物化学研究所製造)1質量部、チアミン0.01質量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1質量部、ビタミンEアセテート0.6質量部及びニコチン酸アミド0.04質量部からなる配合物を調製した。この配合物25質量部を精製水150質量部に均一に分散・溶解させ、150gずつ褐色ガラスビンに封入して、飲料形態の脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物を調製した。
【0066】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例10】
【0067】
<脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物>
下記成分を練混合して、押し出し造粒し、流動層乾燥して、バスケット顆粒状の脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物を調製した。この顆粒を1.5グラムずつ分包した。
実施例1乃至3で調製した粉末状の
脂質合成阻害剤の何れか1種 30質量部
エリスリトール 50質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原商
事販売、商品名「アスコフレッシュ」) 7.5質量部
ショ糖(フロストシュガー) 6質量部
コエンザイムQ10 5質量部
ビタミンB 0.1質量部
ビタミンB 0.1質量部
ビタミンB 0.1質量部
パイナップルパウダー 0.5質量部
オレンジパウダー 0.2質量部
ピーチ香料 0.5質量部
【0068】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例11】
【0069】
<脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物>
下記成分を練混合後、常法により、打錠し、シェラックでコーディングして、脂質合成阻害剤を配合した1錠が250mgの経口摂取用組成物を調製した。
実施例1乃至3で調製した粉末状の脂質合成阻害剤産生
増強剤の何れか1種 45質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名「
林原ヘスペリジンS」) 25質量部
ローヤルゼリー抽出物(株式会社林原商事販売) 10質量部
鹿角霊芝抽出物 1質量部
ガラナエキス 5質量部
冬虫夏草、メシマコブ及びメカブフコダインの抽出物の混合物 5質量部
ミネラル酵母ミックス 6質量部
βカロテン 0.2質量部
ビタミンB 0.2質量部
ビタミンB 0.2質量部
ビタミンB 0.2質量部
ビタミンB12 0.005質量部
ビタミンC 10質量部
ビタミンD 0.1質量部
葉酸 0.02質量部
ナイアシン 2質量部
パントテン酸カルシウム 1質量部
ビオチン 0.5質量部
ビタミンE 2質量部
賦形剤(デキストリン) 20質量部
香料 適量
ステアリン酸カルシウム 0.5質量部
【0070】
本品は、継続して経口的に摂取することにより、トリグリセリドやコレステロール合成の阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例12】
【0071】
<脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物>
砂糖30質量部に水8質量部を加え加熱溶解し、これに水飴50質量部を加えブリックス糖度85乃至90°に煮詰めた後、80℃以下まで冷却した。次いで、この糖液に、水10質量部の水にゼラチン7質量部を加熱溶解したものを加え、さらにビーフエキス2質量部、50質量%クエン酸溶液3質量部、実施例1乃至3の方法で得たローヤルゼリー分画物の何れか1質量部、香料を適量加えて均一に混合した。得られた配合物をスターチモールドに分注し、一晩放置してグミの形態の脂質合成阻害剤を配合した経口摂取用組成物を調製した。
【0072】
本品は、イヌやネコなどに継続して経口的に摂取させることにより、トリグリセリドの合成を阻害やコレステロール合成阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例13】
【0073】
<脂質合成阻害剤を配合した皮膚外用組成物>
下記配合処方に基づき、常法により、クリーム形態の脂質合成阻害剤を配合した皮膚外用組成物を調製した。
スクワラン 10質量部
ステアリン酸 2質量部
水素添加パーム核油 0.5質量部
水素添加大豆リン脂質 0.1質量部
セタノール 3.6質量部
親油型モノステアリン酸グリセリン 2質量部
グリセリン 10質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社
林原生物化学研究所販売、商品名「AA2G」) 2質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販
売、商品名「アルファグルコシルヘスペリジン」) 0.5質量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量部
アルギニン(20質量%水溶液) 15質量部
カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15質量部
タモギタケ抽出物 3質量部
実施例1又は2の方法で調製した液状の
脂質合成阻害剤の何れか 1質量部
精製水 34.2質量部
【0074】
本品は、継続して皮膚に塗布することにより、トリグリセリドの合成阻害やコレステロール合成阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例14】
【0075】
<脂質合成阻害剤を配合した皮膚外用組成物>
下記配合処方に基づき、常法により、美容液の形態の脂質合成阻害剤を配合した皮膚外用組成物を調製した。
グリセリン 10質量部
ショ糖脂肪酸エステル 1.3質量部
カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5質量部
アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15質量部
モノラウリン酸ポリグリセリル 1質量部
マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3質量部
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ
(フィトステリル−2−オクチルドデシル) 2質量部
硬化パーム油 2質量部
スクワラン(オリーブ由来) 1質量部
ベヘニルアルコール 0.75質量部
ミツロウ 1質量部
ホホバ油 1質量部
1,3−ブチレングリコール 10質量部
L−アルギニン(10質量%水溶液) 2質量部
アンズタケ抽出物 4質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販
売、商品名「アルファグルコシルヘスペリジン」) 0.5質量部
藍抽出物(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名
「藍ルーロス」) 1質量部
実施例1又は2の方法で調製した液状の
脂質合成阻害剤の何れか 1質量部
精製水 25.95質量部
【0076】
本品は、継続して皮膚に塗布することにより、トリグリセリドの合成阻害やコレステロール合成阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【実施例15】
【0077】
<脂質合成阻害剤を配合した皮膚外用組成物>
下記配合処方に基づき、常法により、水性ジェルの形態の脂質合成阻害剤を配合した皮膚外用組成物を調製した。
カルボキシビニルポリマー 0.5質量部
エタノール 10質量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量部
香料 0.1質量部
鹿角霊芝抽出物 2質量部
実施例1又は2の方法で調製した
脂質合成阻害剤の何れか 1質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販
売、商品名「アルファグルコシルヘスペリジン」) 0.5質量部
シクロニゲロシルニゲロース(株式会社林原生物化学
研究所製造) 0.5質量部
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1質量部
水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5質量部
精製水 84.7質量部
【0078】
本品は、継続して皮膚に塗布することにより、トリグリセリドの合成阻害やコレステロール合成阻害効果を発揮する。本品はこれらの作用効果を標榜して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスク低減剤として販売することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の脂質合成阻害剤を経口的に摂取乃至経皮的に投与することにより、効果的にトリグリセリドやコレステロールの合成を効果的に阻害することができるので、結果として、心筋梗塞や脳卒中などの心血管性疾患のリスクを低減できる。また、本発明の脂質合成阻害剤は、長期間摂取乃至塗布しても、副作用がないので、安全性が高く、安心して利用することができる。本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に多大の貢献をする、誠に意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポリス抽出物を有効成分とする脂質合成阻害剤。
【請求項2】
さらに、デキストリン、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、糖転移ビタミンP類、糖転移ビタミンC及びコタラヒム抽出物から選ばれる何れか1種又は2種以上を配合した請求項1記載の脂質合成阻害剤。
【請求項3】
トリグリセリド合成阻害剤及び/又はコレステロール合成阻害剤である請求項1又は2記載の脂質合成阻害剤。
【請求項4】
トリグリセリド合成に関与する酵素発現阻害剤、トリグリセリド合成に関与する遺伝子発現阻害剤、コレステロール合成に関与する酵素発現阻害剤及びコレステロール合成に関与する遺伝子発現阻害剤の何れか1種以上である請求項1乃至3の何れかに記載の脂質合成阻害剤。
【請求項5】
トリグリセリド合成に関与する遺伝子が、脂肪酸合成転写因子1(Sterol regulatory element binding protein 1:SREBF1)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(Acetyl CoA carboxylase:ACAC)及び/又は脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase:FAS)であり、コレステロール合成に関与する遺伝子が脂肪酸合成転写因子2(Sterol regulatory element binding protein 2:SREBF2)である請求項4記載の脂質合成阻害剤。
【請求項6】
脂質合成阻害及び/又はコレステロール合成阻害ができることを標榜してなる経口摂取用である請求項1乃至5の何れかに記載の脂質合成阻害剤害。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の脂質合成阻害剤を有効成分とする心血管性疾患のリスクの低減剤。

【公開番号】特開2010−53122(P2010−53122A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173561(P2009−173561)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】