説明

脂質系および使用方法

本発明は、特定相対比のω−3、ω−6およびω−9脂肪酸を含有する脂質系およびこうした脂質系を使用するための方法に関する。本脂質系は、独立して使用してもよいし、栄養製品の成分として使用してもよい。本発明の脂質系は、ω−3脂肪酸、ω−6脂肪酸およびω−9脂肪酸を含有することができ、ω−6脂肪酸のω−3脂肪酸に対する比率は、好ましくは0.25:1と3:1の間であり、ω−9脂肪酸のω−3脂肪酸に対する比率は、好ましくは0.4:1と3:1の間である。本発明は、脂質系またはこの脂質系を含有する栄養製品を個体に投与するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な比率のω−3、ω−6およびω−9脂肪酸を含有する脂質系、ならびにこうした脂質系を使用するための方法に関する。開示する脂質系は、独立した使用に適し、または栄養製品の成分として適する。
【背景技術】
【0002】
血糖調節は、2型糖尿病の個体を治療する際の第一目標である。しかし、糖調節だけでは、糖尿病の血管合併症または血管疾患の危険性は排除されない。血管合併症および血管疾患は、一般に循環器系の動脈および特に冠状動脈の拡張(血管拡張)および収縮(血管収縮)能力を害する。血管合併症は、2型糖尿病の最も重症な症状の代表例である。例えば、冠動脈、大脳動脈および抹消動脈のアテローム性動脈硬化症は、糖尿病でない個体と比較して糖尿病の個体では2から4倍も一般的であり、糖尿病患者ではこれらの状態がより早期に発生し、より急速に進行する。糖尿病の主な血管合併症には、下肢虚血および神経障害(切断につながることがある)、腎臓病、心臓発作、ならびに網膜障害(失明につながることがある)の発生率増加が挙げられる。加えて、糖尿病の個体が臨床的血管疾患を発現すると、糖尿病でない個体より不良な生存予後を受ける。食事血糖調節は、糖尿病の個体にとって第一目標であるが、血糖調節だけでは、血管疾患の危険性増大が完全には相殺されない。
【0003】
2型糖尿病の基礎をなす代謝的原因は、インスリンにより媒介される糖廃棄の複合欠陥(インスリン抵抗性)および/または膵臓細胞によるインスリンの分泌不良であり、すなわち、2型糖尿病の人々は、インスリンを適切に使用または分泌することがもはやできない。2型糖尿病における血管合併症の加速発現は、インスリン抵抗性とインスリン抵抗性に随伴する危険因子のランダムでない集中発生とが併さった結果である。これらの危険因子には、高血圧(血管疾患の75%までが、高血圧の糖尿病個体において発生する)、アテローム生産性がより高いリポ蛋白(小型で密度が高いLDLおよび高トリグリセリドリポ蛋白)のレベル上昇、低いHDLコレステロールレベル、ならびに止血(血液凝固)因子およびC−反応性蛋白質(炎症のマーカー)のレベル上昇が挙げられる。一括して言うと、糖尿病の個体に集中発生するこれらの状態は、血管内皮細胞機能損傷または障害ならびに血管疾患加速を導き得る。従って、血糖耐性を増進し、および、糖尿病患者の血管疾患の危険性を低減する治療が、望ましい。
【0004】
こうした治療には、脂肪酸などの一定の食事成分の摂取の調節および最適化を試みる食事を挙げることができる。脂肪酸は、カルボン酸であり、炭素鎖の長さおよび飽和特性に基づき分類されている。短鎖脂肪酸は、2から約4個の炭素を有し、一般には飽和している。中鎖脂肪酸は、約6から約10個の炭素を有し、一般にこれも飽和している。長鎖脂肪酸は、約12から約24個またはそれ以上の炭素を有し、飽和していてもよいし、不飽和であってもよい。長鎖脂肪酸には、1つまたはそれ以上の二重結合(不飽和)があり、これが、それぞれ、「一不飽和」および「多不飽和」という用語のもとである。
【0005】
長鎖脂肪酸は、生化学者にはよく理解されている命名法に従って、脂肪酸の二重結合の数および位置によって類別される。多くの場合、生化学者は、長鎖多不飽和脂肪酸(LCPUFA)を炭素鎖中の二重結合の位置に基づく系列または族に分類する。LCPUFAが属する族は、脂肪酸のメチル末端に最も近い二重結合の位置によって決定される。例えば、ω−3系列(またはn−3系列)は、脂肪酸のメチル末端から3番目の炭素の位置に最初の二重結合を有し、ω−6系列(またはn−6系列)は、6番目の炭素の位置にこの最初の二重結合を有し、ω−9系列(またはn−9系列)は、9番目の炭素まで二重結合がない。例えば、α−リノレイン酸は、炭素原子数18の鎖長を有し、ならびに3つの二重結合を有し、この最初の二重結合がメチル末端から3番目の炭素に位置することから、これはω−3族の構成員となる。一見して脂肪酸に関するこのすべての情報が得られる簡易(short hand)命名法が開発された。この命名法は、[鎖長]:[二重結合数]n−[脂肪酸のメチル末端に最も近い二重結合の位置]である。従って、α−リノレイン酸(ALA)は、「C18:3n−3」と呼ばれる。同様に、ドコサヘキサン酸(DHA)は、炭素原子数22の鎖長とメチル末端から3番目の炭素で始まる6つの二重結合とを有し、故に、「C22:6n−3」と呼ばれる。もう1つのLCPUFAは、エイコサペンタエン酸(EPA)であり、これは、「C20:5n−3」と呼ばれる。
【0006】
ω−3脂肪酸が豊富な食事は、低い2型糖尿病発生率と関連付けられている。主として、研究は、魚油中にあるω−3脂肪酸EPA(C20:5n−3)およびDHA(C22:6n−3)に集中している。ALA(C18:3n−3)は、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサン酸(DHA)と同じように熱心に研究されてきたもう1つのω−3脂肪酸である。α−リノレイン酸(ALA)は、デサチュラーゼおよびエロンガーゼなどの酵素を伴う多数の酵素的段階により、体内でエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサン酸に代謝され得る。糖尿病に対するα−リノレイン酸の恩恵に関して動物モデルで行われた調査では、種々雑多な結果が報告されている。例えば、2つの研究により、遺伝的インスリン抵抗性動物モデルにおいて糖代謝に対するα−リノレイン酸の効果が評定されている。Katoら,Journal of Health Science 46,489−492(2000)では、遺伝的インスリン耐性糖尿病マウス(KK−Ay)において、強制栄養によりα−リノレイン酸を毎日投与した21日後、インスリンに対する血糖応答に有意な改善が認められた。Hunら,Biochemical and Biophysical Research Communications 259,85−90(1999)では、α−リノレイン酸が豊富なエノ油を含有する高脂肪食を遺伝的インスリン耐性糖尿病マウス(KK−Ay)に与えた。Hunらは、Katoらとは対照的に、ω−6多不飽和脂肪酸が豊富な大豆油、または飽和および一不飽和脂肪酸しか含有しないラードを含む食事を消費したマウスと比較して、8週間後、血糖値に有意な差がないことを見出した。
【0007】
他の研究では、2型糖尿病またはインスリン耐性のヒトにおいて糖代謝に対する亜麻仁(linseed)(アマニ(flaxseed))油カプセルの効果が評定されている。McManusら,Diabetes Care 19,463−467(1996)は、亜麻仁油または魚油、いずれかを含有するカプセルを消費した2型糖尿病の個体について、3ヵ月後、空腹時の糖もしくはインスリンレベル、またはインスリン感受性には差がないと報告した。Gohら,Diabetologia 40,45−52(1997)は、2型糖尿病の個体が亜麻仁油または魚油を含有するオイルカプセルを消費した場合、3ヵ月後、空腹時の糖またはインスリンレベルに差がないと報告した。対照的に、Nestelら,Arteriosclerosis,Thrombosis,and Vascular Biology 17,1163−1170(1996)は、インスリン耐性のマーカーを有する肥満個体が、マーガリンとして提供されたα−リノレイン酸が豊富な食物およびアマニ油を用いて作ったマフィンを消費したとき、インスリン感受性が低下したことを報告した。
【0008】
幾つかの特許が、ω−3、ω−6およびω−9脂肪酸を含有する脂質プロフィールの使用を開示している。DeMicheleらの米国特許第5,780,451号(「’451特許」)は、明記されている百分率範囲内のω−3、ω−6およびω−9脂肪酸を利用する、潰瘍性大腸炎の人のための栄養製品を開示している。この’451特許のω−6脂肪酸のω−3脂肪酸に対する比率は、0.25:1から4.0:1(重量に基づく比率)の範囲内であると開示されている。’451特許において使用されている幾つかのω−3脂肪酸のうち、エイコサペンタエン酸は、最も優勢であり(重量に基づく好ましい範囲で、16.0%から19.6%)、α−リノレイン酸は、最も劣勢である(重量に基づく好ましい範囲は、1.5%から2.1%)。明記されているリノール酸のα−リノレイン酸に対する比率は、3.0から10.0(重量に基づく比率)の範囲内である。
【0009】
Cashmereらの米国特許第4,921,877号は、糖不耐性の人が使用するための液体栄養製品を開示している。この’877特許の表1には、大豆油、高オレイン酸ベニバナ油、および大豆レシチンを含む好ましい成分が開示されている。これらの成分により、ω−9脂肪酸(オレイン酸)、ω−6脂肪酸(リノール酸)およびω−3脂肪酸(α−リノレイン酸)を含有する脂質系が作られる。この系のω−3成分は、比較的低い重量パーセント(この脂質系の約1.2%)でしか存在しない。
【0010】
他の特許には、ω−6脂肪酸のω−3脂肪酸に対する最適な比率が明記されているが、ω−9脂肪酸のω−3脂肪酸に対する最適な比率は開示されていない。例えば、Garlebらの米国特許第5,308,832号には、神経損傷の人が使用するための栄養製品が開示されている。この’832特許には、多成分脂質ブレンド(’832特の表8参照)が開示されており、1から6の重量%範囲のω−6脂肪酸のω−3脂肪酸に対する比率が明記されている。ω−9脂肪酸のω−3脂肪酸に対する好ましい比率は、開示されていない。Balndの米国特許第5,922,704号(「’704特許」)にも、人用の栄養補足物が開示されている。この’704特許には、リノール酸(ω−6)およびα−リノレイン酸(ω−3)の1:2の比率での使用が開示されている。ω−9脂肪酸のω−3脂肪酸に対する好ましい比率は、開示されていない。
【発明の開示】
【0011】
(発明の要約)
本発明の1つの実施態様は、脂質系を提供する。ω−3、ω−6およびω−9族各々からの長鎖多不飽和脂肪酸(LCPUFA)が、本脂質系に包含される。重量%に基づき、約0.25:1から約3:1のω−6 LCPUFAのω−3 LCPUFAに対する比率の範囲。重量%に基づき、約0.4:1から約3:1のω−9 LCPUFAのω−3 LCPUFAに対する比率の範囲。場合により、炭素原子数が12より多い飽和脂肪酸を、本脂質系に、全脂質100gあたり約47g未満のレベルでさらに加えてもよい。好ましくは、幾つかの油を併用して、上に明記したω−6脂肪酸対ω−3脂肪酸比およびω−9脂肪酸対ω−3脂肪酸比を達成することができる。
【0012】
本実施態様の脂質系は、糖不耐性の個体の耐糖能を改善することができ、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善することができ、および血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減することができる、最適化された比率の必須および非必須脂肪酸を提供するものである。この脂質系は、糖不耐性の個体、インスリン抵抗性の個体および血管疾患の危険性のある個体に投与することができる。本脂質系は、糖不耐性の個体、インスリン抵抗性の個体または血管疾患の危険性のある個体以外にも投与することができる。
【0013】
本発明の脂質系は、経口的に許容されるあらゆる剤形およびこれらの組合せで個体に投与することができる。栄養配合物には、経腸配合物、経口配合物、成人用配合物、小児用配合物、および乳児用配合物が挙げられる。栄養配合物は、この配合物の全カロリー量の約5から約35%を提供する蛋白質成分、全カロリー量の約10から約95%を提供する炭水化物成分、および全カロリー量の約5から約70%を提供する脂質成分を含有する。本明細書に記載する栄養配合物は、食事の補足物または単独の栄養源として使用することができる。
【0014】
本発明のもう1つの実施態様は、糖不耐性の個体の耐糖能を改善するための方法を提供する。本実施態様の方法は、本明細書に記載する脂質系の投与を含む。
【0015】
本発明のもう1つの実施態様は、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善するための方法を提供する。本実施態様の方法は、本明細書に記載する脂質系の投与を含む。
【0016】
本発明のもう1つの実施態様は、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減するための方法を提供する。本実施態様の方法は、本明細書に記載する脂質系の投与を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(詳細な説明)
ここで用いる用語「脂質」は、水に不溶性である共通特性を有し、ならびにクロロホルムおよびエーテルなどの極性が低い有機溶媒により細胞から抽出することができる、生体系関連物質の不均質な群を一般に示す。
【0018】
用語「構造グリセリド」または「構造脂質」は、グリセロール骨格上の特定の位置に特定の脂肪アシル残基を有する油または脂肪を指す。グリセリドは、グリセロール(1,2,3−プロパントリオール)と脂肪酸のアシル残基とのエステルであり、アシルグリセロールとしても知られている。グリセロール分子の1箇所のだけを脂肪酸でエステル化すると、「モノグリセリド」が生成し、2箇所をエステル化すると、「ジグリセリド」が生成し、グリセロールの三箇所すべてを脂肪酸でエステル化すると、「トリグリセリド」または「トリアシルグリセロール」が生成する。グリセリドは、すべてのエステル化位置が同じ脂肪酸を有する場合には「単純」と呼ばれ、異なる脂肪酸を伴う場合には「混合」と呼ばれる。グリセロール骨格の炭素は、sn−1、sn−2およびsn−3と表され、sn−2が中央にあり、sn−1およびsn−3は、エステル化のためには立体化学的に等価である。天然油および脂肪は、3個の脂肪アシル残基が、同じであってもよいし、なくてもよいトリグリセリド、すなわち単純トリグリセリドと混合トリグリセリドの両方、から主として成る。用語「長鎖トリグリセリド(LCT)」は、炭素原子数が12より多い脂肪酸(長鎖脂肪酸−「LCFA」)を含有するトリグリセリドを意味し、これに対して用語「中鎖トリグリセリド(MCT)」は、炭素原子数6から10の脂肪酸を含有するトリグリセリドを意味する。
【0019】
「高MUFA、低飽和脂肪酸食」は、脂肪摂取量の10%未満が飽和脂肪酸である一方で、MUFAが主脂肪酸である食事を指す。
【0020】
脂質系をここに開示する。この脂質系は、独立した使用に適し、または栄養製品の成分として適する。組成中の特定の脂肪酸のレベルは、相対量または比で表すことができる。ここでは、多くの場合、長鎖多不飽和脂肪酸(LCPUFA)族間の比率を論じる。例えば、脂質組成中にω−6脂肪酸が60重量%レベルで存在し、同組成中にω−3脂肪酸が30重量%レベルで存在する場合、ω−6対ω−3比は、全脂肪酸レベルまたは個々の酸の重量もしくは体積にかかわらず、2:1である。この要領でLCPUFA族間の関係の説明は、比率が無次元であり、故に比較数が容易に得られるため、有用である。
【0021】
本発明の1つの実施態様は、脂質系を提供する。ω−3、ω−6およびω−9族各々からのLCPUFAが、本脂質系に包含される。約0.25:1から約3:1、好ましくは約0.3:1から約2.5:1、およびさらに好ましくは約0.73:1のω−6 LCPUFA対ω−3 LCPUFAについての重量%に基づく比率範囲を提供する。約0.4:1から約3:1、好ましくは約1:1から約3:1、およびさらに好ましくは約2:1のω−9 LCPUFA対ω−3 LCPUFAについての重量%に基づく比率範囲を提供する。
【0022】
炭素原子数が12より多い飽和脂肪酸を、100gの全脂質あたり約47g未満、好ましくは100gの全脂質あたり約20g未満、およびさらに好ましくは100gの全脂質あたり約10gのレベルで、本脂質系にさらに加えることができ、これらを提供する。
【0023】
この脂質系による使用に適するω−3脂肪酸の例には、α−リノレイン酸(C18:3n−3)、ステアリドン酸(C18:4n−3)、エイコサペンタエン酸(C20:5n−3)、ドコサペンタエン酸(C22:5n−3)、ドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。α−リノレイン酸が、好ましいω−3脂肪酸の例である。
【0024】
この脂質系による使用に適するω−6脂肪酸の例には、リノール酸(C18:2n−6)、γ−リノレイン酸(C18:3n−6)、エイコサジエン酸(C20:2n−6)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ジ−ホモ−γ−リノレイン酸(C20:3n−6)、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。リノール酸が、好ましいω−6脂肪酸の例である。
【0025】
この脂質系による使用に適するω−9脂肪酸の例には、オレイン酸(C18:1n−9)、エライジン酸(C18:1n−9)、エイコセン酸(C20:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)、ネルボン酸(C24:1n−9)、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野における見識者は、エライジン酸(C18:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)が、毒性の点であまり好ましくないことを了解していることだろう。オレイン酸が、好ましいω−9脂肪酸の例である。
17から54%のα−リノレイン酸、17から21%のリノール酸、19から52%のオレイン酸、および47%未満の飽和脂肪酸を含む典型的な脂質系の一例は、これらの要件を満たすことができる。
【0026】
これらの脂肪酸は、多くの場合、天然油中に存在する。本発明に有用な油の例には、アマニ油、高オレイン酸ベニバナ油、トウモロコシ油、および大豆レシチンが挙げられるが、これらに限定されない。アマニ油(カナダ、サスカチェワン州、サスカトゥーンのBioriginal Food & Science Corp.(「Bioriginal」)、およびコネチカット州、ウィルトンのArista Indus.(「Arista」)から入手可能)は、約15から20%の間のオレイン酸(ω−9)、約12から17%の間のリノール酸(ω−6)および約50から65%の間のα−リノレイン酸(ω−3)を含有する。高オレイン酸ベニバナ油(カルフォルニア州、リッチモンドのCalifornia Oils Corp.(「Califomia Oils」、およびAristaから入手可能)は、約75から80%の間のオレイン酸(ω−9)および約12から17%の間のリノール酸(ω−6)を含有する。トウモロコシ油(Aristaから入手可能)は、約55から60%の間のリノール酸(ω−6)および約25から30%の間のオレイン酸(ω−9)を含有する。大豆レシチン(インディアナ州、フォートウェインのCentral Soyaから入手可能)は、約7から9%の間のα−リノレイン酸(ω−3)、約55から60%の間のリノール酸(ω−6)および約12から15%の間のオレイン酸(ω−9)を含有する。天然油は、脂肪酸含量が変動するため、本発明に従って使用する油の特定のバッチの量は、このバッチの脂肪酸含量に依存して変動し得る。
【0027】
1つまたはそれ以上のω−3、ω−6またはω−9脂肪酸を含有する天然油の他の例には、オリーブ油(Arista)、カノーラ油(オンタリオ州、オークヴィルのCanAmera Foods,Inc.、およびArista)、綿実油(Arista)、ラッカセイ油(Arista)、米ぬか油(Arista)、なたね油(英国、ケント州のCYB Group PLC)、大豆油(Arista)、オオマツヨイグサ油(Bioriginal)、ルリヂサ油(Bioriginal、およびArista)、ベニバナ油(California Oils)、ヒマワリ油(Arista)、高オレイン酸ヒマワリ油(Arista)、マグロ油(Arista)、およびイワシ油(Arista)が挙げられるが、これらに限定されない。エノ油などの一般に市販されていない他の天然油も、本発明で使用することができる。
【0028】
飽和脂肪酸を提供する一方で、比較的有意な量のω−3、ω−6またはω−9脂肪酸を提供する、他の潜在的に有用な天然油には、ヤシ油(Arista)、パーム核油(アーカンソー州のUSA Chemicals Inc.(「USChemicals」))、パーム油(Arista)、カカオ脂油(USChemcals)、および他の中鎖トリグリセリド油が挙げられるが、これらに限定されない。市販の天然油源は、容易に利用することができ、当業者には公知であり、本明細書に挙げたものに限定されると見なすべきではない。これらの天然油は、上に示した供給業者から入手することができる。本発明の範囲は、公知の天然油のこのリストによって、または栄養製品における使用が知られている油によっても限定されるものとは解釈せず、将来開発される可能性があるあらゆる油の使用を包含するものとする。加えて、本発明の範囲は、上に挙げた特定比率を有する現在知られているまたは将来開発される新規(例えば、単細胞、植物、哺乳動物、または画分(例えばエチルエステル))、トランスジェニック、合成または精製油の使用を包含するものと解釈する。
【0029】
これらの食品用の油に加えて、本発明のLCPUFAは、構造脂質に配合することができ、所望される場合には栄養配合物および/または補足物に配合することができる。構造脂質は、当該技術分野では公知である。構造脂質の簡潔な説明は、INFORM,第8巻,10号,1004頁,表題「Structured lipids allow fat tailoring」(1997年10月)において見出すことができる。米国特許第4,871,768号も参照のこと。この特許は、本明細書に参照により組込まれている。主として、構造脂質は、同じグリセロール骨格上に中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸の混合物を有するトリアシルグリセロールである。構造脂質および経腸配合物におけるこれらの使用も、米国特許第6,194,379号および同第6,160,007号に記載されている。これらの特許の内容は、本明細書に参照により組込まれている。
【0030】
好ましくは、幾つかの油を併用して、上に明記したω−6脂肪酸対ω−3脂肪酸比およびω−9対ω−3脂肪酸比を達成する。本発明の要件に見合う脂質系の例は、表1に挙げる割合でのアマニ油、高オレイン酸ベニバナ油およびトウモロコシ油の組合せである。
【0031】
【表1】

【0032】
30から90%のアマニ油、0から60%の高オレイン酸ベニバナ油および0から10%のトウモロコシ油を含む脂質系は、上に明記した要件を満たすことができる。場合により、乳化剤として作用するように、大豆レシチンを脂肪系の0から7%添加してもよい。表1に挙げた天然油の組合せにより、表2に挙げる脂肪酸プロフィールが得られる(HP Model 5890 sereies II plus gas chromatograph(ペンシルバニア州、エイボンデールのHewlett−Packard))とOmegawax 320 石英ガラス毛管カラム(0.32mm x 30m x 0.25μm、ペンシルバニア州、ベルフォンテのSupelco)を使用し、ガスクロマトグラフィーによって判定)。
【0033】
【表2】

【0034】
個々の天然油の脂肪酸組成は、バッチによって変動するため、油の組合せにおけるω−3、ω−6およびω−9脂肪酸の正確な重量百分率も変動するであろう。表1および表2に記載した脂質系の例では、ω−6脂肪酸のω−3脂肪酸に対する、すなわちリノール酸のα−リノレイン酸に対する比率は、約0.7:1である。またω−9脂肪酸のω−3脂肪酸に対する、すなわちオレイン酸のα−リノレイン酸に対する比率は、約2.0:1である。この脂質系は、上に記載した要件に見合うものであり、下で説明する試験において使用した(グループ2の脂質系参照)。
【0035】
本実施態様の脂質系は、糖不耐性の個体の耐糖能を改善することができ、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善することができ、および血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減することができる、最適化された比率の必須および非必須脂肪酸を提供するものである。この脂質系は、糖不耐性の個体、インスリン抵抗性の個体および血管疾患の危険性のある個体に投与することができる。本脂質系は、糖不耐性の個体、インスリン抵抗性の個体または血管疾患の危険性のある個体以外にも投与することができる。好ましくは、本発明の脂質系を投与する個体はヒトであるが、本発明の範囲は、ヒトに限定されない。
【0036】
グルコース不耐性の個体は、食事炭水化物、例えばグルコース、に対して、過度な血糖応答を有する。上で説明した脂質系を糖不耐性の個体に投与することにより、食後の血糖応答を最小にすることができる。耐糖能の改善は、糖不耐性の個体の過度な血糖応答を低減することを意味する。個体が、食事炭水化物に対して過度な血糖応答を有するかどうかは、この個体が、調節されたレベルの糖(経口耐糖能試験)または他の炭水化物源もしくは食事を消費してから2時間後までの血糖値を評価することにより、判定することができる。糖不耐性の個体の耐糖能の改善は、標準的な耐糖能試験によって判定してもよいし、当業者には公知の他のいずれかの試験によって判定してもよい。
【0037】
インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性の改善は、インスリンによって媒介される糖廃棄を増加させること、すなわちインスリンに対する抵抗性を最小にすることを意味する。インスリン抵抗性の個体に上で説明した脂質を投与することによって、食後のインスリン感受性を改善することができる。インスリン感受性は、耐糖能試験中にいかに血中インスリンが変動するかを側定することにより(すなわち、血糖を調節するには少ないインスリンしか分泌されなけれは、インスリン抵抗性の改善のしるしとなる)、または個体にインスリンを投与し、この後、血糖値をモニターすることにより(すなわち、インスリン投与後に血糖値が降下したら、感受性のしるしとなる)、評価することができる。インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性の改善は、標準的なインスリン耐性試験によって判定してもよいし、当業者には公知の他のいずれかの試験法によっても判定してもよい。
【0038】
糖調節とインスリン感受性改善および適正な食事との併用は、血管疾患の危険性のある個体における血管疾患の危険性の低減に役立つ。従って、血管疾患の危険性のある個体に上で説明した脂質系を投与することにより、血管疾患の危険性を低減することができる。血管疾患の危険性のある個体における血管疾患の危険性の低減は、個体の循環器系の動脈が血管拡張する、すなわち増加した血流の必要に応じて拡張する、能力の改善を意味する。血管疾患の様々な危険性には、血管機能障害または血中脂質レベル上昇が挙げられるが、これらに限定されない。障害を起こし得る血管機能のタイプには、血管拡張、血流(減少する)、および血圧(高くなる)が挙げられるが、これらに限定されない。また、上昇し得る血中脂質のタイプには、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されない。血管疾患の危険性の低減は、血管機能改善、すなわち、血管拡張改善、血流増加および血圧低下、または血中脂質、すなわちトリグリセリドおよび遊離脂肪酸、のレベル低下によって示される。血管疾患の危険性が低減されたかどうかを判定するために個体を試験する方法は、当業者には周知である(すなわち、血圧の測定、四肢の脈圧の測定、超音波による動脈径の測定)。
【0039】
本発明の脂質系は、栄養補助食品の形態で、または栄養製品として、個体に投与することができる。
本実施態様の脂質系は、経口的に許容されるあらゆる剤形およびこれらの組合せで投与することができる。こうした剤形の例には、例えば、咀しゃく錠、急速溶解性錠剤、発泡錠、再構成用粉末、エリキシル、液剤、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、多層錠、二層錠、カプセル、ソフトゼラチンカプセル、ハードゼラチンカプセル、カプレット、ロゼンジ、咀しゃくロゼンジ、ビード、粉末、顆粒、粒子、微粒子、分散性顆粒、カシェ剤、およびこれらの組合せが挙げられる。上の剤形の製造は、通常の当業者には周知である。
【0040】
一般に、「ビヒクルまたは担体」を使用して、脂質系を配合することができる。上に挙げた医薬剤形に加えて、栄養になる「ビヒクルまたは担体」には、FDA法定食品カテゴリー:通常食品、特別食用の食品、栄養補助食品および医療用食品が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に言うと、栄養製品は、脂質、蛋白質および炭水化物などの多量栄養素を、所期の使用者の年齢および状態によって変わる相対量で含有する。栄養製品は、多くの場合、ビタミン、ミネラルおよび微量ミネラルなどの微量栄養素も含有する。「特別食用の食品」は、身体的、生理学的、病理学的事情のために存在する特別な食事の必要性を、食事に栄養を補うことにより、または食事の単独品目として供給することにより補うためのものである。「栄養補助食品」は、錠剤、カプセルまたは液体形態での摂取により食事を補うための製品であり、通常食品としてのまたは食べ物もしくは食事の単独品目としての使用を代表するものではない。「医療用食品」は、腸内で消費されるようにまたは経腸投与するために医師の監督下で調合される食品であり、認知されている科学的原理に基づく固有栄養所要量が医療評価により設定されている疾病または状態に対する特別な食事管理を目的とした食品である。これらの栄養製品は、当業者には公知の一般的で従来的な技法によって製造することができる。
【0041】
本発明の脂質系は、例えば濃縮液の形態で個体に投与することができる。シロップ、蜜剤およびエリキシルを本脂質系と混合して、香味を改善することができる。水中油型乳剤は、水混和性であり、故に油性が隠蔽されるため、経口使用によりよく適する。乳剤は、薬学分野では周知である。本発明の脂質系は、当業者には周知の技法を使用して製造することができる。一般的に言うと、乳化剤を油に溶解する。この乳化剤/油混合物を水に直接添加して、水中油型乳剤を作る。または、乳化剤を水に溶解し、攪拌しながらこの乳化剤/水性溶液に油を添加する。典型的な天然乳化剤の例には、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、アラビアゴム、トラガカントゴム、ツノマタおよびペクチンが挙げられる。これらの混合には、乳化した物理的状態を達成するために物理的操作が必要である。乳化装置には、多種多様な攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミルおよび超音波装置が挙げられる。本発明の脂質系の乳剤は、従来どおりの容器で保管することができ、少量だが正確な量または単位用量に分配することができる。特徴として、こうした用量は、ピペットと圧縮可能な弾性バルブの集成滴下装置、または目盛り付き計量容器を使用して分配される。
【0042】
本発明の主題の組成物は、24時間の間に部分的な分割量で1回またはそれ以上投与してもよいし、24時間の間に1回量を投与してもよいし、24時間の間に2回量を投与してもよいし、24時間の間に2回量より多くを投与してもよい。24時間の間に、分割、2回分または他の複数回分の用量を同時に摂取してもよいし、異なる時に摂取してもよい。目標用量は、高MUFA低飽和脂肪酸食では1日あたり少なくとも1gの上で説明したn−3脂肪酸であり、高MUFA低飽和脂肪酸食では1日あたり少なくとも3gのn−3脂肪酸が好ましい。
【0043】
また、本発明の脂質系は、ソフトゼラチンカプセル(より一般的にはソフトゲルとして知られている)で投与することができる。ソフトゲルは、多数の異なるタイプの医薬品およびビタミン製品を含有する経口剤形として、製薬業界で幅広く使用されている。ソフトゲルは、非常に様々な大きさおよび形(丸形、卵形、楕円形、管形、および他の特別なタイプの形、例えば星形、を含む)で利用することができる。様々な色の完成カプセルまたはソフトゲルを製造することができる。剤皮に乳白剤を加えてもよい。ソフトゲルは、脂質、より詳細には油性溶液、懸濁液または乳剤を封入するために主として利用される。一般に使用される充填材料は、植物、動物または鉱物油、液体炭化水素、揮発性油およびポリエチレングリコールである。
【0044】
本発明の脂質系を含有するソフトゼラチンカプセルは、当業者には周知の技法を使用して製造することができる。米国特許第4,935,243号、同第4,817,367号および同第4,744,988号は、ソフトゼラチンカプセルの製造に関する。製造のばらつきは、薬学分野の技術者には勿論周知である。一般に、ソフトゲルは、主としてゼラチン、可塑剤および水で製造した外皮、ならびにこの外皮の中に収容される内容物を含む。内容物は、このゼラチン外皮と相溶性である多種多様な物質から選択することができる。
【0045】
一般的に言うと、ゼラチンカプセル製造システムは、3つの主要システムから成る:シート形成ユニット、カプセル形成ユニット、およびカプセル回収ユニット。ゼラチンホッパーによりゼラチンがタンクに供給され、そこでゼラチンはヒータによって溶融される。溶融されたゼラチンは、延展ボックスに送り込まれ、そこで所望の大きさ、形および厚さのゼラチンシートが形成され、この延展ボックスから冷却ドラムに吐き出される。この冷却ドラムにより、ゼラチンシートは、カプセル形成ユニットに輸送されるにつれて冷却される。冷却された一対のゼラチンシートは、カプセル形成ユニット内の所望のダイヘッドが装着された一対のダイロールの間に挿入される。同時に、内溶液用ノズルが、2枚のゼラチンシートの間に所望の量の内容液を吐き出すように配置される。吐き出しのタイミングは、ゼラチンシートを互いに接触させるにつれて、ダイヘッドによって造られるくぼみに内容液が充填されるように調整し、これによって充填されたカプセルを作ることができる。形成されたゼラチンカプセルは、ダイロールかき取りブラシによりダイヘッドから取り除かれる。続いて、ゼラチンカプセルは、保管用のバルクコンテナーに回収された後、所望の容器に詰められる。得られたゼラチンカプセルは、この後、市場の要求に応じて包装される(すなわち、単位用量、ロール、バルクボトル、ブリスターパックなど)。
【0046】
ソフトゲルは、他の経口投与形態より多くの利点をもたらす。例えば、これらは、無味無臭であり、容易に飲み込むことができ、これらの膨潤性および水への溶解性により、活性物質の胃での容易な放出が確実なものとなる。LCPUFAは酸化および光による影響を受けやすいので、ソフトゲルカプセルは、本発明の好ましい送達方法である。
【0047】
一般に、単位投薬量は、少なくとも1gの脂肪酸を本発明の比率で含むソフトゲルカプセル1個である。一般に、1日あたり少なくとも1個のソフトゲルカプセルを投与し、好ましくは1日あたり少なくとも3個のソフトゲルカプセルを投与する。
【0048】
場合により、2型糖尿病に関連した追加栄養を本脂質系の乳剤およびソフトゲルカプセル剤形に追加してもよい。当業者は、酸化防止剤ビタミンE、ベータカロチン、ビタミンC、セレン、BHAおよびBHTなどの一定の微量栄養素が、糖尿病の人々にとって潜在的に有益であることを承知している。
【0049】
本発明のもう1つの実施態様は、栄養製品を提供する。この実施態様の栄養製品は、上で説明した脂質系を多量栄養素と併せて含む。多量栄養素には、蛋白質、炭水化物およびこれらの混合物が挙げられる。ビタミン、ミネラルおよび微量ミネラルなどの微量栄養素もこの栄養製品に含めることができる。本発明の栄養製品は、糖不耐性の個体の耐糖能を改善することができ、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善することができ、および血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減することができる最適化された比率の必須脂肪酸を提供する。本栄養製品は、糖不耐性の個体、インスリン抵抗性の個体および血管疾患の危険性のある個体に投与することができる。本栄養製品は、糖不耐性の個体、インスリン抵抗性の個体または血管疾患の危険性のある個体以外にも投与することができる。好ましくは、本発明の栄養製品を投与する個体はヒトであるが、本発明の範囲は、ヒトに限定されない。
【0050】
栄養配合物には、経腸配合物、経口配合物、成人用配合物、小児用配合物、および乳児用配合物が挙げられる。栄養配合物は、この配合物の全カロリー量の約5から約35%を提供する蛋白質成分、全カロリー量の約10から約95%を提供する炭水化物成分、および全カロリー量の約5から約70%を提供する脂質成分を含有する。本明細書に記載する栄養配合物は、食事の補足物または単独の栄養源として使用することができる。必要とされるカロリーおよび栄養の量は人によって異なり、年齢、体重および身体の状態といった可変要素に依存する。適切なカロリーおよび栄養量を供給するために必要な栄養配合物の量は、この適切なカロリーおよび栄養量をこうした配合物に配合することができるような通常の当業者によって決定され得る。
【0051】
例として、配合物が、成人人口用に設計される場合、蛋白質成分は、前記栄養配合物の全カロリー量の約9から約30%を構成することができ、炭水化物成分は、前記栄養配合物の全カロリー量の約15から約90%を構成することができ、および脂質成分は、前記栄養配合物の全カロリー量の約5から約50%を構成することができる。成人用栄養配合物は、一般に、液体、半固体、固体または粉末形態であり得る。
【0052】
もう1つの例として、配合物が、成人以外の人口用に設計される場合、蛋白質成分は、前記栄養配合物の全カロリー量の約8から約25%を構成することができ、炭水化物成分は、前記栄養配合物の全カロリー量の約35から約50%を構成することができ、および脂質成分は、前記栄養配合物の全カロリー量の約30から約60%を構成することができる。これらの範囲は、単に例として提供するものであり、制限を目的とするものではない。
【0053】
本発明のLCPUFA比を達成するために、あらゆる食品用油、構造脂質、脂肪酸およびこれらの組合せを栄養配合物に添加することができる。一般に、本栄養配合物の脂肪系は、30から90%のアマニ油、0から59%の高オレイン酸ベニバナ油および0から7%のトウモロコシ油を含む。
【0054】
本発明の栄養製品に利用することができる蛋白質は、ヒトが消費するために適するあらゆる蛋白質を含む。こうした蛋白質は、当業者には周知であり、こうした製品を製造する際、容易に選択することができる。一般に利用することができる適する蛋白質の例には、カゼイン、乳清、乳蛋白質、大豆、エンドウ、米、トウモロコシ、蛋白加水分解物およびこれらの混合物が挙げられる。蛋白質は、無傷の形態、加水分解された形態および遊離アミノ酸としての形態を含む種々の形態で供給することができる。より栄養学的に完全でバランスのとれたアミノ酸プロフィールをもたらすために、蛋白質源に様々な遊離アミノ酸を補足してもよい。適する遊離アミノ酸の例には、トリプトファン、チロシン、シスチン、タウリン、L−メチオニン、L−アルギニンおよびカルニチンが挙げられるが、これらに限定されない。上で述べたように、本栄養製品中の蛋白質の典型的な量は、全カロリーの約5%から約35%、さらに好ましくは全カロリーの約15%から約25%である。
【0055】
市販の蛋白質源は、容易に利用することができ、当業者には公知である。例えば、カゼイン塩、乳清、カゼイン塩加水分解物、乳清加水分解物、および乳蛋白質は、カリフォルニア州、サンタローザのNew Zealand Milk Productsから入手することができる。大豆蛋白質および大豆蛋白加水分解物は、ミズーリ州、セントルイスのProtein Technologies Internationalから入手することができる。エンドウ蛋白質は、オハイオ州、ロディのFeinkost Ingredients Companyから入手することができる。米蛋白質は、カリフォルニア州、レースロップのCalifornia Natural Productsから入手することができる。トウモロコシ蛋白質は、アイオワ州、キーオカックのEnerGenetics Inc.から入手することができる。
栄養製品用の炭水化物源の例には、トウモロコシ、タピオカ、米またはバレイショから得られる、蝋様または非蝋様形態での、加水分解物されたまたは無傷の、天然および/または化学変性デンプンが挙げられる。炭水化物の他の例には、トウモロコシデンプン加水分解物、マルトデキストリン、グルコースポリマー、スクロース、マルトース、ラクトース、トウモロコシシロップ、固体トウモロコシシロップ、グルコース、フルクトース、高フルクトーストウモロコシシロップ、および消化不能オリゴ糖、例えばフルクトオリゴ糖(FOS)が挙げられる。上に挙げたいずれか1つ炭水化物、または適切な場合にはこれらのあらゆる組合せを利用することができる。他の適する炭水化物は、当業者には容易にわかることだろう。上で述べたように、本栄養製品中の炭水化物の典型的な量は、全カロリーの約10%から約95%、さらに好ましくは全カロリーの約15%から約90%である。
【0056】
上に挙げた炭水化物についての市場の供給源は、容易に利用することができ、当業者には公知である。例えば、固体トウモロコシシロップは、インディアナ州、ハモンドのCerestar USA Inc.から入手することができる。グルコースおよび米系シロップは、カリフォルニア州、レースロップのCalifornia Natural Productsから入手することができる。様々なトウモロコシシロップおよび高フルクトーストウモロコシシロップを、ミネソタ州、ミネアポリスのCargilから入手することができる。フルクトースは、イリノイ州、ディケーターのA.E.Staleyから入手することができる。マルトデキストリン、グルコースポリマー、トウモロコシデンプン加水分解物は、インディアナ州、ハモンドのAmerican Maize Productsから入手することができる。スクロースは、ニューヨーク州、ニューヨークのDomino Sugar Corp.から入手することができる。ラクトースは、ウイスコンシン州、バラブーのForemostから入手することができ、FOSなどの消化不能オリゴ糖は、コロラド州、ゴールデンのGolden Technologies Companyから入手することができる。
【0057】
本発明の栄養組成物は、一般に、ビタミンおよびミネラルを含有する。ビタミンおよびミネラルが日々の食事に欠かせないことは理解される。当業者は、正常な生理機能に必要であることが知られている一定のビタミンおよびミネラルについて最低必要量が設定されていることを認識している。当業者は、適切な追加量のビタミンおよびミネラル成分を栄養組成物に供給して、こうした組成物の加工および保管中のなんらかの損失を補うことが必要であることも了解している。加えて、当業者は、クロム、カルニチン、タウリンおよびビタミンEなどの一定の微量栄養素が、糖尿病の人々にとって潜在的に有益であること、ならびに2型糖尿病の人々は代謝回転がより速いので、アスコルビン酸などの一定の微量栄養素について、より多くの食事要求量が存在し得ることを了解している。
【0058】
単独の栄養源として使用される完全栄養製品のためのビタミンおよびミネラル系の例は、ビタミン類A、B、B、B、B12、C、D、E、K、ベータ−カロチン、ビオチン、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、およびコリン、ミネラル類カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リン、および塩化物、微量ミネラル類鉄、亜鉛、マンガン、銅、およびヨウ素、超微量ミネラル類クロム、モリブデン、セレン、ならびに条件付必須栄養素類m−イノシトール、カルニチンおよびタウリンについてのRDIの少なくとも100%を、約350Kcalから約5600Kcalで一般に含む。
【0059】
栄養補足物として使用される栄養製品のためのビタミンおよびミネラル系の例は、ビタミン類A、B、B、B、B12、C、D、E、K、ベータ−カロチン、ビオチン、葉酸、パントテン酸、ナイアシン、およびコリン、ミネラル類カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リン、および塩化物、微量ミネラル類鉄、亜鉛、マンガン、銅、およびヨウ素、超微量ミネラル類クロム、モリブデン、セレン、ならびに条件付必須栄養素類m−イノシトール、カルニチンおよびタウリンについてのRDIの少なくとも25%を、1回分に、または約50Kcalから約800Kcalで、一般に含む。
【0060】
合成甘味料を栄養製品に添加して、この配合物の官能特性を改善することもできる。適する合成甘味料の例には、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファームKおよびスクラロースが挙げられる。望ましくは、本発明の栄養製品は、経口消費のために魅力的な外観および許容される味を本栄養製品にもたらすために、着香料および/または着色剤も含むであろう。有用な着香料の例には、例えば、ストロベリー、ピーチ、バターペカン、チョコレート、バナナ、ラズベリー、オレンジ、ブルーベリーおよびバニラが一般に挙げられる。
【0061】
本発明の栄養製品は、当業者には周知の技法を使用して製造することができる。液体栄養製品用には、一般的に言うと、すべての油、いずれかの乳化剤、線維および脂溶性ビタミンを含有する、油と線維のブレンドを製造する。炭水化物、およびミネラルをともに、および水中の蛋白質を混合することにより、3つより多くのスラリー(炭水化物および2つの蛋白質)を別々に製造する。この後、これらのスラリーを油ブレンドと混合する。得られた混合物を均質にし、熱処理し、水溶性ビタミンで標準化し、着香し、この液体を最終的に滅菌するか、乾燥させて粉末を製造する。または、均質化した配合物を未希釈で保持し、プディングとして適切な容器に充填してもよいし、乾燥させて粉末を作ってもよい。この後、この製品を包装する。一般に、包装に末端消費者が使用するための(すなわち、糖尿病患者により消費されるように)用法が表示されるだろう。バー、クッキーなどのような固体栄養組成物も当業者に公知の技法を利用して製造することができる。例えば、これらは、当該技術分野において公知であるような冷間押出法を使用して製造することができる。こうした組成物を製造するには、一般に、粉末成分のすべてをドライブレンドすることとなる。こうした構成成分には、一般に、蛋白質、ビタミンプレミックス、一定の炭水化物などが挙げられる。この後、脂溶性成分をブレンドし、上記粉末プレミックスと混合する。および最後に一切の液体成分をこの組成物に混ぜ入れ、プラスチック様組成物またはドウを造る。
【0062】
上のプロセスは、塑性物質を得るためのものであり、この後、これを冷間成形または押出しとして知られている手順により、さらなる物理的または化学的変化の発生を伴わずに成形することができる。このプロセスでは、塑性物質を比較的低圧でダイに通し、これによって所望の形状を付与する。この後、得られた押出物を適切な位置で切断して、所望の重量の製品を得る。所望される場合には、この後、美味しさを向上させるために、この固体製品を被覆し、販売するために包装する。一般に、包装に末端消費者が使用するための(すなわち、糖尿病患者により消費されるように)用法が表示されるだろう。
【0063】
本発明の固体栄養製品を焼くか加熱押出しによって製造して、シリアル、クッキーおよびクラッカーを造ることもできる。当該技術分野における見識者は、所望の最終製品を造るために利用することができる多くの製造プロセスのうちの1つを選択することができるだろう。
【0064】
本発明のもう1つの実施態様は、糖不耐性の個体の耐糖能を改善するための方法を提供する。本実施態様の方法は、上で説明したような脂質系を投与することを含む。上で論じたように、上で説明した脂質系または上で説明した脂質系が配合された栄養製品もしくは栄養補助食品の投与により、糖不耐性の個体の耐糖能を改善することができる。
【0065】
本発明のもう1つの実施態様は、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善するための方法を提供する。本実施態様の方法は、上で説明したような脂質系を投与することを含む。上で論じたように、上で説明した脂質系または上で説明した脂質系が配合された栄養製品もしくは栄養補助食品の投与により、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善することができる。
【0066】
本発明のもう1つの実施態様は、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減するための方法を提供する。本実施態様の方法は、上で説明したような脂質系を投与することを含む。上で論じたように、上で説明した脂質系または上で説明した脂質系が配合された栄養製品もしくは栄養補助食品の投与により、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減することができる。
【実施例】
【0067】
(実施例A)
表3は、1,000キログラムの本発明の未着香液体栄養製品を製造するための材料表を提示するものである。この製造の詳細な説明は、後述する。
【0068】
【表3】


【0069】
本発明の液体栄養製品は、4つのスラリーを調製し、これらをブレンドし、加熱処理し、標準化し、包装し、滅菌することによって製造した。表3からの材料表を使用して、1000キログラムの液体栄養製品を製造するためのプロセスを下で詳細に説明する。
【0070】
攪拌しながら約82キログラムの水を約65℃から約71℃の温度に先ず加熱することによって、炭水化物/ミネラルスラリーを調製する。攪拌しながら必要量のクエン酸ナトリウムおよびジェランガム(米国、カリフォルニア州、サンディエゴのthe Kelco,Division of Merck and Company Incorporatedにより、製品名「Kelcogel」で配給されているもの)を添加し、5分間攪拌する。必要量の超微量ミネラル/微量ミネラル(UTM/TM)プレミックス(ニューヨーク州、スケネクタディのFortitechにより配給されているもの)を添加する。このスラリーの色は、緑色を帯びた黄色である。前記ミネラルが完全に分散されるまで、攪拌を継続する。この後、攪拌しながら必要量の次のミネラルを添加する:クエン酸カリウム、塩化カリウム、塩化クロム、塩化マグネシウムおよびヨウ化カリウム。次に、第一のマルトデキストリン(米国、アイオワ州、マスカティーンのGrain Processing Corporationにより、製品名「Maltrin M−100」で配給されているもの)およびフルクトースを高速攪拌下でスラリーに添加し、溶解させる。攪拌しながら必要量のマルチトール粉末(アイオワ州、キーオカックのRoquette America Inc.により、製品名「Maltisorb Powder P35SK」で配給されているもの)、マルチトールシロップ(ニュージャージー州、フェアローンのAlGroup Lonzaにより、製品名「Hystar5875」で配給されているもの)、フルクトオリゴ糖(米国、コロラド州、ゴールデンのGolden Technologies Companyにより、製品呼称「Nutriflora−P Fructo−oligosaccharide Powder(96%)」で配給されているもの)および第二のマルトデキストリン(日本、兵庫県の松谷化学工業株式会社(Matsutani Chemical Industry Co.)により、製品名「Fibersol 2(E)」で配給されているもの)を添加し、完全に溶解するまで充分に攪拌する。必要量の超微紛リン酸三カルシウムを、攪拌しながらこのスラリーに添加する。完成した炭水化物/ミネラルスラリーは、他のスラリーとブレンドするまで、12時間以下の間、約65℃から約71℃の温度で、攪拌しながら保持する。
【0071】
必要量の高オレイン酸ベニバナ油およびカノーラ油を併せ、攪拌しながら約55℃から約65℃の温度に加熱することにより、油中の線維のスラリーを調製する。攪拌しながらこの加熱された油に必要量の次の成分を添加する:大豆レシチン(インディアナ州、フォートウェインのCentral Soya Companyにより、製品名「Centrocap 162」で配給されているもの)、ビタミンD、E、Kプレミックス(イリノイ州、シカゴのVitamins Inc.によって配給されているもの)、ビタミンAおよびベータカロチン。必要量の大豆多糖類(ミズーリ州、セントルイスのProtein Technologies Internationalにより、製品名「Fibrim 300」で配給されているもの)をこの加熱された油にゆっくりと分散させる。完成した油/線維スラリーは、他のスラリーとブレンドするまで、12時間以下の間、約55℃から約65℃の温度で、中速で攪拌しながら保持する。
【0072】
水中の第一の蛋白質のスラリーを、293キログラムの水を60℃から65℃に加熱することにより調製する。攪拌しながら必要量の20%クエン酸カリウム溶液を添加し、1分間保持する。必要量の酸カゼインを高速攪拌下で添加し、この直後に必要量の20%水酸化ナトリウムを添加する。前記カゼインが溶解するまで、攪拌を高速で維持する。このスラリーを、中速で攪拌しながら約60℃から65℃で保持する。
【0073】
水中の第二蛋白質のスラリーを、約77キログラムの水を攪拌しながら約40℃の温度に先ず加熱することにより調製する。カゼインカルシウムを添加し、このスラリーを、このカゼイン塩が完全に分散されるまで充分に攪拌する。攪拌を続けながらスラリーをゆっくりと60℃から65℃に温める。このスラリーを、他のスラリーとブレンドするまで、12時間以下の間、保持する。
【0074】
344キログラムの蛋白質スラリー1を84キログラムの蛋白質スラリー2とブレンドすることにより、バッチを組み立てる。攪拌しながら、37キログラムの油/線維スラリーを添加する。少なくとも1分間待った後、216キログラムの炭水化物/ミネラルスラリーを、前の段階からのブレンドスラリーに攪拌しながら添加し、得られたブレンドスラリーを約55℃から約60℃の温度で維持する。このブレンドバッチのpHを1Nの水酸化カリウムで6.45から6.75のpHに調整する。
【0075】
1分以上、2時間以下待った後、次のように、このブレンドスラリーを脱気、超高温処理および均質化する:容積ポンプを使用して、この手順のためのブレンドスラリーを供給する、ブレンドスラリーを約71℃から約82℃の温度に加熱する、加熱されたスラリーを10から15インチHgで脱気する、この加熱スラリーを一段ホモジナイザーにて900から1100ゲージpsiで乳化させる、乳化したスラリーをプレート/コイルヒーターに通し、約99℃から約110℃に予熱する、予熱されたスラリーを、蒸気の注入により、最低保持時間約5秒で、約146℃の温度に超高温加熱する、UHT処理スラリーの温度を、冷水冷却器に通すことにより、約99℃から約110℃に低下させる、このUTR処理スラリーの温度を、プレート/コイル熱交換器に通すことにより、約71℃から約76℃にさらに低下させる、このUTR処理スラリーを3900から4100/400から600ゲージpsiで均質化する、均質化されたスラリーを、少なくとも16秒間、約74℃から約80℃の温度の保持管に通す、この均質化スラリーを、熱交換器に通すことにより、約1℃から約7℃の温度に冷却する、および、このUHT処理し、均質化されたスラリーを、攪拌しながら約1℃から約7℃の温度で保管する。
【0076】
上の段階が完了した後、品質調整のために適切な分析試験を行う。
【0077】
水溶性ビタミン(WSV)溶液を別途調製し、加工したブレンドスラリーに添加する。
【0078】
このビタミン溶液は、攪拌しながら9.4キログラムの水に次の成分を添加することにより調製する:WSVプレミックス(ミシガン州、ホランドのJ.B.Laboratoriesによって配給されているもの)、ビタミンC、塩化コリン、L−カルニチン、タウリン、イノシトール、葉酸、塩酸ピリドキシンおよびシアノコバラミン。必要量の45%水酸化カリウムスラリーを添加して、pHを7と10の間にする。
【0079】
品質調整試験の分析結果を基に、適切な量の水を攪拌しながらバッチに添加して、全固形分約21%を達成する。加えて、8.8キログラムのビタミン溶液を、攪拌しながらこの希釈したバッチに添加する。生成物のpHを調整して、最適な製品安定性を達成することができる。この後、完成製品を適する容器に入れ、最後に滅菌する。
【0080】
(実施例B)
実施例Aで説明した栄養製品の代替製品形態は、半個体またはプディングである。この製品は、次のことを加えて、加熱処理および均質化段階まで実施例Aの場合のように製造する。2つの追加のデンプン(イリノイ州、ディケーターのA.E.Staleyにより、ResistaおよびMiraclearの製品名で配給されているもの)を、製品の全固形分の4.5重量/重量%で、炭水化物スラリーに添加する。水溶性ビタミンおよび任意の香味を未希釈のブレンドに添加する。このプディングを全固形分約30重量/重量%から32重量/重量%で適切な容器に充填し、最後に滅菌する。または、このプディングを適切な容器に無菌充填する。
【0081】
(実施例C)
実施例Aで説明した栄養製品のもう一つの製品形態は、粉末である。本製品は、加熱処理および均質化段階まで実施例Aの場合のように製造する。水溶性ビタミンおよび任意の香味を未希釈のブレンドに添加する。このブレンドを、全固形分約45%から55%で塔式乾燥機にポンプ輸送する。典型的な乾燥機のパラメータは次のとおりである:ノズル圧は、1400から2400ゲージpsigであり、液体流量は、最大10gpmであり、流入空気温は、最高211℃であり、流出空気温は、87から104℃であり、乾燥室圧は、水の−0.2から+0.2インチである。
【0082】
嵩密度、分散性、粒径、湿分および物理的安定性を調節するために、具体的な噴霧ノズル、ノズル圧、乾燥温度および細かい再注入パラメータは、この日の乾燥状態に依存して変動する。粉末は、乾燥機の吐き出しコーンから粉末冷却器に進み、そこで約43℃に冷却される。冷却された粉末は、適切な容器に充填するまで保管する。
【0083】
(実施例D)
本発明の栄養製品は、栄養バーとして配合することもできる。如何なる点においても本発明を限定するつもりはないが、単に一般的な指針として、栄養バーのための典型的は配合を表4に記載する。
【0084】
【表4】

【0085】
表4の成分百分率を利用する栄養バーの典型的なカロリー分布は、蛋白質として全カロリーの約15%、脂肪として全カロリーの約25%、および炭水化物として全カロリーの約60%である。
【0086】
栄養バー組成物は、当該技術分野において公知であるような冷間押出法を使用して製造される。一般に、このような組成物を調製するために、粉末成分のすべてをドライブレンドすることとなる。こうした構成成分には、一般に、蛋白質、ビタミンプレミックス、一定の炭水化物などが挙げられる。この後、脂溶性成分をブレンドし、上記粉末プレミックスと混合する。および最後に一切の液体成分をこの組成物に混ぜ入れ、プラスチック様組成物またはドウを造る。
【0087】
上のプロセスは、塑性物質を得るためのものであり、この後、これを冷間成形または押出しとして知られている手順により、さらなる物理的または化学的変化の発生を伴うことなく成形することができる。このプロセスでは、塑性物質を比較的低圧でダイに通し、これによって所望の形状を付与し、得られた押出物を適切な位置で切断して、所望の重量の製品を得る。
【0088】
この物質は、例えば、断面の小さなダイに通してリボンを形成してもよく、これを、規則正しい間隔で動作するギロチン型カッターの下を所定の速度で動くベルトに載せて運ぶ。この場合、一般に、このカッターは、リボンを切断するが、下にあるベルトは切断しないように調整された研ぎ澄まされた刃から成るが、ワイヤーから成ることもある。両方の場合、原理は同じであり、切断プロセスは、移動するリボンを同等の重量および寸法の切片に切断することができる間隔で行われる。一般に、これは、切断行程の時間調整および適切なレベルでのベルト速度の維持によって達成されるが、より多様性に富むこのメカニズムのコンピュータ制御バージョンも存在する。または、この物質を断面の大きなダイに通し、この後、振動ナイフまたはワイヤーによりダイレベルで薄片に切断し、これを移動ベルトの上に落とし、そうして運び去る。この物質は、シートとして押出すこともでき、この後、これを、スタンプ型カッター、例えばクッキー型カッター、で適切な形状に切断する。最後に、この物質は、偏心カムを装着した回転ダイでチャンバに押し込むことができ、こうして形成された材料を円筒形ダイの回転の一定地点でこのチャンバから押し出す。
【0089】
成形後、形成した製品は、移送ベルトまたは他のタイプの材料搬送機により、これをさらに加工することができるか簡易包装することができる領域に移動させる。一般に、説明したタイプの栄養バーは、材料(チョコレート、複合チョコレートコーティングまたは他のタイプの被覆材料であり得る)中でエンローブ処理する(被覆する)こととなる。こうした場合すべてにおいて、被覆材料は、室温では固体であるが、過度な温度、例えば31℃では液体である脂肪と、官能的特性を付与する他の材料から成る。被覆物は、バーを液体被覆物の落下カーテンに通し、これと同時にバーの下面に被覆物を塗布することができるプレートまたはローラーの上を通過させることにより、溶融している間にバーに塗布し、過剰の被覆物は、エアジェットにより吹き飛ばす。最後に、このエンローブ処理されたバーを冷却トンネルに通し、そこで冷凍エアカーテンにより熱を除去し、被覆物を固化させる。
【0090】
(実験I)
MUFAおよびω−3 PUFAが豊富な配合物が、糖の調節およびインスリン感受性、ならびにNIDDM/インスリン抵抗性の定着した動物モデルにおける血管機能を改善することができるかどうかを判定するために試験を行った。
【0091】
週齢6から7週で体重約40gの雄のマウス(ob/ob)を、Jackson Laboratory(メイン州、バーハーバー)から購入した。これらの動物は、概してインスリン抵抗性であり、上昇した血漿糖値を有した。マウスを、餌および水を自由に入手できるマイクロアイソレータ・ケージに1ケージあたり5匹で収容した。動物たちを実験施設に一週間順応させ、この後、食後の糖レベルおよび体重を基に、4つの食事治療のうちの1つに無作為に振り分けた。各食事治療の脂肪酸ブレンドを作るために使用した天然油の組合せを表5に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
ω−3、ω−6およびω−9脂肪酸組成ならびに表5に記載した各油ブレンドの相対比を下の表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
変性Glucerna(登録商標)OS(オハイオ州、コロンバスのRoss Products Division,Abbott Laboratories)をこの試験の基礎配合物として使用し、実験配合物を8オンス缶で調製した。脂肪の量を増加し、炭水化物の量を減少させることにより、Glucerna(登録商標)OSを変性した。蛋白質含量は、同じままであった。各実験食の組成を下の表7に記載する。使用した液体配合物は、等カロリー、等窒素であり、上に記載した脂質ブレンドのみが異なるものであった。
【0096】
【表7】

【0097】
3つの高ω−3食(グループ2、3および4)は、同様のω−6脂肪酸対ω−3脂肪酸比を有するが、グループ2は、ω−9対ω−3比がグループ3および4と異なっていた。グループ3および4は、グループ2に比べて、比較的高レベルのエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸ならびに比較的低いレベルのα−リノレイン酸も含有した。最終的な脂肪酸組成を、HP Model 5890 series II plus gas chromatograph(ペンシルバニア州、エイボンデールのHewlett−Packard)と、Omegawax 320 石英ガラス毛管カラム(0.32mm x 30m x 0.25μm、ペンシルバニア州、ベルフォンテのSupelco)を使用して検証した。
【0098】
全60匹のマウスを4つの実験グループに割り当てた(マウス n=15/グループ)。マウスは、液体配合食として上で説明した実験食のうちの1つと水を適宜消費した。この液体配合食は、目盛り付きガラス飲用瓶により動物に与えた。各実験液体配合食の新たな缶を1日1回、各ゲージに供給した。前の給餌からの残りの一切の液体配合食を測定して、1ケージあたりの24時間の摂取量を判定した。マウス1匹あたりの液体配合食の合計消費量を、24時間の間に消費された全量を1ケージあたりのマウスの合計数で割ることにより決定した。この給餌規制飼育をこの試験期間を通して継続した。同時に行う別の試験のための対照として供給した固体のエサ(chow)を消費した、年齢を合わせた15匹のマウスの5つ目のグループを、食物摂取と成長率の比較のための参照グループとして使用した。
【0099】
四週間の実験食消費後、遊離脂肪酸およびトリグリセリドを測定し、食事負荷試験またはインスリン耐性試験を行った。遊離脂肪酸およびトリグリセリドは、ELISA(ニューハンプシャー州、ウインダムのALPCO Diagnostics)によって測定した。28日の実験食消費後の遊離脂肪酸およびトリグリセリドレベルを表8に示す。EPA(グループ3)およびDHA(グループ4)の脂肪酸レベルは、対照グループ1(P<0.05)とは有意に異なり、リノレイン酸グループ2の脂肪酸レベルは、対照グループについて測定されたレベルより低い。
【0100】
【表8】

【0101】
リノレイン酸、EPAおよびDHAグループ(グループ2、3および4、それぞれ)についてのトリグリセリドレベルは、対照グループ1(P<0.05)と有意に異なる。容易にわかるように、本発明の脂肪酸ブレンドは、脂肪酸およびトリグリセリドレベルを低下させる。
【0102】
食事負荷試験(「MTT」)をマウスn=10/グループで行って、最終の第4週の間の食後の糖代謝を評価した。動物たちは、先ず3時間絶食させ、この後、初期ベースライン血液サンプルを糖分析のために採取した。この後、動物たちにMTT配合物での強制栄養を施し、追加サンプルを、強制栄養後15、30、60および120分の時点で採取した(これらの時点から±5分で得られたサンプルは、分析には含まれていない)。MTT配合物は、Ensure Plus(登録商標)Vanilla(イリノイ州、アボットパークのRoss Products Division,Abbott Laboratories)から成るものであった。与えたMTT配合物の用量は、体重に基づくものであり、(消化不能および利用不能炭水化物を考慮に入れていない、包装に貼られたラベルの全炭水化物に基づき)1キログラムあたり1.5グラムの炭水化物をもたらすように計算した。
【0103】
図1は、4週間の食事治療後のベースライン調整したMTTの血糖の結果に関する曲線下面積の棒グラフである。(データをベースライン調整した後の)データに当てはまる曲線下面積は、グループ1(対照MUFA)については16,676±1753、グループ2(リノレイン酸)については10,532±1400、グループ3(EPA)については9,009±1258、およびグループ4(DHA)については7,867±38である。グループ2、3および4すべてが、対照グループ1と比較すると、P<0.05で統計上有意に達する。容易にわかるように、ω−3脂肪酸を含有する各グループは、標準混合食後に糖応答が低下した。
【0104】
インスリン耐性試験(「ITT」)を、各食事グループの残りのマウス(すなわち、マウスn=5/グループ)において、最後の第4週の間、行った。ITTマウスはMTTを受けず、MTTマウスはITTを受けなかったことに留意すること。動物は、先ず3時間絶食させ、この後、初期ベースライン血液サンプルを採取した。この後、動物たちにインスリンを腹腔内注射し(体重1kgあたり2U)、追加の血液サンプルを、注射後15、30、60および120分の時点で採取した(これらの時点から±5分で得られたサンプルは、分析には含まれていない)。
【0105】
図2は、4週間の食事治療後のベースライン調整したITTの血糖の結果に関する曲線下面積の棒グラフである。(データをベースライン調整した後の)データに当てはまる曲線下面積は、グループ1(対照MUFA)については−975±2,435、グループ2(リノレイン酸)については−12,162±4,135、グループ3(EPA)については−1,071±2,271、およびグループ4(DHA)については799±1,368である。グループ2は、対照グループ1と比較すると、P<0.05で有意に異なる。容易にわかるように、α−リノレイン酸を与えたグループ2の糖尿病マウスだけが、インスリン感受性改善を実証した。
【0106】
(実験II)
第二の試験は、一不飽和脂肪酸が豊富な配合物およびω−3 PUFAを補足した一不飽和脂肪酸が豊富な配合物での食事介入が、インスリン非依存性糖尿病のマウスモデルにおいて血管機能を改善することができるかどうかを判定するために行った。単離された大動脈輪において内皮依存性血管作用剤、カルバコールが弛緩を誘導する能力を判定した。雄ob/obマウスおよびこれらの痩身の同腹子の6つのグループに実験食を4週間与えた。マウスは、上の実験Iで説明した仕方と同じ要領で保持した。比較のために、ob/obマウスのグループおよびこれらの痩身の同腹子のグループに標準的なエサの食事を与えた。実験1の場合のように、Glucerna(登録商標)OS(オハイオ州、コロンバスのRoss Products Division,Abbott Laboratories)組成物をこの試験の基本配合物として使用し、実験配合物を8オンス缶で調製した。脂肪の量を増加し、表9に記載する脂質系を配合することにより、Glucerna(登録商標)OSを変性した。
【0107】
【表9】

【0108】
4週間の給餌規制飼育の後、各動物に麻酔し、胸部大動脈を迅速に除去し、直ちに変性クレブス溶液(NaCl 120mmol/L、KCl 4.7mmol/L、KHPO 1.2mmol/L、MgSO 1.5mmol/L、CaCl 2.5mmol/L、デキストロース 11mmol/L、およびNaHCO 20mmol/Lを含有)に移し入れた。2倍の倍率のもとで、これらの大動脈の脂肪および結合組織を取り除き、内皮の完全性を保つように細心の注意を払って1から2mm幅の動脈切片を取り出した。この後、これらの動脈切片を、同変性クレブス溶液が入っている37℃の10mL器官槽の中で、二つのワイヤーフック間の0.5gの静止張力下、垂直に吊り下げた。これらの組織は、10分間隔で組織をすすぎながら、60から90分間、95%Oおよび5%CO(37℃でpH7.4)で平衡させた。一方のフックは、支持体に固定し、他方は、等尺性筋収縮力(isometric force)変換器(Model FT03、ロードアイランド州のGrass Instruments)に接続した。等尺性張力の変化をGrass physiograph(Model 7D、ロードアイランド州のGrass Instruments)で継続的にモニターし、PONEMAN data acquisition system(オハイオ州のGould Instrument System)で記録した。
【0109】
内皮依存性または内皮非依存性弛緩を生じさせるために、大動脈輪をフェニレフリン(10−5M)で再び収縮させ、カルバコールに対する累積濃度−効果曲線を作成した。追加と追加の間に効果がプラトーに達する時間を見込んで、作動薬濃度を二分の一ログモル濃度増分で追加した。カルバコール曲線を10−9から4.5x10−5Mの間の濃度について作成した。カルバコール曲線作成後、大動脈輪を、60分間、10分間ごとにすすぐことにより、基本緊張に戻した。フェニレフリンによって誘導された各々の収縮は、フェニレフリン誘導前収縮率としてカルバコール誘導弛緩を計算するための内標準として使用した。血管内皮損傷を暗示するカルバコールの血管緊張低下35%未満を示した大動脈輪は、分析から除外した。各動脈切片から実際の最大弛緩(Emax)を決定し、最大効果の50%を生じさせる作動薬の濃度(EC50)を、非線形回帰曲線当てはめ(カリフォルニア州、サンディエゴのGraphPad Prism)により計算し、EC50の正対数(pEC50)として報告した。各動物治療グループについての平均EmaxおよびpEC50データを表10に示す。グループ間の統計学的な差は、post−hoc Newman−Keulsまたは対応のないスチューデントt検定でANOVAにより判定した。
【0110】
表10の値から容易にわかるように、グループ2(非糖尿病、痩身、標準的なエサ)の動脈組織は、予想どおり、グループ1(ob/ob−標準的なエサ)の動脈組織より大きなpEC50およびEmax値を達成した。図3および4は、収縮率対カルバコール濃度としてデータをグラフにすることによりこのデータを説明するものである。図3は、ob/ob 糖尿病の肥満マウスモデルについての参照食として役立つ、エサを与えた動物、グループ1および2、からのデータのグラフである。
【0111】
【表10】

【0112】
加えて、n−3脂肪酸を含有するおよび含有しない液体配合物を消費した動物(グループ3 ob/ob−対照MUVA配合物、グループ4 ob/ob−リノール酸を含有する配合物、グループ5 ob/ob−EPAを含有する配合物)も、標準的なエサを消費した参照グループ1の動物と比較すると、血管緊張低下応答に有意な改善を示した。加えて、配合食を消費したob/ob動物についてのpEC50は、非糖尿病、痩身、標準的なエサ(グループ2)と比較して差がなかった。n−3 PUFAを含有する対照配合物(グループ3)を消費した動物からの組織においてEmaxの有意な改善はなかったが、C18:3n−3またはEPAを含有する配合物を消費した動物からの組織は、対照配合物と比較して改善された(片側t検定により、P=0.0985、グループ4対グループ3、片側t検定により、P=0.0279、グループ5対グループ3)。n−3配合食を消費したob/ob動物(グループ4およびグループ5)についてのEmaxは、非糖尿病、痩身、標準的なエサ(グループ2)と比較して差がなかった。図4は、ob/ob エサ 参照グループ1およびob/ob MUFA対照グループ3と比較した、実験変動データ、グループ4および5、をグラフで示すものである。
【0113】
上で論じたように、糖不耐性の個体の耐糖能を改善する、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善する、または血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減する栄養製品は、こうした個体に非常に有益であろう。これらの試験が実証するように、明記した相対量でω−3、ω−6およびω−9脂肪酸を含む脂質系が、これらの利益をもたらす。これらの試験が実証するように、上で説明した脂質系は、糖不耐性の個体の耐糖能を改善し、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善し、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減する。
【0114】
様々な実施態様を上に提供したが、当業者には、開示した実施態様の変形および変更を行うことができ、これらは、特許請求の範囲に記載する本発明に属するものである。本明細書に記載する実施態様は、単なる例である。本開示によって、当業者は、代替要素を有する実施態様を製造し、使用することができ、これらは、同じく、特許請求の範囲に列挙する本発明の要素に相当する。従って、本特許請求の範囲の解釈範囲は、本特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない、または非現実的に異ならない他の実施態様を包含し得る。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】データをベースライン調整した後の、4週間の食事治療後の食事負荷試験の血糖の結果の曲線下面積の棒グラフである。グループ1 対照MUFAブレンド、グループ2 リノレイン酸ブレンド、グループ3 EPAブレンド、およびグループ4 DHAブレンド。
【図2】データをベースライン調整した後の、4週間の食事治療後のインスリン耐性試験の血糖の結果の曲線下面積の棒グラフである。グループ1 対照MUFAブレンド、グループ2 リノレイン酸ブレンド、グループ3 EPAブレンド、およびグループ4 DHAブレンド。
【図3】収縮率対カルバコール濃度を比較する血管応答のグラフである。グループ1 ob/ob エサ 参照(▲)、グループ2 痩身 エサ 非糖尿病参照(●)。
【図4】収縮率対カルバコール濃度を比較する血管応答のグラフである。グループ1 Ob/ob エサ 参照(黒▲)、グループ3 ob/ob 対照MUFAブレンド(青●)、グループ4 ob/ob リノレイン酸ブレンド(黄色▲)、グループ5 ob/ob EPAブレンド(緑▲)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−リノレイン酸(C18:3n−3)、ω−6脂肪酸およびω−9脂肪酸を含み、
前記ω−6脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、約0.25:1から約3:1であり、ならびに
前記ω−9脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、約0.4:1から約3:1である脂質系。
【請求項2】
前記ω−6脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、約0.3:1から約2.5:1である、請求項1に記載の脂質系。
【請求項3】
前記ω−9脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、約1:1から約3:1である、請求項1に記載の脂質系。
【請求項4】
炭素原子数が12より多い飽和脂肪酸をさらに含み、前記飽和脂肪酸が、脂質100gあたり約47g未満の量で存在する、請求項1に記載の脂質系。
【請求項5】
前記ω−6脂肪酸が、リノール酸(C18:2n−6)、γ−リノレイン酸(C18:3n−6)、エイコサジエン酸(C20:2n−6)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ジ−ホモ−γ−リノレイン酸(C20:3n−6)、およびこれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の脂質系。
【請求項6】
前記ω−9脂肪酸が、オレイン酸(C18:1n−9)、エライジン酸(C18:1n−9)、エイコセン酸(C20:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)およびネルボン酸(C24:1n−9)、ならびにこれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の脂質系。
【請求項7】
脂質系の全重量を基準にして、約17から約54%のα−リノレイン酸(C18:3n−3)、約17から約21%のリノール酸(C18:2n−6)、約19から約52%のオレイン酸(C18:1n−9)、および約47%未満の飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の脂質系。
【請求項8】
約30から約90%のアマニ油、約0から約59%の高オレイン酸ベニバナ油、および約0から約7%のトウモロコシ油を含む、請求項1に記載の脂質系。
【請求項9】
液体栄養製品、固体栄養製品、半固体栄養製品、乳濁液として提供される製品、粉末として提供される製品、およびソフトゼラチンカプセルとして提供される製品から成る群より選択される、請求項1に記載の脂質系を含む製品。
【請求項10】
請求項1に記載の脂質系を投与することを含む、糖不耐性の個体の耐糖能を改善するための方法。
【請求項11】
請求項1に記載の脂質系を投与することを含む、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善するための方法。
【請求項12】
請求項1に記載の脂質系を投与することを含む、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減するための方法。
【請求項13】
請求項9に記載の栄養製品を投与することを含む、個体に栄養を提供するための方法。
【請求項14】
a)α−リノレイン酸(C18:3n−3)、ω−6脂肪酸およびω−9脂肪酸を含み、
i)前記ω−6脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、0.25:1と3:1の間であり、および
ii)前記ω−9脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、0.4:1と3:1の間である脂質系、ならびに
b)全カロリー量の約5から約35%を提供する蛋白質成分、全カロリー量の約10から約95%を提供する炭水化物、および全カロリー量の約5から約70%を提供する脂質成分
を含む、栄養製品。
【請求項15】
前記ω−6脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、約0.3:1から約2.5:1である、請求項14に記載の栄養製品。
【請求項16】
前記ω−9脂肪酸の前記α−リノレイン酸(C18:3n−3)に対する比率が、約1:1から約3:1である、請求項14に記載の栄養製品。
【請求項17】
炭素原子数が12より多い飽和脂肪酸をさらに含み、前記飽和脂肪酸が、脂質100gあたり47g未満の量で存在する、請求項14に記載の栄養製品。
【請求項18】
前記ω−6脂肪酸が、リノール酸(C18:2n−6)、γ−リノレイン酸(C18:3n−6)、エイコサジエン酸(C20:2n−6)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ジ−ホモ−γ−リノレイン酸(C20:3n−6)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、ならびに前記ω−9脂肪酸が、オレイン酸(C18:1n−9)、エライジン酸(C18:1n−9)、エイコセン酸(C20:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)およびネルボン酸(C24:1n−9)、ならびにこれらの組合せから成る群より選択される、請求項14に記載の栄養製品。
【請求項19】
約17から約54%のα−リノレイン酸(C18:3n−3)、約17から約21%のリノール酸(C18:2n−6)、約19から約52%のオレイン酸(C18:1n−9)、および約47%未満の飽和脂肪酸を含む、請求項14に記載の栄養製品。
【請求項20】
約30から約90%のアマニ油、約0から約59%の高オレイン酸ベニバナ油、および約0から約7%のトウモロコシ油を含む、請求項14に記載の栄養製品。
【請求項21】
請求項14に記載の栄養製品を投与することを含む、糖不耐性の個体の耐糖能を改善するための方法。
【請求項22】
請求項14に記載の栄養製品を投与することを含む、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善するための方法。
【請求項23】
請求項14に記載の栄養製品を投与することを含む、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減するための方法。
【請求項24】
請求項14に記載の栄養製品を投与することを含む、個体に栄養を提供するための方法。
【請求項25】
ω−3脂肪酸、ω−6脂肪酸およびω−9脂肪酸を含み、
前記ω−6脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.25:1と3:1の間であり、および
前記ω−9脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.4:1と3:1の間である脂質系を、糖不耐性の個体に投与することを含む、糖不耐性の個体の耐糖能を改善するための方法。
【請求項26】
前記ω−6脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.3:1と2.5:1の間である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ω−9脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、1:1と3:1の間である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ω−3脂肪酸が、α−リノレイン酸(C18:3n−3)、ステアリドン酸(C18:4n−3)、エイコサペンタエン酸(C20:5n−3)、ドコサペンタエン酸(C22:5n−3)、ドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、前記ω−6脂肪酸が、リノール酸(C18:2n−6)、γ−リノレイン酸(C18:3n−6)、エイコサジエン酸(C20:2n−6)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ジ−ホモ−γ−リノレイン酸(C20:3n−6)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、ならびに前記ω−9脂肪酸が、オレイン酸(C18:1n−9)、エライジン酸(C18:1n−9)、エイコセン酸(C20:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)およびネルボン酸(C24:1n−9)、ならびにこれらの組合せから成る群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記脂質系が、約17から約54%のα−リノレイン酸(C18:3n−3)、約17から約21%のリノール酸(C18:2n−6)、約19から約52%のオレイン酸(C18:1n−9)、および約47%未満の飽和脂肪酸を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記脂質系が、約30から約90%のアマニ油、約0から約59%の高オレイン酸ベニバナ油、および約0から約7%のトウモロコシ油を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
ω−3脂肪酸、ω−6脂肪酸およびω−9脂肪酸を含み、
前記ω−6脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.25:1と3:1の間であり、および
前記ω−9脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.4:1と3:1の間である脂質系を、インスリン抵抗性の個体に投与することを含む、インスリン抵抗性の個体のインスリン感受性を改善するための方法。
【請求項32】
前記ω−6脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.3:1と2.5:1の間である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ω−9脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、1:1と3:1の間である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記ω−3脂肪酸が、α−リノレイン酸(C18:3n−3)、ステアリドン酸(C18:4n−3)、エイコサペンタエン酸(C20:5n−3)、ドコサペンタエン酸(C22:5n−3)、ドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、前記ω−6脂肪酸が、リノール酸(C18:2n−6)、γ−リノレイン酸(C18:3n−6)、エイコサジエン酸(C20:2n−6)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ジ−ホモ−γ−リノレイン酸(C20:3n−6)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、ならびに前記ω−9脂肪酸が、オレイン酸(C18:1n−9)、エライジン酸(C18:1n−9)、エイコセン酸(C20:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)およびネルボン酸(C24:1n−9)、ならびにこれらの組合せから成る群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記脂質系が、約17から約54%のα−リノレイン酸(C18:3n−3)、約17から約21%のリノール酸(C18:2n−6)、約19から約52%のオレイン酸(C18:1n−9)、および約47%未満の飽和脂肪酸を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記脂質系が、約30から約90%のアマニ油、約0から約59%の高オレイン酸ベニバナ油、約0から約7%のトウモロコシ油、および約0から約7%の大豆レシチンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
ω−3脂肪酸、ω−6脂肪酸およびω−9脂肪酸を含み、
前記ω−6脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.25:1と3:1の間であり、および
前記ω−9脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.4:1と3:1の間である脂質系を、血管疾患の危険性のある個体に投与することを含む、血管疾患の危険性のある個体において血管疾患の危険性を低減するための方法。
【請求項38】
前記ω−6脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、0.3:1と2.5:1の間である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ω−9脂肪酸の前記ω−3脂肪酸に対する比率が、1:1と3:1の間である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ω−3脂肪酸が、α−リノレイン酸(C18:3n−3)、ステアリドン酸(C18:4n−3)、エイコサペンタエン酸(C20:5n−3)、ドコサペンタエン酸(C22:5n−3)、ドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、前記ω−6脂肪酸が、リノール酸(C18:2n−6)、γ−リノレイン酸(C18:3n−6)、エイコサジエン酸(C20:2n−6)、アラキドン酸(C20:4n−6)、ジ−ホモ−γ−リノレイン酸(C20:3n−6)、およびこれらの組合せから成る群より選択され、ならびに前記ω−9脂肪酸が、オレイン酸(C18:1n−9)、エライジン酸(C18:1n−9)、エイコセン酸(C20:1n−9)、エルカ酸(C22:1n−9)およびネルボン酸(C24:1n−9)、ならびにこれらの組合せから成る群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記脂質系が、約17から約54%のα−リノレイン酸(C18:3n−3)、約17から約21%のリノール酸(C18:2n−6)、約19から約52%のオレイン酸(C18:1n−9)、および約47%未満の飽和脂肪酸を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記脂質系が、約30から約90%のアマニ油、約0から約59%の高オレイン酸ベニバナ油、および約0から約7%のトウモロコシ油を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記血管疾患の危険性が、血管機能障害である、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記血管機能障害が、血管拡張障害、血流低下および高血圧から成る群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記血管疾患の危険性が、血中脂質レベル上昇である、請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−504225(P2007−504225A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525335(P2006−525335)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/025161
【国際公開番号】WO2005/025334
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】