説明

脱髄性末梢ニューロパシーの処置のためのアミノアルコール誘導体

脱髄性末梢ニューロパシーの処置に使用するための式Vまたは式VIの化合物:


〔式中、
XはO、S、SOまたはSOであり;
はハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシであり、その各フェニルは場合によりハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されていてよく;
はH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
はH、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1−4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は独立してHまたは式(a)


の基であり、
およびRは独立してHまたは場合によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルであり;そして
nは1〜4の正数である。〕
およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物;


〔式中、
1aはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル(sulifinyl)、C1−4アルキル−スルホニル、アラルキルであるか、場合により置換されていてよいフェノキシまたはアラルキルオキシであり;
2aはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり;
3aH、ハロゲン、CF、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり;
4aはH、C1−4アルキル、フェニルであるか、場合により置換されていてよいベンジルまたはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルであり;
5aはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ−メチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルであり;
6aはHまたはC1−4アルキルであり;
7aはH、C1−4アルキルまたは上に定義した式(a)の基であり、
はO、S、SOまたはSOであり;
は1〜4の正数であり;そして
*は(R)または(S)配置のキラル中心を意味し、式は(R)および(S)配置分子のラセミ体または他の混合物を包含する。〕
およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫抑制剤化合物および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炎症または免疫が仲介するニューロパシーは、ギラン・バレー症候群(GBS)、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害(CIDP)、伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害(MMN)、および異常タンパク性脱髄性末梢ニューロパシー(PDN)を含む末梢ニューロパシーのような多様な疾患群である。炎症性ニューロパシーの病因は未だ研究中である。
【0003】
いくつかの脱髄性末梢ニューロパシーを次に記載する。
末梢ニューロパシーは、それ故、通常急性感染性過程により引き金を引かれる、末梢神経系に影響する急性、自己免疫性、多発性ニューロパシーであるギラン・バレー症候群を含む。GBSには数種あり、最も一般的なタイプは急性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー(AIDP)である。GBSはしばしば重篤となり、通常脚の脱力により気付く上行性麻痺として発症し、深部腱反射の完全な喪失と共に上肢および顔面に広がる。サプレッサーT細胞応答が減少し、末梢神経を標的とする細胞仲介免疫学的反応が示唆される。
【0004】
多巣性運動神経障害は、手の筋肉脱力により特徴付けられ、身体の片側の関連する特異的筋肉が他方と異なる、進行性の筋肉障害である。症状はまた筋肉消耗、筋痙攣、および脚の筋肉の不随意収縮または攣縮も含む。多巣性運動神経障害は、免疫が仲介する障害であると認識されている。
【0005】
異常タンパク性脱髄性ニューロパシーは、遅発型脱髄性ニューロパシーの大きな原因であり、CIDPと極めて類似するがより慢性的である。ほとんど60歳以上の人が罹患する。患者には多くの闘うべき症状があり、長期病となる傾向にある。
【0006】
慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー(CIDP)は、脚および腕の進行性脱力および感覚機能障害により特徴付けられる。これらの症状は、末梢神経の髄鞘の損傷により引き起こされる。しばしば刺痛またはしびれ(足先および指から始まる)、腕および脚の脱力、深部腱反射喪失、疲労、および異常感覚を含む症状を呈する。CIDPの有病率は、100,000人あたり約2〜4人である。病因は未確定であるが、T細胞およびB細胞の両方が仲介する機構を含む可能性があり。
【0007】
ニューロパシーの経過は人により広範に異なる。CIDPの発作の後自然に回復する者も居れば、多数回の発作を起こし、再発の合間に少し回復する者も居る。CIDPは、相当数の患者で重篤な身体障害に至る。現在の処置は、免疫応答を調節し、寛解および機能的状態の維持を達成することを目的とする。
【0008】
WO03/029184(相当するUSおよびEP公報はEP1431275およびUS2004/0242654)およびWO03/029205(相当するUSおよびEP公報はEP1431284およびUS2004/0254222)は、免疫抑制剤として有用な化合物を開示する。前記公報をその全体を全ての目的のために引用により本明細書に包含し、特にUS2004/0254222の次の部分:パラグラフ[0009]〜[0014]および[0020]、[0021]〜[0052]、[0054]〜[0159]および表1〜10;およびUS2004/0242654の次の部分:パラグラフ[0009]〜[0014]、[0023]〜[0075]、[0077]〜[0305]および表1〜21はそうである。特に記載すべきはUS2004/0254222の実施例46および当該実施例を直接的および間接的に参照する文章である。
【0009】
WO2004/026817(相当するUSおよびEP公報はEP1548003およびUS2006/0135622)もまた免疫抑制剤として有用な化合物を開示する。US2006/0135622をその全体を全ての目的のために引用により本明細書に包含し、[0009]〜[0497]および表1〜15、特に実施例194および当該実施例を直接的および間接的に参照する文章はそうである。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明の一面において、末梢ニューロパシー、例えばCIDPの処置に使用するための以下に記載する化合物を提供する。本発明の他の面は、末梢ニューロパシー、例えばCIDPを有する対象の処置方法であって、該対象に有効量の以下に記載する化合物を投与することを含む、方法に関する。本発明の別の面は、末梢ニューロパシー、例えばCIDPの処置に使用するための医薬の製造のための、以下に記載する化合物の使用である。
【0011】
本出願が関連する化合物は、WO03/029184、WO03/029205およびそれらの対応する公報に開示される化合物、例えば式V
【化1】

〔式中、XはO、S、SOまたはSOであり;
はハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシであり、その各フェニルは場合によりハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されていてよく;
はH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
はH、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1−4アルコキシメチルであり;
およびRの各々はHまたは式(a)
【化2】

の基であり、
およびRの各々は、独立してHまたは場合によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルであり;そして
nは1〜4の正数である。〕
のアミノアルコール化合物およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物
を包含する。
【0012】
本出願が関連する化合物は、さらに、WO2004/026817およびその対応する公報に開示された化合物、例えば式VI:
【化3】

〔式中、
1aはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル(sulifinyl)、C1−4アルキル−スルホニル、アラルキルであるか、場合により置換されていてよいフェノキシまたはアラルキルオキシであり;
2aはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり;
3aはH、ハロゲン、CF、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり;
4aはH、C1−4アルキル、フェニルであるか、場合により置換されていてよいベンジルまたはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルであり;
5aはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ−メチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルであり;
6aはHまたはC1−4アルキルであり;
7aはH、C1−4アルキルまたは上に定義した式(a)の基であり、
はO、S、SOまたはSOであり;
は1〜4の正数であり;そして
*は、(R)または(S)配置のキラル中心を意味し、該式は(R)および(S)配置分子のラセミ体または他の混合物を包含する。〕
のアミノアルコール化合物およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物
をさらに含む。
【0013】
また提供されるのは、末梢ニューロパシー、例えばCIDPの処置に使用するためであり、開示した化合物と、場合により、薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬製剤である。ある態様において、医薬製剤は1種以上のさらなる治療剤を含む。
【0014】
本発明はまた、開示した化合物と治療剤を;末梢ニューロパシー、例えばCIDPの処置に同時に、別々にまたは連続的に使用するための組合せ製剤として含む医薬品も提供する。
【0015】
他の面において、本発明は、開示した化合物および治療剤を含む医薬製剤であって、該治療剤は末梢ニューロパシー、例えばCIDPの処置に有用である、医薬製剤を提供する。
【0016】
本発明の化合物は、例えば、遊離酸、遊離塩基、エステルおよび他のプロドラッグ、塩および互変異性体のような種々の形態で存在でき、そして本開示は本化合物の種々の全ての形態を含む。
【0017】
保護される範囲は、本発明の化合物を含む、または含むことを目的とした偽造または不正製品であって、実際にかかる化合物を含むか否かに関係なく、そして実際にかかる化合物が治療的有効量で含まれるか否かに関係ない。
【0018】
保護される範囲に包含されるのは、包装物が本発明の化学種または医薬製剤を含むことを示す明細または指示書を含む包装物、および、かかる製剤または化学種であるもしくはそれを含む、またはそれであるもしくはそれを含むことが意図される製品である。かかる包装は、必ずではないが恐らく偽造または不正であろう。
【0019】
本発明の特定の面、態様または実施例に関連して記載されている特性、性質、特徴、化合物、化学部分または基は、矛盾しない限り、ここに記載する全ての他の面、態様または実施例に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
種々の態様の記載
定義
本明細書において、特に断らない限り、次の通りである:
脂肪族アシル
用語“低級脂肪族C1−5アシル基”は、1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖低級脂肪族アシル基、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、およびピバロイルを含む。
【0021】
アルキル、アルケニルおよびアルキニル
基または他の基、例えばアルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニルおよびアルカノエートの構造要素としての“アルキル”は、直鎖でも分枝鎖でもよい;特にことわらない限り、1〜7個の炭素原子を有し得る。C−Cアルキル部分は1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個の炭素原子を有し得て、ある場合、1〜4個の炭素原子であり得る。C−Cアルキル部分は1個、2個、3個または4個の炭素原子を有し得る。C−Cアルケニル部分は2個、3個または4個の炭素原子を有し得る。C−Cアルキニル部分は2個、3個または4個の炭素原子を有し得る。
【0022】
アラルキル
“アラルキル基”または“アラルキルオキシ基”におけるような“アラルキル基”なる用語は、ベンジル、ジフェニルメチル、フェネチルおよびフェニルプロピルを包含する。
【0023】
ハロゲン
“ハロ”または“ハロゲン”はF、Cl、BrまたはI、特にFまたはClを意味する。ハロ置換された基は、部分的にハロゲン化または過ハロゲン化されていてよく、複数ハロゲン化の場合、ハロゲン置換基は同一でも異なってもよい。
用語“トリハロメチル基”はトリフルオロメチルおよびトリクロロメチルを包含する。
【0024】
置換
特にことわらない限り、ここである部分に関連して使用されている用語“置換”は、当該部分中の1個以上、特に5個まで、より具体的に1個、2個または3個の水素原子が互いに独立して対応する数の記載する置換基で置換されていることを意味する。ここで使用する用語“場合により置換されていてよい”は、置換されているまたは置換されていないことを意味する。
【0025】
句“置換または非置換フェノキシ基”、“置換または非置換アラルキル基”、“置換または非置換ベンゾイル基”および“置換または非置換ベンジル基”は、そのベンゼン環の任意の位置に、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、C1−4アルキル、およびC1−4アルコキシを有することを意味ものを包含する。
【0026】
当然、置換基は化学的に可能である位置にのみ存在し、当業者は特定の置換が可能であるか否かを不適切な努力なしに、決定できる(経験的にまたは理論的に)ことは理解されよう。例えば、遊離水素を有するアミノ基またはヒドロキシ基は、不飽和(例えばオレフィン様)結合を有する炭素原子に結合したならば、不安定であり得る。
【0027】
薬学的に許容される
ここで使用する用語“薬学的に許容される”は、合理的な利益/危険比に比例した、合理的な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答、または他の問題または合併症なしにヒトまたは動物の組織と接触させる使用に適する、化合物、物質、組成物、および/または投与形態を意味する。この用語は、ヒトおよび獣医目的の両方への許容性を含む。
【0028】
独立して
2個以上の部分が“互いに独立して”一連の原子または基から選択されるとき、これは、これらの部分が同一でも異なってもよいことを意味する。各部分のアイデンティティーは、それ故1個以上の他の部分のアイデンティティーと無関係である。
【0029】
立体化学
化学式が、キラリティーが示されていないキラル中心を含むならば、そのキラル中心での立体化学は割り当てられていない。従って、その式は全てのキラリティー、すなわち(S)、(R)およびラセミ混合物を含むそれらの混合物を含む。
【0030】
化合物
本出願は、とりわけWO03/029184またはWO03/029205に開示された化合物、例えば式V
【化4】

〔式中、
XはO、S、SOまたはSOであり;
はハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシであり、その各フェニルは場合によりハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されていてよく;
はH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
はH、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1−4アルコキシメチルであり;
およびRの各々はHまたは式(a)
【化5】

の基であり、
およびRの各々は、独立してHまたは場合によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルであり;そして
nは1〜4の正数である。〕
のアミノアルコール化合物およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物
に関する。
【0031】
式Vの化合物の中で、式Va
【化6】

〔式中、
、R、R、Rおよびnは上で定義した通りであり;そしてYはOまたはSであり、そして
は水素、ハロゲン、C1−7アルキル、C1−4アルコキシまたはトリフルオロメチルである。〕
の化合物である。
【0032】
ここに記載する化合物のリン酸化誘導体を、当分野で既知のように、例えば、WO2005/021503(例えば、11頁および12頁参照)に記載されたリン酸化化合物の合成方法を利用して製造できる。
【0033】
その光学活性化合物およびリン酸化誘導体は、文献に、例えばHinterding et al., Synthesis, Vol. 11, pp.1667-1670 (2003)に記載された方法を利用して高純度で製造できる。
【0034】
本発明のさらなる態様を以下に記載する。各態様に特定する性質を他の特定された性質と組み合わせて、別の態様を提供することは当然である。
【0035】
XはO、S、SOまたはSOである。特に、XはSまたはOである。本明細書に包含されるのは、XがSである好ましい化合物である。
【0036】
はハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシ(フェニル−アルキル−O−)であり、その各フェニルは場合によりハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されていてよい。Rは特にフェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、ベンジルチオ、フェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシであり、その各フェニルは場合によりハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されていてよく;上に記載した基の中で特にフェノキシメチル、ベンジルチオ、フェニル、フェニルC1−4アルキル(例えばフェニルC1−2アルキル)およびフェニル−C1−4アルコキシ(例えばフェニル−C1−2)アルコキシである。好ましいのはフェニル−C1−4アルコキシ(例えばフェニル−C1−2)アルコキシ、例えばベンジルオキシである。
【0037】
はH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシ、特にH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシおよびC1−4アルキル、例えばHまたはハロゲンである。Rは特にHである。
【0038】
はH、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1−4アルコキシメチル;特にH、ハロゲン、CF、OH、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、例えばHまたはハロゲンである。Rは特にハロゲンである。ハロゲンは好ましくは塩素である。
【0039】
各RおよびRは、独立してHまたは式(a)
【化7】

の基であり、
およびRの各々は、独立してHまたは場合によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルである。RおよびRは好ましくはHである。
【0040】
正数nは1、2、3または4、特に2である。
【0041】
式(Va)の化合物の場合、YはOまたはS、特にSである。Rは水素、ハロゲン、C1−7アルキル(例えばC1−4アルキル)、C1−4アルコキシまたはトリフルオロメチルである。Rは特に水素またはハロゲンである。好ましくはRは水素である。
【0042】
本出願はまたWO2004/026817に開示された化合物、例えば式VI:
【化8】

〔式中、記号は次に記載する意味を有する。〕
のアミノアルコール誘導体にも関する。
【0043】
1aはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキル−スルホニル、アラルキルであるか、場合により置換されていてよいフェノキシまたはアラルキルオキシである。R1aは特にアラルキルであるか、場合により置換されていてよいフェノキシまたはアラルキルオキシである。好ましくは、R1aはアラルキルオキシであり、最も好ましくはベンジルオキシである。
【0044】
2aはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシである。特にR2aはH、ハロゲン、トリハロメチル、メチルまたはメトキシ、例えばHまたはハロゲンである。好ましくは、R2aはHである。
【0045】
3aはH、ハロゲン、CF、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシである。特にR3aはH、ハロゲン、CF、メチルまたはメトキシ、例えばHまたはハロゲンである。好ましくは、R3aはハロゲン、特にClである。
【0046】
4aはH、C1−4アルキル、フェニルであるか、場合により置換されていてよいベンジルまたはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルである。R4aは好ましくはHである。
【0047】
5aはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ−メチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルである。特にR5aはH、モノハロメチル、C1−4(例えばC1−2)アルキル、C1−4(例えばC1−2)アルコキシ−メチルである。好ましくは、R5aはC1−4(例えばC1−2)アルキル、特にエチルである。
【0048】
6aはHまたはC1−4アルキル、好ましくはHである。
【0049】
7aはH、C1−4アルキルまたは上に定義した式(a)の基、好ましくはHである。
【0050】
はO、S、SOまたはSO;特にOまたはSである。好ましくはXはSである。
【0051】
は1、2、3または4、好ましくは2である。
【0052】
記号*は、(R)または(S)配置のキラル中心を意味し、式は(R)および(S)配置分子のラセミ体または他の混合物を包含する。式VIに入る全ての化合物について、限定はしないが、2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−エチルブタン−1−オールのような以下に記載する式VIaの化合物を含み、化合物は(R)−鏡像体、(S)−鏡像体またはラセミ体または鏡像体の任意の他の混合物であり得る。同じ原則が、少なくとも1個のさらなるキラル中心を含む分子における他のキラル中心にも適用される。
【0053】
特に記載すべきは、式VIa:
【化9】

〔式中、記号は先に定義した通りであり、例えば(全ての式VIの化合物に適用されるとおりに)R2aはHまたはハロゲンであり;R3aはHまたはハロゲン、特にClであり;R4aはHであり;R5aはC1−4(例えばC1−2)アルキル、特にエチルであり;R6aはHであり;R7aはHまたは上に定義した式(a)の基である。正数nは一態様では2である。〕
の化合物である。
【0054】
本明細書は、記載した化合物のN−オキシド誘導体、プロドラッグ、薬学的に許容される塩、溶媒和物および水和物を含む。
【0055】
本発明の目的で好ましい化合物は2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−エチルブタン−1−オール:
【化10】

〔式中、*は(R)または(S)配置のキラル中心を意味し、式は(R)および(S)配置分子のラセミ体または他の混合物を包含する。〕
である。本発明の目的に有用な他の好ましい化合物は2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−エチル−1,3−プロパン−ジオール:
【化11】

である。
【0056】
また特に記載すべきは、US2006/0135622(および相当するWO2004/026817)およびUS2005/0254222(および相当するWO03/029205)の実施例および表1の他の化合物である。
【0057】
本発明の化合物は薬学的に許容される塩の形であり得る。本明細書の薬学的に許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から慣用の化学方法により合成できる。一般に、かかる塩は、遊離酸または塩基形態のこれらの化合物と化学量論量の適当な塩基または酸を水中または有機溶媒中、またはそれら2種の混合物中で反応させることにより製造できる;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適当な塩の一覧は、開示を本明細書に引用により包含させるRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., US, 1985, p. 1418に見られる;またStahl et al, Eds, “Handbook of Pharmaceutical Salts Properties Selection and Use”, Verlag Helvetica Chimica Acta and Wiley-VCH, 2002も参照のこと。
【0058】
それ故に、本開示は、親化合物が、例えば無機または有機酸または塩基から形成されるその酸塩または塩基塩、例えば通常の非毒性塩または4級アンモニウム塩を形成することにより修飾されている、開示した化合物の薬学的に許容される塩を含む。かかる酸付加塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩を含む。塩基塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンのような有機塩基との塩、およびアルギニン、リシンのようなアミノ酸との塩などを含む。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド類、例えばメチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチルのようなジアルキル硫酸塩;およびジアミル硫酸塩、長鎖ハライド類、例えばデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物、アラルキルハライド類、例えばベンジルおよびフェネチルの臭化物のような試薬で4級化してよい。
【0059】
本発明は、インビボで遊離酸に変換可能なカルボン酸のエステル類、または遊離アミノ基に変換可能な保護されたアミン類の場合のような、例えば、1個以上の官能基が保護されているか、誘導体化されているが、インビボでその官能基に変換可能な、本発明の活性医薬種のプロドラッグを含む。ここで使用する用語“プロドラッグ”は、特に、インビボで、例えば、血中の加水分解により親化合物に急速に変換される化合物を示す。徹底的な討論が、その各々を引用により本明細書に包含させるT. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987; H Bundgaard, ed, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985; and Judkins, et al. Synthetic Communications, 26(23), 4351-4367 (1996)に成されている。
【0060】
それ故にプロドラッグは、可逆性誘導体に変換されている官能基を有する医薬を含む。典型的に、かかるプロドラッグは活性医薬に加水分解により変換される。例として、次のものを記載し得る:
【表1】

【0061】
プロドラッグはまた、酸化または還元反応により活性医薬に変換する化合物も含む。例として、次のものを記載し得る:
酸化活性化
・ N−およびO−デアルキル化
・ 酸化デアミノ化
・ N−酸化
・ エポキシド化
還元活性化
・ アゾ還元
・ スルホキシド還元
・ ジスルフィド還元
・ 生物還元アルキル化
・ ニトロ還元。
【0062】
プロドラッグの代謝活性化としてさらに記載すべきは、ヌクレオチド活性化、リン酸化活性化およびデカルボキシル化活性化である。さらなる情報について、引用により本明細書に包含させる“The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”, R B Silverman (特にChapter 8, pages 497 to 546)を参照のこと。
【0063】
保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Chemistry’, edited by J W F McOmie, Plenum Press (1973)および‘Protective Groups in Organic Synthesis’, 2nd edition, T W Greene & P G M Wutz, Wiley-Interscience (1991)に十分に記載されている。
【0064】
それ故に、当業者には、開示した化合物の保護された誘導体は、それ自体薬理学的活性を有しないかもしれないが、それらを、例えば非経腸的または経口的に投与し、その後、体内で代謝されて薬理学的に活性である本発明の化合物を形成し得ることは認識されよう。かかる誘導体は、それ故“プロドラッグ”の例である。開示する化合物の全てのプロドラッグは本開示の範囲内である。
【0065】
ここに記載する基のいくつか(特にヘテロ原子および共役結合を有するもの)は、互変異性形態で存在し得て、全てのこれらの互変異性体が本開示の範囲内に入る。より一般に、多くの化学種が、例えば有機酸とそのカウンターアニオンの場合のように、平衡で存在し得る;従ってここでのある化学種の引用は、その全ての平衡な形態への引用も含む。
【0066】
開示した化合物はまた1個以上の不斉炭素原子を含み得て、それ故光学および/またはジアステレオ異性を示す。全てのジアステレオ異性体を、慣用の技術、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶を使用して分離し得る。種々の立体異性体を、慣用の、例えば分別結晶またはHPLC方法を使用して、ラセミ体または他の混合物の分離により単離し得る。あるいは所望の光学異性体を、ラセミ化またはエピマー化を起こさない条件下で適当な光学活性出発物質を反応させ、または、例えばホモキラル酸を用いた誘導体化させ、慣用手段(例えばHPLC、シリカクロマトグラフィー)によるジアステレオマー誘導体を単離することにより製造し得る。全ての立体異性体は本開示の範囲内に含まれる。1個の鏡像体またはジアステレオマーが開示されているとき、その開示はまた他の鏡像体またはジアステレオマー、およびまたラセミ体を包含する;この点に関して、ここに記載した化合物に特に関連する。
【0067】
幾何異性体がまた本開示の化合物において存在し得る。本開示は、炭素−炭素二重結合周囲の置換基の配置に起因する種々の幾何異性体およびそれらの混合物を意図し、かかる異性体をZまたはE配置として割り当て、ここで、用語“Z”は、炭素−炭素二重結合の同一面に存在する置換基を意味し、そして用語“E”は炭素−炭素二重結合の逆の面に存在する置換基を意味する。
【0068】
本開示は、それ故定義した化合物の全ての変異形態、例えば定義した化合物の全ての互変異性体または全ての薬学的に許容される塩、エステル、酸または他の変形およびその互変異性体ならびに投与により直接的または間接的に上に定義した化合物を提供できるか、かかる化合物と平衡で存在する化学種を提供できる物質を含む。
【0069】
合成
本化合物は、上に記載した特許明細書、例えばWO03/029184およびUS2004/0242654;WO03/029205およびUS2004/0254222;WO2004/026817およびUS2006/0135622に記載の通りに合成し得る。
【0070】
投与および医薬製剤
本発明の化合物は、通常、経口で、静脈内に、皮下に、頬側に、直腸に、皮膚に、鼻腔に、気管に、気管支に、任意の他の非経腸経路により、経口または経鼻スプレーまたは吸入により投与する。本化合物は薬学的に許容される投与形態の、プロドラッグまたは活性化合物を遊離化合物または、例えば、薬学的に許容される非毒性有機または無機酸または塩基塩付加塩のいずれかで含む、医薬製剤の形で投与し得る。処置する障害および患者および投与経路によって、本組成物は種々の投与量で投与してよい。
【0071】
典型的に、それ故に、本発明の医薬化合物を宿主に経口的または非経腸的(ここで使用する“非経腸的”は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および点滴を含む投与方式を意味する)に投与し得る。ヒトのような大型動物の場合、本化合物を、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と組み合わせた組成物としての投与の代わりに単独で投与してもよい。
【0072】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量は、特定の患者、組成物、および投与方式について所望の治療応答を達成するのに有効な活性化合物の量を得るために変化し得る。選択される投与レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、処置する状態の重症度および処置する患者の状態および薬歴による。しかしながら、化合物の投与量を所望の治療効果を達成するのに必要な量より少なくから開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させるのは当業者の技術の範囲内である。
【0073】
末梢ニューロパシーの症状の処置、予防、制御、改善、または軽減において、適当な投与量は、一般に約0.01〜500mg/kg患者体重/日であり、これを1回投与または複数回投与で投与できる。投与量は、約0.1〜約250mg/kg/日;例えば約0.5〜約100mg/kg/日であり得る。適当な投与量は約0.01〜250mg/kg/日、約0.05〜100mg/kg/日、または約0.1〜50mg/kg/日であり得る。この範囲内で、投与量は0.05〜0.5、0.5〜5または5〜50mg/kg/日であり得る。経口投与のために、組成物を、1.0〜1000mgの活性成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0または1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形で提供し得る。本化合物を、1日1〜4回、好ましくは1日1回または2回のレジメンで投与し得る。投与レジメンは、最適治療応答を提供するように調節し得る。
【0074】
本発明の別の面によって、それ故、開示した化合物を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合して含む、医薬組成物を提供する。
【0075】
非経腸注射用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される滅菌水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンならびに使用直前に滅菌注射可能溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例は、水、エタノール、ポリオール類(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適当なそれらの混合物、植物油(例えばオリーブ油)および注射可能有機エステル類、例えばオレイン酸エチルを含む。適切な流動性が、分散液の場合、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用による必要な粒子径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持できる。
【0076】
これらの組成物はまた防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントも含み得る。微生物の作用の予防を、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸の包含により確実にし得る。また、例えば、糖類または塩化ナトリウムのような等張剤の包含が望ましいこともある。注射可能医薬形態の長時間吸収は、吸収を遅延する薬剤(例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチン)の包含により達成し得る。
【0077】
ある場合、薬剤の効果を持続させるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅延させることが望ましい。これは、難溶性の結晶性または非晶性物質の液体懸濁液の使用により達成し得る。薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、これは、結晶サイズおよび結晶性形態に依存し得る。あるいは、非経腸的投与された医薬形態の吸収遅延は、薬物を油性媒体に溶解または懸濁することにより達成される。
【0078】
注射可能デポ形態は、好適には、生物分解性ポリマー、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中の薬剤のマイクロカプセルマトリックスの形成により製造する。薬剤対ポリマー比および用いる特定のポリマーの性質によって、薬剤放出速度は制御できる。他の生物分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル類)およびポリ(無水物)を含む。デポ注射可能製剤はまた、身体組織と適合性の薬物をリポソームまたはマイクロエマルジョンに捕捉することにより製造し得る。注射可能製剤を、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過により、または使用直前に滅菌水または他の滅菌注射可能媒体に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形の滅菌剤の包含により、滅菌できる。
【0079】
経口投与用固体投与形態は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒を含む。かかる固体投与形態において、活性化合物は、典型的に少なくとも1個の不活性な、薬学的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または1個以上の:a)増量剤またはエキステンダー、例えばデンプン類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸;b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア;c)湿潤剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば寒天−寒天、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート類および炭酸ナトリウム;e)溶解遅延剤、例えばパラフィン;f)吸収加速剤、例えば4級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト・クレイおよびi)滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物と混合されている。カプセル、錠剤および丸剤の場合、投与形態はまた緩衝剤を含み得る。類似のタイプの固体組成物もまた、例えばラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を使用した、軟および硬充填増量剤ゼラチンカプセルの充填材としても使用し得る。
【0080】
好適には、経口製剤は溶解助剤を含む。溶解助剤は、それが薬学的に許容される限り、そのアイデンティティーは限定されない。例は、非イオン性界面活性剤、例えばスクロース脂肪酸エステル類、グリセロール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えばソルビタントリオレエート)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー類、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、脂肪酸アルキルオールアミド類、およびアルキルアミンオキシド類;胆汁酸およびその塩(例えばケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびその塩、およびグリシンまたはそのタウリンコンジュゲート);イオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸石鹸、アルキルスルホネート類、アルキルホスフェート類、エーテルホスフェート類、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩;トリエタノールアミン石鹸、およびアルキル4級アンモニウム塩;および両性界面活性剤、例えばベタイン類およびアミノカルボン酸塩を含む。
【0081】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒の固体投与形態はコーティングおよび殻、例えば腸溶性コーティングおよび製薬分野で既知の他のコーティングを施してよい。それらは場合により乳白剤を含んでよく、また活性成分が腸管の特定部分でのみ、またはそこで優先的に遊離されるようなおよび/または遅延形態で遊離されるような組成であってもよい。包埋組成物の例は、重合性物質および蝋を含む。
【0082】
活性化合物はまた、適当であれば、1個以上の上記賦形剤を伴う、マイクロカプセル封入された形である。
【0083】
活性化合物は微粉化形態であってよく、例えばそれを粉砕できる。
【0084】
経口投与用液体投与形態は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。活性化合物に加えて、液体投与形態は、当分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類およびソルビタンの脂肪酸エステル類およびそれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤以外に、経口組成物はまたアジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、風味剤および芳香剤を含み得る。懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天、およびトラガカントおよびそれらの混合物を含み得る。
【0085】
直腸または膣投与用組成物は、好ましくは、本発明の化合物と適当な非刺激性賦形剤または室温では固体であるが、体温で液体であり、それ故、直腸腔または膣腔で融解し、活性化合物を遊離する担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬蝋の混合により製造できる坐薬である。
【0086】
本発明の化合物はまたリポソームの形態で投与できる。当分野で既知の通り、リポソームは、一般にリン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体に分散される一層または多層状水和液晶により形成される。リポソームを形成できる全ての非毒性の、生理学的に許容され、かつ代謝可能な脂質を使用できる。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定化剤、防腐剤、賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成両方のリン脂質およびホスファチジルコリン類(レシチン類)である。リポソーム形成法は文献、例えば、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p 33 et seqから既知である。
【0087】
有利に、本発明の化合物は経口で活性であり得て、活性が急速に開始し、低毒性である。
【0088】
本発明の化合物は、先行文献において既知の化合物より有効であるか、毒性が低いか、作用が長いか、活性の範囲が広いか、強力であるか、副作用が少ないか、吸収が容易であるか、または他の有用な薬理学的特性を有し得る。
【0089】
組合せ治療
本発明の化合物を、1種以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与し得る。従って、本発明は、さらなる薬剤を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、本発明の化合物と薬剤を;治療に同時に、別々にまたは連続的に使用するための組合せ製剤として含む、製品も提供する。
【0090】
特に、本発明の組成物または製品は、末梢ニューロパシー、例えば脱髄性末梢ニューロパシーに有用な薬剤から選択される治療剤を含み得るか、または組み合わせて投与し得る;かかる第二薬剤の例として、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸モフェチル、または15−デオキシスペルグアリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾンまたはヒドロコルチゾン)、免疫グロブリン、または1型インターフェロンを特に記載し得る。開示した化合物および第二の薬剤を同時にまたは連続的に投与できる。開示した化合物および第二の薬剤を同時に投与するとき、それらは一つの組成物にまたは別々の組成物に製剤され得る。
【0091】
使用
本発明の化合物は、種々の末梢ニューロパシー、特に急性または慢性脱髄性ニューロパシーの処置に有用であり得る。開示した化合物は、それ故ギラン・バレー症候群(GBS)、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害(CIDP)、伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害(MMN)、および異常タンパク性脱髄性末梢ニューロパシー(PDN)の1種以上の治療に有用であり得る。特に、ニューロパシーはCIPDである。本化合物の有効性は、患者毎に変わり得る。
【0092】
用語“治療”は、末梢ニューロパシーの症状の1個以上を軽減するため、またはかかる疾患の進行を、例えば、脱髄、例えば末梢脱髄の予防または減速により進行治験するための処置を含む;それはまた、かかる疾患を治癒するため、対象を機能状態にするためおよび/または対象を機能状態に維持するため、または再発までの期間を延長するための処置も含む。
【0093】
本化合物の治療的使用は、罹患するリスクにある対象の末梢ニューロパシーの予防、制御または重症度の軽減のための予防的使用、ならびに既存の疾患の重症度を制御または軽減するための処置も含み得る。本化合物は症状発症前に投与し得る;本化合物は症状発症後に投与し得る。本化合物は末梢ニューロパシーに罹患するリスクのある対象に投与し得る。
【0094】
本化合物を使用し得る処置は、それ故、末梢ニューロパシーを有する、有する疑いのある、有するリスクのある患者の、医学的状態および/または安楽の改善、維持、または悪化の遅延をし得る。
【実施例】
【0095】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0096】
実施例1(実験的自己免疫性神経炎に対する化合物Aの抑制効果)
WO03/0292051(例えば実施例46参照)の反応スキームに従い合成し得る2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−エチルブタン−1−オールヒドロクロライド(化合物A)を、実験的自己免疫性神経炎の抑制に対するこうかについて試験した。
【0097】
雄ルイスラット(8−10週齢、180−200g、Elevage-Janvier, France)を、12時間点灯−12時間消灯サイクルで、餌と水は自由に摂取させて飼育した。全ての動物使用工程は、地域のAdministration District Official Committeeにより承認されたプロトコールに従った。動物数および動物の苦痛を最小限にする最大の努力をはらった。
【0098】
EAN誘発
EAN誘発のために、ラットを、両後脚の足蹠に100μgの合成神経突起生成P2 57−81ペプチド(GeneScript Corporation, Scotch Plains, NJ, USA)を含む摂取物100μLを皮下注射することにより免疫化した。ペプチドをリン酸緩衝化食塩水(PBS)(2mg/mL)に溶解し、2mg/mL結核菌を含む等量の完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化して、最終濃度1mg/mLとした。
EAN臨床スコアを次の通り毎日評価した:0=正常、1=尾の緊張低下、2=垂れた尾、立ち直り障害、3=立ち直り不可、4=歩行失調、5=後肢の軽度の不全麻痺、6=中程度の不全対麻痺、7=後肢の重度の不全対麻痺または対麻痺、8=四肢不全麻痺、9=瀕死、および10=死亡(Zhang et al., 2009A)。
【0099】
化合物A処置
化合物Aを、1mg/kg(水媒体に懸濁)濃度で投与した。化合物A懸濁液を、誘発直後に、その後22日目まで1日1回以内投与した(1群あたり5匹のラット)。対照EANラットには、同じ容積の1%CMC水溶液を与えた。
【0100】
免疫組織化学
PNSにおける炎症性細胞浸潤および病的変化を評価するために、5匹の化合物A処置ラットおよび5匹の対照EANラットを16日目に殺した。ラットをエーテルで深く麻酔し、4℃、4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液を心臓内灌流した。左および右坐骨神経を素早く摘出し、4%ホルムアルデヒドに一夜4℃で後固定した。坐骨神経を2個の同じ長さの切片に切断し、パラフィンに包埋し、連続的に分割し(3μm)、シラン被覆スライドに載せた。
【0101】
脱蝋後、坐骨神経の断面を、15分間クエン酸緩衝液(2.1g クエン酸ナトリウム/L、pH6)中で沸騰させた(600Wマイクロ波オーブンで)。内在性ペルオキシダーゼを1%Hのメタノール溶液で15分間阻止した。切片を10%正常ブタ血清(Biochrom, Berlin, Germany)とインキュベートし、免疫グロブリンの非特異的結合を遮断し、次のモノクローナル抗体とインキュベートした:Tリンパ球用にW3/13(1:50;Serotec, Oxford, UK)、B細胞用にOX22(1:200;Serotec, Oxford, UK)、活性化マクロファージ用にED1(1:100;Serotec, Oxford, UK)。組織切片に結合した抗体をビオチニル化IgG F(ab)二次抗体フラグメント(ウサギ抗マウスまたはウサギ抗ヤギ;1:400;DAKO, Hamburg, Germany)で可視化した。その後、切片をストレプトアビジン−アビジン−ビオチン複合体(DAKO, Hamburg, Germany)とインキュベートし、ジアミノベンジジン(DAB)基質(Fluka, Neu-Ulm, Germany)で発色させた。最後に、切片をマイアーのヘマラム染色で染色した。
【0102】
免疫染色データを評価するために、坐骨神経断面の面積に対する免疫反応性(IR)面積の割合を計算した。坐骨神経断面の画像を、パラメータを固定したNikon Coolscope(Nikon, Duesseldorf, Germany)を使用して、50倍で捕捉した。画像をMetaMorph Offline 7.1(Molecular Devices, Toronto, Canada)で分析した。IRの面積を、色閾値区分により選択し、全てのパラメータを全画像について固定した。坐骨神経断面の領域を手動で選択した。各EANラットについて、両側の根本および真ん中から4個の断面を分析した。結果は、IR対坐骨神経断面面積および標準誤差(SEM)のパーセンテージの算術に基づいた手段として示した。
【0103】
日常的なLuxol Fast Blue(LFB)染色を適用してミエリンを示した。化合物Aラットおよび対照EANラット間の組織学的変化を、確立された半定量的方法により比較した。簡単に言うと、EANラットの両側の根本および真ん中からの4個の断面を分析した。断面に示される全ての血管周囲領域を、処置を知らない2名の観察者により評価させ、病的変化の程度を次のスケールで半定量的に等級付けした:0=正常血管周囲領域;1=血管に隣接した軽度の細胞浸潤;2=血管の直ぐ近くに細胞浸潤と脱髄;および3=切片を通して細胞浸潤および脱髄。結果を平均組織学的スコアとして示した(Hartung et al., 1988)。
【0104】
評価および統計分析
不対t検定を使用して、化合物Aラットと対照EANラットの差異を比較した(Graph Pad Prism 4.0 for windows)。全ての統計分析について、有意レベルはp<0.05と設定した。
【0105】
結果
化合物AによるEANの抑制的処置
EANを、神経突起生成合成P2ペプチドの皮下注射により誘発した。抑制的処置のために、1%CMC水溶液(対照群)または化合物Aを免疫化直後、および22日目まで毎日経口投与した。対照EANラットの最初の神経学的徴候(尾の緊張低下)は9日目に観察された(平均臨床スコア:0.20±0.13)。EANの神経学的重症度は対照群で急速に上昇し、13日目が最大スコアであった(平均神経学的スコア:4.80±0.51)。その後、EANの重症度はゆっくり減少し、ラットの完全な回復が22日目に見られた(平均臨床スコア:0±0)。化合物A処置EANラットで、神経学徴候の顕著な低下が見られた(平均神経学的スコア<0.1)。それ故、化合物A処置は、EANの臨床徴候をほとんど完全に予防した。
【0106】
EANのさらなる特徴は、疾患発症後の進行性の体重減少である。対照および化合物A処置EANラットで、EANの発症(9日目)までゆっくりで連続的な体重増加が観察された。その後、対照EANラットは、免疫化後10日目から18日目までの神経学的疾患の期間の間顕著な体重減少を示し、その後回復期間中に体重が増加した。対照的に、化合物Aで処置したEANラットにおいて、疾患発症のピーク時に13日目から15日目まで低いレベルでの体重減少が見られ、またはるかに重症度が低い経過を示した。
【0107】
EAN坐骨神経における組織病理学的変化に対する化合物Aの抑制的効果
対照または化合物A処置EANラットの坐骨神経における種々の炎症性細胞の浸潤を16日目(n=5)に免疫組織化学により分析した。T細胞(W3/13)、B細胞(OX22)およびマクロファージ(ED1)の浸潤が対照EANラットの坐骨神経で見られた。優勢な浸潤している細胞はマクロファージであり、そのIR面積は、断面上で坐骨神経の総面積約2%を占めた。これらの結果を以下の表1に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
EANラットの坐骨神経で、化合物AはT細胞、B細胞およびマクロファージの浸潤を顕著に抑制した。
【0110】
坐骨神経で、LFB染色により測定した平均組織学は、化合物A処置EANラットで有意に低かった。これらの結果を以下の表2に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
これらの結果は、化合物Aでの抑制的処置が、局所的脱髄の減少と共にリンパ球およびマクロファージの末梢神経への浸潤を実質的に減少させることにより、EANをほぼ予防し、不全対麻痺を阻止することを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄性末梢ニューロパシーの処置に使用するための、式V:
【化1】

〔式中、
XはO、S、SOまたはSOであり;
はハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH−OH、CH−CH−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシであり、その各フェニルは場合によりハロゲン、CF、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換されていてよく;
はH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
はH、ハロゲン、CF、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1−4アルコキシメチルであり;
およびRの各々は独立してHまたは式(a)
【化2】

の基であり、
およびRの各々はHまたは場合によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルであり;そして
nは1〜4の正数である。〕
の化合物およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物;
または式VI
【化3】

〔式中、
1aはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル(sulifinyl)、C1−4アルキル−スルホニル、アラルキルであるか、場合により置換されていてよいフェノキシまたはアラルキルオキシであり;
2aはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり;
3aはH、ハロゲン、CF、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり;
4aはH、C1−4アルキル、フェニルであるか、場合により置換されていてよいベンジルまたはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルであり;
5aはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ−メチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルであり;
6aはHまたはC1−4アルキルであり;
7aはH、C1−4アルキルまたは上に定義した式(a)の基であり、
はO、S、SOまたはSOであり;
は1〜4の正数であり;そして
*は、(R)または(S)配置のキラル中心を意味し、式は(R)および(S)配置分子のラセミ体または他の混合物を包含する。〕
の化合物およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物。
【請求項2】
ニューロパシーがギラン・バレー症候群である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ニューロパシーが慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
ニューロパシーが伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
ニューロパシーが異常タンパク性脱髄性末梢ニューロパシーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式Vである、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
式Va:
【化4】

〔式中、
、R、R、R、およびnは請求項1に定義した通りであり;そしてYはOまたはSであり、そして
は水素、ハロゲン、C1−7アルキル、C1−4アルコキシまたはトリフルオロメチルである。〕
である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式VIである、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
式VIa:
【化5】

〔式中、記号は請求項1に定義した通りである。〕
である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2aがHまたはハロゲンであり;R3aがHまたはハロゲンであり;R4aがHであり;R5aがC1−4アルキルであり;R6aがHであり;R7aがHであり;そしてnが2である、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
構造:
【化6】

〔式中、*は(R)または(S)配置のキラル中心を意味し、式は(R)および(S)配置分子のラセミ体または他の混合物を包含する。〕
を有する、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
構造
【化7】

を有する、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
脱髄性末梢ニューロパシーを有する対象の処置方法であって、該対象に有効量の請求項1および6から12のいずれかに定義した構造を有する化合物を投与することを含む、方法。
【請求項14】
脱髄性末梢ニューロパシーの症状を改善する、進行を遅延する、または再発までの時間を延長する方法であって、対象に有効量の請求項1および6から12のいずれかに定義した構造を有する化合物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
脱髄性末梢ニューロパシーを有する対象の状態を改善または維持する、または悪化を遅延させる方法であって、該対象に有効量の請求項1および6から12のいずれかに定義した構造を有する化合物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
ニューロパシーがギラン・バレー症候群である、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項17】
ニューロパシーが慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害である、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項18】
ニューロパシーが伝導ブロックを伴う多巣性運動神経障害である、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項19】
ニューロパシーが異常タンパク性脱髄性末梢ニューロパシーである、請求項13、14または15に記載の方法。
【請求項20】
請求項1および6から12のいずれかに定義した構造を有する化合物を、脱髄性末梢ニューロパシーを有する患者の処置に有用な少なくとも1個のさらなる治療剤と組み合わせて含む、医薬製剤。
【請求項21】
少なくとも1個のさらなる治療剤が免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸モフェチル、または15−デオキシスペルグアリン)、ステロイド(例えば、プレドニゾンまたはヒドロコルチゾン)、免疫グロブリン、または1型インターフェロンから選択される、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
請求項20または21に定義した少なくとも1個のさらなる薬剤と同時に、別々にまたは連続的に共投与するための、請求項1および6から12のいずれかに定義した構造を有する化合物。

【公表番号】特表2012−500246(P2012−500246A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523408(P2011−523408)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060608
【国際公開番号】WO2010/020609
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】