説明

膀胱上皮内へのウイルスの形質導入の増強のための方法および試薬

膀胱上皮内への組換えウイルスの形質導入を増強するための物質および方法を記載する。第1の方法は、膀胱の内腔表面を、形質導入増強剤と腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含む組成物と接触させることを含む。別法として、膀胱の内腔表面を、まず、形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、ついで、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることが可能である。形質導入増強剤と腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含む膀胱治療用組成物も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、ウイルス療法剤での膀胱癌の治療に関する。本発明は、特に、膀胱上皮への組換え腫瘍細胞崩壊性ウイルスの形質導入を増強するための物質および方法に関する。本出願は、2002年12月26日付け出願の米国特許出願第10/327,869号(その出願の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌はよく生じる癌であり、50,000を超える新たな症例が毎年診断されている。膀胱癌は、大多数の患者においては、粘膜に限局される表在性疾患である。利用可能な種々の治療方法のうち、腫瘍の経尿道切除術が表在性膀胱癌に対する最も有効な治療方法であるとみなされている。しかし、これらの表在性膀胱腫瘍の70%は内視鏡的切除の後に再発し、20%は、膀胱切除の2年以内に、生命を脅かす浸潤性疾患へと進行する。Raghavanら, “Biology and Management of Bladder Cancer”, N. Engl. J. Med., 322, 16, 1129-1138 (1990)を参照されたい。
【0003】
遺伝子治療も膀胱癌の治療に用いられている。例えば、, Brewsterら, Eur. Urol. 25, 177-182 (1984); Takahashiら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 5257-5261 (1991); およびRosenberg, J. Clin. Oncol., 10, 180-199 (1992)を参照されたい。
【0004】
ヒト膀胱組織から誘導された細胞系を使用するin vitro研究は、組換えアデノウイルスの感染後の効率的なトランスジーンの発現を示している(Bassら, Cancer Gene Therapy 2, 2, 97-104 (1995))。in vivo実験も、膀胱内投与後のげっ歯類の膀胱におけるアデノウイルストランスジーンの発現を示している(Bassら, 前掲; Morrisら, J. Urology, 152, 506-550 (1994))。野生型アデノウイルスでのin vitro実験は、ウイルスの付着およびインターナリゼーションがベンジルアルコールによっては影響されないことを示しているが、該ビリオンのアンコーティングの促進を示している(Blixtら, Arch. Virol., 129, 265-277 (1993))。
【0005】
in vivo研究は、種々の物質(例えば、アセトン、DMSO、硫酸プロタミン)が、細菌、ウイルスおよび他の病原体から膀胱上皮を防御する防御性「ムチン」層を破壊しうることを示している。例えば、Monsonら, J. Urol., 145, 842-845 (1992) およびParsonsら, J. Urol., 143, 139-142 (1990)を参照されたい。遺伝子導入を増強するために膀胱表面を修飾する方法も開示されている(Siemensら, “Evaluation of Gene Transfer Efficiency by Viral Vectors to Murine Bladder Epithelium”, J. of Urology, 165, 667-671 (2001))。
【0006】
米国特許第6,165,779号は、運搬増強剤、例えばエタノールまたは界面活性剤を含むバッファー中に製剤化された遺伝子運搬系を開示している。該遺伝子運搬系は、アデノウイルスベクターのような組換えウイルスベクターでありうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、膀胱上皮への直接的で最適なin vivo遺伝子運搬を達成しうる改良された遺伝子治療方法および物質が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様においては、膀胱癌の治療方法を提供する。本発明のこの態様においては、該方法は、膀胱の内腔表面を、形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含み、ここで、形質導入増強剤は、親油性置換基を有する単糖、二糖または多糖である。形質導入増強剤は、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化1】

【0009】
(式中、Xは硫黄または酸素原子であり、R1はアルキル基であり、各R2は、独立して、水素または、
【化2】

【0010】
により表される部分であり、ここで、R1はアルキル基である)を有しうる。前処理組成物は酸化剤を更に含みうる。腫瘍細胞崩壊性ウイルスはCG8840のような腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスでありうる。該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物はドセタキセルのような化学療法剤を更に含みうる。
【0011】
本発明の第2の態様においては、膀胱癌の治療方法を提供する。本発明のこの態様においては、該方法は、膀胱の内腔表面を、約0.01〜約0.2重量%のオキシクロロセンナトリウムを含む前処理組成物と接触させ、ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含む。
【0012】
本発明の第3の態様においては、膀胱癌の治療方法を提供する。本発明のこの態様においては、該方法は、膀胱の内腔表面を、化学式:
【化3】

【0013】
(式中、xおよびyは正の整数である)により表される構造を有する形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含む。本発明の好ましい実施形態においては、xは6であり、yは8〜10であり、前処理組成物は約0.02〜約0.05重量%の形質導入増強剤を含む。
【0014】
本発明の第4の態様においては、膀胱癌の治療方法を提供する。本発明のこの態様においては、該方法は、膀胱の内腔表面を、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化4】

【0015】
(式中、xは正の整数である)により表される構造を有する形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含む。
【0016】
本発明の第5の態様においては、形質導入増強剤と腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含む組成物を提供する。本発明のこの態様においては、形質導入増強剤は、親油性置換基を有する単糖、二糖または多糖である。例えば、形質導入増強剤は、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化5】

【0017】
(式中、Xは硫黄または酸素原子であり、R1はアルキル基であり、各R2は、独立して、水素または、
【化6】

【0018】
により表される部分であり、ここで、R1はアルキル基である)を有する化合物でありうる。該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物はドセタキセルのような化学療法剤を更に含みうる。膀胱の内腔表面を前記組成物と接触させることを含む膀胱癌の治療方法も提供する。
【0019】
本発明の第6の態様においては、オキシクロロセンナトリウムと腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含む組成物を提供する。腫瘍細胞崩壊性ウイルスはCG8840のような腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスでありうる。該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物はドセタキセルのような化学療法剤を更に含みうる。膀胱の内腔表面を前記組成物と接触させることを含む膀胱癌の治療方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、膀胱アンブレラ細胞層を、ウイルス遺伝子運搬ビヒクルの感染に対して、無処理の場合より感受性にするための、形質導入増強剤の使用に関する。本発明の典型的な形質導入増強剤には、ドデシル界面活性剤、ドデシルマルトシド、ドデシルアルコールポリオキシエチレンエーテル(すなわち、ポリドカノール)、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム/次亜塩素酸複合体(すなわち、オキシクロロセン)が含まれる。
【0021】
本発明においては、ウイルス遺伝子運搬ビヒクルを感染させる前に、形質導入増強剤を含む組成物で膀胱の内腔を処理することが可能である。ウイルス遺伝子運搬ビヒクルは、膀胱癌を治療するために試用する腫瘍細胞崩壊性ウイルスでありうる。本発明の実施において使用する腫瘍細胞崩壊性ウイルスには、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ニューカッスル病ウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、西ナイルウイルス、コクサッキーウイルス、ポリオウイルスおよび麻疹ウイルスが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の実施で特に関心が持たれるのは、特定の組織型(すなわち、膀胱尿路上皮)において優先的な発現を示す腫瘍細胞崩壊性ウイルスである。このタイプの腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスは、例えば、Zhangら, “Identification of Human Uroplakin II Promoter and Its Use in the Construction of CG8840, a Urothelium-specific Adenovirus Variant that Eliminates Established Bladder Tumors in Combination with Docetaxel”, Cancer Research, 62, 3743-3750 (2002)および共有米国特許出願第09/814,292号(これを参照により明示的に本明細書に組み入れることとする)に開示されている。腫瘍細胞崩壊性ウイルスとの併用療法において使用する化学療法剤は、例えば、共有米国特許出願第09/814,357号(これを参照により明示的に本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0022】
あるいは、ウイルス遺伝子運搬ビヒクルは、遺伝子治療において使用するための当技術分野で公知の任意の遺伝子治療運搬ビヒクルでありうる。それらには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。典型的な遺伝子治療アデノウイルス剤は米国特許第6,165,779号に開示されている。本発明者らは、種々の化合物の水溶液でのマウス膀胱の前処理が形質導入を膀胱表面の60%以上に一貫して増加させることを見出した(一方、未処理の場合の形質導入率はせいぜい10%である)。
【0023】
形質導入増強剤での膀胱表面の前処理に加えて、本発明は、ウイルス遺伝子運搬ビヒクルと形質導入増強剤との膀胱への共投与、および形質導入増強剤のいずれかと組換えウイルス遺伝子運搬ビヒクルとの共配合製剤(co-formulations)を含む。
【0024】
膀胱上皮内へのアデノウイルス形質導入に使用する試薬の組成および化学的性質
ウイルス遺伝子運搬ビヒクルによる膀胱内への遺伝子の導入または形質導入を増強するものを見出すために、いくつかのクラスの化合物、界面活性剤および予製(pre-made)試薬を試験した。典型的なウイルス遺伝子治療ビヒクルとして腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスCG884を使用した。評価される試薬はそれらの物理的または化学的な特性および構造により分類されうる。
【0025】
第1に、試薬は単一化合物として又は混合試薬(すなわち、化合物の混合物)として分類されうる。評価される単一化合物には、非イオン性界面活性剤、アルコール、重合体およびイオン性界面活性剤が含まれる。評価されるイオン性界面活性剤には、4% ポロキサマー(Poloxamer)407(Pluronic(登録商標)127)、4% ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F68)、0.02%〜0.5% ポリドカノール(Polidocanol)、0.1% n-ドデシル-b-D-グルコピラノシド(これは、糖に基づく界面活性剤としても分類されうる)、0.02〜0.5% n-ドデシル-b-D-マルトシド(これは、糖に基づく界面活性剤としても分類されうる)、0.1% Tween(登録商標)、0.1% Triton(登録商標)X-100、0.1% Forlan(登録商標)C-24(PEGコレステロール)、0.1% デシル-b-マルトシド(これは、糖に基づく界面活性剤としても分類されうる)、0.1% 6-シクロヘキシルヘキシル-β-D-マルトシド(これは、糖に基づく界面活性剤としても分類されうる)、および0.1% Tromboject(登録商標)(テトラデシル硫酸ナトリウム)が含まれる。
【0026】
評価されるアルコールには、0.1%〜3% ベンジルアルコールおよび10%〜30% エタノールが含まれる。評価される重合体には、0.4% HPMC 2910、0.4% PVA、0.4% PVPおよび100mg/ml ポリリシンが含まれる。評価されるイオン性界面活性剤には、0.1% DC-Chol [コレステリル3b-N-(ジメチルアミノエチル)カルバマート]、ドデシルベンゼンスルホン酸の0.2% ナトリウム塩、および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムが含まれる。評価される混合試薬には、In vivo GeneSHUTTLE(商標)(Qbiogene(Carlsbad, CA)から入手可能なDOTAP + コレステロールを含む試薬)、および0.1%〜0.4% オキシクロロセン(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム/次亜塩素酸複合体)が含まれる。
【0027】
げっ歯類の膀胱上皮におけるアデノウイルス媒介遺伝子導入および発現に対するエタノール前処理の効果
げっ歯類の膀胱上皮におけるアデノウイルス媒介遺伝子導入および発現に対するエタノール前処理の効果を評価するための研究を行った。
【0028】
試験材料
アデノウイルスの凍結および製剤化のための当技術分野で公知の標準的な条件を用いて、Ad-βgalウイルスを凍結製剤として作製した。ウイルス用のビヒクルはPBS + 10%グリセロールであった。前処理剤は、PBS-10%グリセロール溶液中のそれぞれ5%、10%、15%、20%および30% GLP等級エタノールであった。
【0029】
動物
この研究には80匹の雌BALB/cマウスを使用した。雌マウスを選択したのは、尿道カニューレ挿入および膀胱点滴が容易だからである。マウスは実験の開始日に約10〜12週齢であった。
【0030】
処理計画
以下の表に示すとおり、動物を各群に割当てた。
【表1】

【0031】
表1のデータに関して、Ad-βgalウイルスの濃度は、光学密度測定による測定では1.3×1012 vp/mlであった。
【0032】
処理方法
1.動物をイソフランで麻酔し、24gカテーテルを尿道を介して膀胱内へ導入した。
【0033】
2.残留尿を空にし、それぞれ100〜150μlのPBSを膀胱に3回流した。
【0034】
3.試験動物においては、膀胱を0.1mlのそれぞれ5、10、15、20、25または30%エタノール溶液で20分間前処理し、ついで100〜150μlのPBSで3回リンスした。
【0035】
4.0.1mlのPBS-10%グリセロール中で希釈したAd-βgalウイルスを膀胱内に投与し、膀胱内に45分間維持した。該ウイルスの漏出を防ぐために及びカテーテルが外れるのを防ぐために、尿道口の周囲に結紮を配置した。
【0036】
5.該ウイルスを抜き取り100〜150μlのPBSを膀胱に3回流すことにより、処理を停止した。カテーテルが詰まったら、該ウイルスが尿中にて流出するよう該洗浄工程を回避した。しかし、この手法の使用は、膀胱内のウイルス残留時間の測定を妨げうる。
【0037】
測定/決定
処理日に、投与前に動物の臨床状態を観察し、実験期間中には、動物を毎日観察した。
【0038】
β-ガラクトシダーゼ活性の評価
処理の48時間後に動物を殺した。膀胱を0.1mlの全器官固定液、2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS(pH 7.4)で満たした。ついで膀胱を摘出し、全器官固定液に1時間浸した。ついで該膀胱を縦方向に切り開き、4℃で24時間リンスし(2 mM MgCl2、0.1%デオキシコラート、0.2% Triton)、X-gal染色溶液内に浸した。その縦方向に開いた膀胱の内腔上皮内でのトランスジーンの発現を実験的に測定した。
【0039】
組織病理学
全器官固定液中で固定した膀胱を切片化し、組織学的検査のためにヘマトキシリン-エオシンで染色した。
【0040】
結果
種々の濃度のエタノール(すなわち、15%、20%、25%および30重量%)での20分間の内腔膀胱表面の前処理は10〜20%の形質導入をもたらした。図1〜4は、エタノールでの前処理後のマウス膀胱の形質導入を示す。図1Aおよび1Bは、15% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真である。図1Aは膀胱の外表面を示し、図1Bは内腔膀胱表面を示す。図1Cおよび1Dは、20% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真である。図1Cは膀胱の外表面を示し、図1Dは内腔膀胱表面を示す。図1Eおよび1Fは、25% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真である。図1Eは膀胱の外表面を示し、図1Dは内腔膀胱表面を示す。図1Gおよび1Hは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真である。図1Gは膀胱の外表面を示し、図1Hは内腔膀胱表面を示す。図1から理解されうるとおり、より高い濃度のエタノールは、染色による測定で、より高いレベルの形質導入をもたらした。
【0041】
図2Aは、マウス膀胱対照(すなわち、前処理を行っていないもの)の横断面を示す写真である。図2Bおよび2Cは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真である。
【0042】
図3A〜3Fは、25% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真である。図3Aおよび3Bは、第1マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図3Cおよび3Dは、第2マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図3Eおよび3Fは、第3マウス膀胱の横断面を示す写真である。図3A、3Cおよび3Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図3B、3Dおよび3Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0043】
図4A〜4Fは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真である。図4Aおよび4Bは、第1マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図4Cおよび4Dは、第2マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図4Eおよび4Fは、第3マウス膀胱の横断面を示す写真である。図4A、4Cおよび4Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図4B、4Dおよび4Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0044】
げっ歯類の膀胱上皮におけるアデノウイルス媒介遺伝子導入および発現に対する化学物質での前処理の効果
げっ歯類の膀胱上皮におけるアデノウイルス媒介遺伝子導入および発現に対する化学物質での前処理の効果を評価するための研究を行った。
【0045】
試験材料
アデノウイルスの凍結および製剤化のための当技術分野で公知の標準的な条件を用いて、Ad-βgalウイルスをCGIにおいて凍結製剤として作製した。ウイルス用のビヒクルはPBS + 10%グリセロールであった。
【0046】
動物
この研究には152匹の雌BALB/cマウスを使用した。雌マウスを選択したのは、尿道カニューレ挿入および膀胱点滴が容易だからである。マウスは実験の開始日に約10〜12週齢であった。
【0047】
処理計画
以下の表に示すとおり、動物を各群に割当てた。化学物質およびウイルスの投与経路は膀胱内経路であった。
【表2】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】
表2におけるデータのAd-βgalウイルスの濃度は、光学密度測定による測定では、1.3 x 1012 vp/ml(第1調製、粒子:PFU:30)および1 x 1012 vp/ml(第2調製、粒子:PFU:30)であった。
【0057】
処理手法
1.動物をイソフランで麻酔し、24gカテーテルを尿道を介して膀胱内へ導入した。
【0058】
2.残留尿を空にし、それぞれ100μlのPBSを膀胱に3回流した。
【0059】
3.被検試薬に基づき、膀胱の前処理を以下のとおりに行った。
【0060】
ポロキソマー407法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0061】
ポロキソマー188法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0062】
リポフェクタミン2000法:5μlのストックリポフェクタミン(1mg/ml)を195μlのPBS-10%グリセロールに加えた。等容量のAd-βgalウイルスと混合し、15分間インキュベートした。100μlの該混合物を膀胱内に投与し、膀胱内に30分間維持した。
【0063】
ベンジルアルコール法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を15分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0064】
オキシクロロセン法:投与計画において記載されているのと同様にして洗浄を行った(すなわち、それぞれ100μlの3回の洗浄、5分間の維持を伴う1回の洗浄、15分間の維持を伴う1回の洗浄)。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0065】
ポリドカノール法:それぞれ100μlで2回洗浄する。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0066】
DC-Cho法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0067】
0.4% HPMC 2910法:前処理は行わなかった。等容量の該ウイルスをHPMC2910の0.8% 溶液と混合し、該混合物を膀胱内に30分間点滴した。
【0068】
100mg/ml ポリリシン法:前処理は行わなかった。等容量の該ウイルスをポリリシンの100mg/ml溶液と混合し、該混合物を膀胱内に30分間点滴した。
【0069】
0.4%ポリビニルアルコール(PVA)法:前処理は行わなかった。等容量の該ウイルスをPVAの0.8%溶液と混合し、該混合物を膀胱内に30分間点滴した。
【0070】
n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0071】
0.4% PVP法:前処理は行わなかった。等容量の該ウイルスをPVPの0.8%溶液と混合し、該混合物を膀胱内に30分間点滴した。
【0072】
0.1% コレステロール-シクロデキストリン試薬法:前処理は行わなかった。等容量の該ウイルスをコレステロール-シクロデキストリンの0.2%溶液と混合し、該混合物を膀胱内に30分間点滴した。
【0073】
n-ドデシル-β-D-マルトシド法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0074】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0075】
0.1% ドデシル硫酸ナトリウム法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0076】
0.1% Tween20法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0077】
0.1% Triton(登録商標)X-100法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0078】
0.1% Forlan C-24法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0079】
0.1% デシル-b-D-マルトシド法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0080】
0.1% 6-シクロヘキシルヘキシル-b-D-マルトシド法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0081】
0.1% テトラデシル硫酸ナトリウム(Tromboject(登録商標), Omega Laboratories Ltd.)法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0082】
0.1% フェニル-β-D-グルコピラノシド法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0083】
0.1% スクロースモノラウラート法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0084】
0.1% 1-O-ドデシル-rac-グリセロール法:それぞれ100μlで2回洗浄した。第3洗浄を5分間維持し、ついで更にもう1回の洗浄を行った。ウイルス点滴の前に、3回のPBS洗浄を行った。
【0085】
in vivo geneSHUTTLE(商標)法:4mMのin vivo geneSHUTTLE(商標)をウイルスと混合した。第1日に投与した。60mlの脂質を90mlの水で希釈した。ついで150μlのAd-βgalを加えた。
【0086】
4.該ウイルスを抜き取り、100μlのPBSを膀胱に3回流すことにより、ウイルス処理(45分間)を停止した。
【0087】
測定/決定
処理日に、投与前に動物の臨床状態を観察し、実験期間中には、動物を毎日観察した。
【0088】
β-ガラクトシダーゼ活性の評価
処理の48時間後に動物を殺した。膀胱を0.1mlの全器官固定液、2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS(pH 7.4)で満たした。ついで膀胱を摘出し、全器官固定液に1時間浸した。ついで該膀胱を縦方向に切り開き、4℃で24時間リンスし(2 mM MgCl2、0.1%デオキシコラート、0.2% Triton中)、X-gal染色溶液中に浸した。その縦方向に開いた膀胱の内腔上皮内でのトランスジーンの発現を実験的に測定した。
【0089】
組織病理学
全器官固定液中で固定した膀胱を切片化し、組織学的検査のためにヘマトキシリン-エオシンで染色した。
【0090】
結果
前記実験の結果は以下のとおりに要約されうる。
【0091】
4% ポロキサマー407(Pluronic 127)での5分間の膀胱の前処理は<5%の形質導入をもたらした。
【0092】
リポフェクタミンとウイルスとの混合物(前処理無し)での膀胱の処理は<5%の形質導入をもたらした。
【0093】
In vivo geneSHUTTLE(商標)とウイルスとの混合物(前処理無し)での膀胱の処理は<5%の形質導入をもたらした。
【0094】
0.1% オキシクロロセンでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の>90% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、無傷上皮層を伴う軽度の粘膜下浮腫を示した。
【0095】
0.2% オキシクロロセンでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の>90% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、最小限度の粘膜下浮腫および血管周囲リンパ球を示した。
【0096】
0.2% オキシクロロセンでの15分間の膀胱の前処理は尿路上皮の>90% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、粘膜下組織における化膿性滲出物、出血および浮腫を伴う限局性(focal)の重度の潰瘍形成を示した。
【0097】
0.4% オキシクロロセンでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の>90% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、限局性の大きな潰瘍を伴う中等度の粘膜下浮腫を示した。
【0098】
0.02% ポリドカノールでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の10〜20% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は無傷粘膜を示した。
【0099】
0.05% ポリドカノールでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の30〜40% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、最小限度の粘膜下浮腫を示した。
【0100】
0.2% ポリドカノールでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の50〜80% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、びらんおよび限局性潰瘍ならびに粘膜障害を示した。
【0101】
0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシドでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の50〜80% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、有意な病変を示さなかった。
【0102】
0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシドでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の>90% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、有意な病変を示さなかった。
【0103】
0.2% n-ドデシルβ-D-マルトシドでの5分間の膀胱の前処理は尿路上皮の>90% 形質導入をもたらした。病理学者の報告は、びらん、限局性潰瘍、中等度の粘膜下浮腫および粘膜障害を示した。
【0104】
0.2% ドデシルベンゼンスルホン酸での5分間の膀胱の前処理は、尿路上皮の20〜40% 形質導入をもたらした。
【0105】
前記の結果から理解されうるとおり、最終的な青色染色(LacZ)のレベルによる測定で、いくつかの単一化合物および1つの混合試薬が形質導入の有意な増強を示した。いくつかの他の単一化合物は形質導入の増強をもたらしたものの、そのレベルはより低かった。各被検化学物質の正当性を実証するために、参照体としてのエタノールでの前処理を行った。30%ものエタノール率であっても、僅か10〜20%の形質導入が観察されたに過ぎなかった。「強い反応体」は、10〜20%染色を示すエタノール前処理対照より有意に良好な(すなわち、70〜90%)染色を示す形質導入増強剤であった。弱い反応体は、エタノール対照群と比較して有意に小さな染色面積を示した。
【0106】
0.02%〜0.5%ポリドカノール、0.02〜0.5% n-ドデシル-b-D-マルトシド、0.1% 6-シクロヘキシルヘキシル-b-D-マルトシド、0.1%〜0.4% オキシクロロセン、0.2% ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムでの膀胱表面の前処理後に最強の反応(すなわち、最高レベルの形質導入)が観察された。
【0107】
「弱い反応体」には、0.1% デシル-b-D-マルトシドおよび0.1% Triton(登録商標)X-100が含まれた。
【0108】
理論により束縛されることを望むものではないが、満足しうる結果を与えた形質導入増強試薬の物理的および化学的特性を分析することにより、作用メカニズムを仮定することが可能である。形質導入増強試薬は一般には界面活性剤である。界面活性剤はイオン性または非イオン性でありうる。界面活性剤は、好ましくは、親水性および親油性の両方の部分を有する。該分子の親水性部分は水溶性に寄与し、親油性(すなわち、疎水性)部分は脂質との分子相互作用を助ける。親水性/親油性バランス、すなわち、HLB比は、該分子の各部分の相対サイズの指標である。
【0109】
糖に基づく界面活性剤(糖類)
本発明の形質導入増強剤は、親油性置換基を有する糖(例えば、単糖、二糖または多糖)でありうる。形質導入増強剤は、親油性置換基を有する任意の単糖、二糖または多糖でありうる。本発明の好ましい実施形態においては、形質導入増強剤は、親油性置換基を有する二糖である。典型的な二糖には、マルトースまたはスクロースが含まれる。しかし、ラクトース、イソマルトース、トレハロースまたはセロビオースを含む、親油性置換基を有する他の二糖も使用されうる。
【0110】
親油性置換基は、直鎖状(例えば、直鎖状n-アルカンまたはアルケン)または非直鎖状(例えば、環状または分枝アルカンまたはアルケン)でありうる。また、親油性置換基はアルカン酸残基でありうる。親油性置換基の長さは、所望の親水性-親油性バランスが達成されるよう様々の長さとなりうる。種々のマルトシド置換化合物に関する試験は、十分な親油性基の長さが形質導入効率の改善をもたらすことを示した。例えば、n-ドデシル-β-D-マルトシドおよび6-シクロヘキシルヘキシル-β-D-マルトシドは共に、形質導入を有意に増強した。これに対して、n-デシル-β-D-マルトシドは形質導入に対して僅かな効果しかもたらさなかった。
【0111】
n-ドデシル-β-D-マルトシドでの膀胱の前処理に関する結果を図25〜29に示す。図25Aは、0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図25Bおよび25Cは、図25Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図25Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図25Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図26Aは、0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図26Bおよび26Cは、図26Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図26Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図26Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図27Aは、0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図27Bおよび27Cは、図27Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図27Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図27Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図28Aは、0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図28Bおよび28Cは、図28Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図28Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図28Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図29Aは、0.2% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図29Bおよび29Cは、図29Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図29Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図29Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0112】
n-ドデシル-β-D-マルトシドおよびn-デシル-β-D-マルトシドの化学式を以下に示す。
【化7】

【0113】
(式中、nはそれぞれ11および9である)。6-シクロヘキシルヘキシル-β-D-マルトシドの化学式は以下のとおりである。
【化8】

【0114】
(式中、nは6である)。
【0115】
形質導入実験は、親油性側鎖(すなわち、CH2-CH2)サイズにおける僅かな減少が、形質導入の増強に関する該分子の効力を大きく抑制しうることを示した。前記化合物のすべては水中およびPBSバッファー中の両方において良好な溶解度を有することに注目することが重要である。
【0116】
より短い親水性部分を有するこのクラスの界面活性剤における化合物も評価した。n-ドデシル-β-D-グルコピラノシドに関する結果は形質導入の増強をほとんど又は全く示さなかった。n-ドデシル-β-D-グルコピラノシドの化学式は以下のとおりである。
【化9】

【0117】
(式中、nは11である)。理論により束縛されることを望むものではないが、分子の親水性および親油性部分の相対サイズは形質導入の増強に影響を及ぼすらしい。したがって、より短い鎖のn-アルキル-β-D-グルコピラノシド(例えば、n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド)は形質導入の改善を示しうる。
【0118】
親油性置換基を有する任意の単糖、二糖または多糖を本発明の形質導入増強剤として使用することが可能である。典型的な二糖化合物には、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロースおよびセロビオースが含まれる。親油性置換基は、好ましくは、アルキルまたはアルケニル基を含む。本発明の好ましい実施形態においては、親油性置換基はアルカン酸残基である。
【0119】
単糖および二糖のβ形態が前記に示されているが、これらの及び他の単糖、二糖または多糖化合物のα形態も本発明において使用することが可能である。本発明の典型的なα糖形質導入増強剤には、n-ドデシル-α-D-マルトシド、n-ヘキシル-α-D-グルコピラノシドおよび6-シクロヘキシルヘキシル-α-D-マルトシドが含まれる。また、DまたはL形態の単糖、二糖または多糖を本発明の形質導入増強剤として使用することが可能である。
【0120】
図31A〜31Eは、種々の長さのアルキル側鎖を有するアルキルマルトシドおよびアルキルマルトピラノシド前処理剤で処理されたマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図31Aは、Ad-LacZ(109 vp)の感染の前にn-ドデシル-β-D-マルトシド(C12アルキル側鎖)で処理されたマウス膀胱の内腔表面の写真である。図31Bは、感染の前にトリデシル-β-D-マルトピラノシド(C13アルキル側鎖)で処理されたマウス膀胱の内腔表面の写真である。図31Cは、感染の前にn-テトラドデシル-β-D-マルトシド(C14アルキル側鎖)で処理されたマウス膀胱の内腔表面の写真である。図31Dは、感染の前にn-デシル-β-D-マルトシド(C10アルキル側鎖)で処理されたマウス膀胱の内腔表面の写真である。図31Eは、感染の前にn-オクチル-β-D-マルトピラノシド(C8アルキル側鎖)で処理されたマウス膀胱の内腔表面の写真である。
【0121】
イオン性アルキル界面活性剤
本発明の形質導入増強化合物として、イオン性アルキル界面活性剤を使用することも可能である。典型的なイオン性アルキル界面活性剤には、
【化10】

【0122】
により表される式を有するドデシル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0123】
もう1つの典型的なイオン性界面活性剤は、
【化11】

【0124】
により表される化学式を有するドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩である。
【0125】
前記のタイプの界面活性剤を評価したところ、それらは、前記の非イオン性試薬と比較して形質導入の増強を示すことが判明した。これらの結果は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩に関しては、図30に示されている。図30A〜30Cから理解されうるとおり、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩はマウス膀胱におけるAd-LacZの形質導入を増強した。図30Aは、デデシルベンゼンスルホン酸溶液の0.2%ナトリウム塩での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図30Bおよび30Cは、図30Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図30Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図30Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0126】
図32A〜32Cは、種々の長さのアルキル側鎖を有するアルキル硫酸ナトリウム前処理剤で処理されたマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図32Aは、Ad-LacZ(109 vp)の感染の前にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(C12アルキル側鎖)で処理された膀胱の内腔表面を示す。図32Bは、感染の前にデシル硫酸(C10アルキル側鎖)で処理された膀胱の内腔表面を示す。図32Cは、感染の前にオクチル硫酸ナトリウム(C8アルキル側鎖)で処理された膀胱の内腔表面を示す。
【0127】
イオン性アルキル界面活性剤は2つの部分(親水性部分および親油性部分)よりなる。該分子のこれらの部分の配置は、前記の糖に基づく増強剤に類似している。本発明においては、前記のものに類似しておりアルキル置換における変更を伴う化合物も使用することが可能である。
【0128】
アルキル(エーテル)アルコール
また、本発明においては、形質導入増強化合物としてアルキルエーテル化合物を使用することが可能である。ポリドカノール、すなわち、化学式:

および分子式:C30H62O10を有するアルキルエーテルを評価した。該評価において使用したポリドカノールはThesit(登録商標)(これはDesitin-Werk, Carl Klinke GmbH, Hamburg, Germanyの登録商標である)の名称で販売されている。ポリドカノールには、ポリエチレングリコールドデシルエーテル[9002-92-0]、ラウリルアルコールおよびマクロゴールラウリルエーテルのようないくつかの他の化学名が存在する。
【0129】
種々の濃度のポリドカノールでの膀胱表面の前処理に関する結果を図19〜24に示す。0.02% ポリドカノールでの膀胱表面の前処理に関する結果を図19および20に示す。図19Aは、0.02% ポリドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図19Bおよび19Cは、図19Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図19Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図19Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図20Aは、0.02% ポリドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図20Bおよび20Cは、図20Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図20Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図20Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0130】
0.05% ポリドカノールでの膀胱表面の前処理に関する結果を図21および22に示す。図21Aおよび21Bは、0.05% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す写真である。図21Cおよび21Dは、図21Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図21Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図21Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図22Aおよび22Bは、0.05% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す写真である。図22Cおよび22Dは、図22Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図22Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図22Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0131】
0.2% ポリドカノールでの膀胱表面の前処理に関する結果を図23および24に示す。図23Aは、0.2% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図23Bおよび23Cは、図23Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図23Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図23Cは100倍の倍率で撮影されたものである。図24Aは、0.2% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図24Bおよび24Cは、図24Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図24Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図24Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0132】
一般式:
【化12】

【0133】
(式中、x = 10)を有するTriton(登録商標)X-100も評価したところ、それも形質導入を増強することが判明した。ベンゼン環ではなくシクロヘキサン環を有する類似化合物も本発明の形質導入増強剤として使用されうる。この化合物は以下の化学構造:
【化13】

【0134】
(式中、x = 10)を有する。xが任意の正の整数である前記タイプの化合物も本発明において使用されうる。
【0135】
一般構造:
【化14】

【0136】
を有する同様のアルキル(エーテル)化合物も商業的に入手可能である。これらの化合物の商品名は「Brij」である。前記に示した化合物は「Brij 56」と称される。Brij 56は化学式C20H42O5を有する。もう1つの商業的に入手可能な化合物「Brij 58」は化学式C56H114O21を有する。
【0137】
前記の任意のアルキル(エーテル)化合物が本発明の形質導入増強剤として使用されうる。
【0138】
オキシクロロセンナトリウム
約6.5〜6.9のpHの、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩と次亜塩素酸とを含む組成物(すなわち、オキシクロロセンナトリウム)を評価した。これらの評価において使用したオキシクロロセンナトリウムはClorpactin WCS-90の名称で販売されていた(Guardian Labsにより製造され、Cardinal Healthにより販売されていた)。オキシクロロセンナトリウムは、尿路感染症の治療ならびに腹部および形成手術において使用されている。
【0139】
オキシクロロセンナトリウムでの膀胱表面の前処理に関する結果を図8〜18に示す。図8A〜8Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真である。図8Aおよび8Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Cおよび8Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Eおよび8Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Gおよび8Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Iおよび8Jは第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Kおよび8Lは第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Mおよび8Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【0140】
図9A〜9Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真である。図9Aおよび9Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Cおよび9Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Eおよび9Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Gおよび9Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Iおよび9Jは、第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Kおよび9Lは、第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Mおよび9Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【0141】
図10Aおよび10Bは、それぞれ図8Cおよび8Iのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図11Aおよび11Bは、それぞれ図9Cおよび9Iのマウス膀胱の横断面を示す写真である。
【0142】
図12A〜12Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の3つのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図12Aおよび12Bは、第1マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図12Cおよび12Dは、第2マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図12Eおよび12Fは、第3マウス膀胱の横断面を示す写真である。図12A、12Cおよび12Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図12B、12Dおよび12Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0143】
図13A〜13Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の3つのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図13Aおよび13Bは、第1マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図13Cおよび13Dは、第2マウス膀胱の横断面を示す写真であり、図13Eおよび13Fは、第3マウス膀胱の横断面を示す写真である。図13A、13Cおよび13Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図13B、13Dおよび13Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0144】
図14Aは、0.1% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図14Bおよび14Cは、図14Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図14Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図14Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0145】
図15Aは、0.2% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図15Bおよび15Cは、図15Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図15Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図15Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0146】
図16Aは、0.2% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図16Bおよび16Cは、図16Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図16Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図16Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0147】
図17Aは、0.4% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図17Bおよび17Cは、図17Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図17Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図17Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0148】
図18Aは、0.4% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図18Bおよび18Cは、図18Aのマウス膀胱の横断面を示す写真である。図18Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図18Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【0149】
親水性単位と親油性単位とを交互に有する重合体
交互または同一の単量体の反復配列を含む重合性化合物も試験した。試験した1つのそのような化合物は、以下の式:
【化15】

【0150】
により表される構造を有するポロキサマー407(Pluronic 127)であった。
【0151】
広範囲のHLB値のポロキサマー重合体が得られる。しかし、試験した化合物の両方は、アデノウイルスの形質導入に対して最小限の効果しか有していなかった。理論により束縛されることを望むものではないが、分離した、より長い親水性鎖および親油性鎖を有する化合物は、膀胱上皮の形質導入の増強において、より有効であると考えられる。
【0152】
追加的な形質導入増強化合物
本発明の形質導入増強剤として、追加的な化合物も使用されうる。
【0153】
これらの化合物には、
【化16】

【0154】
により表される構造を有するω-ウンデシレニル-β-D-マルトピラノシドが含まれる。
【化17】

【0155】
により表される一般構造を有するアルキル-β-D-チオグルコピラノシドのような、糖に基づくチオール性化合物も使用されうる。
【0156】
また、
【化18】

【0157】
により表される一般構造を有するアルキル-β-D-チオマルトピラノシドも本発明の形質導入増強化合物として使用されうる。
【0158】
さらに、
【化19】

【0159】
のような正電荷を有する化合物も使用されうる。
【0160】
また、親油性部分と親水性部分とがカルボキシル結合を介して連結された化合物も使用されうる。このタイプの典型的な化合物は6-O-メチル-n-ヘプチルカルボキシル-α-D-グルコピラノシド:
【化20】

【0161】
である。
【0162】
側鎖または他の修飾を伴うアルキル基を有する、糖に基づく化合物も使用されうる。このタイプの典型的な化合物には、
【化21】

【0163】
により表される構造を有する2-プロピル-1-ペンチル-β-D-マルトピラノシドが含まれる。本発明の形質導入増強剤として、サルコシン化合物も使用されうる。典型的なサルコシン化合物には、
【化22】

【0164】
により表される構造を有するアルキルサルコシンナトリウムが含まれる。
【0165】
種々の置換糖も形質導入増強化合物として使用されうる。形質導入増強化合物として使用されうる典型的な置換糖は、
【化23】

【0166】
により表される化学構造を有するスクロースモノアルキルエステルである。このタイプの典型的な化合物には、n = 10である化合物(すなわち、スクロースモノラウラート)が含まれる。
【0167】
本発明においては、膀胱の内腔表面を治療する方法を提供する。本発明の好ましい実施形態においては、膀胱カテーテル挿入を用いる点滴により膀胱を処理する。この実施形態においては、まず、膀胱内の尿を除去し、所望により、膀胱をバッファー(例えば、PBS)で洗浄する。ついで、形質導入増強剤を含む組成物を膀胱の内腔表面に(例えば、点滴により)適用する。該形質導入増強溶液を或る所定時間にわたりインキュベートし、または直ちに排出させることが可能である。形質導入増強剤を含む組成物での多重処理を行うことが可能である。形質導入増強剤での処理の後、膀胱の内腔表面をバッファー(例えば、PBS)で洗浄することが可能である。ついで、アデノウイルスを含む溶液を(例えば、点滴により)膀胱内に導入することが可能である。該アデノウイルス含有溶液は直ちに除去することが可能であり、あるいは該溶液を或る時間にわたりインキュベートすることが可能である。アデノウイルスでの処理の後、膀胱表面をバッファー溶液(例えば、PBS)で再び洗浄することが可能である。本発明の好ましい実施形態においては、各処理ごとに、約50〜約500mlの形質導入増強組成物を点滴により膀胱に運搬する。
【0168】
あるいは、形質導入増強剤とアデノウイルスとを含む組成物を使用して内腔膀胱表面を処理することが可能である。本発明のこの実施形態においては、まず、膀胱内の尿を除去し、ついで所望により、膀胱をバッファー(例えば、PBS)で洗浄する。ついで、形質導入増強剤とアデノウイルスとを含む組成物を膀胱の内腔表面に適用する。該溶液を或る所定時間にわたりインキュベートし、または直ちに排出させることが可能である。処理後、膀胱の内腔表面を再びバッファー(例えば、PBS)で洗浄することが可能である。
【0169】
リン酸緩衝食塩水(PBS)が好ましいバッファーであるが、本発明においては任意の他の医薬用バッファーを使用することが可能である。典型的なバッファーには、リン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、Trisバッファー、グリシンバッファー、無菌水、および当技術分野で公知の他のバッファー、例えば、Goodら, Biochemistry 5, 467 (1966) に記載のものが含まれる。バッファーのpHは6.4〜8.4、好ましくは、7〜7.5、最も好ましくは、7.2〜7.4の範囲でありうる。
【0170】
本発明の形質導入増強剤を含む組成物は、好ましくは、酸化剤をも含む。典型的な酸化剤には、亜塩素酸塩化合物、次亜塩素酸、過酸化水素およびペルオキシ酢酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の好ましい実施形態においては、単一化合物形質導入増強剤のいずれかを酸化剤と組合せ、形質導入剤として使用することが可能である。
【0171】
前記のとおり、ウイルス遺伝子治療ビヒクルは、腫瘍細胞崩壊性ウイルス、例えば、本明細書中ではCG8840により例示される腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスでありうる。該アデノウイルス組成物は更に、ドセタキセルのような化学療法剤を含みうる。該アデノウイルス組成物は、好ましくは、約1×1011〜約1×1014個のウイルス粒子を含む。
【0172】
種々の追加的な研究を行った。それらを以下に記載する。これらの研究においては、記載されているすべてのパーセント値は、特に示さない限り、重量パーセント値である。
【0173】
マウス膀胱尿路上皮への感染力に対する種々の濃度のドデシル-β-D-マルトシドを含有するアデノウイルス製剤の効果
種:
雌Balb/cマウス(Taconic Laboratory)-2匹/群
研究目的:
種々の濃度のドデシル-β-D-マルトシドと共にAd-βgalを製剤化する効果およびマウス膀胱上皮への生じる感染力を試験すること。
【0174】
用量/経路(ウイルス粒子数/用量):
1×1010 vp/用量のAd.CMV.LacZ (Lot# 1351.122)。
【0175】
0.4%、0.2%、0.1%および0.05%のn-ドデシル-β-D-マルトシド(Lot# 100K5308)。
【0176】
膀胱内への点滴の直前に、等容量の2×DDMおよび2×Ad.CMV.LacZを混合した。100μlの該混合物を10分間、20分間および45分間、膀胱内に点滴した。
【0177】
終点(エンドポイント):
0.1mlの全器官固定液(2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS, pH 7.4)を使用してウイルス感染の48時間後に膀胱を回収した。
【0178】
結果:
種々の濃度のドデシル-β-D-マルトシドと共にAd-βgalウイルスを製剤化することにより、直線的なアデノウイルス形質導入率が得られた(0.1% > 0.05%> 0.025%)。20分間の点滴では、Ad-βgalウイルスと共に製剤化した0.1% DDMは膀胱内で約80%の遺伝子発現をもたらし、一方、0.05% DDMは約40%の遺伝子発現をもたらした。しかし、45分間の点滴では、Ad-βgalウイルスと共に0.05%〜0.2% DDMで処理されたすべての動物はマウス膀胱内で100%の遺伝子発現を示した。しかし、この製剤化方法における10分間の点滴は、許容しうる形質導入率を達成しなかった。また、DDM前処理の後では、10分間のウイルス点滴で遺伝子形質導入が達成されうることが判明した。
【0179】
この研究は、マウス膀胱モデルにおいて、DDMがAd-βgalウイルスと共に製剤化されうることを示している。さらに、DDM前処理を行えば、ウイルス点滴のための時間が45分間から10分間に短縮されうる。
【0180】
アデノウイルスによるマウス膀胱尿路上皮への感染力に対する種々の希釈剤の効果
種:
雌Balb/cマウス(Taconic Laboratory)-2匹/群
研究目的:
DDM前処理の後のマウス膀胱尿路上皮へのアデノウイルス感染力に対する種々の希釈剤の効果を試験すること(QQ5minQ)。マウス膀胱内への45分間の点滴の前に、該ウイルスを希釈剤で100倍希釈する。
【0181】
用量/経路:
1×109 vp/用量のAd.CMV.LacZ (Lot# 1351.122)。
【0182】
ドデシル-β-D-マルトシド(Lot# 100K5308)。
【0183】
希釈剤(A):0.9% 食塩注射液(Baxter Lot# 1A1322)、(B)2.5% デキストロースおよび0.45% 食塩注射液(Baxter Lot# C529040)、および(C)Plasma-lyte A注射液pH7.4(Baxter Lot# C558106)、およびARCAバッファー。
【0184】
終点:
0.1mlの全器官固定液(2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS, pH 7.4)を使用してウイルス感染の48時間後に膀胱を回収した。
【0185】
結果:
種々の希釈剤で希釈されたウイルスが投与されたマウス膀胱間でAd-βgal遺伝子発現レベルにおける有意な相違は認められなかった。それらの動物はすべて、マウス膀胱内での> 90%のAd-βgal遺伝子発現を示した。
【0186】
SDラット膀胱上皮上に種々の化学物質で前処理を行った場合のアデノウイルス用量力価測定
種:
雌Female Sprague Dawley(Taconic Laboratory)- 2/群。
【0187】
研究目的:
SDSまたはDDMでの前処理の後の種々の用量のアデノウイルスによるラット膀胱上皮へのウイルス感染力を試験すること。この研究は、アデノウイルス感染力のためのSDSまたはDDMの残留と膀胱容積との関係も調べた。
【0188】
用量/経路:
4×109および4×1010 vp/用量のAd.CMV.LacZ (Lot# 1351.122)。
【0189】
0.1% ドデシル-β-D-マルトシド(Lot# 100K5308)。
【0190】
0.1% SDS(Integra Lot# 836011およびLot# BK14J11)。
【0191】
400μlのSDSまたはDDMを膀胱内に点滴し(QQ5minQ)、ついでPBSで6回洗浄し、ついでアデノウイルスを15分間点滴した。
【0192】
終点:
0.2mlの全器官固定液(2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS, pH 7.4)を使用してウイルス感染の48時間後に膀胱を回収した。
【0193】
結果:
異なるロットのSDSおよびDDMで前処理されたラット膀胱間にAd-βgal遺伝子発現レベルにおける有意な相違は認められなかった。4×1010 vpアデノウイルスに感染したラット膀胱は > 90%のAd-βgal遺伝子発現レベルを達成し、一方、4×109 vpアデノウイルスに感染したラット膀胱は30%〜50%の範囲のAd-βgal遺伝子発現レベルを示した。ラット膀胱は、マウス膀胱と比較して、同様のAd-βgal遺伝子発現レベルを達成するには10倍多くのアデノウイルスを必要とすることが判明した。SDSおよびDDM前処理は共に、膀胱上皮のGAG層を除去するのに有効であった。
【0194】
マウス膀胱尿路上皮へのアデノウイルス感染の前の前処理剤としてのドデシル-β-D-マルトシドの効力
種:
雌Balb/cマウス(Taconic Laboratory)-2匹/群
研究目的:
マウス膀胱尿路上皮へのアデノウイルス感染を増強する前処理剤として、2つの異なる供給業者からのDDMを、大きな動物群において試験すること。
【0195】
用量/経路:
1×1010 vp/用量のAd.CMV.LacZ (Lot# 1351.122)。
【0196】
ドデシル-β-D-マルトシド(Lot # 018H7250およびLot # P21/39/092)。
【0197】
100μlのDDMを膀胱内に点滴し(QQ5minQ)、ついでPBSで6回洗浄し、ついでアデノウイルスを15分間点滴した。
【0198】
終点:
50μlの全器官固定液(2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS, pH 7.4)を使用してウイルス感染の48時間後に膀胱を回収した。
【0199】
結果:
これらの2つの異なるロットのDDMで前処理されたマウス膀胱間でAd-βgal遺伝子発現レベルにおける有意な相違は認められなかった。各場合において、> 90%のAd-βgal遺伝子発現が達成された。したがって、製造業者からのDDMは、マウス膀胱におけるアデノウイルス感染の化学増強剤の良好な候補である。
【0200】
マウスにおけるSW780+Luc正所性膀胱腫瘍モデルへのアデノウイルス感染の前に使用する化学増強剤としてのドデシル-β-D-マルトシドの効力
種:
雌NCR nu/nuマウス(Taconic Laboratory)- 2匹/群。
【0201】
研究目的:
DDM前処理がマウス膀胱尿路上皮におけるAd.Lac Z感染力を増強することを示すこと。正所性腫瘍に対する増強効果を更に確認するために、正所性SW780膀胱腫瘍を担持する2匹のマウスを、DDMで前処理した後または前処理無しで、15分間のAd.LacZの点滴に付した。これらの腫瘍細胞において、Ad.LacZ感染の4日後にAd.LacZ遺伝子発現レベルを調べた。
【0202】
用量/経路:
1x1010 vp/用量のAd.CMV.LacZ Lot# 1351.122。
【0203】
ドデシル-β-D-マルトシド(Lot#018H7250)。
【0204】
100μlのDDMを膀胱内に点滴し(QQ5minQ)、ついでPBSで3回洗浄し、ついでアデノウイルスを15分間点滴した。
【0205】
終点:
50μlの全器官固定液(2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS, pH 7.4)を使用してウイルス感染の96時間後に膀胱を回収した。
【0206】
結果:
DDMで前処理されたマウス膀胱と対照動物との間でAd-βgal遺伝子発現レベルにおける有意な相違が認められた。DDM前処理を行わなかった場合には、膀胱上皮細胞および腫瘍細胞において非常に低いAd-βgal遺伝子発現レベルが認められた。DDM前処理を行った場合には、該上皮細胞のほぼ100%が、死んだ壊死腫瘍細胞以外の膀胱腫瘍内へのAd-βgal遺伝子の形質導入を示した。DDM前処理は正所性腫瘍細胞におけるアデノウイルス感染を増強すると結論づけた。
【0207】
マウス膀胱尿路上皮へのアデノウイルス感染の前に使用する前処理剤としての、種々の長さのアルキル側鎖および種々のタイプの糖分子を有するDDMおよびSDS亜群化合物の試験
種:
雌Balb/cマウス(Taconic Laboratory)-3〜2匹/群。
【0208】
研究目的:
種々の長さのアルキル側鎖および種々の糖分子を含有するドデシル-β-D-マルトシド(DDM)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)亜群に属するいくつかの化合物を、マウス膀胱上皮へのアデノウイルス感染を増強するための前処理剤として試験した。すべての化合物を0.1%濃度でPBSに溶解した。
【0209】
用量/経路:
1×109 vp/用量のAd.CMV.LacZ(Lot #1351.122)。
【0210】
0.1% ドデシル-β-D-マルトシド(Lot #P21/39/092)および0.1% SDS(Lot #101K0036)はこの研究の陽性対照であった。
【0211】
種々の化学物質での前処理の後(QQ5minQ)、100μlのAd-βgalウイルスを膀胱内投与により膀胱内に15分間点滴した。
【0212】
終点:
50μlの全器官固定液(2%ニュートラル(Neutral)緩衝ホルマリン、2%グルタルアルデヒド、2mM MgCl2、10 mM PBS, pH 7.4)を使用してウイルス感染の48時間後に膀胱を回収した。
【0213】
結果:
DDM亜群化合物では、C12より長いアルキル側鎖を有する化合物が、最良の増強能を示した。C8、C10、C12、C13およびC14アルキル側鎖を有するDDM亜群化合物を評価した。SDS亜群化合物では、C12より短いアルキル側鎖長を有する化合物が、非常に低いAd-βgal遺伝子発現レベルを示した。C8、C10およびC12アルキル側鎖を有するSDS亜群化合物を評価した。
【0214】
スクロースモノラウラート以外では、糖分子のタイプは前処理増強剤としてのこれらの化合物の効力に有意な影響を及ぼさないようであった。理論により束縛されることを望むものではないが、現在入手可能なデータに基づけば、二糖鎖がアデノウイルス感染力を増強しうると本発明者らは考えている。
【0215】
パイロット効力研究:マウスにおけるSW780+Luc正所性膀胱腫瘍モデルでのCG8840処理
種:
雌NCR nu/nuマウス(TaconicまたはSimonsen Laboratory)- CG8840には6匹/群およびCG7840には3匹/群。
【0216】
研究目的:
膀胱特異的腫瘍細胞崩壊性ウイルスCG8840の効力を前立腺特異的腫瘍細胞崩壊性ウイルスCG7870と共に試験すること。CG8840には2つの処理法(1×1010および1×108 vp/用量)を用いた。CG7870には1つの処理法(1x1010 vp/用量)を用いた。1用量のウイルスを連続3週間にわたり毎週、膀胱内に運搬した。
【0217】
用量/経路:
100万個のSW780+Luc細胞クローン#19(P4)。
【0218】
CG8840 Lot# 1408.190; CG7870 (Lot # 38.145)。
【0219】
0.1% ドデシル-β-D-マルトシド(Lot #018H7250)。
【0220】
0.2μMフィルターで濾過したPBS中、15mg/ml ルシフェリン(Xenogen cat# XR-1001)基質溶液を調製した。
【0221】
120μlの1×107細胞/ml SW780+luc細胞を各チューブ内にアリコート化し、点滴前に氷中に維持した。各マウス膀胱ごとに1アリコート。
【0222】
終点:
マウス膀胱の生イメージを10週間にわたり毎週行った。ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色およびヒトサイトケラチン染色を、それらの入手可能な膀胱および腎臓サンプル上で行った。
【0223】
結果:
CG8840(1×1010 vp/用量)処理マウスおよび対照動物(CG7870処理群およびウイルス非処理群)の間で腫瘍体積の減少における有意な相違が認められた。1×1010 vp/用量のCG8840で処理された6匹中3匹のマウスが、第2用量の点滴の後に完全な腫瘍退縮を示し、該研究の終了時(第10週)まで無腫瘍状態を維持した。ヒトサイトケラチン染色は、それらのマウス膀胱内に腫瘍細胞が存在しないことを示した。1×108 vp/用量のCG8840の効力は有意ではなく、5匹中1匹のマウスが第5週に不完全な腫瘍退縮を示し、終了時まで腫瘍を維持した。腎臓への腫瘍転移は、腫瘍担持マウスの生存に対する重大な脅威である。腎臓転移を伴うマウスはいずれも、たとえ膀胱腫瘍が無くなったとしても、間もなく死亡するであろう。
【0224】
マウスにおけるSW780+Luc正所性膀胱腫瘍モデルでのCG8840処理
種:
雌NCR nu/nuマウス(Taconic Laboratory)- 10匹/群。
【0225】
研究目的:
この研究は、膀胱腫瘍に対する膀胱特異的腫瘍細胞崩壊性ウイルスCG8840処理法の効力を観察するために計画した。CG8840ウイルスを膀胱内投与により膀胱内にそれぞれ15分間および30分間点滴した。腎臓腫瘍転移を軽減するために、SW780腫瘍細胞移植中に以下の2つの異なるDDM前処理法を試験した:(1)0.1% DDM QQ5minQ、および(2)0.1% DDM Q10min。
【0226】
用量/経路:
100万個のSW780+Luc細胞クローン#19(P4)。
【0227】
CG8840 Lot# 1408.190。0.1% ドデシル-β-D-マルトシド(Lot #018H7250)。
【0228】
0.2μMフィルターで濾過したPBS中、15mg/ml ルシフェリン(Xenogen cat# XR-1001)基質溶液を調製した。
【0229】
90μlの1.1×107細胞/ml SW780+luc細胞を各チューブ内にアリコート化し、点滴前に氷中に維持した。各マウス膀胱ごとに1アリコート。
【0230】
終点:
マウス膀胱の生イメージを8週間にわたり毎週行った。ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色およびヒトサイトケラチン染色を、それらの入手可能な膀胱および腎臓サンプル上で行った。
【0231】
結果:
CG8840(15分間および30分間のウイルス処理)処理マウスおよび対照動物の間で腫瘍体積の減少における有意な相違が認められた。特に、15分間のウイルス処理を行った9匹中7匹のマウスは第1ウイルス処理の後に有意な腫瘍体積減少を示した。それらのうちの5匹は該研究の終了時まで無腫瘍であった。3週連続して注入される、1×1010 vp/用量の3用量でのCG8840処理は、マウス膀胱内の正所性SW780腫瘍を根絶するのに非常に有効であることが判明した。しかし、より長い点滴時間(すなわち、15分間を超える)は腫瘍細胞内のウイルスコピー数を増加させないらしい。
【0232】
SW780腫瘍細胞移植、0.1% DDM前処理(Q10min洗浄を伴う)では、正所性腫瘍を有するマウスにおける、より軽微な腎臓腫瘍転移が観察された。
【0233】
種々の試薬とのアデノウイルスの適合性を確認するために、種々の追加的な研究を行った。これらの研究を以下に記載する。
【0234】
研究#1 - エタノールおよび尿とのAd5-LacZの適合性
この研究においては、各サンプルを37℃で1時間インキュベートした後、プラークアッセイを開始した。この研究のデータを以下の表3に示す。
【表3】

【0235】
このデータは、生物学的温度における尿、5%エタノールまたはARCAとのインキュベーションの後にAd-LacZがその活性を喪失しないことを示している。しかし、40% エタノールは該ウイルスのほとんどを不活化した。
【0236】
研究#2:エタノールとのAd5-LacZの適合性
この研究では、各サンプルを37℃でインキュベートした後、プラークアッセイを開始した。この研究のデータを以下の表4に示す。
【表4】

【0237】
前記結果は、より高い濃度のエタノール(すなわち、> 10%)が部分的ないし完全なアデノウイルス不活化を引き起こすことを示している。
【0238】
研究#3 - 選択された増強剤とのアデノウイルスの適合性
この研究では、各サンプルを37℃または25℃でインキュベートした後、プラークアッセイを開始した。この研究のデータを以下の表5に示す。
【表5】

【0239】
前記データから理解されうるとおり、ドデシルマルトシドおよびポリドカノールは該実験条件下でアデノウイルスに適合性であり、一方、オキシクロロセンは、インキュベーションの温度および時間の増加により、該ウイルスを不活化しうる。
【0240】
研究#4 - デドシル硫酸ナトリウム(SDS)によるアデノウイルスの分解
種々の濃度のSDS中、37℃で15〜30分間インキュベートしたアデノウイルスのサンプルに対して、一連の実験を行った。得られた材料を陰イオン交換クロマトグラフィーにより検査した。0.025% SDS以上のSDS濃度は該ウイルスを迅速に分解することが確認された。0.0125%のSDSは、30分間のインキュベーションの後のAEX法によっては該粒子の質または量を低下させなかった。
【0241】
研究#5 - ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)によるアデノウイルスの分解
この研究においては、アデノウイルス(Ad-LacZ)調製物(1.0×1012 vp/ml)をSDSまたはDDMの溶液と混合して、アデノウイルスとこれらの界面活性剤のそれぞれとの混合物を得た。混合の結果、SDSまたはDDMの最終濃度は0.1%となり、該ウイルスは5.0×1011 vp/mlとなった。これらのサンプルを25℃または37℃で1時間インキュベートした後、凍結した。それらをプラークアッセイ分析のためにアッセイサービス業者に送った。この研究の結果を以下の表6に示す。
【表6】

【0242】
この実験は、上昇温度でのSDS溶液へのアデノウイルスの相対的に短い暴露が該ウイルスを不活化することを証明した。一方、DDM溶液はアデノウイルスに対して有害な影響を及ぼさなかった。
【0243】
以下の表(表7)は、典型的な前処理剤の形質導入効率を要約する。表7においては、形質導入効率は以下のとおりに定義される:「0」は0〜10%の形質導入効率を意味する;「+」は10〜25%の形質導入効率を意味する;「++」は25〜50%の形質導入効率を意味する;「+++」は50〜75%の形質導入効率を意味する;「++++」は > 75%の形質導入効率を意味する。
【表7】

【0244】
前記の説明は、例示目的として記載した具体例により本発明の原理を教示しているが、本発明の真の範囲から逸脱することなく形態および詳細における種々の変更が施されうることが、この開示の解釈から当業者に理解されるであろう。
【0245】
本明細書中に引用されているすべての刊行物の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1−1】図1Aおよび1Bは、15% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真であり、図1Aは膀胱の外表面を示し、図1Bは内腔膀胱表面を示す。図1Cおよび1Dは、20% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真であり、図1Cは膀胱の外表面を示し、図1Dは内腔膀胱表面を示す。
【図1−2】図1Eおよび1Fは、25% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真であり、図1Eは膀胱の外表面を示し、図1Dは内腔膀胱表面を示す。図1Gおよび1Hは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱を示す写真であり、図1Gは膀胱の外表面を示し、図1Hは内腔膀胱表面を示す。
【図2】図2Aは、マウス膀胱対照の横断面を示す写真である。図2Bおよび2Cは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真である。
【図3−1】図3A〜3Fは、25% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図3A、3Cおよび3Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図3B、3Dおよび3Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図3−2】図3A〜3Fは、25% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図3A、3Cおよび3Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図3B、3Dおよび3Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図3−3】図3A〜3Fは、25% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図3A、3Cおよび3Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図3B、3Dおよび3Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図4−1】図4A〜4Fは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図4A、4Cおよび4Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図4B、4Dおよび4Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図4−2】図4A〜4Fは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図4A、4Cおよび4Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図4B、4Dおよび4Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図4−3】図4A〜4Fは、30% エタノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図4A、4Cおよび4Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図4B、4Dおよび4Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図5】図5A〜5Dは、4% ポロキソマー407での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の2つのマウス膀胱を示す写真であり、図5Aおよび5Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面であり、図5Cおよび5Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面である。
【図6】図6A〜6Dは、リポフェクタミンとAd-LacZとを含む組成物を感染させた後の2つのマウス膀胱を示す写真であり、図6Aおよび6Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面であり、図6Cおよび6Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面である。
【図7】図7A〜7Dは、In vivo geneSHUTTLE(商標)とAd-LacZとを含む組成物を感染させた後の2つのマウス膀胱を示す写真であり、図7Aおよび7Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面であり、図7Cおよび7Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面である。
【図8−1】図8A〜8Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図8Aおよび8Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Cおよび8Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Eおよび8Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Gおよび8Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Iおよび8Jは第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Kおよび8Lは第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Mおよび8Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図8−2】図8A〜8Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図8Aおよび8Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Cおよび8Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Eおよび8Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Gおよび8Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Iおよび8Jは第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Kおよび8Lは第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Mおよび8Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図8−3】図8A〜8Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図8Aおよび8Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Cおよび8Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Eおよび8Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Gおよび8Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Iおよび8Jは第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Kおよび8Lは第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図8Mおよび8Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図9−1】図9A〜9Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図9Aおよび9Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Cおよび9Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Eおよび9Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Gおよび9Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Iおよび9Jは、第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Kおよび9Lは、第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Mおよび9Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図9−2】図9A〜9Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図9Aおよび9Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Cおよび9Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Eおよび9Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Gおよび9Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Iおよび9Jは、第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Kおよび9Lは、第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Mおよび9Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図9−3】図9A〜9Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図9Aおよび9Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Cおよび9Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Eおよび9Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Gおよび9Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Iおよび9Jは、第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Kおよび9Lは、第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Mおよび9Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図9−4】図9A〜9Nは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZ感染の後の7つのマウス膀胱を示す写真であり、図9Aおよび9Bは第1膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Cおよび9Dは第2膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Eおよび9Fは第3膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Gおよび9Hは第4膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Iおよび9Jは、第5膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Kおよび9Lは、第6膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示し、図9Mおよび9Nは第7膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す。
【図10】図10Aおよび10Bは、それぞれ図8Cおよび8Iのマウス膀胱の横断面を示す写真である。
【図11】図11Aおよび11Bは、それぞれ図9Cおよび9Iのマウス膀胱の横断面を示す写真である。
【図12−1】図12A〜12Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図12A、12Cおよび12Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図12B、12Dおよび12Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図12−2】図12A〜12Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図12A、12Cおよび12Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図12B、12Dおよび12Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図12−3】図12A〜12Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での5分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図12A、12Cおよび12Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図12B、12Dおよび12Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図13−1】図13A〜13Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図13A、13Cおよび13Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図13B、13Dおよび13Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図13−2】図13A〜13Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図13A、13Cおよび13Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図13B、13Dおよび13Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図13−3】図13A〜13Fは、0.2% オキシクロロセン溶液での15分間の前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図13A、13Cおよび13Eは40倍の倍率で撮影されたものであり、図13B、13Dおよび13Fは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図14−1】図14Aは、0.1% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図14Bおよび14Cは、図14Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図14Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図14Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図14−2】図14Aは、0.1% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後のマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図14Bおよび14Cは、図14Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図14Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図14Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図15−1】図15Aは、0.2% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図15Bおよび15Cは、図15Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図15Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図15Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図15−2】図15Aは、0.2% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図15Bおよび15Cは、図15Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図15Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図15Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図16−1】図16Aは、0.2% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図16Bおよび16Cは、図16Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図16Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図16Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図16−2】図16Aは、0.2% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図16Bおよび16Cは、図16Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図16Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図16Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図17−1】図17Aは、0.4% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図17Bおよび17Cは、図17Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図17Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図17Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図17−2】図17Aは、0.4% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図17Bおよび17Cは、図17Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図17Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図17Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図18−1】図18Aは、0.4% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図18Bおよび18Cは、図18Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図18Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図18Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図18−2】図18Aは、0.4% オキシクロロセン溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図18Bおよび18Cは、図18Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図18Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図18Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図19−1】図19Aは、0.02% ポリドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図19Bおよび19Cは、図19Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図19Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図19Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図19−2】図19Aは、0.02% ポリドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図19Bおよび19Cは、図19Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図19Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図19Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図20−1】図20Aは、0.02% ポリドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図20Bおよび20Cは、図20Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図20Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図20Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図20−2】図20Aは、0.02% ポリドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図20Bおよび20Cは、図20Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図20Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図20Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図21−1】図21Aおよび21Bは、0.05% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す写真である。図21Cおよび21Dは、図21Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図21Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図21Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図21−2】図21Aおよび21Bは、0.05% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す写真である。図21Cおよび21Dは、図21Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図21Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図21Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図22−1】図22Aおよび22Bは、0.05% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す写真である。図22Cおよび22Dは、図22Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図22Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図22Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図22−2】図22Aおよび22Bは、0.05% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱のそれぞれ外表面および内腔表面を示す写真である。図22Cおよび22Dは、図22Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図22Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図22Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図23−1】図23Aは、0.2% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図23Bおよび23Cは、図23Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図23Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図23Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図23−2】図23Aは、0.2% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図23Bおよび23Cは、図23Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図23Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図23Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図24−1】図24Aは、0.2% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図24Bおよび24Cは、図24Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図24Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図24Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図24−2】図24Aは、0.2% ポロドカノール溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図24Bおよび24Cは、図24Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図24Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図24Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図25−1】図25Aは、0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図25Bおよび25Cは、図25Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図25Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図25Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図25−2】図25Aは、0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図25Bおよび25Cは、図25Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図25Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図25Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図26−1】図26Aは、0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図26Bおよび26Cは、図26Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図26Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図26Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図26−2】図26Aは、0.02% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第2マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図26Bおよび26Cは、図26Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図26Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図26Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図27−1】図27Aは、0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図27Bおよび27Cは、図27Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図27Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図27Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図27−2】図27Aは、0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図27Bおよび27Cは、図27Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図27Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図27Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図28−1】図28Aは、0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図28Bおよび28Cは、図28Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図28Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図28Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図28−2】図28Aは、0.05% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図28Bおよび28Cは、図28Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図28Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図28Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図29−1】図29Aは、0.2% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図29Bおよび29Cは、図29Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図29Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図29Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図29−2】図29Aは、0.2% n-ドデシルβ-D-マルトシド溶液での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図29Bおよび29Cは、図29Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図29Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図29Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図30−1】図30Aは、デデシルベンゼンスルホン酸溶液の0.2%ナトリウム塩での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図30Bおよび30Cは、図30Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図30Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図30Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図30−2】図30Aは、デデシルベンゼンスルホン酸溶液の0.2%ナトリウム塩での前処理およびそれに続くAd-LacZの感染の後の第1マウス膀胱の内腔表面を示す写真である。図30Bおよび30Cは、図30Aのマウス膀胱の横断面を示す写真であり、図30Bは40倍の倍率で撮影されたものであり、図30Cは100倍の倍率で撮影されたものである。
【図31−1】図31A〜31Eは、種々の長さのアルキル側鎖を有するアルキルマルトシドおよびアルキルマルトピラノシド前処理剤で処理されたマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。
【図31−2】図31A〜31Eは、種々の長さのアルキル側鎖を有するアルキルマルトシドおよびアルキルマルトピラノシド前処理剤で処理されたマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。
【図32】図32A〜32Cは、種々の長さのアルキル側鎖を有するアルキル硫酸ナトリウム前処理剤で処理されたマウス膀胱の内腔表面を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱の内腔表面を、形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、
ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含んでなり、
形質導入増強剤が、親油性置換基を有する単糖、二糖または多糖であることを特徴とする、膀胱癌の治療方法。
【請求項2】
形質導入増強剤が、親油性置換基を有する二糖である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
形質導入増強剤が、親油性置換基を有する二糖であり、該二糖が、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロースおよびセロビオースよりなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
形質導入増強剤が、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化1】

(式中、Xは硫黄または酸素原子であり、各R2は、独立して、水素または、
【化2】

により表される部分であり、R1はアルキルまたはアルケニル基を表す)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
形質導入増強剤が化学式:
【化3】

(式中、nは正の整数である)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
nが11以上である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
nが11である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前処理組成物が約0.02〜約0.5重量%の形質導入増強剤を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
形質導入増強剤が化学式:
【化4】

(式中、nは正の整数である)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
nが6以上である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
nが6である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前処理組成物が約0.1重量%の該形質導入増強剤を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が化学療法剤を更に含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
化学療法剤がドセタキセルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と膀胱の内腔表面との接触が、約50〜約500mlの該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物を点滴により膀胱に運搬することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が約1×1011〜約1×1014個のウイルス粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前処理組成物と膀胱の内腔表面との接触が、前処理組成物を点滴により膀胱に運搬することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前処理組成物との接触後であって該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物との接触前に、膀胱の内腔表面を洗浄することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前処理組成物を膀胱の内腔表面と約5分間接触させる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前処理組成物が酸化剤を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
酸化剤が、次亜塩素酸、過酸化水素およびペルオキシ酢酸よりなる群から選ばれる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
親油性置換基がアルカン基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
親油性置換基がアルカン酸残基である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
形質導入増強剤が化学式:
【化5】

(式中、R1はアルキルまたはアルケニル基を表す)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
R1が、
【化6】

により表される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
膀胱の内腔表面を、約0.01〜約0.2重量%のオキシクロロセンナトリウムを含む前処理組成物と接触させ、
ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含む、膀胱癌の治療方法。
【請求項29】
前処理組成物が約0.01〜約0.1重量%のオキシクロロセンナトリウムを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が化学療法剤を更に含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
化学療法剤がドセタキセルである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が約1×1011〜約1×1014個のウイルス粒子を含む、請求項28記載の方法。
【請求項35】
前処理組成物との接触後であって該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物との接触前に、膀胱の内腔表面を洗浄することを更に含む、請求項28記載の方法。
【請求項36】
膀胱の内腔表面を、化学式:
【化7】

(式中、xおよびyは正の整数である)により表される構造を有する形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、
ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含む、膀胱癌の治療方法。
【請求項37】
xが6であり、yが8〜10である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前処理組成物が約0.02〜約0.5重量%の該形質導入増強剤を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項36記載の方法。
【請求項40】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が化学療法剤を更に含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
化学療法剤がドセタキセルである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前処理組成物が酸化剤を更に含む、請求項36記載の方法。
【請求項44】
酸化剤が、次亜塩素酸、過酸化水素およびペルオキシ酢酸よりなる群から選ばれる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
膀胱の内腔表面を、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化8】

(式中、xは正の整数である)により表される構造を有する形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、
ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含む、膀胱癌の治療方法。
【請求項46】
xが11である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
形質導入増強剤が、一般式(I)により表される構造を有する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前処理組成物が約0.1重量%の該形質導入増強剤を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
形質導入増強剤が、一般式(II)により表される構造を有する、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前処理組成物が約0.2重量%の該形質導入増強剤を含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項45記載の方法。
【請求項52】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が化学療法剤を更に含む、請求項51記載の方法。
【請求項54】
化学療法剤がドセタキセルである、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前処理組成物が酸化剤を更に含む、請求項45記載の方法。
【請求項56】
酸化剤が、次亜塩素酸、過酸化水素およびペルオキシ酢酸よりなる群から選ばれる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
形質導入増強剤と腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含んでなり、
形質導入増強剤が、親油性置換基を有する単糖、二糖または多糖であることを特徴とする組成物。
【請求項58】
形質導入増強剤が、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化9】

(式中、Xは硫黄または酸素原子であり、各R2は、独立して、水素または、
【化10】

により表される部分であり、R1はアルキルまたはアルケニル基を表す)を有する化合物である、請求項57記載の組成物。
【請求項59】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項57記載の組成物。
【請求項60】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項57記載の組成物。
【請求項61】
化学療法剤を更に含む、請求項57記載の組成物。
【請求項62】
化学療法剤がドセタキセルである、請求項61記載の組成物。
【請求項63】
膀胱の内腔表面を請求項57記載の組成物と接触させることを含む、膀胱癌の治療方法。
【請求項64】
オキシクロロセンナトリウムと腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含む組成物。
【請求項65】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項64記載の組成物。
【請求項66】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項64記載の組成物。
【請求項67】
化学療法剤を更に含む、請求項64記載の組成物。
【請求項68】
化学療法剤がドセタキセルである、請求項67記載の組成物。
【請求項69】
該組成物が約0.01〜約0.4重量%のオキシクロロセンナトリウムを含む、請求項64記載の組成物。
【請求項70】
該組成物が約0.01〜約0.2重量%のオキシクロロセンナトリウムを含む、請求項64記載の組成物。
【請求項71】
膀胱の内腔表面を請求項64記載の組成物と接触させることを含む、膀胱癌の治療方法。
【請求項72】
膀胱の内腔表面を、形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、
ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含んでなり、
形質導入増強剤が、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化11】

(式中、Xは硫黄または酸素原子であり、各R2は、独立して、水素または、
【化12】

により表される部分であり、R1はアルキルまたはアルケニル基を表す)を有し、
膀胱の内腔表面を該前処理組成物と少なくとも10分間接触させることを特徴とする、膀胱癌の治療方法。
【請求項73】
R1が少なくとも12個の炭素原子を含む、請求項72記載の方法。
【請求項74】
各R2が水素である、請求項72記載の方法。
【請求項75】
形質導入増強剤が化学式:
【化13】

(式中、nは正の整数である)を有する、請求項72記載の方法。
【請求項76】
nが11以上である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
nが11である、請求項75記載の方法。
【請求項78】
前処理組成物が約0.025〜約0.4重量%の該形質導入増強剤を含む、請求項77記載の方法。
【請求項79】
膀胱の内腔表面を該前処理組成物と少なくとも20分間接触させる、請求項72記載の方法。
【請求項80】
膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と15分間以下の時間にわたり接触させる、請求項79記載の方法。
【請求項81】
膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と10分間以下の時間にわたり接触させる、請求項79記載の方法。
【請求項82】
形質導入増強剤が化学式:
【化14】

(式中、nは正の整数である)を有する、請求項72記載の方法。
【請求項83】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項72記載の方法。
【請求項84】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項83記載の方法。
【請求項85】
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が少なくとも4×1010個のウイルス粒子を含む、請求項72記載の方法。
【請求項86】
形質導入増強剤が化学式:
【化15】

(式中、R1はアルキルまたはアルケニル基を表す)を有する、請求項72記載の方法。
【請求項87】
R1が、
【化16】

により表される、請求項86記載の方法。
【請求項88】
膀胱の内腔表面を、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化17】

(式中、xは正の整数である)により表される構造を有する形質導入増強剤を含む前処理組成物と接触させ、
ついで膀胱の内腔表面を、腫瘍細胞崩壊性ウイルスを含む組成物と接触させることを含んでなり、
xが少なくとも11であり、
該腫瘍細胞崩壊性ウイルス組成物が少なくとも4×1010個のウイルス粒子を含むことを特徴とする、膀胱癌の治療方法。
【請求項89】
xが11である、請求項88記載の方法。
【請求項90】
形質導入増強剤が、一般式(I)により表される構造を有する、請求項89記載の方法。
【請求項91】
前処理組成物が約0.1重量%の該形質導入増強剤を含む、請求項90記載の方法。
【請求項92】
腫瘍細胞崩壊性ウイルスが腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスである、請求項88記載の方法。
【請求項93】
腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスがCG8840である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
形質導入増強剤と腫瘍細胞崩壊性ウイルスとを含んでなり、
形質導入増強剤が、以下の一般式(I)または以下の一般式(II):
【化18】

(式中、xは正の整数である)により表される構造を有し、
形質導入増強剤の濃度が組成物の0.025重量%未満であることを特徴とする組成物。
【請求項95】
膀胱の内腔表面を請求項94記載の組成物と接触させることを含む、膀胱癌の治療方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25−1】
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【図25−2】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図27−1】
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【図27−2】
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【図28−1】
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【図28−2】
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【図29−1】
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【図29−2】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図31−1】
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【図31−2】
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【図32】
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【公表番号】特表2006−512398(P2006−512398A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565744(P2004−565744)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/041379
【国際公開番号】WO2004/060303
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505230065)セル ジェネシス,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】