説明

膜形成用組成物、絶縁材料形成用組成物、絶縁膜及び電子デバイス

【課題】 電子デバイスにおける絶縁膜として好適であり、誘電率、機械強度、密着性等の特性が良好な絶縁材料を提供できる組成物、及び該組成物を用いて得られる絶縁膜、更には該絶縁膜を有する電子デバイスを提供する。
【解決手段】 特定のカゴ型構造を有する化合物、空孔形成剤、接着促進剤などを含むことを特徴とする膜形成用組成物、該膜形成用組成物から形成された絶縁膜、該絶縁膜を有する電子デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物に関し、さらには電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好な絶縁膜などの絶縁材料を形成するための組成物、及び該組成物を用いて得られる絶縁膜、更には該絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
高耐熱性の絶縁膜として、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドが広く知られているが、極性の高い窒素原子を含むため、低誘電性、低吸水性、耐久性および耐加水分解性の面では、満足なものは得られていない。
また、有機ポリマーは概して有機溶剤への溶解性の不十分なものが多く、塗布液中での析出、絶縁膜中でのブツ発生の抑制が重要な課題となっている。その対策として、溶解性を向上させるためにポリマー主鎖を折れ曲がり構造にすると、ガラス転移点の低下、耐熱性の低下が生じてしまい、これらの性能と溶解性を両立することは容易ではない。
また、絶縁膜としてポリアリーレンエーテルを基本主鎖とする高耐熱性樹脂(特許文献1〜4)が知られているが、高速デバイスを実現するためには更なる低誘電化が望まれている。膜を多孔化することにより低誘電化を計る試みがなされているが、膜特性を維持するためには、低い空孔率に抑えつつ、低誘電率化することが望まれている。多孔化せずにバルクでの比誘電率を好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下にすることが望まれている。
【0004】
特許文献5にアリール基と炭素−炭素三重結合が置換したジアマンタンモノマーが開示されている。しかしながら、該モノマーから得られる膜の比誘電率は電子分極の大きなベンゼン環の比率が大きいため、所望の好ましい値すなわち2.5以下を達成するのは困難である。
また、有機ポリマーは概してシリコンウエハー等に対する接着性が低く、配線加工時の膜ハガレ等の問題が生じやすかった。
【0005】
一般に、従来技術であるデュアル・ダマシン相互接続構造に関して以下の本質的問題がある。
a)Cu線の厚み(すなわちトレンチの深さ)および抵抗率の制御が不充分。
b)低k誘電体の熱膨張率(CTE)が高く、そのために最終的に熱サイクル中の故障につながる。
c)超低k材料は化学的機械的研磨(CMP)に耐えることができない。
【0006】
これらを解決するためにハイブリッド型絶縁膜が提案されている(例えば特許文献6参
照)。しかしながら、ハイブリッド型絶縁膜に用いられる有機ポリマーは概して有機溶剤への溶解性の不十分なものが多く、塗布液中での析出、絶縁膜中でのブツ発生の抑制が重要な課題となっている。その対策として、溶解性を向上させるためにポリマー主鎖を折れ曲がり構造にすると、ガラス転移点の低下、耐熱性の低下が生じてしまい、これらの性能と溶解性を両立することは容易ではない。
【0007】
【特許文献1】特表2002−530505号公報
【特許文献2】米国特許第6380347号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第5965679号明細書
【特許文献4】特表2002−534546号公報
【特許文献5】特表2004−504455号公報
【特許文献6】特表2004−523910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するための膜形成用組成物に関し、電子デバイスにおける絶縁膜として好適であり、誘電率、機械強度、密着性等の特性が良好な絶縁材料を提供できる組成物、及び該組成物を用いて得られる絶縁膜、更には該絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は下記の構成により達せられることを見出した。
(1)カゴ型構造を有する化合物および空孔形成剤を含むことを特徴とする膜形成用組成物。
(2)カゴ型構造を有する化合物が有するカゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする上記(1)に記載の膜形成用組成物。
(3)膜形成用組成物に含まれる全固形分中の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率が30%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0010】
(4)カゴ型構造がアダマンタン構造であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(5)カゴ型構造がジアマンタン構造であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(6)カゴ型構造を有する化合物が下記式(I)で表される少なくとも一つの化合物の重合体であることを特徴とする上記(5)に記載の膜形成用組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
式(I)中、
Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはシリル基を表す。
mは1〜14の整数を表す。
Xはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはシリル基を表す。
nは0〜13の整数を表す。
【0013】
(7)カゴ型構造を有する化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(8)空孔形成剤がポリマーであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(9)空孔形成剤がカゴ型構造を有する化合物と結合していることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(10)空孔形成剤が有機溶剤であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0014】
(11)有機溶剤を含有することを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(12)上記(1)〜(11)のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
(13)空孔の平均直径が5nm以下であることを特徴とする上記(12)の絶縁膜。
(14)上記(12)または(13)に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【0015】
(15)カゴ型構造を有する化合物および有機溶剤を含有することを特徴とする膜形成用組成物。但し、当該カゴ構造は少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、かつ、該組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上である。
(16)カゴ型構造が飽和脂肪族炭化水素構造であることを特徴とする上記(15)に記載の膜形成用組成物。
(17)カゴ型構造が2〜4価であることを特徴とする上記(15)又は(16)に記載の膜形成用組成物。
(18)カゴ型構造がジアマンタン構造であることを特徴とする上記(15)〜(17)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(19)カゴ型構造がポリマーの主鎖の一部であることを特徴とする上記(15)〜(18)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(20)カゴ型構造を有する化合物が上記式(I)で表される少なくとも一つの化合物の重合体である上記(19)に記載の膜形成用組成物。
(21) 前記式(I)において、Rが水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、m=1〜3であり、かつn=0であることを特徴とする、上記(20)に記載の膜形成用組成物。
(22) カゴ型構造を有する化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする上記(15)〜(21)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
(23)上記(15)〜(22)のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
(24)上記(15)〜(22)のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜を有する電子デバイス。
【0016】
(25)カゴ型構造を有する化合物および接着促進剤を含む絶縁材料形成用組成物。
(26)カゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする上記(25)に記載の絶縁材料形成用組成物。
(27)該絶縁材料形成用組成物中の絶縁材料を構成する全固形分の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率が30%以上であることを特徴とする上記(25)又は(26)に記載の絶縁材料形成用組成物。
(28)カゴ型構造がアダマンタン構造であることを特徴とする上記(25)〜(27)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
(29)カゴ型構造がジアマンタン構造であることを特徴とする上記(25)〜(27)
のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
(30)カゴ型構造を有する化合物が上記式(I)で表される少なくとも一つの化合物の重合体であることを特徴とする上記(25)〜(27)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
(31)カゴ型構造を有する化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする上記(25)〜(30)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
(32)接着促進剤がシラン化合物であることを特徴とする上記(25)〜(31)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
(33)有機溶剤を含むことを特徴とする上記(25)〜(32)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
(34)上記(25)〜(33)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物を用いて形成される絶縁材料を有する電子デバイス。
【0017】
(35)カゴ型構造を有する化合物を含む絶縁材料形成用組成物から形成されたポリマーおよび接着促進剤を含む絶縁材料。
(36)カゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする上記(35)に記載の絶縁材料。
(37)該絶縁材料形成用組成物中の絶縁材料を構成する全固形分の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率が30%以上であることを特徴とする上記(35)又は(36)に記載の絶縁材料。
(38)カゴ型構造がアダマンタン構造であることを特徴とする上記(35)〜(37)のいずれかに記載の絶縁材料。
(39)カゴ型構造がジアマンタン構造であることを特徴とする上記(35)〜(37)のいずれかに記載の絶縁材料。
(40)カゴ型構造を有する化合物が上記式(I)で表される少なくとも一つの化合物の重合体であることを特徴とする上記(39)に記載の絶縁材料。
(41)カゴ型構造を含む化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする上記(35)〜(40)いずれかに記載の絶縁材料。
(42)接着促進剤がシラン化合物である上記(35)〜(41)のいずれかに記載の絶縁材料。
(43)上記(35)〜(42)のいずれかに記載の絶縁材料を有する電子デバイス。
【0018】
(44)異なる元素組成を有する下部絶縁膜および上部絶縁膜から構成されるハイブリッド型絶縁膜であって、該下部絶縁膜もしくは該上部絶縁膜の一方が、カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物から形成されたことを特徴とするハイブリッド型絶縁膜。
(45)該下部絶縁膜もしくは該上部絶縁膜の一方が、カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物から形成され、他方がケイ素原子を含むことを特徴とする上記(44)に記載のハイブリッド型絶縁膜。
(46)該カゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする上記(44)または(45)に記載のハイブリッド型絶縁膜。
(47)該膜形成用組成物に含まれる全固形分中の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率は30%以上であることを特徴とする上記(44)〜(46)のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。
(48)該カゴ型構造がアダマンタン構造であることを特徴とする上記(44)〜(47)のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。
(49)該カゴ型構造がジアマンタン構造であることを特徴とする上記(44)〜(47)のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。
(50)該カゴ型構造を有する化合物が、上記式(I)で表される少なくとも一つの化合物の重合体であることを特徴とする上記(49)に記載のハイブリッド型絶縁膜。
(51)該カゴ型構造を有する化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする上記(44
)〜(50)のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。
(52)該ケイ素原子を含む絶縁膜がさらに酸素原子、水素原子および炭素原子含む、上記(45)〜(51)のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。
(53)上記(44)〜(52)のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、電子デバイスにおける絶縁膜として好適であり、誘電率、機械強度、密着性等の特性が良好な絶縁材料を提供できる組成物、及び該組成物を用いて得られる絶縁膜、更には該絶縁膜を有する電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
<膜形成用組成物>
本発明者等は、カゴ型構造を有する化合物および空孔形成剤を含むことを特徴とする膜形成用組成物、及び、カゴ構造が少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、かつ、該組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であるようにカゴ型構造を有する化合物および有機溶剤を含有することを特徴とする膜形成用組成物によって、優れた機械的強度とともに、低誘電率を有する、絶縁膜に適する絶縁材料が得られることを見出した。
絶縁膜の比誘電率を低下させるためには、電子分極の小さい飽和炭化水素で絶縁膜を構成するポリマーの骨格を構成することが有効であるが、飽和炭化水素は概して耐熱性が劣ため、低誘電率化と耐熱性を両立する分子設計として、高耐熱性のダイヤモンド型炭化水素が有効である。ダイヤモンド型炭化水素として、立体的な嵩高さに起因する膜の低密度化の観点から、分子量の大きいジアマンタンやトリアマンタン等が特に好ましい。
【0022】
<カゴ型構造を含有する化合物>
本発明における絶縁膜などの膜または絶縁材料を形成するための組成物(膜形成用または絶縁材料形成用組成物)は、カゴ型構造を含む化合物を含有する。
カゴ型構造を含有する化合物は、カゴ型構造を有すれば、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良い。
本発明における「カゴ型構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0023】
本発明のカゴ型構造の総炭素数は、好ましくは10〜30個、より好ましくは10〜18個、特に好ましくは10〜14個の炭素原子で構成される。
ここでいう炭素原子にはカゴ型構造に置換した連結基や置換基の炭素原子を含めない。例えば、1−メチルアダマンタンは10個の炭素原子で構成され、1−エチルジアマンタンは14個の炭素原子で構成されるものとする。
【0024】
本発明のカゴ型構造は飽和炭化水素であることが好ましく、好ましい例としては高い耐熱性を有している点でダイヤモンド類似構造のアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドラン等の構造が挙げられ、より低い誘電率が得られる点ではジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタンの構造が挙げられ、合成が容易である点でアダマンタン、ジアマンタンの構造が挙げられる。上記の条件に鑑みて、アダマンタン、ジアマンタンの構造がより好ましく、中でもジアマンタン構造が最も好ましい。
【0025】
空孔形成剤を使用しない場合は、カゴ型構造を有する化合物は、カゴ型構造は少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であるようにカゴ型構造を有する化合物および有機溶剤を含有する膜形成用組成物によっても、優れた機械的強度とともに、低誘電率を有する絶縁材料が得られる。
この場合、カゴ型構造は、好ましくは11〜30個、より好ましくは12〜20個、さらに好ましくは12〜14個の炭素原子で構成される。炭素原子数が11個以上であることで、充分な誘電率特性が得られる。本発明のカゴ型構造を有する化合物は飽和の脂肪族炭化水素であることが好ましく、例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドラン等が挙げられ、特に低誘電率、塗布溶剤への良好な溶解性さらには絶縁膜中のブツ発生抑制の点でジアマンタンが好ましい。
【0026】
本発明におけるカゴ型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等が挙げられる。この中で好ましい置換基はフッ素原子、臭素原子、炭素数1〜5の直鎖、分岐、環状のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、シリル基である。これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0027】
カゴ型構造は1〜4価であることが好ましく、より好ましくは2〜3価であり、特に好ましくは2価である。このとき、カゴ型構造に結合する基は1価以上の置換基でも2価以上の連結基でも良い。ここで「価」とは結合手の数を意味する。
【0028】
カゴ型構造を有する化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良く、好ましいものはポリマーである。
カゴ型構造を有する化合物がポリマーである場合、その質量平均分子量は好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。カゴ型構造を有するポリマーは分子量分布を有する樹脂であっても良い。カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3000、より好ましくは200〜2000、特に好ましくは220〜1000である。
【0029】
カゴ型構造は、ポリマー主鎖に1価のペンダント基として組み込まれても良い。かご化合物が結合する好ましいポリマー主鎖としては、例えばポリ(アリーレン)、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(エーテル)、ポリアセチレン、ポリエチレン等が挙げられ、この中でも耐熱性が良好な点から、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアセチレンがより好ましい。
【0030】
また、カゴ型構造を有する化合物がポリマーである場合、本発明におけるカゴ型構造がポリマー主鎖の一部となっていることが好ましい。すなわちポリマー主鎖の一部になっている場合には、本ポリマーからカゴ型構造を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、カゴ型構造は直接単結合するかまたは適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R11)(R12)−、−C(R13
)=C(R14)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R15)−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R11〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基を表す。これらの連結基は置換基で置換されていてもよく、例えば前述の置換基が好ましい例として挙げられる。
この中でより好ましい連結基は、−C(R11)(R12)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−Si(R16)(R17)−またはこれらの組み合わせである。
【0031】
カゴ型構造を有する化合物は、その分子内にカゴ型構造を1種でも2種以上含んでいても良い。
【0032】
カゴ構造を有する化合物は、熱硬化性であることが特に好ましい。
熱硬化性の点で、カゴ型構造を有する化合物は、熱により他の分子と共有結合を形成する反応性基を有していることが好ましい。このような反応性基としては、特に限定されないが例えば環化付加反応、ラジカル重合反応を起こす置換基が好ましく利用できる。例えば、2重結合を有する基(ビニル基、アリル基等)、3重結合を有する基(エチニル基、フェニルエチニル基等)、ディールスアルダー反応を起こすためのジエン基、ジエノフィル基の組み合わせ等が有効であり、特にエチニル基とフェニルエチニル基が有効である。
【0033】
例えば、カゴ構造を有する化合物である後述の一般式(I)で表される化合物の重合体は支持体上に塗布した後に加熱処理することによって、残存するエチニル基が後加熱によって重合反応を起こし硬化し、有機溶剤へ不溶化する。
【0034】
また、本発明のカゴ型構造を有する化合物には、モル分極率を高めたり絶縁材料の吸湿性の原因となる窒素原子は誘電率を高くする働きがあるため含まないことが好ましい。特に、ポリイミド化合物では充分に低い誘電率が得られないため、本発明のカゴ型構造を有する化合物は、ポリイミド以外の化合物、即ちイミド結合を有しない化合物であることが好ましい。
【0035】
以下に、カゴ型構造を有する化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。nは正数を表す。
【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

【0038】
【化4】


【0039】
カゴ型構造を有する化合物は、公知の方法により合成できるが、市販のものを用いてもよい。
【0040】
<式(I)で表される化合物>
カゴ型構造を有する化合物は、下記式(I)で表される化合物の重合体であることが特
に好ましい。
【0041】
【化5】

【0042】
式(I)において、
Rは水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜10)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)またはシリル基(好ましくは炭素数0〜20)を表す。
Rが水素原子以外の場合、Rとしての各基は置換基を有していてもよい。置換基としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アリールオキシ基、アリールスルホニル基、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。Rは好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数0〜20のシリル基であり、より好ましくは水素原子または炭素数0〜10のシリル基である。
【0043】
mは1〜14の整数を表し、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、特に好ましくは2または3である。
Xはハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)、シリル基(好ましくは炭素数0〜20)を表す。
Xとしての各基は置換基を有していても良く、置換基の例としては、前述のRとしての各基が有していてもよい置換基として挙げたものが挙げられる。
Xは好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数0〜20のシリル基であり、より好ましくは臭素原子、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数0〜10シリル基である。
nは0〜13の整数を表し、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは0または1である。
また、Rが水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、m=1〜3であり、かつn=0である式(I)で表される化合物も好ましい。
式(I)で表される化合物として、複数のを単結合や連結基で結合した化合物を用いることもできる。
【0044】
式(I)で表される化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定するものではない。
【0045】
【化6】

【0046】
式(I)で表される化合物はより好ましくは、1−エチニルジアマンタン、4−エチニルジアマンタン、4,9−ジエチニルジアマンタン、1,6−ジエチニルジアマンタン、1,4−ジエチニルジアマンタン、1,4,9−トリエチニルジアマンタンであり、特に好ましくは4,9−ジエチニルジアマンタン、1,6−ジエチニルジアマンタンである。
【0047】
式(I)で表される化合物は、市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換する。具体的にはMacromolecules., 1991年, 第24巻, 第5266〜5268頁、Macromolecules., 1995年, 第28巻, 第5554〜5560頁、Journalof Organic Chemistry., 39, 2995-3003(1974) 等に記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウム等でアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
【0048】
<式(I)で表される化合物の重合体の調製>
式(I)で表される化合物の重合体の合成は、有機溶剤中で行うことが好ましい。本発明者らは有機溶剤中で重合して得られた重合体が、無溶媒で重合したものに比べて、有機溶剤への溶解性が格段に向上するという非常に優れた効果があることを見出した。
【0049】
式(I)で表される化合物の重合体は、式(I)で表される化合物を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。さらには、式(I)で表される化合物以外の別の炭素−炭素三重結合を有する化合物を共重合させても良い。
【0050】
重合反応で使用する有機溶剤は、原料モノマーを溶解可能でかつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応用の有機溶剤の沸点は50℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。
反応液の濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0051】
式(I)で表される化合物の重合反応の際に炭素−炭素三重結合の重合を促進する公知の金属触媒を添加することは、反応時間短縮、反応温度の低下等の観点で特に好ましい。
このような金属触媒としては、パラジウム、ニッケル、タングステン、モリブデン等の金属触媒が挙げられ、例えば、Pd(PPh3)4、Bis(benzonitrile)Palladium chloride、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等が好ましく用いられるが、重合体のゲル化、不溶化を最小限に抑制して、かつ低誘電率の膜が得られる観点でPd系の触媒が特に好ましい。
金属触媒の添加量は、得られる重合体の質量平均分子量を向上させることと有機溶剤への溶解性を向上させる観点で、アセチレン基1モルに対して0.0001〜0.1モルが好ましく、0.0005〜0.05モルがより好ましく、0.001〜0.01モルが特に好ましい。
【0052】
式(I)で表される化合物の最適な重合反応条件は、触媒の有無、触媒の量、溶剤の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜230℃、より好ましくは100℃〜230℃、特に好ましくは180℃〜230℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
【0053】
また、重合体の酸化分解を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。
重合して得られるポリマーの質量平均分子量の好ましい範囲は1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。
【0054】
一般式(I)で表される化合物の重合体は支持体上に塗布した後に加熱処理することによって有機溶剤へ不溶化することが出来る。これは残存するエチニル基が後加熱によって重合反応を起こすためである。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は2回以上に分割して行っても良い。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0055】
<カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物>
膜形成用組成物は、カゴ型構造を有する化合物、及び、必要に応じてその他の成分を、有機溶剤などに溶解して、塗布液として好適な膜形成用組成物とすることができる。
【0056】
溶剤の例としては、特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤;メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などの有機溶剤が挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
より好ましい溶剤は、アセトン、プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,2−ジクロロベンゼンである。
【0058】
塗布液としての膜形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜35質量%であり、特に好ましくは7〜20質量%である。
【0059】
膜形成用組成物中のカゴ型構造を有する化合物の添加量は、膜形成用組成物中の絶縁膜を構成する全固形分に対し、一般的には10〜95質量%、好ましくは30〜90質量%である。
【0060】
カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物より形成した絶縁膜に良好な特性(誘電率、機械強度)を付与する観点から、カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは30〜100%、更に好ましくは50〜95%、特に好ましくは60%〜90%である。ここで、膜形成用組成物に含まれる全固形分とは、この組成物により得られる絶縁膜を構成する全固形分に相当するものである。尚、空孔形成
剤のように絶縁膜形成後に絶縁膜中に残らないものは固形分に含めない。
【0061】
本発明においては、カゴ型構造を有する化合物とともに、空孔形成剤を使用することにより、機械強度に優れるとともに、低い誘電率を有する膜を提供することができることを見出した。
<空孔形成剤>
本発明の膜形成用組成物が含有する空孔形成剤とは、膜形成用組成物により得た膜中に空孔を形成する機能を有する物質である。例えば、空孔形成剤を含有する膜形成用組成物により形成された膜を加熱することにより、膜中に空孔形成剤による空孔を形成し、空孔を含有する膜を得ることができる。
【0062】
空孔形成剤としては、特に限定されないが、各種ポリマーを使用することができる。
空孔形成剤としてのポリマーは、好ましくは、カゴ型構造を有する化合物に由来するカゴ型構造を含むポリマーなどの、膜を構成するマトリックスの熱分解温度より低い温度において熱分解するものである。
【0063】
空孔形成剤として使用できるポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)またはポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)およびポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエンおよびポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、およびアミンキャップドアルキレンオキシド(Huntsman
Corp.からJeffamineTMポリエーテルアミンとして商業的に入手できる)などが挙げられる。
【0064】
その他、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン等であってもよい。なお、膜中でマトリックスを形成する化合物(例えば、前述のカゴ型構造を有する化合物)のオリゴマーも空孔形成剤として機能しうる。
【0065】
空孔形成剤としての、上記のようなポリマーは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーなどいずれであってもよい。また、これらの混合物であっても良い。また、線状、分岐状、超分岐状、樹枝状または星様状であってもよい。
【0066】
特にポリスチレンは、空孔形成剤として好適に使用できる。ポリスチレンはとしては、たとえば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換および置換ポリスチレン(たとえば、ポリ(α−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンが好ましい。
ポリスチレンは、例えば、WO98/11149に記載されているようなマトリックスとしてポリシクロペンタジエノンとポリアセチレンの熱硬化性混合物を使用した場合、高温(たとえば、約420℃〜450℃)において分解し、また主としてモノマーに分解しそして該モノマーはマトリックスから拡散して出ていき得るので好ましい。
【0067】
空孔形成剤はまた、膜中でマトリックスを形成する化合物(カゴ型構造を有する化合物などのマトリックス前駆体)と反応してポリマー鎖のブロックまたはペンダント状(懸垂状)置換を形成するように設計されていてもよい。たとえばビニル、アクリレート、メタクリレート、アリル、ビニルエーテル、マレイミド、スチリル、アセチレン、ニトリル、フラン、シクロペンタジエノン、ペルフルオロエチレン、ベンゾシクロブテン(BCB)
、ピロン、プロピオレートまたはオルト−ジアセチレン基のような反応性基を含有する熱可塑性ポリマーは、マトリックス前駆体と化学結合を形成し得る。その後、該熱可塑性ポリマーは除去されてマトリックス中に気孔(空孔)を残すことができる。
【0068】
このような熱可塑性ポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸およびポリビニルピリジン等が挙げられる。
前記マトリックス前駆体と反応するように設計されたポリマーは、ホモポリマーもしくはコポリマー、またはそれらの混合物であってもよい。
【0069】
これらの熱可塑性ポリマー上には、1個の反応性基または多数の反応性基が存在してもよい。反応性基の数およびタイプは、該熱可塑性ポリマーがペンダント状物質としてまたはブロックとしてマトリックス前駆体と結合するかにより適宜選択することができる。該ポリマーは、構造上において線状、分岐状、超分岐状、樹枝状または星様状であり得る。
【0070】
空孔形成剤としてのポリマーの好適な分子量は、マトリックス前駆体およびそれが重合、硬化し得られたマトリックスとの相溶性、絶縁膜中の空孔サイズ、等のような様々な因子により適宜選択することができる。しかしながら、一般に、空孔形成剤の数平均分子量(Mn)は、2000〜100,000であることが好ましい。より好ましくは数平均分子量は、5000〜50,000の範囲であり、さらに好ましくは5000〜35,000である。なお、狭い分子量分布(Mw/Mn:1.01〜1.5)のポリマーが好ましい。
【0071】
空孔形成剤は、また、絶縁膜に生成する空孔の大きさに対応した大きさの粒状物質であってもよい。このような物質としては、好ましくは0.5〜50nm、より好ましくは0.5〜20nmの平均直径を有する物質である。かかる物質の材質等に制限はなく、例としては、デンドリマーのような超分岐状ポリマー系およびラテックス粒子、特に架橋ポリスチレン含有ラテックスが挙げられる。
これらの物質の例としては、Dendritech,Inc.を通じて入手でき、また、Polymer J.(東京),Vol.17,117(1985)にTomalia等により記載されているポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、DSM Corporationから入手できるポリプロピレンイミンポリアミン(DAB−Am)デンドリマー、フレチェット型ポリエーテルデンドリマー(J.Am.Chem.Soc.,Vol.112,7638(1990)、Vol.113,4252(1991)にFrechet等により記載されている)、パーセク型液晶モノデンドロン、デンドロン化ポリマーおよびそれらの自己集合高分子(Nature,Vol.391,161(1998)、J.Am.Chem.Soc.,Vol.119,1539(1997)にPercec等により記載されている)、ボルトロンHシリーズ樹枝状ポリエステル(Perstorp ABから商業的に入手できる)が挙げられる。
【0072】
空孔形成剤は有機溶剤であってもよい。
本発明において空孔形成剤として有用な有機溶剤は、好ましくは、膜のマトリックスの熱分解温度より低い温度において気散するものである。
有機溶剤が空孔形成剤として機能する場合、たとえば次のような機構で空孔が形成される。本発明の膜形成用組成物中のマトリックス前駆体であるカゴ型構造を有する化合物またはそのプレポリマーもしくは部分架橋ポリマーを、最初に、液状またはガス状とした溶剤により膨潤し、次いで、膨潤した前駆体を、構造保全性を増大するために架橋し、その後、溶剤またはガスの溶剤を、真空または加熱を適用することにより除去し、空孔を形成
する。
【0073】
空孔形成剤として適当な溶剤は、メシチレン、ピリジン、トリエチルアミン、N−メチルピロリジノン(NMP)、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロヘキシルピロリジノン、およびジベンジルエーテル、ジグリム、トリグリム、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなエーテルまたはヒドロキシエーテル、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジクロロベンゼン、プロピレンカーボネート、ナフタレン、ジフェニルエーテル、ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドである。これらは、単独で使用しても、複数を併用してもよい。
【0074】
以上に示したような、マトリックス、即ちカゴ型構造を有する化合物由来の固形分と、種々の空孔形成剤の系においては、後述するように、例えば加熱により空孔形成剤を除去する場合には、加熱に伴い、空孔形成剤が気散もしくは分解する前にマトリックスが形成し、かつマトリックスが気散もしくは分解する前に空孔形成剤が好ましくは完全にまたは実質的に完全に気散もしくは分解するように選択されることが好ましい。マトリックスの架橋する温度と、空孔形成剤が気散もしくは分解する温度の差が大きいと、空孔形成剤の選択の幅が広くなる点で好ましい。
以上のような空孔形成剤を含有する膜形成用組成物により、低誘電率、高機械強度である、微小な空孔を有する絶縁膜を形成でき、電子デバイスなど半導体素子などに用いられる層間絶縁膜等として利用できる。
【0075】
なお、本発明においては、空孔形成剤を用いずとも、カゴ構造が少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、かつ、該組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であるようにカゴ型構造を有する化合物を使用した膜形成用組成物(絶縁膜形成用塗布液ともいう)によっても、優れた機械的強度とともに、低誘電率を有する絶縁材料が得られることを見出した。
【0076】
なお、本発明の膜形成用組成物には、絶縁膜の諸特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤、シランカップリング剤などの添加剤を添加してもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシド、ペンチルパーオキシド、ヘキシルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、これらの加水分解物あるいはその脱水縮合物等が挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、添加剤の用途または膜形成用組成物の固形分濃度によって適当な範囲が存在するが、総量として、膜形成用組成物の全量に対して、好ましくは0.001質量%〜10質量%、より好ましくは0.01質量%〜5質量%、特に好ましくは0.05質量%〜2質量%である。
【0077】
また、上記膜形成用組成物により得られる絶縁材料の密着性を向上すべく検討の結果、接着促進剤を使用することにより密着性を向上させることができることを見出した。
【0078】
本発明の密着性に優れる絶縁材料は、カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物から形成されたポリマー(カゴ型構造を含むポリマー)および接着促進剤を含有する。この絶縁材料は、カゴ型構造を含む化合物および接着促進剤を含有する組成物(以降、絶縁材料形成用組成物ともいう)を、例えば、基板上に塗設、乾燥、好ましくは更に加熱し、カゴ型構造を含むポリマーおよび接着促進剤を有する膜として形成することができる。また、基板上に接着促進剤を塗設、引き続き、後述のカゴ型構造を含む化合物を含有する組成物を塗設し、乾燥、好ましくは更に加熱し、カゴ型構造を含むポリマーおよび接着促進剤を有する膜として形成することもできる。
【0079】
本発明に用いられる接着促進剤の代表的な例は、シラン、好ましくはアルコキシ・シラン(例えばトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、アリルトリメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン)等のオルガノシラン、アセトキシシラン(例えばビニルトリアセトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、およびこれらの加水分解物あるいは脱水縮合物、ヘキサメチルジシラザン[(CH33−Si−NH−Si(CH33]、または、アミノシラン・カプラー、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、またはキレート(例えば、酸化アルミニウムを形成する点から、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート[((イソC37O)2Al(OCOC25CHCOCH3))]、アルミニウム・アルコキシド)などを挙げることができる。これらの材料を混合して用いてもよい。また、接着促進剤として市販されているものを用いてもよい。
【0080】
膜形成用組成物中の接着促進剤の添加量は、全固形分に対して、一般的には0.05質量%〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
なお、接着促進剤を含有する膜形成用組成物については、後で詳述する。
【0081】
<カゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜の調製>
上記の膜形成用組成物により塗膜を形成し、乾燥、好ましくは更に加熱することにより、カゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜を形成することができる。
カゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜は、上記膜形成用組成物を、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により、基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
【0082】
塗布後に、加熱することによって、架橋させ、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁膜とすることが好ましい。この加熱処理の最適条件は、加熱温度が好ましくは200〜450℃、より好ましくは300〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、加熱時間は好ましくは1分〜2時間が好ましく、より好ましくは10分〜1.5時間であり、特に好ましくは30分〜1時間である。加熱処理は数段階で行っても良い。
【0083】
カゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜の膜厚は、特に制限は無いが、0.001〜100μmであることが好ましく、0.01〜10μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。
【0084】
より良好な特性(誘電率、機械強度)を得る点から、絶縁膜を構成する全炭素原子に占
めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜95%、さらに好ましくは60%〜90%である。
また、このような絶縁膜の形成は、前述のように、膜形成用組成物の調製において、膜形成用組成物中の全固形成分の総炭素数に対する、カゴ型構造の総炭素数の比率を調整することで達することができる。
【0085】
なお、空孔形成剤を添加せずとも、カゴ構造が少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、かつ、該組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であるようにカゴ型構造を有する化合物を含有する膜形成用組成物によって、優れた機械的強度とともに、低誘電率を有する絶縁膜が得られる。
【0086】
<カゴ型構造を有する化合物と空孔形成剤を含む膜形成用組成物>
カゴ型構造を有する化合物と空孔形成剤を含む膜形成用組成物は、膜のマトリックス前駆体であるカゴ型構造を有する化合物、と空孔形成剤を含有する。
【0087】
本発明の膜形成用組成物は、マトリックス前駆体及び空孔形成剤とともに、上述したような溶剤を含有し、塗布液として好適な組成物とすることができる。
【0088】
空孔形成剤の量に対するマトリックス前駆体の量は、所望の多孔度を生じるように調整される。通常は、空孔形成剤およびマトリックス前駆体の合計質量を基準として空孔形成剤の割合は、2〜70質量%が好ましく、5〜60質量%が、より好ましく、10〜50質量%が最も好ましい。
【0089】
空孔形成剤およびマトリックス前駆体は基板への溶液の施用に先だって単に混合されてもよく、部分的に反応されていてもよい。空孔形成剤は、膜形成用組成物に、該組成物を塗布液として用いるまでの様々な段階において添加することができる。
【0090】
<空孔形成剤を含有する膜形成用組成物による絶縁膜の形成>
絶縁膜は、本発明の空孔形成剤を含有する膜形成用組成物を塗布液として、例えば、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により、基板に塗布した後、加熱処理することにより形成することができる。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
【0091】
例えば、空孔形成剤を含有する塗布液を基板に塗布し、溶剤を除去(乾燥)し、マトリックス前駆体の塗膜を形成し、マトリックス前駆体の更なる重合(硬化)を引き起こすのに十分な条件下で焼き付けを行う。焼付け温度は、マトリックス前駆体の物性等により適宜選択することができる。
【0092】
例えば、空孔形成剤が、前記ポリマーや粒状物質である場合、基板への前記組成物の施用後、溶剤を、好ましくは中温(例えば40〜250℃)への加熱により、除去すること(乾燥)が好ましい。次いで、十分な温度に急速に加熱することで、マトリックス前駆体を架橋することが好ましい。その後、空孔形成剤を気散もしくは分解するのに十分な温度への加熱により除去することが好ましい。
乾燥(溶剤除去)、硬化および空孔形成剤の気散又は分解は別々の加熱工程(多段加熱)により行ってもよく、また、単一加熱工程で行ってもよい。そして多段加熱段階が用いられる場合、いずれの加熱工程で、乾燥(溶剤除去)、硬化および空孔形成剤の気散又は分解いずれかの一つ以上が生じていていればよい。
【0093】
一つの好ましい具体的態様によれば、塗布液を塗布した基板を、急速硬化を引き起こすのに十分な、但し空孔形成剤の分解温度もしくは気散温度未満の温度に加熱する。この急速加熱工程を行うための適当な方法としては、例えばホットプレート上での焼付けおよび赤外線ランプ下での急速熱アニールが挙げられる。組成物(塗布液)は、まず、初期硬化工程として、少なくとも20℃/秒、より好ましくは少なくとも50℃/秒の速度にて、好ましくは300℃、より好ましくは350℃を越える温度に昇温される。初期硬化工程の最終温度での保持時間は、10〜400分間が好ましい。この初期硬化工程においては、空孔形成剤およびマトリックスの構造を固定するのに十分にマトリックスが硬化されていればよく、完全硬化されていなくてもよい。次いで、少なくとも1つの追加的加熱工程が、硬化を完全に完了させるために、また、場合により、空孔形成剤を気散もしくは分解するために行われる。この追加的加熱工程の温度は、好ましくは370℃を越える、より好ましくは390℃を越える温度である。追加的加熱工程での保持時間は10〜400分間が好ましい。
【0094】
別の具体的態様によれば、好ましくは少なくとも20℃/秒、より好ましくは少なくとも50℃/秒の速度にて、硬化および空孔形成剤の気散もしくは分解の両方を引き起こすのに十分な温度(例えば、300〜450℃、保持時間10〜400分間)への単一急速加熱工程を行ってもよい。この単一急速加熱工程は、乾燥後または乾燥工程を別に設けないで行うことができる。
【0095】
膜を多層化する場合には、上記塗布以降の各工程は、繰り返し行ってもよい。また、多孔質膜を形成した後、その膜は、集積回路物品および他の超小型電子装置の製造において所望されるような溝、バイア、穴を形成するために、公知の方法によりエッチングまたは作像されてもよい。
【0096】
本発明の絶縁膜においては、好ましくは空孔形成剤の少なくとも80パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセント、さらに好ましくは少なくとも95パーセントが除去されることが好ましい。空孔形成剤が除去されている程度は、赤外分光法、透過電子顕微鏡法、等のような技法により確認することができる。例えば空孔形成剤がポリマーである場合、空孔形成剤が、膜から拡散し得る低分子量種に分解する場合に、空孔形成剤の除去が起こり得る。例えば、熱可塑性空孔形成剤の場合、好ましくは少なくとも80パーセント、より好ましくは少なくとも90パーセント、さらに好ましくは、少なくとも95パーセントは、そのモノマー単位またはより小さい単位に分解することが好ましい。
【0097】
空孔形成剤を除去する方法としては、上記の好ましい例として説明した加熱による方法を含めていかなる方法で除去してもよい。該加熱による方法を行う雰囲気は、組成物中の各成分の性質等に応じて適切に選択されていればよく、酸素の不存在下で行ってもよいし、空孔形成剤の除去を促進するために酸素を存在させて行ってもよく、さらには酸素を添加して行ってもよい。酸素を存在させる手法は、マトリックスが比較的熱酸化的に安定である場合特に望ましい。
【0098】
例えば、ポリスチレン含有の空孔形成剤が用いられる場合、加熱は、酸素の不存在下で行われることが好ましい。
【0099】
空孔形成剤はまた、溶剤によりマトリックスから効果的に溶解除去する湿式溶解によって除去されてもよく、また、空孔形成剤を選択的に除去するようにプラズマ化学が用いられる乾式すなわちプラズマ除去により除去されてもよい。たとえば、上記に列挙されたもののような溶剤、または超臨界ガスに、以下の「分散第2相」として示す物質を溶解させ、空孔形成剤を除去するために用いてもよい。分散第2相は、ナノ規模レベルにて分散でき、マトリックス/空孔形成剤系中に拡散でき、出ていくことができ、かつ、上記溶剤中
に溶解されることが可能であるいかなる物質でもよい。例えば、熱可塑性物質、ジブロックポリマー、無機物質等が挙げられる。
【0100】
マトリックス前駆体、または、それにより形成されたマトリックスの被膜(一般的は厚さ0.1〜5μm)は、必要により、化学的機械的研磨(CMP)により滑らかにしてもよい。空孔形成剤は、CMP工程の前後のいずれで除去してもよい。
【0101】
本発明の絶縁膜の膜厚には特に制限は無いが、0.001〜100μmであることが好ましく、0.01〜10μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。
【0102】
得られた絶縁膜中の空孔の密度は、絶縁膜の比誘電率を2.5未満に一層好ましくは2.2未満に下げるのに十分であることが好ましい。好ましくは、空孔の濃度は、絶縁膜の総容積を基準として5〜60容量パーセントが好ましく、10〜50容量パーセントがより好ましく、15〜40容量%がさらに好ましい。
【0103】
空孔の平均直径は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは2nm以下、最も好ましくは1nm以下である。
なお、空孔の平均直径は、X線散乱測定装置により測定できる。
【0104】
<カゴ型構造を含むポリマー及び接着促進剤を含む絶縁材料>
カゴ型構造を含むポリマー及び接着促進剤を含む絶縁材料は、上述したカゴ型構造を含む化合物および接着促進剤を含有する絶縁材料形成用組成物を、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により、基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
【0105】
なお、塗布後、加熱処理によって、カゴ型構造を有する化合物を互いに架橋して、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁材料とすることが好ましい。この加熱処理の最適条件は、加熱温度が好ましくは200〜450℃、より好ましくは300〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、加熱時間は好ましくは1分〜2時間が好ましく、より好ましくは10分〜1.5時間であり、特に好ましくは30分〜1時間である。加熱処理は数段階で行っても良い。
【0106】
絶縁材料の膜厚には、特に制限は無いが、0.001〜100μmであることが好ましく、0.01〜10μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。
絶縁材料中の接着促進剤の含有量は、全固形分に対して、一般的には0.05質量%〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
このようにして、カゴ型構造を有する化合物と接着促進剤とを含む絶縁材料形成用組成物から、カゴ型構造を含むポリマーと接着促進剤とを含む絶縁材料を形成することができる。
【0107】
また、本発明のカゴ型構造を含むポリマーおよび接着促進剤を含有する絶縁材料は、基板上に接着促進剤を塗設し、引き続き、カゴ型構造を含む化合物を含有する組成物を塗設し、乾燥、好ましくは更に加熱し、カゴ型構造を含むポリマーおよび接着促進剤を有する膜としても得ることができる。
接着促進剤の塗設は、接着促進剤を、適当な溶媒(例えば、シクロヘキサノン、プロピ
レングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)に溶解した、例えば0.01質量%〜5質量%の溶液を塗布、過剰溶液を乾燥などで除去し、必要により加熱などの処理を行い、接着促進剤の塗設量は、膜厚として、一般的には1A〜500A、好ましくは10A〜200Aである。
【0108】
次いで、前述の絶縁材料形成用組成物におけるのと同様にして、接着促進剤を添加しないカゴ型構造を有する化合物を含む組成物(接着促進剤を必須としない以外は前述の絶縁材料形成用組成物と同様の組成物)を塗設、乾燥、好ましくは更に加熱して、カゴ型構造を含むポリマーおよび接着促進剤を有する絶縁材料を形成することができる。
【0109】
接着促進剤の塗設は、例えば、接着促進剤としてアルミニウムモノエチルアセトアセテートジ−イソプロピレートのキレートを用いる場合、基板上へ該キレートのトルエン溶液を広げて、次いで酸素中で350℃で30分間ベーキングして、表面上に非常に薄い(例えば5nm)酸化アルミニウムの接着促進層を形成することができる。
【0110】
より良好な特性(誘電率、機械強度)を得る点から、絶縁材料を構成する総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜95%、さらに好ましくは60%〜90%である。また、このような絶縁材料の形成は、絶縁材料形成用組成物について上述したように、絶縁材料形成用組成物あるいは接着促進剤を含有せず、カゴ型構造を有する化合物を含む組成物の調製において、全固形分の総炭素原子数に対する、カゴ型構造の総炭素原子数の比率を調整することで達することができる。この場合、空孔形成剤のように絶縁材料形成後に絶縁材料中に残らないものは固形分としない。
【0111】
<ハイブリッド型絶縁膜>
上記のカゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜は、ハイブリッド型絶縁膜への応用も可能である。
本発明が提供するハイブリッド型絶縁膜は、下部絶縁膜もしくは上部絶縁膜の一方がカゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物から形成された、カゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜であり、この絶縁膜は、上述のカゴ型構造を有する化合物及びその他の任意の成分を有機溶剤などに溶解して調製した膜形成用組成物により塗膜を形成し、乾燥、好ましくは更に加熱することにより、形成することができる。
【0112】
カゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜とともにハイブリッド型絶縁膜を構成する他方の絶縁膜は、前述のカゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜と元素組成が異なるかぎり、特に限定されるものではない。ここで、元素組成が異なるとは、構成する元素の種類もしくは比率が異なることを意味する。
【0113】
この他方の絶縁膜は、ケイ素原子を含むことが好ましく、また、さらに酸素原子、水素原子および炭素原子等を含んでもよい。
このような絶縁膜の例としては、式(II)で表される化合物やその混合物の加水分解・縮合物を塗布・焼成することによって製造した絶縁膜が挙げられる。
nSiX(4-n) (II)
Rは水素原子又は置換基である。Xは加水分解性基を表す。nは0〜3の整数である。
他の例としては、CVDによって製造したSiOC型絶縁膜を挙げることができる。これらの絶縁膜は空孔を有していることが誘電率低下のために好ましい。具体的には、特開2003−253206号や特開2004−59736号に記載のようなシリカ系膜を挙げることができる。
この絶縁膜の膜厚は、0.05〜2μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。
【0114】
他方の絶縁膜は、所望の絶縁膜に対応する成分を含有する塗布液を用いて、前述のカゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜におけるのと同様にして形成することができる。
例えば、スピンコート法やCVD法によって製造することができる。スピンコート法による製造は例えば、特開2003−253206号や特開2004−59736号に開示されている方法で行うことができる。また、CVD法による製造は市販されているCVD装置を用いて製造することができる。
【0115】
本発明においては、前述のカゴ型構造を含むポリマーを含有する絶縁膜と、他方の絶縁膜の上下二層構造により、ハイブリッド型絶縁膜を形成している。前記2種の絶縁膜のうち、どちらが下部絶縁膜であり、どちらが上部絶縁膜であってもよい。上下二層構造の形成方法としては、例えば、それぞれの層の形成方法として既に述べた方法を順次行うことで、形成することができる。
【0116】
本発明の絶縁膜は、半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
なお、別の用途として本発明の膜に電子ドナーまたはアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することも出来る。
【実施例】
【0117】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
〔実施例A:カゴ型構造を有する化合物及び空孔形成剤を含む膜形成用組成物〕
【0118】
<合成例1>
Macromolecules., 24, 5266 (1991) に記載の方法により4,9−ジブロモジアマンタンを合成した。次いで、500mlフラスコに市販のp−ジビニルベンゼン1.30g、4,9−ジブロモジアマンタン3.46g、ジクロロエタン200ml、および塩化アルミニウム2.66gを仕込み、内温70℃で24時間攪拌した。その後、200mlの水を加え、有機層を分液した。無水硫酸ナトリウムを加えた後、固形分を濾過で除去し、ジクロロエタンを半分量になるまで減圧下で濃縮し、この溶液にメタノールを300ml加え、析出した沈殿を濾過した。このようにして、質量平均分子量が約10000のポリマー(A−4)を2.8g得た。
また、同様にフリーデルクラフツ反応によって、質量平均分子量が約10000のポリマー(A−12)を合成した。
【0119】
得られたポリマー(A−4)及び(A−12)が有する構造を下記に示す。
nは正数である。
【0120】
【化7】

【0121】
<合成例2>
ジアマンタンを原料に用いて、Macromolecules., 24, 5266-5268 (1991) に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン10gとおよび3,5−ビス(フェニルエチニル安息香酸)のポリスチレンエステル(数平均分子量(Mn):36,500)2gを窒素気流下で内温190℃で12時間攪拌した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。質量平均分子量20000のポリマー(A)を3.0g得た。
【0122】
<実施例1>
上記のポリマー(A−4)1.0gおよびアニオン重合ポリスチレン(Mn:8200)0.2gをシクロヘキサノン5.0mlおよびアニソール5.0mlの混合溶剤に加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に380℃のホットプレート上で30分加熱し、さらに425℃で60分間加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.12であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率(測定温度25℃、以降も同様)を測定したところ、2.2GPaであった。このフイルムのTEM観察の目視検査に基づいた平均空孔直径は4nmであった。
【0123】
<実施例2>
上記のポリマー(A−12)1.0gおよび8腕型ポリエチレングリコール150mgをガンマブチロラクトン5.0mlおよびアニソール5.0mlの混合溶剤に加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で180℃で60秒間加熱し、更に380℃のホットプレート上で30分加熱し、さらに425℃で60分間加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.17であった。また、ヤング率は3.0GPaであった。平均空孔直径は3nmであった。
【0124】
<実施例3>
合成例2で合成したポリマー(A)1.0gをシクロヘキサノン10.0mlに溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で110℃で90秒間加熱した後250℃で60秒間加熱して、更に窒素置換した420℃のオーブン中で60分加熱した。得られた膜厚0.50ミクロンの絶縁膜の比誘
電率は2.13であった。また、ヤング率は3.10GPaであった。平均空孔直径は1nmであった。
【0125】
<比較例1>
特表2002−530505号公報に記載の実施例に準じて下記の実験を行った。
数平均分子量8200のアニオン重合ポリスチレンを、モル比3:2の4,4′−ビス(2,4,5−トリフェニルシクロペンタジエン−3−オン)ジフェニルエーテルおよび1,3,5−トリス(フェニルエチニル)ベンゼンからのオリゴマー溶液に、固形分に関して20質量パーセント添加した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に380℃のホットプレート上で30分加熱し、さらに425℃で60分間加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.40であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、1.8GPaであった。このフイルムのTEM観察の目視検査に基づいた平均空孔直径は100nmであった。
【0126】
比較例1の比誘電率2.40及びヤング率1.8GPaに対し、実施例1〜3では比誘電率2.12〜2.17及び2.2〜3.10GPaであり、低誘電率であるとともに機械的強度にも優れていることがわかる。
【0127】
〔実施例B:カゴ構造が少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、かつ、該組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上であるようにカゴ型構造を有する化合物を含有する膜形成用組成物〕
【0128】
<実施例4>
合成例1で合成したポリマー(A−4)1.0gをシクロヘキサノン5.0mlおよびアニソール5.0mlの混合溶剤に加熱溶解し、塗布液を調製した。この絶縁膜形成用塗布液の全固形分に対するカゴ型構造(ジアマンタン)の総炭素数の比率は約58%である。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に400℃のホットプレート上で30分加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.52であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、7.2GPaであった。この塗膜の膜厚を光学式膜厚計を用いて50箇所で測定し、平均値を求めた。得られた膜厚の3σ(分散)を計算した結果、3.0%であった。
【0129】
<実施例5>
合成例1で合成したポリマー(A−12)1.0gをガンマブチロラクトン5.0mlおよびアニソール5.0mlの混合溶剤に加熱溶解し、塗布液を調製した。この絶縁膜形成用塗布液の全固形分に対するカゴ型構造(ジアマンタン)の総炭素数の比率は約36%である。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で180℃で60秒間加熱し、更に300℃のホットプレート上で10分加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.57であった。また、ヤング率は6.0GPaであった。得られた膜厚の3σを計算した結果、2.8%であった。
【0130】
<比較例2>
特表2004−504455号に記載の化合物(R−1)を本明細書に記載の方法に準じて合成した。
【0131】
【化8】

【0132】
化合物(R−1)1.0gをガンマブチロラクトン10.0mlに加熱溶解し、塗布液を調製した。この絶縁膜形成用塗布液の全固形分に対するカゴ型構造(ジアマンタン)の総炭素数の比率は約20%である。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で180℃で60秒間加熱し、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.65であった。また、ヤング率は3.0GPaであった。得られた膜厚の3σを計算した結果、5.2%であった。
【0133】
<合成例3>
ジアマンタンを原料に用いて、Macromolecules., 24, 5266-5268 (1991) に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン10gと1,2,4−トリクロロベンゼン50mlを窒素気流下で内温210℃で30時間攪拌した。反応液を室温にした後、メタノール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。質量平均分子量170000のポリマー(B)を6.0g得た。
【0134】
<実施例6>
合成例3で合成したポリマー(B)1.0gを1,2−ジクロロベンゼン13.0ml
に加熱溶解し、塗布液を調製した。この絶縁膜形成用塗布液の全固形分に対するカゴ型構造(ジアマンタン)の総炭素数の比率は約77%である。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.45であった。また、ヤング率は8.0GPaであった。得られた膜厚の3σを計算した結果、2.5%であった。絶縁膜を光学顕微鏡で観察したところ、ブツの発生は見られなかった。
【0135】
<比較例3>
アダマンタンを原料に用いて、Macromolecules., 24, 5266-5268 (1991) に記載の合成法に従って、1,3−ジエチニルアダマンタンを合成した。次に、1,3−ジエチニルアダマンタン10gと1,2,4−トリクロロベンゼン50mlを窒素気流下で内温210℃で30時間攪拌した。反応液を室温に冷却して、メタノール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。質量平均分子量150000のポリマー(C)を6g得た。
ついでポリマー(C)1.0gを1,2−ジクロロベンゼン15mlに加熱溶解した。ポリマーの溶剤への溶解性が低いため不溶物があった。この液を0.5ミクロンのフィルターで濾過をして、さらに濾液を0.1ミクロンのフィルターでろ過をして塗布液を調製した。この溶液をシリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.60であった。また、ヤング率は3.0GPaであった。得られた膜厚の3σを計算した結果、6.5%であった。また、光学顕微鏡で観察すると無数のブツの発生が見られた。
【0136】
<合成例4>
4,9−ジエチニルジアマンタン20g、Pd(PPh3)4 244mg、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン 100mlを3つ口フラスコに入れ、窒素気流下、内温200℃で10時間加熱攪拌した。室温まで冷却後反応液中の不溶物をろ過により除去した。得られた濾液にイソプロピルアルコールを添加して析出した固体をろ過した。さらに得られた固体をイソプロピルアルコール中に懸濁させて撹拌後、再度濾過した。淡黄色のポリマー(D)を6g得た。GPC測定の結果、質量平均分子量は約2万であった。
【0137】
<実施例7>
ポリマー(D)1.0gをシクロヘキサノン7.3g中で25℃で60分間撹拌、溶解した。目視よりポリマーが完全に溶解していることを確認した。この絶縁膜形成用塗布液の全固形分に対するカゴ型構造(ジアマンタン)の総炭素数の比率は78%であった。
該シクロヘキサノン溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン(TFE)製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートした。この塗膜を窒素置換したファーネス中で400℃で60分間焼成した。膜厚0.5ミクロンの均一な膜が得られ、この膜をシクロヘキサノンに室温で5時間浸漬したが膜圧は全く減少しなかった。この膜のFT−IRを測定した結果、アセチレン基に帰属される2100cm-1、3300cm-1のピークが消失していた。
得られた膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.43であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、7.0GPaであった。
【0138】
<実施例8>
シクロヘキサノンをアニソールに変更した他は実施例7と全く同様にして、膜を作成し
て特性を評価した結果、実施例7と同様、良好な結果が得られた。
【0139】
<合成例5>
1,6−ジエチニルジアマンタン 2.0g、Pd(PPh3)4 8mg、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン 10mlを3つ口フラスコに入れ、窒素気流下、内温200℃で35時間加熱攪拌した。室温まで冷却後反応液中の不溶物をろ過により除去した。得られた濾液にイソプロピルアルコールを添加して析出した固体をろ過した。さらに得られた固体をイソプロピルアルコール中に懸濁させて撹拌後、再度濾過した。淡黄色のポリマー(E)を0.73g得た。GPC測定の結果、質量平均分子量は約1.7万であった。
【0140】
<実施例9>
ポリマー(E)0.5gをo−ジクロロベンゼン3.7g中で25℃で60分間撹拌、溶解した。目視よりポリマーが完全に溶解していることを確認した。この絶縁膜形成用塗布液の全固形分に対するカゴ型構造(ジアマンタン)の総炭素数の比率は78%であった。
該シクロヘキサノン溶液を0.2ミクロンのTFE製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートした。この塗膜を窒素置換したファーネス中で400℃で60分間焼成した。膜厚0.5ミクロンの均一な膜が得られ、この膜をo−ジクロロベンゼンに室温で5時間浸漬したが膜圧は全く減少しなかった。
得られた膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.37であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、6.5GPaであった。
【0141】
比較例2の比誘電率2.65及びヤング率3.0GPa、比較例3の比誘電率2.60及びヤング率3.0GPaに対し、実施例4〜9では比誘電率2.37〜2.57及び6.0〜8.0GPaであり、低誘電率であるとともに機械的強度にも優れていることがわかる。
【0142】
本発明の絶縁膜は比較例に対して、誘電率、ヤング率、面内膜厚均一性が優れていることが判る。さらには、絶縁膜中にポリマーの凝集が原因と推定されるブツが発生しないことが判った。これらは従来知見からは予測することの困難な極めて優れた効果である。
【0143】
〔実施例C:カゴ型構造を有する化合物および接着促進剤を含む絶縁材料形成用組成物〕
【0144】
<合成例6>
3.92gのビニルトリアセトキシシランと1.13gのフェニルトリメトキシシランを95.15gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに加えて有機シラン溶液を調製した。この溶液に全シラン含量を基準にして等モル質量の水を加え、溶液を一晩振とうした。次いで溶液を0.1μmフィルターでろ過し、接着促進剤溶液を得た。<合成例7>
ジアマンタンを原料に用いて、Macromolecules., 24, 5266-5268(1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン10gと1,3,5−トリイソプロピルベンゼン50mlとPd(PPh3)4 120mgを窒素気流下で内温190℃で12時間攪拌した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール300mlを添加した。析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。質量平均分子量20000のポリマー(F)を3.0g得た。
【0145】
<実施例10>
合成例6で得られた接着促進剤溶液をシリコンウエハー上にスピンコートし、ウエハー
をホットプレートにより180℃で60秒間ベーキングした。膜厚は132Aであった。
一方、合成例1で合成したポリマー(A−4)1.0gをシクロヘキサノン5.0mlおよびアニソール5.0mlの混合溶剤に加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、前記の接着促進剤で処理したシリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に400℃のホットプレート上で30分加熱した。得られた膜厚0.5ミクロンの絶縁膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.54であった。また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、6.8GPaであった。CSMインスツルメンツ社製ナノスクラッチテスターを使用して密着力を測定したところ、8.1mNであった。
【0146】
<実施例11>
接着促進剤としてダウ・ケミカル社製AP4000をシリコンウエハー上にスピンコートし、ウエハーをホットプレートにより180℃で60秒間ベーキングした。膜厚は132Aであった。一方、合成例7で合成したポリマー(F)1.0gをシクロヘキサノン10mlに加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、前記の接着促進剤で処理したウエハーにスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で180℃で60秒間加熱し、更に300℃のホットプレート上で10分加熱した。得られた膜厚0.45ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.47であった。また、ヤング率は6.0GPaであった。密着力は8.3mNであった。
【0147】
<実施例12>
合成例7で合成したポリマー(F)1.0gをシクロヘキサノン10.0mlに溶解し、塗布液を調製した。これに合成例4で得られた接着促進剤溶液を1.0ml加えた。この溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で110℃で90秒間加熱した後250℃で60秒間加熱して、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分加熱した。得られた膜厚0.50ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.49であった。また、ヤング率は6.6GPaであった。密着力は、9.1mNであった。
【0148】
<比較例4>
合成例7で合成したポリマー(F)1.0gをシクロヘキサノン10.0mlに溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.2ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウエハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で110℃で90秒間加熱した後250℃で60秒間加熱して、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分加熱した。得られた膜厚0.47ミクロンの絶縁膜の比誘電率は2.50であった。また、ヤング率は6.4GPaであった。密着力は4.1mNであった。
【0149】
実施例10〜12は、比較例4に対し、密着力に優れていることがわかる。
【0150】
〔実施例D:ハイブリッド型絶縁膜〕
<実施例13>
合成例1で合成したポリマー(A−4)1.0gをシクロヘキサノン5.0mlおよびアニソール5.0mlの混合溶剤に加熱溶解し、塗布液(膜形成用組成物)を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で6
0秒間加熱し、更に400℃のホットプレート上で30分加熱し、下部絶縁膜を作製した。膜厚は260nmであった。絶縁膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、比誘電率は2.50であった。その上に特開2003−253206の実施例1に記載の方法に従って上部絶縁膜を作製した。
【0151】
<実施例14>
合成例7のポリマー(F)1.0gをシクロヘキサノン10.0mlに加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に400℃のホットプレート上で30分加熱し、下部絶縁膜を作製した。絶縁膜の膜厚は240nmであり、比誘電率は2.42であった。その上に特開2003−253206の実施例1に記載の方法に従って上部絶縁膜を作製した。
【0152】
<実施例15>
特開2003−253206号公報の実施例1に記載の方法に従ってシリコンウエハ上に下部絶縁膜を作製した。膜厚は260nm、比誘電率は2.21であった。合成例7のポリマー(F)1.0gをシクロヘキサノン10mlに加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、下部絶縁膜の上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に400℃のホットプレート上で30分加熱し、上部絶縁膜を作製した。配線間絶縁膜として機能する上部絶縁膜の誘電率は実施例2から2.42と推定できる。
【0153】
<実施例16>
アプライドマテリアル(AMAT)社製のCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に、AMAT社製絶縁膜Black Diamondを用いて下部絶縁膜を作製した。膜厚は160nm、比誘電率は2.99であった。合成例7のポリマー(F)1.0gをシクロヘキサノン10mlに加熱溶解し、塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、下部絶縁膜の上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で150℃で60秒間加熱し、更に400℃のホットプレート上で30分加熱し、上部絶縁膜を作製した。配線間絶縁膜として機能する上部絶縁膜の誘電率は実施例2から2.42と推定できる。
【0154】
<比較例5>
実施例15の上部絶縁膜にダウケミカル社製SiLKを用いた以外は実施例15と同様にしてハイブリッド絶縁膜を形成した。配線間絶縁膜として機能する上部絶縁膜の誘電率はSiLK単独で評価した比誘電率2.63と同じであると推定できる。
【0155】
以上より、本発明のハイブリッド型絶縁膜は、比較例5におけるハイブリッド絶縁膜よりも、配線間絶縁膜として誘電率が低いため、半導体デバイス用絶縁膜として優れた性能を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゴ型構造を有する化合物および空孔形成剤を含むことを特徴とする膜形成用組成物。
【請求項2】
カゴ型構造を有する化合物が有するカゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
膜形成用組成物に含まれる全固形分中の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率が30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
空孔形成剤がポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
空孔形成剤がカゴ型構造を有する化合物と結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
空孔形成剤が有機溶剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した、空孔の平均直径が5nm以下である絶縁膜。
【請求項8】
カゴ型構造を有する化合物および有機溶剤を含有することを特徴とする膜形成用組成物。但し、当該カゴ構造は少なくとも11個以上の炭素原子で構成され、かつ、該組成物に含まれる全固形分中の総炭素数に占めるカゴ型構造の総炭素数の比率は30%以上である。
【請求項9】
カゴ型構造が飽和脂肪族炭化水素構造であることを特徴とする請求項8に記載の膜形成用組成物。
【請求項10】
カゴ型構造が2〜4価であることを特徴とする請求項8又は9に記載の膜形成用組成物。
【請求項11】
カゴ型構造がジアマンタン構造であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項12】
カゴ型構造がポリマーの主鎖の一部であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項13】
カゴ型構造を有する化合物が下記式(I)で表される少なくとも一つの化合物の重合体である請求項12に記載の膜形成用組成物。
【化1】

式(I)中、
Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数
2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数0〜20のシリル基を表す。
mは1〜14の整数を表す。
Xはハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数0〜20のシリル基を表す。
nは0〜13の整数を表す。
【請求項14】
前記式(I)において、Rが水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、m=1〜3であり、かつn=0であることを特徴とする、請求項8〜13のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項15】
カゴ型構造を有する化合物が窒素原子を有さないことを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
【請求項17】
請求項8〜15のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜を有する電子デバイス。
【請求項18】
カゴ型構造を有する化合物および接着促進剤を含む絶縁材料形成用組成物。
【請求項19】
カゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする請求項18に記載の絶縁材料形成用組成物。
【請求項20】
該絶縁材料形成用組成物中の絶縁材料を構成する全固形分の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率が30%以上であることを特徴とする請求項18又は19に記載の絶縁材料形成用組成物。
【請求項21】
接着促進剤がシラン化合物であることを特徴とする請求項18〜20のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
【請求項22】
カゴ型構造を有する化合物を含む絶縁材料形成用組成物から形成されたポリマーおよび接着促進剤を含む絶縁材料。
【請求項23】
カゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする請求項22に記載の絶縁材料。
【請求項24】
該絶縁材料形成用組成物中の絶縁材料を構成する全固形分の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率が30%以上であることを特徴とする請求項22又は23に記載の絶縁材料。
【請求項25】
接着促進剤がシラン化合物である請求項22〜24のいずれかに記載の絶縁材料。
【請求項26】
異なる元素組成を有する下部絶縁膜および上部絶縁膜から構成されるハイブリッド型絶縁膜であって、該下部絶縁膜もしくは該上部絶縁膜の一方が、カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物から形成されたことを特徴とするハイブリッド型絶縁膜。
【請求項27】
該下部絶縁膜もしくは該上部絶縁膜の一方が、カゴ型構造を有する化合物を含む膜形成用組成物から形成され、他方がケイ素原子を含むことを特徴とする請求項26に記載のハイブリッド型絶縁膜。
【請求項28】
該カゴ型構造が飽和炭化水素構造であることを特徴とする請求項26または27に記載のハイブリッド型絶縁膜。
【請求項29】
該膜形成用組成物に含まれる全固形分中の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率は30%以上であることを特徴とする請求項26〜28のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。
【請求項30】
該ケイ素原子を含む絶縁膜がさらに酸素原子、水素原子および炭素原子含む、請求項27〜29のいずれかに記載のハイブリッド型絶縁膜。

【公開番号】特開2006−265513(P2006−265513A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164943(P2005−164943)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】