説明

膜形成用組成物、絶縁膜、及び、電子デバイス

【課題】低誘電率であり、かつ、機械強度に優れた膜を形成することができる膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物及び/又は式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことを特徴とする膜形成用組成物。R1はそれぞれ独立に水素原子又は−(R2n−R3を表し、R1のうちの少なくとも2つは−(R2n−R3であり、R2はそれぞれ独立に式(2)〜(5)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、R3はそれぞれ独立に水素原子又は式(6)〜(8)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、nは1〜4の整数を表し、波線部分は他と結合する部分を表す。ただし、−(R2n−R3は式(9)又は式(10)で表される基を除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、絶縁膜、及び、電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
一般に低誘電率を示す化合物として飽和炭化水素で構成されるポリマーが挙げられる。これらのポリマーは含ヘテロ原子ユニットや芳香族炭化水素ユニットで構成されるポリマーと比べてモル分極が小さくなるため、より低い誘電率を示す。しかし、例えばポリエチレン等のフレキシビリティーの高い炭化水素は耐熱性が不十分であり、電子デバイス用途に利用することはできない。
それに対して、リジッドなカゴ構造の飽和炭化水素であるアダマンタンやジアマンタンを分子内に導入したポリマーが開示されており、低い誘電率を有することが開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−292878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低誘電率であり、かつ、機械強度に優れた膜を形成することができる膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、並びに、前記絶縁膜を有する電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、上記課題が下記の<1>、<3>又は<4>の構成により解決されることを見出した。好ましい実施態様である<2>と共に以下に示す。
<1> 下記式(1)で表される化合物、及び/又は、下記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことを特徴とする膜形成用組成物、
【0007】
【化1】

(式(1)中、R1はそれぞれ独立に、水素原子又は−(R2n−R3を表し、R1のうちの少なくとも2つは−(R2n−R3であり、R2はそれぞれ独立に、下記式(2)〜式(5)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は下記式(6)〜式(8)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、nは1〜4の整数を表す。ただし、−(R2n−R3は、下記式(9)又は式(10)で表される基を除く。)
【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

(式(2)〜(8)中、波線部分は他と結合する部分を表す。)
【0010】
【化4】

【0011】
<2> 有機溶剤を含む上記<1>に記載の膜形成用組成物、
<3> 上記<1>又は<2>に記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜、
<4> 上記<3>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低誘電率であり、かつ、機械強度に優れた膜を形成することができる膜形成用組成物、前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、並びに、前記絶縁膜を有する電子デバイスを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、下記式(1)で表される化合物、及び/又は、下記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことを特徴とする。
【0014】
【化5】

(式(1)中、R1はそれぞれ独立に、水素原子又は−(R2n−R3を表し、R1のうちの少なくとも2つは−(R2n−R3であり、R2はそれぞれ独立に、下記式(2)〜式(5)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は下記式(6)〜式(8)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、nは1〜4の整数を表す。ただし、−(R2n−R3は、下記式(9)又は式(10)で表される基を除く。)
【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

(式(2)〜(8)中、波線部分は他と結合する部分を表す。)
【0017】
【化8】

【0018】
(式(1)で表される化合物)
前記式(1)で表される化合物は、ビス(1−アダマンチル)エーテルにおける水素原子が結合している6つのメチン基の位置(R1、橋頭位)のうち2つ以上が特定の基により置換されている化合物である。
前記特定の基とは、−(R2n−R3であり、R2はそれぞれ独立に、前記式(2)〜式(5)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は前記式(6)〜式(8)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、nは1〜4の整数を表す。ただし、−(R2n−R3は、エチレン性不飽和二重結合及び炭素−炭素三重結合を有しない下記式(9)又は式(10)で表される基を除く。
なお、式(5)において、ベンゼン環上の2つの置換位置は、任意に選択することができる。
【0019】
−(R2n−R3は、少なくとも三重結合を有する基、すなわち、少なくとも式(4)又は式(5)で表される基を有する基であることが好ましく、エチニル基、又は、フェニルエチニル基であることがより好ましい。
なお、本発明において「エチレン性不飽和二重結合」とは、芳香環内にない炭素−炭素二重結合のことを表す。
【0020】
また、−(R2n−R3は、化合物の安定性や合成の容易性の点から、エチレン性不飽和二重結合及び/又は炭素−炭素三重結合が連続していない基であることが好ましく、下記式(A−1)〜式(A−9)で表される基であることがより好ましく、下記式(A−1)又は式(A−2)で表される基であることがさらに好ましい。
【0021】
【化9】

(式(A−1)〜式(A−9)中、Aはそれぞれ独立に、前記式(2)〜式(4)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、A’は前記式(6)又は式(7)で表される基よりなる群から選ばれた基を表す。)
【0022】
また、式(A−1)〜式(A−9)において、同一の式中のA及びA’は、エチレン性不飽和二重結合を有する基、又は、炭素−炭素三重結合を有する基のどちらか一方であることが好ましく、全て炭素−炭素三重結合を有する基であることがより好ましい。
【0023】
前記式(1)で表される化合物が有する−(R2n−R3の数は、2〜6であり、2〜4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
また、前記式(1)で表される化合物が2以上有する−(R2n−R3は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよいが、1つの化合物中における−(R2n−R3は全て同じであることが好ましい。
また、nが2以上である場合、2以上存在するR2は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
前記R2は、式(4)又は式(5)で表される基であることが好ましい。
前記R3は、水素原子又は式(7)又は式(8)で表される基であることが好ましい。
−(R2n−R3の置換位置は、R1の位置であれば、特に制限はなく、任意の位置であればよい。例えば、各アダマンチル基に1つづつ対称的に置換した化合物であってもよく、どちらか一方のアダマンチル基のみに2つ以上置換した化合物であってもよい。
【0024】
前記式(1)で表される化合物として、具体的には、下記に示す化合物であることが好ましい。なお、下記に示す化合物中におけるPhはフェニル基を表す。
【0025】
【化10】

【0026】
これらの化合物の中でも、(C−1)〜(C−4)が好ましく、(C−1)又は(C−2)が特に好ましい。
【0027】
(式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体)
本発明の膜形成用組成物は、式(1)で表される化合物、及び/又は、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことが好ましい。すなわち、前記重合体は、式(1)で表される化合物に由来するモノマー単位を少なくとも有する。
式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、式(1)で表される化合物に由来するモノマー単位を、10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することがより好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
また、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、式(1)で表される化合物のみを重合した重合体、又は、式(1)で表される化合物と式(1)で表される化合物以外の他の重合性化合物との共重合体であることが好ましく、式(1)で表される化合物のみを重合した重合体であることがより好ましい。
前記重合体に用いる式(1)で表される化合物における好ましい化合物は、前述した式(1)で表される化合物における好ましい化合物と同様である。
前記重合体に用いる式(1)で表される化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記他の重合性化合物としては、重合可能であれば特に制限はなく、公知の重合性化合物を用いることができる。
また、前記他の重合性化合物を使用する場合、他の重合性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の製造方法としては、特に制限はないが、重合開始剤存在下又は遷移金属触媒存在下で式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合する工程を含む方法であることが好ましく、ラジカル重合開始剤存在下で式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合する工程を含む方法であることがより好ましい。
【0029】
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、有機アゾ系化合物及びアルキルフェノン系化合物などが例示できる。その中でも、有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく、有機過酸化物が特に好ましい。
【0030】
有機過酸化物としては、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル 4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーイキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ 2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート等が好ましく例示できる。
【0031】
有機アゾ系化合物としては、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、ジメチル 2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が好ましく例示できる。
【0032】
アルキルフェノン系化合物としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン等が好ましく例示できる。
【0033】
また、ラジカル重合開始剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン等のジフェニルエタン誘導体を用いてもよい。
【0034】
重合開始剤は、1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、モノマー1モルに対して、0.001〜2モルであることが好ましく、0.01〜1モルであることがより好ましく、0.05〜0.5モルであることが特に好ましい。
【0035】
モノマーの重合反応は、遷移金属触媒の存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh34)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0036】
遷移金属触媒は、1種のみを使用しても、2種以上を併用してもよい。
遷移金属触媒の使用量は、モノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0037】
式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の重量平均分子量は、800〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000が特に好ましい。
式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体は、分子量分布を有する樹脂組成物として、本発明の膜形成用組成物に含まれていてもよい。
【0038】
重合反応で使用する溶剤は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。
例えば、水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−o−キシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。
【0039】
これらの中でより好ましい溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−o−キシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、さらに好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。
有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
【0040】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶剤の種類、濃度等によって異なるが、内温が、好ましくは0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、反応時間が、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0041】
(添加量)
本発明の膜形成用組成物における式(1)で表される化合物、及び、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の総添加量は、膜形成用組成物に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1.5〜20重量%であることが特に好ましい。
また、本発明の膜形成用組成物における式(1)で表される化合物、及び、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の総添加量は、膜形成用組成物の固形分に対して、20〜100重量%であることが好ましく、40〜100重量%であることがより好ましく、60〜100重量%であることがさらに好ましい。
ここで固形分とは、本発明の膜形成用組成物を用いて得られる膜を構成する全成分に相当する。
また、本発明の膜形成用組成物において、式(1)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体とは、どちらかを単独で使用しても、両方を併用してもよい。
【0042】
(金属含量)
本発明の膜形成用組成物には、不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。
また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうが好ましい。遷移金属含有量は、具体的には、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
本発明の膜形成用組成物の金属濃度は、本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。
X線源としてW(タングステン)線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010atom・cm-2以下が好ましく、50×1010atom・cm-2以下がより好ましく、10×1010atom・cm-2以下が特に好ましい。
また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10,000×1010atom・cm-2以下が好ましく、1,000×1010atom・cm-2以下がより好ましく、400×1010atom・cm-2以下が特に好ましい。また、ハロゲンとしてClも観測可能であり、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010atom・cm-2以下が好ましく、50×1010atom・cm-2以下がより好ましく、10×1010atom・cm-2以下が特に好ましい。
【0043】
(有機溶剤)
本発明の膜形成用組成物は、有機溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、特に限定はされないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられる。
有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
より好ましい有機溶剤は、1−メトキシ−2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましい有機溶剤は1−メトキシ−2−プロパノール、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン、アニソールである。
【0045】
(固形分濃度)
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは3〜10重量%である。
式(1)で表される化合物、及び/又は、式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体の溶解度は、25℃でシクロヘキサノンに対し、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上の溶解度である。
【0046】
(その他の添加剤)
さらに、本発明の膜形成用組成物には、得られる膜(好ましくは絶縁膜)の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着促進剤などの添加剤を添加してもよい。
【0047】
<コロイド状シリカ>
本発明に用いることができるコロイド状シリカとしては、いかなるコロイド状シリカを使用してもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶剤若しくは水に分散した分散液であり、好ましくは平均粒径5〜30nm、より好ましくは10〜20nm、固形分濃度が好ましくは5〜40重量%のものである。
【0048】
<界面活性剤>
本発明に用いることができる界面活性剤としては、いかなる界面活性剤を使用してもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤が特に好ましい。
【0049】
本発明に用いることができる界面活性剤の添加量は、膜形成用組成物の全量に対して、0.01重量%以上1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上0.5重量%以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に用いることができるシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましく、下記化学式を含む構造であることがより好ましい。
【0051】
【化11】

【0052】
上記式中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。また、Rが複数存在する場合、それぞれ同じあっても異なっていてもよい。
【0053】
本発明に用いることができるシリコーン系界面活性剤としては、例えば、BYK−306、BYK−307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0054】
本発明に用いることができるノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0055】
本発明に用いることができる含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0056】
本発明に用いることができるアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、アクリル酸系共重合体やメタクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0057】
<シランカップリング剤>
本発明に用いることができるシランカップリング剤としては、いかなるシランカップリング剤を使用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明に用いることができるシランカップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
<密着促進剤>
本発明に用いることができる密着促進剤としては、いかなる密着促進剤を使用してもよい。
密着促進剤としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。
密着促進剤の使用量は、本発明の膜形成用組成物の全固形分100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、特に0.05〜5重量部であることがより好ましい。
【0059】
<空孔形成因子>
本発明の膜形成用組成物には、膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては、特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用組成物で使用される溶剤との溶解性、前記式(1)で表される化合物、及び/又は、前記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。
また、この空孔形成剤の沸点又は分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。
分子量としては、好ましくは200〜50,000、より好ましくは300〜10,000、特に好ましくは400〜5,000である。
添加量は、膜を形成する重合体に対して、好ましくは0.5〜75重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいてもよい。
前記分解性基の分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。
分解性基の含有率は、膜を形成する重合体に対して、好ましくは0.5〜75モル%、より好ましくは0.5〜30モル%、特に好ましくは1〜20モル%である。
【0060】
(膜)
本発明の膜は、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜であり、絶縁膜として好適に用いることができる。
また、本発明において、膜の製造方法は、特に制限はないが、本発明の膜形成用組成物を調製する工程、本発明の膜形成用組成物を膜状に塗布する工程、及び、塗布した膜を加熱する工程を含むことが好ましい。
【0061】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1,300rpm程度の回転速度が好ましい。
また、膜形成用組成物の吐出方法においては、回転する基板上に膜形成用組成物を吐出する動的吐出、静止した基板上へ膜形成用組成物を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン(株)製)等が好ましく使用できる。
【0062】
本発明の膜形成用組成物は、基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば、膜形成用組成物により形成した膜に残存する炭素三重結合等の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0063】
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合等の重合反応を起こして硬化させてもよい。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは、0〜50keVが好ましく、0〜30keVがより好ましく、0〜20keVが特に好ましい。電子線の総ドーズ量は、好ましくは0〜5μC/cm2、より好ましくは0〜2μC/cm2、特に好ましくは0〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は、0〜450℃が好ましく、0〜400℃がより好ましく、0〜350℃が特に好ましい。圧力は、好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明において、電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2,000mWcm-2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましく、250〜350℃が特に好ましい。重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気は、Ar、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0064】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、その用途に応じて所望の比誘電率とすることが好ましいが、比誘電率が低いことが好ましく、絶縁膜であることがより好ましい。比誘電率は、2.65以下であることが好ましく、2.60以下であることが好ましく、2.55以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、機械強度に優れる膜であり、高いヤング率を有していることが好ましい。前記膜のヤング率は、5GPa以上であることが好ましく、6〜12GPaであることがより好ましい。
なお、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、比誘電率及びヤング率がいずれも上記範囲内であることが特に好ましい。
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜における比誘電率の測定方法としては、公知の方法を用いることができ、フォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出することが好ましい。
また、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜におけるヤング率の測定方法としては、公知の方法を用いることができ、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定することが好ましい。
【0065】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、絶縁膜として好適に使用することができ、半導体用層間絶縁膜としてより好適に使用することができる。すなわち、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、電子デバイスに好適に使用できる。
例えば、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があってもよく、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、さらには層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けてもよい。
【0066】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0067】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMPをすることができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、(株)フジミインコーポレーテッド製、ロデールニッタ(株)製、JSR(株)製、日立化成工業(株)製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、(株)荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0068】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することができる。例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナー又はアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することもできる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0070】
(実施例1)
1−アダマンタノール1.2重量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8重量部に溶解させ、撹拌しながら80℃に加熱した後、硫酸0.1重量部、トリメトキシメチルシラン0.4重量部を投入し、ジ(1−アダマンチル)エーテル1.0重量部を得た。
Macromolecules, vol.24, 5266(1991)に記載の合成法に従って、ビス(1−アダマンチル)エーテルの橋頭位のうちのいずれか2つにエチニル基を導入したジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテルを合成した。
次に、ジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテル2重量部とジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22重量部、t−ブチルベンゼン8.7重量部を窒素気流下、内温150℃で7時間撹拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール47重量部に添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで十分に洗浄した。重量平均分子量約1.5万の重合体(A)を0.8重量部得た。なお、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15重量%以上であった。
重合体(A)1.0重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で、200℃で60秒間加熱、溶剤を乾燥させた後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.40であった。
また、MTS社ナノインデンターSA2を使用してヤング率を測定したところ、7.0GPaであった。
【0071】
(実施例2)
ジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテルの代わりにジ(フェニルエチニル)化ジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテルを使用した以外は、実施例1と同じ方法で重合体(B)を0.9重量部合成した。GPC測定の結果、重量平均分子量は約2万であった。
重合体(B)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15重量%以上であった。
重合体(B)1.0重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で、250℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率及びヤング率を実施例1と同様に測定したところ、膜の比誘電率は2.49であり、また、ヤング率は7.8GPaであった。
【0072】
(実施例3)
ジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテルの代わりにトリ(フェニルエチニル)化ジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテルを使用した以外は、実施例1と同じ方法で重合体(C)を0.9重量部合成した。GPC測定の結果、重量平均分子量は約2万であった。
重合体(C)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15重量%以上であった。
重合体(C)1.0重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で、250℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率及びヤング率を実施例1と同様に測定したところ、膜の比誘電率は2.55であり、また、ヤング率は9.5GPaであった。
【0073】
(比較例1)
ジエチニル化ジ(1−アダマンチル)エーテルの代わりにジエチニルアダマンタンを使用した以外は、実施例1と同じ方法で重合体(D)を0.9重量部合成した。GPC測定の結果、重量平均分子量は約2万であった。
重合体(D)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で15重量%以上であった。
重合体(D)1.0重量部をシクロヘキサノン10重量部に完全に溶解させて塗布液を調製した。この溶液を0.1ミクロンのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で、250℃で60秒間加熱した後、さらに窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。
膜の比誘電率及びヤング率を実施例1と同様に測定したところ、膜の比誘電率は2.60であり、また、ヤング率は5.5GPaであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、及び/又は、下記式(1)で表される化合物を少なくとも用いて重合した重合体を含むことを特徴とする
膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、R1はそれぞれ独立に、水素原子又は−(R2n−R3を表し、R1のうちの少なくとも2つは−(R2n−R3であり、R2はそれぞれ独立に、下記式(2)〜式(5)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、R3はそれぞれ独立に、水素原子又は下記式(6)〜式(8)で表される基よりなる群から選ばれた基を表し、nは1〜4の整数を表す。ただし、−(R2n−R3は、下記式(9)又は式(10)で表される基を除く。)
【化2】

【化3】

(式(2)〜(8)中、波線部分は他と結合する部分を表す。)
【化4】

【請求項2】
有機溶剤を含む請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の膜形成用組成物を用いて形成した絶縁膜。
【請求項4】
請求項3に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2009−149750(P2009−149750A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328246(P2007−328246)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】