説明

膨張段を備えた熱交換器

【課題】本発明は、第1流体の膨張並びに熱伝達をできるだけ簡単にかつ省スペース的に実施することができる熱交換器ユニットを提供せんとするものである。
【解決手段】第1流体の状態、特に空調装置の冷媒の状態を調節するための熱交換器ユニットは流体と空気の熱交換器を備え、この流体と空気の熱交換器は、第1管要素ユニット3aに第1流体を供給するための入口接続分配管8と、流体と空気の熱交換器3から圧縮機段14に第1流体を移送するための中間出口10と、圧縮機段14から流体と空気の熱交換器3に第1流体を移送するための中間入口11とを具備し、中間入口11の下流に第2管要素ユニット3bが配置され、第2管要素ユニットから第1流体を排出するために出口接続分配管13が設けられ、第1流体が出口接続分配管を経て膨張段15に移送可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体と空気の熱交換器を備えた、第1流体の状態、特に空調装置の冷媒の状態を調節するための熱交換器ユニットに関し、更に詳しくは、流体と空気の熱交換器が、第1管要素ユニットに第1流体を供給するための入口接続分配管を具備し、空気または第2流体が特に第1流体の流れ方向に対して横方向に第1管要素ユニットの周囲を流れることができるようにまたは第1管要素ユニットを流通できるように、第1管要素ユニットが形成されている、熱交換器ユニットに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、第1流体の膨張並びに熱伝達をできるだけ簡単にかつ省スペース的に実施することができる、冒頭に述べた種類の熱交換器ユニットを提供することである。本発明の他の課題は、高い効率で冷媒循環を可能にする、冒頭に述べた種類の熱交換器ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は請求項1の特徴を有する熱交換器ユニットによって解決される。この熱交換器ユニットの場合、流体と空気の熱交換器から圧縮機段に第1流体を移送するための中間出口と、圧縮機段から流体と空気の熱交換器に第1流体を移送するための中間入口が設けられ、中間入口の下流に第2管要素ユニットが配置され、第2管要素ユニットから第1流体を排出するために出口接続分配管が設けられ、第1流体が出口接続分配管を経て膨張段に移送可能である。その際、第1流体が空気に熱を放出する第1冷却プロセスが第1管要素ユニット内で行われると有利である。続いて、第1流体が圧縮機段で圧縮可能である。これに応じて高い圧力レベルで、第2冷却プロセスが第2管要素ユニット内で実現可能である。この第2冷却プロセスでは、第1流体が更に冷却される。これにより、第1管要素ユニットと第2管要素ユニットには好ましくは異なる温度範囲が割り当てられる。この温度範囲は空気の供給温度によって調節可能である。第1流体は第2管要素ユニットを流通した後で、膨張段において次のように膨張する。すなわち、膨張段から圧縮機段に技術的な仕事が伝達され、それに伴い内部のエネルギー回収が可能であるように膨張する。
【0004】
本発明の実施形態では、圧縮機段と膨張段が互いに隣接して配置され、かつ特にトルクを伝達するように互いに連結可能に形成されている。その際、圧縮機段と膨張段の隣接配置構造は、すべての重要な構成要素のきわめて省スペース的な配置を可能にする。両段を1つの構造ユニットにまとめることができるときわめて有利である。更に、両段が少なくとも所定の運転状態でトルクを伝達するように互いに連結可能であると有利である。
【0005】
本発明の他の実施形態では、特に第1管要素ユニットが垂直組込み状況で第2管要素ユニットの下方に配置されている。それによって、本発明に従って協働するすべての構成要素の省スペース的な配置、特に圧縮機段と膨張段の省スペース的な配置が可能となり、両管要素ユニットの間で測地学的な落差が実現可能である。その代わりに、第1管要素ユニットを水平方向において第2管要素ユニットのすぐ横に配置することが可能である。
【0006】
本発明の他の実施形態では、第1管要素ユニットと第2管要素ユニットが好ましくは直方体の包被空間内で共通の1つの構造ユニットを形成している。共通の構造ユニットは好ましくは1つの流れ面を有し、第2流体がこの流れ面を経て第1管要素ユニットおよび第2管要素ユニットに供給可能であり、この流れ面は包被空間の側方の端面と比較して大きい。
【0007】
本発明の他の実施形態では、第1管要素ユニットは少なくとも一部が水平に配置された管要素に沿って形成され、かつ第1の流体が下側から上側へ垂直方向に流通できるように形成されている。このような配置構造の場合、第1流体が気体状態で第1管要素ユニット内に有利に保持される。従って、垂直方向において入口接続分配管の入口の上方または入口接続分配管全体の上方に配置された中間出口を第1管要素ユニットに付設することができる。それによって、第2管要素ユニットに通じる中間入口と中間出口の間隔を、きわめて小さく採寸することができる。
【0008】
本発明の他の実施形態では、第2管要素ユニットは少なくとも一部が水平に配置された管要素に沿って形成され、かつ第1の流体が上側から下側へ垂直方向に流通できるように形成され、特に中間入口が第2管要素ユニットの上側区間に配置されている。このような配置構造により、第1流体を少なくとも部分的に液体状態で第2管要素ユニットを経て案内することができる。この場合、第2管要素ユニットの流通は重力の作用によって促進される。これにより、第1流体をきわめて低い温度まで冷却することができる。出口接続分配管の出口が第2管要素ユニットの最も低い個所に配置されると有利である。
【0009】
本発明の他の実施形態では、膨張段の下流に、第1流体を蒸発させるための第2熱交換器が設けられている。第2の熱交換器の下流には、それ自体公知の冷媒コンプレッサを配置することができる。この冷媒コンプレッサは出口側が本発明による熱交換器ユニットに直接または間接的に接続されているので、構造がきわめて簡単でエネルギー効率の高い冷媒閉鎖回路が生じる。
【0010】
本発明の他の実施形態では、流体と空気の熱交換器の外側に配置された移送管が圧縮機段と中間入口の間に設けられている。移送管は所望な壁厚と所望な流れ横断面積を有することができる。この場合、圧縮機段と中間入口の間隔を移送管によって架橋することができる。従って、移送管は圧縮機段と膨張段を最小の空間に、特に共通のハウジング内に直接隣り合わせて配置することを可能にする。
【0011】
本発明の他の実施形態では、膨張段が出口接続分配管に一体的に形成されているかあるいは溶接、ろう付けまたは接着されている。圧縮機段が出口接続分配管に一体的に形成されているかあるいは溶接、ろう付けまたは接着されていると更に有利である。従って、膨張段と場合によっては圧縮機段は第2管要素ユニットと共にまとめられたシステムを形成する。特に、膨張段と圧縮機段は直方体の包被空間内に統合可能である。
【0012】
本発明の他の実施形態では、圧縮機段と膨張段が共通の1つのハウジング内に配置され、ハウジングが圧縮機ホイールと膨張段ホイールとの間の断熱隔壁を備え、この隔壁が圧縮機ホイールおよび膨張段ホイールに接触する。断熱隔壁が一方では圧縮機段の圧縮機空間を画成し、他方では膨張段の膨張空間を画成すると有利である。断熱隔壁は同時に、圧縮機段と膨張段の間で熱伝達を制限する。従って、断熱隔壁がセラミック材料または合成樹脂材料によって形成されていると有利である。
【0013】
本発明の他の実施形態では、圧縮機段と膨張段が共通の1本の軸を備え、圧縮機ホイールまたは膨張段ホイールが共通の軸上に摺動可能に配置されている。その際、それぞれ他のホイールが共通の軸に固定連結されているかまたは共通の軸上に軸方向に摺動不能に軸承されていると有利である。圧縮機段と膨張段の共通のハウジング内に、ばね要素が設けられていると更に有利である。このばね要素は共通の軸上に摺動可能に配置されたホイールを、共通の軸上に固定されたホイールの方へ直接的にまたは間接的にばね力で付勢している。これに関連して特に、断熱隔壁をハウジング内に摺動可能に支承すると有利である。それによって、隔壁は摺動可能に配置されたホイールと共に、軸上に固定されたホイールの方へ押圧可能である。
【0014】
本発明の他の実施形態では、膨張段が第1流体の内部膨張を実施することができる可変の膨張容積を有する。更に、圧縮機段は第1流体の内部圧縮を実施することができる可変の圧縮機容積を有する。冷却プロセスからの仕事を取り出すための内部膨張と、冷却プロセスに仕事を供給するための内部圧縮は、膨張段の技術的仕事を圧縮機段に直接伝達可能であることにより、ポテンシャルエネルギーをきわめて有利に回収することを可能にする。これにより、関連する冷却プロセスの効率が高められる。内部膨張を実現するためあるいは内部圧縮を実現するために、可動のピストンが作動室内に配置されていると有利である。このピストンによって、可変膨張容積が拡大によって変更可能であるかあるいは可変圧縮機容積が縮小によって変更可能であり、従ってポテンシャルエネルギーの伝達のために使用可能である。
【0015】
本発明の他の実施形態では、膨張段と圧縮機段がそれぞれ、中央軸に軸承された内側ホイールと、ハウジングに軸承され内側ホイールを包囲する外側ホイールを備え、内側ホイールに外歯が付設され、この外歯にかみ合う対応する内歯が外側ホイールに付設され、内側ホイールと外側ホイールがそれぞれ、互いに離隔された2つの回転軸線回りに回転可能に軸承されている。その際、内側ホイールと外側ホイールはそれぞれ一緒に、第1および第2圧縮機ホイールとしてあるいは第1および第2膨張段ホイールとして作用する。従って、両段は、きわめてコンパクトにかつ低コストで形成可能である、2つの圧縮機ホイールまたは膨張段ホイールを備えた内軸構造を有する。共通の軸が設けられ、両内側ホイールがこの共通の軸に軸承されていると有利である。それぞれ外側ホイールを支持するために、別個のスライドシューが設けられていると有利である。このスライドシューは一方ではハウジングに接触し、他方では小さな寸法の面状のスライド接触部が外側ホイールに接触する。スライドシューはそれぞれ、運転中生じる、外側ホイールに対する力の範囲に配置されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
他の特徴と特徴組み合わせは、図に例示した、次に説明する実施形態から明らかである。
【0017】
自動車用空調システムにおける熱交換器ユニット1は、図1、図2及び図5に示すように、特に流体と空気の熱交換器3と膨張段(an expansion stage)/圧縮機ユニット2とを備えている。この流体と空気の熱交換器3と膨張段/圧縮機ユニット2は共通の直方体状包被空間4内に配置されている。熱交換器ユニットは特に、第1流体と、大気(外気)の形態の第2流体との間で熱交換する働きをする。この場合、第1流体として特に、これ以上詳しく示していないが図5に示す空調装置の冷媒回路の冷媒が選択される。このような冷媒回路は特に、冷媒コンプレッサK(冷媒圧縮機K)を備えている。この冷媒コンプレッサでは気体の冷媒が圧縮されて搬送され、そして冷媒コンプレッサKは出口側が本発明による熱交換器ユニットに接続されている。その際、本発明による熱交換器ユニットの下流側には、第2の熱交換器W2が配置され、この第2の熱交換器内では、冷却プロセスの範囲内で、液状冷媒が蒸発させられる。第2の熱交換器には収集ユニットSを接続することができる。この収集ユニット内では気体の冷媒を液体冷媒から分離することができ、そして収集ユニットから気体冷媒を取り出して冷媒コンプレッサに新たに供給することができる。従って、図5に示すように、きわめて簡単な構造の閉じた冷媒回路が形成される。理解されるように、冷媒回路は両方向に運転可能である。
【0018】
変形実施形態では、本発明による熱交換器ユニットが移動式または定置式の空調装置および/またはヒートポンプの冷媒回路内に設けられている。他の変形実施形態では、熱交換器ユニットのために空気の代わりに他の気体および/または液体の第2流体が使用される。他の変形実施形態では、物理的および/または化学的に異なる少なくとも3つの流体が流通できるように、流体と空気の熱交換器が形成されている。
【0019】
共通の包被空間4は比較的に大きな第1端面4aを有する。この第1端面は熱交換器ユニットの(ほぼ垂直な)上下軸線Hに対して平行にかつ横軸線Qに対して平行に向いており、1つまたは複数の空気流(および場合によっては第3の流体)が流通軸線Dの方向からこの第1端面を通って流体と空気の熱交換器3に供給可能である。これに応じて、流体と空気の熱交換器3はそれぞれの空気流が流通軸線Dの方向に通過できるように形成されている。第1端面4aと反対側の第2端面4bにおいて、空気流は流体と空気の熱交換器3から排出可能である。
【0020】
流体と空気の熱交換器3は本発明に従い、第1管要素ユニット3aと第2管要素ユニット3bを備えている。この第1と第2の管要素ユニットはそれぞれ、横軸線Qの方向に向いた多数の管要素5を備えている。管要素5は主として横軸線Q方向に第1流体を適切に案内するために設けられている。管要素5は特に、第1流体が流通可能な1つまたは複数の中空室を有する偏平管プロファイルとして形成されている。個々の管要素5の間には好ましくは、熱伝導する熱伝達要素6、例えばいわゆるフィンが配置されている。この熱伝達要素は管要素5に熱伝導連結されて固定されている。図1,2においては、見やすくするために、管要素の間に設けられた熱伝達要素の一部だけが示してある。管要素5はその周りを第2および/または第3流体が特に流通方向Dに流れることができるように形成されている。
【0021】
第1管要素ユニット3aは複数の管要素ユニットを取り囲む直方体の管要素包被空間7内において、第2管要素ユニット3bのすぐ下に配置されている。好ましくは、第1管要素ユニット3aに第1空気流路が、そして第2管要素ユニット3bに第2空気流路が付設されている。この場合、第1空気流路は第2空気流路よりも高い温度を有することができる。変形実施形態では、空気流路にわたって連続的な温度勾配が設けられている。この温度勾配の最も低い温度レベルは特に管要素包被空間7の垂直方向上側の範囲7a内に配置されている。
【0022】
流体と空気の熱交換器3は共通の包被空間4の下側範囲4c内に更に、入口接続分配管8を備えている。入口8aを経てこの入口接続分配管に第1流体を供給することができる。第1流体は入口接続分配管8から第1管要素ユニット3aに移送可能である。この場合、第1流体は入口接続分配管8の範囲内において多数の管要素5に分配可能である。第1管要素ユニット3aの管要素5は好ましくは次のように接続されて設けられている。すなわち、第1管要素ユニット内の第1流体の流れが第1方向変換分配管9の範囲において少なくとも1度180°方向変換し、中間出口10を経て第1の管要素ユニットから外へ案内可能であるように接続されて設けられている。第1流体は第1の管要素ユニット3aを経て上下軸線Hの方向に中間出口10の方へ上向きに移送可能である。この場合、中間出口10はほぼ入口接続分配管8の上方に配置されている。このような配置構造は、第1管要素ユニット内において第1流体がすべての運転状態で気体の状態で存在し、従って第1流体が第1管要素ユニットを通って垂直方向上方に搬送可能であると、有利に実現可能である。
【0023】
流体と空気の熱交換器3は更に、共通の包被空間4の垂直方向上側範囲4d内に、中間入口11を備えている。第1流体がこの中間入口から第2の管要素ユニット3bに供給可能である。第2管要素ユニット3bの管要素5は好ましくは、第2管要素ユニット内の第1流体の流れが複数の第2方向変換分配管12の範囲内で複数回180°方向変換され得るように接続されて設けられている。第1流体は出口接続分配管13を経て第2管要素ユニット3b、ひいては流体と空気の熱交換器3から外へ案内される。その際、出口接続分配管13が上下軸線Hに関して中間入口11の下方のレベルに配置されているので、第1流体は第2管要素ユニット3bを流通する際に或る程度の測地落差を通過する。特に、出口接続分配管13は第2管要素ユニット3bの下側区間内におよび第1管要素ユニット3aの上方に配置されている。このような配置構造により、第2管要素ユニットを流通する際に第1流体の凝縮に対する流体と空気の熱交換器の許容誤差が生じる。
【0024】
既に述べたように、流体と空気の熱交換器3には膨張段/圧縮機ユニット2が付設されている。このユニットには、第1の管要素ユニット3aから中間出口10を経て第1流体が供給可能である。第2管要素ユニット3bは膨張段/圧縮機ユニット2の後に接続配置されている。
【0025】
膨張段/圧縮機ユニット2は特に、共通の鉢状ハウジング16内に配置された圧縮機段14と膨張段15を備えている(図3参照)。鉢状ハウジング16は好ましくは流通軸線D方向において流体と空気の熱交換器3と同じ幅を有する。変形実施形態では、膨張段と圧縮機のユニットが別個のハウジング内に収納され、互いに隣接して配置されている。他の変形実施形態では、膨張段と圧縮機のユニットが伝動装置ユニットおよび/またはクラッチユニットを介してトルクを伝達するように互いに連結されているかあるいは互いに連結可能に形成されている。特に、膨張段と圧縮機のユニットの連結は、熱交換器ユニットまたは自動車空調装置の運転状態に依存して変更可能である。そのために、少なくとも1個のセンサを介して、自動車空調装置および/または熱交換器ユニットの運転状態に関する情報を入手する調整装置/制御装置が設けられている。
【0026】
ハウジング16内には、第1流体を搬送するための複数の通路が設けられている。この通路について図3,4に基づいて詳しく後述する。ハウジング16内には、中心軸線16aを有するほぼ円筒状の中空室16bが形成されている。この中空室内において、共通の軸17が回転軸線17a回りに偏心回転可能に軸承されている。中心軸線16aと回転軸線17aは一定の距離を有する。共通の軸17には、一方では膨張段内側ホイール15aが高い精度で固定されている。他方では、圧縮機内側ホイール14aが軸方向に摺動可能に共通の軸17上に軸承されている。この場合、フェザーキー継手17bによって回転が阻止される。膨張段内側ホイール15aと圧縮機内側ホイール14aにはそれぞれ、外側ホイール、すなわち膨張段外側ホイール15bと圧縮機外側ホイール14bが付設されている。膨張段外側ホイール15bには内歯が設けられている。この内歯は膨張段内側ホイール15aの対応する外歯にかみ合っている。圧縮機外側ホイール14bには内歯が設けられている。この内歯は圧縮機内側ホイール14aの対応する外歯にかみ合っている。外側ホイール14b,15bはそれぞれ中央において共通のハウジング16に回転可能に軸承されている。各外側ホイールの力が発生する範囲には、スライドシュー18が設けられている。このスライドシューには当該の外側ホイールが支持されている。スライドシュー18はそれぞれ別個の構成要素として形成され、そしてスライドシューに支持された外側ホイールが接触してスライドする比較的に小さな接触面を備えている。スライドシュー以外の範囲において外側ホイール14b,15bとハウジング16の間には、リング状の潤滑用隙間16cが設けられている。
【0027】
端面の範囲において膨張段15の要素とハウジング16の間には、好ましくは金属製またはセラミックス製の第1支持要素19が設けられている。この第1支持要素は周方向に延びる少なくとも1個のシールリング20を備え、膨張段内側ホイール15aと膨張段外側ホイール15bの端面側を支持している。膨張段15と圧縮機段14との間には断熱隔壁21が設けられている。この隔壁はハウジング16内に摺動可能に配置されている。隔壁は圧縮機ホイール14a,14bと膨張段ホイール15a,15bに接触する。断熱隔壁21は好ましくは熱を伝導しにくい材料、特に合成樹脂またはセラミック材料からなっている。断熱隔壁21の周溝内には、周方向に延びる少なくとも1個のシールリング22が設けられている。
【0028】
ハウジング16の第2端面の範囲には、ねじ止め可能なハウジング蓋16dが設けられている。ハウジング16はこのハウジング蓋によって閉鎖可能に形成されている。ハウジング蓋16dと圧縮機段14の間には第2支持要素23が設けられている。この第2支持要素は端面側が圧縮機ホイール14a,14bに接触し、好ましくは支持要素23とハウジング蓋16dの間に圧縮挿入されたコイルばね25を介して圧縮機ホイール14a,14bに押し付けられている。第2支持要素23の複数の周溝には少なくとも2個のシールリング24が設けられている。シールリング24の間には周方向に延びる他の環状溝26が設けられている。この環状溝は圧縮機段14の第1流出通路27に接続し、第1流体が流通し得るように形成されている。
【0029】
流出通路27は実質的に第2支持要素23内に配置され、環状溝26を介して圧縮機段の第2流出通路28に連通している。この第2流出通路28はハウジング16内に孔として形成されている。圧縮機段14の第1流入通路29が流出通路27に対してほぼ直径方向に向き合うよう第2支持要素23内に配置されている。この第1流入通路29はばね25の空間を経て圧縮機段の第2流入通路30に連通している。この第2流入通路30は好ましくは流体と空気の熱交換器の中間出口10に直接接続されているかまたはこの中間出口と一体に形成されている。変形実施形態では、中間出口10と第2流入通路30との間に移送管路が接続配置されている。上記の配管によって、第1流体は流体と空気の熱交換器から中間出口10の下流に向かって流入通路29,30を経て圧縮機段14に供給可能である。第1流体はこの圧縮機段において、互いにかみ合う圧縮機ホイール14a,14bによって圧縮される。続いて、第1流体は流出通路27,28を経て移送管路31に移送可能であり(図1参照)、更にこの移送管路を経て中間入口11に搬送可能である。
【0030】
第1流体は第2管要素ユニット3bを流通した後で出口接続分配管13を経て、ハウジング内に配置された第3流入通路32および第1支持要素19内に配置された第4流入通路33に達する。第1流体は第3流入通路および第4流入通路を経て膨張段15に供給可能である。この膨張段において、第1流体は膨張段ホイール15a,15bにポテンシャルエネルギーを放出しながら連続的に膨張可能である。ハウジング内に配置された第3流出通路34と、第1支持要素19内に配置された第4流出通路35が流入通路32,33に対して直径方向に向き合う側に設けられている。これらの流出通路は膨張段15の低圧側と連通し、出口36への膨張第1流体の移送を可能にする。第1流体は出口36を経て膨張段/圧縮機ユニット2からだけでなく熱交換器ユニット1全体からも出る。
【0031】
膨張段15で回収された技術的な仕事は本発明に従い膨張段15と圧縮機段14の共通の軸17を経て圧縮機段に直接伝えられる。その際、圧縮機段14において冷却プロセスの圧縮作業の一部が実施され、回収された技術的な仕事が内部で利用されると有利である。変形実施形態では、本発明による1個の流体と空気の熱交換器に複数の膨張段/圧縮機ユニットが付設されている。この複数の膨張段/圧縮機ユニットによって多段の膨張と多段の圧縮が実現可能である。他の変形では、個々のまたは複数の膨張段の間並びに付設されたそれぞれの圧縮機ユニットの間に、場合によっては制御可能な伝動装置ユニット/クラッチユニットが設けられている。
【0032】
膨張段/圧縮機ユニット2は好ましくはほぼ円筒状に形成され、その流通軸線D方向の流体と空気の熱交換器3の厚さにほぼ一致する直径を有する。膨張段/圧縮機ユニット2の軸方向の長さは上下軸線H方向の流体と空気の熱交換器3の高さよりも短い。従って、膨張段/圧縮機ユニットは最小の共通包被空間4内に有利に挿入される。
【0033】
本発明による熱交換器ユニットにより、第1流体で実施される冷却プロセスの次の方法ステップが、きわめて簡単な手段でおよび狭いスペースで実現可能である。すなわち、冷却、内部圧縮による中間圧縮、更なる冷却および/または(部分)凝縮、内部応力除去による膨張が実現可能である。膨張時に放出されるポテンシャルエネルギーの本発明による回収および内部利用によって、きわめて効率のよいプロセスを実施することができる。提案した配置構造は、冷却機の多数の構成要素を共通の1つの構造ユニットにまとめる。この構造ユニットはきわめて小さな直方体の包被空間を有するブロックとして、自動車製造またはその他の用途に有利に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】流体と空気の熱交換器と膨張段/圧縮機ユニットを備えた本発明による熱交換器ユニットの縦断面図である。
【図2】図1の熱交換器ユニットの斜視図である。
【図3】図1の膨張段/圧縮機ユニットの拡大縦断面図である。
【図4】図3の膨張段/圧縮機ユニットのIV−IV線に沿った横断面図である。
【図5】図5は空調装置の冷媒回路の一例を示す。
【符号の説明】
【0035】
3 流体と空気の熱交換器
3a 第1管要素ユニット
3b 第2管要素ユニット
5 管要素
7 直方体の包被空間
8 入口接続分配管
10 中間出口
11 中間入口
13 出口接続分配管
14 圧縮機段
14a,14b 圧縮機ホイール
15 膨張段
15a,15b 膨張段ホイール
16 ハウジング
16a 回転軸線
17 軸
17a 回転軸線
31 移送管
H 垂直方向
K 冷媒圧縮機
W2 第二熱交換器
S 液体冷媒収集ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体と空気の熱交換器を備えた、第1流体の状態、特に空調装置の冷媒の状態を調節するための熱交換器ユニットであって、前記の流体と空気の熱交換器が、
―第1管要素ユニット(3a)に第1流体を供給するための入口接続分配管(8)を具備し、空気または第2流体が特に第1流体の流れ方向に対して横方向に前記第1管要素ユニットの周囲を流れることができるようにまたは前記第1管要素ユニットを流通できるように、前記第1管要素ユニットが形成され、
―更に、前記の流体と空気の熱交換器(3)から圧縮機段(14)に第1流体を移送するための中間出口(10)と、
―前記圧縮機段(14)から前記の流体と空気の熱交換器(3)に第1流体を移送するための中間入口(11)とを具備し、
―前記中間入口(11)の下流に第2管要素ユニット(3b)が配置され、空気または第2流体が前記第2管要素ユニットの周囲を流れることができるようにまたは前記第2管要素ユニットを流通できるように、前記第2管要素ユニットが形成され、
―前記第2管要素ユニットから第1流体を排出するために出口接続分配管(13)が設けられ、第1流体が前記出口接続分配管を経て膨張段(15)に移送可能である、
上記熱交換器ユニット。
【請求項2】
前記圧縮機段(14)と前記膨張段(15)が互いに隣接して配置され、かつ特にトルクを伝達するように互いに連結可能であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器ユニット。
【請求項3】
前記第1管要素ユニット(3a)が垂直組込み状況で前記第2管要素ユニット(3b)の下方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器ユニット。
【請求項4】
前記第1管要素ユニット(3a)と前記第2管要素ユニット(3b)が好ましくは直方体の包被空間(7)内に共通の1つの構造ユニットを形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項5】
前記第1管要素ユニット(3a)は少なくとも一部が水平に配置された管要素(5)に沿って形成され、かつ第1の流体が下側から上側へ垂直方向(H)に流通できるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項6】
前記第2管要素ユニット(3b)は少なくとも一部が水平に配置された管要素(5)に沿って形成され、かつ第1の流体が上側から下側へ垂直方向(H)に流通できるように形成され、特に中間入口(11)が第2管要素ユニット(3b)の上側区間に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項7】
前記膨張段(15)の下流に、第1流体を蒸発させるための第2熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項8】
前記の流体と空気の熱交換器(3)の外側に配置された移送管(31)が前記圧縮機段(14)と前記中間入口(11)の間に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項9】
前記膨張段(15)が前記出口接続分配管(13)に一体的に形成されているかあるいは溶接、ろう付けまたは接着されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項10】
前記圧縮機段(14)と前記膨張段(15)が共通の1つのハウジング(16)内に配置され、該ハウジング(16)が(その中に摺動可能に配置された、)圧縮機ホイール(14a,14b)と膨張段ホイール(15a,15b)との間の断熱隔壁(21)を備え、この隔壁が前記圧縮機ホイールおよび前記膨張段ホイールに接触することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項11】
前記圧縮機段(14)と前記膨張段(15)が共通の1本の軸(17)を備え、圧縮機ホイール(14a)または膨張段ホイール(15a)が共通の軸(17)上に摺動可能に配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項12】
―前記膨張段(15)が第1流体の内部膨張を実施することができる可変の膨張容積を有することと、
―前記圧縮機段(14)が第1流体の内部圧縮を実施することができる可変の圧縮機容積を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。
【請求項13】
前記膨張段(15)と前記圧縮機段(14)がそれぞれ、中央軸(17)に軸承された内側ホイール(14a,15a)と、ハウジングに軸承され内側ホイールを包囲する外側ホイール(14b,15b)とを備え、
―前記内側ホイール(14a,15a)に外歯が付設され、
―この外歯にかみ合う対応する内歯が前記外側ホイール(14b,15b)に付設され、
―該内側ホイールと外側ホイールがそれぞれ、互いに離隔された2本の回転軸線(17a,16a)回りに回転可能に軸承されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱交換器ユニット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−198726(P2007−198726A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13682(P2007−13682)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(503187235)オブリストエンジニアリング ゲーエムベーハー (1)
【出願人】(398072953)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】