説明

自動傾転付きオープンカセットロードポート

【課題】オープンカセットを載置した傾転ドアの自動傾転を緩やかに行なってオープンカセットに内置される被処理基板への衝撃を緩和させることを目的とする。
【解決手段】オープンカセットケース内基板の出し入れをする出入口が設けられる固定フレーム部105と、固定フレーム部105に回動自在に支持され、かつ出入口より出し入れする基板積載カセットケース110を載置する傾転ドア101とを有し、カセットケース110を横置状態に回動する傾転ドア101の閉成動作力、および縦置状態に回動する傾転ドア101の閉成動作力を加えるエアシリンダ301、302と、傾転ドア101の回動を抑制する油圧ダンパ303,304を含むダンパを設けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、電子部品関連製品、光ディスク等の製造プロセスに備わる自動傾転付きオープンカセットロードポートに関する。
【0002】
自動傾転付きオープンカセットロードポートは、クリーンルーム内に設置され、該クリーンルーム内で運搬される半導体ウェハなどの基板を、処理装置との間で受け渡しを行なうものである。
【背景技術】
【0003】
従来、半導体の製造装置または検査装置において、処理を行う基板を搭載するには次のように行っていた。作業者は、基板が垂直姿勢となるようにして基板(半導体ウェハなど)積載のオープンカセットを運搬していた。
【0004】
そして、前記作業者がオープンカセットを手動で傾転させ、基板を水平姿勢にしてロードポートの載置台に載置していた。その後、オープンカセットから基板が引き出されて、基板処理装置(例えば基板検査装置)に搬入されていた。
【0005】
前記装置内で処理が終了すると、作業者がオープンカセットを手動で傾転させて、すなわち基板水平姿勢から垂直姿勢に移行させて持ち出していた。
【0006】
しかし、この搬入、搬出の方法ではSEMIスタンダードS8に規定する人間工学的な基準となる、持ち上げ、力、および材料の取り扱いにおいて「無理な姿勢は避けるべきである。無理な姿勢を避けるための推奨範囲として、手首の尺骨/撓骨の動き(手首を横向きに曲げる角度。尺骨方向の曲げとは小指方向の曲げ。撓骨方向の曲げとは親指の曲げ。)の上限は10°」を満足していなかった。
【0007】
そこで、例えば、特開平10−107122号公報(特許文献1)に示すような、オープンカセットの載置台が自動傾転する自動傾転付オープンカセットロードボードが使用されるようになった。これにより、作業者が基板積載のカセットを搬送時の姿勢で載置または取り出すことが可能になった。
【0008】
市販されている自動傾転付オープンカセットロードボードは、空気圧駆動ラックアンドピニオンモジュールの機構を搭載して傾転動作をさせる構成を有する。
【0009】
自動傾転付オープンカセットロードボードは、半導体ウェハなどの基板への衝撃を緩和させるために滑らかな動作が求められる。しかし、空気圧駆動ラックアンドピニオンモジュールの機構では、エアシリンダの直線運動をラックアンドピニオンを通してカセットの回転運動に変換するため、回転速度は不安定なエアシリンダの速度に比例する。
【0010】
また、エアシリンダの速度制御には「スピードコントローラ」とよばれる空気の絞りを使用しているが、速度制御、再現性、安定性に問題があった。よって、エアシリンダとスピードコントローラを併用して安定した動作をさせることは難しかった。
【0011】
また、製品価値を高めるために、より軽量でコンパクトな構造が求められていた。
【0012】
また、傾転ドア部と固定フレーム部との間の手挟み防止のために、安全インターロックシステムを搭載する必要があった。従来は傾転ドアが閉動作中、動作領域に異物(例えば作業者の手、指など)が進入してもドアは動作を継続し、傾転ドアが異物に接触し、固定フレーム部に一定圧力押し当て、マイクロスイッチが押されないと、安全インターロックシステムが作動しなかった。安全性の面で満足できるものでなかった。
【0013】
【特許文献1】特開平10−107122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑み、オープンカセットを載置した傾転ドアの自動傾転が緩やかに行なわれる自動傾転付オープンカセットロードボードを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、安全な動作が期待できる自動傾転付オープンカセットロードボードを提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、軽量でコンパクトな構造を有する自動傾転付オープンカセットロードボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、オープンカセットケース内基板の出し入れをする出入口が設けられる固定フレーム部と、固定フレーム部に回動自在に支持され、かつ出入口より出し入れする基板積載カセットケースを載置する傾転ドアとを有し、カセットケースを横置状態に回動する傾転ドアの閉成動作力、および縦置状態に回動する傾転ドアの閉成動作力を加えるエアシリンダと、傾転ドアの回動を抑制する油圧ダンパを含むダンパを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オープンカセットを載置した傾転ドアの自動傾転が緩やかに行なわれるので、オープンカセットに内置される被処理基板への衝撃を緩和させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施例について、図を引用して説明する。
【0020】
まず、図1、図2を沿って自動傾転付オープンカセットロードボードの概要から述べる。
【0021】
この自動傾転付オープンカセットロードポートは、測長SEMをはじめとする半導体検査装置、または、エッチャーをはじめとする半導体製造装置などに使用される。さらに電子部品関連製品、光ディスク等を含む精密機器品の収納積載にも適用される。
【0022】
自動傾転付オープンカセットロードボードは、固定フレーム部105、傾転ドア101、支持台106、制御装置を内蔵する制御ボックス107、表示パネルボックス108、本体フレーム109を有する。
【0023】
固定フレーム部105は、傾転ドア101に載置されるオープンカセット110が出し入れされる出入口111を有する。傾転ドア101は、固定フレーム部105に回動自在に支持される。傾転ドア101は、手前側に倒れたり、起き上がったりするように回動する。傾転ドア101が起き上がるように回動後、出入口111が開かれる。傾転ドア101が手前側に倒れるように回動後、出入口111は閉じられる。
【0024】
カセットケース110は、半導体のウェハを収納積載する。ここでは、半導体のウェハを例に挙げて説明する。
【0025】
このカセットケース110は、被処理基板である複数の半導体のウェハが並列に並ぶように置かれる。被処理基板である半導体のウェハを収納するカセットケース110は、ウェハの製造装置または検査装置である被処理基板の処理装置の搬入される前または搬出された後は、ウェハを出し入れ口が上向きになるようにして搬送等の取り扱いを行う。
【0026】
このため、開放状態にある自動傾転付オープンカセットロードボードの傾転ドア101に載せたときには、カセットケース110は、ウェハの出し入れ口が上向きになる。
【0027】
傾転ドア101は、カセットケース110が載置する第1のケース支持部112と第2のケース支持部113を有する。第1のケース支持部112と第2のケース支持部113の配置は直角になっている。第1のケース支持部112と第2のケース支持部113は、一緒に回動する。
【0028】
第1のケース支持部112は、被処理基板(ウェハ)が縦置きになる縦置状態のカセットケース110の底部を下から支持する。第2のケース支持部113は、被処理基板が横置きになる横置状態のカセットケース110の側面を下から支持する。
【0029】
第2のケース支持部113は、保持突起114を有する。この保持突起114にカセットケース110の側板に設けたリブ(図示せず)が保持される。この保持突起114による保持で、カセットケース110を載せた傾転ドア101が傾転作動する際にカセットケース110の移動を抑える。
【0030】
次に自動傾転付きオープンカセットロードポートの動作について図3に沿って説明する。クリーンルーム内を運搬されてきたカセットケース110は、傾転ドア101に置かれる。カセットケース110は、それの底を第1のケース支持部112に載せて置かれる。被処理基板(ウェハ)が縦置きになる縦置状態で、カセットケース110は、傾転ドア101に置かれる。これが、図2の(イ)に示す状態である。
【0031】
その後、図2に示す(ロ).(ハ).(二).(ホ)の順に傾転ドア101は傾転する。その結果、被処理基板(ウェハ)が横置きになる。このときには、カセットケース110の側面が第2のケース支持部113により下から支持される。
【0032】
カセットケース110が横置状態なってウェハ搬送待機状態で、ウェハが1枚ずつ、半導体検査装置や半導体製造装置などの上位装置へ搬送される。
【0033】
上位装置で処理が終了した被処理基板(ウェハ)は、カセットケース110に戻される。被処理基板(ウェハ)を収納したカセットケース110は、図2の(ホ)から(ニ).(ハ).(ロ).(イ)の順に傾転し、縦置に移行し、取り出し待機状態となる。そして、別の処理装置へ運搬されていく。
【0034】
この傾転動作(開閉動作)において要求されることは、滑らかな動作を実現し、被処理基板(ウェハ)への衝撃を緩和させることである。また、その開閉動作と衝撃緩和を図る装置の製品価値を高めるために、より軽量でコンパクトな構造にすることにより、傾転ドアに配置することが可能になる。エアシリンダ、油圧ダンパと空気圧流路切り替えを採用することにより開閉動作と衝撃緩和を図る装置を実現することができた。
【0035】
その衝撃緩和が行なわれる装置について、図4〜図11を引用し、以下に詳しく説明する。
【0036】
傾転ドア101は、図4に示すように、内部にエアシリンダと、油圧ダンパを含むダンパが備えられる。右側(一方)に設けられるエアシリンダ301と油圧ダンパ303は、傾転ドア101の閉成動作時に機能する。左側(他方)に設けられるエアシリンダ302と油圧ダンパ304は、傾転ドア101の開放動作時に機能する。
【0037】
エアシリンダ301と油圧ダンパ303は、対になって傾転ドア101の閉成動作と衝撃緩和に機能する。エアシリンダ302と油圧ダンパ304は、対になって傾転ドア101の開放動作と衝撃緩和に機能する。
【0038】
つまり、油圧ダンパ303、304は、ロッドが短縮動作時のみダンピング作用し、伸長動作時は作用しないものが使用される。また、エアシリンダ301、302は、ロッドが伸長動作時のみダンピング作用し、短縮動作時は作用しないものが使用される。
【0039】
傾転ドア101の閉成動作と衝撃緩和を図る装置は、エアシリンダ、油圧ダンパで構成するので、軽量、かつコンパクトである。このため、傾転ドア101の狭い内部空間に収めることができるのである。また、エアシリンダを動力源である空気圧供給源は、半導体検査装置や半導体製造装置を稼動する製造施設に備わっている。それを利用できるので、新たに空気圧供給源を備える必要はない。また、傾転ドア101の開閉動作は、二つのエアシリンダにかける空気圧流路切り替えに行なえるので、切り替え機構も構成が簡単である。
【0040】
傾転ドア101の閉成動作について、図5に沿って説明する。
【0041】
図5の(イ).(ロ)に示すように、カセットケース110が載置された傾転ドア101の閉成動作には、回転力421を与える必要がある。
【0042】
エアシリンダ301の作用点402(エアシリンダ301の一端と傾転ドア401との結合点を云う。)と傾転軸401(傾転ドア401を固定フレーム部105に回動自在に支持する支持結合点を云う。)を結ぶ傾転軸線を第1のケース支持部112と平行に配置し、力点403(作用点402の反対側になるエアシリンダ301の他端を固定フレーム部105に回動自在に支持した支持結合点を云う。)を傾転軸線よりカセットケース110の反対側に配置して、エアシリンダ301のロッドが伸長時、推力423を回転力421へ変換している。
【0043】
また、油圧ダンパ303の作用点404(油圧ダンパ303の一端と傾転ドア401との結合点を云う。)を傾転軸線の上に、力点405(作用点404の反対側になる油圧ダンパ303の他端を固定フレーム部105に回動自在に支持した支持結合点を云う。)を傾転軸線上よりカセットケース110側に配置して、油圧ダンパ303のロッドが短縮時、抑制力424を抑制回転力422へ変換し、回転力421を抑制回転力422で抑制する機構となっている。
【0044】
また、エアシリンダ301のみの力に限定すると、一定の力で動作、停止を制御しているに過ぎないが、エアシリンダ301と傾転軸線との角度406を設けることにより、動作時始端と終端とでエアシリンダ301による回転力は次のようになる。
【0045】
始端と終端における回転力をT1、T2とすると、エアシリンダの回転方向の推力と支点からの長さの積で表され、
T1=425×409
T2=427×409
T1>T2
という関係が成り立つ。終端に近づくに従い小さくなるように配置していることにより、エアシリンダ301による回転力421は図10のように減少させることができる。
【0046】
それに対して、油圧ダンパ303と傾転軸線とは角度407を設けることにより油圧ダンパ303による回転抑制力は、始端と終端をそれぞれD1、D2とすると、
D1=426×408
D2=428×408
D1<D2
という関係が成り立つ。終端に近づくに従い大きくなるように配置していることより、油圧ダンパ303による抑制回転力422は図11のように増大する。
【0047】
また、油圧ダンパは動作全領域で作用する。よって、エアシリンダ301と油圧ダンパ303の組合せにより、滑らかな動作を実現し、被処理基板(ウェハ)への衝撃を緩和させることができる。
【0048】
但し、閉成動作時は開放動作用油圧ダンパ304がロッド伸長動作になり、その時ダンピング作用が働くとエアシリンダ301の動作を打ち消す働きとなるので、ロッド伸長時はダンピング作用は働かない特性の油圧ダンパを使用する。
【0049】
ここで、空気圧切り替えによる動作(傾転ドアの閉成時)について、図7を用いて説明する。
【0050】
通常動作時はインターロックバルブ503、504、505、506を全て通電状態とする。よって、空気圧経路はそれぞれ514、517、520、523の位置となり、該インターロックバルブは全てPポートとAポート間が開放状態となる。
【0051】
空気圧供給源から供給された一定の空気圧は、空気圧経路切替バルブ501の切替スイッチ507の通電により、経路508の位置のPポートからAポートへ抜け、エアシリンダ301へ供給される。
【0052】
エアシリンダ301のロッドが525方向へ伸長され、エアシリンダ301内の排気は空気圧経路切替バルブ501の経路508の位置のBポートからEBポートへ抜けて外へ排気される。この時、反対側に存在する開動作用のエアシリンダ302は、空気圧経路切替バルブ502が経路510の位置で排気可能状態にあるのでエアシリンダ302内の空気は外へ排気可能となり、自由にロッドの伸び縮みが可能となる。
【0053】
よって、エアシリンダ301とエアシリンダ302は傾転ドアの内部で連動していることから、エアシリンダ301の動作に従ってエアシリンダ302のロッドが527へ短縮する動作となる。傾転ドア101の閉成動作終了後、空気圧経路切替バルブ502の切替スイッチ529の通電により経路530の位置のPポートからAポートへ抜け、エアシリンダ302のロッドが短縮状態で保持される。
【0054】
これは、閉動作完了時に傾転ドア101を固定させて、作業者による手動開閉を防止することと、エアシリンダ302内を高圧にしておくことにより開動作開始直後のエアシリンダ特有の飛び出し動作を防止することが出来る。よって、動作開始時の被処理基板(ウェハ)への衝撃を緩和させることができる。
【0055】
次に傾転ドア101の開放動作について、図6を用いて説明する。
【0056】
図6の(イ).(ロ)に示すように、傾転ドア101の開放動作には回転力472を与える必要がある。エアシリンダ302の作用点451と傾転軸401を結ぶ傾転軸線をカセット載置台102と平行に配置し、力点452を傾転軸線より、カセット側に配置して、エアシリンダ302のロッドが伸長時、推力473を回転力472へ変換している。
【0057】
また、油圧ダンパ304の作用点453を傾転軸線上に、力点454を傾転軸線よりカセットケース110の反対側に配置して、油圧ダンパ304のロッドが短縮時、抑制力474を抑制回転力471へ変換し、回転力472を抑制回転力471で抑制する機構となっている。
【0058】
また、エアシリンダ302のみの力に限定すると、一定の力で動作、停止を制御しているに過ぎないが、エアシリンダ302と傾転軸線との角度455を設けることにより、動作時始端と終端とでエアシリンダ302による回転力は次のようになる。始端と終端における回転力をT3、T4とすると、エアシリンダの回転方向の推力と支点からの長さの積で表され、
T3=475×458
T4=477×458
T3>T4
という関係が成り立つ。終端に近づくに従い小さくなるように配置していることにより、エアシリンダ301による回転力410は図10のように減少させることができる。
【0059】
それに対して、油圧ダンパ303と傾転軸線とは角度407を設けることにより油圧ダンパ303による回転抑制力は、始端と終端をそれぞれD3、D4とすると、
D3=476×457
D4=478×457
D3<D4
という関係が成り立つ。終端に近づくに従い大きくなるように配置していることより、油圧ダンパ304による抑制回転力471は図10のように増大する。また、油圧ダンパは動作全領域で作用する。
【0060】
エアシリンダ302と油圧ダンパ304の組合せにより、滑らかな動作を実現し、被処理基板(ウェハ)への衝撃を緩和させることができる。但し、開動作時は閉動作用油圧ダンパ303がロッド伸長動作になり、その時ダンピング作用が働くとエアシリンダ302の動作を打ち消す働きとなるので、ロッド伸長時はダンピング作用は働かない特性の油圧ダンパを使用する。
【0061】
ここで、空気圧切り替えによる動作(傾転ドアの開放時)について、図6を用いて説明する。
【0062】
通常動作時はインターロックバルブ503、504、505、506を全て通電状態とする。よって、空気圧経路はそれぞれ514、517、520、523の位置となり、該インターロックバルブは全てPポートとAポート間が開放状態となる。
【0063】
空気圧供給源から供給された一定の空気圧は、空気圧経路切替バルブ502の切替スイッチ512の通電により経路511の位置のPポートからBポートへ抜け、エアシリンダ302へ供給される。エアシリンダ302のロッドが528方向へ伸長され、エアシリンダ302内の排気は空気圧経路切替バルブ502の経路511位置のAポートからEAポートへ抜けて外へ排気される。
【0064】
この時、反対側に存在する閉動作用のエアシリンダ301は、空気圧経路切替バルブ501が経路509の位置で排気可能状態にあるのでエアシリンダ301内の空気は外へ排気可能となり、自由にロッドの伸び縮みが可能となる。
【0065】
エアシリンダ301とエアシリンダ302は傾転ドア内部で連動していることから、エアシリンダ302の動作に従ってエアシリンダ301のロッドが526へ短縮する動作となる。
【0066】
傾転ドア101の開動作終了後、空気圧経路切替バルブ501の切替スイッチ531の通電により、経路532の位置のPポートからBポートへ抜け、エアシリンダ301ロッドが短縮状態で保持される。
【0067】
これは、開動作完了時に傾転ドア101を固定させて、作業者による手動開閉を防止することと、エアシリンダ301内を高圧にしておくことにより閉動作開始直後のエアシリンダ特有の飛び出し動作を防止することが出来る。このため、動作開始時の被処理基板(ウェハ)への衝撃を緩和させることができる。
【0068】
このように、傾転ドア101の開閉動作を、エアシリンダと油圧ダンパ、空気圧流路切り替えにより実現させることができる。また、本来ならばエアシリンダと油圧ダンパの配置角度を大きくなるように配置すれば、小さな力で動作制御が可能である。しかし、製品価値を高めるために、より軽量でコンパクトな構造にすることが求められているので、傾転ドア101の限定された容積内にエアシリンダと油圧ダンパをそれぞれ1組づつ配置し、動作制御を可能にした。
【0069】
また、エアシリンダと油圧ダンパの配置を変えることで、力の制御を変化させることが可能であるということである。しかも、それが限定された容積内で制御させることである。
【0070】
次に、安全インターロッキングシステムについて、図2、図12〜図14を引用して説明する。
【0071】
安全インターロッキングシステムは、傾転ドア101の閉成動作時に、傾転ドア101と固定フレーム部105との間に作業者の手や指が挟み込まれるのを防止するものである。
【0072】
図12〜図14に示すように、安全インターロッキングシステムの検知装置は、投光用ビームセンサ1000、受光用ビームセンサ1001、コーナミラー1002.1003を有する。
【0073】
投光用ビームセンサ1000は、固定フレーム部105の出入口111の手前側の下部左側(一方下部)に設ける。受光用ビームセンサ1001は、出入口111の手前側の下部右側(他方下部)に設ける。
【0074】
コーナミラー1002は、出入口111の手前側の上部左側角(一方上角)に、コーナミラー1003上部右側角(他方上角)に備える。
【0075】
投光用ビームセンサ1000から発したビーム光は、コーナミラー1002とコーナミラー1003で反射して受光用ビームセンサ1001に受光される。出入口111に異物(作業者の手や指)が侵入すると、ビーム光は遮られ、受光用ビームセンサ1001に受光が行なわれない。これにより、異物の侵入を検知できる。
【0076】
この検知装置と前記空気圧制御系により、安全インターロッキングシステムが構成される。
【0077】
さて、傾転ドア101が閉成動作時、図2に示すように、異物(例えば作業者の手、指など)104の侵入すると、検知装置により検知される。安全インターロッキングシステムが作動して、空気圧流路切り替えが行なわれる。これにより、傾転ドア101は閉成動作から開放動作に切り替わり、異物の挟み込み防止が図られる。
【0078】
安全インターロックシステム作動時の空気圧経路について、図7を用いて詳しく述べる。
【0079】
通常動作時は、インターロックバルブ503、504、505、506は通電状態であり、該インターロックバルブの空気圧は開放状態である。異物105の侵入で受光用ビームセンサ1001が遮光されると、インターロックバルブ503、504の通電が遮断される。
【0080】
空気圧経路切替バルブ501の経路508の位置PポートからAポートへ抜けた空気は空気圧経路切り替えにより、インターロックバルブ504の経路518位置RポートからAポートへ抜けエアシリンダ301へ供給される。
【0081】
エアシリンダ301のロッドは526方向へ短縮し、301の排気はインターロックバルブ503の経路515の位置AポートからRポート、空気圧経路切替バルブ501の経路508位置BポートからEBポートを通り外へ排気される。
【0082】
反対側に存在する開放動作用のエアシリンダ302は、空気圧経路切替バルブ502が経路510の位置で排気状態、且つインターロックバルブ505、506がそれぞれ520、523の位置で空気圧解放状態のため、エアシリンダ302の内部空気は自由に排気可能となる。
【0083】
これにより、エアシリンダ301のロッドの526方向への短縮動作に従いエアシリンダ302はロッドが528方向へ伸長していく。このため、傾転ドア101は開放動作をするので、危険を回避することができる。
【0084】
また、安全インターロックシステムは、異物(手や指)が進入したときに、傾転ドア101の閉成動作を停止するだけなく、開放動作に切替わるので、挟んだ異物(手や指)を開放するようになるので、より安全性の優れたものである。
【0085】
この安全インターロッキングシステムの特徴は、傾転部の構造へ新たにアクチュエータを追加せずに、検知装置と前記空気圧制御系を組み合わせてシステム制御を実現させたことで、コストの抑制を可能にしたことである。
【0086】
図7に示すように、インターロックバルブ503、504、505、506のみの追加で実現させた。また、インターロック作動時の開閉逆転動作では、1本のエアシリンダ301のみで動作制御させている。
【0087】
つまり、エアシリンダ301内の経路を525から526へ切り替えることにより、エアシリンダ301内を高圧の状態に保持させておいて動作直後のエアシリンダ特有の飛び出し動作を防止することが出来る。これにより、被処理基板(ウェハ)への衝撃を緩和させることが出来る。
【0088】
また、動作逆転時、即座に動作停止させるための一般的な方法としてブレーキを使用するが、この制御ではブレーキの使用が不用で、コストを抑制させることが出来る。また、電気制御の場合、電源が遮断されると動作も停止してしまうが、空気圧制御の場合は、電源が遮断されても動作を停止させずに制御することも可能である。
【0089】
さらに、図7に示すインターロックバルブ505、506の配置理由について説明をする。
【0090】
傾転ドア101が完全に閉じられた状態で装置の電源が遮断した時、バルブ505、506が設けられていない場合には、作業者が傾転ドア101を手で開けることが可能である。
【0091】
もし、搬送ロボットが動作中に傾転ドア101を開けた場合、ウェハにロボットが接触しウェハ破損の危険性がある。これに対し、インターロックバルブ505、506を設けることにより、装置の電源が遮断した時は、エアシリンダ302内の空気を封じ込め、傾転ドア101の開閉を不可能にすることができる。これにより、ロボットとの接触によりウェハ破損の危険を回避することができる。
【0092】
図8を引用して傾転ドアの閉成動作のフローを説明する。
【0093】
ステップ801で、傾転ドア101の閉成動作が指示される。ステップ802で、装置の電源投入され、各種の電磁弁が作動する。
【0094】
作業者が傾転ドア101にカセットケース110を載置(ステップ803)すると、上位装置よりロード命令を受信する(ステップ804)。ロード命令が受信されると、電磁弁501が経路508へ動作する(ステップ805)。
【0095】
シリンダ301に圧縮空気が送られ、閉成動作用のシリンダ301は525の方向に伸張する(ステップ806)。このとき、開放動作用のシリンダ302は527の方向に短縮する(ステップ807)。ステップ806とステップ807の動作は同時に並行して行なわれる。
【0096】
ステップ808で、手はさみ検知用の受光用ビームセンサ1001が異物を検知すると、ステップ809に移行する。ステップ809では、電磁弁503が経路515に、電磁弁504が経路518に動作する。
【0097】
そして、電磁弁503から流入していた圧縮空気は、電磁弁504から流入し、シリンダ301は方向526側に短縮する(ステップ810)。傾転ドア101が開放され(ステップ811)、上位装置に異物検知の報告(ステップ812)が行なわれる。
【0098】
異物検知が解かれると、傾転ドア101は閉成動作用に移行し、ロード(閉成動作)の終了(ステップ813)に至る。
【0099】
ステップ808で、異物の検知が行なわれないと、傾転ドア101が閉成動作を継続し、ロード完了位置まで移動する(ステップ814)。
【0100】
そして、電磁弁501が経路509に動作し(ステップ815)、電磁弁502が経路530に動作し(ステップ816)、上位装置にロード完了を報告し(ステップ817)、ロード(閉成動作)の終了(ステップ813)に至る。
【0101】
図9を引用して傾転ドアの開放動作のフローを説明する。
【0102】
ステップ901で、傾転ドア101の開放動作が指示される。ステップ902で、各種の電磁弁が作動する。
【0103】
上位装置よりアンロード命令を受信する(ステップ903)。ロード命令が受信されると、電磁弁502が経路511へ動作する(ステップ904)。
【0104】
シリンダ302に圧縮空気が送られ、開放動作用のシリンダ302は528の方向に伸張する(ステップ905)。このとき、閉成動作用のシリンダ301は526の方向に短縮する(ステップ906)。ステップ905とステップ906の動作は同時に並行して行なわれる。
【0105】
傾転ドア101が開放動作が進行し、アンロード完了位置まで移動する(ステップ907)。
【0106】
そして、電磁弁502が経路510に動作し(ステップ908)、電磁弁501が経路532に動作し(ステップ909)、上位装置にアンロード完了を報告し(ステップ910)、アンロード(開放動作)の終了(ステップ911)に至る。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、オープンカセットを載置している自動傾転付オープンカセットロードボードの全体を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、自動傾転付オープンカセットロードボード固定フレームと傾転ドアとを拡大して示した斜視図。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、自動傾転付オープンカセットロードボードの傾転ドアが閉成されて行く様子を順番に示した斜視図。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、傾転ドアの開放状態(イ)、および閉成状態(ロ)でのエアシリンダとダンパの配置を示した斜視図。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、傾転ドアの開放から閉動に移行するところをエアシリンダとダンパの配置、動作経過を併せて表した図。
【図6】本発明の実施例に係わるもので、傾転ドアの閉動から開放に移行するところを閉動作時のエアシリンダとダンパの配置、動作経過を併せて表した図。
【図7】本発明の実施例に係わるもので、傾転ドアに開閉動作を行なわせる空気圧制御を示す配管系統図である。
【図8】本発明の実施例に係わるもので、傾転ドアの閉成動作を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の実施例に係わるもので、傾転ドアの開放動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に係わるもので、エアシリンダによる回転力の推移を示すグラフ。
【図11】本発明の実施例に係わるもので、油圧のダンパによる抑制回転力の推移を示すグラフ。
【図12】本発明の実施例に係わるもので、安全インターロッキングシステムを説明するために自動傾転付オープンカセットロードボードの全体を示した斜視図。
【図13】本発明の実施例に係わるもので、安全インターロッキングシステムを説明するために固定フレームと傾転ドアを正面から示した図。
【図14】本発明の実施例に係わるもので、安全インターロッキングシステムを説明するために固定フレームと傾転ドアを側面から示した図。
【符号の説明】
【0108】
101…傾転ドア、112…第1のケース支持部、110…カセットケース、113…第2のケース支持部、1000…投光用ビームセンサ、1001…受光用ビームセンサ、
104…異物(作業者の手、指など)、302…エアシリンダ、303,304…油圧ダンパ、472…アシリンダによる回転力、422,471…油圧ダンパによる抑制力、501…空気圧経路切替バルブ、503,504,505,506…インターロックバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被処理基板が並列に並ぶように置かれる収納用のオープンカセットケースを被処理基板の処理装置に搬入・搬出する自動傾転付オープンカセットロードポートであって、
前記カセットケース内基板の出し入れが行なわれる出入口が設けられている固定フレーム部と、固定フレーム部に回動自在に支持され、かつ前記出入口より出し入れする前記カセットケースが載置される傾転ドアとを有し、
前記傾転ドアは、前記被処理基板が縦置きになる縦置状態の前記カセットケースの底部を支持する第1のケース支持部と、前記第1のケース支持部とともに回動し、かつ前記被処理基板が横置きになる横置状態の前記カセットケースの側面を支持する第2のケース支持部とを有し、
前記カセットケースを横置状態に回動する前記傾転ドアの閉成動作力、および縦置状態に回動する前記傾転ドアの閉成動作力を加えるエアシリンダと、前記傾転ドアの回動を抑制する油圧ダンパを含むダンパを設けたことを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。
【請求項2】
請求項1に記載された自動傾転付オープンカセットロードポートにおいて、
前記エアシリンダと前記ダンパを対にして前記傾転ドアの両側に配置したことを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。
【請求項3】
請求項2に記載された自動傾転付オープンカセットロードポートにおいて、
一方に配置された前記エアシリンダと前記ダンパは、前記傾転ドアの閉成動作時に機能し、他方に配置された前記エアシリンダと前記ダンパは、前記傾転ドアの開放動作時に機能することを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。
【請求項4】
請求項1に記載された自動傾転付オープンカセットロードポートにおいて、
前記傾転ドアの閉成動作が始まる前の状態では、
前記エアシリンダが、前記エアシリンダと前記傾転ドアとの結合点である作用点と
,前記傾転ドアを固定フレーム部に回動自在に支持する支持結合点としての傾転軸と
を結ぶ線より、前記カセットケースの反対側に位置し、
前記ダンパが、前記作用点と,前記傾転軸とを結ぶ線より、前記カセットケース側
に位置することを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。
【請求項5】
請求項1に記載された自動傾転付オープンカセットロードポートにおいて、
前記傾転ドアの開放動作が始まる前の状態では、
前記エアシリンダが、前記エアシリンダと前記傾転ドアとの結合点である作用点と
,前記傾転ドアを固定フレーム部に回動自在に支持する支持結合点としての傾転軸と を結ぶ線より、前記カセットケース側に位置し、
前記ダンパが、前記作用点と,前記傾転軸とを結ぶ線より、前記カセットケースの
反対側に位置することを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。
【請求項6】
請求項3に記載された自動傾転付オープンカセットロードポートにおいて、
前記傾転ドアを閉成動作させる前記シリンダと前記傾転ドアを開放動作させる前記シリンダとに供給する空気圧の切り替えを行なう空気圧切り替え手段を設けたことを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。
【請求項7】
請求項1に記載された自動傾転付オープンカセットロードポートにおいて、
前記傾転ドアが閉成動作ないし開放動作する範囲に進入する異物を検知する検知手段を設け、前記検知手段が異物の進入を検知したら前記傾転ドアが閉成動作を止めて開放動作に切り替えることを特徴とする自動傾転付オープンカセットロードポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−332326(P2006−332326A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153780(P2005−153780)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】