説明

自動変速機の制御のための方法

【課題】運転者の希望(に基づく操作)と自動車の反応との間の遅延(時間差)が最小化され、とりわけ発進過程においての走行快適性が改善されるような自動変速機の制御方法、を提供すること。
【解決手段】本発明は、自動車のパワートレイン(駆動力伝達系)における自動変速機の制御方法であって、ある発進過程が、運転者の発進の希望が検出された時に、当該パワートレインにおける駆動エンジンと変速機との間でトルクを伝達するために、クラッチ制御部及び変速機制御部を制御するための少なくとも一つの変速機制御ユニットを介して実施されるようになっており、前記発進の希望の検出時に、駆動エンジンが活動状態であるか否かが検証されると共に、開放状態のクラッチがトルク伝達のための接触点へと調整されることを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う、自動変速機の制御のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車における自動シフト変速機の制御のための方法は、自動車技術から知られている。自動シフト変速機は、クラッチ制御部と、変速機制御部と、少なくとも一つの制御ユニットと、を有している。当該制御ユニットによって、クラッチ制御部及び変速機制御部が制御される。当該制御ユニットは、バスシステムを介して、内燃機関の(別の)制御ユニットと結合されている。ギヤ段が投入されていて、自動車が停止中であって、走行ペダル位置が所定の限界値を超える時、自動車の発進過程は、これらの(複数の)制御ユニットによって、制御される。走行ペダル位置は、内燃機関の制御ユニットから、バスシステムを介して、前記制御ユニットに伝達される。当該制御ユニットは、発進時において、エンジントルクが設定されることによって、内燃機関の回転数を目標値に調整する。すべりクラッチが、クラッチ制御部を介して、所定のトルクが得られるまで締結される。この状態は、変速機入力軸回転数が内燃機関の回転数に達するまで、あるいは、走行ペダルが解放されるまで、維持される。回転数が等しくなると、クラッチは完全に締結され得て、エンジントルクは運転者希望のトルクに高められ得る。そして、発進過程は終了される。走行ペダルが再び解放されると、前記クラッチは、前記制御ユニットによって、開放され得る。
【0003】
更に、文献EP0709246B1から、自動の自動車クラッチの制御方法が知られている。この自動車クラッチは、当該公知の方法において、完全な開放位置と締結位置とに加えて、ある接触位置と、ある接近位置と、にも維持され得る。当該接近位置とは、前記完全な開放位置と前記接触位置との間の、ある位置である。自動車クラッチのある開放状態において、当該クラッチの締結が予測される時、当該自動車クラッチは前記接近位置にもたらされ、当該クラッチの締結を待つべく、そこで維持される。当該クラッチは、従って、より迅速に当該接近位置へと調整される。
【0004】
例えば、いわゆる発進−停止−適用(Start-Stopp-Anwendung)の際、内燃機関は自動車の短時間の停止状態の際に遮断されるが、当該内燃機関は、発進過程の直前に遮断される、ということもあり得る。この場合において、運転者が走行ペダルを操作して発進の希望を示す時、内燃機関は、できる限り迅速に始動されるべきである。前記の公知の方法では、運転者の希望(に基づく操作)と自動車の反応との間に、明らかな遅延が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP0709246B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、本明細書の導入部分で記述された類の方法であって、運転者の希望(に基づく操作)と自動車の反応との間の遅延(時間差)が最小化され、とりわけ発進過程においての走行快適性が改善されるような方法、を提供することである。
【0007】
この課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載された特徴によって解決される。更なる有利な実施の形態が、下位請求項及び図面より明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、自動車のパワートレイン(駆動力伝達系)における自動変速機の制御方法であって、ある発進過程が、運転者の発進の希望が検出された時に、当該パワートレインにおける駆動エンジンと変速機との間でトルクを伝達するために、クラッチ制御部及び変速機制御部を制御するための少なくとも一つの変速機制御ユニットを介して実施されるようになっており、前記発進の希望の検出時に、駆動エンジンが作動されているか否かが検証されると共に、開放状態のクラッチがトルク伝達のための接触点へと既に調整されることを特徴とする方法、が提供される。
【0009】
この態様では、発進過程の制御の際に、駆動エンジンが作動されているか否か、が考慮され得る。特に、駆動エンジンが作動されていない場合に、発進過程中の遅延及び快適性低減を防止すべく、対策が取られ得る。
【0010】
本発明のある実施の形態では、例えば、本発明方法において、前記クラッチが駆動エンジンの始動の前に既に、トルク伝達のための例えばある接触点またはその等価位置に移動される、好ましくは調整される、ということが考慮される。好ましくは、前記クラッチは、駆動エンジンが遅れて作動されるまで、この状態で保持される。すなわち、前記クラッチは、すでに発進過程のために準備がなされており、駆動エンジンの始動の後、発進過程の遅延を生じることがない。この態様では、前記クラッチは、駆動エンジンが作動された後、直ちにトルク形成(Drehmomentaufbau)を開始することができる。
【0011】
特に有利な態様では、本発明の別の実施の形態に従って、発進過程が停止されるか、あるいは、駆動エンジンの作動(起動)が実施されない時、前記クラッチがある適用点(Anlegepunkt)に調整される、ということが考慮され得る。この状態でも、遅れて実施され得る発進過程の遅延が回避され得る。この場合、クラッチの状態は適用点(Anlegepunkt)として示されている。これは、クラッチが、前記接触点から、安全距離込みで、例えば開放方向に遠ざけられることによる。
【0012】
この状態において、適用可能である前もって定められた時間間隔の後でも、駆動エンジンが作動されないなら、前記クラッチは当該適用点から完全な開放状態またはその等価状態へと調整される、ということが考慮され得る。
【0013】
例えば、本発明方法は、パワートレイン内であるギヤ段が投入されていて、クラッチが完全に開放されていて、駆動エンジンが作動されていないという状態において、例えば常時あるいは所定間隔で、駆動エンジンが作動されるか否かが検証される。駆動エンジンが作動されている場合には、発進過程のために通常予定されるプロセスが実施され得る。駆動エンジンが作動されないなら、駆動エンジンの始動を監視する監視プロセスが、設定される。例えば、駆動エンジンが始動された時、追加的に、加速ペダル(ガスペダル)ないし走行ペダルが操作されるか否か、が検証され得る。走行ペダルが操作される場合、前記クラッチが前記接触点にある(存在する)か否か、が更に検証され、そこにない(存在しない)場合、前記クラッチは前記接触点に調整され得る。その後、本発明方法において、駆動エンジンが作動されているか否か、が更に検証(検査)される。駆動エンジンが作動されている場合、通常の発進過程が実施され得る。
【0014】
本発明方法によれば、発進−停止−機能(Start-Stopp-Funktion)の枠内で、駆動エンジンの始動時において、クラッチのとりわけ迅速な適用が実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動車のパワートレイン内の自動変速機を制御するための本発明方法の一実施の形態の、例示的に示されたプロセスの工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明は、図面を参照して詳細に説明される。本発明の唯一の図は、自動車のパワートレイン内の自動変速機を制御するための本発明方法の一実施の形態の、例示的に示されたプロセスの工程図である。
【0017】
当該例示的に示された工程図の場合、この方法は、変速機内であるギヤ段が投入されていて、クラッチが完全に開放されている、という状態から始まる。駆動エンジンは、この状態において、作動されていない。例えば、ある発進−停止−機能(Start-Stopp-Funktion)が作用する際、駆動エンジンは、発進過程の直前において遮断(スイッチオフ)されている可能性がある。この場合、本発明方法では、定期的に、例えば所定の時間間隔で、駆動エンジンが作動されているか否か、が検証(検査)され得る。駆動エンジンが作動されている場合、通常の発進過程が実施される。駆動エンジンが作動されていない場合、更に、いつ当該駆動エンジンが始動されるか、が検証(検査)される。駆動エンジンが作動されない場合、本発明方法は、最初(の工程)に戻る。
【0018】
駆動エンジンが始動されると、追加的に、走行ペダルが操作されるか否か、が検証される。走行ペダルが操作されない場合、本発明方法の枠内で、前記クラッチは、ある適用点(Anlegepunkt)に調整され、ある適用可能な時間の後で完全に開放される。当該適用点は、ある所定の安全距離だけ前記接触点からクラッチ開放方向に遠ざかった位置に対応している。
【0019】
走行ペダルが操作される時、前記クラッチが前記接触点にある(存在する)か否か、が検証される。前記クラッチの前記接触点とは、そこで当該クラッチがトルクを伝達できるということによって特徴付けられている。前記クラッチがすでに前記接触点にある(存在する)時、当該クラッチは当該位置にとどまり、プロセスは最初(の工程)に戻って、いつ当該駆動エンジンが始動されるかを監視して、始動されたら直ちに通常の発進過程の際と同様にトルク形成を開始可能とする。
【0020】
前記クラッチが前記接触点にない(存在しない)時、当該クラッチは当該接触点へと調整され(移動され)、プロセスはこの時も最初(の工程)に戻って、いつ駆動エンジンが始動されるかを更に監視して、通常な発進過程を実施可能とする。
【0021】
クラッチの接触点への提案された調整により、提案された本発明方法によれば、駆動エンジンの遮断時でも発進過程の遅延が最小化され、それによって自動車の快適特性の最適化が達成され得る。好ましくは、当該プロセスに更なるプロセス工程が追加され得る。あるいは、他の類ないし態様の既存のプロセス工程が組み合わされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のパワートレイン(駆動力伝達系)における自動変速機の制御方法であって、
ある発進過程が、運転者の発進の希望が検出された時に、当該パワートレインにおける駆動エンジンと変速機との間でトルクを伝達するために、クラッチ制御部及び変速機制御部を制御するための少なくとも一つの変速機制御ユニットを介して実施されるようになっており、
前記発進の希望の検出時に、駆動エンジンが活動状態であるか否かが検証されると共に、開放状態のクラッチがトルク伝達のための接触点へと調整される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
駆動エンジンが作動されるまで、前記クラッチは、トルクの伝達のための接触点にとどまる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラッチは、駆動エンジンが作動されるとすぐに、トルク形成(Drehmomentaufbau)を始める
ことを特徴とする請求項2に記載の油圧式の切換装置。
【請求項4】
発進過程が停止されるか、あるいは、駆動エンジンの作動が実施されない時、前記クラッチは、ある適用点(Anlegepunkt)に調整される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の油圧式の切換装置。
【請求項5】
前記クラッチは、前記適用点において、ある適用可能な時間間隔が経過した後で、完全な開放状態に調整される
ことを特徴とする請求項4に記載の油圧式の切換装置。
【請求項6】
ギヤ段が投入されていて、前記クラッチが完全な開放状態である時に、駆動エンジンが作動されているか否かが検証され、
駆動エンジンが作動されていない場合、いつ当該エンジンが始動されるか、が監視され、
駆動エンジンが作動されている場合、走行ペダルが操作されるか否か、が監視され、
走行ペダルが操作される場合、前記クラッチが前記接触点にあるか否か、が検証され、
前記クラッチは、前記接触点に調整される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の油圧式の切換装置。
【請求項7】
その後、駆動エンジンが作動されているか否かの最初の検証が繰り返され、
駆動エンジンが作動されている場合、発進過程が実施される
ことを特徴とする請求項6に記載の油圧式の切換装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−32050(P2010−32050A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172364(P2009−172364)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(592179300)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (56)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】