説明

自動変速機の制御装置

【課題】アイドルストップ制御によるエンジン停止時に摩擦要素へのオイルの供給源を機械式オイルポンプから電動式オイルポンプに切り換える際に、エネルギー損失を少なくしつつ摩擦要素へ供給される油圧が一時的に低下することを抑制するようにする。
【解決手段】アイドルストップ手段を備えた自動変速機の制御装置は、機械式オイルポンプから導かれた第1油路と電動式オイルポンプから導かれた第2油路を摩擦要素に通じる第3油路に選択的に接続し、アイドルストップ手段によるエンジンの自動停止時に、第1油路が第3油路に接続された状態から第2油路が第3油路に接続された状態に切り換える油路切換手段を備え、電動式オイルポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御手段は、第1油路が第3油路に接続された状態から第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる前に電動式オイルポンプの駆動を開始するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される自動変速機の制御装置に関し、特にアイドルストップ制御を行う車両に搭載される自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される自動変速機として、エンジン出力軸に取り付けられたトルクコンバータと、該トルクコンバータの出力側に連結されると共にクラッチ及びブレーキ等の複数の摩擦要素を備えた変速機構と、エンジン駆動による機械式オイルポンプとを有し、機械式のオイルポンプから供給されるオイルによって複数の摩擦要素を選択的に締結して減速比の異なる複数の変速段を達成するようにしたものが一般に知られている。
【0003】
また、近年では、自動変速機が搭載された車両において、交差点等における停車時に、所定の停止条件の成立によりエンジンを自動停止させると共に、所定の再始動条件の成立によりエンジンを自動再始動させる所謂アイドルストップ制御を行うようにしたものも一般に知られている。
【0004】
しかしながら、自動変速機が搭載された車両でアイドルストップ制御を実施する場合、エンジン停止時に、機械式オイルポンプも停止するので、停車直前に締結されていた摩擦要素、換言すれば発進時に動力を伝達する摩擦要素が一旦解放され、その後、エンジン再始動時に再び締結されることになり、その際、締結の応答遅れによる発進性の悪化や、締結に伴うショックの問題が発生することとなる。
【0005】
これに対しては、特許文献1に開示されているように、エンジンからの動力により駆動される機械式オイルポンプとは別に、電動機からの動力により駆動される電動式オイルポンプを備え、該電動式オイルポンプからのオイルにより、エンジン停止中も摩擦要素を締結させた状態に維持することが行なわれる。これによれば、エンジン再始動時における摩擦要素の締結の応答遅れによる発進性の悪化や、摩擦要素の締結時のショックの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−175038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エンジン駆動による機械式オイルポンプとは別に電動式オイルポンプを備え、該電動式オイルポンプからのオイルによってエンジン停止中も摩擦要素を締結するようにする場合に、電動式オイルポンプを絶えず駆動させていると、エネルギー損失が大きくなることとなる。
【0008】
これに対して、自動変速機の摩擦要素へのオイルの供給源が機械式オイルポンプから電動式オイルポンプに切り換える制御が行われた後に、電動式オイルポンプの駆動を開始すると、エネルギー損失を少なくすることができるものの、摩擦要素へ供給される油圧が一時的に低下することとなる。この場合、特に停車直後にエンジン再始動条件が成立して摩擦要素を再び締結する際に、締結の応答遅れによる発進性の悪化や、締結時のショックの問題が生じることとなる。
【0009】
そこで、本発明は、エンジン駆動による機械式オイルポンプとは別に電動式オイルポンプを備え、アイドルストップ制御によるエンジン停止中に電動式オイルポンプからのオイルにより摩擦要素を締結するようにするようにした自動変速機において、エネルギー損失を少なくしつつ摩擦要素へ供給される油圧が一時的に低下することを抑制することができる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本願の請求項1に係る発明は、摩擦要素にオイルを供給するエンジン駆動の機械式オイルポンプと、前記摩擦要素にオイルを供給する電動式オイルポンプと、該電動式オイルポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御手段とを備えると共に、車両の停車時において所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、この自動停止状態で所定のエンジン再始動条件が成立したときに、エンジンを自動再始動させるアイドルストップ手段を備えた自動変速機の制御装置であって、前記機械式オイルポンプから導かれた第1油路と前記電動式オイルポンプから導かれた第2油路を前進発進段で締結される摩擦要素に通じる第3油路に選択的に接続し、前記アイドルストップ手段によるエンジンの自動停止時に、前記第1油路が第3油路に接続された状態から前記第2油路が第3油路に接続された状態に切り換える油路切換手段を備え、前記ポンプ駆動制御手段は、前記油路切換手段によって前記第1油路が第3油路に接続された状態から前記第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる前に前記電動式オイルポンプの駆動を開始するように前記電動式オイルポンプの駆動を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記油路切換手段は、前記第1油路の油圧が所定圧以上である場合に前記第1油路を第3油路に接続し、前記第1油路の油圧が所定圧未満である場合に前記第2油路を第3油路に接続するものであり、前記第1油路の油圧を検出する油圧検出手段と、該油圧検出手段によって検出される前記第1油路の油圧に基づいて、前記油路切換手段によって前記第1油路が第3油路に接続された状態から前記第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる切換タイミングを予測する切換タイミング予測手段と、をさらに備え、前記ポンプ駆動制御手段は、前記切換タイミング予測手段によって予測される前記切換タイミングに基づいて、前記電動式オイルポンプの駆動を開始するように前記電動式オイルポンプの駆動を制御する、ことを特徴とする。
【0012】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記摩擦要素に供給されるオイルの温度を検出する油温検出手段をさらに備え、前記切換タイミング予測手段は、前記油温検出手段によって検出されるオイルの温度が高い場合には該オイルの温度が低い場合に比して前記切換タイミングが早くなるように前記切換タイミングを予測する、ことを特徴とする。
【0013】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、ドライバによる減速要求を検出する減速要求検出手段と、車両の車速を検出する車速検出手段と、
をさらに備え、前記ポンプ駆動制御手段は、前記減速要求検出手段によって検出される前記減速要求が大きくなるにつれて、前記車速検出手段によって検出される車速が高い車速で、前記電動式オイルポンプの駆動を開始するように前記電動式オイルポンプの駆動を制御する、ことを特徴とする。
【0014】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に係る発明において、前記第2油路に接続され、前記電動式オイルポンプの駆動停止時に前記第2油路の油圧を低下させるための第4油路が設けられ、該第4油路にオリフィスが設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記電動式オイルポンプは、前記機械式オイルポンプに比して最大容量が小さく設定されたものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1に係る自動変速機の制御装置によれば、機械式オイルポンプから導かれた第1油路と電動式オイルポンプから導かれた第2油路を前進発進段で締結される摩擦要素に通じる第3油路に選択的に接続し、アイドルストップ手段によるエンジンの自動停止時に、第1油路が第3油路に接続された状態から第2油路が第3油路に接続された状態に切り換える油路切換手段を備え、ポンプ駆動制御手段は、油路切換手段によって第1油路が第3油路に接続された状態から第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる前に電動式オイルポンプの駆動を開始するように電動式オイルポンプの駆動を制御する。
【0017】
これにより、エンジンの自動停止時に、摩擦要素へのオイルの供給源が機械式オイルポンプから電動式オイルポンプに切り換えられる前に電動式オイルポンプの駆動を開始して第2油路の油圧を予め高めておくことができるので、電動式オイルポンプを絶えず駆動させている場合に比してエネルギー損失を少なくしつつ摩擦要素へ供給される油圧が一時的に低下することを抑制することができる。従って、エンジン再始動時における摩擦要素の締結の応答遅れによる発進性の悪化や、該摩擦要素の締結時のショックの発生を抑制することができる。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、第1油路の油圧を検出する油圧検出手段と、該油圧検出手段によって検出される第1油路の油圧に基づいて、油路切換手段によって第1油路が第3油路に接続された状態から第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる切換タイミングを予測する切換タイミング予測手段とをさらに備え、ポンプ駆動制御手段は、予測される切換タイミングに基づいて、電動式オイルポンプの駆動を開始するように電動式オイルポンプの駆動を制御することにより、電動式オイルポンプの駆動開始を第1油路が第3油路に接続された状態から第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる切換タイミングに基づいて好適に設定することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、摩擦要素に供給されるオイルの温度を検出する油温検出手段をさらに備え、切換タイミング予測手段は、油温検出手段によって検出されるオイルの温度が高い場合には該オイルの温度が低い場合に比して切換タイミングが早くなるように切換タイミングを予測することにより、オイルの温度に基づいて変化するオイルの粘性を考慮することにより、切換タイミングの予測精度を向上させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0020】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、ドライバによる減速要求を検出する減速要求検出手段と、車両の車速を検出する車速検出手段とをさらに備え、ポンプ駆動制御手段は、減速要求検出手段によって検出される減速要求が大きくなるにつれて、車速が高い車速で、電動式オイルポンプの駆動を開始するように電動式オイルポンプの駆動を制御することにより、第2油路の油圧が高められる前に摩擦要素へのオイルの供給源が機械式オイルポンプから電動式オイルポンプに切り換えられることを抑制することができる。
【0021】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、第2油路に接続され、電動式オイルポンプの駆動停止時に第2油路の油圧を低下させるための第4油路が設けられ、該第4油路にオリフィスが設けられていることにより、電動式オイルポンプの駆動停止時に該電動式オイルポンプにかかる圧力を低下させることができ、電動式オイルポンプの信頼性が低下することを抑制することができる。
【0022】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、電動式オイルポンプは、機械式オイルポンプに比して最大容量が小さく設定されたものであることにより、最大容量が小さく設定された電動式オイルポンプを用いて、前記効果を具体的に実現することができる。最大容量が小さい電動式オイルポンプは、電力の消費が少なく、またサイズや重量も小さいことから、省電力化、レイアウト性の向上及び重量の増加抑制に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。
【図2】同自動変速機の摩擦要素の締結表である。
【図3】同自動変速機の油圧制御回路の要部の回路図である。
【図4】同自動変速機及びエンジンの制御システム図である。
【図5】アイドルストップ制御時の第1の制御による各要素の状態を示すタイムチャートである。
【図6】要求減速度と電動ポンプ駆動開始車速との関係を示すグラフである。
【図7】アイドルストップ制御時の第2の制御による各要素の状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
まず、本発明の実施の形態に係るアイドルストップ制御が行われる車両に搭載される自動変速機について説明すると、図1に骨子を示すように、この自動変速機1は、フロントエンジンフロントドライブ車等のエンジン横置き式車両に適用されるもので、主たる構成要素として、エンジン出力軸2に取り付けられたトルクコンバータ3と、該トルクコンバータ3からの動力が入力軸4を介して入力される第1クラッチ10及び第2クラッチ20と、これらのクラッチ10、20や入力軸4から動力が入力される変速機構30とを有し、これらが入力軸4の軸心上に配置されて、変速機ケース5に収納されている。
【0026】
また、トルクコンバータ3と第1、第2クラッチ10、20との間には、該トルクコンバータ3を介してエンジンにより駆動される機械式のオイルポンプ6が配置され、また、第1、第2クラッチ10、20と変速機構30との間には、該変速機構30からの動力を取り出す出力ギヤ7が配置されている。そして、該出力ギヤ7から取り出された動力が、カウンタドライブ機構8を介して差動装置9に伝達され、車軸9a、9bを介して前輪を駆動するようになっている。
【0027】
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたケース3aと、該ケース3a内に固設されたポンプ3bと、該ポンプ3bに対向配置されて該ポンプ3bによりオイルを介して駆動されるタービン3cと、該ポンプ3bとタービン3cとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3eと、ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、該ケース3aを介してエンジン出力軸2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとで構成されている。そして、タービン3cの回転が入力軸4を介して第1、第2クラッチ10、20や変速機構30側に伝達されるようになっている。
【0028】
また、変速機構30は、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下「第1、第2、第3ギヤセット」という)40、50、60を有し、これらが変速機ケース5内にトルクコンバータ3側からこの順序で配置されている。
【0029】
また、摩擦要素として、第1、第2クラッチ10、20の他に、変速機構30を構成する第1ブレーキ70、第2ブレーキ80及び第3ブレーキ90が備えられ、エンジン側からこの順序で配置されている。また、第1ブレーキ70に並列にワンウェイクラッチ71が配置されている。
【0030】
第1、第2、第3ギヤセット40、50、60は、いずれもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ41、51、61と、これらのサンギヤ41、51、61にそれぞれ噛み合った各複数のピニオン42、52、62と、これらのピニオン42、52、62をそれぞれ支持するキャリヤ43、53、63と、各複数のピニオン42、52、62にそれぞれ噛み合ったリングギヤ44、54、64とで構成されている。
【0031】
そして、入力軸4が第3ギヤセット60のサンギヤ61に連結されていると共に、第1ギヤセット40のサンギヤ41と第2ギヤセット50のサンギヤ51、第1ギヤセット40のリングギヤ44と第2ギヤセット50のキャリヤ53、第2ギヤセット50のリングギヤ54と第3ギヤセット60のキャリヤ63が、それぞれ連結されている。そして、第1ギヤセット40のキャリヤ43に出力ギヤ7が連結されている。
【0032】
また、第1ギヤセット40のサンギヤ41及び第2ギヤセット50のサンギヤ51は、第1クラッチ10の出力部材11に連結され、該第1クラッチ10を介して入力軸4に断接可能に連結されている。また、第1ギヤセット40のリングギヤ44及び第2ギヤセット50のキャリヤ53は、第2クラッチ20の出力部材21に連結され、該第2クラッチ20を介して入力軸4に断接可能に連結されている。
【0033】
さらに、第1ギヤセット40のリングギヤ44及び第2ギヤセット50のキャリヤ53は、並列に配置された第1ブレーキ70及びワンウェイクラッチ71を介して変速機ケース5に断接可能に連結されており、第2ギヤセット50のリングギヤ54及び第3ギヤセット60のキャリヤ63は、第2ブレーキ80を介して変速機ケース5に断接可能に連結されており、さらに、第3ギヤセット60のリングギヤ64は、第3ブレーキ90を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。
【0034】
以上の構成により、この自動変速機1によれば、第1、第2クラッチ10、20及び第1、第2、第3ブレーキ70、80、90の締結状態の組み合わせにより、前進6速と後退速とが得られるようになっており、その組み合わせと変速段の関係を図2の締結表に示す。
【0035】
ここで、第1ブレーキ70は、エンジンブレーキ作動用のレンジで締結されるようになっており、Dレンジ等では、該第1ブレーキ70に代えてワンウェイクラッチ71がロックすることにより1速段が実現されるようになっているが、Dレンジ等の1速で第1ブレーキ70を締結する場合もある。
【0036】
以上のような各クラッチ10、20及びブレーキ70、80、90の締結、解放は油圧制御回路によって制御されるようになっており、該油圧制御回路100のうち、停車直前及び発進時の変速段である1速を実現する部分は、図3に示すように構成されている。
【0037】
即ち、この油圧制御回路100は、エンジンによって駆動される機械式のオイルポンプ(以下「機械ポンプ」という)6とは別に設けられたモータ101aによって駆動される電動式のオイルポンプ(以下「電動ポンプ」という)101を有すると共に、機械ポンプ6の吐出側には、レンジ位置に応じて該ポンプ6からの油圧を各摩擦要素に振り分けて供給するマニュアルバルブ102が配置されている。
【0038】
このマニュアルバルブ102は、ライン103を介して機械ポンプ6に接続された入力ポートaと、Dレンジ等の前進走行レンジで該入力ポートaに連通する前進用出力ポートbとを有し、Nレンジでは、入力ポートaはいずれの出力用ポートbにも連通せず、該出力ポートbはドレンされるようになっている。
【0039】
前進用出力ポートbに接続された前進用ライン104は、オリフィスとチェックバルブとで構成されてオイルの排出方向に絞り作用を有する一方向絞り機構105を介して油路切換手段としてのオイルポンプシフトバルブ(以下「シフトバルブ」という)106に導かれ、該シフトバルブ106の第1入力ポートdに接続されている。
【0040】
また、このシフトバルブ106の第2入力ポートeには、ライン107を介して電動ポンプ101の吐出側が接続されていると共に、該シフトバルブ106の一端の制御ポートfには、機械ポンプ6の吐出側のライン103から分岐されたライン108が接続されている。
【0041】
シフトバルブ106は、その内部で移動可能なスプール130を有し、該スプール130の移動により、ライン104を第1クラッチ10に連通させる第1状態と、ライン107を第1クラッチ10に連通させる第2状態とに切り換えられるようになっている。具体的に、シフトバルブ106は、ライン104を第1クラッチ10に連通させる第1位置(図の下半部で示す右側の位置)にスプール130が位置するとき第1状態となり、ライン107を第1クラッチ10に連通させる第2位置(図の上半部で示す左側の位置)にスプール130が位置するとき第2状態となるように構成されている。
【0042】
そして、機械ポンプ6の作動時に、該ポンプ6の吐出圧がライン108を介してシフトバルブ106の制御ポートfに導入され、該導入された油圧が所定圧以上になるとき、スプリングの付勢力に抗してスプール130が第1位置に移動し、これにより、第1入力ポートdがシフトバルブ106の出力ポートgに連通する。
【0043】
また、機械ポンプ6の非作動時は、制御ポートfに該ポンプ6の吐出圧が導入されないので、スプリングの付勢力によってスプール130が第2位置に移動し、このとき、第2入力ポートeが出力ポートgに連通する。
【0044】
そして、このシフトバルブ106の出力ポートgは、ライン109に接続されており、該ライン109が、油圧制御用のリニアソレノイドバルブ121を介して第1クラッチ10に導かれている。リニアソレノイドバルブ121は、第1クラッチ10に供給される油圧を制御するものであり、必要に応じて、第1クラッチ10に供給されている作動圧を排出可能となっている。また、ライン109において、リニアソレノイドバルブ121の下流側には、該ソレノイドバルブ121で発生する油圧振動を吸収するためのアキュムレータ124が設けられている。
【0045】
このように、シフトバルブ106は、機械ポンプ6から導かれた第1油路103、104と、電動ポンプ101から導かれた第2油路107を前進発進段で締結される摩擦要素10に通じる第3油路109に選択的に接続し、第1油路103、104の油圧が所定圧以上である場合に第1油路103、104が第3油路109に接続し、第1油路104の油圧が所定圧未満である場合に第2油路107が第3油路109に接続するように構成されている。
【0046】
さらに、電動ポンプ101の吐出側のライン107からはライン113が分岐され、電動ポンプ101の駆動停止時に第2油路107の油圧を低下させるための第4油路113が設けられ、該油路113にオリフィス114が設けられている。これにより、電動ポンプ101の駆動停止時に該電動ポンプ101にかかる圧力を低下させることができ、電動ポンプ101の信頼性が低下することを抑制することができる。また、電動ポンプ106からのオイルが第1クラッチ10へ供給されるときは、該オイルの圧力がライン113へ分散されることが抑制され、第1クラッチ10に作動圧を適切に供給することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、電動ポンプ101は、機械ポンプ6に比して最大容量が小さく設定されたものが用いられる。ここで、最大容量とは、単位時間当たりの最大流量をいうものとする。最大容量が小さい電動ポンプは、電力の消費が少なく、またサイズや重量も小さいことから、省電力化、レイアウト性の向上及び重量の増加抑制に資することができる。
【0048】
次に、自動変速機1の制御及びエンジンのアイドルストップ制御を行なう制御ユニット200について説明すると、図4に示すように、この制御ユニット200には、当該車両の速度を検出する車速センサ201からの信号と、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ202からの信号と、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ203からの信号と、ドライバによって選択されている自動変速機1のレンジを検出するレンジセンサ204からの信号と、第1クラッチ10に供給されている作動圧を検出する第1クラッチ圧センサ205からの信号と、当該車両に搭載されているバッテリの残容量を検出するバッテリ残容量センサ206からの信号と、エンジン水温を検出するエンジン水温センサ207からの信号と、当該車両の加速度及び減速度を検出する加速度センサ208からの信号と、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ209からの信号とが入力されるようになっている。
【0049】
そして、これらの信号に基づき、該制御ユニット200は、次のようにエンジンのアイドルストップ制御を行なう。
【0050】
即ち、所定のエンジンの自動停止条件が成立したとき、具体的には、バッテリの残容量が所定量以上であり、エンジン水温が所定温度以上の状態において、車速が所定車速以下であり、アクセル開度が所定開度以下であり、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれたときに、エンジンの燃料供給装置や点火装置等のエンジンを作動させるための装置210にその作動を停止させるエンジン停止信号を出力してエンジンを自動停止させると共に、該エンジンの自動停止中にブレーキペダルの踏み込み解除などの自動再始動条件が成立したときに、前記装置210と始動装置211とにエンジン始動信号を出力してエンジンを自動再始動させる。
【0051】
また、この制御ユニット200は、車速とアクセル開度とに基づき、選択されているレンジに応じた自動変速機1の変速制御を行なうと共に、アイドルストップ制御時に、第1油路103、104の油圧に応じて、自動変速機1の油圧制御回路100における電動ポンプ101を駆動するモータ101aに制御信号を出力することにより、アイドルストップ制御時における自動変速機1の摩擦要素の締結制御を行うようになっている。
【0052】
次に、図5に示すタイムチャートに従い、アイドルストップ制御時における自動変速機1の摩擦要素の締結の第1の制御について説明する。
【0053】
図5は、前進走行レンジとしてDレンジが選択されている状態で停車し、エンジンが自動停止した後、再始動する場合の制御を示すものであり、まず、エンジンの自動停止に先立ち、車速が所定車速V(エンジン自動停止条件以上の車速)以下になった時点T1で電動ポンプ101を作動させ、その後、前述のエンジン自動停止条件が成立した時点T2でエンジンを自動停止させる。
【0054】
このとき、エンジン駆動による機械ポンプ6が停止することにより、該機械ポンプ6から第1クラッチ10への作動圧の供給が停止されることになるが、図3の油圧制御回路100においては、機械ポンプ6の吐出圧が低下してライン103、104、108の圧力が所定圧未満になり、第1クラッチ圧が所定圧P10未満になる時点T3で、シフトバルブ106が第1状態から第2状態に切り換えられ、即ち該シフトバルブ106のスプール130が第1位置から第2位置に移動して、第1油路103、104が第3油路109に接続された状態から第2油路107が第3油路109に接続された状態に切り換えられる。
【0055】
従って、エンジンの自動停止に先立つ時点T1で既に作動を開始している電動ポンプ101からの作動圧が機械ポンプ6からの作動圧に代わり、ライン109を介して第1クラッチ10に供給され、図5に符号アで示すように、第1クラッチ圧が供給されている状態、即ち第1クラッチ10が締結された状態が維持される。この電動ポンプ101で供給される第1クラッチ圧は、締結状態を維持するだけの比較的低い油圧に制御される。
【0056】
しかし、シフトバルブ106が第1状態から第2状態に切り換えられる際に第1クラッチ圧が一時的に低下することを抑制するために、電動ポンプ101は、符号イで示すように、締結状態を維持するだけの比較的低い油圧に第1クラッチ圧を制御するための吐出圧に比して、吐出圧が高くなるように制御される。
【0057】
また、本実施形態では、制御ユニット200は、車速センサ201によって検出される車速と加速度センサ208によって検出される減速度からドライバによる減速要求を検出し、この減速要求に基づいて、電動ポンプ101の駆動を開始する所定車速Vを設定することができるようになっている。
【0058】
図6は、要求減速度と電動ポンプ駆動開始車速との関係を示すグラフであり、この図6に示すように、制御ユニット200は、減速要求度が大きくなるにつれて、電動ポンプ101の駆動を開始する所定車速Vを高くするように設定する。即ち、制御ユニット200は、減速要求度が大きくなるにつれて、車速が高い車速で、電動ポンプ101の駆動を開始するように電動ポンプ101の駆動を制御する。これにより、第2油路107の油圧が高められる前に第1クラッチ10へのオイルの供給源が機械ポンプ6から電動ポンプ101に切り換えられることを抑制することができる。
【0059】
その後、時点T4で、エンジン再始動条件としてのブレーキペダルの踏み込みの解除が検出されると、エンジンが再始動されることになるが、自動変速機1は第1クラッチ10が締結された状態、即ち1速の状態が保持されているから、車両はアクセルペダルの踏み込みに応じて直ちに発進することになる。
【0060】
そして、その後、エンジンの始動に伴う機械ポンプ6の作動開始により該機械ポンプ6の吐出圧が立ち上がり、シフトバルブ106が第2状態から第1状態へ切り換えられた時点T5で、該機械ポンプ6からの作動圧が第1クラッチ圧として第1クラッチ10に供給される。これにより、電動ポンプ101は役目を終了し、停止する。
【0061】
その場合に、エンジン自動停止中、第1クラッチ圧は比較的低い油圧に制御されていたので、該第1クラッチ圧を車両の発進に必要な圧力まで速やかに上昇させるため、電動ポンプ101は、符合ウで示すように、停止する直前に吐出圧が一時的に高くなるように制御される。
【0062】
以上のようにして、第1クラッチ10は、エンジンの自動停止中も締結された状態が維持され、発進時に該第1クラッチ10を改めて締結することがないから、クラッチ締結時の応答遅れが防止されて良好な発進応答性が得られると共に、クラッチの締結によるショックの発生が抑制される。
【0063】
このように、本実施形態に係る自動変速機の制御装置は、摩擦要素10にオイルを供給するエンジン駆動の機械ポンプ6と、摩擦要素10にオイルを供給する電動ポンプ101と、該電動ポンプ101の駆動を制御するポンプ駆動制御手段200とを備えると共に、車両の停車時において所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、この自動停止状態で所定のエンジン再始動条件が成立したときに、エンジンを自動再始動させるアイドルストップ手段200を備えている。
【0064】
また、前記自動変速機の制御装置は、機械ポンプ6から導かれた第1油路103、104と、電動ポンプ101から導かれた第2油路107を前進発進段で締結される摩擦要素10に通じる第3油路109に選択的に接続し、アイドルストップ手段200によるエンジンの自動停止時に、第1油路104が第3油路109に接続された状態から第2油路107が第3油路109に接続された状態に切り換える油路切換手段106を備え、ポンプ駆動制御手段200は、油路切換手段106によって第1油路104から第2油路107に切り換えられる前に電動ポンプ101の駆動を開始するように電動ポンプ101の駆動を制御する。
【0065】
これにより、エンジンの自動停止時に、摩擦要素10へのオイルの供給源が機械ポンプ6から電動ポンプ101に切り換えられる前に電動ポンプ101の駆動を開始して第2油路107の油圧を予め高めておくことができるので、電動ポンプ101を絶えず駆動させている場合に比してエネルギー損失を少なくしつつ摩擦要素10へ供給される油圧が一時的に低下することを抑制することができる。従って、エンジン再始動時における摩擦要素10の締結の応答遅れによる発進性の悪化や、該摩擦要素10の締結時のショックの発生を抑制することができる。
【0066】
次に、図7に示すタイムチャートに従い、アイドルストップ制御時における自動変速機1の摩擦要素の締結の第2の制御について説明する。
【0067】
図7についても、前進走行レンジとしてDレンジが選択されている状態で停車し、エンジンが自動停止した後、再始動する場合の制御を示すものであるが、図7に示す制御では、車速が所定車速以下になった時点で電動ポンプ101を作動させるものではなく、エンジン自動停止条件が成立した時点で自動停止されるエンジンの回転数の低下に伴って機械ポンプ6の吐出圧が低下し、第1油路103、104の圧力が所定圧未満になりシフトバルブ106が第1状態から第2状態に切り換えられる切換タイミングを予測して、該切換タイミングから所定時間前の時点において電動ポンプ101を作動させるようにしたものである。
【0068】
また、第2の制御では、第1クラッチ10に供給されている作動圧を検出する第1クラッチ圧センサ205は、第1油路103、104の油圧を検出する油圧検出手段として機能するようになっており、制御ユニット200にライン103、104の油圧が所定圧以上である場合にON信号を送り、ライン103、104の油圧が所定圧未満である場合にOFF信号を送る第1クラッチ圧スイッチとして機能している。
【0069】
第2の制御ではまた、制御ユニット200は、第1クラッチ圧センサ205によって検出される第1油路103、104の油圧に基づいて、シフトバルブ106が第1状態から第2状態に切り換える切換タイミングを予測することができるようになっていると共に、予測される切換タイミングに基づいて、電動ポンプ101の駆動の開始を制御するようになっている。
【0070】
図7に示すように、まず、エンジンの自動停止条件が成立した時点T11で、エンジンを自動停止させる。エンジンを自動停止させる際には、エンジンの回転数が徐々に低くなり、これに伴って機械ポンプ6の吐出圧が低下し、第1油路103、104の油圧及び第1クラッチ圧が低下することとなる。
【0071】
本実施形態では、第1クラッチ圧センサ205によって検出される圧力が所定圧P20になり、第1クラッチ圧スイッチがOFFにされた時点T12で、制御ユニット200によって、シフトバルブ106が第1状態から第2状態に切り換えられる切換タイミングT14が予測される。このとき、制御ユニット200は、予測される切換タイミングT14から所定時間前の時点T13において電動ポンプ101の作動を開始させるように設定する。
【0072】
その後、エンジンの回転数がさらに低くなって、機械ポンプ6の吐出圧がさらに低下し、第1油路103、104の油圧及び第1クラッチ圧がさらに低下する時点T13において、電動ポンプ101を作動させる。そして、機械ポンプ6の吐出圧がさらに低下して第1油路103、104の油圧及びライン108の油圧が所定圧未満になり、第1クラッチ圧が所定圧P21未満になる時点T14で、シフトバルブ106が第1状態から第2状態に切り換えられ、電動ポンプ101からの作動圧が機械ポンプ6からの作動圧に代わり、ライン109を介して第1クラッチ10に供給され、図6に符号アで示すように、第1クラッチ圧が供給されている状態、即ち第1クラッチ10が締結された状態が維持される。
【0073】
その後、時点T15で、エンジン再始動条件としてのブレーキペダルの踏み込みの解除が検出されると、エンジンが再始動されることになるが、自動変速機1は第1クラッチ10が締結された状態、即ち1速の状態が保持されているから、車両はアクセルペダルの踏み込みに応じて直ちに発進することになる。
【0074】
そして、その後、エンジンの始動に伴う機械ポンプ6の作動開始により該機械ポンプ6の吐出圧が立ち上がり、シフトバルブ106が第2状態から第1状態へ切り換えられた時点T16で、該機械ポンプ6からの作動圧が第1クラッチ圧として第1クラッチ10に供給される。これにより、電動ポンプ101は役目を終了し、停止する。
【0075】
以上のようにして、第1クラッチ10は、エンジンの自動停止中も締結された状態が維持され、発進時に該第1クラッチ10を改めて締結することがないから、クラッチ締結時の応答遅れが防止されて良好な発進応答性が得られると共に、クラッチの締結によるショックの発生が抑制される。
【0076】
このように、第2の制御においても、本実施形態に係る自動変速機の制御装置は、機械ポンプ6から導かれた第1油路103、104と電動ポンプ101から導かれた第2油路107を前進発進段で締結される摩擦要素10に通じる第3油路109に選択的に接続し、アイドルストップ手段200によるエンジンの自動停止時に、第1油路103、104が第3油路109に接続された状態から第2油路107が第3油路109に接続された状態に切り換える油路切換手段106を備え、ポンプ駆動制御手段200は、油路切換手段106によって第1油路103、104から第2油路107に切り換えられる前に電動ポンプ101の駆動を開始するように電動ポンプ101の駆動を制御する。
【0077】
これにより、エンジンの自動停止時に、摩擦要素10へのオイルの供給源が機械ポンプ6から電動ポンプ101に切り換えられる前に電動ポンプ101の駆動を開始して第2油路107の油圧を予め高めておくことができるので、電動ポンプ101を絶えず駆動させている場合に比してエネルギー損失を少なくしつつ摩擦要素10へ供給される油圧が一時的に低下することを抑制することができる。
【0078】
また、前記自動変速機の制御装置は、第1油路103、104の油圧を検出する油圧検出手段205と、該油圧検出手段205によって検出される第1油路103、104の油圧に基づいて、第1油路103、104が第3油路109に接続された状態から第2油路107が第3油路109に接続された状態に切り換えられる切換タイミングを予測する切換タイミング予測手段200とをさらに備え、ポンプ駆動制御手段200は、予測される切換タイミングに基づいて、電動ポンプ101の駆動を開始するように電動ポンプ101の駆動を制御することにより、電動ポンプ101の駆動開始を第1油路103、104が第3油路109に接続された状態から第2油路107が第3油路109に接続された状態に切り換えられる切換タイミングに基づいて好適に設定することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0079】
前述した第2の制御において、摩擦要素10に供給されるオイルの温度を検出する温度センサなどの温度検出手段を設け、制御ユニット200が、該温度検出手段によって検出されるオイルの温度が高い場合には該オイルの温度が低い場合に比して第1油路103、104から第2油路107への切換タイミングが早くなるように切換タイミングを予測するようにすることも可能である。
【0080】
このように、摩擦要素10に供給されるオイルの温度を検出する油温検出手段をさらに備え、切換タイミング予測手段は、油温検出手段によって検出されるオイルの温度が高い場合には該オイルの温度が低い場合に比して切換タイミングが早くなるように切換タイミングを予測することにより、オイルの温度に基づいて変化するオイルの粘性を考慮することにより、切換タイミングの予測精度を向上させることができる。
【0081】
なお、第2の制御では、第1クラッチ圧センサ205によってライン103、104の油圧を検出しているが、ライン103、104、108に該ライン103、104、108の油圧を検出する油圧センサなどの油圧検出手段を設け、かかる油圧検出手段によって検出される油圧に基づいて、シフトバルブ106の切換タイミングを予測し、予測される切換タイミングに基づいて電動ポンプ101の作動を開始するようにすることも可能である。
【0082】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明によれば、アイドルストップ制御によるエンジン停止時に摩擦要素へのオイルの供給源をエンジン駆動による機械ポンプから電動ポンプに切り換える自動変速機が搭載された車両において、エネルギー損失を少なくしつつ摩擦要素へ供給される油圧が一時的に低下することを抑制することが可能となるから、この種の車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
1 自動変速機
6 機械ポンプ
10 第1クラッチ
101 電動ポンプ
103、104 第1油路
106 シフトバルブ
107 第2油路
109 第3油路
113 第4油路
114 オリフィス
200 制御ユニット
201 車速センサ
205 第1クラッチ圧センサ
208 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦要素にオイルを供給するエンジン駆動の機械式オイルポンプと、前記摩擦要素にオイルを供給する電動式オイルポンプと、該電動式オイルポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御手段とを備えると共に、車両の停車時において所定のエンジン停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、この自動停止状態で所定のエンジン再始動条件が成立したときに、エンジンを自動再始動させるアイドルストップ手段を備えた自動変速機の制御装置であって、
前記機械式オイルポンプから導かれた第1油路と前記電動式オイルポンプから導かれた第2油路を前進発進段で締結される摩擦要素に通じる第3油路に選択的に接続し、前記アイドルストップ手段によるエンジンの自動停止時に、前記第1油路が第3油路に接続された状態から前記第2油路が第3油路に接続された状態に切り換える油路切換手段を備え、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記油路切換手段によって前記第1油路が第3油路に接続された状態から前記第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる前に前記電動式オイルポンプの駆動を開始するように前記電動式オイルポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記油路切換手段は、前記第1油路の油圧が所定圧以上である場合に前記第1油路を第3油路に接続し、前記第1油路の油圧が所定圧未満である場合に前記第2油路を第3油路に接続するものであり、
前記第1油路の油圧を検出する油圧検出手段と、
該油圧検出手段によって検出される前記第1油路の油圧に基づいて、前記油路切換手段によって前記第1油路が第3油路に接続された状態から前記第2油路が第3油路に接続された状態に切り換えられる切換タイミングを予測する切換タイミング予測手段と、
をさらに備え、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記切換タイミング予測手段によって予測される前記切換タイミングに基づいて、前記電動式オイルポンプの駆動を開始するように前記電動式オイルポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記摩擦要素に供給されるオイルの温度を検出する油温検出手段をさらに備え、
前記切換タイミング予測手段は、前記油温検出手段によって検出されるオイルの温度が高い場合には該オイルの温度が低い場合に比して前記切換タイミングが早くなるように前記切換タイミングを予測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
ドライバによる減速要求を検出する減速要求検出手段と、
車両の車速を検出する車速検出手段と、
をさらに備え、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記減速要求検出手段によって検出される前記減速要求が大きくなるにつれて、前記車速検出手段によって検出される車速が高い車速で、前記電動式オイルポンプの駆動を開始するように前記電動式オイルポンプの駆動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記第2油路に接続され、前記電動式オイルポンプの駆動停止時に前記第2油路の油圧を低下させるための第4油路が設けられ、
該第4油路にオリフィスが設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
前記電動式オイルポンプは、前記機械式オイルポンプに比して最大容量が小さく設定されたものである、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154392(P2012−154392A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13185(P2011−13185)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】