説明

自動変速機の制御装置

【課題】作動油に空気が混入した場合でも、機械式オイルポンプの吐出量の低下を抑制する自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】機械式オイルポンプから吐出される作動油が流れる吐出路に設けた絞り部の上流側と下流側の差圧が所定値よりも大きくなると、機械式オイルポンプから吐出された作動油の一部を機械式オイルポンプに導入する流量制御機構を有した自動変速機の制御装置であって、作動油の油温が所定油温以上(S102)であり、かつエンジントルクが所定エンジントルク以下(S103)である場合に、デフ回転速度が大きくなるほどライン圧を大きくする(S105)ことで、作動油に混入した空気を圧縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動変速機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルポンプの吐出側流路に流量制御弁を備えたものが特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、流量制御弁として機能するスプールが制御絞りを有しており、制御絞りの上流側、および下流側の差圧に応じて、スプールが移動し、スプールの側面に設けられ、オイルポンプの吸入路と連通するドレン孔の開口面積を調整する。通常、スプールはドレン孔を閉じるようにバネなどで付勢されている。そして、制御絞りよりも上流側の圧力と制御絞りよりも下流側の圧力との差圧がバネの付勢力よりも大きくなるとスプールはドレン孔を開口するように移動する。
【0004】
このような流量制御弁を用いて、オイルポンプから吐出された作動油をオイルポンプの吸入路に戻すことで、作動油に混入した空気の圧縮率が低い作動油の吸入量が少なくなり、オイルポンプの吐出効率が向上する。
【0005】
しかし、オイルパンからオイルポンプに吸入される作動油に混入する空気が多くなると、オイルポンプの吐出量が脈動し、差圧も脈動する。その結果、本来、ドレン孔が連通状態となっていなければならない場合でも、脈動により差圧が小さくなった時に、バネの付勢力によってスプールはドレン孔が閉じるように移動して、ドレン孔が非連通状態となるおそれがある。
【0006】
このような場合には、作動油に混入した空気の圧縮率が低い作動油がオイルポンプに吸入され、オイルポンプ内のオイル中に占める空気の体積が大きくなるので、オイルポンプの吐出量がさらに低下し、例えば変速機などで必要な油圧を供給できない。
【0007】
これに対して、特許文献2には、作動油内の空気混入量を求めて、空気混入による吐出量の低下を考慮して、電動オイルポンプの回転速度を上昇させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−183746号公報
【特許文献2】特開2002−340160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電動オイルポンプはモータによって駆動するため、電動オイルポンプの回転速度を自由に制御することが可能である。しかし、例えばエンジンなどで発生した回転によって駆動する機械式オイルポンプにあっては、機械式オイルポンプの回転速度を個別に制御することが難しく、上記する吐出量の低下を防ぐことが困難である、といった問題がある。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、作動油への空気混入による機械式オイルポンプの吐出量低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様に係る自動変速機の制御装置は、エンジンの回転が伝達されて駆動する機械式オイルポンプと、機械式オイルポンプに吸入される作動油が流れる吸入路と、機械式オイルポンプから吐出される作動油が流れ、絞り部を有する吐出路と、機械式オイルポンプをバイパスして吸入路と作動油の流れ方向において絞り部よりも上流側の吐出路とを連通する連通路と、作動油の流れ方向において絞り部よりも上流側の油圧と作動油の流れ方向において絞り部よりも下流側の油圧との差圧が所定値よりも大きい場合に連通路を連通状態にし、差圧が所定値以下の場合に連通路を非連通状態にするスプールを有する流量制御機構と、を備える自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、作動油の油温を検出する油温検出手段と、エンジントルクを算出するエンジントルク算出手段と、エンジントルクが高いほどライン圧を高く設定するライン圧設定手段と、自動変速機の出力軸側の回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、油温が、作動油に混入した空気に起因して連通路が連通状態から非連通状態に切り替わる所定油温以上であり、かつエンジントルクが、作動油に混入した空気に起因して連通路が連通状態から非連通状態に切り替わる所定エンジントルク以下である場合に、出力軸側の回転速度が大きい程ライン圧を大きくするライン圧補正手段とを備える。
【0012】
この態様によれば、作動油に空気が混入した場合でも、流量制御機構を正常に動作させることができ、機械式オイルポンプの吐出量低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、作動油へ空気が混入した場合でも、機械式オイルポンプの吐出量低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の自動変速機の制御装置の概略構成図である。
【図2】図1の自動変速機における変速制御油圧回路および変速機コントローラをより詳細に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の流量制御機構を示す概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態の油圧制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態において、必要ライン圧を算出するマップである。
【図6】本発明の第1実施形態を用いた場合と、第1実施形態を用いない場合のライン圧を説明するためのマップである。
【図7】本発明の第2実施形態の油圧制御を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態を用いた場合のライン圧を説明するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る自動変速機の制御装置の例を示すものである。自動変速機は、エンジンが横置された、例えばFF式の自動変速機である。図示の自動変速機はVベルト式無段変速機1である。このVベルト式無段変速機1はプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3を、両者のV溝が整列するように配置し、これらプーリ2,3のV溝にVベルト4を掛け渡す。駆動源であるエンジン5をプライマリプーリ2と同軸に配置し、このエンジン5とプライマリプーリ2との間に、エンジン5の側から順次ロックアップ機構を有するトルクコンバータ6および前後進切り替え機構7を設ける。
【0017】
前後進切り替え機構7は、ダブルピニオン遊星歯車組7aを主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ6を介してエンジン5に結合し、キャリアをプライマリプーリ2に結合する。前後進切り替え機構7は更に、ダブルピニオン遊星歯車組7aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ7b、およびリングギヤを固定する後進ブレーキ7cを備え、前進クラッチ7bの締結時にエンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ2に伝達し、後進ブレーキ7cの締結時にエンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転を逆転減速下にプライマリプーリ2へ伝達するものとする。
【0018】
プライマリプーリ2への回転はVベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転はその後、出力軸8、歯車組9およびデファレンシャルギヤ装置10を経て図示しない車輪へ伝達される。上記の動力伝達中にプライマリプーリ2とセカンダリプーリ3との間における回転伝動比(変速比)を変更可能にするために、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3のV溝を形成するフランジのうち一方を固定フランジ2a、3aとし、他方のフランジ2b、3bを軸線方向へ変位可能な可動フランジとする。これら可動フランジ2b、3bはそれぞれ、詳しくは後述するごとくに制御するライン圧を元圧として作り出したプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecをプライマリプーリ室2cおよびセカンダリプーリ室3cに供給することにより固定フランジ2a、3aに向けて附勢し、これによりVベルト4をプーリフランジに摩擦係合させてプライマリプーリ2とセカンダリプーリ3との間での前記動力伝達を可能にする。なお本実施の形態においては特に、プライマリプーリ室2cおよびセカンダリプーリ室3cの受圧面積を同じにし、プーリ2、3の一方が大径になることのないようにし、これによりVベルト式無段変速機の小型化を図る。
【0019】
なお変速に際しては、後述のごとく目標変速比に対応させて発生させたプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psec間の差圧により両プーリ2、3のV溝幅を変更して、これらプーリ2、3に対するVベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比を実現することができる。
【0020】
プライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecの出力は、前進走行レンジの選択時に締結すべき前進クラッチ7bおよび後進走行レンジの選択時に締結すべき後進ブレーキ7cの締結油圧の出力と共に変速制御油圧回路11により制御し、この変速制御油圧回路11は変速機コントローラ12からの信号に応答して当該制御を行うものとする。
【0021】
変速機コントローラ12には、プライマリプーリ回転数Npriを検出するプライマリプーリ回転センサ13からの信号と、セカンダリプーリ回転数Nsecを検出するセカンダリプーリ回転センサ14からの信号と、セカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧センサ15からの信号と、アクセルペダル踏み込み量APOを検出するアクセル開度センサ16からの信号と、インヒビタスイッチ17からの選択レンジ信号と、変速作動油温TMPを検出する油温センサ18からの信号と、エンジン5の制御を司るエンジンコントローラ19からの変速機入力トルクに関した信号(エンジン回転速度や燃料噴時間)と、車速センサ50からの信号とが入力される。
【0022】
図2は図1の自動変速機における変速制御油圧回路11および変速機コントローラ12をより詳細に示すものであり、先ず変速制御油圧回路11について以下に説明する。この回路には、エンジン駆動される機械式オイルポンプ21が配置される。
【0023】
機械式オイルポンプ21は、トルクコンバータ6の出力軸から径方向に離間した位置に設けられており、機械式オイルポンプ21の軸には第1スプロケットが取り付けられている。第1スプロケットは、トルクコンバータ6の出力軸に取り付けた第2スプロケットとチェーンを介して連結しており、トルクコンバータ6の出力軸の回転がチェーンによって伝達される。これによって、機械式オイルポンプ21の駆動軸が回転し、機械式オイルポンプ21は作動油を吸入し、圧力が高くなった作動油を吐出する。機械式オイルポンプ21の駆動軸の回転速度は、トルクコンバータ6の出力軸、つまりエンジン回転速度の回転速度に応じて変化する。トルクコンバータ6の出力軸の回転速度が大きくなると、機械式オイルポンプ21の駆動軸の回転速度も大きくなり、機械式オイルポンプ21の吐出量も大きくなる。
【0024】
機械式オイルポンプ21の駆動軸をトルクコンバータ6の出力軸と同軸上に設けずに、機械式オイルポンプ21をトルクコンバータ6の出力軸から離間した位置に配置することで、機械式オイルポンプ21の駆動軸の径を小さくすることができ、機械式オイルポンプ21を小型にすることができる。機械式オイルポンプ21を小型にするとフリクションが小さくなるので、効率が良くなる。
【0025】
図2の変速制御油圧回路11においては、さらに流量制御機構30が設けられている。図3は流量制御機構30の一例を示すものである。
【0026】
変速制御油圧回路11は、機械式オイルポンプ21に吸入される作動油が流れる吸入路31と、機械式オイルポンプ21から吐出された作動油が流れる吐出路32と、吐出路32と並列に配置され、吐出路32と連通する圧力室33と、機械式オイルポンプ21をバイパスし、圧力室33を介して吐出路32と吸入路31とを連通する連通路34とを備える。流量制御機構30は、圧力室33内に設けられる。
【0027】
吐出路32には、吐出路32の内壁から吐出路32内へ突出する絞り部35が形成される。絞り部35は、機械式オイルポンプ21から吐出された作動油を減圧する。吐出路32は、油路22に連通する。
【0028】
圧力室33には、後述するスプール41によって第1室36と第2室37とが形成される。第1室36は、第1連通口38によって作動油の流れ方向において絞り部35よりも上流側に位置する吐出路32と連通し、絞り部35よりも上流側の油圧が導入される。また、第2室37は、第2連通口39によって作動油の流れ方向において絞り部35よりも下流側に位置する吐出路32と連通し、絞り部35よりも下流側の油圧が導入される。また、第1室36の側面には、連通路34の開口部40が形成される。
【0029】
流量制御機構30は、圧力室33の内壁に摺動するスプール41と、第1室36の体積が小さくなるようにスプール41を付勢するバネ42とを備える。スプール41は、第1室36に突出するストッパ43を備える。第2室37を画成するスプール41の端面41aにバネ42の一方の端部が取り付けられている。バネ42のもう一方の端部は、スプール41の端面41aと向かい合う第2室37の側面37aに取り付けられている。ストッパ43は、スプール41がバネ42の付勢力によって移動した場合には、第1室36の側面36aに当接し、スプール41の移動を規制する。
【0030】
スプール41は、第1室36と第2室37との差圧、およびバネ42の付勢力によって圧力室33の内壁を摺動する。第1室36と第2室37との差圧が比較的小さい場合には、スプール41はバネ42の付勢力によって図3の左側、つまり上流側へ移動する。この場合、スプール41は連通路34の開口部40を塞いでいる。第1室36の第2室37との差圧が大きくなると、バネ42の付勢力に抗してスプール41は図3の右側、つまり下流側へ移動する。これによって連通路34の開口部40が第1室36に開口する。
【0031】
連通路34は、開口部40がスプール41によって閉塞されていない場合に、開口部40、第1室36を介して吸入路31と、絞り部35よりも上流側の吐出路32とを連通する。なお、連通路34は機械式オイルポンプ21の吸入口に近い箇所に連通することが望ましい。これにより、作動油に空気が混入している場合でも、機械式オイルポンプ21中の作動油の油圧が高くなり、空気が圧縮されて吐出量の脈動を抑制することができる。さらに、連通路34によって戻された作動油を機械式オイルポンプ21の吸入口近傍に戻すことで、機械式オイルポンプ21による大きな吸入力を必要とすることなく連通路34内の作動油を機械式オイルポンプ21内に吸入することができる。つまり、機械式オイルポンプ21の容量を大きくすることなく吐出量を多くすることができる。
【0032】
機械式オイルポンプ21から吐出され、吐出路32を介して油路22に送られた作動油は、プレッシャレギュレータ弁23により所定のライン圧に調圧される。油路22のライン圧は、一方で減圧弁24により調圧されセカンダリプーリ圧Psecとしてセカンダリプーリ室3cに供給され、他方で変速制御弁25により調圧されプライマリプーリ圧Ppriとしてプライマリプーリ室2cに供給される。なお、プレッシャレギュレータ弁23は、ソレノイド23aへの電流によりライン圧を制御し、減圧弁24は、ソレノイド24aへの電流によりセカンダリプーリ圧Psecを制御するものとする。また、ライン圧の一部は、調圧弁を介してトルクコンバータ6などに供給される。機械式オイルポンプ21の吐出量が一定の場合でも、トルクコンバータ6などに供給される油圧を絞ることで、ライン圧を高くすることができる。
【0033】
変速制御弁25は、中立位置25aと、増圧位置25bと、減圧位置25cとを有し、これら弁位置を切り換えるために変速制御弁25を変速リンク26の中程に連結し、該変速リンク26の一端に、変速アクチュエータとしてのステップモータ27を、また他端にセカンダリプーリの可動フランジ2bを連結する。ステップモータ27は、基準位置から目標変速比に対応したステップ数Stepだけ進んだ操作位置にされ、かかるステップモータ27の操作により変速リンク26が可動フランジ2bとの連結部を支点にして揺動することにより、変速制御弁25を中立位置25aから増圧位置25bまたは減圧位置25cとする。これにより、プライマリプーリ圧Ppriがライン圧を元圧として増圧され、またはドレンにより減圧され、セカンダリプーリ圧Psecとの差圧が変化することでHi側変速比へのアップシフトまたはLo側変速比へのダウンシフトを生じ、目標変速比に向けての変速動作が行われる。
【0034】
当該変速の進行は、プライマリプーリの可動フランジ2cを介して変速リンク26の対応端にフィードバックされ、変速リンク26がステップモータ27との連結部を支点にして、変速制御弁25を増圧位置25bまたは減圧位置25cから中立位置25aに戻す方向へ揺動する。これにより、目標変速比が達成される時に変速制御弁25が中立位置25aに戻され、目標変速比を保つことができる。
【0035】
プレッシャレギュレータ弁23のソレノイド電流、減圧弁24のソレノイド電流およびステップモータ27への変速指令(ステップ数Step)は、図1に示す前進クラッチ7bおよび後進ブレーキ7cへ締結油圧を供給するか否かの制御と共に変速機コントローラ12により決定し、変速機コントローラ12を図2に示すように圧力制御部12aおよび変速制御部12bで構成する。圧力制御部12aは、プレッシャレギュレータ弁23のソレノイド電流および減圧弁24のソレノイド電流を決定し、変速制御部12bは以下のようにしてステップモータ27の駆動ステップ数Astepを決定する。
【0036】
つまり変速制御部12bは先ず、セカンダリプーリ回転数Nsecから求め得る車速およびアクセルペダル踏み込み量APOを用いて予定の変速マップを基に目標入力回転数を求め、これをセカンダリプーリ回転数Nsecで除算することにより、運転状態(車速およびアクセルペダル踏み込み量AP)に応じた目標変速比を求める。次いで、プライマリプーリ回転数Npriをセカンダリプーリ回転数Nsecで除算することにより実変速比(到達変速比)を演算し、上記目標変速比に対する実変速比の偏差に応じて外乱補償しながら実変速比を目標変速速度で目標変速比に漸近させるための変速比指令を求める。そして、この変速比指令を実現するためのステップモータ27のステップ数(ステップモータ27の動作位置)Astepを求め、これをステップモータ27に指令することで前記の変速動作により目標変速比を達成することができる。
【0037】
変速機コントローラ12は、CPU、ROM、RAMなどによって構成されており、ROMに格納されたプログラムをCPUによって読み出すことで、油圧制御などが実行される。
【0038】
次に流量制御機構30の動作について詳しく説明する。
【0039】
機械式オイルポンプ21の駆動軸の回転速度が小さく、機械式オイルポンプ21の吐出量が少ない場合には、絞り部35による圧力損失が小さいので、絞り部35の上流側と絞り部35の下流側との差圧は小さく、第1室36と第2室37との差圧も小さい。そのため、スプール41はバネ42による付勢力によって第1室36の体積が小さくなるように移動しており、ストッパ43が第1室36の端面に当接している。この場合には、スプール41は連通路34の開口部40を閉塞しており、第1室36と連通路34とは連通していない。
【0040】
機械式オイルポンプ21の駆動軸の回転速度が大きくなると、機械式オイルポンプ21の吐出量が多くなり、それに伴い絞り部35の上流側と絞り部35の下流側との差圧が大きくなり、第1室36と第2室37との差圧も大きくなる。そして、スプール41はバネ42による付勢力に抗して第1室36の体積が大きくなるように移動する。第1室36と第2室37との差圧が所定値よりも大きくなると、連通路34の開口部40が開口し、第1室36と連通路34とが連通する。所定値は、予め設定される値であり、連通路34の開口部40が開口するかどうかを切り換える値である。第1室36と第2室37との差圧が所定値以下である場合には、連通路34の開口部40はスプール41によって閉塞されている。第1室36と連通路34とが連通することで、機械式オイルポンプ21から吐出され、油圧が高くなった作動油の一部が機械式オイルポンプ21の吸入路31に戻される。そのため、小型の機械式オイルポンプ21を用いて、吐出量を多くすることができる。また、作動油に混入した空気の圧縮率が低い作動油の吸入量が少なくなるので、機械式オイルポンプ21の吐出量を多くすることができる。
【0041】
しかし、このような機械式オイルポンプ21では、オイルパンから吸入する作動油に混入した空気が多くなると、機械式オイルポンプ21から吐出される作動油の流量が小さくなり、吐出量の脈動が大きくなる。また、第1室36における油圧の脈動の位相と、第2室37における油圧の脈動の位相とは、絞り部35、第1連通孔および第2連通孔などの影響により、ずれが生じている。そのため、吐出量の脈動が大きくなると、第1室36の油圧と第2室37の油圧の差圧における脈動はさらに大きくなる。
【0042】
その結果、本来ならば差圧が所定値よりも大きくなり、スプール41が第1室36と連通路34とを連通するように移動しなければならない場合でも、差圧の変化量が大きいので、差圧が所定値よりも小さくなることがあり、スプール41が開口部40を閉塞することがある。
【0043】
スプール41が開口部40を閉塞すると、機械式オイルポンプ21から吐出されて油圧が高い作動油を、連通路34を介して機械式オイルポンプ21に戻すことができない。また、混入した空気が圧縮されている作動油が機械式オイルポンプ21に導入されないので、機械式オイルポンプ21中の作動油の油圧は低くなり、作動油に混入している空気は膨張する。これらに起因して機械式オイルポンプ21の吐出量はさらに低下する。これによって、第1室36と第2室37との差圧が所定値よりさらに小さくなり、スプール41は開口部40を完全に閉塞する。このようにして、作動油に空気が混入すると、機械式オイルポンプ21の吐出量が低下し、必要な油圧を供給できない。
【0044】
また、機械式オイルポンプ21の吐出量が多く、連通路34の開口部40が開いている場合に、作動油に混入した空気量が多くなると、機械式オイルポンプ21から吐出される作動油の流量が小さくなり、吐出量の脈動が大きくなる。そのため、第1室36と第2室37との差圧の脈動が大きくなり、第1室36と第2室37との差圧が小さい時にスプール41がバネ42の付勢力によって移動し、連通路34の開口部40を閉塞する。この場合にも、機械式オイルポンプ21の吐出量が低下し、必要な油圧を供給できない。
【0045】
このような現象は、例えばエンジン回転速度やデファレンシャルギヤの回転速度(以下においてデフ回転速度と言う。)が大きくなって空気混入量が増加した場合、油温が高くなって消泡剤の消泡作用が小さくなった場合に生じる。エンジン回転速度が大きくなると、例えば作動油に浸漬されるプライマリプーリ2などの回転部材の回転速度も大きくなり、作動油が撹拌されて、空気を多く巻き込むからである。また、油温が高くなり、消泡剤の消泡作用が小さくなると、作動油に混入した空気の残量が多くなるからである。さらに、例えばエンジントルクが小さくなり、ライン圧が低い場合にも生じる。ライン圧が低くなると、吐出路32の油圧も低くなり、吐出路32の作動油に混入している空気の圧縮量が少なくなり、単位体積当たりに占める空気の割合が高くなるからである。
【0046】
本実施形態では、上記現象が起こりうる場合に、ライン圧を高くすることで、作動油に混入した空気を圧縮し、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動を抑制し、機械式オイルポンプ21の吐出量の低下を抑制する。
【0047】
次に本実施形態における変速機コントローラ12によって実行する油圧制御について図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0048】
ステップS100では、油温センサ18によって油温を検出し、変速機入力トルクに関した信号からエンジン回転速度を読み出す。また、アクセル開度センサ16からの信号に基づいてエンジントルクを算出する。さらに、車速センサ50の信号に基づいてデフ回転速度を算出する。
【0049】
ステップS101では、要求ライン圧を算出する。要求ライン圧はプライマリプーリ2、セカンダリプーリ3に油圧を供給するために必要なライン圧、または例えばトルクコンバータ6のトルク容量を満たすために必要なライン圧である。エンジントルクが高くなるほど、例えばVベルト4の滑りを抑制するために必要なライン圧は高くなる。そのため、エンジントルクが高いほど、要求ライン圧は高くなる。
【0050】
ステップS102では、検出した油温が所定油温以上であるかどうか判定する。検出した油温が所定油温以上である場合には、ステップS103へ進む。また、検出した油温が所定油温よりも低い場合には、ステップS107へ進む。所定油温は、油温が上昇するにつれて作動油へ混入する空気量が増加した場合に、スプール41が連通路34の開口部40を完全に閉口し、開口部40を開口することができなくなる油圧である。つまり、油温が所定油温よりも低い場合には、機械式オイルポンプ21から吐出される油圧の脈動は大きくならず、油圧の脈動によってスプール41が連通路34の開口部40を閉じることはない。
【0051】
ステップS103では、算出したエンジントルクが所定エンジントルク以下であるかどうか判定する。算出したエンジントルクが所定エンジントルク以下である場合にはステップS104へ進む。また、算出したエンジントルクが所定エンジントルクよりも大きい場合には、ステップS107へ進む。エンジントルクが大きくなると、Vベルト4の滑りを抑制するためにライン圧は高くなる。そのため、エンジントルクが大きい場合には、吐出路32の油圧が高くなり、作動油へ混入している空気が十分に圧縮されるので、吐出量の脈動を抑制することができる。言い換えると、エンジントルクが小さい場合には、吐出路32の油圧が低くなり、作動油へ混入している空気が膨張し、吐出量の脈動が大きくなる。所定エンジントルクは、エンジントルクが小さくなるにつれて作動油に混入している空気が膨張した場合に、脈動を抑制することができなくなるトルクである。つまり、エンジントルクが所定エンジントルクよりも大きい場合には、機械式オイルポンプ21から吐出される油圧の脈動が大きくならず、油圧の脈動によってスプール41が連通路34の開口部40を閉じることはない。
【0052】
なお、ここではエンジントルクに基づいて判定を行ったが、Vベルト式無段変速機1への入力トルクまたはプライマリプーリの入力トルクなどに基づいて判定を行っても良い。
【0053】
油温が所定油温以上となっても、エンジントルクが所定エンジントルクよりも大きい場合には、エンジントルクに応じてライン圧が設定され、機械式オイルポンプ21から吐出される油圧の脈動が抑制されるので、脈動によってスプール41が連通路34の開口部40を閉じることがない。また、エンジントルクが所定エンジントルク以下であっても、油温が所定油温よりも低い場合には、作動油への空気混入量が少ないので、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動が小さく、脈動によってスプール41が連通路34の開口部40を閉じることがない。そのため、油温が所定油温以上であり、エンジントルクが所定エンジントルク以下の場合にのみ、ステップS104へ進む。
【0054】
ステップS104では、エンジン回転速度が第1所定回転速度よりも大きいかどうか判定する。そして、エンジン回転速度が第1所定回転速度よりも大きい場合にはステップS105へ進む。また、エンジン回転速度が第1所定回転速度以下の場合にはステップS107へ進む。第1所定回転速度は、吐出量の脈動によってスプール41が開口部40を閉じた場合でも、開口部40を閉じることによる吐出量の低下量が許容値となる速度である。つまり、エンジン回転速度が第1所定回転速度以下の場合には、スプール41が開口部40を閉じても吐出量の低下量は許容値以下となる。吐出量の低下量が許容値以下の場合には、Vベルト式無段変速機1、トルクコンバータ6などに供給する油圧が不足することはない。第1所定回転速度は、機械式オイルポンプ21の吐出性能に応じて設定される値である。
【0055】
図5に示すように、エンジン回転速度が大きくなり、或るエンジン回転速度Aでスプール41が開口部40を開いた後に、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動によってスプール41が開口部40を閉じた場合には、吐出量が低下する。図5において開口部40開いた後に、吐出量の脈動によってスプール41が開口部40を閉じた場合の機械式オイルポンプ21の吐出量を破線で示す。
【0056】
エンジン回転速度が第1所定回転速度よりも大きい場合に、吐出量の脈動によってスプール41が開口部40を閉じると、機械式オイルポンプ21の吐出量の低下量が許容値よりも大きくなる。そのため、Vベルト無段変速機1やトルクコンバータ6などで必要な油圧を供給できなくなる。
【0057】
一方、エンジン回転速度が第1所定回転速度以下の場合に、吐出量の脈動によってスプール41が開口部40を閉じても機械式オイルポンプ21の吐出量の低下量が許容値以下となるので、Vベルト無段変速機1やトルクコンバータ6などに必要な油圧を供給することができる。
【0058】
ステップS104では、エンジン回転速度が第1所定回転速度以下の場合には、ステップS107へ進み、エンジン回転速度が第1所定回転速度よりも大きい場合には、ステップS105へ進む。
【0059】
ステップS105では、検出した油温と、読み出したエンジン回転速度と、算出したデフ回転速度に基づいて、図6、図7に示すマップから必要ライン圧を算出する。図6、図7は、エンジン回転速度と、油温と、デフ回転速度と、必要ライン圧との関係を示すマップである。図6は油温が比較的高い場合のマップであり、図7は油温が図6の油温よりも低い場合のマップである。図6、7においては一例として3つのエンジン回転速度に対応する線を記載しており、各図の左側、中央、右側のエンジン回転速度はそれぞれ等しい回転速度である。必要ライン圧は、エンジン回転速度が大きくなるほど大きくなり、デフ回転速度が大きくなるほど大きくなり、油温が高くなるほど大きくなる。図6、7に示すマップは一例であり、このようなマップを油温に応じて複数枚備えている。
【0060】
図6、図7において必要ライン圧は下限値が設定されているが、下限値はVベルト4の滑りを発生させず、前後進切り替え機構7の前進クラッチ7aなどで必要な油圧を発生させることができるライン圧である。
【0061】
ステップS106では、ステップS101で算出した要求ライン圧と、ステップS105で算出した必要ライン圧とを比較する。そして、大きい方の値を最終ライン圧として設定する。ライン圧は、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に供給する油圧の他に、例えばトルクコンバータ6で必要なトルク容量を作り出すために用いられている。そのため、Vベルト無段変速機1やトルクコンバータ6などで必要な油圧を作り出すために必要な大きい方のライン圧が最終ライン圧は設定される。
【0062】
油温が所定油温よりも低い場合、エンジントルクが所定エンジントルクよりも大きい場合、またはエンジン回転速度が第1所定回転速度以下の場合には、脈動によってスプール41が連通路34の開口部40を閉じることがない、またはスプール41が開口部40を閉じても機械式オイルポンプ21の吐出量の低下量が小さいので、ステップS107において、ステップS101で算出したライン圧を最終ライン圧として設定する。
【0063】
ステップS108では、設定された最終ライン圧に基づいて、ライン圧を制御する。最終ライン圧として必要ライン圧が設定されると、例えばプレッシャレギュレータ弁23などによって例えばトルクコンバータ6などへ供給する油圧を絞ることで、ライン圧を高くする。これによって、機械式オイルポンプ21の吐出路32の油圧が高くなり、吐出量の脈動を抑制することができる。
【0064】
なお、機械式オイルポンプ21は、上記した流量制御機構30などを含んだ1つのユニットとして構成されても良い。
【0065】
本発明の第1実施形態の効果について説明する。
【0066】
エンジントルクが所定エンジントルク以下であり、かつ油温が所定油温以上である場合に、デフ回転速度が大きくなるほど必要ライン圧を大きくする。これによって、デフ回転速度が大きくなり、作動油に含まれる空気量が多くなる場合に、吐出路32の作動油の油圧を大きくし、作動油に含まれる空気を圧縮し、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動を抑制する。その結果、第1室36と第2室37との差圧が所定値よりも大きくなると、スプール41が正常に動作して、連通路34の開口部40が開口する。そして、作動油の一部が機械式オイルポンプ21に戻されるので、機械式オイルポンプ21の吐出量の低下を抑制し、必要な油圧を例えばVベルト無段変速機1に供給することができる(請求項1、6に対応する効果)。
【0067】
また、スプール41を正常に動作させて、機械式オイルポンプ21によって吐出される作動油の一部を機械式オイルポンプ21に戻すことで、機械式オイルポンプ21内の作動油の油圧を大きくすることができ、機械式オイルポンプ21内の作動油に混入した空気を圧縮することができる。そのため、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動を抑制することができる(請求項1に対応する効果)。
【0068】
作動油に含まれる空気が多くなった場合でも、スプール41を正常に動作させて、流量制御機構30により油圧の高い作動油を機械式オイルポンプ21に戻すことができ、小型の機械式オイルポンプ21を用いて所望の吐出量を供給することができる。小型の機械式オイルポンプ21を用いることで、機械式オイルポンプ21の効率を良くすることができる。また、作動油に混入した空気の圧縮率が低い作動油の吸入量が少なくなるので、機械式オイルポンプ21の吐出量を多くすることができる(請求項1に対応する効果)。
【0069】
エンジン回転速度が大きくなるほど、必要ライン圧を大きくする。これによって、エンジン回転速度が大きくなり、作動油に含まれる空気量が多くなる場合に、吐出路32の作動油の油圧が大きくなる。その結果、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動を抑制し、機械式オイルポンプ21の吐出量の低下を抑制し、必要な油圧を例えばVベルト無段変速機1に供給することができる(請求項2に対応する効果)。
【0070】
エンジン回転速度が第1所定回転速度よりも大きく、吐出量の脈動によってスプール41が開口部40を閉じることで機械式オイルポンプの吐出量の低下量が許容値よりも大きくなる場合にのみ、必要ライン圧を算出して、ライン圧を上昇させるので、不必要にライン圧が高くなることを防止し、燃費の悪化が回避できるため、最終的には機械式オイルポンプ21の小型化により車両の燃費を良くすることができる(請求項3に対応する効果)。
【0071】
油温が高くなるほど、必要ライン圧の上昇量を大きくすることで、油温の上昇に伴って作動油に混入する空気量が多くなる場合にも、機械式オイルポンプ21の吐出量の脈動を抑制することができる(請求項5に対応する効果)。
【0072】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
【0073】
第2実施形態は、油圧制御が第1実施形態と異なっている。ここでは第1実施形態と異なる箇所を説明する。
【0074】
本実施形態における油圧制御について図8を用いて説明する。
【0075】
ステップS200からステップS203までは第1実施形態のステップS100からステップS103と同じ制御なので、ここでの説明は省略する。
【0076】
ステップS204では、エンジン回転速度が第2所定回転速度以上であるかどうか判定する。そして、エンジン回転速度が第2所定回転速度以上の場合にはステップS205へ進む。また、エンジン回転速度が第2所定回転速度よりも小さい場合にはステップS207へ進む。第2所定回転速度は、第1室36の油圧と第2室37の油圧との差圧が所定値以上となるエンジン回転速度であり、第1実施形態における第1所定回転速度よりも小さい。第2所定回転速度は、第1実施形態におけるエンジン回転速度Aが対応する。機械式オイルポンプ21は、エンジンの回転が第1スプロケット、第2スプロケットなどを介して伝達される。そのため、エンジン回転速度が大きくなると、機械式オイルポンプ21の駆動軸の回転速度も大きくなり、機械式オイルポンプ21の吐出量が多くなる。そして、エンジン回転速度が第2所定回転速度以上となると、第1室36の油圧と第2室37の油圧との差圧が所定値以上となり、連通路34の開口部40を開口させる。一方、エンジン回転速度が第2所定回転速度よりも小さい場合には、連通路34の開口部40はスプール41によって閉塞されている。
【0077】
なお、ここでは、エンジン回転速度に基づいて判定を行ったが、これに限られることはなく、トルクコンバータ6の出力軸の回転速度などに基づいて判定を行ってもよい。
【0078】
ステップS205からステップS208までは第1実施形態のステップS105からステップS108と同じ制御なので、ここでの説明は省略する。
【0079】
本発明の第2実施形態の効果について説明する。
【0080】
エンジン回転速度が第2所定回転速度よりも小さい場合には、第1室36の油圧と第2室37の油圧の差圧は、所定値よりも大きくならず、連通路34の開口部40はスプール41によって閉塞されている。このような場合には、必要ライン圧を算出しない。これにより、不必要にライン圧が高くなることを防止し、燃費を良くすることができる(請求項4に対応する効果)。
【0081】
上記実施形態においては、車速センサによってデフ回転速度を検出し、デフ回転速度に基づいてライン圧を算出したが、エンジンが縦置されている、例えばFR式の自動変速機の場合にはパーキングギアの回転速度に基づいて必要ライン圧を算出してもよい。パーキングギアは、自動変速機内で作動油に浸っている、または例えば車両の加速時、旋回時など車両が傾斜した場合に作動油に浸っている。そのため、パーキングギアの回転速度が大きいほど作動油に含まれる空気量が多くなる。そこで、パーキングギアの回転速度に基づいて必要ライン圧を算出することで、機械式オイルポンプの吐出量の低下を抑制することができる。
【0082】
デフ回転速度を車速センサ50から出力される信号に基づいて算出したが、セカンダリプーリ回転センサ14などから出力される信号に基づいて算出してもよい。
【0083】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
5 エンジン
11 変速制御油圧回路
12 変速機コントローラ(エンジントルク算出手段、ライン圧設定手段、ライン圧補正手段)
18 油温センサ(油温検出手段)
19 エンジンコントローラ(第2回転速度検出手段)
21 機械式オイルポンプ
30 流量制御機構
31 吸入路
32 吐出路
34 連通路
35 絞り部
41 スプール
50 車速センサ(第1回転速度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転が伝達されて駆動する機械式オイルポンプと、
前記機械式オイルポンプに吸入される作動油が流れる吸入路と、
前記機械式オイルポンプから吐出される前記作動油が流れ、絞り部を有する吐出路と、
前記機械式オイルポンプをバイパスして前記吸入路と前記作動油の流れ方向において前記絞り部よりも上流側の前記吐出路とを連通する連通路と、
前記作動油の流れ方向において前記絞り部よりも上流側の油圧と前記作動油の流れ方向において前記絞り部よりも下流側の油圧との差圧が所定値よりも大きい場合に前記連通路を連通状態にし、前記差圧が前記所定値以下の場合に前記連通路を非連通状態にするスプールを有する流量制御機構と、を備える自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、
前記作動油の油温を検出する油温検出手段と、
前記エンジントルクを算出するエンジントルク算出手段と、
前記エンジントルクが高いほどライン圧を高く設定するライン圧設定手段と、
前記自動変速機の出力軸側の回転速度を検出する第1回転速度検出手段と、
前記油温が、前記作動油に混入した空気に起因して前記連通路が連通状態から非連通状態に切り替わる所定油温以上であり、かつ前記エンジントルクが、前記作動油に混入した空気に起因して前記連通路が連通状態から非連通状態に切り替わる所定エンジントルク以下である場合に、前記出力軸側の回転速度が大きい程前記ライン圧を大きくするライン圧補正手段とを備えることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記自動変速機の入力軸側の回転速度を検出する第2回転速度検出手段を備え、
前記ライン圧補正手段は、前記入力軸側の回転速度が大きいほど前記ライン圧を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記ライン圧補正手段は、前記自動変速機の入力軸側の回転速度が第1所定回転速度よりも大きい場合に前記ライン圧を大きくし、
前記第1所定回転速度は、前記作動油に混入した空気に起因して前記連通路が連通状態から非連通状態に切り替わることによる前記機械式オイルポンプの吐出量の低下量が油圧不足を生じさせない許容値となる回転速度であることを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記ライン圧補正手段は、前記前記自動変速機の入力軸側の回転速度が、前記差圧が前記所定値よりも大きくなる第2所定回転速度以上である場合に、前記ライン圧を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記ライン圧補正手段は、前記油温が高い程、前記ライン圧を大きくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
前記第1回転速度検出手段は、デファレンシャルギヤの回転速度を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項7】
前記第1回転速度検出手段は、パーキングギアの回転速度を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2582(P2013−2582A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135920(P2011−135920)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】