説明

自動搬送方法、搬送ロボット、及び自動搬送システム

【課題】自律移動可能な搬送ロボットを用いた自動搬送において、セキュリティレベルの動的で柔軟な運用を実現する、
【解決手段】搬送物を収容して搬送する搬送ロボット1は、搬送ルート記憶部23、移動機構部24、及びセキュリティレベル設定部29を有する。搬送ルート記憶部23は、少なくとも前記搬送物の搬送先情報に基づいて設定された搬送ルートを記憶する。移動機構部24は、搬送ルートに基づいて搬送ロボットを搬送先に向けて移動させる。セキュリティレベル設定部29は、搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベル、搬送ロボットの現在位置情報、及び搬送物の種類情報に基づいて移動中の前記搬送ロボット1のセキュリティレベルを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送方法、搬送ロボット、及び自動搬送システムに関する。詳細には、本発明は、自律移動可能な搬送ロボットを用いて、搬送物を自動搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図27に示す自律移動可能な搬送ロボット101を用いて、搬送物を目的地まで自動搬送するシステムが開示されている。
【0003】
この搬送ロボット101は、搬送物が収容される重要物収納庫102、位置情報を取得するGPS受信部103と位置受信手段104、予め搬送先の位置情報と搬送順序(巡回順序)を記憶する記憶部105、及び収納庫制御手段106を備える。収納庫制御手段106は、2つの条件が充足された場合に、重要物収納庫102に収納された重要物を取り出し可能に制御する。具体的には、収納庫制御手段106は、取得された位置情報が予め定められた搬送地の位置情報に一致し、かつ搬送ロボット101の実際の搬送順序が予め定められた搬送順序と一致した場合に、重要物収納庫102から収納物を取り出し可能とする。また、搬送ロボット101は、搬送ルートが変更になった場合に、異常事態であることを監視センターに知らせる。これらの構成により、搬送中のセキュリティ確保が図られている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたものを含め、従来の自律移動可能な搬送ロボットを用いた自動搬送においては、そのセキュリティに関する運用は、画一的で柔軟性に欠ける。具体的には、条件(搬送物の種類、目的地に到るまでの搬送ルートの周囲の環境の変化等)に応じた、セキュリティレベルの柔軟かつ動的な運用が実現されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−142070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、自律移動可能な搬送ロボットを用いた自動搬送において、セキュリティレベルの動的かつ柔軟な運用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、搬送ロボットにより搬送される搬送物の搬送先情報に基づいて前記搬送ロボットの搬送ルートを設定し、前記搬送ルートの情報に基づいて前記搬送ロボットを搬送先に向けて移動させ、前記搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベルと、前記搬送ロボットの現在位置情報と、前記搬送物の種類情報とに基づいて移動中の前記搬送ロボットのセキュリティレベルを切り替える搬送ロボットを用いた自動搬送方法を提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、搬送物を搬送する搬送ロボットであって、前記搬送物の搬送先情報に基づいて設定された搬送ルートを記憶する搬送ルート記憶部と、前記搬送ルートに基づいて搬送先に向けて移動するための移動機構部と、前記搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベルと、現在位置情報と、前記搬送物の種類情報とに基づいて移動中のセキュリティレベルを切り替えるセキュリティレベル設定部とを備える搬送ロボットを提供する。
【0009】
本発明の第3の態様は、搬送先情報に基づいて設定された搬送ルートを記憶する搬送ルート記憶部と、前記搬送ルートの情報に基づいて搬送先に向けて移動するための移動機構部と、前記搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベルと、現在位置情報と、前記搬送物の種類情報とに基づいて移動中のセキュリティレベルを切り替えるセキュリティレベル設定部とを備える搬送ロボットと、前記搬送ロボットの搬送ルートを監視し、前記セキュリティレベルに応じて前記搬送ルートの監視レベルを切り替える環境監視装置とを備える、自動搬送システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周囲の環境等(具体的には、搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベル、搬送ロボットの現在位置情報、及び搬送物の種類情報等)に基づいて移動中の搬送ロボットのセキュリティレベルを切り替える。それにより、セキュリティレベルの動的かつ柔軟な運用を実現することができる。そして、セキュリティレベルを動的に最適な状態に保つことで、最小限のエネルギーでセキュリティを確保することが可能となる。そのため、状況によっては、効率的な省エネルギー搬送を行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(第1実施形態)
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る自律移動可能な搬送ロボット1を示す。本実施形態では、図2に示すマンション2において搬送ロボット1を使用して搬送物を搬送する場合を説明する。
【0014】
図2を参照すると、マンション2の1階にはエントランスホール3と監視センターとしての管理人室4がある。まず、エントランスホール3から、住人や来訪者、郵便配達や宅配便業者等が出入りする場合を想定する。管理人室4には管理人が常駐し、マンション2の住人へのサービス(例えば、来訪者の取次ぎ、宅配便の取次ぎ等)を行う。また、本実施形態のような場合では、管理人が、搬送ロボット1の維持管理や異常発生時の対応を行うことが望ましい。マンション2の上層階へは、エレベータ5を利用し移動できる構造になっている。マンション2の各階には、住人が住む住居スペースがあり、廊下6、各部屋の玄関7等がある。また、マンション2の外部には、ごみ置き場8と駐車場9が存在する。
【0015】
マンション2内の各地点には、通過ポイントとしての符号が割り当てられている。具体的には、符号P00は管理人室4、符号P01は駐車場9、符号P02はごみ置き場8、符号P10は1階エレベータ口5a、符号P20は2階エレベータ口5b、符号P21〜24は2階の各住居の玄関、符号P30は3階エレベータ口5c、符号P31〜34は3階の各住居の玄関のそれぞれの地点を示す。
【0016】
図1を参照すると、搬送ロボット1は、搬送物を収納(もしくは載置)する収納部11を備える。収納部11に設けられた搬送物の取出口(図示せず)は、施錠部12によって施錠可能である。
【0017】
搬送ロボット1は、外部環境を検知するための機器として、カメラ13、RFタグリーダ14、赤外線センサ、超音波センサ、レーザセンサ等の外部環境センサ15を備える。また、搬送ロボット1は、ユーザが指示や情報を入力するためのタッチパネルセンサ、キーボード等のような入力インターフェース部16を備える。入力インターフェース部16に代えてハンドヘルドコンピュータのような情報端末を用いて有線や無線でユーザの指示を入力してもよい。さらに、搬送ロボット1は指紋センサ17を備えている。さらにまた、搬送ロボット1は、後に詳述する警告のためのスピーカ18と警告灯19を備える。
【0018】
搬送ロボット1は、外部環境情報処理部21、搬送ルート設定部22、搬送ルート記憶部23、移動機構部24、位置検出部25、開錠条件設定部26、開錠条件記憶部27、開錠判定部28、セキュリティレベル設定部29、異常発信部31、警告発生部32、及び通信部33を備える。
【0019】
外部環境情報処理部21は、カメラ13の撮像により得られる画像情報、RFタグリーダ14によって読み取られるRFタグ(非接触式IC)の情報が入力される。これらの情報は、位置検出部25に入力される。また、後述するように、外部環境情報処理部21は、これらの情報を使用した異常検出や人物認証等を実行する。
【0020】
搬送物の搬送先、搬送物の種類、及び時間帯等が、入力インターフェース部16から搬送ルート設定部22に入力される。搬送ルート設定部22は、これら入力された情報に基づいて搬送ロボット1の搬送ルートを設定する。搬送ルートは、搬送ロボット1が前述の通過ポイントP00〜P34のうちいずれの通過ポイントをどのような順序で通過するかによって規定される。搬送ルート設定部22によって設定された搬送ルートは搬送ルート記憶部23に記憶される。
【0021】
搬送ルート記憶部23には、予めマンション2の構造が記憶されている。また、搬送ルート記憶部23には、搬送ルート設定部22により設定された搬送ルートの搬送出発地と搬送目的地までの間にあるエントランスホール3、エレベータ5、廊下6等の地点が通過ポイントとして保存される。
【0022】
移動機構部24は、搬送ルート記憶部23に記憶された搬送ルートに従って搬送ロボット1を移動させる。移動機構部24は、搬送ロボット1が搬送物を搬送する際の環境により、二輪や四輪走行、あるいは二足歩行等が用いられる。本実施形態では、二輪の移動機構部(車輪)を想定して説明する。これは、マンションのように通路が狭く、整地された地面が多い環境では、二輪の移動機構部の汎用性が高いと思われるためである。
【0023】
位置検出部25は、外部環境情報処理部21や移動機構部24からの情報により搬送ロボット1の現在位置を検出する。前述のように搬送ロボット1の搬送ルートは通過ポイントP00〜P34によって規定されるが、これらの通過ポイントの場所の確認は、位置検出部25により行われる。言い換えれば、位置検出部25によって、各通過ポイントに到達したことが確認される。本実施形態のように移動機構部24が車輪を採用している場合、位置検出部25はオドメトリにより搬送ロボット1の現在位置を検出できる。具体的には、移動機構部24が車輪であれば、位置検出部25は移動機構部24から入力される車輪の回転情報から搬送ロボット1の現在位置を検出できる。また、より確実に各通過ポイントP00〜P34に到達したことを確認するため、位置検出部25は外部環境情報処理部21からの情報(例えば、カメラ13で撮像した画像情報や、RFタグからの情報)を加味して搬送ロボット1の現在位置を特定してもよい。この場合は、位置検出部25は、GPS等を用いた絶対位置情報ではなく、搬送ロボット1の走行開始位置からの移動状況に応じた相対位置情報を入手することになる。カメラ13で撮像した画像情報や、RFタグからの情報のみで通過ポイントへの到達を検出することも可能である。
【0024】
位置検出部25は、検出した搬送ロボット1の現在位置が、搬送ルートの各通過ポイントと一致していれば、搬送ロボット1が正常に通過ポイントに達したとみなす。この場合、通過ポイントを通過した情報である通過情報をセキュリティレベル設定部29と通信部33に出力する。通過情報は、単に通過ポイントに到達した情報のみでなく、その通過ポイントを通過した時の状況の情報を含んでいる。この情報としては、例えば、搬送ロボット1が通過ポイントP10(1階エレベータ口5a)においてエレベータ5に「乗り込んだ」のか「降りた」のかという情報、搬送ロボット1が通過ポイントP11(エントランスホール3)においてマンション2から「出た」のか「入った」のかという情報、搬送ロボット1が通過ポイントP33(3階のエレベータ口5cから数えて3軒目の住人宅の玄関7a)において玄関7aに「到達した」のか「離れる」のかという情報等がある。
【0025】
現在位置の検出とそれに基づく通過ポイントP00〜P34への到達検出に加え、位置検出部25は、搬送ロボット1の現在位置に関する異常の発生を検出する。具体的には、位置検出部25は、検出した現在位置が搬送ルート記憶部23に記憶されている搬送ルートから逸脱している場合、位置異常であると判断する。搬送ルートからの逸脱は、例えばカメラ13からの画像やRFタグリーダ14で読み取ったRFタグの情報が搬送ルート上にあるはずのない位置を示している場合や、オドメトリにより検出した現在位置が一定時間にわたって搬送ルートとは異なる位置にあることを示す場合がある。また、位置検出部25は、一定時間が経過してもオドメトリにより検出した現在位置が通過ポイントに到達しない場合、位置異常であると判断する。さらに、位置検出部25は、オドメトリにより検出した現在位置がカメラ13からの画像やRFタグリーダ14で読み取ったRFタグの情報と一致しない場合にも、位置異常であると判断する。さらにまた、位置検出部25は、搬送ロボット1が自己位置を見失った場合にも、位置異常であると判断する。位置検出部25が位置異常を検出すると、異常発信部31が管理人室(監視センター)4へ異常発生を発信する。異常発信部31からの発信は、搬送ロボット1の移動範囲等を考慮すると無線通信を利用することが好ましい。また、位置検出部25は、位置異常を検出すると開錠判定部28に通知する。
【0026】
外部環境情報処理部21は、搬送ロボット1の走行中、カメラ13による周囲の撮像を継続し、搬送ルート上に予測しない物体の存在を監視する。また、外部環境情報処理部21はカメラ13による周囲の撮像を継続し、搬送ルートで人物を検出すると、カメラ13によって撮像したその人物の顔画像を使用した認証を行う。例えば、予め登録されている人物の顔と照合する。照合の結果、登録されていない場合は、要注意人物ないし不審者と判断する。さらに、外部環境情報処理部21は、搬送ロボット1の走行中、外部環境センサ15を使用して周囲を監視する。外部環境情報処理部21がカメラ13や外部環境センサ15により異常を検出した場合や、顔画像認証により不審人物の存在を検出した場合、警告発生部32がスピーカ18による音や警告灯19により光による警告発生や、前述の位置異常の場合と同様の異常発信部31から管理人室4への異常発生の通知が実行される。外部環境情報処理部21による周囲の監視実行の有無、監視の態様、異常検出時の処理等は、後述するセキュリティレベルにより異なる。
【0027】
入力インターフェース部16からは、前述の搬送ルートの設定に必要な情報に加え、開錠条件の設定に必要な情報が入力される。この情報には例えば施錠部12を開錠する際に入力インターフェース部16に入力する必要のある個々の住人に対応する暗証番号等がある。開錠条件設定部26は、入力された情報に基づいて開錠条件を設定する。開錠条件設定部26によって設定された開錠条件は開錠条件記憶部27に記憶される。開錠条件記憶部27は、前述の暗証番号の他、指紋や顔画像のような住人の生体認証に必要な情報、搬送ルート設定部22によって設定された正規の搬送ルート、搬送ルートを構成する通過ポイント間の通過に要する基準時間等を開錠条件として記憶する。
【0028】
開錠判定部28は、開錠条件記憶部27に記憶された開錠条件を使用し、入力インターフェース部16から入力される暗証番号等の情報、指紋センサ17から入力される指紋検出情報、外部環境情報処理部21から入力される顔画像、位置検出部25からの入力等の情報に基づいて、施錠部12の開錠の可否を判定する。開錠判定部28が開錠可能を判定すれば、施錠部12が開錠され収納部11に収容された搬送物を取出口から取り出すことができる。開錠判定部28における開錠判定の内容や、開錠判定成立の難易度は、後述するセキュリティレベルによって異なる。
【0029】
搬送ロボット1は、通信部33によりエレベータ5や玄関7に設置されたインターホンを無線又は有線で操作することができる。
【0030】
セキュリティレベル設定部29は、搬送ロボット1の移動中、セキュリティレベルを設定して出力する。本実施形態では、セキュリティレベル設定部29は、位置検出部25から入力される搬送ロボット1の現在位置に関する情報、入力インターフェース部16から入力された搬送物の種類に関する情報、入力インターフェース部16から入力される移動する搬送ロボット1に付き添って搬送ルートを移動する人物(随伴者)の有無、外部環境情報処理部21から入力されるカメラ13が撮像した周囲の画像情報、外部環境情報処理部21から入力される外部環境センサ15が検出した周囲の状態に関する情報、及び現在の時刻(現在が昼間であるか夜間であるか)等の情報に基づいて、セキュリティレベルを設定する。セキュリティレベルはいったん設定されると搬送先に到達するまで固定されているのではなく、セキュリティレベル設定部29は、搬送ロボット1の移動中に継続的に入力されるこれらの情報に基づいて、セキュリティレベルを切り替える。
【0031】
以下、本実施形態におけるセキュリティレベル設定部29によるセキュリティレベルの設定ないし切り替えについてさらに詳細に説明する。
【0032】
本実施形態におけるセキュリティレベル設定部29は、予め記憶された図3に示すようなデシジョンテーブルをセキュリティレベルの設定に使用する。このデシジョンテーブルでは、搬送ロボット1の現在位置が属するゾーンレベル、搬送物の有無と種類、随伴者の有無がセキュリティレベルの決定条件として考慮されている。セキュリティレベルには、SL0〜SL5の6段階がある。セキュリティレベルSL0は、セキュリティ措置をとらないセキュリティレベルである。セキュリティレベルSL1〜SL5については、セキュリティレベルSL1を低セキュリティレベル(安全地帯と認識)とし、セキュリティレベルSL5を高セキュリティレベル(危険地帯と認識)としている。
【0033】
ゾーンレベルは、搬送ロボット1の搬送ルートに含まれる領域毎に予め定義しておくものである。例えば、本実施形態のように搬送ロボット1がマンション2内を移動する場合、エントランスホール3や廊下6、駐車場9等の場所に、それぞれのゾーンレベルが設定されている。セキュリティレベル設定部29は、位置検出部25から入力された搬送ロボット1の現在位置(前述のようにオドメトリ、画像情報、RFタグからの情報等で決まる)から搬送ロボット1が現在位置している領域のゾーンレベルを特定する。そして、それぞれのゾーンレベルに応じてセキュリティレベルを設定する。
【0034】
本実施形態では、マンション2内の場所(領域)を4段階のゾーンレベルに分けている。以下、この段階分けについて説明する。
【0035】
マンション2の住人の部屋内は搬送ロボット1の搬送においては住人のみと接することから、安全な場所であるAAゾーン(安全地帯)と定義する。
【0036】
マンション2の屋内(廊下6、通路、エレベータ5内)は、不特定多数の人物と接することは基本的に無いが、搬送ロボット1が搬送している搬送物の持ち主ではない住人や、マンション2への来訪者等と接する可能性があるため、比較的安全な場所であるAゾーン(準安全地帯)と定義する。
【0037】
駐車場9やエントランスホール3等は、一応マンション2の敷地内ではあるが、不特定多数の人物の出入りが可能であるので、搬送ロボット1にとってはセキュリティの危険度がそれなりに高い場所であるBゾーン(要注意地帯)と定義する。
【0038】
マンション2の敷地外にある、ごみ置き場8や公道等は、搬送ロボット1にとっては、極めて危険な場所であるCゾーン(危険地帯)と定義する。
【0039】
本実施形態では、AAゾーン、Aゾーン、Bゾーン、及びCゾーンにゾーンレベルが移行するのに伴って、セキュリティレベルは高くなる。
【0040】
このゾーンの分類はあくまでも一例であり、マンション2の立地条件や、そこの住人のセキュリティへの意識の違い、周囲の明るさによっても変化するものである。それらの条件を入力することで変更可能とすることにより、周囲環境等に応じた臨機応変なゾーンレベルを設定することができる。
【0041】
搬送ロボット1に搬送物が収容されていない場合には、ゾーンレベル、随伴者の有無等の他の条件に関係なくセキュリティレベルSL0(セキュリティ措置なしに相当)に設定され、搬送物が収容されている場合にはその重要度(3段階)に応じてセキュリティレベルSL1〜SL5のいずれかに設定される。具体的には、郵便、宅配便、手荷物等を重要物に分類され、新聞、回覧板等は一般物に分類され、ごみ等は不要物に分類される。重要物、一般物、不要物の順で重要度が高い。
【0042】
搬送ロボット1の随伴者に随伴者が存在する場合は、随伴者が存在しない場合よりもセキュリティレベルSL1〜SL5は高く設定する。
【0043】
以上のように、図3のデシジョンテーブルでは、ゾーンレベルに関して4段階、収納物の有無と重要度に関する4段階、搬送ロボット1に対する随伴者の有無に関する2段階で、合計28個のセキュリティレベルの項目がある。このように、場所によるセキュリティレベルの変更に加えて、搬送物(例えば、郵便や宅配便、手荷物等の重要物や新聞、回覧板等の一般物、ゴミ等の不要物等)の重要度合や、搬送中に随伴者の有無等を判別して、これをセキュリティレベル設定の追加条件とし、これらの組み合わせによりセキュリティレベルを設定することで、更に臨機応変なセキュリティレベルの設定を実現している。
【0044】
本実施形態では、セキュリティレベル設定部29は、図3のデシジョンテーブルで考慮されている条件に加え、カメラ13が撮像して周囲の画像情報、外部環境センサ15が検出した周囲の状態に関する情報、及び現在の時刻を加味してセキュリティレベルを設定している。具体的には、カメラ13の画像情報や外部環境センサ15の検出情報が搬送ルート上の異常を検出した場合は、図3のデシジョンテーブルの項目中、最高レベルのSL5以外のセキュリティレベルを1段階上げる。例えば、セキュリティレベルSL2をセキュリティレベルSL3に変更する。搬送ルートの環境の変化に応じてセキュリティレベルを変更することで、臨機応変なセキュリティレベルの設定を実現できる。また、現在時刻が昼間であればセキュリティレベルは図3に示された通りであるが、現在時刻が夜間であれば最高レベルのSL5以外のセキュリティレベルを1段階上げる。人通りの多い昼間や人がほとんどいない深夜等、時刻によってもセキュリティレベルを変更することで、現在の時刻に対応した臨機応変なセキュリティレベルの設定を実現できる。
【0045】
本実施形態では、セキュリティレベル設定部29により設定されたセキュリティレベルは施錠部12、外部環境情報処理部21、位置検出部25、及び開錠判定部28に出力され、セキュリティレベルに応じた搬送ロボット1におけるセキュリティ確保のための対処の制御に使用される。具体的には、施錠部12ではセキュリティレベルに応じて施錠の有無が制御される。外部環境情報処理部21では、人物認証の有無と不審者発見時の警告の有無がセキュリティレベルに応じて制御される。開錠判定部28では、セキュリティレベルに応じて開錠の判定に使用する生体認証(指紋や顔認証)、暗証番号、鍵等の組合せを変化させて開錠判定成立の難易度を制御する(セキュリティレベルが高い程、開錠判定が成立しにくくする)。
【0046】
以下、個々のセキュリティレベルSL1〜SL5におけるセキュリティの対処方法を、より具体的に説明する。
【0047】
セキュリティレベルSL1では、施錠部12の施錠なし、画像等による人物認証なし、不審者に対する警告(例えば、音や光を発する等の行動)なしで、何か異常があった場合のみ、その異常を管理人室へ通報するという対処を行う。
【0048】
セキュリティレベルSL2では、施錠部12は施錠し、前述の人物認証、警告はなしで、異常発生時は、異常のみ通報するという対処を行う。
【0049】
セキュリティレベルSL3では、施錠部12は施錠し、画像等による人物認証を実施し、異常発生時は、異常のみ通報するが、警告は発しないという対処を行う。
【0050】
セキュリティレベルSL4では、施錠部12は施錠し、画像等による人物認証を実施し、不審者に対する警告、たとえば音や光を発する。また異常発生時は、異常のみ通報する。という対処を行う。
【0051】
セキュリティレベルSL5では、施錠部12は施錠し、画像等による人物認証を実施し、不審者に対する警告、たとえば音や光を発する。また異常発生時は、異常のみ通報するとともに、その場の状況(不審者の画像等)をカメラで撮像し、保存するという対処を行う。
【0052】
これらの対処方法は一例であり、必ずしもこれらの対処に限定されるものではなく、周囲の環境等の状況に応じて随時変更する場合も考えられる。
【0053】
ここで、セキュリティレベルを使用した他の運用について説明する。
【0054】
セキュリティレベルSL5のように非常に危険なレベルの場合は、搬送ロボット1の収納部11の収納形態をより強固にして搬送物を搬送することや、外部環境情報処理部21による周囲の監視の強化(カメラ13や外部環境センサ15のサンプリングレートの上昇や監視範囲の拡大)が考えられる。監視の強化以外にも、不審者等の積極的な除外等の対策を搬送ロボット1が実行することが考えられる。
【0055】
逆に、セキュリティレベルSL1のようにほぼ安全なレベルの場合は、管理を容易にするために、搬送ロボット1の収納部11の収納形態を簡易化することや、外部環境情報処理部21による周囲の監視の簡略化(カメラ13や外部環境センサ15のサンプリングレートの低下や監視範囲の縮小、監視に使用する外部環境センサ15の種類や数の限定)、施錠部12の施錠のごく簡単な施錠方法への変更、施錠部12の施錠の省略等が考えられる。
【0056】
なお、セキュリティレベル設定の条件の種類や内容については、必ずしも本実施形態のものに限定されない。
【0057】
以下、随伴者なしで管理人室4から住人Aの玄関7aまで宅配便を搬送する場合を例に本実施形態の搬送ロボット1の動作を説明する。図4の一点鎖線R1は、この場合の搬送ロボット1の搬送ルートを示す。この搬送ルートR1では、搬送ロボット1は、管理人室4を出た後、エントランスホール3を通過し、エレベータ5に搭乗して住人Aの玄関7aがある階層(3階)まで移動する。その後、エレベータ5から降りて、廊下6を通って住人Aの玄関7aまで搬送物を自動的に搬送する。
【0058】
図5のフローチャートを参照すると、まず、ステップS5−1において、管理人室4の管理人は、宅配業者から受け取った宅配便を搬送ロボット1の収納部11に収納する。
【0059】
続いて、ステップS5−2で、搬送物が収納された収納部11の施錠部12を施錠する。
【0060】
続いて、ステップS5−3で、管理人が入力インターフェース部16を使用して搬送先、搬送物の種類、開錠条件に関する等の情報を入力する。
【0061】
ステップS5−4で、入力された搬送先情報に基づいて搬送ルート設定部22が搬送ルートを設定し、搬送ルート記憶部23に記憶させる。図6は搬送ルート記憶部23に記憶された搬送ルートを模式的に示す。図4の搬送ルートR1の場合、通過ポイントP00(管理人室4)、通過ポイントP11(エントランスホール3)、通過ポイントP11(1階エレベータ口5a)、通過ポイントP30(住人階エレベータ口5c)、通過ポイントP31(玄関7)、通過ポイントP32(玄関7)、通過ポイントP33(目標の住人宅玄関7a)が、順に搬送ルート記憶部23に記憶されている。搬送ロボット1はこれらの通過ポイントのチェックを行いながら搬送物の搬送を行う。また、ステップS5−5で開錠条件設定部26が開錠条件を設定して開錠条件記憶部27に記憶させる。
【0062】
次に、ステップS5−6では、搬送ロボット1は搬送ルート記憶部23に記憶された搬送ルートR1に従って搬送先まで移動する。この際に、ゾーンレベル等に応じてセキュリティレベルの切り替えが実行される。
【0063】
ステップS5−6の搬送ロボット1が搬送先へ移動するまでの動作を、図7を参照して説明する。
【0064】
ステップS7−1で、管理人室4を出た搬送ロボット1が通過ポイントP11(エントランスホール3)に到達すると、ステップS7−2で図3に従ってセキュリティレベルがSL4(注意)に設定される。
【0065】
続いて、ステップS7−3で搬送ロボット1がエントランスホール3を経由して通過ポイントP10(1階エレベータ口5a)に到達すると、ステップS7−4で図3に従ってセキュリティレベルSL3(比較的安全)に設定される。搬送ロボット1は、移動機構部16から得られた車輪の回転情報から1階エレベータ口5aへの到達を検出する。このとき、カメラ13により1階エレベータ口5aの画像を撮像する。1階と書かれたエレベータ口を撮像することで、より確実に場所を特定することができる。撮像する画像は、その場所を特定できる風景であれば、この画像に限定されない。撮像以外の場所の特定方法として、RFタグリーダ14により1階エレベータ口5aに設置されたRFタグからの情報を受信し、当該場所であることを検知してもよい。搬送ロボット1は、1階エレベータ口に到達したことを検知した後、エレベータ口からエレベータ5に乗り込む。乗り込むと同時に、搬送ロボット1はエレベータ5に乗り込んだと認識する。この認識方法としては、例えば、エレベータ5の扉の開閉によって認識する方法が考えられる。その後、搬送ロボット1は、目的の階までエレベータ5により移動する。そして、目的の階に到着すると、搬送ロボット1はエレベータ5から降りる。
【0066】
搬送ロボット1は、通信部33を用いた無線通信によりエレベータ5を制御し、エレベータ5に乗り込み、操作し、目的の階まで移動する。また、搬送ロボット1はエレベータ5との通信により、目的の階に到着したことを検知する。他の方法により搬送ロボット1がエレベータ5の制御を実行してもよい。
【0067】
続いて、ステップS7−5で、エレベータ5から降りた搬送ロボット1は、移動機構部16からの車輪の回転情報により通過ポイントP30(目的の階のエレベータ口5cへの到達)を検出する。ここで、再度、1階エレベータ口5aへの到達時と同じ方法で、目的の階のエレベータ口5cへの到達を認識する。目的の階のエレベータ口に到着したことを認識した搬送ロボット1は、搬送ルートR1に従って、廊下6を移動し、通過ポイントP31,P32を経て通過ポイントP33(目的の住人Aの玄関7a)に到着する(ステップS7−6〜S7−8)。搬送ロボット1は移動機構部24からの車輪の回転情報から目的の住人Aの玄関7aへの到達を検出する。目的の住人Aの玄関7aへの到達方法としては、例えばカメラ13により目的の住人Aの玄関7aの画像を撮像する方法や、RFタグリーダ14により目的の住人Aの玄関7aに設置されたRFタグからの情報を受信し、当該場所であることを検知する方法がある。
【0068】
目的の住人Aの玄関7aに到着したことを検知した後、搬送ロボット1は、そこの住人Aを呼び出す。住人Aを呼び出す手段については、通信部33を使用した無線信号により住人Aの玄関7aのインターホンに通知する等の手段があるが、それに限定されるものではない。呼び出された住人Aが玄関ドアを開けると、搬送ロボット1は玄関7a内へ入る。その後、ステップS7−9で、図3に従ってセキュリティレベルはSL2(比較的安全)に設定される。
【0069】
ステップS7−1,S7−3,S7−5〜S7−8で、通過ポイントへの到達を予め定められた時間検出できない場合、ステップS7−10で異常発信部31から管理人室4に異常発生が通報される。
【0070】
次に、図5のステップS5−7において、セキュリティレベルに応じた開錠判定が実行される。この例では、宅配便の受け渡し時のセキュリティレベルはSL2(比較的安全)であるので、搬送ロボット1はカメラ13により住人Aの顔を撮像し、開錠条件記憶部27に予め登録されている画像と照合する。画像が一致した場合、ステップS5−8で開錠判定部28により収納部11にある施錠部12が開錠され、住人Aが宅配便を取り出せるようになる。住人Aを特定する方法については、顔画像による照合以外にも入力インターフェース部16で入力された暗証番号による照合、指紋センサ17で検出した指紋等による生体認識による照合であってもよい。
【0071】
搬送途中の廊下6で、目的とする住人Aと出会った場合、搬送ロボット1はカメラ13等で目的の住人Aであることを確認すると受け渡しを始めることもできる。但し、この場所(廊下6)は、図3におけるセキュリティレベルがSL3(注意)であるため、前述した画像や暗証番号による照合だけでなく、追加の認証手段を用いて住人Aの照合を行い、SL2よりもセキュリティレベルを高めた状態での宅配便の受け渡しを行う。追加の認証手段としては、例えば、住人Aの玄関ドアのキーを用いた開錠が考えられる。
【0072】
次に、管理人室4を出た搬送ロボット1が駐車場9に停めた自動車から手荷物を住人Aの玄関7aまで運ぶ場合の搬送ロボット1の動作を説明する。図4の二点鎖線R2は、この場合の搬送ロボット1の搬送ルートを示す。この搬送ルートR2では、管理人室4を出た後、エントランスホール3を通過して駐車場9に到達し、手荷物が積み込まれた後に再びエントランスホール3を通過する。そして、エレベータ5に搭乗して住人Aの玄関7aがある階層(3階)まで移動する。その後、エレベータ5から降りて、廊下6を通って住人Aの玄関7aまで搬送物を自動的に搬送する。
【0073】
まず、図8のステップS8−1で、管理人が搬送ロボットに搬送先、搬送物の種類等を含む必要な指示を、入力インターフェース部16を使用して入力する。また、ステップS8−2で搬送ルート設定部22が搬送ルートR2を設定して搬送ルート記憶部23に記憶させる。さらに、ステップS8−3で開錠条件設定部26が開錠条件を設定して開錠条件記憶部27に記憶させる。
【0074】
図9は搬送ルート記憶部23に記憶された搬送ルートを模式的に示す。図4の搬送ルートR2の場合、通過ポイントP00(管理人室4)、通過ポイントP11(エントランスホール3)、通過ポイントP01(駐車場9)、通過ポイントP11(エントランスホール3)、通過ポイントP11(1階エレベータ口5)、通過ポイントP30(住人階エレベータ口5c)、通過ポイントP31(玄関7)、通過ポイントP32(玄関7)、通過ポイントP33(目標の住人宅玄関7a)が、順に搬送ルート記憶部23に記憶されている。搬送ロボット1はこれらの通過ポイントのチェックを行いながら搬送物の搬送を行う。
【0075】
図8のステップS8−4で、搬送ロボット1が記憶された搬送ルートR2に従って搬送先まで移動する。この際に、ゾーンレベル等に応じてセキュリティレベルの切り替えが実行される。
【0076】
この搬送ルートR2の場合、搬送開始時は収納部11に搬送物を収納していないので、図3に従ってセキュリティレベルはSL0(レベルなし)となる。
【0077】
図10に示すように、搬送ロボット1は通過ポイントP11,P01,P11,P10,P30,P31,P32,P33の通過をチェックしつつ移動を継続する(ステップS10−1,S10−2,S10−5,S10−6,S10−8〜S10−11)。通過ポイントへの到達を予め定められた時間検出できない場合、ステップS10−12で異常発信部31から管理人室4に異常発生が通報される。
【0078】
エントランスホール3を出て、駐車場9に到着した搬送ロボット1は、住人Aから搬送物を収納部11へ収納してもらう(ステップS10−1〜S10−3)。その際、カメラ13の画像などによりその住人Aが搬送物を受け取るべき住人Aかを判定する。また、搬送ロボット1は、搬送物(手荷物)が収納部11に収納されると、図3に従ってセキュリティレベルを設定する(ステップS10−4)。この場合、駐車場9で、住人Aの搬送物を収納し、住人Aの随伴者を伴っているので図3に従ってSL3(注意)となり、そのレベルに応じたセキュリティ体制をとる。また、搬送ロボット1は通過ポイントP10への到達(エレベータ5への搭乗)を検出すると、図3に従ってセキュリティレベルをSL2(比較的安全)に設定する(ステップS10−6,S10−7)。3階のエレベータホール5cから住人Aの玄関24a到着後(ステップS10−8〜S10−11)、カメラなどの画像情報により住人Aを再度照合し、一致すれば施錠部を開錠し、住人Aが搬送物を取り出せるようにする(図8のステップS8−5,S8−6)。
【0079】
(第2実施形態)
図11は本発明の第2実施形態に係る自律移動可能な搬送ロボット1を示す。本実施形態では、搬送ロボット1はルート通過記憶部35を備える。搬送ロボット1が搬送ルート上を搬送出発地から搬送目的地へ移動中、位置検出部25により検出された通過ポイントP00〜P34の通過がルート通過記憶部35に記憶される。言い換えれば、ルート通過記憶部35には通過ポイントP00〜P34の通過状態が記憶される。
【0080】
図12は、ルート通過記憶部35による通過ポイントの通過状態の記憶方法の一例を模式的に示す。図12において、縦軸は階番号を表し、横軸は戸番号を表す。図12中の符号Aは、階番号はP2、戸番号は1でマンション2内での地点の番号はP21となり、2階の1番目の住居の玄関を表す。また、符号Bは、階番号はP1、戸番号は0で、P10となり、1階エレベータ口5aを表す。図12の記憶方法としては、ICメモリなどの電気的な方法や鍵穴のような機械的な方法がある。
【0081】
以下、随伴者なしで管理人室4から住人Aの玄関7aまで宅配便を搬送する場合を例に本実施形態の搬送ロボット1の動作を説明する(図4の一点鎖線R1及び図6参照)。全体的な動作は、第1実施形態において同一の搬送ルートR1を移動する場合と同様であり(図5参照)、管理人は、宅配便を住人Aの玄関7aに運ぶよう、搬送ロボット1に指示する。搬送ルート設定部22で設定された搬送ルートが搬送ルート記憶部23記憶され、開錠条件設定部26で設定された開錠条件が開錠条件記憶部27に記憶される。また、本実施形態では、後述する開錠条件の判定のために搬送ルートが開錠条件記憶部27にも記憶される。
【0082】
図13A及び図13Bに示すように、搬送ロボット1は通過ポイントのチェック及び記録と該当する場合のセキュリティレベルの変更を実行しつつ、搬送先へ移動する。具体的には、ステップS13−1,S13−4,S13−7,S13−9,S13−11,S13−13において、通過ポイントP11,P10,P30,P31,P32,P33の通過を検出すると、ステップS13−2,S13−5,S13−8,S13−10,S13−12,S13−14においてルート通過記憶部35に通過ポイントを通過したことが記録される。本実施形態では、図12のようなテーブルを使用したカウントアップにより、通過ポイントの通過が記憶される。また、ステップS13−3,S13−6,S13−15では第1実施形態の場合と同様にセキュリティレベルの切り替えが実行される。搬送に移動をきたしている場合に異常通報を実行する点も第1実施形態と同様である(ステップS13−16)。
【0083】
図14は、搬送が正常に行われた場合に搬送目的地(住人Aの玄関7a)に到達した自転のルート通過記憶部35の状態を示す。図14において、Iは通過ポイントを1度通過することを示す(IIであれば通過ポイントを2度通過することを示す。)。通過ポイントP00(管理人室4)、通過ポイントP11(エントランスホール3)、通過ポイントP10(1階エレベータ口5a)、通過ポイントP30(3階エレベータ口5c)、通過ポイントP31,32、及び通過ポイントP33(住人Aの玄関7a)を、それぞれ1度通過していることを表す。ルート通過記憶部35は、搬送開始前はどのポイントも通過していないので、通過を示す印は記憶されていない。
【0084】
住人Aの玄関7aに搬送ロボット1が到着した際に、開錠判定部28により開錠条件の判定(図5のステップS5−7,S5−8参照)が実行される。この際、開錠判定部28は、ルート通過記憶部35の状態と予め開錠条件記憶部27に記憶された搬送ルートを比較する。この例では、ルート通過記憶部35の状態と予め開錠条件記憶部27に記憶された搬送ルートは一致するので、他の開錠条件の判定が成立すれば施錠部12が開錠される。開錠条件記憶部27に記憶されている搬送ルートとルート通過記憶部35の状態が一致しない場合、開錠判定部28は開錠不可と判定する。第1実施形態と同様に、ルート通過記憶部35と開錠条件記憶部27の一致以外の他の条件(住人Aの生体認証や暗証番号入力等)との組み合わせは、セキュリティレベルにより決まる。
【0085】
次に、搬送ルート設定部22によって図4の一点鎖線R1及び図6に示す搬送ルートが設定されたが、搬送が正常に行われなかった場合について説明する。
【0086】
例えば、搬送ロボット1が何らかの原因により一旦2階でエレベータ5を降りて、2階の1軒目に住居の前を通過し、引き返し再度エレベータ5に搭乗し、3階で降り、住人A宅へ到着した場合、ルート通過記憶部35のデータは図15のようになる。また、搬送ロボット1が何らかの原因により3階でエレベータ5を降りて、住人Aの玄関7aに向かうが、3階1軒目の住居の前で引き返し、再び3階エレベータ前を通過し、そして住人A宅に到着した場合、ルート通過記憶部35のデータは図16のようになる。
【0087】
図15及び図16のいずれの場合も、開錠条件記憶部27に記憶されている搬送ルートと搬送ルート記憶部23の状態が異なるので、開錠判定部28で開錠不可と判定する。
【0088】
次に、管理人室4を出た搬送ロボット1が駐車場9に停めた自動車から手荷物を住人Aの玄関7aまで運ぶ場合の本実施形態の搬送ロボット1の動作を説明する(図4の二点鎖線R2及び図9参照)。全体的な動作は、第1実施形態において同一の搬送ルートR2を移動する場合と同様である(図8参照)。
【0089】
図17A及び図17Bに示すように、搬送ロボット1は通過ポイントのチェック及び記録と該当する場合のセキュリティレベルの変更を実行しつつ、搬送先へ移動する。具体的には、ステップS17−1,S17−3,S17−7,S17−9,S17−12,S17−14,S17−16,S17−18において、通過ポイントP11,P01,P11,P10,P30,P31,P32,P33の通過を検出すると、S17−2,S17−4,S17−8,S17−10,S17−13,S17−15,S17−17,S17−19においてルート通過記憶部35に通過ポイントを通過したことが記録される。また、ステップS17−6,S17−11では第1実施形態の場合と同様にセキュリティレベルの切り替えが実行される。搬送に異常をきたしている場合に異常通報を実行する(ステップS17−19)。
【0090】
図18は、搬送が正常に行われた場合に搬送目的地(住人Aの玄関7a)に到達した自転のルート通過記憶部35の状態を示す。通過ポイントP00(管理人室4)、通過ポイントP01(駐車場9)、通過ポイントP10(1階エレベータ口5a)、通過ポイントP31,32、及び通過ポイントP33(住人Aの玄関7a)を、それぞれ1度通過していることが記録され、通過ポイントP11(エントランスホール3)を2度通過していることが記録されている。住人Aの玄関7aに搬送ロボット1が到着した際に、開錠判定部28により開錠条件の判定(図8のステップS8−5,S8−6参照)が実行される。この際、開錠判定部28は、ルート通過記憶部35の状態と予め開錠条件記憶部27に記憶された搬送ルートを比較する。この例では、ルート通過記憶部35の状態と予め開錠条件記憶部27に記憶された搬送ルートは一致するので、他の開錠条件の判定が成立すれば施錠部12が開錠される。
【0091】
ルート通過記憶部35の各地点のチェックの方法は、カウントアップに限定されず、カウントダウンによっても実現できる。また、各地点を通過する方向を加味して、カウントアップや、カウントダウンを行ってもよい。例えば、エレベータ口でエレベータに搭乗する際はカウントアップを行い、エレベータから降りる際はカウントダウンを行い、各住人宅の玄関に到着した場合はカウントアップを行い、出発する(離れる)場合はカウントダウンする、という方法が考えられる。また、各地点を通過する時、目的地に近づく場合はカウントアップ、目的地から離れる場合はカウントダウンする方法が考えられる。これらの方法は搬送の状況、搬送物の内容、重要度に応じて自由に運用することで、より柔軟に対応することができる。
【0092】
第2実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0093】
開錠条件記憶部27は、必ずしも搬送ロボット1本体に組み込まれている必要はなく、搬送ロボット1本体から切り離して、住人が所持していてもよい。開錠条件記憶部27を住人が鍵のように所持し、ロボットにより搬送物が運ばれてきた際に、開錠条件記憶部27をロボットにセットするか、あるいは無線通信手段などを用いて搬送ロボット1の開錠判定部28に送信し、搬送ロボット1のルート通過記憶部35と照合確認をしてもよい。これにより、更なるセキュリティレベルの向上を図ることができる。
【0094】
図19A及び図19Bは搬送ロボット1とは別体の開錠条件記憶部の例を示す。
【0095】
図19Aにおいて、開錠キー36aには、開錠条件がデータとして記憶された開錠条件記憶部27a、開錠条件記憶部27bが取り外し可能なチップとして取り付けられる。これらの取り付けられた開錠条件記憶部27a,27bに保存されている開錠条件のデータに応じて、開錠キー36aが実際に作用するか否かを制御する。この開錠キー36aを用いることで、複雑な条件で制御できる鍵とすることができる。
【0096】
図19Bにおいて、開錠キー36bは、開錠条件が機構的に形成された開錠条件記憶部27c、開錠条件記憶部27dが取り外し可能な鍵の歯の部分となる。これらの取り付けられた開錠条件記憶部27c,27dの機構に応じて、開錠キー36bが実際に作用するか否かを制御する。この開錠キー36bを用いることで、複製が困難な鍵を形成することができる。
【0097】
本実施形態に限らず、前述の第1実施形態及び後述の第3実施形態についても、図19A及び図19Bのような構成を採用できる。
【0098】
(第3実施形態)
図20及び図22は本発明の第3実施形態に係る自動搬送システムを示す。この自動搬送システムは、搬送物の収納部11を持ち搬送を実行する搬送ロボット1と、監視カメラ41、監視センサ42(赤外線センサ、超音波センサ、レーザセンサ等)により搬送ロボット1の走行ルート上の不審者の有無や障害物の有無等を監視する環境監視装置43と、搬送ロボット1に搬送ルートなどの搬送タスクと収納部11の開錠条件を設定するタスク・開錠条件設定装置44と、タスク・開錠条件設定装置44と対になってタスク完了時に収納部11の開錠条件を入力するための開錠条件入力装置45を備える。また、この自動搬送システムでは、第1実施形態と同様に搬送ロボット1や環境監視装置43によって異常(例えば、開錠条件に合わない開錠処理が行われた場合、セキュリティ上問題となる不審者によって搬送ルートが塞がれた場合等)が検出された場合、搬送ロボット1から監視センターとしての管理人室4に通知される。
【0099】
環境監視装置43は、監視カメラ41や監視センサ42からの入力から得られるルート環境情報を搬送ロボット1のセキュリティレベル設定部29に通知するルート環境検出部46を備えている。なお、タスク・開錠条件設定装置44の情報は、搬送ルート記憶部23および開錠条件記憶部27に送られ、タスク・開錠条件設定装置44によって指示された搬送タスクにおける搬送ルートおよび開錠条件が付加される。
【0100】
搬送ロボット1は、例えば以下に挙げる搬送タスクを実行する。搬送ロボット1は、タスク・開錠条件設定装置44を持ち住人300に呼び出され、その住人300に搬送物を積み込まれ、目的の場所までの搬送を指示されて搬送物の搬送を行い、目的地において開錠条件入力装置45を持つ住人301に搬送物を渡して搬送タスクを完了する。搬送中、搬送ロボット1は収納部11に施錠を行い、他の悪意ある人物による搬送物の盗難や盗み見を防ぐものとする。ここで、搬送タスクの例として、(1)部屋にいる住人がゴミをごみ置き場8に運ぶ、(2)駐車場9にいる住人が自動車から降ろした荷物を部屋に運ぶ、(3)管理人が預かった小包を住人に届ける、(4)回覧板を廻す等が挙げられる。
【0101】
搬送ロボット1がタスク実現のために行う一連の処理は概ね以下のステップ1〜5により構成される。
【0102】
ステップ1:住人がタスクを登録する。
行き先、搬送ルート、開錠条件がタスク・開錠条件設定装置44を用いて入力される。搬送ルートは搬送ルート記憶部23に記憶されるだけでなく、開錠条件と共に開錠条件記憶部27に記憶される。搬送ルートは第1実施形態のようにユーザが搬送ロボット1に直接入力してもよい。搬送ルートを含むタスクが予めタスク・開錠条件設定装置44や搬送ロボット1自体に登録され、住人が登録済みのタスクを選択してもよい。
【0103】
ステップ2:住人が荷物を収納部11に載せて、搬送ロボット1が施錠を行なう。
開錠条件が揃うまで収納部11は施錠され、搬送物が取出せないようになる。また、必要に応じて収納部11の内部が見えないようにし、搬送物が何かを外部より知られないようにしても良い。
【0104】
ステップ3:搬送ロボット1が目的地へ走行する。
搬送ロボット1が搬送ルート記憶部23の情報を基に目的地に向かって移動する。その搬送ルートは、固定の搬送ルートでも良い。その他に、搬送ロボット1が外部環境情報処理部21からの情報や環境監視装置43のルート環境検出部46からの環境情報を取り込み、セキュリティ面を加味して選出した搬送ルートでも良い。また、搬送ルートの選出に搬送ルート記憶部23に記憶させた地図を使用してもよい。第1実施形態と同様に、位置検出部25により搬送ロボット1の位置が検出され、搬送ルートからの逸脱等の場合には異常発信部31から管理人室4へ異常が通知される。セキュリティレベル設定部29は、ルート環境検出部46からの環境情報を加味してセキュリティレベルの切り替えを行う。また、ルート環境検出部46にはセキュリティレベル設定部29からセキュリティレベルが入力され、それに基づいて監視カメラ41や監視センサ42による搬送ルートの監視の態様を切り替える。例えば、セキュリティレベルが高い場合には、監視カメラ41や監視センサ42のサンプリングレートの上昇や監視範囲の拡大を行い、セキュリティレベルが低い場合には、監視カメラ41や監視センサ42のサンプリングレートの低下や監視範囲の縮小や、監視に使用する監視センサ42の種類や数の限定を行う。セキュリティレベルの切り替えについては後に詳述する。
【0105】
ステップ4:搬送ロボット1が目的地に到達し、住人が荷物を降ろす。
搬送ロボット1は目的地に到達した後、開錠条件が揃えば施錠部12を開錠し、住人が荷物の取出しを行えるようにする。この時、開錠条件は開錠条件入力装置45によって入力される。
【0106】
ステップ5:搬送タスクが完了して、搬送ロボット1は待機位置に移動する。
以上のように、搬送ロボット1、環境監視装置43、タスク・開錠条件設定装置44、及び開錠条件入力装置45が機能し、搬送タスクを実現する。
【0107】
次に、本実施形態におけるセキュリティレベル設定部29によるセキュリティレベルの切り替えについて説明する。図23は本実施形態におけるセキュリティレベル設定部29が添え備えるディジョンテーブルを示す。
【0108】
セキュリティレベル設定部29は、第1実施形態と同様の条件、すなわち搬送ロボット1の現在位置が属するゾーンレベル、搬送物の有無と種類、随伴者の有無に加え、ルート環境検出部46から入力される環境情報を加味してセキュリティレベルを設定する。具体的にはルート環境検出部46が例えば不審者に近くに存在するなど、セキュリティ上問題を検出した場合と、問題の無い場合とでセキュリティレベルを変える。図23において同じ枠内でも、2つのレベル(**/++)を設定し、問題が無い場合は**(SL1〜SL5)、問題が検出された場合は++(SL6〜SL10)が選択される。なお、SL6〜SL10では、SL1〜SL5に加えて、開錠条件を厳しくし、監視を強化するようにする。また、目的地をXゾーンとして、さらに開錠条件入力装置45による開錠条件の入力を義務付けている。
【0109】
例えばSL6〜SL10は次のようなセキュリティの設定となる。
【0110】
SL6:SL1の条件に加え、ルート環境検出部46のサンプリング時間を短縮する。
SL7:SL2の条件に加え、ルート環境検出部46のサンプリング時間を短縮する。
SL8:SL3の条件に加え、ルート環境検出部46のサンプリング時間を短縮し、かつ監視カメラ41や監視センサ42の検出範囲を拡大する。
SL9:SL4の条件に加え、ルート環境検出部46のサンプリング時間を短縮する。
SL10:SL5の条件に加え、ルート環境検出部46のサンプリング時間を短縮し、監視カメラ41や監視センサ42の検出範囲を拡大し、現在の搬送ルート付近の監視カメラ41や監視センサ42も起動する。
【0111】
このように、SL6〜SL10では搬送ロボット1の周囲環境の監視も強化されるため、SL1〜SL5に比べてセキュリティが強化される。
【0112】
図21を参照して、タスク・開錠条件設定装置44と開錠条件入力装置45を用いたセキュリティの実行方法を説明する。図21において、300は搬送ロボット1にタスクを依頼する住人、301は搬送ロボット1から荷物を受け取る住人である。図21のように、タスク・開錠条件設定装置44と開錠条件入力装置45はそれぞれが対になった一種の割符の役割を担っており、セキュリティの実行とタスク実行内容の伝達の2つの役割を併せ持つ。例えば、同一物でタスク・開錠条件設定装置44と開錠条件入力装置45の役割を兼用させれば「鍵」のような使い方も可能である。また、タスク・開錠条件設定装置44と開錠条件入力装置45の役割を兼用する同機能のカードを複数の住人が所持していれば、回覧板の配送などのように決ったメンバで収納部11に収容された搬送物をシェアすることができる。また、タスク・開錠条件設定装置44と開錠条件入力装置45には、必ずしもはじめからタスクや開錠条件が登録されている必要は無く、搬送ロボット1の使用時にタスク・開錠条件設定装置44にタスクと開錠条件を登録し、これを電子情報として開錠条件入力装置45へ通知して使うことも考えられる。この方法では、前述した小包の配送において、管理人がタスク・開錠条件設定装置44を使用して開錠条件を設定し、配送先の住人の開錠条件入力装置45に開錠条件の情報を送り、配送先ではその情報を使って部屋に配送しにきた搬送ロボット1から荷物を受け取る使い方も考えられる。
【0113】
第3実施形態のその他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
図24に示すように、搬送ロボット1がルート通過記憶部35を備える場合にも、本実施形態のような自動搬送システムを構築できる。
【0115】
(第4実施形態)
第1から第3実施形態は物理的な搬送ロボットについての適応例であるが、本発明は電子情報を搬送にも適応することができる。以下では、電子情報(データ)の搬送へ本発明を適応した第4実施形態について述べる。
【0116】
本実施形態では、電子情報を搬送するエージェントプログラムを電子情報搬送ロボットとして、このロボットによって電子情報を搬送する方法を説明するものである。図25は、本発明を適用した電子情報搬送ロボットを示す。
【0117】
搬送される電子情報は送り元のコンピュータ400から、送り先のコンピュータ401に搬送されるものとする。送り元、送り先のコンピュータはそれぞれ送り元のゲートウェイサーバ402を通じてインターネット網を経由し、送り先のゲートウェイ403を通じて送り先のコンピュータに届けられる。インターネット網ではゲートウェイのサーバから、隣り合ったサーバを経由して目的地に送られる。
【0118】
インターネットでは悪意のあるハッカー404によって通過する電子情報(データ)の盗み見や、改竄の可能性もある。特に、企業での開発情報等秘密情報は、競合企業により奪われる問題もあるため、そのセキュリティの強化はかかせない。一般的には電子情報は暗号化されて送られるが、電子情報が盗まれてしまうとそのセキュリティは絶対とは言えない。また、加えてインターネットでは、通常データはその時のトラフィックの状況等により経路が変る可能性があるため、どこを通るか判らず、ハッカーの存在する危険な経路を避けることは困難である。
【0119】
しかしながら、インターネット内での電子情報(データ)の経路は追跡可能であり、現在地も、例えばWindowsやLinuxのtracerouteコマンド等を使えば、通信系路上のサーバのIPアドレスが判るため、経路が判る。それとともに、IPアドレスは国際的に管理されているため、アドレスはどこの国のどの地域のサーバで、そのサーバの所有者も調べる事は可能であるため、それを基に管轄現在位置を割り出すことも可能である。従って、通過するサーバのIPアドレスによって安全経路405、警戒経路406、危険経路407を設定でき、電子情報の通過する経路や、電子情報の取出し場所によってセキュリティを変更することによって、安全に電子情報(データ)を送ることができる。
【0120】
具体的には、例えば図26の電子情報搬送フローに従って以下のようにセキュリティを実行する。
【0121】
まず、搬送データ(電子情報)を取り込んだエージェントプログラム(搬送ロボット)が送信先までの経路を調べ(ステップS26−1)、通過するサーバのIPアドレスによって暗号化の強度やパスワード設定等のセキュリティ方法を設定し、搬送データのプログラム内に取り込みパッケージングを行う(ステップS26−2)。この時、ステップS26−1で調べた経路情報も合わせてパッケージを行う。そして、目的地に搬送データとプログラムが一体となったパッケージを送信する(ステップS26−3)。ただし、ステップS26−1で調べた経路に危険経路が含まれる場合、インターネット上のトラフィックが変化し、経路が変るまで送信を行わなくても良い。送信先では受け取ったパッケージされたエージェントプログラム(搬送ロボット)を実行する(ステップS26−4)。ここで、ステップS26−1で設定されたパスワード確認、エージェントプログラムを実行したコンピュータのゲートウェイのIPアドレスや、送り元までの通信経路の確認を行う。パスワードや、ゲートウェイのIPアドレス、送り元までの通信経路に異常が検知された場合な搬送プログラムがデータやプログラム自身を破壊する(ステップS26−5)ことで搬送データを護る。また、送り元に異常を通知しても良い。また、異常が無い場合は搬送データを取出し、ユーザが活用できる状態に復元する(ステップS26−6)。
【0122】
プログラム実行箇所でのIPアドレスを見ることで異なるユーザが搬送データを取出すことを防ぎ、また、IPアドレスを偽装した場合も送り元までの通信経路を見ることで偽装を見破ることができるため、セキュリティを強化することができる。それと同時に、経路セキュリティの代わりに暗号化の複雑さを軽減することで、セキュリティのために付加されるダミーの情報を減らす事でデータ通信量や通信時間の削減、また復元時間の短縮化を図ることができ、効率的なデータ送信を行うことができる。
【0123】
なお、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できるものであることは言うまでもない。
【0124】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることで、種々の発明を形成することもできる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の自動搬送方法によれば、第三者による盗難を防止する等のセキュリティ機能を有するロボットを提供することができ、特に、マンション等の住居スペースのほかに、ショッピングセンターや空港等の公共スペースにおいても適用可能である。また、電子情報のやりとりにおいても送受信においてセキュリティを強化でき、秘密情報、個人情報のやり取りに適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬送ロボットの機能ブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態におけるマンションの構造を示す模式図。
【図3】本発明の第1実施形態におけるセキュリティレベルのデシジョンテーブルの模式図。
【図4】本発明の第1実施形態における搬送ルートの模式図。
【図5】本発明の第1実施形態における搬送フローの一例のフローチャート。
【図6】本発明の第1実施形態における搬送ロボットの通過ポイントの一例の模式図。
【図7】図5のステップS5−6の詳細のフローチャート。
【図8】本発明の第1実施形態における搬送フローの他の一例のフローチャート。
【図9】本発明の第1実施形態における搬送ロボットの通過ポイントの他の一例の模式図。
【図10】図8のステップS8−4の詳細のフローチャート。
【図11】本発明の第2実施形態に係る搬送ロボットの機能ブロック図。
【図12】ルート記憶部を示す模式図。
【図13A】本発明の第2実施形態における搬送フローの一例のフローチャート。
【図13B】本発明の第2実施形態における搬送フローの一例のフローチャート。
【図14】図13A及び図13Bの搬送フローが正しく実行された場合のルート記憶部の状態を示す模式図。
【図15】図13A及び図13Bの搬送フローが正しく実行されなかった場合のルート記憶部の状態の一例を示す模式図。
【図16】図13A及び図13Bの搬送フローが正しく実行されなかった場合のルート記憶部の状態の他の一例を示す模式図。
【図17A】本発明の第2実施形態における搬送フローの一例のフローチャート。
【図17B】本発明の第2実施形態における搬送フローの一例のフローチャート。
【図18】図17A及び図17Bの搬送フローが正しく実行された場合のルート記憶部の状態を示す模式図。
【図19A】開錠キーの一例を示す模式的な斜視図。
【図19B】開錠キーの他の一例を示す模式的な斜視図。
【図20】本発明の第3実施形態に係る搬送ロボットの機能ブロック図。
【図21】タスク・開錠条件設定装置と開錠条件入力装置を説明するための模式図。
【図22】本発明の第3実施形態におけるマンションの構造を示す模式図。
【図23】本発明の第3実施形態におけるセキュリティレベルのデシジョンテーブルの模式図。
【図24】本発明の第3実施形態の変形例に係る搬送ロボットの機能ブロック図。
【図25】本発明の第4実施形態に係る電子情報搬送ロボットを説明するための模式的な通信回路図。
【図26】本発明の第4実施形態に係る電子情報搬送ロボットによるデータ搬送のフローチャート。
【図27】従来の搬送ロボットの機能ブロック図。
【符号の説明】
【0127】
1 搬送ロボット
2 マンション
3 エントランスホール
4 管理人室
5 エレベータ
6 廊下
7 玄関
8 ごみ置き場
9 駐車場
11 収納部
12 施錠部
13 カメラ
14 RFタグリーダ
15 外部環境センサ
16 入力インターフェース部
17 指紋センサ
18 スピーカ
19 警告灯
21 外部環境情報処理部
22 搬送ルート設定部
23 搬送ルート記憶部
24 移動機構部
25 位置検出部
26 開錠条件設定部
27 開錠条件記憶部
28 開錠判定部
29 セキュリティレベル設定部
31 異常発信部
32 警告発生部
33 通信部
35 ルート通過記憶部
36a,36b 開錠キー
41 監視カメラ
42 監視センサ
43 環境監視装置
44 タスク・開錠条件設定装置
45 開錠条件入力装置
46 ルート環境検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットにより搬送される搬送物の搬送先情報に基づいて前記搬送ロボットの搬送ルートを設定し、
前記搬送ルートの情報に基づいて前記搬送ロボットを搬送先に向けて移動させ、
前記搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベルと、前記搬送ロボットの現在位置情報と、前記搬送物の種類情報とに基づいて移動中の前記搬送ロボットのセキュリティレベルを切り替える
搬送ロボットを用いた自動搬送方法。
【請求項2】
前記セキュリティレベルの情報に基づいて前記搬送物の取出口を施錠する、請求項1に記載の自動搬送方法。
【請求項3】
前記セキュリティレベルの切り替えは、前記搬送ルート中に予め設定されたポイントにおける前記搬送ロボットの通過情報をさらに使用する、請求項1又は請求項2に記載の自動搬送方法。
【請求項4】
前記セキュリティレベルの切り替えは、前記搬送ロボットに対する随伴者情報をさらに使用する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動搬送方法。
【請求項5】
前記セキュリティレベルの切り替えは、前記搬送ルートの周囲に設置された環境監視装置からのルート環境情報をさらに使用する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動搬送方法。
【請求項6】
前記セキュリティレベルの切り替えは、前記取出口の開錠条件を設定する開錠条件設定装置からの開錠条件設定情報をさらに使用する、請求項2に記載の自動搬送方法。
【請求項7】
前記開錠条件設定装置と対となった開錠条件入力装置からの開錠情報の入力を、前記取出口の開錠に必要とする、請求項6に記載の自動搬送方法。
【請求項8】
搬送物を搬送する搬送ロボットであって、
前記搬送物の搬送先情報に基づいて設定された搬送ルートを記憶する搬送ルート記憶部と、
前記搬送ルートに基づいて搬送先に向けて移動するための移動機構部と、
前記搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベルと、現在位置情報と、前記搬送物の種類情報とに基づいて移動中のセキュリティレベルを切り替えるセキュリティレベル設定部と
を備える搬送ロボット。
【請求項9】
前記セキュリティレベルに基づいて前記搬送物の取出口を施錠する施錠部をさらに備える、請求項8に記載の搬送ロボット。
【請求項10】
前記施錠部の開錠を判定する開錠判定部と、
前記開錠判定部での判定に使用する開錠条件を記憶する開錠条件記憶部と
をさらに備える、請求項9に記載の搬送ロボット。
【請求項11】
前記開錠条件記憶部は取り外し可能に構成されている、請求項10に記載の搬送ロボット。
【請求項12】
搬送先情報に基づいて設定された搬送ルートを記憶する搬送ルート記憶部と、前記搬送ルートの情報に基づいて搬送先に向けて移動するための移動機構部と、前記搬送ルートにおける領域毎に予め定められたゾーンレベルと、現在位置情報と、前記搬送物の種類情報とに基づいて移動中のセキュリティレベルを切り替えるセキュリティレベル設定部とを備える搬送ロボットと、
前記搬送ロボットの搬送ルートを監視し、前記セキュリティレベルに応じて前記搬送ルートの監視レベルを切り替える環境監視装置と
を備える、自動搬送システム。
【請求項13】
前記搬送ルートと開錠条件設定情報を、前記搬送ロボット内の搬送ルート記憶部と開錠条件記憶部とにそれぞれ通知する開錠条件設定装置と、
前記開錠条件設定装置と対になり開錠時に開錠判定部へ開錠情報を通知することで開錠を行う開錠条件入力装置と
をさらに備える、請求項12に記載の自動搬送システム。
【請求項14】
前記搬送ロボットから取り外し可能な前記開錠条件記憶部が前記開錠条件設定装置を兼ねる、請求項13に記載の自動搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−1425(P2009−1425A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129155(P2008−129155)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.Linux
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】