説明

自動終端回路

【課題】自動終端回路を提供すること
【解決手段】自動終端回路は、それ自体を伝送線路に接続するための出力端子を有する可変終端抵抗デバイスを含み、可変終端抵抗デバイスは、付随する終端抵抗を有する。自動終端回路は、帰還を用いて可変終端抵抗デバイスに付随する終端抵抗を自動的に調整するように動作可能であり、帰還は少なくとも出力端子での出力電圧に基づく。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
新しい電子部品で用いられるデータ転送速度は向上してきており、さらに向上することが予想される。現在、信号の立ち上がりおよび立ち下がり時間は、1ナノ秒(1×10−9)より短く、これらの時間は減少し続けると予想される。これらの予想に対応するために、電子部品の設計には、しばしば、電子部品内の各信号ドライバが、対応する単一の負荷ポイント(たとえば、プリント回路基板(PCB)のトレース)を有する、「2点間(Point−to−Point)」トポロジーが用いられる。
【0002】
これらのサブナノ秒の信号エッジに対しては、あらゆるPCBトレースが実質的に伝送線路となる。信号反射、リンギング、および信号のオーバシュートまたはアンダシュートなどのノイズ問題を防止するために、各トレース(すなわち、対応する各負荷ポイント)に終端が必要となることは、珍しいことではない。2点間トポロジーでは、供給源(ドライバ)での直列終端が、回路を終端する理想的な方法である。終端抵抗のインピーダンス値は、関連する電子部品のバッファ技術、信号ドライバ強度、およびPCBトレースのインピーダンスレベルに応じて選択される。信号のドライバ強度は、供給源インピーダンスまたは供給源抵抗によって表すことができる。特に、信号反射は、信号ドライバのインピーダンスが、信号ドライバに接続されたPCBトレースのインピーダンスレベルと実質的に整合しない場合に生じる。信号反射を制限するために、通常、これらの「供給源」終端は、電子部品内の信号ドライバにできるだけ近く配置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、電子部品の設計者は、信号反射を抑制するために、限られた数の手法を用いる。シミュレーション解析と回路モデルを利用するある手法では、部品設計の初期段階で、インピーダンス整合の計算が行われる。予備設計の評価は、しばしば実際の動作条件をシミュレートするための実験回路を用いて、実験室環境で手作業の調整によって行われる。特定用途向け集積回路(ASIC)、またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの一部の部品の構成は通常、製造時(ASICの場合)、スタートアップ、またはリセット動作の際(FPGAの場合)に行われ、一般に部品動作時には調整することができない。さらに伝送線路(すなわちPCBトレース)の長さによっては、終端回路の追加は常に必要とされるわけではない。必要ない場合に終端回路が含まれると、終端回路が電子部品の動作に対して不要な負荷となり得るためである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の明細書は、電子データ伝送線路用の自動終端回路に対処する。具体的には一実施形態では、自動終端回路が提供される。自動終端回路は、それ自体を伝送線路に接続するための出力端子を有する可変終端抵抗デバイスを含み、可変終端抵抗デバイスは、付随する終端抵抗を有する。自動終端回路は、帰還を用いて可変終端抵抗デバイスに付随する終端抵抗を自動的に調整するように動作可能であり、帰還は少なくとも出力端子での出力電圧に基づく。
【0005】
上記その他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面に関連して、より良く理解されよう。
様々な図面中の同じ参照番号および名称は、同じ要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、少なくとも1つの自動終端回路を組み込んだ、電子回路100の一実施形態のブロック図である。電子回路100は、論理デバイス102と、負荷ポイント110を備える。論理デバイス102は、データ信号源108、デバイスマネージャ106、および自動終端回路(ATC)104をさらに備える。論理デバイス102の限定的でない例としては、ASIC、FPGA、フィールド・プログラマブル・オブジェクト・アレイ(FPOA)などの任意のプログラマブル論理デバイスが含まれる。デバイスマネージャ106は、論理デバイス102内にあり、論理デバイス102の構成および制御を受け持つ。データ信号源108は、論理デバイス102内にあり、少なくとも1つのデータ供給源を維持する。ATC104は、デバイスマネージャ106およびデータ信号源108と通信する。ATC104については、図2と関連してさらに説明する。
【0007】
ATC104は、伝送線路(TLINE)112によって負荷ポイント110に結合される。図1の実施形態の例では、負荷ポイント110は、TLINE112上に、論理デバイス102から1つのデータ信号を受け取る。負荷ポイント110は、論理デバイス102用に、少なくとも1つのコモン・ロジック・レシーバ・ポイントを備える。代替実施形態では、負荷ポイント110は、プリント配線組立基板(PWBA、図示せず)上に取り付けられた任意の追加の論理デバイス102を含む、複数の電子デバイスからの、任意のタイプの電子信号データを受け取る。
【0008】
動作時にはデバイスマネージャ106は、論理デバイス102が使用されているときに、信号反射を制限するために、ATC104をいつ、どのように構成するかを決定する。トレースの長さおよび/またはTLINE112のインピーダンスに応じて、いくつかのオプションが利用可能である。ATC104を「自動」モードまたは「オートマティック」モードで動作させると、ATC104の出力が常に最適な終端抵抗値に設定される。最適な終端抵抗は、TLINE112の負荷インピーダンスと実質的に整合する。追加のオプションとして、TLINE112のトレースの長さが顕著な大きさの信号反射を起こすものでない場合は、ATC104をディスエーブルにすることが含まれる。「コマンド」モードでの動作は、ATC104を1つまたは複数の固定の終端抵抗値に設定する。「コマンド」モードで動作するオプションとして、TLINE112の終端の有効性および品質を評価する機会を提供する。
【0009】
図2は、図1のATC104の一実施形態のブロック図200である。ATC104は、少なくとも1つの出力バッファ204、付随する終端抵抗RTERMを有する可変終端抵抗デバイス202、およびバイアス調整回路206を備える。少なくとも1つの出力バッファ204は信号ドライバとして動作し、信号入力ライン220に供給される論理1および0を受け取るための入力を有する。図2の実施形態の例では、少なくとも1つの出力バッファ204は、供給源抵抗Rによって正確に表される駆動強度を含む、または有する。Rは、図1のデータ信号源108から、ATC104の入力端子に供給される駆動強度を示す。バイアス調整回路206は、構成ロジックブロック208と、帰還ロジックブロック210を含む。図2の実施形態の例では、可変終端抵抗デバイス202は、電界効果トランジスタ(FET)を含む。可変終端抵抗デバイス202を実装するために用いられるFETのソース端子は、少なくとも1つの出力バッファ204に結合される。FETのドレイン(出力)端子は、伝送線路(TLINE)222に結合される。図2に示されるように、Zは、TLINE222の接地インピーダンスの抵抗である。(可変終端抵抗デバイス202を実装するために用いられる)FETのゲート端子は、帰還ロジック210に接続される。帰還信号ラインは、バイアス調整回路206に帰還をもたらすために、可変終端抵抗デバイス202の出力端子と帰還ロジックブロック210の間に結合される。図2の具体的な実施形態では、このような帰還は、少なくとも可変終端抵抗デバイス202の出力端子の出力電圧(すなわち、以下で説明するVPORCH)に基づく。構成ロジックブロック208は、図1のデバイスマネージャ106から、いくつかの入力信号、すなわち、イネーブル入力信号212、固定値入力信号214、トリガ入力信号216、およびモード入力信号218を受け取る。
【0010】
動作時には、少なくとも1つの出力バッファ204に、信号入力ライン220から論理入力信号(論理IN)が供給される。バイアス調整回路206は、デバイスマネージャ106からモード入力信号218に供給された少なくとも1つの動作モード命令を受け取る。一実装形態ではバイアス調整回路206は、デバイスマネージャ106から受け取った少なくとも1つの動作モード命令に応じて、「オート」モード、または「コマンド」モードのいずれかになる。オートモードではトリガ入力216は、いつVPORCHを評価するべきかを特定し、デバイスマネージャ106によってセットされる。VPORCHは、可変終端抵抗デバイス202の出力端子の電圧レベルである。イネーブル入力212と、トリガ入力216が共にそれぞれアクティブ入力信号を与えるときは、帰還ロジックブロック210への帰還信号として、VPORCHが評価される。VPORCHの値に基づいて、帰還ロジックブロック210は、可変終端抵抗デバイス202にバイアス電圧値を供給する。一実装形態では帰還ロジックブロック210は、帰還増幅器を備える。バイアス電圧値は、可変終端抵抗デバイス202のゲート端子に印加される。可変終端抵抗デバイス202は、可変終端抵抗デバイス202のソースとドレイン端子両端の、ソース・ドレイン間抵抗(RSD)を自動的に調整する。トリガ入力信号216が非アクティブのときは、可変終端抵抗デバイス202は、従前に調整されたRTERM値を保持する。
【0011】
バイアス調整回路206は、可変終端抵抗デバイス202のRTERM値が調整される量を調節する。一実装形態ではバイアス調整回路206は、VPORCHが信号入力ライン220上の論理IN信号のほぼ半分になるまでRTERMを調節する。この時点で、ATC104の出力端子でのインピーダンスレベル(すなわち、RTERM+R)は、TLINE222の負荷ポイント・インピーダンスZにほぼ整合し、TLINE222は、(図1の負荷ポイント110に対して)理想的に終端されているとみなされる。可変終端抵抗デバイス202が調節する必要がない場合(すなわち、検出され得るレベルの信号反射がない場合)は、イネーブル入力信号212には、図1のデバイスマネージャ106からディスエーブル(非アクティブ)コマンドが送出される。イネーブル入力信号212が非アクティブのときは、構成ロジック208はRTERMを最小値に設定し、ATC104は「非終端」状態となる。
【0012】
コマンドモードではデバイスマネージャ106は、固定値入力信号214として少なくとも1つの固定値ワードを送出する。少なくとも1つの固定値ワードは、RTERMの少なくとも1つの固定値を表す。一実装形態では構成ロジック208は、帰還ロジック210に対して、少なくとも1つの固定値ワードを、可変終端抵抗デバイス202のゲート端子の対応するバイアス電圧値に変換するように指示する。可変終端抵抗デバイス202のソースとドレイン端子両端のソース・ドレイン間抵抗は、RTERMの少なくとも1つの固定値にほぼ等しくなるように、自動的に調整される。一実装形態では固定値入力信号214は、少なくとも3つの入力ラインを備える。少なくとも3つの入力ラインにより、固定値ワードの少なくとも8通りの可能な組合せ(すなわち、RTERMの固定値の少なくとも8つの異なる選択肢)が得られる。
【0013】
図3は、電子デバイス内の少なくとも1つの終端回路を構成するための方法300を示す流れ図である。方法300の具体的な実施形態について、図1の電子回路100、および図2のATC104に関連して説明する(しかし、他の実施形態は、他の方法で実装される)。このような一実施形態の一実装形態では、方法300の処理の少なくとも一部分は、バイアス調整回路206によって行われる。方法300の主な機能は、モード入力信号218によって指示されるように、RTERMの値を自動的に調整することである。
【0014】
一実装形態では、方法300は、イネーブル入力信号212に基づいて、ATC104の現在の状態を確定する(ブロック302)。ATC104がイネーブルでない場合は、可変終端抵抗デバイス202は、ブロック306でバイパスモードとなる。一実装形態では、可変終端抵抗デバイス202のFETは完全にターンオンされ、それによりRTERMはほぼ0オームに等しくなる。ATC104がイネーブルである場合は、方法300は、次いでATC104の自動モードがイネーブルされているかどうかを決定する(ブロック304)。自動モードがイネーブルされている場合は、方法300は、トリガ事象を待つ(ブロック310)。トリガ入力信号216がアクティブでありイネーブルされている場合は、方法300はブロック314で続行する。ブロック314では、VPORCH(またはそれを示す、ある値)が、バイアス調整回路206によって評価される。ブロック316では、可変終端抵抗デバイス202は、トリガ入力信号216がアクティブである間、VPORCHが信号入力ライン220上にある論理IN信号のほぼ半分になるまで、RTERMを自動的に調整する。一実装形態ではバイアス調整回路206は、駆動強度インピーダンスR+RTERMが、TLINE222の負荷ポイント・インピーダンスZにほぼ整合するまで、RTERMを自動的に調整する。自動モードはイネーブルされているが、トリガ入力信号216がアクティブでない場合は、RTERMは、その前の値を保持する。ブロック304で自動モードが選択されなかった場合は、ブロック308で、固定値入力信号214から固定値が読み出される。ブロック312では、ATC104はコマンドモードにあり、バイアス調整回路206は、固定値入力信号214から読み出された固定値に基づいて、可変終端抵抗デバイス202のRTERM値を調整する。
【0015】
上述のように図1〜3はそれぞれ、電子回路100の一実施形態、ATC104、および少なくとも1つの関連する方法300を説明している。他の実施形態は、他の方法で実装されることを理解されたい。図1〜3に示されるATC104は、多種多様な応用例に適合することができる。たとえば、図4は、電子回路100の代替実施形態である電子回路400のブロック図である。図4に示される電子回路400の実施形態は、3つ以上のATC404、3つ以上の負荷ポイント410、および3つ以上のTLINE412を含む。3つのATC404は図4では、それぞれATC404、404・・・404として個々に参照される。3つの負荷ポイント410は図4では、それぞれ負荷ポイント410(負荷ポイント1)、410(負荷ポイント2)・・・410(負荷ポイントN)として個々に参照される。3つのTLINE412は図4では、それぞれTLINE412、TLINE412・・・TLINE412として個々に参照される。電子回路400は、任意の適当な数のATC404、負荷ポイント410、およびTLINE412(たとえば、少なくとも3つのATC404、少なくとも3つの負荷ポイント410、および少なくとも3つのTLINE412)を、単一の電子回路400内に収容できることを理解されたい。
【0016】
図4に示される実施形態では、電子回路400は、論理デバイス402をさらに備える。論理デバイス402は、デバイスマネージャ406、および3つ以上のデータ信号源408〜408を含む。電子回路100と同様に、デバイスマネージャ406は、論理デバイス402の構成および制御を受け持つ。3つ以上のデータ信号源408〜408のそれぞれは、ATC404〜404のそれぞれに対する少なくとも1つのデータ供給源を維持する。ATC404〜404のそれぞれは、それぞれTLINE412〜TLINE412によって、負荷ポイント410〜410のそれぞれに結合される。
【0017】
以上の説明は、例示を目的として述べたものであり、網羅的であることまたは開示された形に限定されることを意図したものではない。変形および修正が可能であり、それらは添付の特許請求の範囲に記載される上述の実施形態の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】少なくとも1つの自動終端回路を組み込んだ電子回路の一実施形態のブロック図である。
【図2】自動終端回路の一実施形態のブロック図である。
【図3】電子デバイス内に少なくとも1つの終端回路を構成するための一実施形態の方法を示す流れ図である。
【図4】少なくとも1つの自動終端回路を組み込んだ電子回路の代替実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
【0019】
100 電子回路
102 論理デバイス
104 自動終端回路
106 デバイスマネージャ
108 データ信号源
110 負荷ポイント
112 伝送線路
200 ATC 104の一実施形態
202 可変終端抵抗デバイス
204 出力バッファ
206 バイアス調整回路
208 構成ロジックブロック
210 帰還ロジックブロック
212 イネーブル入力信号
214 固定値入力信号
216 トリガ入力信号
218 モード入力信号
220 論理入力信号
222 伝送線路
300 方法
302、304、306、308、310、312、314、316 ブロック
400 電子回路
402 論理デバイス
404、404、404 ATC
406 デバイスマネージャ
408、408、408 データ信号源
410、410、410 負荷ポイント
412、412、412 伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号源(108)と、
前記データ信号源に接続された自動終端回路(104)と、
前記自動終端回路の出力を伝送線路に接続するための出力端子(202)と
を備えたデバイス(102)であって、
前記自動終端回路は、付随する終端抵抗を有する可変終端抵抗デバイスを備え、
前記自動終端回路は、帰還を用いて前記可変終端抵抗デバイスに付随する前記終端抵抗を自動的に調整するように動作可能であり、前記帰還は少なくとも前記出力端子での出力電圧に基づく、デバイス。
【請求項2】
前記自動終端回路と通信可能に結合されたデバイスマネージャ(106)をさらに備え、前記デバイスマネージャは、前記自動終端回路の動作を制御するように動作可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記自動終端回路は複数の動作モードをサポートし、前記複数の動作モードの1つでは、前記自動終端回路は、前記帰還を用いて前記可変終端抵抗デバイスに付随する前記終端抵抗を自動的に調整する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数の動作モードの1つでは、前記自動終端回路は、前記終端抵抗を固定抵抗値に設定する、請求項3に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−42901(P2008−42901A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−186454(P2007−186454)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】