説明

自動製パン器

【課題】穀物粒からパンを製造できる自動製パン器であって、ユーザにとって使い勝手がよい自動製パン器を提供する。
【解決手段】自動製パン器は、穀物粒を粉砕する粉砕手段54、60と、穀物粒を粉砕した後に自動投入される粉体パン原料を収納するパン原料収納容器80と、を備える。穀物粒からパンを焼き上げる場合に、予めパン原料収納容器80に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)を収納しておくことにより、穀物粒を粉砕した後に、例えばグルテンやドライイースト等の粉体パン原料を自動投入できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内のパン原料を混練ブレードで混練して練り上げ(練り工程)、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる(焼成工程)仕組みのものが一般的である。
【0003】
このような自動製パン器の中には、レーズン、ナッツ類、チーズ等の具入りパンを焼き上げることができるように具材容器を備えたものがある(例えば特許文献1〜3参照)。そして、このような自動製パン器においては、例えばプログラム制御により、練り工程時に具材容器に入った具材がパン容器に自動的に投入されるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3191645号公報
【特許文献2】特開2006−255071号公報
【特許文献3】特開2008−279034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来においては、自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これをパン原料として用いてパンを製造していた。しかしながら、一般家庭においては米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物を所持していることがある。このために、自動製パン器を用いて穀物粒から直接パンを製造することができれば非常に便利である。このようなことから、本出願人らは、鋭意研究の末、穀物粒を原料としてパンを製造する方法を発明している。なお、これについては、先に特許出願を行っている(特願2008−201507)。
【0006】
ここで、先に出願したパンの製造方法について紹介する。このパンの製造方法では、まず、穀物粒を液体と混合し、この混合物を粉砕ブレードによって粉砕する(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉に例えばグルテンやイースト等を加えて生地に練り上げ(練り工程)、生地を発酵(発酵工程)させた後、パンに焼き上げる(焼成工程)。
【0007】
上記製造工程が適用される自動製パン器においては、粉砕工程で穀物粒を粉砕した後に、例えばグルテンやドライイースト等の粉体パン原料をパン容器に投入する必要がある。このため、自動製パン器の構成として、例えばブザー音等を用いてユーザにグルテン等の粉体パン原料の投入タイミングを報知し、ユーザ自身がグルテン等の粉体パン原料を投入する構成を採用することが考えられる。しかし、このような構成の自動製パン器では、前述の投入タイミングになるまでユーザは機器の側に居なければならず非常に不便である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、穀物粒からパンを製造できる自動製パン器であって、ユーザにとって使い勝手がよい自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、穀物粒を粉砕する粉砕手段を備え、穀物粒からパンを製造可能な自動製パン器であって、前記粉砕手段で穀物粒を粉砕した後に、粉体パン原料が、穀物粒の粉砕粉が含まれるパン容器に自動投入されることを特徴としている。
【0010】
本構成によれば、穀物粒からパンを焼き上げる場合に、穀物粒を粉砕した後に、例えばグルテンやドライイースト等の粉体パン原料を自動投入することができる。このために、本構成の自動製パン器によれば、ユーザ自身が粉体パン原料を投入する必要がなく、ユーザにとって使い勝手がよい。
【0011】
また、上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、穀物粒からパンを製造可能な自動製パン器であって、穀物粒を粉砕手段で粉砕した後に自動投入される粉体パン原料を収納するパン原料収納容器を備えることを特徴としている。
【0012】
本構成によれば、穀物粒からパンを焼き上げる場合に、予めパン原料収納容器に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)を収納しておくことにより、穀物粒を粉砕した後に、例えばグルテンやドライイースト等の粉体パン原料を自動投入することができる。このために、本構成の自動製パン器はユーザにとって使い勝手がよい。
【0013】
上記構成の自動製パン器において、穀物粒からパンを製造する際に行われる製造工程には、穀物粒を液体と混合して前記粉砕手段で粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程によって得られた粉砕粉を含むパン原料をパン生地に練り上げる練り工程と、が含まれ、前記粉体パン原料は、前記練り工程の初期段階で自動投入されることとしてもよい。
【0014】
上記構成の自動製パン器において、前記粉体パン原料にドライイーストが含まれることとしてもよい。
【0015】
上記構成の自動製パン器において、前記粉体パン原料にグルテン、小麦粉、グアガムのうちのいずれか1つが含まれることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、穀物粒からパンを製造できる自動製パン器であって、ユーザにとって使い勝手がよい自動製パン器を提供できる。このため、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の自動製パン器の垂直断面図
【図2】図1に示す本実施形態の自動製パン器を図1と直角の方向に切断した一部垂直断面図
【図3】本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略斜視図
【図4】本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略平面図
【図5】混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合のパン容器の上面図
【図6】混練ブレードが開き姿勢にある場合のパン容器の上面図
【図7】混練ブレードが開き姿勢にある場合のクラッチの状態を示す概略平面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図
【図9】図8のA−A位置における概略断面図
【図10】本実施形態の自動製パン器の制御ブロック図
【図11】本実施形態の自動製パン器における米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【図12】ソレノイドによってパン原料収納容器のロック状態が解除される様子を説明するための図
【図13】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
【0019】
図1は、本実施形態の自動製パン器の垂直断面図である。図2は、図1に示す本実施形態の自動製パン器を図1と直角の方向に切断した一部垂直断面図である。図3は、本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略斜視図で、斜め下方から見た場合の図である。図4は、本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略平面図で、下から見た図である。図5は、混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合のパン容器の上面図である。図6は、混練ブレードが開き姿勢にある場合のパン容器の上面図である。以下、主に図1から図6を参照しながら、本実施形態の自動製パン器1の構成について説明する。
【0020】
なお、以下においては、図1における左側が自動製パン器1の正面(前面)、右側が自動製パン器1の背面(後面)とする。また、自動製パン器1に正面から向き合った観察者の左手側が自動製パン器1の左側、右手側が自動製パン器1の右側であるものとする。
【0021】
自動製パン器1は、合成樹脂製の外殻により構成される箱形の本体10を有する。本体10には、その左側面と右側面の両端に連結したコの字状の合成樹脂製ハンドル11が設けられ、これにより運搬容易となっている。本体10の上面前部には操作部20が設けられる。操作部20には、図示は省略するが、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒からパンを製造するコース、米粉からパンを製造するコース、小麦粉からパンを製造するコース等)を選択する選択キー等の操作キー群と、操作キー群によって設定された内容やエラー等を表示する表示部が設けられている。なお、表示部は、例えば、液晶表示パネルと、発光ダイオードを光源とする表示ランプとによって構成される。
【0022】
操作部20から後ろの本体上面は、合成樹脂製の蓋30で覆われる。蓋30は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として垂直面内で回動する構成となっている。なお、図示しないが、蓋30には耐熱ガラスからなる覗き窓が設けられており、後述の焼成室40を覗けるようになっている。
【0023】
本体10の内部には、平面形状略矩形の焼成室40が設けられている。焼成室40は板金製で、上面が開口しており、ここからパン容器50が入れられる。焼成室40は水平断面略矩形の周側壁40aと底壁40bとを備える。焼成室40の内部には、シーズヒータ41が焼成室40に収容されたパン容器50を包囲するように配置され、パン容器50内のパン原料を加熱できるようになっている。なお、シーズヒータ41は、加熱手段の実施形態である。
【0024】
また、本体10の内部には板金製の基台12が設置されている。基台12には、焼成室40の中心にあたる箇所に、アルミニウム合金のダイキャスト成型品からなるパン容器支持部13が固定されている。パン容器支持部13の内部は焼成室40の内部に露出している。
【0025】
パン容器支持部13の中心には原動軸14が垂直に支持されている。原動軸14に回転を与えるのはプーリ15、16である。なお、プーリ15と原動軸14の間にはクラッチが配置されていて、プーリ15を一方向に回転させて原動軸14に回転を伝える時、原動軸14の回転はプーリ16に伝わらず、プーリ16をプーリ15とは逆方向に回転させて原動軸14に回転を伝える時、原動軸14の回転はプーリ15には伝わらない仕組みになっている。
【0026】
プーリ15を回転させるのは、基台12に固定された混練モータ60である。混練モータ60は竪軸であって、下面から出力軸61が突出する。出力軸61には、プーリ15にベルト63で連結されるプーリ62が固定されている。混練モータ60自身が低速・高トルクタイプであり、その上、プーリ62がプーリ15を減速回転させるので、原動軸14は低速・高トルクで回転する。
【0027】
プーリ16を回転させるのは同じく基台12に支持された粉砕モータ64である。粉砕モータ64も竪軸であって、上面から出力軸65が突出する。出力軸65には、プーリ16にベルト67で連結されるプーリ66が固定されている。粉砕モータ64は、後述する粉砕ブレードに高速回転を与える役割を担う。そのため、粉砕モータ64には高速回転のものが選定され、プーリ66とプーリ16の減速比はほぼ1:1になるように設定されている。
【0028】
パン容器50は板金製で、バケツのような形状をしており、口縁部には手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器50の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器50の底部には、詳細は後述する粉砕ブレード54とカバー70を収容する凹部55が形成されている。凹部55は平面形状円形で、カバー70の外周部と凹部55の内面の間には、パン原料の流動を可能とする隙間56が設けられている。また、パン容器50の底面には、アルミニウム合金のダイキャスト成型品である筒状の台座51が設けられている。パン容器50は、この台座51がパン容器支持部13に受け入れられた状態で、焼成室40内に配置されるようになっている。
【0029】
パン容器50の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸52が、シール対策が施された状態で支持されている。ブレード回転軸52には、原動軸14よりカップリング53を介して回転力が伝えられる。カップリング53を構成する2部材のうち、一方の部材はブレード回転軸52の下端に固定され、他の部材は原動軸14の上端に固定されている。カップリング53の全体は、台座51とパン容器支持部13に囲い込まれる。
【0030】
パン容器支持部13の内周面と台座51の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。詳細には、パン容器50をパン容器支持部13に取り付ける際、台座51の突起がパン容器支持部13の突起に干渉しないようにしてパン容器50を下ろす。そして、台座51がパン容器支持部13に嵌り込んだ後、パン容器50を水平にひねると、パン容器支持部13の突起の下面に台座51の突起が係合する。これにより、パン容器50が上方に抜けなくなる。また、この操作で、カップリング53の連結も同時に達成される。
【0031】
ブレード回転軸52には、パン容器50の底部より少し上の箇所に、粉砕ブレード54が取り付けられている。粉砕ブレード54は、ブレード回転軸52に対して回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード54は、ステンレス鋼板製であり、図3及び図4に示すように、飛行機のプロペラのような形状(この形状はあくまでも一例である)を有している。粉砕ブレード54は、ブレード回転軸52から引き抜いて取り外せるようになっており、製パン作業終了後の洗浄や、切れ味が悪くなった時の交換を手軽に行うことができる。なお、この粉砕ブレード54は、粉砕モータ64と共に、本発明の粉砕手段の実施形態である。
【0032】
ブレード回転軸52の上端には、平面形状円形のドーム状カバー70が取り付けられている。カバー70は、アルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、粉砕ブレード54のハブ54a(図2及び図3参照)によって受け止められ、粉砕ブレード54を覆い隠す。このカバー70もブレード回転軸52から簡単に引き抜くことができるので、製パン作業終了後の洗浄を手軽に行うことができる。
【0033】
カバー70の上部外面には、ブレード回転軸52から離れた箇所に配置された垂直方向に延びる支軸71により、平面形状くの字形の混練ブレード72が取り付けられている。混練ブレード72はアルミニウム合金のダイキャスト成型品である。支軸71は、混練ブレード72に固定ないし一体化されており、混練ブレード72と動きを共にする。
【0034】
混練ブレード72は、支軸71を中心として水平面内で回動し、図5に示す折り畳み姿勢と、図6に示す開き姿勢とをとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード72はカバー70に形成したストッパ部73に当接しており、それ以上カバー70に対し時計方向の回動を行うことができない。混練ブレード72の先端は、この時、カバー70から少し突き出している。開き姿勢では、混練ブレード72の先端はストッパ部73から離れ、混練ブレード72の先端はカバー70から大きく突き出す。
【0035】
なお、混練ブレード72は、混練モータ60と共に、混練手段の実施形態である。また、カバー70には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓74と、各窓74に対応して内面側に設けられて粉砕ブレード54によって粉砕された粉砕物を窓74の方向に誘導するリブ75と、が形成されている。この構成により、粉砕ブレード54を用いた粉砕の効率が高められている。
【0036】
カバー70とブレード回転軸52の間には、図4に示すようにクラッチ76が介在する。クラッチ76は、混練モータ60が原動軸14を回転させるときのブレード回転軸52の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする)において、ブレード回転軸52とカバー70を連結する。逆に、粉砕モータ64が原動軸14を回転させるときのブレード回転軸52の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする)では、クラッチ76はブレード回転軸52とカバー70の連結を切り離す。なお、図5及び図6では、前記「正方向回転」は反時計方向回転となり、前記「逆方向回転」は時計方向回転となる。
【0037】
クラッチ76は、混練ブレード72の姿勢に応じて連結状態を切り換える。すなわち、混練ブレード72が図5に示す折り畳み姿勢にある場合は、図4に示すように、第2係合体76bは第1係合体76aの回転軌道に干渉しており、ブレード回転軸52が正方向回転すると、第1係合体76aと第2係合体76bは係合し、ブレード回転軸52の回転力がカバー70及び混練ブレード72に伝達される。一方、混練ブレード72が図6に示す開き姿勢にある場合には、図7に示すように、第2係合体76bは第1係合体76aの回転軌道から逸脱した状態にあり、ブレード回転軸52が逆方向回転しても、第1係合体76aと第2係合体76bは係合しない。従って、ブレード回転軸52の回転力はカバー70及び混練ブレード72に伝達されない。なお、図7は、混練ブレードが開き姿勢にある場合のクラッチの状態を示す概略平面図である。
【0038】
図1及び図2に戻って、本実施形態の自動製パン器1は、蓋30に取り付けられるパン原料収納容器80を備える。なお、本実施形態ではパン原料収納容器80を蓋30に取り付ける構成としているが、場合によっては本体10に取り付ける構成としても構わない。このパン原料収納容器80は、パンを焼き上げる製パンコースの実行途中で、一部のパン原料をパン容器50に自動投入できるように設けられた容器である。以下、図8及び図9を参照して、このパン原料収納容器80の構成について説明する。なお、図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図である。図9は、図8のA−A位置における概略断面図である。
【0039】
図8及び図9に示すように、パン原料収納容器80は、大きくは、容器本体81と、容器本体81が有する開口部81aの開閉が可能な蓋体82と、を備えている。
【0040】
容器本体81は、その断面形状が略台形状の箱形部材であり、詳細には、容器本体81を構成する側壁と底壁(図8及び図9では底壁が上となる姿勢を示している)とが連結される部分、及び、側壁同士が連結される部分は丸みを帯びた状態となっている。このため、容器本体81の内面側において、側面と底面、及び、側面同士は急激に折れ曲がることなく緩やかに連続している。容器本体81の開口部81aの平面形状は、四隅を丸めた略長方形状となっている。容器本体81には、図9に示すように、開口部81aの側縁から外向きに突出する鍔部(フランジ部)81bが形成されている。この鍔部81bの平面形状は、四隅を丸めた額縁状となっている。
【0041】
このように構成される容器本体81は例えばアルミニウムや鉄等の金属(合金を含む)によって形成され、その厚みは例えば1.0mm程度とされる。また、容器本体81の内面には、図9の拡大図のように、シリコンやフッ素等からなるコーティング層83が設けられている。なお、容器本体81を構成する金属は、それに限定される趣旨ではないが、容器本体81を形成しやすい等の理由からアルミニウムを用いて形成するのが好ましい。また、容器本体81の内面に設けるコーティング層83については、それに限定される趣旨ではないが、シリコンを用いて形成するのが好ましい。
【0042】
上述のようにパン原料収納容器80は、一部のパン原料をパン容器50に自動投入するために使用される。このために、パン原料収納容器80は、収容したパン原料をできる限り容器内に残すことなくパン容器50に投入できるように構成する必要がある。パン原料収納容器80には、具体的には例えばグルテンやドライイースト等の粉体が収納される。グルテン等の粉体は容器本体81に付着しやすいため、容器本体81の構成として、グルテン等の粉体が付着し難いように構成する必要がある。
【0043】
このような点を考慮して、容器本体81は静電気を帯びやすい樹脂ではなく、アルミニウム等の金属製とするのが好ましい。そして、単に容器本体81を金属製とするよりも、本実施形態のようにシリコンやフッ素等のコーティング層83を設けて粉体の滑り性を良くするのが好ましい。なお、コーティング層83は、例えば容器本体81の内面に焼き付けによって形成される。コーティング層83としてフッ素を用いる場合、シリコンを用いる場合よりも焼き付けの温度が高くなる(例えば、フッ素を用いる場合300℃程度、シリコンを用いる場合200℃程度)。アルミニウムを用いて容器本体81を形成する場合には、コーティング層83としてフッ素を用いると焼き付け時の温度が高すぎて、容器本体81の強度が低下する。このため、アルミニウムを用いて容器本体81を構成する場合、コーティング層83としてはシリコンを用いるのが好ましい。
【0044】
また、グルテン等の粉体が付着し難いように構成する要請から、容器本体81の内面にはリベットやネジ等の突起物が設けられず、容器本体81の内面は凹凸部が形成されない滑らかな面となっている。なお、上述のように、容器本体81は、その側面と底面、及び、側面同士が急激に折れ曲がることなく緩やかに連続するように構成しているが、これも、グルテン等の粉体が付着し難いようにするためである。
【0045】
図9に示すように、容器本体81の鍔部81bには例えばシリコン製のパッキン84が固定されている。なお、このシリコン製のパッキン84は、シール部材の実施形態である。パッキン84の外観は、平面形状略額縁状となっている。そして、図9に示すように、パッキン84は、鍔部81bを上下から挟むように容器本体81に取り付けられる断面コの字状の取付部84aと、取付部84aの下方から突出すると共に開口部81aに向かう方向とは逆向きに向かうように折り返される薄肉の弾性部84bと、を有する構成となっている。パッキン84は、コの字状の取付部84aを覆うように配置されて鍔部81bと共にパッキン84を挟持するカバー部材85によって、容器本体81に固定されている。カバー部材85の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフィラーが分散されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等が挙げられる。
【0046】
平面形状略額縁状に形成されるカバー部材85の2つの長辺の一方の両端部には、平板状の金属プレートからなる蓋体82を回動可能に支持する蓋体支持部85a(図8及び図9参照)が形成されている。平面形状略長方形状の蓋体82の2つの長辺の一方の両端部には、蓋体支持部85aから突出する係合突起851(図9参照)と係合する係合部82a(図9参照)が設けられている。すなわち、蓋体82は、係合突起851を中心として回動可能な状態(図9において、蓋体82は紙面内で回動する)でカバー部材85に支持されている。
【0047】
また、カバー部材85の蓋体支持部85aが形成されていない方の長辺の略中央部には、クランプフック86(ロック部材の実施形態)を回動可能に支持するクランプフック支持部85bが設けられている。クランプフック支持部85bは、容器本体81の深さ方向と略平行な方向(図9の上下方向)に延びる溝形状となっている。このクランプフック支持部85bには、対向する2つの側壁によって両端が固定されるようにシャフト852が取り付けられており、このシャフト852にクランプフック86が回動可能な状態で支持されている。また、図9に示すように、溝形状に設けられるクランプフック支持部85bのシャフト852より上部側の底面には、クランプフック86を外向き(図9では左向き)に付勢するバネ853が取り付けられている。
【0048】
これにより、一方の先端側(図9では下側)がフック状に設けられるクランプフック86は、その一部を蓋体82の外面(下面)に当接させて蓋体82を支持し、蓋体82が容器本体81の開口部81aを閉じた状態(図8及び図9に示す状態、ロック状態に該当する)を維持することが可能になっている。なお、蓋体82は、容器本体81の開口部81aを閉じた状態において、その外周部が容器本体81の鍔部81bと重なった状態となり、開口部81aを完全に覆う。
【0049】
また、クランプフック86の他方の先端側(図9では上側)を外部から容器本体81側(図9の右側)に向けて押圧することにより、クランプフック86によるロック状態が解除(クランプフック86による蓋体82の支持が解除)され、蓋体82を回動させて開口部81aを開いた状態とできる。
【0050】
なお、本実施形態における、クランプフック86、クランプフック支持部85b、シャフト852、及びバネ853は、ロック機構の実施形態である。また、カバー部材85には、パン原料収納容器80を自動製パン器1の蓋30に固定するための取付部(図示せず)も形成されている。
【0051】
また、平板状の金属プレート(例えば厚み1.0mm程度)からなる蓋体82は、容器本体81と同様にアルミニウムで形成するのが好ましく、また、その内面(図9の上面)には、図9の拡大図のように、シリコン等からなるコーティング層83を形成するのが好ましい。
【0052】
また、ロック機構を用いて蓋体82が容器本体81の開口部81aを閉じた状態(図8及び図9に示す状態)となっている場合においては、パッキン84の弾性部84bは蓋体82の内面(図9において上面)に常に当接する。従って、蓋体82が開口部81bを閉じた状態において、パッキン84によって容器本体81の鍔部81bと蓋体82との間はシールされ、容器本体81内に外部から水分や埃等が入り込み難くなっている。
【0053】
また、容器本体81の鍔部81bに固定されるパッキン84は、図9に示すように、開口部81aにはみ出さないように設けられている。これは、パッキン84が、開口部81aへとはみ出していると、パン原料収納容器80に収納されたパン原料がパッキン84に引っ掛かってパン原料収納容器80内に残り、パン原料の投入量が不適切となってしまうことがあることを考慮するものである。また、パッキン84を蓋体82側に固定すると、パン原料収納容器80からパン容器50にパン原料を投入する際に、パン原料がパッキン84に引っ掛かってパン原料の投入量が不適切となるので、パッキン84は容器本体81側に固定されている。
【0054】
図10は、本実施形態の自動製パン器の制御ブロック図である。図10に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置90によって行われる。制御装置90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置90は、焼成室40の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置90には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。この制御装置90は制御手段の実施形態である。
【0055】
制御装置90には、上述の操作部20と、温度センサ18と、ソレノイド駆動回路91と、粉砕モータ駆動回路92と、混練モータ駆動回路93と、ヒータ駆動回路94と、が電気的に接続されている。温度センサ18は、焼成室40の温度を検知できるように設けられるセンサである。
【0056】
ソレノイド駆動回路91は、制御装置90からの指令の下でソレノイド19の駆動を制御する回路である。ソレノイド19は、上述のパン原料収納容器80が備えるロック機構を解除するために設けられ、例えば自動製パン器1の蓋30に取り付けられている。ただし、ソレノイド19は場合によっては、本体10に取り付けてもよい。ソレノイド19が駆動されると、プランジャーのハウジングからの突出量が増大する。そして、このプランジャー、或いは、このプランジャーに押圧されて可動する可動部材によってロック機構を構成するクランプフック86が押圧され、ロック機構のロック状態が解除されるようになっている。なお、ソレノイド19は、ロック解除手段の実施形態である。
【0057】
粉砕モータ駆動回路92は、制御装置90からの指令の下で粉砕モータ64の駆動を制御する回路である。また、混練モータ駆動回路93は、制御装置90からの指令の下で混練モータ60の駆動を制御する回路である。ヒータ駆動回路94は、制御装置90からの指令の下でシーズヒータ41の動作を制御する回路である。
【0058】
制御装置90は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、ソレノイド駆動回路91を介してソレノイド19の駆動、粉砕モータ駆動回路92を介して粉砕ブレード54の回転、混練モータ駆動回路93を介して混練ブレード72の回転、ヒータ駆動回路94を介してシーズヒータ41による加熱動作を制御しながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
【0059】
次に、以上のように構成される本実施形態の自動製パン器1によって、米粒(穀物粒の一形態)からパンを製造する(焼き上げる)製パンコース(米粒用製パンコース)を実行する場合の動作を説明する。なお、本実施形態の自動製パン器1は、小麦粉や米粉をパン原料としてパンを焼き上げる製パンコースも実行可能に設けられているが、本発明は、穀物粒(米粒)を粉砕した後に、残りのパン原料を自動投入する仕組みに特徴を有する。このため、米粒用製パンコースを実行する場合の動作に絞って説明する。
【0060】
図11は、本実施形態の自動製パン器における米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図11に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0061】
米粒用製パンコースを実行するにあたって、ユーザは、パン容器50に、粉砕ブレード54と混練ブレード72付きのカバー70とを取り付ける。そして、ユーザは、米粒と水をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器50に入れる。なお、ここでは、米粒と水とを混ぜることにしているが、単なる水の代わりに、例えば、だし汁のような味成分を有する液体、果汁、アルコールを含有する液体等としてもよい。
【0062】
また、ユーザは、米粒と水以外のパン原料(通常複数ある)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン原料収納容器80の容器本体81に入れる。そして、収納するべきパン原料を容器本体81に収納したら、蓋体82を容器本体81の開口部81aが閉じられた状態となるように配置し、クランプフック86によって蓋体82を支えてロック状態とする。
【0063】
なお、パン原料収納容器80に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイースト、食塩、砂糖、ショートニング等が挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉や増粘剤(グアガム等)をパン原料収納容器80に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤は用いずに、例えばドライイースト、食塩、砂糖、ショートニングをパン原料収納容器80に収納するようにしてもよい。また、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングを米粒と共にパン容器50に投入し、パン原料収納容器80には例えばグルテン、ドライイーストのみを収納するようにしてもよい。
【0064】
この後、ユーザは、米粒と水とを投入したパン容器50を焼成室40に入れ、更に、パン原料収納容器80を所定の位置に取り付けて蓋30を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、米粒からパンを製造する米粒用製パンコースが開始される。
【0065】
なお、パン原料収納容器80は、開口部81aが開かれた状態において、開口部81aの少なくとも一部がパン容器50の開口と対向するように配置される。開口部81aの一部だけがパン容器50の開口と対向する構成の場合には、パン原料が漏れなくパン容器50に投入されるように工夫する必要がある。このような工夫として、例えば、ロック状態が解除されて回動した蓋体82が斜めになった状態でパン容器50の縁と当接するようにパン原料収納容器80を構成し、パン原料が蓋体82上を滑りながらパン容器50内に投入されるようにすること等が挙げられる。
【0066】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置90の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、米粒と水との混合物が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では50分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0067】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制できる。また、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程時にシーズヒータ41に通電して焼成室40の温度を高めるようにしてもよい。
【0068】
また、浸漬工程においては、その初期段階で粉砕ブレード54を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレード54を回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0069】
上記所定時間が経過すると、制御装置90の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード54が高速回転される。具体的には、制御装置90は、粉砕モータ64を制御してブレード回転軸52を逆方向回転させ、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード54の回転を開始させる。なお、この際、カバー70もブレード回転軸52の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってカバー70の回転はすぐに阻止される。
【0070】
粉砕ブレード54を回転させるためのブレード回転軸52の回転に伴うカバー70の回転方向は、図5において時計方向であり、混練ブレード72は、それまで折り畳み姿勢(図5に示す姿勢)であった場合には、米粒と水の混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図6に示す姿勢)に転じる。混練ブレード72が開き姿勢になると、図7に示すように、クラッチ76は、第2係合体76bが第1係合体76aの回転軌道から逸脱するために、ブレード回転軸52とカバー70の連結を切り離す。同時に、開き姿勢になった混練ブレード72は図6に示すようにパン容器50の内側壁に当るために、カバー70の回転は阻止される。
【0071】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード54の回転は間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード54の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器50内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0072】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了を、粉砕時の粉砕モータ64の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断する構成等としても構わない。
【0073】
ところで、この粉砕工程は米粒を粉砕する際の米粒と粉砕ブレード54との摩擦によって熱が生じ、パン容器50内の水分が蒸発しやすくなる。この場合、パン容器50の上部に配置されるパン原料収納容器80に水分が浸入して、後述するパン原料の自動投入の際にパン原料がパン原料収納容器80に付着し、パン原料収納容器80から落ち難くなることが心配される。しかし、パン原料収納容器80は、パッキン84によって水分が浸入し難くなっているために、このようなパン原料の容器への付着を抑制できるようになっている。
【0074】
粉砕工程が終了すると、制御装置90の指令によって練り工程が開始される。なお、この練り工程は、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で行う必要がある。このため、所定の温度範囲となった時点で練り工程を開始するようにしてもよい。
【0075】
練り工程が開始されると、制御装置90は混練モータ60を制御してブレード回転軸52を正方向回転させる。このブレード回転軸52の正方向回転に追随してカバー70が正方向(図6においては反時計方向)に回転すると、パン容器50内のパン原料(この段階では米粒の粉砕粉と水との混合物)からの抵抗を受けて混練ブレード72が開き姿勢(図6参照)から折り畳み姿勢(図5参照)に転じる。これを受けてクラッチ76は、図4に示すように、第2係合体76bが第1係合体76aの回転軌道に干渉する角度となり、ブレード回転軸52とカバー70を連結する。これにより、カバー70と混練ブレード72は、ブレード回転軸52と一体となって正方向に回転する。なお、混練ブレード72の回転は低速・高トルクとされる。
【0076】
混練ブレード72の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置90によって制御される。混練ブレード72の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置90はソレノイド19を駆動させて、パン原料収納容器80が備えるロック機構のロックを解除させ、例えば、グルテン、ドライイースト、食塩、砂糖、ショートニングといったパン原料をパン容器50内に自動投入する。
【0077】
図12は、ソレノイドによってパン原料収納容器のロック状態が解除される様子を説明するための図で、図12(a)はパン原料収納容器がロック状態である場合の図、図12(b)はパン原料収納容器のロック状態が解除された場合の図である。図12に示すように、制御装置90からの指令によってソレノイド19が駆動されると、ソレノイド19のプランジャー19aによってクランプフック86の上部が押圧され、クランプフック86がシャフト852を中心として矢印B方向に回動する。これにより、クランプフック86と蓋体82との係合が外れて蓋体82が矢印C方向に回動する。蓋体82が回動すると、容器本体81の開口部81aが開放されるために、パン原料がパン原料収納容器80の下にあるパン容器50に落下する。
【0078】
なお、開口部81aを開いた後の蓋体82の位置は、後に行われる発酵工程において、パン生地と接触しない位置となるように構成するのが好ましい。
【0079】
上述のように、パン原料収納容器80は、容器本体81及び蓋体82の内部にコーティング層83が設けられて滑り性がよくなっており、また、内部に凹凸部が設けられないように工夫されている。更に、パッキン84の配置方法の工夫により、パン原料がパッキン84に引っ掛かるという事態も抑制されている。このために、パン原料収納容器80には、パン原料がほとんど残らない。
【0080】
なお、上記のような工夫をしても、パン原料がパン原料収納容器80内に付着して残る場合もあり得る。このために、ソレノイド19を断続的に駆動してクランプフック86をノックし(クランプフック86に衝撃を加え)、パン原料収納容器80に振動を与えて、容器に残留したパン原料を落とすようにしてもよい。ソレノイド19を駆動するタイミングは、クランプフック86の上部がバネ853の付勢力によってソレノイド19側に近づいてくるタイミングとなるようにするのが好ましい。
【0081】
また、本実施形態では、パン原料収納容器80に収納されるパン原料を、混練ブレード72が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード72が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード72を回転した状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散させやすく好ましい。
【0082】
パン原料収納容器80に収納されたパン原料がパン容器50に投入された後は、混練ブレード72の回転によってパン容器50内のパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード72が生地を振り回してパン容器50の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード72の回転によりカバー70も回転する。カバー70が回転すると、カバー70に形成されるリブ75も回転するために、カバー70内のパン原料は速やかに窓74から排出され、混練ブレード72が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0083】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(例えば10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断する構成等としても構わない。
【0084】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中でユーザの手によって投入するようにすればよい。
【0085】
練り工程が終了すると、制御装置90の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置90はシーズヒータ41を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)にする。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0086】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード72を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0087】
発酵工程が終了すると、制御装置90の指令によって焼成工程が開始される。制御装置90は、シーズヒータ41を制御して、焼成室40の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼く。焼成工程の終了については、例えば操作部20の図示しない液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋30を開けてパン容器50を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0088】
ところで、本実施形態の自動製パン器では、その蓋30に、容器本体81及び蓋体82が金属で形成されるパン原料収納容器80が配置される構成となっている。このため、焼成工程時において、熱がパン原料収納容器80によって反射されやすく、パンの天面等における焼きムラの発生を防ぐことができる。
【0089】
以上のように、本実施形態の自動製パン器1によれば、米粒からパンを焼き上げることが可能であるために、非常に便利である。そして、米粒の粉砕後に投入される例えばグルテンやドライイースト等のパン原料を、自動的に正確に投入できるのでユーザにとって使い勝手がよい。
【0090】
なお、以上に示した自動製パン器は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0091】
例えば、以上に示した実施形態のパン原料収納容器80について、図13に示すような構成としても構わない。図13に示す変形例においては、パン原料収納容器80が有するカバー部材85が、容器本体81の外面側全体を覆うように設けられる構成となっているなお、図13では、カバー部材85に設けられる支持部等は省略して示している。
【0092】
そして、カバー部材85と容器本体81との間には所定幅の隙間(空気層)87が設けられる構成となっている。このようにパン原料収納容器80を構成する場合、断熱効果によってパン原料収納容器80内の温度変動を小さく抑制でき、パン原料が容器内部に付着して残る可能性を低減できる。なお、空気層87を設けない構成としても構わないが、図13に示すように空気層87を設けるのが好ましい。
【0093】
また、以上に示した実施形態では、パン原料収納容器80がカバー部材を備える構成としたが、カバー部材を備えない構成としてもよく、この場合には、容器本体81に直接ロック機構を取り付けたり、パッキンを固定したりしてもよい。
【0094】
また、以上に示した実施形態では、米粒からパンを製造する構成としたが、米粒に限らず、小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の穀物粒を原料としてパンを製造する場合にも、本発明は適用されるものである。
【0095】
また、以上に示した米粒用製パンコースで実行される製造工程は例示であり、他の製造工程としてもよい。例を挙げると、米粒からパンを製造するにあたって、粉砕工程の後に、粉砕粉に水を吸水させるために、再度浸漬工程を行ってから練り工程を行う構成等としてもよい。
【0096】
その他、以上に示した実施形態では、自動製パン器1が粉砕ブレード54と混練ブレード72との2つのブレードを備え、その各々に対して別々にモータを設ける構成とした。しかし、これに限らず、例えば粉砕と混練とを兼用するブレード及びモータを備える構成としてもよい。また、自動製パン器によって実行される製パンコースが、米粒用製パンコースのみである構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0098】
1 自動製パン器
19 ソレノイド(ロック解除手段の一部)
40 焼成室
41 シーズヒータ(加熱手段)
50 パン容器
54 粉砕ブレード(粉砕手段の一部)
60 混練モータ(混練手段の一部)
64 粉砕モータ(粉砕手段の一部)
72 混練ブレード(混練手段の一部)
80 パン原料収納容器
81 容器本体
81a 開口部
81b 鍔部
82 蓋体
83 コーティング層
84 パッキン(シール部材)
85 カバー部材
85b クランプフック支持部(ロック機構の一部)
86 クランプフック(ロック部材、ロック機構の一部)
90 制御装置(制御手段)
852 シャフト(ロック機構の一部)
853 バネ(ロック機構の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粒を粉砕する粉砕手段を備え、穀物粒からパンを製造可能な自動製パン器であって、前記粉砕手段で穀物粒を粉砕した後に、粉体パン原料が、穀物粒の粉砕粉が含まれるパン容器に自動投入されることを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
穀物粒からパンを製造可能な自動製パン器であって、穀物粒を粉砕手段で粉砕した後に自動投入される粉体パン原料を収納するパン原料収納容器を備えることを特徴とする自動製パン器。
【請求項3】
穀物粒からパンを製造する際に行われる製造工程には、穀物粒を液体と混合して前記粉砕手段で粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程によって得られた粉砕粉を含むパン原料をパン生地に練り上げる練り工程と、が含まれ、
前記粉体パン原料は、前記練り工程の初期段階で自動投入されることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記粉体パン原料にドライイーストが含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記粉体パン原料にグルテン、小麦粉、グアガムのうちのいずれか1つが含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−161204(P2011−161204A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114892(P2010−114892)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【分割の表示】特願2010−26517(P2010−26517)の分割
【原出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】