説明

自動車などの組立て用搬送装置

【課題】車体にエンジンなどの組付け部品を車体下側から組み付ける部品組付け作業を行える搬送装置の大幅なコストダウンを図る。
【解決手段】車体Bを搬送する搬送台車1上に車体支持手段12が設けられ、この支持手段12で所定高さに支持された車体Bに対する下側からの部品組付け作業が搬送台車1上で行えるように構成された搬送装置において、搬送台車1の走行経路中のエンジン組付け作業区間の下側に、当該区間の始端位置6aから終端位置6bまで搬送台車1と同期して走行可能な同期走行台車22が設けられ、この同期走行台車22上に、搬送台車1の床面に設けられた開口部71を経由して昇降する昇降台55を備えたリフター31が搭載され、台車床面上に乗り入れて定停止位置で停止したエンジン搬入台車3のエンジンEを支持する昇降テーブル77が、同期走行台車22側のリフター31の昇降台55により所定高さまで持ち上げられる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にエンジンなどの組付け部品を車体下側から組み付ける部品組付け作業を行う区間を備えた自動車などの組立て用搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の組立てラインでは、車体にエンジンを組み付ける工程が組み込まれている。この車体へのエンジン組付け工程では、車体を作業床面の上方所定高さで搬送し、この車体の下側からエンジンを組み付けることになるので、一般的な方法は、特許文献1に記載されるように、トロリーコンベヤのハンガーなど、オーバーヘッド型キャリアに車体を支持させて吊り下げ状態で車体を搬送し、この車体の吊り下げ搬送ラインの下側にエンジン搬送台車を同期走行させ、当該エンジン搬送台車が備えるリフターで搭載エンジンを持ち上げて車体内に下側から嵌め込み、車体下側に立ち入った作業者がエンジンを車体に結合するエンジン組付け作業を行う方法である。
【0003】
上記の特許文献1に記載された方法では、オーバーヘッド型キャリアにより車体を吊り下げ搬送するものであるから、空中にキャリア走行用ガイドレールを安全に支持するための構造材が必要となり、材料コストが高くつくばかりでなく、設備工事に要する工数も大きくなり、工期も比較的長期間要するなどの問題点がある。一方、特許文献2に記載のように、床面上を走行する搬送台車上の所定高さに車体を支持させ、この車体の下側で搬送台車の床面にエンジンを搬入し、このエンジンを搬送台車が備えるリフターで持ち上げて車体内に下側から嵌め込み、組付け作業を行うようにした自動車組立て用搬送装置も知られている。この搬送台車利用の搬送装置では、先のオーバーヘッド型キャリア利用の搬送装置を採用する場合の諸問題を解消できるが、次のような欠点があった。
【特許文献1】特開平6−59731号公報
【特許文献2】特開昭50−133579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、特許文献2に記載されるような搬送台車利用の搬送装置では、車体を一台ずつ搭載する全ての搬送台車にエンジンを持ち上げるリフターが必要であり、設備全体としてコストが非常に高くつく。勿論、特許文献1に記載されたエンジン搬送台車のように、搭載したエンジンを持ち上げるリフターを備えたエンジン搬送台車を組み合わせ、車体を搬送する搬送台車上にエンジン搬送台車を乗り込ませ、このエンジン搬送台車上のリフターで搭載エンジンを持ち上げて車体内に下側から嵌め込むように構成すれば、車体搬送用の搬送台車にはリフターが不要になるが、逆にエンジンを一台ずつ搭載する全てのエンジン搬送台車にエンジンを持ち上げるリフターが必要になり、やはり設備全体としてコストが非常に高くつくことに変わりがない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る自動車などの組立て用搬送装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の自動車などの組立て用搬送装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、車体Bなどの被搬送物を搬送する搬送台車1上に被搬送物(車体B)を台車上方所定高さに支持する支持手段12が設けられ、この支持手段12が、被搬送物(車体B)の外側において台車1上に立設された支柱14と当該支柱14に取り付けられた被搬送物支持具16a,16bとから構成され、前記搬送台車1上で被搬送物(車体B)に下側から部品組付け作業が行えるように構成された自動車などの組立て用搬送装置において、前記搬送台車1の走行経路2の内の部品組付け作業を行う特定区間(エンジン組付け作業区間6)の下側に、当該特定区間の始端位置6aから終端位置6bまで前記搬送台車1と同期して走行可能な同期走行台車22が設けられ、この同期走行台車22上に、前記搬送台車1の床面1aに設けられた開口部71を経由して昇降する昇降台55を備えたリフター31が搭載され、台車床面1a上に搬入された組付け部品支持台(テーブル天板78)を前記リフター31の昇降台55により所定高さまで持ち上げられる構成となっている。
【0006】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記同期走行台車22は、前記搬送台車1の走行経路2と平行に往復走行可能に支持し、この同期走行台車22に前記搬送台車1に設けられた被連結部32に対して連結離脱自在な連結手段29を設け、前記特定区間の終端位置6bで搬送台車1との連結が解かれた同期走行台車22を前記特定区間の始端位置6aまで後退走行させる後進用駆動手段30を設けることができる。この場合、請求項3に記載のように、前記被連結部32は、搬送台車1の底部に下向きに突設された角柱状突起33から構成し、前記連結手段29は、前記角柱状突起33を搬送台車1の走行方向の前後両側から挟持する前後一対の開閉自在な挟持片34a,34bと、当該挟持片34a,34bを各別に開閉駆動する一対のアクチュエーター(シリンダーユニット35a,35b)とから構成し、前側の挟持片34aには、前記角柱状突起33の接近を検出する検出手段(39,41)を付設することができる。
【0007】
上記請求項2に記載の後進用駆動手段30は、同期走行台車22の走行経路4に沿って張設された駆動チエンやシリンダーユニットなどで構成することもできるが、請求項4に記載のように、同期走行台車22の左右一対の車輪26が取り付けられた車軸43に設けられた受動輪44と、この受動輪44に対し圧接する駆動輪45と、当該駆動輪45を前記受動輪44に対する圧接状態と離間状態とに切り換える切換え手段46と、前記駆動輪45を回転駆動するモーター47とから構成された後進用駆動手段30を採用することができる。
【0008】
又、請求項5に記載のように、前記搬送台車1の床面1aに設けられた開口部71には、当該開口部71を閉じたときに搬送台車1の床面1aの一部となる開閉自在な蓋板72を併設し、前記リフター31の昇降台55の上昇により前記蓋板72が持ち上げられて前記開口部71が開くように構成することができる。この場合、請求項6に記載のように、前記蓋板72は、搬送台車1の床面1aから垂直に持ち上げ可能なものとし、その蓋板72の底部には被係合部74を設け、前記リフター31の昇降台55には、前記蓋板72の被係合部74と係合して当該昇降台55上での蓋板72を位置決めする係合部75を設け、台車床面1a上に搬入された組付け部品支持台(テーブル天板78)が前記蓋板72を介してリフター31の昇降台55により持ち上げられるように構成することができる。更に、請求項7に記載のように、前記リフター31の昇降台55は、リフター上端の昇降基台54に対して一定範囲内で昇降自在に支持すると共に第一スプリング(圧縮コイルスプリング64a,64b)により上昇端位置に付勢保持させ、前記昇降基台54には、上昇端位置にある前記昇降台55に対して突出位置と退入位置との間で昇降自在に支持されると共に第二スプリング(圧縮コイルスプリング66)により突出位置に付勢保持された蓋板検出用昇降ロッド65を設け、前記第一スプリング(圧縮コイルスプリング64a,64b)と第二スプリング(圧縮コイルスプリング66)は、上昇端位置にある前記昇降台55が蓋板72のみを持ち上げたときは当該昇降台55が下降せずに前記蓋板検出用昇降ロッド65のみが下降するように設定され、昇降基台54に対する前記昇降台55の下降と、上昇端位置にある昇降台55に対する前記蓋板検出用昇降ロッド65の下降とを、各別に検出するセンサー69,70を併設することができる。
【0009】
更に、請求項8に記載のように、前記組付け部品支持台(テーブル天板78)は、前記搬送台車1の走行経路2の外から当該搬送台車1の床面1a上への乗り移り及び前記搬送台車1の床面1a上から当該搬送台車1の走行経路2の外への退出可能な組付け部品搬入台車(エンジン搬入台車3)上に支持させ、前記リフター31の昇降台55は、搬送台車1の床面1a上の定位置に停止した前記組付け部品搬入台車(エンジン搬入台車3)を貫通上昇して前記組付け部品支持台(テーブル天板78)を持ち上げるように構成することができる。この場合、請求項9に記載のように、前記組付け部品支持台(テーブル天板78)は、前記組付け部品搬入台車(エンジン搬入台車3)上に昇降自在に取り付けておくことができる。又、請求項10に記載のように、前記搬送台車1の床面1aには、前記組付け部品搬入台車(エンジン搬入台車3)を定位置に位置決めする位置決め手段(81〜85)を配設しておくことができる。
【発明の効果】
【0010】
上記請求項1に記載の本発明に係る自動車などの組立て用搬送装置は、車体などの被搬送物は、搬送台車上に設けられた支持手段により所定高さに支持させて搬送するのであるから、従来のオーバーヘッド型キャリアを利用する場合のように空中所定高さにキャリア支持案内用のガイドレールを架設する必要がなく、キャリア、即ち、搬送台車の支持案内用のガイドレールは建屋の床面上に敷設すれば良いので、簡単安価に車体などの被搬送物の搬送経路を構築することができ、その工事の工数や工期も大幅に短縮することができるのであるが、特に本発明の構成によれば、前記搬送台車が部品組付け作業を行う特定区間の始端位置に達したとき又はそれまでに、エンジンなどの組付け部品を積載した支持台(パレットや手押し台車を含む)を当該搬送台車上の所定位置に搬入しておきさえすれば、当該特定区間の始端位置から終端位置まで前記搬送台車と同期して走行する同期走行台車が備えるリフターを作動させることにより、前記搬送台車上の組付け部品支持台を持ち上げて組付け部品を被搬送物内の所定位置に下側から嵌め込むことができる。従って、前記特定区間の終端位置に搬送台車が達して前記リフターが降下するまでに、手作業又は自動機により当該組付け部品を被搬送物に結合すれば良い。
【0011】
特定区間の終端位置に搬送台車が達すれば、前記リフターを搬送台車より下方に組付け部品支持台と共に降下させ、この搬送台車上に戻された空の組付け部品支持台は搬送台車上から撤去又は退出させ、リフターは同期走行台車上まで戻すことにより、搬送台車上で支持された被搬送物の下側の台車床面上を作業床として活用しながら当該搬送台車を走行させて被搬送物を搬送し、一方、リフターが降下して搬送台車と縁切りされた同期走行台車は、前記特定区間の始端位置に戻して次の作業に備えさせれば良い。
【0012】
即ち、請求項1に記載の本発明に係る自動車などの組立て用搬送装置によれば、被搬送物を所定高さに支持して搬送する搬送台車上には、組付け部品支持台のリフターを設ける必要がなく、組立てライン上に多くの台数が必要な搬送台車の構成をシンプルにして、各搬送台車にリフターを設置する従来の構成と比較して、設備コストの大幅な削減を図ることができる。しかも搬送台車上の所定位置に組付け部品支持台を搬入する手段として台車を利用し、この各台車に組付け部品支持台を持ち上げるリフターを設ける場合と比較して、組付け部品支持台を持ち上げるリフターは、組立てライン中の極短い特定区間において搬送台車と同期して走行する同期走行台車上にのみ設ければ良いのであるから、仮に複数台の同期走行台車を循環走行させるように構成したとしても、組付け部品を個別に搬入する台車と比較して同期走行台車の台数は少なく、延いてはこの同期走行台車に設けられるリフターの台数も少ないので、やはり設備コストの大幅な削減を図ることができる。
【0013】
尚、請求項2に記載の構成によれば、リフターを備えた同期走行台車は1台で済み、より一層の設備コストの削減を図ることができる。しかも、当該同期走行台車と搬送台車とを連結手段で連結して当該同期走行台車を搬送台車と同期走行させ、当該同期走行台車を特定区間の始端位置まで後退走行させるためだけに駆動手段を使用するものであるから、構造も制御も簡単であり、本発明を安価に実施することができる。この場合に請求項3に記載の構成によれば、連結手段を構成する前後一対の開閉自在な挟持片の内、前側の挟持片は前以って挟持姿勢に閉じておき、この前側の挟持片が備える検出手段が搬送台車側の角柱状突起(被連結部)の接近を検出したときに後ろ側の挟持片を閉じ姿勢に切り換えれば良く、連結手段の制御が簡単であるにもかかわらず、搬送台車に対して同期走行台車を確実に一定の位置関係で同期走行させることができる。更に、同期走行台車を特定区間の始端位置まで後退走行させる後進用駆動手段を請求項4に記載のように構成すれば、この同期走行台車の走行経路脇に当該同期走行台車を後進方向に推進させる駆動チエンやシリンダーユニットを配設させる場合と比較して、又、車軸とモーターとの間にクラッチ機構を介在させる構成と比較して、本発明を安価に実施することができる。
【0014】
又、請求項5に記載の構成によれば、同期走行台車側のリフターの昇降台を貫通昇降させるために搬送台車の床面に設けられる開口部が普段は蓋板で閉じられているので、この開口部が開き放しになっている場合と比較して、この搬送台車の床面上での作業を安全に行える。しかもその開口部の蓋板は、同期走行台車側のリフターの昇降台の上昇により開かれるものであるから、手作業でタイミングを見計らって蓋板を開かなければならない場合と比較して、作業者の負担が軽くなり、安全性も高められる。
【0015】
この場合、請求項6に記載の構成によれば、ヒンジで軸支された片開き又は観音開きタイプの蓋板をリフターの昇降台で押し上げて開く場合と比較して、蓋板の支持構造が簡単になり、しかも蓋板の開動も円滑に行わせることができると共に、リフターの昇降台が開口部から降下し終わったときに蓋板を確実に閉じ位置に戻すことができる。更にこの場合、請求項7に記載の構成によれば、2つのセンサーにより、リフターの昇降台が搬送台車側の開口部の蓋板を支持した時点と、当該昇降台が蓋板を介して組付け部品支持台を支持した時点とを各別且つ確実に検出させ、リフターの昇降制御を容易且つ的確に行わせることができる。
【0016】
更に、請求項8に記載の構成によれば、組付け部品支持台をフォークリフトなどにより直接搬送台車の床面上の所定位置に搬入載置させる場合と比較して、搬送台車上への組付け部品支持台の搬入作業が簡単容易に行える。この場合、請求項9に記載の構成によれば、組付け部品支持台は組付け部品搬入台車上に昇降自在に取り付けられているので、リフター側の昇降台の面積を組付け部品支持台の面積と比較して十分に小さくしても、又、前記昇降台で組付け部品支持台を押し上げる位置が多少ずれても、当該組付け部品支持台は組付け部品搬入台車に対して確実に所定の姿勢(水平姿勢)を保って安全確実に上昇移動させることができる。換言すれば、リフター側の昇降台の面積を小さくし、搬送台車の床面に設ける開口部の面積を小さくすることができるし、組付け部品搬入台車の停止位置に高い精度を要求されない。更に、請求項10に記載の構成によれば、組付け部品搬入台車上の組付け部品支持台をより一層安全に且つ確実に所定位置で押し上げさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1及び図2において、1は被搬送物である自動車の車体Bを搬送する搬送台車であって、直線状の走行経路2を、前後に隣接する搬送台車1どうしが互いに当接して各搬送台車1の平坦矩形状の台車床面1aが帯状に連続する状態で、一定の低速度で連続走行する。3は組付け部品であるエンジンEを搬送するエンジン(組付け部品)搬入台車であって、予め定められた走行経路4上を自動操縦により自動走行し、当該走行経路4上に設定された定停止位置において自動停止すると共に発進指令を受けて走行を開始する従来周知の自動制御方式の走行台車が利用されている。而して、このエンジン搬入台車3の走行経路4は、前記搬送台車1の走行経路2に隣接して形成された、台車床面1aと面一の往路床面5a上から、前記搬送台車1の走行経路2中に設定されたエンジン組付け作業区間6の始端位置6aにある搬送台車1の台車床面1a上に当該搬送台車1の後端側から乗り移り、当該搬送台車1の台車床面1a上のセンターライン上を前進して予め設定された定停止位置Pにおいて停止し、当該搬送台車1が前記エンジン組付け作業区間6の終端位置6bに到達したとき、前記定停止位置Pから発進して当該搬送台車1の台車床面1a上から、当該台車床面1aと面一に形成された復路床面5b上へ退出できるように設定されている。
【0018】
搬送台車1は、図3〜図5に示すように、走行経路2上に敷設された左右一対のガイドレール7上を転動する左右一対前後二組の車輪8と、片側のガイドレール7に並設された振れ止め用ガイドレール9を左右両側から挟む左右一対の垂直軸ローラー10から成る前後2組の振れ止め用ローラーユニット11a,11bとによって、走行経路2に沿って走行できるように支持されたもので、平坦矩形状の台車床面1a上には車体支持手段12が付設されている。
【0019】
この車体支持手段12は、車体Bを台車床面1aの上方所定高さ、具体的には台車床面1a上の作業者が車体Bの下側に入り込んで作業できる高さ、に支持するもので、左右一対の車体支持ユニット13a,13bから構成されている。この車体支持ユニット13a,13bは、平面視において車体Bの左右両側に位置するように台車床面1aの左右両側に立設された左右一対の支柱14と、これら各支柱14の上端から前後両方向に延出する前後方向の水平梁材15と、これら各水平梁材15の前後両側から内側に片持ち状に延出する車体(被搬送物)支持具16a,16bから構成されている。従って、図1及び図2に示すエンジン搬入台車3は、車体支持手段12で支持される車体Bの下側で、左右一対の車体支持ユニット13a,13bの支柱14間の台車床面1a上を、この搬送台車1の走行方向と同一方向に走行し、このエンジン搬入台車3が支持するエンジンEが車体Bのエンジン取付け位置の真下に位置する定停止位置Pで自動停止することになる。
【0020】
上記搬送台車1を走行経路2に沿って走行させるための駆動手段は、如何なる方式のものでも良いが、例えば図3に仮想線で示す摩擦駆動手段17が利用できる。この摩擦駆動手段17は、搬送台車1の走行方向と平行な左右両側面1b,1cを摩擦駆動面とするもので、一方の側面1bに圧接する摩擦駆動ローラー18と当該ローラー18を回転駆動するモーター19、及び他方の側面1cに当接するバックアップローラー20から構成された従来周知のものであり、この摩擦駆動手段17を、走行経路2中の前記エンジン組付け作業区間6を含む自動車組立て作業ラインの入り口側に配設し、出口側には、この摩擦駆動手段17と同一構造であるが、摩擦駆動ローラー18の回転速度が若干低速に設定された制動手段を配設することにより、自動車組立て作業ラインでは、前記のように前後に隣接する搬送台車1どうしが互いに当接して各搬送台車1の平坦矩形状の台車床面1aが帯状に連続する状態で、搬送台車1を一定の低速度で連続走行させることができる。
【0021】
図2に示すように、搬送台車1の走行経路2中に設定されたエンジン組付け作業区間6の下側には、走行経路2に沿ってピット21が設けられ、このピット21内に同期走行台車22の走行経路23が設けられている。この同期走行台車22の走行経路23は、エンジン組付け作業区間6の始端位置6aと終端位置6bとの間の走行経路2の下側で、同期走行台車22が直線状に往復移動するもので、ピット21内の架台24上に敷設された左右一対のガイドレール25によって構成されている。
【0022】
同期走行台車22は、図6及び図7に示すように、左右一対のガイドレール25上を転動する左右一対前後二組の車輪26と、片側のガイドレール25を左右両側から挟む左右一対の垂直軸ローラー27から成る前後二組の振れ止め用ローラーユニット28a,28bによって、走行経路23に沿って走行できるように支持されたもので、この同期走行台車22を搬送台車1と結合して前進方向に同期走行させるための連結手段29と後進用駆動手段30、及びリフター31を備えている。
【0023】
連結手段29は、図14〜図16に詳細構造が示されるように、搬送台車1の底部に設けられた被連結部32に対して連結離脱自在なものであって、被連結部32は、搬送台車1の底部に下向きに突設された角柱状突起33から構成され、連結手段29は、角柱状突起33を搬送台車1の走行方向の前後両側から挟持する前後一対の開閉自在な挟持片34a,34bと、当該挟持片34a,34bを各別に開閉駆動するアクチュエーターとしてのシリンダーユニット35a,35bとから構成されている。更に詳述すると、前後一対の開閉自在な挟持片34a,34bは、同期走行台車22上に立設された支柱部材36の上端の前後両側にそれぞれ左右水平支軸37a,37bにより前後上下方向に起伏自在に軸支されたもので、前側の挟持片34aには、下辺が左右水平支軸38により一定範囲内で前後揺動自在に軸支された挟持板39と、この挟持板39を後方に傾倒した姿勢に付勢するショックアブソーバー40と、挟持板39がショックアブソーバー40の付勢力に抗して前方に揺動して当該ショックアブソーバー40の先端面で受け止められた状態を検出するセンサー41が取り付けられ、後ろ側の挟持片34bには、固定の挟持板42が取り付けられている。
【0024】
後進用駆動手段30は、図6〜図8に示すように、同期走行台車22の前側の左右一対の車輪26を取り付けた車軸43に設けられた受動輪44と、この受動輪44に対し圧接する駆動輪45と、当該駆動輪45を前記受動輪44に対する圧接状態と離間状態とに切り換える切換え手段46と、前記駆動輪45を回転駆動する減速機付きモーター47とから構成されている。具体的に説明すると、同期走行台車22に左右水平支軸48により上下揺動自在に上下揺動板49が軸支され、この上下揺動板49の一側面に減速機付きモーター47が取り付けられ、この減速機付きモーター47の出力軸47a、即ち、車軸43と平行で且つ上下揺動板49の他側面側に突出する左右水平向きの出力軸47aに駆動輪45が取り付けられ、上下揺動板49の遊端部と同期走行台車22との間に、当該上下揺動板49を上下駆動させるアクチュエーターとしてのシリンダーユニット50が介装されている。従って、前記切換え手段46は、駆動輪45と減速機付きモーター47とを支持する上下揺動板49とシリンダーユニット50から構成されている。
【0025】
リフター31は、図6及び図7に示すように、同期走行台車22の略中央位置に配設されたもので、同期走行台車22上に固定されたケーシング51に昇降自在に支持された前後2本の垂直昇降軸杆52,53と、これら2本の垂直昇降軸杆52,53の上端で支持された昇降基台54、この昇降基台54上に支持された昇降台55、及び昇降駆動手段56から構成されている。更に具体的に説明すると、一方の大径の垂直昇降軸杆52には、その長さ方向にラックギヤ部52aが設けられ、このラックギヤ部52aに咬合するように前記ケーシング51内に軸支されたピニオンギヤ57を左右水平向きの出力軸58aで正逆回転駆動する減速機付きモーター58が前記ケーシング51の横側部に配設され、これらラックギヤ部52a、ピニオンギヤ57、及び減速機付きモーター58によって前記昇降駆動手段56が構成されている。尚、小径の垂直昇降軸杆53は、昇降台54が大径の垂直昇降軸杆52の周りに回転するのを防止するものである。又、この小径の垂直昇降軸杆53をパイプ材から構成することにより、昇降基台54に配設されるセンサー類の配線を同期走行台車22側に導くための配線保護管として利用することができる。
【0026】
図10〜図13に示すように、前記リフター31の昇降基台54と昇降台55とは、同一サイズの平面矩形状のもので、昇降基台54には、前後一対の裁頭円錐形の台座59a,59bが上向きに固着突設され、昇降台55の底面には、前記台座59a,59bに対して上下に嵌合離脱自在な下広がりのラッパ形凹部を底面に備えた前後一対の嵌合体60a,60bが取り付けられ、これら台座59a,59bと嵌合体60a,60bとにわたって同心状に貫通する前後一対の垂直軸杆61a,61bには、台座59a,59bの内側で受け止められる下端膨出部62a,62bと、昇降台55の上面で受け止められる裁頭円錐形の突出頭部63a,63bが設けられ、昇降基台54と昇降台55との間には、各嵌合体60a,60bに外嵌する状態で前後一対の圧縮コイルスプリング64a,64bが介装されている。従って昇降台55は、前後一対の垂直軸杆61a,61bの下端膨出部62a,62bと突出頭部63a,63bとで制限される高さまで昇降基台54に対して平行に上昇移動可能であると共に、前後一対の圧縮コイルスプリング64a,64bにより、図10、図12、及び図13Aで示す上昇位置に付勢保持されている。
【0027】
又、昇降基台54と昇降台55とを上下方向に貫通する蓋板検出用昇降ロッド65が、前後一対の垂直軸杆61a,61bの間の位置で少し横側方にずれた位置に配設されている。この蓋板検出用昇降ロッド65は、昇降台55の下側に位置する中間フランジ部65aと、昇降基台54より下方に位置する下端に取り付けられた被検出フランジ部65bとを備え、中間フランジ部65aと昇降基台54との間で蓋板検出用昇降ロッド65に外嵌された圧縮コイルスプリング66により、中間フランジ部65aが昇降台55の底面に当接し且つ当該蓋板検出用昇降ロッド65の上端部65cが昇降台55の上面から上向きに突出する上昇位置に付勢保持されている。尚、前後一対の圧縮コイルスプリング64a,64bが昇降台65を押し上げる付勢力は、蓋板検出用昇降ロッド65の中間フランジ部65aを介して昇降台65を押し上げる圧縮コイルスプリング66の付勢力に比較して格段に大きくなるように構成されている。
【0028】
更に、昇降台55の底面には、左右両側辺に沿って側壁板67a,67bが取り付けられ、この両側壁板67a,67bの下端が昇降基台54の上面に当接することにより、昇降基台54に対する昇降台55の下降を規制するように構成されている。従って、昇降台55は、圧縮コイルスプリング64a,64bの付勢力で当該昇降台55が上昇位置に付勢保持されているときの両側壁板67a,67bの下端と昇降基台54の上面との間の隙間Dの範囲内で昇降自在であるが、昇降基台54の下側には、両側壁板67a,67bの下端が昇降基台54の上面に当接する下降位置に昇降台55が達したことを、片側の側壁板67aの下端に取り付けられて昇降基台54の切欠き部54aから下方に延出する被検出板68を介して検出する昇降台下降検出センサー69が取り付けられている。又、蓋板検出用昇降ロッド65が、その上端部65cが上昇位置にある昇降台55から上方に突出する上昇位置から、その上端部65cが上昇位置にある昇降台55の上面と面一となる下降位置まで圧縮コイルスプリング66の付勢力に抗して下降したことを、当該蓋板検出用昇降ロッド65の下端の被検出フランジ部65bを介して検出する蓋板検出センサー70が、昇降基台54の下側に取り付けられている。
【0029】
搬送台車1には、先に説明したように、この搬送台車1の被連結部32(角柱状突起33)を同期走行台車22側の連結手段29の前後一対の挟持片34a,34bが挟持することによって、当該搬送台車1と同期走行台車22とが連結一体化されたとき、同期走行台車22側のリフター31の昇降台55の真上に位置するように、当該昇降台55(昇降基台54)が貫通昇降し得るサイズの平面矩形状の開口部71が、その台車床面1aに設けられている。この開口部71には、図10にも示すように、当該開口部71を開閉する着脱自在な蓋板72が組み合わされている。この蓋板72は、開口部71内に丁度嵌まり込むサイズの平面矩形状で周側面が下窄まりに傾斜する嵌合部72aと、この嵌合部72a上に敷設されて周辺が張り出すカバープレート72bから構成され、このカバープレート72bの周辺が、開口部71の周辺上面で支持される。この蓋板72の嵌合部72aには、昇降台55の上面から突出する前後一対の裁頭円錐形の突出頭部63a,63bが嵌入可能な前後一対の孔部73a,73bが形成されている。即ち、蓋板72の孔部73a,73bが被係合部74を構成し、昇降台55側の突出頭部63a,63bが前記被係合部74に係合して蓋板72を位置決めする係合部75を構成している。尚、蓋板72が開口部71を閉じた状態では、蓋板72の上面(カバープレート72bの上面)と台車床面1aとが面一になるように、蓋板72の周辺(カバープレート72bの周辺)を支持する部分は、カバープレート72bの厚さ分だけ一段低く構成されている。
【0030】
以上のように構成された本発明一実施形態の使用方法及び作用を説明すると、図2及び図9Aに示すように、リフター31の昇降台55が下降位置にある同期走行台車22は、エンジン組付け作業区間6の始端位置6aに戻されている。このとき同期走行台車22の後進用駆動手段30の駆動輪45は、図7及び図8に示すように、切換え手段46のシリンダーユニット50により上下揺動板49が上方に引き上げられることにより、受動輪44から離間し、同期走行台車22はフリーな状態にある。更に、図14に実線で示すように、連結手段29の前後に開動倒伏状態にある前後一対の挟持片34a,34bの内、前側の挟持片34aのみが、シリンダーユニット35aにより上方後方に押し上げられ、図14に仮想線で示すように起立姿勢に切り換えられて、搬送台車1側の被連結部32(角柱状突起33)の移動経路内に突出している。このとき、当該前側の挟持片34aの挟持板39はショックアブソーバー40の付勢力で後方に傾倒した姿勢にある。
【0031】
一方、走行経路2上を連続するようにつながった状態で走行する搬送台車1の列の中の1台の搬送台車1がエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに到達することになるが、この搬送台車1の台車床面1a上に、図1に示すように走行経路4上を自動走行するエンジン搬入台車3を往路床面5a上から乗り込ませ、当該エンジン搬入台車3を搬送台車1の台車床面1a上の定停止位置Pで自動停止させる。
【0032】
而して、エンジン組付け作業区間6の始端位置6aに搬送台車1が到達することにより、当該搬送台車1の底部の被連結部32、即ち、下向きに突出している角柱状突起33の垂直前面が、図15に示すように、同期走行台車22側の連結手段29の起立姿勢の前側の挟持片34aの挟持板39をショックアブソーバー40の付勢力に抗して前方に押圧揺動させ、当該挟持板39をショックアブソーバー40の先端面に当接する起立姿勢に切り換える。この結果、センサー41に挟持板39が近接して当該センサー41が挟持板39を検出する状態(ON)に切り換わることになる。このセンサー41の挟持板検出信号に基づいて、図15に仮想線で示すように、後ろ側の挟持片34bをシリンダーユニット35bにより上方前方に押し上げて起立姿勢に切り換えることにより、搬送台車1側の被連結部32(角柱状突起33)が、同期走行台車22側の連結手段29の前後一対の挟持片34a,34b(挟持板39,42)により挟持され、搬送台車1と同期走行台車22とが連結一体化されることになる。
【0033】
上記のように搬送台車1と同期走行台車22とが連結一体化されると、搬送台車1の台車床面1aの開口部71の真下に同期走行台車22側の下降位置にある昇降台55が位置する状態で、当該同期走行台車22が搬送台車1に引っ張られて同期走行を開始することになるので、同期走行台車22側のリフター31の昇降駆動手段56を作動させ、昇降台55を上昇させる。即ち、減速機付きモーター58を稼働させてピニオンギヤ57を回転駆動し、ラックギヤ部52aを介して垂直昇降軸杆52を上昇移動させ、昇降基台54及びその上の昇降台55を垂直昇降軸杆53と共に上昇移動させる。この結果、昇降台55が、搬送台車1側の台車床面1aの開口部71を塞いでいる蓋板72を押し上げることになるが、このとき昇降台55に対する蓋板72の位置が正常であると、蓋板72側の被係合部74である孔部73a,73bに昇降台55側の係合部75である突出頭部63a,63bが嵌入し、蓋板72が昇降台55上に支持されることになる。従って、図12に仮想線で示すように、昇降台55側の蓋板検出用昇降ロッド65が蓋板72によって押し下げられ、蓋板検出センサー70が作動するので、当該蓋板検出センサー70の蓋板検出信号により、昇降台55の押し上げ動作を継続させることができる。若し、昇降台55と蓋板72との間に、孔部73a,73bに対して突出頭部63a,63bが嵌入できない程の位置ずれが生じていると、蓋板72が突出頭部63a,63bで支持されて蓋板検出用昇降ロッド65が押し下げられないので、蓋板検出センサー70からは所定時間内に蓋板検出信号が送信されないので、異常としてリフター31の作動を中止し、警報を発すると共に昇降台55を降下させることができる。
【0034】
リフター31の昇降台55の上昇により搬送台車1側の蓋板72が押し上げられ、この蓋板72を支持した昇降台55及び昇降基台54が搬送台車1の台車床面1aの開口部71を上方に貫通移動することになる。一方、搬送台車1の台車床面1a上の定停止位置Pで停止しているエンジン搬入台車3には、図9Bに示すように、例えばパンタグラフ機構76によって平行昇降のみ可能に支持された昇降テーブル77が設けられており、この昇降テーブル77上にはテーブル天板78が、水平二次元平面上を一定範囲内で自在にスライドできる状態に支持されている。そして、昇降テーブル77の下側には、この昇降テーブル77が下降限位置にあるときに、このエンジン搬入台車3の底部において被押し上げ面が下向きに露出するように被押し上げ台部79が設けられ、この被押し上げ台部79の底面である被押し上げ面を昇降台55が支持する蓋板72を介して押し上げることができるように構成されている。
【0035】
尚、前記昇降テーブル77のテーブル天板78上にエンジン支持用アタッチメントを取り付けて、当該テーブル天板78をエンジン支持台としても良いし、エンジン支持用アタッチメントを備えた専用のエンジン支持台をテーブル天板78上に積載するようにしても良い。
【0036】
同期走行台車22側のリフター31の昇降台55の上昇が継続されることによって、当該昇降台55は、搬送台車1上の定停止位置Pで停止しているエンジン搬入台車3の下降限位置にある昇降テーブル77を、被押し上げ台部79との間に蓋板72を挟んだ状態で押し上げてゆくことになる。換言すれば、このように昇降台55で昇降テーブル77の被押し上げ台部79を押し上げさせることができる位置に、搬送台車1の台車床面1a上でのエンジン搬入台車3の定停止位置Pが設定されている。同期走行台車22側のリフター31の昇降台55が昇降テーブル77を押し上げる状態では、搭載されているエンジンEを含む昇降テーブル77側の全重量が昇降台55に作用することになるので、昇降台55は、圧縮コイルスプリング64a,64bの付勢力に抗して昇降基台54に対し降下し、図13Bに示すように昇降基台54で支持される状態になる。この状態は、昇降台55側の被検出板68を介して昇降台下降検出センサー69によって検出されるので、一定時間内に昇降台下降検出センサー69から昇降台下降検出信号が送信された場合は、正常としてリフター31の作動(昇降台55の上昇)を継続させ、昇降台下降検出センサー69から昇降台下降検出信号が一定時間内に送信されなかったときは、異常としてリフター31の作動を中止し、警報を発すると共に昇降台55を降下させることができる。
【0037】
図9Bに示すように、同期走行台車22側のリフター31の昇降台55が上昇限位置まで上昇し、当該昇降台55で押し上げられていたエンジン搬入台車3側の昇降テーブル77が上昇限位置に達して、当該昇降テーブル77上のテーブル天板78又はこの上に載置されたエンジン支持台で支持されているエンジンEが、搬送台車1が車体支持手段12を介して支持している車体B内の所定位置に嵌め込まれたならば、搬送台車1の台車床面1a上に搭乗している作業者の手作業又は自動機により、車体BへのエンジンEの組付け作業を行うことができる。エンジンEの組付け作業が完了したならば、図9Cに示すように、同期走行台車22側のリフター31の昇降台55を元の下降限待機位置まで降下させる。即ち、リフター31の昇降駆動手段56におけるピニオンギヤ57を減速機付きモーター58により逆回転駆動し、垂直昇降軸杆52を降下させて昇降台55及び昇降基台54を下降させる。この結果、昇降台55で押し上げられていたエンジン搬入台車3側の昇降テーブル77がエンジン支持台(昇降テーブル77上のテーブル天板78又はこの上に載置された専用のエンジン支持台)と共に重力で昇降台55に追従して降下し、昇降テーブル77がエンジン搬入台車3上の下降限位置に復帰した後は、昇降台55とその上に支持されている蓋板72が昇降テーブル77の被押し上げ台部79から下方に離れて降下を続け、当該昇降台55が搬送台車1の台車床面1aの開口部71を下方に通過するときに、蓋板72は、その周辺が開口部71の周辺で支持される元の位置に復帰して当該開口部71を塞ぐ。そして搬送台車1の蓋板72から下方に離れて降下する昇降台55が元の同期走行台車22上の下降限位置に復帰することにより、一連の作用が終了する。
【0038】
以上の一連の作用工程、即ち、同期走行台車22側のリフター31の昇降台55によるエンジン搬入台車3上のエンジンEの持ち上げのための上昇工程、エンジンEを搬送台車1上の車体Bへ組付ける作業工程、そしてエンジン組付け作業後の昇降台55の下降工程は、図1及び図2に示すエンジン組付け作業区間6の始端位置6aから終端位置6bまで、搬送台車1が同期走行台車22を引き連れて走行する間に行われる。而して、この一連の作用工程が終了して、搬送台車1がエンジン組付け作業区間6の終端位置6bに達したならば、図14に実線で示すように、同期走行台車22側の連結手段29の前後一対の挟持片34a,34bをシリンダーユニット35a,35bにより開動倒伏させ、搬送台車1と同期走行台車22の連結を解除することにより、搬送台車1に対する同期走行台車22の同期走行を終了させて同期走行台車22を停止させる。一方、空になったエンジン搬入台車3、即ち、エンジン支持台(昇降テーブル77上のテーブル天板78又はこの上に載置された専用のエンジン支持台)が下降限位置の昇降テーブル77上に支持されている状態のエンジン搬入台車3は、自動走行を開始させて搬送台車1の台車床面1a上から走行経路2の横側方の復路床面5b上に退出させる。
【0039】
図1及び図2では、エンジン組付け作業区間6の始端位置6aから終端位置6bまでの走行経路長さと搬送台車1の全長とが等しいように図示しているが、実際には、搬送台車1の走行速度は極低速であって、上記の一連の作用工程の間に搬送台車1が走行する距離、即ち、エンジン組付け作業区間6の始端位置6aから終端位置6bまでの走行経路長さは、搬送台車1の全長より短いので、上記の一連の作用工程が終了して、搬送台車1がエンジン組付け作業区間6の終端位置6bに達したとき、直後の搬送台車1は、未だエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに到達していない。従って、エンジン組付け作業区間6の終端位置6bで搬送台車1から切り離された同期走行台車22を後進用駆動手段30により高速後進走行させて、直後の搬送台車1がエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに到達する前に当該同期走行台車22をエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに戻すことができる。この同期走行台車22の後進走行は、後進用駆動手段30のシリンダーユニット50により上下揺動板49を下向きに付勢して、減速機付きモーター47により回転駆動される駆動輪45を車軸43側の受動輪44に圧接することにより、当該車軸43の両端の車輪26を後進方向に回転駆動することにより実行される。
【0040】
同期走行台車22の連結手段29は、当該同期走行台車22がエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに到達する前、又は始端位置6aに到達した直後に、先に説明したように連結手段29の前後に開動倒伏状態にある前後一対の挟持片34a,34bの内、前側の挟持片34aのみが、シリンダーユニット35aにより上方後方に押し上げられ、図14に仮想線で示すように起立姿勢に切り換えられる。而して、同期走行台車22がエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに到達すれば、後進用駆動手段30の減速機付きモーター47による駆動輪45の回転駆動を終了すると共に、シリンダーユニット50により上下揺動板49を引き上げ、駆動輪45を車軸43側の受動輪44から離間させて、同期走行台車22をフリーの状態に切り換え、次にエンジン組付け作業区間6の始端位置6aに到達する搬送台車1との同期走行開始に備える。
【0041】
以上の作用工程の繰り返しにより、走行経路2を連続状態に連なって走行する各搬送台車1上の車体支持手段12で支持されている車体Bに対し、エンジン搬入台車3で各搬送台車1上に搬入されるエンジンEの組付け作業を順次行うことができるのであるが、搬送台車1上へのエンジンEの搬入に上記実施形態で示したエンジン搬入台車3や手押し台車など、各種エンジン搬入台車を利用する場合、搬送台車1及びエンジン搬入台車を貫通して上昇する同期走行台車22側のリフター31の昇降台55で前記エンジン搬入台車上の定位置に支持されるエンジン支持台を安全に押し上げる必要がある。このためには、前記エンジン搬入台車に対するエンジン(エンジン支持台)の位置が確定しているとして、搬送台車1の台車床面1a上の定停止位置Pに前記エンジン搬入台車を精度良く停止させなければならないので、搬送台車1の台車床面1a上の定位置に前記エンジン搬入台車を位置決めする台車位置決め手段を配設することができる。
【0042】
台車位置決め手段としては各種のものが考えられる。例えば、上記実施形態で示したような構造のエンジン搬入台車3の場合には、図3、図4、及び図17に示すように、エンジン搬入台車3の底部に左右一対の垂直軸ローラー80a,80bを軸支し、搬送台車1の台車床面1a上には、前記左右一対の垂直軸ローラー80a,80b間に相対的に進入してエンジン搬入台車3の左右横方向の位置決めを行う平面形状が舟形のガイドレール81を設け、又、搬送台車1の台車床面1aには、エンジン搬入台車3の走行方向に長いスリット状で内部に左右横向きに被係止バー82が架設された凹溝部83を、例えば定位置に停止するエンジン搬入台車3の前端近傍1箇所と後端近傍の左右2箇所とに対応させて配設し、定位置に停止するエンジン搬入台車3の各凹溝部83の真上位置には、後方下方へ揺動することにより先端鉤部が前記凹溝部83内に入り込んで内部の被係止バー82と係合する係止用フック84と、各係止用フック84を駆動するアクチュエーター85とを設けて、台車位置決め手段を構成することができる。
【0043】
上記台車位置決め手段では、エンジン搬入台車3側の3箇所の係止用フック83と搬送台車1の台車床面1a側の被係止バーとの係合により、エンジン搬入台車3の浮き上がりも防止することができるので、エンジン搬入台車3が軽量構造で且つパンタグラフ機構76による昇降テーブル77の昇降抵抗が比較的大きい場合に、同期走行台車22側のリフター31でエンジン搬入台車3上の昇降テーブル77を押し上げるとき、エンジン搬入台車3自体が浮き上がったり、上下に振動するのを防止することができる。エンジン搬入台車3の走行方向の停止位置精度が十分でないときは、例えば、搬送台車1の台車床面1a側に設けた下窄まりの孔と、エンジン搬入台車3側から降下して前記下窄まりの孔に嵌入する先窄まりの昇降ロッドとから成る台車位置決め手段を併用すれば良い。
【0044】
尚、上記実施形態では、自動車の車体Bに対するエンジンEの組付けを行うエンジン組付け作業区間6において本発明の自動車などの組立て用搬送装置を利用しているが、搬送台車1上の所定高さで支持されて搬送される被搬送物は自動車の車体Bに限らないし、当該被搬送物に下から組み付ける組付け部品としてもエンジンEに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】自動車組立てライン中のエンジン組付け作業区間を示す概略平面図である。
【図2】同上エンジン組付け作業区間を示す一部縦断概略側面図である。
【図3】搬送台車を示す平面図である。
【図4】同上搬送台車を示す側面図である。
【図5】同上搬送台車を示す正面図である。
【図6】同期走行台車を示す平面図である。
【図7】同上同期走行台車を示す側面図である。
【図8】同上同期走行台車の後進用駆動手段を示す縦断側面図である。
【図9】A図〜C図は、エンジン組付け作業区間での各位置における同期走行台車の作用を説明する側面図である。
【図10】搬送台車側の蓋板付き開口部と同期走行台車側のリフターの上端部分を示す縦断側面図である。
【図11】同上リフターの上端部分の横断平面図である。
【図12】同上リフターの上端部分の縦断側面図である。
【図13】A図は同上リフターの上端部分が下降位置にあるときの縦断側面図、B図は同上リフターの上端部分が、搬送台車側の開口部の蓋板と共にエンジン搬入台車3側の被押し上げ台部を押し上げているときの縦断側面図である。
【図14】同期走行台車側の連結手段が連結解除状態にあるときを示す側面図である。
【図15】同上連結手段が連結作用の第一段階にあるときを示す側面図である。
【図16】同上連結手段を示す平面図である。
【図17】A図はエンジン搬入台車の位置決め手段を説明する概略平面図、B図は同位置決め手段の一部分を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 搬送台車
1a 台車床面
2 搬送台車の走行経路
3 エンジン搬入台車
4 エンジン搬入台車の走行経路
6 エンジン組付け作業区間
7 搬送台車のガイドレール
8,26 車輪
12 車体支持手段(被搬送物支持手段)
13a,13b 車体支持ユニット
14 支柱
15 水平梁材
16a,16b 車体(被搬送物)支持具
17 摩擦駆動手段
22 同期走行台車
23 同期走行台車の走行経路
25 同期走行台車のガイドレール
29 連結手段
30 後進用駆動手段
31 リフター
32 被連結部
33 角柱状突起
34a,34b 挟持片
35a,35b シリンダーユニット
39,42 挟持板
40 ショックアブソーバー
41 センサー
44 受動輪(後進用駆動手段)
45 駆動輪(後進用駆動手段)
46 切換え手段(後進用駆動手段)
47 減速機付きモーター(後進用駆動手段)
49 上下揺動板(切換え手段)
50 シリンダーユニット(切換え手段)
52,53 垂直昇降軸杆
52a ラックギヤ部
54 昇降基台
55 昇降台
56 昇降駆動手段
57 ピニオンギヤ(昇降駆動手段)
58 減速機付きモーター(昇降駆動手段)
59a,59b 裁頭円錐形の台座
60a,60b 嵌合体
61a,61b 垂直軸杆
63a,63b 裁頭円錐形の突出頭部(係合部)
64a,64b,66縮コイルスプリング
65 蓋板検出用昇降ロッド
65b 被検出フランジ部
67a,67b 昇降台の側壁板
68 被検出板
69 昇降台下降検出センサー
70 蓋板検出センサー
71 開口部
72 蓋板
72a 蓋板の嵌合部
73a,73b 蓋板の孔部(被係合部)
74 被係合部
75 係合部
76 パンタグラフ機構
77 昇降テーブル
78 テーブル天板(エンジン支持台)
79 昇降テーブルの被押し上げ台部
80a,80b 垂直軸ローラー(台車位置決め手段)
81 ガイドレール(台車位置決め手段)
82 被係止バー(台車位置決め手段)
83 凹溝部(台車位置決め手段)
84 係止用フック(台車位置決め手段)
85 アクチュエーター(台車位置決め手段)
B 車体(被搬送物)
E エンジン(組付け部品)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体などの被搬送物を搬送する搬送台車上に被搬送物を台車上方所定高さに支持する支持手段が設けられ、この支持手段が、被搬送物の外側において台車上に立設された支柱と当該支柱に取り付けられた被搬送物支持具とから構成され、前記搬送台車上で被搬送物の下側から部品組付け作業が行えるように構成された自動車などの組立て用搬送装置において、前記搬送台車の走行経路の内の部品組付け作業を行う特定区間の下側に、当該特定区間の始端位置から終端位置まで前記搬送台車と同期して走行可能な同期走行台車が設けられ、この同期走行台車上に、前記搬送台車の床面に設けられた開口部を経由して昇降する昇降台を備えたリフターが搭載され、台車床面上に搬入された組付け部品支持台を前記リフターの昇降台により所定高さまで持ち上げられるように構成された、自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項2】
前記同期走行台車は、前記搬送台車の走行経路と平行に往復走行可能に支持されたもので、前記搬送台車に設けられた被連結部に対して連結離脱自在な連結手段を備え、前記特定区間の終端位置で搬送台車との連結が解かれた同期走行台車を前記特定区間の始端位置まで後退走行させる後進用駆動手段が設けられた、請求項1に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項3】
前記被連結部は、搬送台車の底部に下向きに突設された角柱状突起から成り、前記連結手段は、前記角柱状突起を搬送台車の走行方向の前後両側から挟持する前後一対の開閉自在な挟持片と、当該挟持片を各別に開閉駆動する一対のアクチュエーターとから構成され、前側の挟持片には、前記角柱状突起の接近を検出する検出手段が付設されている、請求項2に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項4】
前記後進用駆動手段は、同期走行台車の左右一対の車輪が取り付けられた車軸に設けられた受動輪と、この受動輪に対し圧接する駆動輪と、当該駆動輪を前記受動輪に対する圧接状態と離間状態とに切り換える切換え手段と、前記駆動輪を回転駆動するモーターとから構成されている、請求項2又は3に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項5】
前記搬送台車の床面に設けられた開口部には、当該開口部を閉じたときに搬送台車の床面の一部となる開閉自在な蓋板が併設され、前記リフターの昇降台の上昇により前記蓋板が持ち上げられて前記開口部が開くように構成された、請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項6】
前記蓋板は、搬送台車の床面から垂直に持ち上げ可能なものであって、底部には被係合部が設けられ、前記リフターの昇降台には、前記蓋板の被係合部と係合して当該昇降台上での蓋板を位置決めする係合部が設けられ、台車床面上に搬入された組付け部品支持台が前記蓋板を介してリフターの昇降台により持ち上げられるように構成された、請求項5に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項7】
前記リフターの昇降台は、リフター上端の昇降基台に対して一定範囲内で昇降自在に支持されると共に第一スプリングにより上昇端位置に付勢保持され、前記昇降基台には、上昇端位置にある前記昇降台に対して突出位置と退入位置との間で昇降自在に支持されると共に第二スプリングにより突出位置に付勢保持された蓋板検出用昇降ロッドが設けられ、前記第一スプリングと第二スプリングは、上昇端位置にある前記昇降台が蓋板のみを持ち上げたときは当該昇降台が下降せずに前記蓋板検出用昇降ロッドのみが下降するように設定され、昇降基台に対する前記昇降台の下降と、上昇端位置にある昇降台に対する前記蓋板検出用昇降ロッドの下降とを、各別に検出するセンサーが併設されている、請求項6に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項8】
前記組付け部品支持台は、前記搬送台車の走行経路外から当該搬送台車の床面上への乗り移り及び前記搬送台車の床面上から当該搬送台車の走行経路外への退出可能な組付け部品搬入台車上に支持され、前記リフターの昇降台は、搬送台車の床面上の定位置に停止した前記組付け部品搬入台車を貫通上昇して前記組付け部品支持台を持ち上げるように構成された、請求項1〜7の何れか1項に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項9】
前記組付け部品支持台は、前記組付け部品搬入台車上に昇降自在に取り付けられている、請求項8に記載の自動車などの組立て用搬送装置。
【請求項10】
前記搬送台車の床面には、前記組付け部品搬入台車を定位置に位置決めする位置決め手段が配設されている、請求項8又は9に記載の自動車などの組立て用搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−248657(P2009−248657A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96724(P2008−96724)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】