説明

自動車のアンダーカバー構造

【課題】製造の簡略化を図りつつ、フロアパネル底面に配設されたハーネス又はパイプを確実に保護することができる自動車のアンダーカバー構造を提供する。
【解決手段】自動車1のフロアパネル2の底面の少なくとも一部が平板状のアンダーカバー4により覆われた自動車のアンダーカバー構造であって、フロアパネル2の底面に沿って、ハーネス36又はパイプの少なくとも一方が配設され、アンダーカバー4の上面に、ハーネス36又はパイプを保護するための突出部62が、ハーネス36又はパイプに近接又は接触するように突設され、突出部62が、ハーネス36又はパイプの直径以上の高さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロアパネルの底面がアンダーカバーで覆われるように構成された自動車のアンダーカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアパネルの底面をアンダーカバーで覆う技術が従来から知られている。自動車のアンダーカバーに関しては種々の技術が提案されており、例えば、特許文献1には、車体の底面に沿って流れる気流の一部が燃料タンク等に衝突して車幅方向外側へ流れないようにするために、アンダーカバーの一部の形状を変更する技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、車体の底面に沿った気流全体が、車体前後方向に沿って流れるため、走行時に車体が受ける空気抵抗を低減することができる。
【0003】
ところで、フロアパネルの底面には、ブレーキ配管等のパイプが配設されることがある。また、主としてバッテリが車両の後部に搭載される場合、そのバッテリと他の搭載機器とを電気的に接続するハーネスは、フロアパネルの底面に配設されることとなる。これらの場合において、フロアパネルの底面がアンダーカバーにより覆われていれば、フロアパネル底面に配設されたハーネスやパイプも、アンダーカバーにより下側から覆われることとなるため、ハーネス等が地面に接触することを防止できる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−62494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フロアパネル底面のハーネスやパイプがアンダーカバーで覆われていても、悪路を走行する際などにアンダーカバーの底面が路面または路面上の石等に強い力で接触すると、ハーネス等がフロアパネルの底面とアンダーカバーとに挟まれて損傷することが懸念される。
【0006】
一方、フロアパネル底面のブレーキ配管を下側から覆うための専用のカバー部材を、フロアパネル底面の必要箇所に取り付ける技術が従来から知られている。この技術によれば、専用のカバー部材によりブレーキ配管を保護することはできるが、アンダーカバーとは別にブレーキ配管専用のカバー部材を取り付ける必要がないため、部材の取付け工数が増加してしまう問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、製造の簡略化を図りつつ、フロアパネル底面に配設されたハーネス又はパイプを確実に保護することができる自動車のアンダーカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1の発明に係る自動車のアンダーカバー構造は、
自動車のフロアパネルの底面の少なくとも一部が平板状のアンダーカバーにより覆われた自動車のアンダーカバー構造であって、
前記フロアパネルの底面に沿って、ハーネス又はパイプの少なくとも一方が配設され、
前記アンダーカバーの上面に、前記ハーネス又はパイプを保護するための突出部が、前記ハーネス又はパイプに近接又は接触するように突設され、
前記突出部が、前記ハーネス又はパイプの直径以上の高さを有することを特徴とする。
【0009】
本願の第2の発明に係る自動車のアンダーカバー構造は、第1の発明において、
前記突出部は、前記ハーネス又はパイプの延在方向に沿って連続する壁状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本願の第3の発明に係る自動車のアンダーカバー構造は、第1または第2の発明において、
前記突出部は、前記ハーネス又はパイプの幅方向において前記ハーネス又はパイプを挟む両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0011】
本願の第4の発明に係る自動車のアンダーカバー構造は、
前記アンダーカバーは樹脂からなり、
前記突出部は前記アンダーカバーに一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の第1の発明によれば、フロアパネルの底面に沿って配設されたハーネス又はパイプを保護するための突出部が、ハーネス等に近接又は接触するようにアンダーカバーの上面に突設されており、その突出部がハーネス等の直径以上の高さを有する。そのため、アンダーカバーの底面が路面又は路面上の障害物等に強い力で接触したときでも、ハーネス等の近傍においてフロアパネル底面とアンダーカバー上面との間で突出部が突っ張ることによって、ハーネス等がフロアパネルとアンダーカバーとに挟まれて損傷することを確実に防止できる。また、アンダーカバーの突出部によりハーネス等を保護できるため、ハーネス等を保護するための専用のカバー部材を取り付ける必要がなく、製造の簡略化を図ることができる。
【0013】
本願の第2の発明によれば、アンダーカバー上面の突出部が、ハーネス等の延在方向に沿って連続する壁状に形成されているため、ハーネス等を、その長さ方向の大部分において確実に保護することができる。また、そのように連続的に形成された突出部が、アンダーカバーのリブのような機能を果たすことで、アンダーカバーの撓みを防止することもできる。
【0014】
本願の第3の発明によれば、アンダーカバー上面の突出部が、ハーネス等の幅方向においてハーネス等を挟む両側にそれぞれ設けられているため、ハーネス等を一層確実に保護することができる。
【0015】
本願の第4の発明によれば、突出部が樹脂製のアンダーカバーと一体に形成されているため、部品点数を削減することができるとともに、突出部をアンダーカバーに取り付ける手間を省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るアンダーカバー構造が適用された自動車の一例を示す底面図である。
【0018】
図1に示す自動車1の車体前部には、エンジン12が搭載されている。エンジン12は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム14と、フロントサイドフレーム14の下方に配置されたサブフレーム15とにより支持されている。
【0019】
一方、自動車1の車体後部には、車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム16が設けられ、これらリヤサイドフレーム16の後端部間に跨るリヤフロアパン34の上にバッテリ34が搭載されている。バッテリ34には、例えば25mm以上30mm以下の直径を有するハーネス36が接続されている。ハーネス36は、リヤフロアパン34に形成された孔(不図示)を通してリヤフロアパン34の下側空間に導かれるようにしてある。リヤフロアパン34の下側空間に導かれたハーネス36は、車幅方向における排気管26の迂回ルートとは反対側で且つフロントサイドフレーム14及びリヤサイドフレーム16よりも内側の部分を通るように車体前後方向に沿って配設されている。
【0020】
自動車1の車体前後方向中間部、すなわち前輪8と後輪10との間の部分には、車体前後方向に延びる左右一対のサイドシル18が設けられている。各サイドシル18の車幅方向外側には、フロントドア28及びリヤドア30が設けられている。フロアパネル2は、左右のサイドシル18間に跨って設けられている。なお、図3のフロントシート38部分における断面図に示すように、フロアパネル2の上面の所定箇所には、車体前後方向に延在するフロアフレーム20が取り付けられ、フロアフレーム20に対応するフロアパネル2部分には、下方に凹入した凹溝21が、車体前後方向に延びるように形成されている。また、フロアパネル2の下面の所定箇所には、車体前後方向に延在するブラケット45が取り付けられている。
【0021】
図1に戻って、フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内側へ凹入するトンネル部22が形成されている。トンネル部22には、エンジン12とマフラー40とを接続する排気管26が通されている。また、トンネル部22には、排気管26に加えて、排気管26に接続された触媒ユニット24が配置されている。なお、トンネル部22よりも車体後方側の部分において、排気管26は燃料タンク27を避けるように迂回して配置されている。
【0022】
トンネル部22を挟む左右両側のフロアパネル2部分の底面は、平板状のアンダーカバー4によりそれぞれ覆われている。本実施形態においては、一方のアンダーカバー4とフロアパネル2との間に、車体前後方向に延びる上述のハーネス36が通されるようにしてある。なお、他方のアンダーカバー4とフロアパネル2との間にもハーネス36を通すようにしてもよい。また、ハーネス36と同様、図示しないブレーキ配管又は空調用配管等のパイプを、フロアパネル2とアンダーカバー4との間を通過させるようにしてもよい。
【0023】
次に、図2〜図4を参照しながら、本発明の第1の実施形態について具体的に説明する。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係るアンダーカバー4を上方から見た斜視図である。アンダーカバー4は、樹脂により一体成型されており、略矩形状の底部42と、底部42の周縁から立ち上がる周壁部44とを備えている。底部42の周縁部には複数の水抜き孔52が形成されている。周壁部44の所定箇所には、フロアパネル2、又はサイドシル18に固定される複数の固定部46が設けられている。また、アンダーカバー4は、フロアパネル2に固定される別の固定部50を複数備え、これらの固定部50は、車幅方向における底部42の中央部から立ち上がるように例えば円錐台状に形成されている。これらの固定部46,50は、フロアパネル2下面に取り付けられたブラケット45、フロアパネル2の凹溝21、又はサイドシル18のインナパネルに対して所定の固定具を用いて固定される(図3参照)。なお、周壁部44の車体前方側部分と車体後方側部分には、ハーネス36を通過させるための切り欠き部48がそれぞれ設けられている。
【0025】
そして、アンダーカバー4の底部42の上面には、ハーネス36を保護する保護部60が設けられている。本実施形態において、保護部60は、アンダーカバー4に一体に形成されている。保護部60は、底部42の上面に突設された一対の突出部62を備えている。突出部62は、ハーネス36の幅方向においてハーネス36を挟む両側にそれぞれ設けられており、各突出部62は、後述のようにハーネス36を保護する機能を有する。各突出部62は、ハーネス36の延在方向に沿って連続する壁状に形成されている。突出部62は、突出部62と底部42とに跨るようにして形成されたリブ64により、補強されている。リブ64は、突出部62の長さ方向に間隔を空けて複数設けられている。一対の突出部62は、ハーネス36の直径以上の所定間隔を空けて互いに対向配置されている。ハーネス36は、一対の突出部62の間を通されるように案内されて配置され、各突出部62が、ハーネス36に近接又は接触するようにしてある。このような配置により、突出部62は、ハーネス36を保護する機能に加えて、ハーネス36を案内するガイド部材としても機能する。本実施形態において、各突出部62は、車体前後方向においてアンダーカバー4の略全体に亘って設けられており、これにより、ハーネス36の保護機能及び案内機能が高められている。また、このようにハーネス36の延在方向に沿って連続的に形成された突出部62は、アンダーカバー4のリブのような機能を果たし、これにより、アンダーカバー4の撓みが防止される。そのため、例えば特許文献1に開示されているような、アンダーカバーを補強するためにカバー底面部から下方に突出して設けられたリブが不要となる。したがって、アンダーカバー4の底面を平滑にすることができることから、アンダーカバー4の下側の気流の乱れを低減でき、また、リブによる車体の最低地上高の低下を回避できる。
【0026】
図3に示すように、突出部62は、ハーネス36の直径以上の高さを有する。これにより、例えば、図4に示すように悪路を走行中にアンダーカバー4の底面が路面70上の石等の障害物72に強い力で接触したときでも、ハーネス36の近傍においてフロアパネル2底面とアンダーカバー4上面との間で突出部62が突っ張ることによって、ハーネス36がフロアパネル2とアンダーカバー4とに挟まれて損傷することを確実に防止できる。
【0027】
なお、第1の実施形態では、ハーネス36を確実に保護する観点において好ましい構成を説明したが、本発明においては、第1の実施形態に種々の変更を加えることが可能である。
【0028】
例えば、第1の実施形態において、突出部62を車体前後方向においてアンダーカバー4の略全体に亘って設ける場合について説明したが、突出部62は、必要箇所にのみ部分的に設けるようにしてもよい。
【0029】
また、第1の実施形態においては、一対の突出部62により1本のハーネス36を保護する構成について説明したが、一対の突出部62間に複数のハーネス36を通して、これら複数のハーネス36を保護するようにしてもよい。
【0030】
さらに、第1の実施形態において、ハーネス36を挟むようにしてハーネス36の両側にそれぞれ突出部62を設ける場合について説明したが、ハーネス36の片側にのみ突出部62を設けるようにしてもよい。
【0031】
さらにまた、第1の実施形態において、突出部62を壁状に形成する構成について説明したが、突出部62の形状は、ハーネス36を保護し得る形状であれば、必ずしも限定されないものとする。
【0032】
加えて、第1の実施形態においては、アンダーカバー4の突出部62によりハーネス36を保護する構成について説明したが、本発明においては、突出部62によりブレーキ配管又は空調用配管等のパイプを保護するようにしてもよく、その場合も第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
次に、図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、以下の説明において、第1の実施形態における場合と実質的に同様の構成を備え実質的に同様の作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0034】
図5に示すように、第2の実施形態においては、アンダーカバー74とは別体の保護部材80がアンダーカバー74の底部42の上面に取り付けられている。保護部材80は、ハーネス36の延在方向に間隔を空けて複数設けられており、これら複数の保護部材80によりハーネス36を案内可能となっている。各保護部材80は、ハーネス36の直径以上の所定間隔を空けて対向する一対の突出部82と、これらの突出部82の下端部間に跨る取付部84とを備え、全体として断面倒コ字状に形成されている。保護部材80は、その取付部84がリベット又は接着剤等によりアンダーカバー74の底部42に固定されることで、アンダーカバー74に取り付けられている。アンダーカバー74に保護部材80が取り付けられた状態において、保護部材80の突出部82は、アンダーカバー74の底部42から上方へ突出するように配置される。
【0035】
第1の実施形態と同様、本実施形態に係る突出部82も、ハーネス36の直径以上の高さを有する。そのため、一対の突出部82間にハーネス36を通すことにより、アンダーカバー74の底面が路面70又は路面70上の障害物72に強い力で接触しても、ハーネス36の近傍においてアンダーカバー74とフロアパネル2との間で突出部82が突っ張るため、ハーネス36がアンダーカバー74とフロアパネル2とに挟まれて損傷することを防止できる。
【0036】
なお、第2の実施形態についても、本発明から逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
例えば、第2の実施形態において、複数の保護部材80が間隔を空けて設けられる構成について説明したが、長尺の保護部材80を1つのみ設けるようにしてもよい。
【0038】
また、図5において、一対の突出部82により1本のハーネス36を保護する構成が図示されているが、一対の突出部82間に複数のハーネス36を通して、これら複数のハーネス36を保護するようにしてもよい。
【0039】
さらに、第2の実施形態において、保護部材80が、一対の突出部82を備えた断面倒コ字状の部材である場合について説明したが、保護部材80の形状はこれに限定されず、例えば、保護部材80は、取付部84と1つの突出部82とからなる断面L字状の部材であってもよく、この場合も、ハーネス36の片側に配置される1つの突出部82によりハーネス36を保護することが可能である。
【0040】
加えて、第2の実施形態においては、突出部82によりハーネス36を保護する構成について説明したが、突出部82によりブレーキ配管又は空調用配管等のパイプを保護するようにしてもよく、その場合も同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係るアンダーカバー構造が適用された自動車の一例を示す底面図である。
【図2】第1の実施形態に係るアンダーカバーを上方から見た斜視図である。
【図3】図2に示すアンダーカバーの取付け状態を示す断面図である。
【図4】図3に示すように取り付けられたアンダーカバーの底面が路面上の障害物に衝突した状態を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係るアンダーカバーを上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 自動車
2 フロアパネル
4,74 アンダーカバー
12 エンジン
20 フロアフレーム
22 フロアパネルのトンネル部
24 触媒ユニット
26 排気管
32 リヤフロアパン
34 バッテリ
36 ハーネス
60 保護部
62 突出部
80 保護部材
82 突出部
84 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロアパネルの底面の少なくとも一部が平板状のアンダーカバーにより覆われた自動車のアンダーカバー構造であって、
前記フロアパネルの底面に沿って、ハーネス又はパイプの少なくとも一方が配設され、
前記アンダーカバーの上面に、前記ハーネス又はパイプを保護するための突出部が、前記ハーネス又はパイプに近接又は接触するように突設され、
前記突出部が、前記ハーネス又はパイプの直径以上の高さを有することを特徴とする自動車のアンダーカバー構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記ハーネス又はパイプの延在方向に沿って連続する壁状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のアンダーカバー構造。
【請求項3】
前記突出部は、前記ハーネス又はパイプの幅方向において前記ハーネス又はパイプを挟む両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のアンダーカバー構造。
【請求項4】
前記アンダーカバーは樹脂からなり、
前記突出部は前記アンダーカバーに一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車のアンダーカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−241792(P2009−241792A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91809(P2008−91809)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】