説明

自動車のフィニッシャカバー

【課題】 車両前方側へ低く傾斜した形状を採用してエンジンフードやその他の周辺部材のレイアウトに対応しつつ、車両走行風またはファンの強制風を熱交換器の上部へ導風して、熱交換器の冷却性能を向上できる自動車のフィニッシャカバーの提供。
【解決手段】 自動車のフロントグリル50とラジエータコアサポート1の上部との間を車幅方向に亘って車両前方側に低く傾斜した状態で覆う自動車のフィニッシャカバー40であって、フィニッシャカバー40が、車両走行風またはファンFの強制風Zをラジエータコアサポート1に搭載された一体型交換器2の上部へ導くリブ41を有することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフィニッシャカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントグリルとラジエータコアサポートの上部との間を車幅方向に亘って覆うフィニッシャカバーの技術が公知になっている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2005−47370号公報
【特許文献2】特開2005−35435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明においては、エンジンフードやその他の周辺部材の設置レイアウトによりフィニッシャカバーを車両前方側へ低く傾斜した形状にしなければならない場合があり、この際、フィニッシャカバーの底部に車両走行風またはファンの強制風が停滞したり環流してしまい、熱交換器の上部に上記風が当たりにくくなって熱交換器の冷却性能が低下してしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、車両前方側へ低く傾斜した形状を採用してエンジンフードやその他の周辺部材のレイアウトに対応しつつ、車両走行風またはファンの強制風を熱交換器の上部へ導風して熱交換器の冷却性能を向上できる自動車のフィニッシャカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、自動車のフロントグリルとラジエータコアサポートの上部との間を車幅方向に亘って車両前方側に低く傾斜した状態で覆う自動車のフィニッシャカバーであって、前記フィニッシャカバーが、車両走行風またはファンの強制風をラジエータコアサポートに搭載された熱交換器の上部へ導く導風手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、自動車のフロントグリルとラジエータコアサポートの上部との間を車幅方向に亘って車両前方側に低く傾斜した状態で覆う自動車のフィニッシャカバーであって、前記フィニッシャカバーが、車両走行風またはファンの強制風をラジエータコアサポートに搭載された熱交換器の上部へ導く導風手段を有するため、車両前方側へ低く傾斜した形状を採用してエンジンフードやその他の周辺部材のレイアウトに対応しつつ、車両走行風またはファンFの強制風を熱交換器の上部へ導風して熱交換器の冷却性能を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
なお、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
図1は本発明の実施例1のフィニッシャカバーが採用されたラジエータコアサポートの全体斜視図、図2は本実施例1のラジエータコアサポートを示す前方斜視図、図3は同後方斜視図、図4は本実施例1の一体型熱交換器の前方斜視図、図5は同後方斜視図である
【0009】
図6は本実施例1の一体型熱交換器の模式図、図7は本実施例1のフィニッシャカバーの前方斜視図、図8は同底面図、図9はラジエータコアサポートに一体型熱交換器を搭載した状態を示す前方斜視図、図10は本実施例1の作用を説明する図である。
【0010】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1では、ラジエータコアサポート1と、一体型熱交換器2(請求項の熱交換器に相当)と、フィニッシャカバー40が備えられている。
図2、3に示すように、ラジエータコアサポート1は、左右方向に延設されたラジエータコアサポートアッパ3と、ラジエータコアサポートアッパ3と並行するラジエータコアサポートロア4と、ラジエータコアサポートアッパ3とラジエータコアサポートロア4の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド5a,5bと、これらラジエータコアサポートアッパ3、ラジエータコアサポートロア4、ラジエータコアサポートサイド5a,5bから内側に張り出して開口部O1,O2を形成するシュラウド部6で構成され、全体が樹脂で一体的に形成されている。
なお、ラジエータコアサポート1は樹脂製に限らず、金属製、あるいは全体の一部を金属製にして樹脂モールドさせても良い。
【0011】
ラジエータコアサポートアッパ3はラジエータコアサポートサイド5a,5bの前後幅の約半分の前後幅で形成される他、その上面には、左右両端部に固定孔3aが形成されると共に、これら両者の間に所定間隔で合計4カ所の固定孔3bがそれぞれ形成されている。
【0012】
ラジエータコアサポートサイド5a,5bの上端部には、後方側から図外のエンジンの吸気ダクトまたはエアコンの吸気ダクト等が接続される開口部7a,7b形成されると共に、該開口部7aに近接して車両上下方向に長い矩形状の貫通孔8が形成されている。
また、ラジエータコアサポートサイド5a,5bの中途部には車幅方向に突出したヘッドランプステイ9a,9bが設けられている。
【0013】
ラジエータコアサポートロア4の上面には、左右両端部に固定孔4aがそれぞれ形成されている。
【0014】
図4、5に示すように、一体型熱交換器2は、コンデンサ10と、このコンデンサ10の後方側に配置されたラジエータ11で構成されている。
コンデンサ10は、一対のタンク12a,12bと、この一対のタンク12a,12bの間に配置されたコア部13で構成されている。
コア部13は、それぞれ対応するタンク12a,12bに挿通し固定された複数の偏平管状のチューブ14と、各チューブ14同士間に配置された波状のフィン15で構成されている。
【0015】
また、図6に示すように、コンデンサ10のタンク12aの内部はディバイドプレートD1,D2で仕切られて3つの室R1,R3,R6が形成される他、図4、5に示すように、室R1に連通した状態でコネクタKを介して配管30が設けられ、室R6に連通した状態で接続管16及びコネクタK(図4参照)を介して配管31が設けられている。また、配管30.31の先端部同士は樹脂製で板状のブラケットBを貫通した状態で互いに固定されている。
一方、タンク12bの内部はディバイドプレートD3,D4で仕切られて3つの室R2,R4,R5が形成される他、接続管17a,17b(図4参照)を介して室R4,R5に連通した状態でレシーバ17が設けられている。
【0016】
ラジエータ11は、一対のタンク18,19と、この一対のタンク18,19の間に配置されたコア部20で構成されている。
タンク18の上部後面にはその内部と連通した状態で入力ポートP1が設けられ、タンク19の下部後面にはその内部と連通した状態で出力ポートP2が設けられている。
コア部20は、それぞれ対応するタンク18,19に挿通し固定された複数のチューブ21と、各チューブ21と交互に配置され、且つ、コンデンサ10と共用する複数のフィン15で構成されている。なお、フィン15はコンデンサ10と共用する必要はなく、それぞれ別体でも設けても良い。
【0017】
その他、一体型熱交換器2には、それぞれ対応するタンク12a,12b,18,19に挿通し固定された一対のレインフォース21a,21bでコア部13,20が連結補強されている。
また、一体型熱交換器2の左右上下端部にはそれぞれ上下方向に突出した車両搭載ピンPが設けられている。
【0018】
図7、8に示すように、フィニッシャカバー40は、車幅方向に亘って全体が前方へ低く傾斜した形状を成して樹脂製で一体的に形成されている。
フィニッシャカバー40の後端部においてラジエータコアサポートアッパの固定孔3bと対応する位置には固定孔40bがそれぞれ形成されている。
一方、フィニッシャカバー40の前端部には車幅方向に亘って合計4カ所の固定孔40cが形成されている。
【0019】
そして、フィニッシャカバー40の底面には、その前端部から後方へ所定の奥位置まで板状に突出した複数のリブ41(導風手段に相当)が形成されている。
具体的には、複数のリブ41のうち、リブ41aはフィニッシャカバー40の前後奥行きの最も長い部位でもある中央に形成される他、このリブ41を挟んで両側にリブ41b,41c、さらに、両リブ41b,41cの外側にリブ41d,41eが形成されている。
また、図10に示すように、リブ41の下端は水平に形成され、これによって、リブ41の高さは後端部から前端部へ行くにつれて小さくなるように形成されている。
また、フィニッシャカバー40の底面には、リブ41a〜41eを左右方向に結合するようにリブ42が形成される他、このリブ42と並行するように左右方向に伸びるリブ43,44が形成され、これによって、フィニッシャカバー40の必要剛性が確保されている。
【0020】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1、一体型熱交換器2、フィニッシャカバー40を固定する際には、先ず、一体型熱交換器2をラジエータコアサポート1の前方側から斜めに挿入した後、左右下端の車両搭載ピンPをラジエータコアサポートロア4のそれぞれ対応する固定孔4aに図外のマウントゴムを介して載置する。
【0021】
次に、一体型熱交換器2を後方側へ回動させて起立した状態とした後、左右上端の車両搭載ピンPを図外のマウントゴム及びブラケットを介してラジエータコアサポートアッパ3のそれぞれ対応する固定孔3aに固定することにより、図10に示すように、ラジエータコアサポート1に一体型熱交換器2を固定する。
【0022】
次に、ラジエータコアサポートアッパ3の上方からフィニッシャカバー40を重ねた状態として、各固定孔3bとそれぞれ対応する各固定孔40bに図外のボルト等の固定手段を挿通して固定することにより、図1に示すように、ラジエータコアサポート1にフィニッシャカバー40を固定する。
【0023】
そして、図10に示すように、ラジエータコアサポート1には、開口部O1,O2を臨んだ状態でファンFが装着される他、各部に様々な周辺部材が装着された状態で車両に搭載される。
この際、フィニッシャカバー40の前端部はフロントグリル50を備えるバンパフェイシア51に重ねられた状態で、各固定孔40cとバンパフェイシア51のそれぞれ対応する固定孔(図示せず)に図外のクリップ等の固定手段が挿入されて固定され、これによって、フィニッシャカバー40がラジエータコアサポート1の上部とフロントグリル50との間を覆うように設けられる。
【0024】
次に、作用を説明する。
図6に示すように、ラジエータ11は、エンジン側から入力ポートP1を介してタンク18に流入した約110℃前後の流通媒体Xは、コア部20の各チューブ21を流通する間にコア部20を通過する車両走行風または図外のファンFによる強制風とフィン15を介して熱交換されて約60℃前後まで冷却された後、タンク19に流入して出力ポートP2から排出され、ラジエータとして機能する。
【0025】
一方、コンデンサ10は、コンプレッサ側から配管30及びコネクタKを介してタンク12aの室R1に流入した約70℃前後の流通媒体Yは、コア部13の室R1,R2に対応する各チューブ14を流通する間にコア部13を通過する車両走行風またはファンFによる強制風とフィン15を介して熱交換された後、タンク12bの室R2に流入する。
【0026】
次に、室R2内の流通媒体Yは、コア部13の室R2,R3に対応する各チューブ14を流通してタンク12aの室R3に流入し、次に、室R3内の流通媒体Yは、コア部13の室R3,R4に対応する各チューブ14を流通する間にコア部13を通過する車両走行風またはファンFによる強制風とフィン15を介して熱交換された後、タンク12bの室R4に流入する。
【0027】
次に、室R4内の流通媒体Yは、接続管17aを介してレシーバ17で気液分離されて接続管17bを介して室R5に流入し、次に、室R5の液体の流通媒体Yは、コア部13の室R5,R6に対応する各チューブ14を流通する間にコア部13を通過する車両走行風またはファンFによる強制風とフィン15を介して熱交換されることにより、約45℃前後まで過冷却されてタンク12aの室R6に流入する。
最後に、室R6内の流通媒体Yは、接続管16、コネクタK、配管31を介して図外のエバポレータ側へ排出され、コンデンサとして機能する。
【0028】
ここで、従来の発明にあっては、エンジンフードやその他の周辺部材のレイアウトによりフィニッシャカバーを車両前方側へ低く傾斜した形状にしなければならない場合があり、この際、フィニッシャカバーの底部に車両走行風またはファンの強制風が停滞したり環流してしまい、熱交換器の上部に上記風が当たりにくくなって熱交換器の冷却性能が低下してしまうという問題点があった。
【0029】
これに対し、本実施例1の自動車のフィニッシャカバーでは、図10に示すように、フロントグリル50を通過した車両走行風またはファンFの強制風Zが、リブ41に沿って後方へスムーズに導かれた後、一体型熱交換器2のコア部13,20の上部(図中の範囲W)に当たり、これによって、フィニッシャカバー40の底部付近で上記風Zが停滞したり環流することなく、一体型熱交換器2の冷却性能を十分に発揮できる。
以上、説明したように、本実施例1の自動車のフィニッシャカバーにあっては、自動車のフロントグリル50とラジエータコアサポート1の上部との間を車幅方向に亘って車両前方側に低く傾斜した状態で覆う自動車のフィニッシャカバー40であって、フィニッシャカバー40が、車両走行風またはファンFの強制風Zをラジエータコアサポート1に搭載された一体型交換器2の上部へ導くリブ41を有するため、車両前方側へ低く傾斜した形状を採用してエンジンフードやその他の周辺部材のレイアウトに対応しつつ、車両走行風またはファンFの強制風Zを一体型交換器2の上部へ導風して、一体型交換器2の冷却性能を向上できる。
【実施例2】
【0030】
以下、実施例2を説明する。
なお、本実施例2において、実施例1と同様の構成部材については同一の符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0031】
図11は本発明の実施例2の自動車のフィニッシャカバーの斜視図、図12は図11のS12−S12線における作用を説明する図である。
【0032】
図11、12に示すように、本実施例2の自動車のフィニッシャカバーでは、フィニッシャカバー60の底部に前後方向に開口されたダクト61が形成されると共に、このダクト61内は仕切り部62によって左右の通路63,64に区切られている点が実施例1と異なる。
なお、仕切り部62の位置、形状、形成数については適宜設定できる。
また、ダクト61内の通路63,64の後端部の高さは幾分下方へ大きくなるように形成されている。
【0033】
従って、図12に示すように、フロントグリル50を通過した車両走行風またはファンFの強制風Zを、ダクト61の通路63,64によって後方へスムーズに導いた後、一体型熱交換器2のコア部13,20の上部へ当てて冷却性能を向上できる。
【0034】
また、フロントグリル50の底部付近で上記風Zが停滞したり環流する虞もない。
【0035】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、リブ41の形成数、形状、配置については適宜設定できるが、フィニッシャカバー40の前後幅が最も長い部位の両側に少なくとも1つ以上設けるようにすると良い。
【0036】
また、熱交換器の種類は一体型熱交換器に限らず、ラジエータ、コンデンサ、インタークーラ、オイルクーラ等のその他の一般的な全ての熱交換器に適用できる。
さらに、フィニッシャカバーに各種センサ等の周辺部材を固定・装着しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1のフィニッシャカバーが採用されたラジエータコアサポートの全体斜視図である。
【図2】実施例1のラジエータコアサポートを示す前方斜視図である。
【図3】実施例1のラジエータコアサポートを示す後方斜視図である。
【図4】本実施例1の一体型熱交換器の前方斜視図である。
【図5】本実施例1の一体型熱交換器の後方斜視図である。
【図6】本実施例1の一体型熱交換器の模式図である。
【図7】本実施例1のフィニッシャカバーの前方斜視図である。
【図8】本実施例1のフィニッシャカバーの底面図である。
【図9】ラジエータコアサポートに一体型熱交換器を搭載した状態を示す斜視図である。
【図10】本実施例1の作用を説明する図である。
【図11】本実施例2のフィニッシャカバーの前方である。
【図12】本実施例2の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
B ブラケット
D1、D2 ディバイドプレート
K コネクタ
O1、O2 開口部
P1 入力ポート
P2 出力ポート
R1、R2、R3、R4、R5、R6 室
1 ラジエータコアサポート
2 一体型熱交換器
3 ラジエータコアサポートアッパ
3a、3b、4a 固定孔
4 ラジエータコアサポートロア
5a、5b ラジエータコアサポートサイド
6 シュラウド部
7a、7b 開口部
8 貫通孔
9a、9b ヘッドランプステイ
10 コンデンサ
11 ラジエータ
12a、12b、18、19 タンク
13、20 コア部
14 チューブ
15 フィン
16、17a、17b 接続管
17 レシーバ
21a、21b レインフォース
30、31配管
40 フィニッシャカバー
40a、40b、40c 固定孔
41、32、43、44 リブ
41a、41b、41c、41d
50 フロントグリル
51 バンパフェイシア
60 フィニッシャカバー
61 ダクト
62 仕切り部
63、64 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントグリルとラジエータコアサポートの上部との間を車幅方向に亘って車両前方側に低く傾斜した状態で覆う自動車のフィニッシャカバーであって、
前記フィニッシャカバーが、車両走行風またはファンの強制風をラジエータコアサポートに搭載された熱交換器の上部へ導く導風手段を有することを特徴とする自動車のフィニッシャカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−290528(P2007−290528A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120314(P2006−120314)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】