自動車のフレーム構造
【課題】車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造において、フロントサイドフレームの折曲開始後におけるエネルギー吸収量を増大させることができるフレーム構造を提供する。
【解決手段】フレーム部材5における前記折曲予定部T2を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム部材5の折曲途中から、該フレーム部材5における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部5bの内面と当接する補強部材50を設ける。
【解決手段】フレーム部材5における前記折曲予定部T2を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム部材5の折曲途中から、該フレーム部材5における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部5bの内面と当接する補強部材50を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部車体の衝撃吸収構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自動車のフレーム構造として、車体前後方向に略直線状に延びて後端部がダッシュパネルに接続されるフレーム部材を有するものにおいて、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向に折曲する折曲予定部を設けたものが開示されている。このような構成によれば、フレーム部材に入力された衝撃エネルギーが折曲により吸収されることとなる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−220977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載のものにおいては、フレーム部材は車体前後方向に延びる閉断面構造とされており、閉断面でない場合よりも折曲開始時におけるエネルギー吸収量を大きくすることができるが、このエネルギー吸収量の増加量は折曲開始直後から一気に減少する傾向があり、その結果、衝撃エネルギーを十分に吸収できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、フロントサイドフレームの折曲開始後におけるエネルギー吸収量を増大させることができるフレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造であって、前記フレーム部材における前記折曲予定部を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接する補強部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材における前記フレーム部材と当接する部位は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部よりも前記一方側とは反対側の側面部に近接して設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、左右の側面部とこれらの上端間または下端間に設けられた水平面部とを有して、上部側または下部側が開放される断面凵字状とされていると共に、該補強部材の前記車幅方向一方側の側面部が、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部に接合され、該補強部材の他方側の側面部が、前記フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該側面部とで車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該補強部材単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項4または請求項5に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、前記フレーム部材と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項5または請求項6に記載の自動車のフレーム構造において、前記フレーム部材は、車幅方向に離間して一対設けられていると共に、これらのフレーム部材の間に車両構成部材が配設されており、前記折曲についての車幅方向の一方は、車幅方向外方であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、前記折曲予定部は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部とは反対側の側面部に、上下に延び、前記車幅方向の一方側に凹む縦ビードが設けられることにより構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項8に記載の自動車のフレーム構造において、略車体前後方向に延び、前端部が前記フレーム部材に前記補強部材の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム部材後方の車体構成部材に接続される補強メンバが設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に記載の発明は、前記請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、複数の折曲予定部が設けられており、前記補強部材は、これらの折曲予定部のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部にのみ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について説明する。
【0018】
まず、請求項1に記載の発明によれば、前記フレーム部材における前記折曲予定部を含む前後所定範囲の内部空間に設けられた補強部材が、前記フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接することとなる。したがって、当接した後において、フレーム部材の折曲が一気に進行するのが抑制されると共に、該補強部材を変形させることに伴って、該補強部材がない場合よりも変形荷重が増加し、かつエネルギー吸収量の総量が増大することとなる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記補強部材における前記フレーム部材と当接する部位は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部よりも前記一方側とは反対側の側面部に近接して設けられているから、補強部材とフレーム部材とをできるだけ早く当接させることができる。すなわち、当接によるエネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、簡単な構造の部材によりエネルギーの吸収量増大効果が実現することができると共に、該部材の一方側の側面部を前記フレーム部材の前記一方側の側面部に溶接により容易に組み付けることができる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該側面部とで車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、補強部材の剛性が高くなり、当接によるエネルギーの吸収量を一層増大させることができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該補強部材単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、フレーム部材の形状、板厚等に関係なく、エネルギー増大量吸収効果を得ることができる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記補強部材は、前記フレーム部材と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成しているから、エネルギー吸収量を一層増大させることができる。そして、車幅方向に2つ重ねて形成されているから、上下方向に2つ重ねて形成されているような場合よりも、車幅方向への折曲に対する剛性をあげすぎることがない。したがって、例えば前記フレーム部材の幅が狭く、折曲エネルギーを十分に吸収できないような場合に大きな効果が生じる。
【0024】
また、請求項7に記載の発明によれば、記フレーム部材は、車幅方向に離間して一対設けられていると共に、これらのフレーム部材の間に車両構成部材が配設されている場合に、前記折曲についての車幅方向の一方は、車幅方向外方であるから、折曲したフレーム部材が車両構成部材に当接することがない。換言すれば、左右のフレーム部材の間に車両構成部材が配設されている場合でも、車両構成部材との当接を回避しつつ、エネルギーを吸収することができる。
【0025】
また、請求項8に記載の発明によれば、前記折曲予定部は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部とは反対側の側面部に、上下に延び、前記車幅方向の一方側に凹む縦ビードが設けられることにより構成されているから、折曲点及び折曲方向が安定することととなる。
【0026】
また、請求項9に記載の発明によれば、略車体前後方向に延び、前端部が前記フレーム部材に前記補強部材の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム部材後方の車体構成部材に接続される補強メンバが設けられているから、前記フレーム部材の後端側が補強されることとなる。また、エネルギーの吸収の一部を補強メンバにより行うことが可能となり、補強部材の前後長等の設定自由度が向上することとなる。
【0027】
また、請求項10に記載の発明によれば、前記折曲予定部は複数設けられており、前記補強部材は、これらの折曲予定部のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部にのみ設けられているから、補強部材による重量増を抑制しつつ、エネルギーの吸収量を効率的に増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車のフレーム構造について説明する。
【0029】
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る自動車1の車体前部には、エンジンEGが収容されるエンジンルームZ1と乗員が搭乗する車室Z2とを仕切るダッシュパネル2が設けられている。
【0030】
ダッシュパネル2の左右両端部にはそれぞれ、上下方向に延び、フロントドア(図示せず)が枢支されるヒンジピラー3(一方のみ図示されている)が設けられている。
【0031】
左右のヒンジピラー3の上端部側から前方に左右一対のエプロンレインフォースメント4,4が延びている。
【0032】
エプロンレインフォースメント4,4に対して平面視でほぼ平行に、かつ車幅方向内方に離間した位置で、左右一対のフロントサイドフレーム5,5が車体前後方向に延びている。
【0033】
車幅方向でエプロンレインフォースメント4とフロントサイドフレーム5との間には、前輪用のホイールハウス6が設けられている。
【0034】
フロントサイドフレーム5及びエプロンレーフォースメント4の前端部には、これらに跨って平板状のプレート7,7が取り付けられている。左右のプレート7,7間には、クラッシュカン8,8を介して、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント9が取り付けられている。クラッシュカン8,8は、前後方向の衝撃荷重が入力されたときに車体前後方向に圧縮変形するように構成されている。
【0035】
ダッシュパネル2の下部は、後方へ湾曲して、下端部がフロアパネル10の前端部に接合されている。ダッシュパネル2の下部及びフロアパネル10には、車幅方向ほぼ中央において前後方向に延び、かつ上方へ膨出するトンネル部11が設けられている。
【0036】
フロントサイドフレーム5の後部側は、ホイールハウス6の側方において下方に湾曲していると共に、後端部が、フロアパネル10の下面側で車体前後方向に延びるフロアフレーム12の前端部に接続されている(図2参照)。フロアフレーム12は、断面ハット状の形状をしており、フロアパネル10とで車体前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0037】
フロントヒンジピラー3の下端部から後方にサイドシル13が延びている。サイドシル13は、車体前後方向に延びる閉断面構造とされている。
【0038】
ダッシュパネル2の下部側及び上部側にはそれぞれ、左右のフロントヒンジピラー3,3を連結すると共に、該パネル2とで車幅方向に延びる閉断面を形成する断面ハット状のロアダッシュクロスメンバ14、及びアッパダッシュクロスメンバ16が設けられている。
【0039】
ホイールハウス6は、エプロンパネル19の後部側をアーチ状に上方に膨出させることにより形成されている。エプロンパネル19は、車幅方向外端側がエプロンレインフォースメント4に接合され、車幅方向内端部がフロントサイドフレーム5に接合されている。ホイールハウス6の上部には、エプロンパネル19をタワー状に上方に膨出させることにより、サスペンションタワー部6aが形成されている。
【0040】
ダッシュパネル2の上部には、車幅方向に延びる閉断面を有するカウル部20が設けられている。
【0041】
エプロンレインフォースメント4は、車体前後方向に延びる断面略矩形の閉断面構造とされている。
【0042】
本実施の形態においては、図3に示すように、ホイールハウス6部分のエプロンパネル19の反エンジンルームZ1側の面に補強メンバ30が設けられている。
【0043】
補強メンバ30は、前端部30aが、フロントサイドフレーム5の外側部材51(フロントサイドフレーム5におけるホイールハウス6内を臨む部分)に接続され、後ろ上りに延びている。後部側は、後方と上方に分岐し、後方に延びる端部30bがダッシュパネル2(車体部材)に接続され、上方に延びる端部30cがサスペンションタワー部6aのトップ部6a′内面に接続されている。また、補強メンバ30は、車幅方向内方側が開口する概ね断面ハット状の形状とされており、エプロンパネル19とで閉断面を形成している。
【0044】
また、本実施の形態においては、図1、図2からわかるように、フロントサイドフレーム5の後部側とロアダッシュクロスメンバ14とを連結する断面ハット状の第2補強メンバ35が設けられている。
【0045】
また、後述する図6に示すように、トンネル部11に沿って略車体前後方向に設けられたトンネルフレーム36の前端部が、前記第2補強メンバ35の後端部に連結されている。
【0046】
次に、フロントサイドフレーム5の構造について詳しく説明する。
【0047】
フロントサイドフレーム5は、図4に示すように、車幅方向外側の平板状の外側部材41と、車幅方向内側の断面ハット状の内側部材42とを接合することにより構成され、左右の側面部5a,5bと上下の水平面部5c,5dとを有し、車体前後方向に延びる断面略矩形の中空閉断面体を構成している。
【0048】
なお、フロントサイドフレーム5は、図1、図2からわかるように、サスペンションタワー部6aよりも前方の部分5Aと、後方の部分5Bとで構成されていいる。前方部分5Aと後方部分5Bとは、異なる素材が用いられており、例えば、前方部分5Aは、平常時における剛性を保ちつつ、衝撃荷重が入力されときには蛇腹状に圧縮変形可能なように、例えばハイテンション材等の素材を用いて形成されている。一方。後方部分5Bは、例えば、素材の厚みを厚くすることで、車体前方からの衝撃荷重に対する耐荷重が前方部分5Aよりも大きくなるように構成されており、圧縮変形が生じにくくなっている。
【0049】
また、前方部分5Aの外側部材41A及び内側部材42Aにはそれぞれ、図1、図2、及び図5等からわかるように、車体前後方向に延びるビード5e,5fが形成されている。ここで、このビード5e,5fは、フロントサイドフレーム5の前方部分5Aの車体前後方向の圧縮変形時における衝撃エネルギーの吸収量を多くするために設けられている。
【0050】
図1、図4からわかるように、フロントサイドフレーム5の前方部分5Aの後部側は、幅(車幅方向長)が徐々に小さくされている。したがって、フロントフレーム5は、車体前方から衝撃荷重が作用したときに、この部位において、車幅方向外側に折曲しやすくなっている。そして、これにより、図2、図6に示すように、フロントサイドフレーム5に、前方部分5Aの後部側において、車幅方向外側への折曲予定部T1が構成される。
【0051】
また、図2からわかるように、フロントサイドフレーム5の車幅方向内側の側面部5b(以下、適宜、この車幅方向内側の側面部5bを内側面部5b、車幅方向外側の側面部5aを外側面部5aという。)には、サスペンションタワー部6aの側方において、上下方向に延びるビード5gが形成されている。このビード5gは、図4からわかるように、車幅方向外方に凹んでおり、車体前方から衝撃荷重がフロントサイドフレーム5に加わったときに、ビード5gを起点として車幅方向外側に折れ曲がるようになっている。すなわち、ビード5gにより折曲予定部T2が構成される。
【0052】
また、図2、図3からわかるように、フロントサイドフレーム5の車幅方向外側の側面部5aには、湾曲部5wの途中において、上下方向に延びるビード5hが形成されている。このビード5hは、車幅方向内方に凹んでおり、後述するように車体前方から衝撃荷重がフロントサイドフレーム5に加わったときに、このビード5hを起点として、その前方部分が車幅方向外側に折れ曲がるようになっている。すなわち、ビード5hにより折曲予定部T3が構成される。
【0053】
そして、このような構成によれば、自動車1に前突等が生じて、バンパレインフォースメント9に前方から衝撃荷重が入力されると、クラッシュカン8,8を介してフロントサイドフレーム5,5に衝撃荷重が入力される。
【0054】
そうすると、クラッシュカン8は、初期状態の図6(a)に示す状態から、図6(b)に示すように、車体前後方向に圧縮変形する。また、フロントサイドフレーム5は、前述のように、サスペンションタワー部6aよりも前方の部分(前後位置P1〜P2)が車体前後方向に圧縮変形すると共に、前述の各折曲予定部T1,T2,T3(前後位置P2,P3,P4)において車幅方向に折曲することとなる。詳しくは、フロントサイドフレーム5における前後位置P2からP4の間の部分が、折曲予定部T2(前後位置P3)において、車幅方向外側に突出するように折曲する。そして、この圧縮変形及び折曲により、衝撃荷重の一部が吸収される。ここで、前後位置P1はフロントサイドフレーム5の前端位置、前後位置P2はフロントサイドフレーム5の幅が縮小する位置(折曲予定部T1)、前後位置P3はビード5g位置(折曲予定部T2)、前後位置P4はビードh位置(折曲予定部T3)、前後位置P5はフロントサイドフレーム5の後端位置である。
【0055】
また、補強メンバ30が設けられているから、衝撃荷重の一部が、ダッシュパネル2やサスペンションタワー6aのトップ部6a′にも分散される。また、その結果、湾曲部5wにおいてフレーム5が上下に変位したり、折損したりするのが防止され。
【0056】
また、第2補強メンバ35が設けられているから、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T3において車幅方向内側に折曲するのを防止して、確実に車幅方向外方に折曲させることができる。
【0057】
また、左右のフロントサイドフレーム5,5はそれぞれ、車幅方向外方に向かって折曲するから、折曲したフレーム5,5がエンジンEGに当接することがない。換言すれば、左右のフレーム5,5の間にエンジンEGが配設されている場合でも、エンジンEGとの当接を回避しつつ、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0058】
また、折曲予定部T2は、フロントサイドフレーム5の内側面部2bに、上下に延び、車幅方向外側に凹む縦ビード5gが設けられることにより構成されているから、折曲点及び折曲方向が安定することととなる。
【0059】
ここで、本実施の形態においては、図2に示すように、前記フロントサイドフレーム5における前記折曲予定部T2を含む前後所定範囲の内部空間に、補強部材50が設けられている。なお、補強部材50は、前記複数の折曲予定部T1〜T3のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部T2にのみ設けられている。
【0060】
補強部材50は、図4に示すように、左右の側面部50a,50bとこれらの下端間に設けられた水平面部50cとを有して、上部側が開放される断面凵字状とされている。
【0061】
補強部材50の車幅方向外側の側面部50aは、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに接合されている。これに対し、車幅方向内側の内側面部40bは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。
【0062】
ここで、フロントサイドフレーム5が前記折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲すると、図7に示すように、外側面部5aには車体前後方向において伸び方向の力がかかり、内側面部5bには圧縮方向の力が加わるが、外側面部5a側に補強部材50が設けられているので、内側面部5bの縦ビード5gの前後に応力が集中し、その結果、図8にもあわせて示すように上面部5c,5d等が変形しつつ、縦ビード5gの前後の部分が車幅方向外側に折れ込み、ビード5gの先端が補強部材の内側面部50bに当接することとなる。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、フロントサイドフレーム5における前記折曲予定部T2を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム5の折曲途中から、該フレーム5の側面部2bの内面と当接する補強部材50が設けられているから、当接した後において、フロントサイドフレーム5の折曲が一気に進行するのが抑制されると共に、補強部材50を変形させることに伴って、該補強部材50がない場合よりも図9(a)に示すように変形荷重が増加し、かつ図9(b)に示すようにエネルギー吸収量の総量が増大することとなる。
【0064】
また、前記補強部材50の内側面部50bは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられているから、補強部材50とフレーム5との当接をできるだけ早く生じさせることができる。すなわち、当接によるエネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0065】
また、補強部材50を前述のような構造としたことにより、簡単な構造でエネルギーの吸収量増大効果を実現することができると共に、補強部材50の外側面部50aを前記フレーム5の外側面部5aに、ガンG1,G2を用いて溶接により容易に組み付けることができる。
【0066】
また、略車体前後方向に延び、前端部がフロントサイドフレーム5に前記補強部材50の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム5後方のダッシュパネル2及びサスペンションタワー6aに接続される補強メンバ30が設けられているから、フレーム5の後端側が補強されることとなる。また、エネルギーの吸収の一部を補強メンバ30により行うことが可能となり、補強部材50の前後長等の設定自由度が向上することとなる。
【0067】
また、補強部材50は、複数の折曲予定部T1〜T3のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部T2にのみ設けられているから、補強部材50による重量増を抑制しつつ、エネルギーの吸収量を効果的に増大させることができる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、補強部材50は、左右の側面部50a,50bとこれらの下端間に設けられた水平面部50cとを有して、上部側が開放される断面凵字状とされているが、左右の側面部とこれらの上端間に設けられた水平面部とを有して、下部側が開放される断面凵字状としてもよい。
【0069】
次に、補強部材の構造を変更した第2〜第5の実施の形態について説明する。なお、第2〜第4の実施の形態においては、補強部材以外は、第1の実施の形態と同構造であり、説明を省略すると共に、引用が必要なときは同一の符号を用いる。
【0070】
第2の実施の形態においては、10に示すように、補強部材60は、上下の水平面部60a,60bと、該水平面部60a,60bの車幅方向内側(前記一方側とは反対側)の端部間に設けられた側面部60cと、該水平面部60a,60bの車幅方向外側(前記一方側)の端部に設けられたフランジ部60d,60eとを有し、車幅方向外側(前記一方側)が開放された断面ハット状の構造とされている。そして、前記フランジ部60d,60eがフロントサイドフレーム5の外側面部5aに溶接により取り付けられて、外側面部5aとで車体前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0071】
車幅方向内側の内側面部40bは、フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。そして、これにより、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲するときに、補強部材60の側面部60cと、フロントサイドフレーム5の内側面部5bの内面とが早期に当接するように構成されている。
【0072】
この第2の実施の形態によれば、補強部材60は、フロントサイドフレーム5の外側面部5a(前記車幅方向の一方側の側面部)に取り付けられて、該外側面部5aとで車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、補強部材60の剛性が高くなり、当接によるエネルギーの吸収量を一層増大させることができる。
【0073】
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0074】
第3の実施の形態においては、図11に示すように、前記補強部材70は、左右の側面部71a,71bと上下の水平面部71c,71dとを有して車体前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面を形成する矩形管部材71と、上下の水平面部71c,71dの車幅方向外側部分に固着された一対のブラケット72,72とを有している。そして、これらのブラケット72,72が、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに溶接により取り付けられている。
【0075】
内側面部71bは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。そして、これにより、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲するときに、補強部材70の内側面部71bが、フロントサイドフレーム5の内側面部5bの内面と早期に当接するように構成されている。
【0076】
この第3の実施の形態によれば、補強部材70は、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5a(前記車幅方向の一方側の側面部)に取り付けられ、該補強部材70単独で車体前後方向に延びる閉断面を有しているから、フロントサイドフレーム5の形状、板厚等に関係なく、エネルギー増大量吸収効果を得ることができる。
【0077】
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0078】
第4の実施の形態においては、図12に示すように、補強部材80は、断面円形の車体前後方向に延びる閉断面を形成する円管部材81と、該円管部材81の上部及び下部に固着された上下一対のブラケット82,82とを有している。そして、これらのブラケット82,82が、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに溶接により取り付けられている。
【0079】
円管部材81の内端部81aは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。そして、これにより、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲するときに、補強部材80の内端部81aが、フロントサイドフレーム5の内側面部5bの内面と早期に当接するように構成されている。
【0080】
この第4の実施の形態によれば、補強部材80は、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに取り付けられ、補強部材80単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、第3の実施の形態同様、フロントサイドフレーム5の形状、板厚等に関係なく、エネルギー増大量吸収効果を得ることができる。
【0081】
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0082】
第5の実施の形態においては、図13に示すように、フロントサイドフレーム5′の幅が、車体寸法との関係上、第1〜第4の実施の形態のものよりも小さくされている。したがって、第1〜第4の実施の形態のものと比較して、フロントサイドフレーム5′自体によるエネルギー吸収量が少なくなっている。そこで、第5の実施の形態においては、この点についての対策がなされている。
【0083】
すなわち、補強部材90は、車体前後方向に延びる複数の閉断面を有している。詳しくは、補強部材90は、フロントサイドフレーム5′の外側面部5a′(前記一方側の側面部)に取り付けられて該面部5a′に平行な外側面部材91と、該外側面部材91に取り付けられ、内側面部5b′に平行な面部92aを有する断面ハット状の部材92と、これらの部材91,92で形成された閉断面空間内に、該空間を車幅方向に区画する、内側面部5b′に平行な面部93aを有する断面区画部材93とで構成されている。
【0084】
この第5の実施の形態によれば、補強部材90は、フロントサイドフレーム5′と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成しているから、エネルギー吸収量を一層増大させることができる。そして、車幅方向に2つ重ねて形成されているから、上下方向に2つ重ねて形成されているような場合よりも、車幅方向への折曲に対する剛性をあげすぎることなく前述の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造において、フロントサイドフレームの折曲開始後におけるエネルギー吸収量を増大させることができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車のフレーム構造を示す車体前方からの斜視図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2のB矢視図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】図2のD−D断面図である。
【図6】フロントサイドフレームの折曲の作用の説明図である。
【図7】フロントサイドフレームの折曲時における図2のE−E断面図である。
【図8】フロントサイドフレームの折曲時における図2のC−C断面図である。
【図9】フロントサイドフレームの折曲時における荷重(a図)及びエネルギー吸収量の特性図(b図)である。
【図10】第2の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【図11】第3の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【図12】第4の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【図13】第5の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 自動車
2 ダッシュパネル(車体構成部材)
5 フロントサイドフレーム(フレーム部材)
5a 側面部、外側面部(フレーム部材の一方側の側面部)
5b 側面部、内側面部(フレーム部材の他方側の側面部)
30 補強メンバ
50,60,70,80,90 補強部材
50a,60c,71b 側面部(フレーム部材の一方側とは反対側の側面部と当接する部位)
81a フロントサイドフレームの一方側とは反対側の側面部と当接する部位
EG エンジン(車両構成部材)
T2 折曲予定部
EG エンジン
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部車体の衝撃吸収構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自動車のフレーム構造として、車体前後方向に略直線状に延びて後端部がダッシュパネルに接続されるフレーム部材を有するものにおいて、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向に折曲する折曲予定部を設けたものが開示されている。このような構成によれば、フレーム部材に入力された衝撃エネルギーが折曲により吸収されることとなる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−220977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載のものにおいては、フレーム部材は車体前後方向に延びる閉断面構造とされており、閉断面でない場合よりも折曲開始時におけるエネルギー吸収量を大きくすることができるが、このエネルギー吸収量の増加量は折曲開始直後から一気に減少する傾向があり、その結果、衝撃エネルギーを十分に吸収できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、フロントサイドフレームの折曲開始後におけるエネルギー吸収量を増大させることができるフレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造であって、前記フレーム部材における前記折曲予定部を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接する補強部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材における前記フレーム部材と当接する部位は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部よりも前記一方側とは反対側の側面部に近接して設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、左右の側面部とこれらの上端間または下端間に設けられた水平面部とを有して、上部側または下部側が開放される断面凵字状とされていると共に、該補強部材の前記車幅方向一方側の側面部が、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部に接合され、該補強部材の他方側の側面部が、前記フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該側面部とで車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該補強部材単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項4または請求項5に記載の自動車のフレーム構造において、前記補強部材は、前記フレーム部材と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項5または請求項6に記載の自動車のフレーム構造において、前記フレーム部材は、車幅方向に離間して一対設けられていると共に、これらのフレーム部材の間に車両構成部材が配設されており、前記折曲についての車幅方向の一方は、車幅方向外方であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、前記折曲予定部は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部とは反対側の側面部に、上下に延び、前記車幅方向の一方側に凹む縦ビードが設けられることにより構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項8に記載の自動車のフレーム構造において、略車体前後方向に延び、前端部が前記フレーム部材に前記補強部材の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム部材後方の車体構成部材に接続される補強メンバが設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に記載の発明は、前記請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、複数の折曲予定部が設けられており、前記補強部材は、これらの折曲予定部のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部にのみ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について説明する。
【0018】
まず、請求項1に記載の発明によれば、前記フレーム部材における前記折曲予定部を含む前後所定範囲の内部空間に設けられた補強部材が、前記フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接することとなる。したがって、当接した後において、フレーム部材の折曲が一気に進行するのが抑制されると共に、該補強部材を変形させることに伴って、該補強部材がない場合よりも変形荷重が増加し、かつエネルギー吸収量の総量が増大することとなる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記補強部材における前記フレーム部材と当接する部位は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部よりも前記一方側とは反対側の側面部に近接して設けられているから、補強部材とフレーム部材とをできるだけ早く当接させることができる。すなわち、当接によるエネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、簡単な構造の部材によりエネルギーの吸収量増大効果が実現することができると共に、該部材の一方側の側面部を前記フレーム部材の前記一方側の側面部に溶接により容易に組み付けることができる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該側面部とで車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、補強部材の剛性が高くなり、当接によるエネルギーの吸収量を一層増大させることができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該補強部材単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、フレーム部材の形状、板厚等に関係なく、エネルギー増大量吸収効果を得ることができる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記補強部材は、前記フレーム部材と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成しているから、エネルギー吸収量を一層増大させることができる。そして、車幅方向に2つ重ねて形成されているから、上下方向に2つ重ねて形成されているような場合よりも、車幅方向への折曲に対する剛性をあげすぎることがない。したがって、例えば前記フレーム部材の幅が狭く、折曲エネルギーを十分に吸収できないような場合に大きな効果が生じる。
【0024】
また、請求項7に記載の発明によれば、記フレーム部材は、車幅方向に離間して一対設けられていると共に、これらのフレーム部材の間に車両構成部材が配設されている場合に、前記折曲についての車幅方向の一方は、車幅方向外方であるから、折曲したフレーム部材が車両構成部材に当接することがない。換言すれば、左右のフレーム部材の間に車両構成部材が配設されている場合でも、車両構成部材との当接を回避しつつ、エネルギーを吸収することができる。
【0025】
また、請求項8に記載の発明によれば、前記折曲予定部は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部とは反対側の側面部に、上下に延び、前記車幅方向の一方側に凹む縦ビードが設けられることにより構成されているから、折曲点及び折曲方向が安定することととなる。
【0026】
また、請求項9に記載の発明によれば、略車体前後方向に延び、前端部が前記フレーム部材に前記補強部材の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム部材後方の車体構成部材に接続される補強メンバが設けられているから、前記フレーム部材の後端側が補強されることとなる。また、エネルギーの吸収の一部を補強メンバにより行うことが可能となり、補強部材の前後長等の設定自由度が向上することとなる。
【0027】
また、請求項10に記載の発明によれば、前記折曲予定部は複数設けられており、前記補強部材は、これらの折曲予定部のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部にのみ設けられているから、補強部材による重量増を抑制しつつ、エネルギーの吸収量を効率的に増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車のフレーム構造について説明する。
【0029】
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る自動車1の車体前部には、エンジンEGが収容されるエンジンルームZ1と乗員が搭乗する車室Z2とを仕切るダッシュパネル2が設けられている。
【0030】
ダッシュパネル2の左右両端部にはそれぞれ、上下方向に延び、フロントドア(図示せず)が枢支されるヒンジピラー3(一方のみ図示されている)が設けられている。
【0031】
左右のヒンジピラー3の上端部側から前方に左右一対のエプロンレインフォースメント4,4が延びている。
【0032】
エプロンレインフォースメント4,4に対して平面視でほぼ平行に、かつ車幅方向内方に離間した位置で、左右一対のフロントサイドフレーム5,5が車体前後方向に延びている。
【0033】
車幅方向でエプロンレインフォースメント4とフロントサイドフレーム5との間には、前輪用のホイールハウス6が設けられている。
【0034】
フロントサイドフレーム5及びエプロンレーフォースメント4の前端部には、これらに跨って平板状のプレート7,7が取り付けられている。左右のプレート7,7間には、クラッシュカン8,8を介して、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント9が取り付けられている。クラッシュカン8,8は、前後方向の衝撃荷重が入力されたときに車体前後方向に圧縮変形するように構成されている。
【0035】
ダッシュパネル2の下部は、後方へ湾曲して、下端部がフロアパネル10の前端部に接合されている。ダッシュパネル2の下部及びフロアパネル10には、車幅方向ほぼ中央において前後方向に延び、かつ上方へ膨出するトンネル部11が設けられている。
【0036】
フロントサイドフレーム5の後部側は、ホイールハウス6の側方において下方に湾曲していると共に、後端部が、フロアパネル10の下面側で車体前後方向に延びるフロアフレーム12の前端部に接続されている(図2参照)。フロアフレーム12は、断面ハット状の形状をしており、フロアパネル10とで車体前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0037】
フロントヒンジピラー3の下端部から後方にサイドシル13が延びている。サイドシル13は、車体前後方向に延びる閉断面構造とされている。
【0038】
ダッシュパネル2の下部側及び上部側にはそれぞれ、左右のフロントヒンジピラー3,3を連結すると共に、該パネル2とで車幅方向に延びる閉断面を形成する断面ハット状のロアダッシュクロスメンバ14、及びアッパダッシュクロスメンバ16が設けられている。
【0039】
ホイールハウス6は、エプロンパネル19の後部側をアーチ状に上方に膨出させることにより形成されている。エプロンパネル19は、車幅方向外端側がエプロンレインフォースメント4に接合され、車幅方向内端部がフロントサイドフレーム5に接合されている。ホイールハウス6の上部には、エプロンパネル19をタワー状に上方に膨出させることにより、サスペンションタワー部6aが形成されている。
【0040】
ダッシュパネル2の上部には、車幅方向に延びる閉断面を有するカウル部20が設けられている。
【0041】
エプロンレインフォースメント4は、車体前後方向に延びる断面略矩形の閉断面構造とされている。
【0042】
本実施の形態においては、図3に示すように、ホイールハウス6部分のエプロンパネル19の反エンジンルームZ1側の面に補強メンバ30が設けられている。
【0043】
補強メンバ30は、前端部30aが、フロントサイドフレーム5の外側部材51(フロントサイドフレーム5におけるホイールハウス6内を臨む部分)に接続され、後ろ上りに延びている。後部側は、後方と上方に分岐し、後方に延びる端部30bがダッシュパネル2(車体部材)に接続され、上方に延びる端部30cがサスペンションタワー部6aのトップ部6a′内面に接続されている。また、補強メンバ30は、車幅方向内方側が開口する概ね断面ハット状の形状とされており、エプロンパネル19とで閉断面を形成している。
【0044】
また、本実施の形態においては、図1、図2からわかるように、フロントサイドフレーム5の後部側とロアダッシュクロスメンバ14とを連結する断面ハット状の第2補強メンバ35が設けられている。
【0045】
また、後述する図6に示すように、トンネル部11に沿って略車体前後方向に設けられたトンネルフレーム36の前端部が、前記第2補強メンバ35の後端部に連結されている。
【0046】
次に、フロントサイドフレーム5の構造について詳しく説明する。
【0047】
フロントサイドフレーム5は、図4に示すように、車幅方向外側の平板状の外側部材41と、車幅方向内側の断面ハット状の内側部材42とを接合することにより構成され、左右の側面部5a,5bと上下の水平面部5c,5dとを有し、車体前後方向に延びる断面略矩形の中空閉断面体を構成している。
【0048】
なお、フロントサイドフレーム5は、図1、図2からわかるように、サスペンションタワー部6aよりも前方の部分5Aと、後方の部分5Bとで構成されていいる。前方部分5Aと後方部分5Bとは、異なる素材が用いられており、例えば、前方部分5Aは、平常時における剛性を保ちつつ、衝撃荷重が入力されときには蛇腹状に圧縮変形可能なように、例えばハイテンション材等の素材を用いて形成されている。一方。後方部分5Bは、例えば、素材の厚みを厚くすることで、車体前方からの衝撃荷重に対する耐荷重が前方部分5Aよりも大きくなるように構成されており、圧縮変形が生じにくくなっている。
【0049】
また、前方部分5Aの外側部材41A及び内側部材42Aにはそれぞれ、図1、図2、及び図5等からわかるように、車体前後方向に延びるビード5e,5fが形成されている。ここで、このビード5e,5fは、フロントサイドフレーム5の前方部分5Aの車体前後方向の圧縮変形時における衝撃エネルギーの吸収量を多くするために設けられている。
【0050】
図1、図4からわかるように、フロントサイドフレーム5の前方部分5Aの後部側は、幅(車幅方向長)が徐々に小さくされている。したがって、フロントフレーム5は、車体前方から衝撃荷重が作用したときに、この部位において、車幅方向外側に折曲しやすくなっている。そして、これにより、図2、図6に示すように、フロントサイドフレーム5に、前方部分5Aの後部側において、車幅方向外側への折曲予定部T1が構成される。
【0051】
また、図2からわかるように、フロントサイドフレーム5の車幅方向内側の側面部5b(以下、適宜、この車幅方向内側の側面部5bを内側面部5b、車幅方向外側の側面部5aを外側面部5aという。)には、サスペンションタワー部6aの側方において、上下方向に延びるビード5gが形成されている。このビード5gは、図4からわかるように、車幅方向外方に凹んでおり、車体前方から衝撃荷重がフロントサイドフレーム5に加わったときに、ビード5gを起点として車幅方向外側に折れ曲がるようになっている。すなわち、ビード5gにより折曲予定部T2が構成される。
【0052】
また、図2、図3からわかるように、フロントサイドフレーム5の車幅方向外側の側面部5aには、湾曲部5wの途中において、上下方向に延びるビード5hが形成されている。このビード5hは、車幅方向内方に凹んでおり、後述するように車体前方から衝撃荷重がフロントサイドフレーム5に加わったときに、このビード5hを起点として、その前方部分が車幅方向外側に折れ曲がるようになっている。すなわち、ビード5hにより折曲予定部T3が構成される。
【0053】
そして、このような構成によれば、自動車1に前突等が生じて、バンパレインフォースメント9に前方から衝撃荷重が入力されると、クラッシュカン8,8を介してフロントサイドフレーム5,5に衝撃荷重が入力される。
【0054】
そうすると、クラッシュカン8は、初期状態の図6(a)に示す状態から、図6(b)に示すように、車体前後方向に圧縮変形する。また、フロントサイドフレーム5は、前述のように、サスペンションタワー部6aよりも前方の部分(前後位置P1〜P2)が車体前後方向に圧縮変形すると共に、前述の各折曲予定部T1,T2,T3(前後位置P2,P3,P4)において車幅方向に折曲することとなる。詳しくは、フロントサイドフレーム5における前後位置P2からP4の間の部分が、折曲予定部T2(前後位置P3)において、車幅方向外側に突出するように折曲する。そして、この圧縮変形及び折曲により、衝撃荷重の一部が吸収される。ここで、前後位置P1はフロントサイドフレーム5の前端位置、前後位置P2はフロントサイドフレーム5の幅が縮小する位置(折曲予定部T1)、前後位置P3はビード5g位置(折曲予定部T2)、前後位置P4はビードh位置(折曲予定部T3)、前後位置P5はフロントサイドフレーム5の後端位置である。
【0055】
また、補強メンバ30が設けられているから、衝撃荷重の一部が、ダッシュパネル2やサスペンションタワー6aのトップ部6a′にも分散される。また、その結果、湾曲部5wにおいてフレーム5が上下に変位したり、折損したりするのが防止され。
【0056】
また、第2補強メンバ35が設けられているから、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T3において車幅方向内側に折曲するのを防止して、確実に車幅方向外方に折曲させることができる。
【0057】
また、左右のフロントサイドフレーム5,5はそれぞれ、車幅方向外方に向かって折曲するから、折曲したフレーム5,5がエンジンEGに当接することがない。換言すれば、左右のフレーム5,5の間にエンジンEGが配設されている場合でも、エンジンEGとの当接を回避しつつ、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0058】
また、折曲予定部T2は、フロントサイドフレーム5の内側面部2bに、上下に延び、車幅方向外側に凹む縦ビード5gが設けられることにより構成されているから、折曲点及び折曲方向が安定することととなる。
【0059】
ここで、本実施の形態においては、図2に示すように、前記フロントサイドフレーム5における前記折曲予定部T2を含む前後所定範囲の内部空間に、補強部材50が設けられている。なお、補強部材50は、前記複数の折曲予定部T1〜T3のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部T2にのみ設けられている。
【0060】
補強部材50は、図4に示すように、左右の側面部50a,50bとこれらの下端間に設けられた水平面部50cとを有して、上部側が開放される断面凵字状とされている。
【0061】
補強部材50の車幅方向外側の側面部50aは、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに接合されている。これに対し、車幅方向内側の内側面部40bは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。
【0062】
ここで、フロントサイドフレーム5が前記折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲すると、図7に示すように、外側面部5aには車体前後方向において伸び方向の力がかかり、内側面部5bには圧縮方向の力が加わるが、外側面部5a側に補強部材50が設けられているので、内側面部5bの縦ビード5gの前後に応力が集中し、その結果、図8にもあわせて示すように上面部5c,5d等が変形しつつ、縦ビード5gの前後の部分が車幅方向外側に折れ込み、ビード5gの先端が補強部材の内側面部50bに当接することとなる。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、フロントサイドフレーム5における前記折曲予定部T2を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム5の折曲途中から、該フレーム5の側面部2bの内面と当接する補強部材50が設けられているから、当接した後において、フロントサイドフレーム5の折曲が一気に進行するのが抑制されると共に、補強部材50を変形させることに伴って、該補強部材50がない場合よりも図9(a)に示すように変形荷重が増加し、かつ図9(b)に示すようにエネルギー吸収量の総量が増大することとなる。
【0064】
また、前記補強部材50の内側面部50bは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられているから、補強部材50とフレーム5との当接をできるだけ早く生じさせることができる。すなわち、当接によるエネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0065】
また、補強部材50を前述のような構造としたことにより、簡単な構造でエネルギーの吸収量増大効果を実現することができると共に、補強部材50の外側面部50aを前記フレーム5の外側面部5aに、ガンG1,G2を用いて溶接により容易に組み付けることができる。
【0066】
また、略車体前後方向に延び、前端部がフロントサイドフレーム5に前記補強部材50の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム5後方のダッシュパネル2及びサスペンションタワー6aに接続される補強メンバ30が設けられているから、フレーム5の後端側が補強されることとなる。また、エネルギーの吸収の一部を補強メンバ30により行うことが可能となり、補強部材50の前後長等の設定自由度が向上することとなる。
【0067】
また、補強部材50は、複数の折曲予定部T1〜T3のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部T2にのみ設けられているから、補強部材50による重量増を抑制しつつ、エネルギーの吸収量を効果的に増大させることができる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、補強部材50は、左右の側面部50a,50bとこれらの下端間に設けられた水平面部50cとを有して、上部側が開放される断面凵字状とされているが、左右の側面部とこれらの上端間に設けられた水平面部とを有して、下部側が開放される断面凵字状としてもよい。
【0069】
次に、補強部材の構造を変更した第2〜第5の実施の形態について説明する。なお、第2〜第4の実施の形態においては、補強部材以外は、第1の実施の形態と同構造であり、説明を省略すると共に、引用が必要なときは同一の符号を用いる。
【0070】
第2の実施の形態においては、10に示すように、補強部材60は、上下の水平面部60a,60bと、該水平面部60a,60bの車幅方向内側(前記一方側とは反対側)の端部間に設けられた側面部60cと、該水平面部60a,60bの車幅方向外側(前記一方側)の端部に設けられたフランジ部60d,60eとを有し、車幅方向外側(前記一方側)が開放された断面ハット状の構造とされている。そして、前記フランジ部60d,60eがフロントサイドフレーム5の外側面部5aに溶接により取り付けられて、外側面部5aとで車体前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0071】
車幅方向内側の内側面部40bは、フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。そして、これにより、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲するときに、補強部材60の側面部60cと、フロントサイドフレーム5の内側面部5bの内面とが早期に当接するように構成されている。
【0072】
この第2の実施の形態によれば、補強部材60は、フロントサイドフレーム5の外側面部5a(前記車幅方向の一方側の側面部)に取り付けられて、該外側面部5aとで車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、補強部材60の剛性が高くなり、当接によるエネルギーの吸収量を一層増大させることができる。
【0073】
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0074】
第3の実施の形態においては、図11に示すように、前記補強部材70は、左右の側面部71a,71bと上下の水平面部71c,71dとを有して車体前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面を形成する矩形管部材71と、上下の水平面部71c,71dの車幅方向外側部分に固着された一対のブラケット72,72とを有している。そして、これらのブラケット72,72が、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに溶接により取り付けられている。
【0075】
内側面部71bは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。そして、これにより、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲するときに、補強部材70の内側面部71bが、フロントサイドフレーム5の内側面部5bの内面と早期に当接するように構成されている。
【0076】
この第3の実施の形態によれば、補強部材70は、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5a(前記車幅方向の一方側の側面部)に取り付けられ、該補強部材70単独で車体前後方向に延びる閉断面を有しているから、フロントサイドフレーム5の形状、板厚等に関係なく、エネルギー増大量吸収効果を得ることができる。
【0077】
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0078】
第4の実施の形態においては、図12に示すように、補強部材80は、断面円形の車体前後方向に延びる閉断面を形成する円管部材81と、該円管部材81の上部及び下部に固着された上下一対のブラケット82,82とを有している。そして、これらのブラケット82,82が、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに溶接により取り付けられている。
【0079】
円管部材81の内端部81aは、前記フロントサイドフレーム5の外側面部5aよりも内側面部5bに近接して設けられている。そして、これにより、フロントサイドフレーム5が折曲予定部T2において車幅方向外側へ折曲するときに、補強部材80の内端部81aが、フロントサイドフレーム5の内側面部5bの内面と早期に当接するように構成されている。
【0080】
この第4の実施の形態によれば、補強部材80は、フロントサイドフレーム5の外側面部5aに取り付けられ、補強部材80単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成しているから、第3の実施の形態同様、フロントサイドフレーム5の形状、板厚等に関係なく、エネルギー増大量吸収効果を得ることができる。
【0081】
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0082】
第5の実施の形態においては、図13に示すように、フロントサイドフレーム5′の幅が、車体寸法との関係上、第1〜第4の実施の形態のものよりも小さくされている。したがって、第1〜第4の実施の形態のものと比較して、フロントサイドフレーム5′自体によるエネルギー吸収量が少なくなっている。そこで、第5の実施の形態においては、この点についての対策がなされている。
【0083】
すなわち、補強部材90は、車体前後方向に延びる複数の閉断面を有している。詳しくは、補強部材90は、フロントサイドフレーム5′の外側面部5a′(前記一方側の側面部)に取り付けられて該面部5a′に平行な外側面部材91と、該外側面部材91に取り付けられ、内側面部5b′に平行な面部92aを有する断面ハット状の部材92と、これらの部材91,92で形成された閉断面空間内に、該空間を車幅方向に区画する、内側面部5b′に平行な面部93aを有する断面区画部材93とで構成されている。
【0084】
この第5の実施の形態によれば、補強部材90は、フロントサイドフレーム5′と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成しているから、エネルギー吸収量を一層増大させることができる。そして、車幅方向に2つ重ねて形成されているから、上下方向に2つ重ねて形成されているような場合よりも、車幅方向への折曲に対する剛性をあげすぎることなく前述の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造において、フロントサイドフレームの折曲開始後におけるエネルギー吸収量を増大させることができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車のフレーム構造を示す車体前方からの斜視図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2のB矢視図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】図2のD−D断面図である。
【図6】フロントサイドフレームの折曲の作用の説明図である。
【図7】フロントサイドフレームの折曲時における図2のE−E断面図である。
【図8】フロントサイドフレームの折曲時における図2のC−C断面図である。
【図9】フロントサイドフレームの折曲時における荷重(a図)及びエネルギー吸収量の特性図(b図)である。
【図10】第2の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【図11】第3の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【図12】第4の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【図13】第5の実施の形態についての図4相当の断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 自動車
2 ダッシュパネル(車体構成部材)
5 フロントサイドフレーム(フレーム部材)
5a 側面部、外側面部(フレーム部材の一方側の側面部)
5b 側面部、内側面部(フレーム部材の他方側の側面部)
30 補強メンバ
50,60,70,80,90 補強部材
50a,60c,71b 側面部(フレーム部材の一方側とは反対側の側面部と当接する部位)
81a フロントサイドフレームの一方側とは反対側の側面部と当接する部位
EG エンジン(車両構成部材)
T2 折曲予定部
EG エンジン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造であって、
前記フレーム部材における前記折曲予定部を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接する補強部材が設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材における前記フレーム部材と当接する部位は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部よりも前記一方側とは反対側の側面部に近接して設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、左右の側面部とこれらの上端間または下端間に設けられた水平面部とを有して、上部側または下部側が開放される断面凵字状とされていると共に、
該補強部材の前記車幅方向一方側の側面部が、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部に接合され、該補強部材の他方側の側面部が、前記フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接するように構成されていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項4】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該側面部とで車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項5】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該補強部材単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項6】
前記請求項4または請求項5に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、前記フレーム部材と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成していることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項7】
前記請求項5または請求項6に記載の自動車のフレーム構造において、
前記フレーム部材は、車幅方向に離間して一対設けられていると共に、
これらのフレーム部材の間に車両構成部材が配設されており、
前記折曲についての車幅方向の一方は、車幅方向外方であることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項8】
前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、
前記折曲予定部は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部とは反対側の側面部に、上下に延び、前記車幅方向の一方側に凹む縦ビードが設けられることにより構成されていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項9】
前記請求項8に記載の自動車のフレーム構造において、
略車体前後方向に延び、前端部が前記フレーム部材に前記補強部材の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム部材後方の車体構成部材に接続される補強メンバが設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項10】
前記請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、
複数の折曲予定部が設けられており、
前記補強部材は、これらの折曲予定部のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部にのみ設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項1】
車体前後方向に延びて後端部がダッシュパネルに接続されると共に、左右の側面部と上下の水平面部とを有して断面略矩形状とされた中空フレーム部材を有すると共に、該フレーム部材に、車体前後方向の衝撃荷重の作用時に車幅方向の一方側に折曲する折曲予定部が設けられた自動車のフレーム構造であって、
前記フレーム部材における前記折曲予定部を含む前後所定範囲の内部空間に、該フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接する補強部材が設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材における前記フレーム部材と当接する部位は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部よりも前記一方側とは反対側の側面部に近接して設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、左右の側面部とこれらの上端間または下端間に設けられた水平面部とを有して、上部側または下部側が開放される断面凵字状とされていると共に、
該補強部材の前記車幅方向一方側の側面部が、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部に接合され、該補強部材の他方側の側面部が、前記フレーム部材の折曲途中から、該フレーム部材における前記車幅方向の一方側とは反対側の側面部の内面と当接するように構成されていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項4】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該側面部とで車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項5】
前記請求項1または請求項2に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、前記フレーム部材の前記車幅方向の一方側の側面部に取り付けられ、該補強部材単独で車体前後方向に延びる閉断面を形成していることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項6】
前記請求項4または請求項5に記載の自動車のフレーム構造において、
前記補強部材は、前記フレーム部材と共にまたは単独で、車体前後方向に延びる閉断面を車幅方向に2つ重ねて形成していることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項7】
前記請求項5または請求項6に記載の自動車のフレーム構造において、
前記フレーム部材は、車幅方向に離間して一対設けられていると共に、
これらのフレーム部材の間に車両構成部材が配設されており、
前記折曲についての車幅方向の一方は、車幅方向外方であることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項8】
前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、
前記折曲予定部は、前記フレーム部材における前記車幅方向の一方側の側面部とは反対側の側面部に、上下に延び、前記車幅方向の一方側に凹む縦ビードが設けられることにより構成されていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項9】
前記請求項8に記載の自動車のフレーム構造において、
略車体前後方向に延び、前端部が前記フレーム部材に前記補強部材の後端の直後方位置で接続されると共に、後端部が前記フレーム部材後方の車体構成部材に接続される補強メンバが設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【請求項10】
前記請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自動車のフレーム構造において、
複数の折曲予定部が設けられており、
前記補強部材は、これらの折曲予定部のうち、予定折曲量が最大に設定された折曲予定部にのみ設けられていることを特徴とする自動車のフレーム構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−234495(P2009−234495A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85191(P2008−85191)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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