説明

自動車のマットの固定装置

【課題】自動車のマットの固定装置において、マットを正確に固定でき、取付ノブの固定力を向上させてマットをこじりあげる力に対抗でき、取付ノブ自体の強度を向上させる。
【解決手段】固定装置66は、パッド5に固定される第1クリップ1と、取付ノブ3によってマット6に固定される第2クリップ2を備え、取付ノブ3は、係止脚52が、つまみ部51から垂下する剛性の棒状部55と棒状部から垂下する係止部56とを備え、係止部56は、非ロック位置からロック位置への90度の軸心回りの回転によって第2クリップ2の支持部27に係止する係止肩を提供する半径方向外側に張出す剛性の板状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のマットを、自動車のフロアパネルやフロアパネルに固着されたパッド等の被取付部材に固定する、自動車のマットの固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のマットを、フロアパネルやフロアパネルに固着されたパッド等の被取付部材に固定するには、マットの固定装置が用いられる。例えば、特許文献1(意匠登録第1296907号公報)には、マットを位置ずれしないように保持するマットのずれ防止装置が記載されている。特許文献1において、板状部材の一端には押込みピンが設けられ、他端には、マット用固定具が設けられ、固定具にマットを固定する取付ノブが用いられ、取付ノブを90度回転することで固定具にマットを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1296907号公報
【特許文献2】実開平6−018706号公報
【特許文献3】特開2008−308085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマット固定装置は、全体として細長い板状部材として形成され、マット等をフロアパネルやフロアパネルに固着されたパッド等の被取付部材に取付けるにおいて、マットの取付穴のある位置で被取付部材に係止し又は固定する構成ではない。従って、マットの位置ずれの防止は可能であるが、マットを被取付部材の取付位置に正確に維持し固定する機能は欠けている。特許文献2には、取付ノブ形状のクリップによって、2つのパネルを連結する構造が記載されている。特許文献2の取付ノブ形状のクリップは、一方のパネル非ロック位置において仮止めされ、次に、クリップ軸部を他方のパネルに挿入してロック位置に軸回りに所定角度(90度)回転させてクリップを他方のパネルに固定することで一方のパネルと他方のパネルを連結する。特許文献2はマットを被取付部材の取付位置に正確に維持し固定する固定装置を記載していない。
【0005】
特許文献3には、フロアパネルに固定された、被取付部材としてのパッドに固定される第1クリップと、パッドに固定するマットを支持するための第2クリップと、マットに固定されるマット固定具と、第2クリップをマット固定具に連結する取付ノブとを備える、自動車のマットの固定装置が記載されている。第1クリップは、パッドを支持する固定部と、固定部を第2クリップに連結するための筒状の連結部を有し、第2クリップは、第1クリップの連結部に入れ子状に連結される筒状の連結部を有する。マットを第2クリップに連結するには、第2クリップに連結された取付ノブに、マットに固定されたマット固定具の保持部の穴を貫通させて非ロック位置からロック位置に軸回りに回転させる。マットを被取付部材であるパッドに固定するためには、パッドに固定された第1クリップの連結部に、マットを支持する第2クリップの連結部を押し込むだけでよい。これによって、マットの取付穴のある位置で被取付部材に係止し又は固定する構成であり、マットの位置ずれの防止だけでなく、マットを被取付部材の取付位置に正確に維持し固定でき、見栄えもよい。
【0006】
特許文献3の固定装置において、取付ノブが、頭部のつまみ部と、つまみ部から垂下する一対の係止脚とを有する形状であるので、取付ノブが強度において改良の余地がある。例えば、マットにこじりあげる力が作用したとき、それが強力な力である場合には対抗できないときがあった。また、一対の係止脚に割れを生じるおそれがあった。従って。マットをパッドに固定した後の取付ノブの保持力を向上するのが望ましく、また、取付ノブ自体の強度を高くできるのが望ましい。更に、マットを被取付部材に取付ける操作において操作完了の感覚を作業者に確実に伝達できるのが望ましい。
【0007】
従って、本発明の目的は、自動車のフロアパネルやフロアパネルに固着されたパッド等の被取付部材に固定するため、自動車のマットを被取付部材の取付位置に正確に維持し固定でき、取付ノブの固定力を向上させて、マットをこじりあげる力に十分に対抗でき、取付ノブ自体の強度を向上させた、自動車のマットの固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、自動車のマットを被取付部材に固定するため、前記被取付部材に固定される第1クリップと、前記マットを保持するための第2クリップとを備え、前記第1クリップは、前記被取付部材に固定される固定部と、前記被取付部材に前記マットが取付けられるように前記固定部から立設して形成されて前記第2クリップに連結される筒状の連結部とを有し、前記第2クリップは、前記マットを保持するように大径に形成されたフランジと、該フランジの上面に形成された支持部と、前記フランジの下面側に形成され、前記第1クリップの連結部に入れ子状に連結される筒状の連結部とを有し、前記第1クリップの連結部と前記第2クリップの連結部とは、相互に入れ子状に連結されることによって前記第1クリップが前記第2クリップに連結されるように形成されており、更に、前記マットに固定されるマット固定具と、前記第2クリップを前記マット固定具に連結する取付ノブとを備え、前記取付ノブは、頭部のつまみ部と、該つまみ部から垂下する係止脚とを有し、前記マット固定具には、前記取付ノブが前記係止脚の軸回りにおいて一定の角度の非ロック位置にあるときには前記つまみ部が通過できるが軸回りに前記非ロック位置から所定角度のロック位置に回転させると前記つまみ部が通過できない穴を有する板状の保持部が形成されており、前記取付ノブは、前記係止脚を前記非ロック位置にある状態で前記第2クリップの前記支持部まで押込んだ後前記ロック位置に軸心回りに回転させられることによって前記係止脚の先端の係止部が前記支持部に係止するように形成され、更に、前記取付ノブは、前記つまみ部が、前記非ロック位置にある状態では前記マット固定具の前記保持部の前記穴を貫通することができるが前記ロック位置に回転させられることによって該保持部から抜け出ないように形成されており、前記第1クリップに固定された前記被取付部材に前記第2クリップ及び前記取付ノブを介して前記マット固定具に固定された前記マットが固定される、自動車のマットの固定装置であって:前記取付ノブは、前記係止脚が、前記つまみ部から垂下する剛性の棒状部と該棒状部から更に垂下する先端の前記係止部とを備え、前記係止部は、前記ロック位置への前記所定角度の軸心回りの回転によって前記第2クリップの前記支持部に係止する係止肩を提供するように前記棒状部より半径方向外側に張出す剛性の板状である、ことを特徴とする固定装置が提供される。
【0009】
上記のとおり、特許文献3に記載の固定装置の基本構造はそのまま有しているので、自動車のフロアパネルやフロアパネルに固着されたパッド等の被取付部材に固定するため、自動車のマットを被取付部材の取付位置に正確に維持し固定でき、また、取付ノブは、つまみ部から延びる係止脚が剛性の棒状部と剛性の板状の係止部とから形成されるので、取付ノブの固定力を向上させて、マットのこじりあげる力に十分に対抗でき、取付ノブ自体の強度も向上させることができ、非ロック位置からロック位置への回転の場合の割れを防止できる。
【0010】
上記固定装置において、前記取付ノブには、前記係止脚の前記係止部に、前記棒状部の軸線の延長線上の前記板状の部分の両面から突出する錨脚形状の錨脚係止部を有し、該錨脚係止部は、前記第2クリップの前記支持部に押込まれると前記錨脚形状の部分が内方に撓んだ後に元の姿勢に復帰して前記支持部に係止するように形成されて、該取付ノブが第2クリップに連結できる。これによって、取付ノブは第2クリップに押し込むだけで非ロック位置において連結(仮止め)され、取付ノブの連結操作が容易になる。前記取付ノブの前記棒状部の側面には、半径方向外側に突出する凸部が形成されており、前記第2クリップの前記支持部には、押し込まれた前記棒状部の前記凸部を受入れて嵌合する形状の凹部であって前記係止脚が前記ロック位置への前記所定の回転によって係止脚外面の凸部に嵌合する位置に設けられた前記凹部を有し、該凹部に前記凸部が嵌合することによって該取付ノブによって第2クリップを前記マットに固定したのを感知できるとともに、その固定を維持できる。このように、ロック位置への完了を知るクリック感覚を、係止部とは異なる位置の棒状部に形成したことで、係止部の固定強度を向上させても、そのクリック感覚を損なうことがなくなり、固定操作の完了を作業者は確実に知ることができる。
【0011】
前記第2クリップの前記支持部は、前記フランジに近い位置に形成された剛性の支持板と、該支持板から前記フランジより離れるように延び出る中空の筒状部と、該筒状部の内側を該筒状部の頂部から前記支持板に向けて延びる、一対の、相互に離間した平行な弾性支持体とから成り、前記一対の弾性支持体は、それらの間に、前記係止脚を通過できる空間を形成しており、各弾性支持体には、前記空間を通った前記棒状部の前記凸部に嵌合する前記凹部が、前記頂部から前記支持板に向けて長手方向に沿って延びる溝形状に形成されている。筒状部によって、取付ノブの係止脚は、ぐらつくことなく、第2クリップに確実に保持されて、取付ノブには、ぐらつく場合の過剰な負荷がかからなくなり、これによって、固定力が一層向上し、係止脚の割れへの抵抗も一層向上する。前記第2クリップの前記支持部の前記頂部には、前記取付ノブの前記係止脚先端の板状の前記係止部と前記錨脚係止部とを前記非ロック位置に対応する方向において受入れる形状の受入穴が形成されており、前記一対の弾性支持体の間の前記空間は、前記非ロック位置にある前記板状の前記係止部が通過でき且つ前記錨脚係止部の錨脚部分が前記溝部分をスライドしながら通過できる横断面形状である。これによって、作業者は、取付ノブを第2クリップに対して非ロック位置にある軸回り角度で第2クリップの筒状部に容易に挿入できる。
【0012】
前記取付ノブの前記つまみ部は、前記マット固定具の前記保持部を貫通した状態において作業者の指が差し込めるスペースを確保できるように平面視において細長い形状に形成されている。また、前記取付ノブの前記つまみ部は、前記マット固定具の前記保持部を貫通した状態において前記保持部からの突出高さが作業者の指で容易に触れる高さを確保できるように形成されている。前記マット固定具は、マットの取付穴の周縁を、上面から押さえるアッパーグロメットと下面から押さえるロワーグロメットとから成り、前記アッパーグロメットに、前記保持部が形成されているのが好ましい。その場合、内径と外径の差を大きくすることによって、マットの保持面積が大きくでき、それによって、マットの保持力が向上して、マットをこじりあげる力への抵抗力も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1実施形態に係るマットの固定装置の第1クリップを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は底面図、(E)は(B)の1E−1E線断面図、(F)は(C)の1F−1F線断面図、(G)は右側面図、(H)は(C)の1H−1H線断面図である。
【図2】本発明の1実施形態に係るマットの固定装置の第2クリップを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は底面図、(E)は(C)の2E−2E線断面図、(F)は(B)の2F−2F線断面図、(G)は側面図、(H)は(C)の2H−2H線断面拡大図、(I)は(C)の2I−2I線断面端面図、(J)は(B)のJ部分の拡大図である。
【図3】本発明の1実施形態に係るマットの固定装置に用いられるマット固定具のアッパーグロメットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は半断面正面図、(D)は底面図、(E)は(C)の3E−3E線断面図、(F)は(B)の3F−3F線断面図である。
【図4】本発明の1実施形態に係るマットの固定装置に用いられるマット固定具のロワーグロメットを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は平面図、(C)は(B)の4C−4C線断面図、(D)は(B)の4D−4D線断面図、(E)は側面図である。
【図5】本発明の1実施形態に係るマット固定装置の取付ノブを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は平面図、(E)は側面図、(F)は(B)の5F−5F線断面図、(G)は(B)の5G−5G線断面図である。
【図6】取付ノブを第2クリップに連結する操作を示しており、(A)は取付ノブを第2クリップに取付ける操作を示す斜視図、(B)は取付ノブを第2クリップに取付けた後の斜視図である。
【図7】第2クリップに連結された取付ノブが非ロック位置にある状態を示しており、(A)は正面図、(B)は(A)の7B−7B線断面図、(C)は(B)の7C−7C線断面図、(D)は(A)の7D−7D線断面端面図である。
【図8】第2クリップに連結された取付ノブが非ロック位置からロック位置に軸回りに回転する状態を示しており、(A)は取付ノブの回転途中(回転角度45度)の正面図、(B)は(A)の取付ノブと第2クリップの平面図、(C)は(A)の8C−8C線断面端面図、(D)は取付ノブがロック位置(角度90度)に回転した状態の正面図、(E)は(D)の8E−8E線断面図、(F)は(E)の8F−8F線断面図、(G)は(D)の8G−8G線断面端面図である。
【図9】マットをマット固定具のアッパーグロメットとロワーグロメットで挟持する操作を示しており、(A)は挟持前を示す断面図、(B)は挟持後の断面図である。
【図10】パッドに固定された第1クリップに第2クリップが連結され、第2クリップに取付ノブが連結され、マットに固定されたマット固定具が取付ノブに連結された状態を示しており、(A)は取付ノブが非ロック位置にある状態の縦断面斜視図、(B)は取付ノブがロック位置にある状態の縦断面斜線図である。
【図11】パッドに固定された第1クリップに第2クリップが連結され、第2クリップに取付ノブが連結され、マット固定具が固定されたマットが、ロック位置にある取付ノブによって第2クリップに連結された状態を示しており、(A)は図10(B)の状態における縦断面図、(B)は(A)の11B−11B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい1実施形態について図面を参照して説明する。図1〜図11には、本発明の1実施形態に係る、自動車のマットを、フロアパネルに固定されたパッド等の被取付部材に取付ける固定装置が示されている。本発明において、自動車のマットの固定装置は、基本的には、図1に示される第1クリップ1と、図2に示される第2クリップ2と、図5に示される取付ノブ3とから構成される。第1クリップ1は、フロアパネル4に固定されたパッド5(図10〜図11参照)に固定され、第2クリップ2は、取付ノブ3によってマット6に固定される。図10に図示のように、第2クリップ2が押込みによって第1クリップ1に連結されて、取付ノブ3によって第2クリップ2にマット6が連結されると、マット6がパッド5に取付けられて、マット6は、パッド5が固定されたフロアパネル4に取付けられる。上記のように、本発明に係る自動車のマットの固定装置は、基本的には、第1クリップ1と第2クリップ2と取付ノブ3とで構成されるが、更に、図3、図4、図9〜図11に示すように、ゴム等の柔軟な材料で成るマット6を両面から挟持して剛性を与えて、第2クリップ2がマット6に連結されるのを補助する、アッパーグロメット7(図3)とロワーグロメット9(図4)で成るマット固定具10(図7参照)を備えている。なお、被取付部材としては、パッドに限られず、フロアパネル自体でもよく、その場合には第1クリップはフロアパネルに取付けられるのに適した形状及び構造に形成される。
【0015】
図6〜図8は、取付ノブ3が第2クリップ2に連結される状態を示しており、図6及び図7は取付ノブ3が非ロック位置にあり、図8では取付ノブ3が非ロック位置からロック位置に軸回りに回転する途中(45度の回転)及び回転の完了状態(90度回転)を示している。図9は、アッパーグロメット7(図3)とロワーグロメット9(図4)で成るマット固定具10がマット6を挟持する操作を示している。図10〜図11は、マット固定具10に挟持されたマット6が、第2クリップ2に連結された取付ノブ3によって、第1クリップ1が連結されたパッド5に固定される様子を示している。図示の実施形態において、パッド5の上には、遮音や断熱等の機能を有するインシュレータ11や、そのカバーとなるカーペット等のカバー13が配置され、第2クリップ2によってマット6の下方に保持される。以下、第1クリップ1、第2クリップ2、アッパーグロメット7、ロワーグロメット9、及び、取付ノブ3について、図1〜図5を参照して説明する。
【0016】
図1には、第1クリップ1が示されている。第1クリップ1は、硬質の合成樹脂材料で一体成形される。第1クリップ1は、細長い板状アームで成る、ほぼC形状の固定部15と、固定部15の上部アーム側に円筒状に形成された連結部17とから成る。固定部15は、パッド5の上面と下面を側面からの挿入によって挟持するように、ほぼC形状に形成され、パッド5の側面から、パッド5の上下面の所定位置に形成されたガイド溝(図示せず)に沿ってスライドするだけで、パッドの上下面を挟持してパッド5に固定される。固定部15のC形状の内側には、パッド5の側面からガイド溝を固定方向にスライドでき、ガイド溝の途中に形成された係止凹部65A、65Bに係止して戻りを阻止する一対の弾性逆止爪18が形成されている。固定部15の外側には中央を長手方向に延びて固定部15に剛性を与えるリブ19が形成され、パッド5への挟持力を高く維持して、パッド5への固定力を強固にする。
【0017】
連結部17は、固定部15の上部アームから上方に延びる円筒状に形成され、第2クリップ2の円筒状の連結部25の内側に挿入されて、第2クリップ2に連結される。連結部17には、第1クリップ1を第2クリップ2に連結するため、第2クリップ2の円筒状連結部25の一対の係止肩29に係止する一対の弾性係止片21が設けられている。更に、弾性係止片21は、下方側の面22(図1(F)参照)が、第2クリップ2の強い引き抜き力で第2クリップ2の連結部の係止肩29が乗り越えられるように、ほぼ45度の傾斜面として形成されている。これによって、第1クリップ1に連結した第2クリップ2を強い力で引き抜くことができ、マットの清掃や交換のときに、第2クリップ2に連結されたマット6を、パッド5が固定されたフロアパネル4から取外すことができる。また、連結部17には、その外面に一対の係止片21に対して周方向に90度離れた位置に、長手方向に延びる一対のリブ23が形成されている。リブ23は連結部17の強度を高くし、更に、リブ23は、第2クリップ2の円筒状連結部25の内側に形成された一対の凹溝28に受入れられる。凹溝28とリブ23との組合せによって、第2クリップ2が、第1クリップ1に連結されるときの方向を適正にして係止片21と係止肩29との係合を確実にして、第2クリップ2が第1クリップ1に押込まれるだけで第1クリップ1に連結するのが確保され、第1クリップ1への誤組み付けを防止できる。
【0018】
図2には、第2クリップ2が示されている。第2クリップ2は、第1クリップ1と同様に硬質の合成樹脂材料で一体成形される。第2クリップ2は、第1クリップ1に連結される連結部25と、連結部25の上端に形成されて、マット6を保持するとともにインシュレータ11(図11等)等を押圧するように張り出す大径のフランジ26と、フランジ26の上方に形成されて、取付ノブ3を介してマット6に取付けられてマット6を支持する支持部27とを有する。連結部25は、第1クリップ1の連結部17を受入れる中空の円筒形状に形成され、連結部25には、第1クリップ1の連結部17の弾性係止片21に係止するための係止肩29(図2(E)参照)を形成する穴30が直径方向に対向して一対形成されている。また、連結部25の内側には、第1クリップ1の連結部17のリブ23を受入れる長手方向方向に延びる凹溝28が、一対形成されている。フランジ26は、マット6をその下面側から保持し、また、インシュレータ11を下方に押圧して保持できるように大径の円板形に形成される。
【0019】
支持部27は、取付ノブ3に連結されて、マット6を第2クリップ2のフランジ26に支持させる部分である。マット6は、アッパーグロメット7とロワーグロメット9で成るマット固定具10によって挟持されて、柔軟なマット6に保持のための剛性が付与されている。支持部27は、マット固定具10が固定されたマット6の部分を、取付ノブ3を用いて支持する。支持部27は、取付ノブ3の係止脚52を受入れて、係止脚52の係止部56に係止する、ほぼ楕円形の、伏せた容器形状に形成されている。支持部27は、特許文献3の支持部より高く形成されて取付ノブ3の係止部54を、その長さ全体を安定して支持する。更に、支持部27は、取付ノブ3の係止脚52の先端の係止部56の係止肩が係止する、フランジ26に近い側の位置に形成された剛性の支持板31(図2の(A)、(E)及び(F))と、支持板31から上方(すなわちフランジ26より離れる方向)の頂部33に延び出る中空の筒状部34と、筒状部34の内側を筒状部34の頂部33から支持板31に向けて延びる、相互に離間した平行な一対の弾性支持体32とを有する。一対の弾性支持体32は、それらの間に、係止脚を通過できる空間を形成しており、各弾性支持体32には、その空間を通った係止脚52の棒状部の凸部に嵌合する凹部となる溝35が、頂部33から支持板31に向けて長手方向に沿って延びている。
【0020】
支持部27の頂部33及び支持板31には、取付ノブ3の係止脚52を受入れる穴36が形成されている。穴36は、取付ノブ3の係止脚の先端の板状の係止部56を、非ロック位置の姿勢で受入れるように長穴に形成され、更に、穴36の中央部分は、係止部56に形成された錨脚係止部の錨脚部分をやや撓んだ状態で受入れるように長穴に直交する方向に拡げて形成されている。穴36には、取付ノブ3の係止脚52が挿入される。係止脚52が頂部33の穴36及び支持板31の穴36を通って挿入されると、係止脚52は非ロック位置にある角度で支持27に挿入されて、係止脚52の錨脚係止部の錨脚部分が、支持板31に係止して、取付ノブ3が非ロック位置にある状態で第2クリップ2に連結される。次に、取付ノブ3が軸心回りに90度回転させられると、ロック位置になり、取付ノブ3の係止脚52の係止部56にある係止肩が支持板31に係止して、取付ノブ3と第2クリップ2との連結がロックされる。また、係止脚52の棒状部に形成された凸部59が、弾性支持体32の溝35に嵌合して係止脚52がその位置に留まり、取付ノブ3の姿勢を90度回転した、ロック位置に維持する。取付ノブ3の係止脚52の棒状部の凸部と凹部を形成する溝35との嵌合は、取付ノブ3を操作する作業者の手にその感触(クリック)を与えて、90度の回転の終了すなわちロック位置への回転の完了を報せる。支持部27のフランジ26の上面は、マット6を支持するときロワーグロメット9を支持する面となる。なお、取付ノブ3を受入れる穴36は、取付ノブ3の向きを規制しているので、フランジ26の表面には矢印マーク37が形成されて、作業者にその向きを表示し、作業を助けている。矢印マーク37は、また、第2クリップ2の連結部25を第1クリップ1の連結部17に押込むときの第2クリップ2の向きも表示している。
【0021】
図3及び図4を参照して、アッパーグロメット7とロワーグロメット9とから構成されるマット固定具10を説明する。アッパーグロメット7及びロワーグロメット9は、それぞれ、合成樹脂材料で一体成形される。合成樹脂材料は、硬質の材料であっても、弾性係数が低く且つ塑性変形し易い樹脂材料であってもよい。アッパーグロメット7とロワーグロメット9は、図9に図示のように、マット6を上下面から挟持して、マット6に固定され、柔軟なマット6、とりわけ、マット6の穴の周囲を補強して、他の部材への取付けを強固にするとともに、穴周囲からの破損を防止する。
【0022】
図3において、アッパーグロメット7は、ロワーグロメット9の外筒部に挿入される内側の筒としての、両端が開口した内筒部39と、内筒部39の一端の外周に形成されてマットの一方の面に接するフランジ40と、内筒部39の内側の中間高さ位置に内側に張り出した板状の保持部41とを有する。内筒部39の軸線方向の長さは、マット6の厚さ程度に短くされる。内筒部39の外周面には、アッパーグロメット7とロワーグロメット9とを相互に連結するため、複数段の係止爪42が設けられている。係止爪42の形状は、挿入は容易であるが抜き出しには抵抗する形状になっている。
【0023】
内筒部39は中空に形成され、内筒部39の中間高さ位置には、板状の保持部41が形成されている。保持部41には、取付ノブ3の係止脚52が非ロック位置の回転位置で貫通する楕円の穴43が形成されている。フランジ40は、マット6の取付穴周縁の上面に当接する一定の大きさの円板に形成されている。フランジ40の下面には、アッパーグロメット7とロワーグロメット9を相互に連結した状態でマット6のおもて面に食い込む突起44が複数個形成されており、アッパーグロメット7の回転を阻止する。
【0024】
図4において、ロワーグロメット9は、マット6の取付穴に挿入されるとともに、アッパーグロメット7の内筒部39を受入れ外側の筒となるように、中空の外筒部46と、外筒部の一端の外周に形成されてマットの下方の面に接するフランジ47とを有する。外筒部46の軸線方向長さは、アッパーグロメット7の内筒部39を安定して受入れることができれば短いほうが好ましい。外筒部46の外径は、マット6の取付穴に挿入できるように形成され、内径は、アッパーグロメット内筒部39が挿入し易く且つ挿入後がたつかない大きさに形成されている。外筒部46の内側のフランジ47に隣接する部分には、アッパーグロメット7とロワーグロメット9を相互に連結するため、複数の弾性係止爪48が設けられている。各係止爪48は、アッパーグロメット7の内筒部39の係止爪42に係止する。各係止爪48は、内筒部39の挿入は許すが、抜き出し方向には係止爪42への係止によって阻止するように弾性をもって撓む形状に形成されている。フランジ47は、マットの取付穴の周縁の、アッパーグロメット7のフランジ40と反対側のマット面に当接する一定の大きさの円板に形成されている。フランジ47の上面には、マット6に食い込むように複数の突起49が三角形状に突出して周方向に間隔をおいて形成されている。突起49はマットに食い込むのでマットへの保持力が向上する。
【0025】
なお、アッパーグロメット7の内筒部39の外形とロワーグロメット9の外筒部46の外形とは、円筒形状であってもよいが、図3(D)及び図4(B)に図示のように、内筒部39が外筒部46にほぼぴたりと収容できるような長円に形成するのが好ましく、両グロメット7、9の連結において回転方向における向き(角度)を規制すことができる。これによって、アッパーグロメット7の係止爪42とロワーグロメット9の係止爪48の係合を確実にすることができる。なお、アッパーグロメット7及びロワーグロメット9の内径と外径の差(図11のW)を大きくすることによって、マット6の保持面積が大きくできる。それによって、マット6の保持力が向上して、マット6をこじりあげる力への抵抗力も向上する。
【0026】
図5を参照して取付ノブ3を説明する。取付ノブ3は硬質の合成樹脂材料で一体成形される。取付ノブ3は、アッパーグロメット7とロワーグロメット9で挟持されたマット6を第2クリップ2に取付けるのに用いられる。取付ノブ3は、上部の剛体のつまみ部51と、つまみ部51から下方に垂下する剛体の係止脚52を有する。つまみ部51は、図10〜図11に図示のように、全体が、アッパーグロメット7の内筒部39及びフランジ40の内側に収まる大きさに形成されている。つまみ部51は、上部が、作業者が指等でつかんで操作できる形状に形成され、下面側は、マット6を挟持したマット固定具10のアッパーグロメット7の保持部41に当接するフランジとして形成されており、更に、下面側には軸心回りに円形状に下方に出っ張るストッパ53が形成されている。ストッパ53は、第2クリップ2の支持部27の頂部33の穴36の中央部分の周囲に形成された、浅い円形凹部54(図2(B)、(J)を参照されたい)に収容されて、取付ノブ3がそれ以上第2クリップ2の支持部27の中に沈むのを阻止(ストップ)するともに、取付ノブ3の軸心回りの回転を滑らかにガイドする。
【0027】
取付ノブ3の係止脚52は、マット6を挟持したアッパーグロメット7とロワーグロメット9を貫通し、係止脚52の先端が、第2クリップ2の頂部33の穴36と、筒状部34の中空部分と、支持板31の穴36とを通って、支持板31の下面側に係止するように延びる。係止脚52は、つまみ部51から垂下する剛性の棒状部55と、棒状部55から更に垂下する先端の係止部56とから成る。係止部52は、非ロック位置からロック位置への所定角度(90度)の軸心回りの回転によって第2クリップ2の支持部27の支持板31の下面に係止する係止肩を提供するように棒状部55より半径方向外側に張出す剛性の板状である。このように、取付ノブ3は、つまみ部51から延びる係止脚52が剛性の棒状部55と剛性の板状の係止部56とから形成されるので、取付ノブ3の固定力を向上させて、マット6から伝わる、こじりあげる力に十分に対抗でき、更に、取付ノブ3自体の強度も向上させることができ、従って、取付ノブ3を非ロック位置からロック位置へ軸回りに回転させる場合においても、係止脚52が割れることを防止できる。
【0028】
取付ノブ3には、係止脚52の係止部56に、棒状部55の軸線の延長線上の板状の部分の両面から側方に突出する錨脚形状の錨脚係止部57を有する。錨脚係止部57は、第2クリップ2の支持部27の筒状部34及び支持板31に押込まれると錨脚形状の部分57が内方に撓んだ後に元の姿勢に復帰して支持部27の支持板31の下面に係止するように形成されて、取付ノブ3が第2クリップ2に連結できる。これによって、取付ノブ3は第2クリップ2に押し込むだけで非ロック位置において連結されて仮止めされ、取付ノブ3の連結操作が容易になる。
【0029】
取付ノブ3の棒状部55の側面には、半径方向外側に突出する凸部58が形成されている。凸部58は、棒状部55の直径方向に対応する位置に一対形成されている。第2クリップ2の支持部27の筒状部34には、押し込まれた棒状部55の凸部58を受入れて嵌合する形状の凹部を形成する溝35が形成されている。係止脚52が非ロック位置からロック位置への所定(90度)の回転によって、係止脚52の棒状部56の外面の凸部58が、溝35で成る凹部に嵌合する。凹部(溝35)に凸部58が嵌合することによって、取付ノブ3によって第2クリップ2がマット6に固定されたのを感知できるとともに、その固定を維持できる。このように、ロック位置への完了を知るクリック感覚を、係止部56とは異なる位置の棒状部55に形成したことによって、係止部56の固定強度を向上させたとしても、そのクリック感覚を損なうことがなくなり、固定操作の完了を作業者は確実に知ることができる。
【0030】
第2クリップ2において、フランジ26に近い位置に形成された剛性の支持板31と、支持板31から延び出る筒状部34と、筒状部34の内側を頂部33から支持板31に向けて延びる、一対の、相互に離間した平行な弾性支持体32とが形成されており、このp部分に挿入される取付ノブ3の係止脚52は、ぐらつくことなく、第2クリップ2に確実に保持される。従って、取付ノブ3には、ぐらつく場合の過剰な負荷がかからなくなり、取付ノブ3が第2クリップ2をマット6に固定する力が一層向上し、係止脚52の割れへの抵抗も一層向上する。
【0031】
なお、第2クリップ2の支持部27の頂部33には、取付ノブ3の係止脚52の先端の板状の係止部56と錨脚係止部57とを非ロック位置に対応する方向において受入れる形状の受入穴36が形成されており、一対の弾性支持体32の間の空間は、非ロック位置にある板状の係止部56が通過でき且つ錨脚係止部57の錨脚部分が溝部分をスライドしながら通過できる横断面形状である。これによって、作業者は、取付ノブ3を、第2クリップ2に対して非ロック位置にある軸回り角度の姿勢で、第2クリップ2の筒状部34に容易に挿入できる。
【0032】
取付ノブ3のつまみ部51は、マット固定具10のアッパーグロメット7の保持部41を貫通した状態において作業者の指が差し込めるスペースを確保できるように平面視(図5(A)、(D)、(E))において細長い形状に形成されている。また、取付ノブ3のつまみ部51は、アッパーグロメット7の保持部41を貫通した状態において保持部41からの突出高さが作業者の指で容易に触れる高さ(図5(E)、(F))を確保できるように形成されている。
【0033】
図6〜図8を参照して、取付ノブ3と第2クリップ2との連結関係を説明する。図6の(A)に図示のように、取付ノブ3の先端の係止部52が、第2クリップ2の支持部27の頂部33の穴36に、係止脚52の先端の係止部56が通過するように配置される。この配置が、取付ノブ3の係止脚52の軸回り位置を非ロック位置にする。図6(A)の鎖線に示すように、非ロック位置の姿勢にある取付ノブ3を第2クリップ2の支持部27の穴36に挿入する。この挿入によって、図6の(B)に図示のように、取付ノブ3は非ロック位置にある状態で第2クリップ2に連結される。図7は、この非ロック位置にある取付ノブ3が第2クリップ2に連結された状態を示している。図7の(B)に示すように、取付ノブ3の係止脚52が第2クリップ2の支持部27に挿入されると、係止脚52の錨脚係止部57が、筒状部34及び支持板31において内方に撓んだ後に元の姿勢に復帰して、支持部27の支持板31の下面に係止する。このように、取付ノブ3は第2クリップ2に押し込むだけで非ロック位置において連結されて仮止めされ、これによって、取付ノブ3が第2クリップ2に連結できる。取付ノブ3の仮止め連結操作は極めて容易である。この仮止め連結状態が、第2クリップ2及び取付ノブ3の納品荷姿となり、遠隔地にある自動車の生産ラインに送られる。その場合、取付ノブ3が第2クリップ2から分離しないので、取扱い及び管理が確実に且つ容易になる。なお、図7(C)及び(D)に図示のように、取付ノブ3が非ロック位置にあるときには、係止脚52の係止部56は支持板31には係止せず、また、棒状部55の凸部58は弾性支持体32の溝35(凹部)には嵌合していない。
【0034】
図8においては、取付ノブ3が、非ロック位置からロック位置に係止脚52の軸回りに90度回転される。図8(A)〜(C)では、取付ノブ3が、非ロック位置から軸回りに45度回転された状態にある。図8(D)〜(G)では、取付ノブ3は、更に45度回転されて、90度回転したロック位置にある。取付ノブ3は、つまみ部51が作業者の指でつままれて軸回りに回転させられる。図8(A)〜(C)において、取付ノブ3が45度軸回りに回転された位置にある。この状態では、棒状部55の凸部58は、弾性支持体32の凹部(溝35)にはまだ嵌合しない。図8(D)〜(G)では、作業者は、更に、取付ノブ3を軸回りに45度回転してロック位置にする。この状態では、図8(E)に図示のように、係止脚52の先端の係止部56の側方に張出した部分が支持板31の裏面に大きな面積で係合する。従って、非ロック位置の仮止め連結から本止め連結になり、取付ノブ3は第2クリップ2に堅く連結される。取付ノブ3の固定力は向上し、マット6から伝わる、こじりあげる力に対して確実に対抗できる。取付ノブ3の棒状部55の側面の凸部58は、第2クリップ2の支持部27の筒状部34の弾性支持体32の凹部(溝35)に嵌合(図8の(G)参照)して、クリック感覚をつまみ部51を操作している作業者の指に伝える。これによって、作業者は取付ノブ3が第2クリップ2に本止め連結されたのを感知できるとともに、その本止め連結が維持される。このように、ロック位置への完了を知るクリック感覚を、係止部56とは異なる位置の棒状部55に形成したことによって、係止部56の固定強度を向上させ、更に、そのクリック感覚を損なうことがなくなり、ロック位置への操作の完了を作業者は確実に知ることができる。
【0035】
図9(A)に示すように、アッパーグロメット7が、マット6の取付穴61の上方に配置され、ロワーグロメット9が、取付穴61の下方に配置されて、矢印62及び矢印63のように軸方向に押込まれる。この軸方向の押込みによって、アッパーグロメット7とロワーグロメット9は、係止爪42と係止爪48とが係合して、図9(B)に示すように、マット6を挟持した状態に固定される。なお、マット6の取付穴61は、アッパーグロメット7及びロワーグロメット9の形状に合わせて、大径穴と小径穴とで形成されるようにしてもよい。
【0036】
図10〜図11は、本発明のマットの固定装置66を用いて、マット6をパッド5に取付けた状態を示している。第1クリップ1がパッド5に取付けられる。図10において、第1クリップ1は、パッド5の上下面に形成されたガイド溝に合わせて、パッド5の側面に位置合わせされ、側面から押込まれる。固定部15の弾性逆止爪18が、パッド5に形成された係止凹部65A及び65Bに係合して、第1クリップ1は、パッド5に固定される。第1クリップ1のパッド5への固定はスライド作業だけなので、作業は簡単で作業時間も短い。図示の実施形態において、マットの固定装置66は、第1クリップ1と第2クリップ2と取付ノブ3とマット固定具10とから成る。
【0037】
図10〜図11に示すように、マット6をフロアパネル4等の被取付部材に取付ける際、図示の実施形態においては、パッド5の上及びパッド5に固定された第1クリップ1の固定部15の上部アームの上に、遮音や断熱等の目的でインシュレータ11が配置され、更にカーペット等のカバー13がインシュレータ11の上に配置される。例えば、自動車の組み付けラインにおいて、第1クリップ1が固定されたパッド5のある場所に、取付ノブ3によって第2クリップ2が固定されたマット6が搬入される。マット6に固定された第2クリップ2の連結部25が、パッド5に固定された第1クリップ1の連結部17を収容できるように、マット6がパッド5の第1クリップ1に位置決めされる。位置決め後、マット6とともに第2クリップ2が第1クリップ1に押込められる。この押込みによって、第2クリップ2の連結部25の中に第1クリップ1の連結部17が挿入され、連結部17の一対の弾性係止片21が連結部25の一対の係止肩19にそれぞれ係合して、第1クリップ1と第2クリップ2とが連結される。
【0038】
図10(A)では、取付ノブ3が軸回りに回転する前の非ロック位置の姿勢にある。図10(B)では、取付ノブ3が軸回りに90度回転した、ロック位置の姿勢にある。すなわち、取付ノブ3は、第2クリップ2に本止め連結されるとともに、取付ノブ3のつまみ部51の下面のフランジ部分が、マット固定具10のアッパーグロメット7の保持部41の上面に堅く係合して、マット6を第2クリップ2に堅く固定する。図11の(A)及び(B)に図示のように、第1クリップ1と第2クリップ2の連結及び取付ノブ3によるマット6と第2クリップ2の連結によって、マット6が、第1クリップ1及び第2クリップ2(及び取付ノブ3)を介してパッド5に固定される。更に、パッド5はフロアパネル4に固定される。また、パッド5の上及び第1クリップ1の固定部15の上部アーム上に配置されたインシュレータ11及びカバー13は、第2クリップ2のフランジ26に押圧されてパッド5の上に固定される。上記のように、予め、第2クリップ2に取付ノブ3を仮止め連結(取付ノブ3を非ロック位置の姿勢で連結すること)し、マット6を取付ノブ3によって第2クリップ2に仮止め連結しておけば、自動車の生産ラインにおいては、パッド5に固定された第1クリップ1に、第2クリップ2を位置決めして押込むだけの簡単な操作でマット6をパッド5(ひいてはフロアパネル4)等の被取付部材に固定することができ、生産ラインにおける作業時間も短い。
【0039】
マット6の清掃や交換等のためにマット6をパッド5から取外す場合は、マット6を強く引上げて第2クリップ2を第1クリップ1から強く引き抜けばよい。これは、弾性係止片21の下方側の面22(図1(F)参照)がほぼ45度の傾斜面として形成されているからである。すなわち、第2クリップ2の強い引き抜き力で第2クリップ2の連結部25の係止肩29が乗り越えられるように、ほぼ45度の傾斜面として形成され、第1クリップ1に連結した第2クリップ2を強い力で引き抜くことができ、第2クリップ2に連結されたマット6を、パッド5が固定されたフロアパネル4から取外すことができる。この取外し作業は、マット6を手で強く引き抜くことによってもできるが、マイナスドライバ等の工具先端を、マット6とカバー13の間に入れて、こじることによってもできる。清掃後、取外したマット6を、再度フロアパネル等の被取付部材に取付けるには、第2クリップ2の連結部25が第1クリップ1の連結部17に収容できるように、マット6をパッド5に位置決めし、マット6とともに第2クリップ2を第1クリップ1に押込めばよい。なお、マット6の交換等のため、取外したマット6から第2クリップ2を取外すには、取付ノブ3を、ロック位置から非ロック位置に、90度回転させれば、取付ノブ3を取り外しでき、それによって、第2クリップ2をマット6から取外すことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 第1クリップ
2 第2クリップ
3 取付ノブ
4 フロアパネル
5 パッド
6 マット
7 アッパーグロメット
9 ロワーグロメット
10 マット固定具
11 インシュレータ
13 カバー
15 第1クリップの固定部
17 第1クリップの連結部
18 逆止爪
21 弾性係止片
23 リブ
25 第2クリップの連結部
26 フランジ
27 支持部
29 係止肩
30 穴
31 支持板
32 弾性支持体
33 支持部の筒状部の頂部
34 筒状部
35 凹部を形成する溝
36 頂部及び支持板の穴
39 アッパーグロメットの内筒部
41 保持部
42 係止爪
46 ロワーグロメットの外筒部
48 弾性係止爪
51 取付ノブのつまみ部
52 係止脚
55 係止脚の棒状部
56 係止脚の係止部
57 錨脚係止部
58 棒状部の凸部
65A、65B 係止凹部
66 マットの固定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のマットを被取付部材に固定するため、前記被取付部材に固定される第1クリップと、前記マットを保持するための第2クリップとを備え、前記第1クリップは、前記被取付部材に固定される固定部と、前記被取付部材に前記マットが取付けられるように前記固定部から立設して形成されて前記第2クリップに連結される筒状の連結部とを有し、前記第2クリップは、前記マットを保持するように大径に形成されたフランジと、該フランジの上面に形成された支持部と、前記フランジの下面側に形成され、前記第1クリップの連結部に入れ子状に連結される筒状の連結部とを有し、前記第1クリップの連結部と前記第2クリップの連結部とは、相互に入れ子状に連結されることによって前記第1クリップが前記第2クリップに連結されるように形成されており、更に、前記マットに固定されるマット固定具と、前記第2クリップを前記マット固定具に連結する取付ノブとを備え、前記取付ノブは、頭部のつまみ部と、該つまみ部から垂下する係止脚とを有し、前記マット固定具には、前記取付ノブが前記係止脚の軸回りにおいて一定の角度の非ロック位置にあるときには前記つまみ部が通過できるが軸回りに前記非ロック位置から所定角度のロック位置に回転させると前記つまみ部が通過できない穴を有する板状の保持部が形成されており、前記取付ノブは、前記係止脚を前記非ロック位置にある状態で前記第2クリップの前記支持部まで押込んだ後前記ロック位置に軸心回りに回転させられることによって前記係止脚の先端の係止部が前記支持部に係止するように形成され、更に、前記取付ノブは、前記つまみ部が、前記非ロック位置にある状態では前記マット固定具の前記保持部の前記穴を貫通することができるが前記ロック位置に回転させられることによって該保持部から抜け出ないように形成されており、前記第1クリップに固定された前記被取付部材に前記第2クリップ及び前記取付ノブを介して前記マット固定具に固定された前記マットが固定される、自動車のマットの固定装置であって、
前記取付ノブは、前記係止脚が、前記つまみ部から垂下する剛性の棒状部と該棒状部から更に垂下する先端の前記係止部とを備え、前記係止部は、前記ロック位置への前記所定角度の軸心回りの回転によって前記第2クリップの前記支持部に係止する係止肩を提供するように前記棒状部より半径方向外側に張出す剛性の板状である、ことを特徴とする固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固定装置において、前記取付ノブには、前記係止脚の前記係止部に、前記棒状部の軸線の延長線上の前記板状の部分の両面から突出する錨脚形状の錨脚係止部を有し、該錨脚係止部は、前記第2クリップの前記支持部に押込まれると前記錨脚形状の部分が内方に撓んだ後に元の姿勢に復帰して前記支持部に係止するように形成されて、該取付ノブが第2クリップに連結できる、ことを特徴とする固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固定装置において、前記取付ノブの前記棒状部の側面には、半径方向外側に突出する凸部が形成されており、前記第2クリップの前記支持部には、押し込まれた前記棒状部の前記凸部を受入れて嵌合する形状の凹部であって前記係止脚が前記ロック位置への前記所定の回転によって係止脚外面の凸部に嵌合する位置に設けられた前記凹部を有し、該凹部に前記凸部が嵌合することによって該取付ノブによって第2クリップを前記マットに固定したのを感知できるとともに、その固定を維持できる、ことを特徴とする固定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の固定装置において、前記第2クリップの前記支持部は、前記係止脚の前記係止部の前記係止肩が係止する、前記フランジに近い位置に形成された剛性の支持板と、該支持板から前記フランジより離れるように延び出る中空の筒状部と、該筒状部の内側を該筒状部の頂部から前記支持板に向けて延びる、一対の、相互に離間した平行な弾性支持体とから成り、前記一対の弾性支持体は、それらの間に、前記係止脚を通過できる空間を形成しており、各弾性支持体には、前記空間を通った前記棒状部の前記凸部に嵌合する前記凹部が、前記頂部から前記支持板に向けて長手方向に沿って延びる溝形状に形成されている、ことを特徴とする固定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の固定装置において、前記第2クリップの前記支持部の前記頂部には、前記取付ノブの前記係止脚先端の板状の前記係止部と前記錨脚係止部とを前記非ロック位置に対応する方向において受入れる形状の受入穴が形成されており、前記一対の弾性支持体の間の前記空間は、前記非ロック位置にある前記板状の前記係止部が通過でき且つ前記錨脚係止部の錨脚部分が前記溝部分をスライドしながら通過できる横断面形状である、ことを特徴とする固定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の固定装置において、前記取付ノブの前記つまみ部は、前記マット固定具の前記保持部を貫通した状態において作業者の指が差し込めるスペースを確保できるように平面視において細長い形状に形成されている、ことを特徴とする固定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の固定装置において、前記取付ノブの前記つまみ部は、前記マット固定具の前記保持部を貫通した状態において前記保持部からの突出高さが作業者の指で容易に触れる高さを確保できるように形成されている、ことを特徴とする固定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の固定装置において、前記マット固定具は、マットの取付穴の周縁を、上面から押さえるアッパーグロメットと下面から押さえるロワーグロメットとから成り、前記アッパーグロメットに、前記保持部が形成されている、ことを特徴とする固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−180929(P2010−180929A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23758(P2009−23758)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】