説明

自動車のルーフ構造

【課題】接着材が炭化しにくく且つルーフパネルのサイドアウタパネルに対する車幅方向での位置決めが容易な自動車のルーフ構造を提供する。
【解決手段】車両前後方向における少なくとも一端部としての接着エリアAと、接着エリアAよりも車両前後方向中央側の一般部としてのブレージングエリアCと、の境界部Bに、第2底面部8から突出し先端部14cがサイドアウタパネル2の第1縦壁5に当接するガイドプレート14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフには、ルーフパネルとサイドアウタパネルとの間に、ルーフモール取付用の溝部を前後方向に沿って形成したものが知られている。
【0003】
サイドアウタパネルの車幅方向内側端には、縦壁を介して下方に位置する第1底面部が形成され、ルーフパネルの車幅方向外側端には、縦壁を介して下方に位置する第2底面部が形成され、第1底面部の上面に第2底面部を重ね合わせて結合することにより、溝部が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
サイドアウタパネルとルーフパネルは互いに異なる金属で形成され、スポット溶接ができず、溝部の幅を極力狭くするために、第2底面部の端末と第1底面部とをレーザーブレージング等によるロウ付けで結合している。
【0005】
但し、溝部の前後方向端部には段差や隙間があり、ブレージングによる結合ができないため、ブレージングによる結合を行う前に、第1底面部と第2底面部の間に接着材を介在した状態で、互いをリベットやビス等で結合している。
【特許文献1】特開2004−306676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術では、接着材のごく近傍にロウ付けをすることが必要となるが、普通に接合しようとすると、ロウ付けの為の熱で接着材が炭化してしまうことがある。
【0007】
また、ルーフパネルはその第2底面部を、サイドアウタパネルの第1底面部の上面に上下方向で重ねて結合する構造のため、水平方向(車幅方向)での位置が定まらず、位置合わせすることが困難であった。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、接着材の熱による炭化を防ぎルーフパネルのサイドアウタパネルに対する車幅方向での位置決めが容易な自動車のルーフ構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、サイドアウタパネルの車幅方向内側端に、第1縦壁を介して下方に位置する第1底面部が前後方向に沿って形成され、前記サイドアウタパネルと異種材料で形成されたルーフパネルの車幅方向外側端に、第2縦壁を介して下方に位置する第2底面部が前後方向に沿って形成され、前記第1底面部と前記第2底面部が重ね合わされて結合されることにより、溝部が前後方向に沿って形成された自動車のルーフ構造である。前記溝部の前後方向における少なくとも一端部には、前記第2底面部の端末を前記第1底面部の上面に接着材を介して結合し、前記溝部の前記一端部を除く部分としての一般部は、前記第1底面部と前記第2底面部とをロウ付けにより結合している。そして、前記一端部と前記一般部との境界部において、前記第2底面部からガイドプレートが突出し、当該ガイドプレートの先端部が前記サイドアウタパネルの第1縦壁に当接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2底面部の境界部にガイドプレートを形成したため、ガイドプレートが接着材への熱伝達を抑えることができ、接着材の炭化を防止することができる。また、ガイドプレートの先端部がサイドアウタパネルの縦壁に当接するため、ルーフパネルのサイドアウタパネルに対する車幅方向での位置決めが行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、ルーフモールが取付けられたルーフを示す斜視図、図2は、ルーフの溝部を上から見た図、図3は溝部の前端部を示す分解斜視図、図4は、ガイドプレートを示す拡大斜視図、図5は、図2中矢示SA−SA線に沿う断面図、図6は、図2中矢示SB−SB線に沿う断面図、図7は、図2中矢示SC−SC線に沿う断面図である。
【0012】
自動車のルーフはルーフパネル1とサイドアウタパネル2とから構成されている。ルーフパネル1およびサイドアウタパネル2は互いに異種金属で形成されている。例えばルーフパネル1はアルミ製で、サイドアウタパネル2は鉄製で形成されている。
【0013】
図1に示すように、ルーフパネル1と、その車幅方向両側に位置するサイドアウタパネル2と、の間には、前後方向に沿う溝部3が左右に2本形成されている。溝部3には、装飾用のルーフモール4が取付けられている。左右の溝部3及びルーフモール4は左右対称で同じ構造のため、以下においては、左側だけを代表して説明する。
【0014】
図7に示すように、サイドアウタパネル2の車幅方向内側端部には、第1縦壁5を介して下方に位置する第1底面部6が形成され、ルーフパネル1の車幅方向外側端部には、第2縦壁7を介して下方に位置する第2底面部8が形成され、第1底面部6の上に第2底面部8とを重ね合わせて結合することにより、溝部3が形成されている。第2底面部8の端末9は、第1底面部6の上面における車幅方向途中位置にあり、第1縦壁5までは達していない。
【0015】
第1底面部6及び第2底面部8の前後両端部(図2参照)には、図3に示すように段差10を介して一段高く形成された部分があり、そこから車幅方向に沿って、フロントウィンドウガラス11(図1参照)やリヤウィンドウガラス(図示せず)の上端を固定する前面部12(図2参照)や後面部13(図2参照)が連続形成されている。
【0016】
図3に示すように、この段差10により一段高く形成された部分では、車両前後方向両端部が接着エリアA(機械的結合エリアA)となっており、段差10を含む前後方向内側部分が境界部Bとなっている。そして、前後の段差10の間が一般部で、この範囲がブレージングエリアCとなっている(図2参照)。
【0017】
前記境界部Bには、図3に示すように、前後方向外寄り位置にガイドプレート14が形成されている。このガイドプレート14は、境界部Bにおける第2底面部8の端末9から前記第1縦壁5と所定間隔をあけて略平行に立ち上がり形成された基端部14aと、基端部14aから略直角に曲折されて略水平方向に延びる中間部14bと、中間部14bから略直角に上方に向けて曲折された先端部14cと、を備えて、全体として断面クランク形状をしている。ガイドプレート14のの先端部14cは第1縦壁5に沿って平行に設けられ、ルーフパネル1がサイドアウタパネル2に対して車幅方向で正規位置となったときに、図5、6に示すように、サイドアウタパネル2の第1縦壁5と当接する形状になっている。
【0018】
ガイドプレート14は、第2底面部8の端末9から立ち上げ形成されることにより、第2底面部8の端末9が露出した状態となり、ガイドプレート14とサイドアウタパネル2との間には、シール手段としてのペイントシールP1、P2用のノズル16(図6参照)を挿入するスペースS(図5参照)も形成される。
【0019】
接着エリアAにおける第2底面部8と第1底面部6には、図3に示すように、それぞれ前後方向及び車幅方向で正規位置となったときに合致する結合孔17、18がそれぞれ形成されている。また、前面部12及び後面部13にも図示せぬ車体構造に結合するための結合孔19(図2参照)が形成されている。
【0020】
次に、このルーフの組立手順を作用と共に説明する。
【0021】
先に組み立てられたサイドアウタパネル2における第1底面部6の、車両前後方向両側の接着エリアAに、接着材20を塗布する。接着材20は接着エリアAだけに塗布し、境界部Bには塗布しない。
【0022】
次に、接着材20を塗布した第1底面部6の上に、ルーフパネル1の第2底面部8を載せる。第1底面部6を第2底面部8の上に載せることにより、ルーフパネル1の左右両側に形成されたガイドプレート14の先端部14cが、サイドアウタパネル2の第1縦壁5にそれぞれ当接するため、ルーフパネル1はサイドアウタパネル2に対して、少なくとも車幅方向で正規位置に位置決めされた状態となる。
【0023】
ガイドプレート14は前後に形成されているため、ルーフパネル1の前後方向に沿った姿勢も定まる。ガイドプレート14の先端部14cがサイドアウタパネル2の第1縦壁5に沿った曲折形状をしているため、先端部14cと第1縦壁5との当接状態が安定し、車幅方向で位置決めが確実なものとなる。
【0024】
サイドアウタパネル2の前後方向に沿った姿勢が定まり、車幅方向での位置決めがなされるため、その後はルーフパネル1を前後に移動させることにより、第1底面部6と第2底面部8の結合孔17、18同士が容易に合致させることができる。そして、合致した結合孔17、18同士をリベット21により結合する。前面部12及び後面部13の結合孔19も別のリベットにより車体構造に結合する。
【0025】
次に、車両前後方向中央側のブレージングエリアCを結合する。ブレージングエリアCにおける第2底面部8の端末9に沿ってレーザーブレージングによりロウ材22を施す。ロウ材22により、第2底面部8の端末9と第1底面部6とが結合される。レーザーブレージングは高い温度(約600°C)を伴う作業であるが、ブレージングエリアCと接着エリアAとの間に、緩衝範囲としての境界部Bが存在するため、ブレージングエリアCの熱が接着エリアAの接着材20に直接伝わらず、接着材20の変質を防止することができる。
【0026】
また、ブレージングエリアCに隣接した境界部Bからはガイドプレート14が溝部3の空間内に出っ張った状態で形成されているため、このガイドプレート14が放熱板としての機能を果たし、接着エリアA側への伝熱量を抑えることもできる。
【0027】
そして、最後に、ルーフパネル1の第2底面部8における端末9に対してシール手段としてのペイントシールP1、P2を施す。
【0028】
まず最初に、接着材20もロウ材22もない境界部Bに対して、部分的にペイントシールP1を施す。境界部Bに部分的なペイントシールP1を施す際、ガイドプレート14があるため、ガイドプレート14が目印となって、作業者は境界部Bの位置を容易に認識することができる。つまり、ガイドプレート14と段差10との間がペイントシールP1を施す範囲である。
【0029】
また、ガイドプレート14とサイドアウタパネル2との間にノズル16を挿入可能なスペースSが形成されているため、そこへノズル16を挿入し、スペースS内で露出している第2底面部8の端末9に対して、ノズル16を用いて部分的なペイントシールP1を施すことができる。
【0030】
次に、前方から後方へかけて、接着エリアA、境界部B、ブレージングエリアCの全ての範囲に、ペイントシールP2を連続的に施す。境界部BだけペイントシールP1、P2の二重シールとなる。ペイントシールP1、P2により第1底面部6と第2底面部8との間の防水性が確保される。
【0031】
最後に、溝部3内にルーフモール4を取付ける。ルーフモール4の下面にはガイドプレート14に係合する切欠部(図示せず)が形成されており、これをガイドプレート14に係合させることにより、ルーフモール4の前後方向での位置決めも行うことができる。
【0032】
次に本実施形態の効果を列挙する。
【0033】
(1)本実施形態は、ブレージングエリアCと接着エリアAの間の境界部Bの、第2底面部8に、第2底面部8から突設され先端部14cがサイドアウタパネル2の第1縦壁5に当接するガイドプレート14が形成されている。そのため、接着エリアAの接着材への熱伝達を抑えることができ、当該接着材の炭化を防止できる。また、ガイドプレート14の先端部14cがサイドアウタパネル2の第1縦壁5に当接するため、ルーフパネル1のサイドアウタパネル2に対する車幅方向での位置決めが行える。
【0034】
(2)また本実施形態では、ガイドプレート14は、第2底面部8の端末9から立ち上げ形成された形状のため、第2底面部8の端末9は露出状態にあり、シール作業も確実に行える。
【0035】
(3)また本実施形態では、前記接着エリアAが車両前後方向両端部に設けられることで前記境界部Bが車両前後方向両側に設けられ、当該境界部Bのそれぞれにガイドプレート14が形成されている。そのため、ルーフパネル1の前後方向に沿った姿勢が定まり、ルーフパネル1のサイドアウタパネル2に対する車幅方向での位置決めが更に確実となる。
【0036】
(4)また本実施形態では、ガイドプレート14は、第2底面部8から第1縦壁5と所定間隔をあけて略平行に立ち上げ形成されている。そのため、ガイドプレート14とサイドアウタパネル2との間に、第2底面部8の端末9をシールするシール手段としてのペイントシールP1、P2を噴出するノズル16を挿入できるスペースSが形成される。これにより、ノズル16を用いたペイントシールP1、P2の塗布作業が容易に行える。なお、このときガイドプレート14が目印となり、境界部Bの位置が分かりやすく、境界部Bに対するシール作業が行いやすくなる利点もある。
【0037】
(5)また本実施形態では、ガイドプレート14の先端部14cが、サイドアウタパネル2の第1縦壁5に略平行に沿った形状をしている。そのため、ガイドプレート14の先端部14cとサイドアウタパネル2の第1縦壁5との当接状態が安定し、更に確実な位置決めが行える。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ルーフモールが取付けられたルーフを示す斜視図。
【図2】ルーフの溝部を上から見た図。
【図3】溝部の前端部を示す分解斜視図。
【図4】ガイドプレートを示す拡大斜視図。
【図5】図2中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図6】図2中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【図7】図2中矢示SC−SC線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 ルーフパネル
2 サイドアウタパネル
3 溝部
4 ルーフモール
5 サイドアウタパネルの第1縦壁
6 第1底面部
7 ルーフパネルの第2縦壁
8 第2底面部
9 端末
14 ガイドプレート
14c 先端部
16 ノズル
17、18 結合孔
20 接着材
21 リベット
22 ロウ材
A 接着エリア(前後方向いずれかの一端部)
B 境界部
C ブレージングエリア(一端部を除いた一般部)
P1、P2 ペイントシール(シール手段)
S スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドアウタパネルの車幅方向内側端に、第1縦壁を介して下方に位置する第1底面部が前後方向に沿って形成され、
前記サイドアウタパネルと異種材料で形成されたルーフパネルの車幅方向外側端に、第2縦壁を介して下方に位置する第2底面部が前後方向に沿って形成され、
前記第1底面部と前記第2底面部が重ね合わされて結合されることにより、溝部が前後方向に沿って形成され、
前記溝部の前後方向における少なくとも一端部では、前記第2底面部の端末を前記第1底面部の上面に接着材を介して結合し、
前記溝部の前記一端部を除く一般部では、前記第1底面部と前記第2底面部とをロウ付けにより結合し、
前記一端部と前記一般部との境界部に、前記第2底面部から突出し先端部が前記サイドアウタパネルの第1縦壁に当接するガイドプレートが形成されていることを特徴とする自動車のルーフ構造。
【請求項2】
前記境界部が前後方向における両端部に設けられ、前記ガイドプレートが前記各々の境界部からそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車のルーフ構造。
【請求項3】
前記ガイドプレートは前記第2底面部から前記第1縦壁と所定間隔をあけて略平行に立ち上げ形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動車のルーフ構造。
【請求項4】
前記ガイドプレートの先端部が、前記サイドアウタパネルの第1縦壁に沿った曲折形状をしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車のルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302769(P2008−302769A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150674(P2007−150674)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】