説明

自動車の側部構造

【課題】
車体側方から入力した荷重をピラーに効率よく伝達し、車体側方からの荷重入力の初期段階から車体の強度を高めることができる自動車の側部構造を提供すること。
【解決手段】
車体Sの側面に設けられたフロントドア開口(ドア開口)K1を開閉するフロントドア(ドア)1と、フロントドア開口K1の後縁を形成するセンタピラー(ピラー)4と、フロントドア1が閉じたときにこのフロントドア1とセンタピラー4との間に車幅方向の間隙を形成した状態でこのフロントドア1をセンタピラー4に係止させるラチェット6、ストローク7(ドア係止手段)とを備えた自動車の側部構造であって、フロントドア1の開閉に連動して移動し、フロントドア1を閉める際のオーバーストロークを許容可能に設けられ、且つ、フロントドア1を閉じた後に車幅方向においてフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接する荷重伝達部材10をセンタピラー4に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側面に設けられたドアと、車幅方向の間隙を形成した状態でドア係止手段を介してドアが係止されるピラーとを備えた自動車の側部構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体側面にはドア開口が設けられると共に、ドア開口を開閉するドア及びこのドア開口の前縁又は後縁を形成するピラーが設けられていることが普通である。そして、このドアとピラーとは、ドアの周縁部に間隙を形成した状態でドア係止手段(ドアロック装置)を介して係止されるようになっている。
【0003】
このような自動車において、車体の側方(車幅方向)からの荷重入力があると、まず入力した荷重によって車体の側面に設けられたドアが車体内部に向って変形する。そして、変形したドアがピラーとの間に形成された間隙を狭めるようにピラー側に移動した後にピラーに接触し、これによってドアに入力された荷重がピラーに入力されてピラーの変形が進行するようになっていた。
【0004】
一方、車体の前方から荷重入力があった場合には、まず入力した荷重によってピラーが変形し、このピラーがドアとの間に形成された間隙を狭めるように後退してドアに接触することでドアの変形が進行するようになっていた。
【0005】
そこで、従来からドアヒンジ部にドアとピラーとの車両前後方向の間隙を小さくする突起を設け、車両の前方からの入力荷重を効率よくドアに伝達する自動車の側部構造が考えられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−118370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の自動車の側部構造では、ドアとピラーとの車幅方向の間隙を小さくすることができず、車体の側方から入力した荷重をドアからピラーに速やかに伝達することができなかった。
【0007】
そのため、車体側方から荷重が入力した場合には、変形したドアがピラーに接触することによって入力した荷重がピラーに伝達するまで、ピラーが車体の強度部材として作用しないという問題が生じていた。
【0008】
また、例えばフロントドアに斜め前方から荷重が入力されるような場合では、ドアヒンジ部に設けられた突起によってドアヒンジ部付近のドアとピラーとの間隙が小さくされていても、車両に入力した荷重をドアからピラーに効率よく伝達することはできなかった。つまり、上述の自動車の側部構造では、車両の斜め前方から荷重が入力した場合であっても、荷重入力とほぼ同時にピラーを車体の強度部材として作用させることができなくなっていた。
【0009】
そこで、この発明は、車体側方から入力した荷重をピラーに効率よく伝達し、車体側方からの荷重入力の初期段階から車体の強度を高めることができる自動車の側部構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、車体の側面に設けられたドア開口を開閉するドアと、前記ドア開口の前縁又は後縁を形成するピラーと、前記ドアが閉じたときに該ドアと前記ピラーとの間に車幅方向の間隙を形成した状態でこのドアを前記ピラーに係止させるドア係止手段とを備えた自動車の側部構造であって、前記ドアの開閉に連動して移動することで該ドアを閉める際のオーバーストロークを許容可能にし、且つ、前記ドアを閉じた後に車幅方向において前記ドアと前記ピラーとにそれぞれ当接する荷重伝達部材を前記ドアまたは前記ピラーのどちらか一方に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明によると、ドアとピラーとの間に形成された車幅方向の間隙にこのドアとピラーとにそれぞれ当接する荷重伝達部材を設けたので、この荷重伝達部材を介して車体側方から入力した荷重をドアからピラーへと効率よく且つ速やかに伝達することができる。
【0012】
そのため、入力した荷重によってドアが大きく変形して車体内側に移動する前に、ピラーを車体の強度部材として作用させることが可能となって、車体側方から荷重が入力した際に、この荷重入力の初期段階から車体の強度を高めることができる。
【0013】
また、荷重伝達部材がドアの開閉に連動して移動することでドアを閉める際のオーバーストロークを許容可能するように設けられているので、荷重伝達部材がドアを閉める際に邪魔にならず、従来と同様の状態でドアを閉めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に関わる自動車の側部構造の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明を適用した自動車の側部構造の実施例1を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1、図2に示す車体Sの側面には、図示しない車室を開放するフロントドア開口K1とリヤドア開口K2とが車両前後方向に並んで形成されている。さらに、この車体Sの側面には、フロントドア開口K1を開閉するフロントドア1とリヤドア開口K2を開閉するリヤドア2とが設けられている。
【0017】
また、フロントドア開口K1の前縁はフロントピラー3によって形成され、フロントドア開口K1の後縁及びリヤドア開口K2の前縁はセンタピラー4によって形成され、リヤドア開口K2の後縁はリヤピラー5によって形成されている。
【0018】
フロントドア1は、図3に示すように、ドアアウタパネル1Aとドアインナパネル1Bとの互いの外周部1C同士を溶接結合することにより、中空に形成されている。また、内部には図示しないドアガラスが昇降可能に配設されている。
【0019】
リヤドア2もフロントドア1と同様の構造となっており、ドアアウタパネル2A及びドアインナパネル2Bを有している。
【0020】
センタピラー4は、図3に示すように、ピラーアウタパネル4Aとピラーインナパネル4Bとの前縁部4C同士及び後縁部4D同士をそれぞれ互いに溶接結合することにより、上下方向に延びた中空の柱状に形成されている。
【0021】
フロントピラー3及びリヤピラー5もセンタピラー4とほぼ同様の構造となっており、図示しないがそれぞれピラーアウタパネル及びピラーインナパネルを有している。
【0022】
さらに、フロントドア1は、フロントピラー3及びセンタピラー4とのそれぞれの間に車幅方向の間隙KG(図3参照)を形成した状態で、閉じたときにセンタピラー4に係止される。また、リヤドア2は、センタピラー4及びリヤピラー5とのそれぞれの間に車幅方向の間隙KGを形成した状態で、閉じたときにリヤピラー5に係止される。
【0023】
なお、フロントドア1及びリヤドア2は、ドア係止手段であるドア側に設けられたラチェット6(図1参照)とピラー側に設けられたストライカ7(図2参照)とが互いに噛み合うことによって係止される。このドア係止手段の構造に関しては周知であるので、ここでは説明を省略する。
【0024】
また、フロントドア1及びリヤドア2と、フロントピラー3、センタピラー4、リヤピラー5との間に形成された車幅方向の間隙KGは、図示しないウエザーストリップやウエルトシール、パーティングシール等でふさがれるようになっている。これにより、フロントドア1及びリヤドア2を閉めた際の高速走行時の風音抑制や水密性の向上が図られている。
【0025】
そして、センタピラー4には、フロントドア1を閉じた後に車幅方向においてフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接する荷重伝達部材10が設けられている。
【0026】
この荷重伝達部材10は、図3に示すように、センタピラー4のピラーアウタパネル4Aとフロントドア1のドアインナパネル1Bとの間に配設されている。なお、この荷重伝達部材10は、ここではセンタピラー4の前縁部4C近傍とフロントドア1の後縁部近傍との間の間隙KG1内に配設されている。
【0027】
そして、この荷重伝達部材10は、ここでは高分子アクチュエータによって形成されている。高分子アクチュエータは、図5(a)に示すように、上側から順に絶縁膜層11、第一伸縮層12、第二伸縮層13、絶縁膜層14、クラッチ板層15が重ね合わされるとともに、各層が接着されて一体化されることによって形成されている。なお、ここでは各層が中心部に開口が設けられた円盤形状を呈しているが、これに限らず、適宜変形される。
【0028】
また、第一伸縮層12及び第二伸縮層13はそれぞれ同様の構造となっており、図5(c)に示すように、上から順に電極板16、エラストマー17、電極板16、エラストマー17、電極板16が重なり合っている。
【0029】
エラストマー17は通常常温付近でゴム弾性を示す高分子材料であり、各電極板16に電源(バッテリー)Dを接続し、この電源Dからの電力によって伸縮するようになっている。ただし、体積は変化しない。
【0030】
そして、この高分子アクチュエータは、第一伸縮層12及び第二伸縮層13に通電することによって伸縮するようになっている。つまり、図5(b)に示すように、通電する(電流が流れる)と第一伸縮層12及び第二伸縮層13が縮小し、通電しない(電流が流れない)と第一伸縮層12及び第二伸縮層13が伸長するようになっている。
【0031】
さらに、この荷重伝達部材10は、高分子アクチュエータの第一伸縮層12及び第二伸縮層13が伸縮することでフロントドア1の開閉に連動して移動するようになっている。つまり、フロントドア1が閉まっているときにはフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接するように移動(変形)し(図4(a)参照)、フロントドア1が開いたときにはこのフロントドア1を閉める際のオーバーストロークを許容可能になるように移動(変形)する(図4(b)参照)。
【0032】
なお、この「オーバーストローク」とは、フロントドア1を閉める際に、このフロントドア1が係止される位置よりも瞬間的に車室側に入り込むことによって生じるものである。
【0033】
次に、この実施例1の自動車の側部構造の作用について説明する。
【0034】
この自動車の側部構造において、車体Sの側方から荷重が入力すると、この入力荷重(以下、荷重という)は、まずフロントドア1のドアアウタパネル1Aに入力する。
【0035】
そして、このドアアウタパネル1Aに入力した荷重は、ドアアウタパネル1Aの外周部1Cからドアインナパネル1Bに伝達され、このドアインナパネル1Bに伝達された荷重は、荷重伝達部材10を介してセンタピラー4に伝達される。
【0036】
このように、車体Sの側方から入力した荷重は、フロントドア1から荷重伝達部材10を介してセンタピラー4に効率よく且つ速やかに伝達される。
【0037】
そのため、車体Sに側方から入力した荷重によってフロントドア1が大きく変形した状態で車体Sの内側に移動する前に、センタピラー4を車体Sの強度部材として作用させることが可能となる。そして、車体Sの側方から荷重が入力した際の初期段階から車体Sの強度を高めることができる。
【0038】
さらに、フロントドア1が閉まっているときには、電源Dから荷重伝達部材10に電力が供給されておらず(通電なし)、図4(a)に示すように、荷重伝達部材10はフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接するように伸長している。
【0039】
また、フロントドア1が開いているときには、電源Dから荷重伝達部材10に電力が供給され(通電あり)、図4(b)に示すように、荷重伝達部材10はフロントドア1を閉める際のオーバーストロークを許容可能となるように縮小している。
【0040】
これにより、フロントドア1を閉める際に、このフロントドア1が係止位置よりも瞬間的にフロントピラー4側に移動しても荷重伝達部材10が邪魔にならず、従来と同様の状態でフロントドア1を閉めることが可能となる。
【0041】
また、この荷重伝達部材10はフロントドア1が開いているときに縮小するため、荷重伝達部材10のセンタピラー4からの突出量は、フロントドア1を開いているときの方が閉じているときよりも小さくなっている。
【0042】
そのため、乗員の乗降時に荷重伝達部材10に衣服等が引っかかりにくくなり、従来同様円滑に乗降することが可能となっている。
【0043】
以上説明したように、この発明の自動車の側部構造は、車体Sの側面に設けられたフロントドア開口K1を開閉するフロントドア1と、フロントドア開口K1の後縁を形成するセンタピラー4と、フロントドア1が閉じたときにフロントドア1とセンタピラー4との間に車幅方向の間隙を形成した状態でこのフロントドア1をセンタピラー4に係止させるドア係止手段であるラチェット6及びストライカ7とを備えた自動車の側部構造であって、フロントドア1の開閉に連動して移動することでこのフロントドア1を閉める際のオーバーストロークを許容可能にし、且つ、フロントドア1を閉じた後に車幅方向においてフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接する荷重伝達部材10をセンタピラー4に設けている。
【0044】
そのため、荷重伝達部材10を介して車体Sの側方から入力した荷重をフロントドア1からセンタピラー4へと効率よく且つ速やかに伝達することができる。
【0045】
これにより、入力した荷重によってフロントドア1が大きく変形して車体Sの内側に移動する前に、センタピラー4を車体の強度部材として作用させることが可能となって、車体S側方からの荷重入力の初期段階から車体Sの強度を高めることができる。
【0046】
また、フロントドア1を閉める際にこのフロントドア1が係止位置よりもフロントピラー4側に瞬間的に入り込んでも、荷重伝達部材10がフロントドア1に当接することない。そのため、この荷重伝達部材10がフロントドア1の動作を阻害することがなくなって、オーバーストロークの邪魔にならず、従来と同様の状態でフロントドア1を閉めることが可能となる。
【実施例2】
【0047】
本発明を適用した自動車の側部構造の実施例2を図面に基づいて説明する。
【0048】
なお、上述の実施例1と同等の部位については同一符号を使用し、詳細な説明を省略する。
【0049】
センタピラー4には、図6、図9に示すように、フロントドア1の開閉を検出するドアスイッチDSが設けられている。このドアスイッチDSは、ストロークピン23と、スイッチベース24とを備えている。
【0050】
さらに、このセンタピラー4には、図7及び図8に示すように、ドアスイッチDSがフロントドア1を閉じたことを検出すると、それに連動して荷重伝達部材20をフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接させる駆動手段KSが設けられている。
【0051】
駆動手段KSは、後述する電源Dと駆動スイッチ30とを備えており、荷重伝達部材20に接続されている。なお、ここではこの駆動手段DSはセンタピラー4の内部に配設されている。
【0052】
荷重伝達部材20は、図6に示すように、取付板21と、伸縮部22と、ドアスイッチDSのストロークピン23と、ドアスイッチDSのスイッチベース24とを備えている。
【0053】
取付板21は、センタピラー4のピラーインナパネル4Bに図示しないネジ等で固定されており、後述するようにセンタピラー4に伝達された荷重をセンタピラー4全体に十分に分散できるようになっている。
【0054】
伸縮部22は、高分子アクチュエータによって形成されており、図7及び図8に示すように駆動手段KSの電源Dに接続されている。そして、電源Dから電力が供給される(通電あり)と伸長し、電源Dから電力が供給されない(通電なし)と縮小するようになっている。また、この伸縮部22はセンタピラー4の内部に配設され、取付板21に支持されている(図6参照)。
【0055】
ストロークピン23は、一方端に伸縮部22に当接する当接部23Aが形成され、他方端にフロントドア1に当接する先端部23Bが形成されたスティック形状を呈している。そして、このストロークピン23は、当接部23Aから先端部23Bに向って段階的に細くなっており、先端部23Bの外径は、後述するスイッチベース24のスイッチ24Aに対向した際に接触しない大きさに形成されている。
【0056】
また、このストロークピン23は、ピラーアウタパネル4Aを貫通しており、フロントドア1に向って先端部23Bがセンタピラー4の内部から突出している。
【0057】
さらに、当接部23Aとピラーアウタパネル4Aとには、それぞれスプリング25の端部が取り付けられている。このスプリング25の中心にはストロークピン23が貫通しており、ストロークピン23がセンタピラー4から突出するように付勢している。
【0058】
スイッチベース24は、ピラーアウタパネル4Aのフロントドア1側に取り付けられると共に、ストロークピン23が貫通している。そして、図7及び図8に示すように、ストロークピン23によってON/OFF制御されるスイッチ24Aが設けられている。
【0059】
スイッチ24Aは、ストロークピン23の先端部23Bが対向しているときにこのストロークピンが接触せずにOFFされ(図7参照)、ストロークピン23の中間部が対向しているときにこのストロークピン23が接触してONされる(図8参照)ようになっている。
【0060】
また、このスイッチ24Aにはフロントドア1の開閉を検出する制御回路26と、後述する作動スイッチ30のソレノイド27とがそれぞれ接続されている。
【0061】
制御回路26には電源回路28が接続され、スイッチ24AがONされたときに電源回路28から電力が供給され、ソレノイド27に通電されるようになっている。
【0062】
作動スイッチ30は、ソレノイド27と、ソレノイド27によってON/OFF制御されるスイッチ29とを備えている。
【0063】
スイッチ29は、電源Dと伸縮部22とにそれぞれ接続され、このスイッチ29がONしたときに伸縮部22に電源Dの電力が供給されるようになっている。
【0064】
次に、この実施例2の自動車の側部構造の作用について説明する。
【0065】
この自動車の側部構造において、フロントドア1が閉まっている場合には、図7に示すように、フロントドア1がセンタピラー4から突出したストロークピン23に接触し、このストロークピン23がセンタピラー4の内部に押し込まれる。
【0066】
このとき、スイッチベース24に設けられたスイッチ24Aには、ストロークピン23の先端部23Bが対向しており、スイッチ24Aとストロークピン23とが接触していない状態となる。
【0067】
これにより、スイッチ24AはOFFされて電源回路28から制御回路26に電力が供給されず、制御回路26はフロントドア1が閉まっていることを検出する。
【0068】
また、駆動手段KSの駆動スイッチ30のソレノイド27にも通電されず、この駆動スイッチ30のスイッチ29もOFFされる。そのため、伸縮部22に通電されず、この伸縮部22は伸長する。
【0069】
これにより、図7に示すように、ストロークピン23の当接部23Aと伸縮部22とが当接することとなる。
【0070】
つまり、ドアスイッチDSの制御部26がフロントドア1を閉じていることを検出すると、駆動手段KSによって荷重伝達部材20の伸縮部22が伸長し、この荷重伝達部材20をフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接させるようになっている。
【0071】
さらに、このとき車体Sの側方から荷重が入力すると、この入力荷重(以下、荷重という)は、まずフロントドア1のドアアウタパネル1Aに入力する。
【0072】
そして、このドアアウタパネル1Aに入力した荷重は、ドアアウタパネル1Aの外周部1Cからドアインナパネル1Bに伝達され、このドアインナパネル1Bに伝達された荷重は、ストロークピン23から伸縮部22、取付部21を順に介して、センタピラー4に伝達される。
【0073】
ここで、取付部21は、センタピラー4に伝達された荷重をセンタピラー4全体に十分に分散できるようになっているので、車体Sの側方から入力した荷重は、センタピラー4の全体に効率よく且つ速やかに伝達される。
【0074】
これにより、車体Sに側方から入力した荷重によってフロントドア1が大きく変形した状態で車体Sの内側に移動する前に、センタピラー4を車体Sの強度部材として作用させることが可能となる。そして、車体Sの側方から荷重が入力した際の初期段階から車体Sの強度を高めることができる。
【0075】
一方、フロントドア1が開いている場合には、図8に示すように、フロントドア1が矢印で示す方向に移動し、ドアインナパネル1Bとストロークピン23とが離間する。そのため、ストロークピン23はスプリング25の付勢力によってフロントドア1側へ引っ張られ、先端部23Bはセンタピラー4からさらに突出するようになる。
【0076】
このとき、スイッチベース24に設けられたスイッチ24Aには、ストロークピン23の中間部が対向しており、スイッチ24Aとストロークピン23とが接触している状態となる。
【0077】
これにより、スイッチ24AはONされて電源回路28から制御回路26に電力が供給され、制御回路26はフロントドア1が開いていることを検出する。
【0078】
また、駆動手段KSの駆動スイッチ30のソレノイド27にも通電され、この駆動スイッチ30のスイッチ29もONされる。そのため、伸縮部22に通電され、この伸縮部22は縮小する。
【0079】
これにより、図8に示すように、ストロークピン23の当接部23Aと伸縮部22とが離間すると共に、フロントドア1を閉める際に生じるオーバーストロークを許容可能な位置に伸縮部22が移動する。
【0080】
そのため、フロントドア1を閉める際にこのフロントドア1が係止位置よりもセンタピラー4側に瞬間的に入り込み、ストロークピン23が一瞬大きく押し込まれても、ストロークピン23の当接部23Aが伸縮部22に当接することがなく、フロントドア1の動作を阻害することがなくなる。
【0081】
これにより、荷重伝達部材20がフロントドア1のオーバーストロークの邪魔にならず、従来と同様の状態でフロントドア1を閉めることが可能となる。
【0082】
また、従来から設定されているドアスイッチDSに伸縮部22や駆動手段KS等を接続することによって、新たにフロントドア1とセンタピラー4との間に荷重伝達部材20を設けるスペースを確保する必要がなくなり、さまざまな車種に容易に適用することが可能となる。
【0083】
そして、図9に示すように、フロントドア1を開けた際に荷重伝達部材20の伸縮部22が外部から見えず、見映えが悪くなることもない。
【0084】
さらに、駆動手段KSが荷重伝達部材20を駆動させるための入力信号がドアスイッチDSから入力されるように荷重伝達部材20とドアスイッチDSとを兼用(統合)したので、部品構成を単純にすることが可能となる。
【0085】
以上説明したように、この発明の自動車の側部構造は、センタピラー4に、フロントドア1の開閉を検出するドアスイッチDSを設けると共に、このドアスイッチDSがフロントドア1を閉じたことを検出すると荷重伝達部材20を車幅方向においてフロントドア1とセンタピラー4とにそれぞれ当接させる駆動手段KSを設けた。
【0086】
そのため、新たにフロントドア1とセンタピラー4との間に荷重伝達部材20を設けるスペースを確保する必要がなくなり、さまざまな車種に容易に適用することが可能となると共に、フロントドア1を開けた際の見映えが悪くなることもない。
【0087】
また、駆動手段KSが荷重伝達部材20を駆動させるための入力信号がドアスイッチDSから入力されるようになっており、部品構成を単純にすることができる。
【0088】
以上、この発明にかかる実施の形態の一つを図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0089】
例えば、上述の実施の形態では、荷重伝達部材10、20はそれぞれセンタピラー4に設けられているが、フロントドア1に設けられてもよい。
【0090】
また、荷重伝達部材10、20は、リヤドア2とリヤピラー5との間や、フロントドア1とフロントピラー3との間、リヤドア2とセンタピラー4との間に設けられてもよい。さらに、荷重伝達部材10、20を複数設けたり、上下方向に並べて設けてもよい。
【0091】
そして、上述の実施の形態では、荷重伝達部材10、20が高分子アクチュエータによって形成されているが、これに限らず、ドアの開閉動作に応じてドアとピラーとの間の全長を変化させることができるものであればよい。例えば、スライドして全長が変化するもの等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明の実施例1の自動車の側部構造後部を示す車両の側面図である。
【図2】実施例1の自動車のセンタピラーの要部を示す斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面を模式的に示した断面図である。
【図4】(a)は図3におけるB部の拡大図であり、(b)は図4(a)においてフロントドアが開いた際の説明図である。
【図5】(a)は高分子アクチュエータの原理を示す分解模式図であり、(b)は高分子アクチュエータの動作を示す説明図であり、(c)は高分子アクチュエータの伸縮層を示す説明図である。
【図6】この発明の実施例2の要部を模式的に示した断面図である。
【図7】図6におけるC部の拡大図である。
【図8】図7においてフロントドアが開いた際の説明図である。
【図9】実施例2の自動車のセンタピラーの要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1 ドア(フロントドア)
4 ピラー(センタピラー)
6 ラチェット(ドア係止手段)
7 ストライカ(ドア係止手段)
10 荷重伝達部材
K1 ドア開口(フロントドア開口)
S 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面に設けられたドア開口を開閉するドアと、前記ドア開口の前縁又は後縁を形成するピラーと、前記ドアが閉じたときに該ドアと前記ピラーとの間に車幅方向の間隙を形成した状態でこのドアを前記ピラーに係止させるドア係止手段とを備えた自動車の側部構造であって、
前記ドアの開閉に連動して移動することで該ドアを閉める際のオーバーストロークを許容可能にし、且つ、前記ドアを閉じた後に車幅方向において前記ドアと前記ピラーとにそれぞれ当接する荷重伝達部材を前記ドアまたは前記ピラーのどちらか一方に設けたことを特徴とする自動車の側部構造。
【請求項2】
前記ピラーには、前記ドアの開閉を検出するドアスイッチを設けると共に、該ドアスイッチが前記ドアを閉じたことを検出したとき前記荷重伝達部材を車幅方向において前記ドアと前記ピラーとにそれぞれ当接させる駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の側部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−103565(P2006−103565A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294466(P2004−294466)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】