説明

自動車の制御ユニット取付構造

【課題】自動車の制御ユニット取付構造において、組付性とメンテナンス性を確保し、制御ユニットの少なくとも上端側部分を保護カバーによりカバーして、その保護カバーが容易に取り外されないようにし、その為の保護カバー、保護カバーの上壁の上面側に突設した複数の突起カバー部材がエンジンフードに接近し過ぎないようにする。
【解決手段】制御ユニット8が、その上端をエンジンフード7に接近させた位置に配置されて、フロントサイドフレーム3に固定された取付部材31に固定され、複数の上カバー締結部材37により取付部材31に上保護カバー36の上壁36aが上下方向向きに締結され、この上保護カバー36により制御ユニット8の上端側部分がカバーされ、上保護カバー36の上壁36aの上面側に突設され複数の突起カバー部材38により上保護カバー36の上壁36aの上面側に位置する複数のカバー締結部材37のボルト頭部37aが覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンルームの内部に制御ユニットを取り付ける制御ユニット取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車にはエンジンや自動変速機等の制御系装置を制御する制御ユニットが設けられているが、この制御ユニットをエンジンルームの内部に取り付ける場合、制御ユニットは車体部材に固定された取付部材に固定され、特に、制御ユニットの組付性やメンテナンス性を向上させるために、制御ユニットをエンジンルームの上側部分に配置して、制御ユニットの上端部に制御系装置との通信用のハーネスを接続することが望ましい。
【0003】
一方、近年、自動車や車載荷物の盗難事件が頻発しており、この盗難防止対策として、種々の盗難防止装置が開発され実用に供されている。但し、盗難防止装置の殆どは制御ユニットに電気的に接続され、制御ユニットにより制御されて作動するため、制御ユニットとハーネスとの接続が分離されると、盗難防止装置が機能しなくなる。故に、制御ユニットをカバーする保護カバーを取り付けた構造が周知であるが、この保護カバーが容易に取り外されるようであれば、保護カバーを設ける意味がない。
【0004】
そこで、特許文献1には、保護カバーである上カバーと下カバーとを複数の特殊ネジからなる締結部材で締結し、この保護カバーにより、少なくとも制御ユニットとハーネスとの接続部分(コネクタ)をカバーするとともに、制御ユニットから延びるハーネスを通す切欠部を保護カバーに形成した構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、締結部材の操作用端部(ボルト頭部又はナット)を覆う防犯具であって、締結対象部材の締結面と操作用端部との間に隙間を形成するスペーサ、その隙間に係止爪を係合させて操作用端部を覆う冠部材、この冠部材の外周側を覆う周壁部材を備えた防犯具が開示されている。尚、特許文献2の実施例では、ナンバープレートを取り付ける締結部材への防犯具の適用が開示されているが、制御ユニットをカバーする保護カバーを取り付ける締結部材への防犯具の適用も考えられる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−220806号公報
【特許文献2】特開2006−162051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車のエンジンルームの内部に制御ユニットを取り付ける制御ユニット取付構造において、組付性やメンテナンス性を確保するためには、制御ユニットをエンジンルームの上側部分に配置して、制御ユニットの上端部に制御系装置との通信用のハーネスを接続することが望ましいが、更に、自動車や車載荷物の盗難防止対策として、制御ユニットの少なくとも上端側部分、つまり、制御ユニットとハーネスとの接続部分を保護カバーによりカバーして、その保護カバーが容易に取り外されないようにする必要がある。
【0008】
ここで、本願発明者は、制御ユニットを固定する取付部材に保護カバーの上壁を複数のカバー締結部材で上下方向向きに締結し、保護カバーの上壁の上面側に複数の突起カバー部材を突設し、これら突起カバー部材で保護カバーの上壁の上面側に位置する複数のカバー締結部材の操作用端部を覆うようにした、制御ユニット取付構造を提案した。
【0009】
しかし、この制御ユニット取付構造において、単に保護カバーの上面側に複数の突起カバー部材を突設するのでは、制御ユニットの上側にはハーネスも配設される関係上、突起カバー部材の高さ位置が高くなり、突起カバー部材とエンジンフードとの間に適当な間隔を確保できなくなるという虞があり、そうなると、車両衝突時、エンジンフードに衝突物が衝突した場合、突起カバー部材によって、エンジンフードが衝突エネルギーを吸収可能に適切に下方変位するように変形できなくなる。
【0010】
そこで、制御ユニットを含む制御ユニット取付構造の高さ位置を全体的に下げることも考えられるが、保護カバー、突起カバー部材を設ける関係上、制御ユニット取付構造の上下方向長さも大きくなるため、この制御ユニット取付構造が、その下側に位置するエンジンルーム内機器に配置制約を受け、既存のエンジンルーム内機器の配置では、制御ユニット取付構造の高さ位置を全体的に下げることが困難な場合もある。
【0011】
本発明の目的は、自動車の制御ユニット取付構造において、組付性とメンテナンス性を確保するとともに、盗難防止対策として、制御ユニットの少なくとも上端側部分を保護カバーによりカバーして、その保護カバーが容易に取り外されないようにし、その為の保護カバー、保護カバーの上壁の上面側に突設した複数の突起カバー部材がエンジンフードに接近し過ぎないようにすること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の自動車の制御ユニット取付構造は、自動車のエンジンルームの内部に制御ユニットを取り付ける自動車の制御ユニット取付構造において、前記制御ユニットが、その上端をエンジンルームの上方を覆うエンジンフードに接近させた位置に配置されて、車体部材に固定された所定の取付部材に固定され、この制御ユニットの上端部にハーネスが接続され、前記制御ユニットの少なくとも上端側部分をカバーする上壁を有する保護カバーと、前記取付部材に保護カバーの上壁を上下方向向きに締結する複数のカバー締結部材と、前記保護カバーの上壁の上面側に突設され、保護カバーの上壁の上面側に位置する複数のカバー締結部材の操作用端部を覆う複数の突起カバー部材とを備え、前記複数の突起カバー部材と制御ユニットの上側に位置するハーネスとが平面視にてオーバーラップしないように配設されたことを特徴とする。
【0013】
制御ユニットが、その上端をエンジンルームの上方を覆うエンジンフードに接近させた位置に配置されて、車体部材に固定された所定の取付部材に固定されるため、制御ユニットの組付性とメンテナンス性が向上する。複数のカバー締結部材により取付部材に保護カバーの上壁が上下方向向きに締結され、この保護カバーにより制御ユニットの少なくとも上端側部分がカバーされるため、制御ユニットとハーネスとの接続部分がカバーされて保護され、保護カバーの上壁の上面側に突設され複数の突起カバー部材により保護カバーの上壁の上面側に位置する複数のカバー締結部材の操作用端部が覆われるため、組付性とメンテナンス性が確保されつつ、自動車や車載荷物の盗難防止対策として、複数のカバー締結部材が容易に締結解除されない、つまり、保護カバーが容易に取り外されなくなる。
【0014】
複数の突起カバー部材と制御ユニットの上側に位置するハーネスとが平面視にてオーバーラップしないように配設されるため、即ち、複数の突起カバー部材と制御ユニットの上側に位置するハーネスとが水平方向にずれた配置となるため、通常、エンジンフードは傾斜状に形成されるが、保護カバーの上側に位置するエンジンフードのうち高さが高い部分の下側に複数の突起カバー部材を配設することで、保護カバー、複数の突起カバー部材がエンジンフードに接近し過ぎないようになる。つまり、車両衝突時、エンジンフードに衝突物が衝突した場合、エンジンフードが衝突エネルギーを吸収可能に適切に下方変位するように変形可能になる。
【0015】
また、制御ユニットを含む制御ユニット取付構造の上下方向長さを極力小さくできるので、制御ユニット取付構造を、その下側に位置するエンジンルーム内機器に配置制約を受けずに設けることができ、既存のエンジンルーム内機器の配置でも、制御ユニット取付構造の高さ位置を全体的に下げることなく前記作用が得られる。
【0016】
請求項1の従属請求項として次の構成を採用可能である。
前記制御ユニットは、この制御ユニットの前後方向長さよりも車幅方向長さが長くなるように配置されて、制御ユニットの上側に位置するハーネスが車幅方向へ延びるように配設され、前記取付部材に制御ユニットを前後方向向きに締結する複数の締結具を備え、前記エンジンフードが前方程下方へ移行する傾斜状に形成されるとともに、前記複数の突起カバー部材が制御ユニットの上側に位置するハーネスよりも後方に配設される(請求項2)。
【0017】
前記エンジンルームの内部のホイールハウスの近傍位置に、バッテリが車幅方向長さよりも前後方向長さが長くなるように縦向きに配置されて、車体部材に固定されたバッテリ取付部材に取り付けられ、前記取付部材がバッテリ取付部材の前部に固定され、この取付部材を介して制御ユニットがバッテリの前方近傍部に配置固定される(請求項3)。
【0018】
前記ハーネスが複数設けられ、制御ユニットの上側に位置する複数のハーネスが前後に並設される(請求項4)。前記取付部材の上下方向の剛性を小さくする脆弱部を取付部材に設ける(請求項5)。前記保護カバーの上壁は、制御ユニットの上側のハーネスの上側に位置する第1上壁部と第1上壁部から段落ち状に形成された第2上壁部とを有し、この第2上壁部の上面側に複数の突起カバー部材が突設される(請求項6)。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の自動車の制御ユニット取付構造によれば、制御ユニットを、その上端がエンジンルームの上方を覆うエンジンフードに接近した位置に配置して、車体部材に固定された所定の取付部材に固定するため、制御ユニットの組付性とメンテナンス性を向上でき、複数のカバー締結部材により取付部材に保護カバーの上壁を上下方向向きに締結し、この保護カバーにより制御ユニットの少なくとも上端側部分をカバーするため、制御ユニットとハーネスとの接続部分をカバーして保護でき、保護カバーの上壁の上面側に突設され複数の突起カバー部材により保護カバーの上壁の上面側に位置する複数のカバー締結部材の操作用端部を覆うため、組付性とメンテナンス性を確保しつつ、自動車や車載荷物の盗難防止対策として、複数のカバー締結部材が容易に締結解除されない、つまり、保護カバーが容易に取り外されないようにすることができる。
【0020】
そして、複数の突起カバー部材と制御ユニットの上側に位置するハーネスとを平面視にてオーバーラップしないように配設したので、複数の突起カバー部材と制御ユニットの上側に位置するハーネスとが水平方向にずれた配置となり、通常、エンジンフードは傾斜状に形成されるが、保護カバーの上側に位置するエンジンフードのうち高さが高い部分の下側に複数の突起カバー部材を配設することで、保護カバー、複数の突起カバー部材がエンジンフードに接近し過ぎないようにすることができ、車両衝突時、エンジンフードに衝突物が衝突した場合、エンジンフードが衝突エネルギーを吸収可能に適切に下方変位するように変形可能になる。また、制御ユニットを含む制御ユニット取付構造の上下方向長さを極力小さくできるので、制御ユニット取付構造を、その下側に位置するエンジンルーム内機器に配置制約を受けずに設けることができ、既存のエンジンルーム内機器の配置でも、制御ユニット取付構造の高さ位置を全体的に下げることなく前記効果を達成できる。
【0021】
請求項2の自動車の制御ユニット取付構造によれば、制御ユニットを、この制御ユニットの前後方向長さよりも車幅方向長さが長くなるように配置したので、バッテリ等のエンジンルーム内機器と前後に隣接させてコンパクトに配置することができ、制御ユニットの上側に位置するハーネスが車幅方向へ延びるように配設したので、制御ユニットの上側に位置するハーネスをスムーズに配設して保護カバーによりカバーすることができ、取付部材に制御ユニットを前後方向向きに締結する複数の締結具を備えたので、制御ユニットを取付部材に確実に取り付けることができ、エンジンフードを前方程下方へ移行する傾斜状に形成するとともに、複数の突起カバー部材を制御ユニットの上側に位置するハーネスよりも後方に配設したので、保護カバー、複数の突起カバー部材が確実にエンジンフードに接近し過ぎないようにすることができる。
【0022】
請求項3の自動車の制御ユニット取付構造によれば、エンジンルームの内部のホイールハウスの近傍位置に、バッテリを車幅方向長さよりも前後方向長さが長くなるように縦向きに配置して、車体部材に固定されたバッテリ取付部材に取り付け、取付部材をバッテリ取付部材の前部に固定し、この取付部材を介して制御ユニットをバッテリの前方近傍部に配置固定したので、制御ユニットをバッテリと前後に隣接させてコンパクトに配置できて、バッテリ取付部材を有効に活用して確実に固定することができる。
【0023】
請求項4の自動車の制御ユニット取付構造によれば、ハーネスを複数設け、制御ユニットの上側に位置する複数のハーネスを前後に並設したので、保護カバーを上下方向に小型化でき、制御ユニット取付構造の上下方向長さを小さくすることができる。
【0024】
請求項5の自動車の制御ユニット取付構造によれば、取付部材の上下方向の剛性を小さくする脆弱部を取付部材に設けたので、車両衝突時、エンジンフードに衝突物が衝突した場合、エンジンフードが下方変位して突起カバー部材、保護カバーに当たった場合に、取付部材を積極的に下方変位させることができ、これにより、エンジンフードが確実に衝突エネルギーを吸収可能に適切に下方変位するように変形可能になる。
【0025】
請求項6の自動車の制御ユニット取付構造によれば、保護カバーの上壁は、制御ユニットの上側のハーネスの上側に位置する第1上壁部と第1上壁部から段落ち状に形成された第2上壁部とを有し、この第2上壁部の上面側に複数の突起カバー部材を突設したので、複数の突起カバー部材の高さ位置を確実に低くして、複数の突起カバー部材が確実にエンジンフードに接近し過ぎないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の自動車の制御ユニット取付構造では、制御ユニットが、その上端をエンジンルームの上方を覆うエンジンフードに接近させた位置に配置されて、車体部材に固定された所定の取付部材に固定され、複数のカバー締結部材により取付部材に保護カバーの上壁が上下方向向きに締結され、この保護カバーにより制御ユニットの少なくとも上端側部分がカバーされ、保護カバーの上壁の上面側に突設され複数の突起カバー部材により保護カバーの上壁の上面側に位置する複数のカバー締結部材の操作用端部が覆われている。
【実施例1】
【0027】
図1〜図3に示すように、自動車1の前部にエンジンルーム2が形成され、このエンジンルーム2の車幅方向両端側部分には、左右1対の前後方向へ延びるフロントサイドフレーム3が配設され、その上側に左右1対の前後方向へ延びるエプロン部材4が配設され、左右1対のホイールハウス5が形成されている。1対のフロントサイドフレーム3は、夫々、インナ部材3aとアウタ部材3bを有し、これらの上端フランジ部同士と下端フランジ部同士とを接合して閉断面構造に形成され、これらフロントサイドフレーム3の後端側部分が、エンジンルーム2と車室とを仕切るダッシュパネル6に結合されている。
【0028】
エンジンルーム2の上方は、前方程下方へ移行する傾斜状に且つ車幅方向中央部に対して車幅方向外側程下方へ移行する傾斜状に形成されたエンジンフード7(図10参照)により覆われており、このエンジンルーム2の内部には、エンジン等の他、エンジンや盗難防止装置等の制御系装置を制御する制御ユニット8、制御ユニット8やエンジンスタータやランプ類等の電気系装置に電力を供給するバッテリ9等、種々装置、機構、部材、部品(エンジンルーム内機器)が収容されている。尚、10は自動変速機であり、11はブレーキブースタである。
【0029】
先ず、バッテリ9をエンジンルーム2の内部に取り付けるバッテリ取付構造20について説明する。
図1〜図7に示すように、バッテリ取付構造20は、バッテリ取付部材21、前後1対の脚部材22を備えている。バッテリ取付部材21は、下壁21a、前壁21b、内側壁21c、外側壁21dを有し、平面視にて前後方向に長い矩形状に形成され、上方且つ後方を開口したボックス状に形成されて、ホイールハウス5の近傍位置、具体的には、ホイールハウス5のサスタワー連結部5aの車幅方向内方近傍位置に配置されている。
【0030】
バッテリ取付部材21の前壁21b、内側壁21cの前端部分、外側壁21dは、それらの上下方向長さが同じであり、底壁21aから内側壁21cの前端部分以外の大部分よりも上方へ延び、このバッテリ取付部材21の前壁21bに、後述の制御ユニット取付構造30を介して制御ユニット8が取り付けられている。
【0031】
1対の脚部材22は、夫々、車幅方向外端側の鉛直壁22a、上端側の水平壁22b、鉛直壁22aの上端部と水平壁22bの車幅方向外端部とを繋ぐ斜壁22cを有し、鉛直壁22aがフロントサイドフレーム3のインナ部材3aに内面側から締結部材23(ボルト・ナット)で締結され、水平壁22bがバッテリ取付部材21の下壁21aに下面側から締結部材24(ボルト・ナット)で締結され、バッテリ取付部材21は、1対の脚部材22を介して車体部材であるフロントサイドフレーム3に固定支持されている。
【0032】
バッテリ9は、ホイールハウス5の近傍位置に、バッテリ9の車幅方向長さよりも前後方向長さが長くなるように縦向きに配置されて、バッテリ取付部材21に上側から収容された状態で、バッテリ取付部材21に連結されたバッテリ押え部材25により上側から押さえ付けられて固定されている。バッテリ取付部材21に対してバッテリ押え部材25は取り外し可能に連結され、バッテリ押え部材25を取り外してバッテリ9を交換できる。
【0033】
次に、制御ユニット8と、制御ユニット8をエンジンルーム2の内部に取り付ける制御ユニット取付構造30について説明する。
図6〜図9に示すように、制御ユニット8は、正面視にて矩形で前後方向幅が小さい偏平的な形状に構成され、この制御ユニット8には、車幅方向両側へ対称に突出する4つ被締結部8aが形成されている。
【0034】
図1〜図4、図6〜図10に示すように、制御ユニット8は、バッテリ9の前方近傍部に、制御ユニット8の前後方向長さよりも車幅方向長さが長くなるようにして、制御ユニット8の上端をエンジンフード7に接近させた位置に配置されて、バッテリ取付部材21の前部に固定された取付部材31の前部に固定され、この取付部材31を介してバッテリ9の前方近傍部に配置固定されている。
【0035】
制御ユニット8の上端部の車幅方向内端部分に、制御系装置との通信用の1対のハーネス15がコネクタ16を介して接続され、制御ユニット8の上側に位置する1対のハーネス15は、前後に並設されて、車幅方向(コネクタ16から車幅方向外側)へ延びるように配設されている。1対のハーネス15は、制御ユニット8の上側から制御ユニット8の車幅方向内端部分に沿って下方へ延びている。
【0036】
図1〜図10に示すように、制御ユニット取付構造30は、取付部材31、バッテリ取付部材21の前壁21bの前面部に取付部材31を前後方向向きに締結する4つの取付部材締結具32、取付部材31の前面部に制御ユニット8を前後方向向きに締結する4つののユニット締結具33、制御ユニット8の略下半部をカバーする下保護カバー34、取付部材31に下保護カバー34を前後方向向きに締結する2つの下カバー締結部材35、制御ユニット8の上端側部分を含む略上半部をカバーする上壁36aを有する上保護カバー36、取付部材31に上保護カバー36の上壁36aを上下方向向きに締結する4つの上カバー締結部材37を備えている。
【0037】
更に、制御ユニット取付構造30は、上保護カバー36の上壁36aの上面側に突設され、保護カバー36の上壁36aの上面側に位置する4つの上カバー締結部材37の操作用端部であるボルト頭部37aを覆う4つの突起カバー部材38を備え、4つの突起カバー部材38と制御ユニット8の上側に位置する1対のハーネス15及びコネクタ16とが平面視にてオーバーラップしないように配設されている。
【0038】
取付部材31は平面視にてバッテリ取付部材21の前壁21bと略同サイズの矩形板状に形成され、取付部材31の上端部分に前方へ屈曲して突出するフランジ部31aとフランジ補強部31bが形成され、取付部材31の上部と下部に軽量化且つ放熱用の開口31c,31dが形成され、取付部材31の車幅方向内端部分に前方へ膨出する3つの取付座31e〜31gが形成され、取付部材31の車幅方向外端部分に前方へ膨出する2つの取付座31h,31iが形成されている。フランジ部31aは、その大部分が水平部に形成され、この水平部の車幅方向両側に傾斜部を有する。
【0039】
ここで、バッテリ取付部材21の前壁21bには、取付座31e〜31iに対応する、前方へ膨出する5つのボス部(図8に示すボス部21e,21hは取付座31e,31hに対応するものであり、その他のボス部は図示略)が設けられ、これらボス部に取付部材31の取付座31e〜31iが前方から係合した状態で、取付座31f,31g,31h,31iとこれに対応するボス部が、4組のボルト・ナットからなる取付部材締結具32により前後方向向きに締結されている。
【0040】
また、制御ユニット8の4つの被締結部8aが取付部材31に前側から当接した状態で、これら被締結部8aと取付部材31が、4組のボルト・ナットからなるユニット締結具33により前後方向向きに締結されている。この状態で、取付部材31のフランジ部31aが、制御ユニット8の上側に位置する1対のハーネス15及びコネクタ16よりも後側かつ上側に位置する。
【0041】
下保護カバー34は、前壁34a、左右の側壁34b、下壁34cを有し、下保護カバー34の上端の車幅方向両端部に左右2つの被締結部34dが形成され、前壁34aの上端部に前方へ突出する上カバー受け部34eが形成されている。左右の被締結部34dが取付部材31の取付座31e,31hに当接した状態で、これら被締結部34dと取付座31e,31hとボス部21e,21hが、2組のボルト・ナットからなる下ケース締結部材35により前後方向向きに締結されている。
【0042】
上保護カバー36は、上壁36a、前壁36b、左右の側壁36cを有し、上壁36aの後端部に下方へ屈曲した係合部36dが形成され、前壁36bの下端部に後方へ屈曲した載置部36eが形成されている。上壁36aは、取付部材31のフランジ部31aと同様に、その大部分が水平部に形成され、この水平部の車幅方向両側に傾斜部を有する。
【0043】
上壁36aの後部が取付部材31のフランジ部31aに上側から当接し、係合部36dが取付部材31のフランジ部31aに後側から係合し、載置部36eが下保護カバー34の上カバー受け部34eに載置された状態で、上壁36aの後部と取付部材31のフランジ部31aとが、車幅方向に適当間隔おきに配設された4組のボルト・ナットからなる上ケース締結部材37により上下方向向きに締結され、上壁36aの前部の下側に、制御ユニット8の上側に位置する1対のハーネス15及びコネクタ16が位置する。
【0044】
4つの突起カバー部材38は、上カバー締結部材37のボルト頭部37aよりも少し内径が大きい且つ上下方向長さが大きい筒状に形成され、上保護カバー36の上壁36aの後部のうち4つの上カバー締結部材37に対応する位置に配置されて、その下端部が上保護カバー36の上壁36aの上面に溶接等で固着されている。これら突起カバー部材38の上保護カバー36の上壁36aへの固着は、上カバー締結部材37を装着する前に施され、4つの上カバー締結部材37は4つの突起カバー部材38を挿通状に装着される。
【0045】
尚、3つの上カバー締結部材37及び突起カバー部材38は、上保護カバー36の上壁36aの水平部に上下方向向きに装着されるが、残り1つの上カバー締結部材37及び突起カバー部材38は、上保護カバー36の上壁36aの車幅方向外側部分の傾斜部に、その傾斜部の面直交方向に向けて僅かに傾斜した姿勢で装着される。尚、この傾斜した姿勢の上カバー締結部材37について、他の上カバー締結部材37よりも高さ位置が低くなるため、エンジンフード7は車幅方向中央部に対して車幅方向外側程下方へ移行する傾斜状に形成されているが、エンジンフード7との間隔を十分に空けることができる。
【0046】
以上説明した制御ユニット取付構造30の効果について説明する。
制御ユニット8を、その上端がエンジンフード7に接近した位置に配置して、フロントサイドフレーム3にバッテリ取付部材21を介して固定された取付部材31に固定するため、制御ユニット8の組付性とメンテナンス性を向上でき、4つの上カバー締結部材37により取付部材31に上保護カバー36の上壁36aを上下方向向きに締結し、この上保護カバー36により制御ユニット8の上端側部分をカバーするため、制御ユニット8とハーネス15との接続部分(コネクタ16)をカバーして保護できる。
【0047】
上保護カバー36の上壁36aの上面側に突設され4つの突起カバー部材38により保護カバー36の上壁36aの上面側に位置する4つのカバー締結部材37の操作用端部であるボルト頭部37aを覆うため、組付性とメンテナンス性を確保しつつ、自動車1や車載荷物の盗難防止対策として、4つの上カバー締結部材37が容易に締結解除されない、つまり、上保護カバー36が容易に取り外されないようにすることができる。
【0048】
4つの突起カバー部材38と制御ユニット8の上側に位置するハーネス15及びコネクタ16とを平面視にてオーバーラップしないように配設したので、4つの突起カバー部材38と制御ユニット8の上側に位置するハーネス15及びコネクタ16とが水平方向にずれた配置となり、上保護カバー36の上側に位置するエンジンフード7のうち高さが高い部分の下側に4つの突起カバー部材38を配設することで、上保護カバー36、4つの突起カバー部材38がエンジンフード7に接近し過ぎないようにすることができる。
【0049】
従って、車両衝突時、エンジンフード7に衝突物が衝突した場合、エンジンフード7が衝突エネルギーを吸収可能に適切に下方変位するように変形可能になる。また、制御ユニット8を含む制御ユニット取付構造30の上下方向長さを極力小さくできるので、制御ユニット取付構造30を、その下側に位置するエンジンルーム内機器に配置制約を受けずに設けることができ、既存のエンジンルーム内機器の配置でも、制御ユニット取付構造30の高さ位置を全体的に下げることなく前記効果を達成できる。
【0050】
制御ユニット8を、この制御ユニット8の前後方向長さよりも車幅方向長さが長くなるように配置したので、バッテリ9と前後に隣接させてコンパクトに配置することができ、制御ユニット8の上側に位置するハーネス15が車幅方向へ延びるように配設したので、制御ユニット8の上側に位置するハーネス15をスムーズに配設して上保護カバー36によりカバーすることができ、取付部材31に制御ユニット8を前後方向向きに締結する4つのユニット締結具33を備えたので、制御ユニット8を取付部材31に確実に取り付けることができ、前方程下方へ移行する傾斜状に形成されたエンジンフード7に対して、4つの突起カバー部材38を制御ユニット8の上側に位置するハーネス15よりも後方に配設したので、上保護カバー36、4つの突起カバー部材38が確実にエンジンフード7に接近し過ぎないようにすることができる。
【0051】
エンジンルーム2の内部のホイールハウス5の近傍位置に、バッテリ9を車幅方向長さよりも前後方向長さが長くなるように縦向きに配置して、フロントサイドフレーム3に1対の脚部材22を介して固定されたバッテリ取付部材21に取り付け、取付部材31をバッテリ取付部材21の前部に固定し、この取付部材31を介して制御ユニット8をバッテリ9の前方近傍部に配置固定したので、制御ユニット8をバッテリ9と前後に隣接させてコンパクトに配置できて、バッテリ取付部材21を有効に活用して確実に固定できる。
【0052】
1対のハーネス16を設け、制御ユニット8の上側に位置する1対のハーネス15を前後に並設したので、上保護カバー36を上下方向に小型化でき、制御ユニット取付構造30の上下方向長さを小さくすることができる。
【実施例2】
【0053】
図11に示すように、実施例2の制御ユニット取付構造30Aは、実施例1の制御ユニット取付構造30の取付部材31を変更したものである。この制御ユニット取付構造30Aでは、取付部材31Aの上下方向の剛性を小さくする脆弱部31jが取付部材31Aに設けられている。例えば、脆弱部31jは車幅方向に延びるビード部31jからなり、このビード部31jが取付部材31Aの開口31dを挟んで全幅に亙って形成されている。
【0054】
この制御ユニット取付構造30Aによれば、取付部材31Aの上下方向の剛性を小さくする脆弱部31jを取付部材31Aに設けたので、車両衝突時、エンジンフード7に衝突物が衝突した場合、エンジンフード7が下方変位して突起カバー部材38、上保護カバー36に当たった場合に、取付部材31Aを積極的に下方変位させることができ、これにより、エンジンフード7が確実に衝突エネルギーを吸収可能に適切に下方変位するように変形可能になる。
【実施例3】
【0055】
図12、図13に示すように、実施例3の制御ユニット取付構造30Bは、実施例1の制御ユニット取付構造30の取付部材31、上保護カバー36、上カバー締結部材37、突起カバー部材38を変更したものである。この制御ユニット取付構造30Bでは、取付部材31Bが、その上端部分に後方へ屈曲して突出するフランジ部31kを有する。
【0056】
上保護カバー36Bの上壁36fが、制御ユニット8の上側のハーネス15の上側に位置する第1上壁部36gと、第1上壁部36gから後方へ段落ち状に形成された第2上壁部36hとを有し、第2上壁部36hが取付部材31Bのフランジ部31kに上側から当接した状態で、この第2上壁部36hとフランジ部31kとが複数の上カバー締結部材37Bにより上下方向向きに締結されている。
【0057】
第2上壁部36hの上面側に、複数の上カバー締結部材37Bの操作用端部をカバーする複数の突起カバー部材38Bが突設され、これら突起カバー部材38Bは第1上壁部36gよりも下方へ位置している。この制御ユニット取付構造30Bによれば、複数の突起カバー部材38Bの高さ位置を確実に低くして、複数の突起カバー部材38Bが確実にエンジンフード7に接近し過ぎないようにすることができる。
【0058】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、実施例1〜3で開示した事項以外の種々の変更を付加して実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1の制御ユニット取付構造を含む要部の平面図である。
【図2】上保護カバー装着状態の制御ユニット取付構造を含む要部の斜視図である。
【図3】上保護カバーを取り外した状態の図2相当図である。
【図4】制御ユニット取付構造を含む要部の下側からの斜視図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】制御ユニットと制御ユニット取付構造の前方からの分解斜視図である。
【図7】制御ユニットと制御ユニット取付構造の後方からの分解斜視図である。
【図8】図6の軸線L1に沿って水平に切った平断面図である。
【図9】図6の軸線L2に沿って水平に切った平断面図である。
【図10】図1のX−X線断面図である。
【図11】実施例2の図6相当図である。
【図12】実施例3の図7相当図である。
【図13】実施例3の図10相当図である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動車
2 エンジンルーム
3 フロントサイドフレーム
5 ホイールハウス
7 エンジンフード
8 制御ユニット
9 バッテリ
15 ハーネス
21 バッテリ取付部材
30,30A,30B 制御ユニット取付構造
31,31A,31B 取付部材
31j 脆弱部
32 取付部材締結具
36 上保護カバー
36a,36f 上壁
36g 第1上壁部
36h 第2上壁部
37,37B 上カバー締結部材
37a ボルト頭部
38 突起カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンルームの内部に制御ユニットを取り付ける自動車の制御ユニット取付構造において、
前記制御ユニットが、その上端をエンジンルームの上方を覆うエンジンフードに接近させた位置に配置されて、車体部材に固定された所定の取付部材に固定され、この制御ユニットの上端部にハーネスが接続され、
前記制御ユニットの少なくとも上端側部分をカバーする上壁を有する保護カバーと、
前記取付部材に保護カバーの上壁を上下方向向きに締結する複数のカバー締結部材と、
前記保護カバーの上壁の上面側に突設され、保護カバーの上壁の上面側に位置する複数のカバー締結部材の操作用端部を覆う複数の突起カバー部材とを備え、
前記複数の突起カバー部材と制御ユニットの上側に位置するハーネスとが平面視にてオーバーラップしないように配設されたことを特徴とする自動車の制御ユニット取付構造。
【請求項2】
前記制御ユニットは、この制御ユニットの前後方向長さよりも車幅方向長さが長くなるように配置されて、制御ユニットの上側に位置するハーネスが車幅方向へ延びるように配設され、
前記取付部材に制御ユニットを前後方向向きに締結する複数の締結具を備え、
前記エンジンフードが前方程下方へ移行する傾斜状に形成されるとともに、前記複数の突起カバー部材が制御ユニットの上側に位置するハーネスよりも後方に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の制御ユニット取付構造。
【請求項3】
前記エンジンルームの内部のホイールハウスの近傍位置に、バッテリが車幅方向長さよりも前後方向長さが長くなるように縦向きに配置されて、車体部材に固定されたバッテリ取付部材に取り付けられ、
前記取付部材がバッテリ取付部材の前部に固定され、この取付部材を介して制御ユニットがバッテリの前方近傍部に配置固定されたことを特徴とする請求項2に記載の自動車の制御ユニット取付構造。
【請求項4】
前記ハーネスが複数設けられ、制御ユニットの上側に位置する複数のハーネスが前後に並設されたことを特徴とるす請求項2に記載の自動車の制御ユニット取付構造。
【請求項5】
前記取付部材の上下方向の剛性を小さくする脆弱部を取付部材に設けたことを特徴とする請求項3に記載の自動車の制御ユニット取付構造。
【請求項6】
前記保護カバーの上壁は、制御ユニットの上側のハーネスの上側に位置する第1上壁部と第1上壁部から段落ち状に形成された第2上壁部とを有し、この第2上壁部の上面側に複数の突起カバー部材が突設されたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の自動車の制御ユニット取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−74304(P2008−74304A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257504(P2006−257504)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】