説明

自動車の前部構造

【課題】カウルグリルの分割面を利用してカバー部を一体成形することにより、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる自動車の前部構造の提供を目的とする。
【解決手段】車体番号刻印部12e近傍のカウルグリル30Rに開口部34を設けると共に、開口部34に開閉可能なカバー部36が設けられたものにおいて、カウルグリルを左右分割構造とすると共に、一方のカウルグリルの分割面にヒンジ部を介してカバー部36を一体形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体に刻印された車体番号を視認するために、カウルグリルに対して開口部を設け、この開口部を開閉可能に覆うカバー部を備えたような自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車体番号を刻印する車体番号刻印部は車体に設けられ、車体に対して着脱可能に形成された車両部品に設けることはできない。
上述の車体番号刻印部を有する従来の自動車の前部構造としては、特許文献1に開示された構造がある。
【0003】
すなわち、カウルボックス内に設けられる車体番号刻印部と、カウルボックスの上部を塞ぐと共に、上記車体番号刻印部の近傍に開口部が形成されたカウルグリルと、このカウルグリルの下方に設けられた合成樹脂製の雨受け部材とを備え、この雨受け部材に上記開口部のカバー部を一体成形した構造である。
この従来構造によれば、通常時には上記開口部がカバー部で閉成されており、車体番号を視認する際には、上記カバー部を開成すると、開口部から車体番号を目視確認することができる。
【0004】
上記カウルボックスには、空調ユニットに対して外気を導入するための外気導入用の開口部が形成されるので、この外気導入用の開口部と、車体番号視認用の開口部にカバー部が設けられる位置とが、車幅方向で一致する場合には、上記構造が有効であっても、外気導入用の開口部と、車体番号視認用の開口部にカバー部が設けられる位置とが、車幅方向でオフセットしている場合には、上記構造の採用は困難である。
【0005】
一方、カウルボックスを形成するカウルパネルの一部を車両前方に延出し、この延出部に車体番号刻印部を形成すると共に、カウルボックスの上部を塞ぐカウルグリルを設け、このカウルグリルの上記車番号刻印部の近傍に開口部を開口形成し、この開口部をスライド構造のカバー部材で開閉可能に覆う構造も考えられるが、この場合、スライド構造のカバー部材がエンジンルーム内に落下しない構造が必要となるので、部品点数が増加するうえに、構造が複雑化する問題点がある。
【特許文献1】特開2005−53287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、カウルグリルを左右分割構造と成して、このカウルグリルの分割面を利用してカバー部を一体成形することにより、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる自動車の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による自動車の前部構造は、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、上記ダッシュパネルから前方に延びるカウルフロントと、上記ダッシュパネルの上端から前方に延びてフロントガラスの下端を支持するカウルパネルと、上記カウルフロントと上記カウルパネルとから形成されるカウルボックスと、該カウルボックスに設けられる車体番号刻印部と、上記カウルボックスの上部を塞ぐカウルグリルと、上記車体番号刻印部近傍のカウルグリルに開口部を設けると共に、該開口部に開閉可能なカバー部が設けられた、自動車の前部構造であって、上記カウルグリルを左右分割構造とすると共に、一方のカウルグリルの分割面にヒンジ部を介して上記カバー部を一体形成したものである。
上記ヒンジ部は、一方のカウルグリルとカバー部との間を一体かつ開閉可能に連結する樹脂ヒンジが望ましい。
上記構成によれば、左右分割構造のカウルグリルの上記分割面を利用して、カバー部を一体形成(成形)するので、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記カウルグリルの分割面は車幅方向と直交し、該分割面に上記ヒンジ部を設けて、上記カバー部を車幅方向に回動するように形成したものである。
上記構成によれば、上記ヒンジ部を挟んでカウルグリルの本体部と、カバー部とが完全に分割されるので、成形性の向上を図ることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記カバー部は上記カウルグリルの縦壁部に形成され、該縦壁部はその上部が後方位置になるように傾斜されたものである。
上記構成によれば、前低後高状に傾斜させた縦壁部に上記カバー部を形成したので、カバー部の開閉性向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記カウルグリルの縦壁部前方にボンネットの後端が近接配設された構造であって、上記縦壁部は、上記カバー部の開閉時に該カバー部が上記ボンネットと干渉しない傾斜角度に設定されたものである。
上記構成によれば、上記カバー部の開閉時に該カバー部がボンネットと干渉しないので、カバー部の開放角度を大きくとることができ、車体番号刻印部なかんずく車体番号の視認性向上を図ることができる。
【0011】
この発明による自動車の前部構造は、また、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、上記ダッシュパネルから前方に延びるカウルフロントと、上記ダッシュパネルの上端から前方に延びてフロントガラスの下端を支持するカウルパネルと、上記カウルフロントと上記カウルパネルとから形成されるカウルボックスと、
該カウルボックスに設けられる車体番号刻印部と、上記カウルボックスの上部を塞ぐカウルグリルと、上記車体番号刻印部近傍のカウルグリルに開口部を設けると共に、該開口部に開閉可能なカバー部が設けられた、自動車の前部構造であって、上記カウルグリルを左右分割構造と成し、該カウルグリルの分割面は、車幅方向と直交し、かつ車幅方向にオフセットされた複数の縦分割面と、該複数の縦分割面間に形成されて車幅方向に延びる横分割面とを備え、一方のカウルグリル側の横分割面に平行なヒンジ部を設け、該ヒンジ部と横分割面との間に上記カバー部が一体形成され、該カバー部が前後方向に回動するように形成されたものである。
上記構成によれば、左右分割構造のカウルグリルの上記分割面を利用して、カバー部を一体形成するので、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる。
【0012】
しかも、上記カバー部は前後方向に回動するので、カウルグリル縦壁部の前方空間が狭い場合においても、該カバー部の開閉角度を比較的大きくとることができ、車体番号刻印部なかんずく車体番号の視認性向上を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記カバー部はその車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成されたものである。
上記構成によれば、車体番号の配列方向と対応したカバー部となり、車体番号刻印部の良好な視認性が確保でき、また開口部も必要最小限の開口面積と成すことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、カウルグリルの分割面を利用してカバー部を一体成形することにより、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
カバー部を備えたカウルグリルの生産性に優れ、外観の悪化も最小限に抑えるという目的を、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、上記ダッシュパネルから前方に延びるカウルフロントと、上記ダッシュパネルの上端から前方に延びてフロントガラスの下端を支持するカウルパネルと、上記カウルフロントと上記カウルパネルとから形成されるカウルボックスと、該カウルボックスに設けられる車体番号刻印部と、上記カウルボックスの上部を塞ぐカウルグリルと、上記車体番号刻印部近傍のカウルグリルに開口部を設けると共に、該開口部に開閉可能なカバー部が設けられたものにおいて、上記カウルグリルを左右分割構造とすると共に、一方のカウルグリルの分割面にヒンジ部を介して上記カバー部を一体形成するという構成にて実現した。
【実施例1】
【0016】
図面は自動車の前部構造を示すが、まず、図1〜図3を参照して、自動車の前部車体構造について説明する。
図1〜図3、特に図3において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネル3が設けられると共に、上端部にフロントウインド4の下端部分を支持するカウルパネル5が車幅方向に延びるように設置されている。このカウルパネル5の上方には、後述する外気の取入口31,31を有する合成樹脂製のカウルグリル30L,30R(図1参照)が設置され、かつカウルパネル5の下方には、車幅方向に延びるカウルクロスメンバ6が着脱可能に配設されている。
【0017】
上記ダッシュパネル3は、フロアパネル(図示せず)の前端部から上方に起立すると共に車幅方向に延びるように設置されたダッシュロア7と、このダッシュロア7の上端部から上方に延びる第1ダッシュアッパ8と、この第1ダッシュアッパ8の前面から車体の前方側に延びる第2ダッシュアッパ9とを有している。
【0018】
上記第1ダッシュアッパ8は、ダッシュロア7の上端部に設けられた上部フランジ7aに接合される下部フランジ8aと、この下部フランジ8aの後端部から後部上方に向けて延びる縦壁部8bと、この縦壁部8bの上端部から後方に延びる上部フランジ8cとにより構成され、上記縦壁部8bの車幅方向略中央部には、図3に示すように、空調装置のブロアユニット10に外気を導入するための外気導入用開口部8dが形成されている。
【0019】
上記第2ダッシュアッパ9は、第1ダッシュアッパ8の縦壁部8bの前面に接合される後部フランジと、この後部フランジの下端部から車体の前方側に延びる横壁部9aとを有している。この横壁部9a及び上記後部フランジの車幅方向略中央部、つまり上記第1ダッシュアッパ8に形成された外気導入用開口部8dの設置部に対応する位置には、図3に示すように、切欠き部9bが形成されることにより、上記空調装置のブロアユニット10に外気を導入するための外気導入口が、上記第1ダッシュアッパ8の縦壁部8b及び第2ダッシュアッパ9の横壁部9aに跨るように形成されている。
【0020】
また、第1ダッシュアッパ8の外気導入用開口部8dと、第2ダッシュアッパ9の切欠き部9bとの間には、両者の底面部を接続する接続部材11が設けられている。この接続部材11は、上記第1ダッシュアッパ8の外気導入用開口部8dと、第2ダッシュアッパ9の切欠き部9bとの間を覆う底壁部11aと、その前辺部及び左右両側辺部に設けられた上部フランジ11bとを有し、この上部フランジ11bの上方部が第2ダッシュアッパ9の横壁部9aよりも上方に突出した状態で設置されている。
【0021】
上記カウルパネル5は、図3に示すように、第1ダッシュアッパ8の上端部から車体の前方側に延びる第1カウルパネル12と、この第1カウルパネル12の上壁部12aから下方へ延びるように設置されて下端が第2ダッシュアッパ9の前端部に接合される第2カウルパネル13とを有している。
【0022】
上記第1カウルパネル12には、第1ダッシュアッパ8の上部フランジ8cに接合される後部フランジ12bと、この後部フランジ12bの前端部から前部上方に向けて斜めに延びる上壁部12aと、この上壁部12aの前端部から上方に膨出する膨出部12cとが設けられている。そして、この膨出部12cの前面には、上記フロントウインド4の下端部分が接着剤14で接着されることにより支持されている。
また、上記第1カウルパネル12の上壁部12aには、第2カウルパネル13に形成された中央開口部13aの上方に位置する部分(車幅方向略中央部分)を所定幅に亘って車体の前方側に延出させた延出部12dが形成されるとともに、その前端部から斜め上方に向けて突出する車体番号刻印部12eが形成され、この車体番号刻印部12eに車体番号が刻印されるように構成されている。上記延出部12dの下方には、その下部と、上記膨出部12cの後端部とを連結して両者の間に閉断面15を形成するレインフォースメント16が配設されている。
【0023】
上記第2カウルパネル13は、第1カウルパネル12の下面に接合される上部フランジと、この上部フランジの後端部から下方に延びる前壁部13bと、この前壁部13bの下端部に設けられた下部フランジ13cとを有している。
この下部フランジ13cが上記第2ダッシュアッパ9の前端部に接合されるとともに、この第2ダッシュアッパ9の前端部と上記下部フランジ13cとの接合部の上面にカウルクロスメンバ6の後端部6aが着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0024】
ここで、図3に示すように、上記第2ダッシュアッパ9とカウルクロスメンバ6とでカウルフロント17が形成され、このカウルフロント17とカウルパネル5(特に、第1カウルパネル12)との両者により、カウルボックス18が形成されている。
【0025】
一方、図1に示すように、ダッシュロア7からエンジンルーム1の左右両サイドにおいて車両の前方に延びるフロントサイドフレーム19,19(車体剛性部材)を設け、左右のフロントサイドフレーム19,19間において、ダッシュロア7の前面部には車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ20を取付け、このダッシュクロスメンバ20とダッシュロア7との間に、車幅方向に延びる閉断面を形成して、前部車体剛性を確保すべく構成している。
【0026】
なお、図1において、21はサスタワー部、22はフロントピラー、23はヒンジピラーである。
図1、図3に示すように、上記カウルグリル30L,30Rはカウルボックス18の上部を塞いで車幅方向に延びるもので、このカウルグリル30L,30Rは図1、図4に示すように左右分割構造と成している。つまり、右側のカウルグリル30Rと、左側のカウルグリル30Lとに左右2分割されている。
【0027】
これらの各カウルグリル30R,30Lはその縦断面形状を図3に示すように、縦壁部30aと、この縦壁部30aの中間部から前方に延びるシール保持部30bと、縦壁部30aの下部から前方に延びて、カウルクロスメンバ6の前端部6bに当接される当接部30cと、縦壁部30aの上端から後方に延びる上片部30dと、上片部30dの下部後端から斜め上方に延びてフロントウインド4の下端上面に当接する当接部30eとを備えている。
【0028】
また、図1、図4に示すように、2つのカウルグリル30L,30Rを組合わせた状態で、左右両サイドに位置するように、これら各カウルグリル30L,30Rには外気の取入口31,31がそれぞれ形成されている。
【0029】
図5は図4の要部を示す拡大正面図、図6は図5のA−A線矢視断面図であって、右側のカウルグリル30Rと左側のカウルグリル30Lとの分割面32,33は車幅方向と直交するように形成され、また、これらの各分割面32,33は正面視において上下方向に一直線上に並ぶように形成されている。
【0030】
上記右側のカウルグリル30Rには、図3で示した車体番号刻印部12eと前後方向に対向するように横長形状の開口部34を開口形成し、左側のカウルグリル30Rには、分割面32,33間にヒンジ部35を介して、上記開口部34を開閉可能なカバー部36を一体形成している。
【0031】
換言すれば、左側のカウルグリル30Lにヒンジ部35を介して凸形状のカバー部36を一体形成し、右側のカウルグリル30Rには上記凸形状に対応する凹形状の開口部34が形成されたものである。
【0032】
上記カバー部36は開口部34の形状と対応するように、その車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成されると共に、該カバー部36は上記ヒンジ部35を介して車幅方向に回動するように形成されている。
【0033】
また、上記ヒンジ部35は、カウルグリル30Lを構成する合成樹脂により左側のカウルグリル30Lの本体部と、カバー部36とをアール形状に一体連接する、いわゆる樹脂ヒンジである。
さらに、上記カバー部36の遊端部には開口部34の口縁に着脱可能に係止される係止部36aと、把持部36bとが一体形成されている。
【0034】
上記開口部34は図3で示した車体番号刻印部12eの近傍に位置するので、図6に実線で示す閉状態のカバー部36を、同図に仮想線で示す開放方向に開くと、開口部34を介して車体番号刻印部12eに刻印された車体番号を視認することができる。なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0035】
このように、図1〜図6で示した実施例1の自動車の前部構造は、エンジンルーム1と車室2とを仕切るダッシュパネル3と、上記ダッシュパネル3から前方に延びるカウルフロント17と、上記ダッシュパネル3の上端から前方に延びてフロントガラス4の下端を支持するカウルパネル5(特に、第1カウルパネル12参照)と、上記カウルフロント17と上記カウルパネル5とから形成されるカウルボックス18と、該カウルボックス18に設けられる車体番号刻印部12eと、上記カウルボックス18の上部を塞ぐカウルグリル30L,30Rと、上記車体番号刻印部12e近傍のカウルグリル30Rに開口部34を設けると共に、該開口部34に開閉可能なカバー部36が設けられた、自動車の前部構造であって、上記カウルグリル30L,30Rを左右分割構造とすると共に、一方のカウルグリル30Lの分割面32,33にヒンジ部35を介して上記カバー部36を一体形成したものである(図3、図5参照)。
この構成によれば、左右分割構造のカウルグリル30L,30Rの上記分割面32,33を利用して、カバー部36を一体形成(成形)するので、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる。
また、上記カウルグリル30L,30Rの分割面32,33は車幅方向と直交し、該分割面32,33(詳しくは分割面32,33間)に上記ヒンジ部35を設けて、上記カバー部36を車幅方向に回動するように形成したものである(図5、図6参照)。
この構成によれば、上記ヒンジ部35を挟んでカウルグリル30Lの本体部と、カバー部36とが完全に分割されるので、成形性の向上を図ることができる。
【0036】
さらに、上記カバー部36はその車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成されたものである(図5参照)。
この構成によれば、車体番号の配列方向と対応したカバー部36となり、車体番号刻印部12eの良好な視認性が確保でき、また開口部34も必要最小限の開口面積と成すことができる。
【実施例2】
【0037】
図7は自動車の前部構造の他の実施例を示し、同図に示すように上記カバー部36はカウルグリル30L(前図参照)の縦壁部30aに形成されており、この縦壁部30aはその上部が後方位置になるように前低後高状に傾斜されたものである。
【0038】
すなわち、上記カウルグリル30L,30Rの縦壁部30aの前方には、ボンネット37の後端が近接配設され、ボンネットレインフォースメント38の下面は、カウルグリル30L,30Rのシール保持部30bに取付けられたボンネットシール39にてシールされるようになっており、上記縦壁部30aは、カバー部36を図7に仮想線で示すように開放した時、このカバー部36が上記ボンネット37と干渉しない傾斜角度に設定されたものである。
【0039】
また、上記縦壁部30aの前低後高状のスラント形状に対応して、第1カウルパネル12の延出部12d前端から上方に立上がる車体番号刻印部12eも同様に前低後高状に傾斜させ、該車体番号刻印部12eが縦壁部30aと干渉するのを防止すると共に、車体番号の視認性向上を図るように構成している。
【0040】
このように、図7で示した実施例2においては、上記カバー部36は上記カウルグリル30Lの縦壁部30aに形成され、該縦壁部30aはその上部が後方位置になるように傾斜されたものである(図7参照)。
この構成によれば、前低後高状に傾斜させた縦壁部30aに上記カバー部36を形成したので、カバー部36の開閉性向上を図ることができる。
【0041】
しかも、上記カウルグリル30L,30Rの縦壁部30a前方にボンネット37の後端が近接配設された構造であって、上記縦壁部30aは、上記カバー部36の開閉時に該カバー部36が上記ボンネット37と干渉しない傾斜角度に設定されたものである(図7参照)。
この構成によれば、上記カバー部36の開閉時に該カバー部36がボンネット37と干渉しないので、カバー部36の開放角度を大きくとることができ、車体番号刻印部12eの視認性向上を図ることができる。
【0042】
この図7で示した実施例2においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例1と同様であるから、図7において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0043】
図8、図9は自動車の前部構造のさらに他の実施例を示すものである。つまり、先の実施例1,2においてはカバー部36を車幅方向に回動すべく構成したが、この実施例3においては、カバー部36を前後方向に回動すべく構成している。
【0044】
すなわち、図8に示すように、カウルグリル30L,30Rを左右分割構造と成し、左側のカウルグリル30Lと右側のカウルグリル30Rとの分割面は、車幅方向と直交し、かつ車幅方向にオフセット(但し、オフセット量はカバー部36の車幅方向の長さに等しい)された複数、例えば、上下の縦分割面41,42と、これら複数の縦分割面41,42間、詳しくは、上側の縦分割面41の下端と、下側の縦分割面42の上端間に形成されて車幅方向に延びる横分割面43とを備えている。
【0045】
そして、左側のカウルグリル30L側の横分割面43に平行なヒンジ部44(いわゆる樹脂ヒンジ)を設け、このヒンジ部44(下部ヒンジ)と上記横分割面43との間に横長形状のカバー部36を一体形成すると共に、上側の縦分割面41の下端とヒンジ部44のカウルグリル30L本体側の端部との間には、上記縦分割面41に連続する切れ目45を形成し、図9に実線で示す閉状態のカバー部36を、下側のヒンジ部44を支点として下方に引き下げて、同図に仮想線で示すように前後方向に回動するように構成したものである。
【0046】
ここで、上記開口部34は右側のカウルグリル30Rにおける車体番号刻印部12eの近傍に対応して、その縦壁部30aに横長形状に開口形成されたものであり、また上記カバー部36の遊端には先の各実施例と同様に、係止部36aおよび把持部36bが一体形成されている。さらに、該カバー部36は上記開口部34の形状と対応して、その車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成されたものである。
【0047】
図8、図9で示した構造に代えて、図10、図11に示す構造を採用してもよい。
すなわち、図10に示すように、カウルグリル30L,30Rを左右分割構造と成し、左側のカウルグリル30Lと右側のカウルグリル30Rとの分割面は、車幅方向と直交し、かつ車幅方向にオフセット(但し、オフセット量はカバー部36の車幅方向の長さに等しい)された上下の縦分割面41,42と、これら上下の縦分割面41,42間、詳しくは、上側の縦分割面41の下端と、下側の縦分割面42の上端間に形成されて車幅方向に延びる横分割面43とを備えている。
【0048】
そして、右側のカウルグリル30R側の横分割面43に平行なヒンジ部44(いわゆる樹脂ヒンジ)を設け、このヒンジ部44(上部ヒンジ)と上記横分割面43との間に横長形状のカバー部36を一体形成すると共に、下側の縦分割面42の上端とヒンジ部44のカウルグリル30R本体側の端部との間には、上記縦分割面42に連続する切れ目45を形成し、図11に実線で示す閉状態のカバー部36を、上側のヒンジ部44を支点として上方に引き上げて、同図に仮想線で示すように前後方向に回動するように構成したものである。
【0049】
ここで、上記開口部34は左側のカウルグリル30Lにおける車体番号刻印部12eの近傍に対応して、その縦壁部30aに横長形状に開口形成されたものであり、また上記カバー部36の遊端には先の各実施例と同様に、係止部36aおよび把持部36bが一体形成されている。さらに、該カバー部36は上記開口部34の形状と対応して、その車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成されたものである。
【0050】
このように、図8、図9または図10、図11で示した実施例3の自動車の前部構造は、エンジンルーム1と車室2とを仕切るダッシュパネル3と、上記ダッシュパネル3から前方に延びるカウルフロント17と、上記ダッシュパネル3の上端から前方に延びてフロントガラス4の下端を支持するカウルパネル5(特に、第1カウルパネル12参照)と、上記カウルフロント17と上記カウルパネル5とから形成されるカウルボックス18と、該カウルボックス18に設けられる車体番号刻印部12eと、上記カウルボックス18の上部を塞ぐカウルグリル30L,30Rと、上記車体番号刻印部12e近傍のカウルグリル30R(図8参照)または30L(図10参照)に開口部34を設けると共に、該開口部34に開閉可能なカバー部36が設けられた、自動車の前部構造(図8〜図11では要部のみを示したが、前提構成については先の実施例1と同様である)であって、上記カウルグリル30L,30Rを左右分割構造と成し、該カウルグリル30L,30Rの分割面は、車幅方向と直交し、かつ車幅方向にオフセットされた複数、例えば、上下の縦分割面41,42と、該複数の縦分割面41,42間に形成されて車幅方向に延びる横分割面43とを備え、一方のカウルグリル30L(図8参照)または30R(図10参照)側の横分割面43に平行なヒンジ部44を設け、該ヒンジ部44と横分割面43との間に上記カバー部36が一体形成され、該カバー部36が前後方向に回動するように形成されたものである(図8〜図11参照)。
この構成によれば、左右分割構造のカウルグリル30L,30Rの上記分割面41,42,43を利用して、カバー部36を一体形成するので、部品点数の増加、構造の複雑化を招くことなく、生産性に優れると共に、外観の悪化も最小限に抑えることができる。
【0051】
しかも、上記カバー部36は前後方向に回動するので、カウルグリル縦壁部30aの前方空間が狭い場合においても、該カバー部36の開閉角度を比較的大きくとることができ、車体番号刻印部12eの視認性向上を図ることができる。
【0052】
また、上記カバー部36はその車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成されたものである(図8、図10参照)。
この構成によれば、車体番号の配列方向と対応したカバー部36となり、車体番号刻印部12eの良好な視認性が確保でき、また開口部34も必要最小限の開口面積と成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の自動車の前部構造を示す斜視図
【図2】自動車の前部車体構造を示す斜視図
【図3】図1の要部の縦断面図
【図4】カウルグリルのみを示す斜視図
【図5】図4の要部正面図
【図6】図5のA−A線矢視断面図
【図7】自動車の前部構造の他の実施例を示す側面図
【図8】自動車の前部構造のさらに他の実施例を示す要部正面図
【図9】図8のB−B線矢視断面図
【図10】自動車の前部構造のさらに他の実施例を示す要部正面図
【図11】図10のC−C線矢視断面図
【符号の説明】
【0054】
1…エンジンルーム
2…車室
3…ダッシュパネル
4…フロントガラス
5…カウルパネル
12e…車体番号刻印部
17…カウルフロント
18…カウルボックス
30L,30R…カウルグリル
30a…縦壁部
32,33…分割面
34…開口部
35…ヒンジ部
36…カバー部
37…ボンネット
41,42…縦分割面
43…横分割面
44…ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、
上記ダッシュパネルから前方に延びるカウルフロントと、
上記ダッシュパネルの上端から前方に延びてフロントガラスの下端を支持するカウルパネルと、
上記カウルフロントと上記カウルパネルとから形成されるカウルボックスと、
該カウルボックスに設けられる車体番号刻印部と、
上記カウルボックスの上部を塞ぐカウルグリルと、
上記車体番号刻印部近傍のカウルグリルに開口部を設けると共に、該開口部に開閉可能なカバー部が設けられた、
自動車の前部構造であって、
上記カウルグリルを左右分割構造とすると共に、一方のカウルグリルの分割面にヒンジ部を介して上記カバー部を一体形成した
自動車の前部構造。
【請求項2】
上記カウルグリルの分割面は車幅方向と直交し、該分割面に上記ヒンジ部を設けて、
上記カバー部を車幅方向に回動するように形成した
請求項1記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
上記カバー部は上記カウルグリルの縦壁部に形成され、該縦壁部はその上部が後方位置になるように傾斜された
請求項2記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
上記カウルグリルの縦壁部前方にボンネットの後端が近接配設された構造であって、
上記縦壁部は、上記カバー部の開閉時に該カバー部が上記ボンネットと干渉しない傾斜角度に設定された
請求項3記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルと、
上記ダッシュパネルから前方に延びるカウルフロントと、
上記ダッシュパネルの上端から前方に延びてフロントガラスの下端を支持するカウルパネルと、
上記カウルフロントと上記カウルパネルとから形成されるカウルボックスと、
該カウルボックスに設けられる車体番号刻印部と、
上記カウルボックスの上部を塞ぐカウルグリルと、
上記車体番号刻印部近傍のカウルグリルに開口部を設けると共に、該開口部に開閉可能なカバー部が設けられた、
自動車の前部構造であって、
上記カウルグリルを左右分割構造と成し、
該カウルグリルの分割面は、車幅方向と直交し、かつ車幅方向にオフセットされた複数の縦分割面と、該複数の縦分割面間に形成されて車幅方向に延びる横分割面とを備え、
一方のカウルグリル側の横分割面に平行なヒンジ部を設け、該ヒンジ部と横分割面との間に上記カバー部が一体形成され、該カバー部が前後方向に回動するように形成された
自動車の前部構造。
【請求項6】
上記カバー部はその車幅方向の長さに対して高さが小さくなる横長形状に形成された
請求項1〜5の何れか1に記載の自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−195149(P2008−195149A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30602(P2007−30602)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】