説明

自動車の前部構造

【課題】ドライブシャフトがフロントサイドフレームに接触しないようにして、フロントサイドフレームとドライブシャフトを、これら部材間の間隔を極力小さくするように配置することができる、自動車の前部構造を提供する。
【解決手段】フロントサイドフレーム7は、前後方向に連続して延びる上部フランジ部40同士と下部フランジ部45同士とを接合して閉断面構造7aに形成され、下部フランジ部45が下方へ突出する鉛直な帯状に形成され、フロントサイドフレーム7の前側部分において車幅方向外端側部分に形成された外側フランジ部45a、ドライブシャフト13の上側部分を含むフロントサイドフレーム7の後側部分において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部45b、外側フランジ部45aと内側フランジ部45bとを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された繋ぎフランジ部45cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部のフロントサイドフレームの構造を改善した、自動車の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の前部構造では、エンジンルームの車幅方向外端側部分に前後方向へ延びる左右1対のフロントサイドフレームが配設され、通常、フロントサイドフレームは、車幅方向内側のインナ部材と車幅方向外側のアウタ部材とを有し、これらインナ部材とアウタ部材の前後方向に連続して延びる上部フランジ部同士と下部フランジ部同士とを接合して、閉断面構造に形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のフロントサイドフレームでは、インナ部材及びアウタ部材の上部フランジ部が、フロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に車幅方向外方へ突出する水平な帯状に形成され、インナ部材及びアウタ部材の下部フランジ部が、フロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に下方へ突出する鉛直な帯状に形成されている。
【0004】
一般に、前輪駆動方式の自動車の前部構造では、エンジンにより駆動される中間軸がエンジンルーム内に車幅方向へ延びるように配設され、1対のドライブシャフトが、1対のフロントサイドフレームの下側を通って車幅方向へ延びるように配設され、これらドライブシャフトの車幅方向内端部がユニバーサルジョインを介して中間軸の両端部に連結されて、ドライブシャフトは車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能になっている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−244955号参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、前輪駆動方式の自動車の前部構造では、フロントサイドフレームの下側にドライブシャフトが上下に揺動可能に設けられるため、このドライブシャフトが上下に揺動してもフロントサイドフレームに接触しないように、フロントサイドフレームとドライブシャフトを配置する必要がある。
【0007】
しかし、ドライブシャフトは、フロントサイドフレームよりも車幅方向内側に位置する車幅方向内端部を支点にして上下に揺動し、ドライブシャフトの車幅方向外側部位ほど上下の振り幅が大きくなる。従って、特許文献1のようなフロントサイドフレームでは、下部フランジ部がフロントサイドフレームの車幅方向外端部に下方へ突出状に形成されているため、ドライブシャフトがフロントサイドフレームに接触しないようにするために、フロントサイドフレームとドライブシャフト間の間隔を大きくする必要があり、フロントサイドフレームとドライブシャフトの上下方向の配置スペースを小さくできない、フロントサイドフレームの閉断面構造を大きくできない、等の問題が生じる。
【0008】
そこで、特許文献1のフロントサイドフレームにおいて、インナ部材及びアウタ部材の下部フランジ部を、上部フランジ部と同様に、フロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に車幅方向外方へ突出する水平な帯状に形成することが考えられる。しかし、上部フランジ部と下部フランジ部の両方を車幅方向へ突出状に形成すると、アウタ部材とインナ部材の製作誤差や組付誤差を吸収して、アウタ部材とインナ部材を容易に確実に接合して組み付けることができないという虞が生じる。上部フランジ部と下部フランジ部の両方を上下方向へ突出状に形成する場合も同様である。
【0009】
即ち、アウタ部材及びインナ部材の上部フランジ部と下部フランジ部の一方を水平に他方を鉛直に形成することが望ましい。そこで、インナ部材及びアウタ部材の上部フランジ部を、フロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に上方へ突出状に形成し、インナ部材及びアウタ部材の下部フランジ部を、フロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に車幅方向へ突出状に形成することが考えられるが、フロントサイドフレームの上側に補機等の他部材を配置する場合、その他部材が上部フランジにより配置の制約を受ける。
【0010】
本発明の目的は、フロントサイドフレームのインナ部材及びアウタ部材の下部フランジ部を下方へ突出する鉛直な帯状に形成することを前提に、特に、ドライブシャフトがフロントサイドフレームに接触しないようにして、フロントサイドフレームとドライブシャフトを、これら部材間の間隔を極力小さくするように配置することができる、自動車の前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の自動車の前部構造は、エンジンルームと、前記エンジンルームの車幅方向外端側部分に前後方向へ延びるように配設された左右1対のフロントサイドフレームと、前記1対のフロントサイドフレームの下側を通って車幅方向へ延びる左右1対のドライブシャフトであって、車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能に設けられた1対のドライブシャフトとを備え、前記1対のフロントサイドフレームは、夫々、車幅方向内側のインナ部材と車幅方向外側のアウタ部材とを有し、これらインナ部材とアウタ部材の前後方向に連続して延びる上部フランジ部同士と下部フランジ部同士とを接合して閉断面構造に形成され、前記インナ部材及びアウタ部材の下部フランジ部が下方へ突出する鉛直な帯状に形成され、この下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分がフロントサイドフレームの車幅方向内端側部分に形成され、下部フランジ部の少なくとも一部分がフロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に形成されたことを特徴とする。
【0012】
この自動車の前部構造では、フロントサイドフレームがインナ部材とアウタ部材を有し、インナ部材とアウタ部材の前後方向に連続して延びる上部フランジ部同士が接合され、インナ部材とアウタ部材の前後方向に連続して延びる下部部フランジ部同士が接合されて、フロントサイドフレームが閉断面構造に形成され、この閉断面構造によって、更に、この閉断面構造部分から張り出す上部フランジ部及び下部フランジ部によって、フロントサイドフレームの強度・剛性が高められる。
【0013】
下部フランジ部が下方へ突出する鉛直な帯状に形成されるのに対して、上部フランジ部がフロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に車幅方向外方へ突出する水平な帯状に形成されることが好ましく、これにより、インナ部材とアウタ部材の製作誤差や組付誤差を吸収して、上部フランジ部同士と下部フランジ部同士を簡単に確実に当接させて溶接することができ、つまり、インナ部材とアウタ部材の組付性が良くなり、しかも、フロントサイドフレームの上側と車幅方向内側に補機等の他部材を配置する場合、その他部材が上部フランジ部に配置制約を受けないので有利になる。
【0014】
ドライブシャフトは、フロントサイドフレームの下側を通って車幅方向へ延びるように配設され、フロントサイドフレームよりも車幅方向内側に位置する車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能に設けられ、ドライブシャフトの車幅方向外側部位ほど上下の振り幅が大きくなるが、下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分がフロントサイドフレームの車幅方向内端側部分に形成されるため、フロントサイドフレームの車幅方向部分において、ドライブシャフトの最も上下の振り幅が小さい部位の上側にフランジ部を設けることができる。
【0015】
つまり、ドライブシャフトがフロントサイドフレームに接触しないようにして、フロントサイドフレームとドライブシャフトを、これら部材間の間隔を極力小さくするように配置することができる。また、下部フランジ部の少なくとも一部分がフロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に形成されるので、下部フランジ部の前記一部分が形成された部分のフロントサイドフレームの車幅方向内方よりの下側に他部材を配置する場合、その他部材が下部フランジ部の前記一部分に配置制約を受けないので有利になる。
【0016】
ここで、請求項1の従属請求項として次の構成を採用可能である。
前記下部フランジ部は、フロントサイドフレームの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された外側フランジ部と、ドライブシャフトの上側部分を含むフロントサイドフレームの後側部分において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部と、外側フランジ部と内側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された繋ぎフランジ部とを有する(請求項2)。
【0017】
前記下部フランジ部は、フロントサイドフレームの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された前外側フランジ部と、ドライブシャフトの上側部分よりも後側のフロントサイドフレームの後側部分において車幅方向外端側部分に形成された後外側フランジ部と、ドライブシャフトの上側部分を含みフロントサイドフレームの前後の外側フランジ部の間において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部と、前外側フランジ部と内側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された第1の繋ぎフランジ部と、内側フランジ部と後外側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向外側へ移行するように形成された第2の繋ぎフランジ部とを有する(請求項3)。
【0018】
前記下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分に形成された内側フランジ部が、下方程車幅方向内側へ移行する傾斜状に形成される(請求項4)。前記フロントサイドフレームのうち繋ぎフランジ部が形成された部分の内部に節部材が固定的に設けられる(請求項5)。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の自動車の前部構造によれば、特に、ドライブシャフトは、フロントサイドフレームの下側を通って車幅方向へ延び、フロントサイドフレームよりも車幅方向内側に位置する車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能に設けられ、ドライブシャフトの車幅方向外側部位ほど上下の振り幅が大きくなるが、下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分を、フロントサイドフレームの車幅方向内端側部分に形成したので、フロントサイドフレームの車幅方向部分において、ドライブシャフトの最も上下の振り幅が小さい部位の上側にフランジ部を設けることができ、つまり、ドライブシャフトがフロントサイドフレームに接触しないようにして、フロントサイドフレームとドライブシャフトを、これら部材間の間隔を極力小さくするように配置することができ、故に、フロントサイドフレームとドライブシャフトの上下方向の配置スペースを小さくすることができて、フロントサイドフレームの閉断面構造を大きくすることができる。また、下部フランジ部の少なくとも一部分をフロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に形成したので、下部フランジ部の前記一部分が形成された部分のフロントサイドフレームの車幅方向内方よりの下側に他部材を配置する場合、その他部材が下部フランジ部の前記一部分に配置制約を受けないので有利になる。
【0020】
請求項2の自動車の前部構造によれば、下部フランジ部は、フロントサイドフレームの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された外側フランジ部、ドライブシャフトの上側部分を含むフロントサイドフレームの後側部分において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部、外側フランジ部と内側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された繋ぎフランジ部を有するので、下部フランジ部が確実に前後方向へ連続して延びるように構成できて、アウタ部材とインナ部材の組み付け不良を防止し、フロントサイドフレームの強度・剛性の低下を抑制して、下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分をフロントサイドフレームの車幅方向内端側部分に確実に形成することができる。しかも、繋ぎフランジ部は下部フランジ部の一箇所(一部分)にしか形成されないため、この繋ぎフランジ部の形成による、インナ部材とアウタ部材との位置が合わなくなることによる成形不良を極力抑えることが可能になる。
【0021】
請求項3の自動車の前部構造によれば、下部フランジ部は、フロントサイドフレームの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された前外側フランジ部、ドライブシャフトの上側部分よりも後側のフロントサイドフレームの後側部分において車幅方向外端側部分に形成された後外側フランジ部、ドライブシャフトの上側部分を含みフロントサイドフレームの前後の外側フランジ部の間において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部、前外側フランジ部と内側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された第1の繋ぎフランジ部と、内側フランジ部と後外側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向外側へ移行するように形成された第2の繋ぎフランジ部を有するので、下部フランジ部が確実に前後方向へ連続して延びるように構成できて、アウタ部材とインナ部材の組み付け不良を防止し、フロントサイドフレームの強度・剛性の低下を抑制して、下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分をフロントサイドフレームの車幅方向内端側部分に確実に形成することができる。しかも、ドライブシャフトの近傍を除く全ての部分において、エンジンルームから連続してフロントサイドフレームの下方に隣接させた補機等の配設が可能になり、この補機等の配置を格段に有利にできる。
【0022】
請求項4の自動車の前部構造によれば、下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分に形成された内側フランジ部を、下方程車幅方向内側へ移行する傾斜状に形成したので、その内側フランジ部の下端位置を高くするとともに、ドライブシャフトの上下の振り幅がより小さくなる部位の上側へ位置させることができるので、ドライブシャフトがフロントサイドフレームに接触しないようにして、フロントサイドフレームとドライブシャフトを、これら部材間の間隔をより一層小さくするように配置できる。
【0023】
請求項5の自動車の前部構造によれば、フロントサイドフレームのうち繋ぎフランジ部が形成された部分の内部に節部材を固定的に設けたので、強度・剛性が低下する虞がある、フロントサイドフレームの繋ぎフランジ部が形成された部分を補強して、フロントサイドフレームの強度・剛性を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の自動車の前部構造は、エンジンルーム、左右1対のフロントサイドフレーム、左右1対のドライブシャフトを備え、1対のフロントサイドフレームは、夫々、車幅方向内側のインナ部材と車幅方向外側のアウタ部材とを有し、これらインナ部材とアウタ部材の前後方向に連続して延びる上部フランジ部同士と下部フランジ部同士とを接合して閉断面構造に形成されている。
【実施例1】
【0025】
図1〜図3に示すように、自動車の前部構造1は、エンジンルーム2、エンジンルーム2と車内を仕切るダッシュパネル3、ダッシュパネル3の上端部に結合され車幅方向へ延びるカウル部材4、エンジンルーム2の上部の車幅方向外端側部分に前後方向へ延びるように配設された左右1対のエプロン部材5、1対のエプロン部材5に結合された左右1対のホイールハウス6、エンジンルーム2の車幅方向外端側部分に前後方向へ延びるように配設された左右1対のフロントサイドフレーム7、ダッシュパネル3の前面部に結合され1対のフロントサイドフレーム7に架着されたダッシュクロスメンバ8等を備えている。
【0026】
ダッシュパネル3の下端部は車内のフロアを形成するフロアパネル(図示略)の前端部に結合され、1対のフロントサイドフレーム7の後端部がダッシュパネル3の前面部に結合されている。1対のフロントサイドフレーム7の後端部からは、左右1対のサイドフレーム9が後方斜め下側へ延びてから後方へ延び、これらサイドフレーム9がダッシュパネル3の前面部とフロアパネルの下面部に結合されている。
【0027】
また、自動車の前部構造1は、エンジンルーム2に配置されたエンジンE及び変速機10、車幅方向内端部が変速機10に連結されて車幅方向へ延びるように配設された左右1対の中間シャフト11、1対の中間シャフト11の車幅方向外端部に車幅方向内端部がユニバーサルジョイン12を介して連結され1対のフロントサイドフレーム7の下側を通って車幅方向へ延びる左右1対のドライブシャフト13を備えている。
【0028】
左右の中間シャフト11の長さは異なり、変速機10は車幅方向の中心から一方へ変位した位置に配設され、長い方の中間シャフト11は、エンジンEに取り付けられた軸受け部材14により回転自在に支持されている。
【0029】
1対のドライブシャフト13は、その車幅方向内端部がフロントサイドフレーム7よりも車幅方向内側に位置し、ユニバーサルジョイン12により、中間シャフト11から駆動力を伝達されつつ、車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能に設けられている。1対のドライブシャフト13の車幅方向外端部にはホイールサポート15が連結され、1対のホイールサポート15に1対の前輪(図示略)が操舵可能に連結されている。
【0030】
フロントサイドフレーム7について詳細に説明する。
図1〜図7に示すように、1対のフロントサイドフレーム7は、夫々、車幅方向内側のインナ部材20と車幅方向外側のアウタ部材30とを有し、インナ部材20とアウタ部材30の前後方向に連続して延びる上部フランジ部40(25,35)同士と、インナ部材20とアウタ部材30の前後方向に連続して延びる下部フランジ部45(26,36)同士とを接合して閉断面構造7aに形成されている。
【0031】
インナ部材20は、上壁21、下壁22、内側壁23、上部フランジ部25、下部フランジ部26を有し、上部フランジ部25は、上壁21の車幅方向外端部に車幅方向外方へ延びるように形成され、下部フランジ部26は、その後側部分が内側壁23の下端部に下方へ延びるように形成され、その他の部分が下壁22の車幅方向外端部に下方へ屈曲するように形成されている。
【0032】
アウタ部材30は、下壁32、外側壁33、上部フランジ部35、下部フランジ部36を有し、上部フランジ部35は、外側壁33の上端部に車幅方向外方へ延びるように形成され、下部フランジ部36は、その前側部分が外側壁33の下端部に下方へ延びるように形成され、その他の部分が下壁32の車幅方向内端部に下方へ屈曲するように形成されている。
【0033】
こうして、上部フランジ部40が、フロントサイドフレーム7の車幅方向外端側部分に車幅方向外方へ突出する水平な帯状に形成され、下部フランジ部45のうちドライブシャフト13の上側に位置する部分がフロントサイドフレーム7の車幅方向内端側部分に形成され、下部フランジ部45の少なくとも一部分がフロントサイドフレーム7の車幅方向外端側部分に形成されている。
【0034】
特に、下部フランジ部45は、フロントサイドフレーム7の前側部分において車幅方向外端側部分に形成された外側フランジ部45aと、ドライブシャフト13の上側部分を含むフロントサイドフレーム7の後側部分において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部45bと、外側フランジ部45aと内側フランジ部45bとを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された繋ぎフランジ部45cとを有する。
【0035】
フロントサイドフレーム7において、外側フランジ部45aが形成された部分は、インナ部材20の上壁21と下壁22と内側壁23とアウタ部材30の外側壁33とで閉断面が形成され、内側フランジ部45bが形成された部分は、インナ部材20の上壁21と内側壁23とアウタ部材30の下壁32と外側壁33とで閉断面が形成され、繋ぎフランジ部45cが形成された部分は、インナ部材20の上壁21と下壁22と内側壁23とアウタ部材30の下壁32と外側壁33とで閉断面が形成されている。
【0036】
以上説明した自動車の前部構造1の作用・効果について説明する。
フロントサイドフレーム7がインナ部材20とアウタ部材30を有し、インナ部材20とアウタ部材30の前後方向に連続して延びる上部フランジ部40同士を接合し、インナ部材20とアウタ部材30の前後方向に連続して延びる下部部フランジ部45同士を接合して、フロントサイドフレーム7を閉断面構造7aに形成し、この閉断面構造7aによって、更に、この閉断面構造部分から張り出す上部フランジ部40及び下部フランジ部45によって、フロントサイドフレーム7の強度・剛性を高めることができる。
【0037】
下部フランジ部45を下方へ突出する鉛直な帯状に形成するのに対して、上部フランジ部40をフロントサイドフレーム7の車幅方向外端側部分に車幅方向外方へ突出する水平な帯状に形成することにより、インナ部材20とアウタ部材30の製作誤差や組付誤差を吸収して、上部フランジ部40同士と下部フランジ部45同士を簡単に確実に当接させて溶接することができ、つまり、インナ部材20とアウタ部材30の組付性が良くなり、しかも、フロントサイドフレーム7の上側と車幅方向内側に補機A等の他部材を配置する場合、その他部材が上部フランジ部40に配置制約を受けないので有利になる。
【0038】
ドライブシャフト13は、フロントサイドフレーム7の下側を通って車幅方向へ延びるように配設され、図7に示すように、フロントサイドフレーム7よりも車幅方向内側に位置する車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能に設けられ、ドライブシャフト13の車幅方向外側部位ほど上下の振り幅が大きくなるが、下部フランジ部45のうちドライブシャフト13の上側に位置する部分をフロントサイドフレーム7の車幅方向内端側部分に形成したので、フロントサイドフレーム7の車幅方向部分において、ドライブシャフト13の最も上下の振り幅が小さい部位の上側に上部フランジ部45を設けることができる。
【0039】
つまり、ドライブシャフト13がフロントサイドフレーム7に接触しないようにして、フロントサイドフレーム7とドライブシャフト13を、これら部材7,13間の間隔を極力小さくするように配置することができ、故に、フロントサイドフレーム7とドライブシャフト13の上下方向の配置スペースを小さくすることができて、フロントサイドフレーム7の閉断面構造7aを大きくすることができる。また、下部フランジ部45の前側部分をフロントサイドフレーム7の車幅方向外端側部分に形成したので、フロントサイドフレーム7の前側部分の車幅方向内方よりの下側に他部材を配置する場合、その他部材が下部フランジ部45の前側部分に配置制約を受けないので有利になる。
【0040】
下部フランジ部45は、フロントサイドフレーム7の前側部分において車幅方向外端側部分に形成された外側フランジ部45a、ドライブシャフト13の上側部分を含むフロントサイドフレーム7の後側部分において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部45b、外側フランジ部45aと内側フランジ部45bとを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された繋ぎフランジ部45cを有するので、下部フランジ部45が確実に前後方向へ連続して延びるように構成できて、アウタ部材20とインナ部材30の組み付け不良を防止し、フロントサイドフレーム7の強度・剛性の低下を抑制して、下部フランジ部45のうちドライブシャフト13の上側に位置する部分をフロントサイドフレーム7の車幅方向内端側部分に確実に形成することができる。しかも、繋ぎフランジ部45cは下部フランジ部45の一箇所(一部分)にしか形成されないため、この繋ぎフランジ部45cの形成による、インナ部材20とアウタ部材30との位置が合わなくなることによる成形不良を極力抑えることが可能になる。
【実施例2】
【0041】
実施例2の自動車の前部構造1Aは、実施例1のフロントサイドフレーム7の内側フランジ部45bを変更したものである。図8に示すように、この自動車の前部構造1Aにおいて、フロントサイドフレーム7Aの内側フランジ部45bAは、そのうちの少なくともドライブシャフト13の上側に位置する部分が、下方程車幅方向内側へ移行する傾斜状に形成されている。
【0042】
つまり、内側フランジ部45bAの下端位置を高くするとともに、ドライブシャフト13の上下の振り幅がより小さくなる部位の上側に位置させることができるので、ドライブシャフト13がフロントサイドフレーム7Aに接触しないようにして、フロントサイドフレーム7Aとドライブシャフト13を、これら部材7A,13間の間隔をより一層小さくするように配置することができる。
【実施例3】
【0043】
実施例3の自動車の前部構造1Bは、実施例1(又は実施例2)のフロントサイドフレーム7(又は7A)の内部構造を変更したものである。図9に示すように、この自動車の前部構造1Bにおいて、フロントサイドフレーム7Bのうち繋ぎフランジ部45cが形成された部分の内部に節部材50が固定的に設けられている。
【0044】
節部材50は、少なくとも水平な上端縁部と鉛直な内端縁部とを有する、例えば矩形の板状部材に形成され、その上端縁部がインナ部材20の上壁21に固着され、内端縁部がインナ部材20の内側壁23に固着され、この節部材50を複数設けてもよい。或いは、節部材50は、少なくとも水平な下端縁部と鉛直な外端縁部とを有する、例えば矩形の板状部材に形成され、その下端縁部がアウタ部材30の下壁32に固着され、外端縁部がアウタ部材30の外側壁33に固着され、この節部材50を複数設けてもよい。
【0045】
或いは、節部材50として、インナ部材20に固着された1又は複数の節部材50と、アウタ部材30に固着された1又は複数の節部材50を設けてもよい。節部材50を設けたことで、強度・剛性が低下する虞がある、フロントサイドフレーム7Bの繋ぎフランジ部45cが形成された部分を補強して、フロントサイドフレーム7Bの強度・剛性を高く維持することができる。
【実施例4】
【0046】
実施例3の自動車の前部構造1Cは、実施例1のフロントサイドフレーム7の下部フランジ部45を変更したものである。図10に示すように、この自動車の前部構造1Cにおいて、下部フランジ部55は、フロントサイドフレーム7Cの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された前外側フランジ部55aと、ドライブシャフト13の上側部分よりも後側のフロントサイドフレーム7Cの後側部分において車幅方向外端側部分に形成された後外側フランジ部55bと、ドライブシャフト13の上側部分を含みフロントサイドフレーム7Cの前後の外側フランジ部55a,55bの間において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部55cと、前外側フランジ部55aと内側フランジ部55cとを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された第1の繋ぎフランジ部55dと、内側フランジ部55cと後外側フランジ部55bとを繋ぐように後方程車幅方向外側へ移行するように形成された第2の繋ぎフランジ部55eとを有する。
【0047】
この自動車の前部構造1Cによれば、下部フランジ部55が確実に前後方向へ連続して延びるように構成できて、アウタ部材20とインナ部材30の組み付け不良を防止し、フロントサイドフレーム7Cの強度・剛性の低下を抑制して、下部フランジ部55のうちドライブシャフト13の上側に位置する部分をフロントサイドフレーム7Cの車幅方向内端側部分に確実に形成できる。しかも、ドライブシャフト7Cの近傍を除く全ての部分において、エンジンルーム2から連続してフロントサイドフレーム7Cの下方に隣接させた補機等の配設が可能になり、この補機等の配置を格段に有利にできる。尚、この自動車の前部構造1Cに、実施例2,3の技術を採用可能である。尚、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1の自動車の前部構造の前斜め上側からの斜視図である。
【図2】自動車の前部構造の前斜め下側からの斜視図である。
【図3】自動車の前部構造の底面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV −V 線断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】フロントサイドフレームとドライブシャフトと正面図である。
【図8】実施例2のフロントサイドフレームとドライブシャフトと正面図である。
【図9】実施例3の自動車の前部構造の前斜め下側からの斜視図である。
【図10】実施例4の自動車の前部構造の前斜め下側からの斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B,1C 自動車の前部構造
2 エンジンルーム
7,7A,7B,7C フロントサイドフレーム
7a 閉断面構造
13 ドライブシャフト
20 インナ部材
30 アウタ部材
40 上部フランジ部
45 下部フランジ部
45a 外側フランジ部
45b,45bA 内側フランジ部
45c 繋ぎフランジ部
50 節部材
55 下部フランジ部
55a 前外側フランジ部
55b 後外側フランジ部
55c 内側フランジ部
55d 第1の繋ぎフランジ部
55e 第2の繋ぎフランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部構造において、
エンジンルームと、
前記エンジンルームの車幅方向外端側部分に前後方向へ延びるように配設された左右1対のフロントサイドフレームと、
前記1対のフロントサイドフレームの下側を通って車幅方向へ延びる左右1対のドライブシャフトであって、車幅方向内端部を支点にして上下に揺動可能に設けられた1対のドライブシャフトとを備え、
前記1対のフロントサイドフレームは、夫々、車幅方向内側のインナ部材と車幅方向外側のアウタ部材とを有し、これらインナ部材とアウタ部材の前後方向に連続して延びる上部フランジ部同士と下部フランジ部同士とを接合して閉断面構造に形成され、
前記インナ部材及びアウタ部材の下部フランジ部が下方へ突出する鉛直な帯状に形成され、この下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分がフロントサイドフレームの車幅方向内端側部分に形成され、下部フランジ部の少なくとも一部分がフロントサイドフレームの車幅方向外端側部分に形成された、
ことを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
前記下部フランジ部は、フロントサイドフレームの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された外側フランジ部と、ドライブシャフトの上側部分を含むフロントサイドフレームの後側部分において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部と、外側フランジ部と内側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された繋ぎフランジ部とを有することを特徴とする請求項1に記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
前記下部フランジ部は、フロントサイドフレームの前側部分において車幅方向外端側部分に形成された前外側フランジ部と、ドライブシャフトの上側部分よりも後側のフロントサイドフレームの後側部分において車幅方向外端側部分に形成された後外側フランジ部と、ドライブシャフトの上側部分を含みフロントサイドフレームの前後の外側フランジ部の間において車幅方向内端側部分に形成された内側フランジ部と、前外側フランジ部と内側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向内側へ移行するように形成された第1の繋ぎフランジ部と、内側フランジ部と後外側フランジ部とを繋ぐように後方程車幅方向外側へ移行するように形成された第2の繋ぎフランジ部とを有することを特徴とする請求項1に記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
前記下部フランジ部のうちドライブシャフトの上側に位置する部分に形成された内側フランジ部が、下方程車幅方向内側へ移行する傾斜状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
前記フロントサイドフレームのうち繋ぎフランジ部が形成された部分の内部に節部材が固定的に設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−56095(P2008−56095A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235464(P2006−235464)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】