説明

自動車の助手席用エアバッグ装置

【課題】3歳児程度の身体的大きさの乗員に相当するダミーの頭頂部がエアバッグ収納開口の延長線上にあって、収納部から膨出するエアバッグの膨出先端部が乗員に相当するダミーの頭部と接触するおそれがあっても、バッグ本体の展開特性が損なわない展開挙動制御ができる自動車の助手席用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】バッグ本体1には、囲繞部12と筒部13とより一体に形成されてなる展開規制シート11が覆ってなり、囲繞部12は、バッグ本体1の取付部3を囲繞してなり、筒部13は、バッグ本体1の折り畳み部4の車室内RM側に常時折り畳まれた状態で配され且つバッグ本体1の膨張展開時に、バッグ本体1より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の助手席用エアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の助手席用エアバッグ装置としては、バッグ本体の展開挙動を制御することを目的として、エアバッグの折り畳み外部に展開規制シートを設けたもの(先行技術文献1)が、従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−0158914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来技術は、前記エアバッグのバッグ本体を折り畳んでから展開規制シートを縫製する必要があり、バッグ本体の製造組立時に縫製用のミシンを必要とする。また、前記展開規制シートがバッグ本体の片側のみなので、バッグ本体の展開挙動制御に、改善が求められている。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、助手席から乗員が腰を上げた状態やインストルメントパネルに異常に接近した状態(係る状態のことを一般にアウトオブポジション(OOP)という。以下同じ。)で、しかも、アメリカ人の3歳児程度の身体的大きさの乗員の頭部の一部がエアバッグ収納開口の延長線上にあって、収納部から膨出するエアバッグの膨出先端部が乗員頭部と接触するおそれがあっても、バッグ本体の展開特性が損なわない展開挙動制御ができる自動車の助手席用エアバッグ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1記載の自動車の助手席用エアバッグ装置は、車体に支持されてなるリテーナに取り付けられてなる取付部及び該取付部より車室内側にあって常時折り畳まれた状態にあり且つ気体発生装置により膨張気体を供給されることでインストルメントパネルの開口を介して車室内に向かって膨張展開を可能とした折り畳み部が一体に形成されてなるバッグ本体を、少なくとも備えてなる自動車の助手席用エアバッグ装置であって、前記バッグ本体には、囲繞部と筒部とより一体に形成されてなる展開規制シートが覆ってなり、前記展開規制シートの囲繞部は、前記バッグ本体の取付部を囲繞してなり、前記展開規制シートの筒部は、前記バッグ本体の折り畳み部の車室内側に常時折り畳まれた状態で配され且つ前記バッグ本体の膨張展開時に、前記バッグ本体より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2記載の自動車の助手席用エアバッグ装置は、請求項1記載の前記展開規制シートの立ち上がった状態における長さは、前記インストルメントパネルの開口下側壁部の延長線と,C3Yタイプのダミーの頭頂部とが接するように配し、前記展開規制シートのみを前記延長線に沿って引き出した際に、該延長線に対して前記ダミーの頭頂部とが接する位置までの長さとすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3記載の自動車の助手席用エアバッグ装置は、請求項1又は請求項2記載の前記バッグ本体の折り畳み部は、自動車の前後それぞれを重ねるように折り畳むと共に少なくとも後側は、アリゲータ折りであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、自動車の助手席用エアバッグ装置は、前記展開規制シートの筒部は、前記バッグ本体の折り畳み部の車室内側に常時折り畳まれた状態で配され且つ前記バッグ本体の膨張展開時に、前記バッグ本体より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなるため、前記ウインドシールドパネルと前記ダミーの頭頂部との間の空間に前記展開規制シートの筒部が立ち上がり、前記バッグ本体の膨張展開方向を案内することで、ダミーの頭頂部がエアバッグ収納開口の下側壁部の延長線上にあって、開口から膨出するバッグ本体の膨出先端部が乗員であるダミーの頭部と接触する程度に案内する、などの効果を奏する。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、前記展開規制シートの立ち上がった状態における長さは、前記インストルメントパネルの開口下側壁部の延長線と,C3Yタイプのダミーの頭頂部とが接する位置までの長さであり、前記展開規制シートのみを前記延長線に沿って引き出した際に、該延長線に対して前記ダミー、即ちアメリカ人の3歳児相当体格の頭頂部とが接する位置までの長さであるため、前記展開規制シートより遅れて膨張展開するバッグ本体の膨張展開方向が確実に案内できる、という効果を奏する。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、前記バッグ本体の折り畳み部は、自動車の前後それぞれを重ねるように折り畳むと共に少なくとも後側は、アリゲータ折りであるため、効率よくウインドシールドパネルと乗員に相当するダミーの頭頂部との間をバッグ本体が通り過ぎることができる。換言すると、ウインドシールドパネルと乗員に相当するダミーの頭頂部との間をバッグ本体が抜けていくことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るバッグ本体及び展開規制シートが折り畳まれた状態における自動車の助手席用エアバッグ装置の断面図。
【図2】図1の折り畳まれたバッグ本体及び展開規制シートを示す要部拡大断面図。
【図3】図1のバッグ本体が膨張展開した状態及び展開規制シートがバッグ本体を案内している状態を示す図1相当断面図。
【図4】本発明の他の実施例を示す図2相当要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明において、アメリカ人の3歳児程度の身体的大きさの乗員に相当するダミーの頭頂部がエアバッグ収納開口の延長線上にあって、収納部から膨出するエアバッグの膨出先端部が乗員に相当するダミーの頭部と接触するおそれがあっても、バッグ本体の展開特性が損なわない展開挙動制御ができる自動車の助手席用エアバッグ装置を提供するという目的を、車体に支持されてなるリテーナに取り付けられてなる取付部及び該取付部より車室内側にあって常時折り畳まれた状態にあり且つ気体発生装置により膨張気体を供給されることでインストルメントパネルの開口を介して車室内に向かって膨張展開を可能とした折り畳み部が一体に形成されてなるバッグ本体を、少なくとも備えてなる自動車の助手席用エアバッグ装置であって、前記バッグ本体には、囲繞部と筒部とより一体に形成されてなる展開規制シートが覆ってなり、前記展開規制シートの囲繞部は、前記バッグ本体の取付部を囲繞してなり、前記展開規制シートの筒部は、前記バッグ本体の折り畳み部の車室内側に常時折り畳まれた状態で配され且つ前記バッグ本体の膨張展開時に、前記バッグ本体より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1に係る構造を、図1〜図3を用いて説明する。この実施例1の自動車の助手席用エアバッグ装置A/Bは、衝突時又は衝突に近い急制動等を検知するセンサ(図示省略)と、該センサの信号により膨張気体を噴出供給する気体発生装置7と、該気体発生装置7から噴出した膨張気体により膨張展開可能なるバッグ本体1とを備えてなる。
【0015】
前記バッグ本体1は、図示しない車体にエアバッグ容器10を介して支持されてなるリテーナ2に取り付けられてなる取付部3と、該取付部3より車室内RM側にあって常時折り畳まれた状態にあり且つ気体発生装置7により膨張気体を供給されることでインストルメントパネル6の開口8を介して車室内RMに向かって膨張展開を可能とした折り畳み部4が一体に形成されてなる。該折り畳み部4は、前記リテーナ2の上側UPから前側FR及び後側RRに分かれて、それぞれ折り畳まれてなり、その頂部4aが前後に架橋されて袋状に形成されてなる。
【0016】
前記バッグ本体1には、囲繞部12と筒部13とより一体に形成されてなる展開規制シート11が覆ってなり、前記展開規制シート11の囲繞部12は、前記バッグ本体1の取付部3を囲繞してなり、前記展開規制シート11の筒部13は、前記バッグ本体1の折り畳み部4の車室内RM側に、常時図2に示すように、前側FR及び後側RRに分かれ且つそれぞれがアリゲータ折りで折り畳まれてなり、前記バッグ本体1の膨張展開時に、図3に示すように、前記バッグ本体1より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなる。前記展開規制シート11は横断面が方形を為し、立ち上がり後は、サイド部の縫製がバッグ本体1の圧力によりほどける程度の糸で縫製されている。このため、乗員に相当するダミーの拘束上の問題は生じないようになっている。符号16は、これらを外から覆うラッピング布である。
【0017】
また、前記展開規制シート11の立ち上がった状態における長さは、前記インストルメントパネル6の開口8の下側壁部9の延長線9aと、アメリカ人の3歳児程度の身体の大きさを一般化したアメリカ合衆国における自動車安全基準FMVSS208項(1999年10月版。以下同じ。)に用いられる最も小型のC3Yタイプのダミー5の頭頂部Haとが接する位置までの長さであり、出願人において確認したところ、165ミリメートルであった。
【0018】
また、前記バッグ本体1の折り畳み部4は、自動車の前側FR及び後側RRそれぞれを重ねるように折り畳むと共に前側FR及び後側RR双方がアリゲータ折りである。少なくとも前記バッグ本体1の後側RRは、アリゲータ折りである。
【0019】
前記バッグ本体1は、常時折り畳まれた状態でインストルメントパネル6内に収容され且つ図示しない車体に支持されてなるエアバッグ容器10に取り付けられてなる。そして、前記バッグ本体1は、緊急事態発生時に気体発生装置7により膨張展開することで、前記インストルメントパネル6から飛び出す。飛び出した前記バッグ本体1は、フロントウインドシールドパネルWSに案内されて車室RM側に向かって展開するように配されてなる。また、バッグ本体1全体が展開規制シート11の中に収納されているので、ガイド性も高いことになる。
【0020】
次に、この実施例1の作用を説明する。
【0021】
前記バッグ本体1を囲繞する前記展開規制シート11の筒部13は、前記バッグ本体1の折り畳み部4の車室内RM側に常時折り畳まれた状態で配され且つ前記バッグ本体1の膨張展開時に、前記バッグ本体1より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなるため、バッグ本体1の膨張展開初期においてはバッグ本体1の根元側の展開が規制されてバッグ本体1の膨張展開を助長することで,前記フロントウインドシールドパネルWSと前記ダミー5の頭頂部Haとの間の空間14に前記展開規制シート11の筒部13が立ち上がり、前記バッグ本体1の膨張展開方向を案内することで、アメリカ人の3歳児程度の身体的大きさの乗員に相当するダミー5の頭頂部Haがエアバッグ収納開口8の下側壁部9の延長線9a上にあって、開口8から膨出するバッグ本体1の膨出先端部が乗員に相当するダミー5の頭部と接触する程度に案内することができる、などの効果を奏する。
【0022】
また、前記展開規制シート11の立ち上がった状態における長さは、前記インストルメントパネル6の開口8の下側壁部9の延長線9aと,アメリカ人の3歳児程度の身体の大きさを一般化したアメリカ合衆国における自動車安全基準(FMVSS208項)に用いられる最も小型のC3Yタイプのダミー5の頭頂部Haとが接する位置までの長さであり、前記展開規制シート11より遅れて膨張展開するバッグ本体1の膨張展開方向が確実に案内できる、という効果を奏する。
【0023】
また、前記バッグ本体1の折り畳み部4は、自動車の前側FR及び後側RRそれぞれを重ねるように折り畳むと共に少なくとも後側RRの折り畳み部4は、アリゲータ折りであるため、効率よくフロントウインドシールドパネルWSと乗員に相当するダミー5の頭頂部Haとの間をバッグ本体1が通り過ぎることができる。換言すると、フロントウインドシールドパネルWSと乗員に相当するダミー5の頭頂部Haとの間をバッグ本体1が抜けていくことができる、という効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、以上の実施例では、気体が封入されていない状態のバッグ本体1では、リテーナ2の上側UPは、前側FR及び後側RRの二つに分かれた折り畳み部4が、アリゲータ折りをしている、と説明し、前記展開規制シート11の筒部13もアリゲータ折りをしている、と説明したが、これに限らず、図4に示すように、前記展開規制シート11の筒部15が蛇腹折りされているものでも良い。
【符号の説明】
【0025】
1 バッグ本体
3 バッグ本体の取付部
4 バッグ本体の折り畳み部
5 ダミー
6 インストルメントパネル
7 気体発生装置
8 インストルメントパネルの開口
9 該開口の下側壁部
9a 下側壁部の延長線
10 エアバッグ容器
11 展開規制シート
12 展開規制シートの囲繞部
13 展開規制シートの筒部
14 ウインドシールドパネルとダミーとの間の空間
15 展開規制シートの筒部
A/B 助手席用エアバッグ装置
FR 前側
RR 後側
RM 車室
Ha ダミーの頭頂部
WS フロントウインドシールドパネル(ウインドシールドパネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持されてなるリテーナに取り付けられてなる取付部及び該取付部より車室内側にあって常時折り畳まれた状態にあり且つ気体発生装置により膨張気体を供給されることでインストルメントパネルの開口を介して車室内に向かって膨張展開を可能とした折り畳み部が一体に形成されてなるバッグ本体を、少なくとも備えてなる自動車の助手席用エアバッグ装置であって、
前記バッグ本体には、囲繞部と筒部とより一体に形成されてなる展開規制シートが覆ってなり、前記展開規制シートの囲繞部は、前記バッグ本体の取付部を囲繞してなり、前記展開規制シートの筒部は、前記バッグ本体の折り畳み部の車室内側に常時折り畳まれた状態で配され且つ前記バッグ本体の膨張展開時に、前記バッグ本体より早期に中空筒状に立ち上がり可能に配されてなることを特徴とする自動車の助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の助手席用エアバッグ装置であって、
前記展開規制シートの立ち上がった状態における長さは、前記インストルメントパネルの開口下側壁部の延長線と,C3Yタイプのダミーの頭頂部とが接するように配し、前記展開規制シートのみを前記延長線に沿って引き出した際に、該延長線に対して前記ダミーの頭頂部とが接する位置までの長さとすることを特徴とする自動車の助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動車の助手席用エアバッグ装置であって、
前記バッグ本体の折り畳み部は、自動車の前後それぞれを重ねるように折り畳むと共に少なくとも後側は、アリゲータ折りであることを特徴とする自動車の助手席用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−49317(P2013−49317A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187542(P2011−187542)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】