説明

自動車の正面衝突を感知するための機器

本発明は、自動車の正面衝突を感知するための機器に関する。本発明によれば、制御装置に接続された複数の衝撃センサが、自動車のバンパ(13)内に組み込まれ、前記衝撃センサは、それぞれ、車両の前部に面し、かつ基本的に車両の長手方向に互いに間隔を置いて配置された第1の接触センサ要素(15)と、車両の前部からそれた方に面する第2の接触センサ要素(16)とを有する。前記接触器センサ要素は、衝突の場合に加速信号又は速度信号を生成するのに使用され、その間に測定区間を形成する空洞(18)が設けられた、それぞれ別個のユニットを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に、より詳細に定義された種類の、自動車の正面衝突を感知するための機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最新式の自動車においては、車両乗員、及び適宜事故に巻き込まれた別の当事者、たとえば歩行者の、事故による結果を軽減させるために、様々なアクティブおよびパッシブ・セーフティ・デバイスが使用されている。先行技術においては、たとえば、シートベルトプリテンショナー、エアバッグなどの形態の拘束手段などの安全装置を起動するために、又は歩行者を保護するためのボンネットを上げるために、主に変形又は加速に基づいて通常の運転状態と激突(クラッシュ)状況とを区別する機械センサ及び電気センサの両方が提供されている。
【0003】
車両に設置されるセンサは、事故の前にとられる予防手段及び事故が検出された後にとられるとっさの手段を作動させるために設けられ、この場合、たとえば正面衝突又は側面衝突などの、衝突の種類を区別することができる。
【0004】
特許文献1では、事故に関連して車両が減速された場合に、車両内の車両乗員用拘束装置を稼動するための衝突センサについて開示している。この公知の衝突センサは、車両の外部に配置された弾性材料からなる接触片として具現化され、少なくともほぼ水平面の互いに反対側にある少なくとも2つの接触要素が、弾性材料内に埋め込まれている。ここでは、車両が衝突した場合に、まず最初に、さらに外側にある接触要素が事故の他方の当事者と接触し、これに対応する内側にある接触要素に押されるようになっている。事故の当事者の相対速度は、2つの接触要素の間の距離、及び第1の接触要素に対する衝撃と第2の接触要素に対する衝撃との間の時間差から計算され、予め定義された値を超えると、拘束システムが起動される。
【0005】
この公知の衝突センサの欠点は、事故の他方の当事者が、まず弾性埋封材料内の特定の距離を動いて、第1の外部接触要素と接触しなければならないが、この場合、弾性埋封材料が変位した結果、第1の及び第2の接触要素の両方とも変位することである。
【0006】
したがって、接触片の変形により、測定時間中に確実な測定区間が得られない。その上、測定時間の結果も、かなり温度に依存する。
【0007】
したがって、事故の当事者間の速度差の判断が不確実になり、安全装置を素早く起動するのに影響を及ぼす恐れがある。
【0008】
【特許文献1】独国特許第2 212 90号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、自動車が事故に巻き込まれた場合の状況に適した方法で安全システムを素早く起動できるような、車両の正面衝突を感知するための機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記目的は、請求項1の特徴に従って、正面衝突を感知するための機器を用いて達成される。
【0011】
制御装置に接続された複数の衝撃センサが自動車のバンパ内に組み込まれており、この衝撃センサが、車両の前部に面する第1の接触センサ要素と、車両の前部からそれた方に面する第2の接触センサ要素とを有し、接触センサ要素は互いに間隔を置いて配置され、それぞれ互いに別個でありかつその間に測定区間を形成する解放された(自由な)空洞が設けられたユニットを構成する、自動車の正面衝突を感知するための機器により、自動車の前部の前部部分又は後部の端部部分に車両衝突が発生した場合、車両の前部に面する接触センサ要素に力が働いた時からの、クラッシュシーケンスにおいて非常に早い時期に、より正確な加速信号又は速度信号が生成でき、また車両の前部からそれた方に面する接触センサ要素が変位しない、又は測定区間が他の何らかの方法で変更されるようになる。
【0012】
したがって、本発明により、たとえば衝突における他方の当事者に対する相対速度及び適宜これから導き出される事故の重大度値により、状況に適応した形で、かつ高い分解品質を有する、それぞれ設けられた安全装置を、可能な限り最も速く起動することができる。
【0013】
特に歩行者の保護の向上という点における、本発明の1つの好ましい実施形態においては、測定区間を形成する空洞が発泡体状の成形要素によって囲まれるようにし、したがって車両が歩行者に衝突した時に制動することができる。
【0014】
本発明の主題のさらなる利点及び好ましい改良形態が、特許請求の範囲、記述、及び図面に見出され得る。
【0015】
自動車の正面衝突を感知するための本発明による機器の2つの例示的実施形態を、図面により詳細に例示し、以下の記述においてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から明らかなように、自動車1(乗用車又は多用途車であり得る)が、制御装置3と、衝撃センサシステム4と、車両状態センサシステム6を備えた運転状況データ検出ユニット5と、車両の周囲を検出するための装置7と、乗員室センサシステム8とを有するセンサ安全システム2を備える。自動車1の安全センサシステム2は、本明細書においては、自動車1の事故の危険レベル又は重大度に応じて異なる段階で適用される。
【0017】
示されている実施形態においては、衝撃センサシステム4は、制御装置3に接続され、いわゆるクラッシュセンサを構成し、x方向及びy方向の両方、つまり車両の長手方向及び車両の側方方向の加速を判断し、したがって正面衝突又は側面衝突を検出する、中央センサ装置9を有する。
【0018】
この中央センサ装置9に加えて、分散された衝撃センサ10が、車両の前部12の前部部分のバンパ13上に設けられ、これにより、車両衝突が発生した場合には、車両の長手方向の加速信号が生成され、速度信号が生成され得る。
【0019】
この場合、バンパ13上の機器としてそれぞれ別個のユニットを形成する複数の分散された衝撃センサ10が、単なる一例として、車両の前部12の前部部分に示されているが、所望の数の衝撃センサが、非常に異なる配置で、たとえば約10cmの距離をおいて、車両の前部12の前部部分又は車両の後部の端部部分14のいずれかに設けられ得る。
【0020】
図2及び図3により詳細に示されているように、衝撃センサ10は、それぞれ、車両の前部12に面する第1の接触センサ要素15、及び車両の前部12からそれた方に面する第2の接触センサ要素16を用いて具現化され、これらの要素15及び16は、基本的に車両の長手方向において互いに間隔を置いて設けられ、これにより、車両衝突が発生した場合に、加速信号又は速度信号が生成され得る。
【0021】
ここで相対速度センサとして具現化される衝撃センサ10は、自動車1の衝突が車両の長手方向に発生した場合の変形加速を判断し、好ましくは、加速信号を増幅する及びデジタル化する信号処理手段を備える。制御装置3のプロセッサによって行われ得る、加速信号の数値積分により、自動車1の最前面の構造領域の変形速度が得られる。たとえば、事故の重大度のクラスがそれぞれ加速信号及び速度信号の定義された閾値に割り当てられている場合、この速度情報から、事故の重大度を推測することができる。
【0022】
加速信号又は速度信号がこのような予め定義された閾値を超えると、事故状況に適した起動信号が、たとえば、エアバッグ、シートベルトプリテンショナーを備えたシートベルト、変位可能な衝突体、その大きさ、硬さ、形状及び位置が作動プロセスにより変更され得るクッション及びヘッドレスト、電気シート調整手段、ヘッドレスト調整手段などの車両乗員拘束装置18、又はボンネット上昇装置又は外部エアバッグなどの歩行者保護装置19を有し得る安全装置17を稼動するために、制御装置3内に格納されている起動アルゴリズムに従って出力される。
【0023】
稼動される安全装置の選択は、衝撃センサ10及び中央センサ装置19の加速信号又は速度信号によって超えられる閾値に合わせることができ、相対速度又は衝突速度が高いことが衝撃センサ10によって判断された場合には、中央センサ装置9の閾値が下げられる。他方、安全装置17のいずれもが起動されない「ソフトクラッシュ」とも呼ばれる低速事故が、相対速度又は加速の最小閾値未満の場合に検出され得る。
【0024】
図2及び図3を参照すると、衝撃センサ10の設計がより詳細に例示されており、第1の外部接触センサ要素15及び第2の内部接触センサ要素16が、それぞれ互いに別個であり、その間に測定区間を形成する空洞18が設けられたユニットを構成することが分かる。
【0025】
図2の実施形態においては、測定区間を形成し、かつ激突の場合に外部接触センサ要素15が第2の接触センサ要素16の方向に通る空洞18が、発泡体状の成形要素19によって囲まれている。
【0026】
衝撃センサ10の外側にある接触センサ要素15は、バンパ13の外板10に固定され、ここでは基本的に、激突の場合のより良い移動性ために、第2の接触センサ要素16の方向に先細りになった形で具現化された円筒形のプランジャの形態である。
【0027】
内側にある接触センサ要素16は、自動車の、非常にしっかりした前部クロスメンバ11上に配置され、ここでは基本的に円形の止めとして具現化されている。
【0028】
衝撃センサ10は、圧電センサ又は力に依存する抵抗器又はFSRセンサとして具現化されることが好ましいが、光導波路などの他の好適な種類のセンサも適用され得る。
【0029】
これらの衝撃センサ10は、速度信号を生成するために、外側にある各接触センサ要素15に対する第1の衝撃と、内側にある各接触センサ要素16に対する第2の衝撃との間の時間差を測定するのに使用される。この場合、衝撃が働いた場合に、接触センサ要素15、16は、制御装置3に衝撃を及ぼす接触力と相関する電圧信号又は抵抗の変化を出力し、前記制御装置は、速度信号が予め定義された閾値を超えたかどうかに応じて、自動車1の安全装置17に稼動信号を出力する。
【0030】
図3に示されている実施形態は、衝撃センサ10がバンパ13の前面に装着された中空片21内に組み込まれるか、又はこれと一体に具現化されて、車両の幅に沿って少なくとも一部分延在するという点において、図2の実施形態とは異なっている。この場合、車両の前面にある第1の接触センサ要素15は、中空片21の前部壁22に配置され、内側にある第2の接触センサ要素16は、バンパ13の前部外板20に配置される。
【0031】
勿論、この実施形態においては、測定区間18はまた、発泡体状の成形部品内の中空片21内の、測定を開始する第1の接触センサ要素15と測定を停止する第2の接触センサ要素16との間に形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】自動車を示す概略平面図と自動車の正面衝突を感知するための本発明による機器を示す概略ブロック図とを含む基本的な図である。
【図2】バンパ上の衝撃センサの接触センサ要素の配置構成の第1の変形形態を示す概略断面図である。
【図3】バンパ上の衝撃センサの接触センサ要素の配置構成の第2の変形形態を示す概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)の正面衝突を感知するための機器であり、
制御装置(3)に接続された複数の衝撃センサ(10)が、前記自動車(1)のバンパ(13)に組み込まれ、前記衝撃センサ(10)が、それぞれ、前記車両の前部(12)に面する第1の接触センサ要素(15)と前記車両の前部(12)からそれた方に面する第2の接触センサ要素(16)とを有し、それぞれが、基本的に前記車両の長手方向に互いに間隔を置いて配置され、これにより、車両衝突が発生した場合に、加速信号又は速度信号が生成され得る機器であって、
前記接触センサ要素(15、16)が、それぞれ互いに別個であり、かつその間に測定区間を形成する空洞(18)が設けられたユニットを構成することを特徴とする機器。
【請求項2】
前記測定区間を形成する前記空洞(18)が、発泡体状の成形部品(19)によって囲まれることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記衝撃センサ(10)のそれぞれ外側にある前記接触センサ要素(15)が、前記バンパ(13)の外板(20)上に配置されることを特徴とする請求項1或いは2に記載の機器。
【請求項4】
前記バンパ(13)が、前記自動車(1)の前部バンパであり、前記衝撃センサ(10)の内側にある前記接触センサ要素(16)が、前記自動車の前部クロスメンバ(11)上に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の機器。
【請求項5】
前記衝撃センサ(10)が、それぞれ、前記バンパ(13)上の機器として別個のユニットを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の機器。
【請求項6】
前記衝撃センサ(10)が、前記バンパ(13)の外板(20)上に、前記自動車の幅に渡って少なくとも一部分延在する中空片(21)に配置されることを特徴とする請求項1或いは2に記載の機器。
【請求項7】
前記衝撃センサ(10)が、光導波路、圧電センサ、又は力に依存する抵抗器(FSR)として具現化されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の機器。
【請求項8】
外側にある前記各第1の接触センサ要素(15)に対する第1の衝撃と、内側にある前記各第2の接触センサ要素(16)に対する第2の衝撃との間の時間差が、加速信号又は速度信号を生成するために測定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の機器。
【請求項9】
衝撃が働いた場合に、前記接触センサ要素(15、16)が、前記制御装置(3)に前記衝撃を及ぼす接触力と相関する電圧信号又は抵抗の変化を出力することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器。
【請求項10】
前記制御装置(3)が、前記加速信号又は前記速度信号が予め定義された閾値を超えたかどうかに応じて、前記自動車(1)の安全装置(17)に稼動信号を出力することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の機器。
【請求項11】
それぞれ、閾値が、定義された事故閾値に割り当てられ、前記稼動信号が、前記各閾値に割り当てられた安全装置(17)に出力されることを特徴とする請求項10に記載の機器。
【請求項12】
前記安全装置(17)が、歩行者保護装置(19)を有することを特徴とする請求項10或いは11に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522992(P2007−522992A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553507(P2006−553507)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001492
【国際公開番号】WO2005/082677
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】