説明

自動車の車内における空気の流れを制御する方法及び装置

本発明は、自動車の車内における空気の流れを制御する方法、及びこの方法を実施する装置に関する。この方法は、閾値速度を超過したとき、空調制御装置へのエラーメッセージの格納が阻止されることを特徴とする。このため、本発明の装置は、閾値速度を決定するのに使用されるパラメータを規定するための対応するセンサシステムを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による、自動車の車内における空気の流れを制御する方法に関する。さらには、本発明は、この種の方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアとウィンドウが閉まっているとき、又はスライディングルーフが閉まっているとき、客室内を占める空気圧が常に大気圧よりいくらか大きくなるように、二つの個別のファンによって客室内の空気圧を制御する自動車の空調システムを開示している。電子式評価システムは、ウィンドウ、ドア、又はスライディングルーフが開いたときのように車内の圧力が急激に下がったときに、ファンが起動しないようにしている。ファンは、圧力を適切に制御するために、走行状態に応じて別様に駆動されなければならない。これにより、出口ノズルを介して車内に出てくる空気の速度が常に変化し、その結果、車両の乗員に不快感を与える。
【0003】
この問題を解消するために、特許文献2は、単一のファンを使用する空調装置を提案している。これにより、例え、車内の圧力にかなり変動があったとしても、客室内への空気の排出速度が本質的に一定となるように、このファンが車速、及び個々の車両の開口(ドア、ウィンドウ、スライディングルーフ)の位置に応じて調整されることができる。
【0004】
大きい車速時において、空調装置が外気モードで駆動しているときに、車内ファンの吸入側にかなり大きい動圧が存在する。そのとき、自動車の少なくとも一つのウィンドウ又はスライディングルーフが開いていると、そのような大きい車速時では、空調装置のファンの吐出側、即ち、自動車の車内に負圧を形成する。自動車が、解放状態で走行するオープンカーであるときも、かなりな程度まで同様である。
【0005】
吸入側に動圧が存在し且つ吐出側に負圧が存在すると、ある状況のもとでは、空調装置には危険作動状態が生じるので、ファン調節装置に、ファンが過負荷状態で駆動するのを防止するために一時的にファンの電源を切る内部保護機能を付与することになる。
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0428523B1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10132891A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今日自動車に使用されている空調装置は、この種の危険な作動状態が生じたとき、エラーメッセージを発生するとともに、それをローカルメモリに格納する空調制御装置を有する。この格納されたエラーメッセージにより、通常、ファン調節装置、又は、ある状況の下ではファン全体が、これらの装置の部品が十分に機能していたとしても工場で交換される必要がある。このような状況は、保証及びコストの理由で望ましくはない。なぜならば、装置は、正常な状態であり、単に、ファン又はファン調節装置をオーバーヒートから保護する一回以上の短時間の一時的な保護電源切断動作のために機能不能とされるからである。
【0008】
これを出発点として、本発明の目的は、不要なコストをもたらす保守作業が回避されるように、自動車の車内における空気の流れを制御する方法、及び前述の方法を実施する空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は請求項1の特徴による方法によって達成される。
【0010】
従って、本発明による方法の核心は、所定の閾値速度を超過したとき、まず最初に、空調制御装置へのエラーメッセージの格納が阻止されることにある。
【0011】
なぜならば、エラーが発生したとき、ファンは電源が切られ(保護切換動作)、ファンは再び電源を入れられる必要がある。その結果、ファンは起動される。
【0012】
この方法の他のステップにおいて、空調制御装置は、所定の閾値車速を下回ったときファンの電源を切り、その後、直ちに再びその電源を入れる(再起動)。
【0013】
閾値車速は、自動車の、例えば少なくとも一つのウィンドウ、及び/又はスライディングルーフのような車両の開口の位置に応じて決定される。オープンカーの場合、これらのパラメータもまた、このオープンカーの格納式ルーフの位置に応じて決定される。
【0014】
換言すれば、空調制御装置は、時々刻々の走行状態及び圧力状態で支配される作動状態を認識する。この作動状態はあるパラメータ値において危険であると判断される。そのような危険作動状態にあるとき、空調制御装置は、ローカルメモリ内へのエラーの格納を阻止する。さらに、空調制御装置は、危険作動状態において、閾値速度を下回るとき、ファンの短い電源切断をする作動信号を作成する。これにより、この極端な場合において、ファンを保護するための電源切断時間を短縮することができる。換言すれば、車両の速度が閾値車速を超えているときは、動圧の作用によって発生し得るファン調節装置のエラーメッセージはもはや格納されない。
【0015】
例えば、ウィンドウが閉まっているときは、この閾値車速は、約150km/hであり、ウィンドウが開いているときは、それは、120km/hに、さらに、スライディングルーフが開いているときは、100km/hに減少する。これに関連して、中間値による漸次的変化をつける必要はない。なぜならば、条件が適合した最低の閾値が特別な閾値車速として用いられれば十分だからである。
【0016】
現在の車速が閾値車速未満に減少すると、空調制御装置のエラーの格納が再び実行される。
【0017】
さらなる処理のために空調制御装置に供給される前に、個々のパラメータを適宜検出することができるように、本発明による空調装置は、空調制御装置に接続され且つ自動車のウィンドウ及び/又はスライディングルーフ、又は格納式ルーフの位置を検出する少なくとも一つのセンサを有する。
【0018】
さらに、空調制御装置に接続され且つ車内を占める圧力を連続的に検出する他のセンサシステムが、任意に設けられる。圧力センサが使用されていないときは、作動は、制御装置の中に配置され且つ車両テストで経験的に規定されている車速制限値に基づいて行われる。
【0019】
さらに、現在の車速を空調制御装置に伝達する他のセンサシステムがまた、設けられている。
【0020】
車体の開口と閾値車速の間の個々の依存関係は、空調制御装置における簡単なプログラミングによって実現されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を、添付図面に示される例示的な実施の形態を参照して、さらに詳細に説明する。
【0022】
図1は、空調装置を概略的に示すことを目的とするブロック回路図を示す。
【0023】
空調装置は、内部メモリ2を有する空調制御装置1を備える。空調制御装置1は、対応する空気排出速度で且つ所定の空気量の供給の下で自動車の車内に対応する空調空気を供給するファン3を作動させる。
【0024】
空調制御装置1は、現在の車速を刻々と記録するセンサシステム4に接続されている。
【0025】
さらに、空調制御装置1は、各場合において自動車の車内を占める圧力を連続的に検出するセンサ5に任意に接続されることができる。
【0026】
本発明によれば、例えば、ウィンドウ、スライディング若しくは可傾式ルーフ、又はオープンカーの格納式ルーフのような異なる車両の開口の位置を検出する少なくとも一つのさらなるセンサシステム6が設けられる。
【0027】
図2は、本発明による方法のステップのフロー図である。
【0028】
センサ5が設けられたときにのみ実行される最初の選択的ステップ7において、自動車の車内を占める圧力が検出される。この車内の圧力がファン3の吸入側を占める動圧より実質的に低いとき、同様の任意のステップ8において危険作動状態が空調制御装置1によって認識される。
【0029】
ステップ9において(それに続いて)、センサシステム4及び/又は6によって、それぞれ、異なる車両の開口の個々の位置が検出され、その時点の車速が決定される。次のステップ10において、これらのパラメータに基づいて、閾値車速が空調制御装置1で決定される。最も簡単な場合に、この閾値速度は、起こり得るすべての場合にわたり一律の定数である。このため、制御装置には、車両試験において経験的に決定された速度制限値が設定されている。
【0030】
ステップ11の続いての評価において、空調制御装置1は、ステップ9で規定された現在の車速がステップ10において規定された閾値車速よりも大きいか否かを決定する。
【0031】
その場合は、ステップ12において、この危険作動状態で空調制御装置1によって発生したであろうエラーメッセージが阻止され、従って、前記エラーメッセージが、メモリ2に蓄積されない。
【0032】
続くステップ13において、速度が再び閾値速度より下がったとき、空調制御装置1は、ファンを操作し、その電源を所定時間切り、そしてすぐに再びその電源を入れる。そのため、車両のユーザはこれに気付くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による空調装置を示すブロック回路図である。
【図2】本発明による方法のステップのフロー図である。
【符号の説明】
【0034】
1 空調制御装置
2 空調制御装置のメモリ
3 ファン
4 現在の車速用のセンサ
5 車内の圧力用の任意のセンサ
6 車両の開口の位置用のセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御装置(1)が、所定の空気排出速度で車内に空気が導入されるようにファン(3)を作動させ、前記空調制御装置(1)は、前記ファン(3)が何かの事情で停止したときに、エラーメッセージを格納する、自動車の車内における空気の流れを制御する方法において、
閾値車速を超えているときは、前記空調制御装置(1)へのエラーメッセージの格納が阻止されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記空調制御装置(1)は、所定の閾値車速を下回ったとき、前記ファン(3)の電源を一時的に切ると共に、直ちに前記ファンの電源を再び入れる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閾値車速は、前記自動車の少なくとも一つのウィンドウ、及び/又はスライディングルーフ若しくは可傾式ルーフの位置に応じて決定される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値車速は、前記自動車の格納式ルーフの位置に応じて決定される請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
車内に空気を所定の空気排出速度で導入するとともに、空調制御装置(1)によって作動されるファン(3)を備える自動車の車内の空調装置において、
少なくとも一つのセンサシステム(6)が前記空調制御装置(1)に接続されており、前記センサシステムは、前記自動車のウィンドウ、及び/又はスライディング若しくは可傾式ルーフ、又は格納式ルーフの位置を検出することを特徴とする空調装置。
【請求項6】
前記空調制御装置(1)には、さらなるセンサシステム(4)が接続され、前記センサシステムは、現在の車速を検出する請求項5に記載の空調装置。
【請求項7】
前記空調制御装置(1)には、また、さらなるセンサシステム(5)が接続され、前記センサシステムは、前記車内を占める圧力を検出する請求項5または6に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−529887(P2008−529887A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555480(P2007−555480)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000706
【国際公開番号】WO2006/087081
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】