自動車サイドシル
【課題】サイドシルの重量増加につながらず、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備した自動車サイドシルを提供することを目的とする。
【解決手段】断面形状がアウタパネル2の断面形状に近似するレインフォース5aを、アウタパネル2側の内部で、かつBピラー4との接合部を中心に車体前後方向に亙って延在させて設けた自動車サイドシル1aであって、レインフォース5aは、アウタパネル2側に略縦向きに配置された前面フランジ6、7と、この前面フランジ6、7の両端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された二つの上下ウエブ8、9とを有しており、前面フランジは、略縦向きに配置されて下ウエブ9と交わる下方側の縦壁6と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって上ウエブ8と交わる上方側の傾斜壁7とを有していることである。
【解決手段】断面形状がアウタパネル2の断面形状に近似するレインフォース5aを、アウタパネル2側の内部で、かつBピラー4との接合部を中心に車体前後方向に亙って延在させて設けた自動車サイドシル1aであって、レインフォース5aは、アウタパネル2側に略縦向きに配置された前面フランジ6、7と、この前面フランジ6、7の両端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された二つの上下ウエブ8、9とを有しており、前面フランジは、略縦向きに配置されて下ウエブ9と交わる下方側の縦壁6と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって上ウエブ8と交わる上方側の傾斜壁7とを有していることである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突性とオフセット前面衝突性とに優れ、特にBピラーへの側面衝突性に優れた自動車サイドシルに関するものである。本発明は、鋼製サイドシルを基本とするが、必要により、サイドシルを構成するレインフォース、アウタ乃至インナなどのパネル部材をアルミニウム合金などに置き換えても良い。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体側面側に設置される、周知の、サイドシル(ロッカーとも言う)、ピラー、ドアなどのパネル構造体には、基本的な特性である剛性や強度とともに、近年、より基準が厳しくなった側面衝突とオフセット前面衝突に対する、耐変形性や耐座屈性が求められるようになっている。
【0003】
図5に、従来の自動車サイドシルのBピラーとの接合部における車体幅方向の断面(Bピラー4と接合した長手方向中央部の断面)を例示する。図5において、図の左側からの矢印は、他の自動車の側面からの衝突(側突)の衝突荷重の負荷方向を示しており、図の右側が自動車の車体の内部側である(以下の断面図においては共通)。これらサイドシル1などの比較的大型のパネル構造体は、基本的に、鋼板をプレス成形されたアウタパネル2(車体の外部側パネル)とインナパネル3(車体の内部側パネル)とを互いに接合した、中空構造乃至袋構造により構成される。
【0004】
図5では、車体の前後方向に延在するサイドシル1が、車体の縦(上下)前後方向に延在するBピラー4と接合された状態を示している。即ち、Bピラーのアウタパネル4aは、サイドシル1のアウタパネル2の外側と接合されている。また、Bピラーのインナパネル4bは、サイドシル1のアウタパネル2とインナパネル3との縦方向の周縁部(フランジ部)に挟まれて、サイドシル1の略中央部において接合されている。
【0005】
ここで、従来の側面衝突基準では、下部車体構造のサイドシル1に対して直接荷重が付加(負荷)される、点線の矢印位置(車高が比較的低い位置)での側面衝突に対する座屈強度が問題となっていた。
【0006】
これに対して、より厳しくなった新側面衝突基準では、近年のRV車などの車高が高くなった自動車の増加に伴い、この自動車の側面衝突に対応するものとなっている。このため、新側面衝突基準における側面衝突位置は、従来の前記点線の矢印位置(下部車体構造位置)から、車高がより高い、実線で示す矢印位置に代わっている。
【0007】
この実線で示す矢印位置では、側面衝突位置が、サイドシル1上部のBピラー4側となって、サイドシル1自体は側面衝突位置から外れる。しかし、サイドシル1に対しては、新側面衝突位置によるBピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、矢印aで示す、上方から下方への斜めの荷重である、サイドシル1を時計回りに回転させる(左側からの側面衝突の場合には)、ねじりによる圧壊荷重が新たに負荷される。
【0008】
また、同時に、サイドシル1とBピラーとの接合部では、このBピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、矢印bで示す、下方から上方への応力が新たに負荷される。これら圧壊荷重の負荷によって、サイドシルのアウタパネル2の上部屈曲部(角部)では圧縮力が作用し、下部屈曲部(角部)では逆に引張力が作用するという、新たなねじれ曲げ圧壊モードとして作用して、サイドシル1をその断面方向に圧壊させる。
【0009】
したがって、このような側面衝突(側面衝突基準)に対して車室内の乗員を保護するために、サイドシルには、上記新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、圧壊や座屈あるいは変形の抑制のための強度確保という耐側面衝突性が求められている。
【0010】
一方、サイドシルには、このような耐側面衝突性だけではなく、耐オフセット衝突性も求められる。従来からの車体の正面衝突 (バリア衝突、フルラップ前面衝突) に対して、オフセット衝突では、対向車 (またはオフセットバリヤ) が被衝突車の端部寄りに衝突する。例えば、米国保険機構(Insurance Institute for Highway Safety)が行っているオフセット衝突での性能評価試験では、車幅の40% がオフセットバリヤと重なって衝突するように規定している。
【0011】
このため、オフセット衝突時においては、車体の衝突変形は、車体乃至車体部材の片側に偏して生じることになる。この場合の衝突条件としては、衝突変形が車体乃至車体部材の中央部に生じる正面衝突の場合に比して、著しく厳しい条件となる。これらは、サイドシル1に対する、車の前輪側からの新たなねじれた軸圧壊モードとして作用して、サイドシル1をその軸方向に圧壊させる。
【0012】
したがって、このような新たなオフセット衝突(オフセット衝突基準)に対して車室内の乗員を保護するために、サイドシルには、上記新たなねじれた軸圧壊モードに対する、圧壊や座屈の抑制のための最大荷重の確保という耐オフセット衝突性が求められている。
【0013】
しかも、これら耐側面衝突性と耐オフセット衝突性との兼備が求められるサイドシルには、更に、このような課題を、サイドシル乃至車体の重量増加にならずに解決する必要がある。これは、近年の、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されていることによる。この自動車の車体軽量化指向に伴い、これらサイドシルなどの成形パネルの板厚は、アウタパネルやインナパネルとも、著しく薄肉化されている。
【0014】
一方、サイドシルの耐側面衝突対策としては、従来から、前記図5で示したように、サイドシル1のアウタパネル2の内部側に、アウタパネル2の断面形状に近似した、略コの字状の鋼製パネルからなるレインフォース(補強部材)30などを設置して補強することが一般的である。
【0015】
また、成形パネルにより構成されたセンターピラー、ドア、サイドシルなどの鋼製パネル構造体内部に、側面衝突方向に向かって中空形材の一部が張り出す湾曲形状をした、補強用中空形材(アルミニウム合金など)を別途延在させることも提案されている (特許文献1参照) 。
【0016】
更に、センターピラーなどのパネル構造体内部に、別途、荷重伝達部を設けて、衝突時の荷重を吸収させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004-51065号公報 (全文)
【特許文献2】特開2003-2234 号公報 (全文)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、これら従来のようなサイドシルの耐側面衝突性を向上させる手段では、前記した新たな側面衝突(側面衝突基準)の課題に対して、これを解決できない。また、サイドシルの前記した新たな耐オフセット衝突性の課題に対しても、これを解決できない。即ち、従来のようなサイドシルでは、前記した新たな側面衝突やオフセット衝突の課題に対して、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備できない。
【0018】
また、これら従来のようなサイドシルの耐側面衝突性を向上させる手段では、サイドシルの重量増加につながり、かつサイドシルの構造自体の設計に影響を与えることが多い。即ち、従来技術では、サイドシルの重量増加につながらず、かつサイドシルの構造自体の設計に影響を与えずに、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備させることも困難であった。
【0019】
したがって、本発明の目的は、サイドシルの重量増加につながらず、かつサイドシルの構造自体の設計に影響を与えずに、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備した、自動車サイドシルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するために、本発明自動車サイドシルの要旨は、断面形状がアウタパネルの断面形状に近似するレインフォースを、アウタパネル側の内部で、かつBピラーとの接合部を中心に車体前後方向に亙って延在させて設けた自動車サイドシルであって、前記レインフォースは、前記アウタパネル側に略縦向きに配置された前面フランジと、この前面フランジの両端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された二つの上下ウエブとを有しており、前記前面フランジは、略縦向きに配置されて前記下ウエブと交わる下方側の縦壁と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって前記上ウエブと交わる上方側の傾斜壁とを有していることである。
【0021】
本発明自動車サイドシルの好ましい態様としては、前記レインフォースが、車体幅方向内側に、略縦向きに配置された後面フランジを更に有して、略矩形の閉断面形状を有していることである。また、前記レインフォースが590MPa以上の高張力鋼板からなることである。
【0022】
更に、本発明自動車サイドシルの好ましい適用態様としては、前記サイドシルがBピラーと接合されており、前記サイドシルが、このBピラーへの側面衝突およびオフセット前面衝突に対応する仕様であることである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記要旨のように、自動車サイドシルに設けたレインフォースにおける前面フランジを、略縦向きに配置された下方側の縦壁と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がる上方側の傾斜壁とで構成することを特徴とする。
【0024】
上記レインフォースの前面フランジにおける上方側の傾斜壁によって、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、突っ張り効果を発揮することができ、サイドシルの上面角部(コーナー部)の潰れを防止できる。
【0025】
また、上記前面フランジにおける下方側の縦壁によって、レインフォースにおける上記下ウエブとともに、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、サイドシルの側面下側から下面にかけての強度を確保できる。
【0026】
したがって、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対して、圧壊や座屈あるいは変形の抑制のための強度確保という、サイドシルの耐側面衝突性を向上できる。
【0027】
また、上記レインフォースの前面フランジにおける上方側の傾斜壁によって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対して、稜線を増加、あるいは屈曲部乃至角部(コーナー部)の数を増加でき、最大荷重を高めることができる。したがって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対する、圧壊や座屈の抑制のための最大荷重の確保という、サイドシルの耐オフセット衝突性を向上できる。
【0028】
しかも、これらレインフォースにおける前面フランジの構成は、従来のレインフォースに比して、新たな部材を付加することなく、その前面フランジの形状を変更するだけである。このため、レインフォースを設けた従来のサイドシルに比して、さほど重量増加につながらず、また、サイドシルの構造自体の設計に影響を与えることが無い。その上で、サイドシルに耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の実施態様について、図面を用いて具体的に説明する。図1は本発明サイドシルの(Bピラー4と接合した長手方向中央部の)縦断面図、図2は図1のサイドシルの斜視図を各々示す。
【0030】
(サイドシル構造)
図1、2において、本発明サイドシル1aは、前提として、前記図5で示した従来のサイドシル1と同様に、アウタパネル2とインナパネル3とからなる中空パネル構造体である。より具体的には、図1、2において、サイドシル1aは、車室外側(車体幅方向外側)に配置されたアウタパネル2と、車室内側(車体幅方向内側)に配置されたインナパネル3から構成される。そして、これら互いに接合されたアウタパネル2とインナパネル3とによって形成される、中空構造(袋構造あるいは閉断面構造)を有している。
【0031】
サイドシル1aは、同じく、前提として、前記図5で示した従来のサイドシル1と同様に、車体下部側面側に、車体前後方向に亙って設置される。そして、サイドシル1aの長手方向(車体前後方向)の断面形状は、他のパネル構造体や他の部材との接合のための部分を除いては、略同じである。
【0032】
アウタパネル2とインナパネル3とは、各々車体設計上の任意の形状に、鋼板などが予めプレス成形されている。これによって、アウタパネル2は、車体外側に向かう平坦な頂部(縦壁)2a、この頂部2aを囲む周縁の平坦な壁部(横壁)2b、2c、壁部2b、2cから周囲に張り出した平坦なフランジ(縦フランジ)2d、2eからなる。また、インナパネル3も、車体内側に向かう平坦な頂部(縦壁)3a、この頂部3aを囲む周縁の平坦な壁部(横壁)3b、3c、壁部3b、3cから周囲に張り出した平坦なフランジ(縦フランジ)3d、3eからなる。なお、この図1、2の態様は、後述する図3、4あるいは図5の態様を含めて、実際のサイドシルの断面形状に対して簡略化して表現している。
【0033】
図1においては、前記した図5と同様に、サイドシル1aが、車体の縦(上下)前後方向に延在するBピラー4と接合された状態を示している。即ち、Bピラーのアウタパネル4aは、サイドシル1aのアウタパネル2の頂部2a外側と接合されている。また、Bピラーのインナパネル4bは、サイドシル1aのアウタパネル2とインナパネル3とのフランジ、2d、2eと3d、3eに各々挟まれて、サイドシル1aの略中央部において接合されている。この結果、図1サイドシル1aのBピラー4との接合部分では、車室外側と車室内側とに、2分割された中空部20、21を有する。
【0034】
サイドシル1aのアウタパネル2とインナパネル3同士の接合、あるいはこれらとBピラー4のアウタパネル4a、インナパネル4bとの接合は公知の溶接手段およびフランジなどの公知の部位において行なわれる。
【0035】
図1、2と、後述する図3、4においては、前記図5と同様に、側面衝突方向として、図の左側からの矢印によって、新側面衝突基準における衝突位置がより高いBピラー位置での負荷方向を示している。
【0036】
なお、サイドシルのアウタパネル2とインナパネル3とは、高張力鋼板や普通鋼板(通常は、これらのGAなどの亜鉛めっき鋼板)、アルミニウム合金板などをプレス成形したものである。この点、各パネル板厚を薄くして、サイドシルを軽量化するためには、アウタパネル2やインナパネル3として、440MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板を用いることが好ましい。
【0037】
(レインフォース)
以上のような構成からなる本発明サイドシル1aは、図1、2において、レインフォース5aを、アウタパネル2側の中空構造内部に、Bピラーとの接合部を中心に、車体前後方向に亙って延在させて設けている。このレインフォース5aは、図5の従来のレインフォース30と同様に、スポット溶接などにより、アウタパネル2と対応する辺が、各々アウタパネル2側と接合される。
【0038】
このレインフォース5aは、アウタパネル2側に略縦向きに配置された前面フランジ6、7と、この前面フランジ6、7の各端部(前面フランジの両端部)と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された、上側と下側との二つのウエブ8、9とを有している。
【0039】
レインフォース5aにおける前面フランジは、略縦向きに配置された下方側の縦壁6と、この縦壁6から屈曲部10を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がる上方側の傾斜壁7とを有している点が特徴的である。即ち、前面フランジは、略縦向きに配置されて下ウエブ9と交わる下方側の縦壁6と、この縦壁6から屈曲部10を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって上ウエブ8と交わる上方側の傾斜壁7とを有している。
【0040】
これらレインフォース5aの形成する断面形状は、アウタパネル2の断面形状に近似している。そして、レインフォース5aの長手方向(車体前後方向)の断面形状は、他のパネル構造体や他の部材との接合のための部分を除いては、略同じである。
【0041】
レインフォース5aの前面フランジにおける上方側の傾斜壁7によって、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、突っ張り効果を発揮することができる。このため、サイドシル1aのアウタパネル2における頂部2aと壁部2bとで形成する上面角部(コーナー部)の潰れを防止できる。
【0042】
また、前面フランジにおける下方側の縦壁6によって、レインフォース5aにおける下ウエブ9とともに、アウタパネル2における頂部2aの下部と壁部2cとで形成される、サイドシル1aの側面下側から下面にかけて、縦壁6の板厚効果によって補強する。このため、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、サイドシル1aの側面下側から下面にかけての強度を確保でき、断面変形を抑制することができる。
【0043】
更に、レインフォース5aの前面フランジにおける上方側の傾斜壁7によって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対して、レインフォース5aの稜線を増加、あるいは屈曲部(角部、コーナー部)の数を増加できる。このため、レインフォース5a負荷される応力分布を均一にでき、最大荷重を高め、断面変形を抑制することができる。
【0044】
より具体的には、図1に示すレインフォース5aの屈曲部は、上方側の傾斜壁7と下方側の縦壁6との交点である10、上方側の傾斜壁7と上ウエブ8との交点12、下方側の縦壁6と下ウエブ9との交点13の3点(3個)になっている。このため、前記図5に示した断面コの字状のレインフォース30の屈曲部(角部)が2点(2個)であるのに比して、レインフォースの屈曲部および稜線の数を増加させることができる。
【0045】
オフセット衝突におけるレインフォース5aの軸方向(車体前後方向)の荷重負荷に対しては、この屈曲部の数および稜線の数によって、最大荷重が定まり、これらの数が多いほど、最大荷重が向上する。したがって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対する、圧壊や座屈の抑制のための最大荷重の確保という、サイドシルの耐オフセット衝突性を向上できる。
【0046】
(その他の実施態様)
次ぎに、図3、4を用いて、本発明のその他の実施態様について説明する。図3は本発明サイドシルの(Bピラー4と接合した長手方向中央部の)縦断面図、図4は図3のサイドシルの斜視図を各々示す。なお、図4においては、Bピラー4を除いて、サイドシル1aのみを図示している。
【0047】
図3、4において、本発明サイドシル1bの基本的な構成は、前記した図1、2の場合と同じである。また、レインフォース5を、アウタパネル2側の中空構造内部に、車体前後方向に亙って延在させて設けている点も、前記した図1、2の場合と同じである。
【0048】
(レインフォース)
図3、4のレインフォース5bは、アウタパネル2側に略縦向きに配置された前面フランジ6、7と、この前面フランジ6、7の各端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された、上側と下側との二つのウエブ8、9とを有している点は、前記した図1、2の場合と同じである。また、これらレインフォース5bの形成する断面形状は、アウタパネル2の断面形状に近似しており、長手方向の断面形状が、他のパネル構造体や他の部材との接合のための部分を除いて、略同じである点も、前記した図1、2の場合と同じである。更に、レインフォース5bにおける前面フランジは、略縦向きに配置された下方側の縦壁6と、この縦壁6から屈曲部10を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がる上方側の傾斜壁7とを有している特徴点も、前記した図1、2の場合と同じである。
【0049】
図3、4のレインフォース5bが、図1、2のレインフォース5aと異なる点は、前面フランジ6、7に対して、後面側(車体内側)に、縦壁であるフランジ11を設けた点である。この後面フランジ11は、上側と下側との二つのウエブ8、9の各車体内側端部と略直交しており、これによって、レインフォース5bは略矩形閉断面を有する。
【0050】
この後面フランジ11の存在によって、前記図1、2の場合の耐側面衝突性向上効果に加えて、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、上側と下側との二つのウエブ8、9の潰れ防止効果(断面補強高効果:突っ張り効果)を得ることができる。
【0051】
また、後面フランジ11の存在によって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対して、レインフォース5bの稜線を増加、あるいは屈曲部の数を、屈曲部14、15と2個増加でき、最大荷重を高めることができる。ただ、後面フランジ11の存在分だけ、図1、2のレインフォースよりも重量が増加するため、上記耐側面衝突性や耐オフセット衝突製の向上効果との兼ね合いで、採用を選択する。
【0052】
後面フランジ11の角度は、図3、4の態様では、車体幅方向(図の左右方向)に傾斜させて設けている。これは、前面フランジが上方側の傾斜壁7を有しているため、二つのウエブ8、9の両後端の位置が互いに車体幅方向(図の左右方向)にずれて傾斜しているためである。このように、後面フランジ11の角度は、前面フランジの上方側の傾斜壁7や、その両端が各々交わる上側と下側との二つのウエブ8、9の設計長さとの関係で決まる。このため、後面フランジ11の傾斜角度はフレキシブルであり、略垂直とすることもできる。
【0053】
なお、レインフォース5bは略矩形閉断面を有しているため、アウタパネル2ととの接合は、図1、2の場合のようなスポット溶接は、電極が配置しずらく、施工しにくい。このため、レーザー溶接などの手段により、アウタパネル2と対応する辺を、各々アウタパネル2側と接合する。
【0054】
(サイドシルの変形特性:断面方向)
図6に、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードにおける、本発明サイドシルの断面変形特性の解析結果を示す。図6は側面衝突寸前の変位0mmから、側面衝突後の変位300mmまでの、図1、2に示した本発明サイドシルの断面変形状態の変化を順次表したものである。比較のために、前記図5に示した従来のサイドシルの断面変形状態の同様の変化を図7に示す。
【0055】
図6、7の60mm変位時の図に各々示す通り、側面衝突位置が前記したサイドシル上部のBピラー側では、サイドシル1aに対して、Bピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、矢印aで示す、上方から下方への斜めの荷重である、サイドシル1aを、左側からの側面衝突の場合には時計回りに回転させる、ねじりによる圧壊荷重が新たに負荷される。
【0056】
この矢印aで示す、前記上方から下方への斜めのねじりによる圧壊荷重の負荷によって、図7の従来のサイドシルでは、そのアウタパネル2の上部において、前面上側の屈曲部(角部)12では、圧縮力が作用して、急速に角度が狭まり、上側の壁部2bと前面の頂部2aとの変形が大きくなっている。これは、レインフォース30における前面フランジ6や上側ウエブ8でも同様である。
【0057】
また、この荷重の負荷は、同時に、サイドシルのアウタパネル2の下部においては、角部13を押し広げる引張力cとなって働く。即ち、図7の従来のサイドシルでは、前面下側の屈曲部(角部)13の角度が急速に拡がり、下側の壁部2cと前面の頂部2aとの変形が大きくなる。これは、レインフォース30における前面フランジ6や下側ウエブ9でも同様である。
【0058】
更に、Bピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、後述する図8〜10で示す、矢印bの下方から上方への応力が新たに負荷される。
【0059】
これらの同時負荷による、サイドシル1に対する、新たなねじれ曲げ圧壊モードによって、図7の従来のサイドシルでは、インナパネルも含めて、その断面方向に大きく圧壊していることが分かる。
【0060】
これに比して、図6の本発明サイドシル1aの断面方向の圧壊は、特に、サイドシル1aの前面のアウタパネル2側において抑制されていることが分かる。これによって、本発明サイドシルの断面方向の耐側面衝突性が裏付けられる。
【0061】
なお、図6、7の解析は、発明例図1、2および比較例図5の、各サイドシル1a、1b、1への側面衝突を模擬した落錘衝突時に、サイドシルが、矢印a、bで示した、車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定した。そして、上記レインフォースを含めたサイドシル構造を、部材の各断面形状データからメッシュ化し、有限要素法解析用シェルモデル(FEMモデル)を形成した。このモデル化の際に、各サイドシル端部にねじり+曲げモードが再現できる拘束条件を与え、ピラー4上端面には、図5での矢印aで示す方向に速度を与えた。また、レインフォースを含めたサイドシルの材料特性を与えた。
【0062】
(サイドシルの変形特性:長手方向)
図8、9に、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードにおける、前記図1、2に示した本発明サイドシル1a、1bの長手方向を含めた全体の変形特性の解析結果を斜視図で示す。図8、9は、側面衝突寸前の変位0mmから、側面衝突後の変位300mmまでの、図1、2に示した本発明サイドシルの変形状態の変化を順次表したものである。比較のために、前記図5に示した従来のサイドシル1の長手方向を含めた全体の変形状態の同様の変化を図10に斜視図で示す。
【0063】
図8、9の140mm経過時の図に各々示す通り、側面衝突位置が前記したサイドシル上部のBピラー側では、サイドシル1a、1bに対して、Bピラーの車内側への倒れ変形に伴い、Bピラーとの接合部では、更に、前記した矢印bの下方から上方への応力が新たに負荷される。この応力によって、サイドシル1a、1bには、Bピラーとの接合部に向かう、長手方向左右からの圧縮応力dが負荷される。
【0064】
これと前記したa〜cまでの荷重負荷の複合作用(前記側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モード)による応力集中が、図8、9の各経時変化図における斜線部で示す通り、サイドシル1a、1bのBピラーとの接合部になされている。これは、図10の従来のサイドシル1でも同様である。
【0065】
但し、その応力集中の程度は、図8、9の本発明サイドシル1a、1bでは、図10の従来のサイドシル1に比して、広範囲に分散されており、変形してはいるが、局部的な座屈は抑制できていることが分かる。これに対して、図10の従来のサイドシル1では、変形量が大きく、局部的に座屈していることが分かる。これによって、本発明サイドシルの長手方向の耐側面衝突性が裏付けられる。
【0066】
(レインフォースの変形特性:長手方向)
図11、12、13に、前記図8、9、10の解析結果におけるレインフォースのみの変形状態の変化を斜視図で示す。図11、12、13も、前記図8、9、10と同様に、側面衝突寸前の変位0mmから、側面衝突後の変位300mmまでの、サイドシルの長手方向を含めた全体の変形状態の変化を順次表したものである。
【0067】
前記した図8、9、10のサイドシル全体の解析結果と同様に、前記したa〜eまでの荷重負荷の複合作用(前記側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モード)による応力集中を、各経時変化図における斜線部で示す。
【0068】
図11、12の本発明レインフォース5a、5bでは、前記した図8、9、10のサイドシル全体の解析結果と同様に、図13の従来のレインフォース30に比して、広範囲に分散されており、変形してはいるが、局部的な座屈は抑制できていることが分かる。これに対して、図10の従来のレインフォース30では、変形量が大きく、局部的に座屈していることが分かる。これによって、本発明に係るレインフォース構造のサイドシルの耐側面衝突性向上に対する寄与が裏付けられる。
【0069】
(レインフォースの設計条件)
レインフォース5は、前記した通り、サイドシル1(サイドシル1a、1bとも共通してサイドシル1と言う)のアウタパネル2側の内部に、Bピラー4との接合部を中心に、車体前後方向に亙って延在させる。この場合の、本発明サイドシルにおけるレインフォース5の好ましい設計条件について、以下に、具体的に説明する。
【0070】
(レインフォースの材質)
前記図1〜4において、本発明サイドシルにおけるレインフォース5aの材質は、後述するレインフォース5bともに(以下、共通して、単にレインフォース5と言う)高張力鋼板を使用したものである。これに対して、普通鋼板(通常は、これらのGAなどの亜鉛めっき鋼板)、アルミニウム合金板などをプレス成形、あるいはアルミニウム合金押出形材を使用しても良いが、高張力鋼板に比べれば、板厚を厚くする必要があり、軽量化効果が出ない可能性がある。この点、レインフォース5の板厚を薄くして、サイドシルを軽量化するためには、レインフォース5に590MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板を用いることが好ましい。
【0071】
(レインフォースの大きさ、形状、長さ)
レインフォース5の全体的な大きさ、形状は、接合するアウタパネル2の断面(内部)形状によって規定される。また、レインフォース5の長さは、必ずしも、サイドシル1の車体前後方向の長さ全般に亙る必要は無い(サイドシルの車体前後方向の長さと同じくする必要は無い)。より具体的に、前記した側面衝突に対しては、レインフォース5の長さは、Bピラーとの接合部を、その長さの略中心として、後述する図8〜13に示す、新たなねじれ曲げ圧壊モードの負荷応力の及ぶ範囲に対して、十分な長さだけ設ければ良い。但し、前記したオフセット衝突に対しては、レインフォース5の長さは長いほど好ましく、サイドシル1の車体前後方向の長さ全般に亙ることが好ましい。ただ、レインフォース5の長さが長いほど重量が増加する。この点、側面衝突とオフセット衝突との両方の衝突に対するとともに、重量増加を抑制するための目安としては、レインフォース5長手方向のBピラーとの接合範囲の長さLに対してL〜5Lの範囲だけ設ければ良い。
【0072】
レインフォース5の長さが1/3L未満では、負荷応力の及ぶ範囲に対して短かすぎて、本発明構成となっていても、レインフォースの役割を果たせない可能性がある。レインフォース5の長さが2/3Lを越えた場合には、側面衝突に対する補強効果の増加の割りには、重量増加の割合の方が著しくなる。
【0073】
レインフォース5の板厚は、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、サイドシル1の前記アウタパネル2の板厚tとの関係で決定される。この点、0.5t〜2.3tの範囲とすることが好ましい。レインフォース5の板厚が0.5t未満では、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、補強効果が小さくなり過ぎ、重量を増加してまで、レインフォース5を設ける意味が無くなる。一方、レインフォース5の板厚が2.3tを越えた場合、レインフォース5による重量増加が著しくなり過ぎる。
【0074】
なお、レインフォース5を構成する前面フランジ6、7と、二つの上下ウエブ8、9、あるいは前面フランジにおける下方側の縦壁6と、上方側の傾斜壁7とは、各々必ずしも同じ板厚とせずとも、差を設けても良い。即ち、レインフォース5の側面衝突に対する前面側である前面フランジ6、7を、ウエブ8、9よりも厚肉とする、前面フランジにおける下方側の縦壁6を、上方側の傾斜壁7よりも厚肉としても良い。
【0075】
レインフォース5の前面フランジにおける下方側の縦壁6と、上方側の傾斜壁7との設計も、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、サイドシル1の前記アウタパネル2の板厚tとの関係で決定される。この点、前面フランジの板厚が0.5t〜2.3tの範囲の場合には、図1に示す、前面フランジの高さ(車体上下方向の長さ、図1で言う上下方向の長さ)Hに対する下方側の縦壁6の高さH1を、1/3〜2/3Hの範囲とすることが好ましい。
【0076】
このH1が1/3H未満では、側面衝突の場合における、前記図6の矢印aの荷重負荷に伴う矢印bやcの応力、あるいは前記図8、9の矢印dの応力に対して、アウタパネル2の下部(屈曲部、角部13)に対する補強効果が小さくなる可能性がある。
【0077】
一方、H1が2/3Hを越えた場合、上方側の傾斜壁7の長さが不足し、前記図6の矢印aの荷重負荷や矢印bの応力に対するアウタパネル2の上部(屈曲部、角部12)に対する、突っ張り補強効果が小さくなる可能性がある。
【0078】
上方側の傾斜壁7の傾斜設計も、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、サイドシル1の前記アウタパネル2の板厚tとの関係で決定される。この点、前面フランジの板厚が0.5t〜2.3tの範囲の場合には、図1に示す、レインフォース5の幅(車体幅方向の長さ、図1で言う左右方向の長さであって、ウエブ9の長さ)Wに対する、傾斜壁7の幅W1(傾斜壁7の車体幅方向で水平方向の長さ、図1で言う左右方向の長さ)を、1/4W〜Wの範囲とすることが好ましい。
【0079】
このW1が1/4W未満では、従来の傾斜していない縦壁(図5の前面フランジ2a)と同じとなり、側面衝突の場合における、前記図6の矢印aの荷重負荷や矢印bの応力に対するアウタパネル2の上部(屈曲部、角部12)に対する突っ張り補強効果が小さくなる可能性がある。
【0080】
一方、W1がWを越えた場合、側面衝突の場合における、前記図6の矢印aの荷重負荷や矢印bの応力に対する効果発揮が遅れ、この時間的な遅れが、却って、上記突っ張り補強効果を小さくする可能性がある。
【0081】
(サイドシルの衝突モード)
サイドシルの衝突モードとして、前記図8、9、10のサイドシル全体の解析結果から、耐側面衝突モードにおける、本発明サイドシル例と比較サイドシル例との重量差(但し、図5の形状で表1の比較例6との重量差)と最大荷重との関係を図14に示す。また、耐オフセット衝突モードにおける、重量差(但し、図5の形状で表1の比較例6との重量差)と最大荷重との関係を図15に示す。
【0082】
前提となる、これら本発明サイドシル例と比較サイドシル例との設計条件を表1に示す。レインフォースの各部の板厚は全て同じとした。
【0083】
【表1】
【0084】
図14、15から分かる通り、発明例1〜5は、比較例6に比して、重量が重くならずに、側面衝突における最大荷重と、オフセット衝突における最大荷重とが高い。したがって、サイドシルの重量増加につながらず、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備したサイドシルであることが分かる。
【0085】
これに対して、ハイテン化および板厚減による軽量化した比較例7は、比較例6に比して、重量は軽くなっているものの、側面衝突における最大荷重があまり高くならない。また、アウタパネルの板厚をより厚くした比較例8は、側面衝突やオフセット衝突における最大荷重の増加の割りには、重量が重くなり過ぎている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、サイドシルの重量増加につながらず、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備したサイドシルを提供できる。このため、自動車サイドシルに適用されて、自動車(車体)の軽量化と、乗員保護などの安全性の向上との両立に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明サイドシルの一態様を示す断面図である。
【図2】図1のサイドシルの斜視図である。
【図3】本発明サイドシルの別の態様を示す断面図である。
【図4】図3のサイドシルの斜視図である。
【図5】従来のサイドシルの態様を示す断面図である。
【図6】図1の本発明サイドシルの断面変形を経時的に示す断面図である。
【図7】図5の従来のサイドシルの断面変形を経時的に示す断面図である。
【図8】図1の本発明サイドシル全体の変形を経時的に示す斜視図である。
【図9】図3の本発明サイドシル全体の変形を経時的に示す斜視図である。
【図10】図5の従来のサイドシル全体の変形を経時的に示す斜視図である。
【図11】図1のレインフォース全体の断面変形を経時的に示す斜視図である。
【図12】図3のレインフォース全体の断面変形を経時的に示す斜視図である。
【図13】図5のレインフォース全体の断面変形を経時的に示す斜視図である。
【図14】種々のサイドシルの耐側面衝突モードを示す説明図である。
【図15】種々のサイドシルの耐オフセット衝突モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1:サイドシル、2:アウタパネル、3:インナパネル、4:Bピラー、
5:レインフォース、6:縦壁、7:傾斜壁、8 、9:ウエブ、10、12、13: 角部、
11: 後面フランジ、30: レインフォース、
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突性とオフセット前面衝突性とに優れ、特にBピラーへの側面衝突性に優れた自動車サイドシルに関するものである。本発明は、鋼製サイドシルを基本とするが、必要により、サイドシルを構成するレインフォース、アウタ乃至インナなどのパネル部材をアルミニウム合金などに置き換えても良い。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体側面側に設置される、周知の、サイドシル(ロッカーとも言う)、ピラー、ドアなどのパネル構造体には、基本的な特性である剛性や強度とともに、近年、より基準が厳しくなった側面衝突とオフセット前面衝突に対する、耐変形性や耐座屈性が求められるようになっている。
【0003】
図5に、従来の自動車サイドシルのBピラーとの接合部における車体幅方向の断面(Bピラー4と接合した長手方向中央部の断面)を例示する。図5において、図の左側からの矢印は、他の自動車の側面からの衝突(側突)の衝突荷重の負荷方向を示しており、図の右側が自動車の車体の内部側である(以下の断面図においては共通)。これらサイドシル1などの比較的大型のパネル構造体は、基本的に、鋼板をプレス成形されたアウタパネル2(車体の外部側パネル)とインナパネル3(車体の内部側パネル)とを互いに接合した、中空構造乃至袋構造により構成される。
【0004】
図5では、車体の前後方向に延在するサイドシル1が、車体の縦(上下)前後方向に延在するBピラー4と接合された状態を示している。即ち、Bピラーのアウタパネル4aは、サイドシル1のアウタパネル2の外側と接合されている。また、Bピラーのインナパネル4bは、サイドシル1のアウタパネル2とインナパネル3との縦方向の周縁部(フランジ部)に挟まれて、サイドシル1の略中央部において接合されている。
【0005】
ここで、従来の側面衝突基準では、下部車体構造のサイドシル1に対して直接荷重が付加(負荷)される、点線の矢印位置(車高が比較的低い位置)での側面衝突に対する座屈強度が問題となっていた。
【0006】
これに対して、より厳しくなった新側面衝突基準では、近年のRV車などの車高が高くなった自動車の増加に伴い、この自動車の側面衝突に対応するものとなっている。このため、新側面衝突基準における側面衝突位置は、従来の前記点線の矢印位置(下部車体構造位置)から、車高がより高い、実線で示す矢印位置に代わっている。
【0007】
この実線で示す矢印位置では、側面衝突位置が、サイドシル1上部のBピラー4側となって、サイドシル1自体は側面衝突位置から外れる。しかし、サイドシル1に対しては、新側面衝突位置によるBピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、矢印aで示す、上方から下方への斜めの荷重である、サイドシル1を時計回りに回転させる(左側からの側面衝突の場合には)、ねじりによる圧壊荷重が新たに負荷される。
【0008】
また、同時に、サイドシル1とBピラーとの接合部では、このBピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、矢印bで示す、下方から上方への応力が新たに負荷される。これら圧壊荷重の負荷によって、サイドシルのアウタパネル2の上部屈曲部(角部)では圧縮力が作用し、下部屈曲部(角部)では逆に引張力が作用するという、新たなねじれ曲げ圧壊モードとして作用して、サイドシル1をその断面方向に圧壊させる。
【0009】
したがって、このような側面衝突(側面衝突基準)に対して車室内の乗員を保護するために、サイドシルには、上記新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、圧壊や座屈あるいは変形の抑制のための強度確保という耐側面衝突性が求められている。
【0010】
一方、サイドシルには、このような耐側面衝突性だけではなく、耐オフセット衝突性も求められる。従来からの車体の正面衝突 (バリア衝突、フルラップ前面衝突) に対して、オフセット衝突では、対向車 (またはオフセットバリヤ) が被衝突車の端部寄りに衝突する。例えば、米国保険機構(Insurance Institute for Highway Safety)が行っているオフセット衝突での性能評価試験では、車幅の40% がオフセットバリヤと重なって衝突するように規定している。
【0011】
このため、オフセット衝突時においては、車体の衝突変形は、車体乃至車体部材の片側に偏して生じることになる。この場合の衝突条件としては、衝突変形が車体乃至車体部材の中央部に生じる正面衝突の場合に比して、著しく厳しい条件となる。これらは、サイドシル1に対する、車の前輪側からの新たなねじれた軸圧壊モードとして作用して、サイドシル1をその軸方向に圧壊させる。
【0012】
したがって、このような新たなオフセット衝突(オフセット衝突基準)に対して車室内の乗員を保護するために、サイドシルには、上記新たなねじれた軸圧壊モードに対する、圧壊や座屈の抑制のための最大荷重の確保という耐オフセット衝突性が求められている。
【0013】
しかも、これら耐側面衝突性と耐オフセット衝突性との兼備が求められるサイドシルには、更に、このような課題を、サイドシル乃至車体の重量増加にならずに解決する必要がある。これは、近年の、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されていることによる。この自動車の車体軽量化指向に伴い、これらサイドシルなどの成形パネルの板厚は、アウタパネルやインナパネルとも、著しく薄肉化されている。
【0014】
一方、サイドシルの耐側面衝突対策としては、従来から、前記図5で示したように、サイドシル1のアウタパネル2の内部側に、アウタパネル2の断面形状に近似した、略コの字状の鋼製パネルからなるレインフォース(補強部材)30などを設置して補強することが一般的である。
【0015】
また、成形パネルにより構成されたセンターピラー、ドア、サイドシルなどの鋼製パネル構造体内部に、側面衝突方向に向かって中空形材の一部が張り出す湾曲形状をした、補強用中空形材(アルミニウム合金など)を別途延在させることも提案されている (特許文献1参照) 。
【0016】
更に、センターピラーなどのパネル構造体内部に、別途、荷重伝達部を設けて、衝突時の荷重を吸収させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004-51065号公報 (全文)
【特許文献2】特開2003-2234 号公報 (全文)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、これら従来のようなサイドシルの耐側面衝突性を向上させる手段では、前記した新たな側面衝突(側面衝突基準)の課題に対して、これを解決できない。また、サイドシルの前記した新たな耐オフセット衝突性の課題に対しても、これを解決できない。即ち、従来のようなサイドシルでは、前記した新たな側面衝突やオフセット衝突の課題に対して、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備できない。
【0018】
また、これら従来のようなサイドシルの耐側面衝突性を向上させる手段では、サイドシルの重量増加につながり、かつサイドシルの構造自体の設計に影響を与えることが多い。即ち、従来技術では、サイドシルの重量増加につながらず、かつサイドシルの構造自体の設計に影響を与えずに、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備させることも困難であった。
【0019】
したがって、本発明の目的は、サイドシルの重量増加につながらず、かつサイドシルの構造自体の設計に影響を与えずに、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備した、自動車サイドシルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するために、本発明自動車サイドシルの要旨は、断面形状がアウタパネルの断面形状に近似するレインフォースを、アウタパネル側の内部で、かつBピラーとの接合部を中心に車体前後方向に亙って延在させて設けた自動車サイドシルであって、前記レインフォースは、前記アウタパネル側に略縦向きに配置された前面フランジと、この前面フランジの両端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された二つの上下ウエブとを有しており、前記前面フランジは、略縦向きに配置されて前記下ウエブと交わる下方側の縦壁と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって前記上ウエブと交わる上方側の傾斜壁とを有していることである。
【0021】
本発明自動車サイドシルの好ましい態様としては、前記レインフォースが、車体幅方向内側に、略縦向きに配置された後面フランジを更に有して、略矩形の閉断面形状を有していることである。また、前記レインフォースが590MPa以上の高張力鋼板からなることである。
【0022】
更に、本発明自動車サイドシルの好ましい適用態様としては、前記サイドシルがBピラーと接合されており、前記サイドシルが、このBピラーへの側面衝突およびオフセット前面衝突に対応する仕様であることである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記要旨のように、自動車サイドシルに設けたレインフォースにおける前面フランジを、略縦向きに配置された下方側の縦壁と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がる上方側の傾斜壁とで構成することを特徴とする。
【0024】
上記レインフォースの前面フランジにおける上方側の傾斜壁によって、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、突っ張り効果を発揮することができ、サイドシルの上面角部(コーナー部)の潰れを防止できる。
【0025】
また、上記前面フランジにおける下方側の縦壁によって、レインフォースにおける上記下ウエブとともに、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、サイドシルの側面下側から下面にかけての強度を確保できる。
【0026】
したがって、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対して、圧壊や座屈あるいは変形の抑制のための強度確保という、サイドシルの耐側面衝突性を向上できる。
【0027】
また、上記レインフォースの前面フランジにおける上方側の傾斜壁によって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対して、稜線を増加、あるいは屈曲部乃至角部(コーナー部)の数を増加でき、最大荷重を高めることができる。したがって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対する、圧壊や座屈の抑制のための最大荷重の確保という、サイドシルの耐オフセット衝突性を向上できる。
【0028】
しかも、これらレインフォースにおける前面フランジの構成は、従来のレインフォースに比して、新たな部材を付加することなく、その前面フランジの形状を変更するだけである。このため、レインフォースを設けた従来のサイドシルに比して、さほど重量増加につながらず、また、サイドシルの構造自体の設計に影響を与えることが無い。その上で、サイドシルに耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の実施態様について、図面を用いて具体的に説明する。図1は本発明サイドシルの(Bピラー4と接合した長手方向中央部の)縦断面図、図2は図1のサイドシルの斜視図を各々示す。
【0030】
(サイドシル構造)
図1、2において、本発明サイドシル1aは、前提として、前記図5で示した従来のサイドシル1と同様に、アウタパネル2とインナパネル3とからなる中空パネル構造体である。より具体的には、図1、2において、サイドシル1aは、車室外側(車体幅方向外側)に配置されたアウタパネル2と、車室内側(車体幅方向内側)に配置されたインナパネル3から構成される。そして、これら互いに接合されたアウタパネル2とインナパネル3とによって形成される、中空構造(袋構造あるいは閉断面構造)を有している。
【0031】
サイドシル1aは、同じく、前提として、前記図5で示した従来のサイドシル1と同様に、車体下部側面側に、車体前後方向に亙って設置される。そして、サイドシル1aの長手方向(車体前後方向)の断面形状は、他のパネル構造体や他の部材との接合のための部分を除いては、略同じである。
【0032】
アウタパネル2とインナパネル3とは、各々車体設計上の任意の形状に、鋼板などが予めプレス成形されている。これによって、アウタパネル2は、車体外側に向かう平坦な頂部(縦壁)2a、この頂部2aを囲む周縁の平坦な壁部(横壁)2b、2c、壁部2b、2cから周囲に張り出した平坦なフランジ(縦フランジ)2d、2eからなる。また、インナパネル3も、車体内側に向かう平坦な頂部(縦壁)3a、この頂部3aを囲む周縁の平坦な壁部(横壁)3b、3c、壁部3b、3cから周囲に張り出した平坦なフランジ(縦フランジ)3d、3eからなる。なお、この図1、2の態様は、後述する図3、4あるいは図5の態様を含めて、実際のサイドシルの断面形状に対して簡略化して表現している。
【0033】
図1においては、前記した図5と同様に、サイドシル1aが、車体の縦(上下)前後方向に延在するBピラー4と接合された状態を示している。即ち、Bピラーのアウタパネル4aは、サイドシル1aのアウタパネル2の頂部2a外側と接合されている。また、Bピラーのインナパネル4bは、サイドシル1aのアウタパネル2とインナパネル3とのフランジ、2d、2eと3d、3eに各々挟まれて、サイドシル1aの略中央部において接合されている。この結果、図1サイドシル1aのBピラー4との接合部分では、車室外側と車室内側とに、2分割された中空部20、21を有する。
【0034】
サイドシル1aのアウタパネル2とインナパネル3同士の接合、あるいはこれらとBピラー4のアウタパネル4a、インナパネル4bとの接合は公知の溶接手段およびフランジなどの公知の部位において行なわれる。
【0035】
図1、2と、後述する図3、4においては、前記図5と同様に、側面衝突方向として、図の左側からの矢印によって、新側面衝突基準における衝突位置がより高いBピラー位置での負荷方向を示している。
【0036】
なお、サイドシルのアウタパネル2とインナパネル3とは、高張力鋼板や普通鋼板(通常は、これらのGAなどの亜鉛めっき鋼板)、アルミニウム合金板などをプレス成形したものである。この点、各パネル板厚を薄くして、サイドシルを軽量化するためには、アウタパネル2やインナパネル3として、440MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板を用いることが好ましい。
【0037】
(レインフォース)
以上のような構成からなる本発明サイドシル1aは、図1、2において、レインフォース5aを、アウタパネル2側の中空構造内部に、Bピラーとの接合部を中心に、車体前後方向に亙って延在させて設けている。このレインフォース5aは、図5の従来のレインフォース30と同様に、スポット溶接などにより、アウタパネル2と対応する辺が、各々アウタパネル2側と接合される。
【0038】
このレインフォース5aは、アウタパネル2側に略縦向きに配置された前面フランジ6、7と、この前面フランジ6、7の各端部(前面フランジの両端部)と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された、上側と下側との二つのウエブ8、9とを有している。
【0039】
レインフォース5aにおける前面フランジは、略縦向きに配置された下方側の縦壁6と、この縦壁6から屈曲部10を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がる上方側の傾斜壁7とを有している点が特徴的である。即ち、前面フランジは、略縦向きに配置されて下ウエブ9と交わる下方側の縦壁6と、この縦壁6から屈曲部10を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって上ウエブ8と交わる上方側の傾斜壁7とを有している。
【0040】
これらレインフォース5aの形成する断面形状は、アウタパネル2の断面形状に近似している。そして、レインフォース5aの長手方向(車体前後方向)の断面形状は、他のパネル構造体や他の部材との接合のための部分を除いては、略同じである。
【0041】
レインフォース5aの前面フランジにおける上方側の傾斜壁7によって、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、突っ張り効果を発揮することができる。このため、サイドシル1aのアウタパネル2における頂部2aと壁部2bとで形成する上面角部(コーナー部)の潰れを防止できる。
【0042】
また、前面フランジにおける下方側の縦壁6によって、レインフォース5aにおける下ウエブ9とともに、アウタパネル2における頂部2aの下部と壁部2cとで形成される、サイドシル1aの側面下側から下面にかけて、縦壁6の板厚効果によって補強する。このため、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、サイドシル1aの側面下側から下面にかけての強度を確保でき、断面変形を抑制することができる。
【0043】
更に、レインフォース5aの前面フランジにおける上方側の傾斜壁7によって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対して、レインフォース5aの稜線を増加、あるいは屈曲部(角部、コーナー部)の数を増加できる。このため、レインフォース5a負荷される応力分布を均一にでき、最大荷重を高め、断面変形を抑制することができる。
【0044】
より具体的には、図1に示すレインフォース5aの屈曲部は、上方側の傾斜壁7と下方側の縦壁6との交点である10、上方側の傾斜壁7と上ウエブ8との交点12、下方側の縦壁6と下ウエブ9との交点13の3点(3個)になっている。このため、前記図5に示した断面コの字状のレインフォース30の屈曲部(角部)が2点(2個)であるのに比して、レインフォースの屈曲部および稜線の数を増加させることができる。
【0045】
オフセット衝突におけるレインフォース5aの軸方向(車体前後方向)の荷重負荷に対しては、この屈曲部の数および稜線の数によって、最大荷重が定まり、これらの数が多いほど、最大荷重が向上する。したがって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対する、圧壊や座屈の抑制のための最大荷重の確保という、サイドシルの耐オフセット衝突性を向上できる。
【0046】
(その他の実施態様)
次ぎに、図3、4を用いて、本発明のその他の実施態様について説明する。図3は本発明サイドシルの(Bピラー4と接合した長手方向中央部の)縦断面図、図4は図3のサイドシルの斜視図を各々示す。なお、図4においては、Bピラー4を除いて、サイドシル1aのみを図示している。
【0047】
図3、4において、本発明サイドシル1bの基本的な構成は、前記した図1、2の場合と同じである。また、レインフォース5を、アウタパネル2側の中空構造内部に、車体前後方向に亙って延在させて設けている点も、前記した図1、2の場合と同じである。
【0048】
(レインフォース)
図3、4のレインフォース5bは、アウタパネル2側に略縦向きに配置された前面フランジ6、7と、この前面フランジ6、7の各端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された、上側と下側との二つのウエブ8、9とを有している点は、前記した図1、2の場合と同じである。また、これらレインフォース5bの形成する断面形状は、アウタパネル2の断面形状に近似しており、長手方向の断面形状が、他のパネル構造体や他の部材との接合のための部分を除いて、略同じである点も、前記した図1、2の場合と同じである。更に、レインフォース5bにおける前面フランジは、略縦向きに配置された下方側の縦壁6と、この縦壁6から屈曲部10を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がる上方側の傾斜壁7とを有している特徴点も、前記した図1、2の場合と同じである。
【0049】
図3、4のレインフォース5bが、図1、2のレインフォース5aと異なる点は、前面フランジ6、7に対して、後面側(車体内側)に、縦壁であるフランジ11を設けた点である。この後面フランジ11は、上側と下側との二つのウエブ8、9の各車体内側端部と略直交しており、これによって、レインフォース5bは略矩形閉断面を有する。
【0050】
この後面フランジ11の存在によって、前記図1、2の場合の耐側面衝突性向上効果に加えて、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードに対する、上側と下側との二つのウエブ8、9の潰れ防止効果(断面補強高効果:突っ張り効果)を得ることができる。
【0051】
また、後面フランジ11の存在によって、前記したオフセット衝突における新たなねじれた軸圧壊モードに対して、レインフォース5bの稜線を増加、あるいは屈曲部の数を、屈曲部14、15と2個増加でき、最大荷重を高めることができる。ただ、後面フランジ11の存在分だけ、図1、2のレインフォースよりも重量が増加するため、上記耐側面衝突性や耐オフセット衝突製の向上効果との兼ね合いで、採用を選択する。
【0052】
後面フランジ11の角度は、図3、4の態様では、車体幅方向(図の左右方向)に傾斜させて設けている。これは、前面フランジが上方側の傾斜壁7を有しているため、二つのウエブ8、9の両後端の位置が互いに車体幅方向(図の左右方向)にずれて傾斜しているためである。このように、後面フランジ11の角度は、前面フランジの上方側の傾斜壁7や、その両端が各々交わる上側と下側との二つのウエブ8、9の設計長さとの関係で決まる。このため、後面フランジ11の傾斜角度はフレキシブルであり、略垂直とすることもできる。
【0053】
なお、レインフォース5bは略矩形閉断面を有しているため、アウタパネル2ととの接合は、図1、2の場合のようなスポット溶接は、電極が配置しずらく、施工しにくい。このため、レーザー溶接などの手段により、アウタパネル2と対応する辺を、各々アウタパネル2側と接合する。
【0054】
(サイドシルの変形特性:断面方向)
図6に、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードにおける、本発明サイドシルの断面変形特性の解析結果を示す。図6は側面衝突寸前の変位0mmから、側面衝突後の変位300mmまでの、図1、2に示した本発明サイドシルの断面変形状態の変化を順次表したものである。比較のために、前記図5に示した従来のサイドシルの断面変形状態の同様の変化を図7に示す。
【0055】
図6、7の60mm変位時の図に各々示す通り、側面衝突位置が前記したサイドシル上部のBピラー側では、サイドシル1aに対して、Bピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、矢印aで示す、上方から下方への斜めの荷重である、サイドシル1aを、左側からの側面衝突の場合には時計回りに回転させる、ねじりによる圧壊荷重が新たに負荷される。
【0056】
この矢印aで示す、前記上方から下方への斜めのねじりによる圧壊荷重の負荷によって、図7の従来のサイドシルでは、そのアウタパネル2の上部において、前面上側の屈曲部(角部)12では、圧縮力が作用して、急速に角度が狭まり、上側の壁部2bと前面の頂部2aとの変形が大きくなっている。これは、レインフォース30における前面フランジ6や上側ウエブ8でも同様である。
【0057】
また、この荷重の負荷は、同時に、サイドシルのアウタパネル2の下部においては、角部13を押し広げる引張力cとなって働く。即ち、図7の従来のサイドシルでは、前面下側の屈曲部(角部)13の角度が急速に拡がり、下側の壁部2cと前面の頂部2aとの変形が大きくなる。これは、レインフォース30における前面フランジ6や下側ウエブ9でも同様である。
【0058】
更に、Bピラー4の車内側への倒れ変形に伴う、後述する図8〜10で示す、矢印bの下方から上方への応力が新たに負荷される。
【0059】
これらの同時負荷による、サイドシル1に対する、新たなねじれ曲げ圧壊モードによって、図7の従来のサイドシルでは、インナパネルも含めて、その断面方向に大きく圧壊していることが分かる。
【0060】
これに比して、図6の本発明サイドシル1aの断面方向の圧壊は、特に、サイドシル1aの前面のアウタパネル2側において抑制されていることが分かる。これによって、本発明サイドシルの断面方向の耐側面衝突性が裏付けられる。
【0061】
なお、図6、7の解析は、発明例図1、2および比較例図5の、各サイドシル1a、1b、1への側面衝突を模擬した落錘衝突時に、サイドシルが、矢印a、bで示した、車体内側に向かって回転する回転モーメントを有する、と各々仮定した。そして、上記レインフォースを含めたサイドシル構造を、部材の各断面形状データからメッシュ化し、有限要素法解析用シェルモデル(FEMモデル)を形成した。このモデル化の際に、各サイドシル端部にねじり+曲げモードが再現できる拘束条件を与え、ピラー4上端面には、図5での矢印aで示す方向に速度を与えた。また、レインフォースを含めたサイドシルの材料特性を与えた。
【0062】
(サイドシルの変形特性:長手方向)
図8、9に、前記した側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モードにおける、前記図1、2に示した本発明サイドシル1a、1bの長手方向を含めた全体の変形特性の解析結果を斜視図で示す。図8、9は、側面衝突寸前の変位0mmから、側面衝突後の変位300mmまでの、図1、2に示した本発明サイドシルの変形状態の変化を順次表したものである。比較のために、前記図5に示した従来のサイドシル1の長手方向を含めた全体の変形状態の同様の変化を図10に斜視図で示す。
【0063】
図8、9の140mm経過時の図に各々示す通り、側面衝突位置が前記したサイドシル上部のBピラー側では、サイドシル1a、1bに対して、Bピラーの車内側への倒れ変形に伴い、Bピラーとの接合部では、更に、前記した矢印bの下方から上方への応力が新たに負荷される。この応力によって、サイドシル1a、1bには、Bピラーとの接合部に向かう、長手方向左右からの圧縮応力dが負荷される。
【0064】
これと前記したa〜cまでの荷重負荷の複合作用(前記側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モード)による応力集中が、図8、9の各経時変化図における斜線部で示す通り、サイドシル1a、1bのBピラーとの接合部になされている。これは、図10の従来のサイドシル1でも同様である。
【0065】
但し、その応力集中の程度は、図8、9の本発明サイドシル1a、1bでは、図10の従来のサイドシル1に比して、広範囲に分散されており、変形してはいるが、局部的な座屈は抑制できていることが分かる。これに対して、図10の従来のサイドシル1では、変形量が大きく、局部的に座屈していることが分かる。これによって、本発明サイドシルの長手方向の耐側面衝突性が裏付けられる。
【0066】
(レインフォースの変形特性:長手方向)
図11、12、13に、前記図8、9、10の解析結果におけるレインフォースのみの変形状態の変化を斜視図で示す。図11、12、13も、前記図8、9、10と同様に、側面衝突寸前の変位0mmから、側面衝突後の変位300mmまでの、サイドシルの長手方向を含めた全体の変形状態の変化を順次表したものである。
【0067】
前記した図8、9、10のサイドシル全体の解析結果と同様に、前記したa〜eまでの荷重負荷の複合作用(前記側面衝突における新たなねじれ曲げ圧壊モード)による応力集中を、各経時変化図における斜線部で示す。
【0068】
図11、12の本発明レインフォース5a、5bでは、前記した図8、9、10のサイドシル全体の解析結果と同様に、図13の従来のレインフォース30に比して、広範囲に分散されており、変形してはいるが、局部的な座屈は抑制できていることが分かる。これに対して、図10の従来のレインフォース30では、変形量が大きく、局部的に座屈していることが分かる。これによって、本発明に係るレインフォース構造のサイドシルの耐側面衝突性向上に対する寄与が裏付けられる。
【0069】
(レインフォースの設計条件)
レインフォース5は、前記した通り、サイドシル1(サイドシル1a、1bとも共通してサイドシル1と言う)のアウタパネル2側の内部に、Bピラー4との接合部を中心に、車体前後方向に亙って延在させる。この場合の、本発明サイドシルにおけるレインフォース5の好ましい設計条件について、以下に、具体的に説明する。
【0070】
(レインフォースの材質)
前記図1〜4において、本発明サイドシルにおけるレインフォース5aの材質は、後述するレインフォース5bともに(以下、共通して、単にレインフォース5と言う)高張力鋼板を使用したものである。これに対して、普通鋼板(通常は、これらのGAなどの亜鉛めっき鋼板)、アルミニウム合金板などをプレス成形、あるいはアルミニウム合金押出形材を使用しても良いが、高張力鋼板に比べれば、板厚を厚くする必要があり、軽量化効果が出ない可能性がある。この点、レインフォース5の板厚を薄くして、サイドシルを軽量化するためには、レインフォース5に590MPa以上の引張強度を有する高張力鋼板を用いることが好ましい。
【0071】
(レインフォースの大きさ、形状、長さ)
レインフォース5の全体的な大きさ、形状は、接合するアウタパネル2の断面(内部)形状によって規定される。また、レインフォース5の長さは、必ずしも、サイドシル1の車体前後方向の長さ全般に亙る必要は無い(サイドシルの車体前後方向の長さと同じくする必要は無い)。より具体的に、前記した側面衝突に対しては、レインフォース5の長さは、Bピラーとの接合部を、その長さの略中心として、後述する図8〜13に示す、新たなねじれ曲げ圧壊モードの負荷応力の及ぶ範囲に対して、十分な長さだけ設ければ良い。但し、前記したオフセット衝突に対しては、レインフォース5の長さは長いほど好ましく、サイドシル1の車体前後方向の長さ全般に亙ることが好ましい。ただ、レインフォース5の長さが長いほど重量が増加する。この点、側面衝突とオフセット衝突との両方の衝突に対するとともに、重量増加を抑制するための目安としては、レインフォース5長手方向のBピラーとの接合範囲の長さLに対してL〜5Lの範囲だけ設ければ良い。
【0072】
レインフォース5の長さが1/3L未満では、負荷応力の及ぶ範囲に対して短かすぎて、本発明構成となっていても、レインフォースの役割を果たせない可能性がある。レインフォース5の長さが2/3Lを越えた場合には、側面衝突に対する補強効果の増加の割りには、重量増加の割合の方が著しくなる。
【0073】
レインフォース5の板厚は、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、サイドシル1の前記アウタパネル2の板厚tとの関係で決定される。この点、0.5t〜2.3tの範囲とすることが好ましい。レインフォース5の板厚が0.5t未満では、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、補強効果が小さくなり過ぎ、重量を増加してまで、レインフォース5を設ける意味が無くなる。一方、レインフォース5の板厚が2.3tを越えた場合、レインフォース5による重量増加が著しくなり過ぎる。
【0074】
なお、レインフォース5を構成する前面フランジ6、7と、二つの上下ウエブ8、9、あるいは前面フランジにおける下方側の縦壁6と、上方側の傾斜壁7とは、各々必ずしも同じ板厚とせずとも、差を設けても良い。即ち、レインフォース5の側面衝突に対する前面側である前面フランジ6、7を、ウエブ8、9よりも厚肉とする、前面フランジにおける下方側の縦壁6を、上方側の傾斜壁7よりも厚肉としても良い。
【0075】
レインフォース5の前面フランジにおける下方側の縦壁6と、上方側の傾斜壁7との設計も、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、サイドシル1の前記アウタパネル2の板厚tとの関係で決定される。この点、前面フランジの板厚が0.5t〜2.3tの範囲の場合には、図1に示す、前面フランジの高さ(車体上下方向の長さ、図1で言う上下方向の長さ)Hに対する下方側の縦壁6の高さH1を、1/3〜2/3Hの範囲とすることが好ましい。
【0076】
このH1が1/3H未満では、側面衝突の場合における、前記図6の矢印aの荷重負荷に伴う矢印bやcの応力、あるいは前記図8、9の矢印dの応力に対して、アウタパネル2の下部(屈曲部、角部13)に対する補強効果が小さくなる可能性がある。
【0077】
一方、H1が2/3Hを越えた場合、上方側の傾斜壁7の長さが不足し、前記図6の矢印aの荷重負荷や矢印bの応力に対するアウタパネル2の上部(屈曲部、角部12)に対する、突っ張り補強効果が小さくなる可能性がある。
【0078】
上方側の傾斜壁7の傾斜設計も、前記した側面衝突やオフセット衝突における、新たな圧壊モードの負荷応力に対して、サイドシル1の前記アウタパネル2の板厚tとの関係で決定される。この点、前面フランジの板厚が0.5t〜2.3tの範囲の場合には、図1に示す、レインフォース5の幅(車体幅方向の長さ、図1で言う左右方向の長さであって、ウエブ9の長さ)Wに対する、傾斜壁7の幅W1(傾斜壁7の車体幅方向で水平方向の長さ、図1で言う左右方向の長さ)を、1/4W〜Wの範囲とすることが好ましい。
【0079】
このW1が1/4W未満では、従来の傾斜していない縦壁(図5の前面フランジ2a)と同じとなり、側面衝突の場合における、前記図6の矢印aの荷重負荷や矢印bの応力に対するアウタパネル2の上部(屈曲部、角部12)に対する突っ張り補強効果が小さくなる可能性がある。
【0080】
一方、W1がWを越えた場合、側面衝突の場合における、前記図6の矢印aの荷重負荷や矢印bの応力に対する効果発揮が遅れ、この時間的な遅れが、却って、上記突っ張り補強効果を小さくする可能性がある。
【0081】
(サイドシルの衝突モード)
サイドシルの衝突モードとして、前記図8、9、10のサイドシル全体の解析結果から、耐側面衝突モードにおける、本発明サイドシル例と比較サイドシル例との重量差(但し、図5の形状で表1の比較例6との重量差)と最大荷重との関係を図14に示す。また、耐オフセット衝突モードにおける、重量差(但し、図5の形状で表1の比較例6との重量差)と最大荷重との関係を図15に示す。
【0082】
前提となる、これら本発明サイドシル例と比較サイドシル例との設計条件を表1に示す。レインフォースの各部の板厚は全て同じとした。
【0083】
【表1】
【0084】
図14、15から分かる通り、発明例1〜5は、比較例6に比して、重量が重くならずに、側面衝突における最大荷重と、オフセット衝突における最大荷重とが高い。したがって、サイドシルの重量増加につながらず、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備したサイドシルであることが分かる。
【0085】
これに対して、ハイテン化および板厚減による軽量化した比較例7は、比較例6に比して、重量は軽くなっているものの、側面衝突における最大荷重があまり高くならない。また、アウタパネルの板厚をより厚くした比較例8は、側面衝突やオフセット衝突における最大荷重の増加の割りには、重量が重くなり過ぎている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、サイドシルの重量増加につながらず、耐側面衝突性と耐オフセット衝突性とを兼備したサイドシルを提供できる。このため、自動車サイドシルに適用されて、自動車(車体)の軽量化と、乗員保護などの安全性の向上との両立に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明サイドシルの一態様を示す断面図である。
【図2】図1のサイドシルの斜視図である。
【図3】本発明サイドシルの別の態様を示す断面図である。
【図4】図3のサイドシルの斜視図である。
【図5】従来のサイドシルの態様を示す断面図である。
【図6】図1の本発明サイドシルの断面変形を経時的に示す断面図である。
【図7】図5の従来のサイドシルの断面変形を経時的に示す断面図である。
【図8】図1の本発明サイドシル全体の変形を経時的に示す斜視図である。
【図9】図3の本発明サイドシル全体の変形を経時的に示す斜視図である。
【図10】図5の従来のサイドシル全体の変形を経時的に示す斜視図である。
【図11】図1のレインフォース全体の断面変形を経時的に示す斜視図である。
【図12】図3のレインフォース全体の断面変形を経時的に示す斜視図である。
【図13】図5のレインフォース全体の断面変形を経時的に示す斜視図である。
【図14】種々のサイドシルの耐側面衝突モードを示す説明図である。
【図15】種々のサイドシルの耐オフセット衝突モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1:サイドシル、2:アウタパネル、3:インナパネル、4:Bピラー、
5:レインフォース、6:縦壁、7:傾斜壁、8 、9:ウエブ、10、12、13: 角部、
11: 後面フランジ、30: レインフォース、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状がアウタパネルの断面形状に近似するレインフォースを、アウタパネル側の内部で、かつBピラーとの接合部を中心に車体前後方向に亙って延在させて設けた自動車サイドシルであって、前記レインフォースは、前記アウタパネル側に略縦向きに配置された前面フランジと、この前面フランジの両端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された二つの上下ウエブとを有しており、前記前面フランジは、略縦向きに配置されて前記下ウエブと交わる下方側の縦壁と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって前記上ウエブと交わる上方側の傾斜壁とを有していることを特徴とする自動車サイドシル。
【請求項2】
前記レインフォースが、車体幅方向内側に、略縦向きに配置された後面フランジを更に有して、略矩形の閉断面形状を有している請求項1に記載の自動車サイドシル。
【請求項3】
前記レインフォースが590MPa以上の高張力鋼板からなる請求項1または2に記載の自動車サイドシル。
【請求項4】
前記サイドシルが、Bピラーへの側面衝突およびオフセット前面衝突に対応する仕様である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車サイドシル。
【請求項1】
断面形状がアウタパネルの断面形状に近似するレインフォースを、アウタパネル側の内部で、かつBピラーとの接合部を中心に車体前後方向に亙って延在させて設けた自動車サイドシルであって、前記レインフォースは、前記アウタパネル側に略縦向きに配置された前面フランジと、この前面フランジの両端部と略直交するように各々略横向きに間隔を開けて配置された二つの上下ウエブとを有しており、前記前面フランジは、略縦向きに配置されて前記下ウエブと交わる下方側の縦壁と、この縦壁から屈曲部を介して車体幅方向内側に向かって斜めに立ち上がって前記上ウエブと交わる上方側の傾斜壁とを有していることを特徴とする自動車サイドシル。
【請求項2】
前記レインフォースが、車体幅方向内側に、略縦向きに配置された後面フランジを更に有して、略矩形の閉断面形状を有している請求項1に記載の自動車サイドシル。
【請求項3】
前記レインフォースが590MPa以上の高張力鋼板からなる請求項1または2に記載の自動車サイドシル。
【請求項4】
前記サイドシルが、Bピラーへの側面衝突およびオフセット前面衝突に対応する仕様である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車サイドシル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−191008(P2007−191008A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10198(P2006−10198)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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