説明

自動車内装材用ポリエステルフィルム

【課題】 自動車内装材、特に自動車の成形天井の構成部材として、サンルーフ等の開口部周縁や端縁部分に光漏れ防止テープを貼る光漏れ防止加工を行なわなくても十分な遮光性を有し、ガラス繊維マットを用いることなく、充分な剛性と耐熱性を有し、軽量で高度の深絞り成形加工性を有する、自動車内装材を提供する。
【解決手段】 フィルム光学濃度が0.4以上、フィルムの厚み方向の結晶配向度が0.20〜0.65であることを特徴とする自動車内装材用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材、特に自動車の車体の屋根の室内側を覆う成形天井の構成部材に用いるポリエステルフィルムに関する。詳しくは、加工工程に金型による絞り加工を伴う自動車内装材、特に自動車の成形天井の構成部材に用いるポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の天井の内装においては、通常、車体天井外板の内側に自動車用成形天井が取り付けられて、断熱性や装飾性の付与がなされている。
【0003】
成形天井としては、ポリプロピレン,硬質ウレタン発泡体シート,軟質ウレタン発泡体シート,ガラス繊維マット,熱硬化性樹脂シート材等からなる基材にポリエステル繊維等のファブリックやプラスチックシートあるいは不織布等からなる表面材および裏面材をホットメルトフィルムを介して積層した積層材を、熱プレス用成形型でプレスして一体化および賦形したものが一般的である。この成形天井には、サンルーフやムーンルーフと称される開口部が設けられるものも多い。
【0004】
自動車用成形天井においては、表面材も裏面材も明るい色からなり、また基材も明るい色からなる発泡体や透明なガラス繊維等で構成され、加えてホットメルトフィルムが無色透明なものからなっている。しかし、成形天井の成形条件のバラツキや車体への取り付け時のバラツキ等によって、サンルーフあるいはムーンルーフ等の開口部周縁あるいはその他の端縁部分では、車体外板との間が完全に密閉されず僅かに隙間を生じるのが避けられなかった。そのため、前記僅かな隙間から成形天井の開口部周縁あるいはその他の端縁部分裏側へ侵入した外光によって、成形天井の開口周縁あるいは端縁部分が車内から薄く透けたように見える、いわゆる光漏れ現象が発生し、当該成形天井や車内の見栄えが悪くなる問題があった。
【0005】
そこで、この光漏れを防ぐために、成形天井の成形後組み付け前に、成形天井の裏面の、光漏れが生じると予想される開口部周縁や端縁部分等に黒色フェルトテープ等の光漏れ防止テープを目張りとして貼るといった光漏れ防止作業が行われる。
【0006】
しかし、前記光漏れ防止テープの貼着による方法では、光漏れ防止作業という余分な作業が必要とされ、手間がかかるのみならず余分な材料費や設備費がかかる問題がある。また、当該光漏れ防止テープは、経済性や作業性の点から、部分的に貼られるので当該光漏れを確実に防ぐまでには至っていないというのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平8−1877号公報
【特許文献2】特開平7−68689号公報
【特許文献3】特開2003−34192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、自動車内装材、特に自動車の成形天井の構成部材として、サンルーフ等の開口部周縁や端縁部分に光漏れ防止テープを貼る光漏れ防止加工を行なわなくても十分な遮光性を有し、ガラス繊維マットを用いることなく、充分な剛性と耐熱性を有し、軽量で高度の深絞り成形加工性を有する、自動車内装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、フィルム光学濃度が0.4以上、フィルムの厚み方向の結晶配向度が0.20〜0.65であることを特徴とする自動車内装材用ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、自動車内装材、特に自動車の成形天井の構成部材として、サンルーフ等の開口部周縁や端縁部分に光漏れ防止テープを貼る光漏れ防止加工を行なわなくても十分な遮光性を有し、ガラス繊維マットを用いることなく、充分な剛性と耐熱性を有し、軽量で高度の深絞り成形加工性を有する、自動車内装材用ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステル]
本発明の自動車内装材用ポリエステルフィルムはポリエステルフィルムからなる。このポリエステルは、主鎖中の主要な結合であるモノマー残基とモノマー残基を結合する共有結合がエステル結合からなる高分子の総称である。ポリエステルは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物、もしくはジカルボン酸エステル化合物とジヒドロキシ化合物を重縮合反応させることによって得ることができる。
【0012】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホテレフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸を挙げることができる。
【0013】
ジカルボン酸エステル化合物としては上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルを挙げることができる。
【0014】
ジヒロドキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
【0015】
これらの中でも、ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸もしくはこれらのジメチルエステル化合物を、ジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールを好ましく用いることができる。
【0016】
ポリエステルは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合する場合は、あらかじめ別々に重合したポリマーをチップの状態でブレンドして溶融してもよく、それぞれを別々の押出機にて溶融したものを合流させ、明らかな積層構成としてもよく、あるいはスタティックミキサーで混合して用いてもよい。
【0017】
これらのポリエステルからなるポリエステルフィルムのうち、本発明では特に、光学濃度が0.4以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上のものを用いる。光学濃度が0.4未満であるとフィルムの光漏れ防止の効果が低く、遮光効果が得られない。他方、光学濃度は高いほど光漏れ防止には効果的であるが、2.0を超えるのは過剰品質となり経済的には不適であるので光学濃度は高々2.0程度である。
【0018】
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムの厚み方向の結晶配向度が0.20〜0.65、好ましくは0.25〜0.55である。結晶配向度が0.20未満であると過度に低配向となり、成型加工時の耐熱性が不十分となる。0.65を超えると成型加工性が不十分となり、絞り成型時にフィルムが切断し易くなる。
【0019】
なお、フィルム厚み方向の結晶配向度は以下のように測定する。まず、X線回折装置を用いてフィルムの結晶面(100)の3方向(長手方向MD、幅方向TD、厚さ方向NDの3方向)の結晶配向指数<cosΦ,100>を求め、次式より結晶配向度fi,kを求める。この測定では、3方向の結晶配向度を極点試料台を用いて測定する。
i,k=2/3<cosΦ,100>−1/2
(但し、i=MD、TDまたはND、k=100)
【0020】
なお、白色顔料が二酸化チタンの場合、二酸化チタン粒子に起因する反射ピークが、アナターゼ(101)、ルチル(110)で共重合ポリエステル(100)の近くであるので、極点図においてα=0の共重合ポリエステルの(100)の反射ピークを二酸化チタンの反射強度(ITiO2α=0)によるものとして、α=90°までのα、βすべての位置の強度をITiO2α=0を減ずることにより結晶配向度を算出する。
ここで、
TiO2α=0=1/2(ITiO2α=0MD+ITiO2α=0TD
とする。
上記において、αは極点試料台で、α=90°はフィルム表面に平行に(100)が配置された場合を表し、α=0°ではフィルム表面に垂直に配置された場合を示す。さらにβはフィルムのMD,TD面内の方向を表し、β=0をMD,β=90°をTDの方向とした。なお、結晶配向度はNDの値で表す。
【0021】
本発明のおけるポリエステルフィルムの融点は、好ましくは200〜270℃、さらに好ましくは210〜260℃、特に好ましくは220〜250℃である。融点が200℃未満では耐熱性に劣るため、成形加工時に金型への融着が発生する可能性があり、高度の深絞り成形加工性を必要とする本発明の自動車内装材用ポリエステルフィルムとしては不適であり好ましくない。他方、融点が270℃を越えると生産性に劣り好ましくない。
【0022】
本発明におけるポリエステルフィルムの見掛け密度は、好ましくは1400〜1700kg/m、さらに好ましくは1450〜1650kg/m、特に好ましくは1490〜1600kg/mである。1400kg/m未満であるとフィルムの耐熱性に劣るため成形加工時に金型への融着が発生する可能性があり好ましくない。1700kg/mを超えるとフィルムの結晶性が高くなりすぎ成形加工性が低下して好ましくない。
【0023】
これらの光学濃度、融点、結晶配向度および見掛け密度を満足するポリエステルフィルムは、例えば、微粒子を含有するポリエチレンテレフタレートまたは共重合成分を合計25モル%以下、好ましくは5〜20モル%の範囲で共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを、後述のように、延伸時の延伸温度、延伸倍率、延伸速度として特定の条件をとりながら延伸して熱処理することで得ることができる。
【0024】
この場合、共重合成分としては、ジカルボン酸成分として例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸を用いることができ、ジオール成分として例えばネオペンチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールを用いることができる。
【0025】
ポリエステルフィルムの厚みは、経済性、生産性、成形加工性などの点から、好ましくは12〜250μm、さらに好ましくは50〜188μmである。
ポリエステルフィルムは、自動車内装材、特に自動車成形天井材を構成する他の素材やラミネート材料との良好な接着性を得る観点から、コロナ放電処理を施してもよく、インラインコーティングやオフラインコーティングにより表面処理を施してもよい。
【0026】
[微粒子]
ポリエステルフィルムには、取り扱い性と加工性、および光学濃度を向上させるために、微粒子を含有することが好ましい。微粒子は、内部析出微粒子、無機微粒子、有機微粒子のいずれであってもよいが、無機微粒子が好ましい。
【0027】
無機微粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、アルミナ、酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、マイカ、カオリン、クレーを用いることができ、好ましくは酸化チタン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、湿式および乾式シリカ、ケイ酸アルミ、アルミナを用いるとよい。有機微粒子としては、例えば、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル、ジビニル化合物を構成成分とする粒子を用いることができる。
【0028】
微粒子は二種以上が並存してもよい。フィルムの欠陥を生じさせずに良好な取り扱い性と加工性を得て、さらに本発明で必要な光学濃度を得る観点から、微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2μmであり、微粒子の含有量は好ましくは3.0〜40重量%、さらに好ましくは5.0〜35重量%である。
【0029】
本発明における微粒子を含有させるには各種の方法を用いろことができる。例えば、ポリエステル合成時のエステル交換もしくはエステル化反応の終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法、ポリエステルに添加し溶融混練する方法、これらの方法において添加物を多量に添加したマスターペレットを製造し、粒子を含有しないポリエステルと混練し、所定量の添加物を含有させる方法、を用いることができる。
【0030】
[フィルムの製造方法]
本発明の自動車の内装材用ポリエステルフィルムは、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、微粒子を所望の濃度に添加したポリエステルのチップを、窒素雰囲気下または真空下130℃で7時間の乾燥を行い、押出機に供給し溶融する。押出機にて溶融した樹脂は、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出、押出することで未延伸シートを得る。その際、ワイヤー状電極、テープ状電極もしくは針状電極を使用して静電印加し冷却ドラムに密着する方法、冷却ドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けたキャスト法、冷却ドラム温度をポリエステルのガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくはこれらの方法を複数組み合わせた方法によりシート状ポリマーを冷却ドラムに密着させる。
【0031】
つぎに、未延伸フィルムを二軸延伸する。二軸延伸は、例えば長手方向に延伸した後幅方向に延伸するか、幅方向に延伸した後長手方向に延伸することによる逐次二軸延伸法で行なってもよく、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸する同時二軸延伸法延伸法で行なってもよい。延伸における延伸倍率としては、それぞれの方向に好ましくは1.6〜4.0倍、さらに好ましくは2.4〜3.8倍、特に好ましくは2.8〜3.5倍である。延伸温度はポリエステルのガラス転移点〜(ガラス転移点+100℃)の温度範囲、好ましくは80〜170℃、特に好ましくは長手方向の延伸温度を90〜150℃、幅方向の延伸温度を100〜150℃とする。フィルムに優れた成形性を付与するために、特に長手方向の延伸温度を100〜130℃とすることが好ましく、特に縦延伸前において100℃以上の温度で1〜100秒間程度結晶化しない範囲において予熱して後、延伸することが好ましい。このようにすれば、均一な延伸による優れた平面性、配向斑抑制による優れた成形性を得ることができる。
【0032】
このように二軸延伸したポリエステルフィルムには熱処理を行う。熱処理は、例えば、オーブン中、加熱されたロール上で行なうことができる。熱処理温度は、通常は原料の融点よりも30℃以上低い温度であり、例えば256℃の融点のポリマーを原料とした場合の熱処理温度は226℃未満となる。熱処理の温度は、さらに好ましくは、延伸温度〜(原料の融点−30℃)、さらに好ましくは100〜225℃、特に好ましくは120〜205℃である。この範囲の温度とすることによって、成形加工性と耐衝撃性に優れたフィルムを得ることができる。熱処理温度がこの温度より低温であると、耐熱性、寸法安定性が悪化することがあり好ましくなく、高温であると結晶配向度が増加し、成形加工性が悪化することがあり好ましくない。熱処理の時間は、好ましくは1〜30秒間である。この熱処理はフィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させて行ってもよい。その後、さらにコロナ放電処理を施してもよい。このコロナ処理は他の素材との接着性を向上させる点で好ましいことである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
なお、ポリマー、フィルムの物性およびフィルム、加工品の特性は以下の方法にて測定、評価した。
【0034】
(1)ポリエステルフィルムの融点(Tm)
ポリエステルフィルム 約20mgを示差走査熱量計(Du Pont Instruments 910型DSC)により、20℃/分の昇温速度で測定し、吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。
【0035】
(2)フィルム厚み方向の結晶配向度
X線回折装置(理学電機製ROTAFLEX RINT2500HL)を用いてフィルムの結晶面(100)の3方向(長手方向MD、幅方向TD、厚さ方向NDの3方向)の結晶配向指数<cosΦ,100>を求め、次式より結晶配向度fi,kを求めた。
i,k=2/3<cosΦ,100>−1/2
(但し、i=MD、TDまたはND、k=100)
なお、3方向の結晶配向度は極点試料台(理学電機製多目的試料台)を用いて測定した。
測定において、白色顔料が二酸化チタンの場合、二酸化チタン粒子に起因する反射ピークが、アナターゼ(101)、ルチル(110)で共重合ポリエステル(100)の近くであるので、極点図においてα=0の共重合ポリエステルの(100)の反射ピークを二酸化チタンの反射強度(ITiO2α=0)によるものとして、α=90°までのα、βすべての位置の強度をITiO2α=0を減ずることにより結晶配向度を算出した。
ここで、
TiO2α=0=1/2(ITiO2α=0MD+ITiO2α=0TD
とした。
なお、αは極点試料台で、α=90°はフィルム表面に平行に(100)が配置された場合を表し、α=0°ではフィルム表面に垂直に配置された場合を示す。さらにβはフィルムのMD、TD面内の方向を表し、β=0をMD,β=90°をTDの方向とした。結晶配向度はNDの値で表した。
【0036】
(3)光学濃度
光学濃度計(X−Rite社製TR−310型)を用いて、フィルム試料の3原色におけるV(Visual)光学濃度を測定した。
【0037】
(4)見掛け密度
10cm×10cmの大きさの試料を採り、その試科の厚みをマイクロメーターで測定し、試料の体積を求め、次いで試科の重量を測定し、1m当りの重量を算出した。試料数を5枚として、その平均値を見掛け密度とした。
【0038】
(5)成形性
ヘッドライナー成形用型を用いて真空成形を行なった。まずポリエステルフィルムと熱成形用板状ウレタンフォーム(厚み5mm、比重0.035)をエポキシ系の接着剤を使用して常法によりドライラミネートして2層構成体を作成した。得られた構成体をポリエステルフィルム が金型側になるようにして、両エッジ部をクリップで把持しつつ表面温度が170℃になるように加熱して、縦1800mm×横1400mm、凹部湾曲部深さ50mmの自動車天井材を成形した。外観は目視で皺や膨れが生じないこと、また成形型通りに形状が追従していることを評価し、以下の基準で成形性を判定した。
○・・・天井材の厚みが均一で外観が良好である。
△・・・天井材の厚みにムラがあるか、外観の一部に不良がある。
×・・・天井材の一部に亀裂があるか、全体が成形型に追従していない。
【0039】
[実施例1〜4および比較例1〜5]
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールおよび表1に記載の共重合成分を使用して、テトラブトキシチタンおよび二酸化ゲルマニウムを重合触媒、正リン酸を安定剤として用い、常法により固有粘度(o−クロロフェノール、35℃)0.67のポリエステル組成物を製造した。なお、このポリエステルには酸化チタンを表1のように含有し、また平均粒径1.7μmの真球状シリカ0.06重量%を含有させた。
【0040】
上記のポリエステルを160℃で4時間乾燥した後、押出機ホッパーに供給して溶融温度275℃で溶融し、ダイを用いて表面温度20℃の冷却ドラム上に押出して急冷し未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを表1に示す条件にて縦延伸、次いでステンターに供給し横延伸を行い、その後3%の弛緩を行いながら熱固定を行なって二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、実施例3および比較例1ではホモのポリエチレンテレフタレートを原料として使用した。
【0041】
得られた延伸ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。比較例1および比較例2は熱固定温度が高すぎることから結晶配向度が増加してしまい成型加工性に劣るものであった。比較例3は融点および熱固定温度が低すぎることから結晶配向度が低下してしまい成型時の耐熱性が悪いものであった。また、比較例5は粒子添加量が高すぎることから延伸工程にて切断が多発してしまい、延伸フィルムが採取できなかった。なお、比較例4は粒子添加量が少ないため光学濃度が低すぎることから、従来技術の項で述べたような成形天井の成形後に黒色フェルトテープを貼るといった煩雑な作業を行なわねばならず、光漏れ性に劣るものであった。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の自動車内装材用ポリエステルフィルムは、充分な隠蔽性と剛性を有し、軽量で成形も容易であり、自動車内装材として好適に用いるこことができる。特に自動車の成形天井の芯材材料として用いると、従来煩雑な目張り取付が必要であった光漏れ防止の作業を省くことができる。
【0044】
例えば本発明のフィルム/ウレタンフォーム/不織布層、あるいは本発明のフィルム/不織布層という構成で、熱ラミネートもしくは接着剤によるドライラミネートによりに積層体を得て、これに金型による深絞り成型を行うことでき、充分な隠蔽性を有する自動車内装材、特に自動車の成形天井を得ることができる。さらにはこの成形にあたり、従来のフィルムでは破断してしまうほどの高加工を欠陥が発生することなく行うことができことから、本発明のフィルムを用いると、ガラス繊維マットを使わずに十分な剛性を得ることができ、環境適性に優れた自動車の内装材として用いることができる。
【0045】
本発明の自動車内装材用ポリエステルフィルムは、隠蔽性および機械的特性が優れしかも軽量な自動車の内装材を製造することができるとともに、廃棄,リサイクルが容易であるなど環境負荷の低減に有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム光学濃度が0.4以上、フィルムの厚み方向の結晶配向度が0.20〜0.65であることを特徴とする自動車内装材用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
フィルムの融点が200〜270℃である、請求項1記載の自動車内装材用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
見掛け密度が1400〜1700kg/mである、請求項1記載の自動車内装材用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2007−30358(P2007−30358A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217503(P2005−217503)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】