説明

自動車用オープニングシール及びその製造方法

【課題】特にコーナー部に組付けた状態で中空シール部に発生する伸縮状態を大きく軽減させることのできる自動車用オープニングシール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】自動車用オープニングシール10に埋設されたワイヤー芯材20の車外側の非熱溶融糸221を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車外側肩口21aを形成する折り曲げ開始位置21cから、中空シール部12の内方側の付け根12aにおけるドア内周側の点51を垂下した位置52までの範囲R1に配置し、車内側の非熱溶融糸222を、ワイヤー本体21の車内側肩口21bを形成する折り曲げ開始位置21eから、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F1に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディのドア開口部周縁に沿って取付けられ、ドア閉時にそのドアに弾接してボディとドアとの隙間をシールするもので、取付基部に剛性を高めるためにワイヤー芯材を埋設した自動車用オープニングシール及びその自動車用オープニングシールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8及び図9に示すように、自動車のボディ1側でドア2の開口部周縁に沿って設けられたフランジ3に取付けられドア2の閉時にそのドア2に弾接してボディ1とドア2との隙間をシールする自動車用オープニングシール10としてワイヤー芯材20が埋設されたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
なお、図8は自動車用オープニングシール10を取付けた自動車の側面図であり、図9は自動車用オープニングシール10を示すもので、図8の100における要部拡大斜視図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−82519号公報
【特許文献2】特開2004−322768号公報
【0004】
自動車用オープニングシール10は、車外側側壁11aと車内側側壁11bと両側壁11a,11bを連結する連結壁11cからなる断面略U字形状の取付基部11と、取付基部11の車外側に設けられた中空シール部12と、取付基部11の車内側側壁11bの内側に設けられフランジ3に弾接して保持する爪部13を備えている。また、取付基部11の車外側側壁11aの内側にはフランジ3に弾接する複数の突起部14が設けられ、取付基部11の車内側にはリップ部15が設けられている。なお、リップ部15から取付基部11の連結壁11cの表面にかけては装飾性を高める被覆材16が設けられ、車内側からの見栄えをよくしている。
【0005】
そして、自動車用オープニングシール10の取付基部11に埋設されたワイヤー芯材20は、図10や図11に示すように、一本のワイヤーを連続的に折り曲げて波形状に形成されたワイヤー本体21と、ワイヤー本体21に部分的に連結されワイヤー本体21の長手方向の伸びを抑制する糸22,23からなり、最終的には一本のワイヤーをU字形状が同方向に一定間隔で連続するように略U字形状に折り曲げられた状態で取付基部11にその長手方向に沿って埋設される。
ワイヤー本体21の長手方向の伸びを抑制する糸の使用としては、図9及び図10に示すように、自動車用オープニングシール10の製造時にゴム成分を加硫させるときの加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸22を複数本(図9及び図10では6本)、配したものや、図11に示すように、加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸22と、押出成形時には溶融しないが加硫設定温度で溶融する熱溶融糸23を組み合わせて(図11では非熱溶融糸22を2本,熱溶融糸23を6本)、配したものがある。
これによれば、自動車用オープニングシール10を押出成形して製造する時に必要以上に引き伸ばされることが防止されるとともに、成形後には取付基部11の剛性が高められるのでフランジ3に対する組付き力が高められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした押出成形されてなる自動車用オープニングシール10では、ワイヤー芯材20に非熱溶融糸22を設けた部分では設けない部分と比較して強度が大きく増すため、コーナー部を含む全長を形成した場合、図9に示すように、取付基部11の車外側側壁11aで最も開放端部側に埋設された非熱溶融糸22(22a)と、取付基部11の車内側側壁11bで最も開放端部側に埋設された非熱溶融糸22(22b)とを結ぶ直線200が中空シール部12に交わる位置201より外周側には中空シール部12に外周側に伸びる力がはたらき、逆に内周側には縮む力がはたらいて折れ皺202が発生するといった問題がある。
このように中空シール部12に伸びや縮みが発生すると、自動車用オープニングシール10の組付け状態が安定化しないので、外観上見栄えが悪くなったり、シール機能が低下するといった問題がある。特に折れ皺202が発生するとその問題は顕著である。
【0007】
なお、特許文献1に記載された発明では、図11で示したように、取付基部11を構成する車外側側壁11a,車内側側壁11b,連結壁11cに対応して埋設されたワイヤー芯材のうち少なくとも一辺部ずつを、加硫設定温度でそれぞれ熱劣化する糸と熱劣化しない糸(非熱溶融糸)で連結するものであるので、押出成形時の引っ張り力に対して強度的に優れるものであるが、加硫設定温度で熱劣化しない糸の配置が一辺部ずつといったように大まかであるので特にコーナー部に自動車用オープニングシール10を組付けた状態で、中空シール部12に発生する伸縮状態を十分軽減するものとはいえない。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明は、高融点糸(非熱溶融糸)をワイヤー本体における車内側側壁11bの少なくとも連結壁11c寄りに位置する部分に配置するものであるが、これは特に車幅方向に膨出するカーブを描いた自動車のボディに取付けられるウエザーストリップに関する技術であるので、コーナー部に自動車用オープニングシール10を組付けた状態で、中空シール部12に発生する伸縮状態を軽減させるものではない。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、特にコーナー部に組付けた状態で中空シール部に発生する伸縮状態を大きく軽減させることのできる自動車用オープニングシール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る自動車用オープニングシールの発明は、ボディ(1)のドア(2)開口部周縁に沿って設けられたフランジ(3)に取付けられ、車外側側壁(11a)と車内側側壁(11b)と両側壁(11a,11b)を連結する連結壁(11c)からなる断面略U字形状の取付基部(11)と、
該取付基部(11)の前記車外側側壁(11a)の内方側位置及び外方側位置からドアの内周側及び外周側に向けてそれぞれ延びるとともに車外側に膨出湾曲し、前記ドア(2)に弾接して車内外をシールする中空シール部(12)と、
前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の内側に設けられ前記フランジ(3)に弾接して保持する一つ又は複数の爪部(13)と、
一本のワイヤーを連続的に折り曲げて波形状に形成されたワイヤー本体(21)と、該ワイヤー本体(21)に部分的に連結されワイヤー本体(21)の長手方向の伸びを抑制しつつ長手方向に略直線的に延びる、加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸(22)からなり、略U字形状に折り曲げられた状態で前記取付基部(11)にその長手方向に沿って埋設されるワイヤー芯材(20)とを備える自動車用オープニングシール(10)であって、
前記ワイヤー芯材(20)の非熱溶融糸(22)を少なくとも車外側と車内側に2本設け、
車外側の非熱溶融糸(221)を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体(21)の車外側肩口(21a)を形成する折り曲げ開始位置(21c)から、前記中空シール部(12)の内方側の付け根(12a)におけるドア内周側の点(51)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(52)までの範囲(R1)に配置するとともに、
車内側の非熱溶融糸(222)を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体(21)の車内側肩口(21b)を形成する折り曲げ開始位置(21e)から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の開放端部側に位置する爪部(13)の付け根における前記車内側側壁(11b)の開放端部側の点(53)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(54)までの範囲(F1)に配置したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る自動車用オープニングシールの製造方法の発明は、ボディ(1)のドア(2)開口部周縁に沿って設けられたフランジ(3)に取付けられ、車外側側壁(11a)と車内側側壁(11b)と両側壁(11a,11b)を連結する連結壁(11c)からなる断面略U字形状の取付基部(11)と、
該取付基部(11)の前記車外側側壁(11a)の内方側位置及び外方側位置からドアの内周側及び外周側に向けてそれぞれ延びるとともに車外側に膨出湾曲し、前記ドア(2)に弾接して車内外をシールする中空シール部(12)と、
前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の内側に設けられ前記フランジ(3)に弾接して保持する一つ又は複数の爪部(13)と、
一本のワイヤーを連続的に折り曲げて波形状に形成されたワイヤー本体(21)と、該ワイヤー本体(21)に部分的に連結されワイヤー本体(21)の長手方向の伸びを抑制しつつ長手方向に略直線的に延びる、加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸(22)からなり、略U字形状に折り曲げられた状態で前記取付基部(11)にその長手方向に沿って埋設されるワイヤー芯材(20)とを備える自動車用オープニングシール(10)を押出して加硫成形する製造方法であって、
前記ワイヤー芯材(20)の非熱溶融糸(22)を少なくとも車外側と車内側に2本設け、
車外側の非熱溶融糸(221)を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体(21)の車外側肩口(21a)を形成する折り曲げ開始位置(21c)から、前記中空シール部(12)の内方側の付け根(12a)におけるドア内周側の点(51)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(52)までの範囲(R1)に配置するとともに、
車内側の非熱溶融糸(222)を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体(21)の車内側肩口(21b)を形成する折り曲げ開始位置(21e)から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の開放端部側に位置する爪部(13)の付け根における前記車内側側壁(11b)の開放端部側の点(53)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(54)までの範囲(F1)に配置したことを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に係る発明は、前記車外側の非熱溶融糸(221)を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体(21)の車外側肩口(21a)を形成する折り曲げエンド位置(21d)から、前記中空シール部(12)の内方側の付け根(12a)におけるドア内周側の点(51)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(52)までの範囲(R2)に配置したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、前記車内側の非熱溶融糸(222)を、前記車外側の非熱溶融糸(221)の配置点をワイヤー本体(21)に対して垂下した車内側の位置(55)から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の開放端部側に位置する爪部(13)の付け根における前記車内側側壁(11b)の開放端部側の点(53)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(54)までの範囲(F2)に配置したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、前記車内側の非熱溶融糸(222)を、前記中空シール部(12)の空洞側で最もドア内周側の点(56)と、前記車外側の非熱溶融糸(221)の配置点を結んだ直線(100)がワイヤー本体(21)の車内側に交わる位置(57)から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の開放端部側に位置する爪部(13)の付け根における前記車内側側壁(11b)の開放端部側の点(53)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(54)までの範囲(F3)に配置したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、前記車内側の非熱溶融糸(222)を、前記中空シール部(12)の最もドア内周側の点(58)と、前記車外側の非熱溶融糸(221)の配置点を結んだ直線(300)がワイヤー本体(21)の車内側に交わる位置(59)から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)の開放端部側に位置する爪部(13)の付け根における前記車内側側壁(11b)の開放端部側の点(53)をワイヤー本体(21)に対して垂下した位置(54)までの範囲(F4)に配置したことを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に係る発明は、前記ワイヤー本体(21)は、前記非熱溶融糸(22)に加えて加硫設定温度で溶融し長手方向に略直線的に延びる熱溶融糸(23)によっても部分的に連結され、前記熱溶融糸(23)を、前記取付基部(11)の連結壁(11c)と、前記取付基部(11)の車外側側壁(11a)で前記車外側の非熱溶融糸(221)の配置点よりも前記車外側側壁(11a)の開放端部側と、前記取付基部(11)の車内側側壁(11b)で前記車内側の非熱溶融糸(222)の配置点よりも前記車内側側壁(11b)の開放端部側とにそれぞれ配置したことを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に係る発明は、前記取付基部(11)の車外側肩口(21a)に、前記取付基部(11)の材料よりも比重の高い被覆材(31)を設けたことを特徴とする。
【0018】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の自動車用オープニングシール及びその製造方法によれば、ボディのドア開口部周縁に沿って設けられたフランジに取付けられる取付基部には、波形状のワイヤー本体を加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸で連結されてなるワイヤー芯材が埋設されているので、自動車用オープニングシールを加硫押出成形する場合に非熱溶融糸は溶融されないでそのまま残る。よって、自動車用オープニングシールを押出成形する時にワイヤー芯材を強い力で引っ張りながら製造しても、非熱溶融糸のはたらきでワイヤー芯材とともに自動車用オープニングシールが必要以上に引き伸ばされることが防止される。また、成形後には取付基部の剛性を高めてフランジに対する組付き力が高められる。
【0020】
そして、非熱溶融糸を少なくとも車外側と車内側に2本設け、車外側の非熱溶融糸を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車外側肩口を形成する折り曲げ開始位置から、中空シール部の内方側の付け根におけるドア内周側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置するとともに、車内側の非熱溶融糸を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車内側肩口を形成する折り曲げ開始位置から、最も取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したので、特に車外側の非熱溶融糸の配置により車外側の非熱溶融糸と車内側の非熱溶融糸の位置を結ぶ直線を、車内側から車外側に向けてドアを閉じたときにドアの外周側から内周側(取付基部の開口部側から連結壁側)にかけて傾けることができる。
これにより傾けられた直線を延長して中空シール部と交わる位置は、従来例(図9)の場合と比較してドアの外周側から内周側(取付基部の開口部側から連結壁側)にすることができるので、自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部に縮む力がはたらく領域が狭くなり折れ皺の発生を抑制することができる。
【0021】
また、車外側の非熱溶融糸と車内側の非熱溶融糸の位置を結ぶ直線を傾けることにより、フランジに対する取付基部の車内側側壁側からの締め付け力が大きくなり、車内側側壁側に設けられた爪部でフランジを十分保持することができる。
これにより、自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部において安定した状態で組み付けることができるとともに組み付け後にもその安定した状態を維持することができる。
【0022】
また、本願発明によれば、車外側の非熱溶融糸を配置する範囲を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車外側肩口を形成する折り曲げ開始位置からではなく折り曲げエンド位置からとすることで、車外側の非熱溶融糸は取付基部の連結壁側から車外側側壁部側にかわるのでワイヤー本体を連結するときのバランスがよくなり、車内側の非熱溶融糸とともに自動車用オープニングシールを押出成形する時にワイヤー芯材とともに自動車用オープニングシールが必要以上に引き伸ばされることが効果的に防止される。
【0023】
また、本願発明によれば、車内側の非熱溶融糸を配置する範囲を、車外側の非熱溶融糸の配置点をワイヤー本体に対して垂下した車内側の位置からとさらに限定したり、あるいは、中空シール部の空洞側で最もドア内周側の点と車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置からとさらに限定したり、あるいは、中空シール部の最もドア内周側の点と車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置からとさらに限定するので、これにより傾けられた直線を延長して中空シール部と交わる位置は、ドアの外周側から内周側(取付基部の開口部側から連結壁側)にさらに寄るので、自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部に縮む力がはたらく領域がさらに狭くなり折れ皺の発生を抑制することができる。
また、フランジに対する取付基部の車内側側壁側からの締め付け力もさらに大きくなり、車内側側壁側に設けられた爪部でフランジを十分保持することができる。
しかし、いずれの範囲(後に実施例にて示すF1、F2、F3、F4)においても、車内側側壁の開放端部側の位置は、一つ又は複数の爪部のうち最も取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までとしており、これを越えて開放端部側に配置すると自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに、自動車用オープニングシール自体が傾むくことがあり、所望する組付け状態とならないため好ましくない。
【0024】
なお、車内側の非熱溶融糸を配置する範囲を、中空シール部の最もドア内周側の点と車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置から、一つ又は複数の爪部のうち最も取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置した場合には、車外側の非熱溶融糸と車内側の非熱溶融糸の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部と交わる位置は、中空シール部の最もドア内周側の点となるかそれよりもさらにドア内周側になるので、自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部に縮む力ははたらかない。
【0025】
また、車内側の非熱溶融糸を配置する点を、中空シール部の空洞側で最もドア内周側の点と車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置に配置した場合には、車外側の非熱溶融糸と車内側の非熱溶融糸の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部と交わる位置は、ドアを閉じたときに中空シール部の空洞側で最もドア内周側の点となるので、自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部に縮む力は中空シール部の厚み分だけとなるので折れ皺が発生することはほとんどない。そして、車内側の非熱溶融糸を配置する点を、中空シール部の空洞側で最もドア内周側の点と車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置から、一つ又は複数の爪部のうち最も取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置側に寄った位置にすると、車外側の非熱溶融糸と車内側の非熱溶融糸の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部と交わる位置は、ドアを閉じたときに中空シール部の空洞側で最もドア内周側の点よりもさらにドア内周側に寄るので一層折れ皺が発生することはない。
【0026】
また、本願発明によれば、ワイヤー本体は、非熱溶融糸に加えて加硫設定温度で溶融し長手方向に略直線的に延びる熱溶融糸によっても部分的に連結されるので、加硫前では強い引っ張り力にも耐えることができる。また、熱溶融糸は、取付基部の連結壁と、取付基部の車外側側壁で車外側の非熱溶融糸の配置点よりも車外側側壁の開放端部側と、取付基部の車内側側壁で前記車内側の非熱溶融糸の配置点よりも車内側側壁の開放端部側とにそれぞれ配置されるのでバランスがよく、しかも加硫によって熱溶融糸は消失するので自動車用オープニングシールを自動車のボディ側コーナー部に組み付けた場合に中空シール部を伸縮させる要因にはならない。
【0027】
また、本願発明によれば、取付基部の車外側肩口に、取付基部の材料よりも比重の高い被覆材を設けたので、自動車のボディ側コーナー部に自動車用オープニングシールを安定して組み付けることができ、この部分での皺の発生も無い。そしてこの部位の材料の強度によっては車内側の非熱融解糸を熱融解糸に変更することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車用オープニングシールを示す断面図である。
【図2】図1に示すワイヤー芯材を示すものであり、(a)はワイヤー芯材が折り曲げられる前の状態を示す平面図であり、(b)はワイヤー芯材が折り曲げられた後の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る別の自動車用オープニングシールを示す断面図である。
【図4】図3に示す自動車用オープニングシールの製造工程を示すブロック図である。
【図5】図4に示す各区間における状態を示すものであり、(a)は区間Aにおけるワイヤー芯材の平面図と断面図であり、(b)は区間Bにおけるワイヤー芯材の断面図であり、(c)は区間Cにおける自動車用オープニングシールの断面図であり、(d)は区間Dにおける自動車用オープニングシールの断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るさらに別の自動車用オープニングシールを示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るさらに別の自動車用オープニングシールを示す断面図である。
【図8】車両の外観側面図である。
【図9】従来例に係る自動車用オープニングシールが取付けられた状態を示す、図8の100で示した部分の一部断面拡大斜視図である。
【図10】図9に示す自動車用オープニングシールに埋設されるワイヤー芯材が折り曲げられる前の状態を示すもので、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図11】図9に示す自動車用オープニングシールに埋設される別のワイヤー芯材が折り曲げられる前の状態を示すもので、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る自動車用オープニングシール10について説明する。図1は本発明の実施形態に係る自動車用オープニングシール10の断面を示し、図2は図1に示すワイヤー芯材21の断面を示している。従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0030】
本発明の実施形態に係る自動車用オープニングシール10は、主に取付基部11と、中空シール部12と、爪部13と、ワイヤー芯材20を備えている。
取付基部11は、車外側側壁11aと車内側側壁11bと両側壁11a,11bを連結する連結壁11cからなる断面略U字形状であり、その開放部側から、図8、図9で示したものと同様に、ボディ1のドア2開口部周縁に沿って設けられたフランジ3が挿入されるようにしてフランジ3に取付けられる。フランジ3はドア2開口部周縁に沿って内方に向けて伸びている。
【0031】
中空シール部12は、取付基部11の車外側側壁11aの内方側位置及び外方側位置からドア2の内周側及び外周側に向けてそれぞれ付け根12a,12bが延びるとともに車外側に向けて膨出湾曲している。ドア2の閉時には、この中空シール部12がドア2に弾接して車内外をシールするようになっている。
また、爪部13は、取付基部11の車内側側壁11bの内側(車外側)から連結壁11c側に向けて延びるように設けられ、取付基部11の車外側側壁11aの内側に設けられた複数の突起部14(ここでは2つ)とともにフランジ3を挟持するように弾接して保持する。なお、取付基部11の車内側にはリップ部15が設けられていて、そのリップ部15から取付基部11の連結壁11cの表面にかけては装飾性を高めるための被覆材16が設けられていて車内側からの見栄えをよくしている。
【0032】
ワイヤー芯材20は、図2(a)に示すように、一本のワイヤーを連続的に折り曲げて波形状に形成されたワイヤー本体21と、ワイヤー本体21に部分的に連結されワイヤー本体21の長手方向の伸びを抑制する糸22からなり、図2(b)に示すように、最終的には一本のワイヤーをU字形状が同方向に一定間隔で連続するように、車外側肩口21aと車内側肩口21bを中心にして略U字形状に折り曲げられた状態で取付基部11にその長手方向に沿って埋設される。なお、符号21cは、車外側肩口21aを形成するさいの折り曲げ開始位置であり、符号21dは、車外側肩口21aを形成するさいの折り曲げエンド位置である。同様に、符号21eは、車内側肩口21bを形成するさいの折り曲げ開始位置であり、符号21fは、車内側肩口21bを形成するさいの折り曲げエンド位置である。
ワイヤー本体21の長手方向の伸びを抑制する糸22は、自動車用オープニングシール10の製造時にゴム成分を加硫させるときの加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸であり、車外側と車内側にそれぞれ1本、計2本221,222を設けている。
【0033】
そして、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222を配する位置を次のように具体的に規定したものである。
【0034】
まず、車外側の非熱溶融糸221については、図1に示すように、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態において、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車外側肩口21aを形成する折り曲げ開始位置21cから、中空シール部12の内方側の付け根12aにおけるドア内周側の点51をワイヤー本体21に対して垂下した位置52までの範囲R1に配置するように規定している。なお、非熱溶融糸221の位置が車外側肩口21aにあると、ワイヤー本体21を、図2(a)に示したような展開状態から、図2(b)に示したように湾曲させる際に非熱溶融糸221が車外側肩口21aでズレを起こしてしまうので車外側肩口21aには配置しないほうがよい。そのため、車外側の非熱溶融糸221を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車外側肩口21aを形成する折り曲げエンド位置21dから、中空シール部12の内方側の付け根12aにおけるドア内周側の点51をワイヤー本体21に対して垂下した位置52までの範囲R2に配置するように規定してもよい。
【0035】
車外側の非熱溶融糸221を配置する範囲を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車外側肩口21aを形成する折り曲げ開始位置21cからではなく折り曲げエンド位置21dからとすると、車外側の非熱溶融糸221は取付基部11の連結壁11c側から車外側側壁部11a側にかわるのでワイヤー本体21を連結するときのバランスがよくなり、車内側の非熱溶融糸222とともに自動車用オープニングシール10を押出成形する時にワイヤー芯材20とともに自動車用オープニングシール10が必要以上に引き伸ばされることが効果的に防止される。
【0036】
次に、車内側の非熱溶融糸222については、図1に示すように、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態において、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車内側肩口21bを形成する折り曲げ開始位置21eから、取付基部11の車内側側壁11bで最も開放端部側に位置する爪部、ここでは爪部13は一つなのでその爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F1に配置するように規定している。なお、非熱溶融糸222の位置が車内側肩口21bにあると、ワイヤー本体21を、図2(a)に示したような展開状態から、図2(b)に示したように湾曲させる際に非熱溶融糸222が車内側肩口21bでズレを起こしてしまうので車内側肩口21bには配置しないほうがよい。そのため、車内側の非熱溶融糸222を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車内側肩口21bを形成する折り曲げエンド位置21fから、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲に配置するように規定してもよい。
車内側の非熱溶融糸222を配置する範囲を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車内側肩口21bを形成する折り曲げ開始位置21eからではなく折り曲げエンド位置21fからとすると、車内側の非熱溶融糸222は取付基部11の連結壁11c側から車内側側壁部11b側にかわるのでワイヤー本体21を連結するときのバランスがよくなり、車外側の非熱溶融糸221とともに自動車用オープニングシール10を押出成形する時にワイヤー芯材20とともに自動車用オープニングシール10が必要以上に引き伸ばされることが効果的に防止される。
【0037】
また、車内側の非熱溶融糸222を、車外側の非熱溶融糸221の配置点をワイヤー本体21に対して垂下した車内側の位置55から、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F2として、範囲F1内でさらに範囲を狭く限定するようにして配置することもできる。
【0038】
さらに、車内側の非熱溶融糸222を、中空シール部12の空洞側で最もドア内周側の点(ドア内周側端部)56と、車外側の非熱溶融糸221の配置点を結んだ直線100がワイヤー本体21の車内側に交わる位置57から、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F3として、範囲F2内でさらに範囲を狭く限定するようにして配置することもできる。
【0039】
このように、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222を配置したものに加えて、図3に示すように、ワイヤー本体21を、加硫設定温度で溶融し長手方向に略直線的に延びる熱溶融糸23によって部分的に連結するようにしてもよい。ここでは、熱溶融糸23を、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態において、取付基部11の連結壁11c側で両肩口21a,21bを除く部分に2本と、取付基部11の車外側側壁11aで車外側の非熱溶融糸221の配置点よりも車外側側壁11aの開放端部側に2本と、取付基部11の車内側側壁11bで車内側の非熱溶融糸222の配置点よりも車内側側壁11bの開放端部側に1本の計5本を配置した。
また、非熱溶融糸22を追加することもできる。図3では、取付基部11の車内側側壁11bで車内側の非熱溶融糸222の配置点よりも連結壁11c側に2本の非熱溶融糸22(223と224)を設けて引っ張り力に対する強度を向上させたものである。
【0040】
これによれば、ワイヤー本体20は、非熱溶融糸22に加えて加硫設定温度で溶融し長手方向に略直線的に延びる熱溶融糸23によっても部分的に連結されるので、加硫前では強い引っ張り力にも耐えることができる。また、熱溶融糸23は、取付基部の三辺にそれぞれ配置されるのでバランスがよく、しかも加硫によって熱溶融糸23は消失するので自動車用オープニングシール10を自動車のボディ側コーナー部に組み付けた場合に中空シール部12を伸縮させる要因にはならない。
【0041】
ここで、非熱溶融糸22(221、222、223,224)とは、例えば融点が230〜280度(℃)で、押出成形時(約100度(℃))にも、加硫炉(200〜250度(℃))でも溶融しない糸であり、ポリエステル樹脂(例:PET(ポリエチレンテレフタレート))やポリアミド樹脂(例:6ナイロン,6−6ナイロン)からなるものが考えられる。
また、熱溶融糸23とは、例えば融点が100〜160度(℃)で、押出成形時(約100度(℃))には溶融しないが、加硫炉(200〜250度(℃))では溶融する糸であり、ポリオレフィン樹脂(例:PP(ポリプロピレン),PE(ポリエチレン))からなるものが考えられる。
また、自動車用オープニングシール10は、EPDMなどのゴム材料から構成されているが、その他のゴム材料から構成されるものでもよい。また、中空シール部12のシール面側にはスポンジ材(例えば、EPDMスポンジ)を使用し、その他の部分にはソリッド材(例えば、EPDMソリッド)を使用したが特に限定されるものではない。
【0042】
次に図4及び図5を参照して、図3に示す自動車用オープニングシール10の製造方法の一例について説明する。
まず、ワイヤーキャリア(W/C)供給工程では、ワイヤーキャリア(W/C)供給装置41から、図5(a)で示すように、展開した状態のワイヤー芯材20が送り込まれる。ワイヤー芯材20のワイヤー本体21は、4本の非熱溶融糸22(221、222、223,224)と5本の熱溶融糸23で長手方向に部分的に連結されている。
このとき、非熱溶融糸221の配置は、上述したように、図3及び図5(d)に示すように、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態(最終製品の状態)において、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車外側肩口21aを形成する折り曲げ開始位置21cから、中空シール部12の内方側の付け根12aにおけるドア内周側の点51をワイヤー本体21に対して垂下した位置52までの範囲R1でしかも車外側肩口21aを避ける位置になるように予め配置されている。
また、非熱溶融糸222の配置も、上述したように、図3及び図5(d)に示すように、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態において、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車内側肩口21bを形成する折り曲げ開始位置21eから、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F1でしかも車内側肩口21bを避ける位置になるように予め配置されている。
【0043】
さらに、熱溶融糸23の配置も、上述したように、図3及び図5(d)に示すように、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態において、取付基部11の連結壁11c側で両肩口21a,21bを除く部分に2本と、取付基部11の車外側側壁11aで車外側の非熱溶融糸221の配置点よりも車外側側壁11aの開放端部側に2本と、取付基部11の車内側側壁11bで車内側の非熱溶融糸222の配置点よりも車内側側壁11bの開放端部側に1本の計5本が位置するように予め配置されている。
また、非熱溶融糸223,224の配置も、上述したように、図3及び図5(d)に示すように、ワイヤー本体21が略U字形状に折り曲げられて取付基部11に埋設された状態において、取付基部11の車内側側壁11bで車内側の非熱溶融糸222の配置点よりも連結壁11c側の位置になるように予め配置されている。
【0044】
次に、プリベント工程では、プリベント装置42において、展開した状態のワイヤー芯材20は、図5(b)で示すように、その断面において両端が折り曲げられ皿状の断面形状にされる。なお、両端が折り曲げられるのでなく、一方の端(片端)だけが折り曲げられるようにしてもよい。
【0045】
次に、押出工程では、押出機43によって、取付基部11の断面を、図5(c)に示すように、皿状の断面形状にプリベントされたワイヤー芯材20の形状に沿って、断面略U字形よりも開口部を広くして同じく皿状(断面略U字形よりも開口部を左右に約45度づつ広げている)にし、しかもワイヤー芯材20を埋設した状態で加硫炉44内に自動車用オープニングシール10が押出される。このとき、取付基部11に対して、中空シール部12、爪部13、突起部14、リップ部15、被覆部16が一体的に押出成形される。
また、加硫炉44の出口側には引き取り機45が設けられ、押出機43から自動車用オープニングシール10とともに押し出されるワイヤー芯材20を強い力で引っ張りながら加硫炉44に誘導している。
【0046】
加硫工程では、自動車用オープニングシール10が加硫炉44内で200〜250度(℃)に加熱処理され、これによりゴム成分が加硫され一定の弾性及び強度が確保される。熱溶融糸23は、加硫炉44内を通過することによって溶けて消えてしまうが、4本の非熱溶融糸221,222,223,224は加硫炉44内を通過した後にも溶けないので加硫工程中に自動車用オープニングシール10が特に引き伸ばされることはない。
【0047】
そして、フォーミング加工機46において、加硫された自動車用オープニングシール10はサイジングダイに通され、図5(d)に示すように、取付基部11が断面略U字形になるように開口部が狭くされる。
その後、冷却処理などが施されて、最終的に自動車用オープニングシール10が製造される。
【0048】
このように製造される自動車用オープニングシール10によれば、ボディ1のドア開口部周縁に沿って設けられたフランジ3に取付けられる取付基部11には、波形状のワイヤー本体21を加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸22(221、222、223,224)で連結されてなるワイヤー芯材20が埋設されているので、自動車用オープニングシール10を加硫押出成形する場合に非熱溶融糸22は溶融されないでそのまま残る。よって、自動車用オープニングシール10を押出成形する時にワイヤー芯材20を強い力で引っ張りながら製造しても、非熱溶融糸22のはたらきでワイヤー芯材20とともに自動車用オープニングシール10が必要以上に引き伸ばされることが防止される。また、成形後には取付基部11の剛性を高めてフランジ3に対する組付き力が高められる。
【0049】
そして、非熱溶融糸22を少なくとも車外側と車内側に2本設け、車外側の非熱溶融糸221を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車外側肩口21aを形成する折り曲げ開始位置21cから、中空シール部12の内方側の付け根12aにおけるドア内周側の点51をワイヤー本体21に対して垂下した位置52までの範囲R1に配置するとともに、車内側の非熱溶融糸222を、略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体21の車内側肩口21bを形成する折り曲げ開始位置21eから、爪部13の付け根における車内側側壁の開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F1に配置したので、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222の位置を結ぶ直線を、車内側から車外側に向けてドア2の外周側から内周側(取付基部11の開口部側から連結壁11c側)にかけて傾けることができる。
これにより傾けられた直線を延長して中空シール部12と交わる位置は、従来例(図9)の場合と比較してドア2の外周側から内周側(取付基部11の開口部側から連結壁11c側)になるので、自動車用オープニングシール10を自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部12に縮む力がはたらく領域が狭くなり折れ皺202の発生を抑制することができる。
【0050】
また、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222の位置を結ぶ直線を傾けることにより、フランジ3に対する取付基部11の車内側側壁11b側からの締め付け力が大きくなり、車内側側壁11b側に設けられた爪部13でフランジ3を十分保持することができる。
これにより、自動車用オープニングシール10を自動車のボディ側コーナー部において安定した状態で組み付けることができるとともに組み付け後にもその安定した状態を維持することができる。
【0051】
また、車内側の非熱溶融糸222を配置する範囲を、F1の範囲から、F2の範囲、F3の範囲とだんだんと限定することによって、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部12と交わる位置は、ドア2の外周側から内周側(取付基部11の開口部側から連結壁11c側)にさらに寄るので、自動車用オープニングシール10を自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部12に縮む力がはたらく領域がさらに狭くなり折れ皺202の発生を抑制することができる。
また、フランジ3に対する取付基部11の車内側側壁側11bからの締め付け力もさらに大きくなり、車内側側壁側11bに設けられた爪部13でフランジ3を十分保持することができる。
【0052】
なお、車内側の非熱溶融糸222を配置する点を、F3の範囲のように、中空シール部12の空洞側で最もドア内周側の点56と車外側の非熱溶融糸221の配置点を結んだ直線100がワイヤー本体21の車内側に交わる位置57に配置の上にした場合には、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部12と交わる位置は、中空シール部12の空洞側で最もドア内周側の点56となり、自動車用オープニングシール10を自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部12に縮む力は中空シール部12の厚み分だけとなるので折れ皺202が発生することはほとんどない。そして、車内側の非熱溶融糸222を配置する点を、直線100がワイヤー本体21の車内側に交わる位置57から、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54側に寄った位置にすると、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部12と交わる位置は、中空シール部12の空洞側で最もドア内周側の点56よりもさらにドア内周側に寄るので一層折れ皺が発生することはない。
【0053】
なお、本実施形態では、取付基部11の車外側側壁11aの内方側位置から延びる中空シール部12の付け根12aを、車外側側壁11aの外方側位置から延びる中空シール部12の付け根12bと比較してドア2の内周側に向けてより倒したものを示したが、例えば、図6に示すように、中空シール部12の内方側に位置する付け根12aも外方側に位置する付け根12bと同様の角度で取付基部11の車外側側壁11aから突設する、すなわち断面略ハの字形状に延びる中空シール部12を備える自動車用オープニングシール10にも適用することができる。
【0054】
また、本実施形態では、車内側の非熱溶融糸222の配置範囲として、中空シール部12の空洞側で最もドア内周側の点(ドア内周側端部)56と、車外側の非熱溶融糸221の配置点を結んだ直線100がワイヤー本体21の車内側に交わる位置57から、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F3を示したが、これをさらに狭く限定するようにして配置することもできる。すなわち、図6に示すように、中空シール部12の最もドア内周側の点(ドア内周側端部)58と、車外側の非熱溶融糸221の配置点を結んだ直線300がワイヤー本体21の車内側に交わる位置59から、爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54までの範囲F4に、車内側の非熱溶融糸222を配置させることもできる。
【0055】
これによれば、車外側の非熱溶融糸221と車内側の非熱溶融糸222の位置を結ぶ直線を延長して中空シール部12と交わる位置は、中空シール部12の最もドア内周側の点となるかそれよりもさらにドア内周側になるので、自動車用オープニングシール10を自動車のボディ側コーナー部に組み付けたときに中空シール部12に縮む力ははたらかない。
【0056】
また、本実施形態では、取付基部11の車内側側壁11bの内側に爪部13を一つ設けたが、図7に示すように爪部13、17を複数(ここでは2つ)設けることもできる。この場合、車内側の非熱溶融糸222における車内側側壁11bの開放端部側の配置限界点は、複数の爪部13、17のうち最も取付基部11の車内側側壁11bの開放端部側に位置する爪部13が基準となり、その爪部13の付け根における車内側側壁11bの開放端部側の点53をワイヤー本体21に対して垂下した位置54となる。
【0057】
また、図7に示すように、取付基部11の車外側肩口21aに、被覆材16と比較して広範囲に取付基部11の材料よりも比重の高い被覆材31(例えば、比重0.9〜1.3)を設けることによって、ボディ1のドア2開口部周縁のコーナー部に自動車用オープニングシール10を安定して組み付けることができ、この部分での皺の発生も無い。そしてこの部位の材料の強度によっては車内側の非熱融解糸221を熱融解糸に変更することも可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 ボディ
2 ドア
3 フランジ
10 自動車用オープニングシール
11 取付基部
11a 車外側側壁
11b 車内側側壁
11c 連結壁
12 中空シール部
12a 付け根
12b 付け根
13 爪部
14 突起部
15 リップ部
16 被覆材
17 爪部
20 ワイヤー芯材
21 ワイヤー本体
21a 車外側肩口
21b 車内側肩口
21c 折り曲げ開始位置
21d 折り曲げエンド位置
21e 折り曲げ開始位置
21f 折り曲げエンド位置
22(221、222、223、224) 非熱溶融糸
23 熱溶融糸
31 被覆材
41 ワイヤーキャリア(W/C)供給装置
42 プリベント装置
43 押出機
44 加硫炉
45 引き取り機
46 フォーミング加工機
100 直線
200 直線
202 折れ皺
300 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディのドア開口部周縁に沿って設けられたフランジに取付けられ、車外側側壁と車内側側壁と両側壁を連結する連結壁からなる断面略U字形状の取付基部と、
該取付基部の前記車外側側壁の内方側位置及び外方側位置からドアの内周側及び外周側に向けてそれぞれ延びるとともに車外側に膨出湾曲し、前記ドアに弾接して車内外をシールする中空シール部と、
前記取付基部の車内側側壁の内側に設けられ前記フランジに弾接して保持する一つ又は複数の爪部と、
一本のワイヤーを連続的に折り曲げて波形状に形成されたワイヤー本体と、該ワイヤー本体に部分的に連結されワイヤー本体の長手方向の伸びを抑制しつつ長手方向に略直線的に延びる、加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸からなり、略U字形状に折り曲げられた状態で前記取付基部にその長手方向に沿って埋設されるワイヤー芯材とを備える自動車用オープニングシールであって、
前記ワイヤー芯材の非熱溶融糸を少なくとも車外側と車内側に2本設け、
車外側の非熱溶融糸を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車外側肩口を形成する折り曲げ開始位置から、前記中空シール部の内方側の付け根におけるドア内周側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置するとともに、
車内側の非熱溶融糸を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車内側肩口を形成する折り曲げ開始位置から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における前記車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したことを特徴とする自動車用オープニングシール。
【請求項2】
ボディのドア開口部周縁に沿って設けられたフランジに取付けられ、車外側側壁と車内側側壁と両側壁を連結する連結壁からなる断面略U字形状の取付基部と、
該取付基部の前記車外側側壁の内方側位置及び外方側位置からドアの内周側及び外周側に向けてそれぞれ延びるとともに車外側に膨出湾曲し、前記ドアに弾接して車内外をシールする中空シール部と、
前記取付基部の車内側側壁の内側に設けられ前記フランジに弾接して保持する一つ又は複数の爪部と、
一本のワイヤーを連続的に折り曲げて波形状に形成されたワイヤー本体と、該ワイヤー本体に部分的に連結されワイヤー本体の長手方向の伸びを抑制しつつ長手方向に略直線的に延びる、加硫設定温度で溶融しない非熱溶融糸からなり、略U字形状に折り曲げられた状態で前記取付基部にその長手方向に沿って埋設されるワイヤー芯材とを備える自動車用オープニングシールを押出して加硫成形する製造方法であって、
前記ワイヤー芯材の非熱溶融糸を少なくとも車外側と車内側に2本設け、
車外側の非熱溶融糸を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車外側肩口を形成する折り曲げ開始位置から、前記中空シール部の内方側の付け根におけるドア内周側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置するとともに、
車内側の非熱溶融糸を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車内側肩口を形成する折り曲げ開始位置から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における前記車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したことを特徴とする自動車用オープニングシールの製造方法。
【請求項3】
前記車外側の非熱溶融糸を、前記略U字形状に折り曲げられたワイヤー本体の車外側肩口を形成する折り曲げエンド位置から、前記中空シール部の内方側の付け根におけるドア内周側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用オープニングシール及びその製造方法。
【請求項4】
前記車内側の非熱溶融糸を、前記車外側の非熱溶融糸の配置点をワイヤー本体に対して垂下した車内側の位置から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における前記車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の自動車用オープニングシール及びその製造方法。
【請求項5】
前記車内側の非熱溶融糸を、前記中空シール部の空洞側で最もドア内周側の点と、前記車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における前記車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したことを特徴とする請求項3に記載の自動車用オープニングシール及びその製造方法。
【請求項6】
前記車内側の非熱溶融糸を、前記中空シール部の最もドア内周側の点と、前記車外側の非熱溶融糸の配置点を結んだ直線がワイヤー本体の車内側に交わる位置から、前記一つ又は複数の爪部のうち最も前記取付基部の車内側側壁の開放端部側に位置する爪部の付け根における前記車内側側壁の開放端部側の点をワイヤー本体に対して垂下した位置までの範囲に配置したことを特徴とする請求項3に記載の自動車用オープニングシール及びその製造方法。
【請求項7】
前記ワイヤー本体は、前記非熱溶融糸に加えて加硫設定温度で溶融し長手方向に略直線的に延びる熱溶融糸によっても部分的に連結され、前記熱溶融糸を、前記取付基部の連結壁と、前記取付基部の車外側側壁で前記車外側の非熱溶融糸の配置点よりも前記車外側側壁の開放端部側と、前記取付基部の車内側側壁で前記車内側の非熱溶融糸の配置点よりも前記車内側側壁の開放端部側とにそれぞれ配置したことを特徴とする請求項2に記載の自動車用オープニングシールの製造方法。
【請求項8】
前記取付基部の車外側肩口に、前記取付基部の材料よりも比重の高い被覆材を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載の自動車用オープニングシール及びその製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−180002(P2012−180002A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43851(P2011−43851)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】