説明

自動車用フロアボード構造

【課題】 中間棚部がラゲージルームの床面における車体後方側上部の配置された場合に、中間棚部の下方に形成された収容荷室の荷物の出し入れを後部ドアを開閉することなく可能し、窓ガラスを開閉しただけでは前記収容室からの荷物の出し入れを容易にした。
【解決手段】 床面6の車体前方側に配設したフロアボード7の車体前端側裏面にフロアボード支持アーム体8の一端を折り畳み可能に設けて、フロアボード支持アーム体8の他端を床面6に揺動可能に装着して、フロアボード支持アーム体8を起立させることによってフロアボード7により床面6の車体前方側上に中間棚部を形成し、また、フロアボード支持アーム体8を更に車体後方側に倒して後部側係止部2bに係止して、フロアボード7を懸架することにより中間棚部を床面6の車体後方側上に配置し、更に、フロアボード7の裏面側に棚形成部材13を配設して、フロアボード7と床面6との間に補助棚部を形成し、かつ、フロアボード7が車体前方側に開動して補助棚部の上面を開口するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハッチバック車やワンボックス車のような車体後部にラゲージルームを有する自動車のフロアボード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動車用フロアボード構造として、特許文献1に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭60−111743号公報(第2図)。
【0003】
特許文献1に記載された自動車用フロアボード構造によれば、後方ドア(後部ドア)下端付近から車室前方に向かって、かつ車体内側側面間の幅に略等しい幅を持って延在し所定の長さで終端する後部床と、この後部床の前方にこの後部床の床面より下がった位置で始端し、更に車室前方に向かってかつ車体内側面間の幅に略等しい幅をもって延在する前部床と、この前部床の上方で前記後部床の床面と略同一平面に位置する延長床とを具え、前記後部床の終端付近から前記前部床の始端付近のいずれかの床部分又は車体内側面部分に設けた第1の支持部材と、前記延長床の前縁部付近に設けた第2の支持部材と、前記第1及び第2の支持部材にそれぞれ回動自在に取付け前記第1及び第2の支持部材間を連結するロッド部材と、前記延長床を前記後部床側に引き上げたとき一定高さで保持すべく設けた高さ保持部材とを備えて構成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の自動車用フロアボード構造によれば、延長床が後部床側に引き上げたとき一定の高さで保持することができ、このような状態にある延長床上に、中間棚的に使用して、荷物等を載置することができ、しかも、後方ドアの上部側を構成する窓ガラス(ハッチガラス)が後方ドアに対して開閉可能に構成している場合等には、後方ドアを開閉しなくても、窓ガラスのみを開閉すれば、延長床上の荷物等を出し入れでき、便利であるといえる。
【0005】
しかしながら、延長床は、後部床側に引き上げられた状態では、延長床の下部側と後部床とが区画形成する収容荷室部の上部を覆っていることになり、この状態から、延長床を上方に開動することができないために、前記収容荷室部内に収容された荷物等を出し入れするには、後方ドアをその都度開閉する必要が有り非常に面倒であるとともに、たとえ、延長床が開動できるように構成したとしても、窓ガラスを開閉して、前記収容荷室の荷物を出し入れしようとしても、後方ドアの上端部付近から後部床までは相当の距離があり、車体後部から手を差し延べても、荷物等に中々届かない場合があり、たとえ届いたとしても、当該荷物等を取り出すのがむずかしい場合が考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、中間棚部がラゲージルームの床面における車体後方側上部に配置された場合に、中間棚部の下方に形成された収容荷室の荷物の出し入れを後部ドアを開閉することなく可能にすると共に、窓ガラスを開閉しただけでは前記収容室からの出し入れが難しい荷物を容易に出し入れ可能に構成した自動車用フロアボード構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る自動車用フロアボード構造は、ラゲージルームの床面における車体前方側にフロアボードを配設し、該フロアボードの車体前端側裏面にフロアボード支持アーム体の一端を折り畳み可能に設けると共に、フロアボード支持アーム体の他端を前記床面に揺動可能に装着して、当該他端側を中心に前記フロアボード支持アーム体を起立させることによって前記フロアボードにより前記床面における車体前方側上に中間棚部を形成するように構成しており、また、前記フロアボード支持アーム体の一端側を更に車体後方側に倒した位置において前記フロアボード支持アーム体を前記ラゲージルームの側壁部の車体後方側に懸架することにより前記中間棚部を前記床面の車体後方側上に配置するように構成し、更に、前記フロアボードの下面側にネット状或いはシート状の棚形成部材を装着して、該棚形成部材によって前記フロアボードと前記床面との間に補助棚部を配置し、かつ、前記フロアボードがその車体前端側を中心に車体前方側に開動して該補助棚部の上面が開口するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成する本発明によれば、フロアボードが構成する中間棚部が床面の車体後方側上に配置された場合に、当該中間棚部は車体前方側に開動できることから、中間棚部下方の収容荷室の上部を開口することができて、後部ドアの窓ガラス部分を開閉するのみで、当該収容荷室から荷物等の出し入れが可能となり、しかも、フロアボードの裏面側にネット状或いはシート状の棚形成部材を装着し、棚形成部材によってフロアボードと床面との間に補助棚部を形成したことから、小物等を棚形成部材上に収容するようにしておけば、窓ガラス部分のみを開閉するだけで、乗員が大きく手を延ばさなくても容易に小物等の出し入れが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図を用いて、本発明にかかる実施の形態を採用した自動車用フロアボード構造について説明する。
【0010】
図1は本発明に係る実施の形態におけるフロアボードがラゲージルームの車体前方側の床面上に配置された状態を描画した自動車の後部側側面断面図、図2は同じくフロアボードをラゲージルームの床面より立ち上げて中間棚部を形成した状態を描画した自動車の後部側側面断面図、図3は同じくフロアボードをラゲージルームの床面より立ち上げて中間棚部を形成した状態を自動車の後部側を一部切除して描画した斜視図、図4は図2の状態よりフロアボードをラゲージルームの車体後方側にスライドさせて、当該中間棚部を車体後方側の床面上に形成した状態を描画した自動車の後部側側面断面図、図5は同じく図4に示す状態よりフロアボードをその車体前方側を中心に上方に回動させて補助棚部上方を開口した状態を描画した自動車の後部側を一部切除して描画した斜視図である。
【0011】
先ず、図1において、自動車1の後部側に、ラゲージルーム2を配置構成している。
【0012】
ラゲージルーム2の車体前方は、リアシート3に区切られるも、車室4に連通しており、ラゲージルーム2の車体後方壁は開口して、この開口部が後部ドア5により開閉されるようになっている。
【0013】
後部ドア5の上部は、例えばハッチガラス等の窓ガラス5aで構成しており、窓ガラス5aは後部ドア5に対して独立して前記開口部の上部を開閉できるようになっている。
【0014】
ラゲージルーム2を構成する床面6は、その車体前方側略半部6aが凹部6dに形成されており、凹部6dには、フロアボード7が収容されている。
【0015】
フロアボード7は、その車体前端両側にそれぞれフロアボード支持アーム体8,8の一端側が折り畳み可能に設けられており、フロアボード支持アーム体8,8の他端側は、凹部6dの車体後側端部に揺動可能に装着されている。
【0016】
そして、フロアボード7は、図1に示すように、フロアボード支持アーム体8,8が折り畳まれてフロアボード7の裏面側に添設している場合には、凹部6d内に収容され、しかも、フロアボード7の上面が床面6の車体後方側略半部6bの上面6cと略面一になって連続するように構成されている。
【0017】
フロアボード支持アーム体8,8は、その一端側において、車体左右方向連結杆9によりそれぞれ互いに連結されており、車体左右方向連結杆9の両側端部には、車体前後方向連結杆10,10の一端が連結しており、車体前後方向連結杆10,10の他端側はフロアボード懸架杆11の両端部がそれぞれ連結している。
【0018】
この結果、車体左右方向連結杆9、車体前後方向連結杆10,10及びフロアボード懸架杆11は、枠状体12を形成してフロアボード7を裏面側から支持するように構成されている。
【0019】
フロアボード7の車体前方側端部は、車体左右方向連結杆9に蝶着されており、フロアボード7を車体前方側に開閉動可能に構成している。
【0020】
更に、枠状体12には、ネット状(シート状でも可)により補助棚部を構成する棚形成部材13が張設されている。
【0021】
このように構成する場合、フロアボード7は、フロアボード支持アーム体8の他端側を中心に一端側を揺動させて略45度位起立させてフロアボード懸架杆11の両端をラゲージルーム2の両側壁部に設けた前部側係止部2aに係止した場合、図2及び図3に示すように、床面6の車体前方側略半部6aの上部に配置されることになって、棚部である床面6の他に、荷物等を載置する中間棚部をホイールハウスと同じ高さで形成することになる。
【0022】
この状態から、フロアボード支持アーム体8の一端側を車体後方側に更に揺動させて、図4に示すように、フロアボード支持アーム体8を床面6に対して略垂直に起立させ、フロアボード懸架杆11をラゲージルーム2の両側壁部に設けた後部側係止部2bに係止した場合、フロアボード7は、床面6の車体後方側略半部6b上に配置されて、車体後方側略半部6b上において中間棚部を形成することになる。
【0023】
このような状態から、フロアボード7を図5に示すように車体前方側に開動した場合、棚形成部材13が構成する補助棚部の上面が開口して、後部ドア5に対して窓ガラス5aをあけることによって、棚形成部材13上において小物等の出し入れが容易にできることになる。
【0024】
棚形成部材13上における小物等の出し入れが終了すれば、フロアボード7を図5に示す状態から図4の実線視する状態に戻すことになり、結果、棚形成部材13上の小物等は棚形成部材13及びフロアボード7との間で保持されることになる。
【0025】
上記した本発明の実施の形態によれば、フロアボード7が構成する中間棚部が床面6の車体後方側上に配置された場合に、当該中間棚部は車体前方側に開動でき、しかもフロアボード懸架杆11を後部側係止部2bとの係止関係を外して、棚形成部材13を枠状体12を介して車体前方にめくり上げれば、中間棚部下方と床面6との間に形成されている収容荷室14の上部を開口することができて、後部ドア5の窓ガラス5a部分を開閉するのみで、収容荷室14から荷物等の出し入れが可能となり、しかも、フロアボード7の裏面側にネット状或いはシート状の棚形成部材を配置し、棚形成部材13によってフロアボード7と床面6との間に補助棚部を形成したことから、小物等を棚形成部材13上に収容するようにしておけば、窓ガラス5a部分のみを開閉するだけで、乗員が大きく手を延ばさなくても容易に小物等の出し入れが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明は、フロアボードが構成する中間棚部が床面の車体後方側上に配置された場合に、当該中間棚部は車体前方側に開動できることから、中間棚部下方の収容荷室の上部を開口することができて、後部ドアの窓ガラス部分を開閉するのみで、当該収容荷室から荷物等の出し入れが可能となり、しかも、フロアボードの裏面側にネット状或いはシート状の棚形成部材を装着し、棚形成部材によってフロアボードと床面との間に補助棚部を形成したことから、小物等を棚形成部材上に収容するようにしておけば、窓ガラス部分のみを開閉するだけで、乗員が大きく手を延ばさなくても容易に小物等の出し入れが可能となるために、ハッチバック車やワンボックス車のような車体後部にラゲージルームを有する自動車のフロアボード構造等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるフロアボードがラゲージルームの車体前方側の床面上に配置された状態を描画した自動車の後部側側面断面図である。
【図2】同じくフロアボードをラゲージルームの床面より立ち上げて中間棚部を形成した状態を描画した自動車の後部側側面断面図である。
【図3】同じくフロアボードをラゲージルームの床面より立ち上げて中間棚部を形成した状態を自動車の後部側を一部切除して描画した斜視図である。
【図4】図2の状態よりフロアボードをラゲージルームの車体後方側にスライドさせて、当該中間棚部を車体後方側の床面上に形成した状態を描画した自動車の後部側側面断面図である。
【図5】同じく図4に示す状態よりフロアボードをその車体前方側を中心に上方に回動させて補助棚部上方を開口した状態を描画した自動車の後部側を一部切除して描画した斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車
2 ラゲージルーム
2a 前部側係止部
2b 後部側係止部
6 床面
7 フロアボード(中間棚部)
8 フロアボード支持アーム体
13 棚形成部材(補助棚部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラゲージルームの床面における車体前方側にフロアボードを配設し、該フロアボードの車体前端側裏面にフロアボード支持アーム体の一端を折り畳み可能に設けると共に、フロアボード支持アーム体の他端を前記床面に揺動可能に装着して、当該他端側を中心に前記フロアボード支持アーム体を起立させることによって前記フロアボードにより前記床面における車体前方側上に中間棚部を形成するように構成しており、また、前記フロアボード支持アーム体の一端側を更に車体後方側に倒した位置において前記フロアボード支持アーム体を前記ラゲージルームの側壁部の車体後方側に懸架することにより前記中間棚部を前記床面の車体後方側上に配置するように構成し、更に、前記フロアボードの下面側にネット状或いはシート状の棚形成部材を装着して、該棚形成部材によって前記フロアボードと前記床面との間に補助棚部を配置し、かつ、前記フロアボードがその車体前端側を中心に車体前方側に開動して該補助棚部の上面が開口するように構成したことを特徴とする自動車用フロアボード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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