説明

自在曲面スキャナー

【課題】3次元曲面に対して簡易にかつ自在に曲面形状を型取りできる自在曲面スキャナーを提供する。
【解決手段】自在曲面スキャナー1は、その一面を3次元曲面に当てて曲面形状を型取りする板状定規部2と、板状定規部2に一定のピッチで取付けられる固定具3と、隣接する旋回板4との重複部10を有するように固定具3により板状定規部2の他面側に取付けられ、板面に明けられた長円孔5と、板面から突出するボルト6及びナット7とを有する旋回板4とを備え、旋回板4は、ボルト6が一方の側に隣接する旋回板4に明けられた長円孔5に差し込まれ、長円孔5が他方の側に隣接する旋回板4に取付けられたボルト6により差し込まれることで曲面形状を型取りする板状定規部2の動きに追従し、ナット7が締め込んで旋回板4の重複部10を相互に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在曲面スキャナーに係り、特に、3次元曲面に定規を当てて曲面の形状を型取りする自在曲面スキャナーに関する。
【背景技術】
【0002】
立体物を3次元で計測する機器として、立体物を台座上に設置させ、プローブを立体物の表面に当てて3次元座標位置を計測し、コンピュータ処理により曲面を計測する3次元計測器が知られている。
【0003】
また、簡易な方法として、可撓性を有する棒状の自在定規を3次元曲面に当てて曲面の形状を型取りすることも可能である。
【0004】
一方、特許文献1には、被塗装部材の表面の所定の範囲に塗装を行う際に、その範囲の境界線を形成する曲線定規が開示されている。ここでは、可撓性を有する定規本体の両端側にコ字状のレバーを回動可能に装着し、両端側のレバーの間に第3のレバーを装着し、第3のレバーの両端に形成された長孔に両端側のレバーの内側の端部に立設された支軸を摺動可能に挿通することが記載されている。そして、定規本体を所定の形状に撓ませた状態で、支軸に螺着された円板状ナットを回してレバーの相対的回動を固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−315093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、立体的な建造物の3次元曲面の形状を型取りする際には、地面に固定された建造物を台座上に設置させて3次元計測器で計測することは難しい。また、重量のある立体物やサイズの大きい立体物を台座上に設置させて3次元計測器で計測することも難しい。
【0007】
重量のある立体物やサイズの大きい立体物に自在定規を3次元曲面に当てて曲面の形状を型取った場合、自在定規にはその曲線形状を固定する手段がないため、その曲線形状を保持させることは難しい。
【0008】
本願の目的は、かかる課題を解決し、3次元曲面に対して簡易にかつ自在に曲面形状を型取りできる自在曲面スキャナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る自在曲面スキャナーは、立体物の3次元曲面に定規を当てて曲面形状を型取りする曲面スキャナーにおいて、可撓性材料からなり、その一面を3次元曲面に当てて曲面形状を型取りする板状定規部と、板状定規部に一定のピッチで取付けられる複数の固定具と、隣接する旋回板との重複部を有するように、固定具により板状定規部の他面側に取付けられ、板面に明けられた長円孔と、板面から突出して取付けられたボルト及びナットとを有する複数の旋回板と、を備え、各旋回板は、取付けられたボルトが一方の側に隣接する旋回板に明けられた長円孔に差し込まれ、明けられた長円孔が他方の側に隣接する旋回板に取付けられたボルトにより差し込まれることで曲面形状を型取りする板状定規部の動きに追従し、ナットが締め込まれることで旋回板の重複部が相互に固定されることを特徴とする。
【0010】
上記構成により、自在曲面スキャナーは、複数の旋回板が板状定規部に固定具を介して取付けられる。また、隣接する旋回板同士が長円孔と、長円孔に差し込まれるボルトとにより連結されて曲面形状を型取りする板状定規部の動きに追従する。そして、ボルトに羅合するナットを締め込むことで各旋回板の重複部が相互に固定され、板状定規部により型取りされた曲面形状を固定することができる。
【0011】
また、自在曲面スキャナーは、長円孔が、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、板状定規部と略平行方向にその長円が向けられることが好ましい。これにより、ボルトは、長円孔内を移動して板状定規部の動きに追従することができる。
【0012】
また、自在曲面スキャナーは、各旋回板が、曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対し、ボルトが差し込まれた長円孔内において略直線状に移動することで板状定規部の動きに追従することが好ましい。これにより、曲面形状を型取りする板状定規部の動きに従ってボルトが略直線状に移動し、旋回板が板状定規部の動きに追従することができる。
【0013】
また、自在曲面スキャナーは、ボルトが、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板の長円孔において旋回板の端部側に取付けられ、凹状の曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対し、差し込まれた長円孔において旋回板の中央側に向かって移動することが好ましい。これにより、立体物の表面が凹状の3次元曲面である場合に、その凹面形状を簡易にかつ自在に型取りすることができる。
【0014】
また、自在曲面スキャナーは、ボルトが、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板の長円孔において旋回板の中央側に取付けられ、凸状の曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対し、差し込まれた長円孔において旋回板の端部側に向かって移動することが好ましい。これにより、立体物の表面が凸状の3次元曲面である場合に、その凸面形状を簡易にかつ自在に型取りすることができる。
【0015】
また、自在曲面スキャナーは、旋回板が、固定具から扇状に拡がる扇部と、扇部に連続して接続する半円形状の半円部とから構成され、ボルト及び長円孔は半円部の弦の近傍に設けられることが好ましい。これにより、各旋回板は、扇部と半円部とにより形成される重複部により板状定規部の動きに追従することができる。
【0016】
また、自在曲面スキャナーは、ボルトが、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板の長円孔の略中央に取付けられ、凸状の曲面形状を型取りする板状定規部の動き、及び、凹状の曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対して、差し込まれた長円孔の逆方向の端部に向かってそれぞれ移動することが好ましい。これにより、ボルトを旋回板の長円孔の略中央に設けることで、1台の自在曲面スキャナーで凸状の曲面形状又は凹状の曲面形状の何れの曲面形状にも追従できる。また、凸状及び凹状が組み合わされた波状の曲面形状にも追従することができる。
【0017】
また、自在曲面スキャナーは、旋回板が、固定具から二等辺三角形状に拡がる三角部と、三角部に連続して接続する略長方形の長方形部とから構成され、ボルト及び長円孔は長方形部に設けられることが好ましい。これにより、各旋回板は、三角部及び長方形部とにより形成される重複部により板状定規部の動きに追従ことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る自在曲面スキャナーによれば、3次元曲面に対して簡易にかつ自在に曲面形状を型取りできる自在曲面スキャナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る自在曲面スキャナーの第1の実施形態の概略構成を示す平面図及び断面図である。
【図2】図1の自在曲面スキャナーを凹状の曲面に当てた場合の平面図である。
【図3】図1の自在曲面スキャナーについて、隣接する旋回板相互の位置関係を示す説明図である。
【図4】本発明に係る自在曲面スキャナーの第2の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図5】図4の自在曲面スキャナーを凸状の曲面に当てた場合の平面図である。
【図6】図4の自在曲面スキャナーについて、隣接する旋回板相互の位置関係を示す説明図である。
【図7】本発明に係る自在曲面スキャナーの第3の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図8】図7の自在曲面スキャナーを凹状の曲面に当てた場合の平面図である。
【図9】図7の自在曲面スキャナーを凸状の曲面に当てた場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下に、図面を用いて本発明に係る自在曲面スキャナーの第1の実施形態につき、詳細に説明する。図1に、本発明に係る自在曲面スキャナーの概略構成を示す。ここでは、自在曲面スキャナー1を略直線状に伸ばした場合を示す。図1(a)には平面図を示し、図1(b)には図1(a)のA−A断面を示す。また、図2に、図1の自在曲面スキャナー1を凹状の曲面に当てた場合を示す。本自在曲面スキャナー1は、板状定規部2、固定具3、及び旋回板4から構成される。そして、立体物の凹状の3次元曲面に板状定規部2を当てて曲面形状を型取りする。なお、以下の説明では、図1(a)の座標のX軸の正の方向を右側とし、負の方向を左側とする。また、図1(a)の座標のY軸の正の方向を上側とし、負の方向を下側とする。
【0021】
板状定規部2は、例えば、ぜんまい鋼などの復元力を有する可撓性材料からなり、板状の断面を有する定規である。そして、図2に示すように、その一面を凹状の3次元曲面に当てて曲面形状を型取りする。この板状定規部2は、復元力を有する可撓性材料からなるため、凹状の3次元曲面に沿って曲げることができる。また、型取り後には元の形状に戻ることができる。この板状定規部2には目盛が付いても良い。
【0022】
固定具3は、取付けボルト16及び取付けナット17から構成される。本実施形態では、取付けボルト16はスタッドボルトであり、スタッド溶接により板状定規部2の他面に固定される。従って、板状定規部2の曲面形状を型取りする面からは突出しない。そして、取付けボルト16は、板状定規部2と旋回板4の折り曲げ部18を挟み込む。そして、旋回板4の折り曲げ部18は取付けナット17により締め込まれる。このように、取付けボルト16及び取付けナット17により板状定規部2に旋回板4が取付けられる。この固定具3は、板状定規部2に対して一定のピッチで複数個が取付けられる。
【0023】
旋回板4は、隣接する旋回板4との重複部10を有するように固定具3により板状定規部2の他面側に取付けられる。この旋回板4は、例えば、ステンレス鋼などからなる。そして、旋回板4の板面に明けられた長円孔5と、旋回板4の板面の面外に突出して取付けられたボルト6、及びボルト6と羅合するナット7とを有する。本実施形態では、このボルト6は旋回板4の板面に溶接で固定されるスタッドボルトであり、ナット7は蝶締めナットである。
【0024】
図1の右端の旋回板4に示すように、本実施形態では、旋回板4は固定具3から扇状に拡がる扇部8と、扇部8に連続して接続する半円形状の半円部9とから構成され、ボルト6及び長円孔5は半円部9の弦19の下方の近傍に設けられる。この旋回板4の形状は、長円孔5とボルト6及びナット7との位置関係が保持されれば、扇部8及び半円部9の形状に限らない。
【0025】
各旋回板4は、取付けられたボルト6が一方の側に隣接する旋回板4に明けられた長円孔5に差し込まれる。また、各旋回板4は、明けられた長円孔5が他方の側に隣接する旋回板4に取付けられたボルト6により差し込まれる。すなわち、隣接する旋回板4には、それぞれ同じように長円孔5及びボルト6が設けられ、相互に連結される。そして、長円孔5は、板状定規部2を略直線状にした場合に、板状定規部2と略平行方向にその長円が向けられる。
【0026】
本実施形態の場合、自在曲面スキャナー1を略直線状に伸ばした場合に、図1(a)に示すように、ボルト6は長円孔5の左の端部に位置するように旋回板4に取付けられる。こうすることで、旋回板4は凹状の曲面形状を型取りする板状定規部2の動きに追従する。そして、板状定規部2が凹状の曲面形状を型取りすると、ナット7を締め込み旋回板4の重複部10を相互に固定する。旋回板4の重複部10が相互に固定されると、自在曲面スキャナー1は凹状の曲面形状を型取ったまま保持される。
【0027】
各旋回板4は、曲面形状を型取りする板状定規部2の動きに対し、ボルト6が差し込まれた長円孔5内を移動することで追従する。すなわち、図1に示す自在曲面スキャナー1の各旋回板4は、図2に示すように板状定規部2が凹状の曲面形状を型取りすると、相互の位置を変えて板状定規部2の動きに追従する。このとき、ボルト6は、板状定規部2を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板4の長円孔端部側14に取付けられ、凹状曲面13を型取りする板状定規部2の動きに対し、差し込まれた長円孔中央側15に移動することで追従する。つまり、隣接する旋回板4のうち、左側の旋回板4に取付けられたボルト6を、右側の旋回板4に設けられた長円孔5内を移動するように相互の旋回板4を引き付けると、その間の板状定規部2は曲線を描いて曲がる。
【0028】
図3に、自在曲面スキャナー1の隣接する旋回板4a,4bの相互の位置関係を示す。説明のため旋回板4aは固定されているものとする。板状定規部2a、旋回板4a,4b、長円孔5aは、自在曲面スキャナー1を略直線状に伸ばした場合を示す。板状定規部2b、旋回板4c、長円孔5bは、自在曲面スキャナー1が凹状曲面13を型取りした場合を示す。また、点位置(X),(Y)は、板状定規部2aの旋回板4a,4bの中心位置を示し、点位置(Z)は、板状定規部2bの旋回板4cの中心位置を示す。さらに、角度(θ1)は、板状定規部2aと板状定規部2bとの交差角度を示し、角度(θ2)は、長円孔5aと長円孔5bとの軸方向の交差角度を示す。
【0029】
凹状曲面13に従って板状定規部2aの点位置(Y)が板状定規部2bの点位置(Z)に移動する。板状定規部2aの点位置(X)から点位置(Y)までの直線距離は、伸縮がないことから板状定規部2aの点位置(X)から点位置(Z)までの曲線上の距離に略等しい。このとき、旋回板4cは、板状定規部2bの点位置(Z)での曲線の接線方向に略垂直方向に向く。そして、旋回板4cの長円孔5bの軸方向の角度(θ2)は、板状定規部2aの回転角度(θ1)に略等しくなる。このように、旋回板4cの位置は、板状定規部2aの回転角度(θ1)に旋回板4cの長円孔5bの軸方向の角度(θ2)が略等しくなるような位置へと移動する。
【0030】
また、ボルト6は、旋回板4aに取付けられているために位置が固定されている。このとき、板状定規部2aの点位置(Y)が板状定規部2bの点位置(Z)まで徐々に移動すると、長円孔5bの軸方向の角度(θ2)も板状定規部2aの回転角度(θ1)の変化につれて徐々に変化する。このことから、板状定規部2を略直線状にした場合に、板状定規部2と略平行方向にその長円が向けられる長円孔5aは、軸方向の角度(θ2)を変化させることで追従することができる。そして、差し込まれたボルト6は、長円孔端部側14から長円孔中央側15に移動することで追従する。
【0031】
(第2の実施形態)
以下に、図面を用いて本発明に係る自在曲面スキャナーの第2の実施形態につき、詳細に説明する。図4に、本発明に係る自在曲面スキャナーの概略構成を示す。ここでは、自在曲面スキャナー30を略直線状に伸ばした場合を示す。図4(a)には平面図を示し、図4(b)には図4(a)のB−B断面を示す。また、図5に、図4の自在曲面スキャナー30を凸状の曲面に当てた場合を示す。本自在曲面スキャナー30は、板状定規部32、固定具33、及び旋回板34から構成される。そして、立体物の凸状の3次元曲面に板状定規部32を当てて曲面形状を型取りする。
【0032】
板状定規部32は、例えば、ぜんまい鋼などの復元力を有する可撓性材料からなり、板状の断面を有する定規である。そして、図5に示すように、その一面を凸状の3次元曲面に当てて曲面形状を型取りする。この板状定規部32は、復元力を有する可撓性材料からなるため、凸状の3次元曲面に沿って曲げることができる。また、型取り後には元の形状に戻ることができる。この板状定規部32には目盛が付いても良い。
【0033】
固定具33は、取付けボルト46及び取付けナット47から構成される。本実施形態では、取付けボルト46はスタッドボルトであり、スタッド溶接により板状定規部32の他面に固定される。従って、板状定規部32の曲面形状を型取りする面からは突出しない。そして、取付けボルト46は、板状定規部32と旋回板34の折り曲げ部48を挟み込む。そして、旋回板34の折り曲げ部48はナット37により締め込まれる。このように、取付けボルト46及び取付けナット47により板状定規部32に旋回板34が取付けられる。この固定具33は、板状定規部32に対して一定のピッチで複数個が取付けられる。
【0034】
旋回板34は、隣接する旋回板34との重複部40を有するように固定具33により板状定規部32の他面側に取付けられる。この旋回板34は、例えば、ステンレス鋼などからなる。そして、旋回板34の板面に明けられた長円孔35と、旋回板34の板面の面外に突出して取付けられたボルト36、及びボルト36と羅合するナット37とを有する。本実施形態では、このボルト36は旋回板34の板面に溶接で固定されるスタッドボルトであり、ナット37は蝶締めナットである。
【0035】
図4の右端の旋回板34に示すように、本実施形態では、旋回板34は固定具33から扇状に拡がる扇部38と、扇部38に連続して接続する半円形状の半円部39とから構成され、ボルト36及び長円孔35は半円部39の弦49の下方の近傍に設けられる。この旋回板34の形状は、長円孔35とボルト36及びナット37との位置関係が保持されれば、扇部38及び半円部39の形状に限らない。
【0036】
本実施形態の場合、自在曲面スキャナー30を略直線状に伸ばした場合に、図4(a)に示すように、ボルト36は長円孔35の右の端部に位置するように旋回板34に取付けられる。こうすることで、旋回板34は凸状の曲面形状を型取りする板状定規部32の動きに追従する。そして、板状定規部32が凸状の曲面形状を型取りすると、ナット37を締め込み旋回板34の重複部40を相互に固定する。旋回板34の重複部40が相互に固定されると、自在曲面スキャナー30は凸状の曲面形状を型取ったまま保持される。
【0037】
各旋回板34は、曲面形状を型取りする板状定規部32の動きに対し、ボルト36が差し込まれた長円孔35内を移動することで追従する。すなわち、図4に示す自在曲面スキャナー30の各旋回板34は、図5に示すように板状定規部32が凸状の曲面形状を型取りすると、相互の位置を変えて板状定規部32の動きに追従する。このとき、ボルト36は、板状定規部32を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板34の長円孔中央側45に取付けられ、凸状曲面12を型取りする板状定規部32の動きに対し、差し込まれた長円孔端部側44に移動することで追従する。つまり、隣接する旋回板34のうち、左側の旋回板34に取付けられたボルト36を、右側の旋回板34に設けられた長円孔35内を移動するように相互の旋回板34を引き付けると、その間の板状定規部32は曲線を描いて曲がる。
【0038】
図6に、自在曲面スキャナー30の隣接する旋回板34a,34bの相互の位置関係を示す。説明のため旋回板34aは固定されているものとする。板状定規部32a、旋回板34a,34b、長円孔35aは、自在曲面スキャナー30を略直線状に伸ばした場合を示す。板状定規部32b、旋回板34c、長円孔35bは、自在曲面スキャナー30が凸状曲面12を型取りした場合を示す。また、点位置(X),(Y)は、板状定規部32aの旋回板34a,34bの中心位置を示し、点位置(Z)は、板状定規部32bの旋回板34cの中心位置を示す。さらに、角度(θ1)は、板状定規部32aと板状定規部32bとの交差角度を示し、角度(θ2)は、長円孔35aと長円孔35bとの軸方向の交差角度を示す。
【0039】
凸状曲面12に従って板状定規部32aの点位置(Y)が板状定規部32bの点位置(Z)に移動する。板状定規部32aの点位置(X)から点位置(Y)までの直線距離は、伸縮がないことから板状定規部32aの点位置(X)から点位置(Z)までの曲線上の距離に略等しい。このとき、旋回板34cは、板状定規部32bの点位置(Z)での曲線の接線方向に略垂直方向に向く。そして、旋回板34cの長円孔35bの軸方向の角度(θ2)は、板状定規部32aの回転角度(θ1)に略等しくなる。このように、旋回板34cの位置は、板状定規部32aの回転角度(θ1)に旋回板34cの長円孔35bの軸方向の角度(θ2)が略等しくなるような位置へと移動する。
【0040】
また、ボルト36は、旋回板34aに取付けられているために位置が固定されている。このとき、板状定規部32aの点位置(Y)が板状定規部32bの点位置(Z)まで徐々に移動すると、長円孔35bの軸方向の角度(θ2)も板状定規部32aの回転角度(θ1)の変化につれて徐々に変化する。このことから、板状定規部32を略直線状にした場合に、板状定規部32と略平行方向にその長円が向けられる長円孔35aは、軸方向の角度(θ2)を変化させることで追従することができる。そして、差し込まれたボルト36は、長円孔中央側45から長円孔端部側44に移動することで追従する。
【0041】
(第3の実施形態)
以下に、図面を用いて本発明に係る自在曲面スキャナーの第3の実施形態につき、詳細に説明する。自在曲面スキャナーの第3の実施形態は、第1の実施形態による凹状の曲面への追従と、第1の実施形態による凹状の曲面への追従とが双方可能な実施形態である。
【0042】
図7に、自在曲面スキャナー50の平面を示す。ここでは、自在曲面スキャナー50を略直線状に伸ばした場合を示す。また、本自在曲面スキャナー50は、板状定規部52、固定具53、及び旋回板54から構成される。そして、立体物の凹状又は凸状の3次元曲面に板状定規部52を当てて曲面形状を型取りする。
【0043】
本自在曲面スキャナーの第3の実施形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態とは、旋回板54の形状、長円孔55の形状、及び長円孔55内のボルトの設定位置及び動きが異なる。しかし、それ以外は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0044】
本実施形態の旋回板54は固定具53から二等辺三角形状に拡がる三角部58と、三角部58に連続して接続する略長方形の長方形部59とから構成され、ボルト56及び長円孔55は長方形部59に設けられる。隣接する旋回板54はそれぞれ重複部60を有するように接続される。この旋回板54の形状は、長円孔55とボルト56及びナット57との位置関係が保持されれば、三角部58及び長方形部59の形状に限らない。
【0045】
本実施形態の長円孔55は、第1実施形態及び第2実施形態の長円孔5,35よりも略倍近く長い。また、自在曲面スキャナー50を略直線状に伸ばした場合に、ボルト56は長円孔55の略中央の位置に設置される。
【0046】
図8に、図7の自在曲面スキャナー50を凸状曲面62に当てた場合を示す。ボルト56は図8中で左側に移動し、板状定規部52の動きに追従する。また、図9に、図7の自在曲面スキャナー50を凹状曲面63に当てた場合を示す。ボルト56は図9中で右側に移動し、板状定規部52の動きに追従する。
【0047】
このように、本実施形態の自在曲面スキャナー50は、1台の自在曲面スキャナー50で凸状曲面62又は凹状曲面63の何れの曲面形状にも追従できる。また、凸状及び凹状が組み合わされた波状の曲面形状にも追従することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,30,50 自在曲面スキャナー、2,32,52 板状定規部、3,33,53 固定具、4,34,54 旋回板、5,35,55 長円孔、6,36,56 ボルト、7,37,57 ナット、8,38 扇部、9,39 半円部、10,40,60 重複部、12,62 凸状曲面、13,63 凹状曲面、14,44,64 長円孔端部側、15,45,65 長円孔中央側、16,46 取付けボルト、17,47 取付けナット、18,48 折り曲げ部、19,49 弦、58 三角部、59 長方形部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物の3次元曲面に定規を当てて曲面形状を型取りする曲面スキャナーにおいて、
可撓性材料からなり、その一面を3次元曲面に当てて曲面形状を型取りする板状定規部と、
板状定規部に一定のピッチで取付けられる複数の固定具と、
隣接する旋回板との重複部を有するように、固定具により板状定規部の他面側に取付けられ、板面に明けられた長円孔と、板面から突出して取付けられたボルト及びナットとを有する複数の旋回板と、を備え、
各旋回板は、取付けられたボルトが一方の側に隣接する旋回板に明けられた長円孔に差し込まれ、明けられた長円孔が他方の側に隣接する旋回板に取付けられたボルトにより差し込まれることで曲面形状を型取りする板状定規部の動きに追従し、ナットが締め込まれることで旋回板の重複部が相互に固定されることを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項2】
請求項1に記載の自在曲面スキャナーであって、長円孔は、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、板状定規部と略平行方向にその長円が向けられることを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自在曲面スキャナーであって、各旋回板は、曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対し、ボルトが差し込まれた長円孔内において略直線状に移動することで板状定規部の動きに追従することを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の自在曲面スキャナーであって、ボルトは、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板の長円孔において旋回板の端部側に取付けられ、凹状の曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対し、差し込まれた長円孔において旋回板の中央側に向かって移動することで追従することを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の自在曲面スキャナーであって、ボルトは、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板の長円孔において旋回板の中央側に取付けられ、凸状の曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対し、差し込まれた長円孔において旋回板の端部側に向かって移動することで追従することを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の自在曲面スキャナーであって、旋回板は、固定具から扇状に拡がる扇部と、扇部に連続して接続する半円形状の半円部とから構成され、ボルト及び長円孔は半円部の弦の近傍に設けられることを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の自在曲面スキャナーであって、ボルトは、板状定規部を略直線状に伸ばした場合に、隣接する旋回板の長円孔の略中央に取付けられ、凸状の曲面形状を型取りする板状定規部の動き、及び、凹状の曲面形状を型取りする板状定規部の動きに対して、差し込まれた長円孔の逆方向の端部に向かってそれぞれ移動することで追従することを特徴とする自在曲面スキャナー。
【請求項8】
請求項7に記載の自在曲面スキャナーであって、旋回板は、固定具から二等辺三角形状に拡がる三角部と、三角部に連続して接続する略長方形の長方形部とから構成され、ボルト及び長円孔は長方形部に設けられることを特徴とする自在曲面スキャナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−43404(P2011−43404A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191692(P2009−191692)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(592152392)株式会社ヒートパーツ (2)
【Fターム(参考)】