説明

自己保持性、迅速スタート膜プラグを有する浸透式ポンプ

浸透式ポンプは、カプセルの内部と外部との間の流体透過性バリヤーを提供するために、第一の端部に形成された少なくとも1個の送達ポートおよび送達ポートから離れたカプセルの第二の端部内に保持される膜プラグを有するカプセルを含む。膜プラグは、円柱状本体および円柱状本体がカプセルの第二の端部から所定の距離を伸びた場合に、カプセルの内部から外部へ圧力を排出してそれにより第二の端部から膜プラグの排除を防止するために円柱状本体内に形成された少なくとも1個のスロットを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、有用薬剤(beneficial agent)を送達するための浸透式ポンプに関する、さらに具体的には、本発明は、有用薬剤の送達速度を制御するための膜プラグを有する浸透式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の身体内で有用薬剤を送達するための浸透式ポンプは、当該技術分野で公知である。例示の目的で、図1Aは、開放端104、106を有する埋め込み可能なカプセル102を有する従来技術のポンプ100の断面を示す。拡散モデレーター(diffusion moderator)(流れモジュレーターとも呼ばれる)108は、カプセル102の開放端106内に配置される。拡散モデレーター108は、送達ポート112で終わりそしてカプセル102の外部に輸送されるべきカプセル102の内部からの流体を通す送達路110を有する。膜プラグ114は、カプセル102の開放端104内に挿入される。膜プラグ114は、半透性材料から作製されそしてカプセル102の外部と内部との間の流体透過性のバリヤーを形成する。ピストン116がカプセル102内に配置される。ピストン116は、カプセル102内で二個のチェンバー118、120を区画する。チェンバー118は浸透剤122を含みそしてチェンバー120は有用薬剤124を含む。
【0003】
浸透式ポンプ100が患者内に埋め込まれると、患者の身体からの流体が膜プラグ114を通ってチェンバー118に入り、浸透剤122を透過し、そして浸透剤122を膨潤させる。膨潤した浸透剤122はピストン116を膜プラグ114から遠ざかる方向に押し、チェンバー120の体積を減少させそして一定量の有用薬剤124をカプセル102から拡散モデレーター108を介して患者の身体内に押し出す。浸透式ポンプ100が有用薬剤124を患者の身体内に送達する速度は、流体が膜プラグ114を透過する速度に依存する。
【0004】
典型的には、膜プラグ114は、浸透剤122が水分を吸収し始めるために水和しなければならない水和性化合物から製作される。膜プラグ114および浸透剤122を水和するための時間は、チェンバー120からの有用薬剤124の放出の開始を遅延させる。スタートアップ段階の間に、通常は水である体液は、拡散モデレーター108の送達ポート112内に逆拡散でき、そして有用薬剤124または有用薬剤124を担持するベヒクルを劣化させる。ある種のベヒクルは、水と一緒になると、送達路110を閉止することができる。
【0005】
例えば長すぎるスタートアップのために送達路110またはポート112が閉止されるか、またはピストン116がカプセル102の内部に粘着すると、チェンバー118内部の圧力が上がり、それは膜プラグ114をカプセル102から排除させるために十分なこともある。
【0006】
カプセル102からの膜プラグ114の排除を避けるために種々の方法が提案された。一つの方法は、接着剤を用いて膜プラグ114をカプセル102に確保させることを含む。この方法は、膜プラグ114および/またはカプセル102へ接着剤を適用するために追加の操作を必要とし、そして接着剤は膜プラグ114の透過性に影響するであろう。膜プラグ114の排除を避ける別の方法は、膜プラグ114を含むカプセル102の端部分内に穴を明ける方法である。図1Bはカプセル102内に開けられた穴126を示す。図1Bに示すように、穴126は最初は膜プラグ114により覆われているが、しかし膜プラグ114がチェンバー118内の上昇した圧力によりカプセル102から強制的に出されると、穴126は終には暴露され、チェンバー118からカプセル102の外部へ圧力を排出することを許す。この様式で、膜プラグ114はカプセル102からの分離が防止される。この方法は、カプセル102の製作に追加の操作を必要としそして浸透式ポンプの総括コストを上昇させる。
【発明の開示】
【0007】
一つの局面では、本発明は、カプセルの内部と外部との間の流体透過性バリヤーを提供するために、第一の端部に形成された少なくとも1個の送達ポートおよび送達ポートから離れたカプセルの第二の端部内に保持される膜プラグを有するカプセルを含んでなる浸透式ポンプに関する。膜プラグは、円柱状本体および少なくとも1個のスロットを有し、このスロットは円柱状本体がカプセルの第二端部から所定の距離を伸びた場合にカプセルの内部から外部へ圧力を排出して、それにより第二端部からの膜プラグの排除を防止するために円柱状本体内に形成された少なくとも1個のスロットである。
【0008】
別の局面では、本発明は送達カプセルを有する浸透式ポンプと共に使用するための膜プラグに関する。該膜プラグは、半透性材料から製作されそしてカプセルの内面とかみ合わさせるための外面を有する円柱状本体を含んでなる。円柱状本体は、少なくとも1個のスロットを備え、それは円柱状本体の基部から円柱状本体の外面上の非基部点(non−basal point)まで及び、圧力をカプセルの内部から外部へ選択的に排出できるようになっている。
【0009】
更に別の局面では、本発明は、半透性材料から作製された円柱状本体を含んでなる、送達カプセルを有する浸透ポンプに使用するための膜プラグに関する。円柱状本体は、カプセルの内面とかみ合わせるための外面を有し、そして半透性材料の膨潤によりオリフィスが閉塞されるまでカプセル内に流体を流入させるオリフィスを備えている。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、下記の詳細説明および添付の特許請求から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付図面に例示するように、本発明を数個の好ましい態様を参照して詳細に記載する。下記の説明中で、本発明の完全な理解が得られるように多数の特定の細部を記載する。しかし、本発明はそれらの特定の詳細の一部または全体がなくても実施できることは当該技術分野の専門家には明らかであろう。別の例では、周知の特徴および/または工程段階が、本発明を不必要に不明瞭にしないために詳細には記載されていない。本発明の特徴および利益は、下記の図面および考察を参照にしてさらに良く理解されるであろう。
【0012】
図2Aは本発明の一つの態様による膜プラグ200を示す。膜プラグ200は、浸透式ポンプの開放端(図示されていない)内に挿入できて、流体がカプセルに入る速度を制御する。膜プラグ200は、円柱状本体202を有する。円柱状本体202の外径は、円柱状本体202がカプセル内に適合できるように選定される。一つの態様では、円柱状本体202は拡大された端部キャップ204で終わる。膜プラグがカプセル内に挿入されると、端部キャップ204がカプセルの端部とかみ合う停止部材として作用しそしてカプセル内の膜プラグ200の繰返し可能位置(repeatable position)を実現する。別の態様では、膜プラグ200が完全にカプセル内に挿入できるように、端部キャップ204が省略される。
【0013】
1個もしくはそれ以上のスロット206が円柱状本体202内に形成される。一つの態様では、スロット206は縦方向であり、円柱状本体202の基部208から端部キャッ
プ204の下のある点210まで及ぶ。別の態様では、円柱状本体202内に形成されたスロットは、異なる形状をとってもよい。例えば、円柱状本体202の基部208から端部キャップ204の下の点まで及ぶらせん状スロットを形成できる。円柱状本体202の基部208から計測して、スロット(単数または複数)206の範囲(extent)または長さ(l)は、円柱状本体202の長さ(L)の約10〜90%の範囲内、好ましくは円柱状本体202の長さの約20〜80%の範囲内、さらに好ましくは円柱状本体202の長さの約30〜60%の範囲内であってもよい。一般に、スロット(単数または複数)206の範囲または長さ(l)は、円柱状本体202の頂部212にある適当な(中断されない)シール用面が存在するように選択されるべきである。スロット(単数または複数)206の深さおよび巾は、変動できる。一般に、巾および深さは膜プラグ200の構造的一体性が使用の際に損なわれないように選択されるべきである。スロット(単数または複数)206の深さおよび巾は、円柱状本体202内に再現性をもって形成されそして膜材料が水和された際の膨潤によるスロットの閉塞を防ぐために十分に大きくなければならない。スロット(単数または複数)206の深さは、円柱状本体202の直径の約1〜99%の範囲内、好ましくは円柱状本体202の直径の約10〜90%の範囲内であることができる。スロット(単数または複数)206の巾は、円柱状本体202の直径の約1〜99%の範囲内、好ましくは円柱状本体202の直径の約10〜90%の範囲内であることができる。
【0014】
円柱状本体202と浸透式ポンプカプセル(図示していない)との間のシールを強めるために、リブ、うね(ridge)またはネジのような突出部を円柱状本体202上に形成してもよく、これはチェンら(Chen et al.,米国特許(US)第6,113,938号明細書)に教示されている。図2Bは、リブ214を切り取るスロット206を伴う円柱状本体202上に形成された円周リブ214を示す。好ましくは、スロット(単数または複数)206の長さは、円柱状本体202の頂部212内に連続したリブ214が存在して、頂部212と浸透式ポンプカプセルの内面との間の適当なシールが確保されるようにする。
【0015】
膜プラグ200は、通常は水である流体を浸透式ポンプカプセル内部まで通過させ一方カプセル内の組成物がカプセルからの流出を防止するような半透性材料から製作される。本発明での使用に適する半透性材料は、当該技術分野では周知である。膜プラグ200のための半透性材料は、湿潤した際にカプセルの形状に適合しそしてカプセルの内面に接着できるものである。典型的には、それらの材料は、ポンピング速度(pumping rate)および系の形状的要求に基づいて選択できるポリマー性材料であり、そして可塑化セルロース系材料、強化PMMA、例えばヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および弾性材料、例えばポリウレタンおよびポリアミド、ポリエーテル−ポリアミドコポリマー、熱可塑性コポリエステル、などを含むが、それらに限定はされない。
【0016】
図3は、浸透式ポンプ300内に使用される膜プラグ200を示す。浸透式ポンプ300の内部構造は説明のためにのみ示されそして本発明を限定すると解釈してはならない。本発明は、いかなる数の形状あってもよいすべての浸透式ポンプ、および埋込み可能な浸透式送達技術に適合するようなすべてのかかるポンプに一般的に適用できる。
【0017】
浸透式ポンプ300は、身体内に埋め込みできる大きさであってもよい縦長円筒状カプセル302を含む。カプセル302は、開放端304、306を有する、膜プラグ200が開放端304内に挿入され、そして拡散モデレーター(または流れモジュレーター)308が開放端306内に挿入される。拡散モデレーター308は、送達ポート312内で終わる送達路310を含む。図示はしないが、拡散モデレーター308はベント穴および場合によりパターソンら(Peterson et al,米国特許(US)第6,524,305号明細書)により教示されたフィルホール(fill hole)を含んでいてもよい。別の態様では、拡散モデレーター308はなくてもよく、そして開放端306は送達ポートを有する閉止端に代えることができる。拡散モデレーター308(または送達ポート)は、流体をカプセル302内からカプセル302の外部に送達し、一方膜プラグ200はカプセル302の外部からカプセル302の内部に流体を入れる。
【0018】
2個のチェンバー314、316がカプセル302の内部を区切る。チェンバー314、316はピストン318により分離され、該ピストンはシールする様式でカプセル302の内部に適合するように形作られそしてカプセル302内で縦方向に動く。ピストン318は非透過性弾性(resilient)材料で作製されてもよい。例として、ピストン318はカプセル302の内面と共にシールを形成する輪環状突出部319を含んでもよい。浸透剤320を膜プラグ200に隣接するチェンバー314内に配置し、そしで身体内に送達されるべき有用薬剤322を拡散モデレーター308に隣接するチェンバー316内に配置する。ピストン318は、膜プラグ200を通してカプセル302に入り得る環境からの液体から有用薬剤322を隔離して、定常流れでの使用の際に、有用薬剤322が送達ポート312を通って、使用環境からの液体が膜プラグ200を通って浸透剤320内に流入する速度に相当する速度で、放出されるようにする。
【0019】
作動中に、流体は膜プラグ200を通ってチェンバー314に入りそして浸透剤320を透過する。湿潤した浸透剤320は膨潤しそしてピストン318を膜プラグ200から離れる方向に押し、チェンバー316の体積を減らしそして拡散モデレーター308を通して一定量の有用薬剤322を押し出す。拡散モデレーター308が閉塞してくるかまたはピストン318が貼りついた場合に、チェンバー314内に圧力が上昇する。この圧力上昇は、膜プラグ200をピストン318から離す方向に押す。膜プラグ200は、スロット(単数または複数)206が暴露されるまでカプセル302から外に滑り出る。スロット206が暴露されると、直ちにチェンバー314から圧力がカプセル302の外部へ逃げ、これによりカプセル302から出る膜プラグ200のさらなる動きを防止する。膜プラグ200は、チェンバー314内の上昇した圧力が放出された後に最初の位置に戻るであろう。
【0020】
一般に、カプセル302構築に適する材料は、その大きさまたは形状が変化しないで浸透剤320の膨脹に対抗するために十分なほど剛性でなければならない。さらに、材料はカプセル302が、埋込みの間に与えられるストレス下または作動の間に発生する圧力によるストレス下で漏洩、割れ、破断、または変形しないことを確保しなければならない。カプセル302は、化学的に不活性で生物学的に適合性である天然または合成材料から形成されてもよく、それは当該技術分野では公知である。カプセル材料は、好ましくは使用後の患者の体内に残る、生物的に腐食されない材料、例えばチタンである。しかしカプセル302の材料は、薬剤の送達後に周囲環境内で生物的に腐食される生物腐食性材料であってもよい。一般に、カプセル302に好ましい材料は、ヒト埋め込みに受容できるものである。
【0021】
一般に、本発明によるカプセル302の構築に適する典型的な構成材料は、非反応性ポリマーまたは生物学的適合性金属または合金である。ポリマーは、アクリロニトリルポリマー、例えばアクリニトリル−ブタジエン−スチレン三元ポリマー、など;ハロゲン化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;ポリイミド;ポリスルホン;ポリカーボネート;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ(塩化ビニル)−アクリルコポリマー;ポリカーボネート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;ポリスチレン;などを含む。カプセル302に使用できる金属性材料は、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金、ならびに金メッキした鉄系合金、白金メッキした鉄系合金、コバルト−クロム合金および窒化チタンを被覆したステンレス鋼を含む。
【0022】
チタンまたはチタン分が60%超、しばしばチタン分85%超のチタン合金から製作されたカプセル302は、最も大きさが重要な用途に対し、高い負荷能力および長期の適用に対し、および調剤が埋め込み場所の身体の化学的状況に敏感であるかまたは身体が調剤に敏感である適用に対して特に好ましい。一部の態様において、および、特に言及される流体吸収性装置を除く用途であって不安定な有用薬剤調剤、特にはタンパク質および/またはペプチド調剤がカプセル内にある場合は、調剤が暴露される金属性部品は上記のようにチタンまたはその合金で形成されなければならない。
【0023】
浸透剤320は記載のように錠剤剤型でもよくまたは他の形状、組織、密度および粘度を有していてもよい。例えば、浸透剤320は、粉末または顆粒剤型であってもよい。浸透剤320は、例えば、非揮発性水溶性浸透剤、水と接触すると膨潤するオスモポリマー(osmopolymer)、またはそれら二種の混合物であってもよい。
【0024】
一般に、本発明は、いずれかの生理学的または製薬学的に活性な物質を含む有用薬剤の投与のために適用される。有用薬剤322は、ヒトまた動物の身体に送達されることが公知であるいずれかの薬品(agent)、例えば医薬(medicament)、ビタミン、栄養剤などであってもよい。本発明により送達される薬剤(drug agent)は、末梢神経、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シノプティック(synoptic)部位、神経効果器接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫学的系、生殖系、骨格系、自能性系、食事および排泄系、ヒスタミン系および中枢神経系に作用する薬剤(drug)を含む。適合する薬品は、例えばタンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、抗炎症性コルチコステロイド、眼科薬およびそれらの種類の合成類似薬から選択されてもよい。浸透式ポンプを用いて送達されてもよい薬剤(drug)の例示的な表は、米国特許(US)第6,270,787号明細書中に開示されている。該表は、引用することにより本明細書に編入される。
【0025】
有用薬剤322は、広範囲の化学および物理的剤型、例えば固体、液体およびスラリーで提供できる。分子レベルでは、各種薬剤には、非荷電分子、分子錯体、および製薬学的に許容できる酸付加および塩基付加塩、例えば塩酸塩、臭酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、およびサリチル酸塩を含む。酸性化合物に対して、金属、アミンまたは有機カチオンの塩を使用してもよい。誘導体、例えばエステル、エーテルおよびアミドも使用できる。有用薬剤322は、単独または他の有用薬剤と混合して使用できる。有用薬剤322は、場合により製薬学的に許容できる担体および/または添加成分、例えば抗酸化剤、安定剤、浸透助剤などを含んでもよい。
【0026】
図2Cは、膜プラグ200の別の態様を示す。この態様において、少なくとも1個のオリフィス216が円柱状本体202内に形成される。膜プラグ200が浸透式ポンプ、例えば浸透式ポンプ(図3中の300)の端部に挿入された場合、オリフィス216は流体を膜プラグ200を通って浸透剤(図3の320)まで通過させそして膜プラグ200が完全に水和されるまで浸透剤(図3の320)を透過させる。これは、浸透式ポンプのスタートアップ段階を促進する効果を有する。オリフィス216の大きさは、流体が円柱状本体202を通って流れることができるものである。オリフィス216の大きさは、円柱状本体202の適当な水和/膨潤状態でオリフィス216が閉塞されて、系の浸透性機能を完全に活性化させるようなものでもある。
【0027】
オリフィス216の直径は、膜プラグ200の円柱状本体202の外径、カプセル(図3の302)の内径、および膜プラグ200が吸収する流体の割合に依存する。オリフィ
ス216の直径は、膜プラグ200の材料が、カプセルなどの制約に適合するまですべての方向で同じ割合で膨脹するという仮定に基づいて選択されてもよい。
膜プラグ200の体積Vは、次式で表せる:
【0028】
【数1】

【0029】
ここでLは膜プラグ200の長さそしてDは円柱状本体202の直径である。式(1)の両辺に(1+b)を掛けると次式となる:
【0030】
【数2】

【0031】
ここでbは流体吸収による膜プラグ200の線寸法の変化である。cを流体吸収による膜プラグ200の体積の変化とすると、次式となる:
【0032】
【数3】

【0033】
膜プラグ200の外径がカプセル(図3の302)の内径と同じとすると、プラグ膨脹前の時点0におけるオリフィス216の面積(A0,t=0)は、プラグ膨脹前の時点0における断面積(Ap,t=0)と、プラグ膨脹後の時点1における断面積(Ap,t=1)との間の差異より少なくなければならない。すなわち、
【0034】
【数4】

ここで
【0035】
【数5】

ここでdはプラグ膨脹前(t=0)のオリフィスの直径であり、そして
【0036】
【数6】

および
【0037】
【数7】

である。
下記の式は、式(3)を式(7)と組み合わせて得られる。
【0038】
【数8】

【0039】
式(6)および(8)から、時点0および時点1におけるプラグの断面積の間の差異は下式となる。
【0040】
【数9】

【0041】
下記の式は、式(5)および(9)を式(4)に代入し、そしてdに関して解いて得られる:
【0042】
【数10】

【0043】
このように、直径3mmのカプセル内で円柱直径3mm(D=3mm)を有するプラグが18%膨脹する(c=18%)ときはd<1.02mmである。この例において、dは円柱状本体の直径の35%未満である。好ましくは、dは円柱状本体の直径の0.8〜33%である。
【0044】
本発明は、典型的には下記の利益を提供する。本発明の膜プラグは、カプセル内に挿入されると浸透式ポンプカプセルからの排除を防止する組込み(built−in)機構を有する。その結果、カプセルへ膜プラグを接着するかまたはカプセル内に穴を開ける追加の操作が避けられる。さらに、カプセルへの膜プラグの接着に起因する膜プラグの操作のいかなる妥協も避けられる。カプセルから膜プラグの排除を避けるための機構、すなわち排出スロット(単数または複数)は、膜プラグを作製する時点で膜プラグ内に形成できる。例えば、膜プラグを型成形により形成する場合に、型設計は膜プラグ内のスロット(単数または複数)に対しすでに対応されている。この解決は追加の操作を必要としないので、浸透式ポンプのコストを著しくは上昇しないであろう。膜プラグは、膜プラグが完全に水和される前でも浸透剤に水和を開始させるオリフィスを含むことができる。これは、浸透式ポンプのスタートアップ段階を迅速化する効果を有する。
【0045】
本発明を限られた数の態様で記載したけれども、本発明による開示の利益を有する当該技術分野の専門家は、本明細書中に記載された本発明の範囲から外れることなく他の態様も案出できることを認めるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求範囲によってのみ制限されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A−1B】図1Aおよび1Bは、従来技術の浸透式ポンプの断面図である。
【図2A−2C】図2Aは、本発明の一つの態様による膜プラグの拡大図である。図2Bは、本発明の別の態様による膜プラグの拡大図である。図2Cは、本発明の別の態様による膜プラグの断面図である。
【図3】図3は、本発明の膜プラグの一つの態様を組み込んだ浸透式ポンプを示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の端部に形成された少なくとも1個の送達ポートを有するカプセル、および
カプセルの内部と外部との間の流体透過性バリヤーを提供するために送達ポートから離れたカプセルの第二の端部内に保持される膜プラグを含んでなり、
ここで膜プラグが円柱状本体および円柱状本体がカプセルの第二端部から所定の距離
を伸びた場合にカプセルの内部から外部へ圧力を排出して、それにより第二端部から
の膜プラグの排除を防止するために円柱状本体内に形成された少なくとも1個のス
ロットを有する、
浸透式ポンプ。
【請求項2】
スロットが、円柱状本体の基部から始まり円柱状本体内の非基部点において終わる、請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項3】
非基部点が、円柱状本体の長さの10〜90%の範囲内にある、請求項2の浸透式ポンプ。
【請求項4】
非基部点が、円柱状本体の長さの20〜80%の範囲内にある、請求項2の浸透式ポンプ。
【請求項5】
非基部点が、円柱状本体の長さの30〜60%の範囲内にある、請求項2の浸透式ポンプ。
【請求項6】
円柱状本体が拡大端部キャップで終わり、該端部キャップが、カプセル内の円柱状本体の繰返し可能位置(repeatable position)を確立するようにカプセルの第二の端部とかみ合うための(for engagement)面を有する、請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項7】
カプセルの内面とかみ合うように(for engaging)複数の突起が円柱状本体の面上に備えられる、請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項8】
膜プラグが半透性材料から作製される、請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項9】
それぞれ浸透剤および有用薬剤を収容するためにカプセル内で区画される、第一および第二のチェンバーをさらに含んでなる請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項10】
第一および第二のチェンバーの間に可動的に配置されるピストンをさらに含んでなる、請求項9の浸透式ポンプ。
【請求項11】
送達ポートにカプセルの第一の端部内に保持される拡散モデレーターが備えられる、請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項12】
オリフィスが円柱状本体内に備えられ、円柱状本体の膨潤によりオリフィスが閉塞されるまで流体を円柱状本体を通って流させるようにされる、請求項1の浸透式ポンプ。
【請求項13】
オリフィスの直径が円柱状本体の直径の35%未満である、請求項12の浸透式ポンプ。
【請求項14】
オリフィスの直径が円柱状本体の直径の0.8〜33%の範囲内にある、請求項12の浸透式ポンプ。
【請求項15】
半透性材料から作製された円柱状本体であって、
該円柱状本体はカプセルの内面とかみ合わされる外面を有しそしてスロットを備え、
該スロットは、円柱状本体の基部から円柱状本体の外面上の非基部点にまで及び、圧
力がカプセルの内部から外部へ選択的に排出できるようにされている本体
を含んでなる、送達カプセルを有する浸透式ポンプに使用するための膜プラグ。
【請求項16】
非基部点が円柱状本体の長さの10〜90%の範囲内にある、請求項15の膜プラグ。
【請求項17】
非基部点が円柱状本体の長さの20〜80%の範囲内にある、請求項15の膜プラグ。
【請求項18】
非基部点が円柱状本体の長さの30〜60%の範囲内にある、請求項15の膜プラグ。
【請求項19】
円柱状本体上に形成された拡大端部キャップをさらに含んでなり、該端部キャップが、カプセル内の円柱状本体の繰返し可能位置を実現するようにカプセルの端部とかみ合すための面を有する、請求項15の膜プラグ。
【請求項20】
カプセルの内面とかみ合うように複数の突起が円柱状本体の面上に備えられる、請求項15の膜プラグ。
【請求項21】
半透性材料の膨潤によりオリフィスが閉塞されるまで流体を円柱状本体を通って流させるように、オリフィスが円柱状本体内に備えられる、請求項15の膜プラグ。
【請求項22】
オリフィスの直径が円柱状本体の直径の35%未満である、請求項21の膜プラグ。
【請求項23】
オリフィスの直径が円柱状本体の直径の0.8〜33%の範囲内である、請求項21の膜プラグ。
【請求項24】
半透性材料から作製された円柱状本体であって、
該円柱状本体はカプセルの内面とかみ合わされる外面を有しそしてオリフィスを備
え、該オリフィスはオリフィスが半透性材料の膨潤により閉塞されるまで流体をカプ
セル内に流入させるようにされている本体
を含んでなる、送達カプセルを有する浸透式ポンプに使用するための膜プラグ。
【請求項25】
オリフィスの直径が円柱状本体の直径の35%未満である、請求項24の膜プラグ。
【請求項26】
オリフィスの直径が円柱状本体の直径の0.8〜33%の範囲内である、請求項24の膜プラグ。

【図3】
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【公表番号】特表2007−509703(P2007−509703A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538091(P2006−538091)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/034650
【国際公開番号】WO2005/044239
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】