説明

自車存在報知装置

【課題】注意喚起音を外部に出力する車両において、車両状況に応じて注意喚起音の出力が騒音となることを防止できる自車存在報知装置を提供する。
【解決手段】位置情報、前記位置情報を含むエリアのエリア情報、及び、前記位置情報を起点とする距離情報、が登録されたテーブル11の記憶手段と、位置検出手段200と、走行距離検出手段16と、車両のメインシステムの起動後、発進するまでの間に、現在位置がエリア内か否かを判定するエリア内判定手段12と、現在位置までの車両の走行距離が距離情報未満か否かを判定する走行距離判定手段13と、現在位置が前記エリア内であるか、又は、走行距離が距離情報未満の場合、音の出力を禁止するか又は音量を低下させる音出力制御手段14と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自車存在報知音を外部に出力する自車存在報知装置に関し、特に、自車存在報知音の出力をオフにできる自車存在報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車は電気モータのみで走行可能であるため騒音が少ないというメリットがある一方、電気モータのみで走行中の電気自動車やハイブリッド車が背後から歩行者に接近しても歩行者が気付きにくいというデメリットが指摘されている。このような指摘に対し、電気自動車やハイブリッド車に、エンジン音を模倣したエンジン模擬音(以下、自車存在報知音という)を外部に出力する装置を搭載することを義務づけること又は推奨することが考えられる。
【0003】
このように注意換気する音をあえて外部に出力することで安全性を向上する考え方は従来から知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、事故多発する地点等を登録しておき、現在位置が事故多発地点等に接近すると、警報音により車外へ自己の存在を報知する事故防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−062060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気自動車やハイブリッド車が外部に出力する自車存在報知音や特許文献1に記載の事故防止装置が出力する警報音は、外部への騒音となるおそれがあるという問題がある。例えば、電気自動車やハイブリッド車が外部に出力する自車存在報知音は、主に低速走行中に出力されるため、歩行者が存在するか否かに関係なく出力されてしまう。特許文献1に記載された事故防止装置も同様であり、注意換気すべき歩行者や他車両が存在しているか否かに関係なく警報音を吹鳴するため、騒音公害をもたらすおそれがある。
【0006】
また、近くに歩行者や他車両が存在していても、自車両と接触するおそれが完全にない場合、自車存在報知音や注意換気音を出力する必要性は低い。
【0007】
ここで、電気自動車やハイブリッド車が外部に出力する自車存在報知音の出力を、運転者の意志でオフに設定することも可能であるが、運転者がオフの解除を忘れた場合、自車存在報知音を出力すべき状況で出力できないという不都合を生じさせる。また、自車存在報知音が低速走行時にのみ出力される設定の場合、運転者が早期に所定値以上の車速に到達しようと加速操作することもあり、燃費を低下させるという不都合を生じさせる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、注意換気音を外部に出力する車両において、車両状況に応じて注意換気音の出力が騒音となることを防止できる自車存在報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車外に音を出力する自車存在報知装置において、位置情報、前記位置情報を含むエリアのエリア情報、及び、前記位置情報を起点とする距離情報、が登録されたテーブルの記憶手段と、車両の現在位置を検出する位置検出手段と、走行距離を検出する走行距離検出手段と、車両のメインシステムの起動後、発進するまでの間に、前記テーブルに基づき現在位置が前記エリア内か否かを判定するエリア内判定手段と、前記テーブルに基づき、メインシステムが起動してから現在位置までの車両の走行距離が前記距離情報未満か否かを判定する走行距離判定手段と、前記エリア内判定手段が、現在位置が前記エリア内であると判定するか、又は、前記走行距離判定手段が、走行距離が前記距離情報未満であると判定した場合、前記音の出力を禁止するか又は音量を低下させる音出力制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
注意換気音を外部に出力する車両において、車両状況に応じて注意換気音の出力が騒音となることを防止できる自車存在報知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自車存在報知装置の概略を模式的に説明する図の一例である。
【図2】自車存在報知装置の概略ブロック図の一例である。
【図3】位置情報登録テーブルを模式的に説明する図の一例である。
【図4】自車存在報知装置が自車存在報知音の出力のオン/オフを制御する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図5】位置情報登録テーブルを模式的に説明する図の一例である(実施例2)。
【図6】自車存在報知装置が自車存在報知音の出力のオン/オフを制御する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例の自車存在報知装置の概略を模式的に説明する図の一例である。車両には電気モータによる走行中に自車存在報知音を車外に出力する自車存在報知装置が搭載されている。自車存在報知装置には、予め位置情報を登録することができ、例えば、駐車場がある運転者の自宅の位置情報が登録されている。
【0014】
自車存在報知装置は、車両が登録された位置情報の場所から発進する場合、自車存在報知音の出力をオフにする。これにより、自宅から発進する場合、特に早朝や真夜中などの時間帯に、周辺住民に不快感を感じさせることを防止できる。
【0015】
また、自車存在報知装置には、位置情報に付随したエリアを登録することができる。図では点線で囲んだ領域内が登録されたエリアである。そして、自車存在報知装置はこのエリアに対し次の場合に、自車存在報知音の出力をオンにする。
(1)車両がエリア外に到達した場合(Aの車両)
(2)車両がエリア内で所定距離以上、走行した場合(Bの車両)
車両がエリア外に到達した場合には、自車存在報知音の出力がオンになるので、運転者が自車存在報知音の出力をオンに設定し忘れることを防止できる。また、車両がエリア内を走行中でも、登録した位置から所定距離以上走行した場合には、自車存在報知音の出力がオンになるので、登録した位置からある程度離れた場合には、自車存在報知音を出力することができ、歩行者や自転車(以下、歩行者等という)に自車の存在を報知することができる。
【0016】
なお(2)と同様な効果はエリアを十分に狭くすることでも得られるが、エリアをあまり狭くすると、例えば、自宅の近くに車両を駐車した場合にも自宅の近くで自車存在報知音が出力されてしまう。一方、(1)のように比較的広いエリアの内外判定だけで自車存在報知音の出力をオンにすると、自宅から十分に離れても歩行者等に自車の存在を報知することができない。
【0017】
したがって、(2)のように車両がエリア内で所定距離以上、走行した場合に、自車存在報知音の出力をオンにすることで、自宅近くで自車存在報知音が出力されることを防止でき、かつ、自宅からある程度離れれば自車存在報知音を出力することができるという、背反する課題を解決できる。
【0018】
図2は、自車存在報知装置100の概略ブロック図の一例を示す。自車存在報知装置100は、ナビシステム200と接続されている。自車存在報知装置100をナビシステム200と一体に構成してもよい。ナビシステム200と自車存在報知装置100はCAN(Controller Area Network)やFlexRay等の車載LANを介して接続されている。また、自車存在報知装置100は、外部スピーカと車載LAN又は専用線を介して接続されている。
【0019】
ナビシステム200は公知の方法で自車両の現在位置を検出する。ナビシステム200は、GPS(米国)、Galileo(欧州)、又は、Glonass(ロシア)等と呼ばれるGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた測位方法により自車位置を検出する。例えば、GPSの場合、ナビシステム200は、GPS受信機により、4つ以上のGPS衛星からの電波の到達時間に基づき車両の位置(緯度・経度・標高)を決定する。また、ナビシステム200は、車速センサ16から走行距離を、3Dジャイロセンサから3軸方向それぞれの走行方向を取得し、自律航法により自車位置を高精度に推定する。また、ナビシステム200は、推定された位置に対し最も確からしい道路に自車両の位置をマッチングするマップマッチングによって自車両の位置を道路地図の所定のリンクに対応づけ最終的な現在位置を確定している。
【0020】
ナビシステム200は、駐車直前(メインシステムオフの直前)の位置情報を自車存在報知装置100に通知するか、又は、自車存在報知装置100のメインシステムの起動直後(発進直前)に現在の位置情報を自車存在報知装置100に通知する。こうすることで、自車存在報知装置100は、車両が発進するまでにエリア内か否かを判定できる。ナビシステム200が検出した位置情報を利用せずに、携帯電話の位置検出機能を利用してもよいし、自車存在報知装置100が位置検出機能を備えていてもよい。
【0021】
なお、メインシステムの起動とは、エンジンだけを搭載した車両のイグニッションオンと同義であり、一般には、スマートキー(登録商標)を携帯した運転者がスタートボタンを押下したことをいう。
【0022】
自車存在報知装置100は、CPU、RAM、ROM、入出力用のI/O、フラッシュメモリ等を備えたマイコンを実体とする。図示するように、自車存在報知装置100は、位置情報登録テーブル11、エリア判定フラグ20、エリア内判定部12、走行距離判定部13及び出力オン/オフ部14を有する。位置情報登録テーブル11及びエリア判定フラグ20はフラッシュメモリに記憶されている。エリア内判定部12、走行距離判定部13及び出力オン/オフ部14は、CPUがプログラムを実行することで実現される。
【0023】
図3は、位置情報登録テーブル11を模式的に説明する図の一例である。位置情報登録テーブル11には、自車存在報知音の出力をオフにする1つ以上の位置を指定する出力オフ位置情報、エリア指定情報及び解除距離が登録されている。エリア指定情報は、出力オフ位置情報の位置を中心とする円形のエリアの半径を指定する。エリアの形状は円形である必要はないので、道路を識別するリンク番号をエリア指定情報としてもよいし、矩形領域の4つの頂点の位置情報をエリア指定情報としてもよい。解除距離は、出力オフ位置情報の位置を起点とする距離を指定する。
【0024】
運転者は、ナビシステム200が提供する入力装置(タッチパネル、ハードキー)から出力オフ位置情報、エリア指定情報及び解除距離をマニュアルで設定することができる。また、運転者がパソコンで設定した位置情報登録テーブル11をネットワーク経由や記憶媒体経由で、自車存在報知装置100に記憶させてもよい。
【0025】
なお、自車存在報知装置100は、予め定められた、登録可能な最小値から最大値にエリア指定情報が入るように、運転者に対しエリア指定情報の設定操作を誘導する。また、同様に、自車存在報知装置100は、解除距離がエリア指定情報の値よりも短くなるように、運転者に対し解除距離の設定操作を誘導してもよい。
【0026】
図2に戻り、エリア内判定部12は、ナビシステム200から取得した現在の位置情報が、位置情報登録テーブル11に登録された出力オフ位置情報を中心とするエリア内か否かを判定する。具体的には現在の位置情報と出力オフ位置情報までの距離が、エリア指定情報として登録された半径よりも長い場合に、エリア内判定部12は、車両の現在の位置がエリア外であると判定する。
【0027】
エリア内判定部12は、車両の現在位置がエリア外であると判定すると、エリア判定フラグ20を「ON」にする。このエリア判定フラグ20は「ON」の場合に「現在位置がエリア外、又は、走行距離が解除距離以上である」ことを意味する。出力オン/オフ部14は、エリア判定フラグ20を参照できる。メインシステムが起動した直後の初期状態(デフォルト状態)では、エリア判定フラグ20は「OFF」になっている。こうすることで、メインシステムの起動直後に自車存在報知音が出力されることを防止できる。
【0028】
走行距離判定部13は、メインシステムが起動してから現在までの走行距離が、位置情報登録テーブル11に登録された解除距離未満か否かを判定する。具体的には、走行距離判定部13は、発進直後の走行距離をゼロとして、車速センサ16から走行距離を取得するとともに累積し、例えば定期的に解除距離と比較する。走行距離判定部13は、走行距離が解除距離以上であると判定すると、エリア判定フラグ20を「ON」にする。
【0029】
出力オン/オフ部14は、外部スピーカ15を用いた自車存在報知音の出力のオンとオフの切り替えを制御する。ここで、自車存在報知音の一般的な出力態様は、
(3)車速が所定値(例えば、20〔km/h〕)未満の場合にのみ出力される
というものである。
【0030】
なお、自車存在報知音が必要となるのは、エンジンが作動していない(又はエンジンが搭載されていない)場合であるが、本実施例ではエンジンを搭載したハイブリッド車でもエンジンが作動しない発進時の自車存在報知音の制御を対象とするので、エンジンが作動しているか否かを判定しないものとする。
【0031】
出力オン/オフ部14は、車速センサ16が検出した車速を監視して、自車存在報知音の出力のオン/オフを切り替える。したがって、上記の(1)(2)と(3)と合わせ、自車存在報知装置100は3つの条件の成立・非成立に応じて、自車存在報知音の出力のオン/オフを切り替える。より具体的には、出力オン/オフ部14は、エリア判定フラグ20が「ON」の場合にだけ、車速に応じて自車存在報知音の出力のオン/オフを切り替える。
【0032】
なお、外部スピーカ15は、例えば、ボンネットの内側、前方バンパ内、後方バンパ内、運転席ドア内、助手席ドア内等の一部以上に、開口部を車両の外側に向けて配置されたスピーカである。自車存在報知音としては、エンジン模擬音が一般的であるが、歩行者に車両が接近していることを把握させる音であればどのような音でもよい。自車存在報知音のデータは、人工的に生成されたデジタルデータとして、又は、実車両のエンジン音が録音されたデジタルデータとして自車存在報知装置100に記憶されている。自車存在報知装置100は、デジタルデータをデコードしてD/A変換することで外部スピーカ15を駆動し、自車存在報知音を外部に出力する。音量については予め定められている。
【0033】
図4は、自車存在報知装置100が自車存在報知音の出力のオン/オフを制御する手順を示すフローチャート図の一例である。図4の手順は、メインシステムが起動することでスタートする。
【0034】
メインシステムが起動した直後、エリア内判定部12は、位置情報登録テーブル11に出力オフ位置情報が登録されているか否かを判定する(S101)。出力オフ位置情報が登録されていない場合(S101のNo)、エリア内か否か及び走行距離が解除距離未満か否かを判定する必要がないので、手順は車速に基づく判定に進む。なお、エリア内判定部12は、エリア判定フラグ20を「ON」にする。
【0035】
出力オフ位置情報が登録されている場合(S101のYes)、エリア内判定部12は、ナビシステム200から取得した現在位置が、エリア指定情報が指定するエリア内か否かを判定する(S102)。すなわち、エリア内判定部12は、位置情報登録テーブル11から全ての出力オフ位置情報とエリア指定情報を読み出し、現在位置と出力オフ位置情報の間の距離が、エリア指定情報よりも短い場合、現在位置がエリア内であると判定する。ステップS101の判定は、車両のメインシステムが起動後、発進するまでの間に実行される。こうすることで、現在位置がエリア外であれば車両が発進する際には自車存在報知音を出力できる。
【0036】
現在位置がエリア内でない場合(S102のNo)、走行距離と解除距離の大小を判定する必要がないので、手順は車速に基づく判定に進む。エリア内判定部12は、エリア判定フラグ20を「ON」にする。
【0037】
現在位置がエリア内の場合(S102のYes)、走行距離判定部13は、メインシステムが起動してからの走行距離が、解除距離未満か否かを判定する(S103)。すなわち、走行距離判定部13は、位置情報登録テーブル11から現在のエリアの解除距離を読み出し、走行距離が解除距離よりも短いか否かを判定する。したがって、現在位置がエリア内の場合、自車存在報知装置100が自車存在報知音を出力することなく車両は走行を開始する。
【0038】
走行距離が解除距離未満でない場合(S103のNo)、位置情報登録テーブル11に基づく判定は不要になるので、手順は車速に基づく判定に進む。走行距離判定部13は、エリア判定フラグ20を「ON」にする。
【0039】
走行距離が解除距離未満の場合(S103のYes)、エリア判定フラグ20が「OFF」のままになるので、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオフにしたままとする(S104)。なお、出力のオフには、出力時の音量を一般的な聴覚の人間が聞き取れない程度に十分に低下させることを含む。
【0040】
この場合、自車存在報知装置100は、メインシステムがオフに操作されたか否かを判定し(S105)、メインシステムがオフにされた場合(S105のYes)、図4の手順は終了する。
【0041】
メインシステムがオフに操作されない場合(S105のNo)、手順はステップS102に戻り、現在位置がエリア内か否か(S102)、エリア内の場合は走行距離が解除距離未満か否か(S103)の判定が繰り返される。
【0042】
ステップS101、S102又はS103において、エリア判定フラグ20が「ON」にされた場合、出力オン/オフ部14は車速が所定値未満か否かを判定する(S106)。
【0043】
車速が所定値未満でない場合(S106のNo)、歩行者等に注意換気することが不要になるので、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオフにする(S108)。
【0044】
車速が所定値未満である場合(S106のYes)、歩行者等に注意換気するべきであるので、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオンにする(S107)。自車存在報知音を出力する場合、車速に応じて自車存在報知音を大きく又は小さくしてもよい。
【0045】
次いで、自車存在報知装置100は、メインシステムがオフに操作されたか否かを判定する(S109)。メインシステムがオフにされない場合(S109のNo)、出力オン/オフ部14はステップS106の判定を繰り返す。
【0046】
メインシステムがオフにされた場合(S109のYes)、自車存在報知装置100は図4の手順を終了する。この場合、エリア判定フラグ20が「ON」になっているので、自車存在報知装置100はエリア判定フラグ20を「OFF」にしておく。こうすることで、次回、メインシステムが起動した際に、自車存在報知音の出力をオフにすることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施例の自車存在報知装置100は、自宅などの位置を登録しておくことで、発進時に自車存在報知音の出力をオフにするので、周辺住民に音による不快感を感じさせることを防止できる。自宅などからある程度離れれば、自車存在報知音の出力がオンになるので、運転者が自車存在報知音のオフの解除を忘れ、自車存在報知音を出力すべき状況で出力できないという不都合が生じることも防止できる。
【0048】
なお、このような現在の位置情報に応じた制御を、音の出力以外にも適用できる。例えば、エリア内ではエンジン出力を低下したり、エアコンの出力を低下したり、オーディオ機器の音声出力を低下させることができる。
【実施例2】
【0049】
実施例1では、車両の発進時に自車存在報知音の出力をオフにすることができる自車存在報知装置100について説明したが、本実施例では車両がエリア内に戻ってきた場合に自車存在報知音をオフにすることができる自車存在報知装置100について説明する。
【0050】
本実施例では、自車存在報知装置100に、車両がエリア外からエリア内に戻った際、自車存在報知音をオフするか否かを運転者が設定することができる。自車存在報知装置100は、この設定に基づき、車両がエリア外からエリア内に戻った際、自車存在報知音をオフするか否かを判定する。
【0051】
図5は、位置情報登録テーブル11を模式的に説明する図の一例である。図5において図3と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図5の位置情報登録テーブル11には、「帰路時設定」が登録されている。「帰路時設定」が「出力オン」の場合、自車存在報知装置100は帰路時のエリア内で自車存在報知音を出力し、「帰路時設定」が「出力オフ」の場合、自車存在報知装置100は帰路時のエリア内で自車存在報知音を出力しない。
【0052】
運転者が「帰路時設定」を「出力オフ」の設定しておけば、帰宅が深夜になったような場合にも、エリア内では自車存在報知音が出力されないので、周辺住民に音による不快感を感じさせることを防止できる。なお、自車存在報知装置100の機能ブロック図は図2と同じなので省略する。
【0053】
図6は、自車存在報知装置100が自車存在報知音の出力のオン/オフを制御する手順を示すフローチャート図の一例である。図6の手順のうちステップS108までは図4と同じである。
【0054】
ステップS108までの処理によりエリア判定フラグ20が「ON」になり、出力オン/オフ部14は車速に応じて自車存在報知音の出力のオン/オフを切り替えている。
【0055】
本実施例では、出力オン/オフ部14が自車存在報知音の出力のオン/オフを切り替えながら、例えば定期的に、エリア内判定部12が、ナビシステム200から取得した現在位置が、エリア指定情報が指定するエリア内か否かを判定する(S201)。判定方法はステップS102と同様である。
【0056】
現在位置がエリア内でない場合(S201のNo)、車速のみに基づいて自車存在報知音を出力するか否かを判定すればよいので、出力オン/オフ部14はステップS106の判定を繰り返す。
【0057】
現在位置がエリア内の場合(S201のYes)、エリア内判定部12は、位置情報登録テーブル11の現在のエリアに対応した「帰路時設定」が「出力オフ」に設定されているか否かを判定する(S202)。
【0058】
「帰路時設定」が「出力オフ」に設定されている場合(S202のYes)、自車存在報知装置100はエリア内では自車存在報知音を出力できないので、エリア内判定部12はエリア判定フラグ20を「OFF」に設定する。エリア判定フラグ20が「OFF」であるため、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオフにする(S203)。
【0059】
自車存在報知装置100は、メインシステムがオフに操作されたか否かを判定し(S204)、メインシステムがオフにされた場合(S204のYes)、図6の手順は終了する。ステップS201の判定が「Yes」の場合、車両が、位置情報登録テーブル11に登録された出力オフ位置情報の位置の近くに存在することになるので、メインシステムがオフにされることが多い。
【0060】
メインシステムがオフにされない場合(S204のNo)、エリア内判定部12は例えば定期的に、ナビシステム200から取得した現在位置が、エリア指定情報が指定するエリア内か否かを判定する(S205)。判定方法はステップS102と同様である。
【0061】
現在位置がエリア内の場合(S205のYes)、自車存在報知装置100はエリア内では自車存在報知音を出力できないので、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオフにしたままとする(S203)。
【0062】
現在位置がエリア内でない場合(S205のNo)、車両がエリア外に出たことになり、車速のみに基づいて自車存在報知音を出力するか否かを判定すればよいので、エリア内判定部12はエリア判定フラグ20を「ON」に設定する。出力オン/オフ部14はエリア判定フラグ20が「ON」であることから、車速のみに基づき自車存在報知音を出力するか否かを判定する(S106)。
【0063】
また、ステップS202において、「帰路時設定」が「出力オフ」に設定されていない場合(S202のNo)、エリア内でも帰路時では自車存在報知音を出力できるので、出力オン/オフ部14は車速のみに基づき自車存在報知音を出力するか否かを判定することができる(S206)。なお、エリア判定フラグ20はステップS101〜S103で「ON」に設定されている。
【0064】
エリア判定フラグ20が「ON」にされているので、出力オン/オフ部14は車速が所定値未満か否かを判定する(S206)。
【0065】
車速が所定値未満でない場合(S206のNo)、歩行者等に注意換気することが不要になるので、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオフにする(S208)。
【0066】
車速が所定値未満である場合(S206のYes)、歩行者等に注意換気するべきであるので、出力オン/オフ部14は自車存在報知音の出力をオンにする(S207)。
【0067】
次いで、エリア内判定部12は例えば定期的に、ナビシステム200から取得した現在位置が、エリア指定情報が指定するエリア内か否かを判定する(S209)。判定方法はステップS102と同様である。すなわち、ステップS209では、帰路時に車両がエリア内に戻ったが、エリア内を通過して再度、エリア外に出たか否かを判定している。
【0068】
現在位置がエリア内でない場合(S209のNo)、帰路時の車両がエリアから出たことになるので、再度、車両がエリア内に入った場合に備え、手順はステップS106に移る。こうすることで、車両が別のエリアに入ったり、同じエリアに再度、入った場合に該エリアにおいて「帰路時設定」が「出力オフ」に設定されているか否かを判定できる。
【0069】
現在位置がエリア内の場合(S209のYes)、自車存在報知装置100は、メインシステムがオフに操作されたか否かを判定する(S210)。メインシステムがオフにされない場合(S210のNo)、出力オン/オフ部14はステップS206の判定を繰り返す。
【0070】
メインシステムがオフにされた場合(S210のYes)、自車存在報知装置100は図6の手順を終了する。この場合、この場合、エリア判定フラグ20が「ON」になっているので、自車存在報知装置100はエリア判定フラグ20を「OFF」にしておく。こうすることで、次回、メインシステムが起動した際に、自車存在報知音の出力をオフにすることができる。
【0071】
本実施例の自車存在報知装置100は、実施例1の効果に加え、帰路時においても自車存在報知音の出力をオフにすることができるので、周辺住民に音による不快感を感じさせることを防止できる。
【符号の説明】
【0072】
11 位置情報登録テーブル
12 エリア内判定部
13 走行距離判定部
14 出力オン/オフ部
15 外部スピーカ
16 車速センサ
20 エリア判定フラグ
100 自車存在報知装置
200 ナビシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外に音を出力する自車存在報知装置において、
位置情報、前記位置情報を含むエリアのエリア情報、及び、前記位置情報を起点とする距離情報、が登録されたテーブルの記憶手段と、
車両の現在位置を検出する位置検出手段と、
走行距離を検出する走行距離検出手段と、
車両のメインシステムの起動後、発進するまでの間に、前記テーブルに基づき現在位置が前記エリア内か否かを判定するエリア内判定手段と、
前記テーブルに基づき、メインシステムが起動してから現在位置までの車両の走行距離が前記距離情報未満か否かを判定する走行距離判定手段と、
前記エリア内判定手段が、現在位置が前記エリア内であると判定するか、又は、前記走行距離判定手段が、走行距離が前記距離情報未満であると判定した場合、前記音の出力を禁止するか又は音量を低下させる音出力制御手段と、
を有することを特徴とする自車存在報知装置。
【請求項2】
前記エリア内判定手段が、車両が前記エリア外に出た後、前記エリア内に戻ったと判定した場合、
前記音出力制御手段は、前記音の出力を禁止するか又は音量を低下させる、
ことを特徴とする請求項1記載の自車存在報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−148435(P2011−148435A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12106(P2010−12106)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】