自転車用前照灯装置
【課題】電動補助自転車の接近を歩行者等に音で知らせる発音体の音量制御を車速や踏力の変化パターンに基づいて行うことで不規則な発音状態を安定化させる。
【解決手段】前照灯装置29は、LED67からの光を前方に反射させる光反射部561を有する発光部と、スピーカ64からの音を反射させる音反射部52を有する発音部と、光源67を収容する下ケース56と、スピーカ64を収容する上ケース55とを有する。下ケース56および上ケース55の間に壁部材57が配置される。壁部材57に沿って配置され、LED67およびスピーカ64がそれぞれ異なる面に取り付けられた回路基板63を有する。下ケース56と壁部材57とで区画された下室58の前部にレンズ59が設けられる。上2ケース55と壁部材57とで区画された上室60に臨ませたスピーカ64からの音を前方に反射させる音反射面552とを備えている。
【解決手段】前照灯装置29は、LED67からの光を前方に反射させる光反射部561を有する発光部と、スピーカ64からの音を反射させる音反射部52を有する発音部と、光源67を収容する下ケース56と、スピーカ64を収容する上ケース55とを有する。下ケース56および上ケース55の間に壁部材57が配置される。壁部材57に沿って配置され、LED67およびスピーカ64がそれぞれ異なる面に取り付けられた回路基板63を有する。下ケース56と壁部材57とで区画された下室58の前部にレンズ59が設けられる。上2ケース55と壁部材57とで区画された上室60に臨ませたスピーカ64からの音を前方に反射させる音反射面552とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用前照灯装置に関し、特に、歩行者等が自転車の接近を音で認識できるように自転車に取り付けられる聴覚的信号装置を一体化して小型化および部品点数の削減を図るのに好適な自転車用前照灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車に盗難防止用の発音体を設けることは知られている。特許文献1には、自動点灯機能を備えた自転車ランプに設けられた振動センサによる検出信号に応じて警報音を発生させる警報装置としてのブザーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−16363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたブザーを設けたヘッドライトケースは、側面に開口された放音孔からブザー音が放散される構造になっている。この従来技術は、盗難警報を目的とするものであって、走行中の自転車の進行方向前方にいる歩行者等に自転車の接近を認識させることはできなかった。ブザーやスピーカ等の発音体は組み付け性の観点から基板に直接取り付けるのが望ましい。しかし、単に発音体を基板に取り付けて発音体を前方に指向させる構造にすると、ヘッドライトが上下方向に大きくなったり、部品点数が多くなったりして重量が大きくなるのみならず、高コストにもなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に対して、聴覚信号である発音体からの音を前方に指向させつつ、小型化および部品点数の削減が可能な自転車用前照灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、光源および該光源からの光を前方に反射させる光反射部を有する発光部と、発音体を有する発音部と、前記光源および前記発音体を収容するケースと、前記光源および前記光反射部を収容し、前記ケースと接合されるレンズと、前記光源および発音体を実装する基板とを有する自転車用前照灯装置において、前記ケースを上下に区切る壁部材を備え、前記基板が、前記壁部材に沿わせて、該壁部材で区切られた上下の空間のいずれかに配置され、該基板の一方の面に前記光源が取り付けられ、他方の面には前記発音体が取り付けられており、前記基板が配置された一方の空間に前記光反射部が配置されるとともに、該一方の空間を前記レンズによって密封し、他方の空間には、前記基板上の前記発音体を、前記壁部材を貫通させて臨ませ、前記発音体の周囲の前記ケースには前記発音体からの音を前方に反射させる音反射部を設けている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記基板が配置された前記一方の空間が前記壁部材の下方に、前記発音体が臨んでいる前記他方の空間が前記壁部材の上方にそれぞれ位置しており、前記光反射部が前記壁部材の下方に位置する前記空間の内面に放物曲面として形成され、該放物曲面には、前記壁部材によって形成される扁平片面が隣接している点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記光源が発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、最大輝度方向が放物曲面部を向くように配設されている点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記回路基板が前記発光部側で前記壁部材に取り付けられており、前記発音体が前記壁部材に形成された貫通孔を通って前記壁部材で区切って形成された一方の空間に臨ませてあるとともに、前記発音体と前記貫通孔との間にシール部材が配設されている点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記壁部材で区切られた上方の空間には、前記発音体からの音を前方に指向させる指向部材、例えばルーバもしくはリブが設けられている点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、周囲の明るさを検出する光センサと、該光センサで検出された周囲の明るさに基づいて前記光源の点灯および消灯を制御する発光制御部とを設け、前記光センサおよび前記発光制御部が前記回路基板に取り付けられている点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記光センサが、前記基板上で、前記音反射部を有する壁部の背部空間に位置して設けられており、前記背部空間を覆う前記ケースの部分および/または該ケースの背後に結合されるカバー部材に、前記光センサを見通せる透過部が形成されている点に第7の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記壁部材が、前方に向けて下り勾配となっている上面を有している点に第8の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記ケースが、二つのケース部分からなり、前記二つのケース部分の一方に形成された凸部が他方のケース部分に設けられた係合孔に係合することによって一体的に組み合わされる点に第9の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴を有する本発明によれば、ケースを上下に区切る壁部材に沿わせて基板を設けたので、前照灯が上下方向に大型化するのを防ぐことができるとともに、そのように設けた基板の表裏に発音体と光源とを配置することで基板を小型化することを達成することができる。さらに、壁部材を間に挟んで形成される2つの空間の一方側を、光源を収容する密閉空間とし発光部としつつ、他方側を、発音体を収容し、該発音体の音を音反射部で前方に反射させることができる発音部としたので、発光部の防水を維持できるとともに、基板上に配置した発音体の音を効果的に前方に投音でき、前方にいる歩行者等に自転車の接近を効果的に認識させられる。これにより、前照灯としての防水性を維持しながら、一体化したブザーの発音性能を確保することができる。
【0016】
第2の特徴を有する本発明によれば、光反射部を放物曲面として扁平片面を隣接させたので、走行時に必要な下方を照らす拡散光を確保しつつ、自転車から比較的高い位置にある歩行者等の目を照射するような無効光束を減少させることができる。特に、上に発音部、下に発光部を設けたことによって、人の目に入るような上方向への光を減少することができるとともに、発音部で発生した音を人の耳に伝わりやすい方向に向けられる。
【0017】
第3の特徴を有する本発明によれば、発光ダイオードの最大光束を反射させることができるので、レンズ前方のスポット光の照度を一層高めることができる。
【0018】
第4の特徴を有する本発明によれば、回路基板が密閉空間に配設されるとともに、前記壁部材で区切って形成された一方の空間に発音体を臨ませるための貫通孔と発音体との間はシール部材で封止されるので、光源を有する密閉空間には水などの浸入を防ぐことができる。
【0019】
第5の特徴を有する本発明によれば、発音体からの音の指向方向をきめ細かく設定し、管理することができる。特に、ルーバを有するものにおいては、ルーバの向きによって音の指向方向を変更できる。
【0020】
第6の特徴を有する本発明によれば、回路基板に光センサと発光制御部とを取り付けることで、光源からの光の点灯および消灯等の制御を前照灯装置内で自立して行うことができる。
【0021】
第7の特徴を有する本発明によれば、透過部を光センサの上方に位置させたので、周囲の明るさを確実に判別して、明るさに応じた前照灯の点灯および消灯を実施することができる。
【0022】
第8の特徴を有する本発明によれば、壁部材によって区切られた上側の空間に浸入した水等を該上側の空間から外へ排出しやすくなる。
【0023】
第9の特徴を有する本発明によれば、二つのケース部分の一方に設けられた凸部を他方のケース部分に設けられた係合孔に係合させるという簡単な構造を有するので、二つのケース部分を組み立ててケースを形成する際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る発音体制御装置を備えた電動補助自転車の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る制御装置に含まれる発音体を一体化した前照灯の正面図である。
【図3】図1の踏力検知装置15のII−II線断面図である。
【図4】前照灯の左側面図である。
【図5】前照灯の上面図である。
【図6】図5のIII−III線断面図である。
【図7】前照灯のケースの分解図である。
【図8】前照灯のケースの連結部を示すIV−IV線断面図である。
【図9】組上がった前照灯の照射範囲とスピーカ音の放出範囲を示す図である。
【図10】発音制御回路の処理に係る第1実施形態の概要を示す図である。
【図11】第1実施形態に係る発音制御回路の要部機能を示すブロック図である。
【図12】第1実施形態の処理に係るフローチャートである。
【図13】発音制御回路の処理に係る第2実施形態の概要を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る発音制御回路の要部機能を示すブロック図である。
【図15】第2実施形態の処理にかかるフローチャートである。
【図16】車速/音圧マップの一例を示す図である。
【図17】車速/音圧補正量マップの一例を示す図である。
【図18】第2実施形態の変形例に係る発音制御回路の概要を示す図である。
【図19】第2実施形態の変形例に係る処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る聴覚信号装置を一体に有する前照灯装置を備えた自転車の一例としての電動補助自転車の左側面図である。電動補助自転車(以下、「アシスト自転車」という)1は、車体前方に位置するヘッドパイプ2と、ヘッドパイプ2に先端が接合されて下後方に延びるダウンフレーム3と、ダウンフレーム3の後端から上方に立ち上がるシートパイプ4と、ヘッドパイプ2に接合されるダウンフレーム3の上方から後方に延びてシートパイプ4と連結されるトップフレーム5とを備える。
【0026】
ヘッドパイプ2に回転自在に支持されるステアリング軸6は、上部にハンドル7が連結されるとともに、下端部には前輪WFを回転自在に軸支するフロントフォーク8が連結される。前輪WFのハブ9にはモータ部10が内蔵され、ハブ9の外周には複数のスポーク11が取り付けられている。
【0027】
シートパイプ4の後方に車体に対して左右一対のプレート12が設けられ、各プレート12には、後方に延びる左右一対のリヤフォーク13が連結されていて、リヤフォーク13の後端には後輪WRが回転自在に軸支されている。また、トップフレーム5の下方でシートパイプ4から下後方に延びて前記リヤフォーク13に後端が接合される左右一対のステー14が設けられる。
【0028】
ダウンフレーム3およびシートパイプ4は、踏力検知装置15を支持する。シートパイプ4には、上端にシート16を有するシートポスト17がシート16の上下位置を調整可能に装着されている。トップフレーム5の内部にモータ部10に電力を供給するためのバッテリ18が設けられる。バッテリ18は、アシスト自転車1から容易には取り外すことができないようにトップフレーム5の内部に設けるのが好ましいが、これには限定されない。バッテリ18はモータ部10に発生した回線電力によって充電可能に構成されるが、充電器によって充電することができるように構成することもできる。
【0029】
踏力検知装置15および駆動側スプロケット19を貫通して、車体の幅方向に延びるクランク軸20が設けられ、クランク軸20の両側に、ペダル21を有するクランク22が接続される。運転者がペダル21を漕ぐことにより、クランク軸20に踏力トルク(動力)が与えられる。クランク軸20に与えられた踏力トルクによって駆動側スプロケット19が回転し、スプロケット19の回転はチェーン23を介して後輪WR側の従動側スプロケット24に伝達されて後輪WRが回転する。駆動側スプロケット19、チェーン23、および従動側スプロケット24は駆動系機構として機能する。
【0030】
一対のフロントフォーク8には、前輪WFの回転を止めるための前輪用カンチレバーブレーキ25が設けられており、ステー14には、後輪WRの回転を止めるための後輪用カンチレバーブレーキ26が設けられている。ハンドル7の左右には、それぞれグリップ27およびブレーキレバー28が設けられており、右側のブレーキレバー28を操作することによって前輪用カンチレバーブレーキ25が作動し、左側のブレーキレバー28を操作することによって後輪側カンチレバーブレーキ26が作動する。
【0031】
リヤフォークには後輪WRの回転数から車速を検出する車速センサ50が設けられる。ハンドル7の上部には、車速センサ50の検出出力に基づいてアシスト自転車1の車速を表示するスピードメータ(図示せず)および表示部51が設けられる。ハンドル7の前方には前照灯29が設けられる。車速センサ50は、前輪WRの回転数から車速を検出できるように、例えばフロントフォーク8に設けてもよい。
【0032】
図3は、図1の踏力検知装置15のII−II線断面図である。踏力検知装置15は、アシスト自転車1が前に進む方向(正方向)にペダル21を漕いだ場合に駆動側スプロケット19を回転させ、正方向とは逆方向にペダル21を漕いだ場合は駆動側スプロケット19を回転させない機構を有する。具体的には、踏力検知装置15はその筐体30内にクランク軸20の外周に嵌挿される中空トルク伝達部材31と、クランク軸20と中空トルク伝達部材31の一方の側部(図2では車体左側の側部)との間に設けられたワンウェイクラッチ手段32と、モータ部10内に設けられるブラシレスモータを駆動させるドライバ33と、ドライバ33のPWM制御を行う制御部34とを有する。
【0033】
ワンウェイクラッチ手段32は、ペダル21が正方向に漕がれたときにクランク軸20の踏力トルクを中空トルク伝達部材31に伝達し、ペダル21が正方向とは逆方向に漕がれたときはクランク軸20の回転を中空トルク伝達部材31に伝達しない構造を有する。中空トルク伝達部材31の他方の側部(図2では車体右側の側部)にはスプラインが形成されており、駆動側スプロケット19がこのスプラインに嵌合した状態で連結されている。
【0034】
正方向にペダル21が漕がれると、クランク軸20が回転するとともに、ワンウェイクラッチ手段32により中空トルク伝達部材31が回転する。これにより、駆動側スプロケット19が回転する。一方、正方向と逆方向にペダル21が漕がれると、クランク軸20は回転するが、ワンウェイクラッチ手段32によって動力伝達が遮断されて中空トルク伝達部材31は回転しないので、駆動側スプロケット19も回転しない。
【0035】
クランク軸20に与えられた踏力トルクを検出する踏力センサ(磁歪センサ)35が
中空トルク伝達部材31の外周に対向して配置される。踏力センサ35は2つの検出コイル36、37を有し、検出コイル36、37に対向するように、中空トルク伝達部材31の外周に磁性膜38が設けられる。踏力センサ35は、中空トルク伝達部材31が回転することで発生するねじれによって生じる検出コイル36、37のインダクタンスの変化を電圧に変換して制御部34に出力する。
【0036】
中空トルク伝達部材31は、クランク軸20からの踏力トルクを車体左側側部で受けて回転するとともに、その外周に踏力センサ35が設けられた第1中空部材39と、第1中空部材39の他端側(車体右側)で第1中空部材39と嵌合し、嵌合部位とは反対側で駆動側スプロケット19に連結される第2中空部材40とを有する。
【0037】
第1中空部材39と第2中空部材40とは互いに突き当てられて嵌合している。中空トルク伝達部材31は、第1中空部材39と第2中空部材40とを有するので、互いの嵌合部位で、強い踏力の発生時にクランク軸20を前下方に押し下げる力と駆動側スプロケット19にかかるチェーン23の力との関係によるねじれの力を緩和することができる。したがって、踏力センサ35に発生する該ねじれの影響を抑制することができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0038】
第1中空部材39は、ワンウェイクラッチ手段32が設けられる側にクランク軸20係合する第1係合部41を備える。第2中空部材40は、第1中空部材39との嵌合部位でクランク軸20と係合する第2係合部42と、駆動側スプロケット19との連結部位でクランク軸20と係合する第3係合部43とを備える。この第1係合部41、第2係合部42、および第3係合部43の3箇所でクランク軸20を支持するので、クランク軸20を前下方に押し下げる力と駆動側スプロケット19にかかるチェーン23の力との関係によって中空トルク伝達部材31に発生するねじれを抑えることができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0039】
ワンウェイクラッチ手段32の車体外方側で、筐体30に対して回転自在にクランク軸20を支持する軸受け(第1軸受け)44と、第2係合部42と第3係合部43との間の位置で筐体30に対して回転自在に中空トルク伝達部材31およびクランク軸20を支持する軸受け(第2軸受け)45とが設けられる。軸受け45が第2係合部42と第3係合部43との間に設けられているので、クランク軸20にかかる力を、第2中空部材40を通して軸受け45が良好に受け止めることができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0040】
クランク軸20には、第2中空部材40の第2係合部42をクランク軸20のスラスト方向に突き当てるスラスト止め凸部46が設けられる。第2係合部42とスラスト止め凸部46とで、中空トルク伝達部材31のスラスト方向への移動を禁止することができる。これにより、中空トルク伝達部材31のスラスト方向のずれを防止することができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0041】
第1中空部材39はさらに、一端側にワンウェイクラッチ手段32のアウタが設けられた第3中空部材47と、第3中空部材47の他端側で第3中空部材47と嵌合する第4中空部材48とを有する。第2中空部材40は、第4中空部材48の第3中空部材47と嵌合する部位とは反対側で第4中空部材48と嵌合しており、第4中空部材48の外周に踏力センサ35が設けられる。第1中空部材39は、第3中空部材47と第4中空部材48とを有するので、第3中空部材47と第4中空部材48とが嵌合する部位と、第4中空部材48と第2中空部材40とが嵌合する部位で、強い踏力の発生時にクランク軸20を前下方に押し下げる力と駆動側スプロケット19にかかるチェーン32の力との関係によるねじれの力の影響をさらに緩和することができる。したがって、踏力センサ35に発生する該ねじれの影響を抑制することができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0042】
次に、前照灯29を詳細に説明する。図2は前照灯29の正面図、図4は左側面図、図5は上面図、図6は図5のIII−III線断面図である。図2、図4〜図6において、前照灯29は、上ケース55および下ケース56と、上ケース55と下ケース56とを組み合わせてできる空間を上下に区切って下室58および上室60を形成する壁部材57とを有する。壁部材57で仕切られて形成された下室58の前面はレンズ59で覆われ、上室60の前面にはルーバ61が設けられる。上ケース55および下ケース56の後部にはカバー62が被せられる。
【0043】
壁部材57の上面571は前照灯29の前方向に向かって下り勾配を有している。勾配を設けることによって上室60に浸入する水を前照灯29の前方に排出することが容易になる。壁部材57は、勾配面である上面571と、上面571の4辺から垂下している4つの周縁面572とを有し、上面571の内側にはレンズ59の縁591を係止するためのリブ573を有する。壁部材57の下方には壁部材57の下縁に沿って回路基板63が設けられる。回路基板63上には、スピーカ64および発光源としての発光ダイオード(LED)67、ならびにスピーカ64の発音制御を行う発音制御回路65、および発光回路66が設けられる。発光回路66は、周囲の明るさに応じてLED67の点灯および消灯を制御する光センサ制御回路を含む。なお、回路基板63上には、図示しない電力増幅回路等も取り付けられる。スピーカ64は上向きに、LED67は下向きにそれぞれ取り付けられる。LED67は最大の輝度方向(最大の照射方向)が下方を向く状態で取り付けられている。
【0044】
スピーカ64は回路基板63の上側に配置され、スピーカ64の上部は壁部材57に形成される孔574を貫通している。円柱形のスピーカ64の周囲にはシール部材68が配置されて孔574とスピーカ64との間を封止している。
【0045】
回路基板63の上後部には周囲の明るさを検出して検出信号を光センサ制御回路に供給する光センサ69が設けられる。回路基板63上の回路を外部の電力供給源とはコネクタ70およびコネクタ70に接続されるハーネス71によって接続される。
【0046】
下ケース56の内面はLED67から出力された光を前照灯29の前方に向けて指向させる反射面561を構成する。そして、レンズ59は反射面561で反射された光を拡散する。レンズ59の縁591は壁部材57のリブ573に係合し、かつ該リブ573および下ケース56の前部近傍との間に配置されるパッキン72を介して下ケース56および壁部材57に保持される。
【0047】
上室60に設けられるルーバ61は3枚の羽板73を有する。羽板73は該はね板73を上ケース55の内側面に回動可能に支持させるためのピン731を有する。各羽板73はリンク部材732で端部を隣接する羽板73同士が連結されてリンク機構を構成している。最も下位に位置する羽板73の端部(リンク部材が連結されている方とは反対側の端部)には、引っ掛け部733が形成されており、この引っ掛け部733を指で引っ掛けてルーバ61の各羽板73を開放位置(図6では、水平よりやや上向きに設定されている)に回転させることができる。なお、ルーバ61の構造は、これに限定されず、周知のものを適用することができる。
【0048】
上ケース55の内側に設けられる壁部551の内面552はスピーカ64から出力された音を反射させて前照灯29の前方に指向させる反射面を形成する。ルーバ61の羽板73の向きを変化させることによって羽板73の間を通過する音の指向方向をきめ細かく調整することができる。なお、ルーバ61に代えて、上室55の内面にリブ74を設けてスピーカ音の指向方向を設定してもよい。
【0049】
カバー62は、回路基板63の後方やコネクタ70を覆うとともに、上方からの外部光をカバー62内部に取り込む透過部75を有する。透過部75は光センサ69が外部光を検出できるように光センサ69の感知部691の上方に設け、光を透過するが埃や水が侵入しないよう光透過膜を設けるのがよい。なお、透過部75はカバー62の前端面(上ケース55との境界面に形成しているが、この位置に限定されることなく、光センサ69が見通せる範囲内、例えば、図5の鎖線621で示した領域、あるいは上ケース55、もしくはカバー62から上ケース55に跨る領域に形成してあってもよい。
【0050】
前照灯29の下ケース56の側部(この例では左側部)には、前照灯29をアシスト自転車1に取り付けるためのブラケット76が設けられる。ブラケット76は車体側の、例えばヘッドパイプ2等と連結するためのものであり、取り付けボルトが貫通可能な孔を有するブッシュ77が埋め込まれる。ブラケット76の側面には車体側に設けられる係止部に当接して前照灯29の上下方向回転を禁止するストッパ761が設けられる。
【0051】
図7は前照灯29のケースの分解図、図8はケースの連結部を示すIV−IV線断面図である。図7において、内側に放物曲面の反射面552を有し、上凸形状の外観を有する上ケース55の下縁左右には複数(ここでは2個)の係合孔553がそれぞれ形成される。また、壁部材57には上ケース55の係合孔553に嵌る凸部575が設けられる。さらに反射面561を有する下ケース56にも上ケース55の係合孔553に嵌る凸部562が設けられる。
【0052】
前照灯29を組み立てる際には、予め上ケース55にはルーバ61を組み立てておくとともに、予めスピーカ64やLED67等の部品を回路基板63に装着して、壁部材57の下部に連結しておく。こうして回路基板63が組み付けられた壁部材57を下ケース56の上に合わせる。この状態で、凸部575の下面と凸部562の上面とが合わさる。次いで、ルーバ61を取り付けてある上ケース55を壁部材57に上方から覆い被せる。上ケース55を、その下縁を広げつつ壁部材57側に押しつけると、上ケース55の係合孔553に壁部材の57の凸部575と下ケース56の凸部562とが嵌ってそれぞれが係合する。壁部材57の凸部575の上面と、上ケース55の下縁とにそれぞれ面取りC1、C2を形成しておくことにより、上ケース55を壁部材57に覆い被せたときに面取りC1、C2が形成されている部分がまず当接するので、比較的小さい力で上ケース55が壁部材57の凸部575に乗り上げて係合を容易にすることができる。
【0053】
組上がったケースの前面にパッキング72を介在させてレンズ59を嵌め込み、さらに回路基板63にコネクタ70を連結して後部にカバー62を取り付ければ、前照灯29は組上がる。この前照灯29を、ブラケット76を利用してアシスト自転車1に取り付けて使用に供する。
【0054】
なお、回路基板63は、壁部材57の下面に配設するのに限らず、壁部材57の上面に設けてもよい。このように、配置される回路基板63もしくは壁部材57のような平面と放物曲面である反射面561とからなる下室58の内面は、LED67から上方に反射する光を排除して歩行者等の目に入る無効光束を減少させるとともに、走行時に必要な路面に向けた拡散光は減少させない効果を奏する。
【0055】
また、本実施形態では前照灯29は発音部を上室60に配し、発光部を下室58に配する構成を示したが、発音部と発光部とを横配列としてもよい。例えば、発音部を左側に配置し、発光部を右側に配置するようにしてもよい。
【0056】
図9は、組上がった前照灯29による照射範囲とスピーカ音の放出範囲を示す図である。上述のように、前照灯29のLED67が設けられている発光部は前照灯29の下部に位置するので、LED67の出力光は比較的下方の領域A1、およびA2を照射する。これにより、LED67は上方に指向する無効光束を無くしてアシスト自転車1が走行する前方地面の状態や歩行者PDの足下を運転者が認識しやすくなる。一方、スピーカ64は前照灯29の上部に位置しているので、出力されたスピーカ音は、比較的上方の領域A3に向けて放出される。これにより、歩行者PDの上半身、特に、耳に近い高さに向けてスピーカ音が放出されるので、歩行者PDは容易にスピーカ音を認識してアシスト自転車1の接近を認識することができる。
【0057】
続いて、スピーカ64による発音を制御する発音制御回路65の構成を説明する。図10は発音制御回路65の処理に係る第1実施形態の概要を示す図である。アシスト自転車1のペダルにかかる踏力は、図10(b)に示すように時間の経過に従って、増減を繰り返す。そして、図10(a)の車速の時間経過による変化を見ると、踏力の増減に対応して、踏力が増加している間は、実際の車速Vは増加傾向にあり、踏力が減少している間は、実際の車速Vの増加傾向は小さくなり、ほぼ平坦である。このような車速Vの変動にスピーカ64の出力を追随させると、スピーカ音量(もしくは音圧)は不安定になり、聞く人に違和感をいだかせる。そこで、発音処理の第1実施形態では、車速の移動平均を算出し、車速の増加傾向を検出し、車速が増加傾向を示しているときにスピーカ64から発音させる。
【0058】
図11は、発音制御回路65の処理に係る第1実施形態の要部機能を示すブロック図である。これらの機能はマイクロコンピュータによって実現される。図11において、移動平均算出部80は車速センサ50の検出信号を取り込んで車速の移動平均を計算する。計算された移動平均は車速記憶部81に格納される。変化判別部82は今回検出された車速Vの移動平均Vmav-0と車速記憶部81に格納されている前回検出された車速Vの移動平均Vmav-1との差によって車速Vmavの変化方向を判別する。
【0059】
音圧決定部83は車速Vmavが増加方向であるときは今回算出された移動平均Vmav-0に応じた音圧値を決定し、決定した音圧値をスピーカ駆動部84に入力する。スピーカ駆動部84はスピーカ64を駆動して、入力された音圧値と予め設定されている音色とに基づいて接近報知音をスピーカ64から発音させる。
【0060】
変化量減少持続判定部85は、車速Vの移動平均の変化がほとんど無いか、減少方向である場合に、この減少方向等が予め設定された時間T1持続したかを判定し、減少方向である状態が時間T1の間持続していたときにスピーカ駆動部84に指示をしてスピーカ64に発音停止指示を入力させる。スピーカ64は発音停止指示に応答して発音を停止させる。発音中でない場合は、そのまま移動平均Vmavの増加傾向が検出されるまで発音停止を維持する。変化量減少持続判定部85は時間T1を計測するタイマによって構成できる。
【0061】
音圧決定部83は車速と音圧との関係を記憶した車速/音圧マップによって構成できる。なお、音圧決定部83に入力される車速Vは移動平均値Vmavではなく、音圧決定時点の車速V(図中点線で示す)であってもよい。
【0062】
図12は、第1実施形態の処理に係るフローチャートである。図12において、ステップS1では、移動平均算出部80において車速センサ50の出力から車速の移動平均Vmavを算出して車速記憶部81に格納する。ステップS2では、前回の移動平均Vmav-1と今回の移動平均Vmav-0との差、つまり車速変化量ΔVmavを算出する。ステップS3では、変化判別部82により、車速変化量ΔVmavがゼロ以上(正)であるか否かを判別する。車速変化量Δmavが正であればステップS4に進み、車速変化量Δmavがゼロ以下(負またはゼロ)であればステップS6に進む。
【0063】
まず、ステップS4では、音圧決定部83の車速/音圧マップを検索して音圧Saを決定する。車速/音圧マップは、例えば、車速の移動平均Vmavが大きいほど大きい音圧Saが選択されるように設定する。ステップS5では、検索された音圧Saを発生させる発音指示を発音源であるスピーカ64のドライバ(スピーカ駆動部84)に入力する。
【0064】
ステップS6では、タイマフラグF1がオン(=1)であるか否かを判別する。タイマフラグF1がオンならばステップS7に進み、タイマフラグF1がオンでない(オフ=0)ならば、ステップS7に進んで変化量減少持続判定部85のタイマを始動させてからステップS8に進む。ステップS8では、タイマによって所定時間T1が経過したか否かを判断する。所定時間T1が経過していたならばステップS9に進んでタイマ85をゼロにして停止した後、ステップS10に進んで発音停止指示をスピーカ駆動部84に入力する。ステップS7が否定の場合、つまりタイマが所定時間T1を計時し終わっていない場合は、ステップS8、S9はスキップしてスタートに戻る。
【0065】
このように移動平均が算出された車速Vmavが増加傾向にある場合はスピーカ64による発音を行う。一方、車速Vmavが変化していないか減少している場合は、その減少傾向等がタイマで計測される所定時間T1だけ継続していることを条件にスピーカ64による発音を停止させる。車速Vを移動平均で算出すると車速Vの変化が滑らかになり、車速に応じて決定した音圧で発音しても連続した音圧の変化となるので違和感がない音とすることができる。
【0066】
図13は発音制御回路65の処理に係る第2実施形態の概要を示す図である。図13において、図13(b)に示す踏力変化のうち、踏力が増加している間(太い線で表している区間)は、図13(a)に示すように車速Vは増加し、踏力が減少している間(細い線で示している区間)は、車速Vが増加していないと判断される。そこで、第2実施形態では、踏力の変化量ΔPsがゼロ以上である区間では、車速Vは増加傾向であると判断して、この判断のもとにスピーカ音を発生させる。
【0067】
図14は、発音制御回路65の処理に係る第2実施形態の要部機能を示すブロック図である。これらの機能はマイクロコンピュータによって実現される。図14において、踏力記憶部90は踏力センサ35の検出踏力Psを記憶し、変化量判別部91に前回検出値Ps-1として入力する。変化判別部91は踏力Psの前回検出値Ps-1と今回検出値Ps-0との差(変化量ΔPs)に基づいて踏力Psの変化方向を判別する。
【0068】
音圧決定部83は踏力Psが増加方向であるときは車速Vに応じた音圧Saを決定し、決定した音圧Saをスピーカ駆動部84に入力する。また、踏力Psの変化方向が減少方向ならば、スピーカ駆動部84を、発音停止指示をスピーカ64に出力するように駆動してスピーカ64による発音を停止させる。発音中でない場合は、そのまま踏力Psが増加方向に転ずるまで発音停止を維持する。
【0069】
変化量持続判定部92は踏力Psの変化がほとんど無い場合に、この踏力不変状態が予め設定された時間T2持続したかを判定し、踏力不変状態が時間T2の間継続していたとき補正量算出部93を付勢して、車速に応じた音圧補正量Sbを算出する。音圧補正量Sbは加算部94で音圧Saに加算されてスピーカ駆動部84に入力される。変化量持続判定部92は時間T2を計測するタイマによって構成できる。補正量算出部93は車速/音圧補正量マップによって構成することができる。
【0070】
図15は、第2実施形態の処理にかかるフローチャートである。図15において、ステップS11では、踏力センサ35によって検出される踏力Psを読み取って踏力記憶部90に記憶する。ステップS12では、前回読み取った踏力Ps-1と今回読み取った踏力Ps-0との差、つまり踏力変化量ΔPsを算出する。ステップS13では、変化判別部91において、踏力変化量ΔPsがゼロ以上(正)であるか否かを判別する。踏力変化量ΔPsが正であればステップS14に進み、踏力変化量ΔPsがゼロ以下(負またはゼロ)であればステップS19に進む。
【0071】
ステップS14では、惰性発音フラグF2をオフ(=0)にする。ステップS15では、タイマをゼロにリセットする(タイマフラグをオフ=0にする)。ステップS16では、車速センサ50の出力から車速を検出する。ステップS17では車速/音圧マップを検索車速Vに対応する音圧Saを決定する。ステップS18では、検索された音圧Saを発生させる発音指示を発音源であるスピーカ64のドライバ(スピーカ駆動部84)に入力する。
【0072】
ステップS19では、踏力Psがゼロか否か(ゼロにはゼロを中心とした微小範囲を含む)を判断する。踏力PsがゼロであればステップS19からステップS20に進んで惰性発音フラグF2がオン(=1)であるか否かを判別する。惰性発音フラグF2がオンでないならばステップS21に進む。ステップS21では、タイマフラグがオン(=1)であるか否かを判別する。タイマフラグがオンならばステップS23に進み、変化量持続判定部92のタイマによって所定時間T2が経過したか否かを判断する。所定時間T2が経過していたならばステップS24に進んで車速Vを検出する。ステップS21が否定ならばステップS22に進んでタイマを始動させてからステップS23に進む。
【0073】
ステップS25では車速/音圧マップを検索車速Vに対応する音圧Saを決定する。ステップS26では音圧補正マップ(車速/音圧補正量マップ)により音圧補正量Sbを決定する。ステップS27では加算部94で音圧Saに音圧補正量Sbを加算する。ステップS28では惰性発音フラグF2をオン(=1)にする。ステップS28からステップS18に移行する。
【0074】
ステップS19が否定、つまり踏力Psが負である場合(またはゼロを中心とする微小範囲からさらに負方向に外れている)である場合、ステップS29に進んで惰性発音フラグF2をオフ(=0)にする。ステップS30ではタイマをリセット(=0)する。ステップS31では、発音停止指示をドライバに入力してスタートに戻る。
【0075】
ステップS20が肯定ならばステップS21〜S23をスキップしてステップS24に進む。ステップS23が否定の場合、つまり所定時間T2が経過していない場合は、ステップS24〜S28をスキップしてステップSS18に進む。
【0076】
このように、踏力Psが正側であると判断されている間は車速Vに応じた音圧でスピーカ64による発音を行う。一方、時間T2が経過するまで踏力がゼロまたはゼロ近傍のまま維持していれば、車速Vに応じて音圧を決定するとともに、踏力Psが負の場合はスピーカ64による発音を停止させる。
【0077】
また、踏Ps力がゼロまたはゼロ近傍で維持されていた場合は音圧Saを音圧補正量Sbで増加補正して発音させる。踏力Psがある程度ゼロまたはゼロ近傍に維持されているときは惰性走行していると判断される。惰性走行は下り坂や曲がり角等によって行われることが多いので、このような惰性走行が行われやすい下り坂や曲がり角ではスピーカ音を大きくすることにより、早い時期に歩行者にアシスト自転車1の接近を知らせることができる。
【0078】
図16は車速/音圧マップの一例を示す図であり、図17は車速/音圧補正量マップの一例を示す図である。図16、図17に示すように、音圧Saおよび音圧補正量Sbは車速Vに応じて指数関数的に増加するように設定するのが望ましい。
【0079】
第2実施形態は次のように変形できる。図18は第2実施形態の変形例に係る発音制御回路の概要を示す図である。図18において、図18(b)に示す踏力変化のうち、踏力が減少している間(太い線で表している区間)は、図18(a)に示すように車速Vはほぼ一定していると判断される。そこで、踏力変化量ΔPsが負であれば車速Vはほぼ一定または減少傾向であると判断して、この判断のもとに車速Vに応じてスピーカ音の音圧を決定し、発音させる。車速Vの変化量が少ない時は、車速Vに応じて音圧を決定しても、安定した音量で発音できるからである。
【0080】
図19は、第2実施形態の変形例に係る処理のフローチャートである。図19に示すフローチャートのステップS41、S42、S44〜S48、ならびにステップS50〜S61は図15に示したステップS11、S12、S14〜S18、ならびにステップS20〜S31の処理と同様である。ステップS43とステップS49の処理が図14に示したステップS13およびS19に置き代わっている。
【0081】
すなわち、ステップS43では、踏力変化量ΔPsがゼロ未満(負)であるか否かを判別する。踏力変化量ΔPsが負であればステップS44に進み、踏力変化量ΔPsがゼロ以上(正またはゼロ)であればステップS49に進む。ステップS44〜S48では、踏力変化量ΔPsが負であったときにスピーカで発音させる処理が行われる。
【0082】
一方、ステップS49に進んで、該ステップS49で踏力Psがゼロと判断されればステップS50に進んで音圧補正を含む処理をする一方、踏力Psが正であると判断されればステップS49からステップS59〜S61に進んで発音を停止する処理を行う。
【0083】
図19のフローチャートを実行する発音制御回路は、図14に示した構成における変化判別部91での判別アルゴリズムを変形することによって実現できる。すなわち、変化判別部91は、踏力Psが減少方向に変化していると判別した場合に音圧決定部83が車速Vに応じて音圧Saを出力させる。また、変化量持続判定部92では踏力Psがゼロで予定時間T2持続されれば音量補正量算出部93に対して車速Vに応じた音量補正量Sbを算出するように指示する一方、踏力Psが正の値であれば、スピーカ64の発音を停止させるようにスピーカ駆動部84を動作させる。
【0084】
なお、本発明は、上述の実施形態のものに限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で、周知技術等に基づいて変形することができる。例えば、発音体としてスピーカを例に挙げて説明をしたが、これに限らず、発音体としてブザーを使ってもよい。また、発音体の発音音色や音高の変化態様等は、予め任意のものを設定し、記憶させてあるものから選択して発音させることができる。
【0085】
また、電動補助自転車の構成も図1、図3に示したものに限らない。例えば、踏力検知装置やモータ部の構成および配置位置は周知のものであってよいし、発音体であるスピーカ64は、車体の前部に設けるのが好ましいが、前照灯29にLED67とともに一体のケースに組み込むのではなく、前照灯29とは独立して設けてもよい。例えば、前照灯29と共に、もしくは独立してフロントフォーク8に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…アシスト自転車、 8…フロントフォーク、 10…モータ部、 35…踏力センサ(踏力検出手段)、 21…ペダル、 29…前照灯、 55…上ケース、 56…下ケース、 50…車速センサ(車速検出手段)、 63…回路基板、 64…スピーカ(発音体)、 65…発音制御回路(発音制御部)、 67…LED(光源)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用前照灯装置に関し、特に、歩行者等が自転車の接近を音で認識できるように自転車に取り付けられる聴覚的信号装置を一体化して小型化および部品点数の削減を図るのに好適な自転車用前照灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車に盗難防止用の発音体を設けることは知られている。特許文献1には、自動点灯機能を備えた自転車ランプに設けられた振動センサによる検出信号に応じて警報音を発生させる警報装置としてのブザーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−16363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたブザーを設けたヘッドライトケースは、側面に開口された放音孔からブザー音が放散される構造になっている。この従来技術は、盗難警報を目的とするものであって、走行中の自転車の進行方向前方にいる歩行者等に自転車の接近を認識させることはできなかった。ブザーやスピーカ等の発音体は組み付け性の観点から基板に直接取り付けるのが望ましい。しかし、単に発音体を基板に取り付けて発音体を前方に指向させる構造にすると、ヘッドライトが上下方向に大きくなったり、部品点数が多くなったりして重量が大きくなるのみならず、高コストにもなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に対して、聴覚信号である発音体からの音を前方に指向させつつ、小型化および部品点数の削減が可能な自転車用前照灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、光源および該光源からの光を前方に反射させる光反射部を有する発光部と、発音体を有する発音部と、前記光源および前記発音体を収容するケースと、前記光源および前記光反射部を収容し、前記ケースと接合されるレンズと、前記光源および発音体を実装する基板とを有する自転車用前照灯装置において、前記ケースを上下に区切る壁部材を備え、前記基板が、前記壁部材に沿わせて、該壁部材で区切られた上下の空間のいずれかに配置され、該基板の一方の面に前記光源が取り付けられ、他方の面には前記発音体が取り付けられており、前記基板が配置された一方の空間に前記光反射部が配置されるとともに、該一方の空間を前記レンズによって密封し、他方の空間には、前記基板上の前記発音体を、前記壁部材を貫通させて臨ませ、前記発音体の周囲の前記ケースには前記発音体からの音を前方に反射させる音反射部を設けている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記基板が配置された前記一方の空間が前記壁部材の下方に、前記発音体が臨んでいる前記他方の空間が前記壁部材の上方にそれぞれ位置しており、前記光反射部が前記壁部材の下方に位置する前記空間の内面に放物曲面として形成され、該放物曲面には、前記壁部材によって形成される扁平片面が隣接している点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記光源が発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、最大輝度方向が放物曲面部を向くように配設されている点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記回路基板が前記発光部側で前記壁部材に取り付けられており、前記発音体が前記壁部材に形成された貫通孔を通って前記壁部材で区切って形成された一方の空間に臨ませてあるとともに、前記発音体と前記貫通孔との間にシール部材が配設されている点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記壁部材で区切られた上方の空間には、前記発音体からの音を前方に指向させる指向部材、例えばルーバもしくはリブが設けられている点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、周囲の明るさを検出する光センサと、該光センサで検出された周囲の明るさに基づいて前記光源の点灯および消灯を制御する発光制御部とを設け、前記光センサおよび前記発光制御部が前記回路基板に取り付けられている点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記光センサが、前記基板上で、前記音反射部を有する壁部の背部空間に位置して設けられており、前記背部空間を覆う前記ケースの部分および/または該ケースの背後に結合されるカバー部材に、前記光センサを見通せる透過部が形成されている点に第7の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記壁部材が、前方に向けて下り勾配となっている上面を有している点に第8の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記ケースが、二つのケース部分からなり、前記二つのケース部分の一方に形成された凸部が他方のケース部分に設けられた係合孔に係合することによって一体的に組み合わされる点に第9の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴を有する本発明によれば、ケースを上下に区切る壁部材に沿わせて基板を設けたので、前照灯が上下方向に大型化するのを防ぐことができるとともに、そのように設けた基板の表裏に発音体と光源とを配置することで基板を小型化することを達成することができる。さらに、壁部材を間に挟んで形成される2つの空間の一方側を、光源を収容する密閉空間とし発光部としつつ、他方側を、発音体を収容し、該発音体の音を音反射部で前方に反射させることができる発音部としたので、発光部の防水を維持できるとともに、基板上に配置した発音体の音を効果的に前方に投音でき、前方にいる歩行者等に自転車の接近を効果的に認識させられる。これにより、前照灯としての防水性を維持しながら、一体化したブザーの発音性能を確保することができる。
【0016】
第2の特徴を有する本発明によれば、光反射部を放物曲面として扁平片面を隣接させたので、走行時に必要な下方を照らす拡散光を確保しつつ、自転車から比較的高い位置にある歩行者等の目を照射するような無効光束を減少させることができる。特に、上に発音部、下に発光部を設けたことによって、人の目に入るような上方向への光を減少することができるとともに、発音部で発生した音を人の耳に伝わりやすい方向に向けられる。
【0017】
第3の特徴を有する本発明によれば、発光ダイオードの最大光束を反射させることができるので、レンズ前方のスポット光の照度を一層高めることができる。
【0018】
第4の特徴を有する本発明によれば、回路基板が密閉空間に配設されるとともに、前記壁部材で区切って形成された一方の空間に発音体を臨ませるための貫通孔と発音体との間はシール部材で封止されるので、光源を有する密閉空間には水などの浸入を防ぐことができる。
【0019】
第5の特徴を有する本発明によれば、発音体からの音の指向方向をきめ細かく設定し、管理することができる。特に、ルーバを有するものにおいては、ルーバの向きによって音の指向方向を変更できる。
【0020】
第6の特徴を有する本発明によれば、回路基板に光センサと発光制御部とを取り付けることで、光源からの光の点灯および消灯等の制御を前照灯装置内で自立して行うことができる。
【0021】
第7の特徴を有する本発明によれば、透過部を光センサの上方に位置させたので、周囲の明るさを確実に判別して、明るさに応じた前照灯の点灯および消灯を実施することができる。
【0022】
第8の特徴を有する本発明によれば、壁部材によって区切られた上側の空間に浸入した水等を該上側の空間から外へ排出しやすくなる。
【0023】
第9の特徴を有する本発明によれば、二つのケース部分の一方に設けられた凸部を他方のケース部分に設けられた係合孔に係合させるという簡単な構造を有するので、二つのケース部分を組み立ててケースを形成する際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る発音体制御装置を備えた電動補助自転車の左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る制御装置に含まれる発音体を一体化した前照灯の正面図である。
【図3】図1の踏力検知装置15のII−II線断面図である。
【図4】前照灯の左側面図である。
【図5】前照灯の上面図である。
【図6】図5のIII−III線断面図である。
【図7】前照灯のケースの分解図である。
【図8】前照灯のケースの連結部を示すIV−IV線断面図である。
【図9】組上がった前照灯の照射範囲とスピーカ音の放出範囲を示す図である。
【図10】発音制御回路の処理に係る第1実施形態の概要を示す図である。
【図11】第1実施形態に係る発音制御回路の要部機能を示すブロック図である。
【図12】第1実施形態の処理に係るフローチャートである。
【図13】発音制御回路の処理に係る第2実施形態の概要を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る発音制御回路の要部機能を示すブロック図である。
【図15】第2実施形態の処理にかかるフローチャートである。
【図16】車速/音圧マップの一例を示す図である。
【図17】車速/音圧補正量マップの一例を示す図である。
【図18】第2実施形態の変形例に係る発音制御回路の概要を示す図である。
【図19】第2実施形態の変形例に係る処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る聴覚信号装置を一体に有する前照灯装置を備えた自転車の一例としての電動補助自転車の左側面図である。電動補助自転車(以下、「アシスト自転車」という)1は、車体前方に位置するヘッドパイプ2と、ヘッドパイプ2に先端が接合されて下後方に延びるダウンフレーム3と、ダウンフレーム3の後端から上方に立ち上がるシートパイプ4と、ヘッドパイプ2に接合されるダウンフレーム3の上方から後方に延びてシートパイプ4と連結されるトップフレーム5とを備える。
【0026】
ヘッドパイプ2に回転自在に支持されるステアリング軸6は、上部にハンドル7が連結されるとともに、下端部には前輪WFを回転自在に軸支するフロントフォーク8が連結される。前輪WFのハブ9にはモータ部10が内蔵され、ハブ9の外周には複数のスポーク11が取り付けられている。
【0027】
シートパイプ4の後方に車体に対して左右一対のプレート12が設けられ、各プレート12には、後方に延びる左右一対のリヤフォーク13が連結されていて、リヤフォーク13の後端には後輪WRが回転自在に軸支されている。また、トップフレーム5の下方でシートパイプ4から下後方に延びて前記リヤフォーク13に後端が接合される左右一対のステー14が設けられる。
【0028】
ダウンフレーム3およびシートパイプ4は、踏力検知装置15を支持する。シートパイプ4には、上端にシート16を有するシートポスト17がシート16の上下位置を調整可能に装着されている。トップフレーム5の内部にモータ部10に電力を供給するためのバッテリ18が設けられる。バッテリ18は、アシスト自転車1から容易には取り外すことができないようにトップフレーム5の内部に設けるのが好ましいが、これには限定されない。バッテリ18はモータ部10に発生した回線電力によって充電可能に構成されるが、充電器によって充電することができるように構成することもできる。
【0029】
踏力検知装置15および駆動側スプロケット19を貫通して、車体の幅方向に延びるクランク軸20が設けられ、クランク軸20の両側に、ペダル21を有するクランク22が接続される。運転者がペダル21を漕ぐことにより、クランク軸20に踏力トルク(動力)が与えられる。クランク軸20に与えられた踏力トルクによって駆動側スプロケット19が回転し、スプロケット19の回転はチェーン23を介して後輪WR側の従動側スプロケット24に伝達されて後輪WRが回転する。駆動側スプロケット19、チェーン23、および従動側スプロケット24は駆動系機構として機能する。
【0030】
一対のフロントフォーク8には、前輪WFの回転を止めるための前輪用カンチレバーブレーキ25が設けられており、ステー14には、後輪WRの回転を止めるための後輪用カンチレバーブレーキ26が設けられている。ハンドル7の左右には、それぞれグリップ27およびブレーキレバー28が設けられており、右側のブレーキレバー28を操作することによって前輪用カンチレバーブレーキ25が作動し、左側のブレーキレバー28を操作することによって後輪側カンチレバーブレーキ26が作動する。
【0031】
リヤフォークには後輪WRの回転数から車速を検出する車速センサ50が設けられる。ハンドル7の上部には、車速センサ50の検出出力に基づいてアシスト自転車1の車速を表示するスピードメータ(図示せず)および表示部51が設けられる。ハンドル7の前方には前照灯29が設けられる。車速センサ50は、前輪WRの回転数から車速を検出できるように、例えばフロントフォーク8に設けてもよい。
【0032】
図3は、図1の踏力検知装置15のII−II線断面図である。踏力検知装置15は、アシスト自転車1が前に進む方向(正方向)にペダル21を漕いだ場合に駆動側スプロケット19を回転させ、正方向とは逆方向にペダル21を漕いだ場合は駆動側スプロケット19を回転させない機構を有する。具体的には、踏力検知装置15はその筐体30内にクランク軸20の外周に嵌挿される中空トルク伝達部材31と、クランク軸20と中空トルク伝達部材31の一方の側部(図2では車体左側の側部)との間に設けられたワンウェイクラッチ手段32と、モータ部10内に設けられるブラシレスモータを駆動させるドライバ33と、ドライバ33のPWM制御を行う制御部34とを有する。
【0033】
ワンウェイクラッチ手段32は、ペダル21が正方向に漕がれたときにクランク軸20の踏力トルクを中空トルク伝達部材31に伝達し、ペダル21が正方向とは逆方向に漕がれたときはクランク軸20の回転を中空トルク伝達部材31に伝達しない構造を有する。中空トルク伝達部材31の他方の側部(図2では車体右側の側部)にはスプラインが形成されており、駆動側スプロケット19がこのスプラインに嵌合した状態で連結されている。
【0034】
正方向にペダル21が漕がれると、クランク軸20が回転するとともに、ワンウェイクラッチ手段32により中空トルク伝達部材31が回転する。これにより、駆動側スプロケット19が回転する。一方、正方向と逆方向にペダル21が漕がれると、クランク軸20は回転するが、ワンウェイクラッチ手段32によって動力伝達が遮断されて中空トルク伝達部材31は回転しないので、駆動側スプロケット19も回転しない。
【0035】
クランク軸20に与えられた踏力トルクを検出する踏力センサ(磁歪センサ)35が
中空トルク伝達部材31の外周に対向して配置される。踏力センサ35は2つの検出コイル36、37を有し、検出コイル36、37に対向するように、中空トルク伝達部材31の外周に磁性膜38が設けられる。踏力センサ35は、中空トルク伝達部材31が回転することで発生するねじれによって生じる検出コイル36、37のインダクタンスの変化を電圧に変換して制御部34に出力する。
【0036】
中空トルク伝達部材31は、クランク軸20からの踏力トルクを車体左側側部で受けて回転するとともに、その外周に踏力センサ35が設けられた第1中空部材39と、第1中空部材39の他端側(車体右側)で第1中空部材39と嵌合し、嵌合部位とは反対側で駆動側スプロケット19に連結される第2中空部材40とを有する。
【0037】
第1中空部材39と第2中空部材40とは互いに突き当てられて嵌合している。中空トルク伝達部材31は、第1中空部材39と第2中空部材40とを有するので、互いの嵌合部位で、強い踏力の発生時にクランク軸20を前下方に押し下げる力と駆動側スプロケット19にかかるチェーン23の力との関係によるねじれの力を緩和することができる。したがって、踏力センサ35に発生する該ねじれの影響を抑制することができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0038】
第1中空部材39は、ワンウェイクラッチ手段32が設けられる側にクランク軸20係合する第1係合部41を備える。第2中空部材40は、第1中空部材39との嵌合部位でクランク軸20と係合する第2係合部42と、駆動側スプロケット19との連結部位でクランク軸20と係合する第3係合部43とを備える。この第1係合部41、第2係合部42、および第3係合部43の3箇所でクランク軸20を支持するので、クランク軸20を前下方に押し下げる力と駆動側スプロケット19にかかるチェーン23の力との関係によって中空トルク伝達部材31に発生するねじれを抑えることができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0039】
ワンウェイクラッチ手段32の車体外方側で、筐体30に対して回転自在にクランク軸20を支持する軸受け(第1軸受け)44と、第2係合部42と第3係合部43との間の位置で筐体30に対して回転自在に中空トルク伝達部材31およびクランク軸20を支持する軸受け(第2軸受け)45とが設けられる。軸受け45が第2係合部42と第3係合部43との間に設けられているので、クランク軸20にかかる力を、第2中空部材40を通して軸受け45が良好に受け止めることができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0040】
クランク軸20には、第2中空部材40の第2係合部42をクランク軸20のスラスト方向に突き当てるスラスト止め凸部46が設けられる。第2係合部42とスラスト止め凸部46とで、中空トルク伝達部材31のスラスト方向への移動を禁止することができる。これにより、中空トルク伝達部材31のスラスト方向のずれを防止することができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0041】
第1中空部材39はさらに、一端側にワンウェイクラッチ手段32のアウタが設けられた第3中空部材47と、第3中空部材47の他端側で第3中空部材47と嵌合する第4中空部材48とを有する。第2中空部材40は、第4中空部材48の第3中空部材47と嵌合する部位とは反対側で第4中空部材48と嵌合しており、第4中空部材48の外周に踏力センサ35が設けられる。第1中空部材39は、第3中空部材47と第4中空部材48とを有するので、第3中空部材47と第4中空部材48とが嵌合する部位と、第4中空部材48と第2中空部材40とが嵌合する部位で、強い踏力の発生時にクランク軸20を前下方に押し下げる力と駆動側スプロケット19にかかるチェーン32の力との関係によるねじれの力の影響をさらに緩和することができる。したがって、踏力センサ35に発生する該ねじれの影響を抑制することができ、踏力センサ35の検出精度を向上させることができる。
【0042】
次に、前照灯29を詳細に説明する。図2は前照灯29の正面図、図4は左側面図、図5は上面図、図6は図5のIII−III線断面図である。図2、図4〜図6において、前照灯29は、上ケース55および下ケース56と、上ケース55と下ケース56とを組み合わせてできる空間を上下に区切って下室58および上室60を形成する壁部材57とを有する。壁部材57で仕切られて形成された下室58の前面はレンズ59で覆われ、上室60の前面にはルーバ61が設けられる。上ケース55および下ケース56の後部にはカバー62が被せられる。
【0043】
壁部材57の上面571は前照灯29の前方向に向かって下り勾配を有している。勾配を設けることによって上室60に浸入する水を前照灯29の前方に排出することが容易になる。壁部材57は、勾配面である上面571と、上面571の4辺から垂下している4つの周縁面572とを有し、上面571の内側にはレンズ59の縁591を係止するためのリブ573を有する。壁部材57の下方には壁部材57の下縁に沿って回路基板63が設けられる。回路基板63上には、スピーカ64および発光源としての発光ダイオード(LED)67、ならびにスピーカ64の発音制御を行う発音制御回路65、および発光回路66が設けられる。発光回路66は、周囲の明るさに応じてLED67の点灯および消灯を制御する光センサ制御回路を含む。なお、回路基板63上には、図示しない電力増幅回路等も取り付けられる。スピーカ64は上向きに、LED67は下向きにそれぞれ取り付けられる。LED67は最大の輝度方向(最大の照射方向)が下方を向く状態で取り付けられている。
【0044】
スピーカ64は回路基板63の上側に配置され、スピーカ64の上部は壁部材57に形成される孔574を貫通している。円柱形のスピーカ64の周囲にはシール部材68が配置されて孔574とスピーカ64との間を封止している。
【0045】
回路基板63の上後部には周囲の明るさを検出して検出信号を光センサ制御回路に供給する光センサ69が設けられる。回路基板63上の回路を外部の電力供給源とはコネクタ70およびコネクタ70に接続されるハーネス71によって接続される。
【0046】
下ケース56の内面はLED67から出力された光を前照灯29の前方に向けて指向させる反射面561を構成する。そして、レンズ59は反射面561で反射された光を拡散する。レンズ59の縁591は壁部材57のリブ573に係合し、かつ該リブ573および下ケース56の前部近傍との間に配置されるパッキン72を介して下ケース56および壁部材57に保持される。
【0047】
上室60に設けられるルーバ61は3枚の羽板73を有する。羽板73は該はね板73を上ケース55の内側面に回動可能に支持させるためのピン731を有する。各羽板73はリンク部材732で端部を隣接する羽板73同士が連結されてリンク機構を構成している。最も下位に位置する羽板73の端部(リンク部材が連結されている方とは反対側の端部)には、引っ掛け部733が形成されており、この引っ掛け部733を指で引っ掛けてルーバ61の各羽板73を開放位置(図6では、水平よりやや上向きに設定されている)に回転させることができる。なお、ルーバ61の構造は、これに限定されず、周知のものを適用することができる。
【0048】
上ケース55の内側に設けられる壁部551の内面552はスピーカ64から出力された音を反射させて前照灯29の前方に指向させる反射面を形成する。ルーバ61の羽板73の向きを変化させることによって羽板73の間を通過する音の指向方向をきめ細かく調整することができる。なお、ルーバ61に代えて、上室55の内面にリブ74を設けてスピーカ音の指向方向を設定してもよい。
【0049】
カバー62は、回路基板63の後方やコネクタ70を覆うとともに、上方からの外部光をカバー62内部に取り込む透過部75を有する。透過部75は光センサ69が外部光を検出できるように光センサ69の感知部691の上方に設け、光を透過するが埃や水が侵入しないよう光透過膜を設けるのがよい。なお、透過部75はカバー62の前端面(上ケース55との境界面に形成しているが、この位置に限定されることなく、光センサ69が見通せる範囲内、例えば、図5の鎖線621で示した領域、あるいは上ケース55、もしくはカバー62から上ケース55に跨る領域に形成してあってもよい。
【0050】
前照灯29の下ケース56の側部(この例では左側部)には、前照灯29をアシスト自転車1に取り付けるためのブラケット76が設けられる。ブラケット76は車体側の、例えばヘッドパイプ2等と連結するためのものであり、取り付けボルトが貫通可能な孔を有するブッシュ77が埋め込まれる。ブラケット76の側面には車体側に設けられる係止部に当接して前照灯29の上下方向回転を禁止するストッパ761が設けられる。
【0051】
図7は前照灯29のケースの分解図、図8はケースの連結部を示すIV−IV線断面図である。図7において、内側に放物曲面の反射面552を有し、上凸形状の外観を有する上ケース55の下縁左右には複数(ここでは2個)の係合孔553がそれぞれ形成される。また、壁部材57には上ケース55の係合孔553に嵌る凸部575が設けられる。さらに反射面561を有する下ケース56にも上ケース55の係合孔553に嵌る凸部562が設けられる。
【0052】
前照灯29を組み立てる際には、予め上ケース55にはルーバ61を組み立てておくとともに、予めスピーカ64やLED67等の部品を回路基板63に装着して、壁部材57の下部に連結しておく。こうして回路基板63が組み付けられた壁部材57を下ケース56の上に合わせる。この状態で、凸部575の下面と凸部562の上面とが合わさる。次いで、ルーバ61を取り付けてある上ケース55を壁部材57に上方から覆い被せる。上ケース55を、その下縁を広げつつ壁部材57側に押しつけると、上ケース55の係合孔553に壁部材の57の凸部575と下ケース56の凸部562とが嵌ってそれぞれが係合する。壁部材57の凸部575の上面と、上ケース55の下縁とにそれぞれ面取りC1、C2を形成しておくことにより、上ケース55を壁部材57に覆い被せたときに面取りC1、C2が形成されている部分がまず当接するので、比較的小さい力で上ケース55が壁部材57の凸部575に乗り上げて係合を容易にすることができる。
【0053】
組上がったケースの前面にパッキング72を介在させてレンズ59を嵌め込み、さらに回路基板63にコネクタ70を連結して後部にカバー62を取り付ければ、前照灯29は組上がる。この前照灯29を、ブラケット76を利用してアシスト自転車1に取り付けて使用に供する。
【0054】
なお、回路基板63は、壁部材57の下面に配設するのに限らず、壁部材57の上面に設けてもよい。このように、配置される回路基板63もしくは壁部材57のような平面と放物曲面である反射面561とからなる下室58の内面は、LED67から上方に反射する光を排除して歩行者等の目に入る無効光束を減少させるとともに、走行時に必要な路面に向けた拡散光は減少させない効果を奏する。
【0055】
また、本実施形態では前照灯29は発音部を上室60に配し、発光部を下室58に配する構成を示したが、発音部と発光部とを横配列としてもよい。例えば、発音部を左側に配置し、発光部を右側に配置するようにしてもよい。
【0056】
図9は、組上がった前照灯29による照射範囲とスピーカ音の放出範囲を示す図である。上述のように、前照灯29のLED67が設けられている発光部は前照灯29の下部に位置するので、LED67の出力光は比較的下方の領域A1、およびA2を照射する。これにより、LED67は上方に指向する無効光束を無くしてアシスト自転車1が走行する前方地面の状態や歩行者PDの足下を運転者が認識しやすくなる。一方、スピーカ64は前照灯29の上部に位置しているので、出力されたスピーカ音は、比較的上方の領域A3に向けて放出される。これにより、歩行者PDの上半身、特に、耳に近い高さに向けてスピーカ音が放出されるので、歩行者PDは容易にスピーカ音を認識してアシスト自転車1の接近を認識することができる。
【0057】
続いて、スピーカ64による発音を制御する発音制御回路65の構成を説明する。図10は発音制御回路65の処理に係る第1実施形態の概要を示す図である。アシスト自転車1のペダルにかかる踏力は、図10(b)に示すように時間の経過に従って、増減を繰り返す。そして、図10(a)の車速の時間経過による変化を見ると、踏力の増減に対応して、踏力が増加している間は、実際の車速Vは増加傾向にあり、踏力が減少している間は、実際の車速Vの増加傾向は小さくなり、ほぼ平坦である。このような車速Vの変動にスピーカ64の出力を追随させると、スピーカ音量(もしくは音圧)は不安定になり、聞く人に違和感をいだかせる。そこで、発音処理の第1実施形態では、車速の移動平均を算出し、車速の増加傾向を検出し、車速が増加傾向を示しているときにスピーカ64から発音させる。
【0058】
図11は、発音制御回路65の処理に係る第1実施形態の要部機能を示すブロック図である。これらの機能はマイクロコンピュータによって実現される。図11において、移動平均算出部80は車速センサ50の検出信号を取り込んで車速の移動平均を計算する。計算された移動平均は車速記憶部81に格納される。変化判別部82は今回検出された車速Vの移動平均Vmav-0と車速記憶部81に格納されている前回検出された車速Vの移動平均Vmav-1との差によって車速Vmavの変化方向を判別する。
【0059】
音圧決定部83は車速Vmavが増加方向であるときは今回算出された移動平均Vmav-0に応じた音圧値を決定し、決定した音圧値をスピーカ駆動部84に入力する。スピーカ駆動部84はスピーカ64を駆動して、入力された音圧値と予め設定されている音色とに基づいて接近報知音をスピーカ64から発音させる。
【0060】
変化量減少持続判定部85は、車速Vの移動平均の変化がほとんど無いか、減少方向である場合に、この減少方向等が予め設定された時間T1持続したかを判定し、減少方向である状態が時間T1の間持続していたときにスピーカ駆動部84に指示をしてスピーカ64に発音停止指示を入力させる。スピーカ64は発音停止指示に応答して発音を停止させる。発音中でない場合は、そのまま移動平均Vmavの増加傾向が検出されるまで発音停止を維持する。変化量減少持続判定部85は時間T1を計測するタイマによって構成できる。
【0061】
音圧決定部83は車速と音圧との関係を記憶した車速/音圧マップによって構成できる。なお、音圧決定部83に入力される車速Vは移動平均値Vmavではなく、音圧決定時点の車速V(図中点線で示す)であってもよい。
【0062】
図12は、第1実施形態の処理に係るフローチャートである。図12において、ステップS1では、移動平均算出部80において車速センサ50の出力から車速の移動平均Vmavを算出して車速記憶部81に格納する。ステップS2では、前回の移動平均Vmav-1と今回の移動平均Vmav-0との差、つまり車速変化量ΔVmavを算出する。ステップS3では、変化判別部82により、車速変化量ΔVmavがゼロ以上(正)であるか否かを判別する。車速変化量Δmavが正であればステップS4に進み、車速変化量Δmavがゼロ以下(負またはゼロ)であればステップS6に進む。
【0063】
まず、ステップS4では、音圧決定部83の車速/音圧マップを検索して音圧Saを決定する。車速/音圧マップは、例えば、車速の移動平均Vmavが大きいほど大きい音圧Saが選択されるように設定する。ステップS5では、検索された音圧Saを発生させる発音指示を発音源であるスピーカ64のドライバ(スピーカ駆動部84)に入力する。
【0064】
ステップS6では、タイマフラグF1がオン(=1)であるか否かを判別する。タイマフラグF1がオンならばステップS7に進み、タイマフラグF1がオンでない(オフ=0)ならば、ステップS7に進んで変化量減少持続判定部85のタイマを始動させてからステップS8に進む。ステップS8では、タイマによって所定時間T1が経過したか否かを判断する。所定時間T1が経過していたならばステップS9に進んでタイマ85をゼロにして停止した後、ステップS10に進んで発音停止指示をスピーカ駆動部84に入力する。ステップS7が否定の場合、つまりタイマが所定時間T1を計時し終わっていない場合は、ステップS8、S9はスキップしてスタートに戻る。
【0065】
このように移動平均が算出された車速Vmavが増加傾向にある場合はスピーカ64による発音を行う。一方、車速Vmavが変化していないか減少している場合は、その減少傾向等がタイマで計測される所定時間T1だけ継続していることを条件にスピーカ64による発音を停止させる。車速Vを移動平均で算出すると車速Vの変化が滑らかになり、車速に応じて決定した音圧で発音しても連続した音圧の変化となるので違和感がない音とすることができる。
【0066】
図13は発音制御回路65の処理に係る第2実施形態の概要を示す図である。図13において、図13(b)に示す踏力変化のうち、踏力が増加している間(太い線で表している区間)は、図13(a)に示すように車速Vは増加し、踏力が減少している間(細い線で示している区間)は、車速Vが増加していないと判断される。そこで、第2実施形態では、踏力の変化量ΔPsがゼロ以上である区間では、車速Vは増加傾向であると判断して、この判断のもとにスピーカ音を発生させる。
【0067】
図14は、発音制御回路65の処理に係る第2実施形態の要部機能を示すブロック図である。これらの機能はマイクロコンピュータによって実現される。図14において、踏力記憶部90は踏力センサ35の検出踏力Psを記憶し、変化量判別部91に前回検出値Ps-1として入力する。変化判別部91は踏力Psの前回検出値Ps-1と今回検出値Ps-0との差(変化量ΔPs)に基づいて踏力Psの変化方向を判別する。
【0068】
音圧決定部83は踏力Psが増加方向であるときは車速Vに応じた音圧Saを決定し、決定した音圧Saをスピーカ駆動部84に入力する。また、踏力Psの変化方向が減少方向ならば、スピーカ駆動部84を、発音停止指示をスピーカ64に出力するように駆動してスピーカ64による発音を停止させる。発音中でない場合は、そのまま踏力Psが増加方向に転ずるまで発音停止を維持する。
【0069】
変化量持続判定部92は踏力Psの変化がほとんど無い場合に、この踏力不変状態が予め設定された時間T2持続したかを判定し、踏力不変状態が時間T2の間継続していたとき補正量算出部93を付勢して、車速に応じた音圧補正量Sbを算出する。音圧補正量Sbは加算部94で音圧Saに加算されてスピーカ駆動部84に入力される。変化量持続判定部92は時間T2を計測するタイマによって構成できる。補正量算出部93は車速/音圧補正量マップによって構成することができる。
【0070】
図15は、第2実施形態の処理にかかるフローチャートである。図15において、ステップS11では、踏力センサ35によって検出される踏力Psを読み取って踏力記憶部90に記憶する。ステップS12では、前回読み取った踏力Ps-1と今回読み取った踏力Ps-0との差、つまり踏力変化量ΔPsを算出する。ステップS13では、変化判別部91において、踏力変化量ΔPsがゼロ以上(正)であるか否かを判別する。踏力変化量ΔPsが正であればステップS14に進み、踏力変化量ΔPsがゼロ以下(負またはゼロ)であればステップS19に進む。
【0071】
ステップS14では、惰性発音フラグF2をオフ(=0)にする。ステップS15では、タイマをゼロにリセットする(タイマフラグをオフ=0にする)。ステップS16では、車速センサ50の出力から車速を検出する。ステップS17では車速/音圧マップを検索車速Vに対応する音圧Saを決定する。ステップS18では、検索された音圧Saを発生させる発音指示を発音源であるスピーカ64のドライバ(スピーカ駆動部84)に入力する。
【0072】
ステップS19では、踏力Psがゼロか否か(ゼロにはゼロを中心とした微小範囲を含む)を判断する。踏力PsがゼロであればステップS19からステップS20に進んで惰性発音フラグF2がオン(=1)であるか否かを判別する。惰性発音フラグF2がオンでないならばステップS21に進む。ステップS21では、タイマフラグがオン(=1)であるか否かを判別する。タイマフラグがオンならばステップS23に進み、変化量持続判定部92のタイマによって所定時間T2が経過したか否かを判断する。所定時間T2が経過していたならばステップS24に進んで車速Vを検出する。ステップS21が否定ならばステップS22に進んでタイマを始動させてからステップS23に進む。
【0073】
ステップS25では車速/音圧マップを検索車速Vに対応する音圧Saを決定する。ステップS26では音圧補正マップ(車速/音圧補正量マップ)により音圧補正量Sbを決定する。ステップS27では加算部94で音圧Saに音圧補正量Sbを加算する。ステップS28では惰性発音フラグF2をオン(=1)にする。ステップS28からステップS18に移行する。
【0074】
ステップS19が否定、つまり踏力Psが負である場合(またはゼロを中心とする微小範囲からさらに負方向に外れている)である場合、ステップS29に進んで惰性発音フラグF2をオフ(=0)にする。ステップS30ではタイマをリセット(=0)する。ステップS31では、発音停止指示をドライバに入力してスタートに戻る。
【0075】
ステップS20が肯定ならばステップS21〜S23をスキップしてステップS24に進む。ステップS23が否定の場合、つまり所定時間T2が経過していない場合は、ステップS24〜S28をスキップしてステップSS18に進む。
【0076】
このように、踏力Psが正側であると判断されている間は車速Vに応じた音圧でスピーカ64による発音を行う。一方、時間T2が経過するまで踏力がゼロまたはゼロ近傍のまま維持していれば、車速Vに応じて音圧を決定するとともに、踏力Psが負の場合はスピーカ64による発音を停止させる。
【0077】
また、踏Ps力がゼロまたはゼロ近傍で維持されていた場合は音圧Saを音圧補正量Sbで増加補正して発音させる。踏力Psがある程度ゼロまたはゼロ近傍に維持されているときは惰性走行していると判断される。惰性走行は下り坂や曲がり角等によって行われることが多いので、このような惰性走行が行われやすい下り坂や曲がり角ではスピーカ音を大きくすることにより、早い時期に歩行者にアシスト自転車1の接近を知らせることができる。
【0078】
図16は車速/音圧マップの一例を示す図であり、図17は車速/音圧補正量マップの一例を示す図である。図16、図17に示すように、音圧Saおよび音圧補正量Sbは車速Vに応じて指数関数的に増加するように設定するのが望ましい。
【0079】
第2実施形態は次のように変形できる。図18は第2実施形態の変形例に係る発音制御回路の概要を示す図である。図18において、図18(b)に示す踏力変化のうち、踏力が減少している間(太い線で表している区間)は、図18(a)に示すように車速Vはほぼ一定していると判断される。そこで、踏力変化量ΔPsが負であれば車速Vはほぼ一定または減少傾向であると判断して、この判断のもとに車速Vに応じてスピーカ音の音圧を決定し、発音させる。車速Vの変化量が少ない時は、車速Vに応じて音圧を決定しても、安定した音量で発音できるからである。
【0080】
図19は、第2実施形態の変形例に係る処理のフローチャートである。図19に示すフローチャートのステップS41、S42、S44〜S48、ならびにステップS50〜S61は図15に示したステップS11、S12、S14〜S18、ならびにステップS20〜S31の処理と同様である。ステップS43とステップS49の処理が図14に示したステップS13およびS19に置き代わっている。
【0081】
すなわち、ステップS43では、踏力変化量ΔPsがゼロ未満(負)であるか否かを判別する。踏力変化量ΔPsが負であればステップS44に進み、踏力変化量ΔPsがゼロ以上(正またはゼロ)であればステップS49に進む。ステップS44〜S48では、踏力変化量ΔPsが負であったときにスピーカで発音させる処理が行われる。
【0082】
一方、ステップS49に進んで、該ステップS49で踏力Psがゼロと判断されればステップS50に進んで音圧補正を含む処理をする一方、踏力Psが正であると判断されればステップS49からステップS59〜S61に進んで発音を停止する処理を行う。
【0083】
図19のフローチャートを実行する発音制御回路は、図14に示した構成における変化判別部91での判別アルゴリズムを変形することによって実現できる。すなわち、変化判別部91は、踏力Psが減少方向に変化していると判別した場合に音圧決定部83が車速Vに応じて音圧Saを出力させる。また、変化量持続判定部92では踏力Psがゼロで予定時間T2持続されれば音量補正量算出部93に対して車速Vに応じた音量補正量Sbを算出するように指示する一方、踏力Psが正の値であれば、スピーカ64の発音を停止させるようにスピーカ駆動部84を動作させる。
【0084】
なお、本発明は、上述の実施形態のものに限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で、周知技術等に基づいて変形することができる。例えば、発音体としてスピーカを例に挙げて説明をしたが、これに限らず、発音体としてブザーを使ってもよい。また、発音体の発音音色や音高の変化態様等は、予め任意のものを設定し、記憶させてあるものから選択して発音させることができる。
【0085】
また、電動補助自転車の構成も図1、図3に示したものに限らない。例えば、踏力検知装置やモータ部の構成および配置位置は周知のものであってよいし、発音体であるスピーカ64は、車体の前部に設けるのが好ましいが、前照灯29にLED67とともに一体のケースに組み込むのではなく、前照灯29とは独立して設けてもよい。例えば、前照灯29と共に、もしくは独立してフロントフォーク8に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…アシスト自転車、 8…フロントフォーク、 10…モータ部、 35…踏力センサ(踏力検出手段)、 21…ペダル、 29…前照灯、 55…上ケース、 56…下ケース、 50…車速センサ(車速検出手段)、 63…回路基板、 64…スピーカ(発音体)、 65…発音制御回路(発音制御部)、 67…LED(光源)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(67)および該光源(67)からの光を前方に反射させる光反射部(561)を有する発光部と、発音体(64)を有する発音部と、前記光源(67)および前記発音体(64)を収容するケースと、前記光源(67)および前記光反射部(561)を収容し、前記ケースと接合されるレンズ(59)と、前記光源(67)および発音体(64)を実装する基板(63)とを有する自転車用前照灯装置において、
前記ケースを上下に区切る壁部材(57)を備え、
前記基板(63)が、前記壁部材(57)に沿わせて、該壁部材(57)で区切られた上下の空間のいずれかに配置され、該基板(63)の一方の面に前記光源(67)が取り付けられ、他方の面には前記発音体(64)がそれぞれ取り付けられており、
前記基板(63)が配置された一方の空間に前記光反射部(561)が配置されるとともに、該一方の空間を前記レンズ(59)によって密封し、他方の空間には、前記基板(63)上の前記発音体(64)を、前記壁部材(57)を貫通させて臨ませ、
前記発音体(64)の周囲の前記ケースには前記発音体(64)からの音を前方に反射させる音反射部(552)を設けていることを特徴とする自転車用前照灯装置。
【請求項2】
前記基板(63)が配置された前記一方の空間が前記壁部材(57)の下方に、前記発音体(64)が臨んでいる前記他方の空間が前記壁部材(57)の上方にそれぞれ位置しており、
前記光反射部(552)が前記壁部材(57)の下方に位置する前記空間の内面に放物曲面として形成され、該放物曲面には、前記壁部材(57)によって形成される扁平片面が隣接していることを特徴とする請求項1記載の自転車用前照灯装置。
【請求項3】
前記光源(67)が発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、最大輝度方向が放物曲面部を向くように配設されていることを特徴とする請求項1記載の自転車用前照灯装置。
【請求項4】
前記回路基板(63)が前記発光部側で前記壁部材(57)に取り付けられており、
前記発音体(64)が前記壁部材(57)に形成された貫通孔(574)を通って前記壁部材(57)で区切って形成された一方の空間に臨ませてあるとともに、
前記発音体(64)と前記貫通孔(574)との間にシール部材(68)が配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項5】
前記壁部材(57)で区切られた上方の空間には、前記発音体(64)からの音を前方に指向させる指向部材(61、74)が設けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項6】
前記指向部材が、前記壁部材(57)で区切られた上方の空間の前部に設けられたルーバ(61)であることを特徴とする請求項5記載の自転車用前照灯装置。
【請求項7】
前記指向部材が、前記壁部材(57)で区切られた上方の空間の内面に形成されるリブ(74)であることを特徴とする請求項5記載の自転車用前照灯装置。
【請求項8】
周囲の明るさを検出する光センサ(69)と、該光センサ(69)で検出された周囲の明るさに基づいて前記光源(67)の点灯および消灯を制御する発光制御部(66)とを設け、
前記光センサ(69)および前記発光制御部(66)が前記回路基板(63)に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項9】
前記光センサ(69)が、前記基板(63)上で、前記音反射部(552)を有する壁部(51)の背部空間に位置して設けられており、
前記背部空間を覆う前記ケースの部分および/または該ケースの背後に結合されるカバー部材(62)に、前記光センサ(69)を見通せる透過部(75)が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の自転車用前照灯装置。
【請求項10】
前記壁部材(57)が、前方に向けて下り勾配となっている上面(571)を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項11】
前記ケースは、二つのケース部分(56、55)からなり、前記二つのケース部分(56、55)の一方に形成された凸部(562)が他方のケース部分(55)に設けられた係合孔(535)に係合することによって一体的に組み合わされることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項1】
光源(67)および該光源(67)からの光を前方に反射させる光反射部(561)を有する発光部と、発音体(64)を有する発音部と、前記光源(67)および前記発音体(64)を収容するケースと、前記光源(67)および前記光反射部(561)を収容し、前記ケースと接合されるレンズ(59)と、前記光源(67)および発音体(64)を実装する基板(63)とを有する自転車用前照灯装置において、
前記ケースを上下に区切る壁部材(57)を備え、
前記基板(63)が、前記壁部材(57)に沿わせて、該壁部材(57)で区切られた上下の空間のいずれかに配置され、該基板(63)の一方の面に前記光源(67)が取り付けられ、他方の面には前記発音体(64)がそれぞれ取り付けられており、
前記基板(63)が配置された一方の空間に前記光反射部(561)が配置されるとともに、該一方の空間を前記レンズ(59)によって密封し、他方の空間には、前記基板(63)上の前記発音体(64)を、前記壁部材(57)を貫通させて臨ませ、
前記発音体(64)の周囲の前記ケースには前記発音体(64)からの音を前方に反射させる音反射部(552)を設けていることを特徴とする自転車用前照灯装置。
【請求項2】
前記基板(63)が配置された前記一方の空間が前記壁部材(57)の下方に、前記発音体(64)が臨んでいる前記他方の空間が前記壁部材(57)の上方にそれぞれ位置しており、
前記光反射部(552)が前記壁部材(57)の下方に位置する前記空間の内面に放物曲面として形成され、該放物曲面には、前記壁部材(57)によって形成される扁平片面が隣接していることを特徴とする請求項1記載の自転車用前照灯装置。
【請求項3】
前記光源(67)が発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、最大輝度方向が放物曲面部を向くように配設されていることを特徴とする請求項1記載の自転車用前照灯装置。
【請求項4】
前記回路基板(63)が前記発光部側で前記壁部材(57)に取り付けられており、
前記発音体(64)が前記壁部材(57)に形成された貫通孔(574)を通って前記壁部材(57)で区切って形成された一方の空間に臨ませてあるとともに、
前記発音体(64)と前記貫通孔(574)との間にシール部材(68)が配設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項5】
前記壁部材(57)で区切られた上方の空間には、前記発音体(64)からの音を前方に指向させる指向部材(61、74)が設けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項6】
前記指向部材が、前記壁部材(57)で区切られた上方の空間の前部に設けられたルーバ(61)であることを特徴とする請求項5記載の自転車用前照灯装置。
【請求項7】
前記指向部材が、前記壁部材(57)で区切られた上方の空間の内面に形成されるリブ(74)であることを特徴とする請求項5記載の自転車用前照灯装置。
【請求項8】
周囲の明るさを検出する光センサ(69)と、該光センサ(69)で検出された周囲の明るさに基づいて前記光源(67)の点灯および消灯を制御する発光制御部(66)とを設け、
前記光センサ(69)および前記発光制御部(66)が前記回路基板(63)に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項9】
前記光センサ(69)が、前記基板(63)上で、前記音反射部(552)を有する壁部(51)の背部空間に位置して設けられており、
前記背部空間を覆う前記ケースの部分および/または該ケースの背後に結合されるカバー部材(62)に、前記光センサ(69)を見通せる透過部(75)が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の自転車用前照灯装置。
【請求項10】
前記壁部材(57)が、前方に向けて下り勾配となっている上面(571)を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【請求項11】
前記ケースは、二つのケース部分(56、55)からなり、前記二つのケース部分(56、55)の一方に形成された凸部(562)が他方のケース部分(55)に設けられた係合孔(535)に係合することによって一体的に組み合わされることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の自転車用前照灯装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−162228(P2012−162228A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26047(P2011−26047)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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