説明

舌診システム、舌診装置、舌診方法、舌診プログラム

【課題】漢方医学による舌診の技能がない医師、あるいは遠隔地にいるために患者の舌を直接舌診できない医師、さらには医師でない薬剤師等であっても漢方医学に基づく舌診の診断結果が得られる舌診装置を提供する。
【解決手段】 カメラ204によって撮影された舌画像データから、舌の状態パラメータを抽出する色判定部302、色分布判定部303、舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307、状態パラメータを舌診データと比較して、舌診結果を抽出する舌診結果判定部309、舌診結果を外部に出力するディスプレイ205とによって舌診装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌診システム、舌診装置、舌診プログラムに係り、特に漢方医学に基づいて舌を診断する舌診システム、舌診装置、舌診方法、舌診プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、個人の健康に関する意識が高まる社会的な傾向があり、これに伴って遠隔診断システムやカウンセリングシステム等の医療に関する様々なサービスが実用化されている。特に遠隔診断システムは、患者の状態を画像や音声のデータとして医療機関に送信する。医療機関は、受信されたデータに基づいて診断し、結果を患者に送信し、治療に必要な情報を提供する。
【0003】
このような従来技術としては、例えば、特許文献1に記載された遠隔体質判別健康処方検診管理システムが挙げられる。特許文献1の遠隔体質判別健康処方検診管理システムは、システムの管理センターが通信回線を介して患者の検診データを入手して診断するシステムである。患者はテレビ電話を使って検診データを入力し、管理センターは、検診データを患者情報や診断情報、医薬品情報のデータベースに対照して診断し、施療や生活指導をしている。
【0004】
このようなシステムによれば、医療機関がない地域にいる患者も適切な施療や指導を受けることができる。また、医師の診断を受けることが望ましいとは意識しながらも、時間的な制約によって医療機関に出向くことが困難な患者も適切な施療や指導を受けることができる。さらに、このような遠隔診断を定期的に行えば、患者が自覚していなかった症状をも検出し、早期治療に寄与することも可能になる。
【特許文献1】特開2003−91599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、周知のように、中国を起源とする漢方医学が世界的に注目されている。近年では、漢方医学と西洋医学の知識や技術とを併用して患者の状態を診断することもなされており、漢方医学の医薬品や治療法をより普及化することが求められている。特許文献1に記載された遠隔体質判別健康処方検診管理システムでも、この点に注目しており、医薬品データベースには西洋薬や機能性食品ばかりでなく、漢方薬や薬膳等の情報も格納されている。
【0006】
漢方薬は、本来、漢方医学による診断結果に基づいて処方されるようになっている。このため、特許文献1のように、データベースに漢方薬の情報を蓄積したとしても、検診データを漢方医学に基づいて診断することができなければ、患者の症状に適した漢方薬を選択することは困難である。漢方医学に基づく診断は、診断する医師の知識や経験に結果が大きく依存する。このため、現段階では、熟練した漢方医学の医師によってなされることが一般的である。
【0007】
例えば、漢方医学特有の診断の1つに、舌の状態によって患者の状態を診断する舌診と呼ばれる診断方法がある。舌診は、患者の舌の色や舌苔の状態、さらには肥大や歯痕の有無を観察して行われる。舌診による診断の結果は、漢方医学において特に重要な診断項目であって、問診や脈診と共に漢方薬を処方するための重要な情報である。
しかしながら、現在、舌診は一般的に医師が目視によって行い、医師が自身の知識や経験に基づいて患者の状態を判断している。適正な舌診の結果を得るには、舌診に精通した医師による診断を受けることが必要である。このため、医師による診断を受けることが困難な患者を対象にしている遠隔診断システムでは、熟練した医師に患者を舌診させることが必須の診断方法を採用することは現実的ではない。
【0008】
このような不具合を解消する方法として、舌を撮影する等して舌の状態に関するデータを取得し、取得されたデータを舌診ができる医師に送信して判断を依頼することが考えられる。
しかし、現状では、我国においては、漢方医学による舌診に精通した医師は西洋医学による舌診ができる医師よりも少なく、少数の医師で多くの舌診の要請に応えることは困難である。さらに、漢方医学の医師は、直接患者の舌の状態を見て知識や経験を得ているのであるから、送信された舌の画像等によって直ちに舌の状態を判断して診断することは困難であると考えられる。
【0009】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、漢方医学による舌診の技能がない医師、あるいは遠隔地にいるために患者の舌を直接舌診できない医師、さらには医師でない薬剤師等であっても漢方医学に基づく舌診の診断結果が得られる舌診システム、舌診装置、舌診方法及び脈診プログラムを提供し、漢方医学の舌診を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の舌診システムは、舌の状態を表すデータを取得する舌診装置と、前記舌診装置とネットワークを介して接続され、舌診装置との間でデータを送受信することができるサーバ装置と、を備えた舌診システムであって、前記舌診装置は、舌を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出手段と、前記状態パラメータ抽出手段によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診手段と、を備え、前記舌診手段によって抽出された舌診結果を前記ネットワークによって前記サーバ装置に送信し、前記サーバ装置は、前記舌診手段によって抽出された舌診結果を前記ネットワークによって受信し、受信された舌診結果を外部に出力する舌診結果出力手段を備えることを特徴とする。
【0011】
このような発明によれば、撮影された舌の画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づく状態パラメータを抽出することができる。また、抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、状態パラメータに対応する舌診結果を抽出することができる。
【0012】
このため、舌診に精通していない医師や医師でない者であっても舌の状態を客観的なパラメータとして抽出することができる。また、パラメータを舌診結果と対応付けることにより、舌診の技能がない医師であっても患者の身体の状態を判定し、処方箋の作成等、舌診に基づく医療行為をすることができる。さらに、抽出された舌診結果をネットワークによってサーバ装置から外部に出力することにより、遠隔地にいるために患者の舌を直接舌診できない医師であっても舌診の診断結果を得ることができる。さらに、より高度な知識を持つ医師や機関に舌診結果を送信して援助を仰ぐことができる。
また、このような発明は、舌診装置側で状態パラメータや舌診結果を決定することができるので、直ちに舌診の結果を得ることができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の舌診システムは、舌の状態を表すデータを取得する舌診装置と、前記舌診装置とネットワークを介して接続され、舌診装置との間でデータを送受信することができるサーバ装置と、を備えた舌診システムであって、前記舌診装置は、舌を撮影する撮影手段を備え、前記撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データを前記ネットワークによって送信し、前記サーバ装置は、前記撮影手段によって撮影された画像データ前記ネットワークによって受信し、受信された画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出手段と、前記状態パラメータ抽出手段によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診手段と、前記舌診手段によって抽出された舌診結果を、外部に出力する舌診結果出力手段を備えることを特徴とする。
【0014】
このような発明によれば、サーバ装置が、送信された舌の画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づく状態パラメータを抽出することができる。また、抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、状態パラメータに対応する舌診結果を抽出することができる。
【0015】
このため、遠隔地にいるために患者の舌を直接舌診できない医師や舌診に精通していない医師、さらには医師でない者であっても舌の状態を客観的なパラメータとして抽出することができる。また、パラメータを舌診結果と対応付けることにより、舌診の技能がない医師であっても患者の身体の状態を判定し、処方箋の作成等、舌診に基づく医療行為をすることができる。
また、このような発明は、サーバ装置の側で状態パラメータや舌診結果を決定することができるので、舌診データ量が大量になった場合にも、舌診装置の規模の大型化や高価格化を防ぐことができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の舌診装置は、舌を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出手段と、前記状態パラメータ抽出手段によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診手段と、前記舌診手段によって抽出された舌診結果を外部に出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
このような発明によれば、舌診に精通していない医師、さらには医師でない者であっても舌の状態を客観的なパラメータとして抽出することができる。また、パラメータを舌診結果と対応付けることにより、舌診の技能がない医師であっても患者の身体の状態を判定し、処方箋の作成等、舌診に基づく医療行為をすることができる。
【0017】
本発明の請求項4に記載の舌診装置は、請求項3に記載の発明において、所定の色を有し、前記撮影手段によって撮影される色基準部材をさらに有し、前記状態パラメータ抽出手段は、前記撮影手段が撮影した色基準部材の画像データに基づいて、前記撮影手段によって撮影された舌画像データの色を補正する色補正手段を備えることを特徴とする。
このような発明によれば、画像の色を適正な色に補正することができる。このため、画像を撮影した環境によらず舌診に適した画像を撮影することができ、ひいては舌診の精度を高めることができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の舌診装置は、請求項3または4に記載の発明において、前記状態パラメータ抽出手段が、前記撮影手段によって撮影された画像データの色を、当該色のR,G,Bの組成比によって漢方医学に基づく色種別のいずれかに分類し、分類された色種別を状態パラメータとすることを特徴とする。
このような発明によれば、画像データの色を漢方医学でいう色のいずれかにあてはめることができる。このため、漢方医学に精通していない医師であっても舌を中国医学に基づいて診断することができる。また、漢方医等に判断を仰ぐ場合にも情報を円滑、正確に伝えることができる。
【0019】
また、本発明の請求項6に記載の舌診装置は、請求項3から5のいずれか1項に記載の発明において、前記状態パラメータ抽出手段が、前記舌画像データ中の画像をエッジ検出して画像の輪郭を抽出し、抽出された輪郭に基づいて舌の形状、歯痕、舌のねじれを抽出することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の舌診装置。
輪郭抽出手段を備え、前記輪郭抽出手段によって抽出された輪郭に基づいて舌の形状、歯痕、舌のねじれを抽出することを特徴とする。
このような発明によれば、エッジ検出という比較的簡易かつ実績のある技術を用い、舌の形状、歯痕、舌のねじれを抽出することができる。このため、構成の簡易化、低廉化に有利であって信頼性が高い舌診装置を提供することができる。
【0020】
本発明の請求項7に記載の舌診方法は、舌を撮影する撮影手段によって撮影された舌の画像の画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出ステップと、前記状態パラメータ抽出ステップにおいて抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診ステップと、前記舌診ステップにおいて抽出された舌診結果を外部に出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
このような発明によれば、舌診に精通していない医師、さらには医師でない者であっても舌の状態を客観的なパラメータとして抽出することができる。また、パラメータを舌診結果と対応付けることにより、舌診の技能がない医師であっても患者の身体の状態を判定し、処方箋の作成等、舌診に基づく医療行為のサービスを提供することができる。
【0022】
本発明の請求項8に記載の舌診プログラムは、コンピュータに、舌を撮影する撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出機能と、前記状態パラメータ抽出機能によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診機能と、前記舌診機能によって抽出された舌診結果を外部に出力する出力機能と、を実現させることを特徴とする。
【0023】
このような発明によれば、汎用的なコンピュータ等の構成にプログラムを記憶させて舌診装置を構成することができる。そして、舌診に精通していない医師、さらには医師でない者であっても舌の状態を客観的なパラメータとして抽出することができる。また、パラメータを舌診結果と対応付けることにより、舌診の技能がない医師であっても患者の身体の状態を判定し、処方箋の作成等、舌診に基づく医療行為をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図を参照して本発明に係る舌診システム、舌診装置、舌診方法及び舌診用プログラムの一実施形態について説明する。
(舌診システム)
図1は、本発明の一実施形態の舌診システムの概念を説明するための図である。図示した舌診システムは、サーバ1と、サーバ1とネットワークNによって接続される舌診装置101とによって構成されている。舌診装置101は、患者の舌の形状、舌表面の色、この色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つ(状態パラメータ)に基づいて患者の状態を診断する装置である。
【0025】
実施形態1の構成では、舌診装置101が舌を撮影し、撮影された画像データから状態パラメータを抽出する。そして、抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して舌診結果を抽出する。抽出された舌診結果はネットワークNによってサーバ1に送信され、サーバ1から外部に出力される。
サーバ1から外部への出力は、舌診結果を示す情報をディスプレイ、紙媒体に表示するもの、ネットワークNを介して外部に送信するもののいずれであってもよい。
【0026】
図1に示した舌診システムでは、舌診装置101が、サーバ1の管理者が認可したカウンセラーのいる薬局2や病院等の医療機関3に設置される。患者は、薬局2または医療機関3等を訪れて舌診装置101による舌診を受ける。
舌診装置101による舌診では、舌診装置101が患者の舌を撮影する。そして、撮影された画像のデジタルデータ(舌画像データ)から、舌の形状や表面の色、この色の規模や分布を状態パラメータとして抽出する。さらに、抽出された状態パラメータを、舌診データと比較して舌の状態の種別を特定する。
【0027】
舌診データとは、状態パラメータと、患者の舌の状態の種別とを対応付けるデータである。舌の状態の種別とは、正常、あるいは外感風熱初期、熱入営血といった漢方医学による種別である。このような種別は、従来、漢方医が目視によって判定していた。
舌診装置101によって得られた舌の状態の種別を示すデータ(舌診結果データ)は、ネットワークNを介してサーバ1に送信される。サーバ1の管理者は、舌診結果データに基づいて患者に適した漢方薬の処方箋を作成し、調剤工場や漢方薬の調剤が可能な薬局に送信する。なお、処方箋の作成にあたっては、サーバ1の管理者が、漢方医学に精通した医師団5等にネットワークNを介して舌診結果データを必要に応じて送信し、支援を要求してもよい。
【0028】
また、薬局2や医療機関3において問診や脈診といった他の手法による診断を実施し、結果を舌診結果データと共にサーバ1に送信してもよい。このようにした場合、サーバ1では、問診、舌診、脈診の結果を総合的に判断して処方箋を作成することも考えられる。調剤工場は、処方箋にしたがって漢方薬を調剤する。調剤された漢方薬は、薬局2、医療機関3ばかりでなく、舌診装置101が設置されていない薬局4に送ることができる。漢方薬は、薬局2、医療機関3、薬局4において患者に受け渡される。
【0029】
このようにすれば、患者は特に漢方医学に精通している医者のいない医療機関においても漢方医学による舌診を受けることができる。また、薬局に舌診装置101を設けることにより、医者以外の者によって舌診をすることが可能になる。さらに、調剤された漢方薬を患者が受け取ることについての地理的、時間的な制約が緩和される。
なお、以上述べた舌診システムでは、舌診装置101が画像データから舌診結果データをサーバ1に送信するよう構成されている。しかし、実施形態1、実施形態2は、このような構成に限定されるものではない。
【0030】
例えば、舌診装置101は舌を撮像して得られる舌画像データをそのままサーバ1に送信するものであってもよい。サーバ1が、舌画像データを舌診データと比較して舌診結果を得て、舌診結果データを外部に送信する。このような構成では、舌診データ量が大量になっても舌診装置側のメモリを大型化する必要がないので、舌診装置が大型化、高価格化することを防ぐことができる。
【0031】
(舌診装置)
図2は、舌診装置101の概観を説明するための図である。舌診装置101は、舌を撮影するカメラ204、撮影の結果を表示するディスプレイ205を備えている。カメラ204は、小型のデジタルカメラであって、ミラー201の略中央に設けられている。
また、カメラ204の前方には、所定の色を有し、カメラ204によって撮影される被写体部である色基準板203が設けられている。色基準板203は、回動可能な軸208によって支持されていて、軸208が矢線Aの方向に回動することによってカメラ204の前からカメラ204によって撮影されない位置に移動する。
【0032】
さらに、舌診装置101は、舌診装置101に対して指示を入力するためのキーボード207や操作ボタン206を有している。本実施形態では、操作ボタン206がカメラ204に撮影を指示するシャッタボタン、あるいは焦点距離を調整するズームボタン等として機能するものとする。
なお、以上の構成において、舌診DB309は舌診装置に内蔵されるメモリにあってもよいし、舌診装置に挿入される記録媒体に舌診データを記録するようにしてもよい。また、舌診装置のネットワークを介して適宜閲覧することができるようにしてもよい。
【0033】
図3は、舌診装置101の機能ブロック図である。舌診装置101には、本実施形態の舌診プログラムが記憶されていて、図中に示した破線300で示した範囲が舌診プログラムに相当する。舌診装置101は、図2に示したカメラ204と、カメラ204によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、この色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づく状態パラメータを抽出する色判定部302、色分布判定部303、舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307を備えている。
【0034】
また、本実施形態では、舌診装置101が、状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データを保存する舌診DB309を備えている。舌診装置101は、抽出された状態パラメータを、予め舌診DB309に記憶されている舌診データと比較し、状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診結果判定部308を備えている。
以上述べた構成では、色判定部302、色分布判定部303、舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307が状態パラメータ抽出手段として機能する。また、舌診結果判定部308が舌診手段として機能する。
【0035】
また、舌診装置101は、舌診結果判定部308によって抽出された舌診結果を外部に出力する通信制御部311、ディスプレイ205を有している。通信制御部311は、舌診結果を、ネットワークNを介して送信することによって舌診結果を外部に出力する。また、ディスプレイ205は、舌診結果を表示することによって外部に出力する。通信制御部311、ディスプレイ205は、本実施形態の出力手段として機能する。
【0036】
なお、図3に示した構成は、舌診装置の側で舌診パラメータの抽出、脈診結果の判定をする舌診システムに適用される舌診装置の例である。舌診パラメータの抽出、脈診結果の判定をサーバ1の側でする場合、破線300で示した舌診プログラムはサーバ1と接続するコンピュータに記憶される。
このように構成された舌診装置では、ユーザが、軸208を下げて色基準板203をカメラ204の前に移動し、色基準板203をカメラ204によって撮影する。色基準板203を撮影して得られた画像データは、舌画像データの色の補正に使用される。
【0037】
次に、ユーザは、軸208を矢線Aの方向に回動し、色基準板203をカメラ204の撮影範囲外に移動する。そして、ミラー201に舌を映しながらミラー201に映る舌の位置を調整し、シャッタボタンを操作して舌を撮影する。この結果、ミラー201に映った状態の舌を撮影した画像(舌画像)が得られる。
なお、舌の位置の調整しやすくするため、ミラー201に適正な舌の位置の示す線画を予め記入しておいてもよい。このようにすれば、実際の舌の大きさや形状に関わらず、舌全体が適正に含む舌画像が撮影できる。また、例えば、ユーザをカメラ204に対して一定の位置に固定するガイド部を設けてもよい。このようにすれば、舌とカメラ204との大凡の距離が推定できるので、舌画像から舌の大きさが推定できる。
【0038】
図4は、ガイド部の一例を示した上面図であって、図2に示した舌診装置を図中に示した矢線Bの方向から見た状態を示している。図示したガイド部は、軸208と同様に矢線Aの方向に回動する軸402と、軸402によって支持される額当て部401とを有している。
額当て部401は、人間の額に沿うように湾曲している。ユーザは、額当て部401の湾曲した内面401aに額を当接させて固定し、舌を出して撮影する。また、ガイド部の構成は額当て部401に限定されるものでなく、例えばあごに当接させて顔の位置を固定するもの等が考えられる。
【0039】
(舌診パラメータの抽出)
・色判定
次に、以上述べたようにして撮像された舌画像の画像データから舌診パラメータを抽出する方法について説明する。カメラ204は、周知のように、舌の色をR,G,Bの3成分に分解し、各成分の強度を検出する。色判定部302は、舌画像中の色を、各成分の強度比に基づいて漢方医学の舌診でいう色の種別のいずれかに対応付ける。
【0040】
漢方医学でいう舌の色は、舌表面の色と、舌表面に発生した舌苔の色とに分けられる。舌表面の色としては、淡紅、微紅、紅、深紅、糸絳、淡白、淡青紫、淡紫青等がある。また、舌苔の色としては、薄白、黄白、淡黄、焦黄、灰、黒等がある。色判定部302は、例えば、色成分の強度比が、
R:G:B=x1:y1:z1 である場合、画像の色が淡紅であると判定する。
あるいは、
R:G:B=x1:y2:z3 である場合、画像の色が紅であると判定する。
なお、上記したx1、y2等は、各々任意の自然数である。
【0041】
・色分布判定
色分布判定部303は、色判定部302によって判定された色と、舌画像における色の位置とを対応付ける。このような処理は、例えば、舌画像を微小な領域や画素に分割し、各微小領域等に座標を割り付ける。そして、微小領域等を示す座標と、微小領域等の色とを対応付けることによって実現することができる。このような色分布の判定の例を、図5に示す。
図5に示した例では、舌画像がx方向及びy方向に配置された正方形の微小領域rに分割されている。各微小領域rには、網掛けの種別によって区別される4種類の色のうちのいずれか1色が割当てられていて、舌画像から舌の色及びその分布が判定できることがわかる。
【0042】
また、舌画像の色は、撮影時の照明の状態等の環境によって変化する。舌の色をより正確に舌画像から判定するため、本実施形態では、色判定部302は、カメラ204が撮影した色基準板203の画像データに基づいて、カメラ204によって撮影された舌画像データの色を補正している。
より具体的には、本実施形態は、色基準板203を撮影した場合に得られる色のR,G,Bの適正な強度比(適正比)を予め色判定部302に設定しておく。そして、色基準板203を撮影する。このとき、色基準板203の位置は、撮影された画像の全域が色基準板203になるように設定されている。
【0043】
色判定部302は、実際に撮影された画像の色のR,G,Bの強度比と、適正比とを比較する。そして、R,G,Bの強度比が適正比と一致するように、R,G,Bの各値を補正する補正係数を定める。
なお、撮影された画像の色のR,G,Bの強度比は、画像内において分布を持つことがある。このような場合、色判定部302は、画像の位置に応じた補正係数を決定してもよい。撮影された舌画像を画像の位置に応じた補正係数によって補正することにより、画像の全域で撮影環境による舌画像の変動を防ぎ、適正な色を取得することができる。
【0044】
・エッジ検出
また、舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307は、舌画像データ中の画像をエッジ検出することによって舌画像中の輪郭を検出する。そして、抽出された輪郭に基づいて舌の形状、歯痕、舌のねじれを抽出する。すなわち、本実施形態は、舌画像の画像データから、エッジ検出等の周知技術によって画像の明るさが閾値以上に変わる点を検出する。この点が連続する線により、画像の輪郭が得られる。舌診装置101は、検出された輪郭によって舌の形状、舌の表面に現れる斑点、歯痕、ねじれを検出することができる。
【0045】
図6(a)、(b)、(c)は、エッジ検出の例を説明するための図である。(a)は、舌画像を白または黒に二値化した状態を示していて、線S1、S2、S3は各々舌画像を図中のx方向にスキャンしたスキャンラインである。つまり、本実施形態では、舌画像の明るさの適正な閾値を設定する。そして、この閾値以上の明るさを持つ微小領域rを白、閾値以下の明るさの微小領域rを黒とする。
【0046】
(b)は、スキャンラインS1、S2、S3上の微小領域rの黒または白を区別して示した図である。(b)の縦軸dは画像の明るさを示していて、白と判定された場合にはピークが立たず、黒と判定された場合にだけピークが現れる。図6(b)に示した例では、舌画像の舌部分の背景(色基準板)の色が白とみなされ、舌周辺の周辺部分602が黒とみなされている。また、舌中央部分603が白とみなされている。
【0047】
このような白、黒の判定は、色基準板203がクリーム色等の明るい色であって、した周辺が紅等の色基準板より暗い色であり、舌中央部分603に淡黄等の舌苔が生じている場合に得られる。なお、色基準板203の色は、このような二値化の処理における閾値を考慮して決定すべきである。
舌形状判定部304は、舌画像の全領域を高密度にスキャンすることによって舌全域についての図6(b)のピークを得る。そして、スキャンラインのy座標と舌全域のピークに基づいて舌全体の輪郭形状や舌苔の発生部位の境界を得ることができる。
【0048】
また、舌には、表面に斑点601が生じる場合がある。舌表面の斑点は、身体の状態の表すパラメータになり得る。斑点は、通常舌表面に舌表面よりさらに濃い色となって現れ、舌苔の上には表れることがない。このため、色基準板203や舌苔の色が白とみなされ、舌表面が黒とみなされる明るさの色を閾値に設定した場合には、図6のS3に示したように、舌表面の色特別されることがなく検出することができない。
【0049】
このため、本実施形態では、色判定の結果、少なくとも舌表面であると判定された部位については舌表面の明るさに基づいて閾値を再設定し、二値化してスキャンするものとした。このようにすれば、図6(c)に示したように、舌表面が白と判定され、斑点601だけが黒と判定されて斑点601の位置を表すピークが検出できる。
さらに、身体の状態を表す舌のパラメータとして、舌のねじれや歯痕が挙げられる。舌のねじれとは、舌の角度の異常をいう。舌に歯痕があるとは、舌が肥大することによって舌にあたり、舌の側面から表面にかけて歯の痕がついた状態をいう。
【0050】
図7は、舌のねじれや歯痕を検出する方法について説明するための図である。図7(a)は、歯痕701がある舌の二値化された舌画像を示している。歯痕は、舌表面上により黒く現れる。このため、色基準板203や舌表面が白とみなされ、舌の陰となる部分が黒とみなされるよう二値化の閾値を設定する。
歯痕判定部306は、このような閾値によって二値化された舌画像をスキャンラインS1、S2、S3によってスキャンする。スキャンにより、図7(b)のピークが得られる。舌表面が白とみなされる場合にも、舌の輪郭は陰影が発生するのでピークが表れる。歯痕がない舌では、輪郭の陰影の幅がスキャンラインによらず略一定になると考えられる。しかし、歯痕は、歯に沿う不規則な形状の痕として舌表面に現れる。したがって、歯痕がある場合、ピーク幅は、図7(b)に示したように、スキャンラインによって不規則に変化する。
【0051】
本実施形態は、この点に着目し、歯痕判定部306が二値化された舌画像を高密度に設定された複数のスキャンラインでスキャンする。そして、舌輪郭を示すピークが基準よりも不規則な幅を持つピークとして表れるか否かによって歯痕の有無を検出することができる。
また、舌のねじれは、例えば、舌の縦方向の長さと横方向の長さとの比によって検出することができる。すなわち、本実施形態のように舌表面を顔の正面から撮像した場合、舌表面の全面が撮影される。しかし、舌がねじれている場合、舌の角度が変化するから、舌表面の一部がカメラ204に撮影されない状態になり得る。このような場合、カメラ204によって撮影された舌の輪郭をエッジ検出によって検出すると、ねじれがない場合よりも幅が短く検出される。
【0052】
この点に着目し、ねじれ判定部307は、舌表面の図中のy方向の長さとx方向の長さの比の基準値を予め設定しておく。そして、舌画像をエッジ検出して得た舌の輪郭から、舌のy方向の最大長さymとx方向の最大長さxmとを検出する。さらに、ymとxmとの比をとって、この値を予め設定されている基準値と比較する。比較の結果、xmがymに比して短いという結果が出た場合、舌にねじれがあると判定することができる。
【0053】
また、舌にねじれが生じた場合、舌の輪郭を示す陰影が左右非対称のピークとなる可能性が高い。このため、ねじれ判定部307では、図7(a)に示したように舌表面が白、陰影が黒とみなされる閾値を設定し、スキャンして得た(b)のピークを舌の左右で比較する。そして、ピークの幅が左右で所定の差以上に相違した場合、舌にねじれがあると可能性がある判定することができる。
【0054】
本実施形態は、このような陰影の判定の結果と、前記した舌の縦横比とを併用して舌のねじれを判定するものとする。
なお、以上述べた舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307は、いずれも閾値を変更しながらエッジ検出することによって舌形状、歯痕といった状態パラメータを抽出している。このため、本実施形態は、舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307のエッジ検出処理を共通の処理とすることができる。
【0055】
このように構成した場合、共通のエッジ検出部は、エッジ検出の閾値を多段階に変更しながら舌画像データのエッジ検出をする。エッジ検出の結果は、共通メモリに保存される。舌形状判定部304、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307は、各々の処理の用途に適正な閾値によって二値化されたエッジ検出の結果を読み出し、舌形状や斑点、歯痕等を検出する。
【0056】
以上のようにして判定された結果は、舌診結果判定部308に入力される。舌診結果判定部308は、色判定部302及び色分布判定部303によって判定された結果を舌診DB309に記録されている舌診データと比較し、舌の色分布に基づく舌診結果を抽出する。また、舌形状判定部305、斑点判定部305、歯痕判定部306、ねじれ判定部307の判定結果を舌診DB309に対照し、舌の形状や斑点や歯痕に基づく舌診結果を抽出する。
【0057】
舌診DB309に記録されている舌診データは、舌の色、色の分布、形状、斑点、歯痕、ねじれの有無の各項目についての状態と、舌がこのような状態にある場合に予想される身体の状態とを対応つけて記録したデータである。なお、本実施形態では、予想される身体の状態を改善するために有効な漢方薬も舌の状態と対応つけて舌診データに記録しておくものとする。
このようにすれば、本実施形態の舌診システムを、舌診の結果から処方箋を作成するツールとして使用することができる。また、医師が漢方薬に精通していない場合にも調剤を支援し、漢方医学に基づいた適正な漢方薬を処方することができる。
【0058】
図8(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、舌診データを説明するための図である。(a)は、舌の中央部分を中心にする部位が薄白であって、歯痕があると判定される舌画像を示している。舌診結果判定部308は、中央部分を中心にする部位が薄白、歯痕ありの情報を舌診データと比較する。本実施形態の舌診データでは、中央部分を中心にする部位が薄白、歯痕ありの情報に、脾虚湿盛(脾気の水液運化機能虚弱のため湿が盛んになる状態)と、白木・准山薬とが対応つけられている。
【0059】
舌診結果判定部308は、ユーザの体調が脾虚湿盛であること、適正な漢方薬が白木・准山薬であることを舌診結果データとしてディスプレイ205に表示する。このとき、図8(a)に示した舌画像データを舌診結果データと共に表示するようにしてもよい。また、舌診結果データは、通信制御部311を介してサーバ1に送信される。サーバ1に受信された舌診結果データは、必要に応じて薬局や製薬工場等にネットワークNを介して送られる。さらに、サーバ1の管理者は、舌診結果データから調剤のための充分な情報が得られないと判断すると、漢方医学に精通した医師団等に送信することも可能である。
【0060】
図8(b)は、淡紅、微紅といった赤に近い色合いの舌表面に淡白、黄白といった白に近い色の苔が点在すると判定される舌画像を示している。このような舌の状態に対応する舌診データには、患者が脾陰虚(脾の津液(血以外のすべての体液)が不足した状態)の状態にあり、体調の改善に有効な漢方薬は沙参・玉竹であると記録されている。
図8(c)は、舌形状判定部304によって舌の縦横比が標準的な範囲よりも横方向に短い(舌がやせている)と判定され、色判定部302等によって舌表面が全体的に紅、深紅といった非常に紅い色であると判定され、さらに、斑点判定部305によって裂紋801があると判定される舌画像である。本実施形態の舌診データでは、このような舌画像の情報に、体調として熱盛傷津(高熱等によって水分が不足している状態)、漢方薬として生地・天花粉が対応付けられている。
【0061】
図8(d)は、舌形状判定部304によって舌の縦横比が標準的な範囲よりも横方向に長い(舌が肥大している)と判定され、色判定部302等によって舌表面が全体的に淡白色であると判定される舌画像である。本実施形態の舌診データでは、このような舌画像の情報に、体調として陽虚水盛(腎陽が慢性的に不足していて、体内の水分量が過多の状態)、漢方薬として桂枝・荘苓が対応付けられている。
【0062】
なお、本実施形態は、以上述べたように舌表面の画像を使って舌診する構成に限定されるものではなく、舌の裏面を撮影して舌診することもできる。図8(e)は、舌の裏面を撮影して得られた舌画像である。舌画像が舌の裏面を撮影するものであっても、本実施形態の舌診装置は、舌表面と同様にエッジ検出等をして舌下の静脈802を検出することができる。静脈802の検出は、エッジ検出とあわせて色判定部302及び色分布判定部302による色判定の結果を使うことによっていっそう高い精度を得ることができる。
すなわち、例えば斑点判定部306がエッジ検出によって舌静脈802のエッジを検出して舌静脈802の位置を検出する。そして、色判定部302及び色分布判定部302が検出された位置の色が青紫色であると判定すれば、検出された位置に舌下静脈802があると判定する。
【0063】
また、本実施形態では、色分布判定部302に舌下静脈802であると判定される画像の正常な範囲が記憶されている。色分布判定部303は、(e)の舌画像において青紫色であると判定された範囲が正常な範囲を超えているか否か判断する。そして、正常な範囲を超えていると判定した場合、舌下静脈802肥大と判定して舌診結果判定部308に出力する。本実施形態の舌診データは、舌下静脈802肥大の情報に、体調として疹血(肝に蓄えられていた血が不足して栄養が行き渡らない状態)を、漢方薬として白木・准山薬が対応付けられている。
【0064】
図9は、以上述べた舌診装置によって実行される舌診プログラムを説明するためのフローチャートである。本実施形態の舌診プログラムは、舌を撮影する撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づく状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出機能と、抽出された状態パラメータを、予め記憶されている舌診データと比較して舌診結果を抽出する舌診機能と、舌診結果を外部に出力する出力機能と、を含んでいる。
【0065】
図示したフローのうち、ステップS901から905までが状態パラメータ抽出機能によって実行される。また、ステップS906が舌診機能によって実行され、ステップ907は出力機能によって実行される。
すなわち、色判定部302は、カメラ204によって撮影された色基準板203の画像データを取得する(ステップS901)。そして、取得された画像データをR、G、Bに分解し、各成分の強度比を適正比に一致させるための補正係数を算出する(ステップS902)。なお、補正係数は、1つに限定されるものでなく、例えば色成分ごとに異なる値を有するものであってもよいし、色成分の強度に応じて異なる値をとるものであってもよい。
【0066】
次に、色判定部302は、カメラ204によって撮影された舌画像の画像データを取得する(ステップS903)。そして、取得された画像データをR、G、Bに分解し、各成分を補正係数によって補正して舌の色を判定する。色分布判定部303は、判定された色と、色が検出された位置とを対応つけて色分布を判定する(ステップS904)。
次に、舌形状判定部304は、色基準板203程度の明るさを閾値にして舌画像データを二値化してエッジを検出する。このような二値化により、舌形状判定部304は、舌の輪郭を検出することができる。さらに舌形状判定部304は、検出された舌の輪郭の縦横比を求め、縦横比を予め記憶されている正常な縦横比と比較する。そして、縦横比が正常である場合には、形状正常の情報を舌診結果判定部308に出力する。また、縦横比が正常の範囲から外れている場合、縦横比が横方向に長ければ舌肥大、横方向に短ければ舌がやせていることを示す情報を舌診結果判定部308に出力する。
【0067】
次に、斑点判定部305は、色判定部302によって判定された色程度の明るさを閾値として舌画像データを二値化し、エッジ検出をする。エッジ検出により、舌上にある斑点や歯痕、裂紋を検出することができる。斑点判定部305によるエッジ検出は、閾値を多段階に変更しながら繰り返し行うことが望ましい。このようにすることにより、舌の表面または裏面にあって舌と明るさの異なるものや舌周辺の影を検出することが可能になる。
【0068】
なお、斑点判定部305によるエッジ検出では、先の舌形状判定部304によってされたエッジ検出によって舌の輪郭より外側にあると判定された部分をエッジ検出の対象から除去してもよい。このように構成すれば、舌画像の背景色によらず閾値を設定し、舌表面または裏面上にあるものを高精度に検出することができる。
歯痕判定部306は、例えば、色判定部302及び色分布判定部303によって舌の比較的周辺の色であると判定された色よりわずかに低い明るさを閾値にして舌画像データのエッジ検出をする。このようにすれば、舌周辺の歯痕が黒、舌表面が白と判定され、歯痕を検出することができる。
【0069】
ねじれ判定部307は、舌形状判定部304による舌の輪郭検出に使われたエッジ検出の結果に基づいて舌のねじれを検出することができる。また、舌表面の色よりわずかに低い明るさを閾値にしてエッジ検出し、舌周辺にできる影を検出してもよい。舌表面の影を検出し、影の左右非対称の程度が予め定められている正常の範囲から外れている場合、ねじれ判定部307は、舌にねじれがあると判定して舌診結果判定部308に出力する(ステップS905)。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態の舌診システムの概念を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態の舌診装置の概観を説明するための図である。
【図3】図2に示した舌診装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態の舌診装置のガイド部を例示した図である。
【図5】本発明の一実施形態の色分布の判定を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態のエッジ検出を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態の舌のねじれや歯痕を検出する方法について説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態の舌診データを説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態の舌診装置によって実行される舌診プログラムを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 サーバ、2,4 薬局、3 医療機関、5 医師団
101 舌診装置、201 ミラー、203 色基準板、204 カメラ
205 ディスプレイ、206 操作ボタン、207 キーボード
208 軸、302 色判定部、303 色分布判定部、304 舌形状判定部
305 斑点判定部、306 歯痕判定部、307 ねじれ判定部
308 舌診結果判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌の状態を表すデータを取得する舌診装置と、
前記舌診装置とネットワークを介して接続され、舌診装置との間でデータを送受信することができるサーバ装置と、
を備えた舌診システムであって、
前記舌診装置は、
舌を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出手段と、
前記状態パラメータ抽出手段によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診手段と、
を備え、
前記舌診手段によって抽出された舌診結果を前記ネットワークによって前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、
前記舌診手段によって抽出された舌診結果を前記ネットワークによって受信し、受信された舌診結果を外部に出力する舌診結果出力手段を備えることを特徴とする舌診システム。
【請求項2】
舌の状態を表すデータを取得する舌診装置と、
前記舌診装置とネットワークを介して接続され、舌診装置との間でデータを送受信することができるサーバ装置と、
を備えた舌診システムであって、
前記舌診装置は、
舌を撮影する撮影手段を備え、
前記撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データを前記ネットワークによって送信し、
前記サーバ装置は、
前記撮影手段によって撮影された画像データ前記ネットワークによって受信し、受信された画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出手段と、
前記状態パラメータ抽出手段によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診手段と、
前記舌診手段によって抽出された舌診結果を、外部に出力する舌診結果出力手段を備えることを特徴とする舌診システム。
【請求項3】
舌を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出手段と、
前記状態パラメータ抽出手段によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診手段と、
前記舌診手段によって抽出された舌診結果を外部に出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする舌診装置。
【請求項4】
所定の色を有し、前記撮影手段によって撮影される色基準部材をさらに有し、
前記状態パラメータ抽出手段は、
前記撮影手段が撮影した色基準部材の画像データに基づいて、前記撮影手段によって撮影された舌画像データの色を補正する色補正手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の舌診装置。
【請求項5】
前記状態パラメータ抽出手段は、
前記撮影手段によって撮影された画像データの色を、当該色のR,G,Bの組成比によって漢方医学に基づく色種別のいずれかに分類し、分類された色種別を状態パラメータとすることを特徴とする請求項3または4に記載の舌診装置。
【請求項6】
前記状態パラメータ抽出手段は、
前記舌画像データ中の画像をエッジ検出して画像の輪郭を抽出し、抽出された輪郭に基づいて舌の形状、歯痕、舌のねじれを抽出することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の舌診装置。
【請求項7】
舌を撮影する撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出ステップと、
前記状態パラメータ抽出ステップにおいて抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診ステップと、
前記舌診ステップにおいて抽出された舌診結果を外部に出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする舌診方法。
【請求項8】
コンピュータに、
舌を撮影する撮影手段によって撮影された舌の画像の舌画像データから、舌の形状、舌表面の色、当該色が検出された範囲の規模及び分布のうちの少なくとも1つに基づくパラメータである状態パラメータを抽出する状態パラメータ抽出機能と、
前記状態パラメータ抽出機能によって抽出された状態パラメータを、予め記憶されている状態パラメータと舌診結果とを対応付けた舌診データと比較して、前記状態パラメータに対応する舌診結果を抽出する舌診機能と、
前記舌診機能によって抽出された舌診結果を外部に出力する出力機能と、
を実現させることを特徴とする舌診プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28058(P2009−28058A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191848(P2007−191848)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(507249890)株式会社saieco (2)
【Fターム(参考)】