説明

航空交通制御システムに用いられる情報処理装置

【課題】本来のシステムによる警報出力が不能な状態となったとしても、簡易方式によって警報監視を継続して警報出力することを可能にする。
【解決手段】情報処理装置14において、レーダ装置10からレーダ情報を取得するレーダ情報取得部21を設ける。制御部20は、レーダ情報取得部21により取得されたレーダ情報をもとに、航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置を表示制御部35を通じて表示装置37において表示させる。衝突判定処理部24は、制御部20により表示される航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する。制御部20は、衝突判定処理部24により衝突の可能性があると判定された場合に警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機についての衝突警報(CA:conflict Alert)を出力する航空交通制御システムに用いられる情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、航空交通制御(管制)システムは、飛行中の航空機について、他の航空機、障害物、および地上(建造物なども含む)との衝突を防止するため、レーダ装置(航空管制レーダシステム)から航空機の位置を示すレーダ情報を入力し、このレーダ情報をもとに航空機を追跡し、衝突の可能性のある対象物である他の航空機、障害物、および地上の位置情報、高さ、スピードをもとに衝突を予測し、衝突が予測される場合には衝突警報を出力する。これにより、安全な航空交通制御が可能となる。
【0003】
例えば、従来の航空交通制御システムには、飛行計画データを処理する飛行計画データプロセッサ、適切に処理した情報を与え1つ以上のディスプレイ上に表示させる制御パネルプロセッサ、特定の方法でターゲットデータ信号を処理するレーダデータプロセッサ、および衝突警報(CA)プロセッサを含む構成とすることで衝突警報の出力を可能にしている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された航空交通制御システムでは、CAプロセッサとして、信頼性高く侵入の予測を行う操縦衝突警報予測プロセッサ、アラームを発した対象の航空機が方向転換し始めるまで衝突警報を維持する近接衝突プロセッサ、非操縦航空機に関連するデータを処理する線形衝突予測プロセッサを含んでいる。
【特許文献1】特表2003−507826公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来の航空交通制御システムでは、衝突警報の出力を、前述したような各種プロセッサを搭載し、所定の衝突監視アルゴリズムにより衝突を予測することにより実現していた。
【0006】
しかしながら、航空交通制御システムに搭載されたプロセッサに障害が発生した場合、衝突警報の出力ができなくなってしまう。このため、プロセッサに障害が発生するなどして本来の警報出力ができない状態となったとしても、警報監視を継続することが望まれていた。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、本来のシステムによる警報出力が不能な状態となったとしても、簡易方式によって警報監視を継続して警報出力することが可能な航空交通制御システムに用いられる情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、レーダ装置により測定された航空機の位置に関するレーダ情報をもとに、航空機についての衝突警報を出力する航空交通制御システムに用いられる情報処理装置において、前記レーダ装置からレーダ情報を取得するレーダ情報取得手段と、前記レーダ情報取得手段により取得されたレーダ情報をもとに、航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置を表示する表示手段と、前記表示手段により表示される航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する衝突判定手段と、前記衝突判定手段により衝突の可能性があると判定された場合に警報を出力する警報出力手段とを具備するようにしたものである。
【0009】
また、前記衝突判定手段は、水平方向における衝突を判定する水平衝突判定手段と、垂直方向における衝突を判定する垂直衝突判定手段とを含み、前記警報出力手段は、前記水平衝突判定手段と前記垂直衝突判定手段の判定結果に基づいて警報を出力することを特徴とする。
【0010】
さらに、前記表示手段は、水平方向における前記航空機と前記対象物の位置を表示する第1の表示形態と、垂直方向における前記航空機と前記対象物の位置を表示する第2の表示形態の何れかに切り替えることができ、前記水平衝突判定手段と前記垂直衝突判定手段は、前記表示手段により前記第1の表示形態と前記第2の表示形態の何れに切り替えられているかに関係なく衝突の判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
したがって本発明によれば、航空交通制御システムにおいて通常動作モード時に実行される衝突監視アルゴリズムを用いた航空機の追尾、移動予測、衝突判定ができず、本来のシステムによる警報出力が不能な状態となったとしても、バイパスモード時にレーダ装置からレーダ情報を直接取得し、このレーダ情報をもとに表示される航空機と衝突の可能性のある対象物の位置が重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する簡易方式によって警報監視を継続して警報出力することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態における航空交通制御システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、航空交通制御システムには、レーダ装置10(航空管制レーダシステム)、及び情報処理装置14が含まれている。
【0013】
レーダ装置10は、航空機の位置を測定し、この航空機の位置に関するレーダ情報を出力する。レーダ装置10は、例えば複数のレーダシステムを含むものとし、ネットワークによりレーダ情報処理装置12、及び情報処理装置14と接続されている。通常の動作モードでは、レーダ情報処理装置12によりレーダ装置10から出力されるレーダ情報をもとにした航空交通制御が実行される。また、レーダ情報処理装置12に障害が発生した場合などにおけるバイパスモードでは、レーダ装置10から出力されるレーダ情報が直接、情報処理装置14に取得されて、簡易方式による航空交通制御(警報出力)が実行される。
【0014】
レーダ情報処理装置12は、コンピュータシステムにより実現されるもので、レーダ装置10から航空機の位置に関するレーダ情報を入力して、このレーダ情報をもとにした追尾処理により求められる位置情報、所定時間後(n秒後)の予測位置、航空機のスピードなどを用いた衝突監視アルゴリズムを用いた処理により航空管制を行い、衝突の可能性があると判定された場合に情報処理装置14を通じて警報出力を行う。
【0015】
情報処理装置14は、例えばパーソナルコンピュータなどにより実現されるもので、通常動作モードでは、レーダ情報処理装置12におけるレーダ情報処理結果の出力(表示出力、操作出力等)、レーダ情報処理装置12への入力装置として使用される。また、レーダ情報処理装置12に障害が発生した場合のバイパスモード時には、レーダ装置10からレーダ情報を直接入力し、このレーダ情報を用いた簡易方式による警報監視を実行する。
【0016】
図2は、図1に示す情報処理装置14の詳細な機能構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、情報処理装置14には、制御部20、レーダ情報取得部21、レーダ情報記憶部22、衝突判定処理部24、表示制御部35、表示メモリ36、表示装置37、及び入力装置39が含まれる。
【0018】
制御部20は、情報処理装置14全体の制御を司るもので、記憶媒体(メモリ、ハードディスク等)に記憶されたプログラムをCPUにより実行することで実現される。
【0019】
レーダ情報取得部21は、レーダ情報処理装置12に障害等が発生して、航空交通制御システムがバイパスモードに移行された場合に、レーダ装置10から出力されるレーダ情報をネットワークを通じて直接取得する。
【0020】
レーダ情報記憶部22は、レーダ情報取得部21により取得されたレーダ情報を記憶する。
【0021】
衝突判定処理部24は、レーダ情報記憶部22に記憶されたレーダ情報をもとに航空機についての衝突判定を行うもので、航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置が表示される際に、表示される航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する。対象物としては、他の航空機、建築物等の障害物、地上(山地など)が含まれるものとし、位置が変化しない建築物や地形に関するデータが予め記憶されているものとする。
【0022】
衝突判定処理部24には、水平表示制御部25、水平表示ビットマップ26、水平衝突判定部27、垂直表示制御部30、垂直表示ビットマップ31、垂直衝突判定部32、警告表示制御部33の機能が設けられている。
【0023】
水平表示制御部25は、レーダ情報記憶部22に記憶されたレーダ情報をもとに、水平方向における航空機と対象物の位置を表すデータを水平表示ビットマップ26に展開記憶させる。水平表示ビットマップ26は、表示メモリ36と同じ座標空間を有している。水平表示制御部25は、制御部20の制御により航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置を表示するために表示メモリ36に記憶される表示データと同様のデータを水平表示ビットマップ26に記憶させる。
【0024】
水平衝突判定部27は、水平表示制御部25により水平表示ビットマップ26に記憶されるデータをもとに、水平方向において、航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する。
【0025】
垂直表示制御部30は、レーダ情報記憶部22に記憶されたレーダ情報をもとに、垂直方向における航空機と対象物の位置を表すデータを垂直表示ビットマップ31に展開記憶させる。垂直表示ビットマップ31は、表示メモリ36と同じ座標空間を有している。垂直表示制御部30は、制御部20の制御により航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置を表示するために表示メモリ36に記憶される表示データと同様のデータを垂直表示ビットマップ31に記憶させる。
【0026】
垂直衝突判定部32は、垂直表示制御部30により垂直表示ビットマップ31に記憶されるデータをもとに、垂直方向において、航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する。
【0027】
警告表示制御部33は、水平衝突判定部27と垂直衝突判定部32の判定結果に基づいて、衝突の可能性があると判定された場合に制御部20に通知して警報を出力させる。例えば、水平衝突判定部27と垂直衝突判定部32の両方において衝突の可能性があると判定された場合に警報出力させても良いし、何れか一方において衝突の可能性があると判定された場合に、その判定がされた水平方向あるいは垂直方向において衝突の可能性があることを警報出力することもできる。
【0028】
水平表示ビットマップ26と垂直表示ビットマップ31には、表示メモリ36に水平方向あるいは垂直方向の画像を表示する際の表示データと同様のデータが展開記憶されることから、表示装置37において表示される航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性が判定されることになる。
【0029】
表示制御部35は、制御部20の制御のもとで表示制御を行うもので、表示メモリ36に記憶された表示データに応じた画像を表示装置37において表示させる。制御部20は、例えば入力装置39から入力される表示形態の切り替え要求に応じて、水平方向における航空機と対象物の位置を表示する第1の表示形態と、垂直方向における航空機と対象物の位置を表示する第2の表示形態の何れかに切り替える。表示制御部35は、制御部20による表示形態の切り替えに応じて表示データを表示メモリ36に記憶させ、第1の表示形態あるいは第2の表示形態により、航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置を表示する。この場合、衝突判定処理部24では、制御部20による表示形の切り替えに関係なく、水平方向と垂直方向のそれぞれについて衝突の判定が行われる。従って、例えば第1の表示形態により水平方向における航空機と対象物の位置を表示している間に、垂直方向で衝突の可能性があると判定された場合であっても警報出力することができる。
【0030】
表示メモリ36は、表示装置37により表示される画像の表示データが記憶される。
【0031】
表示装置37は、CRT(cathode-ray tube)あるいはLCD(Liquid Crystal Display)などから構成されるもので、表示制御部35の制御のもとで表示メモリ36に記憶された表示データに応じた画像を表示する。
【0032】
入力装置39は、キーボードやポインティングデバイスなどであり、各種の入力操作が行われる。
【0033】
次に、本実施形態における航空交通制御システムの動作について説明する。
【0034】
航空交通制御システムは、通常の動作モードにおいては、レーダ情報処理装置12がレーダ装置10からレーダ情報を取得して、衝突監視アルゴリズムに従い衝突予測を行い、衝突の可能があると判定された場合に情報処理装置14を通じて衝突警報を出力する。
【0035】
一方、レーダ情報処理装置12に障害等が発生するなどして、レーダ情報処理装置12による衝突監視を継続することができなくなった場合にはバイパスモードに移行される。
【0036】
バイパスモードに移行されると情報処理装置14は、レーダ情報取得部21によって、ネットワークを通じてレーダ装置10からのレーダ情報を直接取得する。
【0037】
情報処理装置14の制御部20は、レーダ情報取得部21により取得されたレーダ情報をもとにして、監視対象とする航空機や、航空機と衝突の可能性がある対象物などを、表示制御部35を通じて表示装置37において表示させる。対象物としては、例えば他の航空機、建築物等の障害物、地上(山地など)が含まれる。
【0038】
衝突判定処理部24は、制御部20の制御により表示される画像と対応して、画像中で表示される航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する。
【0039】
以下、衝突判定処理部24による衝突判定処理について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、水平方向での衝突を判定する場合を対象として説明する。
【0040】
図4(a)には、制御部20の制御により表示装置37に表示される画像の一例を示している。図4(a)は、2つの航空機の位置を表す表示がされている例を示すもので、2つの2重円がそれぞれの航空機の位置を表している。ここでは、中心の円が航空機を示し、外側の円が航空機の所定時間後(例えばn秒後)の到達可能範囲を示している。到達可能範囲は、航空機に関係なく固定として、レーダ情報をもとにした速度算出などを行わないものとする。所定時間は、衝突の可能性があることを警告通知した場合に、十分に衝突回避が可能な時間とする。また、航空機の速度を例えば最速の航空機の速度として(あるいは複数の航空機の速度の平均とするなど、他の予め決められた速度としても良い)、所定時間後の到達可能範囲が決められているものとする。
【0041】
水平表示制御部25は、図4(a)に示す画像の表示データが表示メモリ36に記憶されるのと同様にして、水平表示ビットマップ26に対して表示される航空機の位置を表すオブジェクト(図4に示す例では2重円)の位置に応じて所定のデータを展開記憶させる(ステップA1)。
【0042】
図5(a)には、水平表示ビットマップ26に記憶されるデータを概念的に示す図である。例えば、水平表示制御部25は、航空機の位置を示す2重円の表示位置と一致させて、水平表示ビットマップ26に所定のデータとして“1”を記憶させる(図5中のハッチングで示す範囲)。
【0043】
水平衝突判定部27は、水平表示ビットマップ26に記憶されたデータについて、所定のデータ(“1”)が同じ位置に展開されているかを判定する(ステップA2)。すなわち、航空機と対象物(ここでは航空機)の位置とが重なるか否かを判定する。
【0044】
図5(a)に示す例では、2つの航空機の位置を示す所定のデータとが重なり合わないため(ステップA3、No)、警告表示制御部33は、制御部20に対して警報出力を要求しない。
【0045】
次に、所定時間が経過したことにより、レーダ装置10から取得されたレーダ情報をもとにした表示装置37における表示が図4(b)に示すように変化したものとする。
【0046】
この場合、水平表示制御部25は、図4(b)に示す画像の表示データが表示メモリ36に記憶されるのと同様にして、水平表示ビットマップ26に対して表示される航空機の位置を表すオブジェクトの位置に応じて所定のデータを展開記憶させる(ステップA1)。
【0047】
図5(b)には、所定時間が経過した後に、水平表示ビットマップ26に記憶されるデータを概念的に示す図である。
【0048】
水平衝突判定部27は、水平表示ビットマップ26に記憶されたデータについて、所定のデータ(“1”)が同じ位置に展開されているか、すなわち2つの航空機の位置が重なるか否かを判定する(ステップA2)。
【0049】
図5(b)に示す例では、2つの航空機の位置を示す所定のデータとが重なり合っていることが検出されるため(ステップA3、Yes)、警告表示制御部33は、水平衝突判定部27による判定結果に応じて、制御部20に対して警報出力を要求する(ステップA4)。
【0050】
制御部20は、警告表示制御部33からの警報出力の要求に応じて、表示制御部35を通じて表示装置37において警告表示を出力させる。
【0051】
次に、垂直方向での衝突を判定する場合について説明する。
図6(a)には、制御部20の制御により表示装置37に表示される画像の一例を示している。図6(a)は、航空機と地上の建築物の位置を表す表示がされている例を示すもので、2重円が航空機の位置を表し、矩形枠が建築物の位置を表している。建築物(対象物)は、位置や大きさが既知であり、そのデータが予め記憶されているものとする。制御部20は、この建築物に関するデータをもとにして表示を制御する。
【0052】
垂直表示制御部30は、図6(a)に示す画像の表示データが表示メモリ36に記憶されるのと同様にして、垂直表示ビットマップ31に対して表示される航空機と建築物の位置を表すそれぞれのオブジェクト(図6に示す例では航空機は2重円、建築物は矩形枠)の位置に応じて所定のデータを展開記憶させる。(ステップA1)。
【0053】
図7(a)には、垂直表示ビットマップ31に記憶されるデータを概念的に示す図である。例えば、垂直表示制御部30は、航空機の位置を示す2重円の表示位置と、建築物の位置を示す矩形枠の位置と一致させて、垂直表示ビットマップ31に所定のデータとして“1”を記憶させる(図7中のハッチングで示す範囲)。
【0054】
垂直衝突判定部32は、垂直表示ビットマップ31に記憶されたデータについて、所定のデータ(“1”)が同じ位置に展開されているかを判定する(ステップA2)。すなわち、航空機と対象物(ここでは建築物)の位置とが重なるか否かを判定する。
【0055】
図7(a)に示す例では、航空機と建築物の位置を示す所定のデータが重なり合わないため(ステップA3、No)、警告表示制御部33は、制御部20に対して警報出力を要求しない。
【0056】
次に、所定時間が経過したことにより、レーダ装置10から取得されたレーダ情報をもとにした表示装置37における表示が図6(b)に示すように変化したものとする。すなわち、航空機が建築物の方向に飛行したものとする。
【0057】
この場合、垂直表示制御部30は、図6(b)に示す画像の表示データが表示メモリ36に記憶されるのと同様にして、垂直表示ビットマップ31に対して表示される航空機の位置を表すオブジェクトの位置に応じて所定のデータを展開記憶させる(ステップA1)。
【0058】
図7(b)には、所定時間が経過した後に、垂直表示ビットマップ31に記憶されるデータを概念的に示す図である。
【0059】
垂直衝突判定部32は、垂直表示ビットマップ31に記憶されたデータについて、所定のデータ(“1”)が同じ位置に展開されているか、すなわち航空機と建築物との位置が重なるか否かを判定する(ステップA2)。
【0060】
図7(b)に示す例では、航空機と建築物の位置を示す所定のデータとが重なり合っていることが検出されるため(ステップA3、Yes)、警告表示制御部33は、垂直衝突判定部32による判定結果に応じて、制御部20に対して警報出力を要求する(ステップA4)。
【0061】
制御部20は、警告表示制御部33からの警報出力の要求に応じて、表示制御部35を通じて表示装置37において警告表示を出力させる。
【0062】
なお、前述した説明では、水平衝突判定部27あるいは垂直衝突判定部32の何れか一方において、航空機と対象物とが衝突する可能性があると判定された場合に警告表示を出力させるものとしているが、警告表示制御部33は、水平衝突判定部27と垂直衝突判定部32の両方において、衝突する可能性があると判定された場合に制御部20に対して警告出力を要求するようにしても良い。
【0063】
何れの場合に警告出力すするかは、入力装置39からの指示により予め設定できるものとする。
【0064】
なお、制御部20は、表示装置37における表示を、例えば入力装置39からの指示に応じて、図4(a)(b)に示す水平方向における航空機と対象物の位置を表示する第1の表示形態と、図6(a)(b)に示す垂直方向における航空機と対象物の位置を表示する第2の表示形態の何れかに切り替えることができる。
【0065】
制御部20は、第1の表示形態と第2の表示形態の何れにより表示をしているかに関係なく、衝突判定処理部24(水平衝突判定部27、垂直衝突判定部32)の判定結果に基づいて警告出力を行うものとする。例えば、水平衝突判定部27と垂直衝突判定部32の両方で衝突する可能性があると判定された場合に警告出力する場合には、例えば第1の表示形態により図4(b)に示すように衝突の可能を示す表示をしていたとしても、垂直衝突判定部32により垂直方向では衝突しないと判定されている場合には警告表示をしない。
【0066】
このようにして、本実施形態における航空交通制御システムに用いられる情報処理装置14では、バイパスモード時にレーダ装置10から直接、レーダ情報を取得して、図4、図6に示すような簡易なレーダ画像を表示装置37において表示させることができる。そして、衝突判定処理部24において画像表示されるオブジェクト(航空機、対象物)の表示の重なりを判定するといった簡易な処理により、航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定することができる。これにより、レーダ情報処理装置12に障害が発生して本来の警報出力ができない状態となったとしても、レーダ情報処理装置12に比較して処理能力が低いパーソナルコンピュータなどにより実現される情報処理装置14を用いて、警報監視を継続して警報出力することが可能となる。
【0067】
なお本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態における航空交通制御システムの概略構成を示す図。
【図2】図1に示す情報処理装置14の詳細な機能構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態における衝突判定処理部24による衝突判定処理について説明するためのフローチャート。
【図4】本実施形態における制御部20の制御により表示装置37に表示される画像の一例を示す図。
【図5】本実施形態における水平表示ビットマップ26に記憶されるデータを概念的に示す図。
【図6】本実施形態における制御部20の制御により表示装置37に表示される画像の一例を示す図。
【図7】本実施形態における垂直表示ビットマップ31に記憶されるデータを概念的に示す図。
【符号の説明】
【0069】
10…レーダ装置、12…レーダ情報処理装置、14…情報処理装置、20…制御部、21…レーダ情報取得部、22…レーダ情報記憶部、24…衝突判定処理部、25…水平表示制御部、26…水平表示ビットマップ、27…水平衝突判定部、30…垂直表示制御部、31…垂直表示ビットマップ、32…垂直衝突判定部、33…警告表示制御部、35…表示制御部、36…表示メモリ、37…表示装置、39…入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置により測定された航空機の位置に関するレーダ情報をもとに、航空機についての衝突警報を出力する航空交通制御システムに用いられる情報処理装置において、
前記レーダ装置からレーダ情報を取得するレーダ情報取得手段と、
前記レーダ情報取得手段により取得されたレーダ情報をもとに、航空機と同航空機に対して衝突の可能性がある対象物の位置を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示される航空機と対象物の位置とが重なるか否かに基づいて航空機の対象物に対する衝突の可能性を判定する衝突判定手段と、
前記衝突判定手段により衝突の可能性があると判定された場合に警報を出力する警報出力手段と
を具備したことを特徴とする航空交通制御システムに用いられる情報処理装置。
【請求項2】
前記衝突判定手段は、
水平方向における衝突を判定する水平衝突判定手段と、
垂直方向における衝突を判定する垂直衝突判定手段とを含み、
前記警報出力手段は、前記水平衝突判定手段と前記垂直衝突判定手段の判定結果に基づいて警報を出力することを特徴とする請求項1記載の航空交通制御システムに用いられる情報処理装置。
【請求項3】
前記表示手段は、水平方向における前記航空機と前記対象物の位置を表示する第1の表示形態と、垂直方向における前記航空機と前記対象物の位置を表示する第2の表示形態の何れかに切り替えることができ、
前記水平衝突判定手段と前記垂直衝突判定手段は、前記表示手段により前記第1の表示形態と前記第2の表示形態の何れに切り替えられているかに関係なく衝突の判定を行うことを特徴とする請求項2記載の航空交通制御システムに用いられる情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−79938(P2007−79938A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266943(P2005−266943)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】