説明

航空用非可燃複合材料樹脂の組成物

【課題】航空用非可燃複合材料樹脂の組成物の提供。
【解決手段】航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、成分一、成分二、成分三、成分四の4種の成分を調合し製造し、成分一は、低分子量アルカリ性液体フェノール樹脂組成成分で、成分二は、二酸化シリコン粉末で、無機充填材料であり、加工作業性を改善し、難燃機能を増強することができ、成分三は、ヘキサメチレンテトラミン(Hexamethyleneteramine)で、低温加速固化の促進剤であり、固化成型の利便性を向上させ、成分四は、メタノールで、粘度調整の溶剤であり、作業の利便性を改善し、繊維/樹脂の含量比の制御に有利で、さらに航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、アルカリ性触媒-プレ重合型を用いるResole液体フェノール樹脂を主剤とし、さらに加工と難燃性能の要求に対応し、二酸化シリコン粉末と低温反応促進剤(ヘキサメチレンテトラミン)を添加し、メタノール溶剤により加工作業粘度を調整し、製造工程において樹脂ソークと含量のコントロールを容易とし、加熱固化プロセスにより、難燃特性に優れた複合材料構造を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空用非可燃複合材料樹脂の組成物に関し、特に航空内装材料に求められる低可燃性(FAA、60SEC Vertical Test)、低熱放射量(FAA、Heat Release Test)、低排煙密度の要求を満たすことができる航空用非可燃複合材料樹脂の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の高性能複合難燃材料は、通常はエポキシ樹脂を主体とし、難燃特性を満たすため、臭素化エポキシ樹脂、或いはさらに燃焼阻害剤である水酸化アルミニウム「A1(OH)3」、三酸化アンチモン「Sb2O3」、燐酸エステル類等を添加し、難燃特性を増強している。
【0003】
しかし、この特性は燃焼阻害効果のみを達成可能で、しかも印刷回路板、封入材料、建材、自動車部品等の電子製品及び一般製品にしか応用することができず、航空内装に求められる不燃、低排煙、低熱放射の特性を満たすことはできない。
フェノール樹脂は優良な難燃特性を備えるが、それはプレソーク加工、固化成型を用いるため、作業性が悪く、加工応用が困難である。
本発明は、従来の航空用非可燃複合材料の上記した欠点に鑑みてなされたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主要な目的は、航空内装材料に求められる低燃焼性、低熱放射量、低排煙密度の要求を満たすことができる航空用非可燃複合材料樹脂の組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は下記の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物を提供する。
航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は4種の成分を調合し製造する。
成分一は、低分子量アルカリ性液体フェノール樹脂組成成分で、
成分二は、二酸化シリコン粉末で、
成分三は、ヘキサメチレンテトラミン(Hexamethyleneteramine)で、
成分四は、メタノールである。
該4種の成分の比率は、100:0.5〜5:0.5〜4:0.5〜80である。
製造ステップは以下の7段階である。
ステップ1:成分一の一部と成分二を分散し、均一に混合する。
ステップ2:ステップ1の成分を成分一の残りに入れ、均一に撹拌する。
ステップ3:成分三を少量の成分四、或いは水で溶かし、ステップ2の組成中に加え、均一に撹拌する。
ステップ4:成分四をステップ3組成中に加え、均一に撹拌し、必要なソーク作業粘度或いは比重に調整する。
ステップ5:ステップ4の組成をプレソーク樹脂槽中に入れ、強化繊維(カーボンファイバー等)を浸し、プレソークファブリックを織製し、適当な技術条件に基づき、必要な繊維重量(例えば、100±3g/m2)及び樹脂重量含量比(例えば、33±2%)に制御する。
ステップ6:ステップ5の材料をオーブンに入れ、60〜90℃で2〜4時間焼き、残留メタノールを3%以下にまで低下させる。
ステップ7:必要な構造(例えばO2/902/O2/O2/902/O2/O2/902/O2/O2/902/O2)に基づき、140〜200℃で固化させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、航空内装難燃構造物件の製造に特に適した、優れた難燃特性を備える複合材料構造を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態による航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、成分一、成分二、成分三、成分四を調合し製造する。
成分一は低分子量アルカリ性液体フェノール樹脂組成成分で、難燃樹脂の主成分である。
成分二は、二酸化シリコン粉末で、無機充填材料であり、加工作業性を改善し、難燃機能を増強することができる。
成分三は、ヘキサメチレンテトラミン(Hexamethyleneteramine)で、低温下で固化を加速する促進剤であり、固化成型の利便性を向上させることができる。
成分四は、メタノールで、ソーク加工の粘度調整に便利な溶剤であり、作業の利便性を改善し、繊維/樹脂の含量比の制御に有利である。
4種の成分の比率は、100:0.5〜5:0.5〜4:0.5〜80である。
本発明の製造ステップは、4種の成分の最適比率の一実施形態を以下表1に示す。
【0008】
【表1】

【0009】
ステップ1:成分一の30partsと、成分二の3partsを、先にスリーローラーにより分散し、均一に混合する。
ステップ2:ステップ1の成分を成分一の残りの70parts中に入れ、均一に撹拌する。
ステップ3:成分三の2partsを少量のメタノール、或いは水で溶かし、ステップ2の組成中に加え、均一に撹拌する。
ステップ4:成分四の約30partsをステップ3中(この分量は、強化繊維の種類及びソーク後の樹脂固体成分比率の要求に応じて調整する)に加え、均一に撹拌し、ソーク作業に必要な粘度或いは比重に調整する。
ステップ5:ステップ4の組成をプレソーク樹脂槽中に入れ、カーボンファイバートウ(Tow)を浸し、プレソークファブリックを織製し、繊維重量を100±3g/m2、樹脂重量含量比を33±2%)に制御する。
ステップ6:ステップ5の材料を約70℃のオーブンに入れ3時間焼き、残留メタノールを3%以下にまで低下させる。
ステップ7:プレソークファブリックを(O2/902/O2/O2/902/O2/O2/902/O2/O2/902/O2)に基づき、計24層の折畳み構造板材とし、170℃/50分で固化させる。
このようにして、航空内装難燃構造物件の製造に特に適した、優れた難燃特性を備える複合材料構造を製造する。
【0010】
本発明の実施形態による材料は、アルカリ性触媒プレ重合型のResole液体フェノール樹脂を主剤とし、さらに加工と難燃性能の要求に対応し、二酸化シリコン粉末と低温反応促進剤(ヘキサメチレンテトラミン(Hexamethyleneteramine)を添加し、メタノール溶剤により加工作業粘度を調整する。このようにして製造工程において樹脂ソークと含量のコントロールが容易となる。
【0011】
本発明は研究開発の完成後、本発明の一実施形態による航空用非可燃複合材料樹脂の組成物を、米国The Govmark Organization, Inc.に送り、燃焼試験を行った。
その試験に関するデータは以下表2、表3、表4に示する。表2は60秒垂直燃焼試験データ(米国The Govmark Organization, Inc.)。表3は熱放射量テストデータ(米国The Govmark Organization, Inc.)。表4は排煙密度テストデータ(米国The Govmark Organization, Inc.)。
【0012】
【表2】

【0013】
【表3】

【0014】
【表4】

【0015】
以上の結果から明らかなように、本発明の一実施形態による航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、航空内装材料に求められる低可燃性(FAA、60SEC Vertical Test)、低熱放射量(FAA、Heat Release Test)、低排煙密度(FAA、Smoke Density Test)の要求を満たすことができる。
本発明の実施形態による航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、サンプルを米国The Govmark Organization, Inc.に送り、60秒垂直燃焼、熱放射量、排煙密度のテストを行ったが、何れも優れた難燃結果を示し、実用性と進歩性を備えると認定するに足るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空用非可燃複合材料樹脂の組成物は、以下の4種の成分を調合して製造し、
成分一は、低分子量アルカリ性液体フェノール樹脂組成成分で、
成分二は、二酸化シリコン粉末で、
成分三は、ヘキサメチレンテトラミンで、
成分四は、メタノールで、
前記4種の成分の比率は、100:0.5〜5:0.5〜4:0.5〜80で、
その製造ステップは以下の7段階で、
ステップ1:成分一の一部と成分二を分散し、均一に混合し、
ステップ2:ステップ1の成分を成分一の残りに入れ、均一に撹拌し、
ステップ3:成分三を少量の成分四、或いは水で溶かし、ステップ2の組成中に加え、均一に撹拌し、
ステップ4:成分四をステップ3組成中に加え、均一に撹拌し、必要なソーク作業粘度或いは比重に調整し、
ステップ5:ステップ4の組成をプレソーク樹脂槽中に入れ、強化繊維を浸し、プレソークファブリックを織製し、適当な技術条件に基づき、必要な繊維重量及び樹脂重量含量比に制御し、
ステップ6:ステップ5の材料をオーブンに入れ焼き、残留メタノール含量を3%以下にまで低下させ、
ステップ7:製品が求める構造に基づき重ね層にした後、相応のモールド中に入れ、140〜200℃で固化、成型することを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項2】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記ステップ1では、成分一の30partsと、成分二の3partsの使用が最適であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項3】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記ステップ2では、成分一の70partsの使用が最適であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項4】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記ステップ3では、成分三の2partsの使用が最適であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項5】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記ステップ4では、成分四の30partsの使用が最適であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項6】
請求項5記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記成分四の分量は、強化繊維の種類及びソーク後の樹脂固体成分比率の要求に応じて調整することを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項7】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記ステップ6のオーブンの温度は約70℃で、しかも時間は3時間が最適であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項8】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記成分一の低分子量アルカリ性液体フェノール樹脂組成成分は、フェノール及びホルムアルデヒドを、アルカリ触媒を用い合成したResole液体フェノール樹脂組成成分であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項9】
請求項8記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記成分一の低分子量アルカリ性液体フェノール樹脂組成成分において、その粘度は500〜1100CPSで、重量分子量は400〜800で、PH値は6〜7が最適であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項10】
請求項1記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記ステップ5で用いる強化繊維は、グラスファイバー、カーボンファイバー、ケブラーファイバー、或いはその混合繊維を使用可能であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。
【請求項11】
請求項10記載の航空用非可燃複合材料樹脂の組成物において、前記強化繊維の形態は、単方向性のロービング或いはトウを採用可能で、またクロス、ブレード、多軸編織物を含む編織形態の各種織物を採用可能であることを特徴とする航空用非可燃複合材料樹脂の組成物。

【公開番号】特開2010−95570(P2010−95570A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265436(P2008−265436)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(508308293)台湾穗高工業股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】