航行支援装置、及びキャリアセンス方式
【課題】正確にキャリアセンスを行うことができる方式を提供するとともに、キャリアセンスに要する時間の短縮化を図り、クラスAによる送信とクラスBによる送信との衝突を防止する。
【解決手段】船舶自動識別システム(AIS)に使用される航行支援装置であって、他局と同期したタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、前記メモリに記憶された情報と受信したベースバンド信号のIQ平面上における挙動の監視結果とを用いて、前記同期タイミング信号で画定される所定のタイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部を備え、前記信号有無判定部の判定に基づいて、自局の情報信号を他局に送信する。なお、受信したベースバンド信号のIQ平面上の挙動監視は、パターン認識を行うことにより実現でき、例えば、部分空間法やサポートベクタマシン、或いはニューラルネットワーク等の手法を用いることができる。
【解決手段】船舶自動識別システム(AIS)に使用される航行支援装置であって、他局と同期したタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、前記メモリに記憶された情報と受信したベースバンド信号のIQ平面上における挙動の監視結果とを用いて、前記同期タイミング信号で画定される所定のタイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部を備え、前記信号有無判定部の判定に基づいて、自局の情報信号を他局に送信する。なお、受信したベースバンド信号のIQ平面上の挙動監視は、パターン認識を行うことにより実現でき、例えば、部分空間法やサポートベクタマシン、或いはニューラルネットワーク等の手法を用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアセンス方式に関し、例えば、船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)のクラスB方式で使用する通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶航行業務(VTS)の合理化、並びに船舶の衝突予防向上などの目的から、船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)(以下AIS と言う。)がシステム化され、2002年からSOLAS条約船への搭載が義務化がされている。
【0003】
AIS は、各船舶にAIS 装置を搭載装備し、自船の船名、位置、運動状態、大きさ(長さ、幅)、種類、積載物、喫水、目的地などの情報を放送すると同時に、周辺船舶が同様に放送する当該情報を受信することにより、自船周辺の船舶情報を入手できるシステムである。このAIS を用いることによって船舶の存在確認と併せて、レーダでは困難であった船名、船の大きさ(長さ、幅)、種類、積載物、喫水、目的地などの情報も確認することが可能となる。
【0004】
AISは、その通信に位相変調された信号が用いられており、VHF帯の2つの周波数チャンネルが割り当てられている。また、AISは、通信相互のぶつかり合い(衝突)は避けるために通信方式が予め決められている。通信方式としては、SOLAS条約船に搭載されているクラスA方式と、非SOLAS条約船への搭載が予定されているクラスB方式が存在する。
【0005】
クラスA方式はSOTDMA(Self Organized Time Division Multiple Access)方式が採用されている。この方式では1分間を1フレームとして1フレームを2250個のタイムスロットに分割する。1スロットの長さは26.7msとなり、各船舶はこのスロットに情報を載せて送信を行う。
【0006】
特に、クラスA方式では、自船情報とスロットの予約情報を同時に送信することを特徴としている(特許文献1)。例えば、船舶A、船舶B、船舶Cが通信する場合を想定すると、船舶Aが、自船の情報と次に送信するスロットの予約情報を1パッケージにして送信する。船舶Bは、船舶Aの予約したスロットを避けながら、自船の情報と次に送信するスロットの予約情報を送信する。船舶Cは、船舶Aと船舶Bの予約したスロットを避けながら、自船の情報と次に送信するスロットの予約情報を送信する。これらを次々に繰り返していき、スロットが衝突しないように、それぞれの船舶が自船の情報とスロットの予約情報を送信しながら互いに通信する。
【0007】
このようなSOTDMA通信を行うためには、全ての局がタイムスロットの時刻を正確に合わせなければならない。このため、AISではGPS(Global Positioning System)等の衛星航法測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)受信機を内蔵し、その受信信号から正確な1秒パルス(PPS:Pulse Per Second)を取り出し、全ての局がこの1秒パルスに同期するようになっている(特許文献1)。
【0008】
一方で、非SOLAS条約船への搭載が予定されているクラスB方式には、GNSS受信機を搭載しない船舶でも使用できる安価型のAISとして、CSTDMA(Carrier-Sense Time Division Multiple Access)方式を用いたものがある(以下、「クラスB方式(CS)」と称する)。
【0009】
クラスB方式(CS)では、クラスA局の送信スケジュールを妨害することがないように、クラスA局(通常SOLAS条約船に搭載されている無線局)による送信をキャリアセンスにより監視し、その送信電波(クラスA局から送信された情報信号)が存在しないことを確認した後、自らの送信を行う。
【0010】
具体的には、クラスB方式(CS)では次の(1)から(5)の処理が行われる。
(1)他局を非同期に受信することで(GPS同期している)クラスA局を見つける。
(2)見つけたクラスA局のビットタイミングから、その局が有しているタイムベースを逆算する。
(3)逆算したタイムベースを使って、キャリアセンスを行う将来の10個のタイムスロット(以下、候補スロットと言う。)を選択する。
(4)自局が送信したい(ランダムに選択された)候補スロットの先頭から約2msをキャリアセンスする。
(5)キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号がないと判断した時には、その直後に自局の送信を行う。
(6)キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号が存在すると判断した時には、そのスロットでの送信は放棄し、次の候補スロットまで待ってそこで再試行する。
【特許文献1】特表平07−501879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
クラスB方式(CS)ではキャリアセンスに供する時間幅が約2msと短く、この間にクラスA局の送信の有無を判断しなくてはならない。しかしながら、この約2msという期間で信号の有無を正確に判断するための感度を保つことは、スロット全体(26.7ms)を受信して信号の有無を判断する場合に比べて非常に困難である。なお、フィルタを狭帯域に設計することによって感度を上げることはできるが、このようにフィルタを狭帯域に設計すると群遅延が発生するため処理できるビット数がさらに減ってしまうというジレンマがある。
【0012】
また、キャリアセンスの具体的手法として通常は電波強度を計測する方式が考えられるが、ノイズレベルが平均的に高い場合や突発的なノイズが存在する場合には、送信ありと誤判断してしまう可能性があり、約2msという短い期間でクラスA局の送信の有無を常に正確に判断することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、正確にキャリアセンスを行うことができる方式を提供するとともに、キャリアセンスに要する時間の短縮化を図り、クラスAによる送信とクラスB(CS)による送信との衝突を防止することができる航行支援装置、及びキャリアセンス方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明にかかる航行支援装置は、他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、受信部で受信した信号から得られる信号強度の測定値と前記メモリに記憶された情報に基づいて決定される閾値とを比較することにより、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで、自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる航行支援装置は、他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする。この信号有無判定部によるパターン認識の手法としては、部分空間法、サポートベクタマシン、或いはニューラルネットワークなどを用いたものが考えられる。
【0016】
また、本発明にかかる航行支援装置は、前記メモリに記憶された情報に基づいて、自局に関する情報を送信する候補となる、候補スロットを選択する候補スロット選択部を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる航行支援装置は、前記送信部によって自局に関する情報を送信しない場合に、前記信号有無判定部がスロット全体に亘って情報信号が存在するか否かを検証し、得られた情報を過去のタイムスロットの使用状況に関する情報として前記メモリに記憶することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる航行支援装置は、衛星からの測位用信号を受信する測位用信号受信部と、前記測位用信号に基づいて測位演算を行い、正確な時刻信号を得る測位演算部とを備え、前記基準タイミング発生部は、前記測位演算部から得られる時刻信号に基づいて、同期タイミング信号を生成することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかるキャリアセンス方式は、信号を受信する信号受信部と、前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果に基づいて受信信号が情報信号であるか否かの判定を行う信号有無判定部とを備えることを特徴とする。この信号有無判定部によるパターン認識の手法としては、部分空間法、サポートベクタマシン、或いはニューラルネットワークなどを用いたものが考えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリを設け、受信部で受信した信号から得られる信号強度と過去のタイムスロットの使用状況に基づいて決定された閾値とを比較することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定するようにしたため、キャリアセンスによるクラスA局の送信監視をより正確に行うことができ、クラスA局の送信と衝突するリスクを避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0021】
また、本発明によれば、過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、自局に関する情報を送信する候補スロットを選択するようにしたことにより、クラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0022】
また、本発明によれば、部分空間法、サポートベクタマシン、或いはニューラルネットワークなどを用いて受信した信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行うことにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定を行うことが可能になる。これにより、受信信号の信号強度だけに頼らないで変調信号の存在についてのキャリアセンスとその判定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の各実施の形態では、本発明による航行支援装置が、船舶自動識別システム(AIS)におけるクラスB方式(CS)のAIS受信装置であるものとする。以下に、本発明の内容を、図面を参照しながら説明する。なお、各実施の形態では、本発明の特徴部分である他局の信号の有無を判定するキャリアセンスの方式を中心に説明し、船舶自動識別システム(AIS)で行われる通常の処理内容については説明を省略する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図1において、本発明の実施の形態1による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部3と、メモリ4と、候補スロット選択部5と、送信部6とからなる。
【0025】
AIS信号受信部1は、他船やブイ等の移動局あるいは地上に設置された固定局から特定の周波数帯で送信されるAIS信号をAISアンテナで受信し、受信した信号を基準タイミング発生器2、及び信号有無判定部3に出力する。
【0026】
基準タイミング発生部2は、他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成するものである。基準タイミング発生部2は、他局を非同期に受信した信号をAIS信号受信部1から得ることにより、GPSに同期しているクラスA局を見つけ、見つけたクラスA局のビットタイミングからその局が有しているタイムベースを逆算して、クラスA局のタイムベースに同期する同期タイミング信号を生成する。そして、この生成された同期タイミング信号を用いることにより、自身のタイムベースを他船等に搭載された航行支援装置のタイムベースと同期させ、他局と時刻同期したタイムスロットを用いて他局との通信を行う。これにより、GPSを搭載していない船舶等においても他局との通信を行うことが可能になる。
【0027】
信号有無判定部3は、AIS信号受信部1で受信したAIS信号と、メモリ4に記憶されているタイムスロットの過去の使用状況に関する情報とを用いて、同期タイミング信号で画定されるタイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1による航行支援装置の信号有無判定部の詳細な構成を示すブロック図である。
図2において、信号有無判定部3は、A/D変換回路301と、ベースバンド復調回路302と、信号レベル検出回路303と、信号有無判定回路304とからなる。
【0029】
A/D変換回路301は、AIS信号受信部1で受信した信号をデジタルデータに変換する。べースバンド復調回路302は、A/D変換回路301からの出力を同期検波してベースバンド信号を生成する。信号レベル検出回路303は、生成されたベースバンド信号から信号強度を検出する。信号有無判定回路304は、検出された信号強度と所定の閾値を比較することにより、タイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する。このとき、信号有無判定回路304はメモリ4に記憶されている過去のタイムスロットの使用状況に応じて信号強度と比較する閾値の値を変更する。
【0030】
クラスAにおける送信ルールでは、スロットのタイムアウトという概念があり、スロットのタイムアウトが発生するまで、基本的にはフレーム内の同じスロットを使用し続けることが決められている。その値は4〜8分という時間になっており、1フレームは1分に相当することから、あるスロットでクラスA局が送信を行えば通常平均的に見て6回ほどは同じスロットを使い続けて情報信号が送信される。すなわち、クラスAにおける送信ルールでは、同じスロットを使い続ける確率が高いという特徴がある。
【0031】
そのため、信号有無判定回路304では、メモリ4に記憶された過去の情報信号の有無判定に関する情報に基づいて次フレームでのスロットの空き具合を予測し、信号強度と比較する閾値の値を変更する。
【0032】
メモリ4は、フレームを構成するタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリであり、信号有無判定部3で行う情報信号の有無判定に関する情報を記憶している。タイムスロットの過去の使用状況に関する情報とは、各タイムスロットに情報信号が存在していたか否かを示す情報の他、情報信号が存在していた可能性を示す数値、或いは受信した信号の信号強度そのものなど、過去のタイムスロットの使用状況を判断するために用いることができる情報であれば何でも良い。そして、この記憶された情報は、次のフレーム以降でのスロットの空き具合を予測する際に参考値として利用される。
【0033】
図3は、このメモリ4に記憶された情報の一例を示す図である。
図3は過去のタイムスロットにおける信号の有無情報のみを格納した場合を示す例であり、フレーム3は現在使用中のフレーム、フレーム0から2は過去のフレームの使用状況を示している。なお、ここではフレーム0が、記憶されている最も古い情報であり、それ以前の情報については順に削除されていくものとする。また、○は情報信号が存在したタイムスロットを、×は情報信号が存在しなかったタイムスロットを示している。このように、メモリ4には過去の情報信号の有無判定に関する情報が順次記憶されている。
【0034】
候補スロット選択部5は、情報信号を送信する候補となる10個のタイムスロット(候補スロット)を選択する。AISの通信方式の1つであるクラスB方式(CS)では、クラスB局同士の通信の衝突低減を目的として、所定の送信時間帯(SI:selection interval )に含まれる複数スロットの中から10個の送信候補スロット(CP:candidate slot )を選択し、その内のいずれかのスロットを用いて情報信号を送信する約束となっている。なお、送信時間帯(SI:selection interval )とは、予め決められたレポーティングレートによって決定される送信許可区間のことである。
【0035】
送信部6は、候補スロットの先頭から一定の時間(約2ms)に行われた情報信号の有無の判定結果に基づいて、情報信号の送信処理を行う。すなわち、信号有無判定部3による、候補スロットの先頭から約2msのキャリアセンスの結果、その候補スロットに情報信号が存在しないと判定した時には、その直後に自局の送信を行う。一方で、情報信号が存在すると判定した時は当該候補スロットでの送信を放棄し、次の候補スロットまで待ってそこで再試行を行う。
【0036】
次に、本発明の実施の形態1による航行支援装置の動作について説明する。
(1)同期タイミング信号生成処理
クラスB方式(CS)では、先ず他局と同期するタイムベースを取得するため、AIS受信部1により他局を非同期で受信し、GPSに同期したクラスA局を見つける。そして見つけたクラスA局のビットタイミングから、その局が有しているタイムベースを逆算して、基準タイミング発生器2によってクラスA局のタイムベースに同期した同期タイミング信号が生成される。
【0037】
この同期タイミング信号は、自らの送信タイミングを律するものであり、航行支援装置の各構成要素の動作タイミングを決定する信号として使用される。なお、この基準タイミング発生器2による同期タイミング信号の生成或いはその校正は電源ON時に限らず継続的に行われる。
【0038】
(2)情報信号送信処理
クラスB方式(CS)では、前述のように先ず送信候補となる10個のタイムスロットを選択することとなっており、候補スロット選択部5によって自局の情報信号の送信候補となる候補スロットが10個選択される。
【0039】
信号有無判定部3では、候補スロット選択部5で選択した候補スロットに対して、候補スロットの先頭から約2msをキャリアセンスし、キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号がないと判断した時には、その直後に送信部6が自局の情報信号の送信を行う。一方で、キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号が存在すると判断した時には、そのスロットでの送信は放棄し、次の候補スロットまで待ってそこで再試行する。
【0040】
以下に、信号有無判定部3によるキャリアセンス処理について詳細に説明する。
図4は、信号有無判定部3が行うキャリアセンス処理を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは信号有無判定部3がメモリ4に過去のタイムスロットにおける情報信号の有無情報を格納する場合について説明する。
【0041】
先ず、キャリアセンスの対象となるタイムスロットが候補スロットであるか否かを判断する(S101)。判断の結果、キャリアセンスを行う対象が、候補スロットである場合にはステップS102に行き、候補スロットでない場合にはステップS111に行く。
【0042】
キャリアセンスを行う対象が候補スロットの場合、同じタイムスロットにおける過去の使用状況をメモリ4から取得する(S102)。そして、取得した過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、今回のタイムスロットの先頭2ms分の信号強度と比較する第1の閾値を決定する(S103)。この第1の閾値は、過去のタイムスロットの使用状況を勘案して、信号の存在確率が大きいほど小さくなるように設定される。
【0043】
次に、今回のタイムスロットの先頭2ms分の信号強度を信号レベル検出回路303により検出し(S104)、ステップS103で決定した第1の閾値と比較する(S105)。比較の結果、検出値が第1の閾値より小さい場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が無いと判定し(S106)、ステップS108に行く。一方で、検出値が第1の閾値以上の場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が存在すると判定し(S107)、ステップS110に行く。
【0044】
タイムスロットの先頭2ms分のキャリアセンスによりクラスA局から送信される情報信号が無いと判定した場合には、この判断結果をメモリ4に格納する(ステップS108)とともに、先頭2ms分のキャリアセンスの直後に送信部6から自局の情報信号を送信する(ステップS109)。
【0045】
一方で、タイムスロットの先頭2ms分のキャリアセンスにより情報信号が存在すると判定した場合には、信号レベル検出回路303によって残りの24.7msの信号強度を検出し、スロット全体(26.7ms分)の信号強度を取得する(S110)。
【0046】
タイムスロットの先頭2ms分のキャリアセンスにより得られた判断結果をそのままメモリ4に記憶することも当然可能であるが、スロット全体にわたってのキャリアセンスを行った判断結果の方がより正確な判断結果を得ることができる。そのため、本実施形態では、スロット全体から得られる信号強度を用いて再度、信号の有無を判断するようにし、より正確な情報をメモリ4に記憶させるようにしている。
【0047】
また、キャリアセンスを行う対象が候補スロットでない場合にも、過去のスロットの使用状況をメモリ4に記憶させておくため、信号レベル検出回路303によりタイムスロット全体にわたって信号強度を検出する(S111)。
【0048】
スロット全体にわたって検出された信号強度は、信号有無判定回路304によって第2の閾値と比較される(S112)。ここで第2の閾値は、第1の閾値と同様に過去のタイムスロットの使用状況に基づいて決定される値であってもよいし、予め設定された固定値であってもよい。比較の結果、検出値が第2の閾値より小さい場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が無いと判定し(S113)、当該判定結果をメモリ4に格納する(S115)。一方で、検出値が第2の閾値以上の場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が存在すると判定し(S114)、当該判定結果をメモリ4に格納する(S115)。
【0049】
そして、このようなステップS108、及びステップS115の処理を行うことにより、過去のすべてのタイムスロットにおける信号の有無情報がメモリ4に格納されることとなる。
【0050】
以上のように、本発明の実施の形態1による航行支援装置によれば、過去のタイムスロットの使用状況に関する情報を記憶するメモリを設け、受信部で受信した信号から得られる信号強度と過去のタイムスロットの使用状況に基づいて決定された閾値とを比較することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定するようにしたため、キャリアセンスによるクラスA局の送信監視を短時間に、より正確に行うことができ、クラスB局はクラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2による航行支援装置は、前述した実施の形態1による航行支援装置の処理に加え、候補スロット選択部5が過去のタイムスロットの使用状況に基づいて候補スロットを選択するようにしたものである。
【0052】
図5は本発明の実施の形態2による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図5において、本発明の実施の形態2による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部3と、メモリ4と、候補スロット選択部51と、送信部6とからなる。なお、前述した実施の形態1による航行支援装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0053】
候補スロット選択部51は、情報信号を送信する候補となる10個のタイムスロット(候補スロット)を選択する。この時、候補スロット選択部51による候補スロットの選択は、メモリ4に記憶された過去のタイムスロットの使用状況に関する情報に基づいて行われる。なお、候補スロットの選択処理手法については種々の方法が考えられるが、ここでは対象スロットの信号有無判定を行う直前に、候補スロットの選択処理を行うものを例にとって説明する。
【0054】
図6は、候補スロット選択部51が行う候補スロットの選択処理を説明するためのフローチャートである。
先ず、候補スロット選択部51は、予め決められたレポーティングレートによって決定される送信許可区間、すなわち送信時間帯(SI)であるか否かを判定する(S201)。判断の結果、送信時間帯(SI)である場合にはステップS202に行き、送信時間帯(SI)でない場合には候補スロットの選択処理を終了する。
【0055】
送信時間帯(SI)である場合、対象となるタイムスロットと同じタイムスロットの過去の使用状況をメモリ4から取得する(S202)。そして、取得した過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、今回のクライテリア値を決定する(S203)。その後、ランダム数nを取得し(S204)、ステップS203で決定したクライテリア値と比較する(S205)。
【0056】
例えば、送信時間帯(SI)にあるタイムスロットが100個ある場合には、1/10の確率で候補スロットが選択されるように、ランダム数nの取りうる範囲とクライテリア値が設定されている。つまり、ランダム数nが1から1000の何れかの値をとる場合、クライテリア値は基本的に900になるように設定される。そして、本発明では、過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、このクライテリア値をタイムスロット毎に増減させることを特徴とする。これにより、クラスA局の情報信号が存在しない可能性の高いタイムスロットを優先的に選択することが可能になる。なお、クライテリア値は、過去のタイムスロットの使用状況を勘案して、情報信号の存在確率が大きいほど大きく、情報信号の存在確率が小さいほど小さくなるように設定すればよい。この時、ランダム数nがとりうる値の範囲に対して、「SI内スロット数×クレイテリア値の平均」が10分の1程度の値になるように設定する。
【0057】
ステップS205による比較の結果、ランダム数nがクライテリア値より大きい場合には当該タイムスロットを候補スロットとして選択し(S206)、ランダム数nがクライテリア値以下の場合には当該タイムスロットを候補スロットとして選択しない(S207)。
【0058】
以上のように、本発明の実施の形態2による航行支援装置によれば、過去のタイムスロットの使用状況に基づいて候補スロットを選択するようにしたことにより、クラスA局の情報信号が存在しない確率の高いタイムスロットを候補スロットとして選択することが可能となり、クラスB局はクラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0059】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3による航行支援装置は、前述した実施の形態1による航行支援装置の信号強度を用いた情報信号の有無判定にかえて、信号有無判定部31がベースバンド信号のパターン認識を行うことにより、情報信号の有無判定するようにしたものである。
【0060】
図7は本発明の実施の形態3による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図7において、本発明の実施の形態3による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部31と、候補スロット選択部5と、送信部6とからなる。なお、前述した実施の形態1による航行支援装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0061】
信号有無判定部31は、AIS信号受信部1で受信した受信信号を検波して得られるベースバンド信号が、情報信号であるか否かのパターン認識を行う。つまり、信号有無判定部31は、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動を監視し、当該監視結果に基づいて受信信号が情報信号であるか否かの判定を行う。
【0062】
図8は、ベースバンド信号のIQ平面上での挙動を示す図であり、図8(a)は、GMSK変調されたベースバンド信号のIQ平面上における挙動を示し、図8(b)は、ノイズのIQ平面上における挙動を示している。
【0063】
図8に示すように、受信した信号が位相変調された信号である場合には、I成分とQ成分とをIQ平面上にプロットすると一定の規則性を持って変移する一方で、受信した信号がノイズである場合には、規則性がなくランダムな挙動を示す。
【0064】
そこで、本発明の実施の形態3による信号有無判定部31では、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動を、パターン認識を行うことによって監視することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定する。パターン認識は、例えば、部分空間法やサポートベクタマシン、或いはニューラルネットワーク等の手法を用いて行うことができる。もちろん、これらの手法の組み合わせによりパターン認識を行っても良い。
【0065】
1)サポートベクタマシン
図9は、本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、前述した信号有無判定部3と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0066】
図9において、信号有無判定部31は、A/D変換回路301と、ベースバンド復調回路302と、特徴ベクトル抽出回路305と、サポートベクタマシン306とからなる。
特徴ベクトル抽出回路305は、ベースバンド復調回路302から出力されたベースバンド信号に基づいて特徴ベクトルを抽出する。特徴ベクトルとしては、例えばFFTによる周波数スペクトル成分や、信号強度、位相情報、或いは位相情報の時間微分(信号の速度成分)、2回微分(信号の加速度成分)などを要素とするベクトルが一例となる。
【0067】
サポートベクタマシン306は、特徴ベクトル抽出回路305で抽出した特徴ベクトルに基づいて、タイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する。ここで判定にはカーネル関数による計算を利用し、次式(1)の符号判定によりタイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する。
【数1】
【0068】
なお、式(1)中、wTは重みベクトルの転置、Φ(x)は高次空間におけるベクトル、bはバイアス項、αiは定数、yiはサポートベクトルxiの判定結果、K(xi,x)はカーネル関数であり、カーネル関数としては、多項式カーネルやガウシアンカーネルが考えられる。カーネル関数を用いることにより、変換後の空間や変数Φ(x)がどのようなものであるのかを知る必要がなくなり、タイムスロット内の信号の有無を計算により求めることができる。
【0069】
2)部分空間法
この手法は、情報信号の学習結果に基づいて固有空間から部分空間を選び出し、判定対象となる信号を該選出した部分空間に投影して特徴量を抽出することにより、信号と雑音を区別する方法である。
【0070】
図10は、本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、前述した信号有無判定部3と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
図10において、信号有無判定部31は、A/D変換回路301と、ベースバンド復調回路302と、信号有無判定回路401とからなる。
信号有無判定回路401は、部分空間法を用いてベースバンド信号のパターン認識を行い、IQ平面上におけるベースバンド信号の挙動を監視する。
【0071】
部分空間法を用いた信号有無判定回路401による信号有無判定は次のように行われる。
先ず、情報信号と判定されるべき資料を複数学習させて固有空間を選び出し、選出した固有空間の累積寄与率に基づいてその部分空間(部分固有空間)を予め作成する。この学習作業は例えば、製品出荷時に行われ、その学習結果が信号有無判定回路401に予めメモリ等に記憶されている。
そして、信号有無判定回路401にベースバンド信号の入力を受けると、信号有無判定回路401は、入力されたベースバンド信号を、作成した部分空間へ射影して特徴量を抽出する。入力された信号が情報信号であるか否かの判断は、抽出した特徴量と学習データのもつ特徴量とを比較することにより行われ、例えば、互いのユークリッド距離が予め決められた閾値を越えるか否かにより判断する。これにより、信号有無判定回路401は、タイムスロットに情報信号が存在するか否かの判定を行うことが可能になる。
【0072】
3)ニューラルネットワーク
ベースバンド信号の挙動は、ニューラルネットワークを用いてパターン認識を行うことにより観察することも可能である。
具体的な、ニューラルネットワークの手法としては、例えば、パーセプトロン、バックプロパゲーション(BP)学習型、ネオコグニトロンなどの階層型のニューラルネットワークや、アソシアトロン、ホップフィールドネットワーク、ボルツマンマシンなどの相互結合型のニューラルネットワークを用いることができる。
【0073】
以上のように、本発明の実施の形態3による航行支援装置によれば、サポートベクタマシンや部分空間法、或いはニューラルネットワークなどの種々のパターン認識手法を用いて、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動を監視することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かの判定を行うことが可能になる。これにより、受信信号の信号強度だけに頼らない、変調信号の存在についてのキャリアセンスとその判定が可能となる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態3による航行支援装置では、タイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリ4を持たない例について説明したが、前記実施の形態1による航行支援装置と同様に信号無判定部31で得られるタイムスロットの使用状況に関する情報をメモリ4に記憶させ、この情報を信号有無の判定に利用するようにしても良い。
【0075】
なお、メモリ4に記憶させる情報は、例えば、サポートベクタマシンを用いる場合には、各タイムスロットに情報信号が存在していたか否かを示す情報の他、判定境界からの距離を示すWTΦ(x)+bの絶対値(情報信号が存在していた可能性を示す値)、或いは受信した信号の周波数スペクトル成分や、信号強度などの特徴ベクトルWTΦ(x)+bの絶対値など、過去のタイムスロットの使用状況を判断するために用いることができる情報であれば何でも良い。また、メモリ4に記憶した情報の利用方法であるが、その1つの手法として、過去のタイムスロットの使用状況を勘案して対象のタイムスロットにおける信号の存在確率を算出し、当該存在確率に基づいて式(1)のバイアス項bを増減させる手法が考えられる。そして、このようにタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を用いて判断することにより、受信した信号のIQ平面上における挙動をより正確に監視することができ、判定結果の正確性を向上させることが可能となる。もちろん、部分空間法やニューラルネットワーク等を用いる場合であっても、上記手法を同様に用いることが可能である。
【0076】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4による航行支援装置は、信号有無判定部32が受信信号の信号強度とベースバンド信号のIQ平面上における挙動とに基づいて信号の有無を判定するものである。
【0077】
図11は本発明の実施の形態4による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図11において、本発明の実施の形態4による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部32と、メモリ4と、候補スロット選択部5と、送信部6とからなる。なお、前述した実施の形態1による航行支援装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0078】
信号有無判定部32は、図12に示すように、前記実施の形態1で説明した信号有無判定部3と前記実施の形態3で図9を用いて説明した信号有無判定部31(サポートベクタマシン)とを組み合わせたものであり、受信信号の信号強度とベースバンド信号のIQ平面上における挙動を総合的に勘案して、タイムスロットに情報信号が存在していたか否かを判定するものである。もちろん、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動は、サポートベクタマシンの他、部分空間法、或いはニューラルネットワークなどの種々のパターン認識手法を用いて監視することができる。
【0079】
これにより、タイムスロットに情報信号が存在しているか否かの、より正確な判定が期待でき、クラスB局はクラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0080】
なお、本発明の各実施形態では、基準タイミング発生部2が受信したクラスA局の信号から同期タイミング信号を生成するものについて説明したが、もちろん、図13に示すように、本発明にかかる航行用支援装置がGPS(Global Positioning System)等の衛星航法測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)受信機を搭載し、測位用信号受信部11で受信した受信信号から測位演算部12が正確な時刻信号を取得し、基準タイミング発生部13が、測位演算部12から得られる時刻信号に基づいて、同期タイミング信号を生成するようにしても良い。
【0081】
なお、前述した本発明の各実施形態は最良の実施形態の一例であって、本発明の要旨を損なわない範囲で種々の変更が可能であり、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1による航行支援装置のメモリを説明するための説明図
【図4】本発明の実施の形態1による航行支援装置の信号有無判定部によるキャリアセンス処理を説明するためのフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態2による航行支援装置の候補スロット選択部の処理内容を説明するためのフローチャート
【図7】本発明の実施の形態3による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図8】TDMA変調信号及びノイズのIQ平面上での挙動を示す図
【図9】本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図11】本発明の実施の形態4による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図12】本発明の実施の形態4による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図13】本発明の航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【符号の説明】
【0083】
1 AIS信号受信部
2 基準タイミング発生部2
3、31、32 信号有無判定部
4 メモリ
5、51 候補スロット選択部
6 送信部
301 A/D変換回路
302 ベースバンド復調回路
303 信号レベル検出回路
304 信号有無判定回路
305 特徴ベクトル抽出回路
306 サポートベクタマシン
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアセンス方式に関し、例えば、船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)のクラスB方式で使用する通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶航行業務(VTS)の合理化、並びに船舶の衝突予防向上などの目的から、船舶自動識別システム(Automatic Identification System:AIS)(以下AIS と言う。)がシステム化され、2002年からSOLAS条約船への搭載が義務化がされている。
【0003】
AIS は、各船舶にAIS 装置を搭載装備し、自船の船名、位置、運動状態、大きさ(長さ、幅)、種類、積載物、喫水、目的地などの情報を放送すると同時に、周辺船舶が同様に放送する当該情報を受信することにより、自船周辺の船舶情報を入手できるシステムである。このAIS を用いることによって船舶の存在確認と併せて、レーダでは困難であった船名、船の大きさ(長さ、幅)、種類、積載物、喫水、目的地などの情報も確認することが可能となる。
【0004】
AISは、その通信に位相変調された信号が用いられており、VHF帯の2つの周波数チャンネルが割り当てられている。また、AISは、通信相互のぶつかり合い(衝突)は避けるために通信方式が予め決められている。通信方式としては、SOLAS条約船に搭載されているクラスA方式と、非SOLAS条約船への搭載が予定されているクラスB方式が存在する。
【0005】
クラスA方式はSOTDMA(Self Organized Time Division Multiple Access)方式が採用されている。この方式では1分間を1フレームとして1フレームを2250個のタイムスロットに分割する。1スロットの長さは26.7msとなり、各船舶はこのスロットに情報を載せて送信を行う。
【0006】
特に、クラスA方式では、自船情報とスロットの予約情報を同時に送信することを特徴としている(特許文献1)。例えば、船舶A、船舶B、船舶Cが通信する場合を想定すると、船舶Aが、自船の情報と次に送信するスロットの予約情報を1パッケージにして送信する。船舶Bは、船舶Aの予約したスロットを避けながら、自船の情報と次に送信するスロットの予約情報を送信する。船舶Cは、船舶Aと船舶Bの予約したスロットを避けながら、自船の情報と次に送信するスロットの予約情報を送信する。これらを次々に繰り返していき、スロットが衝突しないように、それぞれの船舶が自船の情報とスロットの予約情報を送信しながら互いに通信する。
【0007】
このようなSOTDMA通信を行うためには、全ての局がタイムスロットの時刻を正確に合わせなければならない。このため、AISではGPS(Global Positioning System)等の衛星航法測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)受信機を内蔵し、その受信信号から正確な1秒パルス(PPS:Pulse Per Second)を取り出し、全ての局がこの1秒パルスに同期するようになっている(特許文献1)。
【0008】
一方で、非SOLAS条約船への搭載が予定されているクラスB方式には、GNSS受信機を搭載しない船舶でも使用できる安価型のAISとして、CSTDMA(Carrier-Sense Time Division Multiple Access)方式を用いたものがある(以下、「クラスB方式(CS)」と称する)。
【0009】
クラスB方式(CS)では、クラスA局の送信スケジュールを妨害することがないように、クラスA局(通常SOLAS条約船に搭載されている無線局)による送信をキャリアセンスにより監視し、その送信電波(クラスA局から送信された情報信号)が存在しないことを確認した後、自らの送信を行う。
【0010】
具体的には、クラスB方式(CS)では次の(1)から(5)の処理が行われる。
(1)他局を非同期に受信することで(GPS同期している)クラスA局を見つける。
(2)見つけたクラスA局のビットタイミングから、その局が有しているタイムベースを逆算する。
(3)逆算したタイムベースを使って、キャリアセンスを行う将来の10個のタイムスロット(以下、候補スロットと言う。)を選択する。
(4)自局が送信したい(ランダムに選択された)候補スロットの先頭から約2msをキャリアセンスする。
(5)キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号がないと判断した時には、その直後に自局の送信を行う。
(6)キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号が存在すると判断した時には、そのスロットでの送信は放棄し、次の候補スロットまで待ってそこで再試行する。
【特許文献1】特表平07−501879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
クラスB方式(CS)ではキャリアセンスに供する時間幅が約2msと短く、この間にクラスA局の送信の有無を判断しなくてはならない。しかしながら、この約2msという期間で信号の有無を正確に判断するための感度を保つことは、スロット全体(26.7ms)を受信して信号の有無を判断する場合に比べて非常に困難である。なお、フィルタを狭帯域に設計することによって感度を上げることはできるが、このようにフィルタを狭帯域に設計すると群遅延が発生するため処理できるビット数がさらに減ってしまうというジレンマがある。
【0012】
また、キャリアセンスの具体的手法として通常は電波強度を計測する方式が考えられるが、ノイズレベルが平均的に高い場合や突発的なノイズが存在する場合には、送信ありと誤判断してしまう可能性があり、約2msという短い期間でクラスA局の送信の有無を常に正確に判断することができないという問題がある。
【0013】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、正確にキャリアセンスを行うことができる方式を提供するとともに、キャリアセンスに要する時間の短縮化を図り、クラスAによる送信とクラスB(CS)による送信との衝突を防止することができる航行支援装置、及びキャリアセンス方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明にかかる航行支援装置は、他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、受信部で受信した信号から得られる信号強度の測定値と前記メモリに記憶された情報に基づいて決定される閾値とを比較することにより、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで、自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる航行支援装置は、他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする。この信号有無判定部によるパターン認識の手法としては、部分空間法、サポートベクタマシン、或いはニューラルネットワークなどを用いたものが考えられる。
【0016】
また、本発明にかかる航行支援装置は、前記メモリに記憶された情報に基づいて、自局に関する情報を送信する候補となる、候補スロットを選択する候補スロット選択部を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる航行支援装置は、前記送信部によって自局に関する情報を送信しない場合に、前記信号有無判定部がスロット全体に亘って情報信号が存在するか否かを検証し、得られた情報を過去のタイムスロットの使用状況に関する情報として前記メモリに記憶することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる航行支援装置は、衛星からの測位用信号を受信する測位用信号受信部と、前記測位用信号に基づいて測位演算を行い、正確な時刻信号を得る測位演算部とを備え、前記基準タイミング発生部は、前記測位演算部から得られる時刻信号に基づいて、同期タイミング信号を生成することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかるキャリアセンス方式は、信号を受信する信号受信部と、前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果に基づいて受信信号が情報信号であるか否かの判定を行う信号有無判定部とを備えることを特徴とする。この信号有無判定部によるパターン認識の手法としては、部分空間法、サポートベクタマシン、或いはニューラルネットワークなどを用いたものが考えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリを設け、受信部で受信した信号から得られる信号強度と過去のタイムスロットの使用状況に基づいて決定された閾値とを比較することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定するようにしたため、キャリアセンスによるクラスA局の送信監視をより正確に行うことができ、クラスA局の送信と衝突するリスクを避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0021】
また、本発明によれば、過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、自局に関する情報を送信する候補スロットを選択するようにしたことにより、クラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0022】
また、本発明によれば、部分空間法、サポートベクタマシン、或いはニューラルネットワークなどを用いて受信した信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行うことにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定を行うことが可能になる。これにより、受信信号の信号強度だけに頼らないで変調信号の存在についてのキャリアセンスとその判定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の各実施の形態では、本発明による航行支援装置が、船舶自動識別システム(AIS)におけるクラスB方式(CS)のAIS受信装置であるものとする。以下に、本発明の内容を、図面を参照しながら説明する。なお、各実施の形態では、本発明の特徴部分である他局の信号の有無を判定するキャリアセンスの方式を中心に説明し、船舶自動識別システム(AIS)で行われる通常の処理内容については説明を省略する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図1において、本発明の実施の形態1による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部3と、メモリ4と、候補スロット選択部5と、送信部6とからなる。
【0025】
AIS信号受信部1は、他船やブイ等の移動局あるいは地上に設置された固定局から特定の周波数帯で送信されるAIS信号をAISアンテナで受信し、受信した信号を基準タイミング発生器2、及び信号有無判定部3に出力する。
【0026】
基準タイミング発生部2は、他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成するものである。基準タイミング発生部2は、他局を非同期に受信した信号をAIS信号受信部1から得ることにより、GPSに同期しているクラスA局を見つけ、見つけたクラスA局のビットタイミングからその局が有しているタイムベースを逆算して、クラスA局のタイムベースに同期する同期タイミング信号を生成する。そして、この生成された同期タイミング信号を用いることにより、自身のタイムベースを他船等に搭載された航行支援装置のタイムベースと同期させ、他局と時刻同期したタイムスロットを用いて他局との通信を行う。これにより、GPSを搭載していない船舶等においても他局との通信を行うことが可能になる。
【0027】
信号有無判定部3は、AIS信号受信部1で受信したAIS信号と、メモリ4に記憶されているタイムスロットの過去の使用状況に関する情報とを用いて、同期タイミング信号で画定されるタイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1による航行支援装置の信号有無判定部の詳細な構成を示すブロック図である。
図2において、信号有無判定部3は、A/D変換回路301と、ベースバンド復調回路302と、信号レベル検出回路303と、信号有無判定回路304とからなる。
【0029】
A/D変換回路301は、AIS信号受信部1で受信した信号をデジタルデータに変換する。べースバンド復調回路302は、A/D変換回路301からの出力を同期検波してベースバンド信号を生成する。信号レベル検出回路303は、生成されたベースバンド信号から信号強度を検出する。信号有無判定回路304は、検出された信号強度と所定の閾値を比較することにより、タイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する。このとき、信号有無判定回路304はメモリ4に記憶されている過去のタイムスロットの使用状況に応じて信号強度と比較する閾値の値を変更する。
【0030】
クラスAにおける送信ルールでは、スロットのタイムアウトという概念があり、スロットのタイムアウトが発生するまで、基本的にはフレーム内の同じスロットを使用し続けることが決められている。その値は4〜8分という時間になっており、1フレームは1分に相当することから、あるスロットでクラスA局が送信を行えば通常平均的に見て6回ほどは同じスロットを使い続けて情報信号が送信される。すなわち、クラスAにおける送信ルールでは、同じスロットを使い続ける確率が高いという特徴がある。
【0031】
そのため、信号有無判定回路304では、メモリ4に記憶された過去の情報信号の有無判定に関する情報に基づいて次フレームでのスロットの空き具合を予測し、信号強度と比較する閾値の値を変更する。
【0032】
メモリ4は、フレームを構成するタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリであり、信号有無判定部3で行う情報信号の有無判定に関する情報を記憶している。タイムスロットの過去の使用状況に関する情報とは、各タイムスロットに情報信号が存在していたか否かを示す情報の他、情報信号が存在していた可能性を示す数値、或いは受信した信号の信号強度そのものなど、過去のタイムスロットの使用状況を判断するために用いることができる情報であれば何でも良い。そして、この記憶された情報は、次のフレーム以降でのスロットの空き具合を予測する際に参考値として利用される。
【0033】
図3は、このメモリ4に記憶された情報の一例を示す図である。
図3は過去のタイムスロットにおける信号の有無情報のみを格納した場合を示す例であり、フレーム3は現在使用中のフレーム、フレーム0から2は過去のフレームの使用状況を示している。なお、ここではフレーム0が、記憶されている最も古い情報であり、それ以前の情報については順に削除されていくものとする。また、○は情報信号が存在したタイムスロットを、×は情報信号が存在しなかったタイムスロットを示している。このように、メモリ4には過去の情報信号の有無判定に関する情報が順次記憶されている。
【0034】
候補スロット選択部5は、情報信号を送信する候補となる10個のタイムスロット(候補スロット)を選択する。AISの通信方式の1つであるクラスB方式(CS)では、クラスB局同士の通信の衝突低減を目的として、所定の送信時間帯(SI:selection interval )に含まれる複数スロットの中から10個の送信候補スロット(CP:candidate slot )を選択し、その内のいずれかのスロットを用いて情報信号を送信する約束となっている。なお、送信時間帯(SI:selection interval )とは、予め決められたレポーティングレートによって決定される送信許可区間のことである。
【0035】
送信部6は、候補スロットの先頭から一定の時間(約2ms)に行われた情報信号の有無の判定結果に基づいて、情報信号の送信処理を行う。すなわち、信号有無判定部3による、候補スロットの先頭から約2msのキャリアセンスの結果、その候補スロットに情報信号が存在しないと判定した時には、その直後に自局の送信を行う。一方で、情報信号が存在すると判定した時は当該候補スロットでの送信を放棄し、次の候補スロットまで待ってそこで再試行を行う。
【0036】
次に、本発明の実施の形態1による航行支援装置の動作について説明する。
(1)同期タイミング信号生成処理
クラスB方式(CS)では、先ず他局と同期するタイムベースを取得するため、AIS受信部1により他局を非同期で受信し、GPSに同期したクラスA局を見つける。そして見つけたクラスA局のビットタイミングから、その局が有しているタイムベースを逆算して、基準タイミング発生器2によってクラスA局のタイムベースに同期した同期タイミング信号が生成される。
【0037】
この同期タイミング信号は、自らの送信タイミングを律するものであり、航行支援装置の各構成要素の動作タイミングを決定する信号として使用される。なお、この基準タイミング発生器2による同期タイミング信号の生成或いはその校正は電源ON時に限らず継続的に行われる。
【0038】
(2)情報信号送信処理
クラスB方式(CS)では、前述のように先ず送信候補となる10個のタイムスロットを選択することとなっており、候補スロット選択部5によって自局の情報信号の送信候補となる候補スロットが10個選択される。
【0039】
信号有無判定部3では、候補スロット選択部5で選択した候補スロットに対して、候補スロットの先頭から約2msをキャリアセンスし、キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号がないと判断した時には、その直後に送信部6が自局の情報信号の送信を行う。一方で、キャリアセンスした結果、他船から送信された情報信号が存在すると判断した時には、そのスロットでの送信は放棄し、次の候補スロットまで待ってそこで再試行する。
【0040】
以下に、信号有無判定部3によるキャリアセンス処理について詳細に説明する。
図4は、信号有無判定部3が行うキャリアセンス処理を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは信号有無判定部3がメモリ4に過去のタイムスロットにおける情報信号の有無情報を格納する場合について説明する。
【0041】
先ず、キャリアセンスの対象となるタイムスロットが候補スロットであるか否かを判断する(S101)。判断の結果、キャリアセンスを行う対象が、候補スロットである場合にはステップS102に行き、候補スロットでない場合にはステップS111に行く。
【0042】
キャリアセンスを行う対象が候補スロットの場合、同じタイムスロットにおける過去の使用状況をメモリ4から取得する(S102)。そして、取得した過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、今回のタイムスロットの先頭2ms分の信号強度と比較する第1の閾値を決定する(S103)。この第1の閾値は、過去のタイムスロットの使用状況を勘案して、信号の存在確率が大きいほど小さくなるように設定される。
【0043】
次に、今回のタイムスロットの先頭2ms分の信号強度を信号レベル検出回路303により検出し(S104)、ステップS103で決定した第1の閾値と比較する(S105)。比較の結果、検出値が第1の閾値より小さい場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が無いと判定し(S106)、ステップS108に行く。一方で、検出値が第1の閾値以上の場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が存在すると判定し(S107)、ステップS110に行く。
【0044】
タイムスロットの先頭2ms分のキャリアセンスによりクラスA局から送信される情報信号が無いと判定した場合には、この判断結果をメモリ4に格納する(ステップS108)とともに、先頭2ms分のキャリアセンスの直後に送信部6から自局の情報信号を送信する(ステップS109)。
【0045】
一方で、タイムスロットの先頭2ms分のキャリアセンスにより情報信号が存在すると判定した場合には、信号レベル検出回路303によって残りの24.7msの信号強度を検出し、スロット全体(26.7ms分)の信号強度を取得する(S110)。
【0046】
タイムスロットの先頭2ms分のキャリアセンスにより得られた判断結果をそのままメモリ4に記憶することも当然可能であるが、スロット全体にわたってのキャリアセンスを行った判断結果の方がより正確な判断結果を得ることができる。そのため、本実施形態では、スロット全体から得られる信号強度を用いて再度、信号の有無を判断するようにし、より正確な情報をメモリ4に記憶させるようにしている。
【0047】
また、キャリアセンスを行う対象が候補スロットでない場合にも、過去のスロットの使用状況をメモリ4に記憶させておくため、信号レベル検出回路303によりタイムスロット全体にわたって信号強度を検出する(S111)。
【0048】
スロット全体にわたって検出された信号強度は、信号有無判定回路304によって第2の閾値と比較される(S112)。ここで第2の閾値は、第1の閾値と同様に過去のタイムスロットの使用状況に基づいて決定される値であってもよいし、予め設定された固定値であってもよい。比較の結果、検出値が第2の閾値より小さい場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が無いと判定し(S113)、当該判定結果をメモリ4に格納する(S115)。一方で、検出値が第2の閾値以上の場合には当該タイムスロットにクラスA局から送信される情報信号が存在すると判定し(S114)、当該判定結果をメモリ4に格納する(S115)。
【0049】
そして、このようなステップS108、及びステップS115の処理を行うことにより、過去のすべてのタイムスロットにおける信号の有無情報がメモリ4に格納されることとなる。
【0050】
以上のように、本発明の実施の形態1による航行支援装置によれば、過去のタイムスロットの使用状況に関する情報を記憶するメモリを設け、受信部で受信した信号から得られる信号強度と過去のタイムスロットの使用状況に基づいて決定された閾値とを比較することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定するようにしたため、キャリアセンスによるクラスA局の送信監視を短時間に、より正確に行うことができ、クラスB局はクラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0051】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2による航行支援装置は、前述した実施の形態1による航行支援装置の処理に加え、候補スロット選択部5が過去のタイムスロットの使用状況に基づいて候補スロットを選択するようにしたものである。
【0052】
図5は本発明の実施の形態2による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図5において、本発明の実施の形態2による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部3と、メモリ4と、候補スロット選択部51と、送信部6とからなる。なお、前述した実施の形態1による航行支援装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0053】
候補スロット選択部51は、情報信号を送信する候補となる10個のタイムスロット(候補スロット)を選択する。この時、候補スロット選択部51による候補スロットの選択は、メモリ4に記憶された過去のタイムスロットの使用状況に関する情報に基づいて行われる。なお、候補スロットの選択処理手法については種々の方法が考えられるが、ここでは対象スロットの信号有無判定を行う直前に、候補スロットの選択処理を行うものを例にとって説明する。
【0054】
図6は、候補スロット選択部51が行う候補スロットの選択処理を説明するためのフローチャートである。
先ず、候補スロット選択部51は、予め決められたレポーティングレートによって決定される送信許可区間、すなわち送信時間帯(SI)であるか否かを判定する(S201)。判断の結果、送信時間帯(SI)である場合にはステップS202に行き、送信時間帯(SI)でない場合には候補スロットの選択処理を終了する。
【0055】
送信時間帯(SI)である場合、対象となるタイムスロットと同じタイムスロットの過去の使用状況をメモリ4から取得する(S202)。そして、取得した過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、今回のクライテリア値を決定する(S203)。その後、ランダム数nを取得し(S204)、ステップS203で決定したクライテリア値と比較する(S205)。
【0056】
例えば、送信時間帯(SI)にあるタイムスロットが100個ある場合には、1/10の確率で候補スロットが選択されるように、ランダム数nの取りうる範囲とクライテリア値が設定されている。つまり、ランダム数nが1から1000の何れかの値をとる場合、クライテリア値は基本的に900になるように設定される。そして、本発明では、過去のタイムスロットの使用状況に基づいて、このクライテリア値をタイムスロット毎に増減させることを特徴とする。これにより、クラスA局の情報信号が存在しない可能性の高いタイムスロットを優先的に選択することが可能になる。なお、クライテリア値は、過去のタイムスロットの使用状況を勘案して、情報信号の存在確率が大きいほど大きく、情報信号の存在確率が小さいほど小さくなるように設定すればよい。この時、ランダム数nがとりうる値の範囲に対して、「SI内スロット数×クレイテリア値の平均」が10分の1程度の値になるように設定する。
【0057】
ステップS205による比較の結果、ランダム数nがクライテリア値より大きい場合には当該タイムスロットを候補スロットとして選択し(S206)、ランダム数nがクライテリア値以下の場合には当該タイムスロットを候補スロットとして選択しない(S207)。
【0058】
以上のように、本発明の実施の形態2による航行支援装置によれば、過去のタイムスロットの使用状況に基づいて候補スロットを選択するようにしたことにより、クラスA局の情報信号が存在しない確率の高いタイムスロットを候補スロットとして選択することが可能となり、クラスB局はクラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0059】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3による航行支援装置は、前述した実施の形態1による航行支援装置の信号強度を用いた情報信号の有無判定にかえて、信号有無判定部31がベースバンド信号のパターン認識を行うことにより、情報信号の有無判定するようにしたものである。
【0060】
図7は本発明の実施の形態3による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図7において、本発明の実施の形態3による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部31と、候補スロット選択部5と、送信部6とからなる。なお、前述した実施の形態1による航行支援装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0061】
信号有無判定部31は、AIS信号受信部1で受信した受信信号を検波して得られるベースバンド信号が、情報信号であるか否かのパターン認識を行う。つまり、信号有無判定部31は、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動を監視し、当該監視結果に基づいて受信信号が情報信号であるか否かの判定を行う。
【0062】
図8は、ベースバンド信号のIQ平面上での挙動を示す図であり、図8(a)は、GMSK変調されたベースバンド信号のIQ平面上における挙動を示し、図8(b)は、ノイズのIQ平面上における挙動を示している。
【0063】
図8に示すように、受信した信号が位相変調された信号である場合には、I成分とQ成分とをIQ平面上にプロットすると一定の規則性を持って変移する一方で、受信した信号がノイズである場合には、規則性がなくランダムな挙動を示す。
【0064】
そこで、本発明の実施の形態3による信号有無判定部31では、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動を、パターン認識を行うことによって監視することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かを判定する。パターン認識は、例えば、部分空間法やサポートベクタマシン、或いはニューラルネットワーク等の手法を用いて行うことができる。もちろん、これらの手法の組み合わせによりパターン認識を行っても良い。
【0065】
1)サポートベクタマシン
図9は、本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、前述した信号有無判定部3と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0066】
図9において、信号有無判定部31は、A/D変換回路301と、ベースバンド復調回路302と、特徴ベクトル抽出回路305と、サポートベクタマシン306とからなる。
特徴ベクトル抽出回路305は、ベースバンド復調回路302から出力されたベースバンド信号に基づいて特徴ベクトルを抽出する。特徴ベクトルとしては、例えばFFTによる周波数スペクトル成分や、信号強度、位相情報、或いは位相情報の時間微分(信号の速度成分)、2回微分(信号の加速度成分)などを要素とするベクトルが一例となる。
【0067】
サポートベクタマシン306は、特徴ベクトル抽出回路305で抽出した特徴ベクトルに基づいて、タイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する。ここで判定にはカーネル関数による計算を利用し、次式(1)の符号判定によりタイムスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する。
【数1】
【0068】
なお、式(1)中、wTは重みベクトルの転置、Φ(x)は高次空間におけるベクトル、bはバイアス項、αiは定数、yiはサポートベクトルxiの判定結果、K(xi,x)はカーネル関数であり、カーネル関数としては、多項式カーネルやガウシアンカーネルが考えられる。カーネル関数を用いることにより、変換後の空間や変数Φ(x)がどのようなものであるのかを知る必要がなくなり、タイムスロット内の信号の有無を計算により求めることができる。
【0069】
2)部分空間法
この手法は、情報信号の学習結果に基づいて固有空間から部分空間を選び出し、判定対象となる信号を該選出した部分空間に投影して特徴量を抽出することにより、信号と雑音を区別する方法である。
【0070】
図10は、本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、前述した信号有無判定部3と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
図10において、信号有無判定部31は、A/D変換回路301と、ベースバンド復調回路302と、信号有無判定回路401とからなる。
信号有無判定回路401は、部分空間法を用いてベースバンド信号のパターン認識を行い、IQ平面上におけるベースバンド信号の挙動を監視する。
【0071】
部分空間法を用いた信号有無判定回路401による信号有無判定は次のように行われる。
先ず、情報信号と判定されるべき資料を複数学習させて固有空間を選び出し、選出した固有空間の累積寄与率に基づいてその部分空間(部分固有空間)を予め作成する。この学習作業は例えば、製品出荷時に行われ、その学習結果が信号有無判定回路401に予めメモリ等に記憶されている。
そして、信号有無判定回路401にベースバンド信号の入力を受けると、信号有無判定回路401は、入力されたベースバンド信号を、作成した部分空間へ射影して特徴量を抽出する。入力された信号が情報信号であるか否かの判断は、抽出した特徴量と学習データのもつ特徴量とを比較することにより行われ、例えば、互いのユークリッド距離が予め決められた閾値を越えるか否かにより判断する。これにより、信号有無判定回路401は、タイムスロットに情報信号が存在するか否かの判定を行うことが可能になる。
【0072】
3)ニューラルネットワーク
ベースバンド信号の挙動は、ニューラルネットワークを用いてパターン認識を行うことにより観察することも可能である。
具体的な、ニューラルネットワークの手法としては、例えば、パーセプトロン、バックプロパゲーション(BP)学習型、ネオコグニトロンなどの階層型のニューラルネットワークや、アソシアトロン、ホップフィールドネットワーク、ボルツマンマシンなどの相互結合型のニューラルネットワークを用いることができる。
【0073】
以上のように、本発明の実施の形態3による航行支援装置によれば、サポートベクタマシンや部分空間法、或いはニューラルネットワークなどの種々のパターン認識手法を用いて、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動を監視することにより、タイムスロットに情報信号が存在するか否かの判定を行うことが可能になる。これにより、受信信号の信号強度だけに頼らない、変調信号の存在についてのキャリアセンスとその判定が可能となる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態3による航行支援装置では、タイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリ4を持たない例について説明したが、前記実施の形態1による航行支援装置と同様に信号無判定部31で得られるタイムスロットの使用状況に関する情報をメモリ4に記憶させ、この情報を信号有無の判定に利用するようにしても良い。
【0075】
なお、メモリ4に記憶させる情報は、例えば、サポートベクタマシンを用いる場合には、各タイムスロットに情報信号が存在していたか否かを示す情報の他、判定境界からの距離を示すWTΦ(x)+bの絶対値(情報信号が存在していた可能性を示す値)、或いは受信した信号の周波数スペクトル成分や、信号強度などの特徴ベクトルWTΦ(x)+bの絶対値など、過去のタイムスロットの使用状況を判断するために用いることができる情報であれば何でも良い。また、メモリ4に記憶した情報の利用方法であるが、その1つの手法として、過去のタイムスロットの使用状況を勘案して対象のタイムスロットにおける信号の存在確率を算出し、当該存在確率に基づいて式(1)のバイアス項bを増減させる手法が考えられる。そして、このようにタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を用いて判断することにより、受信した信号のIQ平面上における挙動をより正確に監視することができ、判定結果の正確性を向上させることが可能となる。もちろん、部分空間法やニューラルネットワーク等を用いる場合であっても、上記手法を同様に用いることが可能である。
【0076】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4による航行支援装置は、信号有無判定部32が受信信号の信号強度とベースバンド信号のIQ平面上における挙動とに基づいて信号の有無を判定するものである。
【0077】
図11は本発明の実施の形態4による航行支援装置の構成を示すブロック図である。
図11において、本発明の実施の形態4による航行支援装置は、AIS信号受信部1と、基準タイミング発生部2と、信号有無判定部32と、メモリ4と、候補スロット選択部5と、送信部6とからなる。なお、前述した実施の形態1による航行支援装置と同様の構成要素については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0078】
信号有無判定部32は、図12に示すように、前記実施の形態1で説明した信号有無判定部3と前記実施の形態3で図9を用いて説明した信号有無判定部31(サポートベクタマシン)とを組み合わせたものであり、受信信号の信号強度とベースバンド信号のIQ平面上における挙動を総合的に勘案して、タイムスロットに情報信号が存在していたか否かを判定するものである。もちろん、ベースバンド信号のIQ平面上における挙動は、サポートベクタマシンの他、部分空間法、或いはニューラルネットワークなどの種々のパターン認識手法を用いて監視することができる。
【0079】
これにより、タイムスロットに情報信号が存在しているか否かの、より正確な判定が期待でき、クラスB局はクラスA局の送信を避けて適切なタイミングで自局の送信を行うことが可能になる。
【0080】
なお、本発明の各実施形態では、基準タイミング発生部2が受信したクラスA局の信号から同期タイミング信号を生成するものについて説明したが、もちろん、図13に示すように、本発明にかかる航行用支援装置がGPS(Global Positioning System)等の衛星航法測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)受信機を搭載し、測位用信号受信部11で受信した受信信号から測位演算部12が正確な時刻信号を取得し、基準タイミング発生部13が、測位演算部12から得られる時刻信号に基づいて、同期タイミング信号を生成するようにしても良い。
【0081】
なお、前述した本発明の各実施形態は最良の実施形態の一例であって、本発明の要旨を損なわない範囲で種々の変更が可能であり、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1による航行支援装置のメモリを説明するための説明図
【図4】本発明の実施の形態1による航行支援装置の信号有無判定部によるキャリアセンス処理を説明するためのフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態2による航行支援装置の候補スロット選択部の処理内容を説明するためのフローチャート
【図7】本発明の実施の形態3による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図8】TDMA変調信号及びノイズのIQ平面上での挙動を示す図
【図9】本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態3による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図11】本発明の実施の形態4による航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【図12】本発明の実施の形態4による航行支援装置の信号有無判定部の構成の一例を示すブロック図
【図13】本発明の航行支援装置の構成の一例を示すブロック図
【符号の説明】
【0083】
1 AIS信号受信部
2 基準タイミング発生部2
3、31、32 信号有無判定部
4 メモリ
5、51 候補スロット選択部
6 送信部
301 A/D変換回路
302 ベースバンド復調回路
303 信号レベル検出回路
304 信号有無判定回路
305 特徴ベクトル抽出回路
306 サポートベクタマシン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶自動識別システムに使用される航行支援装置であって、
他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、
前記受信部で受信した信号と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、
前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで、自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項2】
船舶自動識別システムに使用される航行支援装置であって、
他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、
前記受信部で受信した信号から得られる信号強度の測定値と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、
スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで、自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項3】
船舶自動識別システムに使用される航行支援装置であって、
他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、
前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、
スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の航行支援装置において、
前記信号有無判定部は、部分空間法、サポートベクタマシン、又はニューラルネットワークのうちの少なくとも1つ以上の手法を用いてパターン認識を行うことを特徴とする航行支援装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の航行支援装置において、
前記メモリに記憶された情報に基づいて、自局に関する情報を送信する候補となる、候補スロットを選択する候補スロット選択部を備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載の航行支援装置において、
前記信号有無判定部は、前記送信部によって自局に関する情報を送信しない場合には、スロット全体に亘って情報信号が存在するか否かを検証し、得られた情報を、過去のタイムスロットの使用状況に関する情報として前記メモリに記憶することを特徴とする航行支援装置。
【請求項7】
請求項1から3の何れかに記載の航行支援装置において、
衛星からの測位用信号を受信する測位用信号受信部と、
前記測位用信号に基づいて測位演算を行い、正確な時刻信号を得る測位演算部とを備え、
前記基準タイミング発生部は、前記測位演算部から得られる時刻信号に基づいて、同期タイミング信号を生成することを特徴とする航行支援装置。
【請求項8】
信号を受信する信号受信部と、
前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果に基づいて受信信号が情報信号であるか否かの判定を行う信号有無判定部とを備えることを特徴とするキャリアセンス方式。
【請求項9】
請求項8に記載のキャリアセンス方式において、
前記信号有無判定部は、部分空間法、サポートベクタマシン、又はニューラルネットワークのうちの少なくとも1つ以上の手法を用いてパターン認識を行うことを特徴とするキャリアセンス方式。
【請求項1】
船舶自動識別システムに使用される航行支援装置であって、
他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、
前記受信部で受信した信号と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、
前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで、自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項2】
船舶自動識別システムに使用される航行支援装置であって、
他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、
前記受信部で受信した信号から得られる信号強度の測定値と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、
スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで、自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項3】
船舶自動識別システムに使用される航行支援装置であって、
他局から送信される信号を受信する受信部と、
他局との通信タイミングを律する同期タイミング信号を生成する基準タイミング発生部と、
前記同期タイミング信号で画定されるタイムスロットの過去の使用状況に関する情報を記憶するメモリと、
前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果と、前記メモリに記憶された情報とを用いて、前記同期タイミング信号で画定されるスロット内に情報信号が存在するか否かを判定する信号有無判定部と、
スロットの先頭から一定の時間内に、前記信号有無判定部によって情報信号が無いと判定されたスロットで自局に関する情報を送信する送信部とを備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の航行支援装置において、
前記信号有無判定部は、部分空間法、サポートベクタマシン、又はニューラルネットワークのうちの少なくとも1つ以上の手法を用いてパターン認識を行うことを特徴とする航行支援装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の航行支援装置において、
前記メモリに記憶された情報に基づいて、自局に関する情報を送信する候補となる、候補スロットを選択する候補スロット選択部を備えることを特徴とする航行支援装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載の航行支援装置において、
前記信号有無判定部は、前記送信部によって自局に関する情報を送信しない場合には、スロット全体に亘って情報信号が存在するか否かを検証し、得られた情報を、過去のタイムスロットの使用状況に関する情報として前記メモリに記憶することを特徴とする航行支援装置。
【請求項7】
請求項1から3の何れかに記載の航行支援装置において、
衛星からの測位用信号を受信する測位用信号受信部と、
前記測位用信号に基づいて測位演算を行い、正確な時刻信号を得る測位演算部とを備え、
前記基準タイミング発生部は、前記測位演算部から得られる時刻信号に基づいて、同期タイミング信号を生成することを特徴とする航行支援装置。
【請求項8】
信号を受信する信号受信部と、
前記受信部から出力される受信信号を検波して得られるベースバンド信号が情報信号であるか否かのパターン認識を行い、当該パターン認識の結果に基づいて受信信号が情報信号であるか否かの判定を行う信号有無判定部とを備えることを特徴とするキャリアセンス方式。
【請求項9】
請求項8に記載のキャリアセンス方式において、
前記信号有無判定部は、部分空間法、サポートベクタマシン、又はニューラルネットワークのうちの少なくとも1つ以上の手法を用いてパターン認識を行うことを特徴とするキャリアセンス方式。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−251931(P2007−251931A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26898(P2007−26898)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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