説明

舶用推進システム及びそれを備えた船舶

【課題】軸発電機の負荷変動による船速への影響を小さくできる舶用推進システムを提供する。
【解決手段】蒸気タービンとプロペラとを連結する推進軸に接続された軸発電機を備える船舶に搭載される舶用推進システムであって、蒸気タービンに蒸気を供給する供給配管に設けられ、蒸気の供給量を制御する制御弁と、制御弁の操作量を決定する制御装置とを備え、制御装置は、プロペラの実回転数をプロペラの回転数指令に一致させるための第1操作量V1を算出する第1演算部11と、船内の負荷状況から決定される軸発電機出力指令値に基づいて、第2操作量V2を算出する第2演算部12と、第1操作量V1及び第2操作量V2を加算して第3操作量V3を得る加算器13とを備え、第3操作量V3に基づいて制御弁を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用推進システム及びそれを備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、主機とプロペラとを推進軸で連結し、推進軸に軸発電機を接続した舶用推進システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような舶用推進システムを備える船舶において、軸発電機による発電電力は、船内周波数に変換されて船内電源系統に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−326391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される船舶では、軸発電機の負荷変動の影響を主機が受け、船速が変動し、乗り心地が悪化するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軸発電機の負荷変動による船速への影響を小さくすることのできる舶用推進システム及びそれを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、蒸気タービンと推進器とを連結する推進軸に接続された軸発電機を備える船舶に搭載される舶用推進システムであって、前記蒸気タービンに蒸気を供給する供給配管に設けられ、蒸気の供給量を制御する制御弁と、前記制御弁の操作量を決定する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記推進器の実回転数を推進器の回転数指令に一致させるための第1操作量を算出する第1演算手段と、船内の負荷状況から決定される軸発電機出力指令値に基づいて、第2操作量を算出する第2演算手段と、前記第1操作量及び前記第2操作量を加算して第3操作量を得る加算手段とを備え、前記第3操作量に基づいて前記制御弁を制御する舶用推進システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、船内の負荷状況から決定される軸発電機出力指令に基づいて第2操作量を求め、この第2操作量を制御弁の開度制御に加えるので、軸発電機の負荷変動に応じた蒸気量を船速変動に先行して蒸気タービンに供給することが可能となる。これにより、タービン出力を先行的に操作することができ、軸発電機の負荷変動に対して船速制御を速やかに追従させることができる。この結果、軸発電機の負荷が急激に変動した場合であってもそれによる船速の変動を抑制することができ、航行の安定性を向上させることができる。
【0008】
上記舶用推進システムにおいて、前記第2演算手段は、前記軸発電機出力指令から軸発電機へのタービン出力を推定する手段と、軸発電機へのタービン出力と第2操作量とが関連付けられた情報を予め保有しており、推定された前記軸発電機へのタービン出力に対応する第2操作量を取得する手段とを具備していてもよい。
【0009】
このような構成によれば、船内の負荷状況から決定される軸発電機出力指令に基づいて軸発電機へのタービン出力を推定し、この軸発電機へのタービン出力に相当する蒸気量を供給するための第2操作量を、予め保有している軸発電機へのタービン出力と第2操作量とが関連付けられた情報から取得する。したがって、第2操作量を容易に求めることができる。
【0010】
上記舶用推進システムにおいて、前記第2演算手段は、前回の前記第3操作量を用いて前回のタービン出力を推定する手段と、前回の前記軸発電機出力指令を用いて、前回の軸発電機へのタービン出力を推定する手段と、推定された前記前回のタービン出力から推定された前記前回の軸発電機へのタービン出力を減算することにより、前回の推進器へのタービン出力を算出する手段と、今回の前記第1操作量に未知数の前記第2操作量を加えた第3操作量を用いて、今回のタービン出力を推定する手段と、今回の前記軸発電機出力指令を用いて、今回の軸発電機へのタービン出力を推定する手段と、推定された前記今回のタービン出力から推定された前記今回の軸発電機へのタービン出力を減算することにより、今回の推進器へのタービン出力を算出する手段と、前記前回の推進器へのタービン出力と前記今回の推進器へのタービン出力との差分が船速に応じて決定される所定の値となるような前記未知数の第2操作量を算出する手段とを備えていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、前回の推進器へのタービン出力を求めるとともに、第2操作量を未知数として今回の推進器へのタービン出力を求め、前回の推進器へのタービン出力と今回の推進器へのタービン出力との差分が船速に応じた所定の値になるような第2操作量を求める。このように、軸発電機へのタービン出力に相当する動力を得るための第2操作量を未知数として用いた方程式を解くことにより第2操作量を得るので、容易に第2操作量を得ることができる。
【0012】
上記舶用推進システムにおいて、前記推進器の回転数指令が80%以下の領域、または、前記軸発電機出力指令の変動幅をタービン出力で除算した値が0.01よりも大きい場合において、前記第2演算手段は前記第2操作量を出力するようにしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、推進器の回転数指令が80%以下の領域、または、軸発電機出力指令の変動幅をタービン出力で除算した値が0.01よりも大きい場合に限って、第2演算手段が第2操作量を出力するので、第2演算手段の処理負担を軽減することができる。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかの舶用推進システムを備える船舶を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軸発電機の負荷変動による船速への影響を小さくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る舶用推進システムの概略構成を示した図である。
【図2】図1に示した制御装置の概略構成を示した制御ブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る舶用推進システムが備える制御装置の概略構成を示した制御ブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る舶用推進システムが備える制御装置の概略構成を示した制御ブロック図である。
【図5】図4に示した第2演算部の内部構成を示した図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る舶用推進システムが備える制御装置の概略構成を示した制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る舶用推進システム及びそれを備えた船舶の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る舶用推進システムの概略構成を示した図である。図1に示すように、舶用推進システム10は、ボイラ1と、ボイラ1から供給される蒸気によって回転させられる蒸気タービン(主機)2と、ボイラ1から蒸気タービンに蒸気を供給する供給配管に設けられた制御弁3と、制御弁3の開度を操作する調速装置(ガバナ)4と、蒸気タービン2の回転動力によって駆動させられるプロペラ(推進器)5と、蒸気タービン2とプロペラ5とを連結する推進軸に接続された軸発電機6と、調速装置4を制御することにより蒸気タービン2に供給される蒸気量を調整し、蒸気タービン出力を制御する制御装置7とを主な構成として備えている。また、軸発電機6は、パワーマネジメントシステム8により制御される。
【0019】
制御装置7は、図2に示すように、プロペラの実回転数をプロペラ回転数指令に一致させるための第1操作量V1を算出する第1演算部11と、船内の負荷状況から決定される軸発電機出力指令に基づいて、第2操作量V2を算出する第2演算部12と、第1演算部11から出力された第1操作量V1と第2演算部12から出力された第2操作量V2を加算して第3操作量V3を得る加算器13とを備えている。
【0020】
第1演算部11は、プロペラ回転数指令とプロペラの実回転数との差分を算出する減算器21と、減算器21の結果から第1操作量を得る制御器22とを備えている。制御器22は、例えば、PID制御器である。
【0021】
第2演算部12は、第1処理部23と、第2処理部24とを備えている。第1処理部23は、軸発電機出力指令を軸発電機効率で除算することにより、軸発電機へのタービン出力Wgを推定する。第2処理部24は、軸発電機へのタービン出力Wgと第2操作量V2とが関連付けられたテーブルを予め保有しており、第1処理部23によって推定された軸発電機へのタービン出力Wgに対応する第2操作量V2を取得する。ここで、テーブルは、タービン入口蒸気圧力Pinに応じて複数設けられている。第2処理部24は、タービン入口蒸気圧力Pin及び軸発電機へのタービン出力Wgとが入力されると、入力されたタービン入口蒸気圧力Pinに対応するマップから軸発電機へのタービン出力Wgに対応する第2操作量V2を取得する。マップは、事前に、タービン入口蒸気圧力と調速装置4の操作量とタービン出力との関係をシミュレーションあるいは実際に調べ、この結果から作成される。なお、マップに代えて軸発電機へのタービン出力Wgから第2操作量V2を算出する演算式をタービン入口蒸気圧力毎に設定しておき、この演算式を用いて第2操作量V2を得ることとしてもよい。
【0022】
このような構成を備える舶用推進システム10においては、実際のタービン出力からプロペラの実回転数が推定され、推定されたプロペラの実回転数とプロペラ回転数指令とが第1演算部11に入力される。第1演算部11では、実回転数とプロペラ回転数指令との差分が減算器21にて算出され、この差分が制御器22に入力されることにより第1操作量V1が得られる。
また、船内の電力を制御するパワーマネジメントシステム8から出力される軸発電機出力指令が第2演算部12の第1処理部23に入力され、この軸発電機出力指令から軸発電機へのタービン出力Wgが推定される。推定された軸発電機へのタービン出力Wgは、タービン入口蒸気圧力Pinとともに第2処理部24に入力され、これら入力情報とテーブルとから第2操作量V2が得られる。
【0023】
第1演算部11によって決定された第1操作量V1と、第2演算部12によって決定された第2操作量V2とは加算器13により加算され、第3操作量V3が得られる。第3操作量V3は図1の調速装置4に送られる。そして、調速装置4が第3操作量V3に基づいて作動することにより、制御弁3が所定の開度に制御され、この結果、蒸気タービン2に供給される蒸気量が調整されて、船速が制御される。
【0024】
以上説明してきたように、本実施形態に係る舶用推進システム10によれば、パワーマネジメントシステム8から与えられる軸発電機出力指令に基づいて軸発電機へのタービン出力Wgを求め、この軸発電機へのタービン出力Wgに相当する第2操作量V2を制御弁3の開度制御に加えるので、軸発電機の負荷状況が変動することによるタービン出力への影響を事前に把握し、予め蒸気供給量に反映させることができる。すなわち、船速制御の応答性は、軸発電機の制御の応答性に比べて遅いため、実発電機が変動することを軸発電機出力指令から事前に察知し、その変動分に相当する操作量を第2操作量V2として船速制御に先行して与えることにより、軸発電機の負荷変動に対して船速制御を速やかに追従させることができる。この結果、軸発電機の負荷が急激に変動した場合であってもそれによる船速の変動を抑制することができ、航行の安定性を向上させることができる。
【0025】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る舶用推進システムについて説明する。本実施形態に係る舶用推進システムは、上述した第1の実施形態に係る舶用推進システム10において、プロペラ回転数指令が低い領域(例えば、プロペラ回転数指令が80%以下の領域)、または、軸発電機出力指令の変動幅が大きい領域(例えば、軸発電機出力指令の変動幅をタービン出力で除算した値が0.01よりも大きい領域)において、第2演算部12から第2操作量V2を出力し、それ以外の領域では、第2操作量V2を出力しない、換言すると、ゼロとする。
【0026】
例えば、プロペラ回転数指令が高い領域(例えば、プロペラ回転数指令が80%よりも大きい領域)では、軸発電機の負荷変動がタービン出力に与える影響は微小であることが予想され、航行の安定性にそれほど影響を与えない。また、同様に、軸発電機出力指令の変動幅が微小(例えば、軸発電機出力指令の変動幅をタービン出力で除算した値が0.01以下の領域)であれば、軸発電機の負荷変動がタービン出力に与える影響は小さいと予想される。そこで、本実施形態では、軸発電機の負荷変動によるタービン出力への影響が小さいと考えられる領域においては、第2演算部12から出力される第2操作量V2をゼロとする。
【0027】
図3は、本実施形態に係る舶用推進システムが備える制御装置の概略構成を示した制御ブロック図である。図3に示した舶用推進システムの制御装置では、第2演算部12と加算器13とをつなぐ信号線に切替手段50を設け、プロペラ回転数指令及び軸発電機出力指令に基づいて切替手段50をオンオフさせる構成としている。
また、図3では、切替手段50を設けて、第2演算部12からの出力信号を機械的にオンオフさせているが、例えば、プロペラ回転数指令が低い領域、または、軸発電機出力指令の変動幅が大きい領域において、第2演算部12が第2操作量V2の値をゼロとして出力するようにしてもよい。この場合には、上記条件に合致する場合において、第2演算部12は第2操作量V2を算出しなくてもよいため、第2演算部12の処理負担を軽減させることが可能となる。
【0028】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る舶用推進システムについて説明する。本実施形態に係る舶用推進システムは、上述した第1の実施形態に係る舶用推進システム10とほぼ構成を同じくするが、第2演算部12の構成が異なる。以下、第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0029】
図4は、本実施形態に係る舶用推進システムが備える制御装置の概略構成を示した制御ブロック図、図5は図4に示された第2演算部12−1の内部構成を示した図である。図4、図5に示すように、第2演算部12−1は、前回の第3操作量V3(n−1)を用いて前回のタービン出力W(n−1)を推定する第3処理部31と、前回の軸発電機出力指令を用いて、前回の軸発電機へのタービン出力Wg(n−1)を推定する第4処理部32と、推定された前回のタービン出力W(n−1)から推定された前回の軸発電機へのタービン出力Wg(n−1)を減算することにより、前回のプロペラへのタービン出力Wp(n−1)を算出する第5処理部33と、今回の第1操作量V1(n)に未知数の第2操作量Xを加えた第3操作量V1(n)+Xを用いて、今回のタービン出力W(n)を推定する第6処理部34と、今回の軸発電機出力指令を用いて、今回の軸発電機へのタービン出力Wg(n)を推定する第7処理部35と、推定された今回のタービン出力W(n)から推定された今回の軸発電機へのタービン出力Wg(n)を減算することにより、今回のプロペラへのタービン出力Wp(n)を算出する第8処理部36と、前回のプロペラへのタービン出力Wp(n−1)と今回のプロペラへのタービン出力Wp(n)との差分が船速に応じて決定される所定の値になるような未知数の第2操作量Xを算出する第9処理部37とを備えている。
【0030】
より具体的には、図5に示されるように、第3処理部31は、前回の第3操作量V3(n−1)と前回のタービン入口蒸気圧力Pin(n−1)とから蒸気流量を推定し、推定した蒸気流量、タービン入口蒸気温度Tin(n−1)、タービン出口蒸気圧力Pout(n−1)、タービン出口蒸気温度Tout(n−1)、及びタービン効率Dt(n−1)を入力情報として得、これら入力情報を予め保有している所定の演算式に代入することにより、前回のタービン出力W(n−1)を算出する。
第4処理部32は、前回の軸発電機出力指令を軸発電機効率で除算することにより、前回の軸発電機へのタービン出力Wg(n−1)を算出する。
第5処理部33は、第3処理部31で得られた前回のタービン出力W(n−1)から第4処理部で得られた前回の軸発電機へのタービン出力Wg(n−1)を減算することにより、前回のプロペラへのタービン出力Wp(n−1)を得る。
【0031】
また、第6処理部34は、今回の第1操作量V1(n)に未知数の第2操作量Xを加えた今回の第3操作量V1(n)+Xとタービン入口蒸気圧力Pin(n)とから蒸気流量を推定し、推定した蒸気流量、タービン入口蒸気温度Tin(n)、タービン出口蒸気圧力Pout(n)、タービン出口蒸気温度Tout(n)、及びタービン効率Dt(n)を入力情報として得、これら入力情報を予め保有している所定の演算式に代入することにより、今回のタービン出力W(n)を算出する。
【0032】
第7処理部35は、今回の軸発電機出力指令を軸発電機効率で除算することにより、今回の軸発電機へのタービン出力Wg(n)を算出する。
第8処理部36は、第6処理部34で得られた今回のタービン出力W(n)から第7処理部35で得られた今回の軸発電機へのタービン出力Wg(n)を減算することにより、今回のプロペラへのタービン出力Wp(n)を得る。
【0033】
第9処理部37は、第5処理部33で得られた前回のプロペラへのタービン出力Wp(n−1)と第8処理部36で得られた今回のプロペラへのタービン出力Wp(n)との差分が船速に基づく所定の値となるような第2操作量Xを求める。例えば、船速変化がない場合には、前回のプロペラへのタービン出力Wp(n−1)と今回のプロペラへのタービン出力Wp(n)とが一致するような第2操作量Xを求める。また、船速が増加または減少している場合には、前回のプロペラへのタービン出力Wp(n−1)と今回のプロペラへのタービン出力Wp(n)との差分が船速の増加分または減少分に基づいて設定される所定の値となるような第2操作量Xを求める。
【0034】
第9処理部37によって求められた第2操作量Xは、図4に示すように、加算器13に出力され、今回の第1操作量V1(n)に加算されることにより、今回の第3操作量V3(n)が得られる。第3操作量V3(n)は、図1の調速装置4に送られる。そして、調速装置4が第3操作量V3(n)に基づいて作動することにより、制御弁3が所定の開度に制御され、この結果、蒸気タービン2に供給される蒸気量が調整されて、船速が制御される。
【0035】
以上説明してきたように、本実施形態に係る舶用推進システムによれば、前回のプロペラのタービン出力を求めるとともに、第2操作量を未知数として今回のプロペラのタービン出力を求め、前回のプロペラへのタービン出力と今回のプロペラへのタービン出力との差分が船速に応じた所定の値になるような第2操作量を求める。このように、軸発電機へのタービン出力に相当する動力を得るための第2操作量V2(n)を未知数として用いた方程式を解くことにより、第2操作量V2(n)を得るので、容易に第2操作量V2(n)を得ることができる。
【0036】
なお、本実施形態において、前回の蒸気流量は入口蒸気圧力と第3操作量V3とに基づいて推定したが、蒸気の供給配管に流量計が設けられている場合には、流量計によって測定された値を用いることとしてもよい。
【0037】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態に係る舶用推進システムについて説明する。本実施形態に係る舶用推進システムは、上述した第3の実施形態に係る舶用推進システムにおいて、プロペラ回転数指令が低い領域(例えば、プロペラ回転数指令が80%以下の領域)、または、軸発電機出力指令の変動幅が大きい領域(例えば、軸発電機出力指令の変動幅をタービン出力で除算した値が0.01よりも大きい領域)において、第2演算部12−1から第2操作量V2(n)を出力し、それ以外の領域では、第2操作量V2(n)を出力しない、換言すると、ゼロとする。
【0038】
図6は、本実施形態に係る舶用推進システムが備える制御装置の概略構成を示した制御ブロック図である。図6に示した舶用推進システムでは、第2演算部12−1と加算器13とをつなぐ信号線に切替手段を設け、プロペラ回転数指令及び軸発電機出力指令に基づいて切替手段をオンオフさせる構成としている。
また、図6では、切替手段50を設けて、第2演算部12−1からの出力信号を機械的にオンオフさせているが、例えば、プロペラ回転数指令が低い領域、または、軸発電機出力指令の変動幅が大きい領域において、第2演算部12−1が第2操作量V2(n)の値をゼロとして出力するようにしてもよい。この場合には、上記条件に合致する場合において、第2演算部12−1は第2操作量V2(n)を算出しなくてもよいため、第2演算部12−1の処理負担を軽減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 ボイラ
2 蒸気タービン
3 制御弁
4 調速装置
5 プロペラ
6 軸発電機
7 制御装置
10 舶用推進システム
11 第1演算部
12、12−1 第2演算部
13 加算器
23 第1処理部
24 第2処理部
31 第3処理部
32 第4処理部
33 第5処理部
34 第6処理部
35 第7処理部
36 第8処理部
37 第9処理部
50 切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンと推進器とを連結する推進軸に接続された軸発電機を備える船舶に搭載される舶用推進システムであって、
前記蒸気タービンに蒸気を供給する供給配管に設けられ、蒸気の供給量を制御する制御弁と、
前記制御弁の操作量を決定する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記推進器の実回転数を推進器の回転数指令に一致させるための第1操作量を算出する第1演算手段と、
船内の負荷状況から決定される軸発電機出力指令値に基づいて、第2操作量を算出する第2演算手段と、
前記第1操作量及び前記第2操作量を加算して第3操作量を得る加算手段と
を備え、
前記第3操作量に基づいて前記制御弁を制御する舶用推進システム。
【請求項2】
前記第2演算手段は、
前記軸発電機出力指令から軸発電機へのタービン出力を推定する手段と、
軸発電機へのタービン出力と第2操作量とが関連付けられた情報を予め保有しており、推定された前記軸発電機へのタービン出力に対応する第2操作量を取得する手段と
を具備する請求項1に記載の舶用推進システム。
【請求項3】
前記第2演算手段は、
前回の前記第3操作量を用いて前回のタービン出力を推定する手段と、
前回の前記軸発電機出力指令を用いて、前回の軸発電機へのタービン出力を推定する手段と、
推定された前記前回のタービン出力から推定された前記前回の軸発電機へのタービン出力を減算することにより、前回の推進器へのタービン出力を算出する手段と、
今回の前記第1操作量に未知数の前記第2操作量を加えた第3操作量を用いて、今回のタービン出力を推定する手段と、
今回の前記軸発電機出力指令を用いて、今回の軸発電機へのタービン出力を推定する手段と、
推定された前記今回のタービン出力から推定された前記今回の軸発電機へのタービン出力を減算することにより、今回の推進器へのタービン出力を算出する手段と、
前記前回の推進器へのタービン出力と前記今回の推進器へのタービン出力との差分が船速に応じて決定される所定の値となるような前記未知数の第2操作量を算出する手段と
を具備する請求項1に記載の舶用推進システム。
【請求項4】
前記推進器の回転数指令が80%以下の領域、または、前記軸発電機出力指令の変動幅をタービン出力で除算した値が0.01よりも大きい場合において、前記第2演算手段は前記第2操作量を出力する請求項1から請求項3のいずれかに記載の舶用推進システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の舶用推進システムを備える船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66676(P2012−66676A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212437(P2010−212437)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】